JP2021013365A - 融合タンパク質、物質製造方法、ベクター、形質転換細胞、空気入りタイヤの製造方法及びゴム製品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そのような課題を解決する手段の1つとして、本発明者らは、ゴム合成酵素であるシス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)familyに属するタンパク質をゴム粒子に結合させ、酵素反応を行うことにより、ゴム粒子内にポリイソプレノイド(天然ゴム)を蓄積できることを見出した(例えば、WO2017/002818参照)。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、特殊な植物のみが保持しているゴム粒子の代わりとして、全ての植物が有する油滴(lipid droplet)を使用することに想到した。
図1に示すように、油滴はリン脂質と膜タンパク質(例えば、オレオシンやlipid−droplet associated protein(LDAP)/small rubber particle protein(SRPP)familyに属するタンパク質)により構成された膜構造を有し、内部にトリアシルグリセロールが貯蔵されている。
ゴム粒子と油滴の類似点としては、膜が脂質一重膜で構成されていること、内部に疎水性の物質が貯蔵されていること、膜上に複数のタンパク質が存在することが挙げられる。そのため、ゴム粒子に結合するような酵素であれば、油滴にも同様に結合するのではないかと考えていたが、実際は、ゴム粒子に結合する酵素であっても油滴には結合しないことが判明した。
ゴム粒子に結合する能力を有するRubber Elongation Factor(REF)は脂質によって結合する能力が異なることが報告されている(非特許文献4)。
そこで、ゴム合成酵素など、疎水性化合物を合成する酵素活性を有し、かつ、それ自体に本来油滴に結合する能力を有しない酵素の油滴への結合能力を向上させるために、疎水性化合物を合成する酵素活性を有するアミノ酸配列と、アンカーとなるような油滴に結合可能なアミノ酸配列(例えば、油滴に元々存在しているタンパク質由来のアミノ酸配列)とを融合させることとした。
しかしながら、疎水性化合物を合成する酵素活性を有するアミノ酸配列と、油滴に結合可能なアミノ酸配列とを融合した場合であっても、使用する油滴結合タンパク質の種類によっては油滴への結合ができない場合や融合の方法によっては油滴上において十分な酵素活性は得られなかった。
使用する油滴結合タンパク質によって、油滴に結合しない場合がある原因について、鋭意検討した結果、油滴結合タンパク質には、油滴形成時に元々膜に結合しているClassIタンパク質と油滴形成後に結合するClassIIタンパク質に分類され、ClassIタンパク質では油滴形成後にタンパク質を油滴に結合させることはできず、形成後の油滴にタンパク質を結合させるためにはClassIIタンパク質を使用する必要があることが分かった。
また、融合タンパクにおいて酵素活性が失活する原因について、鋭意検討した結果、両アミノ酸配列の間にリンカー配列を配することにより、具体的には、図2に示す構造を有する融合タンパク質とすることにより、油滴上において十分な酵素活性が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、油滴(lipid droplet)に結合可能なアミノ酸配列(第1アミノ酸配列)と、疎水性化合物を合成する酵素活性を有するアミノ酸配列(第2アミノ酸配列)とを有し、前記第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列とがリンカー配列(第3アミノ酸配列)を介して融合しており、第2アミノ酸配列の酵素活性が保持されている融合タンパク質に関する。
[1]配列番号5で表されるアミノ酸配列
[2]配列番号5で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列
[3]配列番号5で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
そのため、該融合タンパク質を油滴と共に用いることにより、該融合タンパク質は油滴に結合し、該融合タンパク質により合成された疎水性化合物を油滴内に蓄積させることが可能となる。
そして、該融合タンパク質は油滴を有する細胞において好適に使用可能なタンパク質であるが、油滴は、原核生物にも真核生物にも存在するため、該融合タンパク質は幅広い細胞において使用することができ、幅広い細胞において疎水性化合物の生産量を向上できる。
また、該融合タンパク質をコードする遺伝子を導入したベクターは、遺伝子組換え技術により細胞に導入することで疎水性化合物の生産量を向上させることができ、該ベクター若しくは該融合タンパク質をコードする遺伝子が導入された形質転換細胞では、疎水性化合物の生産量を向上させることができる。
本発明の融合タンパク質は、油滴(lipid droplet)に結合可能なアミノ酸配列(第1アミノ酸配列)と、疎水性化合物を合成する酵素活性を有するアミノ酸配列(第2アミノ酸配列)とを有し、前記第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列とがリンカー配列(第3アミノ酸配列)を介して融合しており、第2アミノ酸配列の酵素活性が保持されている。
前記の通り、本発明の融合タンパク質は、図2に示す構造を有するため、疎水性化合物を合成する酵素活性を有しつつ、油滴に結合可能であり、油滴上において十分な酵素活性が得られる。これにより、本来は油滴上で行うことができない酵素反応を油滴上で行うことができるようになる。
ここで、本発明の融合タンパク質は、図2に示す通り、N末端側から、第1アミノ酸配列、第3アミノ酸配列、第2アミノ酸配列をこの順で有していても、C末端側から、第1アミノ酸配列、第3アミノ酸配列、第2アミノ酸配列をこの順で有していてもよい。
第2アミノ酸配列は、疎水性化合物を合成する酵素活性を有するアミノ酸配列である。
前記で例示した疎水性化合物に対応する酵素(疎水性化合物を合成する酵素活性を有する酵素)としては、特に限定されないが、ゴム合成酵素、リコペンシクラーゼ、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)合成酵素等が挙げられる。なかでも、ゴム合成酵素が好ましい。
ゴム合成酵素は、通常、それ自体に油滴に結合する能力を有しないため、疎水性化合物を合成する酵素活性を有し、それ自体に油滴に結合する能力を有しない酵素に該当する。
また、本明細書において、トランス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)familyに属するタンパク質は、イソプレノイド化合物の鎖長をtrans型に延長する反応を触媒する酵素である。
また、本明細書において、シス型プレニルトランスフェラーゼ(CPT)familyに属するタンパク質は、イソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素である。
具体的には、例えば、植物では、図3に示すようなポリイソプレノイド生合成経路によってポリイソプレノイドが生合成されるが、当該経路のうち、CPTfamilyに属するタンパク質は、図3中の点線の枠で囲まれた部分の反応を触媒する酵素と考えられている。CPTfamilyに属するタンパク質の特徴としては、Cis IPPS domain(NCBI Accession No.cd00475)に含まれるアミノ酸配列を有することである。
なお、前記マルチプルシーケンスアライメントは、WO2017/002818に記載の方法により実施できる。
DGNX1RX2AKK (A)
(前記アミノ酸配列(A)中、X1及びX2は同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す。)、又は、該アミノ酸配列(A)と、X1及びX2を除く7アミノ酸残基のうちの5アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有するアミノ酸配列であることがより好ましい。更に好ましくは、前記アミノ酸配列(A)中、X1がH、GもしくはRを表し、また、X2がW、F、もしくはYを表すことである。
TX11X12AFSX13X14NX15X16RX17X18X19EV (B)
(前記アミノ酸配列(B)中、X11〜X19は同一又は異なって任意のアミノ酸残基を表す。)、又は、該アミノ酸配列(B)と、X11〜X19を除く8アミノ酸残基のうちの5アミノ酸残基以上が同一である配列同一性を有するアミノ酸配列であることがより好ましい。
更に好ましくは、前記アミノ酸配列(B)中、X11がL、V、A、もしくはIを表し、また、X12がY、F、もしくはHを表し、また、X13がS、T、I、M、もしくはLを表し、また、X14がE、D、もしくはHを表し、また、X15がWもしくはFを表し、また、X16がN、S、K、G、もしくはRを表し、また、X17がP、S、H、G、R、K、もしくはQを表し、また、X18がA、K、S、もしくはPを表し、また、X19がQ、D、R、I、E、H、もしくはSを表すことである。
[11]配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
[12]配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有するタンパク質
[13]配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有するタンパク質
[14]配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
なお、前記CPTfamilyに属するタンパク質としての機能を維持するためには、配列番号3で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1〜60個のアミノ酸、更に好ましくは1〜45個のアミノ酸、特に好ましくは1〜30個のアミノ酸、最も好ましくは1〜15個のアミノ酸、より最も好ましくは1〜6個のアミノ酸、更に最も好ましくは1〜3個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
[11]配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
[12]配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつイソプレノイド化合物の鎖長をcis型に延長する反応を触媒する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA
なお、縮重プライマーは、前記目的タンパク質と共通性の高い配列部位を有する植物由来の配列から作製することが好ましい。
また、前記タンパク質をコードする塩基配列が既知の場合には、その知られている塩基配列から開始コドンを含むプライマー及び終止コドンを含むプライマーを設計し、合成したcDNAを鋳型にしてRT−PCRを行うことで全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定することができる。
第1アミノ酸配列は、油滴(lipid droplet)に結合可能なアミノ酸配列である。
ここで、ClassIIに属するタンパク質とは、油滴結合能を有しながらも、細胞中に油滴非存在時はサイトゾルに局在する特徴を有する油滴結合タンパク質を意味する(Gidda et al., Plant Physiology!, April 2016, Vol. 170, pp. 2052−2071参照)。ClassIに属するタンパク質は、油滴非存在時はER画分に局在するタンパク質であるのに対して、ClassIIに属するタンパク質は、サイトゾルと油滴との移行が可能である。
すなわち、第1アミノ酸配列が、lipid−droplet associated protein(LDAP)/small rubber particle protein(SRPP)familyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列であることが好ましい。
植物としては、上述の植物と同様の植物の他、アボカド(Persea americana)等のPersea属に属する植物、ゴマ(Sesamum indicum)等のSesamum属に属する植物、セイヨウアブラナ(Brassica napus)等のBrassica属に属する植物、ツバキ(Camellia japonica)等のCamellia属に属する植物等が挙げられる。
すなわち、第1アミノ酸配列が、植物由来のLDAP/SRPPfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列であることが好ましく、Persea属、Sesamum属、Brassica属、Camellia属、Hevea属、Sonchus属、Taraxacum属、及びParthenium属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来のLDAP/SRPPfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列であることがより好ましく、Persea属、Hevea属、及びTaraxacum属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来のLDAP/SRPPfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列であることが更に好ましく、アボカド、パラゴムノキ及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来のLDAP/SRPPfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列であることが特に好ましく、アボカド又はパラゴムノキ由来のLDAP/SRPPfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列であることが最も好ましい。
[101]配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
[102]配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
[103]配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
[104]配列番号4で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ油滴への結合能力を有するタンパク質
[105]配列番号10で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ油滴への結合能力を有するタンパク質
[106]配列番号11で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ油滴への結合能力を有するタンパク質
第3アミノ酸配列は、第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列との間に配されるリンカー配列である。前記融合タンパク質は、このリンカー配列の存在により、第1アミノ酸配列の油滴への結合能及び第2アミノ酸配列の酵素活性が保持されている。そして、このリンカー配列は、配列を構成するアミノ酸の種類に特徴があるのではなく、配列を構成するアミノ酸の数に特徴がある。すなわち、第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列との距離を一定以上遠ざけることにより、第1アミノ酸配列の油滴への結合能及び第2アミノ酸配列の酵素活性が保持される。
植物としては、LDAP/SRPPfamilyに属するタンパク質をコードする遺伝子の由来について説明した際の植物と同様の植物等が挙げられる。
[1]配列番号5で表されるアミノ酸配列
なお、配列番号5で表されるアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1〜5個のアミノ酸、更に好ましくは1〜4個のアミノ酸、特に好ましくは1〜3個のアミノ酸、最も好ましくは1〜2個のアミノ酸、より最も好ましくは1個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
なお、配列番号5で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
本発明の融合タンパク質は、第1アミノ酸配列と、第2アミノ酸配列とを有し、第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列とが第3アミノ酸配列を介して融合している。そして、該融合タンパク質は、第3アミノ酸配列(リンカー配列)の存在により、第1アミノ酸配列の油滴への結合能及び第2アミノ酸配列の酵素活性が保持されている。
第1アミノ酸配列〜第3アミノ酸配列の配列を決定すれば、当業者であれば、公知の手法を使用して、融合タンパク質を製造できる。
融合タンパク質の製造方法としては、第1アミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子、第2アミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子、及び第3アミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子のDNA断片を結合し、融合タンパク質をコードする遺伝子を調製する遺伝子調製工程を含むことが好ましい。
そして、無細胞タンパク合成により融合タンパク質を製造する場合は、遺伝子調製工程に加えて更に、融合タンパク質をコードする遺伝子を基にmRNAを調製する工程、融合タンパク質をコードするmRNAを含む無細胞タンパク合成溶液を用いてタンパク質合成を行うことにより、融合タンパク質を製造する工程を含むことが好ましい。
形質転換細胞を使用して融合タンパク質を製造する場合は、遺伝子調製工程に加えて更に、
融合タンパク質をコードする遺伝子を導入した形質転換細胞を調製する工程、
形質転換細胞を培養することにより、融合タンパク質を製造する工程を含むことが好ましい。
本発明の物質(疎水性化合物)製造方法は、前記融合タンパク質を油滴(lipid droplet)に結合させ、第2アミノ酸配列が有する酵素活性により生成物(疎水性化合物)を油滴内に蓄積させる方法である。
前記融合タンパク質は、第1アミノ酸配列の油滴への結合能及び第2アミノ酸配列の酵素活性が保持されているため、油滴に結合し、油滴上で、第2アミノ酸配列が有する酵素活性により酵素反応を触媒し、生成した生成物(疎水性化合物)は油滴内に蓄積される。
また、油滴は、脂質滴、脂肪滴、油体(oil body、oil bodies)、LDとも言う。
植物としては、LDAP/SRPPfamilyに属するタンパク質をコードする遺伝子の由来について説明した際の植物と同様の植物等が挙げられる。
なかでも、Persea属、Sesamum属、Brassica属、及びCamellia属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来であることがより好ましく、Persea属に属する植物由来であることが更に好ましく、アボカド由来であることが特に好ましい。また、第1アミノ酸配列の由来と、油滴の由来が同種であることが好ましい。
遠心分離処理では、例えば、15,000〜20,000×g、15分〜60分の処理を行えばよい。
また、遠心分離処理の処理温度としては、0〜10℃が好ましく、2〜8℃がより好ましく、4℃が特に好ましい。
すなわち、融合タンパク質をコードするmRNAを含む無細胞タンパク合成溶液と油滴とを共存させて(より具体的には、融合タンパク質をコードするmRNAを含む無細胞タンパク合成溶液と油滴とを混合して)タンパク質合成を行うことで、融合タンパク質が結合した油滴を得ることが好ましい。
また、第1アミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子、第2アミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子、及び第3アミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子のDNA断片を結合し、結合したDNA断片の塩基配列情報を基に融合タンパク質をコードする遺伝子のDNA断片を取得して、該DNA断片を基に通常行われるインビトロでの転写反応を行うことによりmRNAを調製してもよい。
前記その他のタンパク質をコードするmRNAとしては、翻訳されてその他のタンパク質を発現することができるものを用いることができる。
遠心分離処理では、例えば、15,000〜20,000×g、15分〜60分の処理を行えばよい。
また、遠心分離処理温度としては、油滴に結合した融合タンパク質のタンパク活性を維持するという観点から、0〜10℃が好ましく、2〜8℃がより好ましく、4℃が特に好ましい。
以上の通り、本発明の物質(疎水性化合物)製造方法は、前記融合タンパク質を油滴に結合させ、第2アミノ酸配列が有する酵素活性により生成物(疎水性化合物)を油滴内に蓄積させる方法である。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、下記の条件(1)〜(7)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定される。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6ml/分
(6)検出器:示差屈折、UV
(7)分子量標準:標準ポリスチレン
この場合、更に、補助酵素を添加することにより、融合タンパク質の酵素活性を増強できることが判明した。
また、第2アミノ酸配列をコードする遺伝子の由来と、NgBRfamilyに属するタンパク質をコードする遺伝子の由来が同種であることが好ましい。
[201]配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
[202]配列番号6で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列からなり、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜貫通領域で膜に結合し、C末端側で他のタンパク質と相互作用する機能を有するタンパク質
[203]配列番号6で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつN末端側に有する1つ又は複数の膜貫通領域で膜に結合し、C末端側で他のタンパク質と相互作用する機能を有するタンパク質
補助酵素としては、融合タンパク質の酵素活性をより増強できるという理由から、下記[204]〜[206]が好ましい。
[204]配列番号6で表されるアミノ酸配列における1位から81位のアミノ酸配列からなるタンパク質
なお、前記機能を維持するためには、配列番号6で表されるアミノ酸配列における1位から81位のアミノ酸配列において、好ましくは1若しくは複数個のアミノ酸、より好ましくは1〜16個のアミノ酸、更に好ましくは1〜12個のアミノ酸、特に好ましくは1〜8個のアミノ酸、最も好ましくは1〜4個のアミノ酸、より最も好ましくは1〜2個のアミノ酸、更に最も好ましくは1個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列であることが好ましい。
なお、前記機能を維持するためには、配列番号6で表されるアミノ酸配列における1位から81位のアミノ酸配列との配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
本発明のゴム製品の製造方法は、前記物質製造方法により(融合タンパク質を結合させた油滴を用いて)ポリイソプレノイドを製造するポリイソプレノイド製造工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法である。
混練工程では、前記製造方法により(融合タンパク質を結合させた油滴を用いて)得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る。
生ゴム製品成形工程では、混練工程により得られた混練物から生ゴム製品(タイヤの場合は生タイヤ)を成形する。
生ゴム製品の成形方法としては特に限定されず、生ゴム製品の成形に用いられる方法を適宜適用すればよい。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、混練工程により得られた混練物を、各タイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、各タイヤ部材を貼り合わせ、生タイヤ(未加硫タイヤ)を成形すればよい。
加硫工程では、生ゴム製品成形工程により得られた生ゴム製品を加硫することにより、ゴム製品が得られる。
生ゴム製品を加硫する方法としては特に限定されず、生ゴム製品の加硫に用いられる方法を適宜適用すればよい。例えば、ゴム製品が空気入りタイヤの場合、生ゴム製品成形工程により得られた生タイヤ(未加硫タイヤ)を加硫機中で加熱加圧して加硫することにより空気入りタイヤが得られる。
本発明のベクターは、前記融合タンパク質をコードする遺伝子を導入したベクターである。
このようなベクターを細胞に導入して形質転換を行うことにより、当該ベクターに含まれる、融合タンパク質をコードする遺伝子が発現し、当該細胞におけるポリイソプレノイド等の疎水性化合物の生産量を向上させることが可能となる。
また、本発明のベクターは、必要に応じて、補助酵素をコードする遺伝子の塩基配列を含んでいてもよい。
例えば、本発明のベクターを植物等の細胞に導入することにより、前記融合タンパク質を発現するように形質転換された形質転換細胞が得られる。すなわち、前記融合タンパク質をコードする遺伝子を導入した形質転換細胞が得られる。そして、当該形質転換細胞では、前記融合タンパク質が発現することにより、前記融合タンパク質をコードする遺伝子が導入された細胞内で新たに該タンパク質が有する所定の酵素活性等の機能が発揮されて、融合タンパク質は細胞内に存在する油滴に結合し、疎水性化合物(例えば、ポリイソプレノイド)を合成でき、結果的に当該細胞におけるポリイソプレノイド等の疎水性化合物の生産量を向上させることができる。例えば、第2アミノ酸配列として、シス型プレニルトランスフェラーゼfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列を使用した場合、ポリイソプレノイド(天然ゴム)の生産量を向上させることができる。そして、合成された疎水性化合物は細胞内の油滴内に蓄積する。
また、必要に応じて、本発明のベクターと共に、補助酵素をコードする遺伝子の塩基配列を含むベクターを植物等の細胞に導入してもよい。なお、もちろん、本発明のベクターとして、補助酵素をコードする遺伝子の塩基配列を含むベクターを使用してもよい。
一般的に生物を用いた疎水性化合物の合成は困難であるが、前記宿主に前記融合タンパク質をコードする遺伝子を導入することにより、容易に疎水性化合物の合成を行うことができるようになる。
なお更には、本発明のベクターを、前記DNAを導入する方法などにより、微生物、酵母、動物細胞、昆虫細胞等の、生物体、生物体の一部、器官、組織や培養細胞、スフェロプラスト、プロトプラストなどに導入することによって、形質転換細胞を調製することも可能である。
本発明のゴム製品の製造方法は、前記物質製造方法により(前記融合タンパク質をコードする遺伝子を導入した形質転換細胞を用いて)ポリイソプレノイドを製造するポリイソプレノイド製造工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法である。
混練工程では、前記物質製造方法により(前記融合タンパク質をコードする遺伝子を導入した形質転換細胞を用いて)得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る。
なお、前記形質転換細胞からの油滴の採取方法は特に制限されず、通常行われる方法を採用することができるが、例えば、形質転換細胞の一部を切断し、切断した組織を粉砕し、有機溶媒を用いて抽出して採取したりすることができる。
前記採取された油滴は、固化工程に供される。固化する方法としては、特に限定されず、エタノール、メタノール、アセトン等のポリイソプレノイド(天然ゴム)を溶解しない溶媒に油滴を添加する方法や油滴に酸を添加する方法等が挙げられる。固化工程を行うことにより、油滴からゴム(天然ゴム)を固形分として回収できる。得られたゴム(天然ゴム)は、必要に応じて乾燥してから使用すればよい。
生ゴム製品成形工程では、本発明において上述した工程と同様である。
加硫工程は、本発明において上述した工程と同様である。
パラゴムノキのラテックスからホットフェノール法により、Total RNAを抽出した。ラテックス6mLに100mM酢酸ナトリウム緩衝液6mL、10%SDS溶液1mLを添加し、さらに65℃で予温しておいた水飽和フェノールを12mL添加した。65℃で5分間インキュベートしたのち、ボルテックスで撹拌し、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った。遠心後、上清を新しいチューブに移し、フェノール:クロロホルム(1:1)溶液12mLを添加し、2分間振盪撹拌した。撹拌後、再度、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った後、上清を新しいチューブに移し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)溶液12mLを添加し、2分間振盪撹拌した。撹拌後、再度、室温、7000rpmで10分間遠心分離を行った後、上清を新しいチューブに移し、3M酢酸ナトリウム溶液1.2mLとイソプロパノール13mLを添加し、ボルテックスで撹拌した。Total RNAを沈殿させるために、−20℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、4℃、15000rpmで10分間遠心し、上清を取除くことでTotal RNAの沈殿を回収した。回収したTotal RNAは70%エタノールで2度洗浄したのち、RNase freeの水で溶解させた。
回収したTotal RNAをもとに、cDNAを合成した。cDNAの合成はPrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit(Takara)の説明書に従って行った。
作製した1st strand cDNAを鋳型にCPT、NgBR及びSRPP遺伝子の取得を行った。PCRはKOD−plus−Neo(TOYOBO)を使用し、説明書に従って行った。PCRは、98℃で10秒、58℃で30秒、68℃で1分を1サイクルとして、35サイクル行った。
CPT遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー1:5’− tttggatccgatggaattatacaacggtgagagg−3’
プライマー2:5’− tttgcggccgcttattttaagtattccttatgtttctcc−3’
を使用した。
NgBR遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー3:5’− tttctcgagatggatttgaaacctggagctg −3’
プライマー4:5’− tttctcgagtcatgtaccataattttgctgcac −3’
を使用した。
更にNgBRの1−81アミノ酸部分の遺伝子の取得は、先に取得したNgBr遺伝子を鋳型にプライマーとして、
プライマー33:5’− aaaactcgagatggatttgaaacctggagc −3’
プライマー34:5’− ttactagttcaagcttcttccactatctaccaca−3’
を使用して取得した。
SRPP遺伝子の取得は、プライマーとして、
プライマー5:5’− tttctcgagatggctgaagaggtggag−3’
プライマー6:5’− tttggatccttatgatgcctcatctcc−3’
を使用した。
株式会社庄定から購入したメキシコ産のアボカド(Hass)を用いた。このアボカドは−80℃で保存していた。アボカドを液体窒素中で破砕し、TRIzol Reagent(Invitrogen)を用いてTotal RNAを抽出した。続いて糖沈殿を行った。100μlのRNA溶液に10μlの3M NaOAcを添加し、氷上で1時間静置した。その後、13,000×g、4℃で15分遠心し、上清を回収した。上清に250μlの100%エタノールを添加し、−30℃で1時間静置した。再び13,000×g、4℃で10分遠心し、上清を回収したのち70%エタノールを添加し、13,000×g、4℃で5分遠心した。上清を捨て、乾燥させたのちにDEPCを50μl添加した。このRNAをFast Gene Scriptase II(NIPPON Genetics EUROPE)を使用してcDNAを合成した。
得られたcDNAを鋳型にKOD−Plus−Neo(TOYOBO)によるPCRを行い、LDAP1、LDAP2のDNA断片を増幅した。プライマーは下記の組み合わせで行った。
LDAP1遺伝子の場合は、プライマーとして、
プライマー7:5’− tcgaggatcccatggcagaagcagatgcaaaactgc−3’
プライマー8:5’− gcatactagttcaattgactacctcggatgtggtc−3’
を使用した。
LDAP2遺伝子の場合は、プライマーとして、
プライマー9:5’− tcgaggatcccatggcggaaaaagaaggaaggc−3’
プライマー10:5’− gcatactagttcattcagctgcaactgcaacg−3’
を使用した。
上述の方法と同様の手法により、シロイヌナズナから、CPT遺伝子(AtCPT5)が得られた。得られた遺伝子について、その配列を同定し、全長の塩基配列及びアミノ酸配列を同定した。AtCPT5の塩基配列を配列番号9に示した。AtCPT5のアミノ酸配列を配列番号3に示した。
〔〔無細胞系発現用LDAP1、LDAP2、SRPPコンストラクトの作製〕〕
前述で得られたLDAP1&2遺伝子、SRPP遺伝子を無細胞発現用プラスミドpEU−E01−His−TEV−MCS−N2 Vector (CellFree Science,Matsuyama,Japan)に導入した。LDAP1&2遺伝子は、マルチクローニングサイトのBamHI―SpeIサイトに、SRPP遺伝子は、XhoI−BamHIサイトに導入した。
前述で得られたHRT1、HRBP(1−81)遺伝子を無細胞発現用プラスミドpEU−E01−His−TEV−MCS−N2 Vectorに導入した。HRT1遺伝子は、マルチクローニングサイトのBamHI−NotIサイトに、HRBP(1−81)はXhoI−SpeIサイトに導入した。
HRT1のN末端側に油滴結合タンパク質を融合させた融合タンパク質のためのコンストラクトを作製するために、LDAP1&2とSRPPを以下のプライマーを用いてPCRをし直し、前述したpEU−E01−His−TEV−MCS−N2 VectorにHRT1を導入したpEU−His−N2−HRT1コンストラクトに導入した。LDAP1とSRPPはマルチクローニングサイトのEcoRV−BamHIサイトに、LDAP2はXhoI−BamHIサイトに導入した。これにより、HRT1のN末端側に油滴結合タンパク質を融合させた融合タンパク質のためのコンストラクトを作製できた。
HRT1と融合させるためのLDAP1遺伝子増幅の場合は、プライマーとして、
プライマー11:5’− agtcagatatctcatggcagaagcagatgcaaaac−3’
プライマー12:5’− tgactggatcctcattgactacctcggatgtggtc−3’
を使用した。
HRT1と融合させるためのLDAP2遺伝子増幅の場合は、プライマーとして、
プライマー13:5’− agtcactcgagatggcggaaaaagaaggaagg−3’
プライマー14:5’− tgactggatcctcttcagctgcaactgcaacgtc−3’
を使用した。
HRT1と融合させるためのSRPP遺伝子増幅の場合は、プライマーとして、
プライマー15:5’− agtcagatatctcatggctgaagaggtggaggaag−3’
プライマー16:5’− tgactggatcctctgatgcctcatctccaaacacc−3’
を使用した。
前述したLDAP1をpEU−His−N2−HRT1に導入したpEU−His−N2−LDAP1−HRT1をもとに、前述で獲得したAtCPT5遺伝子を以下のプライマーを用いてPCRし直し、BamHIとNotIで処理し、同様の酵素処理によりHRT1遺伝子を抜いたベクターに導入することで、LDAP1のC末端側にAtCPT5を導入した。(LDAP1−AtCPT5)
LDAP1と融合させるためのAtCPT5遺伝子増幅(LDAP1−AtCPT5順)の場合は、プライマーとして、
プライマー17:5’− AGTCAGGATCCCATGTTGTCATTCTCTCTTCTC−3’
プライマー18:5’− TGACTGCGGCCGCGTCAAACCCGACAGCCAAATC−3’
を使用した。
LDAP1と融合させるためのAtCPT5獲得時(AtCPT5‐LDAP1順)AtCPT5用には、プライマーとして、
プライマー19:5’− agtcagatatctcatgttgtctattctctcttctcttttat−3’
プライマー20:5’− tgactggatcctcaacccgacagccaaatcg−3’
を使用した。
LDAP1用には、上記プライマー7、プライマー8を使用した。
東京工業大学大学院生命理工学研究科生体システム専攻の太田啓之教授よりNobusawa et al.(2017)3にて使用されたpGFP−L4HPBのプラスミドを戴き、そこに含まれるリンカー配列をPCRの鋳型として使用した。
ここで、そのリンカーはphmAG1−MCLinker vector(Medical & Biological Laboratories)に含まれていた配列を流用したものである。
LDAP1とリンカー配列は、Overlap extension PCR法を利用し、以下のプライマーを用いて結合させた(LDAP1−リンカー、リンカー−LDAP1)。
LDAP1−リンカー融合用(オーバーラップPCR)の場合、
LDAP1側では、プライマーとして、
プライマー21:5’− tcgaggatcccatggcagaagcagatgcaaaactgc−3’
プライマー22:5’− cggaattaccggtattgactacctc−3’
を使用し、
リンカー側では、プライマーとして、
プライマー23:5’− gaggtagtcaataccggtaattccg−3’
プライマー24:5’− tgactgcggccgcgccccttgggtcgatcctcc−3’
を使用し、LDAP1−リンカー融合配列を得た。
リンカー−LDAP1融合用(オーバーラップPCR)の場合、
LDAP1側では、プライマーとして、
プライマー25:5’− gacccaagggatggcagaag−3’
プライマー26:5’− gcatactagttcaattgactacctcggatgtggtc−3’
を使用し、
リンカー側では、プライマーとして、
プライマー27:5’− agtcagcggccgcaccggtaattccgctgacg−3’
プライマー28:5’− cttctgccatcccttgggtc−3’
を使用し、リンカー−LDAP1融合配列を得た。
AtCPT5−リンカーLDAP1−の順で結合する際は、前述したオーバーラップPCRで得たリンカー‐LDAP1融合配列をpEU−E01−His−TEV−MCS−N2 VectorのNotIとSpeIのサイトに導入し、プライマー17と18を使用して増幅したAtCPT5をBamHIとNotIのサイトに導入した。
リンカー‐LDAP1にAtCPT5融合時にAtCPT5遺伝子を増幅する場合は、プライマーとして、
プライマー29:5’− agtcagcggccgcatgttgtctattctctcttcctcttttatc−3’
プライマー30:5’− tgactactagttcaaacccgacagccaaatc−3’
を使用した。
これらは前述の方法と同様のやり方で作製した。なお、HRT1は以下のプライマーを用いてPCRし直して用いた。
LDAP1−リンカーにHRT1融合時にHRT1遺伝子を増幅する場合は、プライマーとして、
プライマー31:5’− agtcagcggccgcatggaattatacaacggtgagagg−3’
プライマー32:5’− tgactactagtttattttaagtattccttatgtttctcc−3’
を使用した。
リンカー−LDAP1と融合する際はpEU−E01−His−TEV−MCS−N2 VectorのBamHI−NotIにHRT1遺伝子を導入した前記ベクターのNotIとSpeIのサイトに前述したオーバーラップPCRで得たリンカー−LDAP1融合配列を融合することで作製した。
なお、作製した各コンストラクトにより、表6等に示すアミノ酸配列の組み合わせの各タンパク質を合成できることを確認した。
アボカド中果皮から油滴(LD)を抽出した。まず、アボカド(Persea americana)の中果皮10gをBuffer A 20mL(アボカドの2倍量)(下表)とともにブレンダーで破砕し、乳鉢を用いてさらに破砕した。破砕溶液をMiraclothでろ過し、ろ液を15,000×g、4℃で30分遠心分離した。上層に浮遊したFat padを回収し、再懸濁してBuffer B(下表)を5mL加え、15,000×g、4℃で30分遠心分離した。再度、Fat padを回収し、Buffer Bを加えて15,000×g、4℃で30分遠心分離した。続いて、LDの粒子径で分離するため、Fat padを回収し、1,000×g、4℃で10分遠心分離した後、シリンジを用いて、下層の溶液を回収した。この溶液を15,000×g、4℃で30分遠心分離し、下層を除去したのち、TD Buffer(下表)を60μL添加し、LD溶液とした。
WEPRO7240H Expression Kit(ENDEXT Technology, CellFree Science)を用いて、前記方法で作製したコンストラクトからmRNAを合成した。以下の組成で37℃、3時間反応させた。
前記方法で作製したmRNAを用いて各タンパク質を、前記方法で精製したLD上で発現させるため、コムギ胚芽由来無細胞タンパク質発現キットWEPRO7240H Expression Kit(ENDEXT Technology, CellFree Sciences)を用いて翻訳反応を行った。
はじめに前記方法で作製したmRNA 7.5μLに1×DB 15μLを加え、mRNA Premixを調製した。その後、以下の組成で翻訳反応溶液を調製した。
ここで、表6において補助酵素を使用した例では、補助酵素のmRNAも添加した。
X:LDは12.5 μg分を調製
前記方法で作製した精製LD溶液を[4−14C]IPP(NEC773、Perkin Elmer)を含む以下に示す反応組成で30℃、18時間浴槽内にて振とうした。ただし、精製LD溶液のアッセイに持ち込む量をそろえるため、Gene Specを用いてBradford法によりタンパク質濃度を測定し、タンパク質2μg相当分を持ち込んだ。また、バックグランドを測定するために精製LD溶液の代わりに超純水を加えたサンプルも調製し、同様に振とうした。
X:精製LDは2μg分を調製
結果を表6に示す。
表6の下表より、単独では活性を示さず、HRBPと相互作用することで活性を示すHRT1においても油滴結合タンパク質との融合状態でもその性質を失わないことが分かった。すなわち、HRT1の活性発現に必要なHRBPの作用が、融合タンパク質の状態でも阻害されないこと、補助因子が必要な酵素であっても、融合タンパク質の状態でも活性を発現できることが分かった。
タンパク質発現後の反応溶液、その反応溶液を分画して得られた油滴画分に対してSDS−PAGEの電気泳動を行うことで、タンパク質の発現および精製LD上でタンパク質が発現していたかを確認した。サンプル2μLを2×SDSサンプルバッファー10μL、水8μLと混合したものを20μLずつアプライした。分離ゲルのアクリルアミド濃度は12%(w/v)もしくは15%(w/v)とし、染色にはCoomassie brilliant blue R−250を用いた。
結果を図6〜8に示す。
また、精製LD溶液を用いた反応試験により酵素活性が得られていることから、また、電気泳動の結果からも、油滴に融合タンパク質が結合していることも裏付けられた。
配列番号1:パラゴムノキ由来のHRT1をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号2:パラゴムノキ由来のHRT1のアミノ酸配列
配列番号3:シロイヌナズナ由来のAtCPT5のアミノ酸配列
配列番号4:アボカド由来のLDAP1のアミノ酸配列
配列番号5:リンカー配列のアミノ酸配列
配列番号6:パラゴムノキ由来のHRBPのアミノ酸配列
配列番号7:パラゴムノキ由来のHRBPをコードする遺伝子の塩基配列
配列番号8:アボカド由来のLDAP1をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号9:シロイヌナズナ由来のAtCPT5をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号10:アボカド由来のLDAP2のアミノ酸配列
配列番号11:パラゴムノキ由来のSRPPのアミノ酸配列
配列番号12:パラゴムノキ由来のSRPPをコードする遺伝子の塩基配列
配列番号13:アボカド由来のLDAP2をコードする遺伝子の塩基配列
配列番号14:プライマー1
配列番号15:プライマー2
配列番号16:プライマー3
配列番号17:プライマー4
配列番号18:プライマー5
配列番号19:プライマー6
配列番号20:プライマー7
配列番号21:プライマー8
配列番号22:プライマー9
配列番号23:プライマー10
配列番号24:プライマー11
配列番号25:プライマー12
配列番号26:プライマー13
配列番号27:プライマー14
配列番号28:プライマー15
配列番号29:プライマー16
配列番号30:プライマー17
配列番号31:プライマー18
配列番号32:プライマー19
配列番号33:プライマー20
配列番号34:プライマー21
配列番号35:プライマー22
配列番号36:プライマー23
配列番号37:プライマー24
配列番号38:プライマー25
配列番号39:プライマー26
配列番号40:プライマー27
配列番号41:プライマー28
配列番号42:プライマー29
配列番号43:プライマー30
配列番号44:プライマー31
配列番号45:プライマー32
配列番号46:プライマー33
配列番号47:プライマー34
Claims (19)
- 油滴(lipid droplet)に結合可能なアミノ酸配列(第1アミノ酸配列)と、疎水性化合物を合成する酵素活性を有するアミノ酸配列(第2アミノ酸配列)とを有し、前記第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列とがリンカー配列(第3アミノ酸配列)を介して融合しており、第2アミノ酸配列の酵素活性が保持されている融合タンパク質。
- 前記第1アミノ酸配列が、油滴に結合可能なタンパク質かつ、ClassIIに属するタンパク質由来のアミノ酸配列である請求項1記載の融合タンパク質。
- 前記第2アミノ酸配列が、疎水性化合物を合成する酵素活性を有し、それ自体に油滴に結合する能力を有しない酵素由来のアミノ酸配列である請求項1又は2記載の融合タンパク質。
- 前記第1アミノ酸配列が、lipid−droplet associated protein(LDAP)/small rubber particle protein(SRPP)familyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列である請求項1記載の融合タンパク質。
- 前記第1アミノ酸配列が、植物由来のLDAP/SRPPfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列である請求項1記載の融合タンパク質。
- 前記第1アミノ酸配列が、Persea属、Hevea属、及びTaraxacum属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物由来のLDAP/SRPPfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列である請求項1記載の融合タンパク質。
- 前記第1アミノ酸配列が、アボカド、パラゴムノキ、及びロシアンタンポポからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来のLDAP/SRPPfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列である請求項1記載の融合タンパク質。
- 前記第2アミノ酸配列が、プレニルトランスフェラーゼfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列である請求項1〜7のいずれかに記載の融合タンパク質。
- 前記第2アミノ酸配列が、シス型プレニルトランスフェラーゼfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列である請求項1〜7のいずれかに記載の融合タンパク質。
- 前記第2アミノ酸配列が、Hevea属又はTaraxacum属に属する植物由来のシス型プレニルトランスフェラーゼfamilyに属するタンパク質由来のアミノ酸配列である請求項1〜7のいずれかに記載の融合タンパク質。
- 前記第3アミノ酸配列が、4個以上のアミノ酸からなる配列である請求項1〜10のいずれかに記載の融合タンパク質。
- 前記第3アミノ酸配列が、20〜30個のアミノ酸からなる配列である請求項1〜10のいずれかに記載の融合タンパク質。
- 前記第3アミノ酸配列が、下記[1]〜[3]のいずれかのアミノ酸配列である請求項1〜10のいずれかに記載の融合タンパク質。
[1]配列番号5で表されるアミノ酸配列
[2]配列番号5で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含む配列
[3]配列番号5で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列 - 請求項1〜13のいずれかに記載の融合タンパク質を油滴(lipid droplet)に結合させ、第2アミノ酸配列が有する酵素活性により生成物を油滴内に蓄積させる物質製造方法。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする遺伝子を導入したベクター。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする遺伝子を導入した形質転換細胞。
- 請求項16記載の形質転換細胞を使用して、第2アミノ酸配列が有する酵素活性により生成物を細胞内の油滴内に蓄積させる物質製造方法。
- 請求項14又は17に記載の物質製造方法によりポリイソプレノイドを製造するポリイソプレノイド製造工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生タイヤを成形する生タイヤ成形工程、及び前記生タイヤを加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法。
- 請求項14又は17に記載の物質製造方法によりポリイソプレノイドを製造するポリイソプレノイド製造工程、得られたポリイソプレノイドと、添加剤とを混練して混練物を得る混練工程、前記混練物から生ゴム製品を成形する生ゴム製品成形工程、及び前記生ゴム製品を加硫する加硫工程を含むゴム製品の製造方法。
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