JP2021006506A - 次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体、及びそれを用いた次亜塩素酸ナトリウムの水溶液 - Google Patents

次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体、及びそれを用いた次亜塩素酸ナトリウムの水溶液 Download PDF

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Abstract

【課題】室温での保管安定性に優れた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の提供。【解決手段】次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面に存在する炭酸ナトリウムを有し、前記炭酸ナトリウムの濃度が0.1重量%以上であり、結晶間水分率が2.5重量%以下である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体。【選択図】なし

Description

本発明は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体及びそれを用いた次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に関する。
次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)は、漂白効果、殺菌効果などに優れることから、上下水道用、温泉施設用、プール用、家庭用などの消毒用薬剤として多用されている。さらに次亜塩素酸ナトリウムは、製紙工業用、繊維工業用などの漂白用薬剤、各種工業用における排水処理用薬剤、各種工場のプラント冷却循環水系、廃水処理水系などで発生するスライム障害(藻類、細菌類などによるスライム発生により、熱効率の低下、通水配管の閉塞などの障害)を防止するスライム洗浄剤などの広汎な用途で使用されている。また、次亜塩素酸ナトリウムの酸化作用は有機合成の分野にも利用されており、広く医薬品や農薬などの製造に次亜塩素酸ナトリウムが用いられている。
一方、次亜塩素酸ナトリウムは、常温において下記化学式1の不均化反応を生じ、徐々に塩素酸ナトリウムと塩化ナトリウムに分解していく。
(化学式1)
3NaClO→NaClO3+2NaCl
そこで、次亜塩素酸ナトリウムは、通常は製造所の製品保管タンク、輸送時のローリー車、受け入れ先タンクなどでは、約20℃以下に冷却されることで、ある程度長期間保管されている。また別の方法として、次亜塩素酸ナトリウムは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液としてその濃度を低下させることで、不均化反応による分解速度を遅くして保管される。
しかし、次亜塩素酸ナトリウム供給メーカーにとって、上述した方法で次亜塩素酸ナトリウムを保管することは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液保管タンクの冷却設備コスト及び冷却ランニングコスト、次亜塩素酸ナトリウム水溶液製品を冷却しながら輸送するコストを高くし、製品コストの上昇を引き起こす要因となっている。さらに、各水道局においても、消毒用薬剤保管タンクの冷却、温度管理、塩素酸ナトリウムの濃度管理などに過大な人的コスト、検査コストを必要とすることが、上水コストの削減のネックとなっている。
また、次亜塩素酸ナトリウム結晶には、1水和物、2.5水和物、5水和物、6水和物、7水和物が知られているが、この中で、5水和物は、比較的製造が容易な高濃度水酸化ナトリウム水溶液を原料として得ることができるものの常温で融解し易く、さらに潮解性があって液体化もし易く、空気雰囲気あるいは窒素雰囲気下でも容易に分解が進行するという問題点がある。結晶形態での保管であれば、液状形態の製品に対して大きく体積を低減できるため、冷却コスト、輸送コストなどが大幅に削減できるというメリットがあるにもかかわらず、この分解性のために、各種の水和物結晶を製造しても、結晶そのものを輸送したり、販売したりするという事業形態は簡単には採用できなかった。
一方、次亜塩素酸ナトリウムの分解を抑制して安定性を高めるために、次亜塩素酸ナトリウムの湿潤結晶を乾燥することが提案されている。例えば、特許文献1には、有効塩素濃度が25%の次亜塩素酸ソーダの濃厚水溶液を−10℃前後で冷却し、析出する結晶を分離して乾燥空気又は乾燥した不活性ガスと接触させることが記載されている。特許文献2には、次亜塩素酸ナトリウムの2.5水和物を主成分とする次亜塩素酸ナトリウムの湿潤結晶を乾燥する際、少量の水酸化ナトリウムの存在下、該結晶を25℃から40℃の雰囲気において連続的に又は段階的に昇温させながら乾燥することが記載されている。また、非特許文献1には、次亜塩素酸ソーダ結晶の不均一化反応における次亜塩素酸ソーダ結晶の分解速度が結晶水によって抑制されることと、空気中の炭酸ガスにより次亜塩素酸ソーダ結晶の分解が促進されることが記載されている。
そして、特許文献3には、塩化ナトリウムの濃度が低く、有効塩素濃度13%の次亜塩素酸ソーダ水溶液を得ることができる次亜塩素酸ソーダ5水和物の製造方法が記載されているが、ここでは次亜塩素酸ナトリウム5水和物は特段乾燥することなく、水溶液に調製されている。特許文献4には、塩素酸ナトリウムの含有量が低減された次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を製造する方法が記載されている。
特公昭45−037134号公報 特公昭49−028354号公報 特開2000−290003号公報 特開2014−169215号公報
浜野有弘、「次亜塩素酸ソーダ結晶の分解速度」、佐世保高等専門学校研究報告、第7号、133〜138頁、1970年11月30日
特許文献1、2に記載の方法では、乾燥条件によっては、次亜塩素酸ナトリウム結晶が分解するという問題があるなど、従来、次亜塩素酸ナトリウム結晶を十分な低水分濃度まで、工業的かつ安定に乾燥し、保管安定性に優れた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を得られる方法は知られていない。
本発明は、上記従来の問題を解決するため、室温での保管安定性が良好である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を得ることができる次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の製造方法、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体及びそれを用いた次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を提供する。
本発明は、濃度0.01重量%以上の水酸化ナトリウムを含有する湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を、25℃未満の温度で、露点が−2℃以下、かつ炭酸ガス濃度が250ppm以上1600ppm以下の気体を用いて、結晶間水分率が2.5重量%以下になるまで乾燥する乾燥工程を含むことを特徴とする次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の製造方法に関する。
上記乾燥は、常圧下又は減圧下で行うことが好ましい。上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の有効塩素濃度が、上記湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の有効塩素濃度より高いことが好ましい。さらに、上記湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶は、水酸化ナトリウム水溶液と塩素ガスを反応させ、反応液から塩化ナトリウムを濾別して得られた次亜塩素酸ナトリウムの水溶液から次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を晶析して得られており、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を晶析させる前に、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に水酸化ナトリウムを次亜塩素酸ナトリウムに対するモル分率が0.01〜0.26の範囲になるように添加することが好ましい。
また、本発明は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面に存在する炭酸ナトリウムを有し、前記炭酸ナトリウムの濃度が0.1重量%以上であり、結晶間水分率が2.5重量%以下であることを特徴とする次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体に関する。
上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、安息角が40°以下であることが好ましい。上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、JIS K 7365(1999)に準じて測定したゆるめ見掛け密度が0.60g/mL以上であることが好ましい。上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の有効塩素濃度が41重量%以上であることが好ましい。
また、本発明は、上記の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を用いたことを特徴とする次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に関する。
本発明の製造方法によれば、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の製造工程において、所定の条件で乾燥を行うことで、室温での保管安定性が良好である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を提供することができる。また、本発明は、結晶形態で安定な次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を提供するため、輸送が便利となる他、使用者は任意に高濃度に溶解した水溶液として用いることもできる。
本発明者らは、保管安定性に優れた固体の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を得ることについて鋭意検討したところ、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を、水酸化ナトリウムの存在下、乾燥温度、乾燥に用いる気体の露点及びその炭酸ガス濃度を所定の範囲に調整して乾燥することで、室温での保管安定性が良好な次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の製造方法は、濃度0.01重量%以上の水酸化ナトリウムを含有する湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を、25℃未満の温度で、露点が−2℃以下、かつ炭酸ガス濃度が250ppm以上1600ppm以下の気体を用いて、結晶間水分率が2.5重量%以下になるまで乾燥する乾燥工程を含む。
本発明において、「結晶間水分率」は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面及び/又は内部に含まれる水和水以外の水の含有率をいう。結晶間水分率は、後述する方法にて測定算出する。本発明において、「湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶」とは、結晶間水分率が2.5重量%を超えるものである。本発明の製造方法において乾燥工程の対象となる湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶(以下において、「湿潤結晶」とも記す。)としては、結晶間水分率が2.5重量%を超えるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液と塩素ガスを反応させ、塩化ナトリウムを濾別した次亜塩素酸ナトリウムの水溶液から次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を晶析した後固液分離して得られるものであってもよく、後述するように、固液分離した後、さらに脱水したものであってもよい。例えば、具体的には、水酸化ナトリウム水溶液と塩素ガスを反応させて得た反応物から塩化ナトリウムを固液分離し、得られた次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に種晶を添加して次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を析出させた後、残余の次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を固液分離して得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を用いることができる。また、上記湿潤結晶は、特開2014−169215号公報に記載の方法で製造してもよい。
本発明の製造方法において乾燥工程の対象となる湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の結晶間水分率は3重量%以上であることが好ましい。また、乾燥する前の湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の結晶間水分率の上限は、特に限定されないが、結晶間に存在している濾液に由来する不純物を減少する観点からは、結晶間水分率が10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、6重量%以下であることがさらに好ましい。一方、乾燥時間を短縮する観点からは、15重量%以下であることが好ましい。必要であれば、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の結晶間水分率は、固液分離後に、後述するように脱水操作を行うことで低下させることができる。
本発明の製造方法においては、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶に、水酸化ナトリウムを濃度0.01重量%以上となるよう共存させた状態で、乾燥を実施することが重要である。そのためには、乾燥工程前に、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶に所定濃度となるよう水酸化ナトリウムを添加しても良いが、水酸化ナトリウム水溶液と塩素ガスを反応させ、塩化ナトリウムを濾別し、晶析して得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を用いる場合は、後述するように、晶析工程の前後や晶析途中の次亜塩素酸ナトリウム水溶液や次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶スラリーに、水酸化ナトリウムを添加することで、乾燥時に水酸化ナトリウムを共存させることが好ましい。なお、ここでいう湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶中の水酸化ナトリウム濃度は、乾燥対象である湿潤結晶の総重量、すなわち、次亜塩素酸ナトリウム5水和物、水分、その他湿潤結晶に含まれる成分の合計重量に対する重量%である。湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶中の水酸化ナトリウムの濃度としては、0.04重量%以上が好ましく、0.08重量%以上がより好ましい。上限としては特に限定されないが、1重量%以下でも十分に本発明の効果を得ることができ、0.5重量%以下でもよい。
本発明において、乾燥工程で次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の融解を有効に防止するという観点から、乾燥温度は25℃未満である必要があり、24℃以下であることが好ましい。さらに、乾燥温度を20℃以下とすることで、乾燥工程における次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の分解を有効に防止できる上、乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の有効塩素濃度を41重量%以上にすることができるためより好ましい。加えて、乾燥温度が15℃以下であれば、水和水の蒸発を抑制しつつ、結晶間水分率を効果的に低下させることができるためさらに好ましい。
本発明においては、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を結晶間水分率が2.5重量%以下になるまで乾燥させることで、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を得る。乾燥後に得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体(以下において、乾燥結晶とも記す。)の結晶間水分率が2.5重量%を超えると、乾燥が不完全となり次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の粉体流動性が低い上、二酸化炭素との反応により次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃度の低下が生じやすい。乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の結晶間水分率が1.0重量%以下であることが好ましく、0.90重量%以下であることが好ましく、0.85重量%以下であることがさらに好ましく、0.80重量%以下であることがさらにより好ましい。
乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の結晶間水分率の下限は特に限定されないが、乾燥工程において次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の結晶間水分が除去される恒率乾燥期間中に乾燥処理を完了することが望ましく、乾燥工程において水和水を蒸発させない観点から、0.01重量%以上であることが好ましく、0.02重量%以上であることがより好ましく、0.05重量%以上であることがさらに好ましく、0.1重量%以上であることがさらにより好ましい。
本発明の製造方法において、乾燥は、露点が−2℃以下であり、かつ、炭酸ガス濃度が250ppm以上1600ppm以下の気体を用いて行う。
乾燥に用いる気体の露点は−2℃以下であれば特に限定されないが、−10℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがさらに好ましく、−25℃以下であることがより好ましく、−30℃以下であることがさらにより好ましい。例えば、乾燥に用いる気体の露点が−20℃以下であると、該気体の温度が変動しても、気体中の湿度が充分に低いため、乾燥時間を短縮できる。さらに、乾燥に用いる気体の露点が−30℃以下の場合は、乾燥操作中に次亜塩素酸ナトリウム5水和物の分解による塩化ナトリウムや塩素酸ナトリウムの含有量を増やすことなく、結晶間水分率を2.5重量%以下にすることができる。本発明において露点とは、通常、乾燥に使用する気体が1気圧の場合の露点温度を意味し、一般的な露点測定装置を用いて測定される。なお乾燥に使用する気体が空気又は空気と類似の組成の気体でないなど、一般的な露点測定装置では計測できない場合は、他の公知の手段によって乾燥に使用する気体中の水蒸気量を測定し、計算や外挿によって露点温度を求めることもできる。
従来、炭酸ガスによって次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶が分解することが知られていることから(非特許文献1)、乾燥時にも炭酸ガスの濃度をできるだけ低くすることが好ましいと考えられていたにもかかわらず、本発明では、乾燥に用いる気体中の炭酸ガス濃度を250ppm以上とする。驚くことに、本発明においては、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶に水酸化ナトリウムを共存させた状態で、炭酸ガスを250ppm以上含有する気体を用いて乾燥を行うことで、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶間水分中に含有された水酸化ナトリウムが、乾燥が完了する前に、乾燥に用いた気体中に含まれ、拡散された炭酸ガスと接触することにより、炭酸ナトリウムが生成し、生成された炭酸ナトリウムが次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面に存在する(付着する)ことで、乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の保管安定性が改善される。
乾燥に用いる気体中の炭酸ガス濃度は、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶間水分中に含まれる水酸化ナトリウムの量との関係にもよるが、300ppm以上が好ましく、350ppm以上がより好ましく、420ppm以上がさらに好ましく、600ppm以上であることがさらにより好ましい。乾燥に用いる気体中の炭酸ガス濃度が600ppm以上の場合、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶と共存する水酸化ナトリウム濃度を例えば0.1重量%以上とより高くすることにより、乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶表面に存在する(例えば、被膜として存在する)炭酸ナトリウムの量が増加し、乾燥結晶の保管安定性を大きく改善するため特に好ましい。一方、乾燥に用いる気体中の炭酸ガス濃度の上限は1600ppm以下であれば特に限定されないが、炭酸ガスによる次亜塩素酸ナトリウムの分解を避ける観点から、1500ppm以下であるのが好ましく、1000ppm以下であるのがより好ましい。本発明において、炭酸ガス濃度は一般的な二酸化炭素検知器で測定することができる。なお、二酸化炭素検知器の中には炭酸ガス濃度だけでなく、温度、露点も測定できるものもあり、それを用いることもできる。
上記乾燥は、常圧下又は減圧下で行うことができる。次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を均一に乾燥する観点から、撹拌あるいは流動させながら乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、特に限定されず、例えば、バットなどに該結晶を広げ除湿乾燥空気を送風し乾燥するバッチ乾燥法、結晶を含むスラリーを2流体ノズルや高速遠心盤で噴霧し除湿空気中で乾燥するスプレー乾燥法、該結晶を少量ずつ除湿空気とともに移送する気流乾燥法、除湿空気を結晶下部より送風し結晶を流動させながら乾燥する流動乾燥法などを採用することができる。本発明において、常圧とは、大気圧に等しい圧力をいう。上記乾燥は、減圧下(真空下)で行ってもよい。減圧乾燥は、加熱しなくとも結晶間水分を減圧により蒸発させることができ、蒸発熱を奪うため結晶の分解や融解が促進されないため好ましい。減圧度(真空度)は、外気温にて結晶間水分を蒸発させる観点から、2kPa(abs)以下であることが好ましく、1kPa(abs)以下であることがより好ましい。上記減圧乾燥は、真空凍結乾燥であってもよい。真空凍結乾燥における真空度は、特に限定されないが、水和水を低下させず結晶間水分率を効率よく低下させる観点から、300Pa(abs)以下であることが好ましく、200Pa(abs)以下であることがより好ましく、100Pa(abs)以下であることがさらに好ましい。減圧乾燥及び真空凍結乾燥時に、乾燥に用いる気体の露点は−42℃以下であることが好ましい。なお、次亜塩素酸ナトリウム5水和物以外の次亜塩素酸ナトリウムの水和物又は無水物の作製時にも、乾燥は、常圧下又は減圧下で行うことができるが、例えば、結晶の分解や融解を抑制する観点から、減圧下で行うことが好ましい。次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶以外の次亜塩素酸ナトリウムの水和物としては、例えば、1水和物、2.5水和物、6水和物及び7水和物等が挙げられる。
上記乾燥に用いる気体としては、所定濃度の炭酸ガスを含有し、温度条件及び露点条件を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、必要に応じて炭酸ガス濃度を調整し、湿度を下げた除湿空気を用いることができる。除湿空気は、例えば、空気をモレキュラーシーブ4Aやシリカゲルなどの除湿剤を充填したカラムを通すことでも得ることができる。また、ドレンを除去した圧縮空気や低温で湿度を下げた冷却除湿空気を用いてもよい。圧縮空気は計装用エアーを代用することができ、計装機器を用いる場所であれば、特に乾燥用除湿空気の設備を導入することなく使用可能である。また、必要に応じて、炭酸ガスボンベやPSA(圧力変動吸着方式)による炭酸ガス発生装置を接続して、炭酸ガス濃度を調整することができる。あるいは窒素やアルゴンなどの不活性気体に所定濃度の炭酸ガスを混合したものを用いても良い。
乾燥工程により、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の純度が低下しない観点から、上記乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶(次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体)の有効塩素濃度は、上記乾燥前の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶(湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶)の有効塩素濃度より高いことが好ましい。上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の有効塩素濃度は41重量%以上であることが好ましく、42重量%以上であることが特に好ましい。本発明において、「有効塩素濃度」は、後述するとおりに測定算出する。
本発明においては、乾燥の対象となる湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶として、水酸化ナトリウム水溶液と塩素ガスを反応させ、反応液から塩化ナトリウムを濾別して得られた次亜塩素酸ナトリウムの水溶液から次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を晶析して得られたものを用いる場合は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を晶析させる前、晶析途中又は晶析完了後の次亜塩素酸ナトリウム水溶液や次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶スラリーに、水酸化ナトリウムを添加することで、乾燥時に次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶と水酸化ナトリウムを共存させることができ、好ましい。ここで、次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶表面に均等に水酸化ナトリウムを付着させるためには、晶析をさせる前、例えば次亜塩素酸ナトリウムの水溶液(晶析前原液)に種晶を添加する前に、水酸化ナトリウムを添加することがより好ましい。また、この場合に添加する水酸化ナトリウムの量としては、晶析前の次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の次亜塩素酸ナトリウムに対して0.01〜0.26のモル分率となる範囲で添加することが好ましい。本明細書において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に水酸化ナトリウムを添加する際、「次亜塩素酸ナトリウムに対する水酸化ナトリウムのモル分率」とは、次亜塩素酸ナトリウムのモル数と水酸化ナトリウムのモル数の合計モル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の比を意味する。次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の水酸化ナトリウムの濃度を上記の範囲に調整することにより、晶析後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面近傍に水酸化ナトリウムを効率的に分配でき、乾燥工程において湿潤次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶間水分に含まれる水酸化ナトリウムが炭酸ガスとの反応により炭酸ナトリウムが生成されるため好ましい。得られる結晶の保管安定性をより高める観点からは、次亜塩素酸ナトリウムに対して添加する水酸化ナトリウムのモル分率としては、0.03以上であることがより好ましく、0.08以上であるのがさらに好ましい。次亜塩素酸ナトリウムに対して添加する水酸化ナトリウムのモル分率の上限は、乾燥時に用いる気体中の炭酸ガス(二酸化炭素)濃度との関係で、乾燥完了後に次亜塩素酸ナトリウム5水和物表面に水酸化ナトリウムが残り、保管安定性を著しく低下させなければよく、例えば0.2以下であることが好ましく、0.16以下であることがより好ましい。また水酸化ナトリウムは水溶液として添加することが好ましく、この場合用いられる水酸化ナトリウム水溶液の濃度は45重量%以上であることが好ましい。
水酸化ナトリウム水溶液と塩素ガスを反応させて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得る反応工程では、32〜38重量%の水酸化ナトリウム水溶液を使用することが好ましい。この範囲であれば、塩素化反応による次亜塩素酸ナトリウムの生成速度を高く維持でき、かつ、不均化反応に基づく塩素酸ナトリウムの生成が極めて少なくなるように制御できる。上記水酸化ナトリウム水溶液は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の分解を促進する炭酸水素ナトリウムの生成を抑制するために、極力大気との接触を制限することが好ましく、塩素化反応も大気との接触がない系で実施することがより好ましい。上記反応工程における反応温度は、特に限定されないが、22〜26℃とすることが好ましい。この範囲であれば、塩素化反応がスムーズに進行し、かつ、不均化反応に伴う塩素酸ナトリウムの生成を大幅に抑制することができる。
上記反応で得られた次亜塩素酸ナトリウムの水溶液から塩化ナトリウムを固液分離した後、晶析に用いる。上記の塩素化反応で生成した次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、副生した塩化ナトリウム結晶を含有する。上記において、固液分離は、特に限定されないが、例えば、遠心分離機による遠心分離で行うことができる。
塩化ナトリウムを濾別した次亜塩素酸ナトリウム水溶液(晶析前原液)を晶析装置に導入して晶析を行う。晶析前原液中の有効塩素濃度は20重量%以上が好ましく、晶析の効率の観点から、23重量%以上がより好ましく、26重量%以上がさらに好ましい。晶析速度を上げる目的で少量の種晶を使用することができる。種晶を投入する条件として、晶析前原液に種晶を添加しても次亜塩素酸ナトリウム5水和物及び塩素酸ナトリウムが析出しない冷却開始温度に設定した晶析前原液に、種晶を投入することが好ましい。具体的には、冷却開始温度(晶析前原液の温度)が15〜25℃の際に種晶を投入することが好ましい。この温度であれば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に種晶を添加しても次亜塩素酸ナトリウム5水和物及び塩素酸ナトリウムが析出せず、かつ、過剰な結晶化熱発生による次亜塩素酸ナトリウム5水和物の分解を抑制でき、余剰な塩化ナトリウムの副生を抑制できる。晶析するまでに種晶が溶解することを考慮すると、種晶を添加する冷却開始温度は、16〜23℃がより好ましく、さらに好ましくは17〜20℃である。
上記晶析は、一定温度で行わず、一定の冷却速度で冷却しながら行うことが好ましい。冷却速度は1〜20℃/hrとするのが好ましく、2〜15℃/hrがより好ましく、3〜10℃/hrがさらに好ましい。晶析の際の攪拌において、攪拌翼先端速度は0.2〜3m/sとすることが好ましく、0.3〜2m/sがより好ましい。
晶析工程において最終到達する温度(冷却終了温度)は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物が析出し、かつ、塩化ナトリウムが析出しない温度が好ましい。具体的には、晶析工程において最終到達する温度(冷却終了温度)は、0〜12℃であることが好ましく、2〜10℃であることがより好ましく、3〜7℃であることがさらに好ましい。
晶析工程で得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を含むスラリーの固液分離操作としては特に限定されず、例えば、吸引濾過法、加圧濾過法、フィルタープレス法、遠心分離法などを採用することができる。遠心分離機などの装置を用いて処理することで、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶から次亜塩素酸ナトリウム液を固液分離し、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を得る。次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶から次亜塩素酸ナトリウム液を固液分離した後、濾別した次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶は、さらに遠心分離機などで脱水を行ってもよい。脱水により、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の結晶間水分率を低減することができる。また、脱水後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶において結晶間に付着した塩化ナトリウムや残アルカリ分を低減するために、結晶を完全に溶解しない程度、例えば湿潤結晶の重量に対し10重量%程度の純水を加えた後に、脱水操作を行うこともできる。或いは、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶のpH調整のために、結晶を完全に溶解しない程度、例えば湿潤結晶の重量に対し10重量%程度のリン酸などの水溶液を加えた後に、脱水操作を行うこともできる。
本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体において、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の表面には炭酸ナトリウムが存在し、該炭酸ナトリウムの濃度は0.1重量%以上であり、結晶間水分率が2.5重量%以下である。すなわち、本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体において、炭酸ナトリウムは次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体と複合化されていることになる。本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、好ましくは、上述した本発明の製造方法によって得られる。上述した本発明の製造方法から明らかなように、本発明の製造方法で得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体において、炭酸ナトリウムは次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面に存在し、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶と複合化されている。或いは、本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、例えば、乾式粒子複合化装置を用いて、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面に炭酸ナトリウムを被覆して複合化しても良い。
本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、水分量が低く流動性などの特性に優れるだけでなく、結晶表面に炭酸ナトリウムが存在するためその保存安定性にも優れている。本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体において、炭酸ナトリウムの存在形態としては特に限定されず、結晶表面全体を必ずしも均一に被覆していなくてもよく、少なくとも結晶表面の一部、好ましくは表面積の30%以上、より好ましくは50%以上が被覆されていればよい。もちろん結晶表面全体が全て被覆されているのが最も好ましいことはいうまでもない。本願の出願時に、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面における炭酸ナトリウムの存在形態を確認することは、次亜塩素酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムの化合物の性質上困難であるが、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を上述した本発明の製造方法で作製した場合、上述したように、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶に水酸化ナトリウムを共存させた状態で、炭酸ガスを250ppm以上含有する気体を用いて乾燥を行うことで、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶間水分中に含有された水酸化ナトリウムが、乾燥が完了する前に、乾燥に用いた気体中に含まれ、拡散された炭酸ガスと接触することにより、炭酸ナトリウムが生成するため、生成された炭酸ナトリウムが次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面に付着され、例えば、被膜として存在することは明らかである。或いは、乾式粒子複合化装置を用いた場合も、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面に炭酸ナトリウムを被覆して複合化することから、炭酸ナトリウムが次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面に付着され、例えば、被膜として存在することは明らかである。特許文献1には、乾燥次亜塩素酸ナトリウム結晶に対して無水炭酸ソーダを添加混合することが記載されているが、無水炭酸ソーダは乾燥次亜塩素酸ナトリウム結晶と混合されているのみである。本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶粉体では、次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶の表面に炭酸ナトリウムが存在し、次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶と複合されていることから、より保存安定性に優れると思われる。すなわち、本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶粉体では、次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶の表面に存在する炭酸ナトリウムの濃度が0.1重量%以上である必要があり、これによって、保存安定性が向上している。本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶粉体では、例えば、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の晶析後に炭酸ナトリウムを添加して混合した場合でも、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の晶析後に添加して混合した炭酸ナトリウムを除く、次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶の表面に存在する炭酸ナトリウムの濃度が0.1重量%以上であれば良い。
上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体において、保存安定性に優れる観点から、炭酸ナトリウムの濃度は0.2重量%以上であることが好ましく、0.3重量%以上であることがより好ましい。また、上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体において、水への溶解性低下や酸化剤等の反応性低下の観点から、炭酸ナトリウムの濃度は3.0重量%以下であることが好ましく、2.0重量%以下であることがより好ましく、1.5重量%以下であることがさらに好ましく、1.0重量%未満であることがさらにより好ましく、0.95質量%以下であることがさらにより好ましい。次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体における炭酸ナトリウムの濃度は、後述のとおりに測定する。具体的には、上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体において、炭酸ナトリウムの濃度は0.1重量%以上3.0重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上2.0重量%以下であることがより好ましい。
上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、安息角が40°以下であることが好ましく、より好ましくは38°以下であり、さらに好ましくは35°以下であり、さらにより好ましくは30°以下であり、特に好ましくは25°以下である。次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の安息角が40°以下であると、結晶の保管安定性が向上する上、空気移送が可能となり、製品の取り出しも容易となる。本発明において、安息角は、直径5.5cmの円盤上にアズワン社製粉末漏斗(型番「6−858−05」、口径150mm)を介し次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を自由落下させ、山盛りになった結晶粉体の最頂部の高さを測定し、円盤面から最頂部への仰角を安息角として三角関数より算出するものである。
上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、JIS K 7365(1999)に準じて測定したゆるめ見掛け密度が0.60g/mL以上であることが好ましく、0.63g/mL以上であることがより好ましい。例えば、前述した本発明の製造方法においては、湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶の乾燥工程において、恒率乾燥期間中はゆるめ見掛け密度が上昇し、減率乾燥期間では0.63g/mL以上のゆるめ見掛け密度となるため、乾燥完了の判断の判定基準とすることもできる。また、ゆるめ見掛け密度が0.63g/mL以上であると、粉体流動性がよく空気による移送や自動計量も容易に行える。本発明において、「ゆるめ見掛け密度」は、JIS K 7365(1999)に準じて測定するものである。具体的には、JIS K 7365(1999)に規定の見掛け密度測定装置を用い、該装置に次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を充填し、ダンバーを速やかに引き抜くことで自由落下させ、はかり瓶(内容積100mL)に受け、はかり瓶に振動衝撃を加えない状態で、はかり瓶から盛り上がった結晶粉体を平板で摺り落としたのち秤量し、3回測定した平均値からはかり瓶空重量を差し引いた重量を内容積100mLで割ってゆるめ見掛け密度とする。
上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、室温での保管安定性に優れており、例えば、23℃における保管安定時間が100時間以上であることが好ましく、150時間以上であることがより好ましい。保管温度と保管安定時間との関係から、23℃で100時間以上の保管安定時間であれば、5℃以下の冷蔵保管状態で1年程度の保管安定時間が得られることが分かっている。すなわち、本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、室温での保管安定性が良好であるとともに、5℃以下の低温下での長期保管安定性に優れている。次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体の室温での保管安定性は、後述するとおりに評価する。
上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、水に溶解させて次亜塩素酸ナトリウムの水溶液として用いることができる。上記次亜塩素酸ナトリウムの水溶液は、特に限定されず、例えば、有効塩素濃度が4質量%以上12重量%以下の低濃度になるように調製してもよく、12重量%を超える、例えば13重量%以上の高濃度になるように調製してもよい。
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<試料調製>
(1)試料1の調製
測定対象の乾燥前の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶(湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶)及び乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶(次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体)のそれぞれを、コニカルビーカーに10g精秤し、20gの水で溶解して次亜塩素酸ナトリウム水溶液を作製した(試料1)。
(2)試料2の調製
上記で得られた試料1を10mLホールピペットで採取し250mLメスフラスコに入れ、純水を加え25倍希釈水溶液とした(試料2)。
(3)試料3の調製
100mLメスフラスコに純水を20〜30mL入れ、試料1をマイクロピペットで2mLを採取し、同メスフラスコに添加した。3重量%過酸化水素水溶液を約10mL加え、次亜塩素酸ナトリウムの分解による泡が発生しなくなることを目視確認したのち、純水を標線まで加え、よく混合した(試料3)。
<比重>
室温(23℃)において、試料1を25mLホールピペットで正確にコニカルビーカーにとり、その内容量(試料1)の重量Xgを精秤した。下記数式1を用いて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の比重を算出した。
SG(g/mL)=X(g)/25(mL) (1)
上記数式(1)中、SGは次亜塩素酸ナトリウム水溶液の比重(g/mL)である。
<有効塩素濃度>
ビーカーに試料2を正確に10mL入れ、そこに10重量%ヨウ化カリウム水溶液25mLと10重量%酢酸水溶液25mLを添加した。その溶液を1/10Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定した。液の色が褐色から淡黄色に変わったときに、デンプン水溶液(約0.5重量%)を指示薬として3滴程度(約0.05mL)加え、液の色が褐色から無色に変わるまで1/10Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で更に滴定を続けた。滴定に使用した1/10Nチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴定量をAmLとした。下記数式2を用いて、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶中の有効塩素濃度を算出した。
ECC(重量%)=[(35.45×0.1×A/0.4×(10+20)/SG)/1000]/10×100 (2)
上記数式(2)中、ECCは次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶中の有効塩素濃度である。
<水酸化ナトリウム濃度及び炭酸ナトリウム濃度>
ビーカーに試料1を正確に25mL入れ、3重量%過酸化水素水の水溶液を徐々に加え、反応による酸素ガス生成が停止した時点で3重量%過酸化水素水の水溶液の添加をやめた。よく振り混ぜた後、フェノールフタレイン液を2滴(約0.03mL)加え、1/10N硫酸水溶液で赤色が消えるまで滴定した。この際、要した1/10N硫酸水溶液の量をBmLとした。続いてメチルオレンジ液を2滴(約0.03mL)加え、1/10N硫酸水溶液で薄紅色を呈するまで滴定した。この際、要した1/10N硫酸水溶液の量をCmLとした。下記数式(3)及び(4)により、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶中の水酸化ナトリウムの濃度及び炭酸ナトリウムの濃度を求めた。
水酸化ナトリウムの濃度(重量%)=40×0.1×(B-C)/25×(10+20)/SG (3)
炭酸ナトリウムの濃度(重量%)=53×0.1×2×C/25×(10+20)/SG (4)
数式(3)及び(4)において、SGは次亜塩素酸ナトリウム水溶液の比重(g/mL)である。
<塩化ナトリウムの濃度>
ビーカーに試料2を正確に10mL入れ、3重量%過酸化水素水の水溶液を5mL加え、よく振り混ぜた後、フェノールフタレイン液を2滴(約0.03mL)加え、1/10N硫酸水溶液で赤色が消えるまで滴定した。続いてクロム酸カリウム指示薬を3滴(約0.05mL)加え、1/10N硝酸銀水溶液で、黄色から茶色を呈するまで滴定した。この際、要した1/10N硝酸銀水溶液の量をDmLとした。上記で求めた比重、有効塩素濃度と合わせて、下記数式5に代入することで次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶中の塩化ナトリウムの濃度を求めた。
塩化ナトリウムの濃度(重量%)=[58.45×0.1×D/0.4×(10+20)/SG]-ECC×0.8234 (5)
数式(5)中、SGは次亜塩素酸ナトリウム水溶液の比重(g/mL)であり、ECCは次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶中の有効塩素濃度(重量%)である。
<塩素酸ナトリウム濃度>
20mLの試料3を、塩化物イオン除去フィルター(Thermo SCIENTIFIC社製、製品名「オンガードII-Ag」)に通し、さらに金属イオン除去フィルター(Thermo SCIENTIFIC社製、製品名「オンガードII-H)に通し、最後にメンブランフィルター(日本ミリポア製、製品名「IC MILLEX−LG」)に通すことで、塩化物、金属イオン及び不溶解物を除去した後、イオンクロマトグラフィーを用いて分析した。用いた分析機器は、日本ダイオネクス株式会社製の「ICS−1000 Ion Chromatography System」であり、分析条件は、分離カラム:IonPac AS9−HC、ガードカラム:IonPac AG9−HC、サプレッサー:ASRS、リサイクルモード、電流値 45mA、検出器:電気伝導度検出器、溶離液:8mmol/L Na2CO3、1mmol/L NaOH、流速:1mL/分、試料導入量:25μLであった。得られたクロマトグラフのピーク面積比から検量線法により塩素酸ナトリウムの濃度(重量%)を求めた。
<次亜塩素酸ナトリウム5水和物の濃度>
上記で求めた有効塩素濃度から次亜塩素酸ナトリウム5水和物の濃度を以下の数式6を用いて換算した。
次亜塩素酸ナトリウム5水和物の濃度(重量%)=ECC×164.45/70.91 (6)
数式(6)中、ECCは次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶中の有効塩素濃度(重量%)である。
<結晶間水分率>
上記で得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物の濃度、水酸化ナトリウムの濃度、塩化ナトリウムの濃度及び塩素酸ナトリウムの濃度を以下の数式7に代入することで、水和水を除いた結晶間水分率を算出した。なお、以下の数式7で算出した結晶間水分率が負数になる場合は、「0」とした。
結晶間水分率(重量%)=100−(W1+W2+W3+W4+W5) (7)
数式(7)中、W1は次亜塩素酸ナトリウム5水和物の濃度(重量%)、W2は水酸化ナトリウムの濃度(重量%)、W3は炭酸ナトリウムの濃度(重量%)、W4は塩化ナトリウムの濃度(重量%)、W5は塩素酸ナトリウムの濃度(重量%)である。
<安息角>
直径5.5cmの円盤上にアズワン社製粉末漏斗(型番「6−858−05」、口径150mm)を介し、乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を自由落下させ、山盛りになった結晶の最頂部の高さを測定し、円盤面から最頂部への仰角を安息角とし三角関数より算出した。本操作は恒温室内(室温23℃、相対湿度50%)にて実施した。
<ゆるめ見掛け密度>
JIS K 7365(1999)に準じて測定した。具体的には、JIS K 7365(1999)に規定の見掛け密度測定装置を用い、該装置に乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を充填し、ダンバーを速やかに引き抜くことで自由落下させ、はかり瓶(内容積100mL)に受け、はかり瓶に振動衝撃を加えない状態で、はかり瓶から盛り上がった結晶を平板で摺り落としたのち秤量し、3回測定した平均値からはかり瓶空重量を差し引いた重量を内容積100mLで割ってゆるめ見掛け密度とした。本操作は恒温室内(室温23℃、相対湿度50%)にて実施した。
<流動性>
アズワン社製粉末漏斗(型番「6−858−05」、口径150mm)に、乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を60g入れ、押さえていた漏斗口を離してから結晶が全部落下するのに要する時間を測定し、下記の3段階の基準で、流動性を評価した。本操作は恒温室内(室温23℃、相対湿度50%)にて実施した。
良好:2分以内にすべて落下
やや不良:スパチュラでアズワン社製粉末漏斗の側面を叩き続けることで振動を与えると、5分以内にすべて落下
不良:スパチュラでアズワン社製粉末漏斗の側面を叩き続けることで振動を与えても、落下しない
<保管安定性>
乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を10g採取し、110mLのガラス製スクリュー管瓶(胴径40mmΦ×120mm高さ、スクリューキャップ付)にいれ、23℃恒温室(暗所)に静置保管し、1時間毎の連続写真及び目視にて状態を確認し、結晶下部が目視で濡れていることが確認できるまでの時間を保管安定時間とした。このような状態となると有効塩素濃度が開始よりおよそ5%程度低下することが分かっていることから、品質低下の判断とすることができる。
(実施例1)
<結晶の晶析>
水酸化ナトリウム水溶液と塩素ガスを反応させた反応液5Lから析出している塩化ナトリウムを濾別し、濾液(次亜塩素酸ナトリウムの水溶液、有効塩素濃度約28.5重量%)を得た。濾別後の次亜塩素酸ナトリウムの水溶液3.5L(次亜塩素酸ナトリウム17.8mol)を計量しチタン製円筒容器(直径16cm、高さ27cm)に移した後、48重量%水酸化ナトリウム水溶液153mL(水酸化ナトリウム2.7mol)を容器内に投入添加した。その後、上記次亜塩素酸ナトリウム水溶液(晶析前原液)が投入された円筒容器を冷却装置(EYELA社製、製品名「PCC−1000」、冷媒:30重量%エチレングリコール水溶液)の冷却槽に入れ、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を攪拌機(EYELA社製、製品名「MAZELA」、攪拌翼:アンカー翼、100rpm)で攪拌しながら、円筒容器内の温度が17℃になるまでに冷却し、温度が安定したところで種晶を1g投入して円筒容器内の温度が5℃に到達するまで6℃/hrの冷却速度で冷却し、晶析を行った。円筒容器の内温が5℃に到達したところで攪拌を停止し、吸引濾過瓶(東京硝子機械社製、1000mL)にガラスフィルター(ADVANTEC社製、商品名「GA−100」、直径125mm)を2枚重ねたビフネルロート(FUNNEL社製、外径150mm)を挿入し、アスピレーターで濾過瓶内を吸引するとともに晶析槽から排出した固液混合液を投入し、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を濾別した。
<脱水工程>
濾別した次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を遠心脱水装置(コクサン社製、小型遠心分離機H−112)の濾布に約150mL入れ、4000rpmで10分間脱水し、脱水結晶を得た。
<乾燥工程>
脱水結晶100gをセパロート(桐山製作所社製、商品名「セパロート55Z」)に入れ、下部より、下記の表1に示す温度、露点及び炭酸ガス濃度を有する空気を導入し、樹脂製スパチュラを用いて内部の脱水結晶を5分毎に全体を攪拌しながら、60分乾燥を実施し、次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体を得た。乾燥に用いる空気は、外気をコンプレッサーで0.7MPaまで圧縮した空気を低温チラーで除湿した後、所定の温度に制御し、150mL/分の流量でセパロート内へ導入した。セパロート内の空気の温度、露点及び炭酸ガス濃度は、セパロートに導入される直前に、1気圧下において、気体の温度、露点、炭酸ガス濃度を二酸化炭素検知器(FUSO社製、商品名「FUSO−77535」)で測定した。
(実施例2)
実施例1の乾燥工程に用いた空気に、炭酸ボンベからの炭酸ガスを混合して、炭酸ガス濃度を800ppmとした以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体を得た。
(実施例3)
実施例1の乾燥工程に用いた空気に、炭酸ボンベからの炭酸ガスを混合して、炭酸ガス濃度を1200ppmとした以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体を得た。
(実施例4)
実施例1の結晶の晶析工程にて、晶析前原液の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液を10mL(水酸化ナトリウム0.2mol)添加した以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体を得た。
(実施例5)
実施例1の結晶の晶析工程にて、晶析前原液の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液32mL(水酸化ナトリウム0.6mol)を添加した以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体を得た。
(実施例6)
実施例1の結晶の晶析工程にて、晶析前原液の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液89mL(水酸化ナトリウム1.6mol)を添加した以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体を得た。
(実施例7)
実施例1の結晶の晶析工程にて、晶析前原液の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液256mL(水酸化ナトリウム4.6mol)を添加し、実施例1の乾燥工程に用いた空気に、炭酸ボンベからの炭酸ガスを混合して、炭酸ガス濃度を600ppmとした以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体を得た。
(実施例8)
実施例1の乾燥工程に用いた空気を、モレキュラーシーブ4Aを500g充填したカラムに通し、炭酸ガス濃度を250ppmとした以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体を得た。
(比較例1)
実施例1の脱水工程で得られた湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を乾燥することなく、評価に用いた。
(比較例2)
実施例1の結晶の晶析工程にて、晶析前原液の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体を得た。
(比較例3)
実施例1の乾燥工程に用いた空気に、炭酸ボンベからの炭酸ガスを混合して、炭酸ガス濃度を1800ppmとした以外は、実施例1と同様にして乾燥操作を実施した。乾燥開始後、約30分後よりセパロート下部の次亜塩素酸ナトリウム結晶が湿気を帯び始めた後、急激にセパロート内の次亜塩素酸ナトリウム結晶が分解した。
(比較例4)
実施例6の乾燥工程に用いた乾燥空気を、モレキュラーシーブ4Aを1000g充填したカラムに通すことで炭酸ガス濃度を150ppmとした以外は実施例6と同様にして次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体を得た。
実施例1〜8及び比較例2〜4において、乾燥前後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の成分や物性を上述した測定・評価方法で測定評価し、その結果を下記表1及び表2に示した。比較例1では脱水前後の湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶をそれぞれ、乾燥前後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶とし、その成分と物性を上述した測定・評価方法で測定評価し、その結果を下記表1に示した。なお、乾燥結晶(次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体)の物性は、乾燥直後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を用いて測定した。下記表1及び表2には、乾燥条件、乾燥前の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶(湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶)の結晶間水分率及び有効塩素濃度も示した。なお、下記において、比較例1における安息角は、結晶流動性が悪く、スパチュラを使用して強制的に排出させて測定したものであり、安定した値ではないため参考値である。下記表1及び表2において、NaOHのモル分率は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に添加したNaOH(水酸化ナトリウム)の次亜塩素酸ナトリウムに対するモル分率である。
上記表1の結果から分かるように、濃度0.01重量%以上の水酸化ナトリウムの存在下、温度25℃未満で、露点が−2℃以下、かつ炭酸ガス濃度が250ppm以上1600ppm以下の空気を用い、結晶間水分率が2.5重量%以下になるまで乾燥を行うことで得られた実施例1〜8の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、23℃で100時間以上保管することができ、保管安定性に優れていた。
一方、表2の結果から分かるように、脱水したのみで乾燥していない比較例1の湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶は、保管安定性は悪かった。比較例2の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、乾燥に使用する気体は実施例1のものと同じであるが、晶析前原液に水酸化ナトリウムを添加しなかったため、すなわち湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶が水酸化ナトリウムを含まなかったため、保管安定性が劣る結果となった。露点が−21℃であるが、炭酸ガス濃度は1800ppmの空気で湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の乾燥を行った比較例3では、乾燥操作途中にセパロート下部から急激な分解による発泡と液化が生じ、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体が得られなかった。乾燥に使用する空気中の炭酸ガス濃度が150ppmと低い比較例4では、得られた次亜塩素酸ナトリウム結晶粉体の保管安定性が悪かった。
(実施例9)
実施例1と同様の晶析工程及び脱水工程で得られた脱水結晶600gを回転円盤式流動乾燥機(ダルトン社製、マルメライザーQJ−230T−2)に投入し、外気をターボファンで吸引するとともに冷却装置(プレートフィンクーラー)で所定の温度に制御し、モレキュラーシーブ4A及びシリカゲル(大粒、白色)計1kgを充填した除湿カラムにて除湿した空気を乾燥空気として、内部の回転円盤と本体胴体部との隙間から400L/分の流量で導入し、回転円盤の回転速度を400rpmとして20分間処理することで脱水結晶の流動乾燥を完了した。乾燥機に導入される空気の温度、露点及び炭酸ガス濃度は、乾燥機に導入される直前に二酸化炭素検知器(FUSO社製、商品名「FUSO−77535」)で測定した結果、気体温度24.7℃、露点−31.2℃、炭酸ガス濃度351ppmであった。
(実施例10)
外気を強冷却し、除湿カラムの充填剤を500gのモレキュラーシーブ4Aに変更することで、乾燥機に導入される空気の温度、露点及び炭酸ガス濃度をそれぞれ、13.8℃、−4.5℃、262ppmとした以外は、実施例9と同様にして結晶粉体を得た。
(実施例11)
外気の冷却程度を調整し、除湿カラムの充填剤の量を300gに変更することで、乾燥機に導入される空気の温度、露点及び炭酸ガス濃度をそれぞれ、18.6℃、−2.0℃、283ppmとした以外は、実施例9と同様にして結晶粉体を得た。
(実施例12)
除湿カラムの充填剤をシリカゲル1kgとすることで、乾燥機に導入される空気の温度、露点及び炭酸ガス濃度をそれぞれ、24.0℃、−45.7℃、440ppmとした以外は、実施例9と同様にして結晶粉体を得た。
(比較例5)
外気を強冷却し、除湿カラムの充填剤をなしに変更することで、乾燥機に導入される空気の温度、露点、炭酸ガス濃度をそれぞれ、14.3℃、−1.6℃、360ppmとした以外は、実施例9と同様にして乾燥処理を実施した。20分後に払い出したところ、乾燥機に投入する前より湿気を帯びた結晶となり乾燥できないと判断した。
(比較例6)
外気を冷却せず、除湿カラムの充填剤をシリカゲル300gに変更することで、乾燥機に導入される空気の温度、露点及び炭酸ガス濃度をそれぞれ、30.9℃、−5.7℃、368ppmとした以外は、実施例9と同様にして乾燥処理を実施した。乾燥開始より約5分後より融解した液体が乾燥機より漏れ出したため処理を中断した。
(比較例7)
晶析前の次亜塩素酸ナトリウム原液に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加しなかった以外は、実施例1と同様に、結晶の晶析及び脱水を行い、脱水後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を得た。
(比較例8)
比較例7と同様にして得られた脱水後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶100gに対し、炭酸ナトリウム(ナカライテスク社製の特級試薬、粒径約0.3〜0.5mm)約0.4gを少量ずつ攪拌しながら添加した。
(比較例9)
比較例7と同様にして得られた脱水後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶100gに対し、炭酸ナトリウム(ナカライテスク社製の特級試薬、粒径約0.3〜0.5mm)約0.7gを少量ずつ攪拌しながら添加した。
(比較例10)
比較例2と同様にして得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体100gに対し、炭酸ナトリウム(ナカライテスク社製の特級試薬、粒径約0.3〜0.5mm)約0.4gを少量ずつ攪拌しながら添加した。
(比較例11)
比較例2と同様にして得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和結晶粉体100gに対し、炭酸ナトリウム(ナカライテスク社製の特級試薬、粒径約0.3〜0.5mm)約0.7gを少量ずつ攪拌しながら添加した。
実施例9〜12及び比較例5〜11において、乾燥前後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の成分や物性を上述した測定・評価方法で測定評価し、その結果を下記表3及び表4に示した。乾燥結晶(次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体)の物性は、乾燥直後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を用いて測定した。なお、比較例7〜11において、乾燥後とは、炭酸ナトリウムを添加した後を意味する。下記表3及び表4には、乾燥条件、乾燥前の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶(湿潤状態の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶)の結晶間水分率及び有効塩素濃度も示した。比較例5では、乾燥工程後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶は実際乾燥されていないが、乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶としてその成分や物性を測定した。なお、下記において、比較例5における安息角は、結晶流動性が悪く、スパチュラを使用して強制的に排出させて測定したものであり、安定した値ではないため参考値である。下記表3及び表4において、NaOHのモル分率は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に添加したNaOH(水酸化ナトリウム)の次亜塩素酸ナトリウムに対するモル分率である。
上記表3の結果から分かるように、濃度0.01重量%以上の水酸化ナトリウムの存在下、温度25℃未満で、露点が−2℃以下、かつ、炭酸ガス濃度が250ppm以上1600ppm以下の空気を用い、結晶間水分率が2.5重量%以下になるまで乾燥を行うことで得られた実施例9〜12の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、23℃で100時間以上保管することができ、保管安定性に優れていた。
一方、表4の結果から分かるように、露点が−2℃より高い空気を用いて乾燥を行った比較例5及び温度が25℃以上の空気を用いて乾燥を行った比較例6では、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を得ることができなかった。
また、表4の結果から分かるように、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の晶析後、例えば脱水又は乾燥後の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶に、炭酸ナトリウムを添加して混合した場合には、炭酸ナトリウムの濃度が1重量%を超えても、保管安定性が悪かった。
実施例1〜12で次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体は、23℃で100時間以上保管することができるため、5℃以下の冷蔵保管状態では1年程度保管することができると想定され、さらに低温での保存安定性にも優れることになる。

Claims (7)

  1. 次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の表面に存在する炭酸ナトリウムを有し、前記炭酸ナトリウムの濃度が0.82重量%以上3.0重量%以下であり、結晶間水分率が2.5重量%以下であることを特徴とする次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体。
  2. 安息角が40°以下である請求項1に記載の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体。
  3. JIS K 7365(1999)に準じて測定したゆるめ見掛け密度が0.60g/mL以上である請求項1又は2に記載の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体。
  4. 有効塩素濃度が41重量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体。
  5. 結晶間水分率が0.01重量%以上1.0重量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体。
  6. 前記炭酸ナトリウムの濃度が2.0重量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粉体を用いたことを特徴とする次亜塩素酸ナトリウムの水溶液。
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