JP2021036033A - 繊維状物の製造方法、セルロース含有物及び繊維原料処理用酸処理剤 - Google Patents

繊維状物の製造方法、セルロース含有物及び繊維原料処理用酸処理剤 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、金属製の容器内で加熱反応を行った場合であっても、着色が抑制された繊維状物を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、繊維原料にオキソ酸及び腐食防止剤を添加して、加温する工程(A)を含み、オキソ酸の添加量をa質量部とし、腐食防止剤の添加量をb質量部とした場合、b/aの値が0.32以上である、繊維状物の製造方法に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、繊維状物の製造方法、セルロース含有物及び繊維原料処理用酸処理剤に関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10〜50μmのセルロース繊維、とりわけ木材由来のセルロース繊維(パルプ)は主に紙製品としてこれまでにも幅広く使用されてきた。
セルロース繊維としては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。微細繊維状セルロースとしては、主にセルロースナノファイバー(CNF)やセルロースナノクリスタル(CNC)が知られている。
セルロースナノファイバー(CNF)は、セルロース繊維を機械処理することで製造される。しかしながら、セルロース繊維同士は水素結合により、強く結合している。したがって、単純に機械処理を行うのみでは、微細セルロース繊維を得るまでに大きなエネルギーが必要となる。このため、より小さな機械処理エネルギーで微細セルロース繊維を製造するために、機械処理と合わせて化学処理を行うことが検討されている。例えば、セルロース表面のヒドロキシ基にアニオン性基やカチオン性基といったイオン性置換基を導入すると、イオン同士の電気的な反発力により微細化が容易となり、微細化のエネルギー効率が高くなる。例えば、特許文献1には、リン酸エステル化微細セルロース繊維(セルロースナノファイバー)が開示されている。ここでは、尿素、リン酸二水素ナトリウム二水和物及びリン酸水素二ナトリウムを水に溶解させてリン酸化試薬とし、このリン酸化試薬をパルプに含浸させた後に加熱することでリン酸化反応を行っている。
セルロースナノクリスタル(CNC)は、通常セルロース繊維を酸加水分解し、次いで超音波処理することにより製造される。例えば、特許文献2には、セルロース繊維に酸溶液を添加し、エクストルーダースクリューを用いてセルロース繊維の酸加水分解を行い、セルロースナノクリスタル(CNC)を得る方法が開示されている。具体的に、特許文献2の製造方法では、セルロース繊維に硫酸溶液を添加し、200〜230℃の高温条件下で加水分解を行っている。
国際公開第2014/185505号 国際公開第99/15564号
しかしながら、従来のセルロースナノファイバー(CNF)やセルロースナノクリスタル(CNC)の製造方法において、繊維原料をオキソ酸化処理した場合、工程中で反応生成物が着色する場合があった。特に、繊維原料のオキソ酸化反応を金属容器内で行った場合に、反応生成物の着色が見られ、改善が求められていた。
そこで本発明者は、このような従来技術の課題を解決するために、金属製の容器内で加熱反応を行った場合であっても、着色が抑制された繊維状物を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、繊維原料をオキソ酸化する際に、オキソ酸に加えて腐食防止剤を添加し、かつ、オキソ酸と腐食防止剤の添加量を所定の比率とすることにより、金属製の容器内で加熱反応を行った場合であっても、着色が抑制された繊維状物が得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 繊維原料にオキソ酸及び腐食防止剤を添加して、加温する工程(A)を含み、
オキソ酸の添加量をa質量部とし、腐食防止剤の添加量をb質量部とした場合、b/aの値が0.32以上である、繊維状物の製造方法。
[2] 工程(A)は、金属容器内で行われる、[1]に記載の繊維状物の製造方法。
[3] 繊維原料はセルロース系材料である、[1]又は[2]に記載の繊維状物の製造方法。
[4] 工程(A)の後に、さらに解繊処理工程(B)を含み、
繊維状物は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維状物の製造方法。
[5] 腐食防止剤が、下記式(1)で表される化合物である、[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維状物の製造方法;
Figure 2021036033
上記式(1)において、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Rは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又は−NHR11を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す;−NHR11において、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
[6] 腐食防止剤が尿素及び尿素誘導体から選択される少なくとも1種である、[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維状物の製造方法。
[7] オキソ酸がリン酸であり、b/aの値が0.32以上1.0以下であり、加熱する工程(A)における加熱処理温度が145℃以上185℃以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の繊維状物の製造方法。
[8] オキソ酸に由来する基を含み、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含むセルロース含有物であって、
セルロース含有物中の多価金属の含有量が50〜1000ppmである、セルロース含有物。
[9] オキソ酸がリン酸であり、多価金属がFe、Cu、Cr、Ni、MoおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種である、[8]に記載のセルロース含有物。
[10] オキソ酸と下記式(1)で表される化合物を含む繊維原料処理用酸処理剤であって、
繊維原料処理用酸処理剤中に含まれるオキソ酸の含有量をc質量部とし、化合物の含有量をd質量部とした場合、d/cの値が0.32以上である、繊維原料処理用酸処理剤;
Figure 2021036033
上記式(1)において、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Rは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又は−NHR11を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す;−NHR11において、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
本発明によれば、金属製の容器内で加熱反応を行った場合であっても、着色が抑制された繊維状物を提供することができる。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。 図2は、カルボキシ基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(繊維状物の製造方法)
本発明は、繊維原料にオキソ酸及び腐食防止剤を添加して、加温する工程(A)を含む繊維状物の製造方法に関する。ここで、工程(A)において、オキソ酸の添加量をa質量部とし、腐食防止剤の添加量をb質量部とした場合、b/aの値は0.32以上である。なお、本発明の製造方法において、工程(A)は金属容器内で行われるものであってもよい。本発明においては、工程(A)を金属容器内で行った場合であっても、着色が抑制された繊維状物を得ることができる。
ここで、繊維状物の着色については、工程(A)を経て得られる繊維状物を目視観察することで評価できる。具体的には、反応後に得られる繊維状物の着色度合いを評価し、白色である場合に、着色が抑えられ良好であると判定できる。このように、本発明においては、工程(A)を金属容器内で行った場合であっても、着色が抑制された繊維状物を得ることができ、このような繊維状物は外観が優れていると言える。
また、本発明においては、工程(A)を金属容器内で行った場合であっても、得られる繊維状物に金属成分が混入しにくい。工程(A)においては、オキソ酸を用いてオキソ酸化反応を行っているため、用いる酸や反応条件によっては、金属容器由来の多価金属が反応生成物である繊維状物に混入する場合がある。特にオキソ酸として強酸を用い、高温条件下でオキソ酸化反応を行った場合、金属容器由来の多価金属が反応生成物である繊維状物に混入する傾向にある。しかしながら、本発明においては、工程(A)において、オキソ酸と腐食防止剤を併用し、さらに、オキソ酸の添加量と腐食防止剤の添加量を所定の比率とすることにより、繊維状物に混入する多価金属量を低減することができる。これにより、より純度の高い繊維状物を得ることができる。
本発明の繊維状物の製造方法は、工程(A)の後に、さらに解繊処理工程(B)を含むことが好ましい。本発明の繊維状物の製造方法が工程(B)を含むことにより、得られる繊維状物は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含むこととなる。このように、本発明の繊維状物の製造方法は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースの製造方法であることが好ましい。なお、本明細書においては、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを、微細繊維状セルロースともいい、微細繊維状セルロースには、セルロースナノファイバー(CNF)及びセルロースナノクリスタル(CNC)が包含される。
<工程(A)>
工程(A)は、繊維原料にオキソ酸及び腐食防止剤を添加して、加温する工程である。本明細書において、工程(A)はオキソ酸基導入工程もしくはオキソ酸化工程ともいう。
工程(A)で用いる繊維原料としては、特に限定されないが、例えば、無機繊維、有機繊維、合成繊維等、半合成繊維、再生繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維等が挙げられる。有機繊維としては、例えば、セルロース、炭素繊維、パルプ、キチン、キトサン等の天然物由来の繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、アラミド等が挙げられる。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス等が挙げられる。再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられる。本発明で用いる繊維原料は特に限定されないが、後述する置換基導入が容易になることからヒドロキシル基またはアミノ基を含むことが好ましい。
中でも、工程(A)で用いる繊維原料はセルロースを含む繊維原料であることが好ましい。すなわち、繊維原料はセルロース系材料であることが好ましい。セルロースを含む繊維原料としては、とくに限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。
セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することもできる。また、セルロースを含む繊維原料に代えて、キチン、キトサンなどの直鎖型の含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることもできる。
工程(A)は、セルロースを含む繊維原料にオキソ酸と腐食防止剤を作用させる工程である。この工程により、オキソ酸基導入繊維が得られることとなる。
工程(A)で用いるオキソ酸は、中心原子にオキソ基(=O)とヒドロキシ基(−OH)が結合した構造を有する酸である。工程(A)で用いるオキソ酸としては、リンオキソ酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、炭酸、ケイ酸及びカルボン酸から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リンオキソ酸、硫酸、亜硫酸及びカルボン酸から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リンオキソ酸、硫酸及び亜硫酸から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましく、リンオキソ酸であることが特に好ましい。なお、リンオキソ酸は、リン酸及び亜リン酸から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸もしくは亜リン酸であることがより好ましく、リン酸がさらに好ましい。リンオキソ酸は、ピロリン酸やポリリン酸であってもよい。オキソ酸は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
工程(A)で用いる腐食防止剤としては、例えば、含窒素有機化合物、含硫黄有機化合物等を例示することができる。含窒素有機化合物としては、例えば、イミダゾリウム系4級アンモニウム塩、ポリアミン化合物等を挙げることができる。また、含窒素有機化合物は、下記式(1)で表される化合物であることも好ましい。含窒素有機化合物として下記式(1)で表される化合物を用いることにより、より効果的に繊維状物の着色を抑制することができ、加えて、繊維状物の製造コストを低減することができる。
Figure 2021036033
上記式(1)において、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Rは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又は−NHR11を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す;−NHR11において、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基である。なお、式(1)におけるR及びRで表される各基は、さらに置換基を有するものであってもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルキル基、アルケニル基、アシル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、脂環基、シアノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基等から選択される置換可能な置換基を挙げることができる。なお、R11で表される各基もさらに置換基を有するものであってもよく、置換基としては、上記同様の置換基を列挙することができる。
式(1)においてRがアルキル基である場合、アルキル基は分岐鎖を有するアルキル基であってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。中でも、アルキル基は、メチル基、エチル基であることが好ましい。
式(1)においてRがアルケニル基である場合、アルケニル基は分岐鎖を有するアルケニル基であってもよい。アルケニル基の炭素数は、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。中でも、アルケニル基は、ビニル基、アリル基、イソプロピル基であることが好ましい。
式(1)においてRがシクロアルキル基である場合、シクロアルキル基の炭素数は、3〜6であることが好ましく、3〜5であることがより好ましい。中でも、シクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基であることが好ましい。なお、シクロアルキル基はスピロ構造を有する基であってもよい。
式(1)においてRがアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。中でも、アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基であることが好ましい。なお、アルコキシ基は、フェノキシ基やアリルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基であってもよい。
式(1)においてRがアルキル基である場合、アルキル基は分岐鎖を有するアルキル基であってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。中でも、アルキル基は、メチル基、エチル基であることが好ましい。
式(1)においてRがアルケニル基である場合、アルケニル基は分岐鎖を有するアルケニル基であってもよい。アルケニル基の炭素数は、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。中でも、アルケニル基は、ビニル基、アリル基、イソプロピル基であることが好ましい。
式(1)においてRがシクロアルキル基である場合、シクロアルキル基の炭素数は、3〜6であることが好ましく、3〜5であることがより好ましい。中でも、シクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基であることが好ましい。なお、シクロアルキル基はスピロ構造を有する基であってもよい。
式(1)においてRがアリール基である場合、Rはフェニル基、ナフチル基であることが好ましい。
中でも、式(1)において、Xは、酸素原子であることが好ましい。また、Rは、−NHR11であることが好ましい。また、R11は、水素原子及びメチル基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。さらに、Rも同様に水素原子及びメチル基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい
具体的には、腐食防止剤は、尿素及び尿素誘導体から選択される少なくとも1種であることが好ましく、尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素及び1−エチル尿素からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、尿素であることが特に好ましい。
繊維原料に対するオキソ酸の添加量は、繊維原料100質量部に対して4質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。また、繊維原料に対するオキソ酸の添加量は、繊維原料100質量部に対して8700質量部以下であることが好ましく、4350質量部以下であることがより好ましく、1740質量部以下であることがさらに好ましい。オキソ酸の添加量を上記範囲内とすることにより、繊維原料に対するオキソ酸基量を所望の範囲とすることが容易となる。
繊維原料(絶乾質量)に対する腐食防止剤の添加量は、繊維原料100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、繊維原料に対する腐食防止剤の添加量は、繊維原料100質量部に対して15960質量部以下であることが好ましく、7980質量部以下であることがより好ましく、3192質量部以下であることがさらに好ましい。腐食防止剤の添加量を上記範囲内とすることにより、着色が抑制された繊維状物が得られやすくなる。
工程(A)において、オキソ酸の添加量をa質量部とし、腐食防止剤の添加量をb質量部とした場合、b/aの値は0.32以上であればよく、0.64以上であることが好ましく、0.94以上であることがより好ましく、1.30以上であることがさらに好ましい。なお、b/aの値は、30以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.95以下であることがさらに好ましい。工程(A)におけるb/aの値を上記範囲内とすることにより、着色が抑制された繊維状物を得ることができる。さらに、工程(A)におけるb/aの値を上記範囲内とすることにより、繊維状物に混入する多価金属量を低減することができ、より純度の高い繊維状物を得ることができる。
工程(A)において、オキソ酸のオキソ酸の添加量をa’モルとし、腐食防止剤の添加量をb’モルとした場合、b’/a’の値は0.15以上であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましく、0.75以上であることがさらに好ましい。なお、b’/a’の値は、52以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。工程(A)におけるb’/a’の値を上記範囲内とすることにより、着色が抑制された繊維状物を得ることができる。さらに、工程(A)におけるb’/a’の値を上記範囲内とすることにより、繊維状物に混入する多価金属量を低減することができ、より純度の高い繊維状物を得ることができる。
オキソ酸を腐食防止剤との共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態、湿潤状態またはスラリー状の繊維原料に対して、オキソ酸と腐食防止剤を混合する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料を用いることが好ましく、特に乾燥状態の繊維原料を用いることが好ましい。繊維原料の形態は、特に限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。オキソ酸および腐食防止剤は、それぞれ粉末状または溶媒に溶解させた溶液状または融点以上まで加熱して溶融させた状態で繊維原料に添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、溶媒に溶解させた溶液状、特に水溶液の状態で添加することが好ましい。また、オキソ酸と腐食防止剤は繊維原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。オキソ酸と腐食防止剤の添加方法としては、特に限定されないが、オキソ酸と腐食防止剤が溶液状の場合は、繊維原料を溶液内に浸漬し吸液させたのちに取り出してもよいし、繊維原料に溶液を滴下してもよい。また、必要量のオキソ酸と腐食防止剤を繊維原料に添加してもよいし、過剰量のオキソ酸と腐食防止剤をそれぞれ繊維原料に添加した後に、圧搾や濾過によって余剰のオキソ酸と腐食防止剤を除去してもよい。
工程(A)では、繊維原料にオキソ酸及び腐食防止剤を添加又は混合した後、当該繊維原料に対して加熱処理を施す(加温するともいう)。加熱処理温度としては、オキソ酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、たとえば30℃以上300℃以下であることが好ましく、40℃以上250℃以下であることがより好ましく、45℃以上200℃以下であることがさらに好ましく、145℃以上185℃以下であることが特に好ましい。
本実施形態に係る加熱処理においては、たとえば薄いシート状の繊維原料にオキソ酸を含浸等の方法により添加した後、加熱する方法や、ニーダー等で繊維原料とオキソ酸を混練又は撹拌しながら加熱する方法を採用することができる。これにより、繊維原料におけるオキソ酸の濃度ムラを抑制して、繊維原料に含まれるセルロース繊維表面へより均一にオキソ酸基を導入することが可能となる。これは、乾燥に伴い水分子が繊維原料表面に移動する際、溶存するオキソ酸が表面張力によって水分子に引き付けられ、同様に繊維原料表面に移動してしまう(すなわち、オキソ酸の濃度ムラを生じてしまう)ことを抑制できることに起因するものと考えられる。
また、加熱処理に用いる加熱装置は、たとえばスラリーが保持する水分、及びオキソ酸と繊維原料中のセルロース等が含む水酸基等との脱水縮合(リン酸エステル化)反応に伴って生じる水分、を常に装置系外に排出できる装置であってもよい。このような加熱装置としては、例えば送風方式のオーブン、撹拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、バンド型乾燥装置、ろ過乾燥装置、振動流動乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置、高周波乾燥装置等が挙げられる。装置系内の水分を常に排出することにより、例えば、オキソ酸としてリン酸や亜リン酸を用いた場合には、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもできる。このため、軸比の高い微細繊維状セルロースを得ることが可能となる。
加熱処理の時間は、系から水分を除く反応の場合は、たとえば繊維原料から実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。一方、水溶液中で行う反応の場合は、たとえば、加熱開始から、360秒以上36000秒以下であることが好ましく、720秒以上18000秒以下であることがより好ましく、1800秒以上7200秒以下であることがさらに好ましい。
上述したような工程(A)は金属容器内で行われるものであってもよい。金属容器としては、例えば、ステンレス製容器(SUS304、SUS316、SUS316L等)、鉄製容器、銅製容器等を挙げることができる。従来、金属容器内で、オキソ酸化処理を行った場合、金属容器を構成する金属が反応過程で溶出し、溶出した金属成分が反応生成物に混入してしまうといった問題があった。このため、オキソ酸化処理を非金属製で行うことも考えられるが、耐久性等の観点から、金属容器を使用したいといった要求もある。本発明においては、上述したような金属容器内においてオキソ酸化処理を行った場合であっても、容器由来の金属成分の混入を抑制することができる。これにより、より純度の高いオキソ酸化繊維状物を得ることができる。
繊維原料に対するオキソ酸基の導入量は、たとえば繊維原料1g(質量)あたり0.01mmol/g以上であることが好ましく、0.02mmol/g以上であることがより好ましく、0.05mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.10mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、繊維原料に対するオキソ酸基の導入量は、たとえば繊維原料1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。オキソ酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、例えば、後述する工程(B)における繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。
繊維原料に対するオキソ酸基の導入量は、たとえば中和滴定法により測定することができる。中和滴定法による測定では、得られた繊維原料を含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを加えながらpHの変化を求めることにより、導入量を測定する。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維原料含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。繊維原料に対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、繊維原料を含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図1の上側部に示すような滴定曲線を得る。図1の上側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットしており、図1の下側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対するpHの増分(微分値)(1/mmol)をプロットしている。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ確認される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維原料の第1解離酸量と等しくなり、第1終点から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維原料の第2解離酸量と等しくなり、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維原料の総解離酸量と等しくなる。そして、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リンオキソ酸基導入量(mmol/g)となる。なお、単にリンオキソ酸基導入量(またはリンオキソ酸基量)と言った場合は、第1解離酸量のことを表す。
なお、図1において、滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼び、第1終点から第2終点までの領域を第2領域と呼ぶ。例えば、リンオキソ酸基がリン酸基の場合であって、このリン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上、リンオキソ酸基における弱酸性基量(本明細書では第2解離酸量ともいう)が低下し、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、リンオキソ酸基における強酸性基量(本明細書では第1解離酸量ともいう)は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。また、リンオキソ酸基が亜リン酸基の場合は、リンオキソ酸基に弱酸性基が存在しなくなるため、第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなるか、第2領域に必要としたアルカリ量はゼロとなる場合もある。この場合、滴定曲線において、pHの増分が極大となる点は一つとなる。
なお、上述のリンオキソ酸基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維原料の質量を示すことから、酸型の繊維原料が有するリンオキソ酸基量(以降、リンオキソ酸基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、リンオキソ酸基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維原料の質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維原料が有するリンオキソ酸基量(以降、リンオキソ酸基量(C型))を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
リンオキソ酸基量(C型)=リンオキソ酸基量(酸型)/{1+(W−1)×A/1000}
A[mmol/g]:繊維原料が有するリンオキソ酸基由来の総アニオン量(リンオキソ酸基の総解離酸量)
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
図2は、オキソ酸基としてカルボキシ基またはスルホ基を有する繊維原料を含有する分散液に対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。繊維原料に対するカルボキシ基の導入量またはスルホ基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、繊維原料を含有する分散液を強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図2の上側部に示すような滴定曲線を得る。図2の上側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットしており、図2の下側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対するpHの増分(微分値)(1/mmol)をプロットしている。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が一つ確認され、この極大点を第1終点と呼ぶ。ここで、図2における滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼ぶ。第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用した分散液中のカルボキシ基量と等しくなる。そして、滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の繊維原料を含有する分散液中の固形分(g)で除すことで、カルボキシ基の導入量(mmol/g)またはスルホ基の導入量(mmol/g)を算出する。
なお、上述のカルボキシ基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維原料の質量であることから、酸型の繊維原料が有するカルボキシ基量(以降、カルボキシ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、カルボキシ基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維原料の質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維原料が有するカルボキシ基量(以降、カルボキシ基量(C型))を求めることができる。すなわち、下記計算式によって算出する。
カルボキシ基量(C型)=カルボキシ基量(酸型)/{1+(W−1)×(カルボキシ基量(酸型))/1000}
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
また、上述のスルホ基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維原料の質量であることから、酸型の繊維原料が有するスルホ基量(以降、スルホ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、スルホ基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維原料の質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維原料が有するスルホ基量(以降、スルホ基量(C型))を求めることができる。すなわち、下記計算式によって算出する。
スルホ基量(C型)=スルホ基量(酸型)/{1+(W−1)×(スルホ基量(酸型))/1000}
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
滴定法によるオキソ酸基量の測定においては、水酸化ナトリウム水溶液1滴の滴下量が多すぎる場合や、滴定間隔が短すぎる場合、本来より低いオキソ酸基量となるなど正確な値が得られないことがある。適切な滴下量、滴定間隔としては、例えば、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を5〜30秒に10〜50μLずつ滴定するなどが望ましい。また、繊維原料含有スラリーに溶解した二酸化炭素の影響を排除するため、例えば、滴定開始の15分前から滴定終了まで、窒素ガスなどの不活性ガスをスラリーに吹き込みながら測定するなどが望ましい。
オキソ酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、2回以上繰り返して行うこともできる。2回以上のオキソ酸基導入工程を行うことにより、繊維原料に対して多くのオキソ酸基を導入することができる。
<工程(B)>
本発明の繊維状物の製造方法は、上述した工程(A)の後に、さらに解繊処理工程(B)を含むことが好ましい。工程(B)は、オキソ酸基導入繊維を解繊処理する工程である。これにより、微細繊維状セルロースが得られる。なお、本明細書において、微細繊維状セルロースには、セルロースナノファイバー(CNF)及びセルロースナノクリスタル(CNC)が包含される。
工程(B)においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、特に限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。
工程(B)においては、たとえばオキソ酸基導入繊維を、分散媒により希釈してスラリー状にすることが好ましい。分散媒としては、水、および極性有機溶媒などの有機溶媒から選択される1種または2種以上を使用することができる。極性有機溶媒としては、とくに限定されないが、たとえばアルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、非プロトン性極性溶媒等が好ましい。アルコール類としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
解繊処理時のオキソ酸基導入繊維の固形分濃度は適宜設定できる。また、オキソ酸基導入繊維を分散媒に分散させて得たスラリー中には、例えば水素結合性のある尿素などのオキソ酸基導入繊維以外の固形分が含まれていてもよい。
<その他の工程>
−洗浄工程−
本実施形態における繊維状物の製造方法においては、必要に応じてオキソ酸基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶媒によりオキソ酸基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、とくに限定されない。
−アルカリ処理工程−
繊維状物の製造方法においては、オキソ酸基導入工程(工程(A))と、解繊処理工程(工程(B))との間に、アルカリ処理工程を設けてもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えばアルカリ溶液中に、オキソ酸基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。なお、本明細書において、アルカリ処理工程は、中和処理工程ともいう。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。本実施形態においては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをアルカリ化合物として用いることが好ましい。また、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水または有機溶媒のいずれであってもよい。中でも、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水、またはアルコールに例示される極性有機溶媒などを含む極性溶媒であることが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であることがより好ましい。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、特に限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましい。アルカリ処理工程におけるオキソ酸基導入繊維のアルカリ溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、たとえば5分以上30分以下であることが好ましく、10分以上20分以下であることがより好ましい。アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は、特に限定されないが、たとえばオキソ酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の使用量を減らすために、オキソ酸基導入工程の後であってアルカリ処理工程の前に、オキソ酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄してもよい。アルカリ処理工程の後であって解繊処理工程の前には、取り扱い性を向上させる観点から、アルカリ処理を行ったオキソ酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
(セルロース含有物)
本発明は、上述した繊維状物の製造方法で製造された繊維状物に関するものであってもよい。この場合、繊維状物には、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースが含まれることが好ましい。また、本発明は、オキソ酸に由来する基を含み、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含むセルロース含有物に関するものであってもよい。ここで、セルロース含有物は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと多価金属を含み、セルロース含有物中の多価金属の含有量は50〜1000ppmである。セルロース含有物中の多価金属の含有量は50ppm以上であればよく、60ppm以上であることが好ましく、70ppm以上であることがより好ましく、80ppm以上であることがさらに好ましい。また、セルロース含有物中の多価金属の含有量は1000ppm以下であればよく、900ppm以下であることが好ましく、800ppm以下であることがより好ましい。
セルロース含有物における多価金属の含有量は、以下の方法で測定される。まず、セルロース含有物を105℃で絶乾になるまで乾燥し、微細繊維状セルロースを含む絶乾固形分を得る。この絶乾固形分0.1gに硝酸5.0mLを加えて、湿式分解装置(CEM社製、MARS5)を用いて湿式分解を行った後、ICP発光分光分析装置(アメテック社製、CIROS120)を用いて、セルロース含有物中に含まれる多価金属量を測定する。なお、多価金属には、多価金属原子や多価金属イオンが含まれる。
多価金属を構成する元素は、二価以上の金属元素である。二価以上の金属元素としては、Fe、Cu、Cr、Ni、Mo、Mn等が好ましい。すなわち、多価金属を構成する元素は、Fe、Cu、Cr、Ni、MoおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。多価金属を構成する元素は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
工程(A)をSUS304製容器内で行った場合、本実施形態におけるセルロース含有物中の多価金属を構成する元素としては、Fe、Cr、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。工程(A)をSUS316又はSUS316L製容器内で行った場合、本実施形態におけるセルロース含有物中の多価金属を構成する元素としては、Fe、Cr、Ni、MoおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
セルロース含有物において繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースは、さらに腐食防止剤に由来する基を有していてもよい。中でも、微細繊維状セルロースは、尿素及び尿素誘導体から選択される少なくとも1種に由来する基を有していることが好ましく、カルバミド基を有していることが好ましい。
セルロース含有物は、繊維幅が1000nm以下である微細繊維状セルロースを含む。微細繊維状セルロースの繊維幅は100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。なお、微細繊維状セルロースがセルロースナノファイバー(CNF)である場合、その繊維幅は8nm以下であることが特に好ましい。
微細繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば1000nm以下である。繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。微細繊維状セルロースがセルロースナノファイバー(CNF)である場合、微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、2nm以上10nm以下であることが特に好ましい。微細繊維状セルロースの平均繊維幅を上記範囲内とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースの特性をより発現しやすくすることができる。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば電子顕微鏡を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、微細繊維状セルロースの平均繊維幅とする。
微細繊維状セルロースの繊維長は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。なお、微細繊維状セルロースがセルロースナノクリスタル(CNC)である場合、セルロースナノクリスタル(CNC)の繊維長は0.05μm以上0.3μm以下であることが好ましい。微細繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースがセルロースナノファイバー(CNF)である場合、微細繊維状セルロースの繊維幅は10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。繊維長は0.3μm以上であることが好ましい。すなわち、セルロースナノファイバー(CNF)のアスペクト比(繊維長/繊維幅の比)は、30以上であることが好ましい。一方、微細繊維状セルロースがセルロースナノクリスタル(CNC)である場合、セルロースナノクリスタル(CNC)の繊維幅は、10nmより大きく30nm以下であることが好ましく、繊維長は0.3μm以下であることが好ましい。すなわち、セルロースナノクリスタル(CNC)のアスペクト比(繊維長/繊維幅の比)は、10以上30未満であることが好ましい。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。なお、本実施形態における微細繊維状セルロースは、たとえば結晶領域と非結晶領域をともに有していることが好ましい。
(繊維原料処理用酸処理剤)
本発明は、オキソ酸と下記式(1)で表される化合物を含む繊維原料処理用酸処理剤に関するものであってもよい。ここで、繊維原料処理用酸処理剤中に含まれるオキソ酸の含有量をc質量部とし、化合物の含有量をd質量部とした場合、d/cの値は0.32以上である。本明細書において、繊維原料処理用酸処理剤は、繊維原料をオキソ酸化処理する際に用いられる剤である。繊維原料処理用酸処理剤には、オキソ酸と下記式(1)で表される化合物の他に、溶媒や他の任意成分が含まれていてもよい。
Figure 2021036033
上記式(1)において、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Rは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又は−NHR11を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す;−NHR11において、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
なお、上記(1)におけるR及びRの具体例及び好ましい範囲は、上述したとおりである。
オキソ酸の含有量は、繊維原料処理用酸処理剤の全質量に対して4質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。また、オキソ酸の含有量は、繊維原料処理用酸処理剤の全質量に対して8700質量部以下であることが好ましく、4350質量部以下であることがより好ましく、1740質量部以下であることがさらに好ましい。
式(1)で表される化合物の含有量は、繊維原料処理用酸処理剤の全質量に対して1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、式(1)で表される化合物の含有量は、繊維原料処理用酸処理剤の全質量に対して15960質量部以下であることが好ましく、7980質量部以下であることがより好ましく、3192質量部以下であることがさらに好ましい。
繊維原料処理用酸処理剤中に含まれるオキソ酸の含有量をc質量部とし、化合物の含有量をd質量部とした場合、d/cの値は0.32以上であればよく、0.64以上であることが好ましく、0.94以上であることがより好ましく、1.30以上であることがさらに好ましい。なお、d/cの値は、30以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.95以下であることがさらに好ましい。繊維原料処理用酸処理剤中におけるd/cの値を上記範囲内とすることにより、着色が抑制された繊維状物を得ることができる。さらに、d/cの値を上記範囲内とすることにより、繊維状物に混入する多価金属量を低減することができ、より純度の高い繊維状物を得ることができる。
繊維原料処理用酸処理剤中に含まれるオキソ酸の含有量をc’モルとし、化合物の含有量をd’モルとした場合、d’/c’の値は0.15以上であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましく、0.75以上であることがさらに好ましい。なお、d’/c’の値は、52以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。繊維原料処理用酸処理剤中におけるd’/c’の値を上記範囲内とすることにより、着色が抑制された繊維状物を得ることができる。さらに、d’/c’の値を上記範囲内とすることにより、繊維状物に混入する多価金属量を低減することができ、より純度の高い繊維状物を得ることができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1−1>
原料パルプとして、GAOMI CHEMICAL FIBER製のコットンリンターパルプ(固形分94質量%、坪量571g/mシート状)を使用した。
硫酸純分として870質量部、尿素1596質量部、水490質量部から成る薬液2956質量部を調製した。調製した薬液2956質量部と、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)をSUS316L製の容器中に注入し、45℃で1時間加熱した。
次いで、得られた反応後のパルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、100g(絶乾質量)のパルプに対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
次いで、洗浄後のパルプに対して中和処理を次のようにして行った。まず、100g(絶乾質量)の洗浄後のパルプに対して10Lのイオン交換水を注いで希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下のパルプスラリーを得た。次いで、当該パルプスラリーを脱水して、中和処理が施されたパルプを得た。さらに、中和処理後のパルプに対して、上記洗浄処理を行った。
これにより得られたパルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1350cm−1付近と1180cm−1にスルホ基に基づく吸収が観察され、パルプにスルホ基が付加されていることが確認された。
得られたパルプに対して、微細化処理を次のようにして行った。まず、パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が0.1質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製、クレアミックス2.2S)にて21500rpmで2時間処理して、微細繊維状セルロース分散液を得た。
得られた微細繊維状セルロース分散液を遠心分離し、上澄み液を得た。得られた上澄み液を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、幅20nm程度の微細繊維状セルロースが観察された。
<比較例1−1及び1−2>
尿素の添加量を1596質量部に代えて、それぞれ、266質量部もしくは0質量部として薬液を調製し、調製した薬液を1626質量部もしくは1360質量部用いた以外は、実施例1−1と同様にして、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液を得た。
<参考例1−1>
SUS316L製の反応容器に代えて、テフロン製の反応容器を用いた以外は、比較例1−2と同様にして、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液を得た。
<参考例1−2>
薬液を塩酸純分として11質量部、尿素54質量部、水153質量部となるように調製し、調製した薬液を218質量部用い、それを原料パルプ10質量部(絶乾質量)に加え、反応温度を95℃、加熱時間を2時間とした以外は、実施例1−1と同様にして、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液を得た。
<参考例1−3>
尿素の添加量を54質量部に代えて、0質量部として薬液を調製し、調製した薬液を164質量部用いた以外は、参考例1−2と同様にして、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液を得た。
<実施例2−1>
原料パルプとして、王子製紙製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量245g/mシート状、離解してJIS P 8121−2:2012に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。
この原料パルプに対してリン酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、リン酸と尿素の混合水溶液を添加して、リン酸38質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調製し、薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプをSUS304製の容器中、165℃の熱風乾燥機で600秒加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
次いで、得られたリン酸化パルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、100g(絶乾質量)のリン酸化パルプに対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
次いで、洗浄後のリン酸化パルプに対して中和処理を次のようにして行った。まず、洗浄後のリン酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下のリン酸化パルプスラリーを得た。次いで、当該リン酸化パルプスラリーを脱水して、中和処理が施されたリン酸化パルプを得た。次いで、中和処理後のリン酸化パルプに対して、上記洗浄処理を行った。
これにより得られたリン酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1230cm−1付近にリン酸基に基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。また、得られたリン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
得られたリン酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、スターバースト)で200MPaの圧力にて2回処理し、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液を得た。
X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、微細繊維状セルロースの繊維幅を透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmであった。
<実施例2−2>
尿素の添加量を120質量部に代えて、12質量部とした以外は、実施例2−1と同様にして、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液を得た。
<比較例2−1>
尿素の添加量を120質量部に代えて、0質量部とした以外は、実施例2−1と同様にして、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液を得た。
<評価方法>
[反応物の外観]
実施例、比較例及び参考例において、反応後に得られるセルロース繊維を目視観察し、着色具合を定性評価した。
○:反応後に得られるセルロース繊維は白色である
△:反応後に得られるセルロース繊維は薄緑または茶である
×:反応後に得られるセルロース繊維濃緑または黒である
〔セルロース含有物中の多価金属量の測定〕
実施例、比較例及び参考例で得られた微細繊維状セルロース分散液を105℃で絶乾になるまで乾燥し、微細繊維状セルロースの絶乾固形分を得た。この絶乾固形分0.1gに硝酸5.0mLを加えて、湿式分解装置(CEM社製、MARS5)を用いて湿式分解を行った後、ICP発光分光分析装置(アメテック社製、CIROS120)を用いて、微細繊維状セルロースの絶乾固形分中に含まれる多価金属量を測定した。
Figure 2021036033
Figure 2021036033
実施例においては、加熱反応後の反応物の着色が抑制されており、外観に優れたセルロース繊維が得られていた。一方で、比較例においては、加熱反応後の反応物が着色していた。

Claims (10)

  1. 繊維原料にオキソ酸及び腐食防止剤を添加して、加温する工程(A)を含み、
    前記オキソ酸の添加量をa質量部とし、前記腐食防止剤の添加量をb質量部とした場合、b/aの値が0.32以上である、繊維状物の製造方法。
  2. 前記工程(A)は、金属容器内で行われる、請求項1に記載の繊維状物の製造方法。
  3. 前記繊維原料はセルロース系材料である、請求項1又は2に記載の繊維状物の製造方法。
  4. 前記工程(A)の後に、さらに解繊処理工程(B)を含み、
    前記繊維状物は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維状物の製造方法。
  5. 前記腐食防止剤が、下記式(1)で表される化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維状物の製造方法;
    Figure 2021036033
    上記式(1)において、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Rは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又は−NHR11を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す;−NHR11において、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
  6. 前記腐食防止剤が尿素及び尿素誘導体から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維状物の製造方法。
  7. 前記オキソ酸がリン酸であり、前記b/aの値が0.32以上1.0以下であり、前記加熱する工程(A)における加熱処理温度が145℃以上185℃以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維状物の製造方法。
  8. オキソ酸に由来する基を含み、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含むセルロース含有物であって、
    前記セルロース含有物中の多価金属の含有量が50〜1000ppmである、セルロース含有物。
  9. 前記オキソ酸がリン酸であり、前記多価金属がFe、Cu、Cr、Ni、MoおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8に記載のセルロース含有物。
  10. オキソ酸と下記式(1)で表される化合物を含む繊維原料処理用酸処理剤であって、
    前記繊維原料処理用酸処理剤中に含まれる前記オキソ酸の含有量をc質量部とし、前記化合物の含有量をd質量部とした場合、d/cの値が0.32以上である、繊維原料処理用酸処理剤;
    Figure 2021036033
    上記式(1)において、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Rは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又は−NHR11を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す;−NHR11において、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
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