JP2021031516A - ゴム組成物、該ゴム組成物の加硫物及び成形品 - Google Patents

ゴム組成物、該ゴム組成物の加硫物及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】圧縮永久歪みや耐スコーチ性に優れ、発熱性が低減された加硫物が得られる硫黄変性クロロプレンゴムの提供。【解決手段】下記末端官能基の質量比率及び合計量が特定範囲の硫黄変性クロロプレンゴムと、平均粒子径が15〜80nmであるカーボンブラックと、を含有するゴム組成物。【選択図】なし

Description

クロロプレンゴムは、機械的特性や耐オゾン性、耐薬品性に優れており、その特性を活かして自動車部品、接着剤、各種工業ゴム部品など広範囲な分野に用いられている。また、近年、工業用ゴム部品に要求される性能が著しく高まっており、前述した機械的特性や耐オゾン性、耐薬品性の向上に加えて、ゴムの発熱性の低減や耐スコーチ性、耐摩耗性なども求められている。
ゴムの発熱性を低減させる技術としては、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム等のエラストマー、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩、BET比表面積が25m/g以下の酸化マグネシウム、及び有機過酸化物系架橋剤を含有してなる低発熱性ゴム組成物(特許文献1参照)が知られている。また、ゴム成分に特定の低発熱性カーボンブラックを含有させたゴム組成物(特許文献2参照)や、所定の性質を有する高分子量成分と、所定の性質を有する低分子量成分とを混合して得られる変性共役ジエン系重合体(特許文献3参照)が知られている。
一方で、耐スコーチ性や耐摩耗性に優れたクロロプレンゴムの開発も切望されている。耐スコーチ性を改善する技術としては、クロロプレンゴム100重量部に対して、ジチオカルバミン酸のアミン塩を1〜10重量部とチウラム系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.1〜5重量部を含有するゴム組成物が知られている(特許文献4参照)。また、前述した特許文献3にも、ゴムの耐摩耗性を改善する技術が記載されている。
特開平9−268239号公報 特開平10−130424号公報 特開2010−121086号公報 特開2016−141736号公報
しかしながら、特許文献1から特許文献4に記載される技術だけでは、耐スコーチ性や耐摩耗性に優れると共に、発熱性を低減させることが出来ないという問題点がある。
そこで、本発明では、耐スコーチ性や耐摩耗性に優れ、かつ、発熱性が低減された加硫物が得られるゴム組成物、その加硫体及び成形品を提供することを主目的とする。
本願発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究を行った結果、硫黄変性クロロプレンゴムの分子末端に特定の構造を導入し、充填剤として用いられるカーボンブラックの平均粒子径を特定の範囲にすることで耐スコーチ性や耐摩耗性に優れ、かつ、発熱性を低減することに成功し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、分子末端に化学式1及び化学式2で表される構造のうち少なくとも1種を有する硫黄変性クロロプレンゴムであって化学式1で表される末端官能基(A)と化学式2で表される末端官能基(B)の質量比率(B/A)が0〜12かつ硫黄変性クロロプレンゴム100質量部中の末端官能基(A)と末端官能基(B)の質量合計量(A+B)が0.1〜1質量部である硫黄変性クロロプレンゴム100質量部と、
平均粒子径が15〜80nmであるカーボンブラック25〜55質量部と、を含有するゴム組成物である。
(式中、R、Rはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基又は置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリールチオ基を示す。R、Rはそれぞれ同一のものでもよく、異なるものでも良い。また、R、Rは互いに結合して、置換基を有する環を形成しても良い。)
(式中、R、Rは置換基を有しても良い炭素数7〜8のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ同一のものでもよく、異なるものでも良い。)
硫黄変性クロロプレンゴム100質量部中の末端官能基(A)の量は0.05〜0.4質量部であることが好ましく、硫黄変性クロロプレンゴム100質量部中の末端官能基(B)の量は0〜0.8質量部であることが好ましい。
ゴム組成物は、硫黄変性クロロプレンゴム100質量部に対してイミダゾールを0.005〜0.2質量部含有することが好ましい。
イミダゾールとしては、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、N−シクロヘキシル−1H−ベンズイミダゾール−2−スルフェンアミド、2−メトキシカルボニルアミノ−ベンゾイミダゾール2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−カルボキシベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール−5−スルホン酸ナトリウム二水和物、2−メルカプト−5−ニトロベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−アミノベンズイミダゾールから選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。
ゴム組成物は、硫黄変性クロロプレンゴム100質量部に対してジチオカルバミン酸系化合物を0〜2質量部含有させることが好ましい。
ジチオカルバミン酸系化合物としては、ジベンジルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸カリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸アンモニウム、ジベンジルジチオカルバミン酸ニッケル、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸カリウム、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸カルシウム、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルカルバミン酸アンモニウム、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドから選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。
ゴム組成物に含まれるイミダゾール(C)とジチオカルバミン酸系化合物(D)の質量比率(D/C)は0〜120に調整することが好ましい。ゴム組成物に含まれる硫黄変性クロロプレンゴムのムーニー粘度は、20〜80に調整することが好ましい。
前記カーボンブラックは、DBP吸収量が50〜150ml/100gであることが好ましく、ヨウ素吸着量が20〜150mg/gであることが好ましい。
本発明では、前述したゴム組成物を加硫させた加硫物、及び、ゴム組成物を成形後又は成形時に加硫して得た成形品を提供する。
本発明によれば、耐スコーチ性や耐摩耗性に優れ、かつ、発熱性が低減された加硫物が得られるゴム組成物、その加硫体及び成形品が得られる。
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
本発明のゴム組成物は、特定構造の分子末端を有する硫黄変性クロロプレンゴムと、特定の平均粒子径を有するカーボンブラックを含有するものである。
<硫黄変性クロロプレンゴム>
硫黄変性クロロプレンゴムは、硫黄の存在下で、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下「クロロプレン」とも称する)単独又はクロロプレンと他の単量体とを乳化重合して主鎖に硫黄を導入した硫黄変性クロロプレン重合体を、イミダゾールを用いて可塑化したラテックス、及び、このラテックスを一般的な方法で乾燥洗浄して得られた硫黄変性クロロプレンゴムを包含する。以下、硫黄変性クロロプレンゴムの製造工程に沿って、詳細に説明する。
<重合工程>
硫黄変性クロロプレンゴムは、クロロプレンと硫黄、必要に応じてクロロプレンと共重合可能な単量体を乳化重合して重合液を得る。
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン、並びにメタクリル酸及びこれらのエステル類などがあり、2種以上を併用することもできる。これらの単量体を用いる場合は、得られる硫黄変性クロロプレンゴムの特性を損なわない範囲で用いることが好ましく、クロロプレンを含む全単量体中10質量%以下とすることが好ましい。これらの単量体の使用量が10質量%を超えると、得られる硫黄変性クロロプレンゴムの耐熱性が向上しない場合や、加工性が低下する場合もある。
これらの単量体のうち、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンを用いると、得られる硫黄変性クロロプレンゴムの結晶化速度を遅くすることができる。結晶化速度が遅い硫黄変性クロロプレンゴムは、低温環境下においてもゴム弾性を維持することができ、例えば、低温圧縮永久歪みを改善することが可能となる。
乳化重合に際して、添加する硫黄(S)の量は、重合させる単量体の合計100質量部に対して、0.01〜0.6質量部が好ましく、0.1〜0.5質量部がより好ましい。硫黄(S)の量が0.01質量部未満であると、得られる硫黄変性クロロプレンゴムの機械的特性や動的特性が得られない場合がある。一方、硫黄(S)の量が0.6質量部を超えると、得られる硫黄変性クロロプレンゴムの金属への粘着性が強くなりすぎて加工できなくなる場合がある。
乳化重合に用いる乳化剤としては、クロロプレンの乳化重合に用いることが可能な公知の乳化剤や脂肪酸類を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。乳化剤としては、具体的には、ロジン酸類、芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物の金属塩、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸カリウム、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸カリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフォン酸カリウム、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルスルフォン酸カリウム等がある。この中でも特に、ロジン酸類を用いることが好ましい。なお、ここにロジン酸類とは、ロジン酸又は不均化ロジン酸、あるいは不均化ロジン酸のアルカリ金属塩、もしくはこれらの化合物などを意味する。好適に用いられる乳化剤としては、不均化ロジン酸のアルカリ金属塩と、炭素数が6〜22である飽和又は不飽和の脂肪酸の混合物からなるアルカリ石鹸水溶液である。不均化ロジン酸の構成成分としては、例えば、セスキテルペン、8,5−イソピマル酸、ジヒドロピマル酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、デイソプロピルデヒドロアビエチン酸、デメチルデヒドロアビエチン酸などがある。
乳化重合開始時の水性乳化液のpHは、10.5以上であることが望ましい。ここで、水性乳化液とは、乳化重合開始直前の、クロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体、乳化剤、硫黄(S)等との混合液である。これらの単量体や硫黄(S)等の後添加、分割添加等によりその組成が変わる場合も包含される。pH10.5以上にすることで、乳化剤としてロジン酸類を用いた場合に、重合中のポリマー析出等を防止し、安定的に重合を制御することが可能となる。なお、水性乳化液のpHは、乳化重合時に存在している水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ成分量により調整できる。
乳化重合の重合温度は重合制御性と生産性の観点から0〜55℃、好ましくは30〜55℃である。
重合開始剤としては通常のラジカル重合で用いられる過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを用いることができる。重合は重合率60〜95%、好ましくは70〜90%の範囲で行われ、ついで重合禁止剤を加えて停止させる。
生産性の面から、重合率は60%以上が好ましい。また、得られる硫黄変性クロロプレンゴムの加工性に影響を及ぼす分岐構造の発達やゲルの生成を抑制する観点から、重合率は95%以下が好ましい。重合体の重合禁止剤としては、例えばジエチルヒドロキシアミン、チオジフェニルアミン、4−第三ブチルカテコール、2,2’−メチレンビス−4−メチル−6−第三−ブチルフェノールなどがある。重合禁止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<可塑化工程>
可塑化工程は、前記重合工程で得られた重合液に、イミダゾールを添加し、重合液中の硫黄変性クロロプレン重合体の主鎖に存在するポリスルフィド結合(S〜S)と添加された、イミダゾールが反応することで、添加した、イミダゾールに由来する前記化学式1で表される末端官能基(A)を形成しながら、硫黄変性クロロプレン重合体を切断、解重合する工程である。以下、硫黄変性クロロプレン重合体を切断、解重合するために用いる薬品を可塑化剤とする。
添加する、イミダゾールの種類は、公知の、イミダゾールを1種又は2種以上、自由に用いることができる。本発明では特に2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、N−シクロヘキシル−1H−ベンズイミダゾール−2−スルフェンアミド、2−メトキシカルボニルアミノ−ベンゾイミダゾール2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−カルボキシベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール−5−スルホン酸ナトリウム二水和物、2−メルカプト−5−ニトロベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−アミノベンズイミダゾールから選ばれる少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
イミダゾールの添加量は、重合液中の硫黄変性クロロプレン重合体100質量部に対して、0.2〜3質量部が好ましい。イミダゾールの添加量を0.2質量部以上とすることで、得られる加硫物の耐スコーチ性及び耐摩耗性を向上させることができる。また、イミダゾールの添加量を3質量部以下とすることで、適度なムーニー粘度の硫黄変性クロロプレンゴムを得ることができ、その結果、加硫成形性を向上させることができる。
可塑化工程では、可塑化剤としてジチオカルバミン酸系化合物を併用することもできる。重合液中において、ジチオカルバミン酸系化合物は、イミダゾールと反応し、イミダゾールやジチオカルバミン酸系化合物単体と比較し、よりポリスルフィド結合との反応性が高い反応物を形成しムーニー粘度調整を容易にする。反応物は硫黄変性クロロプレン重合体のポリスルフィド結合と反応することで、末端官能基(A)と添加したジチオカルバミン酸系化合物に由来する前記化学式2で表される末端官能基(B)を形成する。前記の可塑化工程により得られた硫黄変性クロロプレンゴムの加硫物は耐スコーチ性が良好になり、得られる加硫物の耐摩耗性、及び発熱性の物性バランスも良好となる。添加するジチオカルバミン酸系化合物は、公知のジチオカルバミン酸系化合物を1種又は2種以上、自由に用いることができ、特に、ジベンジルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸カリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸アンモニウム、ジベンジルジチオカルバミン酸ニッケル、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸カリウム、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸カルシウム、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルカルバミン酸アンモニウム、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドから選ばれる少なくとも一種の化合物を用いることが好ましい。
ジチオカルバミン酸系化合物を用いる場合、その添加量は特に限定されないが、重合液中の重合体100質量部に対して、0〜8質量部添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜4である。ジチオカルバミン酸系化合物の添加量を該範囲内とすることで、得られるゴム組成物のムーニー粘度制御が一層容易となり、得られる加硫物の耐スコーチ性及び耐摩耗性が一層向上し、発熱性が一層低減される。
前記可塑化工程を経た重合液を、一般的な方法で、冷却、pH調整、凍結、乾燥等を行って、硫黄変性クロロプレンゴムを得る。得られた硫黄変性クロロプレンゴムは、その100質量部中に前記化学式1で表される末端官能基(A)を0.05〜0.4質量部含有することを特徴とする。末端官能基(A)の含有量を調整するには可塑化工程で添加するイミダゾールの量や可塑化工程の可塑化時間及び可塑化温度を調整すれば良い。末端官能基(A)の含有量を該範囲内とすることで、得られる加硫物の耐スコーチ性及び耐摩耗性が向上し、発熱性の低減に資する。
得られた硫黄変性クロロプレンゴムは、その100質量部に対して、未反応のイミダゾールを0.005〜0.2質量部残存させることで、得られる加硫物の耐スコーチ性及び耐摩耗性が向上し、発熱性の低減に資する。未反応のイミダゾールの残存量を調整するには、可塑化工程で添加するイミダゾールの量や可塑化工程の可塑化時間及び可塑化温度を調整すれば良い。
前記可塑化工程において、ジチオカルバミン酸系化合物を用いる場合、得られる硫黄変性クロロプレンゴム中に存在する前記化学式2で表される末端官能基(B)の含有量は特に限定されない。例えば、前記可塑化工程において、重合液中の重合体100質量部に対して、ジチオカルバミン酸系化合物を0〜12質量部添加した場合、得られる硫黄変性クロロプレンゴムには、その100質量部に対して、末端官能基(B)を0〜0.4質量部含有し、未反応のジチオカルバミン酸系化合物を0〜2質量部含有する。末端官能基(B)の含有量や未反応のジチオカルバミン酸系化合物の量を調整するにはジチオカルバミン酸系化合物の添加量や可塑化工程の時間及び可塑化温度を調整すれば良い。末端官能基Bの含有量を該範囲内とすることで、得られる加硫物の耐スコーチ性及び耐摩耗性が向上し、発熱性の更なる低減に資する。
末端官能基(A)の含有量と、末端官能基(B)の含有量の質量比(B/A)は、0〜12であり、かつ末端官能基(A)と末端官能基(B)の含有量の質量合計(A+B)は0.1〜1質量部である。質量比(B/A)が12を超えてしまうと得られる加硫物の耐スコーチ性や耐発熱性が低下する。質量合計(A+B)が0.1に満たないと得られる硫黄変性クロロプレンゴムの耐スコーチ性、耐摩耗性、耐発熱性が低下し、質量合計(A+B)が1質量部を超えると得られる硫黄変性クロロプレンゴムのムーニー粘度の低下が著しく実用的でない。
硫黄変性クロロプレンゴム中の末端官能基(A)及び末端官能基(B)の含有量は以下の手順にて定量できる。
得られた硫黄変性クロロプレンゴムをベンゼンとメタノールで精製し、再度凍結乾燥して測定用試料とした。得られた測定用試料を、JIS K−6239に従ってH−NMR測定を行った。得られた測定データを、溶媒とした重水素化クロロホルム中のクロロホルムのピーク(7.24ppm)を基準に補正し、補正した測定データに基づいて、6.99〜7.23ppmと5.05〜5.50ppmとにピークトップを有するピークの面積を算出する。
さらに、未反応のイミダゾールの含有量(C)と、未反応のジチオカルバミン酸系化合物の含有量(D)の比(D/C)は、0〜120であることが好ましい。含有量の比(D/C)を該範囲内とすることで、得られる加硫物の耐摩耗性、耐スコーチ性、及び発熱性の物性バランスが一層良好となる。
硫黄変性クロロプレンゴムに含まれる未反応のイミダゾールの含有量(C)と、未反応のジチオカルバミン酸系化合物の含有量(D)は以下の手順にて定量できる。
得られた硫黄変性クロロプレンゴム1.5gをベンゼン30mlで溶解した後、メタノール60mlを滴下し、ゴム成分を析出させ溶媒から分離し非ゴム分を溶媒可溶成分として回収した。析出したポリマー分に対し、再度、同様の手順でベンゼン溶解及びメタノール滴下を行い、ゴム成分を分離し、非ゴム分を同様に溶媒可溶成分として回収し、1回目と2回目の溶媒を混合して200mlに定容、これを測定用試料とした。測定用試料を液体クロマトグラフ(LC 日立製作所製 ポンプ:L−6200、L−600 UV検出器:L−4250)に20μL注入した。LCの移動相はアセトニトリル及び水の比率を変化させながら使用し、1ml/minの流量で流した。カラムはInertsil ODS−3(φ4.6×150mm 5μm GLサイエンス製)を用いた。イミダゾール(測定波長:300nm)、ジチオカルバミン酸系化合物(測定波長:280nm)のピーク検出時間を標準液で確認し、そのピーク面積から求めた検量線により定量値を求めた。本定量値と、分析に用いたサンプル量の比較により、硫黄変性クロロプレンゴムに含まれる未反応のイミダゾール及び未反応のジチオカルバミン酸系化合物の含有量を求めた。
硫黄変性クロロプレンゴムのムーニー粘度は、特に限定されないが、20〜80の範囲に調整することが好ましい。硫黄変性クロロプレンゴムのムーニー粘度を該範囲に調整することによって、得られる硫黄変性クロロプレンゴムの加工性を維持することができる。
硫黄変性クロロプレンゴムのムーニー粘度を調整するには、可塑化剤の添加量や可塑化工程の時間及び可塑化温度を調整すれば良い。
硫黄変性クロロプレンゴムには、貯蔵時のムーニー粘度変化を防止するため、少量の安定剤を含有させることもできる。本発明に用いることができる安定剤の種類は、クロロプレンゴムに用いることが可能な公知の安定剤を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−4−フェニルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリー−ブチルフェノール)、及び4,4’−チオビス−(6−ターシャリー−ブチル−3−メチルフェノール)などがある。これらの安定剤のうち、4,4’−チオビス−(6−ターシャリー−ブチル−3−メチルフェノールが好ましい。
<カーボンブラック>
カーボンブラックは、得られる成形品の耐摩耗性を向上させるために硫黄変性クロロプレンゴムに添加するものである。カーボンブラックは、JIS Z8901に準拠して電子顕微鏡を用いて観察した平均粒子径が15nm〜80nmであるものが好ましく、より好ましくは20nm〜50nmの範囲のものである。平均粒子径が上記範囲を外れると、十分な補強効果が得られず得られる加硫物の耐摩耗性を向上することができない。
また、カーボンブラックはJIS K6217−4に準拠して測定したフタル酸ジブチル(以下DBPという)吸収量が50ml/100g〜150ml/100gのものが好ましく、より好ましくは80ml/100g〜140ml/100gのものである。DBP吸収量が150ml/100gを超えると、ゴム組成物の耐スコーチ性が低下し、動的環境下におけるゴム組成物の発熱性の上昇を引き起こしてしまう。DBP吸収量が50ml/100gに満たないと得られる加硫物の耐摩耗性が向上しない。
加えて、カーボンブラックはJIS K6217−1に準拠してヨウ素吸着量が20ml/g〜150ml/gのものが好ましく、より好ましくは50ml/g〜150ml/gのものが好ましい。ヨウ素吸着量が20ml/gに満たないと得られる加硫物の耐摩耗性が向上しない。
カーボンブラックの添加量は、硫黄変性クロロプレンゴム100質量部に対して25〜55質量部である。カーボンブラックの配合量が25質量部に満たないと得られる加硫物の耐摩耗性が向上せず、55質量部を超えてしまうと得られる加硫物の耐スコーチ性が低下してしまう。カーボンブラックの添加量は、好ましくは25〜45質量部、さらに好ましくは30〜40質量部である。これらの範囲にすると得られる加硫物の耐摩耗性及び耐スコーチ性がさらに向上するため好ましい。
<加硫物・成形品>
加硫物及び成形品は、前述したゴム組成物、金属化合物及び可塑剤などを、ロールやバンバリーミキサーなどで混合した後、目的に応じた形状に成形加工して、成形時又は成形後に加硫して得られるものである。成形方法は、特に限定されるものではないが、プレス成形、射出成形及び押出成形などを適用することができる。例えば、成形体が伝動ベルト、コンベアベルト、空気バネ、シール、パッキン、防振材、ホース、ゴムロールなどである場合は、プレス成形や射出成形、押出成形により形成することができる。
金属化合物は、ゴム組成物の加硫速度の調整や、ゴム組成物の脱塩酸反応によって生じる塩化水素などの塩素源を吸着して、ゴム組成物が劣化することを抑制するために添加するものである。金属化合物としては、例えば、亜鉛、チタン、マグネシウム、鉛、鉄、ベリリウム、カルシウム、バリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、バナジウム、モリブテン、タングステンなどの酸化物や水酸化物を用いることができる。これらの金属化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
金属化合物の添加量は、特に限定されないが、硫黄変性クロロプレンゴム100質量部に対して、3〜15質量部の範囲が好ましい。金属化合物の添加量をこの範囲に調整することにより、得られるゴム組成物の機械的強度を向上させることができる。
可塑剤は、ゴム組成物の硬度を下げて、その低温特性を改良するために添加するものである。また、ゴム組成物を用いてスポンジを製造する際に、その風合いを向上させることもできる。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート{アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)}、ホワイトオイル、シリコンオイル、ナフテンオイル、アロマオイル、トリフェニルフォスフェート、及びトリクレジルフォスフェートなどがある。これらの可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
可塑剤の添加量は、特に限定されないが、硫黄変性クロロプレンゴム100質量部に対して、50質量部以下の範囲が好ましい。可塑剤の添加量をこの範囲に調整することにより、得られるゴム組成物の引き裂き強度を維持しつつ、上述の効果を発揮することができる。
以下、ゴム組成物の用途例を説明する。
(伝動ベルト)
伝動ベルトは、巻掛け伝動装置に使われる機械要素で、原動車から従動車に動力を伝達する部品である。軸にセットされたプーリーにかけて用いられることが多い。軽量性、静音性、軸角度の自由度などに優れるため、自動車、一般産業用など、機械全般に幅広く使用されている。ベルトの種類も多様化しており、平ベルト、コンベアベルト、タイミングベルト、Vベルト、リブベルト、丸ベルトなどが機械用途に応じて使い分けられている。効率的に動力を伝達するため、高い張力でかけられたベルトが回転変形を繰り返すことから、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムなどのエラストマー材料が使用されている。優れたゴム物性を有するため、クロロプレンゴムは自動車、一般産業用などに採用されているが、クロロプレンゴムは成形段階でしばしばスコーチを引き起こすことが知られており、スコーチタイムを伸ばすことは重要な技術課題である。また、ベルトは持続的に動的環境で使用されるから、製品の信頼性向上のため、耐摩耗性や耐発熱性に優れた材料が求められている。
本発明のゴム組成物は、伝動ベルトの耐スコーチ性と耐摩耗性及び耐発熱性を高めることが可能である。これにより、従来の硫黄変性クロロプレンゴムでは困難であった生産性と耐久性に優れたベルトを製造することが可能である。
(空気バネ)
空気バネは、圧縮空気の弾力性を利用したバネ装置である。自動車やバス、トラックなどのエアサスペンションなどに利用される。ベローズ型とスリーフ事型(ダイヤフラム型の一種)があり、いずれもピストンを空気室内に侵入させて空気圧を高めることができる。クロロプレンゴムは成形段階でしばしばスコーチを引き起こすことが知られており、スコーチタイムを伸ばすことは重要な技術課題である。また、空気バネは持続的に動的環境で使用されるから、製品の信頼性向上のため、耐摩耗性や耐発熱性に優れた材料が求められている。
本発明のゴム組成物は、空気バネの耐スコーチ性と耐摩耗性及び耐発熱性を高めることが可能である。これにより、従来の硫黄変性クロロプレンゴムでは困難であった生産性と耐久性に優れた空気バネを製造することが可能である。
(ホース)
ホースは、屈曲可能な管であり水まきなどの際に自由に屈曲し、可搬性、移動性を必要とする作業に用いられる。また、金属パイプなど硬質な管と比較して、変形による疲労破壊を起こしにくいことから、自動車の配管など、振動をともなう部位の配管に使用される。中でも、最も一般的なのがゴムホースである。ゴムホースは、送水用、送油用、送気用、蒸気用、油圧用高・低圧ホースなどがある。クロロプレンゴムは高圧の流体の圧力に耐えうる良好な機械的特性を理由として、主として油圧用高圧ホースに使用されている。
本発明のゴム組成物は、ホースの耐スコーチ性と耐摩耗性及び耐発熱性を高めることが可能である。これにより、従来の硫黄変性クロロプレンゴムでは困難であった生産性と耐久性に優れた空気バネを製造することが可能である。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
<実施例1>
<硫黄変性クロロプレンゴム>
内容積30リットルの重合缶に、クロロプレン100質量部、硫黄0.55質量部、純水120質量部、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)4.00質量部、水酸化ナトリウム0.60質量部、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(商品名デモールN:花王株式会社製)0.6質量部を添加した。重合開始前の水性乳化剤のpHは12.8であった。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。転化率85%となった時点で重合禁止剤であるジエチルヒドロキシアミンを加えて重合を停止させ、クロロプレンの重合液を得た。
得られた重合液に、溶剤としてクロロプレン単量体10質量部、可塑化剤として2−メルカプトベンズイミダゾール(商品名「ノクラックMB」大内新興化学工業株式会社製)1質量部及びテトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名「ノクセラーTBzTD」大内新興化学工業株式会社製)4質量部、分散剤としてβ−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.05質量部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.05質量部からなる可塑化剤乳化液を添加し、可塑化前の硫黄変性クロロプレン重合体ラテックスを得た。
ここで、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩は、汎用に用いられる分散剤であり、少量添加することで安定性が向上し、製造過程において凝集や析出をすることなく、安定的にラテックスを製造することができる。また、本実施例では、乳化重合後の重合液に可塑化剤を添加しているが、その際、より安定した可塑化を可能とするため、溶剤として添加したクロロプレンに可塑化剤を溶解させた可塑化剤液に、ラウリル硫酸ナトリウムを添加して乳化状態にしたものを添加した。
得られた硫黄変性クロロプレン重合体ラテックスを減圧蒸留して未反応の単量体を除去し、撹拌しながら温度50℃で1時間保持して可塑化し、可塑化後のラテックスを得た(以下、この可塑化後のラテックスを「ラテックス」と略称する。)。
得られたラテックスを冷却し、常法の凍結−凝固法で重合体を単離して硫黄変性クロロプレンゴムを得た。
得られた硫黄変性クロロプレンゴムの末端官能基は、硫黄変性クロロプレンゴム100質量部に対し、化学式3で表される2−メルカプトベンズイミダゾールに由来する末端官能基(A)が0.13質量部及び、化学式4で表されるテトラベンジルチウラムジスルフィドに由来する末端官能基(B)が0.29質量部であった。また、末端官能基の質量比率(B/A)は2.2で、質量合計量(A+B)は0.42であった。
<ムーニー粘度の測定>
前記で得られた硫黄変性クロロプレンゴム(生ゴム)について、JIS K 6300−1に準拠して、L型ロータの予熱時間1分、回転時間4分、試験温度100℃にてムーニー粘度の測定を行った。
<評価用のサンプルの作製>
前記で得られた硫黄変性クロロプレンゴムと、表1に記載した化合物を、8インチロールを用いて混合し、160℃で20分間プレス架橋して評価用のサンプルを作製した。
表1に記載した化合物は以下の通り
滑剤・加工助剤1:新日本理化株式会社製 ステアリン酸50S
老化防止剤:大内新興化学工業製 ノクラックAD−F
酸化マグネシウム:協和化学工業株式会社製 キョーワマグ30
滑剤・加工助剤2:三菱ケミカル株式会社製 アマイドAP−1
ワックス:大内新興化学株式会社製 サンノック
加硫剤:堺化学工業株式会社製 酸化亜鉛2種
カーボンブラックA:旭カーボン社製 旭#70 平均粒子径28nm、ヨウ素吸着量80mg/g、DBP吸収量101ml/100g
<実施例2〜8及び比較例1〜3>
可塑化剤の添加量を変更して得られた硫黄変性クロロプレンゴムを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<実施例9>
可塑化剤である2−メルカプトベンズイミダゾールの添加量を1質量部から0.3質量部とし、可塑化の保持時間を1時間から3時間に変更して得られた硫黄変性クロロプレンゴムを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<実施例10>
可塑化剤である2−メルカプトベンズイミダゾールの添加量を1質量部から1.5質量部とし、可塑化の保持時間を1時間から15分に変更して得られた硫黄変性クロロプレンゴムを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<実施例11>
可塑化剤であるテトラベンジルチウラムジスルフィドの添加量を4質量部から8質量部とし、可塑化の保持時間を1時間から15分に変更して得られた硫黄変性クロロプレンゴムを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<実施例12>
可塑化剤として2−メルカプトベンズイミダゾールを2−メルカプト−5−カルボキシベンズイミダゾール:(商品名「2MB5C」川口化学工業株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、硫黄変性クロロプレンゴムを得た。得られた硫黄変性クロロプレンゴムの末端官能基は、前記化学式4で表されるテトラベンジルチウラムジスルフィドに由来するジチオカルバミン酸末端種A0.14質量部に加え、化学式5で表される2−メルカプト−5−カルボキシベンズイミダゾールに由来するイミダゾール末端種Bが0.33質量部であった。
<実施例13>
可塑化剤としてテトラベンジルチウラムジスルフィドをテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド:(商品名「ノクセラーTOT−N」大内新興化学工業株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、硫黄変性クロロプレンゴムを得た。得られた硫黄変性クロロプレンゴムの末端官能基は、前記化学式3で表される2−メルカプトベンズイミダゾールに由来するイミダゾール末端種Aが0.15質量部と、化学式6で表されるテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドに由来するジチオカルバミン酸末端種Bが0.25質量部であった。
<実施例14>
可塑化剤として2−メルカプトベンズイミダゾールを2−メルカプト−5−カルボキシベンズイミダゾールとし、テトラベンジルチウラムジスルフィドをテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、硫黄変性クロロプレンゴムを得た。得られた硫黄変性クロロプレンゴムの末端官能基は、前記化学式5で表される2−メルカプト−5−カルボキシベンズイミダゾールに由来するイミダゾール末端種Bが0.15質量部と、前記化学式6で表されるテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドに由来するイミダゾール末端種Bが0.32質量部であった。
<比較例4>
可塑化剤として、2−メルカプトベンズイミダゾールとジイソプロピルキサントゲンジスルフィドをテトラエチルチウラムジスルフィドに変更し、その添加量を2.5質量部に変更して得られたクロロプレンゴムを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。得られた硫黄変性クロロプレンゴムの末端官能基は、化学式7で表されるテトラエチルチウラムジスルフィドに由来する末端官能基が0.26質量部であった。
<実施例15>
充填剤としてカーボンブラックAをカーボンブラックB(商品名「旭#60UG」旭カーボン社製 平均粒子径43nm、ヨウ素吸着量40mg/g、DBP吸収量110ml/100g)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<実施例16>
充填材としてカーボンブラックAをカーボンブラックC(商品名「旭#95」旭カーボン社製 平均粒子径17nm、ヨウ素吸着量150mg/g、DBP吸収量127ml/100g)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<実施例17>
充填材としてカーボンブラックAをカーボンブラックD(商品名「旭#50」旭カーボン社製 平均粒子径80nm、ヨウ素吸着量23mg/g、DBP吸収量63ml/100g)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<実施例18>
充填材としてカーボンブラックAをカーボンブラックE(商品名「旭#52」旭カーボン社製 平均粒子径60nm、ヨウ素吸着量19mg/g、DBP吸収量128ml/100g)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<実施例19>
充填材としてカーボンブラックAをカーボンブラックF(商品名「アサヒサーマル」旭カーボン社製 平均粒子径80nm、ヨウ素吸着量24mg/g、DBP吸収量28ml/100g)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<実施例20>
充填材としてカーボンブラックAをカーボンブラックG(商品名「旭F−200GS」旭カーボン社製 平均粒子径38nm、ヨウ素吸着量55mg/g、DBP吸収量180ml/100g)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<比較例5>
カーボンブラックAの添加量を40質量部から20質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<比較例6>
カーボンブラックAの添加量を40質量部から60質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<比較例7>
カーボンブラックAをカーボンブラックH(商品名「旭#15」旭カーボン社製 平均粒子径122nm、ヨウ素吸着量11mg/g、DBP吸収量41ml/100g)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて評価サンプルを作製した。
<耐摩耗性の評価>
前記で作製した各サンプルについて、JIS K 6264−2に準拠して、DIN摩耗試験を行った。
<耐スコーチ性の評価>
前記で作製した各サンプルについて、JIS K 6300−1に準拠して、ムーニースコーチ試験を実施した。
<発熱性>
発熱性の評価は、グッドリッチフレクソメーター(Goodrich Flexometer:JIS K 6265)により行った。グッドリッチフレクソメーターは、加硫ゴム等の試験片に動的繰り返し負荷を加えて、試験片内部の発熱による疲労特性を評価する試験方法であって、詳しくは、一定の温度条件で試験片に静的初期荷重を加え、更に一定振幅の正弦振動を加え、時間の経過と共に変化する試験片の発熱温度やクリープ量を測定するものである。試験方法はJIS K 6265に準拠し、50℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で発熱量(ΔT)を測定した。
<結果>
実施例の結果を下記の表1に、比較例の結果を下記の表2に示す。
<考察>
表1〜表3に示す通り、実施例1〜20の評価サンプルは、耐スコーチ性や耐摩耗性に優れ、かつ、発熱性が低減されることが確認できた。イミダゾールを用いても、生ゴム中の末端官能基の含有量の合計(A+B)が1質量部を超える比較例1については、ムーニー粘度が低すぎて、評価サンプルを作製することができなかった。
実施例で比較すると、末端官能基(A)が0.4質量部以下である実施例1は、末端官能基(A)が0.4質量部を超える実施例4に比べて耐摩耗性に優れ、発熱性がより低減していた。また、実施例1は、末端官能基(B)が0.8質量部を超える実施例5に比べてスコーチタイムがより長くなり、耐摩耗性に優れ、発熱性がより低減していた。
硫黄変性クロロプレンゴム中のイミダゾール(C)とジチオカルバミン酸系化合物(D)の含有量の質量比率(D/C)120以下である実施例2は、質量比率(D/C)が120を超える実施例9に比べてスコーチタイムがより長くなり、耐摩耗性に優れ、発熱性がより低減していた。
また、実施例15は充填剤であるカーボンブラックのDBP吸収量が150ml/100gを超える実施例20に比べてスコーチタイムがより長くなり、発熱性がより低減していた。実施例17については、DBP吸収量が50ml/100g以下である実施例19に比べて耐摩耗性に優れていた。
実施例18は、充填剤であるカーボンブラックのヨウ素吸着量が20mg/gに満たなかったことから、実施例1と比較して耐摩耗性が劣っていた。

Claims (13)

  1. 化学式1及び化学式2で表される構造のうち少なくとも化学式1で表される構造を分子末端に有する硫黄変性クロロプレンゴムであって化学式1で表される末端官能基(A)と化学式2で表される末端官能基(B)の質量比率(B/A)が0〜12かつ硫黄変性クロロプレンゴム100質量部中の末端官能基(A)と末端官能基(B)の合計量(A+B)が0.1〜1質量部である硫黄変性クロロプレンゴム100質量部と、
    平均粒子径が15〜80nmであるカーボンブラック25〜55質量部と、を含有するゴム組成物。
    (式中、R、Rはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基又は置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリールチオ基を示す。R、Rはそれぞれ同一のものでもよく、異なるものでも良い。また、R、Rは互いに結合して、置換基を有する環を形成しても良い。)
    (式中、R、Rは置換基を有しても良い炭素数7〜8のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ同一のものでもよく、異なるものでも良い。)
  2. 硫黄変性クロロプレンゴム100質量部中の末端官能基(A)の量が0.05〜0.4質量部である請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 硫黄変性クロロプレンゴム100質量部中の末端官能基(B)の量が0〜0.8質量部である請求項1又は請求項2記載のゴム組成物。
  4. 硫黄変性クロロプレンゴム100質量部に対して、さらに、イミダゾールを0.005〜0.2質量部含有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  5. イミダゾールが、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、N−シクロヘキシル−1H−ベンズイミダゾール−2−スルフェンアミド、2−メトキシカルボニルアミノ−ベンゾイミダゾール2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−カルボキシベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール−5−スルホン酸ナトリウム二水和物、2−メルカプト−5−ニトロベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−アミノベンズイミダゾールから選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項4に記載のゴム組成物。
  6. 硫黄変性クロロプレンゴム100質量部に対して、さらに、テトラアルキルチウラムジスルフィド又はジアルキルジチオカルバミン酸塩(以下、これらを総称してジチオカルバミン酸系化合物とする)を0〜2質量部含有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  7. ジチオカルバミン酸系化合物が、ジベンジルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸カリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸アンモニウム、ジベンジルジチオカルバミン酸ニッケル、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸カリウム、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸カルシウム、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルカルバミン酸アンモニウム、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドから選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項6に記載のゴム組成物。
  8. 硫黄変性クロロプレンゴムに含まれるイミダゾール(C)とジチオカルバミン酸系化合物 (D)の質量比率(D/C)が0〜120である、請求項6又は請求項7に記載のゴム組成物。
  9. 硫黄変性クロロプレンゴムのムーニー粘度が20〜80である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  10. カーボンブラックのDBP吸収量が50〜150ml/100gである請求項1から請求項9のいずれかに記載のゴム組成物。
  11. カーボンブラックのヨウ素吸着量が20〜150mg/gである請求項1から請求項10のいずれかに記載のゴム組成物。
  12. 請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のゴム組成物からなる加硫物。
  13. 請求項12に記載の加硫物からなる成形品。
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