<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、電力変換装置は例えば車両に搭載されている。
図1に示す電力変換装置10は、第1蓄電池100と第2蓄電池110との間に接続されている。第1蓄電池100と、第2蓄電池110とは、複数の単位電池を直列接続することにより構成された組電池である。例えば、各単位電池は、リチウムイオン蓄電池である。電力変換装置10は、第1インバータ20と、回転電機30と、第2インバータ40と、第1切替スイッチ61と、第2切替スイッチ62とを備えている。本実施形態において、第1切替スイッチ61及び第2切替スイッチ62は、常開式のリレーである。
第1蓄電池100の正極端子には、第1切替スイッチ61を介して第1インバータ20の第1端子21が接続されており、負極端子には、第1インバータ20の第2端子22が接続されている。第1端子21には、第1正極母線23が接続されている。第2端子22には、第1負極母線24が接続されている。第1正極母線23と第1負極母線24とは、第1上アームスイッチである第1,第3,第5スイッチQ1,Q3,Q5と、第1下アームスイッチである第2,第4,第6スイッチQ2,Q4,Q6との直列接続体により接続されている。本実施形態では、第1〜第6スイッチQ1〜Q6はIGBTである。
具体的には、第1,第3,第5スイッチQ1,Q3,Q5の高電位側端子である各コレクタは、第1正極母線23に接続されており、低電位側端子である各エミッタは、第2,第4,第6スイッチQ2,Q4,Q6の各コレクタに接続されている。第2,第4,第6スイッチQ2,Q4,Q6の各エミッタは、第1負極母線24に接続されている。なお、第1〜第6スイッチQ1〜Q6には、第1〜第6ダイオードD1〜D6が逆並列に接続されている。
第1インバータ20において、第1正極母線23と第1負極母線24とは、第1コンデンサ25により接続されている。なお、第1コンデンサ25は、第1インバータ20の外側に設けられていてもよい。
第2蓄電池110の正極端子には、第2切替スイッチ62を介して第2インバータ40の第3端子41が接続されており、負極端子には、第2インバータ40の第4端子42が接続されている。第3端子41には、第2正極母線43が接続されている。第4端子42には、第2負極母線44が接続されている。第2正極母線43と第2負極母線44とは、第2上アームスイッチである第7,第9,第11スイッチQ7,Q9,Q11と、第2下アームスイッチである第8,第10,第12スイッチQ8,Q10,Q12との直列接続体により接続されている。本実施形態では、第7〜第12スイッチQ7〜Q12はIGBTである。
具体的には、第7,第9,第11スイッチQ7,Q9,Q11の各コレクタは、第2正極母線43に接続されている。第7,第9,第11スイッチQ7,Q9,Q11の各エミッタは、第8,第10,第12スイッチQ8,Q10,Q12の各コレクタに接続されている。第8,第10,第12スイッチQ8,Q10,Q12の各エミッタは、第2負極母線44に接続されている。なお、第7〜第12スイッチQ7〜Q12には、第7〜第12ダイオードD7〜D12が逆並列に接続されている。
第2インバータ40において、第2正極母線43と第2負極母線44とは、第2コンデンサ45により接続されている。なお、第2コンデンサ45は、第2インバータ40の外側に設けられていてもよい。
回転電機30は、車載主機としての3相回転電機であり、そのロータが、車両の駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、回転電機30は、電機子巻線であるU相巻線31、V相巻線32及びW相巻線33を有している。
U相巻線31の第1端は、第1インバータ20において第1スイッチQ1と第2スイッチQ2との接続点に接続されており、第2端は、第2インバータ40において第7スイッチQ7と第8スイッチQ8との接続点に接続されている。V相巻線32の第1端は、第1インバータ20において第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続点に接続されており、第2端は、第2インバータ40おいて第9スイッチQ9と第10スイッチQ10との接続点に接続されている。W相巻線33の第1端は、第1インバータ20において第5スイッチQ5と第6スイッチQ6との接続点に接続されており、第2端は、第2インバータ40において第11スイッチQ11と第12スイッチQ12との接続点に接続されている。
電力変換装置10は、制御部50(操作部に相当)を備えている。制御部50は、第1インバータ20の第1〜第6スイッチQ1〜Q6をオンオフ操作するゲート信号GS1〜GS6と、第2インバータ40の第7〜第12スイッチQ7〜Q12をオンオフ操作するゲート信号GS7〜GS12とを出力する。なお、制御部50が提供する各機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
電力変換装置10は、第1蓄電池100の状態を監視する第1監視装置70と、第2蓄電池110の状態を監視する第2監視装置71とを備えている。第1監視装置70は、第1蓄電池100の端子間電圧である第1電池電圧Vb1を検出し、第2監視装置71は、第2蓄電池110の端子間電圧である第2電池電圧Vb2を検出する。また、第1監視装置70は、第1蓄電池100の温度である第1電池温度Tb1を検出し、第2監視装置71は、第2蓄電池110の温度である第2電池温度Tb2を検出する。各検出値は、制御部50に入力される。本実施形態では、第1監視装置70が、第1残存容量検出部及び第1温度検出部に相当する。第2監視装置71が、第2残存容量検出部及び第2温度検出部に相当する。
電力変換装置10は、回転電機30のU,V,W相巻線31,32,33に流れる電流である巻線電流IMrを検出する電流センサ72を備えている。電力変換装置10は、第1インバータ20の温度を検出する第1温度センサ73と、第2インバータ40の温度を検出する第2温度センサ74とを備えている。本実施形態では、第1温度センサ73は、第1インバータ20の第1〜第6スイッチQ1〜Q6のうち、いずれかのスイッチの温度を第1スイッチ温度Tinv1として検出する。具体的には例えば、第1温度センサ73は、第1〜第6スイッチQ1〜Q6の温度のうち、最も高い温度を第1スイッチ温度Tinv1として検出する。
第2温度センサ74は、第2インバータ40の第7〜第12スイッチQ7〜Q12のうち、いずれかのスイッチの温度を第2スイッチ温度Tinv2として検出する。具体的には例えば、第2温度センサ74は、第2インバータ40の第7〜第12スイッチQ7〜Q12の温度のうち、最も高い温度を第2スイッチ温度Tinv2として検出する。各検出値は、制御部50に入力される。第1,第2温度センサ73,74はインバータ温度検出部に相当する。
第1インバータ20の第1負極母線24と、第2インバータ40の第2負極母線44とは、母線間スイッチ60により接続されている。本実施形態において、母線間スイッチ60は、制御部50により操作される常開式のリレーである。母線間スイッチ60がオン操作される場合、第1負極母線24と第2負極母線44とは電気的に導通され、母線間スイッチ60がオフ操作される場合、第1負極母線24と第2負極母線44とは電気的に遮断される。
第1切替スイッチ61及び第2切替スイッチ62も、制御部50により操作される。第1切替スイッチ61がオン操作される場合、第1蓄電池100と第1インバータ20とは電気的に導通され、第1切替スイッチ61がオフ操作される場合、第1蓄電池100と第1インバータ20とは電気的に遮断される。
第2切替スイッチ62がオン操作される場合、第2蓄電池110と第2インバータ40とは電気的に導通され、第2切替スイッチ62がオフ操作される場合、第2蓄電池110と第2インバータ40とは遮断される。
制御部50は、第1電池温度Tb1と第2電池温度Tb2とのうち、低い方の温度である判定対象温度Tb3が低温側判定値TLよりも低い場合に、第1蓄電池100と、第2蓄電池110との温度を上昇させるべく昇温制御を実施する。制御部50は、第1蓄電池100及び第2蓄電池110それぞれの状態に応じて、第1昇温制御、第2昇温制御及び第3昇温制御のいずれかを実施する。
次に、第1昇温制御について説明する。第1昇温制御では、第1蓄電池100からの放電電流を第2蓄電池110に流す第1通電処理と、第2蓄電池110からの放電電流を第1蓄電池100に流す第2通電処理とが交互に実施される。
図2は、第1昇温制御において、電力変換装置10を、第1,第2インバータ20,40のU相に着目して簡略化した等価回路図である。図2において、第1スイッチQ1及び第2スイッチQ2の接続点と、第7スイッチQ7及び第8スイッチQ8の接続点とがU相巻線31により接続されており、Hブリッジ回路が形成されている。
第1昇温制御では、まず、制御部50は、母線間リレー操作信号、第1リレー操作信号及び第2リレー操作信号をオン指令に設定する。母線間リレー操作信号は、母線間スイッチ60のオン操作又はオフ操作を指示する信号である。第1リレー操作信号は、第1切替スイッチ61のオン操作又はオフ操作を指示する信号である。第2リレー操作信号は、第2切替スイッチ62のオン操作又はオフ操作を指示する信号である。
制御部50は、第1通電処理として、第1蓄電池100の電気エネルギを第2蓄電池110に移動させるべく、第1インバータ20の各スイッチと第2インバータ40の各スイッチとをオンオフ操作する。U相に着目すると、制御部50は、第1インバータ20の第1,第2スイッチQ1,Q2のデューティ比と、第2インバータ40の第7,第8スイッチQ7,Q8のデューティ比とを調整することにより、第1蓄電池100から第2蓄電池110に流れる電流を制御する。
制御部50は、第2通電処理として、第2蓄電池110の電気エネルギを第1蓄電池100に移動させるべく、第1インバータ20の各スイッチと第2インバータ40の各スイッチとをオンオフ操作する。U相に着目すると、制御部50は、第1インバータ20の第1,第2スイッチQ1,Q2のデューティ比と、第2インバータ40の第7,第8スイッチQ7,Q8のデューティ比とを調整することにより、第2蓄電池110から第1蓄電池100に流れる電流を制御する。
第1,第2通電処理が実施されることにより、第1,第2蓄電池100,110には充放電電流が流れ、第1,第2蓄電池100,110が昇温される。この際、第1蓄電池100と第2蓄電池110との間で電気エネルギが相互に移動するため、電気エネルギの消費が抑えられる。
次に、図3を用いて、第2昇温制御について説明する。図3は、第2昇温制御において、電力変換装置10を、第1,第2インバータ20,40のU相に着目して簡略化した等価回路図である。第2昇温制御では、第1蓄電池100からの放電電流を第2コンデンサ45に流す第3通電処理と、第2コンデンサ45からの放電電流を第1蓄電池100に流す第4通電処理とが交互に実施される。
第2昇温制御では、まず、制御部50は、母線間リレー操作信号及び第1リレー操作信号をオン指令に設定し、第2リレー操作信号をオフ指令に設定する。制御部50は、第3通電処理として、第1蓄電池100の電気エネルギを第2コンデンサ45に移動させるべく、第1インバータ20の各スイッチと第2インバータ40の各スイッチとをオンオフ操作する。制御部50は、第4通電処理として、第2コンデンサ45の電気エネルギを第1蓄電池100に移動させるべく、第1インバータ20の各スイッチと第2インバータ40の各スイッチとをオンオフ操作する。U相に着目すると、制御部50は、第2インバータ40の第7スイッチQ7をオン操作し、第8スイッチQ8をオフ操作した状態で、第1インバータ20の第1,第2スイッチQ1,Q2をそのデューティ比を調整しつつオンオフ操作することにより、第1蓄電池100及び第2コンデンサ45に流れる電流を制御する。
第2昇温制御が実施されることにより、第1蓄電池100には充放電電流が流れ、第1蓄電池100が昇温される。この際、第1蓄電池100と第2コンデンサ45との間で電気エネルギが相互に移動するため、電気エネルギの消費が抑えられる。
次に、図4を用いて、第3昇温制御について説明する。図4は、第1昇温制御において、電力変換装置10を、第1,第2インバータ20,40のU相に着目して簡略化した等価回路図である。第3昇温制御では、第1コンデンサ25からの放電電流を第2蓄電池110に流す第5通電処理と、第2蓄電池110からの放電電流を第1コンデンサ25に流す第6通電処理とが交互に実施される。
第3昇温制御では、まず、制御部50は、母線間リレー操作信号及び第2リレー操作信号をオン指令に設定し、第1リレー操作信号をオフ指令に設定する。制御部50は、第5通電処理として、第1コンデンサ25の電気エネルギを第2蓄電池110に移動させるべく、第1インバータ20の各スイッチと第2インバータ40の各スイッチとを、オンオフ操作する。制御部50は、第6通電処理として、第2蓄電池110の電気エネルギを第1コンデンサ25に移動させるべく、第1インバータ20の各スイッチと第2インバータ40の各スイッチとをオンオフ操作する。U相に着目すると、制御部50は、第1インバータ20の第1スイッチQ1をオン操作し、第2スイッチQ2をオフ操作した状態で、第2インバータ40の第7,第8スイッチQ7,Q8をそのデューティ比を調整しつつオンオフ操作することにより、第2蓄電池110に流れる電流を制御する。
第3昇温制御が実施されることにより、第2蓄電池110には充放電電流が流れ、第2蓄電池110が昇温される。この際、第2蓄電池110と第1コンデンサ25との間で電気エネルギが相互に移動するため、電気エネルギの消費が抑えられる。
次に、図5を用いて、制御部50が行う昇温制御の機能ブロック図を説明する。制御部50は、指令値生成部51と、電流偏差算出部52と、PI制御部53と、モード切替部54と、第1PWM生成部55と、第2PWM生成部56と、第1通流制御部57と、第3PWM生成部58と、第2通流制御部59と、第1反転器75と、第2反転器76と、第3反転器77と、第4反転器78と、第5反転器79とを備えている。
指令値生成部51は、昇温制御時におけるU,V,W相巻線31,32,33の指令電流を生成する。本実施形態では、指令値生成部51は、第1蓄電池100又は第2蓄電池110の昇温必要量に応じて指令電流IM*を生成する。本実施形態では、昇温必要量は、目標温度から、第1電池温度Tb1及び第2電池温度Tb2のうち低い方の温度を減算した値である。図6に示すように、指令値生成部51は、昇温制御の1周期Tcにおいて、正弦波状に変化する指令電流IM*を生成する。具体的には、指令値生成部51は、第1期間P1において、正の半波となる指令電流IM*を生成し、第2期間P2において、負の半波となる指令電流IM*を生成する。第1期間P1は、例えば第1通電処理が実施される期間であり、第2期間P2は、例えば第2通電処理が実施される期間である。本実施形態では、U,V,W相巻線31,32,33に流れる電流について、第1インバータ20に接続されている第1端側から、第2インバータに接続されている第2端側の向きに電流が流れる場合を正とし、第2端側から第1端側の向きに電流が流れる場合を負としている。
本実施形態では、指令値生成部51は、指令電流IM*の1周期Tcにおいて、指令電流IM*のゼロクロスタイミングに対して、正の指令電流IM*と負の指令電流IM*とが点対称になるように指令電流IM*を生成する。これにより、指令電流IM*のゼロアップクロスタイミングからゼロダウンクロスタイミングまでの第1期間P1と、指令電流IM*のゼロダウンクロスタイミングからゼロアップクロスタイミングまでの第2期間P2とが同じ長さ(=Tc/2)とされる。また、1周期Tcにおいて、第1領域の面積S1と第2領域の面積S2とが等しくなる。第1領域S1は、1周期Tcにおいて、指令電流IM*のゼロアップクロスタイミングからゼロダウンクロスタイミングまでの時間軸と、正の指令電流IM*とで囲まれる領域である。第2領域は、1周期Tcにおいて、指令電流IM*のゼロダウンクロスタイミングからゼロアップクロスタイミングまでの時間軸と、負の指令電流IM*とで囲まれる領域である。「S1=S2」に設定されることにより、1周期Tcにおける第1蓄電池100及び第2蓄電池110の充放電電流の収支を合わせることができる。
図5の説明に戻り、指令値生成部51により生成された指令電流IM*は、電流偏差算出部52に入力される。電流偏差算出部52は、指令電流IM*から巻線電流IMrを減算することにより、電流偏差ΔIMを算出する。
電流偏差算出部52により算出された電流偏差ΔIMは、PI制御部53に入力される。PI制御部53は、電流偏差ΔIMを0にフィードバック制御するための操作量として、デューティ指令値D*を算出する。デューティ指令値D*は、第1,第3,第5スイッチQ1,Q3,Q5及び第8,第10,第12スイッチQ8,Q10,Q12の1スイッチング周期Tswにおけるオン指令Tonの比率(=Ton/Tsw)を定める値である。
モード切替部54は、第1,第2蓄電池100,110の状態に応じて、第1昇温制御、第2昇温制御及び第3昇温制御のいずれかの選択結果を選択信号SCとして出力する。本実施形態では、モード切替部54は、第1電池電圧Vb1及び第2電池電圧Vb2が共に、残存容量判定値Tv以上であれば、第1昇温制御を実施すると判定し、選択信号SCを第1PWM生成部55に出力する。モード切替部54は、第1電池電圧Vb1が残存容量判定値Tv以上であり、かつ第2電池電圧Vb2が残存容量判定値Tvよりも小さい場合、第2昇温制御を実施すると判定し、選択信号SCを第2PWM生成部56及び第1通流制御部57に出力する。モード切替部54は、第1電池電圧Vb1が残存容量判定値Tvよりも小さく、第2電池電圧Vb2が残存容量判定値Tv以上である場合、第3昇温制御を実施すると判定し、選択信号SCを第3PWM生成部58及び第2通流制御部59に出力する。
残存容量判定値Tvは、昇温制御を実施した場合に、第1,第2蓄電池100,110の残存容量を示すSOCが定格残存容量の下限値となる場合における第1,第2蓄電池1100,110の端子間電圧である。SOC(State Of Charge)は、蓄電池の満充電時の容量に対する、蓄電池の残存容量の比であり、0%から100%の間の値を取る。
PI制御部53からのデューティ指令値D*は、第1PWM生成部55に入力される。第1PWM生成部55は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されている場合、デューティ指令値D*に基づいて、第1操作信号を生成する。本実施形態では、ハイ状態の第1操作信号がスイッチのオン指令であり、ロー状態の第1操作信号がスイッチのオフ指令である。
第1スイッチQ1のゲートに出力される第1操作信号が第1ゲート信号GS1であり、第3スイッチQ3のゲートに出力される第1操作信号が第3ゲート信号GS3であり、第5スイッチQ5のゲートに出力される第1操作信号が第5ゲート信号GS5である。第8スイッチQ8のゲートに出力される第1操作信号が第8ゲート信号GS8であり、第10スイッチQ10のゲートに出力される第1操作信号が第10ゲート信号GS10であり、第12スイッチQ12のゲートに出力される第1操作信号が第12ゲート信号GS12である。本実施形態では、第1,第3,第5,第8,第10,第12ゲート信号GS1,GS3,GS5,GS8,GS10,GS12は同期している。
PWM生成部55からの第1操作信号は、第1反転器75にも入力される。第1反転器75は、第1操作信号の論理を反転させることにより、第2操作信号を生成する。本実施形態では、ハイ状態の第2操作信号がスイッチのオン指令であり、ロー状態の第2操作信号がスイッチのオフ指令である。
第2スイッチQ2のゲートに出力される第2操作信号が第2ゲート信号GS2であり、第4スイッチQ4のゲートに出力される第2操作信号が第4ゲート信号GS4であり、第6スイッチQ6のゲートに出力される第2操作信号が第6ゲート信号GS6である。第7スイッチQ7のゲートに出力される第2操作信号が第7ゲート信号GS7であり、第9スイッチQ9のゲートに出力される第2操作信号が第9ゲート信号GS9であり、第11スイッチQ11のゲートに出力される第11操作信号が第11ゲート信号GS11である。本実施形態では、第2,第4,第6,第7,第9,第11ゲート信号GS2,GS4,GS6,GS7,GS9,GS11は同期している。
モード切替部54が第2昇温制御を選択した場合、選択信号SCは第2PWM生成部56及び第1通流制御部57に入力される。PI制御部53からのデューティ指令値D*は、第2PWM生成部56に入力される。第2PWM生成部56は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されている場合、デューティ指令値D*に基づいて、第3操作信号を生成する。第1スイッチQ1のゲートに出力される第3操作信号が第1ゲート信号GS1であり、第3スイッチQ3のゲートに出力される第3操作信号が第3ゲート信号GS3であり、第5スイッチQ5のゲートに出力される第5操作信号が第5ゲート信号GS5である。
第2PWM生成部56からの第3操作信号は、第2反転器76にも入力される。第2反転器76は、第3操作信号の論理を反転させることにより、第4操作信号を生成する。第2スイッチQ2のゲートに出力される第4操作信号が第2ゲート信号GS2であり、第4スイッチQ4のゲートに出力される第4操作信号が第4ゲート信号GS4であり、第6スイッチQ6のゲートに出力される第4操作信号が第6ゲート信号GS6である。
第1通流制御部57は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されている場合、ハイ状態の第5操作信号を生成する。第2昇温制御では、第7スイッチQ7のゲートに出力される第5操作信号が第7ゲート信号GS7であり、第9スイッチQ9のゲートに出力される第5操作信号が第9ゲート信号GS9であり、第11スイッチQ11のゲートに出力される第5操作信号が第11ゲート信号GS11である。
第1通流制御部57からの第5操作信号は、第3反転器77にも入力される。第3反転器77は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されている場合、第5操作信号の論理を反転させることにより、第6操作信号を生成する。第8スイッチQ8のゲートに出力される第6操作信号が第8ゲート信号GS8であり、第10スイッチQ10のゲートに出力される第6操作信号が第10ゲート信号GS10であり、第12スイッチQ12のゲートに出力される第6操作信号が第12ゲート信号GS12である。
モード切替部54が昇温制御として第3昇温制御を選択した場合、選択信号SCは第3PWM生成部58及び第2通流制御部59に入力される。PI制御部53からのデューティ指令値D*は、第3PWM生成部58に入力される。第3PWM生成部58は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されている場合、デューティ指令値D*に基づいて、第7操作信号を生成する。第7スイッチQ7のゲートに出力される第7操作信号が第7ゲート信号GS7であり、第9スイッチQ9のゲートに出力される第7操作信号が第9ゲート信号GS9であり、第11スイッチQ11のゲートに出力される第7操作信号が第11ゲート信号GS11である。
第3PWM生成部58からの第7操作信号は、第4反転器78にも入力される。第4反転器78は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されている場合、第7操作信号の論理を反転させることにより、第8操作信号を生成する。第3昇温制御では、第8スイッチQ8のゲートに出力される第7操作信号が第8ゲート信号GS8であり、第10スイッチQ10のゲートに出力される第7操作信号が第10ゲート信号GS10であり、第12スイッチQ12のゲートに出力される第7操作信号が第12ゲート信号GS12である。
第2通流制御部59は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されている場合、ハイ状態の第9操作信号を生成する。第3昇温制御では、第1スイッチQ1のゲートに出力される第9操作信号が第1ゲート信号GS1であり、第3スイッチQ3のゲートに出力される第9操作信号が第3ゲート信号GS3であり、第5スイッチQ5のゲートに出力される第9操作信号が第5ゲート信号GS5である。
第2通流制御部59からの第9操作信号は、第5反転器79にも入力される。第5反転器79は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されている場合、第9操作信号の論理を反転させることにより、ロー状態の第10操作信号を生成する。第3昇温制御では、第2スイッチQ2のゲートに出力される第10操作信号が第2ゲート信号GS2であり、第4スイッチQ4のゲートに出力される第10操作信号が第4ゲート信号GS4であり、第6スイッチQ6のゲートに出力される第10操作信号が第6ゲート信号GS6である。
図7は、第1昇温制御に係る電力変換装置10の動作を説明するタイミングチャートである。図7(a)は巻線電流IMrを示す。図7(b)は第1蓄電池100に流れる電流Icd1を示し、図7(c)は第2蓄電池110に流れる電流Icd2を示す。図7(d)は第1,第3,第5ゲート信号GS1,GS3,GS5を示し、図7(e)は第2,第4,第6ゲート信号GS2,GS4,GS6を示す。図7(f)は第7,第9,第11ゲート信号GS7,GS9,GS11を示し、図7(g)は第8,第10,第12ゲート信号GS8,GS10,GS12を示す。図7の説明では、第1,第3,第5ゲート信号GS1,GS3,GS5のデューティ指令値D*を第1デューティ比Duty1と称し、第7,第9,第11ゲート信号GS7,GS9,GS11のデューティ指令値D*を第2デューティ比Duty2と称す。
第1期間P1では、指令電流IM*に応じて、第1,第3,第5ゲート信号GS1,GS3,G5の第1デューティ比Duty1が増加している。また、第7,第9,第11ゲート信号GS7,GS9,GS11の第2デューティ比Duty2(=1−Duty1)が減少している。第1期間P1では、巻線電流IMrの平均値は、第1,第2デューティ比Duty1,Duty2の組み合わせに応じて正の半波状に変化する。そのため、第1蓄電池100に流れる電流Icd1は正(放電電流)となり、第2蓄電池110に流れる電流Icd2は負(充電電流)となる。
第2期間P2では、指令電流IM*に応じて、第1,第3,第5ゲート信号GS1,GS3,GS5の第1デューティ比Duty1は、増加から減少に転じている。また、第7,第9,第11ゲート信号GS7,GS9,GS11の第2デューティ比Duty2が増加している。第2期間P2では、巻線電流IMrの平均値は第1,第2デューティ比Duty1,Duty2の組み合わせに応じて負の半波状に変化する。そのため、第2蓄電池110に流れる電流Icd2は正(放電電流)となり、第1蓄電池100に流れる電流Icd1は負(充電電流)となる。
図8は、第2昇温制御に係る電力変換装置10の動作を説明するタイミングチャートである。図8(c)は、第2コンデンサ45に流れるコンデンサ電流Icp2を示す。図8(a),図8(b),図8(d)〜図8(g)は、図7(a),図7(b),図7(d)〜図7(g)に対応している。
第2昇温制御では、第7,第9,第11ゲート信号GS7,GS9,GS11がハイ状態に維持され、第8,第10,第12ゲート信号GS8,GS10,GS12がロー状態に維持されている。第1期間P1では、指令電流IM*に応じて、第1,第3,第5ゲート信号GS1,GS3,GS5の第1デューティ比Duty1が変化している。また、第1期間P1では、巻線電流IMrの平均値は第1デューティ比Duty1に応じて正の半波状に変化する。そのため、第1蓄電池100に流れる電流Icd1は正(放電電流)となり、第2コンデンサ45に流れる電流Icp2は負(充電電流)となる。
第2期間P2では、指令電流IM*に応じて、第1,第3,第5ゲート信号GS1,GS3,GS5の第1デューティ比Duty1が変化している。第2期間P2では、巻線電流IMrの平均値は第1デューティ比Duty1に応じて負の半波状に変化する。そのため、第1蓄電池100に流れる電流Icd1は負(充電電流)となり、第2コンデンサ45に流れる電流Icp2は正(放電電流)となる。
図9は、第3昇温制御に係る電力変換装置10の動作を説明するタイミングチャートである。図9(b)は第2蓄電池110に流れる電流Icd2を示し、図9(c)は第1コンデンサ45に流れるコンデンサ電流Icp1を示す。図9(a),図9(d)〜図9(g)は、図7(a),図7(d)〜図7(g)に対応している。
第3昇温制御では、第1,第3,第5ゲート信号GS1,GS3,GS5がハイ状態に維持され、第2,第4,第6ゲート信号GS2,GS4,GS6がロー状態に維持されている。第1期間P1では、指令電流IM*に応じて、第7,第9,第11ゲート信号GS7,GS9,GS11の第2デューティ比Duty2が変化している。また、第1期間P1では、巻線電流IMrの平均値は第2デューティ比Duty2に応じて正の半波状に変化する。そのため、第2蓄電池110に流れる電流Icd2は負(充電電流)となり、第1コンデンサ25に流れる電流Icp1は正(放電電流)となる。
第2期間P2では、指令電流IM*に応じて、第7,第9,第11ゲート信号GS7,GS9,GS11の第2デューティ比Duty2が変化している。第2期間P2では、巻線電流IMrの平均値は第2デューティ比Duty2に応じて負の半波状に変化する。そのため、第2蓄電池110に流れる電流Icd2は正(放電電流)となり、第1コンデンサ25に流れる電流Icp1は負(充電電流)となる。
次に、図10を用いて、制御部50により実施される昇温制御の手順を説明する。図10に示す処理は、制御部50により所定周期で繰り返し実施される。
ステップS11では、第1蓄電池100の温度である第1電池温度Tb1と、第2蓄電池110の温度である第2電池温度Tb2とを取得する。ステップS12では、第1,第2蓄電池100,110の少なくとも一方の昇温要求が生じているか否かを判定する。本実施形態では、第1電池温度Tb1と第2電池温度Tb2とのうち、低い方の温度が低温側判定値TLよりも低いと判定した場合に、少なくとも一方の昇温要求が生じていると判定する。
昇温要求が生じていると判定した場合、ステップS13に進み、第1監視装置70により検出された第1電池電圧Vb1、及び第2監視装置71により検出された第2電池電圧Vb2を取得する。
ステップS14では、母線間リレー操作信号をオン指令に設定することにより、母線間スイッチ60をオン操作する。これにより、第1インバータ20の第1負極母線24と第2インバータ40の第2負極母線44とが接続される。
ステップS15では、指令電流IM*を設定する。ステップS16では、第1電池電圧Vb1と第2電池電圧Vb2とが共に残存容量判定値Tvよりも大きいか否かを判定する。第1蓄電池100の第1電池電圧Vb1と、第2蓄電池110の第2電池電圧Vb2とがともに残存容量判定値Tvよりも大きい場合、第1蓄電池100及び第2蓄電池110の双方を昇温対象にすると判定し、ステップS17に進む。
ステップS17では、第1,第2リレー操作信号をオン指令に設定することにより、第1切替スイッチ61及び第2切替スイッチ62をオン操作する。
ステップS18では、ステップS15で設定した指令電流IM*を用いて第1昇温制御を実施する。第1昇温制御により、第1蓄電池100からの電流が第2蓄電池110に流れる第1通電処理と、第2蓄電池110からの電流が第1蓄電池100に流れる第2通電処理とが交互に実施され、第1,第2蓄電池100,110が昇温される。ステップS18の処理を実施すると、図10の処理を一旦終了する。
一方、ステップS16において否定判定すると、ステップS19に進む。ステップS19では、第1電池電圧Vb1が残存容量判定値Tvよりも大きいか否かを判定する。ステップS19において肯定判定する場合、第1蓄電池100及び第2蓄電池110のうち、第1蓄電池100のみを昇温対象にすると判定し、ステップS20に進む。ステップS20では、第1切替スイッチ61をオン操作し、第2切替スイッチ62をオフ操作する。
ステップS21では第2昇温制御を実施する。第2昇温制御により、第1蓄電池100からの電流が第2コンデンサ45に流れる第3通電処理と、第2コンデンサ45からの電流が第1蓄電池100に流れる第4通電処理とが交互に実施される。ステップS21の詳細については後述する。
一方、ステップS19において否定判定すると、ステップS22に進み、第2電池電圧Vb2が残存容量判定値Tvよりも大きいか否かを判定する。第2電池電圧Vb2が残存容量判定値Tvよりも大きいと判定すると、第1蓄電池100及び第2蓄電池110のうち、第2蓄電池110のみを昇温対象にすると判定し、ステップS23に進む。ステップS23では、第1切替スイッチ61をオフ操作し、第2切替スイッチ62をオン操作する。
ステップS24では、第3昇温制御を実施する。第3昇温制御により、第1コンデンサ25からの電流が第2蓄電池110に流れる第5通電処理と、第2蓄電池110からの電流が第1コンデンサ25に流れる第6通電処理と、とが交互に実施される。第3昇温制御の詳細については後述する。
ステップS22において否定判定する場合、第1,第2蓄電池100,110のいずれに対しても昇温制御が実施できないため、図10の処理を一旦終了する。
一方、ステップS12において否定判定すると、ステップS25に進み、回転電機30の駆動要求が有るか否かを判定する。例えば、車両の起動スイッチがオン操作された場合に、回転電機30の駆動要求があると判定する。駆動要求があると判定する場合、ステップS26に進み、母線間リレー操作信号をオフ指令に設定することにより、母線間スイッチ60をオフ操作する。ステップS27では、回転電機30を駆動すべく第1インバータ20及び第2インバータ40の各スイッチをオンオフ操作する。
ステップS25において否定判定すると、ステップS28に進み、母線間スイッチ60をオフ操作する。そして、図10の処理を一旦終了する。
次に、図11を用いて、ステップS21で実施する第2昇温制御について詳細に説明する。
ステップS30では、第1インバータ20の第1スイッチ温度Tinv1及び第2インバータ40の第2スイッチ温度Tinv2のうち、高いほうの温度である判定対象スイッチ温度TINVが装置温度判定値Twよりも低いか否かを判定する。判定対象スイッチ温度TINVが装置温度判定値Twよりも低いと判定すると、ステップS32に進む。
ステップS32では、第1蓄電池100の第1昇温必要量ΔT1を算出する。具体的には、昇温制御における目標温度Ttから第1電池温度Tb1を減算した値を第1昇温必要量ΔT1として算出する。ステップS32が昇温量算出部に相当する。
ステップS33では、第1昇温必要量ΔT1が昇温判定値Tn以下であるか否かを判定する。第1昇温必要量ΔT1が昇温判定値Tn以下であると判定すると、ステップS34に進む。ステップS34では、降圧動作を実施する。この降圧動作では、第1蓄電池100の電圧を降圧して第2コンデンサ45に供給する第3通電処理と、第2コンデンサ45の電圧を降圧して第1蓄電池100に供給する第4通電処理とを交互に実施する。この場合、図3に示す回路が降圧チョッパ回路として動作する。なお、ステップS33が昇温量判定部に相当する。
一方、ステップS33において、第1昇温必要量ΔT1が昇温判定値Tnよりも大きいと判定すると、ステップS35に進む。ステップS35では、昇圧動作を実施する。この昇圧動作では、第1蓄電池100の電圧を昇圧して第2コンデンサ45に供給する第3通電処理と、第2コンデンサ45の電圧を昇圧して第1蓄電池100に供給する第4通電処理とを交互に実施する。この場合、図3に示す回路が昇圧チョッパ回路として動作する。昇圧動作は、第1蓄電池100及び第2コンデンサ45に供給される電圧を高くすることにより、第1蓄電池100及び第2コンデンサ45に流れる電流を多くし、昇温速度を高くするためのものである。
ステップS30において判定対象スイッチ温度TINVが装置温度判定値Tw以上であると判定すると、ステップS31に進む。ステップS31では、第2昇温制御として、降圧動作を実施中であるか否かを判定する。降圧動作を実施中であると判定すると、ステップS35に進み、降圧動作を昇圧動作に変更する。一方、ステップS31において、降圧動作中でないと判定すると、ステップS34に進み、昇圧動作を降圧動作に変更する。この変更は、降圧動作でオンオフ操作されるスイッチが第1インバータ20のスイッチである一方、昇圧動作でオンオフ操作されるスイッチが第2インバータ40のスイッチであることに鑑みたものである。この変更処理により、所定デューティ比でオンオフ操作されるインバータが変更され、スイッチのオンオフ操作に起因して第1,第2インバータ20,40が過熱状態となることを抑制できる。なお、ステップS34又はステップS35の処理が終了すると、図10のステップS22に進む。
次に、図12を用いて、ステップS24で実施する第2昇温制御について詳細に説明する。
ステップS40では、判定対象スイッチ温度TINVが装置温度判定値Twよりも低いか否かを判定する。判定対象スイッチ温度TINVが装置温度判定値Twよりも低いと判定すると、ステップS42に進む。
ステップS42では、第2蓄電池110の第2昇温必要量ΔT2を算出する。具体的には、目標温度Ttから第2電池温度Tb2を減算した値を第2昇温必要量ΔT2として算出する。ステップS42が昇温量算出部に相当する。
ステップS43では、算出した第2昇温必要量ΔT2が昇温判定値Tn以下であるか否かを判定する。第2昇温必要量ΔT2が昇温判定値Tn以下であれば、ステップS44に進み、降圧動作を実施する。ステップS44の降圧動作では、第1コンデンサ25の電圧を降圧して第2蓄電池110に供給する第5通電処理と、第2蓄電池110の電圧を降圧して第1コンデンサ25に供給する第6通電処理とを交互に実施する。なお、ステップS43が昇温量判定部に相当する。
ステップS43において、算出した第2昇温必要量ΔT2が昇温判定値Tnよりも高い場合、ステップS45に進み、昇圧動作を実施する。ステップS45の昇圧動作では、第1コンデンサ25の電圧を昇圧して第2蓄電池110に供給する第5通電処理と、第2蓄電池110の電圧を昇圧して第1コンデンサ25に供給する第6通電処理とを交互に実施する。
ステップS40において判定対象スイッチ温度TINVが装置温度判定値Tw以上であると判定すると、ステップS41に進む。ステップS41では、第3昇温制御として、降圧動作を実施中であるか否かを判定する。降圧動作を実施中であると判定すると、ステップS45に進み、降圧動作を昇圧動作に変更する。一方、ステップS41において、降圧動作中でないと判定すると、ステップS44に進み、第2昇温制御として、昇圧動作を降圧動作に変更する。
ステップS44又はステップS45の処理が終了すると、図10のステップS28に進む。
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
・制御部50は、第1蓄電池100,第2蓄電池110、第1コンデンサ25及び第2コンデンサ45のうち、昇温制御に必要な電流を相互に流すことができる蓄電池及びコンデンサの組み合わせを、第1蓄電池100及び第2蓄電池110の温度や残存容量に基づいて選択して実施する。これにより、昇温制御の実施に際し、昇温に必要な十分な電流を第1,第2蓄電池100,110に流すことができる。
・制御部50は、第1蓄電池100の残存容量と相関のある第1電池電圧Vb1と第2蓄電池110の残存容量と相関のある第2電池電圧Vb2とが共に高い場合は、第1蓄電池100と第2蓄電池110との間で電気エネルギを相互に交換する第1昇温制御を実施する。制御部50は、第2電池電圧Vb2のみが低い場合は、第1蓄電池100と第2コンデンサ45との間で電気エネルギを相互に交換する第2昇温制御を実施する。制御部50は、第1電池電圧Vb1のみが低い場合は、第2蓄電池110と第1コンデンサ25との間で電気エネルギを相互に交換する第3昇温制御を実施する。これにより、第1,第2蓄電池100,110の残存容量の低下を抑制しつつ、第1,第2蓄電池100,110に対する昇温制御を実施することができる。
・制御部50は、第1蓄電池100及び第2蓄電池110の昇温に必要な必要昇温量に基づいて、降圧動作又は昇圧動作を選択して実施する。これにより、必要昇温量が大きい場合には、各蓄電池100,110と各コンデンサ25,45とのうち、一方から他方へ供給される電圧が高くなることにより、蓄電池に流れる電流が大きくなり、昇温速度が速められる。一方、必要昇温量が小さい場合には、各蓄電池100,110と各コンデンサ25,45とのうち、一方から他方へ供給される電圧が低くなることにより、不必要に大きな電流が流れるのが抑制される。
・制御部50は、昇圧動作中に、第1,第2インバータ20,40の一方の温度が高くなった場合に、昇圧動作を降圧動作に変更する。また、制御部50は、降圧動作中に、第1,第2インバータ20,40の一方の温度が高くなった場合に、降圧動作を昇圧動作に変更する。これにより、昇温制御に伴って第1,第2インバータ20,40が過熱状態となることを抑制できる。
<第1実施形態の変形例>
・制御部50は、ヒステリシス制御により、各操作信号を生成してもよい。図13に示す制御部50において、第1,第2,第3ヒステリシス制御部80,81,82には、電流偏差算出部52からの電流偏差ΔIMが入力される。第1ヒステリシス制御部80は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されると、電流偏差ΔIMに基づいて第1操作信号を生成する。第1反転器75は、第1ヒステリシス制御部80により生成された第1操作信号の論理を反転させることにより、第2操作信号を生成する。第2ヒステリシス制御部81は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されると、電流偏差ΔIMに基づいて第3操作信号を生成する。第2反転器76は、第2ヒステリシス制御部81により生成された第2操作信号の論理を反転させることにより、第4操作信号を生成する。第3ヒステリシス制御部82は、モード切替部54からの選択信号SCが入力されると、電流偏差ΔIMに基づいて第7操作信号を生成する。第4反転器78は、第3ヒステリシス制御部82により生成された第7操作信号の論理を反転させることにより、第8操作信号を生成する。これにより、指令電流IM*に対して±ΔIの幅を持った範囲で巻線電流IMrが制御される。
・第1,第2蓄電池100,110の残存容量として、端子間電圧に代えて、SOCが用いられてもよい。この場合、第1監視装置70は、第1蓄電池100のSOCである第1SOC1を算出し、第2監視装置71は、第2蓄電池110のSOCである第2SOC2を算出する。そして、図10のステップS16,S19,S22において、第1電池電圧Vb1に代えて、第1SOC1を用いて判定を行い、第2電池電圧Vb2に代えて、第2SOC2を用いて判定を行えばよい。
・第1スイッチ温度Tinv1として、第1インバータ20の各スイッチの温度に代えて、第1コンデンサ25の温度が用いられてもよい。また、第2スイッチ温度Tinv2として、第2インバータ40の各スイッチの温度に代えて、第2コンデンサ45の温度が用いられてもよい。
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
本実施形態では、第1蓄電池100の第1電池温度Tb1と、第2蓄電池110の第2電池温度Tb2とに基づいて、第1〜第3昇温制御のうち、いずれかの制御が選択される。
図14は、本実施形態に係る昇温制御の手順を説明するフローチャートである。図14に示す処理は、制御部50により所定周期で繰り返し実施される。
ステップS15において指令電流IM*を設定した後、ステップS50では、第1電池温度Tb1及び第2電池温度Tb2が共に、電池温度判定値Tdよりも低いか否かを判定する。本実施形態では、電池温度判定値Tdは、低温側判定値TLよりも高い値に定められている。
ステップS50において肯定判定すると、第1蓄電池100及び第2蓄電池110の双方を昇温対象にすると判定し、ステップS17に進む。一方、ステップS50において否定判定すると、ステップS51に進み、第1電池温度Tb1が電池温度判定値Tdよりも低いか否かを判定する。第1電池温度Tb1が電池温度判定値Tdよりも低いと判定すると、第1蓄電池100及び第2蓄電池110のうち、第1蓄電池100のみを昇温対象にすると判定し、ステップS20に進む。
一方、ステップS51において否定判定すると、ステップS52に進み、第2電池温度Tb2が電池温度判定値Tdよりも低いか否かを判定する。第2電池温度Tb2が電池温度判定値Tdよりも低いと判定すると、第1蓄電池100及び第2蓄電池110のうち、第2蓄電池110のみを昇温対象にすると判定し、ステップS23に進む。
以上説明した本実施形態では、制御部50は、第1,第2蓄電池100,110のうち第1蓄電池100の温度のみが低い場合は、第1蓄電池100と第2コンデンサ45との間で電気エネルギを相互に交換する第2昇温制御を実施する。一方、第2蓄電池110の温度のみが低い場合は、第2蓄電池110と第1コンデンサ25との間の電気エネルギを相互に交換する第3昇温制御を実施する。これにより、第1,第2蓄電池100,110のうち、昇温が不要な電池に対しては電流を流さないため、昇温制御で必要な消費電力を低減することができる。
<第3実施形態>
第3実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
図15に示すように、電力変換装置11は、回転電機35と、第1インバータ20Aと、第2インバータ40Aと、第3インバータ20Bと、第4インバータ40Bとを備えている。
第1インバータ20Aは、第1蓄電池100Aと、回転電機35との間に接続されている。第2インバータ40Aは,第2蓄電池110Aと、回転電機35との間に接続されている。第3インバータ20Bは,第3蓄電池100Bと、回転電機35との間に接続されている。第4インバータ40Bは、第4蓄電池110Bと、回転電機35との間に接続されている。第1,第3インバータ20A,20Bは、第1実施形態における第1インバータ20と同様の構成であるため、その説明を省略する。第2,第4インバータ40A,40Bは、第1実施形態における第2インバータ40と同様の構成であるため、その説明を省略する。
回転電機35は、第1巻線群と第2巻線群とを有する3相2重巻線式のものである。第1巻線群は、第1U相巻線36Aと、第1V相巻線37Aと、第1W相巻線38Aとにより構成されている。第2巻線群は、第2U相巻線36Bと、第2V相巻線37Bと、第2W相巻線38Bとにより構成されている。
第1巻線群には、第1,第2インバータ20A,40Aが電気的に接続されている。具体的には、第1U相巻線36Aの第1端は、第1インバータ20Aにおいて第1スイッチQ1Aと第2スイッチQ2Aとの接続点に接続されており、第2端は、第2インバータ40Aにおいて第7スイッチQ7Aと第8スイッチQ8Aとの接続点に接続されている。第1V相巻線37Aの第1端は、第1インバータ20Aにおいて第3スイッチQ3Aと第4スイッチQ4Aとの接続点に接続されており、第2端は、第2インバータ40Aおいて第9スイッチQ9Aと第10スイッチQ10Aとの接続点に接続されている。第1W相巻線38Aの第1端は、第1インバータ20において第5スイッチQ5Aと第6スイッチQ6Aとの接続点に接続されており、第2端は、第2インバータ40Aにおいて第11スイッチQ11Aと第12スイッチQ12Aとの接続点に接続されている。
回転電機35の第2巻線群には、第3,第4インバータ20B,40Bが電気的に接続されている。具体的には、第2U相巻線36Bの第1端は、第3インバータ20Bにおいて第1スイッチQ1Bと第2スイッチQ2Bとの接続点に接続されており、第2端は、第4インバータ40Bにおいて第7スイッチQ7Bと第8スイッチQ8Bとの接続点に接続されている。第2V相巻線37Bの第1端は、第3インバータ20Bにおいて第3スイッチQ3Bと第4スイッチQ4Bとの接続点に接続されており、第2端は、第4インバータ40Bおいて第9スイッチQ9Bと第10スイッチQ10Bとの接続点に接続されている。第2W相巻線38Bの第1端は、第3インバータ20Bにおいて第5スイッチQ5Bと第6スイッチQ6Bとの接続点に接続されており、第2端は、第4インバータ40Bにおいて第11スイッチQ11Bと第12スイッチQ12Bとの接続点に接続されている。
なお、図15には、第1蓄電池100Aと第1インバータ20Aとの間、第2蓄電池110Aと第2インバータ40Aとの間、第3蓄電池100Bと第3インバータ20Bとの間、及び第4蓄電池110Bと第4インバータ40Bとの間それぞれに設けられる切替スイッチ200A,210A,200B,210Bを図示した。
本実施形態では、制御部50は、昇温制御により第1巻線群に電流を流す場合、第1母線間スイッチ60Aをオン操作するとともに、第1,第2インバータ20A,40Aの各スイッチをオンオフ操作することにより、第1蓄電池100と第2蓄電池110とに充放電電流を流す。制御部50は、昇温制御により第2巻線群に電流を流す場合、第2母線間スイッチ60Bをオン操作するとともに、第3,第4インバータ20B,40Bの各スイッチをオンオフ操作することにより、第1蓄電池100と第2蓄電池110とに充放電電流を流す。
<第4実施形態>
第4実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
図16に示す電力変換装置10では、第1インバータ20の第1正極母線23と、第2インバータ40の第2正極母線43とが母線間スイッチ63により接続されている。母線間スイッチ63がオン操作される場合、第1正極母線23と第2正極母線43とは電気的に導通され、母線間スイッチ63がオフ操作される場合、第1正極母線23と第2正極母線43とは電気的に遮断される。
なお、本実施形態における昇温制御のうち、第1昇温制御について説明する。図17に示すように、制御部50は、第1PWM生成部90と、第1反転器91と、第2PWM生成部92と、第2反転器93とを備えている。
第1PWM生成部90からの第1操作信号は、第2,第4,第6スイッチQ2,Q4,Q6の各ゲートに入力される。第1反転器91からの第2操作信号は、第1,第3,第5スイッチQ1,Q3,Q5の各ゲートに入力される。これにより、制御部50は、第2,第4,第6スイッチQ2,Q4,Q6を、第3デューティ比Duty3でオンオフ操作し、第1,第3,第5スイッチQ1,Q3,Q5を第4デューティ比(=1−Duyt3)でオンオフ操作する。
第2PWM生成部92からの第3操作信号は、第8,第10,第12スイッチQ8,Q10,Q12の各ゲートに入力される。第2反転器93からの第4操作信号は、第7,第9,第11スイッチQ7,Q9,Q11の各ゲートに入力される。これにより、制御部50は、第8,第10,第12スイッチQ8,Q10,Q12を、第5デューティ比Duty5でオンオフ操作し、第7,第9,第11スイッチQ7,Q9,Q11を第6デューティ比(=1−Duyt5)でオンオフ操作する。
以上説明した本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<その他の実施形態>
・指令電流IM*の設定方法は、図6に示したものに限らない。1周期Tcにおいて指令電流IM*のゼロクロスタイミングに対して正の指令電流IM*と負の指令電流IM*とが点対称になる関係を満たしつつ、例えば、正の指令電流IM*及び負の指令電流IM*それぞれを台形波又は矩形波に設定してもよい。
・指令電流IM*の設定方法としては、上記点対称の関係を満たすものに限らない。例えば、1周期Tcにおいて、指令電流IM*のゼロアップクロスタイミングからゼロダウンクロスタイミングまでの期間と、指令電流IM*のゼロダウンクロスタイミングからゼロアップクロスタイミングまでの期間とが異なるようにし、かつ、第1領域の面積S1と第2領域の面積S2とが等しくなるように指令電流IM*を設定してもよい。この場合であっても、例えば、1周期Tcにおける第1蓄電池100及び第2蓄電池110の充放電電流の収支を合わせることはできる。
・第2昇温制御及び第3昇温制御のうち、いずれか一方が実施されなくてもよい。例えば、第3昇温制御が実施されない場合、第1切替スイッチ61が備えられていなくてもよい。
・母線間スイッチ及び切替スイッチとしては、リレーに限らず、例えば、ソース同士が接続された一対のNチャネルMOSFETが用いられたり、IGBTが用いられたりしてもよい。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。