図1は、本実施形態で使用するインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8(プラテン9)の上流側および下流側に配され、搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、排出モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8(プラテン9)の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
記録装置1には、上記駆動ローラを駆動するための複数のモータが設けられており、上記駆動ローラのそれぞれは、複数のモータのうちの1つに接続されている。モータと駆動ローラの対応関係については後に詳しく説明する。
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
また、ROM107に記憶されるプログラムや各種パラメータの情報の一例は、記録媒体の厚みや、記録媒体が複数枚積載された際の空気等による積載厚み誤差や、記録媒体の特徴に応じた印字制御情報などが、記録媒体の種別ごとに記憶されているなどである。例えば、プリントエンジンユニット200の搬送制御部207では、このような記録媒体の種別ごとの情報を、残量検知制御に利用する。図21は、例に挙げた記録媒体の種別ごとに記憶される情報をテーブルとして示したものである。図21のテーブルはROM107に記憶され、テーブルの情報はユーザにより追加・削除することが出来る。
図21の記録媒体情報テーブル(シート情報テーブル)2100は、記録媒体の種別2101と、記録媒体の厚み情報2102と、許容Duty情報2103と、積載誤差情報2104とが対応づけられている。
ここで、厚み情報2102は、記録媒体の種別ごとの厚みである。許容Duty情報2103は記録媒体の特徴に応じた印字制御情報の一例である。例えば、記録媒体種別ごとに許容されるインク吐出量の上限値である。積載誤差情報2104は、記録媒体を複数枚積載した際に発生しうる積載誤差の情報である。例えば、積載媒体間の空気の層や、湿度による膨張や収縮などの情報である。
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi−Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。さらに、記録装置1におけるすべてのカセットに対し、セットした記録媒体Sの種別をカセットごとに設定することができる。
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。
搬送制御部207は、記録媒体Sの搬送状態を検知する検知部212と、複数の駆動ローラを駆動する駆動部211とに接続しており、検知部212から得られる検知結果に基づいて駆動部211を用いて記録媒体Sの搬送を制御する。検知部212は、記録媒体Sの有無を検知する検知部材20と駆動ローラの回転量を検出するエンコーダ21を有している。搬送制御部207によって記録媒体Sが搬送される過程で、プリントコントローラ202の指示に従って、記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、記録ヘッド8を図3に示す記録位置に移動する。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6Aおよび第2給送ユニット6Bのいずれかを駆動し、記録媒体Sを給送する。
図4(a)〜(c)は、第1カセット5Aに収容されているA4サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第1カセット5A内の1番上に積載された記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。図4(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
記録領域Pでは、記録ヘッド8に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bに案内されながら、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド18に沿って記録装置1の鉛直方向上方へ搬送される。図4(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pの位置から、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
記録媒体Sは、鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。図4(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。排出された記録媒体Sは、記録ヘッド8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。
図5(a)〜(c)は、第2カセット5Bに収容されているA3サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第2カセット5B内の1番上に積載された記録媒体Sは、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
図5(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。第2給送ユニット6Bに給送されて記録領域Pに到達するまでの搬送経路には、複数の搬送ローラ7とピンチローラ7aおよびインナーガイド19が配されることで、記録媒体SはS字上に湾曲されてプラテン9まで搬送される。
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示したA4サイズの記録媒体Sの場合と同様である。図5(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。図5(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
図6(a)〜(d)は、A4サイズの記録媒体Sの裏面(第2面)に対して記録動作(両面記録)を行う場合の搬送経路を示す。両面記録を行う場合、第1面(表面)を記録した後に第2面(裏面)に記録動作を行う。第1面を記録する際の搬送工程は図4(a)〜(c)と同様であるので、ここでは説明を省略する。以後、図4(c)以後の搬送工程について説明する。
記録ヘッド8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へ搬送される。図6(a)は、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。
その後記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pに搬送される。この際、記録ヘッド8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。図6(b)は、第2面の記録動作のために、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示した第1面記録の場合と同様である。図6(c)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。図6(d)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
記録媒体Sの給送枚数の合計値は、カセット毎に給送枚数総数として、図4の搬送制御部207に記録される。
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。図1でも説明したように、本実施形態のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
図7は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から図7における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
一方、記録ヘッド8を図3に示す記録位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
図8は、記録装置1における複数のモータと駆動ローラの対応関係を示す図である。第1給送モータ22は、第1カセット5Aから記録媒体Sを給送するための第1給送ユニット6Aを駆動する。第2給送モータ23は、第2カセット5Bから記録媒体Sを給送するための第2給送ユニット6Bを駆動する。第1搬送モータ24は、第1給送ユニット6Aにより給送された記録媒体Sを最初に搬送する第1中間ローラ71Aを駆動する。第2搬送モータ25は、第2給送ユニット6Bにより給送された記録媒体Sを最初に搬送する第2中間ローラ71Bを駆動する。
主搬送モータ26は、プラテン9の上流側に配され主に記録中の記録媒体Sを搬送する主搬送ローラ70を駆動する。また主搬送モータ26は、プラテン9の下流側に配され主搬送ローラ70により搬送される記録媒体Sを更に下流側に搬送する2つの搬送ローラ7を駆動する。
第3搬送モータ27は、第1面に記録が行われた記録媒体Sを下方に搬送する2つの搬送ローラ7を駆動する。第3搬送モータ27は、インナーガイド19に沿って配された2つの搬送ローラ7を駆動する。2つの搬送ローラ7は、第2カセット5Bから給送され第2中間ローラ71Bによって搬送された記録媒体S、または第1面が記録されて表裏が反転された記録媒体Sを記録ヘッド8に向けて搬送する。
第4搬送モータ28は、記録動作が行われた後の記録媒体Sを上方または下方に搬送する2つの搬送ローラ7を駆動する。排出モータ29は、記録が行われた記録媒体Sを排出トレイ13へ排出する排出ローラ12を駆動する。このように、2つの給送モータ22、23、5つの搬送モータ24〜28、および排出モータ29のそれぞれは、1つ以上の駆動ローラに対応づけられている。
一方、搬送経路に沿った8箇所には、記録媒体Sの有無を検知するための検知部材20が配されている。個々の検知部材20は搬送経路を挟んで配置されたセンサとミラーによって構成され、搬送経路の一方側に発光部と受光部を有するセンサが配置され、搬送経路の他方側であってセンサと対向する位置にミラーが配置される。センサの発光部から発せられた光がミラーで反射し受光部がこれを検知したか否かによって、記録媒体Sの有無すなわち先端または後端の通過を判別する。
搬送制御部207は、複数の検知部材20それぞれの検知結果および各駆動ローラの回転量を検知するエンコーダの出力値に基づいて、給送モータ22、23、搬送モータ24〜28、および排出モータ29を個別に駆動し、装置全体の搬送を制御する。
図9は、記録媒体(カットシート)Sのカセット5および給送ユニット6の斜視図である。図1の第1カセット5Aと第2カセット5Bは同様に構成されているため、これらをまとめてカセット5として説明する。また、図1の第1給送ユニット6Aと第2給送ユニット6Bも同様に構成されているため、これらをまとめて給送ユニット6として説明する。
カセット5は、図1の筐体4から−y方向に引き出されて記録媒体Sが積載されてから、+y方向に押し込まれることによって筐体4にセットされる。給送ユニット6におけるピックアップローラ61は、カセット5に積載された記録媒体Sのうちの最上位置の1枚をピックアップして、それをx方向に沿う給送方向に送り出す。カセット5は、多量の記録媒体Sが積載できるように、記録媒体Sを支持する中板(支持部材)31と、それを昇降させる昇降レバー(昇降手段)41と、が備えられている。中板31は平面が略T字状に形成されており、その中央部31Aはx方向に延在し、その先端部31Bは、中央部31Aの先端から+y方向および−y方向に延在する。中央部31Aの基端は、カセット5の底部51の定位置に、矢印A1,A2の昇降方向に回動可能に取り付けられている。
図10から図13は、中板31を昇降させる駆動機構の説明図である。
中板31の下側に位置する昇降レバー41は、軸線O1を中心として図11中の矢印C,B2方向に回動可能なシャフト(回動軸)42の一端部に取り付けられている。シャフト42は、y方向に延在し、かつカセット5の底部51の定位置に矢印B1,B2方向に回動可能に取り付けられている。シャフト42を矢印B1,B2方向に回動させることにより、図14のように、昇降レバー41を介して中板31が矢印A1,A2方向に昇降される。
シャフト42の他端部には扇形の回動体43が取り付けられており、その回動体43の外側(y方向側)には、駆動歯車44と噛合する扇形の従動歯車45が設けられている。駆動歯車44はギア列を介してモータ46に連結されており、モータ46の回転方向に応じて、駆動歯車44および従動歯車45を介して、シャフト42が昇降レバー41と共に矢印B1,B2方向に回動される。駆動歯車44と、その駆動部(モータ46およびギア列を含む)を収容するケース47は、筐体4の定位置に備えられている。カセット5が+y方向に押し込まれて記録装置の本体の内部位置にセットされたときに、従動歯車45が駆動歯車44と噛合して、モータ46と回動体43との間の動力の伝達系が形成される。また、カセット5が−y方向に引き出されて記録装置の本体の外部位置に移動されときには、従動歯車45が駆動歯車44から離れて、モータ46と回動体43との間の動力の伝達系は形成されない。したがってカセット5は、モータ46およびギア列を含む駆動部の影響を受けることなく、小さい操作力によって移動可能である。
ケース47には、第1のレバー48の中間部が、シャフト42と同一の軸線O1を中心として矢印B1,B2方向に回動自在に取り付けられている。レバー48は、その一端部と、ケース47の定位置と、の間に備わるバネ49によって矢印B2方向に付勢されており、矢印B2おける回動限界位置は、不図示のストッパによって図14(a)の位置P30に規制される。レバー48の一端部には遮光板50が取り付けられ、またレバー48の他端部には、回動体43の溝部43A内に位置する連結部48Aが設けられている。これらの溝部43Aと連結部48Aとによって、後述するように、レバー48が回動体43と関連的に回動する。ケース47の定位置には、中板31の上昇位置を検出するための位置検出用のセンサとして、受光部と発光部とを含む第1および第2のセンサ(光学センサを含む検出部)81,82が取り付けられている。遮光板50は、センサ81,82のそれぞれにおける受光部と発光部との間の光路を通る軌跡を描くように、レバー48の回動に伴って移動する。これらのセンサ81、82により中板31の上昇位置が段階的に検出される。
図15のように、給送ユニット6の定位置には、第2のレバー90の中間部が、x方向の軸線O2を中心として矢印C1,C2方向に回動自在に取り付けられている。レバー90の一端部には、カセット5に積載れた記録媒体Sの上面に接する接触部90Aが設けられ、レバー90の一端部には遮光板91が取り付けられている。給送ユニット6の定位置には、中板31上の記録媒体Sが所定の給送位置(すなわち、記録媒体Sを給送可能な第1の位置)に上昇したことを検出するシート検出用のセンサとして、受光部と発光部とを含む第3のセンサ(光学センサ)83が取り付けられている。言い換えると、中板31上の記録媒体Sが所定の給送位置まで上昇したことを検出できていない場合は、記録媒体Sを給送不可能な位置(第2の位置)であるといえる。位置遮光板50は、そのセンサ83における受光部と発光部との間の光路を通る軌跡を描くように、レバー90の回動に伴って移動する。レバー90は、その自重もしくはバネによって、図15のように矢印C1方向に付勢されており、接触部90Aがカセット5に積載された記録媒体Sの上面に接することにより矢印C2方向に回動される。
なお、前記所定の給送位置の位置情報は、図2の搬送制御部207に記憶されている。
図14(a)は、昇降レバー41が待機位置(矢印B2方向の回動限界位置)P10にあるときの待機状態を表す。この待機状態において、記録媒体Sが搭載された中板31は下降位置(矢印A2方向の回動限界位置)P20にあり、レバー48は待機位置(矢印B2方向の回動限界位置)P30にある。このとき、第1のセンサ81は、その受光部と発光部との間の遮光板50が位置するためOFFとなり、第2のセンサ82は、その受光部と発光部との間に遮光板50が位置しないためONとなる。また、このような待機状態においては、中板31上の記録媒体Sがレバー90に接触しないため、レバー90は、図15(a)のような待機位置(矢印C1方向に回動限界位置)にある。このとき、第3のセンサ83は、その受光部と発光部との間の遮光板91が位置するためOFFとなる。
このように、図14(a)の待機状態においては、第1、第2、第3のセンサ81,82,83のそれぞれがOFF,ON,OFFとなる。
このような待機状態において、図2のメインコントローラ101またはプリントコントローラ202は、図14(b)のように中板31を矢印A1方向に上昇させる。すなわち、モータ46を一方向に回転させて、回動体43およびシャフト42と共に昇降レバー41を矢印B1方向に回動させ、その昇降レバー41の回動に応じて中板31を矢印A1方向に上昇させる。そして、第2のセンサ82がOFFとなったときに、中板31の上昇を停止させる。このように待機状態にあるときに中板31を上昇させ停止に至る動作を、中板初期上昇とする。
第3のセンサ83は、レバー90が中板31上の記録媒体Sに接触して、図15(b)のように矢印C2方向の所定位置P41まで回動したときに、受光部と発光部との間から遮光板91が離れることよりONとなる。第3のセンサ83がONとなったときは、中板31に搭載された最上位の記録媒体Sが存在することを示している。
また、このように中板31が矢印A1方向に上昇し、第2のセンサ82がOFFとなった状態であっても、カセット5に積載された記録媒体Sが給送されることにより記録媒体Sの積載量が減少することで、第2のセンサ82が再びONとなることがある。その状態であっても、待機状態と同様に、図2のメインコントローラ101またはプリントコントローラ202は、図14(b)のように中板31を矢印A1方向に上昇させる。すなわち、モータ46を一方向に回転させて、回動体43およびシャフト42と共に昇降レバー41を矢印B1方向に回動させ、その昇降レバー41の回動に応じて中板31を矢印A1方向に上昇させる。そして、第2のセンサ82がOFFとなったときに、中板31の上昇を停止させる。このように待機状態以外の状態にあるときに中板31を上昇させ停止に至る動作を、中板通常上昇とする。
第2のセンサ82は、図14(d)のように、レバー48が矢印B1方向の位置P31まで回動したときに、受光部と発光部との間に遮光板50が位置することによりOFFとなる。図13における回動体43の溝部43Aとレバー48の連結部48Aは、回動体43が図14(a)の待機状態から矢印B1方向に所定量以上したときから干渉し合う。これにより、回動体43が矢印B1方向に所定量以上することを条件として、図14(b)、(c)、(d)のように、回動体43と共にレバー48が矢印B1方向に回動する。第2のセンサ82がOFFとなるとき、かつ第3のセンサ83がONを示しているときは、中板31に記録媒体Sが存在し、中板31に搭載された最上位の記録媒体Sがピックアップローラ61によって搬送可能となるときである。このように、中板31上の記録媒体Sがピックアップローラ61によって搬送可能となったときに、第2のセンサ82がONとなって、中板31の上昇が停止する。
このような中板31の上昇から停止までの、モータ46の回転の実績は、図2の搬送制御部201に記録される。図14(a)の待機状態から上昇した場合には初期上昇量として記録され、それ以外の状態から上昇した場合には通常上昇量として記録される。さらに、初期上昇量と通常上昇量の和が、積算上昇量として記録される。通常上昇量がN回記録された場合、積載上昇量は、1回目からN回目まですべての通常上昇量が、各回記録されるたびに足しこまれる。すなわち、初期上昇量と、N回の通常上昇量の和が、積算上昇量として記録される。
中板31の状態が図14(a)の待機状態になった際に、初期上昇量および通常上昇量および積算上昇量は、記録された情報を消去する。また、通常上昇量は、第N回目の上昇で記録されるが、第N+1回目の上昇が行われた際には、第N回目で記録された情報を消去し、第N+1回目の上昇量を通常上昇量として新規に記録する。
中板初期上昇および中板通常上昇が実施された際、カセット毎に記録される記録媒体Sの給送枚数の合計、すなわち給送枚数総数として記録した情報を消去し、消去後の給送枚数を一枚目から再度記録する。
中板31上の記録媒体Sがピックアップローラ61によって搬送可能となって、第2のセンサ82がOFFとなったときの初期上昇量および通常上昇量および積算上昇量と、給送枚数総数に基づいて、中板31における記録媒体Sの残枚数を検知する。
図14(d)は、前述したように、中板31の上昇中に第3のセンサ83がONとならずに、第2のセンサ82がOFFとなった状態を表す。この状態においては、第1、第2、第3のセンサ81,82,83のそれぞれがOFF,ON,OFFとなる。このときは、図17のように、中板31上に記録媒体Sの残量が無い(すなわちシートが存在しない)と判定することができる。
図16は、図14(a)のような初期状態から中板初期上昇を実施した際、その時点での中板31上の記録媒体Sの積載枚数(積載された枚数)を算出する処理を示すフローチャートである。図16のS1601〜S1608での各ステップの処理は、例えば、図2で示すメインコントローラ101がROM107に記憶されたプログラムをRAM106に読みだして実行することで実現される。
ステップS1601において、メインコントローラ101は、中板初期上昇を実施する。つまり、メインコントローラ101は、図14(a)で示す待機状態にあるときに中板31を上昇させ、第2のセンサ82がOFFとなったときに、中板31の上昇を停止させる。
ステップS1602において、メインコントローラ101は、図14(a)の待機状態から上昇した場合の中板31の上昇量である初期上昇量をROM107に記憶する。
ステップS1603において、メインコントローラ101は、第3のセンサ83がONまたはOFFであるかを判定する。メインコントローラ101は、第3のセンサ83がONである場合に、ステップS1604の処理を実行する。一方で、メインコントローラ101は、第3のセンサ83がOFFであれば、本フローを終了する。つまり、メインコントローラ101は、中板初期上昇を実施後に第3のセンサ83の検知結果がOFF、すなわちカセットに記録媒体Sが存在しなかった場合は、以下の算出処理を行わない。
ステップS1604において、メインコントローラ101は、取得した初期上昇量から中板の上昇角度を算出する。中板の上昇角度については図18を用いて後述する。
ステップS1605において、メインコントローラ101は、中板初期上昇を実施した際の、中板31の初期上昇量と、所定の給送位置に基づき、中板31上に積載されている記録媒体Sの積載高さを算出する。記録媒体Sの積載枚数の算出方法については図18を用いて後述する。
ステップS1606において、メインコントローラ101は、ユーザの入力に基づいて設定された記録媒体Sの種別をROM107から取得する。ここで、ユーザは、カセット5にセットされる記録媒体Sの種別を、あらかじめ操作パネル104への入力により設定することができる。そして、操作パネル104への入力により設定された記録媒体Sの種別は、ROM107に記録されている。
ステップS1607において、メインコントローラ101は、設定された記録媒体Sの種別と記録媒体情報テーブル2100を参照して、対応する厚み情報2102を取得する。当該ステップにより、メインコントローラ101は、ユーザの入力した記録媒体Sの種別に応じた記録媒体Sの1枚当たりの理論上の厚みを取得することができる。さらに、メインコントローラ101は、設定された記録媒体Sの種別と記録媒体情報テーブル2100を参照して、積載誤差情報2104を取得してもよい。
ステップS1608において、メインコントローラ101は、ステップS1605で算出した記録媒体Sの積載高さと、ステップS1607で取得した記録媒体Sの1枚当たりの厚み情報に基づき、中板31上に積載されている記録媒体Sの積載枚数を算出する。メインコントローラ101は、算出した積載枚数を中板31上に積載される積載枚数の初期値としてROM107に記録する。
以上、上述の各ステップにおいて、メインコントローラ101は、第3のセンサ83が記録媒体Sを検出するまで所定の上昇量だけ中板31を上昇させている。そして、メインコントローラ101は、記録媒体Sを支持する中板31の上昇量に基づいて、中板31上にある記録媒体Sの積載高さを算出している。その後、メインコントローラ101は、ユーザが入力した記録媒体Sの種別と記録媒体情報テーブル2100から厚み情報2102(記録媒体Sの1枚当たりの理論上の厚み)を取得している。これらの情報に基づき、メインコントローラ101は、記録媒体Sの積載高さと記録媒体Sの1枚当たりの理論上の厚みから中板31上にある記録媒体Sの枚数を取得することができる。中板31の特定の位置(給送不可能な位置)から第3のセンサ83が記録媒体Sを検出するまでの中板31の上昇量を用いるため、記録媒体Sの1枚当たりの厚みに依存せず高い精度で積載枚数を算出することができる。
図17のS1701〜S1712での各ステップの処理は、例えば、図2で示すメインコントローラ101がROM107に記憶されたプログラムをRAM106に読みだして実行することで実現される。図17は、記録媒体Sの積載枚数の算出処理を説明するためのフローチャートである。
ステップS1701において、メインコントローラ101は、中板通常上昇を実施する。つまり、メインコントローラ101は、待機状態にないときに中板31を上昇させ、第2のセンサ82がOFFとなったときに、中板31の上昇を停止させる。
ステップS1702において、メインコントローラ101は、通常上昇量をROM107に記憶する。
ステップS1703において、メインコントローラ101は、初期上昇量に通常上昇量を加算したものを積算上昇量として記録する。
ステップS1704において、メインコントローラ101は、第3のセンサ83がONまたはOFFであるかを判定する。メインコントローラ101は、メインコントローラ101は、第3のセンサ83がONである場合に、ステップS1705の処理を実行する。一方で、メインコントローラ101は、第3のセンサ83がOFFであれば、本フローを終了する。つまり、メインコントローラ101は、中板初期上昇を実施後に第3のセンサ83の検知結果がOFF、すなわちカセットに記録媒体Sが存在しなかった場合は、以下の算出処理を行わない。
ステップS1705において、メインコントローラ101は、取得した通常上昇量から中板の上昇角度を算出する。中板の上昇角度については図18を用いて後述する。
ステップS1706において、メインコントローラ101は、通常上昇角度と、給送位置から給送された記録媒体Sの総厚みを算出する。ここでの通常上昇角度は、中板31上のシートが給送位置から給送されることにより、最上面の記録媒体Sの位置が給送不可能な位置まで減少した場合に、中板31を給送可能な位置まで再度上昇させた場合の中板31の上昇量に相当する。言い換えると、通常上昇角度の上昇量は、給送された記録媒体Sの総厚みに相当する。なお、ここでは、通常上昇角度の上昇量を用いて給送された記録媒体Sの総厚みを算出しているがこれに限られるものではない。メインコントローラ101は、最上面の記録媒体Sの位置が給送可能な位置から給送不可能な位置まで減少した場合に、給送された記録媒体Sの総厚みを算出してもよい。
ステップS1707において、メインコントローラ101は、総給送枚数を取得する。ここでの給送枚数は、中板31上のシートが給送位置から給送されることにより、最上面のシートの位置が給送不可能な位置まで減少するまでに給送した記録媒体Sの枚数である。なお、上述したように、記録媒体Sの給送枚数の合計値は、カセット毎に給送枚数総数として、図2の搬送制御部207に記録されている。なお、記録媒体Sの給送枚数の合計値は、ROM107に記憶してもよい。
ステップS1708において、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの総厚みを算出した総給送枚数で除算する。
ステップS1709において、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの1枚当たりの厚みをROM107に記憶する。
ステップS1710において、メインコントローラ101は、取得した積算上昇量から中板の上昇角度を算出する。中板の上昇角度については図18を用いて後述する。
ステップS1711において、メインコントローラ101は、中板通常上昇を実施した際の中板上昇量と、所定の給送位置に基づき、中板31上に積載されている記録媒体Sの積載高さを算出する。記録媒体Sの積載枚数の算出方法については図18を用いて後述する。
ステップS1712において、メインコントローラ101は、記録媒体Sの積載高さを算出した記録媒体Sの1枚当たりの厚みで除算し、中板31に積載される記録媒体Sの枚数を算出する(枚数算出手段)。メインコントローラ101は、算出した積載枚数を中板31上に積載される積載枚数としてROM107に記録する。
以上、上述の各ステップによれば、シート給送装置(記録装置1)は、中板31上のシートの給送が不可能な位置から第3のセンサ83が記録媒体Sを検出するまで所定の上昇量だけ中板31を上昇させている。その後、シート給送装置は、給送可能な位置にある記録媒体Sを最上面の記録媒体Sの位置が給送不可能な位置まで減少するまで、積載された記録媒体Sを給送している。シート給送装置は、その後再度、第3のセンサ83が記録媒体Sを検出するまで中板31を上昇させる。シート給送装置は、この際の中板31の上昇量に基づいて、給送された記録媒体Sの1枚当たりの厚みを算出する。そして、シート給送装置は、記録媒体Sの1枚当たりの厚みで中板31上にある記録媒体Sの積載高さを除算することにより中板31上の記録媒体Sの枚数を算出する。中板31の上昇量に基づいて記録媒体Sの給送枚数を算出するため、高い精度で記録媒体Sの1枚当たりの厚みを算出できる。従って、シート給送装置は、中板31上の記録媒体Sの枚数を記録媒体Sの1枚当たりの厚みや給送枚数によらず高い精度で算出することができる。また、本実施形態によれば、メインコントローラ101は、給送した記録媒体Sの枚数と通常上昇角度から求められる中板31の上昇量に基づいて、給送した記録媒体Sの1枚当たりの厚みを算出している。なお、中板31は、図14の側面図に示されるように、カセット5の底面に対し斜めに上昇しているがこれに限られるものではない。例えば、記録装置1は、カセット5の底面に対し水平位置を保ちながら垂直に上昇してもよい。
次に、図18を用いて、記録媒体Sの積載枚数の算出方法の一例について説明する。図18(a)および(c)は、記録媒体が積載されたカセットの側面の図である。図上のカセットの底面95と、略図上の中板94、略図上の記録媒体Sの積載高さ92aまたは92bが示される。略図上の給送可能位置93は一定であり、底面95から給送可能位置93までの距離も一定である。交差点96は、底面95と中板94の交差する点である。
また、図18(b)および(d)は、積載高さ92aまたは92bを短辺とし、給送可能位置93と交差点96を結ぶ線を長辺とした直角三角形を図示したものである。長辺の長さ97は一定である。直角三角形の底辺は、給送可能位置93から底面95へ垂直に下された線と底面95との交差点と、交差点96とを結んだ線である。
また図18(b)および(d)は、給送可能位置93を結ぶ線と、底面95が成す角度θXを示す。ここで、角度θXは一定である。さらに、図18(a)および(b)における中板94の上昇角度はθa2、図18(c)および(d)における中板94の上昇角度はθb2として示される。中板94の上昇角度は0からθXの範囲内の任意の値を取る。直角三角形の鋭角は、角度θXから中板94の上昇角度を減算した角度である。中板94の上昇角度は、初期上昇量および積算上昇量として記録された情報から算出される。例えば、メインコントローラ101が、モータ46の最少分解能における駆動を実施した場合に、底面95と中板94とが交差点96を頂点として成す角度をROM107に記録する。そして、メインコントローラ101は、初期上昇量および積載上昇量の記録情報と、当該記録した角度に基づき、中板94の上昇角度を算出することができる。
次に、図16を用いて説明した積載枚数の初期値を算出する方法の一例を説明する。具体的には、中板初期上昇が実施されたのち図18(a)のような状態にあるときの積載枚数の算出方法を例に説明する。まず、メインコントローラ101は、図18(a)で示される積載用紙の高さ92aを算出する。これは、図18(b)で示される直角三角形の短辺の長さに相当する。これは余弦定理を用い、92a=(長辺の長さ97)*sin{90−(θX−θa2)}というように算出される。メインコントローラ101は、当該処理により算出された積載用紙の高さを用い、図16のステップによって、積載枚数を算出する。
なお、この一例のほか、メインコントローラ101は、余弦定理を用いた計算結果を予めROM107に記憶し、積載用紙の高さ92aの算出の際に参照する方法でもよい。その場合、余弦定理を用いた計算結果において、θX、θa2として示される角度情報は、中板31の上昇に使用されるモータ46の最少分解能における駆動を実施した場合に取りうる最小の角度を最小値とし、90度を最大値とする。
次に、図17を用いて説明した給送後の積載枚数を算出する方法の一例を説明する。具体的には、図18(a)のような状態から、中板94上に積載される記録媒体Sが給送されることにより、記録媒体Sの最上面が、給送可能位置93を下回ったとき、中板通常上昇が実施される。このように中板通常上昇が実施された結果、図18(c)のような状態となる。このときの、給送後の積載枚数の算出方法を例に説明する。
図18(a)の状態から図18(c)の状態へと移行する間に、記録媒体Sは給送される。この記録媒体Sの給送枚数は、ROM107に記録されている。給送された記録媒体Sの積載厚みは、給送前の積載高さ92aから給送後の積載高さ92bを減算した量と等しい。したがって、メインコントローラ101は、積載高さ92aおよび92bを算出し、減算することで、給送された記録媒体Sの積載厚みを算出できる。積載高さ92aの算出方法の例は、前述の数式で示した。積載高さ92bの算出方法の例も、同様に余弦定理を用い、92b=(長辺の長さ97)*sin{90−(θX−θb2)}というように算出される。
さらに、上述したように、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの積載厚みを、ROM107に記録された給送枚数で除算すると、給送された記録媒体Sの、1枚当たりの厚みを算出できる。さらに、メインコントローラ101は、図18(c)の状態での積載高さ92bを、給送された記録媒体Sの1枚当たりの厚みで除算することで、給送後積載枚数を算出する。
なお、この一例のほか、メインコントローラ101は、余弦定理を用いた計算結果を予めROM107に記憶し、積載高さ92bの算出の際に参照する方法でもよい。その場合、余弦定理を用いた計算結果において、θX、θb2として表現される角度情報は、中板31を上昇に使用されるモータ46の最少分解能における駆動を実施した場合に取りうる最小の角度を最小値とし、90度を最大値とする。
次に、図19を用いて、カセットに積載されている記録媒体Sの種別を特定するステップを表す。図19において、メインコントローラ101は、図17で示す各ステップにおいて、給送された記録媒体Sの厚みを取得していることを前提として記録媒体Sの種別を特定する。
ステップS1901において、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの1枚当たりの厚みを算出しているか判定する。
ステップS1902において、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの1枚当たりの厚みと、記録媒体情報テーブル2100の記録媒体Sの厚み情報2102を照合する。
ステップS1903において、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの1枚当たりの厚みと合致する記録媒体の種別が記録媒体情報テーブル2100に存在するか否かを判定する。
ステップS1904において、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの1枚当たりの厚みと合致する記録媒体Sの種別を、カセットに積載されている記録媒体Sと特定する。メインコントローラ101は、特定した記録媒体Sの種別をROM107に記録する。
以上、上述の各ステップにおいて、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの1枚当たりの厚みを用いて、カセットに積載されている記録媒体Sの種別を特定することができる。
次に、図20を用いて、操作パネル104よりユーザが設定した記録媒体Sの種別が適切か否かを、実測した記録媒体Sの種別を用いて判定するフローを説明する。
ステップS2001において、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの1枚当たりの厚みを算出しているか判定する。
ステップS2002において、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの1枚当たりの厚みと、操作パネル104よりユーザが設定した記録媒体Sの理論上の厚みを照合する。ユーザが設定した記録媒体Sにおける理論上の厚みは、記録媒体情報テーブル2100の記録媒体の種別2101と、記録媒体の厚み情報2102とを照合して参照する。
ステップS2003において、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの厚みと、厚み情報2102との差が閾値よりも大きいか否かを判定する。
ステップS2004において、メインコントローラ101は、給送された記録媒体Sの厚みと、厚み情報2102との差が閾値よりも大きい場合には、給送された記録媒体の厚みに応じた印刷制御を行う。ここで、当該処理の一例を説明する。メインコントローラ101は、記録ヘッド8による記録動作における印刷処理の制御を、実測した記録媒体種別に応じた変更する。具体的には、メインコントローラ101は、図21の許容Duty情報2103として示される記録媒体種別ごとのインク吐出量の上限値を給送された記録媒体の厚みに対応する種別合わせて対応してもよい。また、メインコントローラ101は、当該処理において、印刷処理を停止する、あるいは警告を表示する等を行ってもよい。
メインコントローラ101は、給送後の積載枚数を算出後、記録媒体Sを給送し続け、カセット内のすべての記録媒体Sを給送し終えた場合の処理について説明する。その後、メインコントローラ101は、給送枚数総数と、給送後の積載枚数の値に差がある場合、所定の給送位置に誤差があると判定して、この誤差を補正してもよい。この場合、メインコントローラ101は、給送枚数総数と、給送後積載枚数の値との差分と、算出済みの給送記録媒体の厚みとに基づいて、誤差を算出する。メインコントローラ101は、算出した誤差を、所定の給送位置の値としてROM107に記録し、以降は誤差反映後の給送位置を採用する。このような誤差補正の結果は通電を切られたあともROM107に保持される。また、このような誤差補正は何度でも繰り返し行える。
また、上述した実施形態においては、メインコントローラ101は、記録媒体Sの積載高さから、記録媒体Sの1枚当たりの厚さを算出している。しかし、記録媒体Sの種別ごとに、積載による記録媒体の潰れを係数として保持し、この係数を記録媒体Sの1枚当たりの厚さの算出に利用することで、より精度よく記録媒体Sの残枚数を算出することができる。
本発明は、記録媒体としてのシートを給送するシート給送装置と、それを備える記録装置の他、種々のシートを給送するためのシート給送装置と、それを備えるシート処理装置として、広く適用することができる。例えば、本発明は、原稿シートの給送装置と、それを備える画像読取装置、または、穿孔あるいは折り曲げ加工の対象シートの給送装置と、それを備えるシート処理装置として、適用することができる。