JP2021031807A - マルチフィラメント糸及びこれを用いた熱成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 加工性が良好で、機械的にも熱的にも両者において寸法安定性に優れるマルチフィラメント糸を提供することにある。【解決手段】 芯成分がポリエチレンテレフタレートで、鞘成分が該ポリエチレンテレフタレートよりも融点の低い共重合ポリエステルである芯鞘型複合長繊維よりなるマルチフィラメント糸であり、マルチフィラメント糸の総繊度が150〜1800デシテックス、マルチフィラメント糸の中間伸度(X)と、150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)との和が20%以下であるマルチフィラメント糸。【選択図】 なし
Description
本発明は、芯鞘型複合長繊維よりなるマルチフィラメント糸に関し、さらには、マルチフィラメント糸を用いて種々の繊維製品を製造する際や熱処理を施す際の寸法安定性に優れた芯鞘型複合長繊維に関するものである。
従来より、芯成分が高融点のポリエチレンテレフタレートで、鞘成分が低融点の共重合
ポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維が集束されてなるマルチフィラメント糸を用いて
、織物や網地等の繊維製品を得ることは知られている(特許文献1)。特許文献1の実施例では、芯鞘型複合長繊維は、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分が特定の4元共重合体によって構成されており、この芯鞘型複合長繊維によって構成されるマルチフィラメント糸を用いて粗目の織物を製織し、熱処理を施して、経糸と緯糸の交点を融着させて目ずれを防止したものが開示されている。
ポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維が集束されてなるマルチフィラメント糸を用いて
、織物や網地等の繊維製品を得ることは知られている(特許文献1)。特許文献1の実施例では、芯鞘型複合長繊維は、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分が特定の4元共重合体によって構成されており、この芯鞘型複合長繊維によって構成されるマルチフィラメント糸を用いて粗目の織物を製織し、熱処理を施して、経糸と緯糸の交点を融着させて目ずれを防止したものが開示されている。
本発明は、特許文献1に記載された芯鞘複合繊維を改良したものであって、加工性が良好で、機械的にも熱的にも寸法安定性に優れるマルチフィラメント糸を提供することにある。
本発明は、芯成分がポリエチレンテレフタレートで、鞘成分が該ポリエチレンテレフタレートよりも融点の低い共重合ポリエステルである芯鞘型複合長繊維よりなるマルチフィラメント糸であり、
マルチフィラメント糸の総繊度が150〜1800デシテックス、マルチフィラメント糸の中間伸度(X)と、150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)との和が20%以下であることを特徴とするマルチフィラメント糸であることを特徴とするマルチフィラメント糸に関するものである。
マルチフィラメント糸の総繊度が150〜1800デシテックス、マルチフィラメント糸の中間伸度(X)と、150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)との和が20%以下であることを特徴とするマルチフィラメント糸であることを特徴とするマルチフィラメント糸に関するものである。
本発明で用いられる芯鞘型複合長繊維は、芯成分がポリエチレンテレフタレートで、鞘成分がポリエチレンテレフタレートよりも融点の低い共重合ポリエステルである。芯成分と鞘成分の質量比は、芯成分:鞘成分=1〜3:1であるのが好ましい。鞘成分の質量比がこの範囲より低いと、熱融着一体化するための鞘成分の量が少なくなるため、芯鞘型複合長繊維相互間が融着によって一体化しにくく融着力が低下する傾向となる。また、鞘成分の質量比がこの範囲より高いと、強力を担う芯成分の量が少なくなり、また、熱処理して得られる熱成形体中において当初の繊維形態を維持している芯成分の径が小さくなり、マルチフィラメント糸や熱成形体の引張強度が低下する傾向となる。芯鞘型複合長繊維の単繊維繊度は任意であるが、4〜20デシテックス程度がよい。
芯成分はポリエチレンテレフタレートで構成されている。ポリエチレンテレフタレートは、耐候性や機械的強度に優れているからである。なお、芯成分を構成するポリエチレンテレフタレートにおいて、本発明の効果を達成する範囲であれば、他の共重合成分が少量含まれていてもよく、また顔料、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加剤を含有してもよい。
一方、鞘成分を構成する共重合ポリエステルは、芯成分よりも融点が低いものであり、熱処理により溶融して、構成繊維同士を融着固化する機能を担う。鞘成分を構成する共重合ポリエステルの融点は耐熱性や取り扱い性等を考慮して、160〜200℃が好ましい。
鞘成分を構成する共重合ポリエステルとしては、テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコールとジエチレングリコールを構成成分とする共重合体を好ましく用いることができる。上記共重合ポリエステル以外には、テレフタル酸とエチレングリコールとジエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを構成成分とする共重合体を好ましく用いることができる。
テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコールとジエチレングリコールを構成成分とする共重合ポリエステルにおける共重合比は、酸成分においては、テレフタル酸70〜80モル%、イソフタル酸20〜30モル%、ジオール成分においては、エチレングリコール98〜99モル%、ジエチレングリコール1〜2モル%であることが好ましい。
テレフタル酸とエチレングリコールとジエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを構成成分とする共重合体ポリエステルにおける共重合比は、テレフタル酸100モル%に対して、ジエチレングリコール1〜2モル%、1,4−ブタンジオール20〜90モル%、エチレングリコール9〜79モル%であることが好ましい。また、この四元共重合体にε−カプロラクトンを共重合させて、所望の融点となるように調整してもよく、ε−カプロラクトンの共重合比は、酸成分中に5〜20モル%であるとよい。
また、上記の共重合ポリエステルには、本発明の効果を達成する範囲であれば、他の共重合成分が少量含まれていてもよく、また顔料、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加剤を含有してもよい。
マルチフィラメント糸の総繊度は、衣料等のテキスタイル用途ではなく、土木・建築・農業・水産・林業等の産業分野において適用することを想定すると、150〜1800デシテックスである。また、マルチフィラメント糸を構成する長繊維数は、50〜300本程度である。
本発明のマルチフィラメント糸は、中間伸度(X)と、150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)との和が20%以下である。本発明において、中間伸度(X)とは、マルチフィラメント糸の引張試験の応力−伸び曲線における引張強力値の2分の1の荷重時の伸度をいう。中間伸度の値が小さいと、荷重を負荷した際の寸法変化が小さく、機械的な寸法変化に優れているといえる。より具体的には、中間伸度(X)は、2〜5%が好ましい。中間伸度(X)が2%未満となると、寸法変化は小さくなって、より機械的な寸法変化に優れるといえるが、マルチフィラメント糸を用いて繊維製品とする際の製造工程や加工工程において、例えば、編み機における針の高速挙動に対して追従しにくくなることもあり、下限は2%以上がよい。上限は、5%以下とすることにより、機械的な寸法変化に優れたものといえる。
中間伸度(X)は、JIS L 1013(2010)8.5.1引張強さ及び伸び率 標準時試験 に準じて、定速伸長形引張試験機を用い、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分の条件で測定した際に描かれる応力−伸び曲線において、最大荷重が引張強力であり、その最大荷重(引張強力)の値の2分の1の荷重時の伸度(%)を求め、10個の平均値を中間伸度(X)とする。
本発明のマルチフィラメント糸は、中間伸度(X)と、150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)との和が20%以下であり、外力を与えた際の機械的寸法変化と加熱した際の熱的寸法変化の両者に優れる。150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)とは、熱処理前後での糸長の変化率であり、JIS L 1013(2010)8.18.2乾熱寸法変化率b)フィラメント寸法変化率(B法)に基づき、150℃に設定した乾燥機中に吊り下げた状態で15分間放置し、乾燥寸法変化率(%)を算出し、5個の平均値を、150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)とした。芯鞘型繊維であって、鞘部がバインダー成分として機能する低融点の共重合ポリエステルの場合、熱に対する収縮は生じるものであるが、本発明においては、150℃×15分の条件での乾熱収縮率が好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下であることにより、熱を与えた際の寸法変化に優れるものとなり、繊維製品を製造する工程や、得られた繊維製品に熱処理を施す熱処理工程における取り扱い性に優れる。なお、乾熱収縮率の下限は小さいほどよいが、10%程度であればよい。したがって、中間伸度(X)と、150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)との和の下限は、12%程度がよい。
本発明のマルチフィラメント糸は、複合溶融紡糸法により製造され、これを集束してマルチフィラメント糸とする。得られたマルチフィラメント糸は、そのまま繊維製品として、鞘成分の融点以上で芯成分の融点未満の温度に加熱し、芯鞘型複合長繊維相互間を融着させて、モノフィラメント糸状の熱成形体としてもよい。本発明に用いる繊維製品としては、マルチフィラメント糸を編組して紐とするか、製網して網とするか、又は製編織して織物あるいは編物にするのが好ましい。編物としては、目の大きい網も含まれ、特に養殖網等の漁網として使用する場合に用いられる。この繊維製品を、鞘成分の融点以上で芯成分の融点未満の温度に加熱し、芯鞘型複合長繊維相互間を融着させて、外観上はプラスチック様の紐、網、織物又は編物よりなる熱成形体を得る。本発明における熱成形体は、剛性と機械的強度が優れる。
本発明における熱成形体は、比較的広い現場で用いられる資材として好適である。たとえば、メッシュシート等の建築工事用シート、剥落防止シート等の土木工事用又は建築工事用シート、養殖網等の漁網として好適に用いることができる。
本発明に係るマルチフィラメント糸は、芯成分がポリエチレンテレフタレートで、鞘成
分が低融点の共重合ポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維で構成され、機械的および熱的に寸法安定性に優れることから、加工性が良好で、取り扱い性に優れ、産業資材として種々の幅広い用途において好適に用いることができる。
分が低融点の共重合ポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維で構成され、機械的および熱的に寸法安定性に優れることから、加工性が良好で、取り扱い性に優れ、産業資材として種々の幅広い用途において好適に用いることができる。
実施例1
芯成分として、融点256℃で極限粘度[η]0.75のポリエチレンテレフタレートを準備した。また、鞘成分として、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、テレフタル酸及びε−カプロラクトン(融点160℃ 極限粘度[η]0.65)からなる共重合ポリエステルを準備した。共重合ポリエステルのモル比は、エチレングリコール50モル%、1,4−ブタンジオール49モル%、ジエチレングリコール1モル%、テレフタル酸87モル%及びε−カプロラクトン13モル%である。
芯成分として、融点256℃で極限粘度[η]0.75のポリエチレンテレフタレートを準備した。また、鞘成分として、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、テレフタル酸及びε−カプロラクトン(融点160℃ 極限粘度[η]0.65)からなる共重合ポリエステルを準備した。共重合ポリエステルのモル比は、エチレングリコール50モル%、1,4−ブタンジオール49モル%、ジエチレングリコール1モル%、テレフタル酸87モル%及びε−カプロラクトン13モル%である。
孔径0.6mmで孔数192個の芯鞘型複合紡糸口金を備えた複合溶融紡糸装置に、上記したポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルを供給し、口金温度を280℃とし、ポリエチレンテレフタレート:共重合ポリエステル=3:1(質量比)として、複合溶融紡糸を行い、芯鞘型複合長繊維を得た。得られた新鞘型複合熱接着性繊維192本が収束した糸条に、常法により冷却し、油剤を付与して、速度500m/分で引き取った。引き続き、引き取り速度が1.02倍、温度100℃に設定された引き取りローラにより引き取った後、温度200℃のスチームを吹き付けて4.8倍の延伸熱処理を施し、次いで、弛緩処理を施して、1670デシテックス/192本のマルチフィラメント糸を得た。
得られたマルチフィラメント糸の中間伸度は4.6%、150℃×15分の条件での乾熱収縮率は13.4%、中間伸度(X)と150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)との和は18%であった。
実施例2
実施例1において、溶融紡糸の際の単孔吐出量を変更したこと以外は、実施例1と同様にし、560デシテックス/48本のマルチフィラメント糸を得た。
実施例1において、溶融紡糸の際の単孔吐出量を変更したこと以外は、実施例1と同様にし、560デシテックス/48本のマルチフィラメント糸を得た。
得られたマルチフィラメント糸の中間伸度は3.7%、150℃×15分の条件での乾熱収縮率は13.5%、中間伸度(X)と150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)との和は17.2%であった。
得られたマルチフィラメント糸をボビンに巻取り、このボビンを8打角打製紐機に設置して、8本組紐を得た。この8本組紐を温度170℃で2分間の条件で加熱して、熱成形を行い、棒状の熱成形体を得た。
<酸性およびアルカリ性に対する耐久試験>
実施例2で得られたマルチフィラメント糸からなる8本組紐と棒状の熱成形体を試料とし、酸性およびアルカリ性に対する耐久試験を行った。
実施例2で得られたマルチフィラメント糸からなる8本組紐と棒状の熱成形体を試料とし、酸性およびアルカリ性に対する耐久試験を行った。
酸性に対する耐久試験は、以下のように行った。すなわち、硫酸(98% 特級 関東化学社製)を用いて、5Nの硫酸水溶液を準備した。次いで、試料を、試料の質量に対して10倍以上の質量の硫酸水溶液中に浸漬させ、浸漬させた状態で、温度30℃、湿度40%の雰囲気下に一定時間(250時間、500時間、1000時間、2000時間)放置した後に、試料を硫酸水溶液中より引き上げ、純水中で10秒間×2回すすいだ後、流水で1分間洗い、その後、2日間風乾させて試料に含まれる水分を除去し、引張強力を測定した。なお、引張強力は、上記したとおりであって、JIS L 1013(2010)8.5.1引張強さ 標準時試験 に準じて、定速伸長形引張試験機を用い、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分の条件で測定した。
アルカリ性に対する耐久試験は、上記した酸性に対する耐久試験において、5Nの硫酸水溶液に替えて、水酸化ナトリウム(99% マルゼン社製)を用いて3Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いたこと以外は、上記と同様にして耐久試験を行った。
酸性およびアルカリ性に対する耐久試験の結果を表1および表2に示した。
酸性およびアルカリ性に対する耐久試験の結果を表1および表2に示した。
Claims (5)
- 芯成分がポリエチレンテレフタレートで、鞘成分が該ポリエチレンテレフタレートよりも融点の低い共重合ポリエステルである芯鞘型複合長繊維よりなるマルチフィラメント糸であり、
マルチフィラメント糸の総繊度が150〜1800デシテックス、マルチフィラメント糸の中間伸度(X)と、150℃×15分の条件での乾熱収縮率(Y)との和が20%以下であることを特徴とするマルチフィラメント糸。 - 鞘成分の融点が、160〜200℃であることを特徴とする請求項1記載のマルチフィラメント糸。
- 鞘成分の共重合ポリエステルの構成成分が、テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコールとジエチレングリコールであるか、あるいは、テレフタル酸とエチレングリコールとジエチレングリコールと1,4−ブタンジオールであることを特徴とする請求項1または2記載のマルチフィラメント糸。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載のマルチフィラメント糸によって構成される繊維製品であって、繊維製品が紐、網、織物または編物であることを特徴とする繊維製品。
- 請求項4記載の繊維製品を、芯鞘型複合長繊維の鞘成分が溶融する温度でかつ芯成分の融点未満の温度で加熱し、芯鞘型複合長繊維同士を鞘成分が融着固化することによって一体化させることを特徴とする熱成形体の製造方法。
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JP2019154847A JP2021031807A (ja) | 2019-08-27 | 2019-08-27 | マルチフィラメント糸及びこれを用いた熱成形体の製造方法 |
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