JP2021031545A - 二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 ガスバリア性に優れ、かつ易引裂き性に優れる医薬品、医療品、食品、飲料などの包装材料として好適なポリエステルフィルムを提供すること。【解決手段】 ポリエステル樹脂60〜96質量%、及び結晶融解温度が250℃以下の液晶ポリマー4〜40質量%を含むこと特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、食品、医薬品、工業製品等の包装分野に用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムに及びその製造方法に関する。更に詳しくは、ガスバリア性に優れ、かつ、易引裂き製に優れ、医薬品、医療品、食品、飲料などの包装材料として好適に用いることのできる二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
食品、医薬品等に用いられる包装材料は、蛋白質、油脂の酸化抑制、味、鮮度の保持、医薬品の効能維持のために、酸素や水蒸気等のガスを遮断する性質、すなわちガスバリア性を備えることが求められている。また、太陽電池や有機EL等の電子デバイスや電子部品等に使用されるガスバリア性材料は、食品等の包装材料以上に高いガスバリア性を必要とする。
従来から、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする食品用途においては、プラスチックからなる基材フィルム層の表面に、アルミニウム等からなる金属薄膜、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物からなる無機薄膜を形成したガスバリア性積層フィルムや、PVDCなどのバリア性を有する層をコートしたフィルムが、一般的に用いられている。
しかしながら、金属蒸着などの加工工程が煩雑であるためコスト高となり、また環境問題の観点から廃棄についても制限を受けるという問題があった。
一方、液晶ポリマーは優れたガスバリア性を有しており、液晶ポリマーをガスバリア層とした積層体が知られている。例えば、液晶ポリマー層とその少なくとも一方の面に積層された熱可塑性樹脂層から構成される複合フィルムが提案されている(特許文献1)
しかしながら、液晶ポリマーは他の樹脂との接着性が低く、積層体とするためには表面を官能化するか、あるいは接着層を介在させる必要があった。また、包装容器等に加工する際に液晶ポリマー層が破損しやすいため一定の厚みが必要となるので薄肉化が困難であるとともに、加工工程が煩雑となるためコスト高になるという問題があった。
特許文献2では、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、結晶融解温度が250℃以下の液晶ポリマー1〜100質量部を含有するポリプロピレン樹脂組成物から構成されるフィルムが開示されている。かかる技術によれば、水蒸気や酸素ガスに対するガスバリア性に優れ、かつ、加工性に優れるフィルムが得られるといったものである。しかしながらポリプロピレンは耐熱性や力学強度に劣ることから、使用できる用途が限られる問題があった。
一方、特許文献3では、少なくとも1つの全芳香族、アモルファス、延伸可能な液晶ポリマー層と、少なくとも1つの非−液晶熱可塑性ポリエステル層とを有するフィルム、シート、プリフォーム、容器及び他の製品を包含する多層ラミネート並びに多層製品の製造法及び延伸法が開示されている。また特許文献4においては、サーモトロピック液晶性ポリエステルからなるフィルムをその融解温度から降温結晶化温度の範囲に再加熱し溶融させ、縦方向及び横方向の延伸倍率が1.5〜20倍延伸することを特徴とする液晶ポリマーフィルムの製造法が開示されている。ここで用いられている同時二軸延伸法やインフレーション法の延伸方法では延伸倍率を上げられず、力学強度に劣るといった課題があった。
特許文献5においては、99.9重量%以下で90.0重量%を超えるポリエチレンナフタレート(以下PENと略す)と0.1重量%以上で10.0重量%未満の縮合系液晶ポリマーとをブレンドしたポリマーよりなる耐候性、ガス遮断性に優れた包装用2軸配向ポリエステルフイルムが開示されている。かかる技術によれば、2軸配向熱固定ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)フイルムが一般に有する優れた機械的特性、耐熱性、高温での寸法安定性、ガス遮断性よりも更に優れた性質を有しかつ耐膜性にも優れた高透明包装用2軸配向ポリエステルフイルムが得られるといったものであるが、PEN樹脂は高価であるため、包装用として用いるには原材料コストがかかるといった問題があった。
特開平4−135750号公報 特開2019−43980号公報 特開平11−268191号公報 平4−166322号公報 特公平6−2870号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。
すなわち、本発明の目的は、ガスバリア性に優れ、かつ、易引裂き性に優れ、医薬品、医療品、食品、飲料などの包装材料として好適に用いることのできる二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らはかかる課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の結晶融解温度を持つ液晶ポリマーを含有するポリエステル樹脂を二軸延伸することによって、優れたガスバリア性と易引裂き性を有するフィルムを得ることができることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
[1] ポリエステル樹脂60〜96質量%、及び結晶融解温度が250℃以下の液晶ポリマー4〜40質量%を含むこと特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。
[2] 23℃、相対湿度65%の環境下で測定した酸素透過度が100cc/m/day/atm以下であることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
[3] 縦方向の引裂強さが70mJ以下であることを特徴とする1又は2に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
[4] 前記二軸延伸ポリエステルフィルムが、相溶化剤を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
本発明によれば、無機薄膜層やPVDCコート層を積層しなくても、従来のPETフィルムよりも良好なガスバリア性を付与することができ、更に易引裂き性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂と液晶ポリマーを主たる構成成分とするものである。
(ポリエステル樹脂)
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート成分を主構成成分とするポリエステル樹脂である。「主構成成分」とは、ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸全成分100モル%中、テレフタル酸が80モル%以上であり、グリコール全成分100モル%中、エチレングリコールが80モル%以上である。
本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分及びグリコール成分を共重合させても良い。他のジカルボン酸成分及びグリコール成分の共重合量は、全ジカルボン酸成分あるいは全グリコール成分に対して、それぞれ20モル%未満であり、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。
上記の他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
上記の他のグリコール成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、ジメチロールトリシクロデカン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフ
ェノールZ、ビスフェノールAP、4,4’−ビフェノールのエチレンオキサイド付加体又はプロピレンオキサイド付加体、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる
本発明で用いられるポリエステル樹脂の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、及び必要に応じて他のジカルボン酸成分及びグリコール成分を直接反応させる直接重合法、及びテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のグリコール成分を含む)とをエステル交換反応させた後に重縮合反応を行うエステル交換法等の製造方法が利用され得る。
本発明で用いられるポリエステル樹脂としては、ペットボトルを再生利用したリサイクル樹脂や、バイオマス由来のモノマー成分を含むポリエステル樹脂も使用することができる。
本発明で用いられるポリエステル樹脂の固有粘度は、0.57〜1.10dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.60〜0.9dl/gであり、さらに好ましくは0.63〜0.7dl/gである。固有粘度が0.57dl/gよりも低いと、ポリエステルフィルムを製造工程においてフィルムが裂けやすくなる(所謂破断が発生)。1.10dl/gより高いと濾圧上昇が大きくなって、フィルタを介して樹脂を押出すことが困難となりやすい。
また、本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムの固有粘度は、0.51〜0.90dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.56〜0.80dl/gであり、さらに好ましくは0.59〜0.7dl/gである。固有粘度が0.51dl/gよりも低いと、ポリエステルフィルムが印刷等の加工工程で裂けやすくなり、固有粘度が0.9dl/gよりも高いと、機械的特性を向上する効果が飽和状態になる傾向がある。
(液晶ポリマー)
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムを構成する液晶ポリマーは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれる異方性溶融相を形成する液晶ポリエステル又は液晶ポリエステルアミドである。
本発明に使用する液晶ポリマーは、異方性溶融相を持つ。異方性溶融相は直交偏光子を利用した通常の偏光検査法(ホットステージに試料を載せて窒素雰囲気下で溶融状態を観察する方法)により確認できる。
本発明で使用する液晶ポリマーを構成する繰返し単位としては、芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位、芳香族ジオキシ繰返し単位、芳香族オキシジカルボニル繰返し単位、芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位、芳香族アミノカルボニル繰返し単位及びこれらの組合せなどが挙げられる。
芳香族オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸である4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸など、及びそれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では4−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が、得られる液晶ポリマーのガスバリア性等の特性や結晶融解温度を調整しやすいという点から好ましい。
芳香族ジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニルなど、及びそれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではテレフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸が、得られる液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
芳香族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジオールであるハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、及びそれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではハイドロキノン及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルが、重合時の反応性、得られる液晶ポリマーのガスバリア性等の特性などの点から好ましい。
芳香族オキシジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ヒドロキシジカルボン酸である3−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジカルボン酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、及び5−ヒドロキシイソフタル酸など、及びそれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位及び芳香族アミノカルボニル繰返し単位を与える単量体としては、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及び芳香族アミノカルボン酸などが挙げられる。
本発明に使用する液晶ポリマーは、2種以上の液晶ポリマーをブレンドしたものであってもよい。
本発明に用いる液晶ポリマーの示差走査熱量計により測定される結晶融解温度は、250℃以下であり、好ましくは235℃以下であり、より好ましくは220℃以下である。
前記液晶ポリマーの結晶融解温度の下限は、好ましくは150℃以上、より好ましくは170以上、さらに好ましくは180℃以上である。
前記液晶ポリマーは、結晶融解温度が250℃以下であることによって、マトリクスであるポリエステル樹脂に液晶ポリマーが繊維状態で分散し易くなり、本発明の目的である、優れたガスバリア性及び易引裂き性を有するフィルムが得られるという効果を奏する。結晶融解温度が250℃を超える液晶ポリマーを使用した場合、ポリエステル樹脂との溶融混練を高温下で行う必要あり、ポリエステル樹脂が劣化し、物理強度を有するフィルムを得ることができない。
尚、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/分で測定した際の結晶融解ピーク温度から求めたものである。より具体的には、液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20〜50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリマーの結晶融解温度とする。
本発明に係る液晶ポリマーとしては、繰返し単位が芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位及び芳香族ジオキシ繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステルが特に好適である。
繰返し単位中にエチレングリコール等の脂肪族基を含む半芳香族液晶ポリエステルと使用した場合、所望のガスバリア性が得られない傾向がある。
本発明で用いる結晶融解温度が250℃以下の液晶ポリマーとしては、式(I)〜(IV)で表される繰返し単位を含む全芳香族液晶ポリエステルがより好適である。


[式中、Ar及びArは、それぞれ1種又は2種以上の2価の芳香族基を表し、p、q、r及びsは、それぞれ、液晶ポリマー中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たすものである。0.5≦p/q≦2.5、2≦r≦15、及び2≦s≦15]
上記式(I)に係る組成比p(モル%)と式(II)に係る組成比q(モル%)のモル比(p/q)は、0.6〜1.8がより好ましく、0.8〜1.6がさらに好ましい。
上記の好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルについて、pとqの合計の組成比は、70〜96モル%が好ましく、76〜90モル%がより好ましい。
上記の好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルについて、式(I)に係る組成比pと式(II)に係る組成比qは、それぞれ、32〜54モル%が好ましく、35〜48モル%がより好ましく、38〜45モル%がさらに好ましい。
本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルは、式(I)及び式(II)で表される繰り返し単位を、少なくとも上記のモル比(p/q)、及び場合により上記のpとqの合計の組成比及び/又はpとqのそれぞれの組成比(モル%)で含むことにより、250℃以下である結晶融解温度を示す。
また、本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルについて、式(III)に係る組成比rと式(IV)に係る組成比sは、それぞれ、2〜15モル%が好ましく、5〜13モル%がより好ましい。rとsは、等モル量であるのが好ましい。
上記の繰返し単位において、例えばAr(又はAr)が2種以上の2価の芳香族基を表すとは、式(III)(又は(IV))で表される繰返し単位が全芳香族液晶ポリエステル中に2価の芳香族基の種類に応じて2種以上含まれることを意味する。この場合、式(III)に係る組成比r(又は式(IV)に係る組成比s)は、2種以上の繰返し単位を合計した組成比を表す。
式(I)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸及びこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(II)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸及びこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(III)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニルなど、及びそれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(IV)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジオールであるハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
液晶ポリマーの含有量は10質量%以上が好ましく、さらには20質量%以上が好ましい。10質量%未満であるとガスバリア性の改善効果が低下してしまい、フィルム特性としては十分なものでなくなってしまう。
液晶ポリマーの含有量は40質量%以下が好ましい。液晶ポリマーの含有率が40%を超えると、配向した液晶ポリマーが多くなりすぎ、延伸時に裂けやすくなる結果、連続製膜が困難となってしまう。
(相溶化剤)
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムは、さらに相溶化剤を含有することができる。
相溶化剤とは、ブレンド樹脂組成物を構成する各樹脂相の界面に局在し、それらの相間の界面張力を低下させ、相溶性を向上させる機能を有するものをいう。
本発明で用いられる相溶化剤としては、ポリエステル樹脂と液晶ポリマーの相間の界面張力を低下させられるものであれば特に限定されないが、特に好ましいものとしては、例えば特開2017−214460号公報に示される、式(V)で表されるジグリシジルエーテルエステル化合物が好適なものとして挙げられる。
ジグリシジルエーテルエステル化合物は、式(V)におけるn=0である化合物とn=1〜10である化合物の混合物として製造される。少量で相溶化効果を発揮できる点で、n=0の化合物を80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。

前記相溶化剤の含有量は、二軸延伸ポリエステルフィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
相溶化剤の添加量が0.5質量%未満であると相溶性向上効果が得られにくく、10質量%を超えるとフィルムのガスバリア性および溶融混練時の原料樹脂の熱安定性が低下する傾向がある。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムには、力学特性などを調整する目的で上記ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂(その他のポリエステル樹脂)を含有することができる。
前記その他のポリエステル樹脂としては、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、共重合ポリブチレンテレフタレート(例えば、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸が共重合されたポリブチレンテレフタレート樹脂、あるいはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びポリカーボネートジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオール成分が共重合されたPBT樹脂)などが挙げられる。
これらその他のポリエステル樹脂の添加量の上限としては、30質量%未満が好ましく、より好ましくは25質量%以下が好ましい。PBT樹脂以外のポリエステル樹脂の添加量が30質量%を超えると、PBTとしての力学特性が損なわれ、衝撃強度、耐ピンホール性、又は耐破袋性が不十分となるほか、透明性やガスバリア性が低下するなどが起こることがある。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、及び上記以外のポリエステルなどの他の樹脂を含んでも良い。しかし、二軸延伸ポリエステルフィルムの機械特性、耐熱性の点で、他の樹脂の含有量はポリエステルフィルムの全樹脂成分に対して30質量%以下、さらには20質量%以下、またさらには10質量%以下、特には5質量%以下であることが好ましい。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムには、必要に応じ、従来公知の添加剤、例えば、滑剤、安定剤、着色剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。
滑剤種としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの無機系滑剤のほか、有機系滑剤が好ましく、シリカ、炭酸カルシウムがより好ましく、中でもシリカがヘイズを低減する点で特に好ましい。これらにより透明性と滑り性と発現することができる。
滑剤濃度の下限は好ましくは100ppmであり、より好ましくは500ppmであり、さらに好ましくは800ppmである。上記未満であると基材フィルム層の滑り性が低下となることがある。滑剤濃度の上限は好ましくは20000ppmであり、より好ましくは10000ppmであり、さらに好ましくは1800ppmである。上記を越えると透明性が低下となることがある。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みの下限は、好ましくは3μmであり、より好ましくは5μmであり、さらに好ましくは8μmである。3μm以上であると基材フィルム層としての強度やガスバリア性が十分となる。
本発明のポリエステルフィルムの厚みの上限は好ましくは100μmであり、より好ましくは75μmであり、さらに好ましくは50μmである。100μm以下であると本発明の目的における加工がより容易となる。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムの縦方向(MDと略す場合がある)の150℃で15分間加熱後の熱収縮率の上限は、好ましくは4.0%であり、より好ましくは3.0%であり、さらに好ましくは2%である。上限を越えると他のフィルムとのラミネート工程や印刷工程などのような高温処理において寸法変化により、ピッチズレなどが起こることがあるばかりか、レトルト殺菌処理などの加熱工程で皺が発生し、袋の外観を損ねてしまう恐れがある。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムの横方向(TDと略す場合がある)の150℃で15分間加熱後の熱収縮率の上限は好ましくは3.0%であり、より好ましくは2.0%であり、さらに好ましくは1%である。上限を越えると他のフィルムとのラミネート工程や印刷工程などのような高温処理において寸法変化により、ピッチズレなどが起こることがあるばかりか、レトルト殺菌処理などの加熱工程で皺が発生し、袋の外観を損ねてしまう恐れがある。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムの縦方向の150℃で15分間加熱後の熱収縮率の下限は好ましくは0%である。上記未満であってもと改善の効果がそれ以上得られない(飽和する)ほか、力学的に脆くなってしまうことがある。
本発明のポリエステルフィルムの横方向の150℃で15分間加熱後の熱収縮率の下限は好ましくは1.0%である。上記未満であっても改善の効果がそれ以上得られない(飽和する)ほか、力学的に脆くなってしまうことがある。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムの引裂強さの下限は、好ましくは0.8mJ/μmである。0.8mJ/μm以上であれば、安定的に製膜ができ、フィルムとしての強度も十分となる。
本発明のポリエステルフィルムの引裂強さの上限は好ましくは7.5mJ/μmである。7.5mJ/μm以下であればフィルムの適度の易引裂き性が得られる。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムの衝撃強度の下限は、好ましくは0.012J/μmである。0.012J/μm以上であると袋として用いる際に強度が十分となる。衝撃強度の上限は好ましくは0.05J/μmである。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムの23℃、相対湿度65%の環境下で測定した酸素透過度は、好ましくは100cc/m/day/atm以下である。
酸素透過度が100cc/m/day/atm以下を超えると、袋としたときに内容物の酸化を十分に防ぐことができなくなる。
本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムには、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。
次に、本発明の実施態様に係る二軸延伸ポリエステルフィルムを得るため製造方法を具体的に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
前記二軸延伸ポリエステルフィルムを得るための製造方法は、(1)ポリエチレンテレフタレート樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂にあらかじめ液晶ポリマーが混錬された樹脂チップとを、ホッパ−を備えた押出機に供給及び混合し、該押出機からポリエステル原料樹脂をシート状に溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却して未延伸シートを成形する工程、(2)成形された前記未延伸シートを縦方向(長手方向、機械方向ともいう)に延伸する縦延伸工程、(3)前記縦延伸後に横延伸可能な温度に予熱する予熱工程、前記縦方向に直交する横方向(幅方向ともいう)に延伸する横延伸工程、前記縦延伸及び横延伸を行なった後のフィルムを加熱し結晶化させる熱固定工程、(4)前記熱固定されたフィルムの残留歪みを除去する熱緩和工程、および(5)熱緩和後のフィルムを冷却する冷却工程からなる。
[未延伸シート成形工程]
まず、フィルム原料を乾燥あるいは熱風乾燥する。次いで、原料を計量、混合して押し出し機に供給し、加熱溶融して、シート状に溶融キャスティングを行う。
さらに、溶融状態の樹脂シートを、静電印加法を用いて冷却ロール(キャスティングロール)に密着させて冷却固化し、未延伸シートを得る。静電印加法とは、溶融状態の樹脂シートが回転金属ロールに接触する付近で、樹脂シートの回転金属ロールに接触した面の反対の面の近傍に設置した電極に電圧を印加することによって、樹脂シートを帯電させ、樹脂シートと回転冷却ロールを密着させる方法である。
樹脂の加熱溶融温度の下限は好ましくは200℃であり、より好ましくは250℃であり、さらに好ましくは260℃である。上記未満であると吐出が不安定となることがある。樹脂溶融温度の上限は好ましくは300℃であり、より好ましくは280℃である。上記を越えると樹脂の分解が進行し、フィルムが脆くなってしまう。
溶融したポリエステル樹脂を押出し、キャスティングする方法は、具体的にはポリエステル樹脂と液晶ポリマー樹脂組成物を溶融して溶融流体を形成する工程、形成された溶融流体をダイスから吐出し、冷却ロールに接触させて固化させ未延伸シートを形成する工程を少なくとも有する。
ポリエステル樹脂組成物を溶融して溶融流体を形成する方法は特に限定されないが、好適な方法としては、一軸押出機や二軸押出機を用いて加熱溶融する方法を挙げることができる。
溶融流体は、ダイスから吐出し、冷却ロールに接触させて固化させる。
冷却ロール温度の下限は好ましくは−10℃である。上記未満であると結晶化抑制の効果が飽和することがある。冷却ロール温度の上限は好ましくは40℃である。上記を越えると結晶化度が高くなりすぎて延伸が困難となることがある。冷却ロール温度の上限は好ましくは25℃である。また冷却ロールの温度を上記の範囲とする場合、結露防止のため冷却ロール付近の環境の湿度を下げておくことが好ましい。冷却ロール表面の温度の斑は少なくすることが好ましい。このとき、未延伸シートの厚みは15〜2500μmの範囲が好適である。
[縦延伸および横延伸工程]
次に延伸方法について説明する。二軸延伸方法は、同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でも可能である。衝撃強度を高めるためには、二軸延伸によって面配向度を高めておく必要がある。製膜速度が速くでき生産性が高いという点においては逐次二軸延伸が好ましい。
縦延伸方向の延伸温度の下限は好ましくは55℃であり、より好ましくは60℃である。55℃以上であると破断が起こりにくい。また、フィルムの縦配向度が強くなり過ぎないため、熱固定処理の際の収縮応力を抑えられ、横方向の分子配向の歪みの少ないフィルムが得られる。縦延伸方向の延伸温度の上限は、好ましくは100℃であり、より好ましくは95℃である。100℃以下であるとフィルムの配向が弱くなり過ぎないためフィルムの力学特性が低下しない。
縦延伸方向の延伸倍率の下限は好ましくは2.8倍であり、特に好ましくは3.0倍である。2.8倍以上であると面配向度が大きくなり、フィルムの力学強度が向上するほか、フィルムの厚み精度が向上する。
縦延伸方向の延伸倍率の上限は好ましくは4.3倍であり、より好ましくは4.0倍であり、特に好ましくは3.8倍である。4.3倍以下であると、フィルムの横方向の配向度が強くなり過ぎず、熱固定処理の際の収縮応力が大きくなり過ぎず、フィルムの横方向の分子配向の歪みが小さくなり、結果として縦方向の直進引裂き性が向上する。また、力学強度や厚みムラの改善の効果はこの範囲では飽和する。
横延伸方向の延伸温度の下限は好ましくは60℃であり、60度以上であると破断が起こりにくくなることがある。横延伸方向の延伸温度の上限は好ましくは130℃であり、130℃以下であると横方向の配向度が大きくなるため力学特性が向上する。
横延伸方向の延伸倍率の下限は好ましくは3.5倍であり、より好ましくは3.6倍であり、特に好ましくは3.7倍である。3.5倍以上であると横方向の配向度が弱くなり過ぎず、力学特性や厚みムラが向上する。横延伸方向の延伸倍率の上限は好ましくは5倍であり、より好ましくは4.5倍であり、特に好ましくは4.0倍である。5.0倍以下であると力学強度や厚みムラ改善の効果はこの範囲でも最大となる(飽和する)。
[熱固定工程]
熱固定工程での熱固定温度の下限は好ましくは195℃であり、より好ましくは200℃である。195℃以上であるとフィルムの熱収縮率を小さくできる。熱固定温度の上限は好ましくは250℃であり、250度以下であるとフィルムが融けることがなく、脆くなり難い。
[熱緩和部工程]
熱緩和部工程でのリラックス率の下限は好ましくは0.5%である。0.5%以上であると熱固定時に破断が起こりにくくなることがある。リラックス率の上限は好ましくは10%である。10%以下であると熱固定時の縦方向への収縮が小さくなる結果、フィルム端部の分子配向の歪みが小さくなり、直進引裂き性が向上する。また、フィルムのたるみなどが生じにくく、厚みムラが発生しにくい。
以上より、本発明のポリエステルフィルムは、ガスバリア性及び易引裂き性に優れたフィルムを得ることができる。
[包装材料]
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを包装材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成することが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、無機薄膜層上に設けられるが、基材フィルム層の外側(接着層形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。
さらに、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムには、印刷層や他のプラスチック基材及び/又は紙基材を少なくとも1層以上積層してもよい。
印刷層を形成する印刷インクとしては、水性及び溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂及びこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥等公知の乾燥方法が使用できる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
[厚み]
JIS K7130−1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
[ヘイズ]
JIS−K−7105に準ずる方法で、試料をヘイズメーター(日本電色製、NDH2000)を用いて異なる箇所3ヶ所について測定しその平均値をヘイズとした。
[衝撃強度]
株式会社東洋精機製作所製のインパクトテスターを用い、23℃の雰囲気下におけるフィルムの衝撃打ち抜きに対する強度を測定した。衝撃球面は、直径1/2インチのものを用いた。単位はJ/μmで示した。
[引裂強さ]
JIS K7128−1:1998に準じて引裂強さを測定した。縦方向及び横方向について、それぞれ3回ずつ測定し平均値を算出した。
[摩擦係数]
動摩擦係数をJIS−K−7125に準拠し、温度23℃、相対湿度65%の環境下で静摩擦係数μsと動摩擦係数μd測定した。測定した面はF面(未延伸シート成形工程で冷却ロールと接触する面)とB面(未延伸シート成形工程で冷却ロールと接触しない面)を滑らせて測定した。
[熱収縮率]
ポリエステルフィルムの熱収縮率は試験温度150℃、加熱時間15分間とした以外は、JIS−C−2151−2006.21に記載の寸法変化試験法で縦方向及び横方向について測定しそれぞれ3回ずつ測定し平均値を算出した。試験片は21.1(a)に記載に従い使用した。
[酸素透過度]
JIS K7126−2 A法に準じて、酸素透過率測定装置(MOCON社製「OX−TRAN 2/21」)を用い、23℃、相対湿度65%の環境下で測定した。
以下に本実施例及び比較例で使用した原料樹脂の詳細を記す。
1)ポリエステル樹脂(A):PET樹脂(テレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)、東洋紡社製、固有粘度0.62dl/g)を用いた。
2)液晶ポリマー(B): 攪拌装置及び留出管を備えた反応容器に6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸:376.34g(40モル部)、4−ヒドロキシ安息香酸:276.23g(40モル部)、ハイドロキノン:55.05g(10モル部)及びテレフタル酸:83.06g(10モル部)を仕込み、次いで酢酸カリウム0.05g(全モノマーに対し67モルppm)及び全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.025倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
重合は、窒素ガス雰囲気下に室温〜150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去させつつ210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、335℃まで3時間かけて昇温した後、30分かけて20mmHgにまで減圧を行い、所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕を行い、異方性溶融相を持つ液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られた液晶ポリマーのDSCにより測定した結晶融解温度は221℃であった。
3)相溶化剤(C):1Lの4つ口コルベンに6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸95.0gとエピクロロヒドリン467g加え、窒素気流下80℃に昇温した。次いで、テトラメチルアンモニウムクロリドの50%水溶液を80℃で2時間かけて滴下し、同温度で1時間撹拌した。さらに、48%水酸化ナトリウム水溶液87.1gを80℃で3時間かけて滴下し、同温度で30分間撹拌した後、エピクロロヒドリンを減圧留去により除去した。残渣にトルエン560gを加えて10分間撹拌した後、析出物を濾過した。ろ液を水250gで洗浄した後、48%NaOH水溶液19gを加えて、1時間還流した。さらに水250gで洗浄した後、5%リン水溶液250gで洗浄し、再び水250gで洗浄した。トルエンを減圧留去によって除去し、相溶化剤105gを得た。得られた相溶化剤のエポキシ当量は168であった。
以下に各実施例及び比較例における二軸延伸ポリエステルフィルムの作製方法を記す。二軸延伸ポリエステルフィルムの物性を表1に示した。
<実施例1>
一軸押出機を用い、ポリエステル樹脂(A)を90質量%と液晶ポリマー(B)を10質量%となるように混合したものを290℃で溶融させた後、メルトラインに導入した。次いで280℃のT−ダイスからキャストし、20℃の冷却ロールに静電密着法により密着させて未延伸シートを得た。
次いで、120℃で縦方向に3.0倍ロール延伸し、次いで、テンターに通して120℃で横方向に4.0倍延伸し、228℃で3秒間の緊張熱処理とリラックス率5%の緩和処理を行った後、50℃で2秒間の冷却を行い、次いで、テンター両端の把持部を10%ずつ切断除去して厚みが12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの製膜条件及び物性等の評価結果を表1に示した。
<実施例2〜7、比較例1〜3>
実施例2〜7、及び比較例1〜3においては、表1に示した原料組成や製膜条件で実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの製膜条件及び物性等の評価結果を表1に示した。
表1の実施例1〜7に示したとおり、液晶ポリマーを本発明の範囲で添加することで、優れたガスバリア性と易引裂き性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムが得られた。
実施例2、6、7に示したとおり、相溶化剤(C)を添加した。相溶化剤(C)の添加により少ない液晶ポリマーの添加で優れたガスバリア性を付与でき、フィルムの透明性を改善することができた。
一方、比較例1では液晶ポリマーを配合していないので、フィルムのガスバリア性、易引裂き性に劣っていた。
比較例2は液晶ポリマーの比率が少ないために、十分なガスバリア性、易引裂き性が得られなかった。
比較例3は液晶ポリマーの添加量が本発明の範囲より多いため、延伸時に液晶ポリマーの配向が強すぎ、延伸中にフィルムが裂けてしまうため二軸延伸フィルムを得ることが困難であった。
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、ガスバリア性に優れ、かつ易引裂き性に優れるので、医薬品、医療品、食品、飲料などの包装材料として好適に用いることのできる。また、包装用途の他、太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途にも広く用いることができる。

Claims (4)

  1. ポリエステル樹脂60〜96質量%、及び結晶融解温度が250℃以下の液晶ポリマー4〜40質量%を含むこと特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。
  2. 23℃、相対湿度65%の環境下で測定した酸素透過度が100cc/m/day/atm以下であることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
  3. 縦方向の引裂強さが70mJ以下であることを特徴とする1又は2に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
  4. 前記二軸延伸ポリエステルフィルムが、相溶化剤を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
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