JP2021030276A - フラックス及び成形はんだ - Google Patents

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Abstract

【課題】フラックス中の物質がはんだ溶融時に電子部品と基板との接合を阻害することがなく、また、過度に熱を加えることなくはんだ溶融が可能となる成形はんだ用フラックス及びそのようなフラックスを被覆した成形はんだを提供する。【解決手段】成形はんだ用フラックスは、複数の金属粉末を加圧成形してなる成形はんだの表面の少なくとも一部を被覆する。フラックスは有機酸を含有する。有機酸の融点は、複数の金属粉末の中で最も低い液相線温度の金属粉末の液相線温度(T)以下である。有機酸の沸点または分解温度は、液相線温度(T)を超える。【選択図】図1

Description

本発明は、基板上に形成される電子回路に電子部品を接合する際に用いるフラックス及び成形はんだに関する。
近年、エネルギー及び環境問題の観点から、電力の制御及び供給を行う電力用半導体素子、所謂パワー半導体が注目されている。中でも、SiCを使用した半導体素子(SiC素子と略称する)は、電力損失が少なく、大電流が扱えることから各用途に採用されている。SiC素子は300℃以上の高温でも動作可能であることから、SiC素子を回路基板、例えば、セラミック基板に銅回路板を直接接合したDCB基板(Direct Copper Bond基板)に接合する際の接合材料としては、素子の動作時に溶融しないために固相線温度が300℃以上であることが求められる。
従来、SiC素子のような耐熱性の高いパワー半導体の接合に用いられる接合材料としては、例えば、Agを含む金属粉末をDCB基板上に配置し、これを一方向または双方向から加圧しながら加熱して金属粉末を緻密化(焼結)させるものが挙げられる。この従来技術は、液相線温度の高いAgを含む金属粉末を焼結させるために、例えば、200℃から300℃の高温条件下で長時間の加熱及び加圧が必要となり、パワー半導体の生産性が阻害されるという問題があった。
そこで、効率的にDCB基板上にSiC素子を接合する技術として、固相線温度及び液相線温度の高い成形はんだが提案されている(特許文献1参照)。成形はんだは、プリフォームはんだとも呼ばれ、ワッシャ形状、リング形状、ペレット形状、ディスク形状、リボン形状及びワイヤー形状といった所定の形状に成形される。成形はんだをDCB基板とSiC素子で挟み、これを加熱することでDCB基板上にSiC素子を実装する。
成形はんだの一つに、成形はんだの表面にフラックスを均一に乾燥コーティングしたものが知られている。この種の成形はんだは、フラックスの塗布工程が不要なことから、はんだ付け作業の簡便化及び自動化に適している。この種の成形はんだに使用されるフラックスとしては、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸や、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸を含むものが知られている(特許文献2参照)。
特許第6529632号公報 特許第6501003号公報
特許文献2に開示されるフラックスは、はんだの融点より高い物質であるダイマー酸やトリマー酸などを使用している。そのため、はんだ溶融時にフラックス中の物質が固体として残存し、はんだと接合対象物との接触を阻害したり、固化したはんだや電子部品の表面に残渣が生じるという問題がある。また、フラックスに活性剤としての効果を期待する場合、フラックス中の物質が固体のままでは活性を発現することができない。そのため、高融点のダイマー酸やトリマー酸を含有するフラックスを液状化させるべく、はんだ溶融温度以上に高い温度を加える必要があり、加熱時間の増大を招く問題もある。
本発明は上記の課題を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、フラックス中の物質がはんだ溶融時に電子部品と基板との接合を阻害することがなく、また、過度に熱を加えることなくはんだ溶融が可能となる成形はんだ用フラックス及びそのようなフラックスを被覆した成形はんだを提供することにある。
本発明のフラックスは、
複数の金属粉末を加圧成形してなる成形はんだ用フラックスであって、
前記フラックスは有機酸を含有し、
前記有機酸の融点は、前記複数の金属粉末の中で最も低い液相線温度の金属粉末の液相線温度(T)以下であり、
前記有機酸の沸点または分解温度は、前記液相線温度(T)を超えることを特徴とする。
本発明において、次のような構成とすることができる。
(1)前記有機酸が、ステアリン酸、グルタル酸、アゼライン酸のいずれか1つあるいは複数の組み合わせである。
(2)前記フラックスが、ベース樹脂、溶剤及び活性剤及びチクソ剤のいずれか1つ又は複数を含有する。
(3)前記有機酸の沸点または分解温度は、前記成形用はんだのリフロー本加熱温度よりも低いものである。
(4)前記金属粉末が、はんだ合金粉末と、Cu、Au、Ag、Alのいずれか1つ又は複数の粉末とを含有する。
(5)前記はんだ合金粉末は、その液相線温度(T)が130℃から220℃の範囲にある。
(6)表面の少なくとも一部に、前記の成形はんだ用フラックスの被膜が設けられた成形はんだも本発明の一態様である。
本発明によれば、電子部品と基板とのはんだ付けを確実に行うことができ、しかも、はんだ付け時における加熱時間の短縮も可能な成形はんだ用フラックス及び成形はんだを得ることができる。
Sn−50Inはんだ合金粉末とCuからなる金属粉末とを使用した成形はんだのリフロー時における温度条件を表す温度プロファイル。 Sn−3.0Ag−0.5Cuはんだ合金粉末とCuからなる金属粉末とを使用した成形はんだのリフロー時における温度条件を表す温度プロファイル。
以下、本発明のフラックス付き成形はんだの一実施形態について詳細に説明する。
<複数種の金属粉末>
本発明の成形はんだは、はんだ合金粉末と、それよりも液相線温度高い他の金属粉末とから構成される。はんだ合金を構成する合金元素としては、例えばSn、Ag、Cu、Bi、Zn、In、Ga、Sb、Au、Pd、Ge、Ni、Cr、Al、P及びIn等が挙げられ、これらの合金元素を複数組合せたはんだ合金を使用し得る。その中でもSnを含む合金、特にSnを30質量%以上含む合金が好ましく用いられる。Snの含有量は42質量%以上97質量%以下であることがより好ましい。
はんだ合金として、その固相線温度が250℃以下であるものが好ましく用いられる。具体的には、Sn−50In、Sn58Bi、Sn57Bi1Ag、SAC305はんだ合金のような液相線温度が130℃から220℃の範囲にあるものが、有機酸の沸点、昇華温度、分解温度との関係で好ましい。
本実施形態の成形はんだは、後述するように加圧により成形される。すなわち、成形時に加熱を伴わないため、はんだ接合前の成形はんだは、はんだ合金粉末と、それよりも液相線温度の高い金属粉末は未だ溶融拡散しておらず、溶融温度変化が生じていない。本実施形態の成形はんだを用いてはんだ接合を行う際、はんだ合金粉末は、例えばピーク温度250℃程度の一般的な鉛フリーはんだを使用した接合時の加熱温度でも十分に溶融し得る。本実施形態の成形はんだは、250℃程度での加熱であっても、SiC素子等のパワー半導体をDCB基板上に接合することができる。
はんだ合金粉末の平均粒子径は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。より好ましい当該平均粒子径は、2μm以上25μm以下であり、2μm以上8μm以下が特に好ましい。
はんだ合金粉末よりも液相線温度の高い金属粉末の液相線温度は、50℃以上の温度差を有していることが好ましい。このような金属粉末としては、導電性に優れ、液相線温度が高いCu、Au、Ag、Alのいずれか1つ又は複数の粉末が使用できる。中でも、溶融温度が1085℃と高いCu粉末であることが好ましい。
本実施形態において、Cu粉末の含有割合は40質量%以上80質量%以下であることが好ましい。より好ましい当該含有割合は、40質量%以上60質量%以下であり、40質量%以上50質量%以下が特に好ましい。Cu粉末の含有割合をこの範囲とすることにより、はんだ接合後の成形はんだの再溶融をより抑制することができると共に、DCB基板とパワー半導体との接合を良好に行うことができ、また熱伝導率を向上し得る。
Sn−50Inはんだ合金粉末とCu粉末を用いる成形はんだの場合、Sn−50Inはんだ合金粉末とCu粉末との含有割合は、Sn−50Inはんだ合金粉末:Cu粉末=30:70から60:40であることが好ましい。Cu粉末の平均粒子径は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。より好ましい当該平均粒子径は、1μm以上10μm以下であり、1μm以上5μm以下が特に好ましい。
<成形はんだの成形>
本実施形態の成形はんだは、複数種の金属粉末を混合分散して複数種の金属粉末の混合体を作製し、これを加圧成形用容器に収容し、前記金属粉末の混合体と前記加圧成形用容器とを加圧することにより製造され得る。
複数種の金属粉末を混合分散して前記複数種の金属粉末の混合体を作製する方法としては、例えば複数種の金属粉末を混合機、撹拌機及びふるい機等を用いて、混合分散させる方法が挙げられる。複数種の金属粉末を混合分散することができれば、いずれの方法を用いてもよい。複数種の金属粉末の混合体を作製する前に、複数種の金属粉末を、それぞれふるい機等に通し、凝集物等を除去しておくことが望ましい。
金属粉末の混合体を収容する加圧成形用容器としては、粉体の加圧成形に用いることのできる容器であればよく、例えばアルミニウム等からなる粉体保持リングが好適に用いられる。
前記複数種の金属粉末の混合体と前記加圧成形容器とを加圧する方法としては、粉体を加圧成形(固形化)し得る方法であればいずれでもよく、例えばブリケットマシンを用いて行うことができる。なお、当該加圧は室温で行われることが好ましい。加圧の条件は、前記複数種の金属粉末の混合体を成形(固形化)できる条件であればよく、前記複数種の金属粉末を構成する金属により適宜調整でき、例えば200kN以上の加圧条件にて行うことができる。
本実施形態の成形はんだの厚みは、使用するDCB基板、搭載する素子の種類、前記成形はんだの成形に用いる前記複数種の金属粉末の種類によって適宜調整し得るが、50μm以上1,000μm以下であることが好ましい。
<フラックス>
本実施形態のフラックスとしては、例えばベース樹脂、溶剤及び活性剤及びチクソ剤を含むフラックスが挙げられる。これらの成分の種類、配合量等は、適宜調整可能である。
ベース樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマール化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。ベース樹脂は、フラックス組成物100質量%に対して、0質量%から30質量%未満の範囲で添加することができる。
活性剤としては、有機酸を1つ又は2つ以上含有する。有機酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸を含め、カルボキシル基を有する有機化合物を挙げられ、はんだ溶融時に有機酸が固体として残存しはんだとの接合阻害となることを防ぐ必要がある。有機酸の融点は、複数の金属粉末の中で最も低い液相線温度の金属粉末の液相線温度(T)以下であることが好ましい。より好ましくはリフロー温度領域中で揮発する物質であれば、フラックス残渣を低減することが可能である。有機酸の沸点または分解温度は、前記液相線温度(T)を超えるものであることが好ましい。具体的には、ステアリン酸、グルタル酸、アゼライン酸、ピメリン酸、セバシン酸などの有機酸が挙げられる。有機酸は、フラックス組成物100質量%に対して、0.5質量%から100質量%の範囲で添加することができる。
ここで、フラックス組成物とは、溶剤と有機酸、その他の添加物から成るものを言い、常温固形物の有機酸にあっては、塗布作業の利便性からフラックス組成物中溶剤の割合が多いことから0.5質量%程度の有機酸添加量とすること望ましい場合があり、有機酸が液体の場合や固体であっても粉体塗布や吹き付けが可能な場合には100質量%の有機酸添加量となる場合がある。
その他、活性剤として、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、およびアミン系活性剤(ハロゲンを含有しないもの)などを含有させてもよい。この場合、活性剤の含有量は、有機酸の添加量に対して、20質量%以下の範囲が望ましい。活性剤の添加量が20質量%を越えると、有機酸の有するフラックス機能が損なわれる。
非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物
が挙げられる。このハロゲン化化合物としては、塩素化物、臭素化物、フッ化物、ヨウ化物のように塩素、臭素、フッ素、ヨウ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよいが、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素の任意の2つまたは全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。これらの化合物は、水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールやハロゲン化カルボキシル化合物のように水酸基やカルボキシル基などの極性基を有することが好ましい。ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、およびトリブロモネオペンチルアルコールなどの臭素化アルコール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、および1,4−ジクロロ−2−ブタノールなどの塩素化アルコール、3−フルオロカテコールなどのフッ素化アルコール、並びに、その他これらに類する化合物が挙げられる。ハロゲン化カルボキシル化合物としては、2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、2−ヨードプロピオン酸、5−ヨードサリチル酸、および5−ヨードアントラニル酸などのヨウ化カルボキシル化合物、2−クロロ安息香酸、および3−クロロプロピオン酸などの塩化カルボキシル化合物、2,3−ジブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモコハク酸、および2−ブロモ安息香酸などの臭素化カルボキシル化合物、並びに、その他これらに類する化合物が挙げられる。
アミン系活性剤としては、アミン類(エチレンジアミンなどのポリアミンなど)、アミン塩類(トリメチロールアミン、シクロヘキシルアミン、およびジエチルアミンなどのアミン、並びにアミノアルコールなどの有機酸塩または無機酸塩(塩酸、硫酸、および臭化水素酸など))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびバリンなど)、アミド系化合物などが挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩(塩酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、およびセバシン酸塩など)、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、並びに、これらのアミンの臭化水素酸塩などが挙げられる。
溶剤としては、水、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等のフラックス用の溶剤を使用できる。例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。本発明のフラックスは、融点が複数の金属粉末の中で最も低い液相線温度の金属粉末の液相線温度(T)以下である有機酸を主成分とすることから、有機酸自体の粘度が比較的低く、有機酸単独でも成形はんだの表面に塗布することが可能なものも多い。この場合、溶剤は必ずしも必要ではなく、ベース樹脂と有機酸の性状及び添加量を考慮して、塗布作業が円滑に実施できる量の溶剤を使用する。
なお、常温で固体の有機酸の場合、プリフォームへ均一に塗布し易くするため、フラックス組成物100質量%に対して、50質量%以上99.5質量%以下で溶剤を含有させることが好ましい。特にイソプロピルアルコールは有機酸との相溶性の点で好ましい。
チクソ剤としては、硬化ひまし油、ポリアマイド類、アマイド類、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、およびガラスフリットなどが挙げられる。これらのチクソ剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。チクソ剤の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0質量%以上20質量%以下であることが好ましい。チクソ剤を添加すると成形はんだ表面に対するフラックスの塗布性及び付着性を向上することが可能となる。
以下に本発明のフラックス付き成形はんだの効果を実施例及び比較例により説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
以下の部材を用いて、銅板接合性試験を行った。
<部材>
成形はんだ 5mm×5mm×0.1mmt
銅板 30mm×30mm×0.3mmt
銅チップ 5mm×5mm×1.3mmt
<評価方法>
各有機酸をイソプロピルアルコールに0.5質量%〜50質量%濃度の割合で適宜溶解させたものをフラックスとした。続いて、用意した成形はんだに上記フラックスを塗布、風乾したものをフラックスコートプリフォーム試料として用いた。この際、フラックスコートの膜厚は3〜5μmになるように調整した。なお膜厚の確認は、(株)キーエンス製レーザー顕微鏡VK−X1050にて行った。このフラックスコートされた成形はんだを銅板上に配置して、その上に電子部品に相当する銅チップを搭載し、銅チップの上から0.6Mpaの加圧を行い、以下のいずれかの条件でリフロー加熱を行った。
<リフロー条件1>
高温観察装置(SMT Scope SK−5000、山陽精工(株)製)を用いて、酸素濃度100ppmの条件で、図1に示すプリヒートを140℃2分、本加熱を200℃2分、250℃2分の温度プロファイルで加熱した。
<リフロー条件2>
高温観察装置(SMT Scope SK−5000、山陽精工(株)製)を用いて、酸素濃度100ppmの条件で、図2に示す本加熱240℃5分間の温度プロファイルで加熱した。
<評価基準>
その後、せん断装置(Dage4000ボンドテスター、Nordson社製) にて銅チップのせん断を行い、破断面から接合面積を計測し接合性の評価を以下の基準で行った。
A:接合面積95%以上
B:接合面積90%以上95%未満
C:接合面積90%未満
評価A,Bは、電子部品の実装時において実用に耐えるものであり、評価Cは接合不良と評価すべきものである。
<実施例1>
成形はんだは、液相線温度が120℃であるSn−50Inはんだ合金粉末(a)と、溶融温度が1085℃であるCuからなる金属粉末(e)を用いて成形されたものを使用した。金属粉末の含有量は、金属粉末(a):金属粉末(e)=60:40の割合である。
有機酸は、液相線温度が70℃、沸点または分解温度が383℃のステアリン酸を用いた。
リフロー温度プロファイルは、図1に示す温度プロファイルで加熱した(リフロー条件1)。
<実施例2>
成形はんだ及びリフロー条件は、実施例1と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が106℃、沸点または分解温度が286℃のアゼライン酸を用いた。
<実施例3>
融点変形成形はんだ及びリフロー条件は、実施例1と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が98℃、沸点または分解温度が200℃のグルタル酸を用いた。
<比較例1>
成形はんだ及びリフロー条件は、実施例1と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が153℃、沸点または分解温度が338℃のアジピン酸を用いた。
実施例1から実施例3及び比較例1の結果をまとめたものを以下の表1に表す。なお、本明細書において表に記載の数値のうち、各金属粉末の含有量についての単位は、特に但し書きのない限り、質量%とする。
実施例1及び実施例2は、接合面積90%以上95%未満という良好な結果が得られた。実施例3は、接合面積95%以上という優れた結果が得られた。実施例3は、有機酸の沸点又は分解温度である200℃以上に加熱することで有機酸が確実に揮発し、有機酸が固体として残存してはんだと接合対象物との接触を阻害することがなかったこと、及び有機酸が確実に溶融することから活性剤としての効果も十分発揮されたものと考えられる。有機酸が揮発することから、無残渣接合も可能となった。他方、比較例1は、有機酸の融点が金属粉末の中で最も低い液相線温度の金属粉末の液相線温度(120℃)以上であるアジピン酸(153℃)を用いていることから、接合面積が90%未満であった。
これらの実施例から分かるように、評価がBとなった実施例1,2においても、電子部品の耐熱温度の範囲で、リフロープロファイルにおける本加熱温度を有機酸の沸点などよりも高温とすることで、実施例3のようにより優れたはんだ付け特性を得ることが可能となる。
<実施例4>
次に、成形はんだは、液相線温度が139℃であるSn58Biはんだ合金粉末(b)と、溶融温度が1085℃であるCuからなる金属粉末(e)を用いて成形されたものを使用した。金属粉末の含有量は、金属粉末(b):金属粉末(e)=60:40の割合である。
有機酸は、液相線温度が70℃、沸点または分解温度が383℃のステアリン酸を用いた。
リフロー温度プロファイルは、図1に示す温度プロファイルで加熱した(リフロー条件1)。
<実施例5>
成形はんだ及びリフロー条件は、実施例2と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が106℃、沸点または分解温度が286℃のアゼライン酸を用いた。
<実施例6>
成形はんだ及びリフロー条件は、実施例2と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が98℃、沸点または分解温度が200℃のグルタル酸を用いた。
<比較例2>
成形はんだ及びリフロー条件は、実施例2と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が182℃、沸点または分解温度が235℃のコハク酸を用いた。
実施例4から実施例6及び比較例2の結果をまとめたものを以下の表2に表す。
実施例4及び実施例5は、接合面積90%以上95%未満という良好な結果が得られた。実施例6は、接合面積95%以上という優れた結果が得られた。実施例6の優れた結果は、実施例3と同様に、有機酸の沸点又は分解温度である200℃以上に加熱することで有機酸が確実に揮発したことによると思われる。他方、比較例2は、有機酸の融点が金属粉末の中で最も低い液相線温度の金属粉末の液相線温度(139℃)以上であるコハク酸(182℃)を用いていることから、接合面積が90%未満であった。
これらの実施例から分かるように、評価がBとなった実施例4,5においても、電子部品の耐熱温度の範囲で、リフロープロファイルにおける本加熱温度を有機酸の沸点などよりも高温とすることで、実施例6のようにより優れたはんだ付け特性を得ることが可能となる。
<実施例7>
成形はんだは、液相線温度が139℃であるSn57Bi1Agはんだ合金粉末(c)と、溶融温度が1085℃であるCuからなる金属粉末(e)を用いて成形されたものを使用した。金属粉末の含有量は、金属粉末(c):金属粉末(e)=60:40の割合である。
有機酸は、液相線温度が70℃、沸点または分解温度が383℃のステアリン酸を用いた。
リフロー温度プロファイルは、図1に示す温度プロファイルで加熱した(リフロー条件1)。
<実施例8>
成形はんだ及びリフロー条件は、実施例7と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が106℃、沸点または分解温度が286℃のアゼライン酸を用いた。
<比較例3>
成形はんだ及びリフロー条件は、実施例7と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が182℃、沸点または分解温度が235℃のコハク酸を用いた。
実施例7、実施例8及び比較例3の結果をまとめたものを以下の表3に表す。
実施例7及び実施例8は、接合面積90%以上95%未満という良好な結果が得られた。他方、比較例3は、有機酸の融点が金属粉末の中で最も低い液相線温度の金属粉末の液相線温度(139℃)以上であるコハク酸(182℃)を用いたことから、接合面積が90%未満であった。前記各実施例から分かるように、評価がBとなった実施例7,8においても、電子部品の耐熱温度の範囲で、リフロープロファイルにおける本加熱温度を有機酸の沸点などよりも高温とすることで、より優れたはんだ付け特性を得ることが可能となる。
<実施例9>
成形はんだは、液相線温度が220℃であるSAC305はんだ合金粉末(d)と、溶融温度が1085℃であるCuからなる金属粉末(e)を用いて成形されたものを使用した。金属粉末の含有量は、金属粉末(d):金属粉末(e)=60:40の割合である。
有機酸は、液相線温度が70℃、沸点または分解温度が383℃のステアリン酸を用いた。
リフロー温度プロファイルは、図2に示す温度プロファイルで加熱した(リフロー条件2)。
<実施例10>
成形はんだ及びリフロー条件は、実施例9と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が106℃、沸点または分解温度が286℃のアゼライン酸を用いた。
<比較例4>
成形はんだ及びリフロー条件は、実施例9と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が286℃、沸点または分解温度が300℃未満のフマール酸を用いた。
<比較例5>
成形はんだ及びリフロー条件は、実施例9と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が135℃、沸点または分解温度が140℃のマロン酸を用いた。
<比較例6>
成形はんだは、実施例9と同様のものとし、有機酸は、液相線温度が98℃、沸点または分解温度が200℃のコハク酸を用いた。
リフロー温度プロファイルは、図1に示す温度プロファイルで加熱した(リフロー条件1)。
実施例9、実施例10及び比較例4から比較例6の結果をまとめたものを以下の表4に表す。
実施9及び実施例10は、接合面積90%以上95%未満という良好な結果が得られた。他方、比較例4は、有機酸の融点が金属粉末の中で最も低い液相線温度の金属粉末の液相線温度(220℃)以上であるフマール酸(286℃)を用いたことから、接合面積が90%未満であった。比較例5は、有機酸の沸点または分解温度は、最も低い液相線温度の金属粉末の液相線温度(220℃)を下回るマロン酸(140℃)を用いたことから、接合面積が90%未満であった。比較例6は、グルタル酸(200℃)を用いたことから、接合面積が90%未満であった。
前記各実施例から分かるように、評価がBとなった実施例9,10においても、電子部品の耐熱温度の範囲で、リフロープロファイルにおける本加熱温度を有機酸の沸点などよりも高温とすることで、より優れたはんだ付け特性を得ることが可能となる。
このように実施例1から10に係るフラックス付き成形はんだは、フラックスがはんだ溶融時に接合阻害することなくはんだ表面を保護し、また、過度に熱を加えることなく、はんだの溶融が可能となる。

Claims (7)

  1. 複数の金属粉末を加圧成形してなる成形はんだの表面の少なくとも一部を被覆する成形はんだ用フラックスであって、
    前記フラックスは有機酸を含有し、
    前記有機酸の融点は、前記複数の金属粉末の中で最も低い液相線温度の金属粉末の液相線温度(T)以下であり、
    前記有機酸の沸点または分解温度は、前記液相線温度(T)を超えることを特徴とする成形はんだ用フラックス。
  2. 前記有機酸が、ステアリン酸、グルタル酸、アゼライン酸のいずれか1つあるいは複数の組み合わせである請求項1記載の成形はんだ用フラックス。
  3. 前記有機酸の沸点または分解温度は、前記成形用はんだのリフロー本加熱温度よりも低いものである請求項1又は請求項2に記載の成形はんだ用フラックス。
  4. ベース樹脂、溶剤及びチクソ剤のいずれか1つ又は複数を含有する請求項1から3のいずれかに記載の成形はんだ用フラックス。
  5. 前記金属粉末が、はんだ合金粉末と、Cu、Au、Ag、Alのいずれか1つ又は複数の粉末とを含有する請求項1から4のいずれかに記載の成形はんだ用フラックス。
  6. 前記はんだ合金粉末は、その液相線温度(T)が130℃から220℃の範囲にある請求項1から5のいずれかに記載の成形はんだ用フラックス。
  7. 表面の少なくとも一部に、請求項1から請求項6のいずれかに記載の成形はんだ用フラックスの被膜が設けられた成形はんだ。
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