JP2021037181A - 生体接着材及びその製造方法 - Google Patents

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康晴 長谷川
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只 小林
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崇 穐元
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Abstract

【課題】関節、筋肉、靱帯、腱、及び肺などの可動域の大きい患部の動きに追随できる伸縮性を有し、かつ生体組織に対して優れた接着性を有し、癒着防止材として好適に使用可能な生体接着材、及びその製造方法を提供する。【解決手段】癒着防止層と、該癒着防止層上の親水化表面処理層と、該親水化表面処理層上の接着層とを有し、上記親水化表面処理層がアミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含み、上記接着層が縮合剤で表面処理されている、生体接着材。【選択図】図1

Description

本発明は、生体組織の癒着を防止するために好適に使用できるシート型の生体接着材、及びその製造方法に関する。
手術技術の低侵襲化が進むなか、生体組織の癒着を防止することは、ますます重要な課題となっている。生体組織の癒着とは、受傷時又は外科手術時に患部が炎症を起こし、炎症部位が治癒する過程で、本来離れているべき生体組織同士が結合して離れなくなってしまう現象を意味する。癒着は、傷口から線維帯が伸びて、近傍にある生体組織と架橋が生じることで起こる。卵管癒着による不妊症、及び消化管の癒着による腸閉塞などの合併症を引き起こす。そのため、生体組織の癒着を防止する様々な方法が検討されている。
生体組織の癒着を防止する最も一般的な方法として、患部を縫合した後に、癒着防止効果や治癒遅延防止効果を有する材料を用いて生体組織同士を物理的に分離する方法が挙げられる。この方法において、癒着防止材は、損傷した組織が治癒するまでの2週間程度の間に生体内で吸収されることが好ましい。代表的に、癒着防止材としては、体内でゲル化するシート型、及びスプレーで散布するスプレー型が知られている。なかでも、シート型の癒着防止材は、主に、腹部及び骨盤の開腹手術時に使用されているが、その他の患部への適用は限定的である。
シート型の癒着防止材は、患部から剥がれるか、又は患部からずれると、十分な癒着防止効果を発揮できない。そのため、腹部及び骨盤における患部に限らず、関節、筋肉、靱帯、腱、及び肺などの可動域が大きい患部にも適用可能とする観点から、シート型の癒着防止材は、患部の動きに十分に追随できる伸縮性を有し、かつ生体組織の所定の箇所に止まる接着性を有することが好ましい。
国際公開第2015/194616号公報 国際公開第2018/062464号公報 特開2011−160994号公報
これに対し、特許文献1は、水溶性樹脂(A)を含む繊維構造体(B)の少なくとも一面に、厚みが10nm〜50nmのポリ乳酸系樹脂を含む層(C)を1層以上有し、癒着防止材として使用できる積層体を開示している。また、特許文献2は、水溶性ポリマーを含み、厚さが1〜1000μmの水溶性支持層と、生分解性ポリマーを含み、厚さが10〜1000nmの癒着防止層とを有する癒着防止材を開示している。さらに、特許文献3は、生体吸収性材料からなるシート基材の片面のみにアルデヒド基などの接着性官能基を有する生体吸収性癒着防止材を開示している。
しかし、特許文献1における水溶性樹脂を含む繊維構造体、及び特許文献2における水溶性支持層は、生体内で容易に溶解する材料から構成される。そのため、癒着防止材を可動域の大きい患部に適用した場合、損傷した組織が治癒するまでの、例えば、約2週間の間、癒着防止材を所定の箇所に固定するための十分な接着性を得ることは困難である。
一方、特許文献3の癒着防止材は、生体組織の表面に存在するアミノ基と接着性官能基との反応によって、生体組織に対して優れた接着性を示す。しかし、シート基材にアルデヒド基を導入するために使用するアルデヒド化合物は毒性であり、癒着防止材は保存安定性に乏しい傾向がある。また、そもそも、従来のシート型の癒着防止材は、伸縮性が十分でなく、患部の動きに対する追随性の向上が望まれている。
このように、関節、筋肉、腱、靱帯、及び肺などの可動域が大きい患部への適用を想定した場合、伸縮性及び接着性の観点で満足できるシート型の癒着防止材は未だ存在せず、さらなる改善が望まれている。
したがって、本発明は、上述の状況に鑑み、可動域の大きい患部の動きにも追随できる伸縮性を有し、かつ生体組織に対して優れた接着性を有し、癒着防止材として好適に使用可能な生体接着材、及びその製造方法を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するために、生体組織の癒着を防止するための癒着防止層と、生体組織への接着性を付与するための接着層とを含む積層体から構成される癒着防止材の構造及び構成材料について鋭意検討を行い、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の実施形態に関するが、これらに限定されることなく様々な形態を含む。
一実施形態は、癒着防止層と、該癒着防止層上の親水化表面処理層と、該親水化表面処理層上の接着層とを有し、上記親水化表面処理層がアミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含み、上記接着層が縮合剤で表面処理されている、生体接着材に関する。
上記アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物は、キトサンを含むことが好ましい。
上記親水化表面処理層は、第1の層と第2の層との交互積層膜であり、上記第1の層は前記アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含み、上記第2の層はアニオン性生体適合性化合物を含むことが好ましい。
上記実施形態の生体接着材は、上記接着層の表面に、さらに溶解層を有することが好ましい。上記溶解層は、90〜5,000の平均重合度を有する水溶性樹脂を含むことが好ましい。
上記接着層の厚さは、300μm以下であることが好ましい。
上記癒着防止層は、ポリ乳酸、及び乳酸とその他の単量体成分との共重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。
上記接着層は、カルボキシメチルセルロース又はその塩を含むことが好ましい。
上記縮合剤は、カルボジイミド系縮合剤、又はトリアジン系縮合剤を含むことが好ましい。
他の実施形態は、癒着防止層と、該癒着防止層上の親水化表面処理層と、該親水化表面処理層上の接着層とを有する生体接着材の製造方法であって、上記親水化表面処理層を、アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含む第1の溶液と、アニオン性生体適合性化合物を含む第2の溶液とを用いた交互積層法によって形成すること、上記接着層に対して縮合剤を含む溶液を用いて表面処理を行うことを含む、生体接着材の製造方法に関する。
本発明によれば、患部の動きに追随できる伸縮性を有し、かつ生体組織に対して優れた接着性を有し、癒着防止材として好適に使用可能な生体接着材、及びその製造方法を提供することができる。
図1は、一実施形態の生体接着材の構造例を示す側面図である。 図2は、図1に示した生体接着材の親水化表面処理層の一部(A部)を拡大して示した側面図である。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態を含む。
<生体接着材>
一実施形態は、図1に示すように、癒着防止層1と、該癒着防止層1上の親水化表面処理層2と、該親水化表面処理層2上の接着層3とを有し、上記親水化表面処理層2が、アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含む、生体接着材10に関する。
上記実施形態の「生体接着材」は、3以上の機能層から構成される積層体であり、生体内で使用することができる材料から構成される。生体接着材は、積層体の一方の面が生体組織に対して接着性を有することで所定の箇所からのずれが抑制されるため、他面を構成する癒着防止層による効果を容易に得ることができる。以下、生体接着材を構成する各層について具体的に説明する。
(癒着防止層)
上記生体接着材において、癒着防止層は、損傷した生体組織と、その近傍にある別の生体組織とを物理的に遮蔽し、生体組織同士の癒着を阻害する機能を有する層を意味する。癒着防止層は、生体組織の癒着を防止できる当技術分野で公知の生体適合性材料から構成することができる。
ここで、「生体適合性材料」とは、生体組織及び器官などと親和性を有し、異物反応及び拒絶反応などを起こさない性質を有する材料を意味する。生体適合性材料は、フッ素系化合物などの生体内で分解されない材料であってもよいが、生体内で分解される材料であることが好ましい。なかでも、生体内で分解され、かつ吸収される生体吸収性高分子化合物がより好ましく、天然高分子化合物、及び合成高分子化合物のいずれであってもよい。
上記天然高分子化合物の具体例として、好ましくは、酸化セルロース、及びカルボキシメチルセルロースなどを含む、セルロース誘導体が挙げられる。合成高分子化合物の具体例として、好ましくは、乳酸、ポリグリコール酸、カプロラクトン、グリコリド、トリメチレンカーボネート、又はジオキサノンの単独重合体、あるいはこれらの共重合体が挙げられる。なかでも、乳酸の単独重合体であるポリ乳酸、又は乳酸と他の単量体成分との共重合体が好ましい。上記ポリ乳酸は、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、及びポリ−DL−乳酸からなる群から選択される1種以上を含んでよい。
一実施形態において、癒着防止層は、伸縮性の観点から、ポリ乳酸、及び乳酸とその他の単量体成分との共重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。上記共重合体の具体例として、乳酸とカプロラクトンとの共重合体が挙げられる。特に限定するものではないが、乳酸とカプロラクトンとの共重合体を使用した場合、より優れた伸縮性を容易に得ることができる点で好ましい。乳酸とカプロラクトンとの共重合体は、公知の方法に従って製造することができるが、市販品として入手することもできる。例えば、コービオン株式会社製のPURASОRB(登録商標)PLC 7015が挙げられる。
一実施形態において、癒着防止層を構成する生体吸収性高分子化合物の重量平均分子量は、癒着防止層において伸縮性などの優れた機械的特性を得る観点から、好ましくは30,000以上であってよく、より好ましくは50,000以上であってよく、さらに好ましくは80,000以上であってよく、特に好ましくは100,000以上であってよい。一方、取扱い性の観点から、上記重量平均分子量は、好ましくは600,000以下であってよく、より好ましくは500,000以下であってよく、さらに好ましくは400,000以下であってよい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミゲーションクロマトグラフィ(GPC)でクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算法にて計算して得た値を意味する。
癒着防止層は、所望とされる伸縮性などの特性を低下させない範囲で、必要に応じて、上記生体吸収性高分子化合物以外の成分をさらに含んでもよい。癒着防止層は、例えば、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、着色剤などの各種添加剤をさらに含んでよい。
癒着防止層の厚さは、特に限定されず、生体接着材を適用する部位(患部)、及び所望される生体吸収期間などを考慮して、適宜設定することができる。一実施形態において、癒着防止層の厚さは、好ましくは10〜500μmであってよく、より好ましくは20〜300μmであってよく、さらに好ましくは30〜200μmであってよい。癒着防止層の厚さを上記範囲内に調整した場合、取扱い性に優れるとともに、患部の動きに対する優れた追随性を容易に得ることができる。
(親水化表面処理層)
上記生体接着材において「親水化表面処理層」とは、癒着防止層の上に設けられ、癒着防止層の表面を親水化することで、後述する接着層との密着性を高める機能を有する層を意味する。親水化表面処理層は、少なくとも、アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含む。
本明細書において「アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物」とは、分子内に1以上のアミノ基を有し、アミノ基がプロトン化されて化合物全体がカチオン性を有し、かつ生体適合性を有する化合物を意味する。ここで、「生体適合性化合物」とは、先に説明した「生体適合性材料」と同様に定義され、好ましくは、生体吸収性高分子化合物であってよい。
機械的特性及び作業性の観点から、癒着防止層は、生体吸収性高分子化合物などの疎水性材料から構成されることが好ましい。一方、接着層は親水性材料から構成されることが好ましい。しかし、疎水性の癒着防止層と、親水性の接着層とを積層した場合、界面で剥離が生じやすくなる。このような剥離を抑制するために癒着防止層と接着層との間に粘着層を設ける方法が考えられるが、十分な粘着性を発現させる観点から粘着層には厚みが要求される。そのため、粘着層を介して癒着防止層と接着層とを積層して得られる癒着防止材は、癒着防止材としての柔軟性及び追随性が低下しやすい。
これに対し、上記実施形態の生体接着材では、癒着防止層と接着層との間にアミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含む親水化表面処理層を設けることを特徴とする。親水化表面処理層の形成は、アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を使用して癒着防止層又は接着層と同等の膜厚を有する層を構成することを意図するものではない。
一実施形態において、親水化表面処理層は、少なくともアミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を用いて癒着防止層の表面を処理することによって得られる微視的な膜(超薄膜)であってよい。理論によって拘束するものではないが、このような超薄膜では、表面にナノレベルのカチオン分子が配列し、静電的な相互作用によって疎水性の癒着防止層表面と結合すると考えられる。そのため、親水化表面処理層によって癒着防止層の表面が改質されるとともに、癒着防止層と接着層との剥離の発生が抑制され、所望とする特性を有する積層体を提供できると考えられる。
一実施形態において、親水化表面処理層は、アミノ基含有カチオン性生体吸収性高分子化合物を含むことが好ましい。一実施形態において、上記生体吸収性高分子化合物は、分子内に2以上のアミノ基を有し、かつ2以上の水酸基を有することが好ましい。
アミノ基の具体例として、無置換のアミノ基、メチルアミノ基及びエチルアミノ基などのモノアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基などのジアルキルアミノ基、グアニジノ基などが挙げられる。アミノ基は、プロトンが配位結合した−NH であってもよい。
アミノ基含有カチオン性生体吸収性高分子化合物の具体例として、コラーゲン、ポリヒスチジン、アイオネン、キトサン、アミノ化セルロースなどの塩基性多糖類;ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンとの共重合体などの塩基性アミノ酸の単独重合体及び共重合体;ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジビニルピリジンなどの塩基性ビニルポリマー;並びにこれらの塩酸塩、及び酢酸塩などの塩類、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
なかでも塩基性多糖類が好ましく、キトサンがより好ましい。キトサンはキチンの脱アセチル化物である。生体吸収性及び水溶性の観点から、脱アセチル化度は、40〜100%の範囲内であることが好ましく、45〜90%の範囲内であることがより好ましく、50〜80%の範囲内であることがさらに好ましい。
親水化表面処理層を構成するアミノ基含有カチオン性の生体吸収性高分子化合物の重量平均分子量は、特に限定されない。一実施形態において、上記重量平均分子量は、好ましくは10,000〜200,000であってよい。
癒着防止層の表面に対して十分な親水性を付与する観点から、アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を用いた癒着防止層の表面処理を繰り返すことが好ましい。しかし、実際のところ、表面処理後に形成される超薄膜はカチオン性の膜であるため、カチオン性の膜の上にカチオン性の膜をさらに吸着させることは困難である。
このようなことから、一実施形態において、上記親水化表面処理層は、図2に示すように、アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含む第1の層2aと、アニオン性生体適合性化合物を含む第2の層2bとが交互に積層されてなる多層構造の超薄膜(以下、交互積層膜という)として構成されることが好ましい。すなわち、上記親水化表面処理層はカチオン膜/アニオン膜の交互積層膜であってよい。
上記交互積層膜のアニオン性の層は、アニオン性生体適合性化合物を使用して構成することができる。本明細書において「アニオン性生体適合性化合物」とは、分子内に酸性の官能基を1つ以上有する生体適合性化合物を意味する。ここで、「酸性の官能基」とは、水中でアニオン性を示す、例えば、カルボン酸、水酸基、リン酸、及び亜リン酸が挙げられ、これらの塩であってもよい。「生体適合性化合物」とは、先に説明した「生体適合性材料」と同様に定義され、好ましくは、生体吸収性高分子化合物であってよい。
一実施形態において、上記交互積層膜のアニオン性の層を構成するアニオン性生体適合性高分子化合物の具体例として、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸;ペクチン、サクランなどのカルボキシル基、カルボキシレート基又は硫酸基などのアニオン性の基を有する天然の酸性多糖類及びその誘導体;及びセルロース、デキストラン、デンプンなどの天然ではカルボキシル基、カルボキシレート基又は硫酸などのアニオン性基を持たない多糖類にアニオン性基を結合させて人工的に合成した酸性多糖類及びその誘導体が挙げられる。
人工的に合成した酸性多糖類及びその誘導体の具体例として、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキトサン、硫酸化セルロース及び硫酸化デキストラン並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
上記アニオン性生体適合性高分子化合物の他の具体例として、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、グルタミン酸とアスパラギン酸との共重合体などの酸性アミノ酸の単独重合体及び共重合体;ポリアクリル酸などの酸性ビニルポリマーが挙げられる。
上記アニオン性生体適合性高分子化合物は、上述の化合物の塩であってもよい。例えば、酸性多糖類の塩又は酸性多糖類の誘導体の塩は、ナトリウム塩、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩であってよい。
一実施形態において、上記交互積層膜のアニオン性の層を構成するアニオン性生体適合性高分子化合物として、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はそのアルカリ金属塩を使用することが好ましい。CMC又はそのアルカリ金属塩を使用した場合、カチオン性の層に対して優れた吸着性を有するアニオン性の層を容易に形成することができる。
上記アニオン性生体適合性高分子化合物の重量平均分子量は、特に限定されない。一実施形態において、好ましくは1,000〜200,000であってよく、より好ましくは10,000〜150,000であってよく、さらに好ましくは10,000〜100,000であってよい。
一実施形態において、アニオン性生体適合性高分子化合物としてCMCを使用する場合、例えば、CMCのエーテル化度は0.5〜1.5であることが好ましく、0.5〜1であることがより好ましい。また、CMCの質量は、プルランを指標として、20,000〜2,000,000Daであることが好ましく、20,000〜1,000,000Daであることがより好ましい。
(接着層)
接着層は、生体接着材の癒着防止層が、患部から剥離、又は、ずれないように、隣接する生体組織に長期的に接着して生体接着材を固定する機能を有する層を意味する。ここで、隣接する生体組織とは、例えば、コラーゲンを主成分とする骨、腱などの臓器を意味する。また、「長期的」とは、損傷した組織が治癒し、癒着が起こる可能性が低くなるまでの期間を意味し、例えば、約2週間の期間を意味する。すなわち、接着層は、必要に応じて設けられる後述の溶解層よりも、より長い期間にわたって接着性を維持することができる材料を用いて構成することが好ましい。
接着層は、当技術分野で公知の生体適合性材料から選択して構成することができる。ここで生体適合性材料とは、先の説明と同じ定義である。接着層を構成するために使用可能な材料の具体例として、好ましくは、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒアルロン酸、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、トロンビン、及びフィブリノゲン、並びにこれらの塩などの生体適合性の高い材料が挙げられる。なかでも、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びこれらの塩などの非動物由来の材料が好ましい。また、接着層を構成するために使用する材料は、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの反応性官能基を有することが好ましい。このような観点から、一実施形態において、接着層は、少なくともカルボキシメチルセルロース(CMC)又はそのアルカリ金属塩を含むことが好ましい。
接着層は、CMC又はそのアルカリ金属塩を用いて形成される単層構造であってよいが、2以上の層から形成される多層構造であってもよい。CMC又はそのアルカリ金属塩を用いて形成される層(以下、CMC層)と、その他の材料を用いて形成される層とを組み合わせた場合、柔軟性などの特性を容易に調整することができる。例えば、生体適合性及び生体組織への親和性との観点から、CMC層と、キトサンを用いて形成される層(以下、キトサン層)とを組み合わせることが好ましく、CMC層/キトサン層の積層を繰り返して多層構造の接着層を形成することがさらに好ましい。
すなわち、一実施形態において、接着層は、上記親水化表面処理層を構成するための交互積層膜と同じ材料から構成されてよいが、成膜方法及び膜厚によって区別される。接着層は、交互積層法ではなく、通常の成膜方法によって得られる塗膜から構成され、塗膜は目視によって確認可能な厚さを有する。通常の成膜方法に従って癒着防止層の表面に塗膜を直接形成した場合、上記交互積層膜と同じ材料を使用したとしても、癒着防止層と接着層との剥離を改善することは困難である。
上記接着層の厚さは、特に限定されず、生体接着材を適用する部位(患部)、及び所望される生体吸収期間などを考慮して、適宜設定することができる。一実施形態において、接着層の厚さは、取扱い性の観点から、好ましくは10μm以上であってよく、より好ましくは20μmであってよく、さらに好ましくは100μm以上であってよい。一方、接着層の厚さが大きすぎると、生体組織及び癒着防止層から剥がれやすくなる。このような剥離を抑止する観点から、接着層の厚さは、好ましくは300μm以下であってよく、250μm以下であってよく、さらに好ましくは200μ以下であってよい。接着層が多層構造である場合、多層構造の全体の厚さを上記範囲内に調整することが好ましい。
本実施形態において、上述のように構成される接着層は、縮合剤で表面処理されていることを特徴とする。接着層の表面が縮合剤で処理されることによって、接着層の接着性を高めることができる。ここで、縮合剤とは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、及びアミノ基などの反応性官能基と反応可能な化合物である。なかでも、接着層におけるカルボキシル基と反応可能な化合物(以下、カルボニル縮合剤という)が好ましい。
上述の観点から、多層構造の接着層を形成する場合、その最外層はカルボキシル基、及びヒドロキシル基などの反応性官能基を有することが好ましく、カルボキシル基を有することがより好ましい。したがって、一実施形態において、接着層の最外層は、少なくともカルボキシメチルセルロース(CMC)又はそのアルカリ金属塩を用いて形成されることが好ましい。
カルボニル縮合剤は、カルボキシル基と反応し、カルボニルという活性の高い脱離基を有するカルボニル中間体を形成する。カルボニル縮合剤を用いた処理後に得られるカルボニル中間体は、アルコール化合物又はアミン化合物と反応することで、エステル又はアミドといったカルボン酸誘導体を形成する。そのため、生体組織等の被着体に対する接着性の向上が可能となる。
カルボニル縮合剤は、カルボキシル基と反応可能である一方で、アミノ基と速やかに反応可能であることが好ましい。特に限定されないが、カルボニル縮合剤の具体例として、ベンゾトリアゾール−1−オキシトリスジメチルアミノホスホニウム、O−ベンゾトリアゾリル−N,N−テトラメチルウロニウム、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、1−メチル−2−ハロピリジニウムアイオダイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイド、エチル2−シアノ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテート、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、N−メチルピペラジン誘導体、及び、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1,3−ビス(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド系縮合剤、並びに4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルフォルニウムクロリド(DMT−MM)などのトリアジン系縮合剤が好ましい。
なかでも、カルボジイミド系縮合剤、又はトリアジン系縮合剤がより好ましい。これらは、接着層の表面処理後に余剰分を生理食塩水で容易に洗浄除去することができる。カルボジイミド系縮合剤のなかでも、1,3−ビス(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)カルボジイミドなどの水溶性カルボジイミドがより好ましい。一実施形態において、カルボニル縮合剤としてトリアジン系縮合剤であるDMT−MMが最も好ましい。
上述のように、生体接着材は、癒着防止層と、該癒着防止層上の親水化表面処理層と、該親水化表面処理層上の接着層とを有する積層体であってよいが、必要に応じて、接着層の上に溶解層をさらに有してもよい。以下、溶解層について説明する。
(溶解層)
溶解層は、生体接着材の保存安定性を向上させるとともに、生体接着材を生体内に挿入し、所定の箇所に設ける際に生体組織と一時的に接着することで取扱い性を向上させる機能を有する層である。溶解層は、生体組織に接着させた後に容易に剥離することができるため、溶解層を設けることで、手術時に生体接着材を貼り直すことが容易となる。溶解層は、例えば、従来の癒着防止材の接着層に用いられる公知の水溶性樹脂から構成することができる。
水溶性樹脂の具体例として、ポリビニルアルコール又はその共重合体、プルラン、ポリエチレングリコール、ポリ(2−オキサゾリン)が挙げられる。なかでも、製造コスト及び入手の容易さの観点から、ポリビニルアルコール、又はプルランを好適に使用することができる。
一実施形態おいて、ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは90〜5,000であってよく、より好ましくは1,000〜3,000であってよく、さらに好ましくは1,000〜2,000であってよい。
溶解層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜500μmであってよく、より好ましくは1〜300μmであってよく、さらに好ましくは10〜200μmであってよい。溶解層の厚さを上記範囲内に調整した場合、生体内への挿入前、及び挿入後の取り扱い性に優れた癒着防止材を容易に得ることができる。
一実施形態において、溶解層は、生体接着材を生体組織に一時的に接着できればよく、一定時間内に溶解することが好ましい。例えば、生体内をモデル化した水中での溶解試験において、溶解に要する時間は、1〜20分が好ましく、2〜15分がより好ましく、3〜10分がさらに好ましい。本実施形態の生体接着材は、溶解層が溶解した後、引き続き接着層によって生体組織の特定の箇所に維持されることになる。
<生体接着材の製造方法>
一実施形態は、癒着防止層と、該癒着防止層上の親水化表面処理層と、該親水化表面処理層上の接着層とを有する生体接着材の製造方法に関する。本実施形態において、上記親水化表面処理層の形成は、アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含む第1の溶液と、アニオン性生体適合性化合物を含む第2の溶液とを用いた交互積層法によって実施することを含むことが好ましい。また、上記接着層の形成後に、接着層に対し、縮合剤を用いた表面処理を実施することを含むことが好ましい。一方、癒着防止層及び接着層の形成は、特に限定されることなく、公知の成膜方法に従って実施することができる。例えば、適用可能な成膜方法として、キャスト法、ディップコート法、スピンコート法、及びスプレー法などが挙げられる。
親水化表面処理層の形成は、カチオン性溶液とアニオン性溶液とを使用する公知の交互積層法に従って実施することができる。アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含む第1の溶液(ポリカチオン性溶液)は、先に説明したアミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を溶媒に溶解することによって得られる。また、アニオン性生体適合性化合物を含む第2の溶液(ポリアニオン性溶液)は、先に説明したアニオン性生体適合性化合物を溶媒に溶解することによって得られる。
第1及び第2の溶液を調製するために使用する溶媒は、それぞれ特に限定されず、任意の溶媒を単独で又は組み合わせて使用することができる。一実施形態において、電荷量をより多くすることができることから、溶媒として、水、有機酸又は無機酸の水溶液を好適に使用することができる。一実施形態において、酢酸及びリンゴ酸などの弱酸性の有機酸の水溶液を好適に使用することができる。
親水化表面処理層を構成する交互積層膜は、具体的には、ガラス板の片面に作製した癒着防止層を、先ず、(S1)ポリカチオン溶液に浸漬し、(S2)溶媒で洗浄する。ポリカチオン溶液に浸漬することによって、癒着防止層の表面にポリカチオンの微視的な膜が形成され、表面を溶媒で洗浄することによって余剰のポリカチオン溶液が除去される。表面を洗浄する溶媒として、超純水を好適に使用することができる。
次に、(S3)ポリアニオン溶液に浸漬し、(S4)溶媒で洗浄する。ポリアニオン溶液に浸漬することによって、上記ポリカチオンの微視的な膜の表面にポリアニオンが吸着し、微視的な膜が形成され、表面を溶媒で洗浄することによって余剰のポリカチオン溶液が除去される。表面を洗浄する溶媒として、超純水を好適に使用することができる。
上記(S1)〜(S4)の一連の工程を繰り返すことによって、ポリカチオン/ポリアニオンの交互積層膜を得ることができる。交互積層膜の形成は、例えば、IR、NMR、TOF−SIMS(飛行時間型2次イオン質量分析、Time−of−Flight−SIMS)などによって観察及び確認することができる。
ポリカチオン溶液及びポリアニオン溶液への浸漬を交互に繰り返すことによって、交互積層膜の厚さを制御することができる。特に限定するものではないが、各溶液への浸漬をそれぞれ1〜100回繰り返すことが好ましく、20〜100回繰り返すことがより好ましく、50〜100回繰り返すことがさらに好ましい。一実施形態において、交互積層膜の膜厚は、好ましくは1〜1000nmであってよく、より好ましくは1〜100nmであってよく、さらに好ましくは5〜100nmであってよい。
上記製造方法において、接着層の形成は、上記親水化表面処理層の形成後に引き続き実施しても、又は別途実施してもよい。すなわち、一実施形態において、接着層は、親水化表面処理層(親水化表面処理した癒着防止層)の表面に接着層を形成する材料を直接塗布して形成することができる。他の実施形態において、接着層は、ガラス板などの支持基板の上に接着層を形成する材料を塗布して接着層となるシート状の膜として形成することができる。この場合、得られたシート状の膜を親水化表面処理層(親水化表面処理した癒着防止層)の表面に積層することによって、癒着防止層/親水化表面処理層/接着層の積層体が得られる。
上記製造方法は、上述のいずれかの方法によって接着層を形成した後に、接着層の表面を縮合剤で処理することを含む。縮合剤による表面処理によって、接着層の接着性をより高めることができる。ここで、縮合剤は、先に説明したとおりである。なかでも、カルボニル縮合剤として、1,3−ビス(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)カルボジイミドなどの水溶性カルボジイミド、又は4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルフォルニウムクロリド(DMT−MM)を好適に使用することができる。一実施形態において、十分な反応性を有すること、及び保存安定性が高いことから、DMT−MMが最も好適である。
接着層に対する縮合剤による表面処理は、例えば、接着層の表面を縮合剤の溶液に浸漬することによって実施することができる。縮合剤による表面処理に用いる溶液を調製するために、溶媒として、水、有機酸又は無機酸の水溶液を好適に使用することができる。一実施形態において、酢酸及びリンゴ酸などの弱酸性の有機酸の水溶液を好適に使用することができる。表面処理に用いる溶液において、縮合剤の濃度は特に限定されない。一実施形態において、縮合剤の濃度は、0.01〜0.5モル/リットルであってよい。一実施形態において、DMT−MM等のカルボニル縮合剤の溶液に浸漬する前に、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、次いで超純水に浸して洗浄する前処理を行うことによって、DMT−MM等の縮合剤の溶液による処理効果を高めることができる。上記前処理は繰り返して実施してもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<1>生体接着材の作製
(実施例1)
(1)癒着防止層の作製
以下、癒着防止層の作製方法の一例を示す。癒着防止層は、以下の方法に限らず、その他の公知の成膜方法に従って作製することも可能である。
ガラス板に離型剤(ナガセケムテックス株式社製のQZ13)を塗布し、150℃で1時間加熱した。その後、表面に残存する離型剤を拭き取り、再び、200℃で1時間加熱し、離型処理済ガラス板を2枚得た。
1枚の離型処理済ガラス板の上に、乳酸とカプロラクトンとの共重合体(コービオン社製のPLC 7015)を500mg供給して成膜した後、ホットプレート上で塗膜を、150℃で15分、170℃で20分、次いで190℃で20分、加熱した。
次に、上記加熱後の塗膜を有するガラス板に対し、テフロンスペーサー(厚さ180μm)を両端に挟んだ状態で、もう1枚の離型処理済ガラス板を上から乗せ、気泡がなくなるように、塗膜に対してゆっくり圧力をかけた。2枚のガラス板の両端をクリップで留めた後、傾けた状態で180℃のオーブンに入れて、4時間加熱した。
オーブンから上記塗膜を有するガラス板を取り出し、スペーサーを取り除いた。次いで、ガラス板を揺動しながら純水に1分漬けた後、ガラス表面から塗膜を剥がし、厚さ190μmの無色透明シートを得た。
(2)接着層の作製
以下、接着層の作製方法の一例を示す。接着層は、以下の方法に限らず、その他の公知の成膜方法に従って作製することも可能である。
スクリュー管にカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)(500mg)と0.1mM酢酸(5mL)を加え、50℃で1時間加熱してCMCNa溶液を得た。別のスクリュー管にキトサン100mg、0.1mM酢酸(5mL)を加え、50℃で1時間加熱した後、ミックスロータ(30rpm)で12時間にわたり撹拌し、キトサン溶液を得た。
テフロンスペーサー(厚さ500mm)をガラス板(5cm×7cm)に接着剤で固定した。このテフロンスぺーサー付のガラス板上にCMCNa溶液を2mL滴下した後、ガラス棒で塗布し、次いで塗膜を80℃で10分加熱することによって、溶媒を留去しCMCNa膜を得た。さらに、その塗膜の上にキトサン溶液を1mL滴下し、先と同様にガラス棒で塗布し、次いで塗膜を80℃で10分加熱することによって、溶媒を留去しキトサン膜を得た。上記CMCNa溶液の塗布及びキトサン溶液の塗布を20セット繰り返し、厚さ150μmのCMCNa/キトサンの積層膜を得た。
(3)親水化表面処理層の作製(癒着防止層の親水化表面処理)
先ず、以下に示すように、交互積層膜を形成するために使用するための溶液をそれぞれ調製した。
ポリカチオン水溶液の調製:キトサン(200mg)を0.005mol/L酢酸100mLに加えた後、ミックスロータで35rpm、18時間にわたり撹拌した。その後、ろ過によって残渣を除き、キトサン溶液を得た。
ポリアニオン水溶液の調製:カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)500mgを、0.005mol/Lリンゴ酸50mLに加えて溶かし、35rpmで1時間にわたって撹拌し、CMCNa溶液を得た。
次に、先にガラス板の片面に作製した癒着防止層を、(S1)上記ポリカチオン水溶液に浸漬、(S2)超純水で洗浄、(S3)ポリアニオン水溶液に浸漬、及び(S4)超純水で洗浄する(S1)〜(S4)の一連の工程を20回繰り返し、次いで、室温で4時間風乾させた。このように、癒着防止層の表面に交互積層膜を設けることによって、親水化表面処理された癒着防止層の構造体を得た。
(4)癒着防止層への接着層の積層
親水化表面処理した癒着防止層を0.1mLの超純水で湿らせた後、癒着防止層の表面全体をキムワイプで拭いて均一に湿らせた。一方、先に作製した接着層(CMCNa/キトサンの積層膜)を癒着防止層と同じ大きさに切り取った。切り取った接着層を癒着防止層の上に設置(上記積層膜の最外層がCMCNa膜となる方向で設置)し、10分間圧縮した後、室温で3時間風乾させ、生体接着材を構成する積層体を得た。
(5)接着層の縮合剤処理
上記(4)で得た積層体を、数秒間にわたり0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸した後、超純水に1分間、3回浸した。次に、0.1mol/Lの(4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルフォリニウムクロリド(DMT−MM)の水溶液に上記積層体を4時間浸した後、3時間風乾した。
(6)溶解層の積層
縮合剤で処理した積層体に厚さ180μmのスペーサーを固定し、平均重合度が約2,000のポリビニルアルコールの飽和溶液を塗布した。塗布を3回繰り返すことで、接着層の上に厚さ10μmの溶解層を形成した。
最後に、ガラス基板から積層体を剥がして、癒着防止層、親水化表面処理層(交互積層膜)、接着層(縮合剤による表面処理あり)、及び溶解層から構成される生体接着材を得た。
(比較例1)
実施例1に記載した生体接着材の作製において、癒着防止層の親水化表面処理を実施しないことを除き、全て実施例1と同様にして、親水化表面処理層(交互積層膜)を持たない生体接着材(積層体)の作製を試みた。しかし、癒着防止層(親水化表面処理なし)の上に接着層を設置する段階で、接着層の剥離が生じ、所望とする生体接着材(積層体)を得ることはできなかった。
(比較例2)
実施例1に記載した生体接着材の作製において、接着層に対する縮合剤による表面処理を実施しないことを除き、全て実施例1と同様について、生体接着材(積層体)を作成した。すなわち、癒着防止層、親水化表面処理層(交互積層膜)、接着層(表面処理なし)、及び溶解層から構成される生体接着材を得た。
<2>生体接着材の評価
(1)伸縮性の評価
実施例1で作製した生体接着材を超純水で十分に湿らし、引っ張り試験(卓上ピール試験器、Shimazu EZ−S)を行った。実施例1の生体接着材は、伸縮率0−200%の領域では、ひずみと引っ張り応力とが一次比例することから、ゴム弾性を示すことが分かった。ヤング率は、近似直線の傾きから1.6MPaと算出された。以上のことから、本発明の実施形態である実施例1の生体接着材は伸縮性を有することが分かる。
(2)生体接着材の水中での評価
実施例1、比較例2で作製した生体接着材を超純水に浸したゼラチンに10秒間押し付けた後に、水中でゆっくり揺動させながら、生体接着材の変化を観察した。この実験を3回行った。
比較例2の生体接着材については、水中に入れた直後に、溶解層と接着層との間で層間剥離が生じた。具体的には、生体接着材は、ゼラチン膜に接着した状態の溶解層と、接着層及び癒着防止層の積層体とに分離した。3回の実験の全てで同じ結果であった。
一方、実施例1の生体接着材については、水中においてゼラチン膜に生体接着材が維持された。ゼラチン膜から生体接着材が剥離するまでの時間を求めたところ、3回の実験について、8分、11分、16分であった。いずれの実験においても、ゼラチン膜からの生体接着材の剥離は、ゼラチン膜と溶解層との間で生じており、生体接着材における層間剥離は確認できなかった。
以上のことから、本発明の実施形態である実施例1の生体接着材は、水中においても層間剥離が抑制されるため、生体組織に対しても好適に適用可能であることが分かる。また、本発明による生体接着材によれば、所望とする癒着防止性と接着性とを実現できることが分かる。
本発明によれば、伸縮性に優れ、かつ生体組織に固定できる接着性を有するシート型の生体接着材、及びその製造方法を提供することができる。この生体接着材は、整形外科及び呼吸器外科などの外科手術の後に生じやすい生体組織の癒着を防止又は軽減するための癒着防止材とし好適に使用でき、退院までの期間を短縮すること、術後の合併症を抑えること、さらに術後の運動機能を改善することが可能となると考えられる。
1:癒着防止層
2:親水化表面処理層(交互積層膜)
2a:第1の層(カチオン膜)
2b:第2の層(アニオン膜)
3:接着層
10:生体接着材

Claims (10)

  1. 癒着防止層と、該癒着防止層上の親水化表面処理層と、該親水化表面処理層上の接着層とを有し、
    前記親水化表面処理層がアミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含み、
    前記接着層が縮合剤で表面処理されている、生体接着材。
  2. 前記アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物が、キトサンを含む、請求項1に記載の生体接着材。
  3. 前記親水化表面処理層が、第1の層と第2の層との交互積層膜であり、前記第1の層が前記アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含み、前記第2の層がアニオン性生体適合性化合物を含む、請求項1又は2に記載の生体接着材。
  4. 前記接着層の表面に、さらに溶解層を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体接着材。
  5. 前記溶解層が、90〜5,000の平均重合度を有する水溶性樹脂を含む、請求項4に記載の生体接着材。
  6. 前記接着層の厚さが、300μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体接着材。
  7. 前記癒着防止層が、ポリ乳酸、及び乳酸とその他の単量体成分との共重合体の少なくとも一方を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体接着材。
  8. 前記接着層が、カルボキシメチルセルロース又はその塩を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体接着材。
  9. 前記縮合剤が、カルボジイミド系縮合剤、又はトリアジン系縮合剤を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の生体接着材。
  10. 癒着防止層と、該癒着防止層上の親水化表面処理層と、該親水化表面処理層上の接着層とを有する生体接着材の製造方法であって、
    前記親水化表面処理層を、アミノ基含有カチオン性生体適合性化合物を含む第1の溶液と、アニオン性生体適合性化合物を含む第2の溶液とを用いた交互積層法によって形成すること、
    前記接着層に対して縮合剤を含む溶液を用いて表面処理を行うことを含む、生体接着材の製造方法。
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