JP2021032233A - 内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】デコンプ機構を確実に機能させて始動性を向上させる内燃機関を提供する。【解決手段】クランク軸(14)に駆動力を伝えて内燃機関(1)を始動させるスタータモータ(40)と、始動時に排気バルブ(23)に開度を与えて燃焼室(17)を減圧させるデコンプ動作が可能なデコンプ機構(4)と、を備えた内燃機関において、始動時に、デコンプ機構が機能せずスタータモータの駆動力によってクランク軸の回転が進行しない場合に、スタータモータの駆動を停止させてから所定時間後にスタータモータを再駆動させるようにした。【選択図】図7

Description

本発明は、デコンプ機構を備えた内燃機関に関する。
高圧縮比の単気筒エンジンのようにピストンの圧縮反力が大きいエンジンで、圧縮反力を低減して始動を容易にさせる手段として、デコンプ(デコンプレッション)機構が知られている(例えば、特許文献1)。デコンプ機構は、エンジン始動時の圧縮行程で、排気バルブを僅かに開放して燃焼室を減圧させるものである。
特許文献1に記載されたデコンプ機構では、排気バルブの動作を制御する排気カム(排気カムロブ)から突出可能なデコンプカムを備えている。デコンプカムは排気カムから突出する位置に付勢されており、エンジン始動時の圧縮行程でデコンプカムを用いて排気バルブを僅かに開かせる。エンジン回転数(クランク軸の回転速度)が上昇すると、デコンプウエイトに加わる遠心力によってデコンプカムが排気カムの輪郭内に収容されて、デコンプ機構が非作動状態に切り替わる。このようなデコンプ機構を用いることにより、エンジンの始動性が向上する。
特開2010−1789号公報
この種のデコンプ機構では、エンジン停止時に特定の条件下で、デコンプカムが作動状態(排気カムから突出する位置)に戻らない場合がある。近年では、デコンプ機構を備えたエンジンを始動させる手段としてスタータモータ(セルモータ)の採用が増えており、デコンプ機構が機能することを前提として小型軽量のスタータモータの使用が求められている。そのため、デコンプ機構が機能しない状態でスタータモータを駆動すると、高い圧縮反力を乗り越えることができずエンジン始動が困難になる。エンジンが始動しない状態でスタータモータを長時間通電すると、スタータモータ駆動用の回路に大電流が発生して故障などの原因になる。
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、デコンプ機構を確実に機能させて始動性を向上させる内燃機関を提供することを目的とする。
本発明の内燃機関は、クランク軸に駆動力を伝えて内燃機関を始動させるスタータモータと、前記始動時に排気バルブに開度を与えて燃焼室を減圧させるデコンプ動作が可能なデコンプ機構と、を備え、前記始動時に、前記デコンプ機構が機能せず前記スタータモータの駆動力によって前記クランク軸の回転が進行しない場合に、前記スタータモータの駆動を停止させてから所定時間後に前記スタータモータを再駆動させることを特徴とする。
本発明の内燃機関によれば、デコンプ機構が機能しない場合に、スタータモータの駆動停止と再駆動を行うことによって、デコンプ機構を確実に機能させて始動性を向上させることができる。
エンジンの側面図である。 エンジンの概略構成を示す模式図である。 スタータ駆動機構の斜視図である。 動弁装置の斜視図である。 作動状態のデコンプ機構を示す側面図である。 非作動状態のデコンプ機構を示す側面図である。 デコンプ機構の機能回復を示す図である。 本実施の形態のエンジン始動制御を示すグラフである。 本実施の形態のエンジン始動制御を示すフローチャートである。
以下、本発明を適用した実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1と図2は、本実施の形態の内燃機関であるエンジン1の外観と概略構成を示したものである。図3は、エンジン1の始動を行わせるためのスタータ駆動機構2を示している。図4から図6は、エンジン1に設けた動弁装置3と、その一部であるデコンプ機構4を示している。図7はデコンプ機構4の機能回復を示す図である。図8及び図9は、エンジン1の始動制御を説明するための図である。以下の説明中における上下、左右、前後などの各方向は、エンジン1を搭載する車両(自動二輪車)の車体を基準とした方向を意味する。
まず、図1と図2を参照してエンジン1の全体的な構成と制御システムを説明する。この制御システムは、エンジン1及びその周辺構成の動作を、ECM(Engine Control Module)5で制御するように構成されている。
エンジン1は、自動二輪車用の単気筒4サイクルエンジンであり、図1に示すように、クランクケース10の上部に、シリンダブロック11とシリンダヘッド12を取り付けて構成される。クランクケース10内に形成されたクランク室にクランク軸14(図2参照)が配置されている。クランク軸14は左右方向に延びている。
図2に示すように、シリンダブロック11の内部にはシリンダ15が形成され、シリンダ15内にピストン16が往復移動可能に配置されている。クランク軸14とピストン16はコンロッドによって連結されており、ピストン16が往復運動すると、クランク軸14がコンロッドを介して回転される。
シリンダヘッド12内にはシリンダ15の上部に通じる燃焼室17が形成され、燃焼室17の上部には点火プラグ18が設けられている。点火プラグ18は、ECM5から出力される点火信号に基づいて所定のタイミングで点火し、燃焼室17内で燃料と空気の混合気を燃焼させる。混合気の燃焼によってピストン16が往復運動され、クランク軸14の回転動作として出力する。エンジン1の運転時におけるクランク軸14の通常の回転方向を正転方向R1、これと反対のクランク軸14の回転方向を逆転方向R2とする(図1及び図3参照)。クランク軸14の回転角を検出するクランク角センサ19を備え、クランク角センサ19は検出値をECM5に出力する。ECM5は、クランク角センサ19から入力される検出値に基づいて、エンジン回転数(クランク軸14の回転速度)を算出する。
シリンダヘッド12には、燃焼室17に連通する吸気ポート20と排気ポート21が形成されている。吸気ポート20を通じて混合気生成用の空気が流入し、燃焼室17で燃焼した後の排気ガスが排気ポート21を経て外部へ排出される。吸排気に関与する可動弁として、吸気ポート20と燃焼室17の間を開閉する吸気バルブ22と、排気ポート21と燃焼室17の間を開閉する排気バルブ23が設置されている。外気を取り入れるタイミング(吸気行程)で吸気バルブ22が開かれ、排気ガスを排出するタイミング(排気行程)で排気バルブ23が開かれる。
吸気ポート20の上流端には吸気管24が接続される。吸気ポート20及び吸気管24は、吸入空気を流入させる吸気通路を構成する。吸気管24の途中には、上流側から順にエアクリーナ25とスロットルバルブ26が設けられている。エアクリーナ25とスロットルバルブ26の間の吸気通路中には、空気量センサ27が設けられている。空気量センサ27は、エアクリーナ25を通過して吸気管24内を流れる空気流量(吸入空気量)を検出し、その検出値をECM5に出力する。
スロットルバルブ26は、スロットル駆動装置28によって開閉動作を行う。ECM5の指令に応じてスロットル駆動装置28がスロットルバルブ26を駆動して開度を変更させることで、吸気管24から吸気ポート20へ進む吸入空気の流量(吸入空気量)を調整する。具体的には、空気量センサ27で検出される吸入空気量を参照しながら、スロットルバルブ26の開度が制御される。
スロットル駆動装置28には、スロットルバルブ26の開度を検出するスロットル開度センサ29が設けられている。スロットル開度センサ29は、スロットル駆動装置28の動作状態に基づいてスロットルバルブ26の開度を検出し、その検出値をECM5に出力する。
スロットルバルブ26の下流側には、吸気ポート20内に燃料を噴射する燃料噴射装置としてのインジェクタ30が設けられている。インジェクタ30は、ECM5の指令に応じて吸気ポート20内に所定量の燃料を所定のタイミングで噴射する。
排気ポート21の下流端には排気管31が接続される。排気ポート21及び排気管31は、排気ガスを排出する排気通路を構成する。排気管31には、不図示の触媒やマフラが接続される。
乗員によるアクセル32の操作は、アクセルポジションセンサで検出されて、アクセル開度情報を含むアクセル操作信号としてECM5に入力される。ECM5は、アクセル操作信号に応じて、点火プラグ18、スロットルバルブ26、インジェクタ30などの動作を制御する。具体的には、アクセル操作信号による出力要求が大きくなると、ECM5は、スロットルバルブ26の開度を大きくすると共に、インジェクタ30からの燃料噴射を増加させる。
なお、電動式のスロットル駆動装置28ではなく、乗員が操作するアクセルグリップとスロットルボディをワイヤで接続して、ワイヤの牽引量に応じてスロットルバルブ26の開度を機械的に変化させるタイプのスロットル装置であってもよい。また、スロットルバルブ26の開度の検出は、アクセル開度を検知するアクセルポジションセンサの出力に基づいて行ってもよい。
図1に示すように、クランクケース10の右側面にはクラッチカバー33が取り付けられる。クランクケース10とクラッチカバー33の間には、クラッチ機構(不図示)を収納するクラッチ室(不図示)が形成される。クランク軸14の回転は、クラッチ機構を経て変速機構(不図示)に伝達され、自動二輪車の駆動輪(後輪)を駆動させる駆動力として取り出される。
クランクケース10の左側面には、左方に向けて外囲壁10aが突出している。外囲壁10aは、クランク軸14を囲むように形成されている。外囲壁10aで囲まれた開口を塞ぐように、クランクケース10の左側に発電機カバー(不図示)が取り付けられる。発電機カバーは、外囲壁10aの端面である合わせ面に当接してクランクケース10に固定される。この状態で、クランクケース10と発電機カバーによって囲まれる発電機室が形成される。図1は発電機カバーを外した状態である。
発電機室内にはクランク軸14の一端が突出しており、クランク軸14の回転によって発電を行う発電機34が発電機室内に設けられている。発電機34は、クランク軸14に固定される有底の円筒形状のロータ34aと、ロータ34aの内径側に位置するコア(コイル)34bを有している。ロータ34aは磁性体からなり、エンジン1の運転状態ではクランク軸14の回転に伴ってロータ34aが回転し、コア34bを通る磁束密度が変化し、電磁誘導によってコア34bに電流が発生する。発電機34で発生するのは交流電流であり、整流器(不図示)で直流に変換して電圧調整回路(不図示)で電圧を一定以下に制御する。こうして発電機34を用いて得られた電力は、バッテリー35(図2参照)に充電され、エンジン1を搭載した自動二輪車の電装系に供給される。
続いて、図1と図3を参照して、スタータ駆動機構2の構成を説明する。クランクケース10の上部には、スタータモータ40が取り付けられている。スタータモータ40は、バッテリー35からの電力供給を受けて駆動される。スタータモータ40の本体部から左方に向けて出力軸40aが突出している。出力軸40aは発電機室内に挿入されている。発電機室内には、発電機34の後部上方に、3つのスタータアイドルギヤ41,42,43が配されている。出力軸40aはスタータアイドルギヤ41に噛合しており、スタータアイドルギヤ41からスタータアイドルギヤ42,43の順で出力軸40aの回転を減速して伝達するギヤ列を構成している。
スタータモータ40は、乗員によるスタータスイッチ46(図2)の操作(スタータスイッチ46の押し込みなど)によって、バッテリー35から通電されて駆動する。スタータスイッチ46が操作されると、操作信号がECM5に入力され、スタータモータ40を駆動するモータドライバにECM5が駆動信号を送る。乗員によるスタータスイッチ46の操作が解除されると、ECM5はモータドライバに停止信号を送り、スタータモータ40が停止する。
図3に示すように、スタータ駆動機構2はワンウェイクラッチ44を備えている。ワンウェイクラッチ44は、スタータギヤ44aと外輪44bと内輪44cを有している。スタータギヤ44aの周縁には、スタータアイドルギヤ43が噛合する歯が形成されている。スタータギヤ44aの中心部には円筒部44dが設けられ、円筒部44dと外輪44bの間に内輪44cが配置されている。
外輪44bは、内輪44cを囲む形状であり、発電機34のロータ34a(図1)に対して固定されている。ロータ34aはクランク軸14に固定されているので、外輪44bはクランク軸14と一体に回転する。内輪44cには、回転方向に位置を異ならせて複数のローラ(不図示)が保持されている。各ローラは、外輪44bの内周側に形成したカム面(不図示)と、スタータギヤ44aの円筒部44dの外周面に対して接触する。各ローラが配置されている外輪44bと円筒部44dの間の空間を、収容空間とする。
ワンウェイクラッチ44における各ローラの収容空間は、正転方向R1に進むほど半径方向に狭く(外輪44bのカム面と円筒部44dの外周面との間の半径方向間隔が小さく)なっている。ワンウェイクラッチ44には、正転方向R1(収容空間が半径方向に狭くなる方向)に向けて各ローラを付勢する付勢部材(不図示)が設けられている。付勢部材はバネなどからなる。
このワンウェイクラッチ44の構成により、スタータモータ40の駆動力が伝達されたスタータギヤ44aが正転方向R1に回転すると、各ローラが外輪44bのカム面と円筒部44dの外周面に対する接触面圧によって楔のように作用して、スタータギヤ44aと外輪44bが正転方向R1に一体的に回転するようになる。これにより、エンジン1が停止している状態でスタータモータ40を駆動させると、正転方向R1への駆動トルクがクランク軸14に伝達されて、エンジン1を始動させることができる。エンジン1の始動が終了してスタータモータ40の駆動を止める(スタータスイッチ46の操作を解除する)と、スタータギヤ44aが回転を停止する。
エンジン1の運転中には、クランク軸14と共に外輪44bが正転方向R1に回転する。このとき、正転方向R1への外輪44bの回転速度が、正転方向R1へのスタータギヤ44aの回転速度を上回っていると(スタータギヤ44aが停止している場合も含む)、各ローラは収容空間のうち半径方向に広くなる側に進もうとするため、外輪44bと円筒部44dに対する各ローラの接触面圧(楔の効果)が解除される。従って、所定以上のエンジン回転数であるエンジン1の運転中には、ワンウェイクラッチ44は、クランク軸14の駆動トルクをスタータギヤ44aやスタータモータ40に伝えないフリー状態になる。
このように、ワンウェイクラッチ44は、エンジン1の始動時にスタータモータ40の駆動トルクをクランク軸14に伝達し、エンジン1の運転中のクランク軸14の駆動トルクをスタータモータ40側に伝達しないという機能を有する。
なお、エンジン1が停止に近い状態(回転数が低い場合など)にあるとき、ピストン16に対する圧縮反力などを受けてクランク軸14が逆転方向R2に回転しようとする場合がある。クランク軸14が逆転方向R2に回転すると、ワンウェイクラッチ44の各ローラの接触面圧を高める(楔の効果が生じる)方向に外輪44bが回転する。このとき、停止状態のスタータモータ40によってスタータギヤ44aの回転が規制されていると、各ローラを介して外輪44bの回転が制限され、逆転方向R2へのクランク軸14の回転を止めるように作用する。
続いて、主に図4から図6を参照して、吸気バルブ22と排気バルブ23の開閉動作を行わせる動弁装置3の構成を説明する。吸気バルブ22と排気バルブ23は周知のものであるため、詳細な構成の説明は省略する。吸気バルブ22と排気バルブ23はそれぞれ、バルブスプリング(不図示)によって閉じ方向に付勢されており、ロッカーアームの揺動によって開閉動作を行う。動弁装置3は、クランク軸14の回転に同期して、吸気バルブ22用のロッカーアーム(不図示)と、排気バルブ23用のロッカーアーム61(図7)を所定のタイミングで揺動させる。なお、ロッカーアームを介さずに、吸気カムや排気カムがタペットを押圧して吸気バルブや排気バルブの動作を行わせるタイプの動弁装置であってもよい。
動弁装置3は、シリンダヘッド12の上部に形成される動弁室内に配置されるカムシャフト49とカムシャフト50を備えている(図1参照)。カムシャフト49,50は、クランク軸14と平行に左右方向へ延びている。カムシャフト49には吸気カム53が設けられており、カムシャフト50には排気カム54が設けられている。
動弁装置3のうち、排気バルブ23の駆動に関与する部分を図4から図6に示した。カムシャフト50は、軸受51,52を介してシリンダヘッド12に対して回転可能に支持されている。カムシャフト50には、軸方向に位置を異ならせて、2つの排気カム54とカムスプロケット55が設けられている(固定されている)。クランク軸14と一体に回転するカムドライブギヤ(不図示)とカムスプロケット55の間にカムチェーン(不図示)が架け渡されており、クランク軸14の回転がカムチェーンを介してカムスプロケット55に伝達される。従って、エンジン1の運転中には、クランク軸14に同期してカムシャフト50が回転する。クランク軸14の正転方向R1への回転に対応するカムシャフト50の回転方向を正転方向R11、クランク軸14の逆転方向R2への回転に対応するカムシャフト50の回転方向を逆転方向R12とする(図4から図6参照)。
詳細な説明を省略するが、吸気カム53を備えたカムシャフト49は、カムシャフト50と同様の機構(カムチェーンやカムスプロケット)を介して、クランク軸14に同期して回転される。
吸気カム53と排気カム54の周面にはカム面が形成されている。吸気カム53のカム面に対して、吸気バルブ22側のロッカーアーム(不図示)に設けたカムフォロアが当接し、排気カム54のカム面に対して、排気バルブ23側のロッカーアーム61(図7)に設けたカムフォロア61a(図7)が当接している。カムシャフト49,50が回転すると、吸気カム53と排気カム54のそれぞれのカム面に対するカムフォロアの当接位置が変化して各ロッカーアームが揺動を行い、吸気バルブ22と排気バルブ23がそれぞれ所定のタイミングで開閉動作を行う。
排気カム54のカム面は、ベース円部54aとリフト制御部54bを含んでいる。ベース円部54aは、カムシャフト50の回転中心からの半径が小さい円形(円筒)状部分である。リフト制御部54bは、ベース円部54aに対して外径側への突出量を大きくした非円形の形状である。
排気バルブ23用のロッカーアーム61のカムフォロア61aが、排気カム54のベース円部54aに対向する状態では、バルブリフト量がゼロであり、排気バルブ23が閉じている。
正転方向R11へのカムシャフト50の回転に伴い、リフト制御部54bがロッカーアーム61のカムフォロア61aに当接すると、バルブスプリングの付勢力に抗して排気バルブ23のリフト動作が開始される。リフト制御部54bのうち外径方向に最も突出した部分がカムフォロア61aに当接する時点で、排気バルブ23のバルブリフト量(開度)が最大になる。
さらに正転方向R11へカムシャフト50が回転すると、リフト制御部54bによるロッカーアーム61への押圧が徐々に解除され、バルブスプリングの付勢力によって排気バルブ23のリフト量が徐々に小さくなる。そして、ベース円部54aがカムフォロア61aに対向する状態で、排気バルブ23が閉じる。
詳細な説明を省略するが、吸気カム53のカム面は、排気カム54と同様にベース円部53aとリフト制御部53bを含んでおり、カムシャフト49の回転に応じて吸気バルブ22の開度を変化させる。
カムシャフト50の周面の一部には、軸方向に延びる収容溝50aが形成されている。収容溝50aは、軸方向で排気カム54からカムスプロケット55にかけての範囲に形成されている。2つの排気カム54のうち一方には、ベース円部54aの周面の一部を切り欠いて、収容溝50aに連通する収容凹部54cが形成されている。カムスプロケット55には、収容溝50aの延長上に位置する円形の貫通孔55aが形成されている。
動弁装置3は、エンジン1の始動時に排気バルブ23を僅かに開かせて(開度を与えて)圧縮反力を低減させるデコンプ動作を行うデコンプ機構4を備えている。デコンプ機構4は、デコンプカムシャフト56とデコンプウエイト57を有している。
デコンプカムシャフト56は、カムシャフト50の軸方向に延びる円柱状の部材であり、収容溝50aに収容されている。デコンプカムシャフト56は、軸受52の内側を通過しており、収容溝50aの内面と軸受52とを介して、デコンプカムシャフト56自身の軸線を中心とする回転が可能に支持されている。
デコンプカムシャフト56の一方の端部にはデコンプカム58が形成されている。デコンプカム58は、円柱状のデコンプカムシャフト56の一部を切り欠いた形状(Dカット形状)をなし、切り欠かれていない部分に相当する円筒面部58aと、切り欠かれた部分に相当する平面部58bとを有している。
図5に示すように、円筒面部58aは、収容凹部54cの外側に向いたときに、ベース円部54aよりも外径方向に突出する形状(寸法)である。図6に示すように、平面部58bは、収容凹部54cの外側に向いたときに、ベース円部54aに対して外径方向に突出せずに収容凹部54c内に収容される形状(寸法)である。つまり、カムシャフト50に対するデコンプカムシャフト56の回転に応じて、デコンプカム58は、排気カム54のベース円部54aに対して外径方向に突出する突出位置(図5)と、突出しない格納位置(図6)に変化する。
デコンプカムシャフト56の他方の端部は、貫通孔55aを貫通してデコンプウエイト57に接続している。デコンプウエイト57は、カムスプロケット55の一方の側面に沿って配置されており、デコンプカムシャフト56と一体的に回転(揺動)する。デコンプウエイト57は、デコンプカムシャフト56に接続する基端部57aから、L字状のアーム57bを延出させている。図5及び図6に示すように、アーム57bは、カムスプロケット55の外周付近に沿って逆転方向R12へ延びる鈎状の形状を有している。
図4に示すように、カムスプロケット55に支持プレート59が取り付けられている。支持プレート59は、カムスプロケット55との間にデコンプウエイト57を支持して、軸方向でのデコンプカムシャフト56及びデコンプウエイト57の位置を定める。また、支持プレート59の所定部位にデコンプウエイト57が当接することによって、デコンプウエイト57の揺動範囲が定められる。具体的には、デコンプカム58の突出位置(図5)と、デコンプカム58の格納位置(図6)が、デコンプウエイト57の揺動範囲の一端と他端になるように構成されている。
デコンプウエイト57は、図5及び図6に模式的に表すバネ60によって、デコンプカム58を突出位置にさせる方向(図5及び図6の時計方向)に向けて付勢されている。バネ60は、例えばコイルバネやトーションバネなどで構成されるものであり、具体的な形態は限定されない。
カムシャフト50が回転すると、カムシャフト50の回転中心から偏心して設けられたデコンプウエイト57が、遠心力によってデコンプカムシャフト56を中心として揺動する。より詳しくは、カムシャフト50が正転方向R11に回転すると、デコンプウエイト57を図5及び図6で反時計方向に揺動させる遠心力が働く。この遠心力がバネ60の付勢力を超えると、デコンプウエイト57が揺動して、デコンプカム58が突出位置(図5)から格納位置(図6)に回転する。
以上の構成のデコンプ機構4は、次のように動作する。エンジン1の停止状態では、カムシャフト50が回転しておらず、デコンプウエイト57に対して遠心力が作用していない。そのため、図5に示すように、バネ60の付勢力によってデコンプカム58が突出位置に保持されて、デコンプ機構4は作動状態にある。
停止状態のエンジン1を始動させるとき、スタータモータ40の駆動によってクランク軸14が正転方向R1に回転し、これに応じてカムシャフト50が正転方向R11に回転する。すると、圧縮行程において、ベース円部54aよりも外径方向に突出するデコンプカム58の円筒面部58aによって、排気バルブ23用のロッカーアーム61が押圧されて、排気バルブ23が僅かにリフトされる。これにより、排気通路への圧抜きが行われて圧縮反力が低減されて、スタータモータ40の駆動力によってピストン16が圧縮上死点を超えることができる。従って、小型のスタータモータ40を用いて、高圧縮比の単気筒エンジンであるエンジン1における確実な始動を実現できる。
エンジン1が始動してクランク軸14が所定の回転速度(アイドル状態の回転速度)まで達すると、クランク軸14に同期して回転するカムシャフト50に支持されているデコンプウエイト57が、遠心力によってバネ60の付勢力に抗して揺動する。すると、デコンプウエイト57に接続しているデコンプカムシャフト56のデコンプカム58が、図5の突出位置から図6の格納位置へと回転する。これにより、平面部58bが外径側を向き、デコンプカム58(円筒面部58a)が収容凹部54c内に格納されてベース円部54aよりも突出しない状態、すなわちデコンプ機構4の非作動状態になる。デコンプ機構4の非作動状態では、圧縮行程でデコンプカム58(円筒面部58a)による排気バルブ23のバルブリフトが行われず、エンジン1はデコンプ動作を伴わない通常の運転を行う。
エンジン1の運転が停止してクランク軸14の回転速度が所定以下になると、デコンプウエイト57に働く遠心力が減少し、バネ60の付勢力によってデコンプウエイト57が揺動し、デコンプカム58が格納位置(図6)から突出位置(図5)に回転する。これにより、デコンプ機構4が作動する状態で次のエンジン始動を行うことができる。
ところで、図7(A)に示すように、特定の条件下では、エンジン1の運転停止に伴ってデコンプカム58が突出位置に戻らず、デコンプ機構4が機能しなくなる場合がある。図7(A)の状態では、デコンプカム58の平面部58bがロッカーアーム61のカムフォロア61aに対向しており、収容凹部54c内に格納されている(格納位置にある)デコンプカム58が、突出位置へ回転することが妨げられる。その結果、エンジン運転中の遠心力で格納位置にあったデコンプカム58が、エンジン1の運転を停止しても格納位置に保持されたままの状態になる。
例えば、エンジン停止の際に、惰性で正転方向R1に回転するクランク軸14は、圧縮行程での圧縮反力による抵抗を受けて停止し、続いて逆転方向R2へ回転しようとする。上述のように、クランク軸14が逆転方向R2に回転すると、ワンウェイクラッチ44がクランク軸14の回転を止めるように作用する。従って、エンジン停止時のクランク軸14の停止位置は、圧縮行程での特定範囲に集中する傾向がある。そして、圧縮反力とワンウェイクラッチ44の相互作用によって、圧縮行程の特定位置でクランク軸14が急停止されると、これに伴ってカムシャフト50の回転も急停止される。このとき、デコンプカム58がロッカーアーム61のカムフォロア61aに対向していると、バネ60の付勢力によってデコンプカム58が格納位置から突出位置に戻る前に、平面部58bとカムフォロア61aの当接によってデコンプカム58の復帰回転が制限されてしまい、図7(A)の状態になる。
デコンプ機構4が機能しなくなる別の原因として、エンジン1が停止する際に、バネ60の付勢力によってデコンプカム58が格納位置から突出位置に向けて一旦回転したものの、その後のクランク軸14及びカムシャフト50の逆転方向R2,R12への回転に伴って、デコンプカム58がカムフォロア61aに当接して格納位置へ押し戻されてしまい、図7(A)の状態になる可能性もある。
原因がいずれの場合も、エンジン1が停止した段階で図7(A)の状態になると、デコンプ機構4の本来の作用が得られない非作動状態から、次回のエンジン始動を行うことになる。スタータモータ40は、デコンプ機構4が作動する状態を前提として出力が設定されているので、デコンプ機構4が非作動状態のままであると、スタータモータ40に要求される駆動トルク(圧縮上死点を乗り越えるために必要なトルク)が過大になり、スタータモータ40の通電を続けてもエンジン1を始動させることができなくなる。そして、この状態が継続すると、スタータモータ40の駆動回路に大電流が発生して不具合(回路の焼損など)が生じてしまうおそれがある。本実施の形態は、このような不具合を防いで、エンジン停止時の状態に関わらずデコンプ機構4を機能させて、確実なエンジン1の始動を実現するものである。以下、その詳細を説明する。
図8に、圧縮行程における筒内圧(シリンダ15及び燃焼室17の内圧)と乗り越えトルクとの関係を示した。デコンプ機構4が作動状態(デコンプカム58が突出位置にある状態)の場合の筒内圧P1は、デコンプ機構4が非作動状態(デコンプカム58が格納位置にある状態)の場合の筒内圧P2よりも小さい。この筒内圧P1,P2の差に応じて、デコンプ機構4が作動状態の場合にスタータモータ40が付与する乗り越えトルクQ1と、デコンプ機構4が非作動状態の場合にスタータモータ40が付与する乗り越えトルクQ2が異なっている。
乗り越えトルクが、スタータモータ40の仕様上の最大トルクであるモータ設定トルクQMの範囲内である場合(図8のグラフでモータ設定トルクQMよりも上方にある場合)、圧縮反力に抗してスタータモータ40でクランク軸14を正転方向R1に回転させることができる。
図8に示すように、デコンプ機構4が作動状態の場合の乗り越えトルクQ1は、圧縮上死点V1を超えるまでモータ設定トルクQMの範囲内であり、圧縮反力に抗してスタータモータ40によってクランキングさせることができる。
一方、デコンプ機構4が非作動状態の場合、乗り越えトルクQ2とモータ設定トルクQMが途中で交差している。この交点位置で、スタータモータ40の駆動トルクとエンジン1の圧縮反力とが釣り合う状態になり、クランク軸14を正転方向R1にそれ以上回転させることができなくなる。この状態のクランク軸14の角度位置を、トルク釣り合い位置V2とする。上述のように、デコンプ機構4が機能して圧縮反力を低減させる状態を前提としてスタータモータ40の出力を設定しているため、デコンプ機構4の非作動状態では、スタータモータ40の駆動トルクだけでは圧縮上死点V1を乗り越えさせることができず、トルク釣り合い位置V2が存在する。
クランク軸14の角度位置に関し、デコンプ機構4が機能する位置(デコンプカム58の円筒面部58aがロッカーアーム61のカムフォロア61aを押圧してデコンプ動作させる位置)をデコンプ機能位置V3とする。図8に示すように、トルク釣り合い位置V2が、デコンプ機能位置V3よりも圧縮上死点V1側に設定されている。言い換えれば、クランク軸14やカムシャフト50の正転方向R1,R11において、デコンプ機能位置V3、トルク釣り合い位置V2、圧縮上死点V1の順序になるように設定している。
図7(A)の状態は、デコンプカム58が収容凹部54cに格納されていて機能していないが、クランク軸14の角度位置としてはデコンプ機能位置V3に相当する。そして、図7(A)の状態で乗員がスタータスイッチ46を操作してスタータモータ40が駆動されると、クランク軸14は、デコンプ機能位置V3よりも圧縮上死点V1側のトルク釣り合い位置V2まで回転する。この場合、図8に示す筒内圧P2と乗り越えトルクQ2の関係で推移しているため、スタータモータ40の駆動が継続されている間は、圧縮反力との釣り合いによって、クランク軸14はトルク釣り合い位置V2で停止したままになり、エンジン1が適切に始動されない。
クランク軸14のトルク釣り合い位置V2に対応する排気カム54の角度位置を図7(B)に示した。デコンプ機能位置V3(図7(A))からトルク釣り合い位置V2までの回転によって、デコンプカム58がロッカーアーム61のカムフォロア61aと対向する位置関係ではなくなり、カムフォロア61aによる回転制限が解除されたデコンプカム58が、バネ60の付勢力で格納位置から突出位置へ回転している。
ECM5は、スタータモータ40の駆動開始からのタイムカウントを行うと共に、クランク角センサ19の出力信号を監視する。そして、所定時間が経過してもクランク軸14の回転が検出されない(クランク軸14の速度がゼロ、もしくは速度ゼロとみなせる程度の挙動しか行っていない)場合に、スタータモータ40の駆動を停止する。
スタータモータ40が駆動停止すると、クランク軸14を正転方向R1に回転させる力が解除されて力の均衡状態が解除されるので、圧縮反力を受けるクランク軸14が、トルク釣り合い位置V2からデコンプ機能位置V3に向けて逆転方向R2に回転する。すると、図7(C)に示すように、排気カム54が逆転方向R12に回転し、デコンプカム58がロッカーアーム61のカムフォロア61aに対向する位置関係になる。
先のスタータモータ40の駆動によるトルク釣り合い位置V2までの回転の際に、デコンプカム58がバネ60の付勢力で突出位置に復帰している。そのため、逆転方向R2に回転するクランク軸14がデコンプ機能位置V3に達すると、図7(C)に示すように、デコンプカム58の円筒面部58aがカムフォロア61aに当接して、ロッカーアーム61をバルブリフト方向に押し込む。これにより、デコンプ機構4が作動状態になり、デコンプ機構4の機能が回復する。
そして、デコンプ機構4の機能が回復した状態でスタータモータ40を再度駆動させると、図8に示す筒内圧P1と乗り越えトルクQ1の関係に切り替わっているため、スタータモータ40の駆動力によってエンジン1を始動させることができる。
以上のエンジン始動時のクランク軸14の動作を、図8に一点鎖線Fで模式的に示した。エンジン1の停止状態からの最初のスタータモータ40の駆動では、クランク軸14がトルク釣り合い位置V2まで正転し(F1)、トルク釣り合い位置V2に到達したところで、圧縮反力によってそれ以上の回転が制限される。スタータモータ40の駆動を停止すると、クランク軸14が圧縮反力を受けてトルク釣り合い位置V2からデコンプ機能位置V3まで逆転する(F2)。続いて、スタータモータ40の再駆動によって、クランク軸14がデコンプ機能位置V3からの正転を行う(F3)。スタータモータ40の再駆動の際には、デコンプ機構4が機能回復しているので、クランク軸14は圧縮反力によって停止されずに正転を継続できる。
図9のフローチャートを参照して、本実施の形態におけるエンジン1の始動制御の流れについて説明する。ステップS1では、スタータスイッチ46の操作の有無をチェックする。スタータスイッチ46の操作が検知された場合(ステップS1のYES)、当該操作によるスタータモータ40の駆動指示が継続しているかを、ステップS2でチェックする。駆動指示が継続的なものである場合(ステップS2のYES)、ステップS3に進み、ECM5が駆動信号を発してスタータモータ40の駆動を開始させる。また、ECM5は、スタータモータ40の駆動からのタイムカウントを開始する。なお、ステップS3では明示していないが、ECM5は、スタータモータ40の駆動に合わせて、インジェクタ30からの燃料噴射や点火プラグ18による点火など、エンジン1の始動に必要な各種動作も実行させる。
スタータモータ40の駆動開始後に、ステップS4でクランク軸14が回転しているか否かを判定する。この判定は、クランク角センサ19の出力信号を参照してECM5が行う。クランク軸14の回転が検出された場合(ステップS4のYES)、ステップS2に戻ってスタータモータ40の駆動指示が継続しているかを判定する。
スタータモータ40の駆動開始から所定時間が経過してもクランク軸14の回転が検出されない場合(ステップS4のNO)、ステップS5に進み、ECM5がスタータモータ40への通電を停止するように制御し、スタータモータ40の駆動を停止させる。なお、ステップS5では明示していないが、ECM5は、スタータモータ40の駆動停止に合わせて、インジェクタ30からの燃料噴射や点火プラグ18による点火なども停止させる。
図7(A)のようなデコンプ機構4の非作動状態でスタータモータ40の駆動を行った場合、スタータモータ40の駆動継続中は、クランク軸14がトルク釣り合い位置V2(図8)から圧縮上死点V1側に進めなくなる。そして、ステップS5でのスタータモータ40の駆動停止によって、クランク軸14が圧縮反力で逆転方向R2(デコンプ機能位置V3側)に回転する。つまり、クランク軸14が、図8に示すF1からF2の動作を行う。このクランク軸14の一連の動作により、デコンプ機構4は、デコンプカム58を格納位置から突出位置に回転させ、図7(C)に示す作動状態に復帰する。
ステップS5に続くステップS6では、スタータモータ40の駆動停止回数を示すカウンタにカウント数「1」を追加すると共に、規定時間待機する。この待機時間は、スタータモータ40の駆動停止により生じるクランク軸14の逆転方向R2の回転(図8のF2)と、デコンプカム58によるロッカーアーム61の押し込み(図7(C))に要する時間に、所定のマージンを加えたものである。ステップS6での待機時間は、エンジンの構成などによっても異なるが、一例として0.1〜0.5秒程度に設定される。
ステップS6で設定したカウンタの数が規定値に達したか否かを、ステップS7で判定する。カウンタ数が規定値未満の場合(ステップS7のNO)、ステップS2に戻る。そのため、スタータモータ40の駆動指示が継続しているにも関わらずクランク軸14の回転が検出されない間は(ステップS4のNO)、デコンプ機構4の機能回復がなされていないという判定になり、カウンタ数が規定値に達するまで、スタータモータ40の駆動停止(ステップS5)と再駆動(ステップS3)が繰り返される。つまり、スタータモータ40の駆動停止と再駆動を、規定回数自動で繰り返すように制御する。
スタータモータ40の1回の駆動停止だけではデコンプ機構4が作動状態に復帰しない場合、駆動停止と再駆動を複数回行うことで、デコンプ機構4が作動状態に復帰する可能性が高くなる。ステップS7でのカウンタ数の規定値は、デコンプ機構4を作動状態に復帰させるのに足りると想定される値に設定される。一般には、ステップS3からステップS6までの動作及び制御は2回程度で足りるため、ステップS7でのカウンタ数の規定値を「2」や「3」などに設定するとよい。しかし、必要に応じて、ステップS7でのカウンタ数の規定値をそれ以上にして、スタータモータ40の駆動停止と再駆動の回数を増やしてもよい。
規定値のカウンタ数まで達した場合(ステップS7のYES)、デコンプ機構4が作動状態に復帰できない何らかのエラーが発生している、あるいはデコンプ機構4以外にエンジン始動を妨げる別種のエラーが発生している、という可能性が想定される。そのため、ステップS7で規定値のカウンタ数に達した場合は、それ以上のスタータモータ40の再駆動を行わずに、図9の制御フローから抜ける。
なお、ステップS7でカウンタ数が規定値に達して制御フローから抜ける場合には、音や表示などによる報知手段を用いて、エンジン1の始動に支障が生じているという警告を発するように制御してもよい。
また、ステップS1の判定とステップS2の判定のいずれかでNOである場合、すなわちスタータスイッチ46が操作されない場合や、スタータスイッチ46の継続的な操作(スタータモータ40の駆動指示)が解除された場合には、始動制御を終えて図9の制御フローから抜ける。
例えば、エンジン1が適正に始動してアイドリング状態に移行したことを確認した場合には、乗員はスタータスイッチ46の継続的な操作を解除するので、当該操作解除に伴ってステップS2の判定がNOになる。
なお、上記の制御フローは、エンジン1を始動させる際に、乗員がスタータスイッチ46を継続的に操作する形態と、乗員がスタータスイッチ46を一時的に操作する形態(スタータスイッチ46を一度押したら離すタイプの操作)のいずれにも対応することが可能である。乗員がスタータスイッチ46を一時的に操作する形態では、ステップS2において、スタータスイッチ46への操作入力から所定時間が経過するまで、スタータモータ40の継続的な駆動指示が行われているという判定にする。
以上のように、本実施の形態のエンジン1では、スタータモータ40に通電しているにも関わらずクランク軸14の回転が検出されない場合に、スタータモータ40の駆動停止と再駆動を少なくとも一回ずつ行うことでデコンプ機構4の機能を回復させ、スタータモータ40に過大な負荷を与えずに確実に始動させることができる。スタータモータ40の駆動力とエンジン1の圧縮反力とが釣り合った状態のままスタータモータ40の駆動を継続させてしまうことがないため、スタータモータ40の長時間駆動に伴う大電流からシステムの破損を回避することができる。また、デコンプ機構4が確実に機能する状態でのエンジン始動を実現できるため、必要最低限な出力及びサイズのスタータモータ40を選択可能となり、電装系やエンジン1全体の小型軽量化を図ることができる。
スタータモータ40の駆動停止と再駆動はECM5の制御によって規定回数まで自動的に実行されるため、スタータモータ40の駆動停止後に乗員がスタータスイッチ46を押し直す必要がなく、複雑な操作による手間をかけずに確実に効果を得ることができる。
デコンプ機構4の機能の回復は、スタータモータ40の駆動と駆動停止により生じるクランク軸14の往復回転(デコンプ機能位置V3からトルク釣り合い位置V2までの往復動作)に伴って実現される。そして、デコンプ機構4の機能を回復させるための新規な部品などは必要としないため、簡単な構成で効果が得られる。つまり、構成の面では、クランク軸14の角度位置に関して、トルク釣り合い位置V2がデコンプ機能位置V3よりも圧縮上死点V1側にあるという要件を満たしていればよい。また、クランク角センサ19で検出するクランク軸14の回転状態に基づいてスタータモータ40の駆動をオンオフさせるというシンプルな制御であるため、制御の負担が少なく、高価な制御系を要さずに効果を得ることができる。従って、低コストにエンジン1の始動性の向上を実現できる。
なお、以上の説明では、スタータモータ40自体のトルクの変動については省略したが、スタータモータ40が実際に発生するトルクは、電力供給を行うバッテリー35の充電状態による影響を受ける。そのため、上述したトルク釣り合い位置V2とデコンプ機能位置V3の位置関係などは、バッテリー35の充電状態によるスタータモータ40のトルク変動を加味して設定する。
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている構成や制御等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、エンジン始動時のスタータモータ40への通電をクランク角センサ19の検出値に基づいてECM5が制御するものとしたが、これと同様の通電制御にバッテリー35の保護回路を用いることも可能である。具体的には、バッテリー35の内部に、電流値を閾値としてスタータモータ40への通電のオンオフを切り替える保護スイッチを設けると共に、スタータモータ40の駆動に関して所定の保護期間(停止時間)を設定する。エンジン始動指示を受けてバッテリー35からスタータモータ40に通電を行い、上記の閾値を超える電流値になった場合、デコンプ機構4が機能せずに適切なクランキングが実行されていないと判定して、バッテリー35からスタータモータ40への通電を停止する。そして、上記の保護期間(停止時間)の経過後に、バッテリー35からスタータモータ40への通電を再開してスタータモータ40を再駆動させる。
この変形例から分かるように、本発明において、デコンプ機構が機能しないことに起因するエンジン始動のエラー(スタータモータを駆動してもクランク軸の回転が進行しないこと)を検出及び判定する手段は、一律のものではなく、様々な検出手段や判定手段を用いることが可能である。
本発明の内燃機関は車両用のエンジンには限定されない。用途に関わりなく、同様の構成を備える内燃機関全般に適用が可能である。
以上説明したように、本発明は、内燃機関においてデコンプ機構を確実に機能させて始動性を向上させるという効果を有し、特に、小型軽量なスタータモータで確実に始動させることが求められる内燃機関に有用である。
1 :エンジン
2 :スタータ駆動機構
3 :動弁装置
4 :デコンプ機構
14 :クランク軸
17 :燃焼室
19 :クランク角センサ
22 :吸気バルブ
23 :排気バルブ
32 :アクセル
33 :クラッチカバー
34 :発電機
35 :バッテリー
40 :スタータモータ
44 :ワンウェイクラッチ
46 :スタータスイッチ
49,50 :カムシャフト
53 :吸気カム
54 :排気カム
56 :デコンプカムシャフト
58 :デコンプカム
V1 :圧縮上死点
V2 :トルク釣り合い位置
V3 :デコンプ機能位置

Claims (4)

  1. クランク軸に駆動力を伝えて内燃機関を始動させるスタータモータと、
    前記始動時に排気バルブに開度を与えて燃焼室を減圧させるデコンプ動作が可能なデコンプ機構と、を備え、
    前記始動時に、前記デコンプ機構が機能せず前記スタータモータの駆動力によって前記クランク軸の回転が進行しない場合に、前記スタータモータの駆動を停止させてから所定時間後に前記スタータモータを再駆動させることを特徴とする内燃機関。
  2. 前記デコンプ機構が機能していない状態での前記スタータモータの駆動トルクと前記内燃機関の圧縮反力とが釣り合う前記クランク軸の位置は、前記デコンプ機構が前記デコンプ動作を行うときの前記クランク軸の位置よりも圧縮上死点側であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記クランク軸の回転を検知するクランク角センサを備え、前記クランク軸の回転が前記クランク角センサにより検知されない場合に、前記スタータモータの前記駆動停止と前記再駆動を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
  4. 前記スタータモータの前記駆動停止と前記再駆動を、規定回数自動で繰り返すことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関。
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