JP2021016321A - インベージョン複合体の形成方法 - Google Patents

インベージョン複合体の形成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021016321A
JP2021016321A JP2019132460A JP2019132460A JP2021016321A JP 2021016321 A JP2021016321 A JP 2021016321A JP 2019132460 A JP2019132460 A JP 2019132460A JP 2019132460 A JP2019132460 A JP 2019132460A JP 2021016321 A JP2021016321 A JP 2021016321A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
artificial nucleic
nucleic acid
stranded
invasion
nucleic acids
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019132460A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7373834B2 (ja
Inventor
雄一郎 愛場
Yuichiro Aiba
雄一郎 愛場
長三 荘司
Chozo Shoji
長三 荘司
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokai National Higher Education and Research System NUC
Original Assignee
Tokai National Higher Education and Research System NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokai National Higher Education and Research System NUC filed Critical Tokai National Higher Education and Research System NUC
Priority to JP2019132460A priority Critical patent/JP7373834B2/ja
Publication of JP2021016321A publication Critical patent/JP2021016321A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7373834B2 publication Critical patent/JP7373834B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

【課題】インベージョン複合体の新規な形成方法を提供すること。【解決手段】2本の1本鎖人工核酸であって、(a)各々が互いに相補的な塩基配列を有し、(b)各々、モノマー間がアミド結合で連結されてなり、且つ(c)少なくとも一方の1本鎖人工核酸が、両者間のTm値を減少させる改変を含む、2本の1本鎖人工核酸を、前記2本の1本鎖人工核酸に対して相補的な塩基配列を含む2本鎖核酸と接触させる工程を含む、インベージョン複合体の形成方法。【選択図】なし

Description

本発明は、インベージョン複合体の形成方法等に関する。
ペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid, PNA)は1991年にNielsenらにより報告された人工核酸である。DNAの糖-リン酸骨格の代わりにN-(2-aminoethyl) glycine骨格をもつ。さらに構造に着目すると、PNAとDNAはともに単位骨格が6原子からなり、主鎖から核酸塩基までの原子数も等しい。この類似した構造のため、PNAは相補的なDNAとWatson Crick塩基対を介した二本鎖を形成する。リン酸基を有するDNAの二本鎖は、負電荷の静電反発によって不安定化するが、PNAは静電的に中性な骨格を持つため、DNAとより安定な二本鎖を形成する。PNAはDNAとの二本鎖は安定であるが、同時にDNAと同等、あるいはそれ以上の配列識別能を持ち、1塩基のミスマッチも認識が可能である。また、PNAはDNAやペプチドとは異なる非天然骨格からなるため、ヌクレアーゼやプロテアーゼなどの酵素分解に対して高い耐性を示し、遺伝子発現制御など生体内への応用が期待されている。
PNAの特に注目すべき性質としてインベージョンがある。インベージョンとはPNAが二本鎖のDNAに部分的に侵入する現象である。一般的に、二本鎖DNAを配列特異的に認識するには、DNAを熱などにより一本鎖に変性させ、相補的なDNAや人工核酸によって再び二本鎖を形成させる必要がある。しかし、PNAのインベージョンでは全体構造を維持したまま配列特異的にDNAを認識することが可能である。インベージョンにはいくつかの様式が報告されており、代表的なものの1つとして、double-duplex invasionが挙げられる。double-duplex invasionは互いに相補的な配列を持つ一組のPNAと、標的となるDNA二本鎖により形成されるインベージョン複合体である。配列に比較的制限がないため、応用が期待されている。
PNAS 1999, 96, 11804-11808
天然核酸塩基で構成されたPNAを用いる場合、PNA同士の二本鎖の熱安定性はDNA/PNA二本鎖に比べて大きいため、PNA同士の二本鎖が主として生じてしまい、従来は特殊な修飾なしでインベージョンを達成することはできなかった。そこで、PNA同士の二本鎖形成を防ぐために、pseudo-complementary PNA (pcPNA)が用いられてきた(非特許文献1)。しかし、現在のpcPNAは天然核酸塩基のA、Tをそれぞれ化学修飾した2,6-ジアミノプリン(D)、2-チオウラシル(Us)を用いるものであるため、効率的な配列認識にはある程度のA、Tの割合が必要とされる。そして、一般的なペプチド合成はFmoc固相合成法が用いられるが、pcPNAの主な合成法はBoc固相合成法が用いられる(D、UsのモノマーはBoc試薬が一般的なため)。Boc法ではFmoc法よりも厳しい条件で反応を進行させなければならないため、ペプチド合成機の使用が制限されていた。
本発明は、インベージョン複合体の新規な形成方法を提供することを課題とする。より好ましくは、修飾塩基を使用する必要が無い、インベージョン複合体の形成方法を提供することを課題とする。
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、2本の1本鎖人工核酸であって、(a)各々が互いに相補的な塩基配列を有し、(b)各々、モノマー間がアミド結合で連結されてなり、且つ(c)少なくとも一方の1本鎖人工核酸が、両者間のTm値を減少させる改変を含む、2本の1本鎖人工核酸を、前記2本の1本鎖人工核酸に対して相補的な塩基配列を含む2本鎖核酸と接触させることにより、インベージョン複合体を形成できることを見出した。本発明者は、この知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1. 2本の1本鎖人工核酸であって、
(a)各々が互いに相補的な塩基配列を有し、
(b)各々、モノマー間がアミド結合で連結されてなり、且つ
(c)少なくとも一方の1本鎖人工核酸が、両者間のTm値を減少させる改変を含む、
2本の1本鎖人工核酸を、前記2本の1本鎖人工核酸に対して相補的な塩基配列を含む2本鎖核酸と接触させる工程を含む、インベージョン複合体の形成方法。
項2. 前記2本の1本鎖人工核酸がパラレル型である、及び/又は前記2本の1本鎖人工核酸を相補関係に基づいて並べた場合に対向塩基が無い塩基が存在する、項1に記載の形成方法。
項3. 前記2本の1本鎖人工核酸がPNA(Peptide Nucleic Acid)である、項1又は2に記載の形成方法。
項4. 項1〜3のいずれかに記載の形成方法で得られるインベージョン複合体。
項5. 2本の1本鎖人工核酸であって、
(a)各々が互いに相補的な塩基配列を有し、
(b)各々、モノマー間がアミド結合で連結されてなり、且つ
(c)少なくとも一方の1本鎖人工核酸が、両者間のTm値を減少させる改変を含む、
2本の1本鎖人工核酸。
項6. 項5に記載の2本の1本鎖人工核酸を含む組成物。
項7. インベージョン複合体形成用である、項6に記載の組成物。
本発明によれば、インベージョン複合体の新規な形成方法を提供することができる。本発明の一態様においては、インベージョン法に利用する人工核酸において修飾塩基を使用する必要が無いので、該人工核酸の塩基配列設計の自由度をより高くすることや、該人工核酸をより簡便に合成することが可能であり、このような人工核酸を用いることにより、簡便にインベージョン複合体を形成することができる。
実施例における、インベージョン複合体を形成するために用いる2本のPNAとして(B) PNAをparallel型に設計する方法の概略を示す。矢印の起点がN末端側を示し、先端がC末端側を示す。 実施例における、インベージョン複合体を形成するために用いる2本のPNAとして(A) 認識配列をずらしたPNAを用いる方法の概略を示す。 方法(A)のEMSA(Electrophoresis Mobility Shift Assay)の結果を示す。[PNA]/[DNA]はDNA1当量に対する2種のPNAの各当量数を示す。レーン1は20 bpから500 bpのDNAラダーであり、レーン2はDNAのみの場合であり、レーン3〜4は2本のPNAが認識配列をずらしていないPNAである場合(PNAとしてAT_15mer-5_1-ap(配列番号9)とAT_15mer-5_2-ap(配列番号12)を使用した場合)を示し、レーン5〜6は2本のPNAが認識配列をずらしたPNAである場合(PNAとしてAT_15mer-4_1-ap(配列番号8)とAT_15mer-5_2-ap(配列番号12)を使用した場合)を示す。 方法(B)のEMSAの結果を示す。[PNA]/[DNA]はDNA1当量に対する2種のPNAの各当量数を示す。レーン1は20 bpから500 bpのDNAラダーであり、レーン2はDNAのみの場合であり、レーン3〜5は2本のPNAがanti-parallel型である場合(PNAとしてAT_15mer_1-ap(配列番号4)とAT_15mer_2-ap(配列番号11)を使用した場合)を示し、レーン6〜8は2本のPNAがparallel型である場合(PNAとしてAT_15mer_1-ap(配列番号4)とAT_15mer_2-p(配列番号13)を使用した場合)を示す。 G・C塩基を多く持つ配列における方法(B)のEMSAの結果を示す。[PNA]/[DNA]はDNA1当量に対する2種のPNAの各当量数を示す。レーン1は20 bpから500 bpのDNAラダーであり、レーン2はDNAのみの場合であり、レーン3〜4は2本のPNAがanti-parallel型である場合(PNAとしてGC15mer_1-ap(配列番号15)とGC15mer_2-ap(配列番号17)を使用した場合)を示し、レーン5〜6は2本のPNAがparallel型である場合(PNAとしてGC15mer_1-ap(配列番号15)とGC15mer_2-p(配列番号18)を使用した場合)を示す。 方法(B)のEMSAの結果を示す。レーン1は20 bpから500 bpのDNAラダーであり、レーン2はDNAのみの場合であり、レーン3は2本のPNAが15merである場合(PNAとしてAT_15mer_1-ap(配列番号4)とAT_15mer_2-p(配列番号13)を使用した場合)を示し、レーン4は2本のPNAが12merである場合(PNAとしてAT12mer_1-ap(配列番号21)とAT12mer_2-p(配列番号22)を使用した場合)を示す。 方法(A)のEMSAの結果を示す。[PNA]/[DNA]はDNA1当量に対する2種のPNAの各当量数を示す。レーン1は20 bpから500 bpのDNAラダーであり、レーン2はDNAのみの場合であり、レーン3〜4は2本のPNAが認識配列をずらしていないPNAである場合(PNAとしてAT_15mer_1-ap(配列番号4)とAT_15mer_2-ap(配列番号11)を使用した場合)を示し、レーン5〜6は2本のPNAが認識配列をずらしたPNAである場合(PNAとしてAT_15mer-1_1-ap(配列番号5)とAT_15mer_2-ap(配列番号11)を使用した場合)を示す。 方法(B)のEMSAの結果を示す。[PNA]/[DNA]はDNA1当量に対する2種のPNAの各当量数を示す。レーン1は20 bpから500 bpのDNAラダーであり、レーン2はDNAのみの場合であり、レーン3〜4は2本のPNAがparallel型である場合(PNAとしてIK15mer_1ap(配列番号23)とIK15mer_2p(配列番号24)を使用した場合)を示す。 Tm値測定結果を示す。縦軸はTm値を示す。横軸の番号は、表2の番号に対応する。
本明細書中に示される上限及び下限は、任意に組み合わせることができる。
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
本明細書において、核酸を構成する塩基には、RNA、DNA等の天然核酸中の典型的な塩基(アデニン(A)、チミン(T)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)等)のみならず、これ以外の塩基、例えばヒポキサンチン(I)、修飾塩基等も包含される。修飾塩基としては、例えば、シュードウラシル、3-メチルウラシル、ジヒドロウラシル、5-アルキルシトシン(例えば、5-メチルシトシン)、5-アルキルウラシル(例えば、5-エチルウラシル)、5-ハロウラシル(5-ブロモウラシル)、6-アザピリミジン、6-アルキルピリミジン(6-メチルウラシル)、2-チオウラシル、4-チオウラシル、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5’-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、1-メチルアデニン、1-メチルヒポキサンチン、2,2-ジメチルグアニン、3-メチルシトシン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メチルカルボニルメチルウラシル、5-メチルオキシウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸、2-チオシトシン、プリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノプリン、イソグアニン、インドール、イミダゾール、キサンチン等が挙げられる。これらの核酸塩基は、さらに1以上の置換基を有してもよい。
1.インベージョン複合体の形成方法
本発明は、その一態様において、2本の1本鎖人工核酸であって、(a)各々が互いに相補的な塩基配列を有し、(b)各々、モノマー間がアミド結合で連結されてなり、且つ(c)少なくとも一方の1本鎖人工核酸が、両者間のTm値を減少させる改変を含む、2本の1本鎖人工核酸を、前記2本の1本鎖人工核酸に対して相補的な塩基配列を含む2本鎖核酸と接触させる工程を含む、インベージョン複合体の形成方法(本明細書において、「本発明の形成方法」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
2本の1本鎖人工核酸(本明細書において、それぞれを、便宜的に、「1本鎖人工核酸A」、「1本鎖人工核酸B」と示すこともある。)は、(a)各々が互いに相補的な塩基配列を有する。相補的とは、塩基同士が相補関係(例えばAとT、AとU、GとC等)にあることを示す。すなわち、1本鎖人工核酸Aは1本鎖人工核酸Bの塩基配列に対して相補的な塩基配列を含み、また1本鎖人工核酸Bは1本鎖人工核酸Aの塩基配列に対して相補的な塩基配列を含む。「相補的な塩基配列」は、通常、連続した塩基配列を示すが、数箇所(例えば1箇所、2箇所、3箇所等)の断続部位を挟んでなる塩基配列も包含する。
2本の1本鎖人工核酸それぞれの塩基数は、double-duplex インベージョンによるインベージョン複合体の形成が可能である限り特に制限されないが、例えば5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上である。特に、該塩基数を12塩基以上に設計することにより、インベージョン複合体の形成効率を大きく向上させることができる。該塩基数の上限は、例えば40塩基、好ましくは35塩基、より好ましくは30塩基、さらに好ましくは25塩基、よりさらに好ましくは20塩基である。
1本鎖人工核酸が有する「相補的な塩基配列」の塩基数は、double-duplex インベージョンによるインベージョン複合体の形成が可能である限り特に制限されないが、例えば1本鎖人工核酸Aと1本鎖人工核酸Bそれぞれの全塩基数100%に対して、例えば80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。該塩基数は、全塩基数にも依るが、例えば5塩基以上、8塩基以上、10塩基以上、12塩基以上である。この場合、該塩基数の上限は、例えば40塩基、35塩基、30塩基、25塩基、20塩基である。
1本鎖人工核酸が有する「相補的な塩基配列」以外の塩基数は、double-duplex インベージョンによるインベージョン複合体の形成が可能である限り特に制限されないが、例えば1本鎖人工核酸Aと1本鎖人工核酸Bそれぞれの全塩基数100%に対して、例えば20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。また、該塩基数は、全塩基数にも依るが、例えば10塩基以下、5塩基以下、4塩基以下、3塩基以下、2塩基以下、1塩基以下である。
2本の1本鎖人工核酸それぞれは、Fmoc法での合成が簡便である、モノマー合成の合成ステップが少ない、市販されていて安価である等観点から、その構成塩基として、Fmoc固相合成法で簡便にオリゴマー合成できない塩基を含まないことが好ましい。このような塩基としては、例えば2,6-ジアミノプリン、2-チオウラシル等が挙げられる。また、同様の観点から、2本の1本鎖人工核酸それぞれにおいては、その構成塩基数100%に対する典型塩基(アデニン、チミン、ウラシル、グアニン、シトシン)数の割合が高い方が好ましく、該割合は、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上、とりわけさらに好ましくは95%以上、特に好ましくは100%である。
2本の1本鎖人工核酸は、(b)各々、モノマー間がアミド結合で連結されてなる1本鎖人工核酸である。モノマーは、カルボキシ基、アミノ基、及び核酸塩基を有し、且つアミド結合で連結されることにより、他の核酸と相補的に結合可能なポリマー(人工核酸)を形成可能なものである限り、特に制限されない。モノマーには、立体異性体及び光学異性体が含まれ得るが、これらは特に限定されるものではない。モノマーとしては、例えば公知の文献(例えばChem Biol Drug Des 2017; 89: 16-37)に記載のものを採用することができる。モノマーは、例えば、窒素原子に、アミノ基を含む基、カルボキシ基を含む基、及び核酸塩基を含む基が連結してなるモノマーが挙げられる。モノマーとしてより具体的には、一般式(1):
[式中:R1は水素原子、アルキル基、アミノ酸残基、又は水溶性高分子基を示す。R2は水素原子、アルキル基、アミノ酸残基、又は水溶性高分子基を示す。R3は水素原子、アルキル基、アミノ酸残基、又は水溶性高分子基を示す。R4は水素原子、アルキル基、アミノ酸残基、又は水溶性高分子基を示す。Baseは核酸塩基を示す。]
で表される化合物が挙げられる。
R1、R2、R3、及びR4で示されるアルキル基には、直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含される。該アルキル基の炭素数は、特に制限されず、例えば1〜4、好ましくは1〜2、より好ましくは1である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。
R1、R2、R3、及びR4で示されるアミノ酸由来の基としては、特に制限されず、天然又は非天然の各種アミノ酸由来の基(例えばアミノ酸の1つの水素原子又は官能基を除いてなる基)を制限無く採用することができる。例えば、リシン、グルタミン、アラニン等のアミノ酸由来の基が挙げられる。
水溶性高分子としては、特に制限されず、例えばポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールを採用することができる。
Baseで示される核酸塩基としては、核酸を構成する塩基を特に制限無く採用することができる。
本発明においては、R1、R2、R3、及びR4は全て水素原子であることが特に好ましい。また、2本の1本鎖人工核酸がPNA(Peptide Nucleic Acid)であることが好ましい。
2本の1本鎖人工核酸は、(c)少なくとも一方の1本鎖人工核酸が、両者間のTm値を減少させる改変を含む。改変は、1本鎖人工核酸Aと1本鎖人工核酸Bとの間のTm値が減少するような改変であれば特に制限されない。
改変(c)の1つとしては、例えば、(c1)2本の1本鎖人工核酸をパラレル型とする改変が挙げられる。PNA等、モノマー間がアミド結合で連結されてなる1本鎖人工核酸にもまた、DNA等のように方向性が存在する。該1本鎖人工核酸PNAにおいては、主鎖のアミド結合(−NH−C(=O)−)における−NH−側がN末端側、−C(=O)−側がC末端側とされている。例えばPNAでは、N末端側は、DNA等の5’末端側に対応し、C末端側はDNA等の3’末端に対応する。1本鎖核酸同士が相補的な結合により2本鎖核酸を形成する際、DNAの場合は、2本の1本鎖核酸が逆向きに結合する、すなわちそれぞれの1本鎖核酸の主鎖が逆向きになるように、核酸が相補的に結合する。本明細書においては、これをアンチパラレル型と示す。一方、PNA等、モノマー間がアミド結合で連結されてなる1本鎖人工核酸の場合も、同様に、2本鎖を形成する際は一般的にはアンチパラレル型であり、アンチパラレル型の方が安定である(Tm値が高い)(図1)。上記改変(c1)では、2本の1本鎖人工核酸の主鎖が、同じ向きである場合に、互いに相補的な塩基配列を有することになる(すなわち、パラレル型になる)ように、少なくとも一方の1本鎖人工核酸の塩基配列が設計される(図1)。2本の1本鎖人工核酸がパラレル型である場合の一例として、N末−GGGGAAAAAなる塩基配列からなる1本鎖人工核酸A’と、N末−CCCCTTTTTなる塩基配列からなる1本鎖人工核酸B’との組合せが挙げられ、これらを相補関係に基づいて並べると、下記のようになる。
改変(c)の別の例としては、(c2)2本の1本鎖人工核酸を相補関係に基づいて並べた場合に対向塩基が無い塩基が存在するように設計することが挙げられる。相補関係に基づいて並べるとは、すなわち、2本の1本鎖人工核酸を、その間で対向する塩基同士の相補関係(例えばAとT、AとU、GとC等)に基づいて、相補塩基対(例えばAとT、AとU、GとC等)の数が最大となり且つ非相補塩基対(例えばAとG、GとU、TとC等)の数が最小(好ましくは0)となるように並べることを意味する。例えば、N末−AAAAAGGGGなる塩基配列からなる1本鎖人工核酸A”と、N末−CCCCCTTTTなる塩基配列からなる1本鎖人工核酸B”とを、相補関係に基づいて並べると、下記のようになる。
対向塩基が無い塩基が存在するとは、すなわち、このように並べた場合に、2本の1本鎖人工核酸の少なくとも1方の一部の塩基の対向する位置に塩基が存在しないことを意味する。
改変(c2)の具体的な例としては、例えば2本の1本鎖人工核酸の一方の塩基配列をN末端側又はC末端側にずらして設計することが挙げられる(一例として、図2を参照)。この場合、一方の1本鎖人工核酸のN末端(又はC末端)に対向塩基が無い塩基が存在することになり、一態様においてはさらに他方の1本鎖人工核酸のC末端(又はN末端)に対向塩基が無い塩基が存在することもある。本発明の一態様においては、好ましくは、一方の1本鎖人工核酸のN末端(又はC末端)に対向塩基が無い塩基が存在し、且つ他方の1本鎖人工核酸のC末端(又はN末端)に対向塩基が無い塩基が存在する(上記した、相補関係に基づいて並べた例を参照)。
改変(c2)の別の具体的な例としては、例えば、2本の1本鎖人工核酸の少なくとも一方における一部の塩基を水素原子又は他の基(例えば、芳香環(例えばベンゼン環)等の平面性分子構造)に置換えることが挙げられる。この場合、少なくとも一方の2本の1本鎖人工核酸の少なくとも一方の一部(N末端、C末端、又は末端以外の部分)に対向塩基が無い塩基が存在する。
改変(c2)において、1本鎖人工核酸における「対向塩基が無い塩基」の塩基数は、double-duplex インベージョンによるインベージョン複合体の形成が可能である限り特に制限されないが、例えば1本鎖人工核酸の全塩基数100%に対して、例えば20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。また、該塩基数は、全塩基数にも依るが、例えば1〜10塩基、1〜5塩基、1〜4塩基、1〜3塩基、1〜2塩基、1塩基である。
2本の1本鎖人工核酸それぞれには、double-duplex インベージョンによるインベージョン複合体の形成が可能である限り、化学修飾されてなるものを包含することができる。具体的な化学修飾として、例えばアセチル化、ホルミル化、ミリストイル化、ピログルタミン酸化、アルキル化、グリコシル化、アミド化、アシル化、ヒドロキシル化、脱アミノ化、プレニル化、パルミトイル化、リン酸化、ビオチニル化、スクシンイミジル化等が挙げられる。
2本の1本鎖人工核酸それぞれには、double-duplex インベージョンによるインベージョン複合体の形成が可能である限り、他の物質が連結(例えば、末端に連結)している形態も包含することができる。他の分子としては、例えばリンカー、ペプチド、タンパク質、糖、アミノ酸、DNA、RNA、低分子有機・無機材料、コレステロール、デンドリマー、脂質、炭化水素、高分子材料等、さらにはこれらの複合分子が挙げられる。
前記アミノ酸は特に限定されず、天然アミノ酸、非天然アミノ酸等を制限無く採用することができる。例えば、側鎖にアミノ基を有するリジン、ヒスチジン、またはアルギニンなどが挙げられる。中でも、リジン残基を設けることが好ましい。1本鎖人工核酸に結合させるアミノ酸の個数は特に限定はされない。通常は、1〜10個程度とすることができ、1〜5個程度とすることが好ましい。
前記ペプチドとしては、例えば、2〜40個、好ましくは2〜30個、更に好ましくは6〜25個のアミノ酸から構成されるペプチドが挙げられる。具体的には、細胞膜透過ペプチド[アルギニンが2〜10個連結したペプチド(特に、オクタアルギニン(R8))、ペネトラチン等]、核局在化シグナルペプチド配列(HIV-1 Tat、SV40 T抗原等)、核外移行性シグナルペプチド(HIV-1 Rev、MAPKK等)、細胞膜融合ペプチド(gp41、バイアルフュージョンペプチド等)が挙げられる。
前記タンパク質としては、生体内に存在するタンパク質、薬理作用を有するタンパク質、分子認識作用を有するタンパク質等を使用でき、該タンパク質の一例として、エクスポーチン/インポーチン・タンパク質、フェブロネクチン、アビジン、抗体等を挙げることができる。
前記糖としては、例えば、グルコース、ガラクトース、グルコサミン、ガラクトサミン等の単糖、これらを任意に組み合わせたオリゴ糖又は多糖等が挙げられる。
前記低分子有機・無機材料としては、例えば、Cy3、Cy5等の蛍光物質;ビオチン;量子ドット;金微粒子等が挙げられる。
前記デンドリマーとしては、例えば、ポリアミドアミンデンドリマー等が挙げられる。
上記脂質としては、例えば、炭素数6〜50の脂肪酸、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)等が挙げられる。
前記炭化水素としては、例えば、炭素数6〜50の飽和又は不飽和炭化水素、好ましくは炭素数6〜30の直鎖状飽和又は不飽和炭化水素、特に好ましくは炭素数12〜28の直鎖状飽和炭化水素が挙げられる。
前記高分子材料としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
本発明の形成方法においては、上記した2本の1本鎖人工核酸を、前記2本の1本鎖人工核酸に対して相補的な塩基配列を含む2本鎖核酸と接触させる工程を含む。
接触させる対象である2本鎖核酸は、DNA、RNAのみならず、これらに、次に例示するように、公知の化学修飾が施されたものも包含する。ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各リボヌクレオチドの糖(リボース)の2位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2´-O-Me)、CH2CH2OCH3(2´-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えば、ビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたものなどを挙げることができるが、これに限定されない。また、「ポリヌクレオチド」の語は、天然の核酸だけでなく、BNA(Bridged Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid)、PNA(Peptide Nucleic Acid)等の何れも包含する。2本鎖核酸は、好ましくはDNAである。
2本鎖核酸は、2本の1本鎖人工核酸に対して相補的な塩基配列を含む。すなわち、2本鎖核酸は、その一方の鎖において、一方の1本鎖人工核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を含み、その他方の鎖において、他方の1本鎖人工核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を含む。ここで、相補的とは、塩基同士が相補関係(例えばAとT、AとU、GとC等)にあることを示す。「相補的な塩基配列」は、通常、連続した塩基配列を示すが、数箇所(例えば1箇所、2箇所、3箇所等)の断続部位を挟んでなる塩基配列も包含する。好ましくは、「相補的な塩基配列」は、連続した塩基配列である。
2本鎖核酸が有する「相補的な塩基配列」の塩基数は、double-duplex インベージョンによるインベージョン複合体の形成が可能である限り特に制限されないが、例えば2本の1本鎖人工核酸それぞれの全塩基数100%に対して、例えば80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは100%である。
本発明の形成方法においては、2本鎖核酸に、上記した「2本の1本鎖人工核酸」以外の1本鎖人工核酸(1本鎖人工核酸X)を接触させることもできる。該1本鎖人工核酸Xの態様は、上記した「2本の1本鎖人工核酸」と同様であり、また上記した(a)、(b)、(c)の少なくとも1つを満たす1本鎖人工核酸であることができる。1本鎖人工核酸Xの数は、特に制限されず、例えば1〜20、1〜10、1〜5である。1本鎖人工核酸間は、アミノ酸やリンカー等を介して連結されていてもよい。
接触は、in vivoであっても、in vitroであってもよい。
in vivoの場合、接触は通常、対象生物内又は対象細胞内で行われる。対象生物としては、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ等の哺乳類動物; アフリカツメガエル等の両生類動物; ゼブラフィッシュ、メダカ、トラフグ等の魚類動物; ホヤ等の脊索動物; ショウジョウバエ、カイコ等の節足動物;等の動物: シロイヌナズナ、イネ、コムギ、タバコ等の植物: 酵母、アカパンカビ等の菌類: 大腸菌、枯草菌、藍藻等の細菌等が挙げられる。対象細胞としては、例えば上記生物の各種組織由来又は各種性質の細胞、例えば血液細胞、造血幹細胞・前駆細胞、配偶子(精子、卵子)、受精卵、線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、神経細胞、肝細胞、ケラチン生成細胞、筋細胞、表皮細胞、内分泌細胞、ES細胞、iPS細胞、組織幹細胞、がん細胞等が挙げられる。
in vitroの場合は、接触は、例えば、適当な緩衝剤溶液中で行うことができる。
接触の態様及び条件は、double-duplex インベージョンによるインベージョン複合体の形成が可能である限り特に制限されない。in vitroの場合であれば、2本の1本鎖人工核酸と2本鎖核酸とを例えば混合することにより、両者を接触させることができる。また、in vivoの場合であれば、2本の1本鎖人工核酸を対象生物に投与する又は対象細胞に導入することにより、両者を接触させることが可能である。
2本鎖核酸に接触させる2本の1本鎖人工核酸の量は、特に制限されないが、例えば2本鎖核酸1モルに対して、例えば0.1モル以上、0.5モル以上、1モル以上、2モル以上、5モル以上、10モル以上である。該量の上限も特に制限されず、例えば500モル、100モル、50モルである。
斯かる本発明の形成方法により、インベージョン複合体が得られる。このため、本発明は、その一態様において、本発明の形成方法で得られるインベージョン複合体に関する。
本発明の形成方法は、インベージョン複合体の特性を利用した各種用途に使用することができる。
例えば、インベージョン複合体の形成は相同組換えを誘起することや、インベージョン複合体の形成により生じた1本鎖を、1本鎖特異的切断物質(例えば、加水分解触媒(例えばCe(IV)/EDTA 錯体等)、各種ヌクレアーゼ等)により切断できることが知られている。そこで、インベージョン複合体の形成により、必要に応じて1本鎖特異的切断物質やドナーDNAをさらに加えることにより、ゲノム編集を行うことも可能である。また、インベージョン複合体の形成により、転写因子の接触や進行を阻害することにより、転写を阻害することも可能である。
2.2本の1本鎖人工核酸、組成物
本発明は、その一態様において、2本の1本鎖人工核酸であって、(a)各々が互いに相補的な塩基配列を有し、(b)各々、モノマー間がアミド結合で連結されてなり、且つ(c)少なくとも一方の1本鎖人工核酸が、両者間のTm値を減少させる改変を含む、2本の1本鎖人工核酸(本発明の核酸)、及び該2本の1本鎖人工核酸を含む組成物(本発明の組成物)に関する。
2本の1本鎖人工核酸については、上記「1.インベージョン複合体の形成方法」における説明と同じである。
本発明の組成物は、本発明の核酸を含有する限りにおいて特に制限されず、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。本発明の組成物は、試薬、特にインベージョン複合体形成用組成物として使用することができる。
本発明の組成物は、キットの形態であることもできる。キットにおいては、各主成分が別々の容器に収容されていてもよいし、必要に応じて核酸導入試薬、緩衝液等、本発明の形成方法の実施に必要な他の材料、試薬、器具等を適宜含んでいてもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
本実施例では、インベージョン複合体を形成するために用いる2本のPNAとして、(A) 認識配列をずらしたPNAを用いる方法(図2)、(B) PNAをparallel型に設計する方法(図1)の2手法を検討した。いずれの方法においても、相補的なPNA/PNA間の相互作用を低減させる点を重要視した。(A)の方法では、敢えて認識配列をずらしたPNAを用いることで、PNA 同士の相補的な領域が減少し、PNA二本鎖の形成が抑えられると共に、インベージョン複合体の安定性は維持されることによってインベージョン効率が向上すると考えられた。(B)の方法では、parallel 型の PNA/PNA 二本鎖の安定性が antiparallel 型の場合より低下することを利用し、片方の PNA を従来とは逆向きに合成し、parallel型になるように設計することで、PNA同士の二本鎖形成を抑制することを目指した。PNA/DNA二本鎖の安定性の低下は、parallel型にしてもPNA同士の二本鎖と比べて小さいため、インベージョン効率の向上が期待される。
(1)PNAの合成
Fmoc固相合成法によるPNAの合成、精製を行った。合成したPNAを表1に示す。
全てのPNAは既報のFmocペプチド固相合成法に基づき(M. Komiyama. et al. Nat. Protc. 2008, 3, 655-662.)、自動合成機(Biotage、Syro I)を用いて合成を行った。TGR resin(20mg)をSyro I用のカラムに入れSyro Iにセットした。また、一連の合成に対する必要量の各モノマーのDMF溶液(Fmoc保護)を0.067Mで調製し、Syro Iにセットした。同様に、必要量の40% PiperidineのDMF溶液、0.050 MのHOBtと0.045 MのHBTUのDMF混合溶液、0.37M DIEPAのDMF溶液、10% Ac2OのDMF溶液を調製しSyro Iにセットした。その後、目的のPNAをSyro Iの自動合成メソッドに従って合成した。自動合成のメソッドが終了した後、手動でresinからの切り出しを行った。まず、Syro I用のカラムにDMFを500 μL加えて分散させたのち、resinの懸濁液を手動ペプチド合成用のカラム(Hipep、LibraTube)に移し、溶液を除く一連の操作を3回繰り返し行った。20% PiperidineのDMF溶液を250 μL加えて1分間の振盪後、一旦溶液を除去し、再度20% PiperidineのDMF溶液250 μLを加え、15分間振盪させ、Fmocの脱保護を行った。その後、溶液を除去し、DMFにより4回洗浄を行った。
その後DCMにて3回洗浄し、脱樹脂を行った。TFA:H2O:triisopropylsilane(TIS)を195:2.5:2.5で混合した溶液を200 μL加え、室温で1時間静置してPNAをresinから切り出した。得られたPNA溶液を回収し、200 μLのTFAでresinを2回洗浄し、洗浄液も同様に回収した。回収したPNA溶液を約300 μLずつ2.0 mLチューブに分注し、約1.5 mLの冷ジエチルエーテルを加えてPNAを沈殿させた。遠心機で冷却しながら15,000 rpm、15分遠心することで沈殿を回収し、上清をデカンテーションにより除去した後に、新たにジエチルエーテルを加えて同様に遠心操作を行うことでPNAのペレットを洗浄した。PNAの沈殿は風乾後にMilli-Qに溶かした。PNA溶液は0.65 μmのPVDF膜のフィルターチューブによってろ過した後、逆相カラム(COSMOSIL 5C18-AR-II)を用いてHPLC精製を行った。溶離液にはMilli-Q(0.1% TFA溶液、溶離液A)とAN(0.1% TFA溶液、溶離液B)を用いた。
得られたPNAをMALD-TOF MSで分析して、目的のPNAが合成されたことを確認した。
(2)インベージョン試験1
合成したPNAを用いて119 bpのDNAに対してインベージョン実験を行った。119 bpのDNAはpBFP-N1のT817-A935に一致する配列である。合成した2本のPNAと2本鎖DNAとを混合し、ゲルおよびマイクロチップ電気泳動を行い、electrophoretic mobility shift assay(EMSA)によってインベージョン複合体の形成効率を評価した。
インベージョン実験に用いる119 bpのDNA、は5’-TTCATCTGCACCACCGGCAAG-3’(配列番号19)と5’-TTGAAGAAGTCGTGGCGCTTCATG-3’ (配列番号20)をプライマーとして用い、pBFP-N1をテンプレートとしてPCRによって調製した。その後、FastGene Gel/PCR Extraction Kit(日本ジェネティクス)で精製を行い、UV-Visスペクトルによって濃度を決定した。
終濃度がDNA: 50 or 100 nM、HEPES(pH 7.0): 5 mM、合成した各PNAの濃度がDNAのn当量(n: 実験ごとに示す)になるように、Milli-Qで調整し、10 μLの溶液を調製した。50 ℃のウォーターバス中で1時間静置し、インベージョン複合体を形成させた。インベージョン複合体の形成は、DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置(島津、MCE-202 MultiNA)を用いて解析した。
DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置MCE-202 MultiNAを用いて測定し、得られたelectrophoretic mobility shift assay(EMSA)の結果とインベージョン実験の反応条件とをあわせて、図3〜5に示す。図3は方法(A)のEMSAの結果を示し、図4は方法(B)のEMSAの結果を示し、図5はG・C塩基を多く持つ配列における方法(B)のEMSAの結果を示す。
図3中の最上部、最下部に見られるバンドはそれぞれ電気泳動の基準となるマーカーによるものである。またレーン1には20 bpから500 bpのDNAを含んだラダー、レーン2では100 bpと120 bpとの間にDNAのバンドが観測された。レーン3、4では、認識配列が完全に相補的なPNAをDNAに対してそれぞれ5当量、10当量用いた結果を示し、レーン2と同じ位置にのみバンドが観測された。それに対して、レーン5、6では、認識配列を1つずらしたPNAを用いた。その結果、DNAに対してPNAを10当量加えたレーン6において、DNAのバンドとは異なる140 bpと160 bpとの間に新たなバンドが確認出来、DNAのバンドは強度が小さくなった。これはインベージョン複合体の形成により、二本鎖DNAの高次構造が変化し、泳動度に差が生じたためバンドシフトが起きたと考えられる。この結果から、認識配列をずらした方法(A)でインベージョンに成功した。
方法(A)の場合と同様に、図4中の最上部、最下部に見られるバンドはそれぞれ電気泳動の基準となるマーカーによるものである。またレーン1には20 bpから500 bpのDNAを含んだラダー、レーン2では100 bpと120 bpとの間にDNAのバンドが観測された。anti-parallel型のPNAを加えたレーン3、4、5では、レーン2と同じ位置にのみバンドが観測された。それに対して、parallel型でのPNAを加えたレーン6、7、8では、DNAのバンドとは異なる140 bpと160 bpとの間に新たにバンドが見られ、DNAのバンドは強度が小さくなった。これは方法(A)の場合と同様に、インベージョン複合体の形成により、二本鎖DNAの高次構造が変化し、泳動時間に差が生じたためバンドシフトが起きたと考えられる。この結果から、PNA同士がparallel型になるように設計する方法(B)でもまたインベージョンに成功した。
また、よりG・C塩基を多く含んだ配列についてもPNA同士がparallel型になるように設計する方法(B)を検討し、図5に結果を示した。図4の結果と同様に、anti-parallel型のPNAを加えレーン3、4では、レーン2と同じ位置にのみバンドが観測されるが、parallel型のPNAを加えレーン5、6では、DNAのバンドとは異なる140 bpと160 bpとの間に新たにバンドが見られた。したがって、よりG・C塩基を多く含んだ配列についても、PNA同士がparallel型になるように設計する方法(B)がインベージョンに有効であることを見出した。
(3)インベージョン試験2
インベージョン試験1と同様にして試験した。EMSAの結果とインベージョン実験の反応条件とをあわせて、図6に示す。図6に示されるように、15mer及び12merのいずれのPNAを使用した場合も、PNA同士がparallel型になるように設計する方法(B)でインベージョンに成功した。
(4)インベージョン試験3
インベージョン試験1と同様にして試験した。EMSAの結果とインベージョン実験の反応条件とをあわせて、図7〜8に示す。図7〜8に示されるように、方法(A)及び方法(B)共に、インベージョン試験1と異なる配列を使用しても、インベージョンに成功した。
(5)Tm値測定
anti-parallel型及びparallel型のTm値を次のようにして測定した。終濃度がDNAおよびPNA: 1.0 μM、HEPES(pH 7.0): 5 mM、になるように、Milli-Qで調整し150 μLの溶液を調製した。温度可変型の紫外可視吸光光度計(JASCO)を用い、95 ℃→25 ℃、25 ℃→95 ℃の範囲で溶液の温度を変化させながら、260 nmの波長における吸光度を測定した。得られた温度変化に伴う吸光度の変化からTm値を算出した。
Tm値測定対象のDNA、PNAの組合せ、及びTm値を表2に示す。また、Tm値を図9にも示す。
図9から、PNA同士の二本鎖のTm値を表す左3つの絡むより、anti-parallel型では90 ℃を超える高いTm値を示すのに対し、同じ配列の場合でもparallel型では著しく安定性が低下した。そのためparallel型に設計することで効果的にPNA同士の自己会合を抑制できたと考えられる。また、右4つのカラムを見ると、anti-parallel型とparallel型での熱安定性の差が、DNA/PNAの二本鎖ではPNA同士の場合よりも小さいことが分かった。このため、インベージョン複合体全体としての安定性は十分に保持されていると考えられる。
この結果とインベージョン試験との結果より、方法(A)及び方法(B)のように、互いに相補的な2本のPNAの少なくとも一方に、両者間のTm値を減少させる改変が加えることにより、効率的にインベージョン複合体を形成できることが分かった。

Claims (7)

  1. 2本の1本鎖人工核酸であって、
    (a)各々が互いに相補的な塩基配列を有し、
    (b)各々、モノマー間がアミド結合で連結されてなり、且つ
    (c)少なくとも一方の1本鎖人工核酸が、両者間のTm値を減少させる改変を含む、
    2本の1本鎖人工核酸を、前記2本の1本鎖人工核酸に対して相補的な塩基配列を含む2本鎖核酸と接触させる工程を含む、インベージョン複合体の形成方法。
  2. 前記2本の1本鎖人工核酸がパラレル型である、及び/又は前記2本の1本鎖人工核酸を相補関係に基づいて並べた場合に対向塩基が無い塩基が存在する、請求項1に記載の形成方法。
  3. 前記2本の1本鎖人工核酸がPNA(Peptide Nucleic Acid)である、請求項1又は2に記載の形成方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の形成方法で得られるインベージョン複合体。
  5. 2本の1本鎖人工核酸であって、
    (a)各々が互いに相補的な塩基配列を有し、
    (b)各々、モノマー間がアミド結合で連結されてなり、且つ
    (c)少なくとも一方の1本鎖人工核酸が、両者間のTm値を減少させる改変を含む、
    2本の1本鎖人工核酸。
  6. 請求項5に記載の2本の1本鎖人工核酸を含む組成物。
  7. インベージョン複合体形成用である、請求項6に記載の組成物。
JP2019132460A 2019-07-18 2019-07-18 インベージョン複合体の形成方法 Active JP7373834B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019132460A JP7373834B2 (ja) 2019-07-18 2019-07-18 インベージョン複合体の形成方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019132460A JP7373834B2 (ja) 2019-07-18 2019-07-18 インベージョン複合体の形成方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021016321A true JP2021016321A (ja) 2021-02-15
JP7373834B2 JP7373834B2 (ja) 2023-11-06

Family

ID=74562917

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019132460A Active JP7373834B2 (ja) 2019-07-18 2019-07-18 インベージョン複合体の形成方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7373834B2 (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018527012A (ja) * 2015-09-16 2018-09-20 ぺタオミクス, インコーポレイテッド ゲノムターゲットエンリッチメント及び選択的dnaシーケンシングのための方法及び組成物

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018527012A (ja) * 2015-09-16 2018-09-20 ぺタオミクス, インコーポレイテッド ゲノムターゲットエンリッチメント及び選択的dnaシーケンシングのための方法及び組成物

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
INAGAKI, MASAHITO ET AL., CHEMISTRY LETTER, vol. 48, no. 4, JPN6023011591, 5 April 2019 (2019-04-05), pages 341 - 344, ISSN: 0005086394 *
RAY, ARGHYA AND NORDEN, BENGT, THE FASEB JOURNAL, vol. 14, no. 9, JPN6023011593, 1 June 2000 (2000-06-01), pages 1041 - 1060, ISSN: 0005086397 *
SHIGI, NARUMI ET AL., MOLECULES, vol. Vol. 22, No. 10, Article No. 1586, JPN6023011592, 21 September 2017 (2017-09-21), pages 1 - 14, ISSN: 0005086396 *
WITTUNG, PERNILLA ET AL., NATURE, vol. 368, JPN6023011589, 7 April 1994 (1994-04-07), pages 561 - 563, ISSN: 0005086395 *

Also Published As

Publication number Publication date
JP7373834B2 (ja) 2023-11-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7041879B2 (ja) アンチセンス核酸
US20180273977A1 (en) Multimeric mrna
Sahu et al. Synthesis of conformationally preorganized and cell-permeable guanidine-based γ-peptide nucleic acids (γGPNAs)
JPH06506945A (ja) ペプチド核酸
JP2020537540A (ja) 改変cpf1ガイドrna
Jacquemin-Sablon et al. Nucleic acid binding and intracellular localization of unr, a protein with five cold shock domains
JP6442941B2 (ja) 血管内皮細胞増殖因子結合性核酸アプタマー及びその利用
Varizhuk et al. Polymorphism of G4 associates: from stacks to wires via interlocks
JP2008220366A (ja) 修飾型pna/rna複合体
CA3138991A1 (en) Methods and compositions for diagnostically-responsive ligand-targeted delivery of therapeutic agents
JP6368318B2 (ja) ヌクレオシド誘導体又はその塩、ヌクレオシド誘導体の5’−リン酸エステル又はその塩、ヌクレオシド誘導体の3’−ホスホロアミダイト化物又はその塩、並びにポリヌクレオチド
US7981446B2 (en) Pharmaceutical compositions and methods for delivering nucleic acids into cells
Wojciechowski et al. Nucleobase modifications in peptide nucleic acids
Panigrahi et al. Cyclic peptides nanospheres: A ‘2-in-1′ self-assembled delivery system for targeting nucleus and cytoplasm
JP2016130232A (ja) オリゴヌクレオチド
JP7373834B2 (ja) インベージョン複合体の形成方法
JP4719670B2 (ja) N−myc発現腫瘍におけるヒトN−myc遺伝子のアンチセンスおよびアンチジーンペプチド核酸(PNA)による選択的阻害法
JP2024534216A (ja) Rnaアフィニティー精製のための組成物および方法
ES2565344T3 (es) Semianticuerpos con auto-ensamblaje
US11865181B2 (en) Peptidic materials that traffic efficiently to the cell cytosol and nucleus
CN102627690B (zh) 一对转录激活子样效应因子核酸酶及其编码基因与应用
Efimov et al. DNA mimics based on pyrrolidine and hydroxyproline
JP2022014707A (ja) キャリアペプチドフラグメントおよびその利用
CN113272429A (zh) 肌抑素信号抑制剂
US20050250110A1 (en) PNA conjugate for treating chronic myeloid leukemia (CML)

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220523

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230328

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230329

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230523

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230620

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230810

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231003

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231017

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7373834

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150