JP2021008603A - ゴム組成物およびその製造方法ならびに伝動ベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性と耐摩耗性とを両立できるゴム組成物を提供する。【解決手段】エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)と、有機過酸化物(B)と、シリカ(C)と、エチレン性不飽和結合を含有するシランカップリング剤(D)と、硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)とを組み合わせてゴム組成物を調製する。このゴム組成物で伝動面を形成して伝動ベルトを作製してもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、伝動ベルトの伝動面を形成するためのゴム組成物およびその製造方法ならびに前記ゴム組成物で形成された伝動面を有する伝動ベルトに関する。
従来から、自動車や自動二輪車などの分野で用いる伝動ベルトには、耐久寿命(耐久性)の向上が要求されてきた。伝動ベルトの耐久寿命の決め手となる劣化は、ゴム層の熱劣化によるクラックや、プーリとの接触面の摩耗などであり、耐熱性および耐摩耗性に優れるゴム組成物を用いるという観点で、耐久性に優れた伝動ベルトが提供されてきた。耐熱性に関しては、主鎖に二重結合を含まないゴム成分が採択され、特に、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)を代表としたエチレン−α−オレフィンエラストマーをゴム成分として用いた伝動ベルトが増加している。EPDMの中でも、硫黄による架橋点として導入されているジエン成分(側鎖に二重結合を有する成分)の含有量の小さいグレードが、特に耐熱性に優れるゴム成分として好ましく用いられる。通常、このような二重結合を極力少なくしたゴム成分では、硫黄による架橋が不可能なため、架橋剤として有機過酸化物が用いられる。
その一方で、エチレン−α−オレフィンエラストマーは極性基を持たないため、カーボンブラック、シリカ、短繊維などの補強剤の高充填が可能なゴム成分であり、ゴム組成物の高硬度化、高モジュラス化を目的としても採択される。補強剤としては補強効果に優れるカーボンブラックが汎用されているが、多量に添加するとゴム組成物の自己発熱が大きくなり、伝達効率や耐久性に支障を来たすことがある。その欠点に鑑みて、補強剤としてシリカを用いる手法も知られているが、シリカを多量に添加した場合には、ゴム組成物の粘度上昇により混練性が低下してシリカの分散性が低下する。シリカの分散性が低下すると耐摩耗性に支障を来たす。そのため、通常はシランカップリング剤を配合し、ゴム組成物でのシリカの分散性を向上する方法で、耐熱性だけでなく耐摩耗性も両立できる伝動ベルトが提供されてきた。
特開2006−275191号公報(特許文献1)には、伝動面がEPDM、有機過酸化物、シリカ、沸点が150〜350℃のビニル系シラン化合物が配合されたゴム組成物で構成された摩擦伝動ベルトが開示されている。この文献では、ビニル系シランを含有することにより加工成形性や架橋物の強度を優れたものとし、耐摩耗性、耐久性が優れることが示されている。
特開2006−194322号公報(特許文献2)には、EPDM、短繊維、シリカを含有し、単層構造を有する圧縮ゴム層から構成された摩擦伝動ベルトが開示されている。この文献には、シリカを含有すると剛性が高くなりクラックが発生し易くなるが、シランカップリング剤を含有することによりクラックの発生を抑制することができると記載されている。
特開2011−252510号公報(特許文献3)には、圧縮ゴム層が、EPDM、シリカ、短繊維、シランカップリング剤が配合されたゴム組成物で構成された摩擦伝動ベルトが開示されている。この文献には、シランカップリング剤を含有することによって、シリカの分散性を高め、シリカとゴムの接着力を改善することが記載されている。また、被水時の伝達性能、耐摩耗性に効果があることが記載されている。
特開平10−182885号公報(特許文献4)には、シリカ、アルコキシシランおよび硫黄含有シランカップリング剤を含むゴム組成物が開示されている。この文献には、シリカ配合ゴム組成物の耐熱性、耐摩耗性を損なうことなく加工性が改良されることが記載されている。実施例では、ゴムとして、硫黄架橋系のジエン系ゴムである天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)が使用されている。
特開2006−275191号公報(請求項1、段落[0011]) 特開2006−194322号公報(請求項1、段落[0026]) 特開2011−252510号公報(請求項1および3、段落[0037]) 特開平10−182885号公報(請求項1、段落[0004]、実施例)
近年の伝動ベルトでは、耐熱性向上の要求が大きく、例えば、自動車エンジンの補機駆動システムに用いるVリブドベルトや自動二輪車の無段変速装置に用いる変速ベルト(ローエッジVベルト)などにおいても、耐久性の要因である耐熱性と耐摩耗性との高度な両立が求められている。しかし、特許文献1〜4のゴム組成物では、耐熱性と耐摩耗性との高度な両立はできなかった。
本発明の目的は、耐熱性と耐摩耗性とを両立できるゴム組成物およびその製造方法ならびに前記ゴム組成物で形成された伝動面を有する伝動ベルトを提供することにある。
本発明の他の目的は、耐熱性と耐摩耗性とを高度に両立し、耐久性に優れた伝動ベルトを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、耐久性および伝達効率が高い伝動ベルトを提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)と、有機過酸化物(B)と、シリカ(C)と、エチレン性不飽和結合を含有するシランカップリング剤(D)と、硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)とを組み合わせることにより、耐熱性と耐摩耗性とを両立でき、特に、前記シリカ(C)、前記シランカップリング剤(D)および(E)の配合比、ケイ素原子(シリル基)数、比表面積および分子量を特定の範囲に調整することにより、耐熱性と耐摩耗性とを高度に両立でき、伝動ベルトの耐久性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のゴム組成物は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)、有機過酸化物(B)、シリカ(C)、エチレン性不飽和結合を含有するシランカップリング剤(D)および硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)を含む。前記シランカップリング剤(D)における下記式(1)で表されるXの計算値をX1、シランカップリング剤(E)における下記式(1)で表されるXの計算値をX2としたとき、X1およびX2の合計値は0.0001〜0.0003であってもよい。
X=a×[b/(c×d)] (1)
(式中、aはシリカ100質量部に対するシランカップリング剤の割合を示し、bはシランカップリング剤中のケイ素原子の数を示し、cはシリカのBET比表面積を示し、dはシランカップリング剤の分子量を示す)
前記シランカップリング剤(D)における下記式(2)で表されるYの計算値をY1、シランカップリング剤(E)における下記式(2)で表されるYの計算値をY2としたとき、Y2に対するY1の比率(Y1/Y2)は0.8〜6であってもよい。
Y=a×(b/d) (2)
(式中、a、bおよびdは前記に同じ)
前記エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)のジエン含量は7質量%以下であってもよい。前記シリカ(C)の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して25〜120質量部であってもよい。前記有機過酸化物(B)の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して1〜8質量部であってもよい。前記ゴム組成物は、伝動ベルトの伝動面を形成するために用いてもよい。
本発明には、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)、有機過酸化物(B)、シリカ(C)、エチレン性不飽和結合を含有するシランカップリング剤(D)および硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)を加熱して混練する前記ゴム組成物の製造方法も含まれる。
本発明には、前記ゴム組成物の硬化物で伝動面が形成された伝動ベルトも含まれる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を意味する。
本発明では、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)と、有機過酸化物(B)と、シリカ(C)と、エチレン性不飽和結合を含有するシランカップリング剤(D)と、硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)とを組み合わせているため、耐熱性と耐摩耗性とを両立できる。特に、前記シリカ(C)、前記シランカップリング剤(D)および(E)の配合比、前記シリカの比表面積、前記シランカップリング剤のケイ素原子数および分子量を特定の範囲に調整することにより、耐久寿命を決定づける耐熱性と耐摩耗性とを高度に両立でき、伝動ベルトの耐久性を向上できる。さらに、本発明のゴム組成物は、補強剤の主成分としてシリカを含むため、伝動ベルトの伝動面を形成すると、伝達効率を維持しつつ、耐久性も向上できる。
図1は、実施例で得られたVリブドベルトの耐摩耗性試験のレイアウトを示す概略図である。 図2は、耐久走行試験のレイアウトを示す概略図である。 図3は、実施例で得られたVリブドベルトの伝達ロスを測定するための二軸走行試験のレイアウトを示す概略図である。
[(A)エチレン−α−オレフィンエラストマー]
本発明のゴム組成物(硬化性ゴム組成物)は、ゴム成分として、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)を含む。エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)は、主鎖に二重結合(エチレン性不飽和結合)を含まないため、耐熱性に優れる。
エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)は、構成単位として、エチレン単位、α−オレフィン単位を含んでいればよく、ジエン単位をさらに含んでいてもよい。そのため、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)には、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴムなどが含まれる。
α−オレフィン単位を形成するためのα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンなどの鎖状α−C3−12オレフィンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンのうち、プロピレンなどのα−C3−4オレフィン(特にプロピレン)が好ましい。
ジエン単位を形成するためのジエンモノマーとしては、通常、非共役ジエン系単量体が利用される。非共役ジエン系単量体としては、例えば、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが例示できる。これらのジエンモノマーのうち、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン(特に、エチリデンノルボルネン)が好ましい。
代表的なエチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)などが挙げられる。
これらのエチレン−α−オレフィンエラストマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ジエン単位による架橋効率に優れる点から、エチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴムが好ましく、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)が特に好ましい。
エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体において、エチレンとプロピレンとの割合(質量比)は、前者/後者=40/60〜90/10、好ましくは45/55〜85/15(例えば50/50〜82/18)、さらに好ましくは55/45〜80/20(特に55/45〜75/25)程度であってもよい。
エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)[特に、EPDMなどのエチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴム]のジエン含量は10質量%以下(例えば0.1〜10質量%)であってもよく、好ましくは7質量%以下(例えば1〜7質量%)、さらに好ましくは6質量%以下(例えば1.5〜6質量%)、最も好ましくは5質量%以下(例えば1.8〜5質量%)である。前記ジエン含量は、諸特性(特に、伝達効率)に優れる点から、例えば2〜7質量%、好ましくは3〜6質量%、さらに好ましくは3.5〜5.5質量%、最も好ましくは4〜5質量%である。また、前記ジエン含量は、耐熱性や初期の架橋ゴム物性が重要な用途では、例えば1〜5質量%、好ましくは1.2〜4質量%、さらに好ましくは1.5〜3質量%、より好ましくは1.6〜2質量%であってもよい。本発明では、主鎖に二重結合を有さないゴム成分を用いることにより耐熱性を向上させているが、側鎖として導入するジエン単位による二重結合も少量に抑制することにより、高度な耐熱性を担保している。ジエン含量が多すぎると、高度な耐熱性が担保できない虞がある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ジエン含量は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを構成する全単位中のジエンモノマー単位の質量割合を意味し、慣用の方法により測定できるが、モノマー比であってもよい。
ゴム成分中のエチレン−α−オレフィンエラストマー(A)の割合は50質量%以上であればよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%(エチレン−α−オレフィンエラストマーのみ)である。ゴム成分中のエチレン−α−オレフィンエラストマー(A)の割合が少なすぎると、耐熱性および耐寒性が低下する虞がある。
[(B)有機過酸化物]
本発明では、ゴム成分として、架橋点となる二重結合が少ないエチレン−α−オレフィンエラストマー(A)を用いるため、架橋剤として有機過酸化物(B)を用いる。
有機過酸化物(B)としては、慣用の成分、例えば、ジアシルパーオキサイド(ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなど)、パーオキシケタール(1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタンなど)、アルキルパーオキシエステル(t−ブチルパーオキシベンゾエートなど)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなど)、パーオキシカーボネート(t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートなど)などが挙げられる。
これらの有機過酸化物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ジクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイドなどが汎用される。
有機過酸化物(B)の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して、例えば0.5〜10質量部、好ましくは1〜8質量部、さらに好ましくは2〜7質量部、最も好ましくは3〜6質量部である。有機過酸化物(B)の割合が少なすぎると、ゴム組成物の耐熱性および耐摩耗性が低下する虞があり、逆に多すぎても、ゴム組成物の耐熱性および耐摩耗性が低下する虞がある。
[(C)シリカ]
本発明のゴム組成物は、補強剤としてシリカ(C)を含む。シリカは、ゴムの補強剤として汎用されるカーボンブラックと比べて、内部発熱が小さく、伝達ロスに有利である。そのため、本発明のゴム組成物は、シリカを補強剤の主成分として含むのが好ましい。
シリカ(C)には、乾式シリカ、湿式シリカ、表面処理したシリカなどが含まれる。また、シリカは、製法によって、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどにも分類できる。これらのシリカは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのシリカのうち、表面シラノール基を有するシリカ(無水ケイ酸、含水ケイ酸)が好ましく、表面シラノール基の多い含水ケイ酸はゴム成分との化学的結合力が強い。
シリカ(C)の平均粒径(一次平均粒子径)は、例えば1〜500nm、好ましくは3〜300nm、さらに好ましくは5〜100nm、最も好ましくは10〜50nmである。シリカの粒径が大きすぎると、ベルト本体の補強性が低下する虞があり、小さすぎると、均一に分散するのが困難となる虞がある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、シリカの平均粒径の測定方法としては、例えば、透過型電子顕微鏡などを用いて測定できる。
シリカ(C)のBET法による窒素吸着比表面積は、例えば50〜400m/g、好ましくは70〜350m/g、さらに好ましくは100〜300m/g、より好ましくは150〜250m/gである。前記比表面積は、用途に応じて選択でき、例えば70〜300m/g、好ましくは100〜250m/g、さらに好ましくは150〜200m/gであってもよく、耐摩耗性が重要な用途では、例えば100〜400m/g、好ましくは150〜300m/g、さらに好ましくは200〜250m/gであってもよい。比表面積が大きすぎると、伝達ロスが生じやすくなるとともに、均一に分散するのが困難となる虞があり、比表面積が小さすぎると、ゴム成分に対する補強性が低下する虞がある。
シリカ(C)の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して、例えば25〜200質量部、好ましくは30〜150質量部、さらに好ましくは40〜100質量部である。前記割合は、諸特性に優れる点から、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して、例えば25〜120質量部、好ましくは30〜100質量部、さらに好ましくは35〜80質量部、最も好ましくは40〜60質量部である。また、前記割合は、耐摩耗性が重要な用途では、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して、例えば50〜200質量部、好ましくは70〜150質量部、さらに好ましくは80〜120質量部であってもよい。シリカ(C)の割合が少なすぎると、ゴムに対する補強性が低下する虞があり、逆に多すぎると、耐摩耗性が低下する虞がある。
補強剤中のシリカ(C)の割合は、50質量%以上であればよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%(エチレン−α−オレフィンエラストマーのみ)である。ゴム成分中のシリカ(C)の割合が少なすぎると、ゴム組成物で伝動ベルトの伝動面を形成したとき、伝達効率が低下する虞がある。特に、伝動ベルトの伝動面を形成するゴムの補強剤としてはカーボンブラックが汎用されるが、補強剤としてカーボンブラックの割合が多くなると、ゴム組成物中での内部発熱が大きくなり、伝達ロスが大きくなる虞がある。
[(D)エチレン性不飽和結合を含有するシランカップリング剤]
本発明のゴム組成物は、前記シリカ(C)のゴム組成物中での分散性を高め、耐摩耗性を向上できる点から、シランカップリング剤として、エチレン性不飽和結合(二重結合)を含有するシランカップリング剤(D)を含む。
二重結合を含有するシランカップリング剤(D)において、エチレン性不飽和結合としては、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、マレイル基(マレイン酸残基)、スチリル基などが挙げられる。これらのエチレン性不飽和結合のうち、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが汎用される。
ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどのビニルトリC1−4アルコキシシラン;ビニルトリアセトキシシランなどのビニルトリアシルオキシシラン;ビニルトリクロロシランなどのビニルトリハロシランなどが挙げられる。
アリル基含有シランカップリング剤としては、例えば、アリルシラン;アリルトリメトキシシランなどのアリルトリC1−4アルコキシシラン;ジアリルジメトキシシランなどのジアリルジC1−4アルコキシシラン;アリルトリメチルシランなどのアリルトリC1−4アルキルシラン;ジアリルジメチルシランなどのジアリルジC1−4アルキルシランなどが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤としては、例えば、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシC2−4アルキルトリC1−2アルコキシシラン;3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシC2−4アルキル−C1−4アルキル−ジC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤が好ましく、(メタ)アクリロキシC2−4アルキルトリC1−2アルコキシシランが特に好ましい。
シランカップリング剤(D)における分子内のケイ素原子の数は、1以上であればよく、例えば1〜15程度の範囲から選択でき、好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8である。前記ケイ素原子の数は、用途に応じて適宜選択でき、例えば1〜5、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、より好ましくは1であってもよい。
シランカップリング剤(D)の分子量は、例えば100〜3000程度の範囲から選択でき、例えば120〜2000、好ましくは150〜1500、さらに好ましくは180〜1000、より好ましくは200〜800である。前記分子量は、用途に応じて適宜選択でき、例えば100〜500、好ましくは150〜400、さらに好ましくは180〜300、より好ましくは200〜250であってもよい。
シランカップリング剤(D)の割合は、シリカ(B)100質量部に対して、例えば1〜20質量部、好ましくは1.5〜10質量部、さらに好ましくは2〜8質量部、最も好ましくは3〜7質量部である。本発明では、シリカ(B)に対するシランカップリング剤(D)の割合は、シリカ(B)および硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)との関係が前記XおよびYで規定される特定の範囲となるように、このような範囲から選択して調整するのが好ましい。
[(E)硫黄原子を含有するシランカップリング剤]
本発明のゴム組成物は、シランカップリング剤として、エチレン性不飽和結合を有するシランカップリング剤に加えて、硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)をさらに含む。従来は、架橋剤として有機過酸化物を用いるパーオキサイド架橋系のゴム組成物(EPDMのような二重結合の少ないゴム組成物)に配合されるシランカップリング剤として、耐摩耗性の向上効果が小さい点から、硫黄原子を含有するシランカップリング剤は使用されていなかった。これに対して、本発明では、硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)をシリカ(C)および二重結合を含有するシランカップリング剤(D)と組み合わせることにより、耐摩耗性と耐熱性とを両立できる。従来は、ゴム組成物において、シランカップリング剤はシリカの分散性を向上させて耐摩耗性を担保するために添加されていたため、シランカップリング剤(E)が耐熱性に寄与することは意外な作用である。
なお、ゴム組成物において、耐熱性を向上させるための手段としては、老化防止剤を増量する手段も知られているが、この常套手段では、ゴム組成物の内部発熱が大きくなることで伝達ロスが増加(伝達効率が低下)して燃費が低下する。これに対して、本発明では、異なる種類のシランカップリング剤を組み合わせることにより、伝達効率の低下も抑制しつつ、耐熱性と耐摩耗性とを両立できる。
硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)には、メルカプト基含有シランカップリング剤、ジスルフィド基含有シランカップリング剤、テトラスルフィド基含有シランカップリング剤などのジないしテトラスルフィド基含有シランカップリング剤などが含まれる。
メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプトC2−4アルキル−C1−4アルキル−ジC1−4アルコキシシランなどが挙げられる。
ジスルフィド基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどのビス(トリC1−4アルコキシシリル−C2−4アルキル)ジスルフィドなどが挙げられる。
テトラスルフィド基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビス[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、ビス[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィドなどのビス(トリC1−4アルコキシシリル−C2−4アルキル)テトラスルフィドなどが挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ジないしテトラスルフィド基含有シランカップリング剤が好ましく、ジスルフィド基含有シランカップリング剤がより好ましく、ビス(トリC1−4アルコキシシリル−C2−4アルキル)ジスルフィドが特に好ましい。
シランカップリング剤(E)における分子内のケイ素原子(シリル基)の数は、1以上であればよく、例えば1〜10、好ましくは1〜5、さらに好ましくは2〜3、最も好ましくは2である。
シランカップリング剤(E)の分子量は、例えば100〜1000、好ましくは200〜800、さらに好ましくは300〜600、より好ましくは400〜550、最も好ましくは400〜500である。
シランカップリング剤(E)の割合は、シリカ(B)100質量部に対して、例えば0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部、さらに好ましくは0.5〜8質量部、最も好ましくは1〜6質量部である。本発明では、シリカ(B)に対するシランカップリング剤(E)の割合は、シリカ(B)および前記二重結合を含有するシランカップリング剤(D)との関係前記XおよびYで規定される特定の範囲となるように、このような範囲から選択して調整するのが好ましい。
[短繊維(F)]
本発明のゴム組成物は、短繊維(F)をさらに含んでいてもよい。短繊維(F)としては、例えば、天然短繊維(綿などの天然セルロース系短繊維など)、半合成短繊維(レーヨンなどの半合成セルロース系短繊維)、ポリエステル短繊維(ポリエチレンテレフタレート短繊維などのポリアルキレンアリレート短繊維など)、ポリアミド短繊維(ナイロン6単繊維、ナイロン66短繊維などの脂肪族ポリアミド短繊維、アラミド短繊維など)などが挙げられる。
これらの短繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ポリエステル短繊維、ポリアミド短繊維が汎用され、脂肪族ポリアミド繊維が好ましい。
短繊維の平均繊維長は、例えば0.1〜30mm、好ましくは0.2〜20mm、さらに好ましくは0.3〜15mm、最も好ましくは0.5〜5mmである。
これらの短繊維は、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などで表面処理してもよい。
短繊維は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)との接着性を向上させるため、必要に応じて、接着処理を施してもよい。接着処理としては、慣用の接着処理を利用でき、例えば、接着性成分[例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物]を有機溶媒(トルエン、キシレン、メチルエチルケトンなど)に溶解させた樹脂系処理液などへの浸漬処理、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)への浸漬処理、ゴム組成物を有機溶媒に溶解させたゴム糊への浸漬処理が挙げられる。
短繊維(F)の割合は、トルクロスをさらに低減させるために、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して、例えば1〜100質量部、好ましくは5〜80質量部、さらに好ましくは10〜50質量部、最も好ましくは20〜40質量部である。短繊維の割合が少なすぎると、耐熱性および耐摩耗性の向上効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、伝達効率が低下する虞がある。
[他の成分]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)に加えて、他のゴム成分をさらに含んでいてもよい。他のゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴムなど)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これら他のゴム成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
他のゴム成分は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して100質量部以下(例えば0.1〜100質量部程度)であってもよく、好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
本発明のゴム組成物は、補強剤として、前記シリカ(C)に加えて、他の補強剤をさらに含んでいてもよい。他の補強剤としては、例えば、カーボンブラック、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどが挙げられる。これらの補強剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
他の補強剤の割合は、シリカ(C)100質量部に対して100質量部以下(例えば0.1〜100質量部程度)であってもよく、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、最も好ましくは10質量部以下である。
本発明のゴム組成物は、シランカップリング剤として、前記シランカップリング剤(D)および(E)に加えて、他のシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
他のシランカップリング剤としては、例えば、アルコキシシリル基含有シランカップリング剤、ハロゲン含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、カルボキシル基含有シランカップリング剤、シラノール基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
他のシランカップリング剤の割合は、シランカップリング剤(D)および(E)の合計100質量部に対して100質量部以下(例えば0.1〜100質量部程度)であってもよく、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、最も好ましくは10質量部以下である。
本発明のゴム組成物は、ゴムの配合剤として利用される慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、共架橋剤(ビスマレイミド類など)、加硫助剤または加硫促進剤(チウラム系促進剤など)、加硫遅延剤、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、軟化剤(パラフィンオイルや、ナフテン系オイル等のオイル類など)、加工剤または加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイドなど)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。
慣用の添加剤の合計割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して、例えば5〜50質量部、好ましくは10〜30質量部、さらに好ましくは15〜25質量部である。
[ゴム組成物の特性]
本発明のゴム組成物は、二重結合を含有するシランカップリング剤(D)と硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)とを組み合わせることを特徴とする。通常、シランカップリング剤として、パーオキサイド架橋系のゴム組成物では、二重結合を含有するシランカップリング剤が用いられ、硫黄架橋系のゴム組成物では、硫黄原子を含有するシランカップリング剤が用いられるのが一般的である。これに対して、本発明では、パーオキサイド架橋系のゴム組成物において、両者を併用することにより、耐熱性と耐摩耗性との両立を可能にした。
シランカップリング剤(E)の割合は、シランカップリング剤(D)100質量部に対して、例えば5〜300質量部、好ましくは10〜200質量部、さらに好ましくは15〜150質量部、最も好ましくは20〜120質量部である。シランカップリング剤(E)の割合が多すぎると、耐摩耗性が低下する虞があり、シランカップリング剤(E)の割合が少なすぎると、耐熱性が低下する虞がある。
さらに、本発明のゴム組成物は、前述のように、前記シリカ(C)、前記シランカップリング剤(D)および(E)の配合比、前記シリカの比表面積、前記シランカップリング剤のケイ素原子数および分子量を特定の範囲に調整して、前記X1およびX2の合計値と前記Y1/Y2比とを制御することにより、耐久寿命を左右する耐熱性と耐摩耗性とを高度に両立できる。
前記X1およびX2の合計値は、例えば0.0001〜0.0003、好ましくは0.00012〜0.00028、さらに好ましくは0.00013〜0.00025、最も好ましくは0.00014〜0.00024である。前記合計値が小さすぎると、耐熱性および耐摩耗性を両立するのが困難となる虞があり、逆に大きすぎても、耐熱性および耐摩耗性を両立するのが困難となり、耐久性が低下する上に、加工性および経済性も低下する虞がある。
前記Y1/Y2比は、例えば0.8〜6、好ましくは0.9〜5.5、さらに好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜4.8である。前記Y1/Y2比が小さすぎると、耐摩耗性およびベルトに利用したときの伝達効率が低下する虞があり、逆に大きすぎると、ベルトに利用したときの耐久性が低下する虞がある。
本発明のゴム組成物の硬化物(架橋体)としては、内部の損失正接(tanδ)が低い硬化物が好ましい。損失正接(tanδ)は、損失弾性率(E”)を貯蔵弾性率(E’)で除すことにより求めることができ、振動1サイクルの間に熱として散逸(ロス)されるエネルギーと貯蔵される最大エネルギーとの比として表され、エネルギー損失の尺度となる。すなわち、tanδにより、ゴム組成物に加えられる振動エネルギーが熱として散逸される指標を数値化して表すことができる。従って、tanδが小さいほど散逸される熱は小さい(すなわち、内部発熱が小さくなり伝達効率が向上する)。本発明の好ましい態様では、ベルトが通常走行する温度(例えば、40〜120℃の温度範囲)におけるtanδに着目し、このtanδが低く調製されている。具体的には、例えば、70℃および周波数10Hzでの硬化物のtanδは、伝達効率を確保するためには、0.08〜0.17程度の範囲から選択でき、例えば0.09〜0.165、好ましくは0.09〜0.12、さらに好ましくは0.09〜0.11、最も好ましくは0.09〜0.10である。損失正接(tanδ)の値は、ゴム組成物の内部発熱性を示す代用値であり、この値が小さいと内部発熱が小さく、エネルギーロス(伝達ロス)が少ないゴム組成物の指標となる。
本明細書および特許請求の範囲において、損失正接(tanδ)は、後述する実施例に記載の方法で測定でき、短繊維が所定の方向に配列した硬化物では、短繊維の配列方向(列理方向)と垂直な方向(反列理方向)の損失正接を測定する。
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物の製造方法は、慣用の方法によって各成分を混合(または混練)することにより調製できるが、均一に混合するためには、加熱して混練するのが好ましい。さらに、本発明の製造方法では、各成分を一括添加して混練する製造方法であってもよいが、架橋系成分以外の主要な成分を混練する第1の混練工程と、第1の混練工程で得られた混練物に架橋系成分を添加して混練する第2の混練工程との二段階の混練工程を経る製造方法が好ましい。
二段階の混練工程を経る製造方法において、第1の混練工程では、架橋系成分である有機過酸化物(B)、共架橋剤、加硫助剤または加硫促進剤、および硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)以外の他の成分を混練するのが好ましい。前記シランカップリング剤(E)が第2の混練工程で混練されるのに対して、二重結合を含有するシランカップリング剤(D)を第1の混練工程で混練することにより、シリカ(C)の分散性を向上できる。第1の混練工程における第1の混練温度は、第2の混練工程に比べて高温条件であり、例えば150℃以上(例えば150〜200℃程度)である。
第2の混練工程では、第1の混練工程で得られた第1の混練物と、前記架橋系成分と、硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)とを混練するのが好ましい。前記シランカップリング剤(E)を第2の混練工程で混練することにより、ゴム組成物の耐熱性を向上できる。第2の混練工程における第2の混練温度は、第1の混練温度よりも低温条件であり、例えば120℃以下(例えば50〜120℃程度)である。
[成形体]
本発明のゴム組成物の硬化物は、耐熱性と耐摩耗性とを両立できるため、各種成形体として利用できるが、両特性が重要である伝動ベルトの伝動面(プーリとの接触面)を形成するゴム層として利用するのが好ましい。
伝動ベルトは、摩擦伝動ベルトであってもよく、噛み合い伝動ベルトであってもよい。摩擦伝動ベルトとしては、例えば、平ベルト;ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト、VリブドベルトなどのVベルトなどが挙げられる。噛み合い伝動ベルトとしては、例えば、歯付ベルト、両面歯付ベルトなどが挙げられる。これらのうち、高度な耐熱性と耐摩耗性とが要求される点から、摩擦伝動ベルトが好ましく、自動車エンジンの補機駆動システムなどに用いるVリブドベルト、自動二輪車の無段変速装置などに用いるローエッジVベルト(ローエッジコグドVベルトも含む)がさらに好ましく、高度な耐久性を要求される点から、自動車エンジンの補機駆動システムに用いられるVリブドベルトが特に好ましい。
VリブドベルトやローエッジVベルトなどの摩擦伝動ベルトにおいて、本発明のゴム組成物は、圧縮ゴム層(内面ゴム層)および/または伸張層(背面ゴム層)を形成していてもよい。伸張層が背面ゴム層である摩擦伝動ベルトとしては、例えば、ベルト背面がプーリと接触する背面駆動レイアウトで走行するVリブドベルトなどが挙げられる。これらのうち、少なくとも圧縮ゴム層が本発明のゴム組成物で形成された摩擦伝動ベルトが好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した原料の詳細を以下に示す。
[原料]
EPDM1:ダウ・ケミカル日本(株)製「NORDEL(登録商標)IP4640」、ムーニー粘度(125℃)≒40、エチレン含量55質量%、ジエン含量(エチリデンノルボルネン含量)4.9質量%
EPDM2:三井化学(株)製「EPT 4045M」、ムーニー粘度(125℃)≒45、エチレン含量51質量%、ジエン含量7.6質量%
EPDM3:ダウ・ケミカル日本(株)製「NORDEL(登録商標)IP3640」、ムーニー粘度(125℃)≒40、エチレン含量55質量%、ジエン含量1.8質量%
短繊維:ナイロン66短繊維、平均繊維径27μm、平均繊維長3mm
シリカ1:エボニックインダストリーズ AG社製「Ultrasil VN3」、BET比表面積180m/g
シリカ2:エボニックインダストリーズ AG社製「Ultrasil 9100GR」、BET比表面積235m/g
シランカップリング剤1−1:メタクリロイル基含有シラン、信越化学工業(株)製「KBM−503」、分子量232、ケイ素原子の数1
シランカップリング剤1−2:ビニル基含有シラン 、エボニックインダストリーズ AG社製「Dynasylan VTEO」、分子量190、ケイ素原子の数1
シランカップリング剤1−3:ビニル基含有シラン、エボニックインダストリーズ AG社製「Dynasylan 6498」、分子量771、ケイ素原子の数6
シランカップリング剤2−1:ジスルフィド基含有シラン、(株)大阪ソーダ製「CABRUS−2」、分子量475、ケイ素原子の数2
シランカップリング剤2−2:テトラスルフィド基含有シラン、(株)大阪ソーダ製「CABRUS−4」、分子量539、ケイ素原子の数2
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製、「酸化亜鉛3種」
ステアリン酸:日油(株)製、「ステアリン酸つばき」
パラフィンオイル:パラフィン系プロセスオイル、出光興産(株)製「ダイアナ(登録商標)PW−380」
界面活性剤:日本乳化剤(株)製「ニューコール2308−LY」
老化防止剤1:ジフェニルアミン系老化防止剤、大内新興化学工業(株)製「ノクラックCD」
老化防止剤2:ジフェニルアミン系老化防止剤、大内新興化学工業(株)製「ノクラックAD−F」
有機過酸化物:日油(株)製「パークミルD」(ジクミルパーオキサイド)
共架橋剤:大内新興化学(株)製「バルノックPM」
加硫促進剤DM:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)DM」
カーボンブラックHAF:東海カーボン(株)製「シースト3」
カーボンブラック分散液:東海カーボン(株)製「Aqua−Black162」固形分19.2質量%
心線:1,000デニールのPET繊維を2×3の撚り構成で、上撚り係数3.0、下撚り係数3.0、トータルデニール6,000で諸撚りした撚糸コードに、接着処理を施した、心線径1.0mmのコード。
実施例1〜11、参考例1〜7および比較例1〜3
[圧縮ゴム層]
ベルトの伝動面(プーリとの接触面)を形成する圧縮ゴム層には、表1および2に示す配合の圧縮ゴム層用ゴム組成物をバンバリーミキサーで混練し、カレンダーロールで所定の厚みに圧延したシートを用いた。混練方法について詳しくは、まず、第1の混練工程として、シランカップリング剤2−1または2−2、有機過酸化物、共架橋剤以外の成分を混練して、150℃に到達してから2分間混練を継続した後、混練物を排出して放冷した。次に、第2の混練工程として、得られた混練物に、シランカップリング剤2−1または2−2、有機過酸化物、共架橋剤(比較例1および3は有機過酸化物、共架橋剤のみ)を添加して混練し、100℃に到達したところで、すぐに排出した。
なお、参考例6では、硫黄原子を含有するシランカップリング剤であるシランカップリング剤2−1を、第1の混練工程(150℃)で混練することを除いては、実施例1と同様の方法でゴム組成物を得た。
また、参考例7では、第1の混練工程の温度を110℃で行ったことを除いては、実施例1と同様の方法でゴム組成物を得た。
Figure 2021008603
Figure 2021008603
[接着ゴム層]
接着ゴム層用シートは、表3に示す配合の接着ゴム層用組成物をバンバリーミキサーで混練し、カレンダーロールで、所定の厚みに圧延した。
Figure 2021008603
[伸張層]
伸張層を形成するための綿織布には、未処理の綿織布(綿糸20s/2、経糸70本/5cm、緯糸70本/5cmの平織)を、カーボンブラック分散液およびRFL液(ラテックス、レゾルシンおよびホルマリン)を含む表4に示す混合液(黒染め液)に10秒間浸漬し、テンターにより120°の広角度処理を行い、150℃で4分間熱処理した綿織布を用いた。
Figure 2021008603
[圧縮ゴム層用組成物の架橋ゴム物性]
圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシートを、プレス機を用いて30分間の加圧および加熱(温度170℃、面圧力2.0MPa)して架橋ゴムシートを作製した。
1)DIN摩耗量
内径16.2mmの中空ドリルで、架橋ゴムシートの厚み方向から、直径16.2±0.2mm、厚み8mmの円柱状の試験片を切り抜き、試験片とした。JIS K6264(2005)に準じ、DIN摩耗試験機(回転円筒型摩耗試験機)を用いて摩耗量を測定した。研磨布は研磨布押えによって回転ドラムに取り付け、試験方法は試験片を回転させないで測定するA法とし、試験片の付加力は10Nとした。試験前後における試験片の重量変化を測定し、あらかじめ測定しておいた試験片の比重から摩耗量(摩耗体積)を計算した。
2)損失正接(tanδ)の測定
架橋ゴムシートから、断面形状が長方形(厚さ2.0mm、幅4.0mm)で、長さが40mmの試験片を採取した。このとき、圧延の反列理方向を長さ方向として採取した。そして、粘弾性測定装置((株)上島製作所製「VR−7121」)のチャックに、チャック間距離15mmで試験片をチャックして固定し、初期歪(静的歪)1.0%を与え、周波数10Hz、動的歪0.2%(すなわち、前記初期歪1.0%を中心位置または基準位置として長手方向に±0.2%の歪みを付与しつつ)、昇温速度1℃/分で70℃での損失正接(tanδ)を求めた。
3)引張特性(破断伸び率)の測定
JIS K 6251(2010)「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、架橋ゴムシートから、反列理方向に採取したダンベル状3号形の試験片を、室温で引張速度500mm/分で引張試験を行い、試験片が破断した際の伸び率(%)を算出し、熱老化前の伸び率とした。
さらに、JIS K 6257(2010)に準じた促進老化試験を行い、150℃で720時間の熱老化をさせた後の試験片に対しても、室温で引張速度500mm/分で引張試験を行い、試験片が破断した際の伸び率(%)を算出し、熱老化後の伸び率とした。
以上の結果から、熱老化前後での伸び率の差(低下)を比較し、伸び率の差が小さいゴム組成物ほど、熱老化の程度が小さく耐熱性に優れると判定した。
なお、引張試験機としては、(株)島津製作所製「オートグラフAG−5000A」を用いた。また、促進老化試験では、A法AA−2強制循環型熱老化試験機(横風式)を用いた。
[Vリブドベルトの製造]
表面が平滑な円筒状の成形モールドの外周に、伸張層を形成するための綿織布を巻き付け、この綿織布の外周に、未架橋の接着ゴム層用シートを巻き付けた。次に、接着ゴム層用シートの外周に、心線となる撚糸コードを所定間隔で螺旋状にスピニングし、さらにその外周に、未架橋の接着ゴム層用シート、圧縮ゴム層用シートを順に巻き付けて、未架橋成形体を形成した。そして、未架橋成形体の外周に加硫用ジャケットを被せた状態で、未架橋成形体を装着した成形モールドを架橋装置(所謂、加硫缶)内に収容し、所定の加熱・加圧条件(180℃、0.9MPa)で架橋を行った後、成形モールドから脱型して筒状の架橋スリーブを得た。そして、この架橋スリーブの外表面を研削ホイールにより研削して所定のVリブ部を形成した後、カッター刃を用いて架橋スリーブをベルト長手方向に所定の幅で切断して、5PK1100のVリブドベルト(リブ数:5個、周長:1100mm、ベルト形:K形、ベルト厚み:4.3mm、リブ高さ:約2mm、リブピッチ:3.56mm)に仕上げた。なお、切断したベルトの内周側と外周側とを反転させることにより、内周側にVリブ部を有する圧縮ゴム層を備えたVリブドベルトが得られた。
[Vリブドベルトの性能評価]
1)耐摩耗性試験(6%スリップ試験)
直径80mmの駆動(Dr)プーリ、直径80mmの従動(Dn)プーリ、直径120mmのテンション(Ten)プーリを配置した図1に示すレイアウトで走行試験機を用いた。試験機の各プーリに、予め重量を測定しておいたVリブドベルトを掛架し、テンションプーリへのベルトの巻き付け角度を90°とし、室温条件下で、駆動プーリの回転数を3000rpm、従動プーリのトルクを9.8N・m、ベルトスリップ率が6%となるように、ベルト張力を自動的に調整しながら24時間走行させた。そして、走行後のベルトの重量を測定し、ベルト重量の減少量[(走行前のベルト重量)−(走行後のベルト重量)]を算出した。そして、走行前のベルト重量に対するベルト重量の減少量の割合[(ベルト重量の減少量)/(走行前のベルト重量)×100]を摩耗率として算出し、摩耗の進行度を比較した。
2)耐久走行試験(耐熱走行寿命)
外径120mmの駆動プーリ11、外径85mmのアイドラプーリ12、外径120mmの従動プーリ13、外径45mmのテンションプーリ14を順に配した図2に示すレイアウトで走行試験機を用いた。試験機の各プーリにVリブドベルトを掛架し、アイドラプーリへのベルトの巻き付け角度が120°、テンションプーリへのベルトの巻き付け角度が90°、ベルト張力が395Nとなるように調整した。駆動プーリの回転数を4900rpm(回転方向は図の矢印の方向)、従動プーリの負荷を8.8kW、雰囲気温度を140℃とし、300時間を上限として走行させた。300時間に到達する前にベルトに故障や異常が発生した場合は、その時間を寿命と判断し走行を打ち切った。300時間走行してもベルトに故障や異常が発生しなかった場合は、300時間以上の走行寿命を有すると判断した。そして、本試験において300時間以上の走行寿命を有したベルトを、耐熱性に優れるベルトと判定した。
3)伝達ロス(トルクロス)の測定
直径55mmの駆動(Dr)プーリと、直径55mmの従動(Dn)プーリとで構成される図3に示すレイアウトの二軸走行試験機を用いた。試験機にVリブドベルトを掛架し、500N/ベルト1本の張力でVリブドベルトに所定の初張力を付与し、従動プーリ無負荷で駆動プーリを2000rpmで回転させたときの、駆動トルクと従動トルクとの差をトルクロスとして算出した。なお、この測定で求まるトルクロスは、Vリブドベルトに起因するトルクロス以外に、試験機の軸受けに起因するトルクロスも含まれている。そのため、ベルトとしてのトルクロスが実質0と考えられる金属ベルト(材質:マルエージング鋼)を予め走行させ、その駆動トルクと従動トルクとの差を軸受けに起因するトルクロス(軸受け損失)として求めた。そしてVリブドベルトを走行させて算出したトルクロス(ベルトと軸受けの二つに起因するトルクロス)から、軸受けに起因するトルクロス(軸受け損失)を差し引いた値を、ベルト単体に起因するトルクロスとして求めた。なお、上記トルクロス(軸受け損失)は所定の初張力で金属ベルトを走行させたときのトルクロス(例えば、初張力500N/ベルト1本でVリブドベルトを走行させた場合、この初張力で金属ベルトを走行させたときのトルクロスが軸受け損失となる)である。
なお、動力を伝達する際には、エネルギー的な損失(伝達ロス)が生じる。このエネルギー損失は、例えば、ベルトを構成するゴム組成物の自己発熱による内部損失や、ベルトの曲げ変形に起因する屈曲損失などが挙げられる。通常、駆動軸における駆動トルク値と、従動軸における従動トルク値との差で算出される「トルクロス」値が、エネルギー損失の指標として用いられ、トルクロスが小さいほど伝達効率が良い(伝達ロスが少ない)と判断でき、自動車エンジン等では省燃費性の指標としても活用されている。本試験でも、トルクロスの測定結果から、省燃費性に影響する伝達効率の比較を行った。
実施例の評価結果を表5に示し、参考例および比較例の評価結果を表6に示す。
Figure 2021008603
Figure 2021008603
表5および表6においては、シランカップリング剤が、二重結合含有シランカップリング剤のみを用いた比較例1を、耐熱性および耐摩耗性に関する耐久寿命の従来技術の水準として、その水準を基準に耐久寿命の向上(優劣)を比較判定した。
二種類のシランカップリング剤(二重結合含有および硫黄原子含有)を併用し、かつシランカップリング剤の添加量に関するパラメータである合計量(X1+X2)および比率(Y1/Y2)について、いずれも所定の範囲(X1+X2=0.0001〜0.0003、Y1/Y2=0.8〜6)を満たす実施例1〜11では、比較例1に対して伝達効率(トルクロス)を維持したまま、耐久寿命が向上した。特に、熱劣化によるクラックの抑制に大きな効果が見られた。
詳しくは、実施例2〜4および8は、実施例1のシランカップリング剤に対して、前記パラメータを変更した例であるが、実施例2〜4では、実施例1と略同等の結果であった。さらに、二重結合含有シランカップリング剤と、硫黄原子含有シランカップリング剤との比率(Y1/Y2)を実施例1と同じ構成とし、実施例1におけるX1およびX2の合計値(X1+X2=0.00018)よりも大きくした実施例8(X1+X2=0.00026)では、実施例1に対して、初期の架橋ゴム物性(破断伸び率)が若干低下したものの、耐久性(耐熱性)、伝達効率は実施例1と同等であった。
硫黄原子含有シランカップリング剤を添加しても、二重結合含有シランカップリング剤を添加していない比較例2では、比較例1と比べ、架橋ゴムの耐熱性の向上は見られたが、耐摩耗性が低下し、その影響で、内部発熱の増大によるトルクロスが増加し、さらに耐久走行ではスリップで寿命となった。この結果からも、二種類のシランカップリング剤(二重結合含有および硫黄原子含有)の併用が有効であるといえる。
二種類のシランカップリング剤(二重結合含有および硫黄原子含有)を併用している場合でも、参考例1〜3は、シランカップリング剤の添加量に関して、合計量(X1+X2)および比率(Y1/Y2)のいずれかが、前記所定の範囲を満たさない例である。
参考例1は、比率(Y1/Y2)においてY2(硫黄原子含有シランカップリング剤の添加量)が少なすぎるため、比較例1に対する耐熱性向上の効果が小さい例である。参考例2は、比率(Y1/Y2)においてY1(二重結合含有シランカップリング剤の添加量)が少なすぎるため、比較例1に対して耐摩耗性が不足している例である。この例では、耐久寿命は向上したが、摩耗の影響でトルクロスが大きくなり伝達効率を維持できていない。参考例3は、二種類のシランカップリング剤の合計量(X1+X2)が少なすぎる例である。シリカの分散性を充分に高めることができず、分散不良により耐摩耗性が大きく低下し、その影響で内部発熱の増大でトルクロスも増加した。さらに、架橋ゴムの耐熱性も低下し、熱劣化によるクラックも抑制できなかった。一方、参考例5は、二種類のシランカップリング剤の合計量(X1+X2)が大きすぎる例であるが、伝達効率は優れていたものの、初期の架橋ゴム物性(破断伸び率)が実施例8よりも低下し、耐久性走行で熱劣化により早期にクラックが発生した。
実施例11は、実施例1のEPDMに対して、ジエン含量を低減した例である。実施例1(ジエン含量4.9質量%)に対し、実施例11(ジエン含量1.8質量%)では、初期の架橋ゴム物性(破断伸び率)が向上し、耐熱性にも優れていたが、内部発熱の増加が見られ、伝達効率が若干低下した。一方、参考例4は、二種類のシランカップリング剤(二重結合含有および硫黄原子含有)を併用している場合でも、ジエン成分の含有量が多いグレード(7.6質量%)のEPDMを用いた例である。EPDMのグレードの違いを除いては、実施例1と同じ構成である。この場合は、架橋ゴムの耐熱性が不足するため、二種類のシランカップリング剤(二重結合含有および硫黄原子含有)を併用する効果が得られず、本発明の実施例、比較例の中で最も耐久寿命が短かった。
比較例3は、比較例1の組成に対して、硫黄原子含有シランカップリング剤を添加するのではなく、老化防止剤を増量した場合の例である。硫黄原子含有シランカップリング剤を添加した実施例1と同様に、熱劣化で生じるクラックの抑制に大きな効果が見られ、比較例1よりも耐久寿命が向上した。しかし、比較例1に比べ、内部発熱が増大してトルクロスが増加し、伝達効率を維持できなかった。このことから、硫黄原子含有シランカップリング剤を用いる方法は、伝達効率を維持したまま耐熱性を向上できる点で、優位な方法といえる。
実施例5〜7は、実施例1のシランカップリング剤に対して、種類を変更した例である。二重結合含有シランカップリング剤、硫黄原子含有シランカップリング剤ともに、分子量またはシリル基数(ケイ素原子数)が異なる他の種類を用いた場合においても、実施例1〜4と同様に、比較例1に対して伝達効率(トルクロス)を維持したまま、耐久性の向上(特に、熱劣化によるクラックの抑制)に大きな効果が見られた。
実施例9および10は、実施例1のシリカに対して、比表面積および配合割合を変更した例である。実施例1よりも比表面積の大きいシリカを使用した実施例9では、実施例1〜4と同等の効果が得られ、耐摩耗性がより向上した。また、実施例10では、シリカに対するシランカップリング剤の割合を一定(X1およびX2の合計値および比率(Y1/Y2)を実施例1と同じ構成)にしたままシリカを増量しているが、実施例1よりもシリカの補強効果で耐摩耗性が向上した反面、内部発熱(トルクロス)が大きくなり、伝達効率が低下した。
参考例6および7は、実施例1の製造方法に対して、混練条件を変更した例である。参考例6では、硫黄原子含有シランカップリング剤を高温条件で混練しているため、実施例1と異なり、架橋ゴム物性(破断伸び率)で熱劣化が顕著に見られ、熱劣化によるクラックにより耐久寿命が低下した。硫黄原子含有シランカップリング剤を高温で混練したことにより、硫黄原子を含有するシランカップリング剤の耐熱性への効果は発現しなかったと推察できる。そのため、硫黄原子を含有するシランカップリング剤の混練は、100℃程度の低温条件が好ましい。
また、参考例7では、第1の混練工程の温度を110℃で行っているため(高温条件で混練していないため)、実施例1と異なり、耐摩耗性の低下が顕著に見られ、耐久走行でもスリップにより寿命に達した。低温条件ではシリカの分散性が不充分となり、シリカによる補強効果の不足によって耐摩耗性が低下したと推察できる。そのため、シリカを分散させるための第1の混練工程は150℃以上の高温条件が好ましい。
本発明のゴム組成物は、各種の成形体として利用でき、特に、伝動ベルト、例えば、平ベルト;ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト、Vリブドベルトなどの摩擦伝動ベルトや、歯付ベルト、両面歯付ベルトなどの噛み合い伝動ベルトとして好ましく利用できる。

Claims (9)

  1. エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)、有機過酸化物(B)、シリカ(C)、エチレン性不飽和結合を含有するシランカップリング剤(D)および硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)を含むゴム組成物。
  2. シランカップリング剤(D)における下記式(1)で表されるXの計算値をX1、シランカップリング剤(E)における下記式(1)で表されるXの計算値をX2としたとき、X1およびX2の合計値が0.0001〜0.0003である請求項1記載のゴム組成物。
    X=a×[b/(c×d)] (1)
    (式中、aはシリカ100質量部に対するシランカップリング剤の割合を示し、bはシランカップリング剤中のケイ素原子の数を示し、cはシリカのBET比表面積を示し、dはシランカップリング剤の分子量を示す)
  3. シランカップリング剤(D)における下記式(2)で表されるYの計算値をY1、シランカップリング剤(E)における下記式(2)で表されるYの計算値をY2としたとき、Y2に対するY1の比率(Y1/Y2)が0.8〜6である請求項1または2記載のゴム組成物。
    Y=a×(b/d) (2)
    (式中、a、bおよびdは前記に同じ)
  4. エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)のジエン含量が7質量%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  5. シリカ(C)の割合が、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して25〜120質量部である請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  6. 有機過酸化物(B)の割合が、エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して1〜8質量部である請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  7. 伝動ベルトの伝動面を形成するために用いられる請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  8. エチレン−α−オレフィンエラストマー(A)、有機過酸化物(B)、シリカ(C)、エチレン性不飽和結合を含有するシランカップリング剤(D)および硫黄原子を含有するシランカップリング剤(E)を加熱して混練する請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴム組成物の硬化物で伝動面が形成された伝動ベルト。
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