本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示すように農業用の作業車両を構成する乗用型田植機1は、左右の前輪2と後輪3を備える走行機体4の後部に昇降リンク機構5を介して作業機としての植付装置6をローリング自在に連結する。そして、この植付装置6は、走行機体4の後部と昇降リンク機構5の後部に亘って取付ける油圧シリンダ7によって下降させた作業姿勢と上昇させた非作業姿勢に亘って昇降自在に設ける。
なお、後輪3と植付装置6との間には、走行機体4の旋回によって荒れた枕地を均す整地ロータ8を設け、この整地ロータ8は植付装置6と共に昇降するように設ける。一方、走行機体4は、左右のサイドメンバーに複数のクロスメンバーを固着して構成するシャーシフレーム9に、左右のフロントアクスルケース10をその側面にそれぞれ一体に連結するトランスミッションケース11と左右のリヤアクスルケース12等を取付けて一体的に構成する。
また、シャーシフレーム9の前部寄りにエンジンフレームを取付け、このエンジンフレームにエンジン13を搭載する。さらに、エンジン13後方のシャ−シフレーム9に取付けるトランスミッションケース11は、その上面にパワーステアリング装置を構成するトルクジェネレータ14を取付ける。そして、このトルクジェネレータ14には、上方に延出するステアリングシャフト15とこのステアリングシャフト15を内包するステアリングコラム16を立設してトランスミッションケース11に取付ける。また、ステアリングシャフト15の上端部には前輪2を操舵するステアリングホイール17と後述する操舵アクチュエータ18を設ける。
さらに、トルクジェネレータ14の出力シャフトはトランスミッションケース11内に設ける減速歯車装置に連結し、また、この減速歯車装置のセクタシャフトの下端はトランスミッションケース11の下面から下方に突出し、係るセクタシャフトの下端部にピットマンアーム19を取付ける。また、ピットマンアーム19に取付ける左右のドラッグリンク20は、フロントアクスルケース10の両端部に設けるキングピンケース21を介して左右の前輪2を操舵する。
一方、前記ステアリングコラム16の中途部にブラケット22を固着し、このブラケット22の左右に主変速レバー23、副変速レバー24、及びエンジンコントロールレバー25を回動自在に取付け、これ等の基部側を覆うと共に操作スイッチやモニタパネルを備えるパネルカバー26を設ける。また、パネルカバー26の下方側には、スタータスイッチ等を取付けるリヤカバー27を設け、パネルカバー26とリヤカバー27の前方側には、前照灯を備えてエンジン13の後方側と下方側を除いてこれを覆うボンネット28を設ける。
さらに、前記シャーシフレーム9には、合成樹脂製のフロントステップ29とリヤステップ30を設ける。この内、フロントステップ29は、ボンネット28の左右側方となる左右のフロントステップ部29aと、これに続いてリヤカバー27の後方となるフロアステップ部29bを備える。一方、リヤステップ30は、フロアステップ部29bの後部寄りから階段状に立ち上がり、シャーシフレーム9の後部に設けるシートフレームに取付ける。
そして、このリヤステップ30は、その上部中央に運転席31を設け、また、運転席31の左右にはリヤサイドステップ部30aを設ける。なお、フロアステップ部29bの前部中央寄りには株間調節レバーを通す開口を、また、前部右寄りにはブレーキぺダル32を通す開口を設ける。なお、33はフロアステップ部29bの左右に設ける延長ステップであって、この右延長ステップ33と右リヤサイドステップ部30aの下方にはエンジン13の燃料タンクを設ける。
ここで、乗用型田植機1の動力伝達系について簡単に説明すると、エンジン13は伝動ベルトを介してトランスミッションケース11の左側面に取付けるHST(静油圧式無段変速装置:主変速装置)34を駆動する。また、HST34からトランスミッションケース11内に伝達された動力は、トランスミッションケース11内に設ける歯車変速装置によって構成する副変速装置、及び前輪2の差動歯車装置を経由して、左右のフロントアクスルケース10及びキングピンケース21内に設ける伝動軸を介して左右の前輪2を駆動する。さらに、副変速装置からリヤアクスルケース12内に設ける左右の湿式ディスク型のサイドクラッチを介して後輪3を駆動する。
なお、副変速装置から左右のサイドクラッチに動力を伝達する伝動軸にはディスクブレーキを設け、前述のブレーキぺダル32を踏み込むと主変速レバー23は中立位置に戻ってHST34は中立となり、また、ディスクブレーキが作動して前輪2と後輪3に四輪ブレーキがかかる。さらに、ピットマンアーム19と左右のサイドクラッチはロッドによって連結し、乗用型田植機1を枕地で旋回させる際にステアリングホイール17を所定量以上回転させると旋回内側となるサイドクラッチが切られて、その側の後輪3は自由回転状態になる。
また、植付装置6への伝動は、トランスミッションケース11内に設けるトルクリミッタと植付クラッチを介して株間変速装置を駆動する。そして、株間変速装置からドライブシャフトを介して植付装置6のドライブケースに設ける植付入力シャフトを駆動する。なお、整地ロータ8は走行系のディスクブレーキと左右のサイドクラッチの間から分岐した動力をロータクラッチとロータドライブシャフトを介してロータドライブケース内に設ける伝動軸によって駆動する。
ここで、植付装置6の構造について簡単に説明すると、この植付装置6は8条植えとなして走行機体4の後部にローリング自在に連結する植付フレームを備える。また、植付フレームには前高後低状に傾斜して複数のマット苗を載置する苗載台35、苗載台35の下端から1株分ずつ苗を植付爪36により掻き取って田面に植付けるロータリ植付機構37、走行跡や旋回跡を整地しながら植付け箇所を均すフロート38等を備えて構成する。
そして、前述のドライブケースに入った動力によってスクリュシャフトを回転させて苗載台35を左右往復スライド移動させる。また、ドライブケースに入った動力によってロータリ植付機構37を構成するプランタケースに動力を伝達し、ロータリケースを回転駆動する。また、ロータリケースに取付けたプランタアームに装着した植付爪36が苗載台35の下端から1株分ずつ苗を掻き取ると共に、掻き取った苗をフォークで押出して苗を田面に植付ける。
なお、次行程における作業走行の目印を田面に付ける左右のマーカー39は、前輪2の上方のシャーシフレーム9に設ける。このマーカー39はその基部を回動自在に支持する支持杆40の先端部に回転自在に取付け、マーカー駆動モータ41が支持杆40を作動させることによってマーカー39は、田面に接地してマーキングする作用位置とシャーシフレーム9の上方に退避した非作用位置に切換えることができる。また、シャーシフレーム9の前部にはセンターポール42を前後方向に回動自在に設け、シャーシフレーム9の左右にはトレースマーカー43を設ける。
さらに、乗用型田植機1は、植付装置6によって苗を植付けると同時に土中に肥料を撒くペースト施肥機を設ける。このペースト施肥機は左右前輪2の上方となるシャーシフレーム9に取付フレーム44を介して取付ける左右の肥料タンク45を備える。また、この肥料タンク45に貯留する肥料をホースで施肥ポンプに供給し、施肥ポンプは中途に設けるストップバルブやインジケータを経由して植付装置6のフロート38近傍に取付ける各条毎のノズルに肥料を圧送し、植付けた苗nの側方の土中に肥料を吐出する。
なお、乗用型田植機1は、ペースト施肥機に替えて粒状施肥機を設けることができる。その場合、粒状施肥機はリヤサイドステップ部30aの後部に取付フレームを設け、この取付フレームに粒状肥料を貯留するホッパと肥料の繰出装置と繰出装置の目皿ロールから繰出した肥料をエアーで圧送するブロアを設ける。そして、エアと共に圧送した肥料は各条毎にホースを介してホース端末に設ける作溝仕組に搬送し、それによって肥料を植付装置6で植付けた苗nの側方の土中に撒くことができる。
一方、乗用型田植機1は、予備苗台やスライド式予備苗台を設ける。そして、実施形態に示す予備苗台46は左右前輪2の上方となるシャーシフレーム9に門型の取付フレーム47を取付け、この取付フレーム47に片側4枚合わせて8枚の載置板48を上方に向けて折り畳み自在に設ける。なお、この8枚の載置板48には苗箱に収容するマット苗を各1枚ずつ載せて植付作業を開始し、その後、苗載台35に供給したマット苗が植付けられて残り僅かになった際に載置板48上のマット苗を取出して苗載台35に補充して植付作業を再開する。
さらに、前述のステアリングホイール17の下方には、植付装置6の昇降操作具を構成する
前後及び上下回動自在なクイックアップレバー49を設ける。そして、このクイックアップレバー49を下方向に1回操作すると植付装置6は下降して作業姿勢となり、更に下方向にもう1回操作すると植付クラッチが入りとなって植付装置6を駆動することができる。また、逆にクイックアップレバー49を上方向に1回操作すると植付装置6の駆動を停止させ、更に上方向にもう1回操作すると植付装置6を上昇させて非作業姿勢とすることができる。
以上、乗用型田植機1の概要について説明したが、次に、GNSS直進自動操舵装置50について説明する。図3及び図4に示すようにGNSS直進自動操舵装置50は、既存の乗用型田植機1に拡張機能を備えた自動操舵装置を後付け可能とし、最高ではないにしても必要な作業精度を十分に備えて非常に安価にGNSSを用いた自動操舵装置を提供するものであり、未熟な作業者でも熟練者並みの直進作業を可能として、作業者の長時間に亘る作業走行における疲労を軽減する。
そのため、GNSS直進自動操舵装置50は、センチメートル級の精度で走行機体(乗用型田植機1)の位置を取得すると共に走行機体の絶対方位を高精度で取得するRTK−GNSS受信装置(Real Time Kinematic Global Navigation Satellite System)51と、RTK−GNSS受信装置51を補完するRTK固定局52と、RTK−GNSS受信装置51が測位した位置情報と方位情報等に基づいて作業目標経路とこの作業目標経路に導くための操舵量を演算するタブレット端末53と、タブレット端末53が演算した操舵量に一致するように左右前輪2を操舵する操舵ユニット54を設ける。
そして、この内、RTK−GNSS受信装置51は、GNSS衛星から出される電波を捉える2つのGNSSアンテナ55、56を予備苗台46の門型の取付フレーム47の上部に左右方向に離して設ける。また、RTK−GNSS受信装置51は、これら2つのGNSSアンテナ55、56が捉えた夫々の衛星から出された信号を受取ってこれを復調して情報を復元する2つのGNSS受信機57、58と、RTK固定局52から出された電波を捉える2つのGNSSアンテナ55、56の間に設ける無線アンテナ59と、この無線アンテナ59が捉えた信号を受取ってこれを復調して情報を復元する特定小電力無線機60を備える。
さらに、RTK−GNSS受信装置51は、走行機体の姿勢を検出する3軸のジャイロと3方向の加速度計からなる慣性計測装置61、タブレット端末53との間で情報を交換するアンテナ内蔵型の近距離無線機62、電子制御ユニット(ECU)によって構成するGNSSコントローラ63、7セグメントLEDで構成するディスプレイ64等を備える。なお、RTK−GNSS受信装置51は、GNSSアンテナ55、56と無線アンテナ59を除いた各機器を単一のボードに纏めてGNSSユニット65に構成し、このGNSSユニット65はGNSSアンテナ55、56等の下方に設ける。
一方、RTK固定局52は、設置高さを確保する三脚とこの三脚の上に設ける衛星から出される電波を捉えるGNSSアンテナ66、GNSSアンテナ66が捉えた衛星から出された信号を受取ってこれを復調して情報を復元するGNSS受信機67、GNSS受信機67が復元した情報をRTK−GNSS受信装置51に向けて発信する特定小電力無線機68とその無線アンテナ69、乾電池で構成する電源バッテリー70等から構成し、例えば、移動局となる乗用型田植機1が作業を行う圃場から300メートル以内で周囲に山や木、高い建物などの障害物がない見通しの良い安定した場所に設置する。
また、タッチパネル付きの液晶ディスプレイを備える薄型軽量のコンピュータであるタブレット端末53は、無線LANを内蔵すると共に、その通信距離を約10メートルとする内臓アンテナ式の近距離無線機71を搭載する。そして、このタブレット端末53は、取付フレーム47の例えば左側中途部にブラケット72を介して取付け、また、必要に応じて乗用型田植機1に備える電源取出しコネクタ等を利用して内臓バッテリに充電しながら使用する。
なお、このタブレット端末53には、GNSS直進自動操舵を行うナビゲションソフトウェアが予めインストールしてあり、このナビゲションソフトウェアがその機能を拡張した場合には、無線LAN等を用いてインターネット上からアップデートすることも可能である。また、タブレット端末53の近距離無線機71とGNSSユニット65の近距離無線機62は予めペアリングを行って、次回以降は自動的に接続できるようにしておく。
また、操舵ユニット54は、電子制御ユニットによって構成する操舵ECU73、操作スイッチ群74、LEDランプ群75、ステッピングモータによって構成する操舵アクチュエータ18、伝動部76等によって構成し、図3に示すように全体を樹脂製のカバーや底板で覆った操舵ユニット54をステアリングホイール17下方のステアリングコラム16の上部に取付ける。また、左右前輪2の操舵角度を検出するポテンテョメータで構成する操舵角センサ77を別に設け、操舵ユニット54はトランスミッションケース11の上方に設けるステアリングシャフト15をステアリングホイール17と共に回動させて左右前輪2を操舵する。
なお、この操舵ユニット54の取付けにあたっては、先ずステアリングシャフト15の上部に設けるステアリングホイール17を取外し、次にステアリングシャフト15の上部に伝動部76に設ける継手シャフトの下部を嵌合させた状態で操舵ユニット54をステアリングコラム16の上部に取付ける。さらに、継手シャフトの上部に取外したステアリングホイール17を取付けて、操舵ユニット54を乗用型田植機1に後付けすることができる。
そして、このように操舵ユニット54を取付けると、手動操作によってステアリングホイール17を回した際には、前述の継手シャフトを介してステアリングシャフト15を回動させて、また、ステアリングシャフト15はトルクジェネレータ14を介して左右前輪2を操舵する。一方、操舵ユニット54の操舵アクチュエータ18が操舵ECU73からの指令に基づいて正逆回転すると、操舵アクチュエータ18は伝動部76に設ける歯車減速装置を介して継手シャフトを回動させて、以下手動操作と同様に左右前輪2を自動操舵する。
なお、操舵ユニット54の操舵ECU73とGNSSユニット65のGNSSコントローラ63はコントローラエリアネットワーク(CAN)で情報のやり取りを行い、また、操舵ユニット54とGNSSユニット65の各機器は乗用型田植機1のバッテリ78を電源とし、スタータスイッチを入れて操舵ユニット54のメインスイッチを入りにすると、操舵ユニット54とGNSSユニット65は、作業機電源コネクタを介してバッテリ78と繋がり起動する。さらに、図示しないが乗用型田植機1の走行や植付に関する各種の自動制御を行う電子制御ユニットは、操舵ECU73やGNSSコントローラ63とCANで結ばれ、互いの情報を供用することができる。
以上、GNSS直進自動操舵装置50の機器構成について説明したが、ここでGNSS直進自動操舵装置50の使用方法の概要について説明すると、乗用型田植機1を圃場に移動させてスタータスイッチを入りにしてエンジン13を始動させ、操舵ユニット54のメインスイッチを入りにすると操舵ユニット54とGNSSユニット65は起動し、また、タブレット端末53を起動させると、GNSSユニット65が近距離無線機62、71どうしを無線接続し、GNSSユニット65とタブレット端末53のナビゲションソフトウェアが通信を開始する。
なお、タブレット端末53のナビゲションソフトウェアは、ガイダンス画面と設定画面とドキュメント画面を備え、例えばガイダンス画面では、乗用型田植機1の現在位置、自動操舵状態、方角を表示するコンパス、経路誤差、作業距離と面積、受信衛星状態等を表示すると共に、経路を作成するためのA点生成ボタン、B点生成ボタン、探索ボタン、作成ボタン、現在位置を基準位置として経路を再設定するリセットボタン、経路修正ボタン、追従性ボタン等を備える。
また、上述のA点生成ボタン、B点生成ボタン、探索ボタン、作成ボタン、追従性ボタンに相当するスイッチは、操舵ユニット54の操作スイッチ群74の中にそれぞれスイッチ80〜84として備え、これらの機能はタブレット端末53側と操舵ユニット54側の何れの側でも行うことができるようになっている。但し、操舵ユニット54の操作スイッチ群74の中には自動操舵を開始又は停止させる自動操舵スイッチ79を設けているが、係るスイッチ79に相当するボタンはガイダンス画面に設けていない。
一方、ナビゲションソフトウェアの設定画面では、近距離無線機のGNSSユニット65との接続、GNSSアンテナ位置、慣性計測装置の取付位置と向き、自動操舵パラメータ、初期設定、経路作成間隔や基準方位の直接指定又は解除等の設定等を行うことができ、これらの設定の大半は支援システムの導入時に一括して行うことができる。また、ドキュメント画面に切り替えると過去に生成された圃場毎の経路や作業履歴等を表示させることができ、これらはこれから行おうとする圃場の走行経路に用いたり、今後の参考情報として利用する。
そして、圃場においてGNSS直進自動操舵を実行する場合は、ナビゲションソフトウェアは主にガイダンス画面を表示させ、また、操舵ユニット54のLEDランプ群75の表示等から、ナビゲションソフトウェアとGNSSユニット65と操舵ユニット54が正しく接続されて自動操舵の経路設定が行える状態であることを確認し、次に作業者は乗用型田植機1を手動操舵して往復作業行程における目標直線経路を作成するためにティーチング走行を行う。
なお、ティーチング走行について説明する前に圃場で乗用型田植機1が苗の植付けを行う際の慣行的な作業行程について説明する。例えば、図5に示す矩形圃場の基本作業行程では、圃場の左上の入口から入った乗用型田植機1を畔際の右長辺に沿って植付けるために、先ず畔際の上短辺に沿って植付けを行わずに移動走行(行程1)する。また、右長辺に行き着くと機体を右90度旋回させた後、植付装置6を下降させて苗の植付けを行いながら畔際の右長辺に沿って作業走行(行程2)する。さらに、下短辺に行き着くと植付装置6を上昇させて機体を右180度旋回させた後、植付装置6を下降させて前行程2の既に植付けた苗列に沿って隣接植えの作業走行(行程3)を行う。
そして、その後は左又は右の180度の旋回走行と前行程の既苗列に沿って作業走行を行う往復作業行程(行程4)を繰り返し、最後の往復作業行程の終端に至ると右90度の旋回走行と後進走行を行った後、上短辺に沿って残された枕地での作業走行(行程5)を行う。また、右長辺に行き着くと機体を右180度旋回させた後、前行程5の既苗列に沿って枕地での作業走行(行程6)を行う。さらに、最後の往復作業行程の終端に至ると左90度の旋回走行を行い、往復作業行程の最後の既苗列に沿って作業走行(行程7)を行う。
そして、下短辺に行き着くと左90度の旋回走行と後進走行を行った後、下短辺に沿って残された枕地での作業走行(行程8)を行う。また、右長辺に行き着くと機体を左180度旋回させた後、前行程8の既苗列に沿って枕地での作業走行(行程9)を行う。さらに、左長辺に行き着くと右90度の旋回走行と後進走行を行った後、左長辺に沿って最後の作業走行(行程10)を行い、圃場の出口でもある入口に至ると作業走行を終えて圃場から退出する。
なお、前述の枕地作業行程5及び6、枕地作業行程8及び9、そして、枕地作業行程7及び10において、往復作業行程によって残された作業幅が例えば13条相当分残る場合、枕地作業行程5、枕地作業行程7、及び枕地作業行程8の各作業行程で5条の苗を植付け、枕地作業行程6、枕地作業行程10、及び枕地作業行程9の各作業行程で全条となる8条の苗を植付けるように、植付装置6に備える条止めレバーや苗ストッパ等を事前に操作して植付条数を調整しておけば、苗の無駄な損失を抑えて植付作業を終えることができる。また、既苗列や各辺に沿って作業走行を行う場合は、左右のマーカー39やトレースマーカー43を使用する。
また、図6に示す同様な矩形圃場において往復作業行程によって残された枕地作業行程を、例えば2周で回り植えを行う外周回り植え作業行程では、圃場の左上の入口から入った乗用型田植機1を前述の行程1と同様に先ず移動走行(行程1)する。また、前述の行程2と行程3では、その後の行程4を作業走行する上での目印をマーカー39によって付ける移動走行(行程2、行程3)を行う。さらに、前述の行程4以降では実際に植付けを伴った往復作業走行を(行程4)を繰り返す。
そして、往復作業行程によって残された枕地を作業走行する枕地作業行程では、前述の行程5、行程2、行程8、行程10、行程6、行程3、行程9、及び行程7を経て圃場の出口から退出する(行程5、行程6、行程7、行程8、行程9、行程10、行程11、及び行程12)。さらに、図7に示す5辺を備える変形圃場における作業行程では、圃場の右下の入口から入った乗用型田植機1をそのまま畔際の右辺に沿って作業走行(行程1)する。
また、上辺に到達すると機体を左180度旋回させた後、前行程1の既に植付けた苗列に沿って隣接植えの作業走行(行程2)を行う。その後は右又は左の180度の旋回走行と前行程の既苗列に沿って作業走行を行う往復作業行程(行程3)を繰り返し、最後の往復作業行程の終端に至ると機体を左90度旋回させて下辺に沿って移動走行(行程4)を行う。そして、右辺に近づくと機体を左90度旋回、その後逆側に90度後進旋回させて機体の向きを180度変更し、残された枕地の下辺の作業走行(行程5)を行う。
さらに、左辺に至ると右90度旋回と後進走行を行った後、左辺と傾斜上辺、及び水平上辺に沿って作業走行(行程6、行程7、行程8)を行う。また、右辺に至ると180度旋回後、前述の作業行程で植付けた苗列に沿って作業走行(行程9、行程10、行程11、行程12)し、その後、植付けを終了して出口から退出する。なお、上述の圃場の下辺が傾斜したり、6辺以上の圃場であったり、圃場の形状、圃場の入口及び出口の位置、或いは風通し等を考慮して短辺を往復作業行程に選択するといったケースもあって、枕地作業行程における経路は作業者によって種々選択され、一概にその経路を固定的に考えることは実情にそぐわない面がある。
以上、乗用型田植機1が苗の植付けを行う際の慣行的な作業行程について説明したが、圃場においてGNSS直進自動操舵を実行する場合の、乗用型田植機1を手動操舵して往復作業行程における目標直線経路を作成するためのティーチング走行は、基準となる直線経路を正確に作成するために畔際の長辺に沿って走行する行程において行うことが望ましい。そのため、ティーチング走行は、例えば図5に示す前述の矩形圃場の基本作業行程では行程2で行い、図6に示す2周で回り植えを行う外周回り植え作業行程では同じく行程2で行い、又は行程3や最初の作業走行を行う行程4で行ってもよく、図7に示す5辺を備える変形圃場における作業行程では行程1で行う。
そして、前述の行程でティーチング走行を行う場合、その走行の開始当初に乗用型田植機1が畔に適正に沿って走行を行っていると作業者が判断すると、作業者はA点生成ボタン又はスイッチ80を押す。また、その後、ティーチング走行を行う行程の終了或いは終了まじかに乗用型田植機1が畔に適正に沿って走行を行っていると作業者が判断すると、作業者はB点生成ボタン又はスイッチ81を押して、ティーチング走行を終了する。
また、このようにティーチング走行を行うとタブレット端末53のナビゲションソフトウェアは、GNSSコントローラ63からリアルタイムで送信される乗用型田植機1の測位情報(位置情報、方位情報、3軸のジャイロと3方向の加速度計からの情報)におけるA点生成ボタン又はスイッチ80とB点生成ボタン又はスイッチ81が押された2点の位置情報に基づいて基準となる直線経路を作成する。また、タブレット端末53のナビゲションソフトウェアは、この作成した基準直線経路に基づいて、その後の往復作業行程における目標直線経路を作成する。
なお、タブレット端末53のナビゲションソフトウェアは、その設定画面で乗用型田植機1の後車軸の左右中心に対するGNSSアンテナ(位置)55の3次元の取付位置、GNSSアンテナ(位置)55からのGNSSアンテナ(方位)56のオフセット量を要求し、乗用型田植機1の位置並びに方位の基準を後車軸の左右中心として捉える。また、設定画面で行程間隔(作業幅−重複幅)を要求し、乗用型田植機1の植付幅(条間30又は条間33×8条)を予め取得しているから、往復作業行程における目標直線経路は基準直線経路に植付幅を加えた平行な直線経路となる。
そして、作成した往復作業行程における目標直線経路に倣って乗用型田植機1を自動操舵して走行させる場合には、ティーチング走行を終了した後、手動操舵で180度旋回させてティーチング走行を行った行程に隣り合う隣接作業行程に向きを変えると、タブレット端末53のナビゲションソフトウェアは、GNSSコントローラ63からリアルタイムで送信される乗用型田植機1の測位情報に基づいて、目標直線経路と乗用型田植機1との位置偏差並びに方位偏差を演算して、この位置偏差並びに方位偏差をガイダンス画面に表示する。そこで、作業者は植付装置6を下降させて作業走行を開始すると共に、自動操舵スイッチ79を押して自動操舵を開始させる。
また、この自動操舵の開始指令に基づいて、タブレット端末53のナビゲションソフトウェアは、目標直線経路と乗用型田植機1との位置偏差並びに方位偏差に基づいて、この何れの偏差も無くすように左右前輪2の操舵量を、例えばフィードバック制御におけるPI制御又はPID制御、或いはモデル予測制御(MPC:Model Predictive Control)等を使用して演算し、この演算した操舵量をGNSSコントローラ63を経由して操舵ECU73に伝える。
そこで、操舵ECU73は左右前輪2の操舵量が指示された操舵量になるように出力パルス数をカウントしながら操舵アクチュエータ18を正逆回転させ、また、操舵アクチュエータ18は伝動部76に設ける歯車減速装置を介して継手シャフトを回動させ、さらに、継手シャフトの回転に伴ってステアリングシャフト15は回転し、左右前輪2はトルクジェネレータ14を介して指令された操舵量に操舵される。
そして、係る左右前輪2の自動操舵のもとに乗用型田植機1が作業目標経路の1行程の終端に至ると、作業者は自動操舵スイッチ79を押して自動操舵を終了させ、次行程に移るために乗用型田植機1を手動操舵で180度旋回させる。また、それ以後は前述の自動操舵と手動操舵の繰り返しによって往復作業行程における作業走行を終えることになる。
次に、前述のティーチング走行と往復作業行程における作業走行を終えて圃場に残された枕地を作業走行する、本発明の特徴とする枕地作業行程における目標直線経路を作成する手法、並びに、この作成した目標直線経路を用いて枕地作業行程を自動操舵して作業走行する手順について説明する。先ず、具体的な内容の説明に先立って枕地作業を行う際の走行経路について、再び説明すると、例えば図5に示す矩形圃場の基本作業行程では、圃場の左上の入口から入った乗用型田植機1を畔際の右長辺に沿って植付けるために、先ず畔際の上短辺に沿って植付けを行わずに移動走行(行程1)する。
そして、この場合、係る行程1でその後に実際に作業走行する行程5のように畔際の上短辺に沿って移動走行すると仮定すると、この移動走行する経路1(行程1)がそのまま枕地作業行程における上短辺の走行経路となって、その際の目標直線経路を作成する上で利用することができる。或いは、図8に示すように最後の往復作業行程(行程4)の終端に至って右90度の旋回走行と後進走行を行って行程5の作業走行を行う場合の後進走行(行程5’)が行程5の作業走行を行う場合の上短辺に沿うものと仮定すると、この後進する経路(行程5’)がそのまま枕地作業行程における上短辺の一部の走行経路となって、その際の目標直線経路を作成する上で利用することができる。
同様に考えて仮定すると図6に示す場合は、その行程1と行程2、或いは行程1と行程2と行程3がそのまま枕地作業行程における上短辺と右長辺の走行経路となって、その際の目標直線経路を作成する上で利用することができる。或いは、図8に示す後進経路(行程5’)がそのまま枕地作業行程における上短辺の一部の走行経路となって、その際の目標直線経路を作成する上で利用することができる。また、図7に示す場合は、その行程4がそのまま枕地作業行程における下辺の走行経路となって、その際の目標直線経路を作成する上で利用することができる。
さらに、図5に示す矩形圃場の基本作業行程では、そのティーチング走行(行程2)を終了した後から往復作業行程(4)を終了する間に機体の180度旋回を上下の短辺寄りで繰り返し行っている。また、図6に示す場合は、行程2の移動走行を終了した後から往復作業行程(4)を終了する間に機体の180度旋回を上下の短辺寄りで繰り返し行っている。さらに、図7に示す場合は、行程1の作業走行を終了した後から往復作業行程(行程3)を終了する間に機体の180度旋回を水平上辺及び傾斜上辺と下辺寄りで繰り返し行っている。
そして、この場合の180度旋回経路は図9に示すように、畔を視野に入れてこの畔に左右前輪2が当たらないで旋回できるぎりぎりのポイントp0で左右前輪2を旋回操舵し、これによって1行程の作業行程における植終わり位置を揃えようとする。従って、180度旋回時にその旋回外側となる前輪2の移動軌跡r1は90度旋回させた位置が最も畔に近づくことになり、これは後車軸の左右中心の移動軌跡r2が最も畔に近づく位置でもある。
そのため、この最も畔に近づく前輪2位置、又は後車軸の左右中心の位置に後車軸の左右中心から前車軸の左右中心までの距離(ホイールベース)を加算した位置、或いは後車軸の左右中心の位置(乗用型田植機1の測位位置)等の何れかの1つを前述の往復作業行程等の各行程で得れば、これらの位置を結んで枕地作業行程における上辺や下辺の目標直線経路(特に目標方位)を作成する上で利用することができる。
なお、図6に示す2周で回り植えを行う外周回り植え作業を行う場合は、その植終わり位置が通常より畔から離れた手前側となる。そのため、隣接する行程に向かう時間を短縮すべく植終わったら即座に旋回操舵することになり、その場合、90度旋回させた位置は前輪2が畔に当たらないぎりぎり位置より手前となるが、前輪2が最も畔に近づくことに変わりはないから、同様にこれらの位置を結んで枕地作業行程における上辺や下辺の目標直線経路(特に目標方位)を作成する上で利用することができる。
また、図7に示すような上辺が水平上辺と傾斜上辺に分かれる場合、その傾斜上辺における旋回経路は図10で示すように、その90度旋回させた位置が前輪2の最も畔に近づく位置とは言えず、それ以上の旋回角度で前輪2が最も畔に近づく。しかし、90度旋回させた位置は直前まで作業走行を行った経路の方位から見れば一番畔に近づいた位置となるから、この位置を結んで枕地作業行程における傾斜上辺の目標直線経路(特に目標方位)を作成する上で利用することができる。また、それによって枕地作業行程における上辺の経路が水平上辺と傾斜上辺の2つの経路によって構成されることの手がかりを得ることができる。
さらに、乗用型田植機1では、植付作業に伴って少なくなる苗や肥料等の資材を途中で補給する必要がある。その場合は図11に示すように1行程の作業走行を終えてそのまま左右の前輪2が畔にぎりぎり当たる位置まで直進走行させ、その後、停止させた位置p1で補助者等の協力を得て畔際から乗用型田植機1側に苗や肥料等を供給する。そして、この補給作業を終了すると前述の180度の旋回走行を開始する位置p0まで後進させて、その後、前進走行によって180度の旋回を行う。そのため、この場合は前述の90度旋回させた位置と共に、左右の前輪2が畔にぎりぎり当たるまで直進走行させて停止させた位置p1にホイールベースと前輪2の半径を加算した位置等を枕地作業行程における上辺や下辺等の目標直線経路を作成する上で利用することができる。
なお、往復作業行程における直線経路に直交する方向となる圃場の右辺や左辺が直線経路に対して傾斜している場合は、往復作業行程における180度旋回において、前述の図10に示すと同様な傾斜経路が得られ、これが枕地作業行程における右辺や左辺の目標直線経路を作成する上で利用することができる。また、逆にそのような傾斜経路が得られなければ、枕地作業行程における右辺や左辺の経路は往復作業行程における直線経路と同じ方位となる隣接する経路として捉えることができ、例えば図5乃至図7に示す圃場の枕地作業行程における右辺や左辺の作業行程(図5の行程7と行程10、図6の行程6と行程8と行程10と行程12、図7の行程6と行程11)は、このような考察に基づいて目標直線経路を作成することができる。
そして、前述のティーチング走行や枕地走行の開始点に向かう機体の走行経路、或いは往復作業行程における旋回経路又は苗や肥料等の補給を行う移動経路に基づいて、枕地作業行程における目標直線経路を作成する場合、その走行経路をたどったり、旋回経路又は補給移動経路における例えば90度旋回点どうしを直線で結ぶと、作業者が手動で操舵した経路であるから当然、真っすぐな直線として経路を得られない。そこで、それが曲線となる走行経路であれば、乗用型田植機1がその走行経路を走行する際に所定の距離を走行する毎に自らの位置を得て、最終的に図5に示す10個程度の通過点p2・・p13を得たとすれば、この通過点に基づいて最小2乗法による回帰直線として目標直線経路(行程1)を得ることができる。
また、旋回経路又は補給移動経路における例えば180度旋回の一方側又は他方側で10個以内の90度旋回点t1・・t6を得たとすれば、この通過点に基づいて最小2乗法による回帰直線として直線経路を得ることができ、この直線経路をそのまま目標直線経路として使うことができないとしても、この直線経路の方位は目標直線経路の方位と等しいと仮定して、係る直線経路を畔際から植付幅の2分の1だけ隔てた直線経路に補正すれば目標直線経路(行程8)を得ることができる。
なお、乗用型田植機1が圃場における往復経路や枕地経路の1行程を走行する際に得られる測位情報は、その車速によって変化するが測位衛星から出される電波が1秒間隔であるとすれば数百個となる。そのため、この数百個の位置情報をメモリに記憶し、また、このメモリに記憶した位置情報に基づいて回帰直線を得ようとすると相当な演算負荷となる。また、このような演算負荷を避けるために走行経路における方位を移動平均して求める場合は、直近に得られた位置又は方位情報に基づいて方位を演算することになって方位誤差を生ずる可能性が高まる。
そこで、前述のように乗用型田植機1がその走行経路を走行する際に所定の距離を走行する毎に衛星測位情報から自らの位置を得れば、少ない位置情報によって演算負荷をかけずにより正確な枕地経路における目標直線経路を得ることができる。なお、乗用型田植機1の走行距離は車軸回転数等から計測することもでき、この車軸回転数等から測位情報を得るタイミングを得ても勿論構わない。しかし、ナビゲションソフトウェアはガイダンス画面で衛星測位情報等に基づいて作業距離や面積を表示するようにしているから、走行経路における乗用型田植機1の走行距離を得ることも簡単になし得、この走行距離を用いれば別途、回転センサ等を用いる必要が生じない。
従って、以上説明した内容を前提として枕地作業行程における目標直線経路を作成する手順、並びにこの作成した目標直線経路を用いて枕地作業行程を自動操舵して作業走行する手順について説明すると、例えば図5に示す矩形圃場の基本作業行程において、圃場の左上の入口から入った乗用型田植機1を畔際の右長辺に沿って植付けるために、先ず畔際の上短辺に沿って植付けを行わずに移動走行(行程1)する。そして、この行程1を走行する際の経路を枕地作業行程における目標直線経路を作成する手段として利用する場合、行程1の開始当初で作業者は例えば、探索スイッチ82を長押し、また、行程1の終了間際で再び探索スイッチ82を押す。
そして、タブレット端末53のナビゲションソフトウェアは、探索スイッチ82が長押しされたことに基づいて、ティーチング走行や枕地走行の開始点に向かう機体の走行経路、或いはティーチング走行経路自体(図6の行程2又は行程3)を乗用型田植機1が走行するものと判断し、再び探索スイッチ82が押されるまで前述の所定の距離を走行する毎に乗用型田植機1の通過点p2・・p13を取得してその位置情報をメモリに格納する。
また、行程1の終端に至って作業者が作成スイッチ83を押すと、ナビゲションソフトウェアはこれを検出して、メモリに格納する通過点p2・・p13の位置情報を取り出して最小2乗法による回帰直線として目標直線経路(行程1)を演算し、この目標直線経路を枕地作業行程における1つの目標直線経路としてメモリに格納する。さらに、ティーチング走行する行程2では、前述のように作業者はA点生成ボタン又はスイッチ80を押し、また、作業者はB点生成ボタン又はスイッチ81を押してティーチング走行を終了する。
そして、このB点生成ボタン又はスイッチ81を押した後、作業者は続けて探索スイッチ82をこの場合は短押し、また、往復経路の終端に達すると再び探索スイッチ82を押す。これにより、タブレット端末53のナビゲションソフトウェアは、探索スイッチ82が短押しされたことに基づいて、自ら作成した往復経路における目標直線経路から次の目標直線経路に向かう機体の走行経路、即ち往復経路における目標直線経路から次の目標直線経路に向かう機体の旋回経路、又は苗や肥料等の補給を行う機体の移動経路から、前述の90度旋回点t1・・t6等を例えば、往復経路における目標直線経路からその方位に沿って最も遠く離れる位置情報を取得して、その位置情報をメモリに格納する。
また、往復経路の終端に至って作業者が作成スイッチ83を押すと、ナビゲションソフトウェアはこれを検出して、メモリに格納する90度旋回点t1・・t6等の位置情報を取り出して、最小2乗法による回帰直線として目標直線経路(行程1及び行程8)を演算し、この目標直線経路を枕地作業行程における2つの仮の目標直線経路としてメモリに格納する。
なお、この場合における90度旋回点t1・・t6等は、前述のように前輪2の位置、又は後車軸の左右中心の位置に後車軸の左右中心から前車軸の左右中心までの距離(ホイールベース)を加算した位置、或いは後車軸の左右中心の位置等の何れかの1つを用いればよいが、乗用型田植機1の測位位置を後車軸の左右中心としているので、ここでは後車軸の左右中心の位置をそのまま用いる。また、90度旋回点t1・・t6等の取得タイミングは、乗用型田植機1の方位が往復経路における目標直線経路の方位に対して90度加算した方位に一致したことをもって判断することもできるが、その後、若干90度加算した方位に向けて直進させる場合も想定されるので、ここでは誤差が生じないように往復経路における目標直線経路からその方位に沿って最も遠く離れる位置情報を用いる。
さらに、最後の往復作業行程の終端に至って枕地での作業走行(行程5)を行うために乗用型田植機1を後進走行(図8に示す後進経路5’の走行)させる。そして、この行程を走行する際の後進経路5’を枕地作業行程における目標直線経路を作成する手段として利用する場合、その後進開始当初で作業者は探索スイッチ82を長押し、また、後進を終了した時に再び探索スイッチ82を押す。
すると、ナビゲションソフトウェアは、前述と同様に所定の距離を後進する毎に乗用型田植機1の通過点を取得してその位置情報をメモリに格納する。さらに、後進を終了して探索スイッチ82を押した後、作成スイッチ83を押すと、ナビゲションソフトウェアはこれを検出して、メモリに格納する通過点の位置情報を取り出して最小2乗法による回帰直線として目標直線経路(行程5)を演算し、この目標直線経路を枕地作業行程における1つの目標直線経路としてメモリに格納する。
そして、乗用型田植機1を後進走行させていよいよ枕地作業行程における作業走行を行うに際して、作業者が作成スイッチ83を長押しする。また、作成スイッチ83が長押しされたことをナビゲションソフトウェアが検出すると、ナビゲションソフトウェアはガイダンス画面にこれまで作成して記憶しておいた枕地作業行程における目標直線経路の全てを表示し、これから行おうとする1つの作業行程、或いは続く複数の作業行程を順次選択することができるようにする。
なお、この場合、ナビゲションソフトウェアは全ての目標直線経路から推測される枕地作業行程における残された目標直線経路が存在し、また、全ての目標直線経路から残された目標直線経路を推定することが可能であれば、これを仮の目標直線経路として追加して表示する。即ち、枕地作業行程における行程7及び行程10は、この場合、目標直線経路として作成されていない。そのため、ナビゲションソフトウェアは前述のように往復作業行程における直線経路と同じ方位となる隣接する経路として捉え、例えば、その行程10を最終となる往復作業行程における目標直線経路に2つの植付幅だけオフセットさせた目標直線経路を演算し、これを仮の目標直線経路として追加して表示する。
そして、作業者がガイダンス画面に表示された1つの作業行程、或いは続く複数の作業行程を順次選択すると、ナビゲションソフトウェアは最初に選択された1つの作業行程における目標直線経路と乗用型田植機1との位置偏差並びに方位偏差を演算して、この位置偏差並びに方位偏差をガイダンス画面に表示する。そこで、作業者は植付装置6を下降させて行程5の作業走行を開始すると共に、自動操舵スイッチ79を押して自動操舵を開始させる。また、行程5の作業走行終えると自動操舵スイッチ79を押して自動操舵を停止させる。また、自動操舵を停止させるとナビゲションソフトウェアは次の作業行程が選択されていれば、その次の作業行程との位置偏差並びに方位偏差を演算して、この位置偏差並びに方位偏差をガイダンス画面に表示する。
従って、作業者は前述の操作を必要に応じて繰り返し行って、枕地作業行程における殆ど全ての行程5〜行程10を自動操舵によって作業走行することができる。なお、枕地作業行程における行程5の目標直線経路を、乗用型田植機1を畔際の右長辺に沿って植付けるために、畔際の上短辺に沿って植付けを行わずに移動走行(行程1)させた際に作成したものであれば、その目標直線経路をそのまま使用して自動操舵によって作業走行することができる。また、後進経路5’を移動走行させた際に作成したものであれば、その目標直線経路を延長してそのまま使用して自動操舵によって作業走行することができる。
しかし、それ以外の方法で作成した行程6〜行程10の仮の目標直線経路をそのまま使用して自動操舵によって作業走行しようとすると、特に方位偏差は生じ無くとも位置偏差が生じて誤った自動操舵が行われる可能性が高い。そこで、ナビゲションソフトウェアは仮の目標直線経路として作成した行程6〜行程10が選択された際に植付装置6下降させて作業走行を開始する場合や自動操舵の指令が発せられた際(枕地作業走行の開始当初)に、乗用型田植機1の現在の測位情報に基づいてその取得した位置情報に基づいて、この位置を含むようにオフセットした目標直線経路に補正し、この補正した目標直線経路に倣って乗用型田植機1を自動操舵する。
そのため、枕地作業行程における殆ど全ての行程5〜行程10を適正に自動操舵させて作業走行を終えることができる。なお、図7に示す圃場にあっては、その畔の水平上辺と傾斜上辺に沿って枕地走行する行程7及び行程8の2つの目標直線経路と行程9及び行程10の2つの目標直線経路が必要となる。
そして、このような場合は、往復経路における作業走行を行う際に、その行程7及び行程8、或いは行程9及び行程10の境界で探索スイッチ82を押すと共に作成スイッチ83を押して、水平上辺に係る目標直線経路を作成し、再び探索スイッチ82を押して往復経路の残る作業走行を終了した際に探索スイッチ82を押すと共に作成スイッチ83を押して、傾斜上辺に係る目標直線経路を別々に作成すればよい。但し、これによって下辺の目標直線経路も2つ作成されることになるので枕地行程の選択において注意を必要とする。
なお、作業者がナビゲションソフトウェアのガイダンス画面において、行程7及び行程8、又は行程9及び行程10、或いは2つに分割された下辺の行程4、又は行程12を連続して選択すると、1つの作業行程の枕地作業経路として作成しなおすようにプログラムを変更することができる。そして、このようになすと自動操舵によって水平上辺と傾斜上辺、分割された2つの下辺を連続して作業走行を行うことができ、枕地作業経路における行程の選択のための時間を削減して能率的に作業走行を行うことができる。
また、往復経路の目標直線経路から次の目標直線経路に向かう機体の旋回経路、又は苗や肥料等の補給を行う機体の移動経路から枕地作業行程における目標直線経路を作成する場合に、機体の旋回経路のみを使用して目標直線経路を作成したり、苗や肥料等の補給を行う機体の移動経路のみを使用して目標直線経路を作成したり、両者を共に使用して目標直線経路を作成することもできる。
さらに、枕地作業走行において手動操舵が行われた際には、選択されている目標直線経路(回帰直線)を乗用型田植機1の現在の測位情報に基づいてその取得した位置情報に基づいて、この位置を含むようにオフセットした目標直線経路に補正し、その後、この補正した目標直線経路に倣って乗用型田植機1を自動操舵するようにプログラムを変更すると、自動的に適正な目標直線経路に変更することができ、自動操舵の使用頻度を高めることができる。
そのうえ、前述の後進経路5’を用いて枕地作業行程における目標直線経路を作成する場合の通過点を取得する際の走行距離は短くし、多数の通過点によって回帰直線を作成して目標直線経路の精度を高めることができる。従って、ナビゲションソフトウェアの設定画面に、枕地作業行程における目標直線経路を作成する場合の走行距離を設定することができるようにしてもよい。また、枕地作業行程における目標直線経路の作成を忘れた場合等において、例えば経路5’等を手動操舵によって作業走行させる際の通過点によって目標直線経路を作成して、作業行程5の中途から自動操舵によって作業走行させてもよい。
なお、本実施形態においては、圃場における1行程のティーチング走行によって基準となる直線経路を作成する基準経路作成手段と、基準経路作成手段によって作成した基準直線経路に基づいて、その後の往復作業行程における目標直線経路を作成する往復経路作成手段と、往復経路作成手段によって作成した目標直線経路から次の目標直線経路に向かう機体の走行経路、或いはティーチング走行や枕地走行の開始点に向かう機体の走行経路から枕地作業行程における目標直線経路を作成する枕地経路作成手段の何れも、タブレット端末53のナビゲションソフトウェアによって請け負わせたが、例えばGNSSコントローラ63に余裕があれば、その手段の何れか或いは全てをGNSSコントローラ63等に任せてもよい。
また、枕地作業行程における目標直線経路のみならず、ティーチング走行において最小2乗法による回帰直線から基準となる直線経路を作成してもよく、さらに、前述の手法で得た往復作業行程や枕地作業行程における目標直線経路等を後日の再使用や参考情報として不揮発性メモリに記憶させておいてもよい。また、往復作業行程や枕地作業行程における目標経路は直線ではなく曲線として求めることができる適切な手法があれば、中山間地の棚田等における湾曲する圃場において、その湾曲する目標曲線経路に倣って自動操舵させてもよく、本発明はその発展の先駆けとして種々応用が期待される発明でもある。