JP2022133243A - ゴム組成物および伝動ベルト - Google Patents

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健人 吉田
Taketo Yoshida
健 西山
Ken Nishiyama
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Abstract

【課題】伝動ベルトに最適な硬度、モジュラス、伸びを有するとともに、耐熱老化性に優れるゴム組成物を提供する。【解決手段】エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(A)と、カーボンブラック(B)と、下記式(I)で表される反応性老化防止剤を含む老化防止剤(C)とを組み合わせ、前記反応性老化防止剤の割合を前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.2~2.2質量部に調整してゴム組成物を調製する。TIFF2022133243000010.tif33153(式中、Z1およびZ2は芳香環を含む2価の有機基を示し、m1およびm2は0以上の整数であり、m1およびm2の少なくとも一方は1以上の整数である)【選択図】なし

Description

本発明は、エチレン-α-オレフィンエラストマーおよび反応性老化防止剤を含むゴム組成物およびこのゴム組成物の硬化物を含む伝動ベルトに関する。
動力伝達手段として、摩擦伝動ベルトや歯付ベルトなどの伝動ベルトが古くから利用されている。摩擦伝動ベルトとしては、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルトなどが挙げられる。Vベルトには、摩擦伝動面(V字状側面)が露出したゴム層であるローエッジ(Raw-EDGE)タイプ(ローエッジVベルト)と、摩擦伝動面(V字状側面)がカバー布で覆われたラップド(Wrapped)タイプ(ラップドVベルト)とがあり、摩擦伝動面の表面性状(ゴム層とカバー布との摩擦係数など)の違いから用途に応じて使い分けられている。また、ローエッジタイプのベルトには、コグを設けないローエッジVベルトの他、ベルトの下面(内周面)のみにコグを設けて屈曲性を改善したローエッジコグドVベルトや、ベルトの下面(内周面)および上面(外周面)の両方にコグを設けて屈曲性を改善したローエッジコグドVベルト(ローエッジダブルコグドVベルト)がある。これらの伝動ベルトは自動車および産業機械等の幅広い分野で使用されている。その中でも、自動二輪車、スノーモービル、大型農業機械などに搭載されるベルト式変速装置に用いられるVベルトは、変速ベルトと呼ばれている。
伝動ベルトにおいては、伝動容量の増大や装置の大型化・高馬力化などにより、高負荷で使用される。そのため、座屈変形(ディッシング)を防ぐため、ベルト幅方向の剛性(耐側圧性)を高めることが求められる。さらに、自動車の補機駆動用として用いられるVリブドベルトや変速ベルトにおいては、ベルトがエンジンの近傍に配置されることが多く、エンジンの発熱による影響を受けて高温の雰囲気下で使用される。そのため、耐熱老化性を高めることも求められる。
このような要求に対応するため、心線を埋設するベルト本体を、エチレン-α-オレフィンエラストマー、カーボンブラックおよび老化防止剤を含むゴム組成物の架橋物で形成することが考えられる。エチレン-α-オレフィンエラストマーは主鎖に二重結合を有しないために耐熱性に優れるとともに、カーボンブラックの高充填が容易であることから硬度やモジュラスを高めやすく、Vベルトの耐側圧性を向上させやすい。また、老化防止剤を含むことで、高温の雰囲気下で使用した際にベルト本体の硬度が過剰に上昇するのを抑制することができ、屈曲による亀裂の発生を抑制することができる。
老化防止剤としては、アミン系(ジフェニルアミン系、p-フェニレンジアミン系)、フェノール系、ベンズイミダゾール系など種々のものが使用されているが、老化防止剤の種類によっては、ゴム組成物中への分散性、外部への移行性、揮発性、オイルによる抽出性などの点が問題となって、十分に老化防止機能を発揮できない場合がある。これらの問題点を解決するために、老化防止剤をポリマー鎖に反応させて化学的に結合させる方法や、複数種の老化防止剤を併用する技術が提案されている。
例えば、特開2001-181458号公報(特許文献1)には、EPDM系ゴム、カーボンブラック、老化防止剤および架橋剤を含有してなるEPDM系ゴム組成物において、老化防止剤として、末端に二重結合を有するp-フェニレンジアミン系化合物を用いることを特徴とするEPDM系ゴム組成物が開示されている。また、前記ゴム組成物は、さらにイミダゾール系化合物を含んでもよいことが記載されている。そして、末端に二重結合を有するp-フェニレンジアミン系化合物は、老化防止剤として作用する他に、末端の二重結合がEPDM系ゴムと反応する結果、EPDM系加硫ゴムの耐熱性が向上する可能性について記載されている。なお、末端に二重結合を有するp-フェニレンジアミン系化合物について、末端の二重結合基としてアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、ビニリデン基、α-オレフィン基等が例示され、実施例ではN-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミンが使用されている。
特開2001-181458号公報
しかし、特許文献1に開示されるゴム組成物は、用途によっては、耐熱老化性が十分ではない。特に、特許文献1では、車両、機械、橋梁・鉄道軌道等の構造物に用いられる防振ゴムの弾性部材への適用が想定されており、伝動ベルトなどの高度な耐熱老化性が要求される用途への適用は示唆されていない。伝動ベルトでは、熱老化によって硬度が過剰に上昇したゴムは、屈曲されることで容易に亀裂が発生してゴム製品の機能を損なうこととなる。そのため、大変形を伴って繰り返して曲げ伸ばしされる伝動ベルトにおいては、防振ゴムよりも高度な耐熱老化性が求められる。また、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミンのEPDMに対する反応性はあまり高くないために、ポリマー鎖への固定が十分に行われずに、耐熱老化性を長期に亘って維持できないと考えられる。
従って、本発明の目的は、伝動ベルトに最適な硬度、モジュラス、伸びを有するとともに、耐熱老化性に優れるゴム組成物およびこのゴム組成物の硬化物を含む伝動ベルトを提供することにある。
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(A)と、カーボンブラック(B)と、マレイミド基およびジアリールアミン骨格を有する反応性老化防止剤を含む老化防止剤(C)とを組み合わせ、前記反応性老化防止剤の割合を前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.2~2.2質量部に調整することにより、伝動ベルトに最適な硬度、モジュラス、伸びを有するとともに、耐熱老化性または耐久性に優れたゴム組成物を提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(A)と、カーボンブラック(B)と、下記式(I)で表される反応性老化防止剤を含む老化防止剤(C)とを含み、かつ前記反応性老化防止剤の割合が前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.2~2.2質量部である。
Figure 2022133243000001
(式中、ZおよびZは芳香環を含む2価の有機基を示し、m1およびm2は0以上の整数であり、m1およびm2の少なくとも一方は1以上の整数である)。
前記式(I)において、環Zおよび環Zがフェニレン基であり、m1およびm2が0~1の整数であってもよい。前記老化防止剤(C)は非反応性老化防止剤をさらに含んでいてもよい。前記非反応性老化防止剤が、アミン系老化防止剤およびベンズイミダゾール系老化防止剤からなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。前記老化防止剤(C)の割合は、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.1~10質量部であってもよい。前記カーボンブラック(B)は、一次粒子径40nm未満のハードカーボンを含んでいてもよい。前記カーボンブラック(B)の割合は、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して30質量部以上であってもよい。前記ゴム組成物は、架橋剤(D)をさらに含み、前記架橋剤(D)が有機過酸化物を含んでいてもよい。
本発明には、前記ゴム組成物の硬化物を含む伝動ベルトも含まれる。前記伝動ベルトは、Vベルト(特に、変速ベルト)またはVリブドベルトであってもよい。
本発明では、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(A)と、カーボンブラック(B)と、マレイミド基(またはN置換マレイミジル基)およびジアリールアミン骨格を有する反応性老化防止剤を含む老化防止剤(C)とを組み合わせ、前記反応性老化防止剤の割合が前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.2~2.2質量部に調整されているため、伝動ベルトに最適な硬度、モジュラス、伸びを有するとともに、耐熱老化性または耐久性に優れたゴム組成物を提供できる。そのため、本発明のゴム組成物の硬化物を含む伝動ベルトは耐熱老化性または耐久性を長期に亘って維持できる。
図1は、本発明の伝動ベルト(ローエッジコグドVベルト)の一例を示す概略断面斜視図である。 図2は、図1の伝動ベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。 図3は、本発明の伝動ベルト(Vリブドベルト)の一例を示す概略断面図である。 図4は、実施例のベルト耐久試験のレイアウトを示す概略図である。
[ポリマー成分(A)]
ポリマー成分(A)は、耐寒性、耐熱性、耐候性に優れる点から、エチレン-α-オレフィンエラストマーを含む。
エチレン-α-オレフィンエラストマーは、構成単位として、エチレン単位、α-オレフィン単位を含んでいればよく、ジエン単位をさらに含んでいてもよい。そのため、エチレン-α-オレフィンエラストマーには、エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム、エチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体ゴムなどが含まれる。
α-オレフィン単位を形成するためのα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンなどの鎖状α-C3-12オレフィンなどが挙げられる。これらのα-オレフィンのうち、プロピレンなどのα-C3-4オレフィン(特にプロピレン)が好ましい。
ジエン単位を形成するためのジエンモノマーとしては、通常、非共役ジエン系単量体が利用される。非共役ジエン系単量体としては、例えば、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが例示できる。これらのジエンモノマーのうち、エチリデンノルボルネン、1,4-ヘキサジエン(特に、エチリデンノルボルネン)が好ましい。
代表的なエチレン-α-オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン-α-オレフィンゴム[エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-ブテンゴム(EBM)、エチレン-オクテンゴム(EOM)など]、エチレン-α-オレフィン-ジエンゴム[エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)]などが例示できる。
これらのエチレン-α-オレフィンエラストマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、耐寒性、耐熱性、耐候性に優れる点から、エチレン-α-C3-4オレフィン-ジエン三元共重合体ゴムなどのエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体ゴムが好ましく、EPDMが特に好ましい。そのため、EPDMの割合は、エチレン-α-オレフィンエラストマー全体に対して50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましく90質量%以上(特に95質量%)であり、100質量%(EPDMのみ)であってもよい。
エチレン-α-オレフィンエラストマーにおいて、エチレンとα-オレフィンとの割合(質量比)は、前者/後者=40/60~90/10、好ましくは45/55~85/15(例えば50/50~80/20)、さらに好ましくは52/48~70/30である。特に、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体において、エチレンとプロピレンとの割合(質量比)は、前者/後者=35/65~90/10、好ましくは40/60~80/20、さらに好ましくは45/55~70/30、最も好ましくは50/50~60/40であってもよい。
エチレン-α-オレフィンエラストマー(特に、EPDMなどのエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体ゴム)のジエン含量は15質量%以下(例えば0.1~15質量%)であってもよく、好ましくは10質量%以下(例えば0.3~10質量%)、さらに好ましくは7質量%以下(例えば0.5~7質量%)、より好ましくは5質量%以下(例えば1~5質量%)である。ジエン含量が多すぎると、高度な耐熱性が担保できない虞がある。
なお、本願において、ジエン含量は、エチレン-α-オレフィンエラストマーを構成する全単位中のジエンモノマー単位の質量割合を意味し、慣用の方法により測定できるが、モノマーに基づく割合であってもよい。
ジエンモノマーを含むエチレン-α-オレフィンエラストマーのヨウ素価は、例えば3~40、好ましくは5~30、さらに好ましくは10~20である。ヨウ素価が小さすぎると、ゴム組成物の架橋が不十分になって摩耗や粘着が発生し易く、逆にヨウ素価が大きすぎると、ゴム組成物のスコーチが短くなって扱い難くなると共に耐熱性が低下する傾向がある。
未架橋のエチレン-α-オレフィンエラストマーのムーニー粘度[ML(1+4)125℃]は80以下であってもよく、例えば10~80、好ましくは20~70、さらに好ましくは30~50、最も好ましくは35~45である。ムーニー粘度が高すぎると、ゴム組成物の流動性が低下して、混練りにおける加工性が低下する虞がある。
なお、本願において、ムーニー粘度は、JIS K 6300-1(2013)に準じた方法で測定でき、試験条件は、L形ロータを使用し、試験温度125℃、予熱1分、ロータ作動時間4分である。
ポリマー成分(A)中のエチレン-α-オレフィンエラストマーの割合は50質量%以上であればよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%(エチレン-α-オレフィンエラストマーのみ)である。ポリマー成分(A)中のエチレン-α-オレフィンエラストマーの割合が少なすぎると、耐熱性および耐寒性が低下する虞がある。
ポリマー成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、エチレン-α-オレフィンエラストマーに加えて、他のゴム成分、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム);水素化ニトリルゴム(水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーを含む)などの前記ジエン系ゴムの水添物など]、オレフィン系ゴム(ポリオクテニレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴムなど)、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどを含んでいてもよい。
他のゴム成分の割合は、ポリマー成分(A)中50質量%以下であってもよく、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
[カーボンブラック(B)]
本発明のゴム組成物は、前記ポリマー成分(A)に加えて、カーボンブラック(B)を含むことにより、ゴム組成物の硬度およびモジュラスを向上できる。
カーボンブラック(B)は、一般的に、一次粒子径、ヨウ素吸着量、BET比表面積などの違いにより、いくつかのグレードに分類されている。
カーボンブラックの分類について、ASTMでは、ヨウ素吸着量に基づいて、N0**~N9**に分類されるが、配合したゴム製品の性能などをベースとした従来の分類(SAF、HAF、GPF等)も利用されている。一次粒子径の小さいN110(SAF)、N220(ISAF)、N330(HAF)などはハードカーボンと称され、一次粒子径の大きいN550(FEF)、N660(GPF)、N762(SRF)などはソフトカーボンと称されることもある。ヨウ素吸着量と一次粒子径には緊密な関係があり、一次粒子径が小さいほど、ヨウ素吸着量が大きくなる。東海カーボン(株)製のシースト(登録商標)シリーズを例に分類、ヨウ素吸着量、平均一次粒子径をまとめると、表1のような関係となる。
Figure 2022133243000002
本願では、原料での分類ではなく、ゴム組成物中に含まれるカーボンブラックについて、一次粒子径が40nm以上のカーボンブラックをソフトカーボンと称し、一次粒子径が40nm未満のカーボンブラックをハードカーボンと称する。
なお、本願において、カーボンブラックの一次粒子径の測定方法としては、例えば、透過型電子顕微鏡などを用いて個数基準で測定できる。
本発明のゴム組成物では、カーボンブラック(B)は、一次粒子径40nm未満のハードカーボンを含むのが好ましい。
ハードカーボンの一次粒子径は、40nm未満(例えば15~35nm)であればよいが、最大一次粒子径は、例えば38nm以下、好ましくは35nm以下、さらに好ましくは30nm以下であってもよい。ハードカーボンの最大一次粒子径が大きすぎると、ゴム組成物の硬度およびモジュラスが低下する虞がある。最小一次粒子径は、例えば5nm以上、好ましくは8nm以上、さらに好ましくは10nm以上であってもよい。ハードカーボンの最小一次粒子径が小さすぎると、ハードカーボン自体の調製が困難となる虞がある。
ハードカーボンの平均一次粒子径は、例えば10~35nm、好ましくは15~33nm、さらに好ましくは20~32nm(特に25~30nm)程度である。ハードカーボンの平均一次粒子径が小さすぎると、ハードカーボン自体の調製が困難となる虞があり、逆に大きすぎると、ゴム組成物の硬度およびモジュラスが低下する虞がある。
ハードカーボンのBET比表面積は、例えば60~160m/g、好ましくは65~150m/g、さらに好ましくは70~140m/g、より好ましくは75~130m/g、最も好ましくは75~100m/gである。BET比表面積が小さすぎると、ゴム組成物の硬度およびモジュラスが低下する虞があり、逆に大きすぎると、ゴム組成物の硬度が高くなりすぎる虞がある。
なお、本願において、BET比表面積とは、BET法により窒素ガスを用いて測定した比表面積を意味する。
ハードカーボンのヨウ素吸着量は60g/kg以上であってもよく、例えば60~150g/kg、好ましくは65~130g/kg、さらに好ましくは70~100g/kg、最も好ましくは75~90g/kgである。ヨウ素吸着量が少なすぎると、ゴム組成物の硬度およびモジュラスが低下する虞があり、逆に多すぎると、ハードカーボン自体の調製が困難となる虞がある。
なお、本願において、カーボンブラックのヨウ素吸着量の測定方法としては、ASTM D1510-17の標準試験法に準拠して測定できる。
カーボンブラック(B)中のハードカーボンの割合は50質量%以上であればよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%(ハードカーボンのみ)である。カーボンブラック(B)中のハードカーボンの割合が少なすぎると、硬度およびモジュラスが低下する虞がある。
カーボンブラック(B)は、ハードカーボンに加えて、ソフトカーボンをさらに含んでいてもよい。ソフトカーボンの割合は、カーボンブラック(B)中50質量%以下であってもよく、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
カーボンブラック(B)の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して30質量部以上(例えば30~150質量部)が好ましく、例えば40~120質量部、好ましくは45~100質量部、さらに好ましくは50~80質量部(例えば55~75質量部)、より好ましくは50~65質量部、最も好ましくは50~60質量部である。カーボンブラック(B)の割合が少なすぎると、ゴム組成物の硬度およびモジュラスが低下することにより耐久性が低下する虞があり、逆に多すぎると、ゴム組成物が硬すぎて耐久性が低下し、伝動ベルトに適用した場合は屈曲する際の発熱量が増加してベルトの耐久性が低下する虞がある。
[老化防止剤(C)]
本発明のゴム組成物では、老化防止剤(C)が、前記式(I)で表される反応性老化防止剤を含むことにより、ゴム組成物の硬化物の耐熱老化性を向上できる。耐熱老化性を向上できる理由の詳細は不明であるが、反応性基であるマレイミド基(マレイミジル基またはマレイイミジル基)と、ジアリールアミン構造(特に、アニリノアリール基)との組み合わせによって以下のように作用していると推定できる。すなわち、反応性の高いマレイミド基を有することにより、エチレン-α-オレフィンエラストマーのポリマー鎖との反応が効率的に起こり、外部への移行や揮発を抑制でき、耐熱老化性を長期に亘って維持できると推定できる。また、ジアリールアミン構造は、アミノ基の水素が、自動酸化反応で生じたポリマーラジカルと反応しやすい上に、自身はアリール基を2つ有することによりラジカルを共鳴安定化することができるため、自動酸化反応を効果的に抑制して、耐熱老化性を向上できると推定できる。
前記式(I)において、ZおよびZの芳香環を含む2価の有機基は、アリーレン基またはビスフェノール残基であってもよい。
アリーレン基としては、C6-20アリーレン基、例えば、1,3-フェニレン基や1,4-フェニレン基などのフェニレン基、1,5-ナフチレン基や2,6-ナフチレン基などのナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基などのビフェニレン基、ビナフチレン基、ターフェニレン基、フェニルナフタレン-ジイル基などが挙げられる。これらのアリーレン基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基などのC1-4アルキル基を置換基として有していてもよい。
ビスフェノール残基(ビスフェノール類からヒドロキシル基を除いた残基)としては、例えば、ビスフェノールF残基(ジフェニルメタン-4,4’-ジイル基)、ビスフェノールA残基(ジフェニルプロパン-4,4’-ジイル基)、ビスフェノールB残基、ビスフェノールC残基、ビスフェノールAD残基、ビスフェノールG残基、ビスフェノールAP残基、ビスフェノールBP残基、ビスフェノールS残基などが挙げられる。これらのビスフェノール残基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基などのC1-4アルキル基を置換基として有していてもよい。
これらのうち、耐熱老化性を向上できる点から、フェニレン基、ナフチレン基、ビスフェノールA残基が好ましく、1,4-フェニレン基が特に好ましい。Zは、Zと異なっていてもよいが、耐熱老化性を向上できる点から、Zと同一であるのが好ましい。
マレイミド基(マレイミド環)の置換数m1およびm2は、それぞれ独立して0以上の整数であり、かつm1およびm2の少なくとも一方が1以上の整数であればよく、ZおよびZの種類に応じて適宜選択できる。好ましい置換数m1およびm2は、例えば0~2の整数、特に0~1の整数である。置換数m1およびm2が0~1の整数である場合、m1およびm2のいずれかが0であってもよく、m1およびm2の双方が1であってもよいが、硬化物の機械的特性と耐熱老化性とのバランスの点から、m1およびm2の一方が0であるのが好ましい。
これらの反応性老化防止剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記反応性老化防止剤の好適な例としては、例えば、N-(4-アニリノフェニル)マレイミド、4,4’-ビス(マレイミド)ジフェニルアミンなどが挙げられる。
前記反応性老化防止剤の割合は、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.2~2.2質量部(特に0.25~2質量部)程度の範囲から選択でき、例えば0.3~1.8質量部(特に0.5~1.5質量部)であり、好ましくは0.35~1.5質量部、さらに好ましくは0.4~1質量部、より好ましくは0.45~0.8質量部、最も好ましくは0.45~0.6質量部である。ゴム組成物の硬化物で伝動ベルト(特に、Vリブドベルト)を形成する場合、ベルト耐久性に優れる点から、前記反応性老化防止剤の割合は、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.3~1.7質量部(特に0.4~1.6質量部)が好ましい。反応性老化防止剤の割合が少なすぎると、耐熱老化性が十分に向上しない。逆に、反応性老化防止剤の割合が多すぎると、架橋が阻害されるためか、ゴム組成物の硬化物の硬度およびモジュラスが低下する。
老化防止剤(C)は、他の反応性老化防止剤を含んでいてもよい。他の反応性老化防止剤としては、反応性基として、(メタ)アクリロイル基などのビニル基を有する反応性老化防止剤などが挙げられる。他の反応性老化防止剤の割合は、老化防止剤(C)中10質量%以下であってもよく、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。他の反応性老化防止剤の割合が多すぎると、ポリマー鎖との反応性を向上できず、耐熱老化性が低下したり、ゴム組成物の硬化物で伝動ベルト(特に、Vリブドベルト)を形成する場合、ベルトの耐久性が低下する虞がある。そのため、老化防止剤(C)は、他の反応性老化防止剤(特に、(メタ)アクリロイル基を有する反応性老化防止剤)を実質的に含まないのが好ましく、他の反応性老化防止剤を含まないのが特に好ましい。
老化防止剤(C)は、非反応性老化防止剤をさらに含んでいてもよい。非反応性老化防止剤は、マレイミド基を有さない老化防止剤であってもよい。非反応性老化防止剤は、ゴム表面への移行が起こり易いために、ゴム表面付近における濃度が高くなり易い性質を有している。一方、前記反応性老化防止剤は、前述のように、エチレン-α-オレフィンエラストマーのポリマー鎖と結合するため、ゴム表面への移行は起こり難く、ゴム中に略均一に存在し易い性質を有している。そのため、前記反応性老化防止剤と非反応性老化防止剤とを併用することで、ゴムの表面付近および内部の両方の熱老化を防止することができ、伝動ベルトの耐久性を向上できる。
非反応性老化防止剤としては、慣用の非反応性老化防止剤を利用できる。慣用の非反応性老化防止剤のうち、アミン系老化防止剤およびベンズイミダゾール系老化防止剤からなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。
アミン系老化防止剤は、ゴムに配合される慣用のアミン系老化防止剤であってもよく、芳香環を有するアミンが好ましい。アミン系老化防止剤としては、例えば、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン(ODPA)、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(DCD)、スチレン化ジフェニルアミン(SDPA)、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物(TMQ)、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(ETMQ)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-(1,3-メチルへプチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(8PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン(DNPD)などが挙げられる。これらのアミン系老化防止剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのアミン系老化防止剤のうち、2級アミノ基および芳香環を有するアミン系老化防止剤が好ましく、DCDなどのジフェニルアミン骨格を有するアミン系老化防止剤が特に好ましい。
ベンズイミダゾール系老化防止剤は、ベンズイミダゾール骨格を有していればよく、ゴムに配合される慣用のベンズイミダゾール系老化防止剤であってもよい。ベンズイミダゾール系老化防止剤としては、例えば、2-メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、2-メルカプト-5-メチルベンズイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンズイミダゾール、2-メルカプト-5-カルボキシベンズイミダゾール、2-メルカプト-5-ニトロベンズイミダゾール、1,3-ジヒドロ-1-フェニル-2H-ベンズイミダゾール-2-チオン、2-メルカプトベンズイミダゾールとフェノール縮合物の混合物などが挙げられる。これらのベンズイミダゾール系老化防止剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのベンズイミダゾール系老化防止剤のうち、硫黄原子を有するベンズイミダゾール系老化防止剤が好ましく、MBIなどのチオール基を有するベンズイミダゾール系老化防止剤が特に好ましい。チオール基を有するベンズイミダゾール系老化防止剤は、亜鉛塩などの金属塩であってもよい。
これらの非反応性老化防止剤のうち、少なくともベンズイミダゾール系老化防止剤を含むのが好ましく、耐熱老化性を向上できる点から、ベンズイミダゾール系老化防止剤とアミン系老化防止剤との組み合わせが最も好ましい。
ベンズイミダゾール系老化防止剤と、アミン系老化防止剤とを組み合わせる場合、アミン系老化防止剤の割合は、ベンズイミダゾール系老化防止剤100質量部に対して100質量部以下であってもよく、例えば1~100質量部、好ましくは3~80質量部、さらに好ましくは5~50質量部、より好ましくは10~40質量部、最も好ましくは15~30質量部である。アミン系老化防止剤の割合が多すぎると、耐熱老化性が低下する虞がある。
ゴム組成物の硬化物で伝動ベルト(特に、Vリブドベルト)を形成する場合、ベルトの耐久性を低下させない点から、老化防止剤(C)は、フェノール系老化防止剤を実質的に含まないのが好ましく、フェノール系老化防止剤を含まないのが特に好ましい。フェノール系老化防止剤の割合は、老化防止剤(C)中10質量%以下であってもよく、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
老化防止剤(C)中の前記反応性老化防止剤の割合は1質量%以上であってもよく、好ましくは3質量%以上、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、15~30質量%程度であってもよい。前記反応性老化防止剤の割合は、前記非反応性老化防止剤100質量部に対して1質量部以上であってもよく、例えば1~100質量部、好ましくは3~80質量部、さらに好ましくは5~50質量部、より好ましくは10~30質量部、最も好ましくは15~25質量部である。前記反応性老化防止剤の割合が少なすぎると、耐熱老化性が低下する虞がある。
ゴム組成物の硬化物で伝動ベルト(特に、Vリブドベルト)を形成する場合、ベルト耐久性に優れる点から、老化防止剤(C)中の前記反応性老化防止剤の割合は5~50質量%(特に10~45質量%)が特に好ましく、前記反応性老化防止剤の割合は、前記非反応性老化防止剤100質量部に対して10~80質量部(特に12.5~75質量部)が特に好ましい。
老化防止剤(C)の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.3~8質量部、さらに好ましくは0.5~6質量部、より好ましくは1~5質量部、最も好ましくは2~4質量部である。老化防止剤(C)の割合が少なすぎると、耐熱老化性が低下する虞があり、多すぎると、ゴム組成物の硬化物の硬度およびモジュラスが低下する虞がある。
[架橋剤(D)]
前記ゴム組成物は、架橋剤(または加硫剤)(D)を含んでいてもよい。架橋剤(D)は、有機過酸化物および/または硫黄系架橋剤であってもよい。
有機過酸化物としては、慣用の成分、例えば、ジアシルパーオキサイド(ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなど)、パーオキシケタール[1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタンなど]、アルキルパーオキシエステル(t-ブチルパーオキシベンゾエートなど)、ジアルキルパーオキサイド[ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ビス(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなど]、ジアラルキルパーオキサイド(ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイドなど)、パーオキシカーボネート(t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチル-ヘキシルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチル-ヘキシルカーボネートなど)などが挙げられる。
これらの有機過酸化物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ジアルキル基を有するパーオキサイドが好ましく、1,3-ビス(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキサイドが特に好ましい。
硫黄系架橋剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)などが挙げられる。これらの硫黄系架橋剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄が好ましく、粉末硫黄が特に好ましい。
これらの架橋剤のうち、硬度、モジュラス、耐熱老化性を向上し易い点から、有機過酸化物を含むのが好ましく、有機過酸化物と硫黄系架橋剤との組み合わせが特に好ましい。
有機過酸化物と硫黄系架橋剤とを組み合わせる場合、硫黄系架橋剤の割合は、有機過酸化物100質量部に対して100質量部以下であってもよく、例えば1~100質量部、好ましくは3~50質量部、さらに好ましくは5~30質量部、より好ましくは7~20質量部である。硫黄系架橋剤の割合が多すぎると、硬度、モジュラス、耐熱老化性を向上するのが困難となる虞がある。
架橋剤(D)の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば1~10質量部、好ましくは1.3~8質量部、さらに好ましくは1.5~6質量部、より好ましくは1.8~5質量部、最も好ましくは2~3質量部である。
ゴム組成物の硬化物で伝動ベルト(特に、Vリブドベルト)を形成する場合、ベルト耐久性に優れる点から、有機過酸化物の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して1.5~3.5質量部(特に2~3質量部)である。有機過酸化物の割合が少なすぎると、硬度やモジュラスが低下する虞があり、多すぎると、屈曲性が低下する虞がある。
[無機充填剤(E)]
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック(B)以外の無機充填剤(フィラー)(E)をさらに含んでいてもよい。
無機充填剤としては、例えば、カーボンブラック以外の炭素質材料(グラファイトなど)、金属化合物または合成セラミックス(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物;ケイ酸カルシウムやケイ酸アルミニウムなどの金属ケイ酸塩;炭化ケイ素や炭化タングステンなどの金属炭化物;窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属窒化物;炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウムや硫酸バリウムなどの金属硫酸塩など)、鉱物質材料(ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪藻土、活性白土、アルミナ、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレイなど)などが挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらの無機充填剤のうち、酸化マグネシウムや酸化亜鉛などの金属酸化物、シリカなどの鉱物質材料が好ましく、架橋も促進できる点から、金属酸化物が特に好ましい。
無機充填剤(E)の割合は、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して1~50質量部程度の範囲から選択でき、例えば2~30質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは4~10質量部である。
[軟化剤(F)]
前記ゴム組成物は、伸びなどの機械的特性を向上できる点から、オイル類(油成分)としての軟化剤(F)をさらに含んでもよい。軟化剤(F)は、いわゆる可塑剤であってもよい。
軟化剤(F)としては、例えば、鉱物油系軟化剤{例えば、石油系軟化剤[パラフィン系オイル、脂環族系オイル(ナフテン系オイル)、芳香族系オイルなど]、コールタール系軟化剤[コールタール、クロマン-インデン樹脂など]など}、植物油系軟化剤{例えば、脂肪油系軟化剤[ステアリン酸、ステアリン酸金属塩などの脂肪酸またはその金属塩;ステアリン酸エステルなどの脂肪酸エステル;ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アマイド;脂肪油など];松樹由来の軟化剤[パインタール、ロジン、サブ(ファクチス)]など}、合成軟化剤{例えば、合成樹脂軟化剤[炭化水素系合成油(低分子量パラフィン、低分子量ワックス、フェノール・アルデヒド樹脂、液状エチレン-α-オレフィン共重合体など)、液状ゴム(液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状イソプレンゴムなど)など]、合成可塑剤(ジオクチルフタレートなどのフタル酸ジエステル、ポリエステル系可塑剤、ジオクチルセバケートなどのC6-18アルカンジカルボン酸エステルなど)など}などが挙げられる。
これらの軟化剤(F)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、パラフィン系オイルなどの石油系軟化剤、ステアリン酸などのC8-24脂肪酸類(その金属塩、エステル、アマイドを含む)が好ましく、石油系軟化剤とC8-24脂肪酸類との組み合わせが特に好ましい。
軟化剤(F)が石油系軟化剤とC8-24脂肪酸類との組み合わせである場合、C8-24脂肪酸類の割合は、石油系軟化剤100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは3~80質量部、さらに好ましくは10~50質量部、より好ましくは20~40質量部である。
軟化剤(F)の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して、例えば0.5~30質量部、好ましくは1~20質量部、さらに好ましくは2~15質量部、より好ましくは3~10質量部、最も好ましくは5~8質量部である。
ゴム組成物の硬化物で伝動ベルト(特に、Vリブドベルト)を形成する場合、ベルト耐久性に優れる点から、軟化剤(F)の割合は、ポリマー成分(A)100質量部に対して1.5~12質量部(特に2~10質量部)である。軟化剤(F)の割合が少なすぎると、屈曲性が低下する虞があり、多すぎると、硬度やモジュラスが低下する虞がある。
[他の成分(G)]
前記ゴム組成物は、必要に応じて、ゴムに配合される慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、補強剤(綿短繊維、ナイロン短繊維、アラミド短繊維などの短繊維など)、共架橋剤または架橋助剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
他の成分(G)の合計割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは2~50質量部、さらに好ましくは3~40質量部、より好ましくは4~30質量部である。
[ゴム組成物の硬化物の特性]
前記ゴム組成物の硬化物は、ゴム硬度およびモジュラスが大きい。具体的に、ゴム組成物の硬化物のゴム硬度(JIS-A)は70度以上であってもよく、例えば72~80度、好ましくは73~79度、さらに好ましくは74~78度、より好ましくは75~77度である。
なお、本願において、ゴム硬度(JIS-A)は、温度165℃、圧力2MPaで30分間プレス架橋した硬化物について、JIS K 6253(2012)に準拠して測定され、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
前記ゴム組成物の硬化物は、高モジュラスであり、100%モジュラス(100%伸びにおける引張応力)が4MPa以上であってもよく、例えば4~20MPa、好ましくは4.5~15MPa、さらに好ましくは4.8~10MPa、より好ましくは5~8MPaである。
前記ゴム組成物の硬化物の引張強さは11MPa以上であってもよく、例えば11~20MPa、好ましくは11.5~18MPa、さらに好ましくは12~15MPaである。前記ゴム組成物の硬化物の破断伸びは200%以下であってもよく、例えば150~200%、好ましくは160~190%、さらに好ましくは170~180%である。
なお、本願において、100%モジュラス、引張強さおよび破断伸びは、JIS K 6251(2017)に準拠して測定でき、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
前記ゴム組成物の硬化物は、耐熱老化性に優れており、160℃で20日間加熱後の引張強さは、加熱前の引張強さに対して65%以上(特に70%以上)であってもよく、例えば70~95%、好ましくは75~90%、さらに好ましくは80~85%である。さらに、160℃で20日間加熱後の破断伸びは、加熱前の破断伸びに対して55%以上(特に60%以上)であってもよく、例えば60~90%、好ましくは65~85%、さらに好ましくは70~80%である。
前記ゴム組成物は、用途に応じた方法で架橋した硬化物として利用される。架橋温度は、例えば120~200℃(特に150~180℃)である。
[伝動ベルト]
前記ゴム組成物の硬化物は、硬度およびモジュラスが高く、高い耐熱老化性を長期に亘って維持できるため、伝動ベルトへの適用が好ましい。
伝動ベルト(動力伝達用ベルト)の種類は、プーリと接触して動力を伝達するベルトであれば特に限定されず、摩擦伝動ベルトであってもよく、かみ合い伝動ベルトであってもよい。
摩擦伝動ベルトとしては、例えば、平ベルト、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジVベルトの内周側にコグが形成されたローエッジコグドVベルト、ローエッジVベルトの内周側および外周側の双方にコグが形成されたローエッジダブルコグドVベルトなど)、Vリブドベルト、樹脂ブロックベルトなどが挙げられる。
かみ合い伝動ベルトとしては、例えば、歯付ベルト、両面歯付ベルトなどが挙げられる。
これらの伝動ベルトは、前記ゴム組成物の硬化物を含んでいればよいが、通常、ベルト本体(特に圧縮ゴム層および/または伸張ゴム層)が前記ゴム組成物の硬化物で形成されている。
前記伝動ベルトのうち、耐側圧性を向上できる点から、VベルトまたはVリブドベルトが好ましく、耐熱老化性に優れる点から、圧縮ゴム層の側面がプーリと接するコグドVベルトまたはVリブドベルトが特に好ましい。
本発明のコグドVベルトは、ベルトの長手方向に延びる心線の少なくとも一部と接する接着ゴム層と、この接着ゴム層の一方の面に形成された伸張ゴム層と、前記接着ゴム層の他方の面に形成され、その内周面にベルトの長手方向に沿って所定の間隔をおいて形成された複数の凸部(コグ部)を有し、かつその側面でプーリに摩擦係合する圧縮ゴム層とを備えていればよい。このようなコグドVベルトには、圧縮ゴム層にのみ前記コグ部が形成されたコグドVベルト(特に、ローエッジVベルトの内周側にコグが形成されたローエッジコグドVベルト)、圧縮ゴム層に加えて、伸張ゴム層の外周面にも同様のコグ部が形成されたダブルコグドVベルト(特に、ローエッジVベルトの内周側および外周側の双方にコグが形成されたローエッジダブルコグドVベルト)が含まれる。これらのうち、高負荷であり、かつ高温の厳しい条件で使用されるため、ベルト走行中に変速比が無段階で変わる変速機に使用される変速ベルト(例えば、CTV駆動用として使用されるローエッジコグドVベルト)が特に好ましい。
図1は、本発明のローエッジコグドVベルトの一例を示す概略断面斜視図であり、図2は、図1のローエッジコグドVベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。
この例では、ローエッジコグドVベルト1は、ベルト本体の内周面に、ベルトの長手方向(図中のA方向)に沿って所定の間隔をおいて形成された複数のコグ部1aを有しており、このコグ部1aの長手方向における断面形状は略半円状(湾曲状又は波形状)であり、長手方向に対して直交する方向(幅方向又は図中のB方向)における断面形状は逆台形状である。すなわち、各コグ部1aは、ベルト厚み方向において、コグ底部1bからA方向の断面において略半円状に突出している。ローエッジコグドVベルト1は、積層構造を有しており、ベルト外周側から内周側(コグ部1aが形成された側)に向かって、補強布2、伸張ゴム層3、接着ゴム層4、圧縮ゴム層5、補強布6が順次積層されている。ベルト幅方向における断面形状は、ベルト外周側から内周側に向かってベルト幅が小さくなる台形状である。さらに、接着ゴム層4内には、芯体4aが埋設されており、前記コグ部1aは、コグ付き成形型により圧縮ゴム層5に形成されている。
コグ部の高さやピッチは、慣用のコグドVベルトと同様である。圧縮ゴム層では、コグ部の高さは、圧縮ゴム層全体の厚みに対して50~95%(特に60~80%)であり、コグ部のピッチ(隣接するコグ部の中央部同士の距離)は、コグ部の高さに対して50~250%(特に80~200%)である。伸張ゴム層にコグ部を形成する場合も同様である。
この例では、伸張ゴム層3および圧縮ゴム層5が、前記ゴム組成物の硬化物で形成されている。接着ゴム層、芯体、補強布については、慣用の接着ゴム層、芯体、補強布を利用できる。
本発明のVリブドベルトは、ベルト長手方向に沿って互いに平行して延びる複数のVリブ部を有する形態であれば、特に制限されず、例えば、図3に示す形態を有するVリブドベルトが例示される。図3は、本発明のVリブドベルトの一例を示す概略断面図である。図3に示されるVリブドベルトは、ベルト下面(内周面)からベルト上面(背面)に向かって順に、圧縮ゴム層(第1のゴム層)12、ベルト長手方向に沿って心線11を埋設した接着ゴム層(第2のゴム層)14、カバー布(織物、編物、不織布など)またはゴム組成物で構成された伸張層15を積層した形態を有している。圧縮ゴム層12には、ベルト長手方向に延びる複数の断面V字状の溝が形成され、この溝の間には断面V字形(逆台形)の複数のVリブ部13(図3に示す例では4個)が形成されており、この各Vリブ部13の二つの傾斜面(表面)が摩擦伝動面を形成し、プーリと接して動力を伝達(摩擦伝動)する。
本発明のVリブドベルトはこの形態に限定されず、少なくとも一部がプーリのVリブ溝部(V溝部)と接触可能な伝動面を有する圧縮ゴム層を備えていればよく、典型的には、伸張層と圧縮ゴム層と、その間にベルト長手方向に沿って埋設される心線とを備えていればよい。本実施形態のVリブドベルトにおいて、例えば、接着ゴム層14を設けることなく、伸張層15と圧縮ゴム層12との間に心線11を埋設してもよい。さらに、接着ゴム層14を圧縮ゴム層12または伸張層15のいずれか一方に設け、心線11を接着ゴム層14(圧縮ゴム層12側)と伸張層15との間、もしくは接着ゴム層14(伸張層15側)と圧縮ゴム層12との間に埋設する形態であってもよい。
なお、少なくとも前記圧縮ゴム層12が前記ゴム組成物の硬化物で形成されていればよく、前記接着ゴム層14は接着ゴム層として利用される慣用のゴム組成物で形成されていればよく、前記伸張層15は伸張層として利用される慣用のカバー布またはゴム組成物で形成されていればよく、前記圧縮ゴム層12と同一のゴム組成物の硬化物で形成されていなくてもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した原料の詳細を以下に示す。
[材料]
EPDM1:ダウ・ケミカル社製「Nordel IP3640」、エチレン含量55質量%、ジエン含量1.8質量%
EPDM2:ダウ・ケミカル社製「Nordel IP4640」、エチレン含量55質量%、ジエン含量4.9質量%
カーボンブラック(HAF):東海カーボン(株)製「シースト3」、平均一次粒子径28nm
含水シリカ:東ソー・シリカ(株)製「NipsilVN3」
老化防止剤A:精工化学(株)製「4Aマレイミド」、N-(4-アニリノフェニル)マレイミド
老化防止剤B:東京化成工業(株)製、N-(4-アミノフェニル)マレイミド
老化防止剤C:大内新興化学工業(株)製「ノクラックCD」、ビス[4-(2-フェニル-2-プロピル)フェニル]アミン
老化防止剤D:大内新興化学工業(株)製「ノクラックMB」、2-メルカプトベンズイミダゾール
老化防止剤E:大内新興化学工業(株)製「ノクラックMMB」、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール
老化防止剤F:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン
老化防止剤G:大内新興化学工業(株)製「ノクラックG-1」、N-フェニル-N'-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン
老化防止剤H:大内新興化学工業(株)製「ノクラックNS-7」、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン
有機過酸化物:日油(株)製「パーブチルP-40MB(K)]、有効成分40質量%
硫黄:美源化学社製「粉末硫黄」
架橋促進剤:大内新興化学工業(株)製「バルノックPM」、m-フェニレンジマレイミド
酸化亜鉛:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
パラフィンオイル:出光興産(株)製、「ダイアナプロセスオイルPW90」。
実施例1~8および比較例1~5
[ゴム硬度]
表2および3に示す組成を有する未架橋のゴムシートを温度165℃、圧力2MPaで時間30分プレス架橋し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。ゴム硬度はJIS K 6253(2012)に準拠し、架橋ゴムシートを3枚重ね合わせた積層物を試料とし、デュロメータA形硬さ試験機を用いて測定した。結果を表2および3に示す。
[M100(100%伸びにおける引張応力)]
表2および3に示す組成を有する未架橋のゴムシートを温度165℃、圧力2MPaで時間30分プレス架橋し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。この架橋ゴムシートをスーパーダンベルカッター((株)ダンベル製)で打抜いて、ダンベル状3号形の試験片を作製した。作製した試験片を用いて、JIS K 6251(2017)に準拠し、M100(100%モジュラス)、引張強さおよび破断伸度(破断伸び)を測定した。引張速度は500mm/min、試験温度は23℃とした。結果を表2および3に示す。
[熱老化後の引張強さ保持率および破断伸び保持率]
表2および3に示す組成を有する未架橋のゴムシートを温度165℃、圧力2MPaで時間30分プレス架橋し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。この架橋ゴムシートをスーパーダンベルカッター((株)ダンベル製)で打抜いて、ダンベル状3号形の試験片を作製した。JIS K 6257(2017)に準拠し、作製した試験片を160℃に設定したギヤー式老化試験機中に所定の日数放置した後取り出した。取り出した試験片を23℃で24時間放置した後、JIS K 6251(2017)に準拠し、引張強さおよび破断伸びを測定した。引張速度は500mm/min、試験温度は23℃とした。以下の式で引張強さ保持率および破断伸び保持率を計算した。結果を表2および3に示す。
引張強さ保持率(%)=(熱老化後の引張強さ/熱老化前の引張強さ)×100
破断伸び保持率(%)=(熱老化後の破断伸び/熱老化前の破断伸び)×100
Figure 2022133243000003
Figure 2022133243000004
表2の結果から明らかなように、ポリマー成分100質量部に対して、老化防止剤Aを0.25~2質量部含む実施例1~8は、硬度、モジュラス、引張強さが高く、破断伸びは小さかった。また、熱老化後の引張強さ保持率および破断伸び保持率は高かった。なかでも、老化防止剤Aの添加量を変量した実施例1~6を比較すると、老化防止剤Aの添加量が多くなる程、熱老化前の引張強さおよび破断伸びは上昇する傾向が見られたが、熱老化後の引張強さ保持率および破断伸び保持率は同程度であった。実施例2と実施例8の比較から、老化防止剤Aと合わせて老化防止剤Dを使用することで熱老化後の引張強さ保持率および破断伸び保持率が上昇しており、耐熱老化性がより向上することが確認できた。さらに、実施例2と実施例7の比較から、老化防止剤A、Dと合わせて、老化防止剤Cを使用することで、耐熱老化性が最も向上することが確認された。
一方、表3の結果から明らかなように、比較例1~3は老化防止剤Aを含まず、老化防止剤Cおよび老化防止剤Dを単独もしくは組み合わせて使用した例であるが、いずれも耐熱老化性は低かった。比較例3に関し、熱老化5日後の引張強さ保持率および破断伸び保持率は実施例と遜色ないレベルであったが、熱老化20日後の保持率は実施例と比較して大きく低下した。これは、老化防止剤がマレイミド基を有しないために外部へ移行してしまった結果、耐熱老化性を長期に亘って維持できなかったためと推測される。比較例4、5は老化防止剤Bと老化防止剤Dとを組み合わせて使用した例であるが、どちらも耐熱老化性は低かった。老化防止剤Bは老化防止剤Aと異なり、ジフェニルアミン構造を有しないために、耐熱老化性を十分に向上できなかったと推測される。
実施例9~28および比較例6~14
[ゴム硬度]
表5~7に示す組成を有する未架橋のゴムシートを用いて、実施例1と同様の方法で、試料を作製してゴム硬度を測定および評価した結果を表5~7に示す。
[M100(100%伸びにおける引張応力)]
表5~7に示す組成を有する未架橋のゴムシートを用いて、実施例1と同様の方法で、試験片を作製してM100(100%モジュラス)および破断伸度を測定および評価した結果を表5~7に示す。
[熱老化後の破断伸び保持率]
表5~7に示す組成を有する未架橋のゴムシートを用いて、実施例1と同様の方法で、試験片を作製し、破断伸び保持率を求めて評価した結果を5~7に示す。
[Vリブドベルトの作製]
まず、表面が平滑な円筒状の成形モールドの外周に、1プライ(1枚重ね)の伸張層用帆布(下記方法で作製した伸張層用帆布)を巻き付け、この帆布の外側に、表4に示すゴム組成物で形成された未架橋の接着ゴム層用シートを巻き付けた。次に、接着ゴム層用シートの上からS撚りの処理コード(下記方法で作製した処理コード)とZ撚りの処理コード(下記方法で作製した処理コード)とをピッチ1.1mmで並列に配置した状態でらせん状にスピニングして巻き付け、さらにこの上に、前記ゴム組成物で形成された未架橋の接着ゴム層用シートおよび表4に示すゴム組成物で形成された未架橋の圧縮ゴム層用シートを順に巻き付けた。圧縮ゴム層用シートの外側に可撓性ジャケットを配置した状態で、成形モールドを加硫缶に入れて架橋した。架橋して得られた筒状の架橋ゴムスリーブを成形モールドから取り出し、架橋ゴムスリーブの圧縮ゴム層をグラインダーにより研削して複数のV字状溝を同時に形成した後、円筒状架橋ゴムスリーブをカッターで周方向に輪切りするように切断することによって、3つのリブを形成した周長1100mm、平均幅10.7mmのVリブドベルト(3PK1100)を得た。得られたベルトは、図3に示す方向の断面図では、S撚りの処理コードとZ撚りの処理コードとは交互に並列していた。
Figure 2022133243000005
(伸張層用帆布の作製方法)
ポリエステル繊維と綿との混紡糸(ポリエステル繊維/綿=50/50質量比)の織布(120°広角織り、繊度は20番手の経糸と20番手の緯糸、経糸および緯糸の糸密度75本/50mm、目付量280g/m)をRFL処理液に浸漬後、乾燥させて伸張層用帆布を作製した。
(処理コードの作製方法)
1100dtexのアラミド繊維(引張弾性率70GPa)の束を撚り係数3.0で下撚りして作製した下撚り糸を4本引き揃え、下撚りとは反対方向に撚り係数3.0で上撚りし、総繊度4400dtexの諸撚りコードを作製した。諸撚りコードをRFL処理液に浸漬後、乾燥させて処理コードを作製した。上撚りの撚り方向がS撚りであるS撚りの処理コードと、上撚りの撚り方向がZ撚りであるZ撚りの処理コードとを作製した。
[ベルト耐久試験]
3PK1100のVリブドベルトを図4にレイアウトを示す試験機で走行させ、耐久性を評価した。試験機は、直径120mmの駆動プーリ(Dr.)、直径45mmのテンションプーリ(Ten.)、直径120mmの従動プーリ(Dn.)、直径85mmの背面アイドラ(Idl.)を備えていた。テンションプーリにおけるベルトの接触角が90°、背面アイドラにおけるベルトの接触角が60°となるように調節した。駆動プーリの回転方向は図の矢印の方向で、回転数は4900rpmとした。従動プーリの負荷は8.8kWとした。ベルトの初張力は395Nとした。試験温度(雰囲気温度)は150℃とし、リブ部に亀裂が発生した時点で試験終了とした。亀裂が発生するまでの時間が580時間以上を合格とした。
実施例9~28および比較例6~14の評価結果を表5~7に示す。
Figure 2022133243000006
Figure 2022133243000007
Figure 2022133243000008
表5~6の結果から明らかなように、ポリマー成分100質量部に対して、老化防止剤Aを0.25~2質量部含む実施例9~28は、ベルト耐久試験において亀裂発生までの時間が580時間以上と長く、優れた耐久性を示した。
中でも、実施例9~13の比較より、老化防止剤Aを0.5~1.5質量部含む実施例10~12は、特に耐久性に優れていた。
実施例10および実施例14~18の比較より、老化防止剤A単独よりも、老化防止剤Aとベンズイミダゾール系老化防止剤である老化防止剤Dまたは老化防止剤Eとを併用した方が、耐久性に優れることが分かる。
実施例10および実施例19~21の比較より、カーボンブラックはポリマー成分100質量部に対して50~60質量部が最適であり、カーボンブラックが40質量部と70質量部の場合はいずれも耐久性が低下した。この結果は、カーボンブラックの配合量が少ない場合は硬度やモジュラスが低下するためであり、カーボンブラックの配合量が多い場合はベルトが屈曲する際の発熱量が増加するためと考えられる。
実施例10および実施例22~24の比較より、有機過酸化物はポリマー成分100質量部に対して2~3質量部が最適であり、有機過酸化物が1質量部と4質量部の場合はいずれも耐久性が低下した。この結果は、有機過酸化物の配合量が少ない場合は硬度やモジュラスが低下するためであり、有機過酸化物の配合量が多い場合はベルトの屈曲性が低下するためと考えられる。
実施例10および実施例25~27の比較より、軟化剤はポリマー成分100質量部に対して2~10質量部が最適であり、軟化剤が20質量部の場合は耐久性が低下した。この結果は、軟化剤の配合量が多い場合は硬度やモジュラスが低下するためと考えられる。
実施例28はジエン含量の異なるEPDMを用いた例であるが、この場合も優れた耐久性を示した。
これらの結果と比較して、ポリマー成分100質量部に対して、0.2~2.2質量部の老化防止剤Aを含まない比較例6~14は、耐久性が劣っていた。比較例6は老化防止剤Aの配合量が少ない例であるが、老化防止機能が十分に得られないためか、耐久性が低かった。また、比較例7は老化防止剤Aの配合量が多い例であるが、硬度やモジュラスが低下するためか、耐久性が低かった。
比較例8~11はフェニルアミン系老化防止剤を用いた例であるが、耐久性が低かった。これは、フェニルアミン系老化防止剤はポリマー鎖と反応できないために、高温下では外部への移行や揮発が起こりやすく、耐久性が十分に向上しなかったためと考えられる。
比較例12で用いた老化防止剤Gはポリマー鎖への反応性を有すると考えられるが、マレイミド基を有する老化防止剤Aよりも反応性が劣ると考えられ、高温下における耐久性は十分に向上しなかった。
老化防止剤Hを用いた比較例13は硬度とモジュラスが大きく低下し、耐久性も低かった。フェノール系老化防止剤に分類される老化防止剤Hは酸性のため、架橋剤である有機過酸化物をイオン分解し、ゴムの架橋反応を阻害した結果であると考えられる。
比較例14で用いた老化防止剤Bはアミノ基に結合したフェニル基が1つであるために熱老化反応を抑制する効果が低く、耐久性が低下したと考えられる。
本発明のゴム組成物は、例えば、平ベルト、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト、ローエッジダブルコグドVベルトなど)、Vリブドベルト、樹脂ブロックベルトなどの摩擦伝動ベルト;歯付ベルト、両面歯付ベルトなどのかみ合い伝動ベルトなどに利用できる。特に、本発明のゴム組成物は、耐側圧性を向上できる点から、VベルトまたはVリブドベルトに好適に利用でき、高負荷・高温といったより厳しい環境で使用される変速ベルトや、自動車の補機駆動用として用いられるVリブドベルトに特に好適に利用できる。
1…伝動ベルト
2,6…補強布
3…伸張ゴム層
4…接着ゴム層
4a…芯体
5…圧縮ゴム層
11…伝動ベルト用心線
12…圧縮ゴム層
13…Vリブ部
14…接着ゴム層
15…伸張層

Claims (11)

  1. エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むポリマー成分(A)と、カーボンブラック(B)と、下記式(I)で表される反応性老化防止剤を含む老化防止剤(C)とを含み、かつ前記反応性老化防止剤の割合が前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.2~2.2質量部であるゴム組成物。
    Figure 2022133243000009
    (式中、ZおよびZは芳香環を含む2価の有機基を示し、m1およびm2は0以上の整数であり、m1およびm2の少なくとも一方は1以上の整数である)
  2. 前記式(I)において、ZおよびZがフェニレン基であり、m1およびm2が0~1の整数である請求項1記載のゴム組成物。
  3. 前記老化防止剤(C)が非反応性老化防止剤をさらに含む請求項1または2記載のゴム組成物。
  4. 前記非反応性老化防止剤が、アミン系老化防止剤およびベンズイミダゾール系老化防止剤からなる群より選択された少なくとも1種である請求項3記載のゴム組成物。
  5. 前記老化防止剤(C)の割合が、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して0.1~10質量部である請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  6. 前記カーボンブラック(B)が、一次粒子径40nm未満のハードカーボンを含む請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  7. 前記カーボンブラック(B)の割合が、前記ポリマー成分(A)100質量部に対して30質量部以上である請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  8. 架橋剤(D)をさらに含み、前記架橋剤(D)が有機過酸化物を含む請求項1~7のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム組成物の硬化物を含む伝動ベルト。
  10. VベルトまたはVリブドベルトである請求項9記載の伝動ベルト。
  11. 変速ベルトである請求項9または10記載の伝動ベルト。
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