以下、本発明の物理量センサー、複合センサー、慣性計測ユニット、携帯型電子機器、電子機器、および移動体を、添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.物理量センサー
<第1実施形態>
先ず、物理量センサーの実施形態として、ジャイロセンサー(角速度センサー)を例示し、図1、図2、および図3を参照して説明する。図1は、本発明の物理量センサーの第1実施形態に係るジャイロセンサー(角速度センサー)の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1に示すジャイロセンサーの概略構成を示す断面図である。図3は、図1に示すジャイロセンサー素子を模式的に示す平面図である。なお、図1では、基板(ベース)を概略的に図示し、また、蓋部材の図示を省略している。また、以下、物理量センサーの各実施形態の説明では、互いに直交する三つの軸をX軸(第3軸)、Y軸(第1軸)およびZ軸(第2軸)とする。また、X軸に沿う方向を「X軸方向」とも言い、Y軸方向に沿う方向を「Y軸方向」とも言い、Z軸に沿う方向を「Z軸方向」とも言う。また、Z軸は基板と蓋部材とが重なる厚み方向を示す軸であり、Y軸はジャイロセンサー素子の駆動方向に沿った軸である。さらに、説明の便宜上、Z軸方向から視たときの平面視において、蓋部材側である+Z軸方向側を「上方」もしくは+Z軸方向側の面を「上面」、これと反対側となる−Z軸方向側を「下方」もしくは−Z軸方向側の面を「下面」として説明することがある。また、各図では、説明の便宜上、必要に応じて各部の寸法を適宜誇張して図示しており、各部間の寸法比は実際の寸法比とは必ずしも一致しない。
[ジャイロセンサー]
図1に示すように、物理量センサーの第1実施形態に係るジャイロセンサー1は、X軸まわりの角速度を検知することのできる角速度センサーである。このジャイロセンサー1は、図2に示すように、センサー素子としてのジャイロセンサー素子(角速度センサー素子)4と、ジャイロセンサー素子4を収納しているパッケージ10と、を有している。
(パッケージ)
パッケージ10は、ジャイロセンサー素子4を支持している基板2(ベース)と、基板2に接合されている蓋部材3と、を有している。基板2と蓋部材3との間には、ジャイロセンサー素子4を収納している空間Sが形成されている。基板2および蓋部材3は、それぞれ、板状をなし、X軸およびY軸を含む平面であるXY平面(基準面)に沿って配置されている。
基板2には、上方(ジャイロセンサー素子4側)に開放する凹部21が設けられている。凹部21の中央部には、凹部21の底面212から突出した突出部22が設けられている。また、基板2の凹部21を除く上面23には、ジャイロセンサー素子4の一部(後述する固定部42および固定駆動部45,46)が固定されている。
蓋部材3には、下方(基板2側)に開放する凹部31が設けられている。蓋部材3は、ジャイロセンサー素子4を非接触で覆うようにして基板2上に設けられており、凹部31を除く下面33が基板2の上面23に接合している。
また、キャビティーとして機能する空間Sは、凹部21と凹部31とで形成された気密空間であり、減圧状態(例えば、1×102〜1×10-2Pa程度)となっている。これにより、角速度の検出感度を向上させることができる。
基板2の構成材料としては、特に限定されないが、絶縁性を有する材料を用いることが好ましく、具体的には、高抵抗なシリコン材料、ガラス材料を用いるのが好ましく、例えば、アルカリ金属イオン(可動イオン)を一定量含むガラス材料(例えば、パイレックス(登録商標)ガラスのような硼珪酸ガラス)を用いるのが好ましい。これにより、ジャイロセンサー素子4がシリコンを主材料として構成されている場合、基板2とジャイロセンサー素子4とを陽極接合することができる。それ以外であっても石英基板、水晶基板、或いはSOI(Silicon on Insulator)基板であっても良い。
また、蓋部材3の構成材料としては、特に限定されず、例えば、前述した基板2と同様の材料を用いることができる。
このような基板2と蓋部材3との接合方法としては、特に限定されず、基板2および蓋部材3の構成材料によっても異なる。基板2と蓋部材3との接合方法としては、例えば、接着剤、ロウ材等の接合材を用いた接合法、直接接合法、陽極接合等の固体接合法等を用いることができる。
(ジャイロセンサー素子)
図3に示すように、センサー素子としてのジャイロセンサー素子(角速度センサー素子)4は、Y軸方向に並んだ二つの素子体40(40a,40b)と、二つの固定検出部49(49a,49b)と、を有している。二つの素子体40a,40bは、図3において、+(プラス)Y軸方向および−(マイナス)Y軸方向の上下対称に構成されており、互いに同様の構成を有する。
各素子体40a,40bは、質量部41と、複数の固定部42と、複数の弾性部43と、複数の駆動部44(可動駆動電極)と、複数の固定駆動部45,46(固定駆動電極)と、検出部471,472(可動検出電極)と、複数の支持梁部48と、を有している。質量部41は、駆動部44と、フレーム473、検出部471,472および支持梁部48を含んで一体的に形成されている。即ち、検出部471,472は質量部41に含まれる形状となっている。
質量部41の外形は、Z軸方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という)において、四角形の枠状をなしており、前述のように、駆動部44、フレーム473、および検出部471,472を含んで構成されている。質量部41の外形は、具体的には、互いに平行にY軸方向に沿って延びている一対の部分と、この一対の部分の端部同士を接続していて互いに平行にX軸方向に沿って延びている一対の部分と、で構成されている。
固定部42は、一つの素子体40に対して四つ設けられており、各固定部42は、前述した基板2の上面23に固定されている。また、各固定部42は、平面視において、質量部41の外側に配置されており、本実施形態では、質量部41の各角部に対応した位置に配置されている。なお、図示では、素子体40aの−Y軸側に位置する固定部42と素子体40bの+Y軸側に位置する固定部42とを共通の固定部としている。
弾性部43は、一つの素子体40に対して本実施例では四つ設けられており、各弾性部43は、平面視において、質量部41の一部と固定部42とを接続している。本実施形態では弾性部43は、質量部41におけるフレーム473の角部に接続されているが、これに限らず質量部41を固定部42に対して変位可能な位置であれば良い。図3では、Y軸方向に質量部41を変位し得るように構成されている。また、各弾性部43は、図示では、平面視において、蛇行形状をなし、X軸方向に沿って延びる複数の梁部としての第1部分4301a,4301b,4301c,4301dと、折り返し部430を構成し、Y軸方向に沿って延びている第2部分4302とを有する(図4参照)。なお、弾性部43の形状は、所望の駆動方向(本実施形態ではY軸方向)に弾性変形することが可能な構成であれば図示の形状に限定されない。
駆動部44は、一つの素子体40に対して八つ設けられており、各駆動部44は、質量部41のY軸方向に沿って延びている部分に接続されている。具体的には、四つの駆動部44が質量部41の+X側に位置し、残りの四つの駆動部44が質量部41の−X側に位置している。各駆動部44は、質量部41からX軸方向に延出している幹部と、該幹部からY軸方向に延出している複数の枝部と、を備えた櫛歯形状をなしている。
固定駆動部45,46は、それぞれ、一つの素子体40に対して八つ設けられており、各固定駆動部45,46は、前述した基板2の上面23に固定されている。また、各固定駆動部45,46は、駆動部44に対応した櫛歯形状をなし、駆動部44を間に挟んで設けられている。
検出部471,472は、それぞれ、平面視形状が四角形状なす板状部材であり、質量部41の内側に配置され、支持梁部48によって質量部41に接続されている。検出部471,472は、それぞれ、回動軸J4まわりに回動(変位)可能となっている。
また、固定検出部49(固定検出電極)は、基板2の凹部21内に位置する突出部22上に設けられている(図2参照)。この固定検出部49は、それぞれ、平面視で四角形状をなし、検出部471,472に対向している。また、固定検出部49は、検出部471,472と離間している。
また、上述した構成の質量部41と、弾性部43と、駆動部44と、固定駆動部45の一部と、固定駆動部46の一部と、検出部471,472と、支持梁部48とは、基板2の凹部21の上方に設けられ、基板2と離間している。
上述したような素子体40は、リン、ボロン等の不純物がドープされた導電性のシリコン基板を、例えば反応性プラズマガスを用いたエッチングプロセスとデポジション(堆積)プロセスとを組み合わせたボッシュ法(Bosch process)を用いることによってパターニングすることで一括形成されている。
また、固定検出部49の構成材料としては、例えば、アルミニウム、金、白金、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO(酸化亜鉛)、或いはそれらの組み合わせ、等を用いることができる。
なお、図示はしないが、固定部42と、固定駆動部45と、固定駆動部46と、固定検出部49aと、固定検出部49bとは、それぞれ、図示しない配線および端子に電気的に接続されている。これら配線および端子は、例えば基板2上に設けられている。
以上、ジャイロセンサー1の構成について簡単に説明した。このような構成のジャイロセンサー1は、次のようにして角速度ωxを検出することができる。
まず、ジャイロセンサー1が有する駆動部44と固定駆動部45,46との間に駆動電圧を印加すると、固定駆動部45,46と駆動部44との間に周期的に強度が変化する静電引力が生じる。これにより、各弾性部43の弾性変形を伴って各駆動部44がY軸方向に振動する。このとき、素子体40aが有する複数の駆動部44と、素子体40bが有する複数の駆動部44とは、Y軸方向に互いに逆位相で振動(駆動振動)する。
このように駆動部44がY軸方向に振動している状態で、ジャイロセンサー1に角速度ωxが加わると、コリオリ力が働き、検出部471,472が回動軸J4まわりに変位する。このとき、素子体40aが備える検出部471,472と、素子体40bが備える検出部471,472とは、互いに反対方向に変位する。例えば、素子体40aが備える検出部471,472が、それぞれ+Z軸方向に変位したとき、素子体40bが備える検出部471,472が、それぞれ−Z軸方向に変位する。また、素子体40aが備える検出部471,472が、それぞれ−Z軸方向に変位したとき、素子体40bが備える検出部471,472が、それぞれ+Z軸方向に変位する。
このように検出部471,472が変位(検出振動)することにより、検出部471,472と固定検出部49との間の距離が変化する。この距離の変化に伴って、検出部471,472と固定検出部49との間の静電容量が変化する。そして、この静電容量の変化量に基づいて、ジャイロセンサー1に加わった角速度ωxを検出することができる。
上述のように、駆動部44がY軸方向に振動(駆動振動)するにあたり、理想的には、駆動部44は、非駆動時の状態からY軸方向にほぼ平行に振動することが好ましい。しかし、ジャイロセンサー素子4の形状は、加工誤差等により理想的な形状にならないことがある。特に、弾性部43を構成する梁部(第1部分4301a,4301b,4301c,4301d)の形状では、例えば、梁部の幅W1(図4参照)がばらついてしまったり、梁部の断面形状が理想的な矩形形状にならなかったりするなどの事象が生じる。このように、梁部の幅W1(図4参照)がばらつくと、弾性部43の共振周波数がばらついてしまう。また、梁部の断面形状が矩形でないと、弾性部43に質量部41を介して接続されている駆動部44の振動が、所望の駆動振動の方向であるY軸方向の振動成分だけでなく、それ以外の振動方向であるX軸方向またはZ軸方向の振動成分(不要振動成分)も含んでしまう、いわゆるクアドラチャ信号が増大してしまう。
本実施形態では、このような弾性部43の共振周波数のばらつきを低減させたり、クアドラチャ信号の増大を低減させたりすることができるよう、弾性部43の構成に特徴を持たせている。以下、図4、図5、図6A、および図6Bを参照して、弾性部43について、詳細に説明する。
(弾性部)
図4は、図3に示す弾性部の一部(A部)を模式的に示す平面図である。なお、図4には、図3に示す一点鎖線で囲まれたA部にある弾性部43を代表して図示している。図5は、弾性部の一部を模式的に示す図4のB−B断面図である。図6Aは、ドライエッチング法において、開口率の違いによって生じる形状ばらつきを説明する断面図である。図6Bは、間隔T1/間隔T2と梁部の幅W1(深部幅W2)の変化率との相関を示すグラフである。なお、図6Bにおける間隔T1は梁部と構造体との間隔であり、間隔T2は梁部と隣の梁部との間隔である。
図4に示すように、弾性部43は、平面視において、蛇行形状をなしている。弾性部43は、X軸方向(長手方向)に沿って延びる長手形状の複数の梁部としての第1部分4301a,4301b,4301c,4301dと、Y軸方向(短手方向)に沿って延びる複数の第2部分4302と、二つの第1部分4301a,4301dのそれぞれに連結された複数の第1梁部4303と、を有する。なお、第1部分4301a,4301b,4301c,4301dは、第2部分4302よりも長い。また、第1部分4301a,4301b,4301c,4301dは、概ねの境界線として、それぞれ図中に示す破線QL1,QL2,QL3,QL4,QL5,QL6,QL7,QL8によって区切られた部分をいう。第2部分4302は、隣同士の第1部分4301a,4301b,4301c,4301dを接続して折り返す、所謂折り返し部430を構成している。複数の第1部分4301a,4301b,4301c,4301dは、第2部分4302を含む折り返し部430によって折り返されて蛇行形状を成している。また、弾性部43は、その一端が図中破線QL7で示す質量部41の端部に接続され、他端が図中破線QL1で示す固定部42の端部に接続されている。
本形態の弾性部43は、四つの第1部分4301a,4301b,4301c,4301dを備えている。四つの第1部分4301a,4301b,4301c,4301dは、互いに間隔T2を有して並列するように配置されている。第1部分4301a,4301b,4301c,4301dは、外側に位置する二つの外側梁部としての第1部分4301a,第1部分4301dと、外側梁部としての第1部分4301aと第1部分4301dとの間に位置する二つの内側梁部としての第1部分4301b,第1部分4301cと、に区分することができる。第1部分4301a,4301b,4301c,4301dは、第2部分4302を含む折り返し部430によって折り返されて蛇行形状を成している。また、弾性部43は、その一端が質量部41に接続され、他端が固定部42に接続されている。
一方の外側梁部としての第1部分4301aは、一端が質量部41と接続され、構造体としての固定駆動部45に対向して配置されている。第1部分4301aは、固定駆動部45との間に間隔T1を有し、固定駆動部45の外縁に沿って延設されている。他方の外側梁部としての第1部分4301dは、一端が固定部42と接続され、固定駆動部45と反対側に配置されている。
一方の内側梁部としての第1部分4301bは、第2部分4302を介して一方端が第1部分4301aと連結され、他方端が他の第2部分4302を介して第1部分4301cと連結されている。他方端において第2部分4302を介して第1部分4301bと連結された他方の内側梁部としての第1部分4301cは、一方端において他の第2部分4302を介して第1部分4301dと連結されている。
なお、四つの第1部分4301a,4301b,4301c,4301dは、長手方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)における幅W1を、0<W1≦10(μm)を満たすように構成することが好ましい。このような、第1部分4301a,4301b,4301c,4301dに構成することにより、深さD1(図6A参照)が、20μm≦D1≦30μmである場合、第1部分4301a,4301b,4301c,4301dのアスペクト比(幅/深さ)が1/2以下になるため、ジャイロセンサー1は、小型、且つ断面形状のばらつきによって生じる複数の第1部分4301a,4301b,4301c,4301dの共振周波数のばらつきによる検出精度を向上させることができる。
第2部分4302は、第1部分4301a,4301b,4301c,4301dの長手方向でありX軸方向と交差するY軸方向(短手方向)に沿って延びるように設けられている。第2部分4302は、第1部分4301aと隣の第1部分4301bとを、+X軸側の端部にて接続して折り返す、所謂折り返し部430を構成している。第2部分4302は、同様に、第1部分4301bと隣の第1部分4301cとを、−X軸側の端部にて接続して折り返す折り返し部430、および第1部分4301cと隣の第1部分4301dとを+X軸側の端部にて接続して折り返す折り返し部430を構成している。
第1梁部4303は、第1部分4301aと構造体としての固定駆動部45との間に配置されている。第1梁部4303は、第1部分4301aとの間に間隔T3を有し、連結部4304を介して第1部分4301aに連結されている。本形態では、二つの第1梁部4303が設けられている。二つの第1梁部4303は、第1部分4301aの長手方向の中央部分に対向する位置に間隙Qを有し、第1部分4301aの長手方向に沿って延在している。なお、第1梁部4303は、概形状として、図中ハッチングで示す部分をいう。
第1梁部4303は、ジャイロセンサー素子4の形成に用いられるボッシュ法(Bosch process)などのドライエッチング時における、特に第1部分4301aの断面形状のばらつきを減少させるために設けられる。なお、この断面形状のばらつきは、ジャイロセンサー素子4の各部位の形状パターンの粗密によって生じる、ドライエッチング時のエッチング用ガスの回り込みの違いに起因するものである。以下、ドライエッチングにおいて、形状パターンの粗密によって生じる各部位の断面形状のばらつきについて、図6Aおよび図6Bを参照して説明する。
ボッシュ法などのドライエッチングでは、開口率の大きな部位、換言すれば、隣に位置する部位との間隔が大きい部位(パターン)ほど、エッチング用ガスが回り込み易く、回り込んだエッチングガスによるサイドエッチングが進み、断面形状の変化が大きくなる。これに対し、開口率の小さな部位、換言すれば、隣に位置する部位との間隔が小さい部位(パターン)は、断面形状の変化が小さくなる(マイクロローディング効果)。
具体的に、図6Aに示す弾性部43を模擬したパターンの加工例を例示して説明する。図6Aでは、ボッシュ法により、深さD1を20μm〜30μm(20μm≦D1≦30μm)の深掘りエッチングを行った時の断面を示している。図6Aに示すように、固定駆動部45との間の間隔T1を有して配置された外側梁部としての第1部分4301aと、第1部分4301aとの間の間隔T2を有して配置された内側梁部としての第1部分4301bとをボッシュ法を用いてドライエッチングする。本例では、第1部分4301aと固定駆動部45との間の間隔T1は、第1部分4301aと第1部分4301bとの間の間隔T2に対して、T2<T1の関係を満たしている。即ち、第1部分4301aと固定駆動部45との間の方が、第1部分4301aと第1部分4301bとの間よりも開口率が大きいパターンとなっている。このようなパターンにおいてドライエッチングを行うと、図6Aに示すように、大きな開口率(間隔T1)となっている第1部分4301aと固定駆動部45との間では、サイドエッチングが進み易く、小さな開口率(間隔T2)となっている第1部分4301aと第1部分4301bとの間では、サイドエッチングが進み難い。
なお、第1部分4301aと固定駆動部45との間の間隔T1は、T1≦10(μm)を満たすことが好ましい。このように外側梁部としての第1部分4301aと構造体としての固定駆動部45との間隔T1を設定することにより、より小型のジャイロセンサー1とすることができる。
上述により、第1部分4301aは、固定駆動部45側の側面にサイドエッチングを生じ、エッチングの開始される第1主面431における第1部分4301aの幅W1よりも、深掘りされた底部の第1部分4301aの深部幅W2の方が小さくなってしまう。これに対し、第1部分4301bは、第1部分4301a側も第1部分4301c側も、それぞれ間隔T2であるため、殆んどサイドエッチングが生じることなく形成され、エッチングの開始される第1主面431における第1部分4301bの幅W1と、深掘りされた底部の第1部分4301bの深部幅W3とが略等しくなる。
このように、一方に開口率が大きいパターンを有する第1部分4301aと、開口率が大きいパターンの無い第1部分4301bとの断面形状に差を生じる、つまり断面形状がばらつくことになる。そして、この断面形状のばらつきにより、質量部41を支持している弾性部43(第1部分4301aや他の第1部分4301b,第1部分4301c,4301d)の共振周波数がばらついてしまう。換言すれば、弾性部43に支持されている質量部41の共振周波数がばらついてしまい、ジャイロセンサー素子4における検出信号に影響を生じてしまう。
第1梁部4303は、開口率の大きな(間隔T1)第1部分4301aと固定駆動部45との間に配置され、固定駆動部45側の第1部分4301aの開口率を小さくすることができる。第1梁部4303は、第1部分4301aとの間隔T3が、0.8<T3/T2<3を満たすように、第1部分4301aの固定駆動部45側に配置される。
図6Bのグラフには、図6Aに示した事例における第1部分4301aと固定駆動部45との間の間隔T1と、第1部分4301aと隣の第1部分4301bとの間の間隔T2との比率(T1/T2比)と、第1部分4301aの幅W1に対する深部幅W2の変化率との相関を示している。図6Bのグラフに示されているように、T1/T2比が、3.0以上となる領域では、第1部分4301aの第1主面431の幅W1に対して、深部における深部幅W2の変化率が4%を超えている。そして、このような4%を超える幅W1の変化率では、弾性部43の共振周波数にばらつきを発生させることがある。したがって、T1/T2比が、3.0を超えるような関係となるように設定することは好ましくない。換言すれば、第1梁部4303は、第1部分4301aとの間の間隔T3と、第1部分4301aと隣の第1部分4301bとの間の間隔T2との比率であるT3/T2比を、3.0未満(T3/T2<3)とするように、第1部分4301aに対向して配置することが好ましい。
なお、図6Bのグラフに示されているように、T1/T2比が、0.8以下、つまり間隔(ギャップ)が狭いとマイクロローディング効果により第1部分4301aの幅W1が大きくなり、これより狭い間隔(ギャップ)設定ではエッチングが貫通しなくなる。したがって、第1梁部4303は、第1部分4301aとの間の間隔T3と、第1部分4301aと隣の第1部分4301bとの間の間隔T2との比率であるT3/T2比は、0.8<T3/T2<3を満たすように設定することが好ましい。
このように、弾性部43は、T3/T2比を、0.8<T3/T2<3とするように、第1部分4301aに対して第1梁部4303を配置させることにより、第1部分4301aと他の第1部分4301b,4301c,4301dとの断面形状のばらつきを小さくして、貫通させることができ、弾性部43(質量部41)の共振周波数のばらつきを低減させることができる。
なお、第1梁部4303と第1部分4301aとの間の間隔T3は、0.8<T3/T2≦2.0を満たすことがさらに好ましい。このようにT3/T2比を設定すれば、図6Bのグラフに示されているように、第1部分4301aの幅W1に対する深部幅W2の変化率が2%程度と軽微になり、第1部分4301aと他の第1部分4301b,第1部分4301c,4301dとの断面形状のばらつきをさらに小さくして、貫通させることができ、弾性部43(質量部41)の共振周波数のばらつきをより低減させることができる。
また、第1梁部4303と第1部分4301aとの間の間隔T3は、0.9≦T3/T2≦1.1を満たすことがより好ましい。このようにT3/T2比を設定すれば、図6Bのグラフに示されているように、第1部分4301aの幅W1に対する深部幅W2の変化は、10%以内となり、幅W1の変化が殆んど出現しなくなり、第1部分4301aと他の第1部分4301b,第1部分4301c,4301dとの断面形状のばらつきを殊更小さくして、貫通させることができる。これにより、複数の第1部分4301a,4301b,4301c,4301dの断面形状のばらつきによって生じる弾性部43(質量部41)の共振周波数のばらつきを著しく低減させることができる。
なお、第1梁部4303は、固定駆動部45側の第1部分4301aに限らず、固定駆動部45側と反対側に位置する第1部分4301dに設けてもよい。この場合、第1部分4301cと反対側の第1部分4301dに対向するように、連結部4304aを介して第1梁部4303aを配置する。ここで、第1部分4301dと第1梁部4303aとの間の間隔などの配置パターン(配置構成)は、上述した固定駆動部45側の第1梁部4303と同様にすればよい。
弾性部43を構成する第1部分4301a,4301b,4301c,4301dは、X軸方向に沿った方向からの形状が(Y軸およびZ軸を含む平面であるYZ平面に平行な横断面形状が)矩形形状をなす。この第1部分4301a,4301b,4301c,4301dの外周面は、一対の主面としての第1主面431および第2主面432(図5参照)と、一対の側面としての第1側面433および第2側面434と、を有している。
第1主面431および第2主面432は、それぞれ、X軸およびY軸を含む平面であるXY平面に沿った平坦面である。第1主面431が、+Z軸側の面(上面)であり、第2主面432が−Z軸側の面(下面)である。本実施形態では、第1主面431および第2主面432は、それぞれ、蛇行形状をなし、X軸方向に沿って延びる部分と、Y軸方向に沿って延びている部分とを有する。
第1側面433は、−Y軸側の面であり、第2側面434は、+Y軸側の面である。本実施形態では、第1側面433および第2側面434は、それぞれ、一つの弾性部43に対して四つ設けられている(図4参照)。第1側面433は、その+Z軸側の辺が第1主面431に繋がり、−Z軸側の辺が第2主面432に繋がっている。一方、第2側面434の+Z軸側の辺は、第1主面431に繋がり、第2側面434の−Z軸側の辺は、第2主面432に繋がっている。
ここで、上述したように、ジャイロセンサー1は、基板2と、基板2に固定されている固定部42と、「第1軸」としてのY軸に沿った第1方向に駆動する駆動部44と、駆動部44に作用するコリオリ力によりY軸に直交している「第2軸」としてのZ軸に沿った第2方向に変位可能な検出部471,472と、駆動部44と固定部42とを接続している質量部41と、質量部41と固定部42とを接続している弾性部43と、を有する。また、弾性部43の外周面は、「主面」としての第1主面431および第2主面432と、「側面」としての第1側面433および第2側面434と、を有する。
また、本実施形態では、駆動部44の振動により変位する弾性部43と、駆動部44の振動と相対的に変位せずコリオリ力に応じて変位する支持梁部48とを有するため、弾性部43の加工による支持梁部48への影響が少ない特徴がある。支持梁部48は、Z軸方向に変位可能とするものであればよく、例えば、捻ればね(トーションバネ)、折り返し状のばね、Z方向に薄い板状のばねであってもよい。
以上、説明した第1実施形態に係るジャイロセンサー1によれば、外側梁部としての第1部分4301aと構造体としての固定駆動部45との間隔T1と、複数の梁部としての第1部分4301a,4301b,4301c,4301dの互いの間隔T2とが、T2<T1の関係である場合に、第1梁部4303を設ける。換言すれば、第1部分4301aと固定駆動部45との間の開口率が大きい場合、第1部分4301aの固定駆動部45側に、第1部分4301aに対向する第1梁部4303を設ける。この第1梁部4303により、第1部分4301aと固定駆動部45との間の開口率を小さくすることができ、複数の第1部分4301a,4301b,4301c,4301dの互いの開口率に近付けることができる。これにより、深さD1を20μm〜30μm(20μm≦D1≦30μm)の深掘りエッチング(深溝エッチング)を行った場合においても、エッチング用ガスの回り込みによる断面形状のばらつきを小さくすることができ、断面形状のばらつきによって生じる複数の第1部分4301a,4301b,4301c,4301dを含む弾性部43の共振周波数のばらつきを減少させ、検出精度の低下を低減することができる。
なお、間隔T1は、上述の構成のように、一つのジャイロセンサー素子4の内で第1部分4301aと構造体としての固定駆動部45との間の距離とすることができるがこれに限らない。間隔T1は、例えば、複数のジャイロセンサー素子4がウェーハ上に配置された状態でエッチングを行う場合などでは、隣に位置するジャイロセンサー素子4の部位を構造体としてみなし、この構造体と当該第1部分4301aとの間の距離(間隔)としたり、フレーム(支持枠)と当該第1部分4301aとの間の距離(間隔)としたりすることができる。
<第2実施形態>
次に、物理量センサーの第2実施形態について、図7、および図8を参照して説明する。図7は、物理量センサーの第2実施形態に係るジャイロセンサーの概略構成を示す平面図である。図8は、図7に示す弾性部の一部(C部)を模式的に示す平面図である。なお、以下では、第1実施形態と同様の、互いに直交する三つの軸をX軸、Y軸およびZ軸を用いて説明する。また、以下の説明では、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図7および図8に示すように、第2実施形態に係るジャイロセンサー1Aは、第1実施形態と同様に、X軸まわりの角速度を検知することのできる角速度センサーである。このジャイロセンサー1Aは、図7に示すように、センサー素子としてのジャイロセンサー素子(角速度センサー素子)505と、ジャイロセンサー素子(角速度センサー素子)505を収容するパッケージ(不図示)と、を備えている。なお、パッケージは、前述の第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
ジャイロセンサー素子505は、X軸方向に並んだ二つの質量部501,502と、二つの固定検出部507,508と、支持梁を含む複数の固定部510,540と、連結梁520と、複数の弾性部530と、複数の駆動部551,552と、を有している。二つの質量部501,502は、+(プラス)X軸方向および−(マイナス)X軸方向に対して、対称に構成されており、互いに同様の構成を有する。
質量部501,502は、支持梁を含む固定部510と、支持梁を含む複数の固定部540と、駆動部551,552とに連結されている。また、質量部501と質量部502とは、それぞれの間を、固定部510を挟んで+Y軸側と−Y軸側のそれぞれに設けられた連結梁520によって連結されている。質量部501,502は、固定部510,540、連結梁520、複数の弾性部530、および駆動部551,552を含んで一体的に形成されている。
支持梁を含む固定部510は、質量部501と質量部502との間に配置され、湾曲形状の支持梁を介して質量部501および質量部502を変位可能に支持している。支持梁を含む複数の固定部540は、質量部501の駆動部551側と、質量部502の駆動部552側とに、それぞれ二つずつ設けられている。複数の固定部540は、支持梁を介して質量部501および質量部502を変位可能に支持している。
駆動部551は、支持梁550を介して質量部501に連結されている。駆動部552は、質量部501,502に対して駆動部551と反対側に配置され、支持梁550を介して質量部502に連結されている。各駆動部551,552は、質量部501,502のY軸方向に沿って延びている部分に連結されている。各駆動部551,552は、質量部501,502に沿ってY軸方向に伸びる幹部と、該幹部からX軸方向に延出している複数の枝部と、を備えた櫛歯形状をなしている。各駆動部551,552は、図示しない固定駆動部に相対して配置される。
固定検出部507,508(固定検出電極)は、質量部501,502のそれぞれに対向して設けられている。この固定検出部507,508は、質量部501,502と離間している。
複数の弾性部530は、駆動部551,552の幹部の両端部にそれぞれ連結されている。即ち、本形態では、四つの弾性部530が設けられている。複数の弾性部530は、駆動部551,552を介して質量部501,502に連結されている。複数の弾性部530は、XY平面内において駆動部551,552を変位し得るように構成されている。また、各弾性部530は、Z軸方向からの平面視において、蛇行形状をなし、Y軸方向に沿って延びる複数の梁部としての第1部分5301と、折り返し部533を構成し、X軸方向に沿って延びている第2部分5302とを有する(図8参照)。
図8に示すように、弾性部530は、Z軸方向からの平面視において、蛇行形状をなしている。弾性部530は、Y軸方向に沿って延びる長手形状の複数の梁部としての第1部分5301と、X軸方向に沿って延びる第2部分5302と、X軸方向に沿って延びる第3部分5306と、X軸方向に沿って延びる第4部分5305と、二つの第1部分5301のそれぞれに連結された複数の第1梁部5303と、を有する。なお、図8における間隔T1は梁部と構造体との間隔であり、間隔T2は梁部と隣の梁部との間隔である。また、第1部分5301は、第2部分5302よりも長い。また、第1部分5301は、概ねの境界線として、それぞれ図中に示す破線QL11,QL12,QL13,QL14によって区切られた部分をいう。
また、本形態の弾性部530は、二つの第1部分5301を備えている。二つの第1部分5301は、互いに間隔T2を有して並列するように配置されている。一方の第1部分5301は、一端が第3部分5306を介して駆動部551の幹部に接続されている。ここで、第1部分5301と駆動部551の幹部との間の間隔T1は、第1部分5301と第1部分5301との間の間隔T2に対して、T2<T1の関係を満たしている。他方の第1部分5301は、一端が第4部分5305を介して固定部531に接続されている。第2部分5302は、一方の第1部分5301の第3部分5306と反対側の他端と、他方の第1部分5301の第4部分5305と反対側の他端とを接続している。このように接続された第1部分5301は、第2部分5302を含む折り返し部533によって折り返されて蛇行形状を成している。なお、二つの第1部分5301は、長手方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)における幅W1を、0<W1≦2μmを満たすように構成することが好ましい。
第1梁部5303は、一方の第1部分5301と構造体としての駆動部551の幹部との間に配置されている。第1梁部5303は、第1部分5301との間に間隔T3を有し、連結部5304を介して第1部分5301に連結されている。本形態では、二つの第1梁部5303が設けられている。二つの第1梁部5303は、第1部分5301の長手方向の中央部分に対向する位置に間隙を有し、第1部分5301の長手方向に沿って延在している。なお、第1梁部5303は、概形状として、図中ハッチングで示す部分をいう。
第1梁部5303は、第1部分5301との間の間隔T3と、第1部分5301と隣の第1部分5301との間の間隔T2との比率であるT3/T2比を、0.8<T3/T2<3.0とするように、第1部分5301に対向して配置することが好ましい。また、第1梁部5303と第1部分5301との間の間隔T3は、さらに、0.8<T3/T2≦2.0を満たすことがさらに好ましい。また、第1梁部5303と第1部分5301との間の間隔T3は、0.9≦T3/T2≦1.1を満たすことが殊更好ましい。
第1梁部5303は、第1実施形態と同様に、ジャイロセンサー素子505の形成に用いられるボッシュ法(Bosch process)などのドライエッチング時における、特に第1部分5301の断面形状のばらつきを減少させるために設けられる。なお、この断面形状のばらつきは、ジャイロセンサー素子505の各部位の形状パターンの粗密によって生じる、ドライエッチング時のエッチング用ガスの回り込みの違いに起因するものであるが、第1実施形態と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
なお、第1梁部5303は、駆動部551の幹部側の第1部分5301側に限らず、駆動部551の幹部の配置側と反対側(固定部531側)に位置する第1部分5301に設けてもよい。この場合、固定部531側の第1部分5301に対向するように、連結部5304を介して第1梁部5303を配置する。ここで、第1部分5301と第1梁部5303との間の間隔などの配置パターン(配置構成)は、上述した駆動部551の幹部側の第1梁部5303と同様にすればよい。
また、弾性部530の形状は、所望の駆動方向に弾性変形することが可能な構成であれば図示の形状に限定されない。また、本実施形態の弾性部530は、駆動部551の幹部の両端部にそれぞれ接続されているが、これに限らず質量部501(駆動部551)を固定部531に対して変位可能に支持できる位置であれば良い。
このような第1梁部5303を含む第1部分5301を備えた弾性部530の構成、および利点については、前述の第1実施形態と同様であり、前述にて詳細に説明してあるので、ここでの説明は省略する。
上述の第2実施形態に係るジャイロセンサー1Aによれば、第1実施形態に係るジャイロセンサー1と同様に、エッチング用ガスの回り込みによる断面形状のばらつきを小さくすることができ、断面形状のばらつきによって生じる複数の第1部分5301を含む弾性部530の共振周波数のばらつきを減少させ、検出精度の低下を低減することができる。
なお、間隔T1は、上述の構成のように、一つのジャイロセンサー素子505の内で第1部分5301と構造体としての駆動部551の幹部との間の距離とすることができるがこれに限らない。間隔T1は、例えば、複数のジャイロセンサー素子505がウェーハ上に配置された状態でエッチングを行う場合などでは、隣に位置するジャイロセンサー素子505の部位(構造体)と当該第1部分5301との間の距離(間隔)としたり、フレーム(支持枠)と当該第1部分5301との間の距離(間隔)としたりすることができる。
<第3実施形態>
次に、物理量センサーの第3実施形態について、図9、および図10を参照して説明する。図9は、物理量センサーの第3実施形態に係るジャイロセンサーの概略構成を示す平面図である。図10は、図9に示す弾性部の一部(F部)を模式的に示す平面図である。なお、以下では、第1実施形態と同様の、互いに直交する三つの軸をX軸、Y軸およびZ軸を用いて説明する。また、以下の説明では、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図9および図10に示すように、第3実施形態に係るジャイロセンサー1Bは、X軸まわり、またはY軸回りの角速度を検知することのできる角速度センサーである。このジャイロセンサー1Bは、図9に示すように、センサー素子としてのジャイロセンサー素子(角速度センサー素子)605と、ジャイロセンサー素子(角速度センサー素子)605を収容するパッケージ(不図示)と、を備えている。なお、パッケージは、前述の第1実施形態と同様なものを用いることができるので、説明を省略する。
ジャイロセンサー素子605は、X軸およびY軸方向に並んだ四つの素子体605a,605b,605c,605dと、四つの固定検出部(不図示)と、を有している。四つの素子体605a,605b,605c,605dは、図9に示すように、+(プラス)X、+Y軸方向、+X、−(マイナス)Y軸方向、−X、+Y軸方向、および−X、−Y軸方向に在って、互いに同様の構成を有する。
各素子体605a,605b,605c,605dは、質量部601a,601b,601c,601dを備えている。各素子体605a,605b,605c,605dは、素子体605aと素子体605bとを繋ぐ支持梁部640と、素子体605cと素子体605dとを繋ぐ支持梁部640と、二つの支持梁部640と固定部510と繋ぐ連結梁部620と、によって、変位可能に固定部510に支持されている。
以下、素子体605aを代表例として構成を説明する。素子体605aは、質量部601aと、質量部601aの+X軸方向側の端部と−X軸方向側の端部とを円弧状に繋ぐ外枠部613a,614aと、外枠部613a,614aに接続された駆動部610と、駆動部610に対向する固定駆動電極部618と、質量部601aを固定部633に対して変位可能に支持する弾性部630と、を有している。素子体605aを構成する質量部601a、外枠部613a,614a、駆動部610、および弾性部630は、各素子体605a,605b,605c,605dを固定部510に繋ぐ支持梁部640と連結梁部620を含み一体的に形成されている。
質量部601aの外形は、Z軸方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という)において、円状の中央部と、X軸方向に沿って該中央部から+X軸方向および−X軸方向の両方向に延びる概扇形状の延在部と、を含む形状をなしている。
外枠部614aは、質量部601aの+X軸方向側の外縁部と−X軸方向側の外縁部とを、+Y軸方向で円弧状に繋いでいる。外枠部613aは、質量部601aの+X軸方向側の外縁部と−X軸方向側の外縁部とを、−Y軸方向で円弧状に繋いでいる。
駆動部610は、外枠部613aと質量部601aとの間、および外枠部614aと質量部601aとの間のそれぞれに、二構成ずつ設けられている。駆動部610は、外枠部613a,614aと質量部601aとを繋ぐ複数の幹部611と、幹部611から両側に円弧状に延びている複数の枝部612とを含む。複数の枝部612は、質量部601aの中央部の外縁と略同心円をなした円弧状に配列されている。
固定駆動電極部618は、駆動部610の幹部611の両側に配置された枝部612のそれぞれに対して対向するように、質量部601aの中央部の外縁と略同心円をなした円弧状の櫛歯状に配列されている。
複数の弾性部630は、質量部601a,601b,601c,601dのそれぞれの四隅部分に連結されている。即ち、本形態では、弾性部630が16箇所に設けられている。以下、素子体605aを代表例として構成を説明する。複数の弾性部630は、一端が固定部633に接続され、他端が質量部601aに接続されている。複数の弾性部630は、質量部601aを変位し得るように構成されている。図10に示すように、各弾性部630は、平面視において、蛇行形状をなし、X軸方向に沿って延びる複数の梁部としての第1部分6301と、折り返し部631を構成し、Y軸方向に沿って延びている第2部分6302とを有する。
図10に示すように、弾性部630は、X軸方向に沿って延びる長手形状の複数の梁部としての第1部分6301と、Y軸方向に沿って延びる第2部分6302と、Y軸方向に沿って延びる第3部分6306と、二つの第1部分6301のそれぞれに連結された複数の第1梁部6303a,6303bと、を有する。なお、図10における間隔T1は梁部(第1部分6301)と構造体(質量部601a)との間隔であり、間隔T2は梁部(第1部分6301)と隣の梁部(第1部分6301)との間隔である。また、第1部分6301は、第2部分6302よりも長い。また、第1部分6301は、概ねの境界線として、それぞれ図中に示す破線QL21,QL22,QL23,QL24,QL25,QL26,QL27によって区切られた部分をいう。第2部分6302は、第1部分6301と隣の第1部分6301との二つの端部を接続して折り返す、所謂折り返し部631を構成している。複数の第1部分6301は、第2部分6302を含む折り返し部631によって折り返されて蛇行形状を成している。また、弾性部630は、その一端が第3部分6306を介して質量部601aに接続され、他端が固定部633に接続されている。
また、本形態の弾性部630は、複数の第1部分6301を備えている。複数の第1部分6301は、互いに間隔T2を有して並列するように配置されている。質量部601a側(−Y軸方向側)の第1部分6301は、折り返し部631と反対側の端が第3部分6306を介して質量部601aに接続されている。ここで、第1部分6301と構造体としての質量部601aとの間の間隔T1は、第1部分6301と第1部分6301との間の間隔T2に対して、T2<T1の関係を満たしている。固定部633側(+Y軸方向側)の第1部分6301は、折り返し部631と反対側の端が固定部633に接続されている。第2部分6302は、隣り合う第1部分6301同士の端を接続し、折り返し部631を構成している。このように接続された複数の第1部分6301は、第2部分6302を含む折り返し部631によって折り返されて蛇行形状を成している。なお、複数の第1部分6301は、長手方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)における幅W1を、0<W1≦2(μm)を満たすように構成することが好ましい。
第1梁部6303aは、質量部601a側(−Y軸方向側)の第1部分6301と構造体としての質量部601aとの間に配置されている。第1梁部6303aは、第1部分6301との間に間隔T3を有し、連結部6304aを介して第1部分6301に連結されている。第1梁部6303aは、第1部分6301の長手方向に沿って延在している。
第1梁部6303aは、第1部分6301との間の間隔T3と、隣り合う第1部分6301同士の間隔T2との比率であるT3/T2比が、0.8<T3/T2<3.0となるように、第1部分6301に対向して配置することが好ましい。また、第1梁部6303aと第1部分6301との間の間隔T3は、さらに、0.8<T3/T2≦2.0を満たすことがさらに好ましい。また、第1梁部6303aと第1部分6301との間の間隔T3は、0.9≦T3/T2≦1.1を満たすことが殊更好ましい。
第1梁部6303aは、第1実施形態と同様に、ジャイロセンサー素子605の形成に用いられるボッシュ法(Bosch process)などのドライエッチング時における、特に第1部分6301の断面形状のばらつきを減少させるために設けられる。なお、この断面形状のばらつきは、ジャイロセンサー素子605の各部位の形状パターンの粗密によって生じる、ドライエッチング時のエッチング用ガスの回り込みの違いに起因するものであるが、第1実施形態と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
なお、第1梁部6303aは、質量部601a側の第1部分6301側に限らず、質量部601aの配置側と反対側(固定部633側)に位置する第1部分6301に設けてもよい。この場合、図10に示されているように、固定部633側の第1部分6301に対向するように、連結部6304bを介して第1梁部6303bを配置する。ここで、第1部分6301と第1梁部6303bとの間の間隔などの配置パターン(配置構成)は、上述した質量部601a側の第1梁部6303aと同様にすればよい。
また、弾性部630の形状は、所望の駆動方向に弾性変形することが可能な構成であれば図示の形状に限定されない。また、本実施形態の弾性部630は、質量部601aの両脇にそれぞれ接続されているが、これに限らず、例えば質量部601aのX軸方向の両端の辺など、質量部601aを固定部633に対して変位可能に支持できる位置であれば良い。
このような第1梁部6303a,6303bを含む第1部分6301を備えた弾性部630の構成、および利点については、前述の第1実施形態と同様であり、前述にて詳細に説明してあるので、ここでの説明は省略する。
上述の第3実施形態に係るジャイロセンサー1Bによれば、第1実施形態に係るジャイロセンサー1と同様に、エッチング用ガスの回り込みによる断面形状のばらつきを小さくすることができ、断面形状のばらつきによって生じる複数の第1部分6301を含む弾性部630の共振周波数のばらつきを減少させ、検出精度の低下を低減することができる。
なお、間隔T1は、上述の構成のように、一つのジャイロセンサー素子605の内で第1部分6301と構造体としての質量部601aとの間の距離とすることができるがこれに限らない。間隔T1は、例えば、複数のジャイロセンサー素子605がウェーハ上に配置された状態でエッチングを行う場合などでは、隣に位置するジャイロセンサー素子605の構造体と当該第1部分6301との間の距離(間隔)としたり、フレーム(支持枠)と当該第1部分6301との間の距離(間隔)としたりすることができる。
(複合センサー)
次に、図11を参照して、前述のジャイロセンサー1,1A,1Bのいずれかを備えた複合センサーの構成例について説明する。図11は、複合センサーの概略構成を示す機能ブロック図である。
図11に示す複合センサー900は、例えば、自動車、ロボットなどの運動体(被装着装置)の姿勢や挙動(慣性運動量)を検出する、3軸の角速度センサーと、3軸の加速度センサーと、を備えた、いわゆる6軸モーションセンサーとして機能する。
図11に示すように、複合センサー900は、1軸の角速度を検出可能な三つの角速度センサー920x,920y,920zと、3軸の加速度を検出可能な加速度センサー950と、を備えている。角速度センサー920x,920y,920zとしては、特に限定されず、コリオリの力を利用した前述のジャイロセンサー1,1A,1Bのいずれかを用いることができる。角速度センサー920x,920y,920zは、それぞれ上述した実施形態のように、検出精度の低下を低減させたセンサーであり、安定した高精度の角速度検出が可能である。加速度センサー950は、3軸方向の加速度をそれぞれ測定するために、独立したセンサーを備えることもできる。
このような複合センサー900によれば、上述の実施形態に係るジャイロセンサー1,1A,1Bのいずれかを適用した角速度センサー920x,920y,920zと、3軸の加速度を検出可能な加速度センサー950とによって容易に複合センサー900を構成することができ、例えば角速度データや加速度データを容易に取得することができる。
<慣性計測ユニット>
次に、図12および図13を参照して、慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)について説明する。図12は、慣性計測ユニットの概略構成を示す分解斜視図である。図13は、慣性計測ユニットの慣性センサー素子の配置例を示す斜視図である。
図12に示す慣性計測ユニット2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車や、ロボットなどの運動体(被装着装置)の姿勢や、挙動(慣性運動量)を検出する装置である。慣性計測ユニット2000は、3軸の加速度センサーと、3軸の角速度センサーと、を備えた、いわゆる6軸モーションセンサーとして機能する。
慣性計測ユニット2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また、正方形の対角線方向に位置する2箇所の頂点近傍に、固定部としてのネジ穴2110が形成されている。この2箇所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測ユニット2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンや、デジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
慣性計測ユニット2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300と、を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。また、センサーモジュール2300は、インナーケース2310と、基板2320と、を有している。
アウターケース2100の外形は、慣性計測ユニット2000の全体形状と同様に、平面形状が略正方形の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2箇所の頂点近傍に、それぞれネジ穴2110が形成されている。また、アウターケース2100は、箱状であり、その内部にセンサーモジュール2300が収納されている。
インナーケース2310は、基板2320を支持する部材であり、アウターケース2100の内部に収まる形状となっている。また、インナーケース2310には、基板2320との接触を防止するための凹部2311や後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。このようなインナーケース2310は、接合部材2200(例えば、接着剤を含浸させたパッキン)を介してアウターケース2100に接合されている。また、インナーケース2310の下面には接着剤を介して基板2320が接合されている。
図13に示すように、基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサー2350などが実装されている。また、基板2320の側面には、X軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340xおよびY軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。なお、角速度センサー2340z,2340x,2340yとしては、特に限定されず、コリオリの力を利用した前述のジャイロセンサー1,1A,1Bのいずれかを用いることができる。また、加速度センサー2350としては、特に限定されず、静電容量型の加速度センサーなどを用いることができる。
また、基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。制御IC2360は、MCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、慣性計測ユニット2000の各部を制御する。記憶部には、加速度、および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。なお、基板2320には、その他にも複数の電子部品が実装されている。
以上、慣性計測ユニット2000について説明した。このような慣性計測ユニット2000は、角速度センサー2340z,2340x,2340yおよび加速度センサー2350と、これら各センサー2340z,2340x,2340y,2350の駆動を制御する制御IC2360(制御回路)と、を含んでいる。これにより、上述したジャイロセンサー1の効果を享受でき、信頼性の高い慣性計測ユニット2000が得られる。
<携帯型電子機器>
次に、ジャイロセンサー1,1A,1Bのいずれかを用いた携帯型電子機器について、図14および図15に基づき、詳細に説明する。以下、携帯型電子機器の一例として、腕時計型の活動計(アクティブトラッカー)を示し、ジャイロセンサー1を適用した構成として説明する。
腕時計型の活動計(アクティブトラッカー)であるリスト機器1000は、図14に示すように、バンド1032,1037等によってユーザーの手首等の部位(被検体)に装着され、デジタル表示の表示部150を備えるとともに無線通信が可能である。上述した実施形態に係るジャイロセンサー1は、角速度を測定する角速度センサー114(図15参照)として、加速度を計測するセンサーなどと共にリスト機器1000に組込まれている。
リスト機器1000は、少なくとも角速度センサー114(図15参照)が収容されているケース1030と、ケース1030に収容され、角速度センサー114からの出力データを処理する処理部100(図15参照)と、ケース1030に収容されている表示部150と、ケース1030の開口部を塞いでいる透光性カバー1071と、を備えている。ケース1030の透光性カバー1071のケース1030の外側には、ベゼル1078が設けられている。ケース1030の側面には、複数の操作ボタン1080,1081が設けられている。以下、図15も併せて参照しながら、さらに詳細に説明する。
加速度センサー113は、互いに交差する(理想的には直交する)3軸方向の各々の加速度を検出し、検出した3軸加速度の大きさ、および向きに応じた信号(加速度信号)を出力する。また、角速度センサー114は、互いに交差する(理想的には直交する)3軸方向の各々の角速度を検出し、検出した3軸角速度の大きさ、および向きに応じた信号(角速度信号)を出力する。
表示部150を構成する液晶ディスプレイ(LCD)では、種々の検出モードに応じて、例えば、GPSセンサー110や地磁気センサー111を用いた位置情報、移動量や加速度センサー113、もしくは角速度センサー114などを用いた運動量などの運動情報、脈拍センサー115などを用いた脈拍数などの生体情報、もしくは現在時刻などの時刻情報などが表示される。なお、温度センサー116を用いた環境温度を表示することもできる。
通信部170は、ユーザー端末と図示しない情報端末との間の通信を成立させるための各種制御を行う。通信部170は、例えば、Bluetooth(登録商標)(BTLE:Bluetooth Low Energyを含む)、Wi−Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)、Zigbee(登録商標)、NFC(Near field communication)、ANT+(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応した送受信機やUSB(Universal Serial Bus)等の通信バス規格に対応したコネクターを含んで構成される。
処理部100(プロセッサー)は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。処理部100は、記憶部140に格納されたプログラムと、操作部120(例えば操作ボタン1080,1081)から入力された信号とに基づき、各種の処理を実行する。処理部100による処理には、GPSセンサー110、地磁気センサー111、圧力センサー112、加速度センサー113、角速度センサー114、脈拍センサー115、温度センサー116、計時部130の各出力信号に対するデータ処理、表示部150に画像を表示させる表示処理、音出力部160に音を出力させる音出力処理、通信部170を介して情報端末と通信を行う通信処理、バッテリー180からの電力を各部へ供給する電力制御処理などが含まれる。
このようなリスト機器1000では、少なくとも以下のような機能を有することができる。
1.距離:高精度のGPS機能により計測開始からの合計距離(移動距離)や移動軌跡を計測する。
2.ペース:ペース距離計測値から、現在の走行ペースを表示する。
3.平均スピード:走行開始から現在までの平均スピードを算出し表示する。
4.標高:GPS機能により、標高を計測し表示する。
5.ストライド:GPS電波が届かないトンネル内などでも歩幅を計測し表示する。
6.ピッチ:1分あたりの歩数を計測し表示する。
7.心拍数:脈拍センサーにより心拍数を計測し表示する。
8.勾配:山間部でのトレーニングやトレイルランにおいて、地面の勾配を計測し表示する。
9.オートラップ:事前に設定した一定距離や一定時間を走った時に、自動でラップ計測を行う。
10.運動消費カロリー:消費カロリーを表示する。
11.歩数:運動開始からの歩数の合計を表示する。
なお、リスト機器1000は、ランニングウォッチ、ランナーズウォッチ、デュアスロンやトライアスロン等マルチスポーツ対応のランナーズウォッチ、アウトドアウォッチ、および衛星測位システム、例えばGPSを搭載したGPSウォッチ、等に広く適用できる。
また、上述では、衛星測位システムとしてGPS(Global Positioning System)を用いて説明したが、他の全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用してもよい。例えば、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)、等の衛星測位システムのうち1又は2以上を利用してもよい。また、衛星測位システムの少なくとも一つにWAAS(Wide Area Augmentation System)、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)等の静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS:Satellite-based Augmentation System)を利用してもよい。
このような携帯型電子機器は、ジャイロセンサー1、および処理部100を備えているので、優れた信頼性を有している。
<電子機器>
次に、ジャイロセンサー1,1A,1Bのいずれかを用いた電子機器について、図16〜図18に基づき、詳細に説明する。なお、以下の説明では、ジャイロセンサー1を適用した構成を例示して説明する。
先ず、図16を参照して、電子機器の一例であるモバイル型のパーソナルコンピューターについて説明する。図16は、電子機器の一例であるモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を模式的に示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1108を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。このようなパーソナルコンピューター1100には、角速度センサーとして機能するジャイロセンサー1が内蔵されており、ジャイロセンサー1の検出データに基づいて制御部1110が、例えば姿勢制御などの制御を行なうことができる。
図17は、電子機器の一例であるスマートフォン(携帯電話機)の構成を模式的に示す斜視図である。
この図において、スマートフォン1200は、上述したジャイロセンサー1が組込まれている。ジャイロセンサー1によって検出された検出データ(角速度データ)は、スマートフォン1200の制御部1201に送信される。制御部1201は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成されており、受信した検出データからスマートフォン1200の姿勢や、挙動を認識して、表示部1208に表示されている表示画像を変化させたり、警告音や、効果音を鳴らしたり、振動モーターを駆動して本体を振動させることができる。換言すれば、スマートフォン1200のモーションセンシングを行い、計測された姿勢や、挙動から、表示内容を変えたり、音や、振動などを発生させたりすることができる。特に、ゲームのアプリケーションを実行する場合には、現実に近い臨場感を味わうことができる。
図18は、電子機器の一例であるディジタルスチールカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
この図において、ディジタルスチールカメラ1300のケース(ボディー)1302の背面には、表示部1310が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部1310は、被写体を電子画像として表示するファインダーとしても機能する。また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部1310に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。また、このディジタルスチールカメラ1300では、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリー1308に格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。このようなディジタルスチールカメラ1300には、角速度センサーとして機能するジャイロセンサー1が内蔵されており、ジャイロセンサー1の検出データに基づいて制御部1316が、例えば手振れ補正などの制御を行なうことができる。
このような電子機器は、ジャイロセンサー1、および制御部1110,1201,1316を備えているので、優れた信頼性を有している。
なお、ジャイロセンサー1を備える電子機器は、図16のパーソナルコンピューター、図17のスマートフォン(携帯電話機)、図18のディジタルスチールカメラの他にも、例えば、タブレット端末、時計、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、地震計、歩数計、傾斜計、ハードディスクの振動を計測する振動計、ロボットやドローンなど飛行体の姿勢制御装置、自動車の自動運転用慣性航法に使用される制御機器等に適用することができる。
<移動体>
次に、ジャイロセンサー1,1A,1Bのいずれかを用いた移動体を図19に示し、詳細に説明する。なお、以下の説明では、ジャイロセンサー1を適用した構成を例示して説明する。図19は、移動体の一例である自動車の構成を示す斜視図である。
図19に示すように、自動車1500にはジャイロセンサー1が内蔵されており、例えば、ジャイロセンサー1によって車体1501の姿勢を検出することができる。ジャイロセンサー1の検出信号は、車体の姿勢を制御する姿勢制御部としての車体姿勢制御装置1502に供給され、車体姿勢制御装置1502は、その信号に基づいて車体1501の姿勢を検出し、検出結果に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪1503のブレーキを制御したりすることができる。また、ジャイロセンサー1は、他にもキーレスエントリーシステム、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロールシステム(エンジンシステム)、自動運転用慣性航法の制御機器、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。
また、移動体に適用されるジャイロセンサー1は、上記の例示の他にも、例えば、二足歩行ロボットや電車などの姿勢制御、ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター、およびドローンなどの遠隔操縦あるいは自律式の飛行体の姿勢制御、農業機械(農機)、もしくは建設機械(建機)などの姿勢制御、ロケット、人工衛星、船舶、AGV(無人搬送車)、および二足歩行ロボットなどの制御において利用することができる。以上のように、各種移動体の姿勢制御の実現にあたって、ジャイロセンサー1、およびそれぞれの制御部(不図示)が組み込まれる。
このような移動体は、ジャイロセンサー1、および制御部(例えば、姿勢制御部としての車体姿勢制御装置1502)を備えているので、優れた信頼性を有している。
以上、物理量センサー、複合センサー、慣性計測ユニット、携帯型電子機器、電子機器、および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
また、前述した実施形態では、X軸、Y軸およびZ軸が互いに直交しているが、互いに交差していれば、これに限定されず、例えば、X軸がYZ平面の法線方向に対して若干傾いていてもよいし、Y軸がXZ平面の法線方向に対して若干傾いていてもよいし、Z軸がXY平面の法線方向に対して若干傾いていてもよい。なお、若干とは、物理量センサー(ジャイロセンサー1)がその効果を発揮することができる範囲を意味し、具体的な傾き角度(数値)は、構成等によって異なる。