JP2021028411A - スパッタリングターゲット及び、スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

スパッタリングターゲット及び、スパッタリングターゲットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Cr、Ge及びTeを含有するスパッタリングターゲット及び、そのスパッタリングターゲットの製造方法を提供する。【解決手段】スパッタリングターゲットであって、Cr、Ge及びTeを含有し、X線回折法で測定されるCrGeTe3の(113)面の回折ピークの積分強度I(113)と、Cr3Te4の(204)面の回折ピークの積分強度I(204)との強度比I(113)/I(204)が、15以上である。【選択図】なし

Description

この明細書は、スパッタリングターゲット及び、スパッタリングターゲットの製造方法に関する技術を開示するものである。
近年は、カルコゲナイドガラスの、結晶相は低抵抗を示す一方でアモルファス相は高抵抗を示すという特異な性質を利用した相変化メモリ(以下、「PRAM」ともいう。)が、その短い書込み時間と優れた耐久性の故に、次世代の記録装置として注目されている。
このPRAMでは現在、その相変化膜としてGeSbTe系材料を用いることが主流である。
しかしながら、GeSbTe系の相変化膜では、書込みに大きなエネルギーが必要になるという短所がある。
GeSbTe系に代わる相変化膜の材料としては、短い書込み時間ながらも消費エネルギーの大幅な低減を実現できるCrGeTe系が有望であると考えられる。これに関する技術としては、たとえば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、「Cr、Ge及びTeを主成分とし、結晶相における抵抗値がアモルファス相における抵抗値よりも大きい、相変化材料」が提案されている。
なお、非特許文献1には、Cr:Ge:Teが10:13.5:76.5になる原料の混合物を、真空引きされた石英アンプル中に封入し、1日中1050℃に加熱した後、7日かけて450℃に徐冷し、CrGeTe3化合物の結晶を得たとの記載がある。
国際公開第2017/104577号公報
Y.F.Li et al., "Electronic structure of ferromagnetic semiconductor CrGeTe3 by angle-resolved photoemission spectroscopy", Physical Review B 98, September 2018, p. 125127-1−125127-6
Cr、Ge及びTeの三元素を含有するスパッタリングターゲットは現状では市場で流通していない。特許文献1には、「ターゲットには、純Cr、純Ge、純Teあるいは各2元合金(Cr−Ge、Cr−Te、Ge−Te合金)を用いた多元スパッタリングにより成膜出力を変化させ濃度を調整し成膜する、あるいは予め成分調整した3元合金ターゲット(Cr−Ge−Te合金)を用いて成膜する。」とは記載されているものの、その実施例では、「ターゲットは純元素Cr、Ge、Teを用い、各ターゲットの成膜出力を変え、各種組成のアモルファス相薄膜を作成した。」とされている。
それ故に、CrGeTe系の相変化膜を形成するには、特許文献1にも記載されているように、各元素を含有する複数のスパッタリングターゲットを用いるコスパッタにより成膜することが必要になるも、これはデバイスの製造を有効に行え得る水準とはいえない。
また現状では、産業上使用することに適したCrGeTe系合金の合成方法が存在しないと考えられる。非特許文献1に記載された方法では、CrGeTe3化合物の合成に計8日を要しており、この方法は、CrGeTe系のスパッタリングターゲットを量産する場合等において生産性が著しく低くなる。
この明細書では、Cr、Ge及びTeを含有するスパッタリングターゲット及び、そのスパッタリングターゲットの製造方法を開示する。
この明細書で開示するスパッタリングターゲットは、Cr、Ge及びTeを含有し、X線回折法で測定されるCrGeTe3の(113)面の回折ピークの積分強度I(113)と、Cr3Te4の(204)面の回折ピークの積分強度I(204)との強度比I(113)/I(204)が、15以上であるものである。
この明細書で開示するスパッタリングターゲットの製造方法は、Cr原料、Ge原料及びTe原料を溶解するとともに、Cr、Ge及びTeを含有するインゴットを鋳造する溶解鋳造工程と、前記インゴットを粉砕して粉末を得る粉砕工程と、前記粉末を400℃〜500℃の温度で加熱して焼結させ、焼結体を得る焼結工程とを含むものである。
上述したスパッタリングターゲット及び、スパッタリングターゲットの製造方法によれば、Cr、Ge及びTeを含有するスパッタリングターゲットを得ることができる。
実施例1の焼結体AのEPMAによるマッピング像である。 実施例1の焼結体AのX線回折結果を示すグラフである。 実施例1の粉末AのX線回折結果を示すグラフである。 実施例2の焼結体A’のEPMAによるマッピング像である。 実施例2の焼結体A’のX線回折結果を示すグラフである。 比較例の焼結体BのEPMAによる500倍のマッピング像である。 比較例の焼結体BのEPMAによる2000倍のマッピング像である。 比較例の焼結体BのX線回折結果を示すグラフである。
以下に、この明細書で開示する実施の形態について詳細に説明する。
一の実施形態のスパッタリングターゲットは、Cr(クロム)、Ge(ゲルマニウム)及びTe(テルル)を含有するものであって、X線回折法で測定されるCrGeTe3の(113)面の回折ピークの積分強度I(113)と、Cr3Te4の(204)面の回折ピークの積分強度I(204)との強度比I(113)/I(204)が、15以上である。
(組成)
スパッタリングターゲットは、Cr、Ge及びTeを含有するものである。Crの含有量は、たとえば10at%〜30at%、好ましくは15at%〜25at%である。Geの含有量は、たとえば10at%〜30at%、好ましくは15at%〜25at%である。Teの含有量は、たとえば40at%〜80at%、好ましくは50at%〜70at%である。Cr、Ge及びTeをそれぞれ、このような範囲で含むことにより、相変化膜に供するCrGeTe合金とすることができる。なお、スパッタリングターゲットの組成は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)により測定することができる。
スパッタリングターゲットは、Cr、Ge及びTe以外の、ガス成分を除く不純物の含有量が、好ましくは100質量ppm未満、より好ましくは50質量ppm以下である。このような不純物としては、主として、Fe、Ni及びSiからなる群から選択される少なくとも一種等を挙げることができる。当該不純物の含有量が多い場合、スパッタリングによる成膜中にパーティクルが増加することが懸念される。ガス成分を除く各不純物の含有量は、グロー放電質量分析法(GDMS)に測定することができる。
また、スパッタリングターゲットは、ガス成分として、酸素、炭素、窒素及び硫黄からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがある。このうち、酸素含有量は、好ましくは5000質量ppm未満、より好ましくは1500質量ppm以下であり、炭素含有量は、好ましくは500質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm未満である。酸素を比較的多く含む場合は、スパッタ膜の抵抗値が高くなるおそれがあり、炭素が多すぎると、パーティクルが増加する可能性がある。ガス成分の測定は、LECO分析より行うことができる。
(X線回折ピーク強度比)
スパッタリングターゲットには、CrGeTe3が含まれる。スパッタリングターゲットがCrGeTe3を含むことは、X線回折法(XRD)により確認することができる。より詳細には、スパッタリングターゲットについてX線回折法で測定を行った場合に、CrGeTe3の(113)面の回折ピークの積分強度I(113)と、Cr3Te4の(204)面の回折ピークの積分強度I(204)との強度比I(113)/I(204)が、15以上である。これは、CrGeTe3相の合金となっている割合が多く、Cr3Te4やGeTeへの相分離が少ないことを意味する。これにより、所要のスパッタリング特性を有効に発揮することができる。言い換えれば、Cr3Te4やGeTeへの相分離が多く発生している場合、相分離によるスパッタリングレートの違いが顕著になり、スパッタリングにより形成した薄膜の組成が狙い通りに得られないこと、相の違いからノジュールが形成され、異常放電が発生することのおそれがある。
強度比I(113)/I(204)は、25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、さらに50以上であることがより一層好ましい。
上述した回折ピークの強度比I(113)/I(204)の測定は、次のようにして行う。はじめに、スパッタリングターゲットから採取した10mm角程度に切断したブロックを得て、このブロックの測定面を2000番手の研磨紙まで研磨を行う。次いで、このサンプルに対してX線回折法を用いて、そのX線回折プロファイルを得る。それにより得られたX線回折プロファイルにKα2除去などのデータ処理を施した後、ICDD(International Centre for Diffraction Data)のPDF(Powder Diffraction File)を用いて同定を行う。強度比I(113)/I(204)は、CrGeTe3の(113)面については29.3°付近に、またCr3Te4の(204)面については39.5°付近にそれぞれ現れる回折ピークの積分強度を算出し、それらの比として求める。ここで測定条件として、管電圧は40kV、管電流は30mA、スキャンスピードは50°/min、ステップは0.01°とする。実際のピークは歪等によるピークシフトが起こることがあるため、ICDDカードを参照し、±0.2°付近の最大のピークをピークとして採用する。バックグラウンドの除去は行わない。測定装置としては、リガク社製のSmartLabを用いることができる。
(相対密度)
スパッタリングターゲットの相対密度は、90%以上であることが好ましく、さらに95%以上であることがより一層好ましい。相対密度が低すぎると、アーキングが発生する懸念がある。
相対密度は、相対密度=実測密度÷理論密度×100(%)の式より算出する。ここで、実測密度は、重量を体積で割った値であり、体積をアルキメデス法により測定する。理論密度は、スパッタリングターゲットの全体がCrGeTe3であると仮定して、CrGeTe3の真密度である6.09g/cm3を用いる。この理論密度を用いて算出された当該相対密度は、100%を超えることもあり得る。
(製造方法)
上述したスパッタリングターゲットは、たとえば、次の述べるような方法にて製造することができる。
はじめに、Cr原料、Ge原料及びTe原料を溶解するとともに、Cr、Ge及びTeを含有するインゴットを鋳造する溶解鋳造工程を行う。
ここで、Teは低融点金属であってその沸点は988℃であるのに対し、Crは高融点金属であってその融点は1867℃である。このことから、単純にこれらを溶解して合成しようとしても、溶解時にTeが揮発し、狙いの組成が得られないと考えられる。また一般に、高融点金属と低融点金属を合成することは困難である。
これに対し、この実施形態では、Cr原料、Te原料及びGe原料を、不活性ガス雰囲気下で溶解させる。溶解時に不活性ガス雰囲気とすれば、低融点のTe原料の揮発が抑制されるので、狙いの組成が得られやすくなるので好ましい。その結果として、所期した組成のCr、Ge及びTeを含有するインゴットが得られやすくなる。但し、溶解時に真空雰囲気又は大気雰囲気としても、有効に溶解鋳造を行うことができる場合もある。
好ましくは、真空誘導溶解炉の装置内を不活性ガスで満たし、その不活性ガス雰囲気下で、Cr原料、Te原料及びGe原料を溶解るつぼ内に投入して溶解させる。
不活性ガス雰囲気とする場合、当該不活性ガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス等を挙げることができるが、なかでも、アルゴンガスとすることが好ましい。アルゴンガスを用いることにより、窒化物の形成を避けることができる。窒素ガスを用いると、800℃程度でCrとNが反応して、一窒化クロム(CrN)が生成される可能性がある。
不活性ガス雰囲気とする場合の不活性ガス雰囲気中の不活性ガスの分圧は、ある程度高くすることが好ましい。不活性ガスの分圧が低すぎると、Teの揮発が大きくなることが懸念される。なお、不活性ガスの分圧が高すぎることによる不都合は特にないが、装置が高圧関係法規に触れる等の理由より高分圧は実務上望まれない。
特に真空誘導溶解炉を用いると、単にコイルの付属しない容器にて不活性雰囲気中で加熱する場合と比べて、溶湯内部から熱がかかり沸騰することによって溶湯が混ざり均一になりやすい。したがって、ここでは真空誘導溶解炉を用いることが好適である。
なお、狙いの組成として、後の鋳造工程で製造されるCrGeTeインゴットのCrの含有量が10at%〜30at%、Geの含有量が10at%〜30at%、Teの含有量が40at%〜80at%となるように、Cr、Te及びGeをそれぞれ溶解るつぼに投入することができる。但し、製造しようとするスパッタリングターゲットによっては、この組成は変更することもあり得る。
Cr、Te及びGeの溶湯を得た後は、該溶湯を、所定の形状の内部空間を有する鋳型内に流し込んで、その鋳型内で冷却して固化させる。これにより、Cr、Ge及びTeを含有する所定の形状のインゴットを製造することができる。
なおここで、溶湯を鋳型内に流し込む際や、鋳型内で冷却する際にも、上記の溶解時と同様の真空雰囲気もしくは不活性ガス雰囲気、好ましくはアルゴンガス雰囲気とすることが好ましい。これにより、鋳造時もTeの揮発を抑制することができて、狙いの組成がさらに得られやすくなる。
このような溶解鋳造を採用することにより、先述の非特許文献1に記載されたようなアンプル封入による場合に比して、生産性を大きく高めることができる。特に真空誘導溶解炉を用いると、比較的短時間で原料を溶解させることができる。但し、溶解鋳造工程で得られるインゴットは、十分にCrGeTe系合金となっていない。それ故に、以下に述べるように、さらに粉砕工程及び焼結工程を行う。
次いで、上記の溶解鋳造工程で得られたインゴットを粉砕し、粉末とする粉砕工程を行う。粉砕工程では、種々の粉砕機を用いた機械粉砕を採用することができるが、具体的には、たとえば、スタンプミル又はハンマーミル等を挙げることができる。
これにより、ある程度微細な粉末を得る。当該粉末の50%粒子径D50は、好ましくは1.00μm〜8.00μm、より好ましくは1.00μm〜3.00μm、さらに好ましくは1.15μm〜2.5μmとする。また、当該粉末の90%粒子径D90は、好ましくは2.00μm〜10.00μm、より好ましくは3.0μm〜6.0μmとする。粉末の50%粒子径が大きすぎる場合、CrTeもしくはGeTeの相が現れてしまうおそれがあり、小さすぎる場合、表面酸化が著しい状態となる可能性がある。また、粉末の90%粒子径が大きすぎる場合、やはりCrTeもしくはGeTeの相が現れてしまうおそれがある。粉末の50%粒子径D50、90%粒子径D90は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定して得られる粒子径分布グラフで、体積基準の頻度の累積が50%、90%になる粒子径を求めることにより算出する。粉砕工程での粉砕条件は、このような粒径の粉末が得られるように適宜調整することができる。
その後、粉砕工程で得られた粉末を加熱して焼結させ、焼結体を得る焼結工程を行う。焼結工程では、粉末を、400℃〜500℃の温度で加熱しながら、15MPa〜35MPaで4時間〜8時間にわたって加圧することが好ましい。このような焼結は、たとえばホットプレス等により行うことができる。
焼結時の温度が高すぎる場合は、成分の揮発によりポアの多い焼結体となることや、粉末が溶融した状態となることが懸念される。一方、焼結時の温度が低すぎると、焼結後に得られる焼結体で、Cr3Te4やGeTeへの相分離が多くなって、CrGeTe3相が十分に生成されないおそれがある。このような観点から、焼結時の温度は、好ましくは400℃〜500℃、より好ましくは420℃〜480℃とする。
また、この際の加圧力が小さすぎる場合は、低密度の焼結体となる可能性があり、この一方で大きすぎる場合は、粉末を充填したダイケースが破壊されることが懸念される。このような理由から、加圧力は、15MPa〜35MPaとすることが好ましい。
そしてまた、加圧する時間は、短すぎると低密度の焼結体となるおそれがあり、長すぎると粒成長が進行する可能性がある。したがって、加圧時間の好ましい範囲は、4時間〜8時間である。
焼結体は、上述した所定の各工程を経て作製されることにより、狙いの組成に近いものが得られやすくなる。具体的には、焼結工程で得られる焼結体では、溶解鋳造工程で秤量したCr原料、Ge原料及びTe原料の各原料の割合に対する、当該焼結体のCr含有量、Ge含有量及びTe含有量の各含有量のずれがいずれも、±1at%以内であることが好適である。焼結体が狙いの組成から大きくずれるものになると、組成のコントロールが難しくなるが、ここでは、このような組成のずれが小さい焼結体を作製することができる。なお、このうちTe原料は、揮発を考慮して秤量重量より多めに添加することもある。焼結体のCr、Ge及びTeの各含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)により測定することができる。
上記の焼結工程で得られた焼結体に対し、必要に応じて機械加工等を施して、スパッタリングターゲットを製造することができる。
このようなスパッタリングターゲットは、コスパッタによらず、CrGeTe系の相変化膜を形成することができるので、相変化メモリの製造能率等の観点から有利である。
次に、上述したようなスパッタリングターゲットを試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
(実施例1)
Te:60at%、Ge:20at%、Cr:20at%となるように秤量した原料を、アルゴンガス雰囲気の下、真空誘導溶解炉(富士電波工業社製のFVM−3)で溶解した後、その溶湯を鋳型に流し込んで、Cr、Ge及びTeを含有するインゴットを鋳造した。このインゴットを、ピンミルと称される粉砕機(アイシンナノテクノロジーズ社製のM−4B)にて粉砕して、粉末Aを得た。レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置としてCILAS社製の1064L型を用いて測定したところ、粉末Aの50%粒子径D50は13.84μm、90%粒子径D90は36.49μmであった。この粉末Aをホットプレスにより焼結し、焼結体Aを作製した。ホットプレスでの焼結時の条件としては、温度を450℃、加圧力を30MPa、加圧時間を5時間とした。ホットプレスには、第一機電社製の30tホットプレスを用いた。
焼結体Aの組織について、電子線マイクロアナライザー(EPMA)でマッピングを行った。その結果を図1に示す。図1より、Cr−Teの粒子とGe−Teの粒子が若干見られるものの、面積の90%以上がCr−Ge−Teの三元素が分散した領域で占められていることが解かる。
また、焼結体Aの密度は6.05g/cm3であり、CrGeTe3の真密度6.09g/cm3を100%とした相対密度は99.34%となり、十分に緻密な組織が得られたことが解かった。
また、焼結体Aについて、先述した方法によるX線回折(XRD)を行った。X線回折装置としては、リガク社製のSmartLabを用いた。図2に、そのX線回折プロファイルを示す。図2から解かるように、2θが29.3°付近に現れるCrGeTe3の(113)面の回折ピークの積分強度I(113)が21795であったのに対し、39.5°付近に現れるCr3Te4の(204)面の回折ピークの積分強度I(204)は637であった。したがって、それらの強度比I(113)/I(204)は34.215になる。
一方、粉末AについてX線回折(XRD)を行った結果を、図3に示す。2θが29.3°付近に現れるCrGeTe3の(113)面の回折ピークの積分強度は5110であったのに対し、39.5°付近に現れるCr3Te4の(204)面の回折ピークの積分強度は3704であった。これにより、粉末Aについての回折ピークの強度比は1.38になる。これは、上述した焼結体Aの強度比と比較するとかなり小さい。このことから、粉末AにおいてはCrGeTe3の組成比は小さく、Cr3Te4の組成比が大きいということがいえる。焼結体Aで強度比が大きくなっているのは、所定の条件下でのホットプレスによる焼結の影響であると考えられる。
また、粉末A及び焼結体Aのそれぞれについて、誘導結合プラズマ発行分光分析法(ICP−OES)により組成を、LECO分析によりガス不純物の分析を行った。また、グロー放電質量分析法(GDMS)により、金属不純物の分析を行った。それらの結果を表1及び2に示す。
組成に関しては、狙い組成であるCr:20at%、Ge:20at%、Te:60at%に対して、±1at%の範囲に収まっていた。粉末・焼結体の両方で±1at%の範囲であることからターゲットとしては均一な組成が得られていることが推認される。ガス不純物に関し、酸素は1000ppm未満、炭素は100ppm未満の含有量であった。さらに、GDMSによる不純物分析では、総和が17.724質量ppmであり、99.99質量%の純度が得られたことが解かった。
(実施例2)
上記のインゴットを、ピンミルで粉砕した後にさらに、ジェットミルで粉砕して粉末A’を得たことを除いて実施例1と同様にして、この粉末A’にホットプレスを行い、焼結体A’を作製した。粉末A’の50%粒子径D50は1.89μm、90%粒子径D90は3.89μmであった。なお、ジェットミルとしては、株式会社アイシンナノテクノロジーズ製のナノジェットマイザーを用いた。
焼結体A’について、電子線マイクロアナライザー(EPMA)での500倍及び2000倍のマッピングの結果をそれぞれ、図4に示す。図4では、Cr−Teの粒子とGe−Teの粒子は見られず、全面がCrGeTe3となっていた。
また、焼結体A’の密度は5.97g/cm3であり、CrGeTe3の真密度6.09g/cm3を100%とした相対密度は98.04%となり、十分に緻密な組織が得られたことが解かった。
また、焼結体A’について、先述した方法によるX線回折(XRD)を行った。図5に、そのX線回折プロファイルを示す。図5から解かるように、2θが39.5°付近に現れるはずのCr3Te4の(204)面の回折ピークが検出されず略ゼロであった。また、上記のEPMAのマッピングからも、全体に均一なCrGeTe3となっていることが認められる。そのため、強度比I(113)/I(204)は、15を大きく上回ってかなり大きくなると推認される。
また、焼結体A’からサンプリングした粉末について、誘導結合プラズマ発行分光分析法(ICP−OES)により組成を、LECO分析によりガス不純物の分析を行った。また、グロー放電質量分析法(GDMS)により、金属不純物の分析を行った。それらの結果を表3及び4に示す。
組成に関しては、狙い組成であるCr:20at%、Ge:20at%、Te:60at%に対して、±1at%の範囲に収まっていた。焼結体A’で±1at%の範囲であることからターゲットとしては均一な組成が得られていることが推認される。ガス不純物に関し、酸素は1000ppm未満、炭素は100ppm未満の含有量であった。さらに、GDMSによる不純物分析では、総和が23.834質量ppmであり、実施例1と同様に99.99質量%の純度を得ていることが分かった。
(比較例)
粉末Aを、上記の実施例1よりも低い355℃で加熱して焼結したことを除いて、実施例1と同様にして、焼結体Bを作製した。
焼結体Bの実密度は5.07g/cm3、相対密度は83.25%であった。焼結体Aと比較すると密度がかなり低い。そのため、アーキングの発生などスパッタリングターゲットとしての性能に問題があることが容易に推測される。焼結体Bについて、電子線マイクロアナライザー(EPMA)での500倍及び2000倍のマッピングの結果をそれぞれ、図6及び7に示す。図6及び7から、多くの部分で、Crが存在する箇所にGeが存在せず、またGeが存在する箇所にCrが存在しないことから、Cr−TeやGe−Teが多く占める組織であるということが言える。
さらにX線回折結果を図8に示す。これは図3の粉末の結果とよく似たピークを示しており、焼結・反応が進んでいないことを示している。焼結体Bの強度比I(113)/I(204)は0.403であった。

Claims (10)

  1. スパッタリングターゲットであって、
    Cr、Ge及びTeを含有し、X線回折法で測定されるCrGeTe3の(113)面の回折ピークの積分強度I(113)と、Cr3Te4の(204)面の回折ピークの積分強度I(204)との強度比I(113)/I(204)が、15以上であるスパッタリングターゲット。
  2. Crを10at%〜30at%、Geを10at%〜30at%、Teを40at%〜80at%で含有する請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
  3. ガス成分を除く不純物の含有量が、100質量ppm未満である請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット。
  4. 酸素含有量が5000質量ppm未満であり、炭素含有量が500質量ppm未満である請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  5. 相対密度が90%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  6. スパッタリングターゲットを製造する方法であって、
    Cr原料、Ge原料及びTe原料を溶解するとともに、Cr、Ge及びTeを含有するインゴットを鋳造する溶解鋳造工程と、前記インゴットを粉砕して粉末を得る粉砕工程と、前記粉末を400℃〜500℃の温度で加熱して焼結させ、焼結体を得る焼結工程とを含む、スパッタリングターゲットの製造方法。
  7. 焼結工程で、前記粉末を15MPa〜35MPaで4時間〜8時間にわたって加圧する、請求項6に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  8. 溶解鋳造工程で、Cr原料、Ge原料及びTe原料を溶解する際の雰囲気を、不活性ガス雰囲気とし、不活性ガスをアルゴンガスとする、請求項6又は7に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  9. 溶解鋳造工程で秤量したCr原料、Ge原料及びTe原料の各原料の割合に対する、焼結工程で得られる焼結体のCr含有量、Ge含有量及びTe含有量の各含有量のずれがいずれも、±1at%以内である、請求項6〜8のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  10. 粉砕工程で、50%粒子径D50が1.00μm〜3.00μm、90%粒子径D90が2.00μm〜10.00μmである前記粉末を得る、請求項6〜9のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
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