以下、本発明による充電システムを図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態を図1〜図18に示す。図1に示すように、充電システム1は、車両98に搭載される。車両98には、インレット5が設けられる。充電システム1は、インレット5を経由して外部充電器としての急速充電器100と接続可能に設けられる。インレット5には、高電位側外部接続端子6、および、低電位側外部接続端子7が設けられる。急速充電器100は、商用電源と比較して高電圧の直流充電器であって、車両98の制御部70と通信可能な外部制御部105を備える。
また、充電システム1は、インレット5および車載充電器80を経由して、商用電源等である交流電源108と接続可能に設けられる。インレット5には、交流電源接続端子8、9が設けられる。車載充電器80は、交流電源108から供給された交流電力を直流電力に変換する。
充電システム1は、回転電機としてのモータジェネレータ10、第1電圧源としての第1バッテリ21、第2電圧源としての第2バッテリ22、第1インバータ30、第2インバータ40、急速充電用開閉器51、52、急速充電用給電線61、62、および、制御部70等を備える。
モータジェネレータ10は、例えば永久磁石式同期型の複数相(本実施形態では3相)の交流モータであって、図示しないステータに巻回されるU相コイル11、V相コイル12およびW相コイル13、ならびに、ロータ14を有する。モータジェネレータ10は、図示しない駆動輪を駆動するためのトルクを発生する、いわゆる主機モータであり、駆動輪を駆動するための電動機としての機能、および、図示しないエンジンや駆動輪から伝わる運動エネルギによって駆動されて発電する発電機としての機能を有する。以下適宜、モータジェネレータを「MG」と記載する。
ロータ14は、コイル11〜13への通電により回転する。角度センサ15は、ロータ14の回転位置を検出する。本実施形態の角度センサ15はレゾルバであるが、例えばロータリーエンコーダ等、レゾルバ以外のものを用いてもよい。角度センサ15の検出値は、制御部70に出力される。本実施形態では、角度センサ15の検出値は、主に電気角に換算されて用いられる。
MG10には、第1バッテリ21および第2バッテリ22から電力が供給される。第1バッテリ21および第2バッテリ22は、例えばニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の充放電可能な蓄電装置である。二次電池に替えて、電気二重層キャパシタ等を用いてもよい。本実施形態では、第1バッテリ21および第2バッテリ22は、例えば定格電圧が300[V]の同等の性能のものを用いるが、例えば一方に出力型のものを用い、他方に容量型のものを用いる、といった具合に、電池性能や種類が異なっていてもよい。第1バッテリ21と第2バッテリ22とは、絶縁されている。絶縁が確保されていれば、バッテリ21、22が1パッケージ化されていてもよい。第1バッテリ21および第2バッテリ22は、インレット5を経由して急速充電器100および交流電源108により充電可能に設けられている。
第1バッテリ21は、バッテリ記号として示す電池セルモジュール、高電位側メインリレー、および、低電位側メインリレーを有する。第2バッテリ22は、バッテリ記号として示す電池セルモジュール、高電位側メインリレー、および、低電位側メインリレーを有する。以下適宜、メインリレーを「SMR」とし、SMRが導通可能な状態を「SMRオン」、SMRが導通不能の状態を「SMRオフ」とする。
第1インバータ30は、コイル11〜13の通電を切り替える3相インバータであって、スイッチング素子31〜36を有し、MG10および第1バッテリ21に接続される。第2インバータ40は、コイル11〜13の通電を切り替える3相インバータであって、スイッチング素子41〜46を有し、MG10および第2バッテリ22に接続される。
スイッチング素子31〜36、41〜46は、それぞれ、スイッチ部および還流ダイオードを有する。スイッチ部は、制御部70によりオンオフ作動が制御される。本実施形態のスイッチ部はIGBTであるが、MOSFET等、他の素子を用いてもよい。また、スイッチング素子31〜36、41〜46で用いる素子が異なっていてもよい。還流ダイオードは、各スイッチ部と並列に接続され、低電位側から高電位側への通電を許容する。還流ダイオードは、例えばMOSFETの寄生ダイオードのように内蔵されていてもよいし、外付けされたものであってもよい。また、還流できるように接続されたIGBTやMOSFET等のスイッチであってもよい。
第1インバータ30において、高電位側にスイッチング素子31〜33が接続され、低電位側にスイッチング素子34〜36が接続される。以下適宜、高電位側のスイッチング素子31〜33を「第1上アーム素子」、低電位側のスイッチング素子34〜36を「第1下アーム素子」とする。第1上アーム素子31〜33の高電位側を接続する第1高電位側配線37が第1バッテリ21の高電位側と接続され、第1下アーム素子34〜36の低電位側を接続する第1低電位側配線38が第1バッテリ21の低電位側と接続される。
U相のスイッチング素子31、34の接続点にはU相コイル11の一端111が接続され、V相のスイッチング素子32、35の接続点にはV相コイル12の一端121が接続され、W相のスイッチング素子33、36の接続点にはW相コイル13の一端131が接続される。
第2インバータ40において、高電位側にスイッチング素子41〜43が接続され、低電位側にスイッチング素子44〜46が接続される。以下適宜、高電位側のスイッチング素子41〜43を「第2上アーム素子」、低電位側のスイッチング素子44〜46を「第2下アーム素子」とする。第2上アーム素子41〜43の高電位側を接続する第2高電位側配線47が第2バッテリ22の高電位側と接続され、第2下アーム素子44〜46の低電位側を接続する第2低電位側配線48が第2バッテリ22の低電位側と接続される。
U相のスイッチング素子41、44の接続点にはU相コイル11の他端112が接続され、V相のスイッチング素子42、45の接続点にはV相コイル12の他端122が接続され、W相のスイッチング素子43、46の接続点にはW相コイル13の他端132が接続される。
このように、本実施形態では、MG10のコイル11〜13がオープン巻線化されており、第1インバータ30および第2インバータ40がコイル11〜13の両端に接続されている「2電源2インバータ」の電動機駆動システムとなっている。
第1コンデンサ39は、高電位側配線37と低電位側配線38とに接続され、第1インバータ30と並列に設けられる。第2コンデンサ49は、高電位側配線47と低電位側配線48とに接続され、第2インバータ40と並列に設けられる。コンデンサ39、49は、平滑コンデンサであり、インバータ30、40に印加される電圧を平滑化する。
高電位側の急速充電用開閉器51が設けられる急速充電用給電線61は、MG10およびインバータ30、40を経由せず、第1バッテリ21の高電位側と高電位側外部接続端子6とを直接的に接続する。また、低電位側の急速充電用開閉器52が設けられる急速充電用給電線62は、MG10およびインバータ30、40を経由せず、第2バッテリ22の低電位側と低電位側外部接続端子7とを直接的に接続する。開閉器51、52は、電流の導通および遮断を切替可能であればよく、例えば半導体リレーやメカリレー等が用いられる。
また、第1バッテリ21は、接続線63、64にて車載充電器80と接続され、第2バッテリ22は、接続線65、66にて車載充電器80と接続される。接続線63、65は、バッテリ21、22の高電位側、接続線64、66はバッテリ21、22の低電位側に接続される。接続線63〜66には、それぞれ、車載充電器80とバッテリ21、22との断接を切り替え可能な開閉器53〜56が設けられる。本実施形態では、高電位側の接続線65が車載充電器80と開閉器53との間にて接続線63と接続され、低電位側の接続線66が開閉器54と第1バッテリ21との間にて接続線64と接続される。
制御部70は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれもCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部70における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、例えばFPGA(field-programmable gate array)のような電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
制御部70は、インバータ制御部71、リレー制御部72、充電制御部73、および、記憶部75を有する。インバータ制御部71は、スイッチング素子31〜36、41〜46のオンオフ作動を制御する。第1インバータ30の駆動制御に係る制御信号は、第1ドライブ回路76を経由して第1インバータ30に出力される。第2インバータ40の駆動制御に係る制御信号は、第2ドライブ回路77を経由して第2インバータ40に出力される。インバータ30、40を制御するマイコンは、1つであってもよいし、インバータ30、40ごとに設けられていてもよい。
ここで、MG10の駆動モードを説明する。駆動モードには、第1バッテリ21または第2バッテリ22の電力を用いる「片側駆動モード」、第1バッテリ21および第2バッテリ22の電力を用いる「両側駆動モード」が含まれ、動作点や運転条件等に応じ、片側駆動モードと両側駆動モードとを切り替える。その他の駆動モードを含んでもよい。
片側駆動モードでは、一方のインバータの上アーム素子の全相または下アーム素子の全相をオンにして中性点化し、他方のインバータを駆動要求に応じて、PWM制御や矩形波制御等により制御する。両側駆動モードでは、PWM制御における基本波の位相を第1インバータ30と第2インバータ40とで反転させる。変調率は、第1インバータ30と第2インバータ40とで異なっていてもよい。また、変調率を無限大と見なせば、矩形波制御であってもよい。これにより、バッテリ21、22が直列接続されている状態とみなすことができ、バッテリ21、22の電圧和に相当する電圧をMG10に印加することが可能であり、出力を高めることができる。
リレー制御部72は、急速充電器100を制御する外部制御部105からの指令に基づき、開閉器51、52を制御する。開閉器51、52は、充電開始タイミングで閉となり、充電終了タイミングで開となる。すなわち、外部接続端子6、7と直接的に接続される開閉器51、52は、急速充電器100側からの指令で制御され、充電中は閉の状態が継続される。また、リレー制御部72は、開閉器53〜56の開閉を制御する。
充電制御部73は、第1バッテリ21および第2バッテリ22のSOC(State Of Charge)等の充電状態に係る情報を取得し、バッテリ21、22の充電状態を制御する。以下適宜、第1バッテリ21のSOCをSOC1、第2バッテリ22のSOCをSOC2とする。充電制御部73は、別途のECUとして設けられていてもよい。記憶部75には、後述するゼロトルク位置が充電条件と関連づけて記憶されている。
ところで、急速充電器100には、例えば500V規格のCHAdeMO(登録商標)や、1000V規格のCCS(コンバインド・チャージング・システム)のように、複数の規格が存在する。また、バッテリ21、22の定格電圧を例えば300Vとすると、急速充電器100が500V規格の場合、2電源の定格電圧の和が500Vより大きく、2電源を直列で充電することができないため、並列で充電する必要がある。一方、急速充電器100が1000V規格であれば、2電源を直列充電可能である。また、SOC差が大きい場合や一方のバッテリ21、22の充電が不要の場合、1つのバッテリ21、22の単独充電が必要である。本実施形態では、両側駆動モードによる高出力を実現すべく、一方のバッテリ21、22が枯渇するのを避け、両方のバッテリ21、22のSOCが両側駆動可能な程度に維持されていることが望ましい。以下、急速充電器100を用いた直流電流での充電について説明し、急速充電器100での充電を単に「充電」という。
本実施形態では、MG10およびインバータ30、40を充電電力の電力パスとして用いることで、別途の充電器等を設けることなく、単独充電、並列充電および直列充電を切り替える。これにより、バッテリ21、22を適切に充電可能である。なお本実施形態のMG10は主機モータであって、MG10およびインバータ30、40は大出力に設計されており、輸送電力の大きい急速充電器100による充電にも十分耐えられる。
並列充電を図2、直列充電を図3、単独充電を図4および図5に基づいて説明する。図2〜図5では、SMR、ロータ14および制御部70等の一部の構成や符号の記載を省略した。充電中、開閉器51、52は閉であり、SMRがオンされているものとする。また、開閉器53〜56を開とする。
図2に示すように、並列充電を行う場合、少なくとも1相の第1上アーム素子をオン、第1上アーム素子をオンした相とは異なる少なくとも1相の第2下アーム素子をオンにする。図2の例では、V相とW相の第1上アーム素子32、33、および、U相の第2下アーム素子44がオンされる。
破線の矢印で示すように、U相の第1下アーム素子34の還流ダイオード、U相コイル11、および、U相の第2下アーム素子44のスイッチ部を電流が流れることで、第1バッテリ21が充電される。また、一点鎖線の矢印で示すように、V相およびW相の第1上アーム素子32、33のスイッチ部、V相コイル12およびW相コイル13、ならびに、V相およびW相の第2上アーム素子42、43の還流ダイオードを電流が流れることで、第2バッテリ22が充電される。これにより、バッテリ21、22を並列にて同時に充電可能である。
第2バッテリ22の方が第1バッテリ21より電位が低い場合、図2のように、第2バッテリ22をV相およびW相の2相で充電し、第1バッテリ21をU相の1相充電する。なお、第1バッテリ21の方が第2バッテリ22より電位が低い場合、第1バッテリ21を2相、第2バッテリ22を1相で充電する。通電相は、任意に選択可能である。
また、スイッチング素子31〜36、41〜46がMOSFETの場合、充電開始が確認された後、低電位側から高電位側への通電経路にあるU相の第1下アーム素子34、V相の第2上アーム素子42およびW相の第2上アーム素子43をオンにして同期整流してもよい。直列充電および単独充電の場合も同様に、還流ダイオードが通電経路となるスイッチ部をオンにしてもよい。これにより、導通損を低減可能である。
図3に示すように、直列充電を行う場合、全素子31〜36、41〜46がオフの状態で、開閉器51、52を閉、SMRをオンにすると、破線の矢印で示すように、第1下アーム素子34〜36の還流ダイオード、コイル11〜13、および、第2上アーム素子41〜43の還流ダイオードを電流が流れる。これにより、バッテリ21、22を直列にて同時に充電可能である。
図4に示すように、第1バッテリ21の単独充電を行う場合、第2下アーム素子44〜46をオンにすると、破線の矢印で示すように、第1下アーム素子34〜36の還流ダイオード、コイル11〜13、第2下アーム素子44〜46のスイッチ部を電流が流れる。これにより、第1バッテリ21を単独充電することができる。
図5に示すように、第2バッテリ22の単独充電を行う場合、第1上アーム素子31〜33をオンにすると、破線の矢印で示すように、第1上アーム素子31〜33のスイッチ部、コイル11〜13、および、第2上アーム素子41〜43の還流ダイオードを電流が流れる。これにより、第2バッテリ22を単独充電することができる。図4および図5では、バッテリ21、22の単独充電を行う場合、高電位側から低電位側への通電となる3相のスイッチング素子をオンしているが、オンする相数は、1相または2相でもよい。
すなわち、バッテリ21、22の充電に際し、充電モードは、並列充電モード、直列充電モードまたは単独充電モードの3通りがあり、通電経路となる通電相数は、3相、2相または1相の3通りがある。詳細には、充電モードが並列充電モードのとき、通電相数として3相または2相を選択可能であり、単独充電モードのとき3相、2相または1相を選択可能である。なお、直列充電モードの通電相数は3相である。
本実施形態では、オープン巻線の2電源2インバータシステムにおいて、コイル11〜13およびインバータ30、40を通電経路として直流充電を行う。ここで、充電電流によりトルクが発生すると、モータジェネレータ10が回転する虞がある。
発明者らは、オープン巻線の2電源2インバータシステムにおいて、充電モードおよび通電相数に応じ、充電電流値によらず、ある電気角にてトルクがゼロになることを見出した。以下、トルクがゼロになる電気角を「ゼロトルク点」とし、ゼロトルク点を含み、トルクゼロとみなせる角度範囲を「ゼロトルク位置」とする。ゼロトルク位置にロータ14を止めた状態にて充電を行えば、発生するトルクはゼロになる。すなわち、ロータ位置をゼロトルク位置とし、電気角に応じて充電モード、通電相数および通電相を選択することで、モータジェネレータ10を回転させることなく直流充電が可能となる。ゼロトルク位置は、充電モードおよび通電相数と関連付けて、制御部70の記憶部75に記憶されている。
以下、ゼロトルク位置の詳細を説明する。図6は、(a)が3相、(b)がUW相を用いた2相、(c)がU相を用いた1相にて、第2バッテリ22の単独充電を行う例であり、横軸を電気角、縦軸をトルクとする。図7等も同様である。図6では、急速充電器100からの供給電流を一定(例えば400[A])とする。
図6(a)に示すように、3相を用いた単独充電を行う場合、電気角1周期に12箇所のゼロトルク位置が存在する。図6(b)、(c)に示すように、UW相を用いた2相での単独充電を行う場合、および、U相を用いた1相での単独充電を行う場合、電気角1周期に2箇所のゼロトルク位置が存在する。なお、説明の都合上、縦軸の目盛りは通電相数によって変えており、実際に発生するトルクは、1相通電が最も大きく、次いで2相通電であり、3相通電が最も小さい。
図7では、3相での単独充電について、実線は相対的に電流値が大きい場合、破線は相対的に電流値が小さい場合を示している。電気角に応じたトルク変動波形を重ね合わせると、電流値に応じて概ね相似であって、電流値によらず、ゼロトルク位置は概ね固定の電気角に存在する。
図8は、3相での単独充電において、電流値を変化させた場合を示しており、上段は電流値が比較的大きいとき(例えば1相あたり133[A])、中段は電流値が中程度のとき(例えば1相辺り82[A])、下段は電流値が比較的小さいとき(例えば1相あたり8[A])とする。なお、モータ視点でいえば、単独充電でも直列充電でも、発生するトルクは同じであるので、ここでは単独充電を例として説明する。
図8に示すように、ゼロトルク位置には、電流値によらない「固定ゼロトルク位置」、および、電流値によって位置が多少変動する「ゼロトルク収束領域」が含まれる。図中、固定ゼロトルク位置を実線の丸印、ゼロトルク収束領域を破線の丸印または長円印にて示す。
固定ゼロトルク位置は、モータジェネレータ10の構造的に、必ず、電気角0、60、120、180、240、300[deg]の6点に存在する。なお、固定ゼロトルク位置は、上記の電気角を含み、トルクゼロとみなせる程度の範囲とする。ここで、実用上、充電中に車両98が動かなければよいとすれば、車両98の動き出しに要するトルク(例えば40[Nm])より小さい範囲を「ゼロトルク」とみなす。なお、ゼロトルク位置の設定に係る閾値は、モータジェネレータ10の極数やコイル11〜13の巻数、および、車両重量等に応じ、車両98の動き出しに要するトルクより小さい任意の値に設定可能である。また、通電相数に応じて、ゼロトルク位置に係る閾値を異なる値としてもよい。固定ゼロトルク位置の両側のトルクの向きは、ゼロトルク点から離れる向きである。
ゼロトルク収束領域は、固定ゼロトルク位置の間に存在し、電気角1周期に6箇所存在する。ゼロトルク収束領域におけるゼロトルク点は、電流値によって変動する。また、ゼロトルク収束領域は、ゼロトルク点の両側のトルクの向きは、ゼロトルク点に戻そうとする向きである。本実施形態では、電流値によらず、発生するトルクによりゼロトルク点に戻せる範囲をゼロトルク収束領域とする。
ゼロトルク収束領域は、電流値によって位置がずれるため、充電中の電流変動により位置がずれる可能性がある。一方で、ゼロトルク収束領域は電気角1周期中に6箇所存在しており、例えばモータジェネレータ10が4極対、車両98の図示しない車軸までの減速比が10の場合、車軸の1回転にゼロトルク収束領域が240箇所存在する。とすれば、ゼロトルク収束領域はタイヤの回転角としては1.5[deg]間隔で存在し、その範囲内で多少ずれたとしても、ユーザには違和感を与えない蓋然性が高い。
次に、並列充電について説明する。ここでは、第1バッテリ21を1相、第2バッテリ22を2相で充電するものとして説明する。図9および図10は、第1バッテリ21をW相、第2バッテリ22をU相およびV相で充電する例である。図9は、横軸を時間、縦軸を相電流とする。図9に示すように、W相には、U相およびV相の約2倍の電流が流れる。
図10は、並列充電において、電流を計時変化させた場合を示しており、(a)は図9の時刻x1、(b)は時刻x2、(c)は時刻x3、(d)は時刻x4、(e)は時刻x5のときの電気角に応じたトルクを示している。図10に示すように、並列充電において、電流値によらず、ゼロトルク位置は電気角1周期に2箇所存在する。第1バッテリ21をW相、第2バッテリ22をU相およびV相で充電する場合、固定ゼロトルク位置は60、240[deg]である。
図11は、並列充電において、通電相を替えた場合の電気角に応じたトルクを示している。第1バッテリ21をW相、第2バッテリ22をU相およびV相で充電した場合を四角のプロット、第1バッテリ21をU相、第2バッテリ22をV相およびW相で充電した場合を三角のプロット、第1バッテリ21をV相、第2バッテリ22をU相およびW相で充電した場合を菱形のプロットで示した。また、単独または直列3相充電を丸のプロットおよび一点鎖線で示した。
並列充電において、通電相を替えた場合、位相はずれるものの、トルク特性波形は同様となる。ここでは、急速充電器100からの供給電流が400[A]の場合を示しているが、供給電流が小さい場合であっても同様である。第1バッテリ21をU相、第2バッテリ22をV相およびW相で充電する場合、固定ゼロトルク位置は0、180[deg]となり、第1バッテリ21をV相、第2バッテリ22をU相およびW相で充電する場合、固定ゼロトルク位置は120、300[deg]となる。すなわち、3相を用いて充電する場合、単独充電、直列充電および並列充電において、固定ゼロトルク位置は、電気角0、60、120、180、240、300[deg]の6箇所である。
2相を用いて単独充電または並列充電を行う場合を図12および図13に示す。なお、直列充電はダイオード通電となり、オンオフ制御ができないため、2相通電および1相通電を実施できない。以下、2相を用いた単独充電または並列充電を、単に「2相充電」とする。2相充電では、充電方式の単独または並列によらず、充電時に発生するトルクパターンは同じである。
図12は、UV相を用いた2相充電において、電流値を変化させた例であって、電流値が相対的に大きい場合(例えば各相200[A])を実線、電流値が中程度の場合(例えば各相100[A])を一点鎖線、電流値が相対的に小さい場合(例えば各相50[A])を二点鎖線で示す。図12に示すように、ゼロトルク位置は、電流値によらず電気角1周期の2箇所の電気角に存在する。
図13は、2相充電において、通電相を替えた場合の電気角に応じたトルクを示している。ここでは、UV相を用いて充電する場合を菱形のプロット、VW相を用いて充電する場合を四角のプロット、WU相を用いて充電する場合を三角のプロットで示した。2相充電では、電気角で0(=360)、60、120、180、240、300[deg]の6箇所がゼロトルク点であり、この6点を含む6箇所が固定ゼロトルク位置となる。そのうち、0(=360)、120、240を含む3つの範囲がゼロトルク収束領域である。2相充電におけるゼロトルク収束領域は、3相通電でのゼロトルク収束領域と比較して相対的に広い角度範囲に亘る。そのため、ゼロトルク位置範囲にロータ14を停止させるための余裕度が3相通電よりも高い。
1相を用いて単独充電を行う場合を図14および図15に示す。1相での充電が可能な充電モードは単独充電であり、以下、1相を用いた単独充電を、単に「1相充電」という。図14は、U相を用いた1相充電において、電流値を変化させた例であって、電流値が相対的に大きい場合(例えば400[A])を実線、電流値が中程度の場合(例えば300[A])を一点鎖線、電流値が相対的に小さい場合(例えば50[A])を二点鎖線で示す。図14に示すように、ゼロトルク位置は、電流値によらず電気角1周期の2箇所の電気角に存在する。
図15は、1相充電において、通電相を替えた場合の電気角に応じたトルクを示している。ここでは、U相を用いて充電する場合を菱形のプロット、V相を用いて充電する場合を四角のプロット、W相を用いて充電する場合を三角のプロットで示した。1相充電では、電気角で0(=360)、60、120、180、240、300[deg]の6箇所がゼロトルク点であり、この6点を含む6箇所が固定ゼロトルク位置となる。そのうち、60、180、300[deg]を含む3つの範囲がゼロトルク収束領域である。1相充電におけるゼロトルク収束領域は、2相充電でのゼロトルク収束領域よりも、さらに広い角度範囲に亘る。そのため、ゼロトルク位置範囲にロータ14を停止させるための余裕度が高い。
図16は、上段が3相での単独または直列充電、中段が2相充電、下段が1相充電のときのトルクを示している。なお、同一の電流を流したとき、発生するトルクは、1相>2相>3相であるが、ここでは説明のため、適宜比率を変更して記載した。ここで、3相での単独または直列充電におけるゼロトルク収束領域を、電気角が小さい側からC31〜C36、2相充電におけるゼロトルク収束領域を、電気角が小さい側からC21〜C23、1相充電におけるゼロトルク収束領域を、電気角が小さい側からC11〜C13とする。
図16に示すように、3相単独または直列充電時のゼロトルク収束領域C31〜C36は、相対的に小さく、かつ、電気角1周期に不均等に分布している。詳細には、領域C31と領域C32との間、領域C33と領域C34との間、領域C35と領域C36との間が相対的に狭く、領域C32と領域C33との間、領域C34と領域C35との間、領域C36と領域C31との間が相対的に広い。
また、2相充電のゼロトルク収束領域C21〜C23は、3相単独または直列充電時において、相対的に間隔が広い領域C32と領域C33との間、領域C34と領域C35との間、領域C36と領域C31との間を補う電気角領域に存在している。さらにまた、1相充電でのゼロトルク収束領域C11〜C13は、角度範囲が広いため、制御の余裕度が高い。
そこで本実施形態では、上記にて説明したゼロトルク位置の特性を考慮して通電相および充電モードを選択し、ゼロトルク位置にてロータ14を止めて充電することで、充電中にモータジェネレータ10を回転させることなく、モータジェネレータ10およびインバータ30、40を通電経路としてバッテリ21、22を充電する。
本実施形態の充電制御処理を図17および図18のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、車両98の停止中に制御部70にて所定の周期で実行される。以下、ステップS101の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。また、ここでは、SOC1、SOC2の少なくとも一方が充電上限値TH1より低く、充電が必要な状態であるものとして説明する。充電上限値TH1は、急速充電にて充電可能な上限値(例えば80%)に設定される。
S101にて、シフトレンジがPレンジとなる、または、パーキングブレーキが作動し、車両98が充電可能状態になると、S102にて、制御部70は、SOC1、SOC2の一方が充電上限値TH1より大きいか否か判断する。SOC1およびSOC2がいずれも充電上限値TH1未満であると判断された場合(S102:NO)、すなわちバッテリ21、22の両方の充電が必要である場合、図18中のS113へ移行する。SOC1、SOC2の一方が充電上限値TH1より大きいと判断された場合(S102:YES)、S103へ移行する。S102にて肯定判断された場合、SOCが充電上限値TH1未満のバッテリの単独充電とする。ここでは、SOC1が充電上限値TH1より大きく、SOC2が充電上限値TH1未満であって、第2バッテリ22を単独充電する場合を例として説明する。
S103では、制御部70は、低い方のSOCであるSOC2が大電流充電要求値TH2より小さいか否か判断する。大電流充電要求値TH2は、充電上限値TH1より小さい任意の値であって、充電による損失や発生する熱に応じて設定される。すなわち、SOCが大電流充電要求値TH2より小さい場合(例えばSOC=10%)、大電流での充電となるため、1相充電を選択不可とする。また、SOCが大電流充電要求値TH2以上の場合(例えばSOC=70%)、小電流での充電となるため、1相充電を選択可能とする。なお、大電流充電要求閾値を2つ設定し、3相を選択する場合、2相または3相を選択する場合、および、1〜3相のいずれかを選択する場合の3段階としてもよい。SOC2が大電流充電要求値TH2より低いと判断された場合(S103:YES)、S104へ移行し、SOC2が大電流充電要求値TH2以上であると判断された場合(S103:NO)、S107へ移行する。
S104では、制御部70は、ロータ14の現在位置を検出する。S105にて充電コネクタが接続されると、S106にて、制御部70は、単独3相通電または単独2相通電のゼロトルク位置のうち、現在のロータ位置から最も近い箇所を選定し、目標ロータ位置とする。この段階で、単独充電での通電相数および充電に用いる通電相が確定する。
S107では、制御部70は、ロータ14の現在位置を検出する。S108にて充電コネクタが接続されると、S109にて、制御部70は、単独3相、単独2相または単独1相のゼロトルク位置のうち、現在のロータ位置から最も近い箇所を選定し、目標ロータ位置とする。この段階で、単独充電での通電相数および充電に用いる通電相が確定する。なお、単独3相のゼロトルク位置は、単独3相のゼロトルク位置に含まれるため、単独3相が選択可能な場合は、優先的に単独3相を選択するようにしてもよい。
S110では、制御部70は、S106またはS109にて設定された目標ロータ位置となるように、ロータ14の位置を移動させる。S111では、制御部70は、S106またはS109にて確定した通電相数および通電相となるように、スイッチング素子31〜36、41〜46のオンオフ作動を制御し、第2バッテリ22を充電する。
S112では、制御部70は、第2バッテリ22の充電が完了したか否か判断する。ここでは、SOCが充電上限値TH1に達した場合、充電が完了したと判定する。他の充電完了判定ステップについても同様である。第2バッテリ22の充電が完了していないと判断された場合(S112:NO)、S111へ戻り、充電を継続する。第2バッテリ22の充電が完了したと判断された場合(S112:YES)、充電を終了する。
バッテリ21、22の両方の充電が必要である場合に移行する図18中のS113では、制御部70は、ロータ14の現在位置を検出する。S114では、充電コネクタが接続されると、直列充電が可能か否か判断する。直列充電が可能であると判断された場合(S114:YES)、S115へ移行し、直列充電ができないと判断された場合(S114:NO)、S122へ移行する。接続された急速充電器100の電圧に応じて直列充電可能か否かが決まるが、例えば、急速充電器100がCCSであれば肯定判断し、CHAdeMOであれば否定判断する、といった具合に、接続された急速充電器100の規格により判断してもよい。S114で肯定判断された場合、直列充電にて2電源を同時充電し、S114で否定判断された場合、並列充電にて2電源を同時充電する。
S115では、制御部70は、直列3相通電のゼロトルク位置のうち、現在のロータ位置から最も近い箇所を選定し、目標ロータ位置とする。S116では、制御部70は、設定された目標ロータ位置となるように、ロータ14の位置を移動させる。S117では、制御部70は、バッテリ21、22を直列充電する。
S118では、SOC1、SOC2の一方が充電上限値TH1以上になったか否かを判断する。なお、SOC1、SOC2が同時に充電上限値TH1以上となった場合は充電完了とし、S119〜S121の処理は行わなくてよい。SOC1、SOC2の両方が充電上限値TH1未満であると判断された場合(S118:NO)、S117へ戻り、3相での直列充電を継続する。SOC1、SOC2の一方が充電上限値TH1以上になったと判断された場合(S118:YES)、S119へ移行し、充電を停止する。
S120では、制御部70は、SOCが充電上限値TH1に達していない方のバッテリを3相通電にて単独充電すべく、スイッチング素子31〜36、41〜46のオンオフ作動を制御する。ここでは、S117にて3相直列にて充電していたため、同じゼロトルク位置となる3相通電での単独充電とすることで、ロータ位置を動かすことなく単独充電が可能である。
S121では、制御部70は、単独充電を行っているバッテリの充電が完了したか否か判断する。充電が完了していないと判断された場合(S121:NO)、S120へ戻り、充電を継続する。充電が完了したと判断された場合(S121:YES)、充電を終了する。
並列充電にて2電源を同時充電する場合に移行するS122では、制御部70は、2相通電または3相通電での並列充電におけるゼロトルク位置のうち、現在のロータ位置から最も近い箇所を選定し、目標ロータ位置とする。この段階で、並列充電での通電相数および充電に用いる通電相が確定する。
S123では、制御部70は、設定された目標ロータ位置となるように、ロータ14の位置を移動させる。S124では、制御部70は、S122にて確定した通電相数および通電相となるように、スイッチング素子31〜36、41〜46のオンオフ作動を制御し、バッテリ21、22を並列充電する。
S125では、SOC1、SOC2の一方が充電上限値TH1以上になったか否かを判断する。なお、SOC1、SOC2が同時に充電上限値TH1以上となった場合は充電完了とし、S126〜S128の処理は行わなくてよい。SOC1、SCO2の両方が充電上限値TH1未満であると判断された場合(S125:NO)、S124へ戻り、並列充電を継続する。SOC1、SOC2の一方が充電上限値TH1以上になったと判断された場合(S125:YES)、S126へ移行し、充電を停止する。
S127では、制御部70は、SOCが充電上限値TH1に達していない方のバッテリを単独充電すべく、スイッチング素子31〜36、41〜46のオンオフ作動を制御する。ここでは、S124にて2相での並列充電をしていた場合は並列充電と同じ2相での単独充電とし、S124にて3相での並列充電をしていた場合は3相での単独充電とする。
S128では、制御部70は、単独充電を行っているバッテリの充電が完了したか否か判断する。充電が完了していないと判断された場合(S128:NO)、S127へ戻り、充電を継続する。充電が完了したと判断された場合(S128:YES)、充電を終了する。
以上説明したように、本実施形態の充電システム1において、制御部70は、インバータ制御部71、および、記憶部75を有する。インバータ制御部71は、第1スイッチング素子31〜36および第2スイッチング素子41〜46のオンオフ作動を制御する。記憶部75は、直流電流により発生するトルクがゼロとみなせる範囲であるゼロトルク位置が、充電モード、通電相数および通電相を含む充電条件と関連付けられて記憶されている。
バッテリ21、22は、コイル11〜13、第1インバータ30および第2インバータ40を通電経路として急速充電器100から供給される直流電力により充電可能である。制御部70は、ロータ14がゼロトルク位置となるようにロータ位置を制御し、当該ゼロトルク位置と関連づけられた充電条件にて、第1バッテリ21および第2バッテリ22の少なくとも一方を急速充電器100からの直流電力により充電する。
オープン巻線の2電源2インバータの構成であるモータジェネレータ10に直流電流を流すと、ロータ14が動く虞がある。ただし、直流電流の場合、交流電流のように回転磁界は発生しないため、ロータ14が回転することはない。直流電流による磁界は一定であるので、この磁界に対してロータ14の磁石とステータコアとが釣り合う位置であるゼロトルク位置にロータ14が移動すると、トルクは発生しない。そこで本実施形態では、ロータ14がゼロトルク位置にある状態にて充電を行うので、充電中にトルクが発生しない。したがって、コイル11〜13、第1インバータ30および第2インバータ40を通電経路としても、ロータ14を動かすことなく、バッテリ21、22を適切に充電することができる。これにより、追加部品等を用いることなく、充電中にロータ14が動くことにより振動や異音の発生を抑制することができる。
電気角1周期中には、複数のゼロトルク位置が存在しており、制御部70は、複数のゼロトルク位置のうち、トルクがゼロとなるゼロトルク点の両側にて当該ゼロトルク点に向かう方向にトルクが発生するゼロトルク収束領域となるように、ロータ位置を制御する。ロータ位置がゼロトルク収束領域内であれば、ロータ位置がゼロトルク点に戻るようにトルクが発生するため、位置制御が容易である。
電気角1周期中には、複数のゼロトルク位置が存在しており、制御部70は、複数のゼロトルク位置のうち、電流値によらず位置が固定である固定ゼロトルク位置となるように、ロータ位置を制御する。これにより、充電時に電流が変動したとしても、ロータ14が動くことなく充電を行うことができる。なお、補足として、上述の通り、ゼロトルク収束領域は、電流値によって多少は変動するものの、車両98を動かすほどの変動ではないため、充電中に車両98が動くことはない。
制御部70は、SOC1、SOC2に応じて充電モードおよび通電相数を選択し、選択された充電モードおよび通電相数に関連づけられているゼロトルク位置のうち、充電開始前のロータ14の停止位置から最も近いゼロトルク位置を選択してロータ位置を制御し、選択されたゼロトルク位置に対応する通電相を用いて、バッテリ21、22の少なくとも一方を充電する。これにより、SOC1、SOC2に応じた適切な充電モードにてバッテリ21、22を充電することができる。
第1バッテリ21または第2バッテリ22を単独充電する場合、充電するバッテリ21、22のSOCに応じて通電相数を選択し、ロータ位置に応じて通電相を選択する。また、バッテリ21、22が並列接続しているとみなせる状態にて同時充電する場合、バッテリ21、22のSOCおよびロータ位置の少なくとも一方に応じて通電相数を選択し、ロータ位置に応じて通電相を選択する。並列充電の場合、2相以上を選択可能である。
通電相数が多いほど相間でトルクを打ち消す成分が大きくなるため、発生するトルクが小さくなる。また、大電流での充電を行う場合、通電相数が多い方が熱や損失面で有利である。一方、通電相数が少ないほど、ゼロトルク収束領域が広くなるため、ロータ位置制御の余裕度が高まる。したがって、充電効率および制御性を考慮し、SOCに応じて適切な充電モードを選択することができる。
バッテリ21、22が直列接続しているとみなせる状態にて同時充電する場合、通電相数を全相とする。バッテリ21、22を直列充電する場合、ダイオード通電となるので、通電相数は全相となる。直列充電とすることで、高効率にバッテリ21、22を充電することができる。また本実施形態では、コイル11〜13およびインバータ30、40を通電経路として用いることで、バッテリ21、22および急速充電器100の定格電圧に応じ、直列充電と並列充電とを切り替えることができる。
制御部70は、バッテリ21、22の同時充電を行った後、バッテリ21、22の一方の充電が完了した場合、充電を一旦停止し、充電停止前の同時充電時と同じ通電相を用いてバッテリ21、22の他方を単独充電する。これにより、ロータ14を動かすことなく同時充電から単独充電に切り替え、バッテリ21、22を適切に充電することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態を図19および図20に示す。上記実施形態では、充電開始時にロータ位置をゼロトルク位置に移動させる。本実施形態では、充電準備指示があったとき、その後の充電条件に応じたロータ位置にてロータ14を停止させる充電前事前処理を行う。本実施形態では、特に、ゼロトルク収束領域にてロータ14を停止させるものとして説明する。ここで、充電準備指示とは、ブレーキによる車両停止に加え、シフトレンジがPレンジとなる、または、パーキングブレーキが作動していることで、充電準備指示があったとみなす。また、充電コネクタが接続されたとき、充電準備指示があったとするようにしてもよい。この場合、実際の充電電流が流れる前であって、車両98の制御部70と急速充電器100の外部制御部105との通信期間を充電準備指示期間とする。
図1に示す2電源2インバータの構成において、通常の使い方をしているとすれば、バッテリ21、22が同電位になることはほとんどない。すなわち、2電源間に電位差がある場合がほとんどである。そこで本実施形態では、充電準備指示があったとき、充電前事前処理として、2電源間の電位差を用いて直流電流を流すことで、ロータ14をゼロトルク位置に移動させる。このとき、図19に示すように、開閉器56を閉とし、接続線66を戻り線として活用する。なお、普通充電用の開閉器53〜56は、車両側にて自由に開閉制御可能である。図19および後述の図22では、SMR、ロータ14および制御部70等の一部の構成や符号の記載を省略した。
詳細には、充電準備指示があり、その後の充電処理にて3相通電での充電を行う場合であって、第1バッテリ21の電位V1が第2バッテリ22の電位V2より高い場合、充電前事前処理として、第1上アーム素子31〜33をオン、開閉器56を閉とすることで、2電源間の電位差を用いて直流電流を流し、ロータ14をゼロトルク位置に移動させる。第1バッテリ21の電位V1が第2バッテリ22の電位V2より高い場合、通電経路は図19中にて破線の矢印で示す如くであって、第2インバータ40側はダイオード通電となるので、第2上アーム素子41〜43をオンしなくてよい。
また、充電準備指示があり、その後の充電処理にて3相通電での充電を行う場合であって、第2バッテリ22の電位V2が第1バッテリ21の電位V1より高い場合、充電前事前処理として、第2上アーム素子41〜43をオン、開閉器56を閉とすることで、2電源間の電位差を用いて直流電源を流し、ロータ14をゼロトルク位置に移動させる。第2バッテリ22の電位V2が第1バッテリ21の電位V1より高い場合、通電経路は図19中にて破線の矢印と同じ経路で逆向きとなり、第1インバータ30側はダイオード通電となるので、第1上アーム素子31〜33をオンしなくてよい。充電前事前処理にて流れる電流値は、2電源の電位差に変わる。
また、その後の充電処理にて2相通電または1相通電での充電を行う場合、最も近いゼロトルク位置となる通電相を選定し、選定された通電相が通電経路となるように、オンにする上アーム素子31〜33、41〜43を選択する。
ここで、ゼロトルク収束領域にてロータ14を停止させる際のロータ14の挙動について説明する。例えば図16の上段に示すゼロトルク収束領域C31にてロータ14を停止させる場合を説明する。ゼロトルク収束領域C31のゼロトルク点は、電気角で概ね40[deg]に位置する。ゼロトルク収束領域C31におけるゼロトルク点の両側にロータ14が位置しているとき、ゼロトルク点に向かう方向にトルクが発生する。例えばロータ14が電気角30[deg]の位置にある場合、正方向にトルクが発生し、ロータ14を正方向に回転させるので、ゼロトルク点に向かってロータ14が回転する、また、ロータ14がゼロトルク点に近づくに従い、ゼロトルク点に向かうトルクは小さくなり、結果としてロータ14はゼロトルク点にて停止する。仮に慣性で行きすぎたとしても、今度は逆向きのトルクが発生し、ロータ14を負方向に回転させるので、ロータ14は再びゼロトルク位置に向かい、最終的に、ロータ14はゼロトルク点にて停止する。
また上記実施形態にて説明したように、3相通電の場合、ゼロトルク収束領域は、電流値によって多少ずれる。ここで、例えばモータジェネレータ10が4極対、車軸までの減速比が10の場合、電気角10[deg]のずれは、タイヤ回転角として0.25[deg]に相当する(式(1)参照)。これは、ギアのバックラッシュ等で吸収可能な値であり、車両としては動かない蓋然性が高い。したがって、車両挙動の面から、ゼロトルク収束領域は、電流値によらず同じとみなす。
タイヤ回転角=電気角÷極数÷減速比 ・・・(1)
=10÷4÷10
=0.25[deg]
例えば、充電のためにユーザが車両98を停止させたとき、ロータ位置が成り行きで電気角30[deg]の位置であった場合、充電開始前の事前処理として、図19のように電流を流すことでトルクを発生させると、発生したトルクによりロータ14は正方向に回転し、電気角約40[deg]の位置にあるゼロトルク点まで回転して止まる。ここで、図5に示す3相直列または3相単独にて充電を行う場合、モータジェネレータ10には、図19と同様の経路の電流が流れるため、ゼロトルク位置も略同じとなる。したがって、充電中に車両98が動くことはない。なお、第1実施形態にて説明した通り、電流値が変わっても、ゼロトルク収束領域は変わらないとみなせる。したがって、充電時に流れる電流値が、充電前事前処理の電流値と異なっていても差し支えない。
また、図16にて説明したように、2相通電でのゼロトルク収束領域は、3相通電でのゼロトルク収束領域の間隔の広いところを補うように存在している。そのため、充電のためにユーザが車両98を停止させたとき、成り行きで停止したロータ位置が、3相通電でのゼロトルク収束領域よりも2相通電でのゼロトルク収束領域に近い、或いは、2相通電でのゼロトルク収束領域内である場合、2相通電にて充電前事前処理を行えば、充電前事前処理におけるロータ14の移動量は少なくてすむ。この場合、充電前事前処理と同じ2相を用いてその後の充電を行う。
なお、例えばバッテリ21、22のSOCが低い場合、大電流での充電が予想される。ここで、通電経路となるインバータ30、40およびモータジェネレータ10の熱成立性と導通損失を考慮して3相での充電を選択する場合、成り行きで停止したロータ位置が2相通電でのゼロトルク収束領域内であったとしても、充電前事前処理を3相にて行い、3相のゼロトルク収束領域にロータ14を移動させてもよい。
また、1相通電でのゼロトルク収束領域は、2相通電および3相通電と比較して広い。そのため、充電前事前処理にてできるだけロータ14を動かしたくない場合、1相通電にて充電前事前処理を行う。そして、充電前事前処理と同じ1相を用いてその後の充電処理を行う。なお、2相通電と同様、熱成立性や導通損失を考慮して、2相または3相での充電を選択する場合、または、バッテリ21、22の同時充電が必要な場合、成り行きで停止したロータ位置が1相通電でのゼロトルク収束領域内であったとしても、充電前事前処理を2相または3相にて行い、その後の充電を2相または3相にて行うようにしてもよい。
本実施形態の充電前事前処理を図20のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、車両98の停止時に所定の周期で実行される。S201では、制御部70は、充電準備指示状態か否か判断する。本実施形態では、シフトレンジがPレンジ、かつ、パーキングブレーキが作動しているとき、充電準備指示状態と判定する。また、充電コネクタが接続された場合に充電準備指示状態と判定するようにしてもよい。充電準備指示状態ではないと判断された場合(S201:NO)、S202以降の処理を行わない。充電準備指示状態であると判断された場合(S201:YES)、S202へ移行する。
制御部70は、S202にてロータ14の現在位置を検出し、S203にてバッテリ21、22のSOCをチェックする。S202、S203の処理は、処理順を入れ替えてもよい。S204では、制御部70は、ロータ14の現在位置、および、SOCの状態に応じ、その後の充電における充電モード、通電相数および通電相を決定する。充電モード、通電相数および通電相の選択方法は、第1実施形態にて説明した通りである。
S205では、リレー制御部72は、開閉器56を閉とする。S206では、インバータ制御部71は、第2バッテリ22より第1バッテリ21の電位が高い場合、通電相となる第1上アーム素子31〜33をオン、第1バッテリ21より第2バッテリ22の電位が高い場合、通電相となる第2上アーム素子41〜43をオンにする。
S207では、ロータ14がゼロトルク位置に移動完了したか否か判断する、ロータ14がゼロトルク位置に移動完了していないと判断された場合(S207:NO)、この判断処理を繰り返す。ロータ14がゼロトルク位置に移動完了したと判断された場合(S207:YES)、S208へ移行する。インバータ制御部71は、S208にてオンされているスイッチング素子をオフにし、リレー制御部72は、S209にて開閉器56を開にする。これにより、充電準備完了とし、充電前事前処理を終了する。
充電システム1は、インバータ30、40およびコイル11〜13を経由せずにバッテリ21、22の低電位側を接続する接続線66と、接続線66に設けられる開閉器56と、をさらに備える。制御部70は、バッテリ21、22の少なくとも一方の直流電力での充電開始前、開閉器56を閉、バッテリ21、22のうち電位が高い側と接続される第1上アーム素子31〜33または第2上アーム素子41〜43の少なくとも1つをオンにし、バッテリ21、22の電位差で流れる直流電流により、ロータ14をゼロトルク位置に移動させる充電前事前処理を行う。これにより、通常のMG制御にてロータ14を停止させる場合と比較し、ロータ14を精度よくゼロトルク位置に停止させることができる。
制御部70は、その後の充電実施時と通電経路が同じとなるように、充電前事前処理にてオンするスイッチング素子を決定する。実際の充電時と同じ条件で充電前事前処理を行ってロータ14を停止させることで、ロータ14を動かすことなく充電を開始することができる。
制御部70は、充電準備指示状態である場合、充電前事前処理を行う。充電準備指示状態とは、例えば、シフトレンジがPレンジである、パーキングブレーキが作動している、または、充電コネクタが接続されている等である。これにより、例えば信号での車両停止時等、一般走行シーンでの車両停止時には充電前事前処理を行わないようにすることで、充電前事前処理にて生じる虞がある振動や音の発生を防ぐことができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
(第3実施形態)
第3実施形態を図21および図22に示す。図21に示す充電システム2では、接続線65が開閉器53と第1バッテリ21との間にて接続線63と接続され、接続線66が車載充電器80と開閉器54との間に接続される。充電システム2を第1実施形態に適用してもよい。
第2実施形態にて説明した充電前事前処理を行う場合、充電システム2では、接続線65を戻り線として活用する。充電システム2において、充電準備指示があり、その後の充電処理にて3相通電での充電を行う場合であって、第1バッテリ21の電位V1が第2バッテリ22の電位V2より高い場合、充電前事前処理として、第1下アーム素子34〜36をオン、開閉器55を閉とすることで、2電源の電位差を用いて直流電流を流し、ロータ14をゼロトルク位置に移動させる。第1バッテリ21の電位V1が第2バッテリ22の電位V2より高い場合、通電経路は図22中にて破線の矢印で示す如くであって、第2インバータ40側はダイオード通電となるので、第2下アーム素子44〜46をオンしなくてよい。
また、充電準備指示があり、その後の充電処理にて3相通電での充電を行う場合であって、第2バッテリ22の電位V2が第1バッテリ21の電位V1より高い場合、充電前事前処理として、第2下アーム素子44〜46をオン、開閉器55を閉とすることで、2電源の電位差を用いて直流電流を流し、ロータ14をゼロトルク位置に移動させる。第2バッテリ22の電位V2が第1バッテリ21の電位V1より高い場合、通電経路は図22にて破線の矢印と同じ経路で逆向きとなり、第1インバータ30側はダイオード通電となるので、第1下アーム素子34〜36をオンしなくてよい。
その後の充電処理にて2相通電または1相通電での充電を行う場合、最も近いゼロトルク位置となる通電相を選定し、選定された通電相が通電経路となるように、オンにする下アーム素子34〜36、44〜46を選択する。
充電システム2は、インバータ30、40およびコイル11〜13を経由せずにバッテリ21、22の高電位側を接続する接続線65と、接続線65に設けられる開閉器55と、をさらに備える。制御部70は、バッテリ21、22の少なくとも一方の直流電力での充電開始前、開閉器55を閉、バッテリ21、22のうち電位が高い側と接続される第1下アーム素子34〜36または第2下アーム素子44〜46の少なくとも1つをオンにし、バッテリ21、22の電位差で流れる直流電流により、ロータ14をゼロトルク位置に移動させる充電前事前処理を行う。これにより、通常のMG制御にてロータ14を停止させる場合と比較し、ロータ14を精度よくゼロトルク位置に停止させることができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
上記実施形態では、モータジェネレータ10が「回転電機」、第1バッテリ21が「第1電圧源」、第2バッテリ22が「第2電圧源」、急速充電器100が「外部充電器」、SOCが「充電残量」、接続線66が「低電位側接続線」、開閉器56が「低電位側開閉器」、接続線65が「高電位側接続線」、開閉器55が「高電位側開閉器」に対応する。
(他の実施形態)
上記実施形態では、車両停止後にロータをゼロトルク位置に移動させる。他の実施形態では、車両が停止する直前のロータ位置に応じ、ロータ位置がゼロトルク位置となるようにして車両を停止させるようにしてもよい。また、図20中のS201を省略し、車両が停止する都度、充電前事前処理を行うようにしてもよい。これにより、速やかに充電を開始することができる。
上記実施形態の回転電機のコイルは3相である。他の実施形態では、回転電機のコイルは4相以上としてもよい。上記実施形態では、回転電機は電動車両の主機モータとして用いられている。他の実施形態では、回転電機は、主機モータに限らず、例えばスタータ機能とオルタネータ機能とを併せ持つ、所謂ISG(Integrated Starter Generator)や、補機モータであってもよい。また、充電システムを車両以外の装置に適用してもよい。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。