JP2021021147A - 水素吸蔵合金 - Google Patents

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博司 辻上
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博司 辻上
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Etsuo Akiba
悦男 秋葉
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Abstract

【課題】高温および高圧での活性化処理を行うことなく、水素の吸蔵および放出を繰り返すことができる水素吸蔵合金を提供する。【解決手段】水素吸蔵合金11は、TiFeと、β−Tiと、Ti4Fe2Oと、を備える。Ti4Fe2Oは、前記水素吸蔵合金の表層および内部層に存在する。FeTixOyと表した場合に、1.0<x<1.5かつ0.004<y<0.09の関係を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、水素吸蔵合金に関するものである。
水素をエネルギー源として利用する技術の開発が進められている。これに併せて、水素を吸蔵する技術や吸蔵した水素を放出する技術の開発も進められている。
ここで、金属を用いて水素の吸蔵および水素の放出を行う技術が、特開昭56−17901号公報(特許文献1)に開示されている。
特開昭56−17901号公報
水素吸蔵合金について、水素を吸蔵、すなわち、水素を一時的に吸着させて内部に取り込んだり、吸蔵した水素を放出することを繰り返す際には、初期、すなわち、使用を開始する時に水素吸蔵合金が水素を取り込み可能となるよう活性化する処理を行う必要がある。特許文献1に開示のような水素吸蔵用材料の活性化については、例えば、温度を400℃以上の高温とし、30気圧(約3MPa)以上の圧力を加えて水素吸蔵合金を活性化する処理を行う必要がある。このような処理は、高温および高圧に耐え得る容器や設備の準備が必要となり、好ましくない。
この発明の目的は、高温および高圧での活性化処理を行うことなく、水素の吸蔵および放出を繰り返すことができる水素吸蔵合金を提供することである。
この発明に従った水素吸蔵合金は、TiFeと、β−Tiと、TiFeOと、を備え、FeTiと表した場合に、1.0<x<1.5かつ0.004<y<0.09の関係を有する。
上記水素吸蔵合金は、TiFeと、β−Tiと、TiFeOと、を備える。TiFeは母相として水素を吸蔵、すなわち、一時的に水素を水素化物として取り込んで保持し、後に保持した水素を放出すること、さらにはこの吸蔵および放出を繰り返すことができる。また、β−Tiは、いわゆるBCC型の結晶構造を有し、取り込まれた水素と反応してTiHを生成する。生成されたTiHにより、吸蔵する際に利用される水素のいわゆる通り道を水素吸蔵合金中に形成することができる。したがって、水素を水素吸蔵合金の内部に取り込むことができる。また、この水素の通り道にも水素を吸蔵することができる。TiHは熱的に安定しているため、TiHによって形成された水素の通り道を長期に亘って安定して確保することができる。TiFeOは、水素吸蔵合金の表面と内部層に形成され、例えばTiFeOHzの形で水素を一時的に吸蔵することができると共に、吸蔵した水素を放出することができる。更にTiFeOは、β−Tiが形成した水素の通り道を、TiFeOの水素化による体積膨張により拡大、延長させ、水素吸蔵を増大させる役割を果たす。
ここで、水素吸蔵合金をFeTiと表した場合に、1.0<x<1.5の関係を有する。1.0<xとしてTiの量をFeの量よりも多く含有させて、過剰なTiを水素の通り道を形成する基となるβ−TiとしてTiFe中に存在させることができる。また、x<1.5とすることにより、水素とTiによって生成されるTiHの水素吸蔵合金中の含有割合が過剰となることに基づく水素吸蔵性能の低下を抑制することができる。
また、水素吸蔵合金をFeTiと表した場合に、0.004<y<0.09の関係を有することにより、水素吸蔵合金中のTiFeOの含有割合を適切にすることができると共に、O(酸素)の含有割合が過剰になることに基づく水素吸蔵性能の低下を抑制することができる。更にTiFeOは、水素吸蔵合金中にβ−Tiが形成した水素の通り道を、水素吸蔵合金中のTiFeOの水素化による体積膨張により拡大、延長させ、水素吸蔵を増大させる役割を果たす。
このような水素吸蔵合金は、上記構成を有するため、室温での活性化処理を行うことが可能となり、高温および高圧での活性化処理が不要となる。なお、上記したO、Ti、Feといった元素は、クラーク数が比較的小さく、地球上の資源として豊富であり、安価な構成とすることが可能である。以上より、このような水素吸蔵合金は、高温および高圧での活性化処理を行うことなく、水素の吸蔵および放出を繰り返すことができる。
上記水素吸蔵合金は、1.02≦x≦1.34かつ0.01≦y≦0.04の関係を有してもよい。このような構成の水素吸蔵合金は、TiおよびOの含有割合をより適切にして、室温での水素化を容易に図ることができる。
上記水素吸蔵合金は、1.23≦x≦1.34の関係を有してもよい。このような水素吸蔵合金は、水素平衡圧力を低下させることができ、水素の吸蔵時および水素の放出時における設備や構造の簡素化を図ることができる。また、水素の吸蔵時および水素の放出時におけるヒステリシスを縮小させて、効率的な水素の吸蔵および放出を行うことができる。
また、上記水素吸蔵合金は、1.02≦x<1.23の関係を有してもよい。このようにすることにより、Tiの含有割合を小さくして、TiHとして水素吸蔵合金内に残留する水素の量の低減を図ることができる。したがって、水素吸蔵合金としての性能向上を図ることができる。
この発明に従った水素吸蔵合金の製造方法は、Tiと、Feと、Ti酸化物およびFe酸化物の少なくともいずれか一つとを準備する工程と、Tiと、Feと、Ti酸化物およびFe酸化物の少なくともいずれか一つとを混合して混合物を得る工程と、混合物に対して加熱および冷却を交互に繰り返しながら合金を製造する工程と、得られた合金について活性化処理を行う工程と、を含む。
このような水素吸蔵合金の製造方法によると、TiFeから構成される母相にβ−Tiを適度に分散して含有した水素吸蔵合金を確実に製造することができる。
混合物は、Feを含んでもよい。Fe(酸化鉄(III))は、融点が1565℃であり、融点が1843℃であるTiOよりも融点が低い。したがって、効率的に上記水素吸蔵合金を製造することができる。
上記合金を製造する工程は、アーク溶解による加熱および高周波誘導加熱のうちの少なくともいずれか一方を含んでもよい。こうすることにより、より確実に上記した構成の水素吸蔵合金を製造することができる。
このような構成の水素吸蔵合金によれば、高温および高圧の活性化処理を行うことなく、水素の吸蔵および放出を繰り返すことができる。
また、このような構成の水素吸蔵合金の製造方法によると、高温および高圧の活性化処理を行うことなく、水素の吸蔵および放出を繰り返すことができる水素吸蔵合金を確実に製造することができる。
この発明の一実施形態に係る水素吸蔵合金を模式的に示した場合の概略断面図であり、活性化処理を行う前の状態を示す。 この発明の一実施形態に係る水素吸蔵合金を模式的に示した場合の概略断面図であり、活性化処理を行った後の状態を示す。 この発明の一実施形態に係る水素吸蔵合金の製造方法における代表的な工程を示すフローチャートである。 アーク溶解による加熱を行う際のアーク溶解装置の構成を概略的に示す図である。 図4に示すアーク溶解装置の一部を示す斜視図である。 サンプルAのX線回折パターン図である。 サンプルFのX線回折パターン図である。 サンプルAの表面の走査型電子顕微鏡の写真をエネルギー分散型X線分光分析により組成分析した図である。 図8における組成の境界を分かりやすく示した線図である。 サンプルFの圧力−組成等温線を示す図である。 サンプルGの圧力−組成等温線を示す図である。 サンプルBの圧力−組成等温線を示す図である。 サンプルDの圧力−組成等温線を示す図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
図1および図2は、この発明の一実施形態に係る水素吸蔵合金を模式的に示した場合の概略断面図である。図1は、活性化処理を行う前の状態を示し、図2は、活性化処理を行った後の状態を示す。まず図1を参照して、この発明の一実施形態に係る水素吸蔵合金11は、いわゆるTiFe系の合金である。水素吸蔵合金11は、表面側に配置されるTiFeO層12と、水素吸蔵合金11の内部に配置される内部層13と、を備える。TiFeO層12は、いわゆる金属酸化膜から構成される層であって、酸素を多く含む層となっている。内部層13は、TiFe14と、β−Ti15と、TiFeO16とを含む。TiFe14は、いわゆる主相(母相)であり、水素吸蔵合金11のベースとなる相である。β−Ti15は、TiFe14に分散して配置される相であり、BCC型の結晶構造を有する相である。内部層13に含まれるTiFeO16については、主にTiFe14中に分散して配置される相である。なお、β−Ti15の相およびTiFeO16の相については、例えば、層状や粒状であってもよい。
図2は、活性化処理を行った後の水素吸蔵合金11の状態を示す概略断面図である。併せて図2を参照して、活性化、すなわち、本実施形態においては真空状態(1×10−1Pa〜1×10−2Pa)にする。その後、水素雰囲気にすると、水素とβ−Ti15の一部が反応してTiH21になる。そして、β−Ti15の配置された領域から連なって内部層13の所定の箇所にまで至るクラック22を形成する。各クラック22の形状、各クラック22の表面からの深さ、各クラック22の大きさ等は、均一に揃えられているものではなく、各クラック22によって形状等は異なる。そして、これら複数のクラック22がいわゆる水素の通り道25となる。
水素吸蔵合金11において、TiFe14は母相として水素を吸蔵、すなわち、一時的に水素を水素化物として取り込んで保持し、後に保持した水素を放出すること、さらにはこの吸蔵および放出を繰り返すことができる。上記したようにβ−Ti15は、いわゆるBCC型の結晶構造を有し、取り込まれた水素と反応してTiH21を生成する。生成されたTiH21により、吸蔵する際に利用される水素のいわゆる通り道25としてのクラック22を水素吸蔵合金11、具体的にはTiFe14中に形成することができる。したがって、水素を水素吸蔵合金11の内部に取り込むことができる。また、この水素の通り道25であるクラック22内面にも水素を吸蔵することができる。TiH21は熱的に安定しているため、TiH21によって形成された水素の通り道25であるクラック22を長期に亘って安定して確保することができる。TiFeO16は、水素吸蔵合金11の表面と内部層13に形成される、例えばTiFeOHz23,24の形で水素を一時的に吸蔵することができると共に、吸蔵した水素を放出することができる。TiFeO16は、更にβ−Ti15が形成した水素の通り道25であるクラック22を、TiFeOの水素化による体積膨張により拡大、延長させ、水素吸蔵を増大させる役割を果たす。
ここで、上記した水素吸蔵合金11を構成する元素であるFeとTiとOとについて、その組成をFeTiで表した場合に、1.0<x<1.5かつ0.004<y<0.09の関係を有する。このような水素吸蔵合金11は、高温および高圧での活性化処理を行うことなく、水素の吸蔵および放出を繰り返すことができる。これについては、後に詳述する。
次に、上記した水素吸蔵合金11の製造方法の一例について説明する。図3は、この発明の一実施形態に係る水素吸蔵合金11の製造方法における代表的な工程を示すフローチャートである。図3を参照して、まず、水素吸蔵合金11の原料を準備する(図3において、ステップS11。以下、「ステップ」を省略する。)。具体的には、Ti金属単体、Fe金属単体および酸素の供給源としてのFe(酸化鉄(III))をそれぞれ所定量準備する。各原料は、例えば、粉末状のものを準備する。そして、最終的に得たい材料比率となるよう秤量する。すなわち、FeTiで表した場合に、1.0<x<1.5かつ0.004<y<0.09の関係を具備するよう各原料を秤量する。
次に、秤量した各原料、すなわち、Tiと、Feと、Ti酸化物およびFe酸化物の少なくともいずれか一つとしてのFeを混合して混合物を得る(S12)。混合は、計量した粉状のそれぞれの金属等を撹拌して混合することにより行う。
その後、混合物に対して加熱および冷却を交互に繰り返しながら合金化する(S13)。ここでは、混合物を反転、具体的には混合物をひっくり返すことを繰り返しながら、混合物に対してアーク溶解を行う。
図4は、アーク溶解を行う際のアーク溶解装置の構成を概略的に示す図である。図5は、図4に示すアーク溶解装置の一部を示す斜視図である。図4および図5を参照して、アーク溶解装置31の構成について簡単に説明すると、アーク溶解装置31は、壁によって囲われた処理空間36内に試料38としての混合物を収容する収容室32と、収容室32の下部に配置され、処理対象となる試料38を載置するサンプルハース33と、タングステン等から構成されており、サンプルハース33上の試料38に対してアーク放電を行う電極棒34と、を含む。また、アーク溶解装置31には、先端が鉤状であって可動することができ、サンプルハース33上の試料38の位置を変更可能な爪部35が取り付けられている。なお、アーク溶解装置31は、図示しない真空排気装置を含み、収容室32の内部空間36は、真空排気装置によっていわゆる真空引きされる。サンプルハース33内には、冷却水を循環させる機構が設けられており、サンプルハース33、さらにはサンプルハース33上に載置された試料38を冷却することができる。サンプルハース33には、試料38を収容する複数の凹部37、この場合、四つの凹部37が形成されている。この凹部37内に試料38が収容される。
具体的なアーク溶解の内容については、以下の通りである。まず、凹部37内に混合物から構成される試料38を載置する。そして、収容室32の内部空間36を、例えば、不活性ガスであるアルゴンガスで充填する。その後、サンプルハース33を水冷しながら、電極棒34を用いて試料38に対し、アーク放電を行う。ここで、試料38の赤熱中に爪部35を用いて、試料38を反転、すなわち、凹部37内で試料をひっくり返しながらアーク放電を行う。アーク放電は1500℃程度となる。試料38は反転されると水冷により冷却される。水は水道水を利用しており、25℃程度である。ここで、収容室32を構成する壁の一部は、内部が可視できるように透明の部材が嵌め込まれた窓が形成されており、この窓を通して試料38を目視し、試料38を素早く反転させながら、加熱および冷却、この場合は急冷を交互に繰り返しながら合金化する。
その後、試料38を収容室32から取り出して、ボタン状のインゴットから構成される水素吸蔵合金を得る。なお、必要に応じて、得られた水素吸蔵合金を粉砕してもよい。得られた水素吸蔵合金については、図1に模式的に示す図のものとなる。
その後、得られた合金について活性化処理を行う(S14)。活性化の処理は、例えば、得られた水素吸蔵合金をロータリーポンプで2時間排気することにより真空状態とした後、水素雰囲気にすることにより行う。
このようにして得られた水素吸蔵合金11は、図2に示す通りとなる。そして、水素を吸蔵させると、図2に模式的に示すように、水素吸蔵合金11は、水素をクラック22やTiFeOHzといった水素化物の形で取り込む。
このような水素吸蔵合金11の製造方法によると、TiFeから構成される母相にβ−Tiの相およびTiFeOの相が適度に分散された水素吸蔵合金11を確実に製造することができる。
また、混合物は、比較的融点の低いFeを含むため、効率的に上記水素吸蔵合金11を製造することができる。
また、上記合金を製造する工程は、アーク溶解のため、特に試料38の大きさが小さい場合、例えば、試料が数gであった場合に、より効率的に上記した構成の水素吸蔵合金11を製造することができる。
ここで、水素吸蔵合金11をFeTiと表した場合に、1.0<x<1.5の関係を有する。1.0<xとしてTiの量をFeの量よりも多くすることにより、過剰なTiを水素の通り道を形成する基となるβ−Tiとして水素吸蔵合金11中に存在させることができる。また、x<1.5とすることにより、水素吸蔵合金11中におけるFeに対するTi(β−Ti)の含有割合を小さくすることができる。そうすると、水素とTiによって生成されるTiHの水素吸蔵合金11中の含有割合が過剰となることに基づく水素吸蔵性能の低下を抑制することができる。
また、水素吸蔵合金11をFeTiと表した場合に、0.004<y<0.09の関係を有することにより、水素吸蔵合金11中のTiFeOの含有割合を適切にすることができると共に、O(酸素)の含有割合が過剰になることに基づく水素吸蔵性能の低下を抑制することができる。更にTiFeOは、水素吸蔵合金11中にβ−Tiが形成した水素の通り道を、水素吸蔵合金11中のTiFeOの水素化による体積膨張により拡大、延長させ、水素吸蔵を増大させる役割を果たす。
このような水素吸蔵合金11は、上記構成を有するため、室温での活性化処理を行うことが可能となり、高温および高圧での活性化処理が不要となる。なお、上記したO、Ti、Feといった元素は、クラーク数が比較的小さく、地球上の資源として豊富であり、安価な構成とすることが可能である。以上より、このような水素吸蔵合金11は、高温および高圧での活性化処理を行うことなく、水素の吸蔵および放出を繰り返すことができる。
なお、上記水素吸蔵合金11として、1.23≦x≦1.34の関係を有するよう構成してもよい。このような水素吸蔵合金11は、水素平衡圧力を低下させることができ、水素の吸蔵時および水素の放出時における設備や構造の簡素化を図ることができる。また、水素の吸蔵時および水素の放出時におけるヒステリシスを縮小させて、効率的な水素の吸蔵および放出を行うことができる。このような水素吸蔵合金11は、原料となる各金属等の配合比率を調整することにより得られる。
また、上記水素吸蔵合金11は、1.02≦x<1.23の関係を有するよう構成してもよい。このようにすることにより、Tiの含有割合を小さくして、TiHとして水素吸蔵合金内に残留する水素の量の低減を図ることができる。したがって、水素吸蔵合金としての性能向上を図ることができる。このような水素吸蔵合金11は、原料となる各金属等の配合比率を調整することにより得られる。
なお、上記の実施の形態においては、アーク溶解により混合物から合金を製造することとしたが、これに限らず、他の加熱装置、例えば、高周波誘導加熱を用いることとしてもよい。特に、数kgといった多量で大きい水素吸蔵合金11を効率的に得たい場合には、高周波誘導加熱を用いるのが好適である。高周波誘導加熱の場合、例えば、るつぼ内に材料を投入し、るつぼの外側にコイルを配置して高周波誘導加熱を行い、コイル外にるつぼを取り出して冷却を行い、水素吸蔵合金11を得る。
また、上記の実施の形態においては、酸素の供給源としてFe(酸化鉄(III))を用いることとしたが、これに限らず、他のFe酸化物であってもよいし、Ti酸化物、例えば、TiO(酸化チタン)を用いることにしてもよい。もちろんこれらを混合して用いてもよい。すなわち、Ti酸化物およびFe酸化物の少なくともいずれか一つを用いればよい。
成分組成の異なる水素吸蔵合金をサンプルA〜サンプルEに示す配合に沿って作製し、評価試験を実施した。具体的な評価試験の内容については、後述する。また、この発明の範囲外であり、成分組成の異なる水素吸蔵合金をサンプルF〜サンプルGに示す配合に沿って作製した。そして、同様に評価試験を実施した。サンプルA〜サンプルGの配合および組成については、表1に示す。表1中に、温度30℃、圧力0.2MPaにおける各サンプルの最大水素吸蔵量(質量%)を示している。表1中のTi、Fe、Feの数値の単位は、g(グラム)である。
なお、用いる材料としては、Ti金属およびFe金属はそれぞれ、フルウチ化学株式会社製の純度99.9%のものを用いた。Feは、シグマアルドリッチジャパン社製の純度99.8%のものを用いた。
図6は、サンプルAのX線回折パターン図である。図7は、サンプルFのX線回折パターン図である。図6および図7において、縦軸は強度(cps)を示し、横軸は2θ(deg)を示す。図6および図7にいて、黒四角印でTiFeのピークを示し、白抜き三角印でβ−Tiのピークを示し、黒三角印でTiFeOのピークを示す。なお、X線回折パターンの測定については、X線回折装置として株式会社リガク製のUltima IVを用いた。特性X線としてCu−Kα線(λ=1.54184Å)を使用し、2θ=10〜100°の範囲でステップスキャン法により測定した。
まず図6を参照して、サンプルAでは、TiFeのピーク、β−TiのピークおよびTiFeOのピークが表れている。すなわち、サンプルAには、TiFe、β−TiおよびTiFeOが含まれていることが把握できる。次に図7を参照して、サンプルFでは、TiFeのピークのみしか表れていない。すなわち、サンプルFには、β−TiおよびTiFeOは含まれておらず、TiFeのみが含まれていることが把握できる。
図8は、サンプルAの表面の走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscopy))の写真をエネルギー分散型X線分光分析(EDS(Energy Dispersive X−ray Spectrometry))により組成分析した図である。図9は、図8における組成の境界を分かりやすく示した線図である。SEMおよびEDSについては、加速電圧20kVで行った。
図8および図9を参照して、サンプルAの表面には、相対的に濃くなって表れる合金層18と相対的に薄くなって表れるTiFeO層19とが存在している。合金層18とTiFeO層19とは、いわゆる海島構造を示すように表れている。これにより、サンプルAの表面において合金層18とTiFeO層19とがほぼ同程度の量で存在することが把握できる。
得られた各サンプルについては、初期の活性化処理を行った。具体的には、室温(30℃)でロータリーポンプを用いて二時間の真空引きを行った。すなわち、高温および高圧での活性化処理は行っていない。
次に、得られたサンプルの水素吸蔵性能について説明する。図10は、水素吸蔵性能を示すサンプルFの圧力−組成等温線(PCT(Pressure−Composition−Temperature))を示す図である。PCTを測定する方法として、平衡圧力と組成の変化とを関係づける容量法を用いている。図10において、縦軸は水素平衡圧力(MPa)を示し、横軸は金属に対する水素の組成比率(H/M)を示す。横軸は水素と金属の原子比で示している。縦軸については、対数表示している。また、薄い丸印で第一サイクル、すなわち、1回目の水素の吸蔵および放出の場合を示し、濃い丸印で第二サイクルの場合を示す。いずれも上側に位置する方が水素吸蔵時、すなわち、水素を吸う際の圧力を示し、下側に位置する方が水素放出時、すなわち、水素を吐き出す際の圧力を示す。
図10を参照して、サンプルFについては、圧力を加えていったとしても水素の含有量、すなわち、水素の吸蔵量を示す横軸の値がほとんど上昇しない。数サイクルを繰り返しても変化がない。すなわち、水素化されないことにより、水素を吸蔵しない。これにより、TiFeの組成であるサンプルFについては、水素吸蔵性能が劣っていることが把握できる。
図11は、サンプルGの圧力−組成等温線を示す図である。サンプルGは、Ti1.2FeO0.1であり、1.02≦x<1.23かつ0.01≦y≦0.04の関係を有しない。具体的には、酸素の含有割合が多くなっている。また、丸印で第一サイクル、すなわち、1回目の水素の吸蔵および放出の場合を示し、四角印で第二サイクルの場合を示し、三角印で第三サイクルの場合を示す。いずれも上側に位置する方が水素吸蔵時、すなわち、水素を吸蔵する際の圧力を示し、下側に位置する方が水素放出時、すなわち、水素を吐き出す際の圧力を示す。以下、図12および図13についても同様である。
図11を参照して、サンプルGについては、水素の吸蔵および放出を数回繰り返すものの、水素の吸蔵量は0.6H/Mに満たない。これは、酸素の含有割合が多いため(O=0.1)、水素の吸蔵量が少なくなったものと考えられる。なお、最大水素吸蔵量も1.39質量%とやや低めである。
図12は、サンプルBの圧力−組成等温線を示す図である。サンプルBは、Ti1.18FeO0.031であり、1.02≦x<1.23かつ0.01≦y≦0.04の関係を有する。図12を参照して、サンプルBについては、水素の吸蔵および放出を数回繰り返している。また、水素の吸蔵量についても第一サイクルで0.9H/M以上、第二サイクル以降も0.8H/Mを大きくオーバーしている。また、最大水素吸蔵量も1.67質量%であり、比較的高い。したがって、多量の水素の吸蔵および放出が可能である。また、このような配合によると、Tiの含有割合を小さくして、TiHとして水素吸蔵合金内に残留する水素の量の低減を図ることができる。したがって、水素吸蔵合金としての性能向上を図ることができる。
図13は、サンプルDの圧力−組成等温線を示す図である。サンプルDは、Ti1.34FeO0.034であり、1.23≦x≦1.34かつ0.01≦y≦0.04の関係を有する。図13を参照して、サンプルDについては、水素の吸蔵および放出を数回繰り返している。また、水素の吸蔵量についても第一サイクルで0.9H/M以上、第二サイクル以降も0.8H/M程度である。また、最大水素吸蔵量も1.55質量%であり、比較的高い。したがって、多量の水素の吸蔵および放出が可能である。また、このような配合によると、水素平衡圧力を低下させることができ、水素の吸蔵時および水素の放出時における設備や構造の簡素化を図ることができる。また、水素の吸蔵時および水素の放出時におけるヒステリシスを縮小させて、効率的な水素の吸蔵および放出を行うことができる。ヒステリシスは、図12における水素吸蔵時の圧力と水素放出時の圧力との差を示す矢印によって表されている。図12に示す矢印と同じ長さの矢印を図13に示すとその差が明確に表れる。すなわち、図13に示すサンプルDについては、水素吸蔵時の圧力と水素放出時の圧力差を極めて小さくできる。また、常圧での水素の吸蔵および放出も可能なレベルである。
なお、サンプルA、サンプルCおよびサンプルEについても、最大水素吸蔵量がそれぞれ1.62質量%、1.67質量%および1.48質量%であり、比較的高い。すなわち、多くの水素を吸蔵し、放出することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の水素吸蔵合金および水素吸蔵合金の製造方法は、高温および高圧での活性化処理を行うことなく、水素の吸蔵および放出の繰り返しが求められる場合に、特に有利に適用され得る。
11 水素吸蔵合金、12 TiFeO層、13 内部層、14 TiFe、15 β−Ti、16 TiFeO、21 TiH、22 クラック、23,24 TiFeOHz、25 水素の通り道、31 アーク溶解装置、32 収容室、33 サンプルハース、34 電極棒、35 爪部、36 内部空間、37 凹部、38 試料。

Claims (4)

  1. 水素吸蔵合金であって、
    TiFeと、β−Tiと、TiFeOと、を備え、
    前記TiFeOは、前記水素吸蔵合金の表層および内部層に存在し、
    FeTiと表した場合に、1.0<x<1.5かつ0.004<y<0.09の関係を有する、水素吸蔵合金。
  2. 1.02≦x≦1.34かつ0.01≦y≦0.04の関係を有する、請求項1に記載の水素吸蔵合金。
  3. 1.23≦x≦1.34の関係を有する、請求項2に記載の水素吸蔵合金。
  4. 1.02≦x<1.23の関係を有する、請求項2に記載の水素吸蔵合金。
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