JP2021006624A - 光学フィルム、フレキシブル表示装置、及び光学フィルムの製造方法 - Google Patents

光学フィルム、フレキシブル表示装置、及び光学フィルムの製造方法 Download PDF

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宏司 西岡
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紘子 杉山
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Takashi Arimura
孝 有村
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Abstract

【課題】高い耐衝撃性を有する樹脂フィルムを提供する。【解決手段】ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む光学フィルムであって、該光学フィルムの飛行時間型二次イオン質量分析法により得られる、CH3のイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)が0.2以上であり、かつ、CH3のイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(IK)の割合(IK/ICH3)が0.2以上である、光学フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルム、フレキシブル表示装置、及び光学フィルムの製造方法に関する。
現在、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置は、携帯電話やスマートウォッチといった種々の用途で広く活用されている。このような画像表示装置の前面板としてはガラスが用いられてきたが、ガラスは非常に剛直であり、割れやすいため、例えばフレキシブル表示装置の前面板材料としての利用は難しい。そのため、ガラスに代わる材料の一つとして高分子材料の活用が検討され、例えばポリイミド系樹脂を用いる光学フィルムが検討されている(例えば特許文献1)。
特開2018−119132号公報
しかし、本発明者の検討によれば、このようなフレキシブル表示装置の前面板材料として利用される光学フィルムは、使用者が直接触ったり、周囲の物体が衝突したりするため、該接触や衝突が繰り返し行われると、表面に凹み等のキズが生じ、光学特性や視認性が低下する場合があることがわかった。
そのため本発明は、物体衝突の繰り返しによる光学特性や視認性の低下を抑制できる、耐衝撃性に優れる光学フィルム、及び該光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、樹脂フィルム中に含まれる成分の種類と量に着目し、鋭意検討を行った。その結果、光学フィルムにおける、飛行時間型二次イオン質量分析法により得られるCHのイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)が0.2以上であり、かつ、CHのイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(I)の割合(I/ICH3)が0.2以上である場合、驚くべきことに、光学フィルムの耐衝撃性を高めやすいことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む光学フィルムであって、該光学フィルムの飛行時間型二次イオン質量分析法により得られる、CHのイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)が0.2以上であり、かつ、CHのイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(I)の割合(I/ICH3)が0.2以上である、光学フィルム。
〔2〕ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は芳香族系の樹脂である、前記〔1〕に記載の光学フィルム。
〔3〕ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂における全構成単位に対する芳香族系モノマーに由来する構成単位の割合が60モル%以上である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の光学フィルム。
〔4〕厚さが10〜100μmであり、全光線透過率が80%以上である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光学フィルム。
〔5〕ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂の重量平均分子量が200,000以上である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の光学フィルム。
〔6〕ポリイミド系樹脂はポリアミドイミド樹脂である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の光学フィルム。
〔7〕ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂はテレフタル酸に由来する構成単位を含む、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の光学フィルム。
〔8〕光学フィルムの明度Lは90以上である、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の光学フィルム。
〔9〕フレキシブル表示装置の前面板用のフィルムである、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の光学フィルム。
〔10〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置。
〔11〕タッチセンサをさらに備える、前記〔10〕に記載のフレキシブル表示装置。
〔12〕偏光板をさらに備える、前記〔10〕又は〔11〕に記載のフレキシブル表示装置。
〔13〕(a)ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、少なくとも1種のナトリウム含有成分と、少なくとも1種のカリウム含有成分と、溶媒とを少なくとも含む、樹脂組成物を調製する工程、ここで、該ナトリウム含有成分は、ナトリウム原子を含む化合物、ナトリウム及びナトリウムイオンからなる群から選択され、該カリウム含有成分は、カリウム原子を含む化合物、カリウム及びカリウムイオンからなる群から選択される、
(b)前記樹脂組成物を支持材に塗布して塗膜を形成する工程、及び
(c)前記塗膜を乾燥させて、光学フィルムを形成する工程
を少なくとも含む、前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
本発明によれば、耐衝撃性に優れる光学フィルムを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
本発明の光学フィルムは、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む光学フィルムであって、該光学フィルムの飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)により得られる、CHのイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)が0.2以上であり、かつ、CHのイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(I)の割合(I/ICH3)が0.2以上である。
本発明の光学フィルムにおいて、CHのイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)及びCHのイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(I)の割合(I/ICH3)は、飛行時間型二次イオン質量分析法(Time−of−Flight Secondary Ion Mass Spectrometry:本明細書において「TOF−SIMS」とも称する)により、光学フィルムのCHのイオン強度(ICH3)、Naのイオン強度(INa)及びKのイオン強度(I)を測定し、INa及びIのそれぞれをICH3で除することにより算出される。なお、本明細書において、飛行時間型二次イオン質量分析法により測定されるCHのイオン強度(ICH3)とは、測定データにおいてCHイオンに帰属されるピークの積分値とし、Naのイオン強度(INa)とは、測定データにおいてNaイオンに帰属されるピークの積分値とし、Kのイオン強度(I)とは、測定データにおいてKイオンに帰属されるピークの積分値とする。
TOF−SIMSは質量分析法の一種であり、TOF−SIMSによれば、試料の最表面に存在する元素あるいは分子種を非常に高い検出感度で得ることができ、また、試料の最表面に存在する元素あるいは分子種の分布も調べることができる。
TOF−SIMSは、高真空中でイオンビーム(一次イオン)を試料に照射し、表面から放出されるイオンを、その飛行時間差を利用して質量分離する手法である。一次イオンを照射すると、正又は負の電荷を帯びたイオン(二次イオン)が試料表面から放出されるが、軽いイオン程速く、重いイオン程遅く飛行するため、二次イオンが発生してから検出されるまでの時間(飛行時間)を測定すれば、発生した二次イオンの質量を計算することができる。
TOF−SIMSによる測定において、CHイオンは質量15.02u付近に、Naイオンは質量22.99u付近に、Kイオンは質量38.96u付近に検出される。また、これらのイオンは、正(ポジティブ)イオン分析と、負(ネガティブ)イオン分析のどちらにおいても検出されるイオンである。本発明において、CHのイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)、及び、CHのイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(I)の割合(I/ICH3)は、正イオン分析で検出された割合であってもよいし、負イオン分析で検出された割合であってもよい。本発明における割合(INa/ICH3)について、正イオン分析で検出された割合及び負イオン分析で検出された割合の少なくとも一方の割合が0.2以上であれば、本発明における割合(INa/ICH3)が0.2以上であるという要件を満たす。また、本発明における割合(I/ICH3)について、正イオン分析で検出された割合及び負イオン分析で検出された割合の少なくとも一方の割合が0.2以上であれば、本発明における割合(I/ICH3)が0.2以上であるという要件を満たす。より高い検出感度が得られる観点からは、正イオン分析を用いた条件が好ましい。
TOF−SIMSによる測定は、光学フィルムについて、飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いて、一次イオンがBi3++、一次イオンの加速電圧が25kV、照射イオン電流が0.23pA、測定範囲が200μm×200μmの条件で、正イオン分析又は負イオン分析により実施できる。TOF−SIMSによる測定は、例えば実施例に記載の方法に従って行うことができる。光学フィルムの表面又は断面の少なくとも一部について測定された前記割合(INa/ICH3)及び割合(I/ICH3)が前記範囲内であればよいが、光学フィルム内部の組成が光学フィルムの機械的強度により影響しやすいと推察されることから、光学フィルムの断面について測定された割合(INa/ICH3)及び割合(I/ICH3)が上記の範囲内であることが好ましい。
飛行時間型二次イオン質量分析法により得られる、CHのイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)が0.2以上であり、かつ、CHのイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(I)の割合(I/ICH3)が0.2以上である本発明の光学フィルムによれば、驚くべきことに、光学フィルムの耐衝撃性を向上させることができる。ここで、飛行時間型二次イオン質量分析法により得られる、CHのイオン強度(ICH3)、Naのイオン強度(INa)、及び、Kのイオン強度(I)とは、光学フィルム中に存在する炭素原子及び/又は炭素イオンの量と、ナトリウム原子及び/又はナトリウムイオンの量と、カリウム原子及び/又はカリウムイオンの量とを相対的に表している。上記割合(INa/ICH3)が0.2以上であることは、光学フィルム中に存在する炭素原子及び/又は炭素イオンの総量に対して一定量以上のナトリウム原子(Na)及び/又はナトリウムイオンが存在することを表している。上記割合(I/ICH3)が0.2以上であることは、光学フィルム中に存在する炭素原子及び/又は炭素イオンの総量に対して一定量以上のカリウム原子(K)及び/又はカリウムイオンが存在することを表している。なお、炭素原子及び炭素イオンがCHイオンとして検出される理由は、飛行時間型二次イオン質量分析法において、発生した各種二次イオンはプロトン付加体の形でも検出されるという特徴があり、炭素原子においてはプロトン付加体としてCHイオンが同時に発生するためである。
ナトリウム原子及び/又はナトリウムイオン、並びに、カリウム原子及び/又はカリウムイオンが一定量以上存在することにより、光学フィルムの耐衝撃性が向上する理由は明らかではなく、本発明は後述するメカニズムに何ら限定されないが、例えば次のようなメカニズムにより耐衝撃性が向上すると考えられる。なお、本明細書において、光学フィルムを飛行時間型二次イオン質量分析した際にNaのイオン強度(INa)として検出されると考えられる、光学フィルムに含まれ得るナトリウム原子を含む化合物、ナトリウム及び/又はナトリウムイオンを、「ナトリウム含有成分」とも称する。なお、ナトリウム原子を含む化合物とは、ナトリウム原子を分子の構成原子として含む化合物である。また、光学フィルムを飛行時間型二次イオン質量分析した際にKのイオン強度(I)として検出されると考えられる、光学フィルムに含まれ得るカリウム原子を含む化合物、カリウム及び/又はカリウムイオンを、「カリウム含有成分」とも称する。なお、カリウム原子を含む化合物とは、カリウム原子を分子の構成原子として含む化合物である。
本発明の光学フィルムを製造する際、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む組成物中にナトリウム含有成分(ナトリウム原子を含む化合物、ナトリウム及び/又はナトリウムイオン)及びカリウム含有成分(カリウム原子を含む化合物、カリウム及び/又はカリウムイオン)が含まれることによって、該樹脂に含まれるイミド結合及び/又はアミド結合、好ましくはポリイミド系樹脂に含まれるイミド結合と、ナトリウム含有成分及びカリウム含有成分との間に、何らかの相互作用(例えば、イミド結合やアミド結合のカルボニル基とナトリウムイオンとの間、並びに、イミド結合やアミド結合のカルボニル基とカリウムイオンとの間の、静電的な相互作用)が生じると考えられる。その結果、得られた光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂が、ナトリウム含有成分及びカリウム含有成分と相互作用した状態でフィルム中に存在しているか、又は、ナトリウム含有成分及びカリウム含有成分とポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂との相互作用に起因して該樹脂の配向状態が変わることにより、光学フィルムの耐衝撃性が向上すると考えられる。また、ナトリウム含有成分又はカリウム含有成分のいずれか一方のみが光学フィルム中に存在する場合と比較して、これらの両方の成分が存在する場合、原子半径、イオン半径、及び/又は、分子サイズが互いに異なるナトリウム含有成分とカリウム含有成分とが光学フィルム中に共存することになり、その結果、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂のパッキングが強くなり、光学フィルムの耐衝撃性が向上することも考えられる。なお、上記の考察は、何ら本発明を限定するものではない。ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂のイミド結合及び/又はアミド結合と相互作用しやすいと考えられる観点からは、光学フィルム中に含まれるナトリウム含有成分及びカリウム含有成分はイオン化した状態であることが好ましい。
CHのイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)は、光学フィルムの耐衝撃性を高めやすい観点から、好ましくは0.95以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.2以上、さらにより好ましくは1.4以上、とりわけ好ましくは1.5以上、とりわけより好ましくは3以上、とりわけさらに好ましくは5以上、ことさら好ましくは7以上、ことさらより好ましくは10以上、最も好ましくは12以上である。割合(INa/ICH3)の上限は、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含むワニスの成膜性を高めやすく、光学フィルムの均一性を高めやすい観点から、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下、さらにより好ましくは25以下、とりわけ好ましくは20以下である。
CHのイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(I)の割合(I/ICH3)は、光学フィルムの耐衝撃性を高めやすい観点から、好ましくは0.95以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.2以上、さらにより好ましくは1.4以上、とりわけ好ましくは1.5以上、とりわけより好ましくは3以上、とりわけさらに好ましくは5以上、ことさら好ましくは10以上、最も好ましくは12以上である。割合(I/ICH3)の上限は、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含むワニスの成膜性を高めやすく、光学フィルムの均一性を高めやすい観点から、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下、さらにより好ましくは25以下、とりわけ好ましくは20以下である。
割合(INa/ICH3)と割合(I/ICH3)の合計値は、光学フィルムの耐衝撃性を高めやすい観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.5以上、さらにより好ましくは2以上、とりわけ好ましくは4以上、とりわけより好ましくは5以上、とりわけさらに好ましくは10以上、ことさら好ましくは15以上、最も好ましくは20以上である。割合(I/ICH3)の上限は、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含むワニスの成膜性を高めやすく、光学フィルムの均一性を高めやすい観点から、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下、さらにより好ましくは30以下、とりわけ好ましくは25以下である。
割合(INa/ICH3)及び割合(I/ICH3)を上記の範囲に調整する方法は特に限定されないが、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む本発明の光学フィルムにおける、ナトリウム含有成分(ナトリウム原子を含む化合物、ナトリウム及び/又はナトリウムイオン)及びカリウム含有成分(カリウム原子を含む化合物、カリウム及び/又はカリウムイオン)の含有量を調整する方法、ならびに、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量を調整する方法が挙げられる。具体的には、光学フィルムにおけるナトリウム含有成分の含有量を大きくすると、該光学フィルムのTOF−SIMSにより得られるNaのイオン強度(INa)も大きくなる。また、光学フィルムにおけるカリウム含有成分の含有量を大きくすると、該光学フィルムのTOF−SIMSにより得られるKのイオン強度(I)も大きくなる。光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量を大きくすると、該光学フィルムのTOF−SIMSにより得られるCHのイオン強度(ICH3)も大きくなる。そのため、光学フィルムにおけるナトリウム含有成分の含有量を増やすと、割合(INa/ICH3)の値は大きくなり、光学フィルムにおけるカリウム含有成分の含有量を増やすと、割合(I/ICH3)の値は大きくなり、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量を大きくすると、割合(INa/ICH3)及び割合(I/ICH3)の値は小さくなる。上記の方法により、割合(INa/ICH3)及び割合(I/ICH3)を所望の範囲に調整することができる。
本発明の光学フィルムにおいて、TOF−SIMSによるCHのイオン強度(ICH3)、Naのイオン強度(INa)及びKのイオン強度(I)は特に限定されず、割合(INa/ICH3)及び割合(I/ICH3)の値が上記の範囲となればよいが、TOF−SIMSによる測定の精度を確保しやすい観点から、Naのイオン強度(INa)及びKのイオン強度(I)が、それぞれ、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上となる条件で測定を行うことが好ましい。
割合(INa/ICH3)が0.2以上であり、かつ、割合(I/ICH3)が0.2以上である本発明の光学フィルムは、高い耐衝撃性を有する。本明細書において、耐衝撃性とは、光学フィルムの表面に周囲の物体が衝突しても、光学フィルムに凹み等の傷が生じにくい、及び/又は、残存しにくいことを表す。光学フィルムの耐衝撃性が高い場合、光学フィルムの表面に凹み等の傷が生じにくい、及び/又は、残存しにくいことにより、光学フィルムの光学特性や視認性の低下を抑制しやすい。また、本発明の光学フィルムにおいては、特に集中荷重を受けた際の耐衝撃性を向上させることができ、光学フィルムの特性が悪化する起点となる微小な凹みの発生も抑制できる。光学フィルムの耐衝撃性は、例えば実施例に記載するような耐衝撃性試験における凹み量を測定する耐衝撃性試験により測定することができる。本発明の光学フィルムにおいては、上記の耐衝撃性試験における凹みの深さが、好ましくは29μm以下、より好ましくは27μm以下、さらに好ましくは26μm以下、さらにより好ましくは25μm以下、とりわけ好ましくは24μm以下である。
割合(INa/ICH3)が0.2以上であり、かつ、割合(I/ICH3)が0.2以上である本発明の光学フィルムの弾性率は、好ましくは5.0GPa以上、より好ましくは5.1GPa以上、さらに好ましくは5.2GPa以上であり、通常100GPa以下である。弾性率は、引張試験機(例えば、チャック間距離50mm、引張速度10mm/分の条件)を用いて測定できる。なお、光学フィルムの弾性率を単に向上させるだけでは、光学フィルムの靭性が低く、十分な耐衝撃性が得られない場合もある。しかし、本発明の光学フィルムは、高い耐衝撃性を有する。また、本発明の光学フィルムによれば、光学フィルムに含まれる樹脂の重量平均分子量が比較的低い場合であっても、光学フィルムの耐衝撃性を高めることができる。
本発明の光学フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは88%以上、さらにより好ましくは89%以上、とりわけ好ましくは90%以上、とりわけより好ましくは91%以上である。全光線透過率が上記の下限以上であると、光学フィルムを、特に前面板として、画像表示装置に組み込んだ際に視認性を高めやすい。本発明の光学フィルムは通常、高い全光線透過率を示すので、例えば、透過率の低いフィルムを用いた場合と比べて、一定の明るさを得るために必要な表示素子等の発光強度を抑えることが可能となる。このため、消費電力を削減することができる。例えば、本発明の光学フィルムを画像表示装置に組みこむ場合、バックライトの光量を減らしても明るい表示を得られる傾向があり、エネルギーの節約に貢献できる。全光線透過率の上限は、通常100%以下である。なお、全光線透過率は、例えばJIS K 7105:1981又はJIS K 7361−1:1997に準拠してヘーズコンピュータを用いて測定できる。また、全光線透過率は、後述する光学フィルムの厚さの範囲における全光線透過率であってよい。
本発明の光学フィルムのヘーズは、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下、さらにより好ましくは0.15%以下、とりわけ好ましくは0.14%以下、とりわけより好ましくは0.1%以下であり、通常0.01%以上である。光学フィルムのヘーズが上記の上限以下であると、光学フィルムを、特に前面板として、画像表示装置に組み込んだ際に、視認性を高めやすい。なお、ヘーズは、JIS K 7105:1981又はJIS K 7136:2000に準拠してヘーズコンピュータを用いて測定できる。
本発明の光学フィルムの黄色度(以下、YI値とも称する)は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.2以下であり、好ましくは−5以上、より好ましくは−2以上である。光学フィルムのYI値が上記の上限以下であると、透明性が良好となり、画像表示装置の前面板に使用した場合に、高い視認性に寄与することができる。は、なお、YI値は紫外可視近赤外分光光度計を用いて300〜800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、YI=100×(1.2769X−1.0592Z)/Yの式に基づいて算出できる。
本発明の光学フィルムの明度L値は、光学フィルムの透明性、視認性を高めやすい観点から、好ましくは90以上、より好ましくは93以上、さらに好ましくは95以上である。L値の上限は特に限定されず、100以下であればよい。上記の明度L値は、分光光度計を用いて測定することができ、例えば実施例に記載する方法により測定することができる。
本発明の光学フィルムの厚さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上、さらにより好ましくは30μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下であり、これらの上限と下限の組合せであってよい。光学フィルムの厚さが上記範囲内であると、光学フィルムの耐衝撃性をより高めやすい。なお、光学フィルムの厚さは、マイクロメーターを用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の光学フィルムにおける、耐屈曲性試験における屈曲回数(屈曲半径R=1mm)は、好ましくは150,000回以上、より好ましくは180,000回以上、さらに好ましくは200,000回以上である。屈曲回数が上記の下限以上であると、フレキシブル表示装置等の前面板材料として十分な耐屈曲性を有する。なお、耐屈曲性試験における屈曲回数は、折り曲げ試験機を用いて、屈曲半径(曲率半径)Rが1mmの条件で、光学フィルムの繰り返し折り曲げを行い、該フィルムに割れが生じる時点までの往復の折り曲げ回数(1往復を1回とする)を示す。
<ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂>
本発明の光学フィルムは、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む。本明細書において、ポリイミド系樹脂とは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド前駆体樹脂、及び、ポリアミドイミド前駆体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を表す。ポリイミド樹脂は、イミド基を含む繰返し構造単位を含有する樹脂であり、ポリアミドイミド樹脂は、イミド基及びアミド基の両方を含む繰返し構造単位を含有する樹脂である。ポリイミド前駆体樹脂及びポリアミドイミド前駆体樹脂は、それぞれ、イミド化によりポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂を与える、イミド化前の前駆体であり、ポリアミック酸とも称される樹脂である。また、本明細書において、ポリアミド系樹脂は、アミド基を含む繰返し構造単位を含有する樹脂である。本発明の光学フィルムは、1種類のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂を含んでいてもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を組合せて含んでいてもよい。本発明の光学フィルムは、光学フィルムの化学的安定性と耐衝撃性を両立しやすい観点から、ポリイミド系樹脂を含むことが好ましく、該ポリイミド系樹脂は、好ましくはポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂であり、より好ましくはポリアミドイミド樹脂である。
本発明の好ましい一実施形態において、光学フィルムの耐衝撃性をより高めやすい観点から、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は芳香族系の樹脂であることが好ましい。本明細書において、芳香族系の樹脂とは、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂に含まれる構成単位が主に芳香族系の構成単位である樹脂を表す。
上記の好ましい一実施形態において、光学フィルムの耐衝撃性をより高めやすい観点から、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂に含まれる全構成単位に対する芳香族系モノマーに由来する構成単位の割合は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、とりわけ好ましくは85モル%以上である。ここで、芳香族系モノマーに由来する構成単位とは、芳香族系の構造、例えば芳香環を少なくとも一部に含むモノマーに由来し、芳香族系の構造、例えば芳香環を少なくとも一部に含む構成単位である。芳香族系モノマーとしては、例えば芳香族テトラカルボン酸化合物、芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であるか、又は、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。また、ポリアミド系樹脂は、式(2)で表される構成単位を有するポリアミド樹脂であることが好ましい。以下において式(1)及び式(2)について説明するが、式(1)についての説明は、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の両方に関し、式(2)についての説明は、ポリアミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の両方に関する。
Figure 2021006624
式(1)で表される構成単位は、テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位であり、式(2)で表される構成単位は、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位である。
式(2)において、Zは、2価の有機基であり、好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基又はフッ素置換された炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又はフッ素置換された炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数4〜40の2価の有機基であり、より好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基、フッ素置換された炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又はフッ素置換された炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい、環状構造を有する炭素数4〜40の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。Zの有機基として、後述する式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基及び炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が例示され、Zのヘテロ環構造としてはチオフェン環骨格を有する基が例示される。光学フィルムの黄色度を抑制(YI値を低減)しやすい観点から、式(20)〜式(29)で表される基、及び、チオフェン環骨格を有する基が好ましい。本発明の一実施形態において、ポリアミド系樹脂及びポリアミドイミド樹脂は、Zとして1種類の有機基を含んでいてもよいし、2種類以上の有機基を含んでいてもよい。
Zの有機基としては、式(20’)、式(21’)、式(22’)、式(23’)、式(24’)、式(25’)、式(26’)、式(27’)、式(28’)及び式(29’):
Figure 2021006624
[式(20’)〜式(29’)中、W及び*は、式(20)〜式(29)において定義する通りである]
で表される2価の有機基がより好ましい。なお、式(20)〜式(29)及び式(20’)〜式(29’)における環上の水素原子は、炭素数1〜8の炭化水素基、フッ素置換された炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フッ素置換された炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。
ポリアミド系樹脂又はポリアミドイミド樹脂が、式(2)中のZが上記の式(20’)〜式(29’)のいずれかで表される構成単位を有する場合、ポリアミド系樹脂又はポリアミドイミド樹脂は、該構成単位に加えて、次の式(d1):
Figure 2021006624
[式(d1)中、R24は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R25は、R24又は−C(=O)−*を表し、*は結合手を表す]
で表されるカルボン酸由来の構成単位をさらに有することが、ワニスの成膜性を高めやすく、得られる光学フィルムの均一性を得やすい観点から好ましい。
24において、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及び炭素数6〜12のアリール基としては、それぞれ、後述する式(3)中のR〜Rに関して例示のものが挙げられる。構成単位(d1)としては、具体的には、R24及びR25がいずれも水素原子である構成単位(ジカルボン酸化合物に由来する構成単位)、R24がいずれも水素原子であり、R25が−C(=O)−*を表す構成単位(トリカルボン酸化合物に由来する構成単位)等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、ポリアミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂は、複数種のZを含み得、複数種のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。特に、本発明の光学フィルムの耐衝撃性を高めやすく、かつ、光学特性を高めやすい観点から、Zの少なくとも一部が、式(3a):
Figure 2021006624
[式(3a)中、R及びRは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R及びRに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、A、m及び*は式(3)中のA、m及び*と同じであり、t及びuは互いに独立に0〜4の整数である]
で表されることが好ましく、式(3):
Figure 2021006624
[式(3)中、R〜Rは、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R〜Rに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、互いに独立に、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−、−S−、−CO−又は−N(R)−を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
*は結合手を表す]
で表されることがより好ましい。
式(3)及び式(3a)において、Aは、互いに独立に、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−、−S−、−CO−又は−N(R)−を表し、光学フィルムの耐屈曲性の観点から、好ましくは−O−又は−S−を表し、より好ましくは−O−を表す。
、R、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。R及びRは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。光学フィルムの表面硬度及び柔軟性の観点から、R〜Rは、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。ここで、R〜R、R及びRに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
式(3a)中のt及びuは、互いに独立に、0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらにより好ましくは0である。
式(3)及び式(3a)中のmは0〜4の範囲の整数であり、mがこの範囲内であると、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすい。式(3)及び式(3a)中のmは、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性をより向上しやすい観点から、好ましくは0〜3の範囲の整数、より好ましくは0〜2の範囲の整数、さらに好ましくは0又は1、さらにより好ましくは0である。mが0である式(3)又は式(3a)で表される構成単位は、テレフタル酸又はイソフタル酸に由来する構成単位であり、該構成単位は特に、式(3)中のR〜Rが水素原子であり、mが0である構成単位、及び式(3a)中のuが0でありmが0である構成単位であることが好ましい。光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすい観点から、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂はテレフタル酸に由来する構成単位を含むことが好ましい。ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂はZにおいて、式(3)で表される構成単位を1種又は2種類以上含んでいてもよい。光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性の向上、黄色度(YI値)低減の観点からは、樹脂はZにおいて、式(3)又は式(3a)中のmの値が異なる2種類以上の構成単位を含むことが好ましく、式(3)又は式(3a)中のmの値が異なる2種類又は3種類の構成単位を含むことがより好ましい。この場合、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点、並びに、光学フィルムの黄色度(YI値)を低減しやすい観点から、樹脂がZにおいて、mが0である式(3)で表される構成単位を含有し、該構成単位に加えてmが1である式(3)で表される構成単位をさらに含有することがとりわけ好ましい。また、mが0である式(3)で表されるZを有する式(2)で表される構成単位に加えて、上記の式(d1)で表される構成単位をさらに有することも好ましい。
本発明の好ましい一実施形態において、樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR〜Rが水素原子である構成単位を有する。より好ましい本発明の一実施形態において、樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR〜Rが水素原子である構成単位と、式(3’):
Figure 2021006624
で表される構成単位を有する。この場合、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を向上させやすいと共に、YI値を低減しやすい。
光学フィルムがポリアミドイミド樹脂を含む本発明の好ましい一実施形態において、式(3)又は式(3a)で表される構成単位の割合は、ポリアミドイミド樹脂の式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、さらにより好ましくは50モル%以上、とりわけ好ましくは60モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。式(3)又は式(3a)で表される構成単位の割合が上記の下限以上であると、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい。式(3)又は式(3a)で表される構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)又は式(3a)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。
また、ポリアミドイミド樹脂がm=1〜4である式(3)又は式(3a)で表される構成単位を有する場合、mが1〜4である式(3)又は式(3a)で表される構成単位の割合は、ポリアミドイミド樹脂の式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上、とりわけ好ましくは9モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、とりわけ好ましくは30モル%以下である。mが1〜4である式(3)又は式(3a)で表される構成単位の割合が上記の下限以上であると、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい。mが1〜4である式(3)又は式(3a)で表される構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)又は式(3a)で表される構成単位由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお、式(1)、式(2)、式(3)又は式(3a)で表される構成単位の割合は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは45モル%以上、とりわけ好ましくは50モル%以上が、mが0〜4である式(3)又は式(3a)で表される構成単位である。Zの上記の下限以上が、mが0〜4である式(3)又は式(3a)で表される構成単位であると、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい。また、ポリアミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のZの100モル%以下が、mが0〜4である式(3)又は式(3a)で表される構成単位であればよい。なお、樹脂中の、mが0〜4である式(3)又は式(3a)で表される構成単位の割合は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上、とりわけ好ましくは12モル%以上が、mが1〜4である式(3)又は式(3a)で表される。ポリアミドイミド樹脂のZの上記の下限以上が、mが1〜4である式(3)又は式(3a)で表される場合、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい。また、Zの、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、とりわけ好ましくは30モル%以下が、mが1〜4である式(3)又は式(3a)で表される。Zの上記の上限以下が、mが1〜4である式(3)又は式(3a)で表される場合、mが1〜4である式(3)又は式(3a)で表される構成単位由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお樹脂中のmが1〜4である式(3)又は式(3a)で表される構成単位の割合は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
式(1)及び式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の2価の有機基、より好ましくは環状構造を有する炭素数4〜40の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。本発明の一実施形態において、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂又はポリアミドイミド樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。Xとしては、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;該式(10)〜式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
Figure 2021006624
式(10)〜式(18)中、
*は結合手を表し、
、V及びVは、互いに独立に、単結合、−O−、−S−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−、−CO−又は−N(Q)−を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、Rについて上記に述べた基が挙げられる。
1つの例は、V及びVが単結合、−O−又は−S−であり、かつ、Vが−CH−、−C(CH−、−C(CF−又は−SO−である。VとVとの各環に対する結合位置、及び、VとVとの各環に対する結合位置は、互いに独立に、各環に対して好ましくはメタ位又はパラ位、より好ましくはパラ位である。
式(10)〜式(18)で表される基の中でも、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点から、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)及び式(17)で表される基が好ましく、式(14)、式(15)及び式(16)で表される基がより好ましい。また、V、V及びVは、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び柔軟性を高めやすい観点から、互いに独立に、好ましくは単結合、−O−又は−S−、より好ましくは単結合又は−O−である。
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)及び式(2)中の複数のXの少なくとも一部は、式(4):
Figure 2021006624
[式(4)中、
10〜R17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R10〜R17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す]
で表される構成単位である。式(1)及び式(2)中の複数のXの少なくとも一部が式(4)で表される基であると、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び透明性を高めやすい。
式(4)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基としては、式(3)における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基として例示した基が挙げられる。R10〜R17は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、ここで、R10〜R17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R10〜R17は、互いに独立に、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率、透明性及び耐屈曲性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基を表し、さらにより好ましくはR10、R12、R13、R14、R15及びR16が水素原子、R11及びR17が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基を表し、とりわけ好ましくはR11及びR17がメチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
本発明の好ましい一実施形態において、式(4)で表される構成単位は式(4’):
Figure 2021006624
で表される構成単位であり、すなわち、式(1)及び式(2)で表される複数の構成単位中の複数のXの少なくとも一部は、式(4’)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂中のXの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(4)、特に式(4’)で表される。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂における上記範囲内のXが式(4)、特に式(4’)で表される場合、得られる光学フィルムは、フッ素元素を含有する骨格により樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性も向上しやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂中のXの100モル%以下が式(4)、特に式(4’)で表される。上記樹脂中のXは式(4)、特に式(4’)であってもよい。上記樹脂中のXの式(4)で表される構成単位の割合は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
式(1)において、Yは、4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の4価の有機基を表し、より好ましくは環状構造を有する炭素数4〜40の4価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられ、耐衝撃性及び弾性率を高めやすい観点からは、好ましくは芳香環が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。Yとしては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基;該式(20)〜式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
Figure 2021006624
式(20)〜式(29)中、*は結合手を表し、Wは、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−Ar−、−SO−、−CO−、−O−Ar−O−、−Ar−O−Ar−、−Ar−CH−Ar−、−Ar−C(CH−Ar−又は−Ar−SO−Ar−を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。
式(20)〜式(29)で表される基の中でも、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点から、式(26)、式(28)又は式(29)で表される基が好ましく、式(26)で表される基がより好ましい。また、Wは、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすいと共に、光学フィルムのYI値を低減しやすい観点から、互いに独立に、好ましくは単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−又は−C(CF−、より好ましくは単結合、−O−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−又は−C(CF−、さらに好ましくは単結合、−C(CH−又は−C(CF−、とりわけ好ましくは単結合又は−C(CF−である。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が、式(26)で表される。ポリイミド系樹脂における上記範囲内のYが式(26)、好ましくはWが単結合、−C(CH−又は−C(CF−である式(26)、より好ましくはWが単結合又は−C(CF−である式(26)で表されると、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすいと共に、光学フィルムのYI値を低減しやすい。ポリイミド系樹脂中のYが式(26)で表される構成単位の割合は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好ましい一実施形態において、複数の式(1)中のYの少なくとも一部は、式(5):
Figure 2021006624
[式(5)中、R18〜R25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R18〜R25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す]
及び/又は式(9):
Figure 2021006624
[式(9)中、R35〜R40は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R35〜R40に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、*は結合手を表す]
で表される。複数の式(1)中のYの少なくとも一部が式(5)で表される、及び/又は、式(9)で表されると、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び光学特性を向上させやすい。
式(5)において、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24及びR25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基としては、式(3)における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基として上記に例示のものが挙げられる。R18〜R25は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、ここで、R18〜R25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。R18〜R25は、互いに独立に、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点、並びに、透明性を高めやすいと共に、該透明性を維持しやすい観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基を表し、さらにより好ましくはR18、R19、R20、R23、R24及びR25が水素原子、R21及びR22が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基を表し、とりわけ好ましくはR21及びR22がメチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
式(9)において、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点、並びに、透明性を高めやすいと共に、該透明性を維持しやすい観点から、R35〜R40は、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、さらに好ましくは水素原子を表す。ここで、R35〜R40に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R35〜R40における炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数6〜12のアリール基としては、それぞれ上記に例示のものが挙げられる。
本発明の好ましい一実施形態においては、式(5)は式(5’)で表され、式(9)は式(9’):
Figure 2021006624
で表される。すなわち、複数のYの少なくとも一部は、式(5’)及び/又は式(9’)で表される。この場合、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい。さらに、式(5)が式(5’)で表される場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が、式(5)、特に式(5’)で表される。ポリイミド系樹脂における上記範囲内のYが式(5)、特に式(5’)で表されると、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂中のYの100モル%以下が式(5)、特に式(5’)で表される。ポリイミド系樹脂中のYは式(5)、特に式(5’)であってもよい。ポリイミド系樹脂中のYの式(5)又は式(5’)で表される構成単位の割合は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)で表される複数の構成単位はYが式(5)で表される構成単位に加えて、Yが式(9)で表される構成単位をさらに含むことが好ましい。Yが式(9)で表される構成単位をさらに含む場合、光学フィルムの耐衝撃性及び弾性率をさらに向上させやすい。
ポリイミド系樹脂は、式(30)で表される構成単位及び/又は式(31)で表される構成単位を含むものであってもよく、また式(1)及び場合により式(2)で表される構成単位の他に、式(30)で表される構成単位及び/又は式(31)で表される構成単位を含むものであってもよい。
Figure 2021006624
式(30)において、Yは4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基、該式(20)〜式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基、並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(31)において、Yは3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、上記の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、及び3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(30)及び式(31)において、X及びXは、互いに独立に、2価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。X及びXとしては、上記の式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;該式(10)〜式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)及び/又は式(2)で表される構成単位、並びに場合により式(30)及び/又は式(31)で表される構成単位からなる。また、光学フィルムの光学特性、耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点から、上記ポリイミド系樹脂において、式(1)及び式(2)で表される構成単位の割合は、式(1)及び式(2)、並びに場合により式(30)及び/又は式(31)で表される全構成単位に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、通常100%以下である。なお、上記割合は、例えば、H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の一実施形態において、光学フィルム中におけるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量は、光学フィルム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、好ましくは99.5質量部以下、より好ましくは95質量部以下である。ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量が上記範囲内であると、光学フィルムの光学特性、耐衝撃性及び弾性率を向上させやすい。
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂の重量平均分子量は、光学フィルムの耐衝撃性、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点から、標準ポリスチレン換算で、好ましくは200,000以上、より好ましくは230,000以上、さらに好ましくは250,000以上、さらにより好ましくは270,000以上、とりわけ好ましくは280,000以上である。また、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂の重量平均分子量は、該樹脂の溶媒に対する溶解性を向上しやすいと共に、光学フィルムの延伸性及び加工性を向上しやすい観点から、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、さらに好ましくは700,000以下、とりわけ好ましくは500,000以下である。重量平均分子量は、例えばGPC測定を行い、標準ポリスチレン換算によって求めることができ、例えば実施例に記載の方法により算出してよい。
ポリアミドイミド樹脂において、式(2)で表される構成単位の含有量は、式(1)で表される構成単位1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上、とりわけ好ましくは1.5モル以上であり、好ましくは6.0モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは4.5モル以下である。式(2)で表される構成単位の含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの耐衝撃性及び弾性率を高めやすい。また、式(2)で表される構成単位の含有量が上記の上限以下であると、式(2)中のアミド結合間の水素結合による増粘を抑制し、光学フィルムの加工性を向上させやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂は、例えば上記の含フッ素置換基等によって導入することができる、フッ素原子等のハロゲン原子を含んでよい。ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂がハロゲン原子を含む場合、光学フィルムの弾性率を向上させ、かつYI値を低減させやすい。光学フィルムの弾性率が高いと、傷及びシワ等の発生を抑制しやすい。また、光学フィルムのYI値が低いと、該フィルムの透明性及び視認性を向上させやすくなる。ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。ポリイミド系樹脂にフッ素原子を含有させるために好ましい含フッ素置換基としては、例えばフルオロ基及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有量は、それぞれ、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。ハロゲン原子の含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの弾性率をより向上させ、吸水率を下げ、YI値をより低減し、透明性及び視認性をより向上させやすい。ハロゲン原子の含有量が上記の上限以下であると、合成がしやすくなる。
ポリイミド系樹脂及びポリアミドイミド樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上であり、通常100%以下である。光学フィルムの光学特性を高めやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。イミド化率は、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド系樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。また、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができる。
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂として、市販品を使用してもよい。ポリイミド樹脂の市販品としては、例えば三菱瓦斯化学(株)製ネオプリム(登録商標)、河村産業(株)製KPI−MX300F等が挙げられる。
本発明において、光学フィルムは、ポリアミド系樹脂を含んでいてもよい。本実施形態に係るポリアミド系樹脂は、式(2)で表される繰り返し構成単位を主とする重合体である。ポリアミド系樹脂における式(2)中のZの好ましい例及び具体例は、ポリイミド系樹脂におけるZの好ましい例及び具体例と同じである。前記ポリアミド系樹脂は、Zが異なる2種類以上の式(2)で表される繰り返し構成単位を含んでいてもよい。
(樹脂の製造方法)
ポリイミド樹脂及びポリイミド前駆体樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミドイミド樹脂及びポリアミドイミド前駆体樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミド樹脂は、例えば、ジアミン化合物及びジカルボン酸化合物を主な原料として製造できる。ここで、ジカルボン酸化合物は少なくとも式(3”)で表される化合物を含むことが好ましい。
Figure 2021006624
[式(3”)中、R〜Rは、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R〜Rに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−、−S−、−CO−又は−N(R)−を表し、
は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
31及びR32は、互いに独立に、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基又は塩素原子を表す。]
本発明の好ましい一実施形態において、ジカルボン酸化合物は、mが0である、式(3”)で表される化合物である。ジカルボン酸化合物として、mが0である式(3”)で表される化合物に加えて、Aが酸素原子である式(3”)で表される化合物を使用することがより好ましい。また、別の好ましい一実施形態においては、ジカルボン酸化合物は、R31及びR32が塩素原子である、式(3”)で表される化合物である。また、ジアミン化合物に代えて、ジイソシアネート化合物を用いてもよい。
樹脂の製造に使用されるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及びこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン、並びに1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン及び4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(以下、TFMBと記載することがある)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
芳香族ジアミンは、好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルであり、より好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルである。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
上記ジアミン化合物の中でも、光学フィルムの高弾性率、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性及び低着色性の観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)を用いることがよりさらに好ましい。
樹脂の製造に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物及び縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(以下、6FDAと記載することがある)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物及び4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられ、より好ましくは4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物及び4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式又は非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物及びこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
上記テトラカルボン酸二無水物の中でも、光学フィルムの高耐衝撃性、高弾性率、高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性、及び低着色性の観点から、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物が好ましく、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物がより好ましく、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと記載することがある)がさらに好ましい。
樹脂の製造に用いられるジカルボン酸化合物としては、好ましくはテレフタル酸、4,4’−オキシビス安息香酸又はそれらの酸クロリド化合物が用いられる。テレフタル酸や4,4’−オキシビス安息香酸又はそれらの酸クロリド化合物に加えて、他のジカルボン酸化合物が用いられてもよい。他のジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’−ビフェニルジカルボン酸;3,3’−ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物及び2つの安息香酸が単結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−若しくはフェニレン基で連結された化合物並びに、それらの酸クロリド化合物が挙げられる。具体例としては、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)、テレフタロイルクロリドが好ましく、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)とテレフタロイルクロリドとを組合せて用いることがさらに好ましい。
なお、上記ポリイミド系樹脂は、光学フィルムの各種物性を損なわない範囲で、上記テトラカルボン酸化合物に加えて、テトラカルボン酸及びトリカルボン酸並びにそれらの無水物及び誘導体をさらに反応させたものであってもよい。
テトラカルボン酸としては、上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6−ナフタレントリカルボン酸−2,3−無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、−O−、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−若しくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及び/又はジカルボン酸化合物の使用量は、所望とするポリイミド系樹脂の各構成単位の比率に応じて適宜選択できる。
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及びジカルボン酸化合物の反応温度は、特に限定されないが、例えば5〜350℃、好ましくは20〜200℃、より好ましくは25〜100℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば30分〜10時間程度である。必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において反応を行ってよい。好ましい態様では、反応は、常圧及び/又は不活性ガス雰囲気下、撹拌しながら行う。また、反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アミド系溶媒を好適に使用できる。
ポリイミド系樹脂の製造におけるイミド化工程では、イミド化触媒の存在下で、イミド化することができる。イミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピロリジン、N−ブチルピペリジン、及びN−プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びにピリジン、2−メチルピリジン(2−ピコリン)、3−メチルピリジン(3−ピコリン)、4−メチルピリジン(4−ピコリン)、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3,4−シクロペンテノピリジン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、及びイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により分離精製して単離してもよく、好ましい態様では、透明ポリアミドイミド樹脂を含む反応液に、多量のメタノール等のアルコールを加え、樹脂を析出させ、濃縮、濾過、乾燥等を行うことにより単離することができる。
<ナトリウム含有成分>
本発明の光学フィルムは、ナトリウム原子を含む化合物、ナトリウム及びナトリウムイオンからなる群から選択される、ナトリウム含有成分を含有する。本発明の光学フィルムにおけるナトリウム含有成分の含有量は、飛行時間型二次イオン質量分析により得られるCHのイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)が0.2以上となるような量であれば特に限定されず、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂の種類に応じて、上記割合(INa/ICH3)が所定の範囲となるように設定すればよい。例えば、本発明の光学フィルムを作製するためのワニスにおけるナトリウム含有成分の含有量は、光学フィルムの耐衝撃性を高めやすい観点から、ワニス中に含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の総量に対して、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.004質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、さらにより好ましくは0.02質量%以上、とりわけ好ましくは0.03質量%以上、とりわけより好ましくは0.04質量%以上である。本発明の光学フィルムを作製するためのワニスにおけるナトリウム含有成分の含有量の上限は、均質なフィルムを得やすい観点から、ワニス中に含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の総量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。また、本発明の光学フィルムにおけるナトリウム含有成分の含有量は、光学フィルムの耐衝撃性を高めやすい観点から、光学フィルム中に含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の総量に対して、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.004質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、さらにより好ましくは0.02質量%以上、とりわけ好ましくは0.03質量%以上、とりわけより好ましくは0.04質量%以上である。本発明の光学フィルムにおけるナトリウム含有成分の含有量の上限は、均質なフィルムを得やすい観点からは、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の総量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の総量に対する、ナトリウム含有成分の含有量は、赤外吸収スペクトルなどの分光学的手法により測定してもよいし、光学フィルムを製造する際に使用したワニスにおける含有量を、光学フィルムにおける含有量としてもよい。なお、ナトリウム含有成分としてナトリウム原子を含む化合物を用いる場合、該化合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、光学フィルムを製造する過程において分解等していてもよい。
ナトリウム原子を含む化合物の種類は特に限定されない。ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂及び溶媒を少なくとも含む樹脂組成物(「ワニス」とも称する)を用いて光学フィルムを製造する場合には、該成分をワニスの溶媒へ溶解させやすく、該成分を光学フィルムに含有させやすい観点から、ナトリウム原子を含む化合物は、好ましくは有機系ナトリウム塩である。有機系ナトリウム塩としては、炭素数1〜6のナトリウムアルコキシド等が挙げられる。ナトリウム原子を含む化合物の溶解性を高め、成膜性に優れたポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物を得やすい観点からは、ワニスの溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。非プロトン性極性溶媒を用いる場合、例えばナトリウム原子を含む化合物として水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム等の塩を用いる際でも、該塩をワニス中に溶解させやすく、ワニス中でポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂とナトリウム原子を含む化合物との相互作用を高めやすくなると考えられる。なお、樹脂組成物に添加した上記のナトリウム原子を含む化合物が、例えば有機系ナトリウム塩等の形態のまま本発明の光学フィルムに含有される必要はなく、例えば樹脂組成物中に含まれ得る水分やアルコール等との加水分解、他の塩とのイオン交換反応等により、最終的な光学フィルム中で、別の塩を形成していてもよいし、ナトリウム又はナトリウムイオンとして含まれていてもよい。ここで、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂は吸湿しやすい樹脂であり、これらの樹脂を含む樹脂組成物及び光学フィルムは通常、水分を含んでいる。また、前述の通り、樹脂組成物中の水分との反応で加水分解が生じていることも考えられることから、例えばナトリウムアルコキシド等の有機系ナトリウム塩の形態で樹脂組成物中に添加されたナトリウム含有成分は、最終的な光学フィルム中では、その少なくとも一部が塩である水酸化ナトリウム等となって存在していると考えられ、該水酸化ナトリウム等は、例えば一部がイオン化し、カルボニル基と相互作用し存在していると考えられる。
<カリウム含有成分>
本発明の光学フィルムは、カリウム原子を含む化合物、カリウム及びカリウムイオンからなる群から選択されるカリウム含有成分を含有する。本発明の光学フィルムにおけるカリウム含有成分の含有量は、飛行時間型二次イオン質量分析により得られるCHのイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(I)の割合(I/ICH3)が0.2以上となるような量であれば特に限定されず、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂の種類に応じて、上記割合(I/ICH3)が所定の範囲となるように設定すればよい。例えば、本発明の光学フィルムを作製するためのワニスにおけるカリウム含有成分の含有量は、光学フィルムの耐衝撃性を高めやすい観点から、ワニス中に含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の総量に対して、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.015質量%以上、さらにより好ましくは0.03質量%以上、とりわけ好ましくは0.05質量%以上、とりわけより好ましくは0.08質量%以上である。本発明の光学フィルムを作製するためのワニスにおけるカリウム含有成分の含有量の上限は、均質なフィルムを得やすい観点から、ワニス中に含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の総量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、とりわけ好ましくは0.2質量%以下である。また、本発明の光学フィルムにおけるカリウム含有成分の含有量は、光学フィルムの耐衝撃性を高めやすい観点から、光学フィルム中に含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の総量に対して、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.015質量%以上、さらにより好ましくは0.03質量%以上、とりわけ好ましくは0.05質量%以上、とりわけより好ましくは0.08質量%以上である。本発明の光学フィルムにおけるカリウム含有成分の含有量の上限は、均質なフィルムを得やすい観点からは、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の総量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、とりわけ好ましくは0.2質量%以下である。光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の総量に対する、カリウム含有成分の含有量は、赤外吸収スペクトルなどの分光学的手法により測定してもよいし、光学フィルムを製造する際に使用したワニスにおける含有量を、光学フィルムにおける含有量としてもよい。なお、カリウム含有成分としてカリウム原子を含む化合物を用いる場合、該化合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、光学フィルムを製造する過程において分解等していてもよい。
カリウム原子を含む化合物の種類は特に限定されない。ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂及び溶媒を少なくとも含むワニスを用いて光学フィルムを製造する場合に、該成分をワニスの溶媒へ溶解させやすく、該成分を光学フィルムに含有させやすい観点から、カリウム原子を含む化合物は、好ましくは有機系カリウム塩である。有機系カリウム塩としては、炭素数1〜6のカリウムアルコキシド等が挙げられる。カリウム原子を含む化合物の溶解性を高め、成膜性に優れたポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物を得やすい観点からは、ワニスの溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。非プロトン性極性溶媒を用いる場合、例えばカリウム原子を含む化合物として水酸化カリウム、塩化カリウム等の塩を用いる際でも、該塩をワニス中に溶解させやすく、ワニス中でポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂とカリウム原子を含む化合物との相互作用を高めやすくなると考えられる。なお、樹脂組成物に添加した上記のカリウム原子を含む化合物が、例えば有機系カリウム塩等の形態のまま本発明の光学フィルムに含有される必要はなく、例えば樹脂組成物中に含まれ得る水分やアルコール等との加水分解、他の塩とのイオン交換反応等により、最終的な光学フィルム中で、別の塩を形成していてもよいし、カリウム又はカリウムイオンとして含まれていてもよい。ここで、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂は吸湿しやすい樹脂であり、これらの樹脂を含む樹脂組成物及び光学フィルムは通常、水分を含んでいる。また、前述の通り、樹脂組成物中の水分との反応で加水分解が生じていることも考えられることから、例えばカリウムアルコキシド等の有機系カリウム塩の形態で樹脂組成物中に添加されたカリウム含有成分は、最終的な光学フィルム中では、その少なくとも一部が塩である水酸化カリウム等となって存在していると考えられ、該水酸化カリウム等は例えば一部がイオン化し、カルボニル基と相互作用し存在していると考えられる。
<添加剤>
本発明の光学フィルムは、フィラーを含んでよい。フィラーとしては、例えば有機粒子、無機粒子などが挙げられ、好ましくは無機粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物粒子、フッ化マグネシウム、フッ化カリウム等の金属フッ化物粒子などが挙げられる。フィラーは、光学フィルムの弾性率を高めやすく、光学フィルムの耐衝撃性を向上しやすい観点から、好ましくはシリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、より好ましくはシリカ粒子である。これらのフィラーは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
フィラー、好ましくはシリカ粒子の平均一次粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上、とりわけ好ましくは20nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは90nm以下、さらに好ましくは80nm以下、さらにより好ましくは70nm以下、とりわけ好ましくは60nm以下、とりわけより好ましくは50nm以下、とりわけさらに好ましくは40nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径が上記範囲内であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、得られる光学フィルムの光学特性を向上しやすい。フィラーの平均一次粒子径は、BET法により測定できる。なお、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡の画像解析により、平均一次粒子径を測定してもよい。
本発明の光学フィルムがフィラー、好ましくはシリカ粒子を含有する場合、フィラーの含有量は、光学フィルム100質量部に対して、通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上、さらによりに好ましくは20質量部以上、とりわけ好ましくは30質量部以上であり、好ましくは60質量部以下である。フィラーの含有量が上記の下限以上であると、得られる光学フィルムの弾性率を向上しやすい。また、フィラーの含有量が上記の上限以下であると、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤をさらに含有してもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。紫外線吸収剤は単独又は二種以上を組合せて使用できる。光学フィルムが紫外線吸収剤を含有することにより、樹脂の劣化が抑制されるため、得られる光学フィルムを画像表示装置等に適用した場合に視認性を高めることができる。本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
光学フィルムが紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、光学フィルム100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。好適な含有量は用いる紫外線吸収剤により異なるが、400nmの光線透過率が20〜60%程度になるように紫外線吸収剤の含有量を調節すると、光学フィルムの耐光性が高められるとともに、透明性を高めやすい。
本発明の光学フィルムは、フィラー、紫外線吸収剤以外の他の添加剤をさらに含有していてもよい。他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤、及びレベリング剤等が挙げられる。他の添加剤を含有する場合、その含有量は、光学フィルム100質量部に対して、好ましくは0.001〜20質量部、より好ましくは0.01〜15質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部であってよい。
(光学フィルムの製造方法)
本発明の光学フィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の工程:
(a)前記ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、少なくとも1種のナトリウム含有成分と、少なくとも1種のカリウム含有成分と、溶媒とを少なくとも含む樹脂組成物(以下において、「ワニス」とも称する)を調製する工程(ワニス調製工程)、ここで、該ナトリウム含有成分は、ナトリウム原子を含む化合物、ナトリウム及びナトリウムイオンからなる群から選択され、該カリウム含有成分は、カリウム原子を含む化合物、カリウム及びカリウムイオンからなる群から選択される、
(b)ワニスを支持材に塗布して塗膜を形成する工程(塗布工程)、及び
(c)前記塗膜を乾燥させて、光学フィルムを形成する工程(光学フィルム形成工程)
を少なくとも含む製造方法であってよい。本発明は、本発明の光学フィルムを製造するに適した、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、少なくとも1種のナトリウム含有成分と、少なくとも1種のカリウム含有成分と、溶媒とを少なくとも含む樹脂組成物を用いる上記製造方法も提供する。
ワニス調製工程において、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、少なくとも1種のナトリウム含有成分と、少なくとも1種のカリウム含有成分とを溶媒に溶解させ、必要に応じて、前記フィラー、紫外線吸収剤等の添加剤を添加して撹拌混合することによりワニスを調製する。なお、フィラーとしてシリカ粒子を用いる場合、シリカ粒子を含むシリカゾルの分散液を、前記樹脂が溶解可能な溶媒、例えば下記のワニスの調製に用いられる溶媒で置換したシリカゾルを樹脂に添加してもよい。
ナトリウム含有成分は、本発明の光学フィルム中にナトリウム原子を含む化合物、ナトリウム及びナトリウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含有させることが可能な成分である限り特に限定されないが、該成分をワニスの溶媒へ溶解させやすく、該成分を光学フィルムに含有させやすい観点から、好ましくはナトリウム原子を含む化合物であり、より好ましくは有機系ナトリウム塩である。有機系ナトリウム塩としては、炭素数1〜6のナトリウムアルコキシド等が挙げられる。ワニスに含有させるナトリウム含有成分は、1種類の成分であってもよいし、2種以上の成分を組合せてもよい。
樹脂組成物に含まれるナトリウム含有成分の含有量は、光学フィルムの耐衝撃性及び弾性率を高めやすい観点から、樹脂組成物に含まれるポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂の総量に対して、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.004質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、さらにより好ましくは0.02質量%以上、とりわけ好ましくは0.03質量%以上、とりわけより好ましくは0.04質量%以上である。本発明の樹脂組成物におけるナトリウム含有成分の含有量の上限は、ワニス粘度の調整性及び成膜性の観点からは、樹脂組成物に含まれるポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂の総量に対して、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。ナトリウム含有成分の含有量が上記の上限以下である場合には、ワニス粘度が高まりすぎることがなく、ワニス中の樹脂固形分を高めやすいため、成膜性を向上させやすい。
カリウム含有成分は、本発明の光学フィルム中にカリウム原子を含む化合物、カリウム及びカリウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含有させることが可能な成分である限り特に限定されないが、該成分をワニスの溶媒へ溶解させやすく、該成分を光学フィルムに含有させやすい観点から、好ましくはカリウム原子を含む化合物であり、より好ましくは有機系カリウム塩である。有機系カリウム塩としては、炭素数1〜6のカリウムアルコキシド等が挙げられる。ワニスに含有させるカリウム含有成分は、1種類の成分であってもよいし、2種以上の成分を組合せてもよい。
樹脂組成物に含まれるカリウム含有成分の含有量は、光学フィルムの耐衝撃性及び弾性率を高めやすい観点から、樹脂組成物に含まれるポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂の総量に対して、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.015質量%以上、さらにより好ましくは0.03質量%以上、とりわけ好ましくは0.05質量%以上、とりわけより好ましくは0.08質量%以上である。本発明の樹脂組成物におけるカリウム含有成分の含有量の上限は、ワニス粘度の調整性及び成膜性の観点からは、樹脂組成物に含まれるポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂の総量に対して、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。カリウム含有成分の含有量が上記の上限以下である場合には、ワニス粘度が高まりすぎることがなく、ワニス中の樹脂固形分を高めやすいため、成膜性を向上させやすい。
ワニスの調製に用いる溶媒は、前記樹脂を溶解可能であれば特に限定されない。かかる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと記載することがある)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載することがある)等のアミド系溶媒;γ−ブチロラクトン(以下、GBLと記載することがある)、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せが挙げられる。これらの中でも、アミド系溶媒又はラクトン系溶媒が好ましい。これらの溶媒は単独又は二種以上組合せて使用できる。また、ワニスには水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、非環状エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが含まれてもよい。ワニスの固形分濃度は、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。ここで、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂とナトリウム含有成分及び/又はカリウム含有成分との相互作用を高めやすい観点からは、ワニスの調製にこれらを溶解可能な溶媒を使用することが好ましい。例えば樹脂の溶解性の観点からは、上記の溶媒が好ましく、ナトリウム含有成分及び/又はカリウム含有成分の溶解性の観点からは、非プロトン性極性溶媒が好ましく、アミド系溶媒及びラクトン系溶媒からなる群から選択される非プロトン性極性溶媒がより好ましい。なお、上記の溶媒は大気中の水分を取り込みやすいため、ワニス中に水を意図的に添加していなくとも、水がワニス中に含まれている場合が多いと考えられる。さらに、ワニス中でナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンとなっているナトリウム含有成分及び/又はカリウム含有成分の一部が、樹脂と相互作用すると、ナトリウム含有成分及び/又はカリウム含有成分がイオン化する方向に平衡が進むとも考えられる。したがって、ナトリウム含有成分及び/又はカリウム含有成分が上記ワニスの調整に用いる溶媒に溶解しにくい塩等の化合物であっても、ワニス中にはポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂が含まれるため、ワニス中に前記含有成分を溶解させることが可能となる。また、ワニスの状態で一定の時間放置することによって、樹脂とナトリウム含有成分及び/又はカリウム含有成分との相互作用を促進することも可能である。
樹脂と、ナトリウム含有成分と、カリウム含有成分と、溶媒とを含む樹脂組成物の粘度は、ナトリウム含有成分及びカリウム含有成分を加える前の組成物の粘度と比較して高いことが確認されている。このような粘度の上昇は、ナトリウム含有成分及びカリウム含有成分の添加によって、樹脂と、ナトリウム含有成分と、カリウム含有成分との相互作用が生じているためであると考えられる。具体的には、粘度計を用い、例えば実施例に記載するような条件で樹脂組成物の粘度を測定すると、ナトリウム含有成分の添加、及び/又は、カリウム含有成分の添加によって粘度が高くなることが確認できる。このような相互作用を有すると共に、原子半径やイオン半径、もしくは分子サイズの異なるナトリウム含有成分とカリウム含有成分とが樹脂中に共存することで、樹脂間のパッキングをより強めていることが予想される。
塗布工程において、公知の塗布方法により、支持材上にワニスを塗布して塗膜を形成する。公知の塗布方法としては、例えばワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、流涎成形法等が挙げられる。
フィルム形成工程において、塗膜を乾燥し、支持材から剥離することによって、光学フィルムを形成することができる。剥離後にさらに光学フィルムを乾燥する工程を設けてもよい。塗膜の乾燥は、通常50〜350℃の温度にて行うことができる。必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において塗膜の乾燥を行ってよい。なお、得られる光学フィルムには、ワニスに含まれていた溶媒の一部がわずかに残存していてもよい。光学フィルムに含まれる溶媒の量は、光学フィルムの質量に対して、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.2%以下、さらに好ましくは1.1%以下、さらにより好ましくは1.0%以下である。溶媒の量の下限は、好ましくは0%以上、より好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.1%以上、さらにより好ましくは0.3%以上である。光学フィルム中の残存溶媒量が上記範囲内であると、光学フィルムの耐衝撃性を高め、YI値を低くすることができる。なお、光学フィルム中の残存溶媒量は、塗膜の乾燥条件で調整可能である。
支持材の例としては、金属系であれば、SUS板、樹脂系であればPETフィルム、PENフィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、他のポリイミド系樹脂フィルム、シクロオレフィン系ポリマー(COP)フィルム、アクリル系フィルム等が挙げられる。中でも、平滑性、耐熱性に優れる観点から、PETフィルム、COPフィルム等が好ましく、さらに光学フィルムとの密着性及びコストの観点から、PETフィルムがより好ましい。
(機能層)
本発明の光学フィルムの少なくとも一方の面には、1以上の機能層が積層されていてもよい。機能層としては、例えば紫外線吸収層、ハードコート層、プライマー層、ガスバリア層、粘着層、色相調整層、屈折率調整層などが挙げられる。機能層は単独又は二種以上を組合せて使用できる。光学フィルムが該機能層を有する場合には、光学フィルムの断面にてTOF−SIMSによる測定を行うことが好ましい。
本発明の光学フィルムの少なくとも一方の面には、ハードコート層が設けられていてもよい。ハードコート層の厚さは特に限定されず、例えば、2〜100μmであってもよい。前記ハードコート層の厚さが前記の範囲にあると、耐衝撃性をより高めることができると共に、耐屈曲性が低下しにくく、硬化収縮によるカール発生の問題が発生し難い傾向がある。ハードコート層は、活性エネルギー線照射、或いは熱エネルギー付与により架橋構造を形成し得る反応性材料を含むハードコート組成物を硬化させて形成することができ、活性エネルギー線照射によるものが好ましい。活性エネルギー線は、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることができるエネルギー線と定義され、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線及び電子線などが挙げられ、好ましくは紫外線が挙げられる。前記ハードコート組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。
前記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、炭素‐炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、好ましくは2以上である。前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられ、具体的には1分子中に2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーが挙げられ、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートから選択された1種以上が挙げられる。
前記カチオン重合性化合物は、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等のカチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高くなりやすく、低毒性であり、得られたハードコート層のカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記ハードコート組成物は重合開始剤をさらに含むことができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等が挙げられ、適宜選択して用いられる。これらの重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカル又はカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であればよい。例えば、熱ラジカル重合開始剤としては、過酸化水素、過安息香酸等の有機過酸化物、アゾビスブチロニトリル等のアゾ化合物等があげられる。
活性エネルギー線ラジカル重合開始剤としては、分子の分解でラジカルが生成されるType1型ラジカル重合開始剤と、3級アミンと共存して水素引き抜き型反応でラジカルを生成するType2型ラジカル重合開始剤があり、それらは単独で又は併用して使用される。
カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であればよい。カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、シクロペンタジエニル鉄(II)錯体等が使用できる。これらは、構造の違いによって活性エネルギー線照射又は加熱のいずれかあるいはいずれでもカチオン重合を開始することができる。
前記重合開始剤は、前記ハードコート組成物全体100質量%に対して好ましくは0.1〜10質量%を含むことができる。前記重合開始剤の含量が前記の範囲にあると、硬化を十分に進行させることができ、最終的に得られる塗膜の機械的物性や密着力を良好な範囲とすることができ、また、硬化収縮による接着力不良や割れ現象及びカール現象が発生し難くなる傾向がある。
前記ハードコート組成物は、溶剤及び添加剤からなる群から選択される一つ以上をさらに含むことができる。
前記溶剤は、前記重合性化合物及び重合開始剤を溶解又は分散させることができるもので、本技術分野のハードコート組成物の溶剤として知られている溶剤であれば、本発明の効果を阻害しない範囲で、使用することができる。
前記添加剤は、無機粒子、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、防汚剤などをさらに含むことができる。
紫外線吸収層は、紫外線吸収の機能を有する層であり、例えば、紫外線硬化型の透明樹脂、電子線硬化型の透明樹脂、及び熱硬化型の透明樹脂から選ばれる主材と、この主材に分散した紫外線吸収剤とから構成される。
粘着層は、粘着性の機能を有する層であり、光学フィルムを他の部材に接着させる機能を有する。粘着層の形成材料としては、通常知られたものを用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を用いることができる。この場合、事後的にエネルギーを供給することで樹脂組成物を高分子化し硬化させることができる。
粘着層は、感圧型接着剤(Pressure Sensitive Adhesive、PSA)と呼ばれる、押圧により対象物に貼着される層であってもよい。感圧型接着剤は、「常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質」(JIS K 6800)である粘着剤であってもよく、「特定成分を保護被膜(マイクロカプセル)に内容し、適当な手段(圧力、熱等)によって被膜を破壊するまでは安定性を保持できる接着剤」(JIS K 6800)であるカプセル型接着剤であってもよい。
色相調整層は、色相調整の機能を有する層であり、光学フィルムを含む積層体を目的の色相に調整することができる層である。色相調整層は、例えば、樹脂及び着色剤を含有する層である。この着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、チタニウムオキサイド系焼成顔料、群青、アルミン酸コバルト、及びカーボンブラック等の無機顔料;アゾ系化合物、キナクリドン系化合物、アンスラキノン系化合物、ペリレン系化合物、イソインドリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、キノフタロン系化合物、スレン系化合物、及びジケトピロロピロール系化合物等の有機顔料;硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等の体質顔料;並びに塩基性染料、酸性染料、及び媒染染料等の染料を挙げることができる。
屈折率調整層は、屈折率調整の機能を有する層であり、例えば光学フィルムとは異なる屈折率を有し、光学積層体に所定の屈折率を付与することができる層である。屈折率調整層は、例えば、適宜選択された樹脂、及び場合によりさらに顔料を含有する樹脂層であってもよいし、金属の薄膜であってもよい。屈折率を調整する顔料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化タンタルが挙げられる。該顔料の平均一次粒子径は、0.1μm以下であってもよい。顔料の平均一次粒子径を0.1μm以下とすることにより、屈折率調整層を透過する光の乱反射を防止し、透明度の低下を防止することができる。屈折率調整層に用いられる金属としては、例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸窒化チタン、窒化チタン、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等の金属酸化物又は金属窒化物が挙げられる。
本発明の光学フィルムは、単層であっても、積層体であってもよく、例えば上記のようにして製造される光学フィルムをそのまま使用してもよいし、さらに他のフィルムとの積層体として使用してもよい。飛行時間型二次イオン質量分析により得られる、CHのイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)が0.2以上であり、かつ、CHのイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(I)の割合(I/ICH3)が0.2以上である本発明の光学フィルムは、高い耐衝撃性を有し、画像表示装置等における光学フィルムとして有用なフィルムである。
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の光学フィルムは、画像表示装置の前面板、中でもフレキシブル表示装置の前面板(ウィンドウフィルム)、特に折り曲げたり平坦に戻したりすることがあるローラブルディスプレイやフォルダブルディスプレイの前面板として非常に有用である。フレキシブル表示装置は、例えば、フレキシブル機能層と、フレキシブル機能層に重ねられて前面板として機能する光学フィルムを有する。すなわち、フレキシブル表示装置の前面板は、フレキシブル機能層の上の視認側に配置される。この前面板は、フレキシブル機能層、例えばフレキシブルディスプレイ内の画像表示素子を保護する機能を有する。
画像表示装置としては、テレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計、及びスマートウォッチ等のウェアラブルデバイス等が挙げられる。フレキシブル表示装置としては、フレキシブル特性を有する全ての画像表示装置が挙げられる。
[フレキシブル表示装置]
本発明は、本発明の光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置も提供する。本発明の光学フィルムは、好ましくはフレキシブル表示装置において前面板として用いられ、該前面板はウィンドウフィルムと称されることがある。フレキシブル表示装置は、フレキシブル表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとからなり、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル表示装置用積層体は、本発明の光学フィルム(ウィンドウフィルム)、円偏光板、タッチセンサを含有していてもよく、それらの積層順は任意であるが、視認側からウィンドウフィルム、円偏光板、タッチセンサ又はウィンドウフィルム、タッチセンサ、円偏光板の順に積層されていることが好ましい。タッチセンサの視認側に円偏光板が存在すると、タッチセンサのパターンが視認されにくくなり表示画像の視認性が良くなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、ウィンドウフィルム、円偏光板、タッチセンサのいずれかの層の少なくとも一面に形成された遮光パターンを具備することができる。
[偏光板]
本発明のフレキシブル表示装置は、偏光板、好ましくは円偏光板をさらに備えていてもよい。円偏光板は、直線偏光板にλ/4位相差板を積層することにより右円偏光成分若しくは左円偏光成分のみを透過させる機能を有する機能層である。たとえば外光を右円偏光に変換して有機ELパネルで反射されて左円偏光となった外光を遮断し、有機ELの発光成分のみを透過させることで反射光の影響を抑制して画像を見やすくするために用いられる。円偏光機能を達成するためには、直線偏光板の吸収軸とλ/4位相差板の遅相軸は理論上45°である必要があるが、実用的には45±10°である。直線偏光板とλ/4位相差板とは必ずしも隣接して積層される必要はなく、吸収軸と遅相軸の関係が前述の範囲を満足していればよい。全波長において完全な円偏光を達成することが好ましいが実用上は必ずしもその必要はないので本発明における円偏光板は楕円偏光板をも包含する。直線偏光板の視認側にさらにλ/4位相差フィルムを積層して、出射光を円偏光とすることで偏光サングラスをかけた状態での視認性を向上させることも好ましい。
直線偏光板は、透過軸方向に振動している光は通すが、それとは垂直な振動成分の偏光を遮断する機能を有する機能層である。前記直線偏光板は、直線偏光子単独又は直線偏光子及びその少なくとも一面に貼り付けられた保護フィルムを備えた構成であってもよい。前記直線偏光板の厚さは、200μm以下であってもよく、好ましくは0.5〜100μmである。厚さが前記の範囲にあると柔軟性が低下し難い傾向にある。
前記直線偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムを染色、延伸することで製造されるフィルム型偏光子であってもよい。延伸によって配向したPVA系フィルムに、ヨウ素等の二色性色素が吸着、又はPVAに吸着した状態で延伸されることで二色性色素が配向し、偏光性能を発揮する。前記フィルム型偏光子の製造においては、他に膨潤、ホウ酸による架橋、水溶液による洗浄、乾燥等の工程を有していてもよい。延伸や染色工程はPVA系フィルム単独で行ってもよいし、ポリエチレンテレフタレートのような他のフィルムと積層された状態で行うこともできる。用いられるPVA系フィルムの厚さは好ましくは10〜100μmであり、延伸倍率は好ましくは2〜10倍である。
さらに前記偏光子の他の一例としては、液晶偏光組成物を塗布して形成する液晶塗布型偏光子であってもよい。前記液晶偏光組成物は、液晶性化合物及び二色性色素化合物を含むことができる。前記液晶性化合物は液晶状態を示す性質を有していればよく、特にスメクチック相等の高次の配向状態を有していると高い偏光性能を発揮することができるため好ましい。また、液晶性化合物は重合性官能基を有していることも好ましい。
前記二色性色素は、前記液晶化合物とともに配向して二色性を示す色素であって、二色性色素自身が液晶性を有していてもよいし、重合性官能基を有していることもできる。液晶偏光組成物の中のいずれかの化合物は重合性官能基を有している。
前記液晶偏光組成物はさらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。
前記液晶偏光層は、配向膜上に液晶偏光組成物を塗布して液晶偏光層を形成することにより製造される。
液晶偏光層は、フィルム型偏光子に比べて厚さを薄く形成することができる。前記液晶偏光層の厚さは、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmであってもよい。
前記配向膜は、例えば基材上に配向膜形成組成物を塗布し、ラビング、偏光照射等により配向性を付与することで製造することができる。前記配向膜形成組成物は、配向剤の他に溶剤、架橋剤、開始剤、分散剤、レベリング剤、シランカップリング剤等を含んでいてもよい。前記配向剤としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリアクリレート類、ポリアミック酸類、ポリイミド類を使用できる。光配向を適用する場合にはシンナメート基を含む配向剤を使用することが好ましい。前記配向剤として使用される高分子の重量平均分子量が10,000〜1,000,000程度であってもよい。前記配向膜の厚さは、配向規制力の観点から、好ましくは5〜10,000nm、より好ましは10〜500nmである。前記液晶偏光層は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板、ウィンドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
前記保護フィルムとしては、透明な高分子フィルムであればよく、具体的には、用いられる高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン又はシクロオレフィンを含む単量体の単位を有するシクロオレフィン系誘導体等のポリオレフィン類、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース等の(変性)セルロース類、メチルメタクリレート(共)重合体等のアクリル類、スチレン(共)重合体等のポリスチレン類、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体類、アクリロニトリル・スチレン共重合体類、エチレン‐酢酸ビニル共重合体類、ポリ塩化ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等のポリエステル類、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリアミドイミド類、ポリエーテルイミド類、ポリエーテルスルホン類、ポリスルホン類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルアセタール類、ポリウレタン類、エポキシ樹脂類などのフィルムが挙げられ、透明性及び耐熱性に優れる点で、好ましくはポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、オレフィン、アクリル又はセルロース系のフィルムが挙げられる。これらの高分子はそれぞれ単独又は2種以上混合して使用することができる。これらのフィルムは未延伸のまま、あるいは1軸又は2軸延伸したフィルムとして使用される。セルロース系フィルム、オレフィン系フィルム、アクリルフィルム、ポリエステル系フィルムが好ましい。エポキシ樹脂等のカチオン硬化組成物やアクリレート等のラジカル硬化組成物を塗布して硬化して得られるコーティング型の保護フィルムであってもよい。必要により可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。前記保護フィルムの厚さは、200μm以下であってもよく、好ましくは1〜100μmである。前記保護フィルムの厚さが前記の範囲にあると、保護フィルムの柔軟性が低下し難い。
前記λ/4位相差板は、入射光の進行方向に直交する方向、言い換えるとフィルムの面内方向にλ/4の位相差を与えるフィルムである。前記λ/4位相差板は、セルロース系フィルム、オレフィン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等の高分子フィルムを延伸することで製造される延伸型位相差板であってもよい。必要により位相差調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。前記延伸型位相差板の厚さは、200μm以下であってもよく、好ましくは1〜100μmである。厚さが前記の範囲にあるとフィルムの柔軟性が低下し難い傾向にある。
さらに前記λ/4位相差板の他の一例としては、液晶組成物を塗布して形成する液晶塗布型位相差板であってもよい。前記液晶組成物は、ネマチック、コレステリック、スメクチック等の液晶状態を示す性質を有する液晶性化合物を含む。液晶組成物の中の液晶性化合物を含むいずれかの化合物は重合性官能基を有している。前記液晶塗布型位相差板はさらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。前記液晶塗布型位相差板は、前記液晶偏光層での記載と同様に配向膜上に液晶組成物を塗布硬化して液晶位相差層を形成することで製造することができる。液晶塗布型位相差板は、延伸型位相差板に比べて厚さを薄く形成することができる。前記液晶偏光層の厚さは、通常0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmであってもよい。前記液晶塗布型位相差板は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板、ウィンドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
一般的には、短波長ほど複屈折が大きく、長波長ほど小さな複屈折を示す材料が多い。この場合には全可視光領域でλ/4の位相差を達成することはできないので、視感度の高い560nm付近に対してλ/4となるような面内位相差、すなわち100〜180nm、好ましくは130〜150nmとなるように設計されることが多い。通常とは逆の複屈折率波長分散特性を有する材料を用いた逆分散λ/4位相差板を用いることは視認性をよくすることができるので好ましい。このような材料としては延伸型位相差板の場合は特開2007−232873号公報等、液晶塗布型位相差板の場合には特開2010−30979号公報に記載されているものを用いることも好ましい。
また、他の方法としてはλ/2位相差板と組合せることで広帯域λ/4位相差板を得る技術も知られている(特開平10−90521号公報)。λ/2位相差板もλ/4位相差板と同様の材料及び方法で製造される。延伸型位相差板と液晶塗布型位相差板との組合せは任意であるが、どちらも液晶塗布型位相差板を用いることは厚さを薄くすることができるので好ましい。
前記円偏光板には斜め方向の視認性を高めるために、正のCプレートを積層する方法も知られている(特開2014−224837号公報)。正のCプレートも液晶塗布型位相差板であっても延伸型位相差板であってもよい。厚さ方向の位相差は、通常−200〜−20nm、好ましくは−140〜−40nmである。
[タッチセンサ]
本発明のフレキシブル表示装置は、タッチセンサをさらに備えていてもよい。タッチセンサは入力手段として用いられる。タッチセンサとしては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等様々な様式が提案されており、いずれの方式でも構わない。中でも静電容量方式が好ましい。静電容量方式タッチセンサは活性領域及び前記活性領域の外郭部に位置する非活性領域に区分される。活性領域は表示パネルで画面が表示される領域、すなわち表示部に対応する領域であって、使用者のタッチが感知される領域であり、非活性領域は表示装置で画面が表示されない領域、すなわち非表示部に対応する領域である。タッチセンサはフレキシブルな特性を有する基板と;前記基板の活性領域に形成された感知パターンと;前記基板の非活性領域に形成され、前記感知パターンとパッド部を介して外部の駆動回路と接続するための各センシングラインを含むことができる。フレキシブルな特性を有する基板としては、前記高分子フィルムと同様の材料が使用できる。タッチセンサの基板は、その靱性が2,000MPa%以上であるものがタッチセンサのクラック抑制の面から好ましい。より好ましくは靱性が2,000〜30,000MPa%であってもよい。ここで、靭性は、高分子材料の引張実験を通じて得られる、応力(MPa)−歪み(%)曲線(Stress-strain curve)で破壊点までの曲線の下部面積として定義される。
前記感知パターンは、第1方向に形成された第1パターン及び第2方向に形成された第2パターンを備えることができる。第1パターンと第2パターンは互いに異なる方向に配置される。第1パターン及び第2パターンは、同一層に形成され、タッチされる地点を感知するためには、それぞれのパターンが電気的に接続されなければならない。第1パターンは各単位パターンが継ぎ手を介して互いに接続された形態であるが、第2パターンは各単位パターンがアイランド形態に互いに分離された構造になっているので、第2パターンを電気的に接続するためには別途のブリッジ電極が必要である。感知パターンは周知の透明電極素材を適用することができる。例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウム亜鉛スズ酸化物(IZTO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、カドミウムスズ酸化物(CTO)、PEDOT(poly(3,4−ethylenedioxythiophene))、炭素ナノチューブ(CNT)、グラフェン、金属ワイヤなどを挙げることができ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。好ましくはITOを使用することができる。金属ワイヤに使用される金属は特に限定されず、例えば、銀、金、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、セレニウム、クロムなどを挙げることができる。これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
ブリッジ電極は感知パターン上部に絶縁層を介して前記絶縁層上部に形成することができ、基板上にブリッジ電極が形成されており、その上に絶縁層及び感知パターンを形成することができる。前記ブリッジ電極は感知パターンと同じ素材で形成することもでき、モリブデン、銀、アルミニウム、銅、パラジウム、金、白金、亜鉛、スズ、チタン又はこれらのうちの2種以上の合金などの金属で形成することもできる。第1パターンと第2パターンは電気的に絶縁されなければならないので、感知パターンとブリッジ電極の間には絶縁層が形成される。絶縁層は第1パターンの継ぎ手とブリッジ電極の間にのみ形成することもでき、感知パターンを覆う層の構造に形成することもできる。後者の場合は、ブリッジ電極は絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して第2パターンを接続することができる。前記タッチセンサはパターンが形成されたパターン領域と 、パターンが形成されていない非パターン領域間の透過率の差、具体的には、これらの領域における屈折率の差によって誘発される光透過率の差を適切に補償するための手段として基板と電極の間に光学調節層をさらに含むことができ、前記光学調節層は無機絶縁物質又は有機絶縁物質を含むことができる。光学調節層は光硬化性有機バインダー及び溶剤を含む光硬化組成物を基板上にコーティングして形成することができる。前記光硬化組成物は無機粒子をさらに含むことができる。前記無機粒子によって光学調節層の屈折率を上昇させることができる。
前記光硬化性有機バインダーは、例えば、アクリレート系単量体、スチレン系単量体、カルボン酸系単量体などの各単量体の共重合体を含むことができる。前記光硬化性有機バインダーは、例えば、エポキシ基含有繰り返し単位、アクリレート繰り返し単位、カルボン酸繰り返し単位などの互いに異なる各繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
前記無機粒子は、例えば、ジルコニア粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などを含むことができる。前記光硬化組成物は、光重合開始剤、重合性モノマー、硬化補助剤などの各添加剤をさらに含むこともできる。
[接着層]
前記フレキシブル表示装置用積層体を形成する、ウィンドウフィルム、偏光板、タッチセンサなどの各層並びに各層を構成する、直線偏光板、λ/4位相差板等のフィルム部材は接着剤によって接着することができる。接着剤としては、水系接着剤、有機溶剤系接着剤、無溶剤系接着剤、固体接着剤、溶剤揮散型接着剤、湿気硬化型接着剤、加熱硬化型接着剤、嫌気硬化型接着剤、水系溶剤揮散型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、硬化剤混合型接着剤、熱溶融型接着剤、感圧型接着剤、感圧性粘着剤、再湿型接着剤等、汎用に使用されているものが使用できる。中でも水系溶剤揮散型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、粘着剤がよく用いられる。接着層の厚さは、求められる接着力等に応じて適宜調節することができ、例えば0.01〜500μm、好ましくは0.1〜300μmである。接着層は、前記フレキシブル画像表示装置用積層体には複数存在してよいが、それぞれの厚さ及び用いられる接着剤の種類は同一であっても異なっていてもよい。
前記水系溶剤揮散型接着剤としてはポリビニルアルコール系ポリマー、でんぷん等の水溶性ポリマー、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系エマルジョン等水分散状態のポリマーを主剤ポリマーとして使用することができる。水、前記主剤ポリマーに加えて、架橋剤、シラン系化合物、イオン性化合物、架橋触媒、酸化防止剤、染料、顔料、無機フィラー、有機溶剤等を配合してもよい。前記水系溶剤揮散型接着剤によって接着する場合、前記水系溶剤揮散型接着剤を被接着層間に注入して被着層を貼合した後、乾燥させることで接着性を付与することができる。前記水系溶剤揮散型接着剤を用いる場合の接着層の厚さは0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μmであってもよい。前記水系溶剤揮散型接着剤を複数層の形成に用いる場合、それぞれの層の厚さ及び前記接着剤の種類は同一であっても異なっていてもよい。
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線を照射して接着剤層を形成する反応性材料を含む活性エネルギー線硬化組成物の硬化により形成することができる。前記活性エネルギー線硬化組成物は、ハードコート組成物と同様のラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有することができる。前記ラジカル重合性化合物とは、ハードコート組成物と同様であり、ハードコート組成物と同様の種類のものが使用できる。接着層に用いられるラジカル重合性化合物としてはアクリロイル基を有する化合物が好ましい。接着剤組成物としての粘度を下げるために単官能の化合物を含むことも好ましい。
前記カチオン重合性化合物は、ハードコート組成物と同様であり、ハードコート組成物と同様の種類のものが使用できる。活性エネルギー線硬化組成物に用いられるカチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物がとりわけ好ましい。接着剤組成物の粘度を下げるために単官能の化合物を反応性希釈剤として含むことも好ましい。
活性エネルギー線組成物には重合開始剤をさらに含むことができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル又はカチオン重合開始剤等であり、適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。ハードコート組成物の記載の中で活性エネルギー線照射によりラジカル重合又はカチオン重合の内の少なくともいずれか開始することができる開始剤を使用することができる。
前記活性エネルギー線硬化組成物はさらに、イオン捕捉剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、密着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動粘度調整剤、可塑剤、消泡剤溶剤、添加剤、溶剤を含むことができる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤によって接着する場合、前記活性エネルギー線硬化組成物を被接着層のいずれか又は両方に塗布後貼合し、いずれかの被着層又は両方の被着層を通して活性エネルギー線を照射して硬化させることで接着することができる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合の接着層の厚さは、通常0.01〜20μm、好ましくは0.1〜10μmであってもよい。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を複数層の形成に用いる場合には、それぞれの層の厚さ及び用いられる接着剤の種類は同一であっても異なっていてもよい。
前記粘着剤としては、主剤ポリマーに応じて、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等に分類され何れを使用することもできる。粘着剤には主剤ポリマーに加えて、架橋剤、シラン系化合物、イオン性化合物、架橋触媒、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、染料、顔料、無機フィラー等を配合してもよい。前記粘着剤を構成する各成分を溶剤に溶解・分散させて粘着剤組成物を得て、該粘着剤組成物を基材上に塗布した後に乾燥させることで、粘着層(接着層)が形成される。粘着層は直接形成されてもよいし、別途基材に形成したものを転写することもできる。接着前の粘着面をカバーするためには離型フィルムを使用することも好ましい。前記粘着剤を用いる場合の接着層の厚さは、通常1〜500μm、好ましくは2〜300μmであってもよい。前記粘着剤を複数層の形成に用いる場合、それぞれの層の厚さ及び用いられる粘着剤の種類は同一であっても異なっていてもよい。
[遮光パターン]
前記遮光パターンは前記フレキシブル画像表示装置のベゼル又はハウジングの少なくとも一部として適用することができる。遮光パターンによって前記フレキシブル画像表示装置の辺縁部に配置される配線が隠されて視認されにくくすることで、画像の視認性が向上する。前記遮光パターンは単層又は複層の形態であってもよい。遮光パターンのカラーは特に制限されることはなく、黒色、白色、金属色などの多様なカラーを有することができる。遮光パターンはカラーを具現するための顔料と、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーンなどの高分子で形成することができる。これらの単独又は2種類以上の混合物で使用することもできる。前記遮光パターンは、印刷、リソグラフィ、インクジェットなど各種の方法にて形成することができる。遮光パターンの厚さは、通常1〜100μm、好ましくは2〜50μmである。また、遮光パターンの厚さ方向に傾斜等の形状を付与することも好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、それぞれ質量%及び質量部を意味する。まず始めに物性値の測定方法を説明する。
<重量平均分子量の測定>
樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。測定試料の調製方法及び測定条件は次の通りである。
(1)試料調製方法
樹脂を20mg秤りとり、10mLのDMF(10mmol/L臭化リチウム)を加え、完全に溶解させた。この溶液をクロマトディスク(孔径0.45μm)にてろ過し、試料溶液とした。
(2)測定条件
装置:HLC−8020GPC
カラム:ガードカラム+TSKgelα−M(300mm×7.8mm径)×2本+α−2500(300mm×7.8mm径)×1本
溶離液:DMF(10mmol/Lの臭化リチウム添加)
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準:標準ポリスチレン
<全光線透過率の測定>
光学フィルムの全光線透過率は、JIS K 7105:1981に準拠して、スガ試験機(株)製の全自動直読ヘーズコンピュータHGM−2DPにより測定した。
<ヘーズの測定>
光学フィルムのヘーズは、JIS K 7105:1981に準拠して、スガ試験機(株)製の全自動直読ヘーズコンピュータHGM−2DPにより測定した。
<明度(L値)の測定>
光学フィルムの明度L値は、分光光度計(日本分光(株)製「V−670」)により測定した。サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、光学フィルムをサンプルホルダーにセットして、波長300〜800nmの光に対する透過率測定を行い、L値を求めた。
<厚さの測定>
実施例及び比較例で得られた光学フィルムについて、ABSデジマチックインジケーター((株)ミツトヨ製、「ID−C112BS」)を用いて、光学フィルムの厚さを測定した。
<残存溶媒の測定方法>
TG−DTA(SII(株)製 EXSTAR6000 TG/DTA6300)を用いて、実施例1、比較例1で得られたポリアミドイミド樹脂フィルムを30℃から120℃まで昇温し、120℃で5分間保持し、その後5℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。120℃における樹脂フィルムの質量に対する120℃から250℃での光学フィルムの質量減少の比を、樹脂フィルムに含まれる溶媒の含有量(残存溶媒量と称する)として算出した。樹脂フィルム中の残存溶媒量は、樹脂フィルムに含まれる溶媒の、樹脂フィルムの質量に対する割合を示す。
<飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)の測定>
ライカマイクロシステムズ(株)製「ウルトラミクロトーム EM UC6」を用いて、光学フィルムの断面を作製した。
作製した樹脂フィルムの断面を、TOF−SIMSにより分析した。分析に用いたTOF−SIMS装置と測定条件は、以下の通りである。
(1)装置:ION−TOF社製 「TOF.SIMS V」
(2)一次イオン:Bi3++
(3)一次イオンの加速電圧:25kV
(4)照射イオン電流:0.23pA
(5)測定条件:バンチング(高質量分解能)モードにて、正イオン・負イオンを測定
(6)測定範囲:200μm×200μm
TOF−SIMSのデータ解析は、Surface Labを用いた。測定データのマスキャリブレーションを実施し、Naイオン、Kイオン及びCHイオンに帰属されるピークそれぞれについて、ピークの積分値を算出した。Naイオンのピークの積分値をNaのイオン強度INa、Kイオンのピークの積分値をKのイオン強度I、CHイオンのピークの積分値をCHのイオン強度ICH3として、比INa/ICH3及び比I/ICH3を算出した。
<耐衝撃性試験>
(耐衝撃性評価用サンプルの作製)
撹拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル 97.0質量部、アクリル酸 1.0質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5質量部、酢酸エチル 200質量部、及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル 0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定したところ、1,800,000の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
上記工程で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体 100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー(株)製、商品名「コロネート(登録商標)L」) 0.30質量部と、シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,商品名「KBM403」) 0.30質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
セパレータ(リンテック(株)製:SP−PLR382190)の離型処理面(剥離層面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さが25μmとなるように前記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚のセパレータ(リンテック(株)製:SP−PLR381031)を貼合し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
両面セパレータ付き粘着剤層から粘着剤層をガラスに移着することで粘着剤層を形成し、該粘着剤層上に実施例及び比較例で得られた光学フィルムを貼り合わせて、ガラス、粘着剤層、及び光学フィルムがこの順に積層された積層体(耐衝撃性評価用サンプル)を得た。
(耐衝撃性評価)
耐衝撃性を評価した。具体的には、上記積層体(耐衝撃性評価用サンプル)の光学フィルム面上に10cmの高さから重りを落下させて凹みを作製した。重りは、質量4.6g、該光学フィルム面に衝突する箇所が直径0.75mmの球状で、ステンレス製である。次いで、光干渉膜厚計((株)菱化システム社製、「Micromap(MM557N−M100型)」)を用いて光学フィルム表面の前記凹みの形状の観察を行い、試験前の凹んでいない状態のフィルム表面を基準に、最も大きく凹んだ点の深さ(試験前の凹んでいない状態のフィルム表面から最も大きく凹んだ点までの最短距離)を計測した。測定は3回繰り返し行い、凹み深さの平均値を耐衝撃性試験における凹み量とした。
<粘度の測定>
樹脂組成物の粘度は、次の条件で測定した。
装置 :ブルックフィールド社製粘度計(DV2THBCJ0)
測定温度 :25℃
スピンドル :CPA−52Z
サンプル量 :0.5mL
ローター回転速度 :3rpm
<合成例1:ポリアミドイミド樹脂(1)の製造>
十分に乾燥させた撹拌機と温度計を備える反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。該反応容器に、ジメチルアセトアミド(DMAc) 1907.2質量部を入れ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB) 111.94質量部と4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA) 46.84質量部を加えて反応させた。
次いで、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC) 10.37質量部とテレフタロイルクロリド(TPC) 42.79質量部を加えて反応させた。
次いで、無水酢酸 37.66質量部を加え、15分間撹拌した後、4−ピコリン 11.45質量部を加え、反応容器を70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。
反応液を冷却し、メタノール 3794.5質量部を加え、次いでイオン交換水 1419.4質量部を滴下し、白色固体を析出させた。析出した白色固体を遠心ろ過により捕集し、メタノールで洗浄することにより、ポリアミドイミド樹脂を含むウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを減圧下、78℃で乾燥させることによりポリアミドイミド樹脂の粉体を得た。得られたポリアミドイミド樹脂(1)の重量平均分子量は466,000であった。
<合成例2:ポリアミドイミド樹脂(2)の製造>
十分に乾燥させた撹拌機と温度計を備える反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。反応容器内に、DMAc 529.0質量部、TFMB 14.64質量部(45.72mmol)を加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、6FDA 6.15質量部(13.85mmol)と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA) 1.36質量部(4.62mmol)を添加し、室温で16時間撹拌した。次いで、TPC 2.53質量部(12.47mmol)を添加して10分撹拌したのち、更にTPC 2.58質量部(12.47mmol)を添加して20分撹拌した。更にTPC 0.56質量部(2.77mmol)を添加して室温で2時間撹拌した。
次いで、フラスコに4−ピコリン 2.58質量部(27.70mmol)と無水酢酸 13.21質量部(129.40mmol)とを加え、室温で30分間撹拌した後、反応容器を70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。
反応液を冷却し、40℃以下に下がったところで、メタノール 954質量部を加え、次いでイオン交換水 360質量部を滴下し、白色固体を析出させた。析出した白色固体を減圧ろ過により捕集し、メタノールで洗浄することにより、ポリアミドイミド樹脂を含むウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを減圧下、室温で乾燥させることによりポリアミドイミド樹脂の粉体を得た。得られたポリアミドイミド樹脂(2)の重量平均分子量は260,000であった。
<ナトリウム含有成分を含む溶液の製造>
ナトリウム含有成分として、ナトリウムエトキシド(以下において「NaOEt」とも称する、ナトリウム原子を含む化合物)を20質量%含む、ナトリウムエトキシドエタノール溶液(富士フィルム和光純薬(株)製)をDMAcで希釈し、ナトリウムエトキシドを0.1質量%の濃度で含有する溶液(以下において「NaOEt溶液」とも称する)を調製した。
<カリウム含有成分を含む溶液の製造>
カリウム含有成分として、カリウムtert−ブトキシド(以下において「t−BuOK」とも称する、カリウム原子を含む化合物)を1モル%含む、t−BuOKのTHF溶液(富士フィルム和光純薬(株)製)をDMAcで希釈し、t−BuOKを0.2質量%の濃度で含有する溶液(以下において「t−BuOK溶液」とも称する)を調製した。
<実施例1>
合成例1で得たポリアミドイミド樹脂(1)及びDMAcを、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有割合が9.0質量%となるような量で混合した。そこに、表1に示すTOF−SIMSのピーク強度となるように、上記のようにして調製したNaOEt溶液とt−BuOK溶液とを添加し、ポリアミドイミド樹脂組成物(成膜用のワニス)を調製した。得られた樹脂組成物を、ポリエステル基材(東洋紡(株)製、商品名「A4100」)の平滑面上に自立膜の厚さが55μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、50℃で30分間、次いで140℃で15分間乾燥後、得られた塗膜をポリエステル基材から剥離して、自立膜を得た。自立膜を金枠に固定し、さらに大気下、200℃で40分間乾燥し、厚さ50μmのポリアミドイミド樹脂フィルム(1)を得た。ポリアミドイミド樹脂フィルム(1)の残存溶媒量は、0.7%であった。
<実施例2>
合成例1で得たポリアミドイミド樹脂(1)及びDMAcを、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有割合が9.0質量%となるような量で混合した。そこに、表1に示すTOF−SIMSのピーク強度となるように、上記のようにして調製したNaOEt溶液とt−BuOK溶液とを添加し、ポリアミドイミド樹脂組成物(成膜用のワニス)を調製した。このようにして得た樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmのポリアミドイミド樹脂フィルム(2)を得た。
<実施例3>
合成例2で得たポリアミドイミド樹脂(2)及びDMAcを、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有割合が11.0質量%となるような量で混合した。そこに、表1に示すTOF−SIMSのピーク強度となるように、上記のようにして調製したNaOEt溶液とt−BuOK溶液とを添加し、ポリアミドイミド樹脂組成物(成膜用のワニス)を調製した。このようにして得た樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmのポリアミドイミド樹脂フィルム(3)を得た。
<比較例1>
合成例1で得たポリアミドイミド樹脂(1)及びDMAcを、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有割合が9.0質量%となるような量で混合した。このようにして得た樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmのポリアミドイミド樹脂フィルム(4)を得た。ポリアミドイミド樹脂フィルム(4)の残存溶媒量は、0.7%であった。
<比較例2>
合成例1で得たポリアミドイミド樹脂(1)及びDMAcを、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有割合が9.0質量%となるような量で混合した。そこに、表1に示すTOF−SIMSのピーク強度となるように、上記のようにして調製したNaOEt溶液を添加し、ポリアミドイミド樹脂組成物(成膜用のワニス)を調製した。このようにして得た樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmのポリアミドイミド樹脂フィルム(5)を得た。
<比較例3>
合成例1で得たポリアミドイミド樹脂(1)及びDMAcを、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有割合が9.0質量%となるような量で混合した。そこに、表1に示すTOF−SIMSのピーク強度となるように、上記のようにして調製したt−BuOK溶液を添加し、ポリアミドイミド樹脂組成物(成膜用のワニス)を調製した。このようにして得た樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmのポリアミドイミド樹脂フィルム(6)を得た。
<比較例4>
合成例2で得たポリアミドイミド樹脂(2)及びDMAcを、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有割合が11.0質量%となるような量で混合した。このようにして得た樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmのポリアミドイミド樹脂フィルム(7)を得た。
実施例1〜3及び比較例1〜4で得たポリアミドイミド樹脂フィルム(1)〜(7)について各種物性を測定した結果を表1及び表2に示す。
Figure 2021006624
Figure 2021006624
<実施例4>
合成例1で得たポリアミドイミド樹脂(1)及びDMAcを、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有割合が9.0質量%となるような量で混合した。そこに、塩化ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)の含有割合が0.05質量%、塩化カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)の含有割合が0.06質量%となるような量で混合し、ポリアミドイミド樹脂組成物を調製した。
<参考例>
合成例1で得たポリアミドイミド樹脂(1)及びDMAcを、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有割合が9.0質量%となるような量で混合した。そこに、塩化カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)の含有割合が0.12質量%となるような量で混合し、ポリアミドイミド樹脂組成物を調製した。
実施例2〜4、比較例1及び4、並びに参考例で得たポリアミドイミド樹脂組成物のそれぞれについて、上記の測定方法に従い粘度を測定した。得られた結果を表3に示す。
Figure 2021006624
表1及び表2に示すように、ワニスにNaOEtとt−BuOKを添加した、TOF−SIMSによるイオン強度の割合(INa/ICH3)が0.2以上であり、かつ、割合(I/ICH3)が0.2以上である実施例1〜3の光学フィルムは、耐衝撃性試験における凹み量が小さく、高い耐衝撃性を有することが確認された。一方、ワニスにNaOEt及びt−BuOKのいずれも添加しない比較例1及び4、並びに、いずれか一方のみを添加し、他方を添加しない比較例2及び3の光学フィルムの場合には、耐衝撃性試験による凹みが大きく、十分な耐衝撃性が得られなかった。NaOEt及びt−BuOKを一定量添加した光学フィルムの耐衝撃性が高くなる原因は明らかではないが、原子半径やイオン半径、もしくは分子サイズの異なるナトリウム含有成分とカリウム含有成分とが樹脂中に共存することで、樹脂間のパッキングをより強めていることが予想される。このような作用により、得られる光学フィルムの耐衝撃性の向上がもたらされると考えられるが、当該考察は、本発明を何ら限定するものではない。

Claims (13)

  1. ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む光学フィルムであって、該光学フィルムの飛行時間型二次イオン質量分析法により得られる、CHのイオン強度(ICH3)に対するNaのイオン強度(INa)の割合(INa/ICH3)が0.2以上であり、かつ、CHのイオン強度(ICH3)に対するKのイオン強度(I)の割合(I/ICH3)が0.2以上である、光学フィルム。
  2. ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は芳香族系の樹脂である、請求項1に記載の光学フィルム。
  3. ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂における全構成単位に対する芳香族系モノマーに由来する構成単位の割合が60モル%以上である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
  4. 厚さが10〜100μmであり、全光線透過率が80%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
  5. ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂の重量平均分子量が200,000以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
  6. ポリイミド系樹脂はポリアミドイミド樹脂である、請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
  7. ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂はテレフタル酸に由来する構成単位を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
  8. 光学フィルムの明度Lは90以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルム。
  9. フレキシブル表示装置の前面板用のフィルムである、請求項1〜8のいずれかに記載の光学フィルム。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置。
  11. タッチセンサをさらに備える、請求項10に記載のフレキシブル表示装置。
  12. 偏光板をさらに備える、請求項10又は11に記載のフレキシブル表示装置。
  13. (a)ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、少なくとも1種のナトリウム含有成分と、少なくとも1種のカリウム含有成分と、溶媒とを少なくとも含む、樹脂組成物を調製する工程、ここで、該ナトリウム含有成分は、ナトリウム原子を含む化合物、ナトリウム及びナトリウムイオンからなる群から選択され、該カリウム含有成分は、カリウム原子を含む化合物、カリウム及びカリウムイオンからなる群から選択される、
    (b)前記樹脂組成物を支持材に塗布して塗膜を形成する工程、及び
    (c)前記塗膜を乾燥させて、光学フィルムを形成する工程
    を少なくとも含む、請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
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