JP2021004282A - 熱伝導シート - Google Patents

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Abstract

【課題】熱伝導シートの厚みが薄い場合においても、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができる熱伝導シートを提供する。【解決手段】フッ素樹脂と熱伝導性充填剤とを含有し、シート厚みが300μm以下であり、F核パルス法NMRを用いてハーンエコー法により150℃で測定され、30μ秒以上100μ秒以下の第1スピン−スピン緩和時間(T21)を有する第1成分の成分分率(fnn)が、55%以上70%以下である、熱伝導シート。【選択図】図1

Description

本発明は、熱伝導シートに関する。
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
電子部品の温度上昇による機能障害対策としては、一般に、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、熱伝導率が高いシート状の部材(熱伝導シート)を介在させた状態で発熱体と放熱体とを密着させている。
従って、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用される熱伝導シートには、優れた熱伝導性を発揮することが求められている。
そこで、例えば、特許文献1では、高い熱伝導性を有する熱伝導シートとして、樹脂と粒子状炭素材料とを含み、0.05MPa加圧下の熱抵抗の値が0.20℃/W以下である熱伝導シートが提案されている。そして、この特許文献1の熱伝導シートは、樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物を用いて形成され、且つ、所定の熱抵抗値を有するので、比較的低い圧力下で優れた熱伝導性を有し、取扱い性に優れる。
国際公開第2017/145957号
しかし、上記従来の熱伝導シートでは、アスカーC硬度が42と硬度自体は低いにもかかわらず、実装時にかかる圧力(1MPa程度)がかかった際の厚み減少率は小さいという問題があった。よって、実装時にかかる圧力がかかった際の厚み減少率が大きい、即ち、より潰れやすいシートが求められている。
そこで本発明は、熱伝導シートの厚みが薄い場合においても、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができる熱伝導シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった。そして、本発明者らは、熱伝導シートに含まれるフッ素樹脂の分子運動性(F核)に着目し、熱伝導シートが、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含有し、シート厚みが所定値以下であり、且つ、所定の第1成分の成分分率(fnn)が所定範囲内であれば、熱伝導シートに含まれるフッ素樹脂の分子運動性(F核)を高くして、熱伝導シートの厚みが薄い場合においても、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートは、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含有し、シート厚みが300μm以下であり、F核パルス法NMRを用いてハーンエコー法により150℃で測定され、30μ秒以上100μ秒以下の第1スピン−スピン緩和時間(T21)を有する第1成分の成分分率(fnn)が、55%〜70%である、ことを特徴とする。このように、熱伝導シートが、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含有し、シート厚みが所定値以下であり、且つ、所定の第1成分の成分分率(fnn)が所定範囲内であれば、熱伝導シートの厚みが薄い場合においても、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができる。
なお、「所定の第1成分」は、30μ秒以上100μ秒以下の第1スピン−スピン緩和時間(T21)を有する成分を指し、斯かる第1成分の成分分率(fnn)は、本明細書の実施例に記載されているように、F核パルス法NMRを用いたハーンエコー法により150℃で測定することができる。
なお、「シート厚み」は、熱伝導シートの平均厚みを意味し、本明細書の実施例に記載されているように、測定することができる。
ここで、本発明の熱伝導シートは、熱伝導率が12W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導シートの熱伝導率が12W/m・K以上であれば、熱伝導シートの厚み方向に熱伝導性充填材が垂直配向されていることが分かる。
なお、本明細書において、「熱伝導率」は、本明細書の実施例に記載されているように、測定することができる。
また、本発明の熱伝導シートは、シート厚み減少率が8%以上50%以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、「シート厚み減少率」は、本明細書の実施例に記載されているように、測定することができる。
また、本発明の熱伝導シートは、アスカーC硬度が45以上90以下であることが好ましい。熱伝導シートのアスカーC硬度が45以上90以下であれば、熱伝導シートの硬さ(柔らかさ)を所定レベルとすることができる。
なお、本明細書において、「アスカーC硬度」は、本明細書の実施例に記載されているように、測定することができる。
また、本発明の熱伝導シートは、前記フッ素樹脂を30質量%以上70質量%以下含有し、前記熱伝導性充填材を30質量%以上60質量%以下含有することが好ましい。
さらに、本発明の熱伝導シートは、F核パルス法NMRを用いてハーンエコー法により150℃で測定され、10μ秒以上30μ秒以下の第2スピン−スピン緩和時間(T22)を有する第2成分の成分分率(fnn)が、25%以上50%以下であることが好ましい。
なお、「所定の第2成分」は、10μ秒以上30μ秒以下の第2スピン−スピン緩和時間(T22)を有する成分を指し、斯かる第2成分の成分分率(fnn)は、本明細書の実施例に記載されているように、F核パルス法NMRを用いたハーンエコー法により150℃で測定することができる。
本発明によれば、熱伝導シートの厚みが薄い場合においても、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができる熱伝導シートを提供することができる。
(a)〜(c)は、本発明に従う熱伝導シートの一例を用いて熱伝導シートを製造する過程を示す説明図である。 本発明に従う熱伝導シートのスライスに用いる切断刃の一例の形状を拡大して示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含み、任意に添加剤を更に含み得る。また、本発明の熱伝導シートの厚みは300μm以下である。さらに、本発明の熱伝導シートは、F核パルス法NMRを用いてハーンエコー法により150℃で測定され、30μ秒以上100μ秒以下の第1スピン−スピン緩和時間(T21)を有する第1成分の成分分率(fnn)が、55%以上70%以下である。そして、本発明の熱伝導シートは、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含み、シート厚みは300μm以下であり、且つ、所定の第1成分の成分分率(fnn)が55%以上70%以下であるため、熱伝導シートの厚みが薄い場合においても、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができる。
<フッ素樹脂>
フッ素樹脂としては、常温常圧下で液体のフッ素樹脂、および常温常圧下で固体のフッ素樹脂などを用いることができる。
なお、一般に、フッ素樹脂は、難燃性に加え、耐熱性、耐油性、耐薬品性などに優れている点からも熱伝導シートのマトリックス樹脂を構成する材料として好ましい。
[常温常圧下で液体のフッ素樹脂]
常温常圧下で液体のフッ素樹脂としては、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロペンテン−テトラフルオロエチレン3元共重合体、パーフルオロプロペンオキサイド重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン−フッ化ビニリデン共重合体などの、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、市販されている、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、デュポン株式会社製のバイトン(登録商標)LM、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−101、スリーエムジャパン株式会社製のダイニオン(登録商標)FC2210、信越化学工業株式会社製のSIFELシリーズなどが挙げられる。
[常温常圧下で固体のフッ素樹脂]
また、常温常圧下で固体のフッ素樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン系フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系フッ素樹脂等、フッ素含有モノマーを重合して得られるエラストマーなどが挙げられる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエステル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエポキシ変性物およびポリテトラフルオロエチレンのシラン変性物などの、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、エラストマーは、「樹脂」に含まれるものとする。
また、市販されている、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−912、ダイエル(登録商標)G−300シリーズ/G−700シリーズ/G−7000シリーズ(ポリオール加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体)、ダイエルG−550シリーズ/G−600シリーズ(ポリオール加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体)、ダイエルG−800シリーズ(パーオキサイド加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体)、ダイエルG−900シリーズ(パーオキサイド加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体)、ダイエルG−310;ALKEMA社製のKYNAR(登録商標)シリーズ(フッ化ビニリデン系フッ素樹脂)、KYNAR FLEX(登録商標)シリーズ(ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体);ケマーズ社製のA−100(ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体);スリーエムジャパン株式会社製のダイニオン(登録商標)FC2211(ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体)、FPO3600ULV;などが挙げられる。
<<フッ素樹脂の含有量>>
そして、熱伝導シート中のフッ素樹脂の含有量は、特に限定されることなく、例えば、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。フッ素樹脂の含有量が上記下限以上であれば、柔軟性の高い熱伝導シートを良好に形成して、例えば、被着体とより良好に密着し得ることにより、熱伝導シートの熱伝導性を更に高め得るからである。加えて、フッ素樹脂の含有量が上記下限以上であれば、熱伝導シートの難燃性および耐久性を更に高め得るからである。また、フッ素樹脂の含有量が上記上限以下であれば、後述する熱伝導性充填材を十分に含有させて、熱伝導シートの熱伝導性を十分に高めることができるからである。
常温常圧下で液体のフッ素樹脂と常温常圧下で固体のフッ素樹脂との配合比(質量比:常温常圧下で液体のフッ素樹脂/常温常圧下で固体のフッ素樹脂)としては、50/50以上が好ましく、60/40以上がより好ましく、90/10以下が好ましく、80/20以下がより好ましい。配合比が上記下限以上であれば、熱伝導シートが十分な柔らかさを有し、適切なアスカーC硬度を付与することができるからである。また、配合比が上記上限以下であれば、熱伝導シートが極端な粘着性を有することなく製造が容易になるからである。
<熱伝導性充填材>
熱伝導性充填材としては、特に限定されることなく、例えば、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子および粒子状炭素材料(例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛、カーボンブラック等)などの粒子状材料、並びに、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などの繊維状材料が挙げられる。中でも、熱伝導性充填材としては、窒化ホウ素粒子、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、膨張性黒鉛および膨張化黒鉛等の鱗片状粒子材料;並びに、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)などの繊維状炭素ナノ材料;からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、鱗片状粒子材料を用いることがより好ましく、鱗片状黒鉛および膨張化黒鉛等の異方性黒鉛を用いることが更に好ましく、膨張化黒鉛を用いることが特に好ましい。これらの熱伝導性充填材を用いれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。
なお、熱伝導性充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、熱伝導性充填材として使用し得る粒子状炭素材料などの粒子状材料の体積平均粒子径は、5μm以上250μm以下であることが好ましく、30μm以上150μm以下であることがより好ましいく、40μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。体積平均粒子径が上記範囲内であれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。
そして、熱伝導性充填材の含有量は、特に限定されることなく、例えば、上述したフッ素樹脂100質量部当たり、5質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることが更に好ましく、150質量部以下とすることが好ましく、120質量部以下とすることがより好ましく、100質量部以下とすることが更に好ましい。熱伝導性充填材の含有量が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、熱伝導性充填材の含有量が上記上限値以下であれば、熱伝導シートが極端に硬くなることを抑制することができる。
また、熱伝導シート中の熱伝導性充填材の含有量は、特に限定されることなく、例えば、30質量%以上とすることが好ましく、40質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以下とすることが好ましく、50質量%以下とすることがより好ましい。熱伝導性充填材の含有量が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、熱伝導性充填材の含有量が上記上限値以下であれば、熱伝導シートが極端に硬くなることを抑制することができる。
さらに、熱伝導シート中の熱伝導性充填材の体積分率は、特に限定されることなく、例えば、25vol%以上とすることが好ましく、30vol%以上とすることがより好ましく、60vol%以下とすることが好ましく、55vol%以下とすることがより好ましい。熱伝導性充填材の体積分率が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、熱伝導性充填材の体積分率が上記上限値以下であれば、熱伝導シートが極端に硬くなることを抑制することができる。
<<窒化ホウ素粒子>>
窒化ホウ素粒子は、高い熱伝導性を有するため、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱伝導性(特には、比較的低い挟持圧力下での熱伝導性)を十分に向上させることができる。
ここで、窒化ホウ素粒子は、その結晶構造により、例えば、六方晶窒化ホウ素粒子(h−BN)、立方晶窒化ホウ素粒子(c−BN)、ウルツ鉱窒化ホウ素粒子(w−BN)、菱面体晶窒化ホウ素粒子(r−BN)、乱層構造窒化ホウ素粒子(t−BN)に分類することができる。これらの中でも、熱伝導シートに優れた熱伝導性を付与する観点からは、六方晶窒化ホウ素粒子(h−BN)が好ましい。
なお、窒化ホウ素粒子としては、単一の結晶構造のみからなる窒化ホウ素粒子を単独で使用してもよいし、互いに異なる結晶構造を有する2種以上の窒化ホウ素粒子を併用してもよい。換言すると、窒化ホウ素粒子は、単一の結晶構造で構成されていてもよいし、2種以上の結晶構造で構成されていてもよい。例えば、窒化ホウ素粒子が、六方晶窒化ホウ素粒子のみであってもよいし、六方晶窒化ホウ素粒子と立方晶窒化ホウ素粒子との混合物であってもよい。
また、窒化ホウ素粒子の形状としては、特に限定されないが、例えば、板状、板状の窒化ホウ素粒子が凝集してなる球塊状、不定形凝集状、粉砕により形成される顆粒状が挙げられ、板状が好ましい。
<<膨張化黒鉛>>
膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業株式会社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも商品名)等が挙げられる。これらの市販の膨張化黒鉛は、製造される熱伝導シート中で上述した所定の粒度分布を有する限りにおいて、単独で、または混合して用いることができる。
<添加剤>
熱伝導シートには、必要に応じて、熱伝導シートの形成に使用され得る既知の添加剤を配合することができる。そして、熱伝導シートに配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、上記フッ素樹脂以外の樹脂(例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂など);高分子量コポリマーのアルキルアンモニウム塩等の分散剤;粘着性樹脂;赤りん系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤等の難燃剤;セバシン酸エステル等の可塑剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物等の接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ性向上剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤;などが挙げられる。
<熱伝導シートの形成方法>
熱伝導シートの形成方法は、得られる熱伝導シートが、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含有し、シート厚みが所定値以下であり、且つ、所定の第1成分の成分分率(fnn)が所定範囲内であれば、特に制限されない。そして、熱伝導シートは、例えば、プレ熱伝導シート成形工程、積層体形成工程、スライス工程などを経て形成することができる。
<<プレ熱伝導シート成形工程>>
プレ熱伝導シート成形工程では、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含み、任意に、添加剤を更に含む組成物を加圧してシート状に成形し、プレ熱伝導シートを得る。
[組成物]
ここで、組成物は、フッ素樹脂と、熱伝導性充填材と、上述した任意成分(添加剤)とを混合して調製することができる。そして、フッ素樹脂、熱伝導性充填材および任意の添加剤としては、本発明の熱伝導シートに含まれ得るフッ素樹脂、熱伝導性充填材、および任意の添加剤として上述したものを用いることができる。また、組成物中の各成分の含有量も上述した範囲内で適宜変更することができる。
また、上述した成分の混合は、特に限定されることなく、ニーダー、ロール、ミキサー等の既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、有機溶剤等の溶媒の存在下で行ってもよい。そして、混合時間は、例えば5分以上60分以下とすることができる。また、混合温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
[組成物の成形]
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡および解砕した後に、加圧(一次加圧)してシート状に成形することができる。
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形によりシート状に形成することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃以下とすることができる。
[プレ熱伝導シート]
そして、組成物を加圧してシート状に成形してなるプレ熱伝導シートでは、熱伝導性充填材が主として面内方向に配列し、特に面内方向の熱伝導性が向上すると推察される。
なお、プレ熱伝導シートの厚みは、特に限定されることなく、例えば0.05mm以上2mm以下とすることができる。
<<積層体形成工程>>
積層体形成工程では、プレ熱伝導シート成形工程で得られたプレ熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、プレ熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る。
ここで、積層体形成工程で得られる積層体において、プレ熱伝導シートの表面同士の接着力をより高めて、積層体の層間剥離を十分に抑制する場合には、プレ熱伝導シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、プレ熱伝導シートの表面に接着剤を塗布した状態またはプレ熱伝導シートの表面に接着層を設けた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、プレ熱伝導シートを積層させた積層体を積層方向に更にプレス(二次加圧)してもよい。
なお、層間剥離を効率的に抑制する観点からは、得られた積層体を積層方向に二次加圧することが好ましい。そして、二次加圧の条件は、特に限定されず、積層方向への圧力0.05MPa以上0.5MPa以下、温度80℃以上170℃以下で、加圧時間10秒間以上30分間以下とすることができる。
そして、プレ熱伝導シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体では、熱伝導性充填材が積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。
<<スライス工程>>
スライス工程では、積層体形成工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートを得る。
ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。
中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、例えば、積層体を積層方向に押圧して固定するための金属板等の固定具と、両刃の切断刃を有するスライス部材と、を備え、固定具により積層体を押圧状態としつつ切断刃を動かすことで積層体をスライスする、スライサーを用いることができる。
なお、熱伝導シートの熱伝導性を更に高める観点からは、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は−20℃以上30℃以下とすることが好ましい。更に、同様の理由により、スライスする積層体は、積層方向に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましく、積層方向に0.05MPa以上0.5MPa以下の圧力を負荷しながらスライスすることがより好ましい。
積層体をスライスして得られた熱伝導シートでは、熱伝導性充填材が面内方向に略直交する方向(即ち、熱伝導シートの厚み方向)に配列することで、特に熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性が向上すると推察される。
<熱伝導シートの性状>
<<シート厚み>>
本発明の熱伝導シートのシート厚みは、300μm以下であり、250μm以下であることが好ましく、150μm以下であることが好ましく、110μm以下であることがより好ましく、50μm以上であることが好ましく、70μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることが特に好ましい。上述した熱伝導シートのシート厚みが上記上限以下であれば、熱伝導シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、熱伝導シートのシート厚みが上記下限以上であれば、熱伝導シートを過度に薄膜化させずに熱伝導シートの強度およびハンドリング性を確保できる。
<<熱伝導率>>
本発明の熱伝導シートの熱伝導率は、12W/m・K以上であることが好ましく、20W/m・K以上であることがより好ましく、25W/m・K以上であることが特に好ましく、50W/m・K以下であることが好ましく、45W/m・K以下であることがより好ましく、40W/m・K以下であることが特に好ましい。上述した熱伝導シートの熱伝導率が上記下限以上であることは、熱伝導シートの厚み方向に熱伝導性充填材が垂直配向している、即ち、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含む条片が条片の幅方向に並列接合されて、1枚の熱伝導シートを形成することを意味する。換言すれば、当該熱伝導シートは、フッ素樹脂および熱伝導性充填材を含み、積層体を構成していたシートの厚みと略等しい寸法の幅を有する条片が、条片の幅方向が熱伝導シートの厚み方向と直交する姿勢で、条片の幅方向に並列接合されてなる構成を有している。
<<第1成分の成分分率(fnn)>>
本発明の熱伝導シートにおける所定の第1成分の成分分率(fnn)は、55%以上である必要があり、60%以上であることが好ましく、64%以上であることがより好ましく、70%以下である必要があり、68%以下であることが好ましい。上述した熱伝導シートにおける所定の第1成分の成分分率(fnn)が上記下限以上であれば、熱伝導シートに含まれるフッ素樹脂の分子運動性(F核)を高くして、熱伝導シートの厚みが薄い場合においても、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができる。また、熱伝導シートにおける所定の第1成分の成分分率(fnn)が上記上限以下であれば、所定の圧力に対して熱伝導性充填材の垂直配向を維持することができる。
なお、上記所定の第1成分は、30μ秒以上100μ秒以下の第1スピン−スピン緩和時間(T21)を有する成分である。
また、上記所定の第1成分(fnn)は、F核パルス法NMRを用いてハーンエコー法により150℃で測定される、フッ素樹脂の分子運動成分の比率を表す指標である。例えば、フッ素樹脂を後述する実施例で用いたビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体とし、さらに、適切な黒鉛を配合することにより、所定の第1成分の成分分率(fnn)を所定範囲内とすることができる。これは、フッ素樹脂の分子運動性(F核)を黒鉛が拘束することで適度な分子運動性を有していることによるものと推定される。
<<第2成分の成分分率(fnn)>>
本発明の熱伝導シートにおける所定の第2成分の成分分率(fnn)は、25%以上あることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。上述した熱伝導シートにおける所定の第2成分の成分分率(fnn)が上記下限以上であれば、熱伝導シートの厚みが薄い場合においても、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができる。また、熱伝導シートにおける所定の第2成分の成分分率(fnn)が上記上限以下であれば、所定の圧力をかけた際においても、熱伝導性充填材の垂直配向を維持することができる。
なお、上記所定の第2成分は、10μ秒以上30μ秒以下の第2スピン−スピン緩和時間(T22)を有する成分である。
また、上記所定の第2成分(fnn)は、F核パルス法NMRを用いてハーンエコー法により150℃で測定される、フッ素樹脂の分子運動成分の比率を表す指標である。例えば、フッ素樹脂を後述する実施例で用いたビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体と適切な黒鉛を配合することにより、所定の第1成分の成分分率(fnn)を所定範囲内とすることができる。これは、フッ素樹脂の分子運動性(F核)を黒鉛が拘束することで適度な分子運動性(F核)を有していることによるものと推定される。
「F核パルス法NMR」では、測定結果として、例えば、第1スピン−スピン緩和時間(T21)を有する成分(第1成分)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)を有する成分(第2成分)、および第3スピン−スピン緩和時間(T23)を有する成分(第3成分)の各々の比率が得られる。ここで、第1スピン−スピン緩和時間(T21)を有する成分(第1成分)ほど、フッ素樹脂分子の拘束性が小さく、自由に動ける。第1スピン−スピン緩和時間(T21)を有する成分(第1成分)の割合が多いほど、熱伝導シート内のフッ素樹脂の分子運動性(F核)が高くなり、変形しやすい。
なお、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、および第3スピン−スピン緩和時間(T23)は、F核パルス法NMRを用いてハーンエコー法により得られた減衰曲線から、ORIGIN8.5(OriginLab社製)のexponential近似を用いて算出される。
<<シート厚み減少率>>
本発明の熱伝導シートのシート厚み減少率は、8%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、12%以上であることが特に好ましく、50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが特に好ましい。上述した熱伝導シートのシート厚み減少率が上記下限以上であれば、所定の圧力に対し垂直配向を崩さずにシート構造を維持することができる。また、熱伝導シートのシート厚み減少率が上記上限以下であれば、所定の圧力に対し容易に変形するため躯体(発熱体、放熱体など)に対して優れた密着性を示すことができる。
<<アスカーC硬度>>
本発明の熱伝導シートのアスカーC硬度は、45以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、60以上であることが特に好ましく、90以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましく、70以下であることが特に好ましい。上述した熱伝導シートのアスカーC硬度が上記下限以上であれば、必要以上に柔らかくなることなく形状を維持できる。また、熱伝導シートのアスカーC硬度が上記上限以下であれば、躯体に対する密着性を得ることができる。
<<熱抵抗値>>
また、本発明の熱伝導シートは、0.1MPa加圧下での熱抵抗値が0.30℃/W以下であることが好ましく、0.25℃/W以下であることがより好ましく、0.20℃/W以下であることが特に好ましい。0.1MPa加圧下での熱抵抗値が上記上限以下であれば、熱伝導シートが優れた熱伝導性を発揮することができる。
<熱伝導シートの製造方法>
熱伝導シートの製造方法は、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含有し、任意に添加剤を更に含有する熱伝導シートを製造する際に用いられる。
ここで、熱伝導シートの製造方法は、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含有する樹脂ブロックを両刃の切断刃でスライスしてスライス片よりなる熱伝導シートおよび樹脂ブロック残部を得る工程を含む。具体的には、本発明の熱伝導シートを製造する方法では、特に限定されることなく、例えば、図1(a)〜(b)に示すようにして、両刃の切断刃20をスライス方向(図1(a)における矢印方向(下方向))に移動させてフッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含有する樹脂ブロック10を切断刃20でスライスし、樹脂ブロック10のスライス片よりなる熱伝導シート30と、樹脂ブロック残部40とを得た後、図1(c)に示すようにして、切断刃20を(図1(c)における矢印方向(上方向))の待避位置に移動させると共に、樹脂ブロック残部40を所望の樹脂シートの厚さ分だけ切断位置側(図示例では左側)に移動させて再度スライスするという操作を繰り返すことにより、樹脂ブロック10から複数枚の熱伝導シート30を得る。
なお、図1(c)では樹脂ブロック残部40を所望の樹脂シートの厚さ分だけ移動させているが、本発明の熱伝導シートを製造する方法では、切断刃20を所望の熱伝導シートの厚さ分だけ樹脂ブロック残部40側(図1(c)における右側)に移動させてもよいし、切断刃20および樹脂ブロック残部40の両方を移動させてもよい。
[樹脂ブロックの形状および構造]
樹脂ブロックの形状は、特に限定されることなく、スライスした際に所望の形状の樹脂シートが得られる形状とすることができる。具体的には、例えば、矩形状の樹脂シートを製造する場合には、樹脂ブロックの形状は、直方体であることが好ましい。
また、樹脂ブロックの構造は、特に限定されることなく、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含有し、任意に添加剤を更に含有する樹脂組成物を金型などの既知の成形装置を用いて所望の形状に成形してなる構造であってもよいし、フッ素樹脂と、熱伝導性充填材とを含有し、任意に添加剤を更に含有する樹脂組成物をシート状に成形して得たシートを積層、折畳または捲回してなる構造であってもよい。
なお、シートを積層してなる積層体では、通常、シートの表面同士の接着力は、シートを積層する際の圧力により充分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層を行ってもよいし、シートの表面に接着剤を塗布した状態またはシートの表面に接着層を設けた状態で積層を行ってもよいし、シートを積層させた積層体を積層方向に更にプレスしてもよい。
中でも、樹脂ブロックの構造は、例えば図1(a)に示す樹脂ブロック10のような、フッ素樹脂と、熱伝導性充填材とを含有し、任意に添加剤を更に含有する樹脂組成物を加圧してシート状に成形し、フッ素樹脂と、熱伝導性充填材と、任意の添加剤とを含有するシート11を得た後、得られたシート11を厚み方向に複数枚積層してなる構造、或いは、得られたシート11を折畳または捲回してなる構造であることが好ましい。樹脂組成物を加圧してシート状に成形してなるシートでは、熱伝導性充填材がシートの面内方向に配向するため、得られたシートを積層、折畳または捲回してなる積層体をスライスすれば、熱伝導性や導電性などの特性に異方性を有する樹脂シートを得ることができるからである。具体的には、例えば、熱伝導性充填材を含む樹脂組成物を加圧してシート状に成形してなるシートでは、熱伝導性充填材が面内方向に配向し、面内方向の熱伝導性が向上する。従って、当該シートの積層体を積層体の積層方向(図1(a)〜(c)に示す例では上下方向)にスライスすれば、厚さ方向の熱伝導性に優れる熱伝導シートを得ることができる。
なお、積層体よりなる樹脂ブロックの形成に用いられる上述したシートは、引張伸びが、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。積層体を構成するシートの引張伸びが上記上限値以下であれば、積層体を容易にスライスすることができるからである。なお、シートの引張伸びは、通常、1%以上である。
<切断刃>
上述した樹脂ブロックのスライスに用いられる切断刃は、第一刃面と、第二刃面と、第一刃面および第二刃面の交差角部よりなる刃先とを備える刃部、並びに、刃部の刃先側とは反対側に位置する平板状の平部を有する、両刃の切断刃である。
具体的には、例えば図2に示すように、熱伝導シートの製造方法で使用し得る切断刃20は、刃先25を有する刃部21と、切断刃20の延在方向(図2では上下方向)において刃部21の刃先25側とは反対側(図2では上側)に位置する平部22とを備えている。そして、切断刃20は、刃部21の形状が刃先25を通って切断刃20の延在方向に沿って延びる仮想面を対称面とした面対称形状である対称両刃である。
なお、切断刃は、片刃でも両刃でもよく、両刃の場合において非対称両刃であってもよいが、製造容易性の観点からは、対称両刃であることが好ましい。
切断刃20の刃部21は、角度(刃角)2θで交差する第一刃面23および第二刃面24と、第一刃面23と第二刃面24との交差角部よりなる刃先25とを備えている。そして、刃先25は、図2の紙面に直交する方向に、スライスされる樹脂ブロック10の幅(図1に示す例では紙面に直交する方向の寸法)以上の長さで延在している。
ここで、刃角2θは、10°以上であることが好ましく、15°以上であることがより好ましく、40°以下であることが好ましく、25°以下であることがより好ましい。刃角2θが上記下限値以上であれば、切断刃20の製造が容易になると共に切断刃20の強度を十分に確保できる。また、刃角2θが上記上限値以下であれば、得られる樹脂シートの厚さの均一性を向上させることができる。
そして、切断刃20の強度および製造容易性を十分に確保する観点からは、刃部21の最大厚みDは、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。更に、得られる熱伝導シートの厚さの均一性を向上させる観点、および切断刃の重量の増加を抑制して切断刃のハンドリング性を向上させる観点からは、刃部21の最大厚みDは、15mm以下であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることが更に好ましい。
また、切断刃20の平部22は、形状が平板状であり、第一刃面23の刃先25側とは反対側(図2では上側)の端縁と交差する第一平面26と、第二刃面24の刃先25側とは反対側の端縁と交差する第二平面27とを備えている。
<スライス>
そして、熱伝導シートの製造方法において、切断刃を用いた樹脂ブロックのスライスは、平部の樹脂ブロック残部側の表面と、樹脂ブロック残部のスライス面との為す角度が、平部の表面がスライス面よりもスライス片(熱伝導シート)側に位置する場合を正として0°超となるように行うことを必要とする。
具体的には、例えば図1(a)〜(c)に示すように、切断刃20を用いた樹脂ブロック10のスライスは、平部22の樹脂ブロック残部40側(図1では右側)の表面である第一平面26と、樹脂ブロック残部40のスライス面41との為す角度αが、第一平面26がスライス面41よりも熱伝導シート30側(図1(b)では左側)に位置する場合を正として、0°超となるように行うことを必要とする。このように、樹脂ブロック10をスライスする際の切断刃20の姿勢を、角度αが0°超となるような姿勢にすれば、スライス中に第一平面26が樹脂ブロック残部40と接触して樹脂ブロック残部40を図1(a)〜(c)に示す例では右側に押圧するのを防止することができる。従って、第一平面26による樹脂ブロック残部40の押圧によってスライスの終端側(図1(a)〜(c)に示す例では下側)においてスライスの始端側(図1(a)〜(c)に示す例では上側)よりも熱伝導シート30の厚さが薄くなるのを防止し、厚さの均一性に優れる熱伝導シート30を得ることができる。
なお、角度αは、通常、90°−2θ未満であり、5°以上であることが好ましく、7.5°以上であることがより好ましく、20°以下であることが好ましく、12.5°以下であることがより好ましい。角度αが上記範囲内であれば、樹脂ブロック10を良好にスライスし、得られる熱伝導シート30の厚さの均一性を向上させることができる。
ここで、図1(a)〜(c)に示すように第一刃面23が第二刃面24よりも樹脂ブロック残部40側に位置する姿勢の切断刃20で樹脂ブロック10をスライスする場合、樹脂ブロック10を良好にスライスし、得られる熱伝導シート30の厚さの均一性を更に向上させる観点からは、切断刃20の姿勢は、第一刃面23が樹脂ブロック残部40のスライス面41と平行になるような姿勢であることが好ましい。即ち、シート11の積層体よりなる樹脂ブロック10を積層方向(図1(a)〜(c)に示す例では上下方向)にスライスする場合、切断刃20の姿勢は、第一刃面23が積層方向(スライス方向)に沿って延在する姿勢にすることが好ましい。
なお、切断刃20として刃角2θの対称両刃を使用する場合、切断刃20の姿勢を第一刃面23が樹脂ブロック残部40のスライス面41と平行になるような姿勢にすると、第一平面26とスライス面41との為す角度αの大きさはθになる。
そして、スライス時の第一刃面23の向きを、樹脂ブロック残部40のスライス面41と平行な向きにする場合、第一刃面23の長さLは、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、70mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが更に好ましく、15mm以下であることが特に好ましい。長さLが上記下限値以上であれば、切断刃20の製造が容易になる。また、長さLが上記上限値以下であれば、スライス時に樹脂ブロック残部40のスライス面41と接触する第一刃面23の面積が増加するのを抑制して、得られる熱伝導シートの厚さの均一性を向上させることができる。
なお、切断刃20において、第一刃面23の長さLは、通常、第一平面26の長さよりも短い。
ここで、熱伝導シートの製造方法において、上述した切断刃を用いた樹脂ブロックのスライスは、特に限定されることなく、樹脂ブロックに対して圧力を負荷しながら行うことが好ましく、0.1MPa以上1.0MPa以下の圧力を負荷しながら行うことがより好ましい。
また、樹脂ブロックを容易にスライスする観点からは、スライスする際の樹脂ブロックの温度は、−20℃以上30℃以下とすることが好ましい。
更に、樹脂ブロックのスライス速度は、特に限定されることなく、50mm/秒以上とすることが好ましく、100mm/秒以上とすることがより好ましく、200mm/秒以上とすることが更に好ましい。スライス速度を上記下限値以上にすれば、熱伝導シートの生産性を高めることができると共に、得られる熱伝導シートの厚さの均一性を更に向上させることができる。
なお、樹脂ブロックのスライス速度は、通常、600mm/秒以下である。スライス速度を上記上限値以下にすれば、切断刃の移動を容易に制御することができると共に、スライス時の衝撃によって樹脂ブロックを押してしまうのを防止することができる。
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分分率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分分率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率は、それぞれ以下の方法を使用して測定および評価した。なお、黒鉛分率(vol%)は、膨張化黒鉛の質量(重量)を比重で割って換算した体積に基づき算出した体積分率である。
<第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分分率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分分率(fnn)>
測定対象物である熱伝導シートについて、F核パルス法NMR(Bruker社製、Minispec mq20)を用い、ハーンエコー法によって、観測核19F(共鳴周波数19MHz)および測定温度150℃という条件で、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分分率(fnn)を求めた。得られた結果を表1に示す。
具体的には、F核パルス法NMR(Bruker社製、Minispec mq20)を用いたハーンエコー法による測定によって得られた緩和曲線を、下記式(1)で表される曲線に重ね合わせる(フィッティングする)ことにより、測定によって得られた緩和曲線から、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分分率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、および、第2成分の成分分率(fnn)を算出した。なお、フィッティングをどこまで行うかにより項の数が変化する(下記式(1)では項の数は3)。
なお、下記式(1)において、第1スピン−スピン緩和時間(T21)は、熱伝導シートに含まれるフッ素樹脂の分子運動性(F核)と相関がある。
A(t)=α×exp[−(t/T21]+β×exp[−(t/T22]+γ×exp[−(t/T23
・・・式(1)
t:取り込み時間(単位:μ秒)
A(t):取り込み時間tにおける信号強度
21:第1スピン−スピン緩和時間(単位:μ秒)
22:第2スピン−スピン緩和時間(単位:μ秒)
23:第3スピン−スピン緩和時間(単位:μ秒)
w:ワイブル係数
α:第1成分の成分比率(fnn)(単位:%)
β:第2成分の成分比率(fnn)(単位:%)
γ:第3成分の成分比率(fnn)(単位:%)
<アスカーC硬度>
アスカーC硬度の測定は、日本ゴム協会規格(SRIS)のアスカーC法に準拠し、硬度計(高分子計器社製、製品名「ASKER CL−150LJ」)を使用して温度25℃で行った。
具体的には、得られた熱伝導シートを幅25mm×長さ50mm×厚さ0.1mmの大きさに切り取り、90枚重ね合わせることにより試験片を得た。得られた試験片を温度25℃に保たれた恒温室内に48時間以上静置することにより、試験体としての熱伝導シート層を得た。次に、指針が95〜98となるようにダンパー高さを調整し、熱伝導シート層とダンパーとを衝突させた。当該衝突から60秒後の熱伝導シート層のアスカーC硬度を、硬度計(高分子計器社製、商品名「ASKER CL−150LJ」)を用いて2回測定し、測定結果の平均値を採用した。得られた結果を表1に示す。
<シート厚み>
膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID−C112XBS」)を用いて、熱伝導シートの略中心点および四隅(四角)の計五点における厚みを測定し、測定した厚みの平均値(μm)を求めて、求めた平均値をシート厚みとした。得られた結果を表1に示す。
<熱伝導率>
熱伝導シートについて、厚み方向の熱拡散率α(m/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)、および比重ρ(g/m)を、それぞれ、以下の方法で測定した。得られた結果を表1に示す。
[厚み方向の熱拡散率α]
熱拡散・熱伝導率測定装置(株式会社アイフェイズ製、製品名「アイフェイズ・モバイル1u」)を使用して、ISO22007−3の規定に基づき測定した。
[定圧比熱Cp]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下、25℃における比熱を測定した。
[比重ρ(密度)]
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER−H」)を用いて測定した。
そして、各測定値を、下記式(I):
λ=α×Cp×ρ・・・(I)
に代入し、25℃における熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率λ(W/m・K)を求めた。
<熱抵抗値およびシート厚み減少率>
熱伝導シートの熱抵抗値は、熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「樹脂材料熱抵抗測定装置」)を用いて測定した。ここで、1cm角の略正方形に切り出した熱伝導シートを試料とし、試料温度50℃において、0.1MPa、0.3MPa及び0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値(℃/W)およびシート厚み(単位:mm)を測定した。熱抵抗値が小さいほど熱伝導シートが熱伝導性に優れ、例えば、発熱体と放熱体との間に介在させた際の放熱特性に優れていることを示す。
また、0.9MPaで加圧した際のシート厚みを0.1MPaで加圧した際のシート厚みで除した値を、1から引いた値をシート厚み減少率とした。得られた結果を表1に示す。
(実施例1)
<組成物の調製>
難燃性樹脂としての常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」)70部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」)30部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)150部と、分散剤(高分子量コポリマーのアルキルアンモニウム塩、ビックケミー社製「BYK−9076」)7.5部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V−10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
なお、「常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂」および「常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂」は、いずれも、下記構造式(1)で表されるビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VdF−HFP)であって、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンの比率はモル比で78/22である。
−(CHCF−(CFCFCF−・・・構造式(1)
但し、mは10以上50以下の整数であり、nは10以上100以下の整数であり、構造式(1)で表される重合体はブロック共重合体である。
<プレ熱伝導シートの形成>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙1000μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.8mmのプレ熱伝導シートを得た。
<積層体の形成>
続いて、得られたプレ熱伝導シートを縦150mm×横150mm×厚み0.8mmに裁断し、プレ熱伝導シートの厚み方向に188枚積層し、更に、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約150mmの積層体を得た。
<熱伝導シートの形成>
その後、スライスに必要な長さを残して、得られた積層体の上面の全体を金属板で押え、積層方向に(即ち、上から)0.1MPaの圧力をかけて、積層体を固定した。なお、積層体の側面、背面の固定は行わなかった。このとき、積層体の温度は25℃であった。
次いで、サーボプレス機(放電精密加工研究所製)のプレス部分に、図2に示す形状の切断刃20(両刃、刃角2θ:20°、第一刃面23の長さL:20.0mm、刃部の最大厚みD:3.5mm、材質:超鋼、ロックウェル硬度:91.5、刃面のシリコン加工:なし、全長:200mm、第一平面26の長さ:27mm)を取り付け、スライス速度200mm/秒、スライス幅100μmの条件で、積層体の積層方向(図1(a)における矢印方向)にスライスして、縦150mm×横150mm×厚み0.10mmの熱伝導シート30を得た。なお、スライス時の切断刃20の姿勢は、図1(b)に示す角度αが10°になり、第1刃面23の延在方向が積層体10のスライス面41と平行な方向になる姿勢とした。
<形成された熱伝導シートの測定乃至評価>
形成された熱伝導シートに対して、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、およびシート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に表す。
(実施例2)
実施例1において、膨張化黒鉛の配合量を150部から130部に変更し、且つ、分散剤の配合量を7.5部から6.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例1と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)150部を用いる代わりに、膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC100」、体積平均粒子径:190μm)50部を用い、且つ、分散剤の配合量を7.5部から2.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例1と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例3において、分散剤(高分子量コポリマーのアルキルアンモニウム塩、ビックケミー社製「BYK−9076」)2.5部の代わりに、可塑剤としてのセバシン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名「DOS」)2.5部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例3と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1において、膨張化黒鉛の配合量を150部から90部に変更し、且つ、分散剤の配合量を7.5部から2.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例1と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1において、膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)150部を用いる代わりに、膨張化黒鉛を(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC1500」、体積平均粒子径:7μm)90部に変更し、且つ、分散剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例1と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1において、膨張化黒鉛を150部から90部に変更し、且つ、分散剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例1と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1において、シート厚みを100μmから250μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例1と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1において、シート厚みを100μmから300μmに変更したこと、且つ、分散剤の配合量を7.5部から5.0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例1と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例7において、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」)70部と常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」)30部とを用いる代わりに、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」)100部を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例7と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(実施例11)
実施例5において、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」)70部と常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」)30部と膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)90部とを用いる代わりに、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」)100部と膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)50部とを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例5と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)150部を用いる代わりに、膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC100」、体積平均粒子径:190μm)50部と、繊維状炭素材料としての下記のようにして得られた繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体0.5部とを用い、且つ、分散剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例1と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
<繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体の調製>
<<分散液の調製>>
繊維状の炭素ナノ構造体(SGCNT、日本ゼオン社製、比表面積:600m/g)を400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。次に、湿式ジェットミル(株式会社常光製、製品名「JN−20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状の炭素ナノ構造体をメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の分散液を得た。
<<溶媒の除去>>
その後、上述で得られた分散液をキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、繊維状炭素材料としての、シート状の繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体を得た。
(比較例2)
比較例1において、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」)70部と常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」)30部と繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体0.5部とを用いる代わりに、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」)100部と繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体0.1部とを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、比較例1と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例7において、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」)70部と常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」)30部とを用いる代わりに、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」)100部を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
さらに、実施例7と同様にして、第1スピン−スピン緩和時間(T21)、第1成分の成分比率(fnn)、第2スピン−スピン緩和時間(T22)、第2成分の成分比率(fnn)、アスカーC硬度、シート厚み、熱伝導率、熱抵抗値、および、シート厚み減少率を測定乃至評価した。結果を表1に示す。
Figure 2021004282
表1より、熱伝導シートが、フッ素樹脂と熱伝導性充填材とを含有し、シート厚みが300μm以下であり、且つ、所定の第1成分の成分分率(fnn)が55%以上70%以下であれば、熱伝導シートの厚みが薄い場合においても、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができることが分かる。一方、表1より、所定の成分の成分分率(fnn)が55%以上70%以下でない比較例1〜3では、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができないことが分かる。
なお、比較例2では、アスカーC硬度が42で柔らかいのにもかかわらず、シート厚み減少率が7%と小さい。これは、含有される黒鉛の粒子径サイズが190μmと大きいことによるものと推定される。
一方、実施例4では、含有される黒鉛の粒子径サイズが190μmと大きくても、シート厚み減少率が14%と大きい。これは、熱伝導シートに可塑剤が含有されることによるものと推定される。
本発明によれば、熱伝導シートの厚みが薄い場合においても、所定の圧力をかけた際の厚み減少率を大きくすることができる熱伝導シートを製造することができる。
10 樹脂ブロック
11 シート
20 切断刃(両刃)
21 刃部
22 平部
23 第一刃面
24 第二刃面
25 刃先
26 第一平面
27 第二平面
30 熱伝導シート
40 樹脂ブロック残部
41 スライス面

Claims (6)

  1. フッ素樹脂と熱伝導性充填剤とを含有し、
    シート厚みが300μm以下であり、
    F核パルス法NMRを用いてハーンエコー法により150℃で測定され、30μ秒以上100μ秒以下の第1スピン−スピン緩和時間(T21)を有する第1成分の成分分率(fnn)が、55%以上70%以下である、熱伝導シート。
  2. 熱伝導率が12W/m・K以上である、請求項1に記載の熱伝導シート。
  3. シート厚み減少率が8%以上50%以下である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
  4. アスカーC硬度が45以上90以下である、請求項1から3のいずれかに記載の熱伝導シート。
  5. 前記フッ素樹脂を30質量%以上70質量%以下含有し、
    前記熱伝導性充填材を30質量%以上60質量%以下含有する、請求項1から4のいずれかに記載の熱伝導シート。
  6. F核パルス法NMRを用いてハーンエコー法により150℃で測定され、10μ秒以上30μ秒以下の第2スピン−スピン緩和時間(T22)を有する第2成分の成分分率(fnn)が、25%以上50%以下である、請求項1から5のいずれかに記載の熱伝導シート。
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