JP2021038348A - セラミック複合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】一次光と波長変換された二次光を均一に散乱して、波長変換効率を向上させることが可能なセラミック複合体を提供する。【解決手段】少なくともY3Al5O12相およびAl2O3相の2つの酸化物相をラメラ構造として有し、MgOが10ppm以上500ppm以下含有されており、ラメラ構造は、Y3Al5O12相およびAl2O3相の界面が、30個/mm以上800個/mm以下の密度で含まれているセラミック複合体。【選択図】図15

Description

本発明は、セラミック複合体に関し、特にYAl12相およびAl相の2つの酸化物相をラメラ構造として有するセラミック複合体に関する。
現在、光源として青色光を発光する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザを用い、青色光の一部を波長変換部材で黄色光に波長変換して、青色光と黄色光の混色により白色光を照射する照明装置が普及している。このような照明装置では、波長変換部材にYAG(YAl12)系の蛍光体材料を用い、樹脂やガラスに蛍光体粉末を含有させるものが提案されている。
また、特許文献1,2には、YAl12相およびAl相が共晶として連続的に三次元的に相互に絡み合ったラメラ構造を有するセラミック複合体が提案されている。このような特許文献1,2に記載されたセラミック複合体では、YAl12相で青色光を黄色光に波長変換するとともに、YAl12相とAl相の界面で青色光と黄色光が散乱されて混色で白色を得ることができる。
特許第4609319号公報 特許第5246376号公報
しかし特許文献1,2では、一方向凝固法としてブリッジマン法を用いてセラミック複合体が製造されており、坩堝の移動速度を1〜20mm/時間としているため、YAl12相およびAl相の微細化に限界があった。またブリッジマン法では固液界面の乱れから生じるコロニー構造ができてしまう。そのため、特許文献1,2に記載されたセラミック複合体では、一次光である青色光と波長変換された黄色光の発光にむらがあり、混色を十分に行って均一な白色光とすることが困難であった。特に、セラミック複合体が薄い場合には、コロニー構造によるYAl12相のむらにより、波長変換にむらがあり、均一な白色光を得ることが困難であった。
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、一次光と波長変換された二次光を均一に散乱して、波長変換効率を向上させることが可能なセラミック複合体を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のセラミック複合体は、少なくともYAl12相およびAl相の2つの酸化物相をラメラ構造として有し、MgOが10ppm以上500ppm以下含有されており、前記ラメラ構造は、前記YAl12相および前記Al相の界面が、30個/mm以上800個/mm以下の密度で含まれていることを特徴とする。
このような本発明のセラミック複合体では、ラメラ構造にYAl12相およびAl相の界面が30個/mm以上800個/mm以下の密度で含まれているため、一次光と波長変換された二次光を均一に散乱して、波長変換効率を向上させることが可能となる。
また、本発明の一態様では、前記MoまたはWの含有量が、1mol・ppm以上30000mol・ppm以下である。
また、本発明の一態様では、前記YAl12相がCeで付活されている。
また、本発明の一態様では、前記Ceの含有量が、0.01mol%以上5.0mol%以下である。
また、本発明の一態様では、厚みが0.5mm以上2.0mm以下である。
また、本発明の一態様では、前記セラミック複合体の平面方向の形状は、幅が0.5mm以上300mm以下で長さが10mm以上1000mm以下の方形状、または直径が0.5mm以上2mm以下の形状である。
本発明では、一次光と波長変換された二次光を均一に散乱して、波長変換効率を向上させることが可能なセラミック複合体を提供することができる。
EFG法によるセラミック複合体の製造装置を示す概略構成図である。 (a)本発明の実施形態に係るダイの一例を模式的に示す平面図である。(b)同図(a)の正面図である。(c)同図(a)の側面図である。 (a)本発明の実施形態に係る種結晶の一例を示す説明図である。(b)本発明の実施形態に係る種結晶の他の例を示す説明図である。(c)本発明の実施形態に係る種結晶の更に他の例を示す説明図である。 本発明の実施形態における種結晶と仕切り板との位置関係を模式的に示す斜視図である。 (a)本発明の実施形態における種結晶と仕切り板との位置関係を模式的に示す正面図である。(b)本発明の実施形態における、種結晶の一部を溶融する様子を示す正面図である。 (a)本発明の実施形態に係る種結晶において、下辺が櫛歯形状の種結晶を示す説明図である。(b)本発明の実施形態に係る種結晶において、下辺が鋸形形状の種結晶を示す説明図である。 本発明の実施形態に係るセラミック複合体のスプレディング工程を模式的に示す斜視図である。 EFG法により得られる、本発明の実施形態に係る複数のセラミック複合体を部分的に示す斜視図である。 EFG法によって得られたセラミック複合体2の表面を示す顕微鏡写真である。 セラミック複合体2に含まれるYAl12相とAl相の界面の計測方法例を示す図であり、縦方向での計測を示している。 セラミック複合体2に含まれるYAl12相とAl相の界面の計測方法例を示す図であり、横方向での計測を示している。 EFG法での引き上げ速度を変化させた際のラメラ構造を示す顕微鏡写真であり、小さい速度で引き上げた場合を示している。 EFG法での引き上げ速度を変化させた際のラメラ構造を示す顕微鏡写真であり、中程度の速度で引き上げた場合を示している。 EFG法での引き上げ速度を変化させた際のラメラ構造を示す顕微鏡写真であり、大きい速度で引き上げた場合を示している。 Ce濃度が0.5mol%である実施例の引き上げ速度と界面密度の関係を示すグラフである。 EFG法によるセラミック複合体の成長工程の別形態を示す斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。図1から図8は、本発明の実施形態に係る複数のセラミック複合体及びその製造方法について説明する図である。
図1に示すように、セラミック複合体の製造装置1は、セラミック複合体2を育成する育成容器3と、育成したセラミック複合体2を引き上げる引き上げ容器4とから構成され、EFG(Edge−defined Film−fed. Growth)法によりセラミック複合体2を育成成長する。
育成容器3は、坩堝5、坩堝駆動部6、ヒータ7、電極8、ダイ9、及び断熱材10を備える。坩堝5はモリブデン製またはタングステン製であり、原料を溶融する。坩堝駆動部6は、坩堝5をその鉛直方向を軸として回転させる。ヒータ7は坩堝5を加熱する。また、電極8はヒータ7を通電する。ダイ9は坩堝5内に設置され、セラミック複合体2を引き上げる際の原料融液(以下、必要に応じて単に「融液」と表記)21の液面形状を決定する。また断熱材10は、坩堝5とヒータ7とダイ9を取り囲んでいる。
更に育成容器3は、雰囲気ガス導入口11と排気口12を備える。雰囲気ガス導入口11は、雰囲気ガスとして例えばアルゴンガスを育成容器3内に導入するための導入口であり、坩堝5やヒータ7、及びダイ9の酸化消耗を防止する。一方、排気口12は育成容器3内を排気するために備えられる。
引き上げ容器4は、シャフト13、シャフト駆動部14、ゲートバルブ15、及び基板出入口16を備え、種結晶17から育成成長した複数の平板形状のセラミック複合体2を引き上げる。シャフト13は種結晶17を保持する。またシャフト駆動部14は、シャフト13を坩堝5に向けて昇降させると共に、その昇降方向を軸としてシャフト13を回転させる。ゲートバルブ15は育成容器3と引き上げ容器4とを仕切る。また基板出入口16は、種結晶17を出し入れする。
なお製造装置1は図示されない制御部も有しており、この制御部により坩堝駆動部6及びシャフト駆動部14の回転を制御する。
次に、ダイ9について説明する。ダイ9はモリブデン製であり、図2に示すように多数の仕切り板18を有する。図2ではダイの一例として、仕切り板18が30枚であり、ダイ9が15個形成されている場合を示している。仕切り板18は同一の平板形状を有し、微小間隙(スリット)19を形成するように互いに平行に配置されて、1つのダイ9を形成している。スリット19は、ダイ9のほぼ全幅に亘って設けられる。また複数のダイ9は同一形状を有すると共に、その長手方向が互いに平行となるように所定の間隔で並列に配置されているため、複数のスリット19が設けられることとなる。各仕切り板18の上部は斜面30が形成されており、互いの斜面30が向かい合わせで配置されることで、鋭角の開口部20が形成されている。またスリット19は融液21を毛細管現象によって、各ダイ9の下端から開口部20に上昇させる役割を有している。
坩堝5内に投入される原料は、坩堝5の温度上昇に基づいて溶融(原料メルト)し、融液21となる。この融液21の一部は、ダイ9のスリット19に浸入し、前記のように毛細管現象に基づいてスリット19内を上昇し開口部20から露出して、開口部20で原料融液溜まり22が形成される(図5(a)参照)。EFG法では、原料融液溜まり(以下、必要に応じて「融液溜まり」と表記)22で形成される融液面の形状に従って、セラミック複合体2が成長する。図2に示したダイ9では、融液面の形状は細長い長方形となるので、平板形状のセラミック複合体2が製造される。
次に、種結晶17について説明する。図1、図4、及び図5に示すように本実施形態では、種結晶17として平板形状のセラミック複合体製の基板を用いる。更に、種結晶17の平面方向とダイ9の長手方向は、互いに90°の角度で以て直交となるように、種結晶17が配置される。また、種結晶17とセラミック複合体2も90°の角度で以て直交するので、図1ではセラミック複合体2の側面を示している。
種結晶17は、シャフト13の下部の基板保持具(図示せず)との接触面積が大きいと、熱膨張率の差による応力のため変形し、場合によっては破損してしまう。反対に熱膨張率の差により種結晶17の固定が緩む場合もある。従って、種結晶17と基板保持具との接触面積は小さい方が好ましい。また、種結晶17は基板保持具に確実に固定できる基板形状の必要がある。
図3は種結晶17の基板形状の一例を示した図である。このうち、同図(a)及び(b)は、種結晶17の上部に切り欠き部23を設けたものである。この切り欠き部23を利用して、例えば2カ所の切り欠き部23の下側からU字形の基板保持具を差し込んで、接触面積を小さくしつつ確実に種結晶17を保持することが可能となる。
また、図3(c)に示したように、種結晶17内側に切り欠き穴24を設けても良い。この切り欠き穴24を利用して、例えば2カ所の切り欠き穴24に係止爪を差し込んで、基板保持具と種結晶17との接触面積を小さくしつつ、確実に種結晶17を保持することが可能となる。
次に、前記製造装置1を使用したセラミック複合体2の製造方法を説明する。最初にセラミック複合体の原料である、造粒された原料粉末(一例として酸化アルミニウムを64.71重量%、酸化イットリウムを35.02重量%、酸化マグネシウムを0.003重量%、酸化セリウム0.27重量%含んだ粉末)をダイ9が収納された坩堝5に所定量投入して充填する。原料粉末には、製造しようとするセラミック複合体の純度又は組成に応じて、上記以外の化合物や元素が含まれていてもよい。
続いて、坩堝5やヒータ7若しくはダイ9を酸化消耗させないために、育成容器3内をアルゴンガスで置換し、酸素濃度を所定値以下とする。
次に、ヒータ7で加熱して坩堝5を所定の温度とし、原料粉末を溶融する。酸化アルミニウムの融点は2050℃?2072℃程度なので、坩堝5の加熱温度はその融点以上の温度(例えば2100℃)に設定する。加熱後しばらくすると原料粉末が溶融して、原料の融液21が用意される。更に融液21の一部はダイ9のスリット19を毛細管現象により上昇してダイ9の表面に達し、スリット19上部に融液溜まり22が形成される。
次に図4及び図5に示すように、スリット19上部の融液溜まり22の長手方向に対して垂直な角度に種結晶17を保持しつつ降下させ、種結晶17を融液溜まり22の融液面に接触させる。なお、種結晶17は、予め基板出入口16から引き上げ容器4内に導入しておく。図4ではスリット19や開口部20の見易さを優先するため、融液21と融液溜まり22の図示を省略している。
図4は、種結晶17と仕切り板18との位置関係を示した図である。前記の通り、種結晶17の平面方向を仕切り板18の長手方向と直交させることにより、種結晶17と融液21との接触面積を小さくすることが可能となる。従って、種結晶17の接触部分が融液21となじみ、育成成長されるセラミック複合体2に結晶欠陥が生じにくくなる。
種結晶17を融液面に接触させる際に、種結晶17の下部を仕切り板18の上部に接触させて溶融しても良い。図5(b)は、種結晶17の一部を溶融する様子を示した図である。このように種結晶17の一部を溶融することで、種結晶17と融液21との温度差を速やかに解消ことができ、セラミック複合体2での結晶欠陥の発生を更に低減することが可能となる。
続いて基板保持具を所定の上昇速度で引き上げて、種結晶17の引き上げを開始する。具体的にはシャフト13により基板保持具を所定の速度で上昇させる。
なお、ダイ9の開口部20に対する種結晶の位置合わせをより容易にするため、種結晶17の下辺に凹凸を設けてもよい。図6は、種結晶17の下辺の形状を例示した図であり、同図(a)は下辺が櫛歯形状の場合を、同図(b)では鋸形形状の場合を示している。
この凹凸の間隔は、開口部20の間隔に合わせ、凸部分を融液溜まり22の中心に合わせる。凸部分を設けることで凸部分をセラミック複合体2の成長開始点とすることができ、セラミック複合体2がより容易に形成可能となる。なお、凹凸の形状は図6に示したものには限定されず、例えば波形の凹凸形状であっても良い。
基板保持具を所定の速度で上昇させ、種結晶17を中心に図7に示すようにセラミック複合体2をダイ9の長手方向に拡幅するように結晶成長させる(スプレディング)。セラミック複合体2が、ダイ9の全幅(仕切り板18の端)まで拡幅すると(フルスプレッド)、ダイ9の全幅と同程度の幅を有する、面積の広い平板形状のセラミック複合体2が育成される(直胴工程)。図7は、スプレディング工程によりセラミック複合体2の幅が広がる様子を示した模式図である。幅の広いセラミック複合体2が得られることにより、セラミック複合体製品の歩留まりが向上する。
スプレディング工程により、ダイ9の全幅までセラミック複合体2を成長させた後、図8に示すようにダイ9の全幅と同程度の一定幅を有する、平板形状の直胴部分26を所定の速度で所定の長さ(直胴長さ)まで引き上げる引き上げ工程を実施し、平板形状のセラミック複合体2を得る。
引き上げ工程の期間中には、スリット19の上部に形成されている融液溜まり22での融液21の界面温度が一定となるように、ヒータ7等を用いて温度制御する。セラミック複合体2は、融液溜まり22まで上昇してきた融液21が種結晶17やネック25、直胴部分26と接触して引き上げられながら冷却されることで成長する。したがって、融液溜まり22の温度を一定に管理することで、セラミック複合体2の成長期間において結晶の成長条件を同等に保つことができ、セラミック複合体2全域にわたって均一なラメラ構造を形成することができる。
引き上げ工程における種結晶17の引き上げ速度は、0.9mm/時間以上400mm/時間以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは50mm/時間以上200mm/時間以下の範囲である。種結晶17の引き上げ速度を50mm/時間以上とすることにより、セラミック複合体2へのクラック導入を防止可能となる。更に、前記引き上げ速度を200mm/時間以下とすることにより、セラミック複合体2の育成状態をより安定化することが出来る。
引き上げ速度が0.9mm/時未満の場合には、引き上げ速度の誤差に対してラメラ構造のサイズ変動が大きくなるため、ラメラ構造のサイズを制御することが困難になる。従って、育成成長させたセラミック複合体2の白色光の発光強度の低下を招いてしまう。また、成長速度が遅いため生産性が低くなる。引き上げ速度が400mm/時間より大きい場合には、融液溜まり22の温度を制御することが困難になるため、ラメラ構造のサイズを制御することも困難になる。また、引き上げ速度が大きすぎると、融液溜まり22の融液21が種結晶17やネック25、直胴部分26から分離して成長が中断する可能性が高くなるため好ましくない。
この後、得られたセラミック複合体2を放冷し、ゲートバルブ15を空け、引き上げ容器4側に移動して、基板出入口16から取り出す。得られた平板形状のセラミック複合体2の外観を図8に示す。直胴長さは特に限定されないが、2インチ以上(50.8mm以上)が好ましい。
また図16に示すように、ダイ9の全幅と種結晶17の幅を同一とし、種結晶17の全幅と同じ幅でセラミック複合体2を育成成長させても良い。なお図16でもスリット19の見易さを優先するため、融液21と融液溜まり22の図示を省略している。
以上説明したような製造装置1、種結晶17、及びダイ9を用いることにより、共通の種結晶17から複数のセラミック複合体2を同時に製造することが出来る。従って、一枚当たりのセラミック複合体2の製造コストを下げることが可能となる。
またEFG法では、複数のセラミック複合体2を育成成長する。従って、複数のセラミック複合体2が均一に冷却及び放冷される事で、ばらつきの無い均一なラメラ構造を得ることが出来る。
従って、種結晶17、及び仕切り板18を含めたダイ9は、精密に位置決めする必要がある。よって図1に示したように製造装置1は、ダイ9を設置する坩堝5を回転する坩堝駆動部6、及びその回転を制御する制御部(図示せず)が設けられている。またシャフト13に関しても、シャフト13を回転するシャフト駆動部14、及びその回転を制御する制御部(図示せず)が設けられている。即ち、ダイ9に対する種結晶17の位置決めは、制御部によりシャフト13又は坩堝5を回転させて調整する。なお、種結晶17とダイ9との精密な位置決めについては、各仕切り板18の斜面30の一部を切り欠いたダイ9を使用することによっても行うことが出来る。
図9は、上述したEFG法によって得られたセラミック複合体2の表面を示す顕微鏡写真である。図9中に写真で示されている範囲は、1辺が129μmの正方形である。図9に示すように、本実施形態のセラミック複合体2は、第1相であるYAl12相と、第2相であるAl相が共晶として存在しており、第1相と第2相が相互に立体的に絡み合ったラメラ構造を有している。図中において濃色で示された領域がYAl12相であり、淡色で示された領域がAl相である。また、第1相および第2相は、島状に独立して分離したものが少なく、三次元方向に連続した領域を有している。
またセラミック複合体2に含まれるYAl12相の組成比は、共晶組成近傍の19.72±2.00mol%である。YAl12相の組成比がこの範囲を外れると、Al相との共晶でラメラ構造を均一に形成することが困難である。
また、YAl12相におけるCeの含有量は0.01mol%以上5.0mol%以下の範囲が好ましい。0.01mol%未満ではセラミック複合体2の発効強度が弱くなって照明装置用途に不適格となってしまう。他方、5.0mol%超では所望以外の他の化合物が生成し、白色光の発光に寄与しなくなる為である。YAl12相のYが部分的にCeに置換されることで、YAl12相が蛍光体材料として機能し、一次光である青色光を吸収して二次光の黄色光を放出する。Al相の熱伝導率はYAl12相の熱伝導率の約4倍と大きく、YAl12相での一次光を二次の黄色光に変換する際の発熱を効率的に放熱できる。YAl12相ではCe濃度によって吸収波長や発光波長が変化するが、本実施形態のセラミック複合体では後述するように比較的Ceの含有量が多くても均一に微細なラメラ構造を形成することができる。
またセラミック複合体2には、MgOが10ppm以上500ppm以下の範囲で含有されている。MgOをこの範囲で含有することにより、青色光から白色光への変換効率が高められ、白色光の発光強度を大きく出来る。
図10及び図11は、セラミック複合体2に含まれるYAl12相とAl相の界面の計測方法例を示す図であり、図10は縦方向での計測を示し、図11は横方向での計測を示している。はじめに図10及び図11に示したように、本実施形態のセラミック複合体2の表面を顕微鏡で撮影した図9の写真を二値化する。次に、縦方向および横方向にそれぞれ5箇所ずつ縦線および横線を引き、縦線および横線と交差するYAl12相とAl相の界面の個数を計測する。なお、図10と図11は共に1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数を計測している。
図10では、5本の縦線とラメラ構造の界面がそれぞれ22箇所、20箇所、19箇所、29箇所、29箇所で交差しており、平均は23.8箇所である。また図11では、5本の横線とラメラ構造の界面がそれぞれ37箇所、31箇所、35箇所、32箇所、37箇所で交差しており、平均は34.4箇所である。したがって、図10及び図11では全体の平均は29.1箇所であり、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は225.6個/mmである。図10及び図11では、YAl12相と前記Al相の界面数の計測に、縦方向と横方向に各5本の線を用いたが、本数に限定はなく1本以上の直線領域での計測でよい。
本実施形態のセラミック複合体2では、Ce含有量を0.1mol%以上5.0mol%以下の範囲で調節している。従って、ラメラ構造にはYAl12相およびAl相の界面が、30個/mm以上800個/mm以下の密度で含まれている。界面が30個/mm未満の場合には、ラメラ構造の緻密さが不十分であり、セラミック複合体2を青色光が透過する間にYAl12相とAl相の界面に入射する回数が減少し、十分に光が散乱されず波長変換や混色の効率が低下してしまう。界面が800個/mmを超える場合には、YAl12相のサイズが小さくなり青色光の波長の数倍程度となってしまうため、均一に青色光を黄色光に波長変換することが困難になってしまうおそれがある。
またセラミック複合体2は、上述したようにEFG法を用いて製造されているため、坩堝5の材料であるモリブデン(Mo)またはタングステン(W)が微量に融液21に溶け出してセラミック複合体2に取り込まれる。したがって、セラミック複合体2には、上記YAl12相とAl相、MgOおよびCeの他に、微量のMoまたはWが含有されている。
セラミック複合体2に含有されるMoまたはWの量は、好ましくは1mol・ppm以上30000mol・ppm以下の範囲であり、さらに好ましくは100mol・ppm以上3000mol・ppm以下の範囲である。EFG法を用いたセラミック複合体2の製造では、坩堝5の材料が融液21に溶け出すことを完全に防止することが不可能であり、MoまたはWの含有量を1mol・ppm未満とすることは非常に困難である。また、MoまたはWの含有量を30000mol・ppmを超えて大きくすると、YAl12相やAl相の結晶性が悪化して波長変換効率が悪化するため好ましくない。MoまたはWの含有量を100mol・ppm以上3000mol・ppm以下に設定すると、これら問題点が解消されると共に、一次光と二次光を均一に散乱して白色光の発光量増加が可能となるため、最も望ましい。したがって、セラミック複合体2に含有されるMoまたはWの含有量を少なくとも1mol・ppm以上30000mol・ppm以下とすることで、微細なラメラ構造を形成して均一に光散乱を行い、発光強度の均一化と変換効率の向上を図ることができる。
坩堝5としてMoまたはW以外の材料を用いると、融点が低いため坩堝5の材料が融液21に溶け出す量が増加し、セラミック複合体2に含有される坩堝5由来の元素含有量が増加するため好ましくない。また、坩堝5を構成する材料としてMoまたはW以外の融点が高い材料を用いることは、原料の融液21との反応性や、坩堝5の成形性等の問題があり好ましくない。したがって、EFG法を用いてセラミック複合体2を製造し、YAl12相とAl相のラメラ構造を微細化するためには、セラミック複合体2にMoまたはWが上記範囲で含まれていることが重要である。
セラミック複合体2の形状やサイズは限定されないが、セラミック複合体2への作業性の悪化防止の点から、幅が0.5mm以上300mm以下で長さが10mm以上1000mm以下の方形状、または直径が0.5mm以上2mm以下の形状が望ましい。上述したように本実施形態のセラミック複合体2はEFG法を用いて製造するため、ダイ9の幅と引き上げる長さを大きくすることで、容易に大面積のセラミック複合体2を得ることが可能である。また、ラメラ構造がYAl12相およびAl相の界面を30個/mm以上800個/mm以下の密度で有していることから、YAl12相とAl相の界面で光が散乱されやすく、大面積であっても均一に面内全域で光を散乱して均一な白色光を得ることができる。
また、セラミック複合体2の厚みは限定されないが、0.1mm以上4.0mm以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.5mm以上2.0mm以下の範囲である。セラミック複合体2の厚みが0.1mm未満である場合には、EFG法では育成制御が困難になり、製造誤差による厚みの影響や、面内での厚みムラの影響が大きくなるため、面内全域で白色光を均一に得ることが困難になる。また、セラミック複合体2に含まれるYAl12相の熱伝導率がAl相の1/4程度しかないため、結晶を厚くすると放熱性が悪化し、表面と内部で温度差が生じやすくなる。よって、セラミック複合体2の厚みが4.0mmより大きい場合には、EFG法による引き上げ時に厚さ方向における外側と内側との温度差が生じやすくなり、コロニー構造が発生しやすくなり、YAl12相とAl相の界面密度が不均一になるため好ましくない。
図12〜図14は、EFG法での引き上げ速度を変化させた際のラメラ構造を示す顕微鏡写真であり、図12は小さい速度で引き上げた場合を示し、図13は中程度の速度で引き上げた場合を示し、図14は大きい速度で引き上げた場合を示している。各々の写真で示されている範囲は、1辺が129μmの正方形である。
(実施例1)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を0.5mol%とし、引き上げ速度を0.035インチ/時(約0.9mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均約4.8箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は37個/mmである。
(実施例2)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を0.5mol%とし、引き上げ速度を0.2インチ/時(約5mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均約11.4箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は88個/mmである。
(実施例3)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を0.3mol%とし、引き上げ速度を1.0インチ/時(約25mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均23.8箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は184.5個/mmである。
(実施例4)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を0.5mol%とし、引き上げ速度を1.0インチ/時(約25mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均約25.5箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は198個/mmである。
(実施例5)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を0.3mol%とし、引き上げ速度を2.0インチ/時(約50mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均40.0箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は310.1個/mmである。
(実施例6)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を0.5mol%とし、引き上げ速度を2.0インチ/時(約50mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均約36箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は279個/mmである。
(実施例7)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を1.0mol%とし、引き上げ速度を2.0インチ/時(約50mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均25.7箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は199.2個/mmである。
(実施例8)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を0.3mol%とし、引き上げ速度を4.0インチ/時(約100mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均52.7箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は408.5個/mmである。
(実施例9)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を0.5mol%とし、引き上げ速度を4.0インチ/時(約100mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均約51箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は395個/mmである。
(実施例10)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を1.0mol%とし、引き上げ速度を4.0インチ/時(約100mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均30.8箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は238.8個/mmである。
(実施例11)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を0.5mol%とし、引き上げ速度を8.0インチ/時(約200mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均72.1箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は559個/mmである。
(実施例12)
セラミック複合体2に含まれるCeの濃度を0.5mol%とし、引き上げ速度を16.0インチ/時(約400mm/時)とした。1辺が129μmの正方形に於けるYAl12相とAl相の界面の個数は、縦方向と横方向で平均103.2箇所であった。したがって、1辺が129μmの正方形に於ける界面の平均密度は790個/mmである。
以上の実施例1〜12に於いて、全ての引き上げ速度で前記平均密度数値が測定されたCe濃度0.5mol%(即ち実施例1,2,4,6,9,11,12)に関する、引き上げ速度と界面平均密度とのグラフを図15に示す。図15のグラフは縦軸、横軸共に対数表示とした。横軸の「育成速度」が引き上げ速度(μm/秒)に相当し、縦軸の「境界数」が界面の平均密度(個/mm)に相当する。なお、グラフではプロット範囲の関係上、実施例12のデータは省略している。
厚みが0.5mmのセラミック複合体2の実施例1〜10に対して、波長450nmの青色光を照射したところ、いずれの実施例でも外部に照射される光は均一な白色光であった。
図12〜図14に示したように、実施例1〜12ではYAl12相とAl相での光の散乱が均一で、均一な波長変換効率と白色光の均一さを得ることができた。また、EFG法でのセラミック複合体2の引き上げ速度を大きくすることで、YAl12相とAl相の界面密度が多くなる傾向が確認できた。さらに、Ce濃度を高めに設定して、0.01mol%以上5.0mol%以下の範囲としても、ラメラ構造の微細化は維持されることが確認できた。
図15から、引き上げ速度が大きいほど界面密度が大きくなり、光を均一に散乱することができて好ましいが、500mm/時間(約140μm/秒)より大きいと界面密度が大きくなりすぎて、かえって散乱が生じにくくなるため好ましくない。
また、引き上げ速度が400mm/時間(約110μm/秒)より大きい場合には、融液溜まり22の温度を制御することが困難になるため、ラメラ構造のサイズを制御することも困難になる。また、引き上げ速度が大きすぎると、融液溜まり22の融液21が種結晶17やネック25、直胴部分26から分離して成長が中断する可能性が高くなるため好ましくない。
以上に述べたように、本実施形態のセラミック複合体2では、ラメラ構造にYAl12相およびAl相の界面が30個/mm以上800個/mm以下の密度で含まれているため、一次光と波長変換された二次光を均一に散乱して、波長変換効率を向上させることが可能となる。
また本発明では、EFG法によりセラミック複合体2を育成成長させる事により、種結晶の引き上げ速度を0.9mm/時間以上400mm/時間以下の範囲内で変動させると共に、Ceをセラミック複合体2に含有させても、コロニー構造の発生を防止する事が出来る。コロニー構造とはラメラ構造の相間隔の短い複数の相が密に存在する部分が、相間隔の長い複数の相が疎に存在する部分によって囲まれている構造である。そのようなコロニー構造は、図9〜図14に示すように、本実施形態及び実施例では何れも発生が確認されなかった。従って、セラミック複合体2に於ける白色光の発光ムラが防止可能となる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
1…製造装置
2…セラミック複合体
3…育成容器
4…引き上げ容器
5…坩堝
6…坩堝駆動部
7…ヒータ
8…電極
9…ダイ
10…断熱材
11…雰囲気ガス導入口
12…排気口
13…シャフト
14…シャフト駆動部
15…ゲートバルブ
16…基板出入口
17…種結晶
18…仕切り板
19…スリット
21…融液
23…切り欠き部
24…切り欠き穴
26…直胴部分
30…斜面

Claims (6)

  1. 少なくともYAl12相およびAl相の2つの酸化物相をラメラ構造として有し、
    MgOが10ppm以上500ppm以下含有されており、
    前記ラメラ構造は、前記YAl12相および前記Al相の界面が、30個/mm以上800個/mm以下の密度で含まれていることを特徴とするセラミック複合体。
  2. Mo又はWが含有されており、
    前記MoまたはWの含有量が、1mol・ppm以上30000mol・ppm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のセラミック複合体。
  3. 前記YAl12相がCeで付活されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のセラミック複合体。
  4. 前記Ceの含有量が、0.01mol%以上5.0mol%以下であることを特徴とする、請求項3に記載のセラミック複合体。
  5. 厚みが0.5mm以上2.0mm以下であることを特徴とする、請求項1から4の何れか一つに記載のセラミック複合体。
  6. 前記セラミック複合体の平面方向の形状は、
    幅が0.5mm以上300mm以下で長さが10mm以上1000mm以下の方形状、または直径が0.5mm以上2mm以下の形状であることを特徴とする請求項1から5の何れか一つに記載のセラミック複合体。
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