JP2021012224A - 光学素子、光学系、及び、光学装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】反射防止性能が良好な光学素子を提供する。【解決手段】光学素子は、基材と、前記基材に直接的または間接的に、前記基材側から順に少なくとも第1層、第2層および第3層を有する反射防止膜とを有する光学素子であって、前記第1層は、第1の組成物が硬化してなる第1の硬化物を含有し、前記第2層は、第2の組成物が硬化してなる第2の硬化物を含有し、前記第3層は、無機材料粒子を含有し、前記基材、前記第1層、前記第2層および前記第3層のd線に対する屈折率をそれぞれnS、n1、n2およびn3とした場合、次式nS≧n1≧n2≧n3、1.05≦n3≦1.25を共に満足する。【選択図】図1
Description
本発明は、光学素子、光学系、及び、光学装置に関する。
撮像装置等に用いられるレンズには反射防止膜が形成されている。このような反射防止膜としては、例えば、特許文献1に記載された4層構成の反射防止膜が挙げられる。しかしながら、レンズの曲率半径が大きい場合、従来の反射防止膜を成膜しようとすると、レンズの中心部と周辺部とで反射防止膜の厚さが異なってしまい、レンズ表面全体に亘って所望の反射防止特性を得ることが困難な傾向にあった。
本発明の第1の態様によると、光学素子は、基材と、前記基材に直接的または間接的に、前記基材側から順に少なくとも第1層、第2層および第3層を有する反射防止膜とを有する光学素子であって、前記第1層は、第1の組成物が硬化してなる第1の硬化物を含有し、前記第2層は、第2の組成物が硬化してなる第2の硬化物を含有し、前記第3層は、無機材料粒子を含有し、前記基材、前記第1層、前記第2層および前記第3層のd線に対する屈折率をそれぞれnS、n1、n2およびn3とした場合、次式nS≧n1≧n2≧n3、1.05≦n3≦1.25を共に満足する。
本発明の第2の態様によると、光学系は、第1の態様による光学素子を含む。
本発明の第3の態様によると、光学装置は、第2の態様による光学系を備える。
本発明の第2の態様によると、光学系は、第1の態様による光学素子を含む。
本発明の第3の態様によると、光学装置は、第2の態様による光学系を備える。
(実施の形態)
図1は、本実施の形態の光学素子1の構成例を示す図である。光学素子1は、光学ガラス等の基材10と、反射を低減するための反射防止膜20とを備える。反射防止膜20は、第1層21、第2層22、および第3層23を備え、基材10の表面に形成される。反射防止膜20は、3以上の層から構成されることが好ましく、本実施の形態では、第1層21、第2層22、および第3層23の3層で構成されている。なお、基材10の形状は、特に限定されるものではない。基材10の表面は、平坦な面であってもよいし、曲面であってもよい。反射防止膜20は、基材10の両面にそれぞれ設けられてもよい。
図1は、本実施の形態の光学素子1の構成例を示す図である。光学素子1は、光学ガラス等の基材10と、反射を低減するための反射防止膜20とを備える。反射防止膜20は、第1層21、第2層22、および第3層23を備え、基材10の表面に形成される。反射防止膜20は、3以上の層から構成されることが好ましく、本実施の形態では、第1層21、第2層22、および第3層23の3層で構成されている。なお、基材10の形状は、特に限定されるものではない。基材10の表面は、平坦な面であってもよいし、曲面であってもよい。反射防止膜20は、基材10の両面にそれぞれ設けられてもよい。
本実施の形態では、基材10、第1層21、第2層22、および第3層23のd線(波長587.56nm)に対する屈折率をそれぞれnS、n1、n2、n3とした場合に、nS≧n1≧n2≧n3、および、1.05≦n3≦1.25を満たす。このような条件を満たす光学素子1は、反射防止膜20に入射する光線の反射率を、広い波長範囲で低い値とすることができる。以下、本実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、屈折率とは、特に断らない限り、d線における屈折率をいう。
図1において、第1層21は、基材10の表面に形成され、有機材料からなる第1の硬化物41と無機材料粒子30とを含有して構成される。第2層22は、第1層21に積層して形成され、有機材料からなる第2の硬化物42と無機材料粒子30とを含有して構成される。第3層23は、第2層22に積層して形成され、無機材料粒子30を含有して構成される。第1層21、第2層22、および第3層23は、例えば湿式成膜法によって順次形成される。なお、第1層21は基材10の表面に別の層を介して間接的に形成されてもよい。このように、光学素子1では、基材10に直接的または間接的に、基材10側から順に少なくとも第1層21、第2層22および第3層23が設けられており、第3層23は、基材10から最も遠い(本明細書では最外層という)。
第1の硬化物41および第2の硬化物42は、それぞれエネルギー線硬化樹脂等の有機材料により形成される。エネルギー線硬化樹脂は、紫外線や電子線等のエネルギー線が照射されることで硬化し、第1の硬化物41や第2の硬化物42となる。なお、第1の硬化物41および第2の硬化物42は、熱硬化性樹脂により形成するようにしてもよい。
第1層21、第2層22、および第3層23の各々の層に含まれる無機材料粒子30の屈折率は、第1の硬化物41および第2の硬化物42のいずれの屈折率よりも小さい。本実施の形態では、無機材料粒子30としてMgF2粒子を用いる。なお、無機材料粒子30として、SiO2粒子を用いてもよく、MgF2粒子とSiO2粒子の両方を用いてもよい。
上記の通り、無機材料粒子30の屈折率が、第1の硬化物41および第2の硬化物42のいずれの屈折率より小さい、即ち、屈折率が異なる。従って、第1の硬化物41と無機材料粒子30の含有比(例えば質量比)によって第1層21の屈折率は調整可能であり、第2の硬化物42と無機材料粒子30の含有比(例えば質量比)によって第2層22の屈折率は調整可能である。即ち、第1層21において、無機材料粒子30の第1の硬化物41に対する含有比が大きいほど、第1層21の屈折率は小さくなる。同様に、第2層22において、無機材料粒子30の第2の硬化物42に対する含有比が大きいほど、第2層22の屈折率は小さくなる。本実施の形態では、第1層21における無機材料粒子30の第1の硬化物41に対する質量比は、第2層22における無機材料粒子30の第2の硬化物42に対する質量比より小さい。
第3層23は、無機材料粒子30が非晶質酸化ケイ素系材料などのバインダにより固定されて形成される。本実施の形態の第3層23は、スピンコート法により形成する。例えば、無機材料粒子30を媒質に分散させた溶液を、第1層21と第2層22とが形成された基材10に塗布した後、回転させて溶液の層を形成する。溶液に含有させる無機材料粒子30の濃度や、スピンコートにおける回転速度等の条件を調整することで、第3層23の厚さと第3層23に含有される無機材料粒子30間の間隙(空隙)とが調整される。具体的には、回転数が速いほど第3層23の厚さは薄く、また、無機材料粒子30間の空隙を増加させるほど、第3層23の屈折率を低くすることができる。
このようにして、第3層23の屈折率n3は、1.05〜1.25の範囲内となるように調整される。第1層21の屈折率n1、および第2層22の屈折率n2は、基材10の屈折率nsと第3層23の屈折率n3とに応じて、nS≧n1≧n2≧n3の関係を満たすように適宜選択される。例えば、第1層21および第2層22は、それぞれ1.40≦n1≦1.52、1.30≦n2≦1.40を満たすように形成される。
なお、第1層21は、第1の硬化物41のみを含有してもよい。この場合、第1の硬化物41は、有機材料により構成されていてもよいし、あるいは無機材料により構成されてもよい。また、第2層22は、第2の硬化物42のみを含有してもよい。この場合、第2の硬化物42は、有機材料により構成されていてもよいし、あるいは無機材料により構成されていてもよい。なお、第1の硬化物41と第2の硬化物42とは、同じ材料を用いて構成されてもよいし、異なる材料を用いて構成されてもよい。
図2は、本実施の形態に係る光学素子1の分光反射率の計算結果(シミュレーション結果)を示す図である。シミュレーション条件として、基材10を石英(ns=1.45)、第1層21の屈折率n1=1.40、第1層21の膜厚110nm、第2層22の屈折率n2=1.30、第2層22の膜厚118nm、第3層23の屈折率n3=1.21、第3層23の膜厚127nmとした。
図2において、横軸は波長(単位はnm)を示しており、縦軸は反射率(単位は%)を示している。なお、図2において、光学素子1の分光反射率は、反射防止膜20に対して垂直に入射する光線の反射率を示したものである。
図2において、横軸は波長(単位はnm)を示しており、縦軸は反射率(単位は%)を示している。なお、図2において、光学素子1の分光反射率は、反射防止膜20に対して垂直に入射する光線の反射率を示したものである。
図2に示すように、光学素子1の分光反射率は、波長400〜1600nmの範囲で1%以下となっている。このように、本実施の形態による光学素子1は、広い波長域にわたって低い反射率を実現するが、分光反射率の特性は用途に応じて変更してもよい。例えば、波長400〜700nmの範囲で分光反射率を1%以下とする構成としてもよい。
次に、光学素子1の中心部と外周部の分光反射率について、図3を参照して説明する。図3(a)は、本実施の形態に係る光学素子1の分光反射率の測定条件を説明するための図である。ここでは、基材10として球面レンズを用いた。この球面レンズは、有効直径D=30mm、球面の曲率半径R=16mm、有効直径Dを曲率半径の絶対値|R|で除した値(D/|R|)=1.88である。なお、本明細書において、基材の表面が凸面であれば曲率半径は正の値であり、凹面であれば曲率半径は負の値である。この光学素子1に対して、中心部(図3(a)のT)と外周部(図3(a)のS)のそれぞれにおいて、反射防止膜20に対して垂直に入射する光線の分光反射率の測定を行った。測定結果を、図3(b)に示す。
図3(b)は、光学素子1の分光反射率の測定結果(実測値)を示す図であり、横軸は波長(単位はnm)を示しており、縦軸は反射率(単位は%)を示している。また、図3(b)において、実線は、光学素子1の中心部(図3(a)のTに対応)の分光反射率の測定結果であり、点線は、光学素子1の外周部(図3(a)のSに対応)の分光反射率の測定結果である。光学素子1の中心部において、入射する光線の波長が短くなるのに伴って、反射率が1%まで上昇する波長は、約270nmである。一方、光学素子1の外周部では、反射率が1%まで上昇する波長は、約285nmである。即ち、光学素子1の有効径内において、反射防止膜20に対して垂直に入射する光線の反射率が1%となる短波長側の波長は、光学素子1の中心部と外周部とで約15nmの違いがある。
D/|R|の値が1.88とは異なる値の基材10を用いた光学素子1についても、上記と同様にして分光反射率の測定を行った。その結果、本実施の形態による光学素子1では、D/|R|の値が1.4以上、即ち、D/|R|の値が比較的大きい光学素子1においても、反射率が1%となる短波長側波長の変動幅は70nmより小さいことが確認された。即ち、D/|R|が1.4以上のように比較的大きな値の基材10であっても、反射防止膜20が膜厚のバラツキを小さく抑えられた状態で基材10に成膜されていることがわかる。
このように、本実施の形態による光学素子1は、有効直径Dが大きく、曲率半径の絶対値|R|が小さい形状を有する基材10であっても、反射防止膜20の膜厚バラツキは小さい。例えば、膜厚バラツキを最小膜厚dminに対する最大膜厚dmaxの比で表すと、最小膜厚dminに対する最大膜厚dmaxの比は1.1以下である。即ち、種々の形状の基材10に膜厚バラツキが小さい反射防止膜20が形成された光学素子を提供できるため、光学設計の自由度を高めることができる。
上述のように、本実施の形態に係る光学素子1は、nS≧n1≧n2≧n3、および、1.05≦n3≦1.25を共に満たすように形成される。これにより、広い波長範囲で低い反射率となる光学素子1を得ることができる。例えば、反射防止膜20に対して垂直入射する光線に対して、波長400〜1600nmの範囲で反射率を1%以下とすることができる。
本実施の形態に係る光学素子1は、カメラや顕微鏡等の光学装置の備えるレンズ等の光学素子1として適用され得る。以下、光学素子1を適用した多光子顕微鏡、撮像装置について説明する。
<多光子顕微鏡>
図4は、本実施の形態に係る光学素子1を用いた光学系を備える多光子顕微鏡100の構成例を示す図である。多光子顕微鏡100は、光学素子1を含む対物レンズ106、集光レンズ108、および結像レンズ110を備える。パルスレーザ装置101は、例えば、波長が近赤外波長(約1000nm)、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を射出する。パルスレーザ装置101から射出された超短パルス光は、所定方向に偏光面を有する直線偏光に変換される。パルス分割装置102は、パルスレーザ装置101からの超短パルス光をさらに短いパルス幅のパルス光に分割して、繰り返し周波数の高い超短パルス光を射出する。
図4は、本実施の形態に係る光学素子1を用いた光学系を備える多光子顕微鏡100の構成例を示す図である。多光子顕微鏡100は、光学素子1を含む対物レンズ106、集光レンズ108、および結像レンズ110を備える。パルスレーザ装置101は、例えば、波長が近赤外波長(約1000nm)、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を射出する。パルスレーザ装置101から射出された超短パルス光は、所定方向に偏光面を有する直線偏光に変換される。パルス分割装置102は、パルスレーザ装置101からの超短パルス光をさらに短いパルス幅のパルス光に分割して、繰り返し周波数の高い超短パルス光を射出する。
ビーム調整部103は、パルス分割装置102から入射される超短パルス光のビーム径を、対物レンズ106の瞳径に合わせて調整する機能を有する。また、ビーム調整部103は、試料Sから発せられる多光子励起光の波長と超短パルス光の波長との軸上の色収差(ピント差)を補正するために、超短パルス光の集束角度および発散角度を調整する機能を有する。さらに、ビーム調整部103は、超短パルス光のパルス幅が光学系を通過する間に群速度分散により広がってしまうのを補正するために、逆の群速度分散を超短パルス光に与えるプリチャープ機能(群速度分散補償機能)等を有する。
ビーム調整部103から射出された超短パルス光は、ダイクロイックミラー104により反射されダイクロイックミラー105を通過し、対物レンズ106により集光されて試料Sに照射される。このとき、走査手段(不図示)を用いることにより、超短パルス光を試料Sの観察面上に走査させてもよい。
試料Sを蛍光観察する場合について説明する。超短パルス光が照射された試料Sでは、超短パルス光の被照射領域およびその近傍において、試料Sを染色した染料の蛍光色素が多光子励起され、赤外波長である超短パルス光より波長が短い蛍光(以下、「観察光」という)を発する。対物レンズ106の方向に発せられた観察光は、対物レンズ106によりコリメートされ、蛍光の波長に応じて、ダイクロイックミラー105により反射されるか、あるいは、ダイクロイックミラー105を透過する。
観察光がダイクロイックミラー105により反射される場合、観察光は蛍光検出部107に入射する。蛍光検出部107は、例えば、バリアフィルタ、PMT(photo multiplier tube:光電子増倍管)等により構成され、観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。超短パルス光を試料Sの観察面において走査する場合には、蛍光検出部107は、超短パルス光の走査に対応して、試料Sの観察面における観察光を検出する。
一方、観察光がダイクロイックミラー105を透過する場合、観察光は走査手段(不図示)によりデスキャンされ、ダイクロイックミラー104を透過する。ダイクロイックミラー104を透過した観察光は、集光レンズ108により集光され、対物レンズ106の焦点位置とほぼ共役な位置に設けられたピンホール109を通過し、結像レンズ110により蛍光検出部111に結像する。蛍光検出部111は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、結像レンズ110により蛍光検出部111の受光面において結像した観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。超短パルス光を試料Sの観察面において走査する場合には、蛍光検出部111は、超短パルス光の走査に対応して、試料Sの観察面における観察光を検出する。なお、ダイクロイックミラー105を光路から外せるように構成することにより、試料Sから対物レンズ106に向けて発した全ての観察光を蛍光検出部111で検出することもできる。
試料Sから対物レンズ106とは逆の方向に発せられた観察光は、ダイクロイックミラー112により反射され、蛍光検出部113に入射する。蛍光検出部113は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、ダイクロイックミラー112により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。超短パルス光を試料Sの観察面において走査する場合には、蛍光検出部113は、超短パルス光の走査に対応して、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
蛍光検出部107、111、113からそれぞれ出力された電気信号は、例えば、コンピュータ(不図示)に入力され、コンピュータは、入力された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示装置(不図示)に表示し、あるいは観察画像のデータを記憶部(不図示)に記憶する。
本実施の形態の光学素子1を用いた光学系を備える多光子顕微鏡100により得られる観察画像について、画質の評価を行った。その結果、多光子顕微鏡100による観察画像の明るさは、現行品による観察画像の明るさに対して約1.35倍となることが確認された。本実施の形態の光学素子1が広い波長範囲にわたって良好な反射防止性能を有し、そのため、多光子顕微鏡100の対物レンズの透過率は、現行のものよりも高いことが確認された。
<撮像装置>
図5は、光学素子1を用いた光学系を備える撮像装置200の構成例を示す斜視図である。撮像装置200(光学装置)は、いわゆるデジタル一眼レフカメラであり、カメラボディ201のレンズマウント(不図示)に撮像レンズ202が着脱自在に取り付けられる。撮像レンズ202は、本実施の形態に係る光学素子1としてのレンズ203を含んで構成されている。
図5は、光学素子1を用いた光学系を備える撮像装置200の構成例を示す斜視図である。撮像装置200(光学装置)は、いわゆるデジタル一眼レフカメラであり、カメラボディ201のレンズマウント(不図示)に撮像レンズ202が着脱自在に取り付けられる。撮像レンズ202は、本実施の形態に係る光学素子1としてのレンズ203を含んで構成されている。
撮像レンズ202のレンズ203を含む各レンズを通過した光は、カメラボディ201の背面側に配置されたマルチチップモジュール206のセンサチップ(固体撮像素子)204上に結像される。センサチップ204は、CMOSイメージセンサー等であり、形成された被写体像を撮像する。センサチップ204は、光量に応じた電気信号を出力する。撮像装置200では、センサチップ204により生成された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示装置に表示し、あるいは観察画像のデータを記憶装置に記憶する。
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)光学素子1は、基材10と、基材10に直接的または間接的に、基材10側から順に少なくとも第1層21、第2層22および第3層23を有する反射防止膜20とを有する光学素子1であって、第1層21は、第1の組成物が硬化してなる第1の硬化物41を含有し、第2層22は、第2の組成物が硬化してなる第2の硬化物42を含有し、第3層23は、無機材料粒子30を含有し、基材10、第1層21、第2層22および第3層23のd線に対する屈折率をそれぞれnS、n1、n2およびn3とした場合、次式、nS≧n1≧n2≧n3、1.05≦n3≦1.25を共に満足する。本実施の形態では、光学素子1に入射する光線に対して、波長400〜1600nmの範囲で反射率を1%以下とすることができる。このため、少ない層数の反射防止膜により、反射防止性能が良好な光学素子1を得ることができる。次に、図6を参照して、実施例について説明する。
(1)光学素子1は、基材10と、基材10に直接的または間接的に、基材10側から順に少なくとも第1層21、第2層22および第3層23を有する反射防止膜20とを有する光学素子1であって、第1層21は、第1の組成物が硬化してなる第1の硬化物41を含有し、第2層22は、第2の組成物が硬化してなる第2の硬化物42を含有し、第3層23は、無機材料粒子30を含有し、基材10、第1層21、第2層22および第3層23のd線に対する屈折率をそれぞれnS、n1、n2およびn3とした場合、次式、nS≧n1≧n2≧n3、1.05≦n3≦1.25を共に満足する。本実施の形態では、光学素子1に入射する光線に対して、波長400〜1600nmの範囲で反射率を1%以下とすることができる。このため、少ない層数の反射防止膜により、反射防止性能が良好な光学素子1を得ることができる。次に、図6を参照して、実施例について説明する。
(実施例1)
図6(a)は、実施例1に係る光学素子1aの構成を示す図である。光学素子1aは以下の手順により作製した。基材10aとして光学ガラスJ-SK11(光ガラス製:屈折率nd=1.56)を用意し、第1面は凹面で曲率半径R=−9mm、第2面は平面に加工し、それぞれの表面に鏡面研磨を施した。直径D=14.2mmであり、D/|R|=1.58である。
図6(a)は、実施例1に係る光学素子1aの構成を示す図である。光学素子1aは以下の手順により作製した。基材10aとして光学ガラスJ-SK11(光ガラス製:屈折率nd=1.56)を用意し、第1面は凹面で曲率半径R=−9mm、第2面は平面に加工し、それぞれの表面に鏡面研磨を施した。直径D=14.2mmであり、D/|R|=1.58である。
第1層21aおよび第2層22aの形成に用いるための有機材料の調製は次の手順により行う。1−プロパノール(和光純薬工業製)に対して、樹脂前駆体としてのジペンタエリスリトールペンタアクリレート(シグマ・アルドリッチ社製)と、光重合開始剤としてのDAROCURE1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を合計添加して混合し、樹脂前駆体を20質量%含有するジペンタエリスリトールペンタアクリレート溶液を調製した。
無機材料粒子30の調整は次の手順により行う。フッ酸と酢酸マグネシウムとをフッ酸/酢酸マグネシウム質量比が1.99となるように用意し、これらをメタノール溶媒中で混合して反応させ合成し、MgF2微粒子を作製した。この時、メタノールの量を調整してMgF2微粒子の含有量が1質量%のMgF2ゾル溶液となるように調製した。次に、このMgF2ゾル溶液を135℃の雰囲気に24時間維持した。このMgF2ゾル溶液中のMgF2微粒子の粒径を測定したところ、平均粒径は20nmであった。さらに、ロータリーエバポレーターを用いてこのMgF2ゾル溶液を濃縮した後、メタノール溶媒を1−プロパノールで溶媒置換して希釈して、MgF2微粒子の含有量が3.8質量%のMgF2微粒子含有溶液を調製した。
上記の、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート溶液とMgF2微粒子含有溶液との質量比が、0.79:10、0.36:10および0:10の3種類の質量比となるように両者を混合することで、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとMgF2との質量比が、それぞれ1:2.4(第1溶液)、1:5.2(第2溶液)および0:1(第3溶液:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートは含有されない)となる塗布液を調製した。
第1層21aの形成は次の手順で行った。スピンコーターに上記基材10を第1面(凹面)が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第1溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第1面に第1溶液の層を形成した。さらに、キセノンフラッシュランプにより30000mJ/cm2の照射エネルギーで紫外光を照射して硬化させることで第1層21aを形成した。形成された第1層21aの厚さは約106nm、屈折率は1.45であった。
第2層22aの形成は次の手順で行った。スピンコーターに第1層21aを形成した上記基材10aを第1面(凹面)が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第2溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第1層21aの上に第2溶液の層を形成した。さらに、キセノンフラッシュランプにより30000mJ/cm2の照射エネルギーで紫外光を照射して硬化させることで第1層21aの上に第2層22aを形成した。形成された第2層22aの厚さは約115nm、屈折率は1.33であった。
第3層23aの形成は次の手順で行った。スピンコーターに第1層21aおよび第2層22aを形成した上記基材10aを第1面(凹面)が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第3溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第2層22aの上に第3溶液の層を形成した。第3溶液の層に含まれる溶剤を揮発させることにより第2層22aの上に第3層23aを形成した。形成された第3層23aの厚さは約127nm、屈折率は1.21であった。
以上の手順により、図6(a)に示すように、基材10aの第1面に、基材10aに近い側から第1層21a、第2層22a、第3層23aの3層からなる反射防止膜20aが形成された。上記の通り、実施例1の反射防止膜20aは、第1層21aおよび第2層22aは、有機材料であるジペンタエリスリトールペンタアクリレートの硬化物に無機材料粒子30であるMgF2微粒子が分散された層である。有機材料に対する無機材料粒子30の質量比は、第1層21aより第2層22aにおいて大きい。また、第3層23aには有機材料は含まれておらず、無機材料粒子30であるMgF2微粒子が互いに吸着した構成の層である。
上記の実施例1の反射防止膜20aの反射率を次の手順で測定した。反射率測定装置に、実施例1において反射防止膜20aを形成した基材10aをセットする。この時、反射率測定装置からの出射ビームは、基材10aの第1面に対して常に垂直入射するように基材10aの姿勢を調整する。基材10aの有効径内の複数個所において反射率を測定する。このようにして、出射ビームの波長を250〜700nmの範囲で変化させながら測定を行った。また、数値計算により、波長350〜1800nmの光に対する反射率を求めた。その結果、波長400〜1600nmの範囲で反射率は1%以下となった。
(実施例2)
図6(b)は、実施例2に係る光学素子1bの構成を示す図である。光学素子1bは以下の手順により作製した。基材10bとして光学ガラスBSC7(HOYA株式会社製:屈折率nd=1.52)を用意し、第1面、第2面をそれぞれ平面に加工し、それぞれの表面に鏡面研磨を施した。直径D=30mmである。
図6(b)は、実施例2に係る光学素子1bの構成を示す図である。光学素子1bは以下の手順により作製した。基材10bとして光学ガラスBSC7(HOYA株式会社製:屈折率nd=1.52)を用意し、第1面、第2面をそれぞれ平面に加工し、それぞれの表面に鏡面研磨を施した。直径D=30mmである。
実施例1と同様の手順により有機材料および無機材料粒子30の調整を行い、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート溶液とMgF2微粒子含有溶液との質量比が、1:0、0.36:10および0:10の3種類の質量比となるように両者を混合することで、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとMgF2との質量比が、それぞれ1:0(第1溶液:MgF2微粒子は含有されない)、1:5.2(第2溶液)および0:1(第3溶液:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートは含有されない)となる塗布液を調製した。
第1層21bの形成は次の手順で行った。スピンコーターに上記基材10bを第1面が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第1溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第1面に第1溶液の層を形成した。さらに、キセノンフラッシュランプにより30000mJ/cm2の照射エネルギーで紫外光を照射して硬化させることで第1層21bを形成した。形成された第1層21bの厚さは約103nm、屈折率は1.52であった。
第2層22bの形成は次の手順で行った。スピンコーターに第1層21bを形成した上記基材10を第1面が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第2溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第1層21bの上に第2溶液の層を形成した。さらに、キセノンフラッシュランプにより30000mJ/cm2の照射エネルギーで紫外光を照射して硬化させることで第1層21bの上に第2層22bを形成した。形成された第2層22bの厚さは約114nm、屈折率は1.33であった。
第3層23bの形成は次の手順で行った。スピンコーターに第1層21bおよび第2層22bを形成した上記基材10を第1面が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第3溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第2層22bの上に第3溶液の層を形成した。第3溶液の層に含まれる溶剤を揮発させることにより第2層22の上に第3層23bを形成した。形成された第3層23bの厚さは約127nm、屈折率は1.21であった。
以上の手順により、図6(b)に示すように、基材10bの第1面に、基材10bに近い側から第1層21b、第2層22b、第3層23bの3層からなる反射防止膜20bが形成された。上記の通り、実施例2の反射防止膜20bは、第1層21bは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの硬化物による層である。第2層22bは、有機材料であるジペンタエリスリトールペンタアクリレートの硬化物に無機材料粒子30であるMgF2微粒子が分散された層である。第3層23bには有機材料は含まれておらず、無機材料粒子30であるMgF2微粒子が互いに吸着した構成の層である。実施例2の光学素子1bの反射率を、実施例1と同様の手順により測定および数値計算を行った。その結果、波長400〜1600nmの範囲で反射率は1%以下となった。
(実施例3)
図6(c)は、実施例3に係る光学素子1cの構成を示す図である。光学素子1cは以下の手順により作製した。基材10cとして光学ガラスE−SK10(光ガラス製:屈折率nd=1.62)を用意し、第1面、第2面をそれぞれ平面に加工し、それぞれの表面に鏡面研磨を施した。直径D=30mmである。
図6(c)は、実施例3に係る光学素子1cの構成を示す図である。光学素子1cは以下の手順により作製した。基材10cとして光学ガラスE−SK10(光ガラス製:屈折率nd=1.62)を用意し、第1面、第2面をそれぞれ平面に加工し、それぞれの表面に鏡面研磨を施した。直径D=30mmである。
実施例1と同様の手順により有機材料および無機材料粒子30の調整を行った。また、メタノール(和光純薬工業株式会社)264gとテトラメトキシオルトシリケート(東京化成工業株式会社)14.8gを三口フラスコに入れ、ホットスターラにて還流しながら75℃で30分間加熱した後、0.1M硝酸(和光純薬工業株式会社)を48g滴下し、更に還流しながら75℃で5時間攪拌してシリカ前駆体溶液を調整した。ジペンタエリスリトールペンタアクリレート溶液とシリカ前駆体溶液とMgF2微粒子含有溶液との質量比が、1:0:0、0:0.85:5、および0:0:1の3種類の質量比となるように混合することで、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとシリカ形成成分とMgF2との質量比が、それぞれ1:0:0(第1溶液:MgF2微粒子は含有されない)、0:0.29:1(第2溶液:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートは含有されない)、および0:0:1(第3溶液:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、シリカ形成成分は含有されない)となる塗布液を調製した。
第1層21cの形成は次の手順で行った。スピンコーターに上記基材10cを第1面が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第1溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第1面に第1溶液の層を形成した。さらに、キセノンフラッシュランプにより30000mJ/cm2の照射エネルギーで紫外光を照射して硬化させることで第1層21cを形成した。形成された第1層21cの厚さは約100nm、屈折率は1.52であった。
第2層22cの形成は次の手順で行った。スピンコーターに第1層21cを形成した上記基材10を第1面が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第2溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第1層21cの上に第2溶液の層を形成した。さらに、オーブンを用いて第2溶液の層を160℃で1時間加熱することにより硬化させ、第1層21cの上に第2層22cを形成した。形成された第2層22cの厚さは約100nm、屈折率は1.38であった。
第3層23の形成は次の手順で行った。スピンコーターに第1層21cおよび第2層22cを形成した上記基材10を第1面が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第3溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第2層22cの上に第3溶液の層を形成した。第3溶液の層に含まれる溶剤を揮発させることにより第2層22の上に第3層23cを形成した。形成された第3層23cの厚さは約127nm、屈折率は1.21であった。
以上の手順により、基材10cの第1面に、基材10cに近い側から第1層21c、第2層22c、第3層23cの3層からなる反射防止膜20cが形成された。上記の通り、実施例3の反射防止膜20cは、第1層21cは、有機材料の硬化物による層である。第2層22cには有機材料は含まれておらず、無機材料の硬化物(シリカ)に無機微粒子30であるMgF2微粒子を含む構成の層である。第3層23cには有機材料は含まれておらず、無機材料粒子30であるMgF2微粒子が互いに吸着した構成の層である。実施例3の光学素子1cの反射率を、実施例1と同様の手順により測定および数値計算を行った。その結果、波長400〜1600nmの範囲で反射率は1%以下となった。
(実施例4)
図6(d)は、実施例4に係る光学素子4dの構成を示す図である。光学素子4dは以下の手順により作製した。基材10dとして球面石英平凸レンズ(シグマ光機製:SLSQ−30−35P、屈折率nd=1.46)を用意した。第1面は凸面で曲率半径R=16.1mm、第2面は平面に加工し、それぞれの表面に鏡面研磨を施した。直径D=30mmであり、D/|R|=1.86である。
図6(d)は、実施例4に係る光学素子4dの構成を示す図である。光学素子4dは以下の手順により作製した。基材10dとして球面石英平凸レンズ(シグマ光機製:SLSQ−30−35P、屈折率nd=1.46)を用意した。第1面は凸面で曲率半径R=16.1mm、第2面は平面に加工し、それぞれの表面に鏡面研磨を施した。直径D=30mmであり、D/|R|=1.86である。
第1層21dおよび第2層22dの形成に用いるための有機材料の調整は次の手順により行う。1−プロパノール(和光純薬工業製)に対して、樹脂前駆体としてのジペンタエリスリトールペンタアクリレート(シグマ・アルドリッチ社製)と光重合開始剤としてのDAROCURE1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を合計添加して混合し、樹脂前駆体を20質量%含有するジペンタエリスリトールペンタアクリレート溶液を調製した。
無機材料粒子30の調整は次の手順により行う。フッ酸と酢酸マグネシウムとをフッ酸/酢酸マグネシウム質量比が1.99となるように用意し、これらをメタノール溶媒中で混合して反応させ合成し、MgF2微粒子を作製した。次に、このMgF2ゾル溶液を135℃の高温および高圧の雰囲気に24時間維持した。このMgF2ゾル溶液中のMgF2微粒子の粒径を測定したところ、平均粒径は20nmであった。さらに、ロータリーエバポレーターを用いてこのMgF2ゾル溶液を濃縮した後、メタノール溶媒を1−プロパノールで溶媒置換して希釈して、MgF2微粒子の含有量が3.8質量%のMgF2微粒子含有溶液を調製した。
上記の、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート溶液とMgF2微粒子含有溶液との質量比が、0.84:10、0.42:10および0:10の3種類の質量比となるように両者を混合することで、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとMgF2との質量比が、それぞれ1:2.3(第1溶液)、1:4.5(第2溶液)および0:1(第3溶液:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートは含有されない)となる塗布液を調製した。
第1層21dの形成は次の手順で行った。スピンコーターに上記基材10dを第1面(凸面)が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第1溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第1面に第1溶液の層を形成した。さらに、キセノンフラッシュランプにより30000mJ/cm2の照射エネルギーで紫外光を照射して硬化させることで第1層21dを形成した。形成された第1層21dの厚さは約60nm、屈折率は1.44であった。
第2層22dの形成は次の手順で行った。スピンコーターに第1層21dを形成した上記基材10dを第1面(凸面)が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第2溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第1層21dの上に第2溶液の層を形成した。さらに、キセノンフラッシュランプにより30000mJ/cm2の照射エネルギーで紫外光を照射して硬化させることで第1層21dの上に第2層22dを形成した。形成された第2層22dの厚さは約87nm、屈折率は1.36であった。
第3層23dの形成は次の手順で行った。スピンコーターに第1層21dおよび第2層22dを形成した上記基材10dを第1面(凸面)が上側になるようにセットし、第1面の中央付近に上記第3溶液を滴下した後、スピンコーターを6000rpmの回転速度で30秒間回転させ、第2層22dの上に第3溶液の層を形成した。第3溶液の層に含まれる溶剤を揮発させることにより第2層22dの上に第3層23dを形成した。形成された第3層23dの厚さは約82nm、屈折率は1.21であった。
以上の手順により、図6(d)に示すように、基材10dの第1面に、基材10dに近い側から第1層21d、第2層22d、第3層23dの3層からなる反射防止膜20dが形成された。上記の通り、実施例4の反射防止膜20dは、第1層21dおよび第2層22dは、有機材料であるジペンタエリスリトールペンタアクリレートの硬化物に無機材料粒子30であるMgF2微粒子が分散された層である。有機材料に対する無機材料粒子30の質量比は、第1層21dより第2層22dにおいて大きい。また、第3層23dには有機材料は含まれておらず、無機材料粒子30であるMgF2微粒子が互いに吸着した構成の層である。
上記の実施例4の反射防止膜20dの反射率を次の手順で測定した。反射率測定装置に、実施例4において反射防止膜20dを形成した基材10dをセットする。この時、反射率測定装置からの出射ビームは、基材10dの第1面に対して常に垂直入射するように基材10dの姿勢を調整する。基材10dの有効径内の複数個所において反射率を測定する。このようにして、出射ビームの波長を250〜700nmの範囲で変化させながら測定を行った。その結果、中心部分と外周部分において、波長280〜700nmの範囲で反射率は1%以下となった。
なお、実施例1〜実施例4において、各層の厚さおよびその分布は、第1溶液、第2溶液および第3溶液の粘度と、スピンコーターの回転数および/または回転時間を適宜設定することで変化させることが可能である。即ち、第1層21から第3層23の形成に関して、スピンコーターの回転数が高いほど、および/または、回転時間が長いほど、形成される層の厚さは小さくなる。また、第1溶液、第2溶液および第3溶液の粘度が小さいほど、形成される層の厚さは小さくなる。実施例1〜実施例3において、第1溶液および第2溶液に関しては、有機材料を調整する際、例えば、1−プロパノールの含有比率を大きくするほど粘度を小さくできる。また、第3溶液に関しては、MgF2を希釈する溶媒の比率を大きくするほど粘度を小さくすることができる。
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
上述の実施の形態では、反射防止膜20を3層により構成する例について説明したが、反射防止膜20を3層以上により構成することも可能である。この場合、3層構成の場合よりも広い波長範囲にわたって低い屈折率とすることが可能であり、広帯域で反射を低減することができる。
上述の実施の形態では、反射防止膜20を3層により構成する例について説明したが、反射防止膜20を3層以上により構成することも可能である。この場合、3層構成の場合よりも広い波長範囲にわたって低い屈折率とすることが可能であり、広帯域で反射を低減することができる。
(変形例2)
上述の実施の形態で説明した光学素子1は、カメラ、顕微鏡、双眼鏡、プロジェクター、表示装置、半導体検査装置など各種の光学装置に使用される各種のレンズ、プリズムなど、光が照射される各種の部材や光学系に適用され得る。
上述の実施の形態で説明した光学素子1は、カメラ、顕微鏡、双眼鏡、プロジェクター、表示装置、半導体検査装置など各種の光学装置に使用される各種のレンズ、プリズムなど、光が照射される各種の部材や光学系に適用され得る。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
1…光学素子、10…基材、20…反射防止膜、21…第1層、22…第2層、23…第3層、30…無機材料粒子、41…第1の硬化物、42…第2の硬化物、100…多光子顕微鏡、200…撮像装置
Claims (23)
- 基材と、前記基材に直接的または間接的に、前記基材側から順に少なくとも第1層、第2層および第3層を有する反射防止膜とを有する光学素子であって、
前記第1層は、第1の組成物が硬化してなる第1の硬化物を含有し、
前記第2層は、第2の組成物が硬化してなる第2の硬化物を含有し、
前記第3層は、無機材料粒子を含有し、
前記基材、前記第1層、前記第2層および前記第3層のd線に対する屈折率をそれぞれnS、n1、n2およびn3とした場合、次式
nS≧n1≧n2≧n3
1.05≦n3≦1.25
を共に満足する、光学素子。 - 請求項1に記載の光学素子において、
前記第3層は最外層である、光学素子。 - 請求項1または2に記載の光学素子において、
前記反射防止膜は、前記第1層、前記第2層および前記第3層のみで構成される、光学素子。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記反射防止膜に対して垂直入射する光線の反射率は、400〜1600nmの波長範囲に亘って1%以下である、光学素子。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第1層は、前記第1の硬化物と、前記第1の硬化物中に配置された前記無機材料粒子とを含有し、
前記第2層は、前記第2の硬化物と、前記第2の硬化物中に配置された前記無機材料粒子とを含有する、光学素子。 - 請求項5に記載の光学素子において、
前記第1層における前記無機材料粒子の前記第1の硬化物に対する質量比は、前記第2層における前記無機材料粒子の前記第2の硬化物に対する質量比以下である、光学素子。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第1層は、前記第1の硬化物のみを含有し、
前記第2層は、前記第2の硬化物と、前記第2の硬化物中に配置された前記無機材料粒子とを含有する、光学素子。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第1層は、前記第1の硬化物のみを含有し、
前記第2層は、前記第2の硬化物のみを含有し、
前記第1の硬化物と前記第2の硬化物とは互いに異なる材料からなる、光学素子。 - 請求項1から8のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第1の硬化物は有機材料からなる、光学素子。 - 請求項1から8のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第1の硬化物は無機材料からなる、光学素子。 - 請求項1から10のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第2の硬化物は有機材料からなる、光学素子。 - 請求項1から10のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第2の硬化物は無機材料からなる、光学素子。 - 請求項1から7のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第1の硬化物と前記第2の硬化物は同じ材料からなる、光学素子。 - 請求項13に記載の光学素子において、
前記第1の硬化物と前記第2の硬化物は有機材料からなる、光学素子。 - 請求項13に記載の光学素子において、
前記第1の硬化物と前記第2の硬化物は無機材料からなる、光学素子。 - 請求項1から請求項15までのいずれか一項に記載の光学素子において、
前記無機材料粒子は、MgF2粒子またはSiO2粒子のいずれか一方または両方であり、
前記第3層は、前記無機材料粒子が非晶質酸化ケイ素系材料により固定されて形成されている、光学素子。 - 請求項9、11、14のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記有機材料は、エネルギー線硬化樹脂である、光学素子。 - 請求項17に記載の光学素子において、
前記エネルギー線硬化樹脂は、DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)である、光学素子。 - 請求項1から請求項18までのいずれか一項に記載の光学素子において、
前記基材の直径をD、前記基材の前記反射防止膜を備える面の曲率半径をRとした場合、次式
D/|R|≧1.4
を満足する、光学素子。 - 請求項1から請求項19までのいずれか一項に記載の光学素子において、
前記光学素子の有効径内において、前記反射防止膜に対して垂直に入射する光線の反射率が1%となる短波長側波長の変動幅が70nmより小さい、光学素子。 - 請求項1から請求項20までのいずれか一項に記載の光学素子において、
前記第1層、前記第2層および前記第3層の各層において、最小膜厚dminに対する最大膜厚dmaxの比は1.1以下である、光学素子。 - 請求項1から請求項21までのいずれか一項に記載の光学素子を含む、光学系。
- 請求項22に記載の光学系を備えた光学装置。
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