JP2021030181A - 分離材を製造する方法、分離材、及び充填カラム - Google Patents

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Abstract

【課題】多孔質ポリマー粒子と、スルホン酸基又はその塩がイオン交換基として導入された被覆層とを有する分離材に関して、クロマトグラフィーに用いたときの動的吸着量を向上できる方法を提供すること。【解決手段】多孔質ポリマー粒子、及び多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を有し、被覆層がヒドロキシル基を有するポリマーを含む、被覆粒子を準備することと、被覆粒子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、及び溶媒を含む反応液中で、ヒドロキシル基をハロアルキルスルホン酸又はハロアルキルスルホン酸塩と反応させ、被覆層にスルホン酸基又はスルホン酸塩基のうち少なくとも一方のイオン交換基を導入することと、を含む、イオン交換基を有する分離材を製造する方法が開示される。溶媒が、水、及び水と混和する親水性溶媒を含む混合溶媒である。【選択図】なし

Description

本発明は、イオン交換基を有する分離材及びこれを製造する方法に関する。
従来、タンパク質に代表される生体高分子を分離精製するために、スルホン酸基等のイオン交換基が導入された分離材が用いられることがある(例えば、特許文献1)。ポリマーにスルホン酸基を導入する方法として、ポリマーへのアリル基の導入と、それに続くスルホン酸基の結合とを含む方法がある(特許文献2)。
国際公開第2016/117574号 米国特許第5789578号明細書
本発明の一側面は、多孔質ポリマー粒子と、スルホン酸基又はその塩がイオン交換基として導入された被覆層とを有する分離材に関して、クロマトグラフィーに用いたときの動的吸着量を向上できる方法を提供する。
本発明の一側面は、イオン交換基を有する分離材を製造する方法に関する。本発明の一側面に係る方法は、多孔質ポリマー粒子、及び前記多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を有し、前記被覆層がヒドロキシル基を有するポリマーを含む、被覆粒子を準備することと、前記被覆粒子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、及び溶媒を含む反応液中で、前記ヒドロキシル基をハロアルキルスルホン酸又はハロアルキルスルホン酸塩と反応させ、それにより前記被覆層にスルホン酸基又はスルホン酸塩基(塩を形成しているスルホン酸基)のうち少なくとも一方のイオン交換基を導入することと、を含む。前記溶媒が、水、及び水と混和する親水性溶媒を含む混合溶媒である。
本発明の別の一側面は、多孔質ポリマー粒子と、前記多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層と、を有する分離材に関する。前記被覆層が、スルホン酸基又はスルホン酸塩基のうち少なくとも一方のイオン交換基と、を有する。前記イオン交換基の量が、当該分離材の体積を基準として30μmol/mL以上である。
本発明の更に別の一側面は、カラム管と、前記カラム管に充填された上記分離材と、を備える、充填カラムに関する。
本発明の一側面によれば、多孔質ポリマー粒子と、スルホン酸基又はその塩がイオン交換基として導入された被覆層とを有する分離材に関して、クロマトグラフィーに用いたときの動的吸着量を向上することができる。また、本発明の一側面に係る分離材は、高い静的吸着量、及び低減された非特異吸着に加えて、カラムとして用いた時に優れた通液性を示すこともできる。本開示の分離材は、例えば、静電的相互作用により生体高分子を分離精製するために用いることができる。いくつかの実施形態に係る分離材は、カラム管に充填されたときに、溶出液の性質に依らず、カラム管内での体積変化が殆どないという、操作性における優れた効果を発揮し得る。
充填カラムの一実施形態を示す模式図である。
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
分離材を製造する方法の一実施形態は、多孔質ポリマー粒子、及び多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を有し、被覆層がヒドロキシル基を有するポリマーを含む、被覆粒子を準備することと、被覆粒子及び溶媒を含む反応液中で、ヒドロキシル基をハロアルキルスルホン酸又はハロアルキルスルホン酸塩と反応させ、それにより被覆層にスルホン酸基又はスルホン酸塩基のうち少なくとも一方のイオン交換基を導入することとを含む。この方法によれば、例えばスルホン酸基を導入するためのアリル化を経由する従来の方法と比較して、副反応が低減された簡易なプロセスにより、より迅速に分離材を製造することが可能である。
(多孔質ポリマー粒子)
多孔質ポリマー粒子は、架橋ポリマーを含有する粒子であることができる。架橋ポリマーは、例えば、芳香族基と芳香族基に結合した2個以上のビニル基とを有する架橋性モノマーに由来するモノマー単位を有する。架橋ポリマーによって形成された多孔質ポリマー粒子は、高い弾性率を有することができる。そのため、カラム管に充填された分離材が破壊され難い。
多孔質ポリマー粒子の平均粒径は、500μm以下、300μm以下、又は100μm以下であってもよい。多孔質ポリマー粒子の平均粒径は、10μm以上、30μm以上、又は50μm以上であってもよい。平均粒径が小さくなると、分離材が充填された充填カラムの圧力が増加する可能性がある。
多孔質ポリマー粒子の粒径の変動係数(C.V.)は、通液性の観点からは、5〜15%、又は5〜10%であってもよい。粒径の変動係数を低減する方法としてマイクロプロセスサーバー(日立製作所製)等の乳化装置によりモノマーを含む液滴を単分散化する方法がある。
多孔質ポリマー粒子の平均粒径及び粒径の変動係数は、以下の測定法により求めることができる。
1)多孔質ポリマー粒子を、水(界面活性剤等の分散剤を含む)に分散させ、1質量%の粒子を含む分散液を調製する。
2)粒度分布計(シスメックスフロー、シスメックス製)を用いて、分散液中の多孔質ポリマー粒子約1万個の画像により平均粒径と粒径の変動係数を測定する。
多孔質ポリマー粒子の全体積(細孔容積を含む)に対する細孔容積の割合(空隙率)は、30%以上70%以下であってもよい。多孔質ポリマー粒子の細孔の大部分が、直径0.1μm以上0.5μm以下のマクロポアーであってもよい。言い換えると、多孔質ポリマー粒子の細孔径分布におけるモード径が、0.1〜0.5μm又は0.05〜0.5μmであってもよい。空隙率が40%以上70%以下で、細孔径分布におけるモード径が0.05μm以上0.3μm未満であってもよい。細孔径分布におけるモード径が0.1μm以上であると、物質が細孔に入りやすい傾向にある。細孔径分布におけるモード径が0.05μm以下であると、十分な比表面積が得られる傾向にある。空隙率及びモード径は、後述の多孔化剤により調整可能である。
多孔質ポリマー粒子の比表面積は、30m/g以上、35m/g以上、又は40m/g以上であってもよい。比表面積が小さいと分離される物質の吸着量が相対的に少なくなる傾向がある。
多孔質ポリマー粒子の、細孔径分布におけるモード径(又は平均細孔径)、比表面積、空隙率は水銀圧入測定装置(オートポア:島津製作所製)によって測定した値である。これらは以下のようにして測定できる。約0.05gの試料を、標準5cc粉体用セル(ステム容積0.4cc)に採り、初期圧21kPa(約3psia、細孔直径約60μm 相当)の条件で細孔分布を測定する。水銀パラメータは、装置デフォルトの水銀接触角130degrees 、水銀表面張力485dynes/cmに設定する。細孔径0.05〜5μmの範囲に限定してそれぞれの値を算出する。
架橋ポリマーを含有する多孔質ポリマー粒子は、例えば、架橋性モノマー及び必要によりその他のモノマーを含むモノマー成分と、多孔化剤と、水性媒体とを含む反応液中での懸濁重合により、モノマー成分を重合することを含む方法により合成することができる。
架橋性モノマーは、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、及びジビニルフェナントレン等のジビニル化合物であってもよい。これらの架橋性モノマーは、1種単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。耐久性、耐酸性、及びアルカリ性の観点から、架橋性モノマーがジビニルベンゼンであってもよい。
単官能性モノマーを架橋性モノマーとともに重合してもよい。単官能性モノマーは、芳香族基と芳香族基に結合した1個のビニル基とを有する化合物であってもよく、その例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、及び3,4−ジクロロスチレン等のスチレン並びにこれらの誘導体が挙げられる。これらは1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。耐酸性及び耐アルカリ性の観点から、単官能性モノマーがスチレンであってもよい。カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルデヒド基等の官能基を有するスチレン誘導体も使用することができる。
多孔質ポリマー粒子を構成する架橋ポリマーにおける、芳香族基と芳香族基に結合した2個以上のビニル基とを有する架橋性モノマーに由来するモノマー単位と、芳香族基と芳香族基に結合した1個のビニル基とを有する単官能モノマーに由来するモノマー単位との合計の割合が、架橋ポリマーの質量に対して50〜100質量%、60〜100質量%、70〜100質量%、80〜100質量%、又は90〜100質量%であってもよい。
多孔化剤は、重合時に粒子の相分離を促し、それにより多孔質ポリマー粒子を形成させる成分である。多孔化剤の一例は有機溶媒である。多孔化剤として用いられ得る有機溶媒の例としては、脂肪族又は芳香族の炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、及びアルコールが挙げられる。多孔化剤は、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、オクタン、酢酸ブチル、フタル酸ジブチル、メチルエチルケトン、ジブチルエーテル、1−ヘキサノール、2−オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、及びシクロヘキサノールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことができる。
多孔化剤の量は、架橋性モノマー及びその他のモノマーの合計量に対して0〜300質量%であってもよい。多孔化剤の量によって、多孔質ポリマー粒子の空孔率をコントロールできる。多孔化剤の種類によって、多孔質ポリマー粒子の細孔の大きさ及び形状をコントロールすることができる。
水性媒体が水を含んでいてもよい。この水を多孔化剤として機能させてもよい。例えば、反応液に油溶性界面活性剤を加えると、モノマー及び油溶性界面活性剤を含む粒子が形成され、この粒子が水を吸収することにより粒子内の相分離を促すことが可能である。相分離した粒子から一方の相を除去することにより、粒子が多孔質化される。
油溶性界面活性剤の例としては、分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸とソルビタンとから形成されたソルビタンモノエステル、分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸とジグリセロールとから形成されたジグリセロールモノ脂肪族エーテル、及び、ジグリセロールモノ脂肪族エーテルが挙げられる。ソルビタンモノエステルの例としては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノミリステート、及び、ヤシ脂肪酸のソルビタンモノエステルが挙げられる。ジグリセロールモノエステルの例としては、ジグリセロールモノオレエート、ジグリセロールモノミリステート、ジグリセロールモノイソステアレート、及び、ヤシ脂肪酸のジグリセロールモノエステルが挙げられる。ジグリセロールモノ脂肪族エーテルの例としては、分岐C16〜C24アルコール(例えば、ゲルベアルコール)、鎖状不飽和C16〜C22アルコール又は鎖状飽和C12〜C14アルコール(例えば、ヤシ脂肪アルコール)とジグリセロールとから形成されたモノ脂肪族エーテルが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
油溶性界面活性剤の量は、モノマーの合計質量を基準として、5〜80質量%であってもよい。これにより、モノマー及び油溶性界面活性剤を含む液滴が安定して形成され易い。
水性媒体は、水、又は、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合溶媒を含む。水性媒体は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又は両性イオン系の界面活性剤であってもよい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、及びポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールソルビタンエステル、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド等の炭化水素系ノニオン界面活性剤、シリコーンのポリエチレンオキサイド付加物又はポリプロピレンオキサイド付加物等のポリエーテル変性シリコーン系ノニオン界面活性剤、並びに、パーフルオロアルキルグリコール類等のフッ素系ノニオン界面活性剤が挙げられる。
両性イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の炭化水素界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤及び亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。上記界面活性剤の中でも、モノマーの重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
懸濁重合のための反応液は、重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤の量は、モノマー100質量部に対して、0.1〜7.0質量部であってもよい。
モノマーを含む粒子の分散安定性を向上させるために、反応液が分散安定剤を含んでいてもよい。分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等)、ポリビニルピロリドンが挙げられる。これらとトリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物とを併用してもよい。分散安定剤がポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンであってもよい。分散安定剤の量は、モノマー100質量部に対して1〜10質量部であってもよい。
懸濁重合のための反応液は、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を含んでもよい。
懸濁重合のための重合温度は、モノマー及び重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃、又は50〜100℃であってもよい。
(被覆層)
被覆層は、多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する。本明細書において、「多孔質ポリマー粒子の表面」は、多孔質ポリマー粒子内部に形成された細孔の表面も含む。被覆層は、ヒドロキシル基を有するポリマーを含有する。多孔質ポリマー粒子の表面を覆う被覆層が設けられることにより、カラム圧の向上を抑制することができる。ヒドロキシル基を有するポリマーを含有する被覆層は、タンパク質の非特異吸着を抑制することができる。被覆層を構成するポリマーが架橋されていてもよい。
被覆層の量は、多孔質ポリマー粒子1gに対して30〜500mgであってもよい。
ヒドロキシル基を有するポリマーは、2個以上のヒドロキシル基を有していてもよい。ヒドロキシル基を有するポリマーは、例えば、多糖類、ポリビニルアルコール又はこれらの変性体から選ばれる少なくとも1種の親水性ポリマーであってもよい。多糖類としては、アガロース、デキストラン、セルロース、及びキトサンが挙げられる。変性体は、ヒドロキシル基に結合した疎水基を有する多糖類又はポリビニルアルコールであることができる。疎水基を導入することで、被覆層の界面吸着能を向上させることができる。疎水基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基等が挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。疎水基は、ヒドロキシル基と反応する官能基(例えば、エポキシ基)及び疎水基を有する化合物(例えば、グリシジルフェニルエーテル)を、ヒドロキシル基を有するポリマーと反応させることにより、導入することができる。ヒドロキシル基を有するポリマーの重量平均分子量は、1万〜300万程度であってもよい。
多糖類又はポリビニルアルコールの変性体における疎水基の含有量は、粒子表面に吸着するための疎水的相互作用力の保持と、タンパク質の非特異吸着の抑制のバランスとから、変性体の質量を基準として5〜30質量%、10〜20質量%、又は12〜17質量%であってもよい。
被覆層は、例えば、ヒドロキシル基を有するポリマーの溶液を多孔質ポリマー粒子の表面に吸着させることと、多孔質ポリマー粒子の表面に吸着したポリマーを架橋させることとを含む方法により形成される。ヒドロキシル基を有するポリマーの溶液の溶媒としては、特に限定されないが、通常、水が最も一般的である。溶液におけるポリマーの濃度は、5〜50mg/mlであってもよい。ヒドロキシル基を有するポリマーの溶液に多孔質ポリマー粒子を浸漬し、その状態で一定時間放置することにより、溶液を多孔質体の細孔内に含浸させる。含浸のための放置時間は、多孔質ポリマー粒子の表面状態によっても変わるが、通常1日放置すれば、ポリマーの濃度が、多孔質ポリマー粒子の内部で外部濃度と平衡状態となる。その後、水、アルコール等の溶媒で洗浄し、未吸着分のポリマーを除去する。この段階で、通常、ポリマーの溶液が細孔内に保持される。
次いで、架橋剤を加えてポリマーを架橋させて、ポリマーの架橋ゲルを形成させる。架橋反応は、乾燥させたポリマーが吸着した粒子を媒体中に分散させ、得られた分散液に架橋剤を添加して得られる反応液中で行うことができる。反応液を必要により加熱してもよい。
ポリマーを吸着した粒子を架橋させる前に、該粒子を乾燥させてもよい。ポリマーを吸着させた粒子の乾燥方法は、特に限定されないが、例えば、ポリマーが吸着した粒子を乾燥機の中で乾燥させることにより行うことができる。乾燥時の温度は25℃〜90℃であってもよい。乾燥させるための時間は、特に限定されないが、通常4〜24時間かけて行われる。
架橋剤としては、例えばエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物、メチレンジイソシアネート、ジイソシアネート化合物、並びに、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジル化合物等のようなヒドロキシル基に活性な官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。ポリマーがキトサンのようにアミノ基を有する場合、ジクロルオクタンのようなジハライドを架橋剤として使用できる。架橋反応には通常触媒が用いられる。該触媒は架橋剤の種類により異なるが、例えば、架橋剤がエピクロルヒドリン等の場合には水酸化ナトリウム等のアルカリが有効であり、ジアルデヒド化合物の場合には塩酸等の鉱酸が有効である。
架橋剤の量は、ポリマーが多糖類である場合、多糖類を構成する単糖類の量が1モルであるとき、0.001〜100モルの範囲内であってもよい。一般に、架橋剤の量が少ないと、多孔質ポリマー粒子から被覆層が剥離し易くなる傾向がある。架橋剤の量が過剰であると、ポリマーの特性が損なわれる可能性がある。架橋反応時の触媒の量は、ポリマーが多糖類である場合、多糖類を構成する単糖類の量が1モルであるとき、0.01〜10モル、又は0.1〜5モルであってもよい。
架橋反応のための分散液の媒体は、架橋反応に不活性である必要がある。媒体の具体例として、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコールまたは純水が挙げられる。
架橋反応は、通常、温度5〜90℃で、1〜10時間かけて行われる。架橋反応の温度は、30〜90℃であってもよい。架橋反応が終了した後、濾過によって取り出した粒子を水、メタノール、エタノール等の親水性溶媒で洗浄し、未反応のポリマー及び媒体等を除去すると、多孔質ポリマー粒子及び被覆層を有する被覆粒子が得られる。被覆層は、通常、細孔内にも形成される。被覆層の量は、熱分解の重量減少、アンスロン法等で測定することができる。
(イオン交換基の導入)
被覆粒子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、及び溶媒を含む反応液中で、ヒドロキシル基をハロアルキルスルホン酸又はハロアルキルスルホン酸塩と反応させることにより、被覆層にスルホン酸基又はスルホン酸塩基のうち少なくとも一方のイオン交換基が導入される。
ハロアルキルスルホン酸は、ハロアルキル基及びハロアルキル基に結合したスルホン酸基(−SOH)を有する化合物である。ハロアルキル基の炭素数は1〜5であってもよい。ハロアルキル基は、ハロゲノ基の他に、ヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい。ハロゲノ基は、クロロ基又はブロモ基であってもよい。ハロアルキルスルホン酸塩は、ナトリウム塩、及びカリウム塩のようなアルカリ金属塩であってもよい。
ハロアルキルスルホン酸又はハロアルキルスルホン酸塩の例としては、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等の3−ハロー2−ヒドロキシプロパンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩、3−クロロプロパンスルホン酸等の3−ハロプロパンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩、並びに、2−クロロエタンスルホン酸等の2−ハロエタンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ハロアルキルスルホン酸又はハロアルキルスルホン酸塩の量は、被覆材の質量に対して0.2質量%以上であってもよく、0.2〜500質量%、50〜500質量%、70〜450質量%、又は90〜400質量%であってもよい。
イオン交換基を導入するための反応液に含まれる溶媒は、水、及び水と混和する親水性溶媒を含む混合溶媒であってもよい。混合溶媒と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドとの組み合わせにより、ハロアルキルスルホン酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドとの副反応を抑制しながら、スルホン酸基等のイオン交換基が高い密度で被覆層に導入することができる。親水性溶媒は、プロトン性極性溶媒、非プロトン性極性溶媒、又はこれらの組み合わせであってもよい。親水性溶媒の割合は、水及び親水性溶媒の合計体積に対して、10〜90体積%、20〜90体積%、30〜90体積%、50〜90体積%、55〜85体積%、又は60〜80体積%であってもよい。反応液中の溶媒の体積に対する、水及び親水性溶媒の合計体積の割合は、90〜100質量%であってもよい。
効率的な反応の観点から、親水性溶媒の誘電率が、5〜60、7〜50、10〜50、5〜10、7〜40、又は10〜40であってもよい。特に親水性溶媒が非プロトン性極性溶媒であるとき、その誘電率が20〜50、又は30〜40であってもよい。
プロトン性極性溶媒はアルコールであってもよく、その例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、1−オクタノール、及びt−ブチルアルコールが挙げられる。非プロトン性極性溶媒の例としては、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。親水性溶媒が、アセトン、2−プロパノール及びアセトニトリルから選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドは、アルカリ金属アルコキシドであってもよく、その例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、及びカリウムエトキシドが挙げられる。反応効率の観点から、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドの量は、ハロアルキルスルホン酸又はその塩1モルに対し0.5〜10.0モル、0.7〜8.0モル、又は0.8〜5.0モルであってもよい。
イオン交換基の導入のための反応液は、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドを含む溶媒に被覆粒子を加えることと、そこにハロアルキルスルホン酸又はその塩のうち少なくとも一方と溶媒とを含む溶液を加えることとを含む方法によって調製される。溶媒に被覆粒子を加えた後、一定時間放置してもよい。ヒドロキシル基とハロアルキルスルホン酸又はその塩との反応により、イオン交換基が被覆層中のポリマーとアルキレン基を介して結合する。イオン交換基導入のための反応温度は25〜90℃であってもよい。反応時間は0.5〜12時間であってもよい。
(分離材)
多孔質ポリマー粒子及び被覆層から構成される分離材に関して、平均粒径、粒径の変動係数、細孔径分布におけるモード径は、多孔質ポリマー粒子に関して例示された数値範囲内にあってもよい。
分離材に含まれる、スルホン酸基又はスルホン酸塩基から選ばれるイオン交換基の量が、分離材の体積を基準として30μmol/mL以上であってもよい。上述の実施形態に係る方法によれば、30μmol/mL以上の高い密度でスルホン酸基等が導入された分離材を容易に得ることができる。このような高い密度でスルホン酸基等が導入された分離材は、顕著に向上した動的吸着量を示すことができる。イオン交換基量の上限は、特に制限されないが、例えば300μmol/mL以下、又は250μmol/mL以下であってもよい。
一実施形態に係る分離材は、例えば、生体高分子の静電的相互作用による分離、又はアフィニティ精製のためのイオン交換用担体として用いることができる。
一実施形態に係る分離材を用いて分離できる生体高分子としては、水溶性の物質が好ましい。生体高分子は、血清アルブミン、免疫グロブリン等の血液タンパク質等のタンパク質、生体中に存在する酵素、バイオテクノロジーにより生産されるタンパク質生理活性物質、又はDNAであってもよい。生体高分子の分子量は200万以下、又は50万以下であってもよい。
分離材を、カラム充填剤として用いてもよい。図1は、充填カラムの一実施形態を示す模式図である。図1に示される充填カラム10は、カラム本体部11と、接続部12と、上述した実施形態に係る分離材13とを備えている。接続部12は、カラム本体部11をカラムクロマトグラフィー装置に接続するために、カラム本体部11の両端に配置される。分離材13は、筒状のカラム本体部11に充填されている。カラム本体部11及び接続部12の材質は、特に制限されず、ステンレスであってもよく、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂であってもよい。
充填カラムでタンパク質の分離を行う場合、カラムに通液されるタンパク質溶液等の通液速度は、一般に400cm/h以下の範囲である。これに対して、一実施形態に係る分離材は、800cm/h以上の通液速度でも高い吸着容量で使用できる。ここでの通液速度とはφ7.8×300mmのステンレスカラム管に充填剤を充填し、液を流した際の通液速度を意味する。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.多孔質ポリマー粒子
500mLの三口フラスコに、純度96%のジビニルベンゼン(新日鉄住金化学株式会社製、商品名:DVB960)16g、乳化剤(ソルビタンモノオレエート、商品名:スパン80)6g、及び過酸化ベンゾイル0.64gを、ポリビニルアルコール水溶液(濃度0.5質量%)に加えた。得られた混合液を、マイクロプロセスサーバーを使用して乳化し、連続相としてのポリビニルアルコール水溶液と、連続相中に分散したモノマー相とを含む乳化液を形成させた。モノマー相は、主としてジビニルベンゼン、乳化剤及び過酸化ベンゾイルを含む。得られた乳化液をフラスコに移した。乳化液を80℃のウォーターバスで加熱しながら攪拌機を用いて約8時間撹拌することにより、ジビニルベンゼンの重合を進行させた。ジビニルベンゼン(DVB)の重合体により形成された粒子を、ろ過により取り出し、アセトンで洗浄して、多孔質ポリマー粒子を得た。得られた多孔質ポリマー粒子の粒径をフロー型粒径測定装置で測定した。平均粒径は110μmで、粒径の変動係数(C.V.値)は6%であった。
2.変性デキストラン(デキストランの変性体)の合成
デキストラン水溶液(濃度2質量%)490mLに水酸化ナトリウム1.00g、及びグリシジルフェニルエーテル9.30gを加え、これらを60℃で6時間反応させて、デキストランにフェニル基を導入した。フェニル基が導入されたデキストラン(変性デキストラン)を、メタノールで3回再沈殿させることにより、洗浄した。得られた変性デキストランをイソプロピルアルコールで再沈殿させ、洗浄した。変性デキストランの疎水性基含有量を下記方法により算出したところ、11.8モル%であった。
乾燥状態の粉末デキストラン(未変性デキストラン)と、揮発分0.1質量%未満まで乾燥させた変性デキストランとを、それぞれ70℃の純水に溶解させ、0.05質量%の未変性デキストラン水溶液及び変性デキストラン水溶液を調製した。分光光度計により各水溶液の269nmの吸光度を測定した。得られた吸光度から、変性デキストラン水溶液における、フェニル基が導入された構成単位(グルコース2分子に由来する構成単位)の濃度CDX、及びフェニル基が導入されていない構成単位(グルコース2分子に由来する構成単位)の濃度CHDXを求めた。これらの値を下記式に代入して、疎水性基含有量を算出した。ここで算出される疎水基含有量は、変性デキストランを構成する全構成単位のうち、フェニル基が導入された構成単位の割合に相当する。
・疎水性基含有量(モル%)={CDX/(CHDX+CDX)}×100
・CDX:変性デキストラン水溶液におけるフェニル基が導入された構成単位の濃度(mmol/L)=(A/εGPE)×1000
・CHDX:変性デキストラン水溶液におけるフェニル基が導入されていない構成単位の濃度(mmol/L)=[変性デキストラン水溶液におけるフェニル基が導入されていない構成単位の濃度(g/L)/フェニル基が導入されていない構成単位の分子量(324g/mol)]×1000
・A:変性デキストランの真の吸光度=変性デキストランの吸光度−未変性デキストランの吸収
・εGPE:グリシジルフェニルエーテルの吸光係数=1372(L/(mol・cm))
・変性デキストラン水溶液におけるフェニル基が導入されてない構成単位の濃度(g/L)=変性デキストラン水溶液における変性デキストランの濃度(質量%)×10−変性デキストラン水溶液におけるフェニル基が導入された構成単位の濃度(g/L)
・未変性デキストランの吸収=未変性デキストランの吸光度×[変性デキストラン水溶液における変性デキストランの濃度(mmol/L)/未変性デキストラン水溶液における未変性デキストランの濃度(mmol/L)]
・変性デキストラン水溶液におけるフェニル基が導入された構成単位の濃度(g/L)=(CDX×フェニル基が導入された構成単位の分子量(472g/mol))/1000
3.被覆粒子
(被覆粒子の作製)
濃度23mg/mLの変性デキストラン水溶液450mLを調製し、そこに多孔質ポリマー粒子10gを分散させた。分散液を55℃で24時間攪拌することにより、多孔質ポリマー粒子の細孔内部を含む表面に変性デキストランを吸着させ、それにより変性デキストランを含む被覆層を有する被覆粒子を形成した。被覆粒子をろ過によって取り出し、熱水で洗浄した。洗浄後の被覆粒子をステンレス製金属メッシュの上に移し、60℃の送風乾燥機の中で16時間風乾した。
乾燥後の被覆粒子10gを0.4M水酸化ナトリウムメタノール溶液350gに分散させ、得られた分散液にエピクロロヒドリンを13g添加した。その後、分散液を8時間、室温にて攪拌することにより、被覆層中の変性デキストランをエピクロロヒドリンによって架橋した。ろ過によって取り出した被覆粒子を、純水、加熱した2質量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液、及び純水の順で洗浄して、架橋された変性デキストランを含む被覆層を有する被覆粒子を得た。多孔質ポリマー粒子への変性デキストランの被覆量を、熱重量分析から算出した。算出された被覆量は、多孔質ポリマー粒子1g当たり、218mgであった。
(被覆粒子によるタンパク質の非特異吸着)
架橋された変性デキストランを含む被覆層を有する被覆粒子0.2gを、濃度24mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含むTris緩衝液(pH8.0)20mLに投入した。分散液を24時間、室温で攪拌した。その後、遠心分離で取得した上澄み液をろ過し、ろ液のBSA濃度を分光光度計で測定した。得られたBSA濃度から、被覆粒子に吸着したBSAの量を算出した。BSAの濃度は分光光度計により280nmの吸光度から確認した。非特異吸着量は5mg/mlであり、タンパク質の非特異吸着は抑制されていた。
4.スルホン酸基を有する分離材
実施例1
水及び2−プロパノール(比誘電率:19.92(25℃))からなる混合溶媒(2−プロパノールの濃度:混合溶媒の体積に対して80体積%)を調製した。この混合溶媒250mlに、ナトリウムメトキシド6.25gを溶解し、そこへ被覆粒子(乾燥重量10g)を分散させて室温で1時間放置した。別途、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム20.95gを同じ混合溶媒250mlに溶解して溶液を調製し、これを分散液に添加した。形成された反応溶液の温度を70℃まで上げ、攪拌しながら8時間反応を進行させた。その後、スルホン酸基が導入された被覆粒子(分離材)を、濾過により取り出し、純水3000mlで3回洗浄して、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
実施例2
混合溶媒における2−プロパノールの濃度を70体積%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
実施例3
混合溶媒における2−プロパノールの濃度を60体積%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ナトリウム塩を形成しているスルホン酸基を有する分離材を得た。
実施例4
混合溶媒における2−プロパノールの濃度を50体積%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
実施例5
ナトリウムメトキシドの溶液に用いた混合溶媒の量を500mlに変更し、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムの溶液に用いた混合溶媒の量を500mlに変更して、混合溶媒の総量を1000mlとしたこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
実施例6
ナトリウムメトキシドの溶液に用いた混合溶媒の量を166.5mlに変更し、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムの溶液に用いた混合溶媒の量を166.5mlに変更して、混合溶媒の総量を333mlとしたこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
実施例7
水及び2−プロパノールからなる混合溶媒を、水及びエタノール(比誘電率:24.55(25℃))からなる混合溶媒(エタノールの濃度:混合溶媒の体積に対して70体積%)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
実施例8
水及び2−プロパノールからなる混合溶媒を、水及びメタノール(比誘電率:32.6(25℃))からなる混合溶媒(メタノールの濃度:混合溶媒の体積に対して70体積%)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
実施例9
水及び2−プロパノールからなる混合溶媒を、水及びアセトン(比誘電率:20.7(25℃))からなる混合溶媒(アセトンの濃度:混合溶媒の体積に対して70体積%)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
実施例10
水及び2−プロパノールからなる混合溶媒を、水及びアセトニトリル(比誘電率37.5(20℃))からなる混合溶媒(アセトニトリルの濃度:混合溶媒の体積に対して70体積%)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
実施例11
水及び2−プロパノールからなる混合溶媒を、水及びジメチルスルホキシド(DMSO、比誘電率:46.68(25℃))からなる混合溶媒(ジメチルスルホキシドの濃度:混合溶媒の体積に対して70体積%)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
実施例12
水及び2−プロパノールからなる混合溶媒を、水及びテトラヒドロフラン(THF、比誘電率:7.58(25℃))からなる混合溶媒(テトラヒドロフランの濃度:混合溶媒の体積に対して70体積%)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
比較例1
ナトリウムメトキシド6.25gを水酸化ナトリウム4.63gに変更し、混合溶媒を純水に変更したこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
比較例2
ナトリウムメトキシド6.25gを水酸化ナトリウム4.63gに変更したこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
比較例3
混合溶媒を純水に変更したこと以外は実施例2と同様にして、スルホン酸塩基を有する分離材を得た。
表1は、各実施例及び比較例における分離材の調製条件の概要を示す。
Figure 2021030181
5.分離材の評価
5−1.細孔径分布におけるモード径、比表面積、空隙率
分離材の細孔径分布におけるモード径、比表面積及び空隙率を、水銀圧入測定によって測定した。
5−1.平均粒径、及び粒径の変動係数
分離材の粒度分布をフロー型粒径測定装置で測定し、測定結果から、分離材の平均粒径及び粒径の変動係数(C.V.)を算出した。
5−3.イオン交換基量
体積1mLに相当する量の分離材を0.1N塩酸60mLに浸漬し、分離材が浸漬された塩酸を室温で1時間攪拌した。浸漬後の分離材を、pHが7以上になるまで水で洗浄した。その後、分離材を0.5N塩化ナトリウム水溶液60mLに浸漬し、分離材が浸漬された水溶液を室温で1時間攪拌した。次いで、分離材をろ過により取り出し、純水で洗浄した。ろ液と洗浄液を混合し、得られた混合液を0.01N水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定することにより、分離材のイオン交換基量を測定した。
5−4.タンパク質の静的吸着量
スルホン酸塩基を有する分離材0.02gを、濃度24mg/mLの免疫グロブリン(IgG)を含む酢酸緩衝液(pH5.0)2mLに投入した。分散液を24時間、室温で攪拌した。その後、遠心分離で取得した上澄み液のIgG濃度をナノドロップone(Thermo Fissier製)で測定した。得られたIgG濃度から、分離材に吸着したIgGの量(動的吸着量)を算出した。
表2に、分離材の評価結果が示される。各実施例の分離材は、大きなイオン交換基量を有しており、高い密度でスルホン酸塩基が導入されたことが確認された。
Figure 2021030181
6.充填カラムの作製
各分離材をエタノールに分散して、分散剤の濃度30質量%のスラリーを調製した。このスラリーをφ7.8×300mmのステンレスカラム管に15分かけて充填した。これにより、カラム管及びこれに充填された分離材を有する充填カラムを得た。
7.充填カラムの評価
7−1.通液性
充填カラムに流速を変えながら水を通液させ、そのときの線流速とカラム圧との関係を記録した。測定結果から、カラム圧0.3MPaの時点の線流速を求めた。線流速に基づいて、以下の基準で分離材の通液性を評価した。
A:線流速1500cm/h以上
B:線流速1000cm/h以上1500cm/h以下
C:線流速1000cm/h未満
7−2.10%動的吸着量
各充填カラムを、GEヘルスケア製のクロマトグラフィーシステム(AKTA avant 150)に接続した。充填カラムを、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)の通液によって平衡化した。平衡化後、サンプル溶液を通液した。サンプル溶液として、標的タンパク質(ガンマグロブリン(IgG)筋注450mg/3mL「ニチヤク」、日本製薬製)を含み、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)を用いて濃度5mg/mLに調製した溶液を使用した。サンプル溶液を充填カラムに通液しながら、充填カラムから流出するサンプル溶液の吸光度をモニタリングし、初期濃度の10%分の標的タンパク質が破過した時点の吸着量を、10%動的吸着量として記録した。レジデンスタイムは2分であった。その後、充填カラムに脱離溶液を通液することで、分離材から標的タンパク質を回収した。脱離溶液として、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)/1M塩化ナトリウム水溶液を使用した。10%動的吸着量、及び標的タンパク質の回収量を、サンプル溶液の初期濃度、吸着時の通液量、回収液の濃度、及び回収溶液の容量から算出した。
表3は、充填カラムの評価結果を示す。各実施例の分離材を適用した充填カラムは、良好な通液性及び10%動的吸着量を示した。
Figure 2021030181
10…充填カラム、11…カラム本体部、12…接続部、13…分離材。

Claims (7)

  1. 多孔質ポリマー粒子、及び前記多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を有し、前記被覆層がヒドロキシル基を有するポリマーを含む、被覆粒子を準備することと、
    前記被覆粒子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、及び溶媒を含む反応液中で、前記ヒドロキシル基をハロアルキルスルホン酸又はハロアルキルスルホン酸塩と反応させ、前記被覆層にスルホン酸基又はスルホン酸塩基のうち少なくとも一方のイオン交換基を導入することと、
    を含み、
    前記溶媒が、水、及び水と混和する親水性溶媒を含む混合溶媒である、
    イオン交換基を有する分離材を製造する方法。
  2. 前記ヒドロキシル基を有するポリマーが、多糖類、ポリビニルアルコール又はこれらの変性体から選ばれる少なくとも1種の親水性ポリマーである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記多孔質ポリマー粒子が、芳香族基と前記芳香族基に結合した2個以上のビニル基とを有する架橋性モノマーに由来するモノマー単位を有する架橋ポリマーを含有する粒子である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 多孔質ポリマー粒子と、前記多孔質ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層と、を有し、前記被覆層が、スルホン酸基又はスルホン酸塩基のうち少なくとも一方のイオン交換基と、を有する、分離材であって、
    前記イオン交換基の量が、当該分離材の体積を基準として30μmol/mL以上である、分離材。
  5. 前記被覆層が、多糖類、ポリビニルアルコール又はこれらの変性体から選ばれる少なくとも1種の親水性ポリマーを含み、前記親水性ポリマーに前記イオン交換基が結合している、請求項4に記載の分離材。
  6. 前記多孔質ポリマー粒子が、芳香族基と前記芳香族基に結合した2個以上のビニル基とを有する架橋性モノマーに由来するモノマー単位を有する架橋ポリマーを含有する粒子である、請求項4又は5に記載の分離材。
  7. カラム管と、前記カラム管に充填された請求項4〜6のいずれか一項に記載の分離材と、を備える、充填カラム。
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