JP2021003102A - 樹脂膜及び細胞培養用容器 - Google Patents

樹脂膜及び細胞培養用容器 Download PDF

Info

Publication number
JP2021003102A
JP2021003102A JP2020110429A JP2020110429A JP2021003102A JP 2021003102 A JP2021003102 A JP 2021003102A JP 2020110429 A JP2020110429 A JP 2020110429A JP 2020110429 A JP2020110429 A JP 2020110429A JP 2021003102 A JP2021003102 A JP 2021003102A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
resin film
meth
cell culture
synthetic resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020110429A
Other languages
English (en)
Inventor
博貴 井口
Hirotaka Iguchi
博貴 井口
聡 羽根田
Satoshi Haneda
聡 羽根田
雄太 中村
Yuta Nakamura
雄太 中村
延彦 乾
Nobuhiko Inui
延彦 乾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sekisui Chemical Co Ltd filed Critical Sekisui Chemical Co Ltd
Publication of JP2021003102A publication Critical patent/JP2021003102A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Abstract

【課題】細胞の播種後の定着性に優れる、樹脂膜を提供する。【解決手段】合成樹脂を含む、細胞培養用足場材料からなる樹脂膜であって、合成樹脂のカチオン変性度が、0.2モル%以上、50モル%以下であり、樹脂膜の等電点が、2.8以上、6.0以下である、樹脂膜。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞培養用足場材料からなる樹脂膜に関する。また、本発明は、上記樹脂膜を用いた細胞培養用容器にも関する。
近年、細胞医薬や幹細胞を用いた次世代医療が注目を集めている。なかでも、ヒト胚性幹細胞(hESC)やヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)等のヒト多能性幹細胞(hPSC)は、創薬や再生医療への応用が期待されている。このような応用を果たすには、多能性幹細胞を安全に、かつ再現性良く培養し、増殖させることが必須である。特に、再生医療の産業上利用に際しては、幹細胞を未分化状態で多量に扱う必要がある。そのため、天然高分子及び合成高分子やフィーダー細胞を用いて多能性幹細胞の増殖を支持すると同時に、多分化能を維持する技術について広範な研究が行われている。
例えば、下記の非特許文献1では、iPS細胞やES細胞の増殖用足場材料として、フィブロネクチンを縮合反応させたポリ(ビニルアルコール−ビニルアセタール−イタコン酸)共重合体が提案されている。この足場材料は、親水性及び耐水性に優れているとされている。
下記の特許文献1には、カチオンとして、DMAEMA、アニオンとしてアクリル酸、核酸、又はヘパリンを使用した、足場材料が開示されている。
また、下記の特許文献2には、ES細胞やiPS細胞の培養に用いられる足場材料として、親水性かつ柔軟なポリロタキサンゲルで被覆された表面を有する培養容器が開示されている。
特開2017−70303号公報 特開2017−23008号公報
Sci.Rep.5,18136、2015年12月14日発行
幹細胞の未分化性や分化特性が、増殖性に関与していることが知られており、これを制御する技術が求められている。従来、天然高分子としてのラミニンやヴィトロネクチン等の接着たんぱく質や、マウス肉腫由来のマトリゲルを用いると、播種後の細胞形態が非常に良好であることが知られている。
もっとも、天然高分子やマウス肉腫由来のマトリゲル等を用いる方法では、操作が煩雑であり、コストが高くつきがちであった。また、安全性の面でも問題があった。そこで、前述した非特許文献1、特許文献1及び特許文献2に記載のような合成高分子を用いた足場材料が種々提案されている。
しかしながら、非特許文献1に記載の細胞足場材料では、フィブロネクチンを含まない場合、すなわち、合成高分子だけの場合には、細胞が伸展せずに収縮し、浮遊するという問題があった。
また、特許文献1に記載の細胞足場材料では、イオン性による親水性が高く、細胞塊の収縮や細胞の凝集を引き起こすという問題があった。
さらに、特許文献2に記載の細胞足場材料では、親水性が高いため、膨潤しやすかった。そのため、播種した細胞が培地交換や長期培養に際し足場材料から剥がれ易く、細胞の定着性が低いという問題があった。
本発明の目的は、細胞の播種後の定着性に優れる、樹脂膜及び細胞培養用容器を提供することにある。
本発明に係る樹脂膜は、合成樹脂を含む、細胞培養用足場材料からなる樹脂膜であって、前記合成樹脂のカチオン変性度が、0.2モル%以上、50モル%以下であり、前記樹脂膜の等電点が、2.8以上、6.0以下である。
本発明に係る樹脂膜のある特定の局面では、表面自由エネルギーの分散項成分が24.5mJ/m以上、45.0mJ/m以下、かつ、極性項成分が1.0mJ/m以上、20.0mJ/m以下である。
本発明に係る樹脂膜の他の特定の局面では、水膨潤倍率が50%以下である。
本発明に係る樹脂膜のさらに他の特定の局面では、100℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上、1.0×10Pa以下であり、25℃における貯蔵弾性率と100℃における貯蔵弾性率との比((25℃における貯蔵弾性率)/(100℃における貯蔵弾性率))が、1.0×10以上、1.0×10以下である。
本発明に係る樹脂膜のさらに他の特定の局面では、前記細胞培養用足場材料が、動物由来の原料を実質的に含まない。
本発明に係る樹脂膜のさらに他の特定の局面では、前記合成樹脂がビニル重合体を含む。
本発明に係る樹脂膜のさらに他の特定の局面では、前記合成樹脂が、少なくともポリビニルアルコール誘導体又はポリ(メタ)アクリル酸エステルを含む。
本発明に係る細胞培養用容器は、容器本体と、本発明に従って構成される樹脂膜とを備え、前記容器本体の表面上に、前記樹脂膜が配置されている。
本発明によれば、細胞の播種後の定着性に優れる、樹脂膜及び細胞培養用容器を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る細胞培養用容器を示す模式的正面断面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
本発明に係る樹脂膜は、細胞を培養するために用いられる。本発明の樹脂膜は、合成樹脂を含む細胞培養用足場材料からなる樹脂膜である。上記合成樹脂のカチオン変性度は、0.2モル%以上、50モル%以下である。また、本発明において、樹脂膜の等電点は、2.8以上、6.0以下である。
等電点とは、アニオン性官能基とカチオン性官能基の双方を有する合成樹脂の電離後の電荷平均が0となるpHのことをいう。従って、等電点は、樹脂膜のゼータ電位が0となるpHである。
樹脂膜のゼータ電位は、樹脂膜を溶液中に配置した場合、界面である樹脂膜の表面と、樹脂膜の表面から十分に離れた溶液中のバルク部分との電位差である。本明細書におけるゼータ電位は、測定対象物の形状に応じて、流動電位法、電気泳動法、電気浸透法等の方法を適宜選択し求めることができる。
例えば、測定対象物が膜である場合は、流動電位法により測定することができる。また、測定対象物が繊維や粒子である場合は、電気浸透法により測定することができる。
従って、樹脂膜のゼータ電位は、流動電位法により測定されたゼータ電位であることが好ましい。流動電位法は、例えば、アントンパール社製、ゼータ電位測定機器により測定することができる。具体的には、KCl希薄溶液中にて、後述の実施例に記載された方法により測定することができる。電気泳動法としては、例えば、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(大塚電子社製)を用いて、水中で光散乱することにより、測定する方法が挙げられる。
本発明の樹脂膜は、上記の構成を備えるので、細胞の播種後の定着性に優れている。
従来の天然高分子材料を用いた細胞培養用足場材料は、播種後の細胞の定着性を高めることができるものの、高価であったり、天然由来物質であるためロット間のばらつきが大きかったり、動物由来の成分による安全上の懸念があったりする。一方で、合成高分子材料を用いた足場材料は、天然高分子材料を用いた足場材料と比べて、操作性がよく、安価であり、ロット間のばらつきが小さく、かつ安全性に優れている。しかしながら、合成樹脂材料を用いた足場材料は、天然高分子材料を用いた足場材料と比べて、接着性が低いという問題がある。本発明者らは、イオン性の電離・変化により、培地交換や長期培養による足場材料からの細胞の剥がれが生じることを見出した。
従って、本発明者らは、合成樹脂のカチオン変性度及び足場材料からなる樹脂膜の等電点に着目し、この合成樹脂のカチオン変性度と樹脂膜の等電点をそれぞれ特定の範囲とすることにより、イオン性の電離・変化を制御することができ、それによって播種後の細胞との接着性を高め得ることを見出した。
従って、本発明によれば、播種後の細胞との接着性を高めることができ、培地交換や長期培養による樹脂膜からの細胞の剥がれを抑制することができる。
また、本発明の樹脂膜は、合成樹脂を含むので、天然高分子材料を用いた足場材料と比べて、操作性がよく、安価であり、ロット間のばらつきが小さく、かつ安全性に優れている。
本発明において、樹脂膜の等電点は、2.8以上、より好ましくは3.0以上、6.0以下、より好ましくは5.0以下である。この場合、細胞の播種後の定着率をより一層高めることができる。
なお、等電点は、例えば、上記合成樹脂においてアミノ基等のカチオン性官能基の含有量を増やすことにより、高くすることができる。また、上記等電点は、例えば、上記合成樹脂においてカルボキシル基等のアニオン性官能基の含有量を増やすことにより、低くすることができる。
本発明において、樹脂膜における表面自由エネルギーの分散項成分は、好ましくは24.5mJ/m以上、45.0mJ/m以下である。それによって、播種後の細胞との接着性をより一層高めることができる。上記分散項成分は、より好ましくは30.0mJ/m以上、さらに好ましくは33.0mJ/m以上、より好ましくは40.0mJ/m以下、さらに好ましくは38.0mJ/m以下である。
また、表面自由エネルギーの極性項成分は、好ましくは1.0mJ/m以上、20.0mJ/m以下である。この場合においても、播種後の細胞との接着性をより一層高めることができる。上記極性項成分は、より好ましくは1.5mJ/m以上、さらに好ましくは2.0mJ/m以上、より好ましくは10.0mJ/m以下、さらに好ましくは7.5mJ/m以下である。
なお、表面自由エネルギーの分散項成分γ及び極性項成分である双極子成分γは、Kaelble−Uyの理論式を用いて算出される。Kaelble−Uyの理論式は、下記式(1)で示されるように、トータル表面自由エネルギーγが、分散項成分γと双極子成分γとの和になるとの仮定に基づく理論式である。
Figure 2021003102
また、Kaelble−Uyの理論式では、液体の表面自由エネルギーをγ(mJ/m)とし、固体の表面自由エネルギーをγ(mJ/m)とし、接触角をθ(°)とすると、下記式(2)が成立する。
Figure 2021003102
従って、液体の表面自由エネルギーγが既知である液体を2種類用いて、樹脂膜に対するそれぞれの接触角θを測定し、γ 及びγ の連立方程式を解くことにより、樹脂膜の表面自由エネルギーの分散項成分γ及び双極子成分γを求めることができる。
なお、本明細書においては、上記表面自由エネルギーγが既知である2種類の上記液体として、純水及びジヨードメタンが用いられている。
接触角θは、接触角計(例えば、協和界面化学社製「DMo−701」)を用いて、以下のようにして測定される。
樹脂膜の表面に、純水又はジヨードメタンを1μL滴下する。滴下してから30秒後の純水と、樹脂膜とのなす角度を、純水に対する接触角θとする。また、同様に、滴下してから30秒後のジヨードメタンと、樹脂膜とのなす角度を、ジヨードメタンに対する接触角θとする。
合成樹脂における疎水性官能基の含有率を高くしたり、環状構造を有する官能基の含有率を高くしたり、ブチル基の含有率を少なくしたりすることにより、上記表面自由エネルギーの分散項成分γを小さくすることができる。また、合成樹脂における親水性官能基の含有率を高くしたり、ブチル基の含有率を高くしたりすることにより、上記表面自由エネルギーの双極子成分γを小さくすることができる。
上記樹脂膜の100℃における貯蔵弾性率が、好ましくは0.6×10Pa以上、より好ましくは0.8×10Pa以上、さらに好ましくは1.0×10Pa以上、好ましくは1.0×10Pa以下、より好ましくは0.8×10Pa以下、さらに好ましくは1.0×10Pa以下である。
特に、上記樹脂膜の25℃における貯蔵弾性率と100℃における貯蔵弾性率との比((25℃における貯蔵弾性率)/(100℃における貯蔵弾性率))が、好ましくは1.0×10以上、より好ましくは5.0×10以上、さらに好ましくは8.0×10以上、好ましくは1.0×10以下、より好ましくは0.75×10以下、さらに好ましくは0.5×10以下である。上記比を上記範囲内とすることにより、播種後の細胞の定着性をより一層高めることができる。
25℃及び100℃における貯蔵弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA−200)を用いて、引張条件下、周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度範囲−150℃〜150℃、及び昇温速度5℃/分の測定条件で測定することにより求めることができる。得られた引張貯蔵弾性率のグラフから25℃及び100℃における貯蔵弾性率を求め、また、比(25℃における貯蔵弾性率/100℃における貯蔵弾性率)を算出する。なお、測定サンプルは、長さ50mm、幅5mm〜20mm、厚み0.1mm〜1.0mmの測定サンプルのサイズとする。
上記25℃及び100℃における貯蔵弾性率は、例えば、上記合成樹脂における架橋度を高めること、上記合成樹脂を延伸すること等により、高めることができる。また、上記25℃及び100℃における貯蔵弾性率は、上記合成樹脂において数平均分子量を下げること、ガラス転移温度を下げること等により、低くすることができる。
上記樹脂膜の水膨潤倍率は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。この場合、播種後の細胞の定着性をより一層高めることができる。なお、水膨潤倍率の下限値は特に限定されないが、例えば、0.5%とすることができる。
水膨潤倍率は、以下のようにして測定することができる。例えば、長さ50mm、幅10mm、厚み0.05mm〜0.15mmの細胞培養用足場材料からなる樹脂膜(測定サンプル)を、25℃の水に24時間浸漬する。浸漬前と後のサンプルの重さを測定し、水膨潤倍率=(浸漬後のサンプル重量−浸漬前のサンプル重量)/(浸漬前のサンプル重量)×100(%)を算出する。
上記水膨潤倍率は、例えば、上記合成樹脂の疎水性官能基を増やすこと、数平均分子量を下げること等により、小さくできる。
[合成樹脂]
本発明に用いる細胞培養用足場材料は、合成樹脂(以下、合成樹脂Xと記載することがある)を含む。なお、本明細書において、「構造単位」とは、合成樹脂を構成するモノマーの繰り返し単位をいう。なお、合成樹脂がグラフト鎖を有する場合は、そのグラフト鎖を構成するモノマーの繰り返し単位を含む。
合成樹脂Xの主鎖は、炭素鎖であることが好ましい。また、合成樹脂Xは、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を含むことが好ましい。
合成樹脂Xに含まれるカチオン性官能基としては、アミノ基、イミノ基、アミド基などの構造を有する置換基挙げられる。カチオン性官能基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシアミノ基、ウレア基、グアニジン、ビグアニド等の共役アミン系官能基、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ヘキサメチレンテトラアミン、モルホリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、アザトロピリデン、ピリドン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ピラゾール、オキサゾール、イミダゾリン、トリアゾール、チアゾール、チアジン、テトラゾール、インドール、イソインドール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、メラミン等のヘテロ環アミノ系官能基、ポルフィリン、クロリン、コリン等の環状ピロール系官能基およびそれらの誘導体等が挙げられる。これらのカチオン性官能基は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
合成樹脂Xの構造単位中に含まれるカチオン性官能基の含有量、すなわちカチオン変性度は、0.2モル%以上、好ましくは2モル%以上、より好ましくは3モル%以上、50モル%以下、好ましくは10モル%以下、より好ましくは7モル%以下である。このような範囲内でカチオン性官能基を含有する合成樹脂Xを用いることにより、播種後の細胞の定着性をより一層高めることができる。
また、合成樹脂Xに含まれるアニオン性官能基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基(水酸基)、カルボキシル基、スルホン酸基、マレイン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、及びこれらの誘導体等が挙げられる。ブレンステッド酸性基は、カルボキシル基が挙げられる。これらのアニオン性官能基は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
合成樹脂Xの構造単位中に含まれるアニオン性官能基の含有量、すなわちアニオン変性度は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。このような範囲内でアニオン性官能基を含有する合成樹脂Xを用いることにより、播種後の細胞の定着性をより一層高めることができる。
なお、カチオン性官能基を有する構造単位及びアニオン性官能基を有する構造単位の含有量は、例えば、H−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により測定することができる。
本発明に用いる細胞培養用足場材料が含有している上記合成樹脂Xとしては、上記特定のカチオン変性度及び上記特定の範囲の等電点を有する限り、特に限定されるものではない。
(ビニル重合体)
合成樹脂Xは、ビニル重合体を含むことが好ましく、ビニル重合体であることがより好ましい。なお、ビニル重合体とは、ビニル基又はビニリデン基を有する化合物の重合体である。上記合成樹脂Xがビニル重合体である場合、水中における細胞培養用足場材料の膨潤をより抑制しやすくすることができる。ビニル重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。ビニル重合体は、細胞との接着性をより高める観点から、ポリビニルアルコール誘導体又はポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。合成樹脂Xは、少なくともポリビニルアルコール誘導体又はポリ(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。合成樹脂Xは、ポリビニルアルコール誘導体であることが好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸エステルであることも好ましい。
(ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂X)
細胞培養用足場材料は、ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂Xを含むことが好ましい。上記合成樹脂Xは、ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂を含むことが好ましく、ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂であることがより好ましい。
本明細書において、「ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂X」を、「ポリビニルアセタール樹脂X」と記載することがある。
従って、ポリビニルアセタール樹脂Xは、ポリビニルアセタール骨格を有する樹脂である。
ポリビニルアセタール樹脂Xは、側鎖にアセタール基と、アセチル基と、水酸基とを有する。
ポリビニルアセタール樹脂Xの合成方法は、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化する工程を少なくとも備える。
ポリビニルアセタール樹脂Xを得るためのポリビニルアルコールのアセタール化に用いられるアルデヒドは、特に限定されない。アルデヒドとしては、例えば、炭素数が1〜10のアルデヒドが挙げられる。アルデヒドは、鎖状脂肪族基、環状脂肪族基又は芳香族基を有していてもよい。アルデヒドは、鎖状アルデヒドであってもよく、環状アルデヒドであってもよい。
上記アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、アクロレイン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、ペリルアルデヒド、ホルミルピリジン、ホルミルイミダゾール、ホルミルピロール、ホルミルピペリジン、ホルミルトリアゾール、ホルミルテトラゾール、ホルミルインドール、ホルミルイソインドール、ホルミルプリン、ホルミルベンゾイミダゾール、ホルミルベンゾトリアゾール、ホルミルキノリン、ホルミルイソキノリン、ホルミルキノキサリン、ホルミルシンノリン、ホルミルプテリジン、ホルミルフラン、ホルミルオキソラン、ホルミルオキサン、ホルミルチオフェン、ホルミルチオラン、ホルミルチアン、ホルミルアデニン、ホルミルグアニン、ホルミルシトシン、ホルミルチミン、又はホルミルウラシル等が挙げられる。これらのアルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
アルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、又はペンタナールであることが好ましく、ブチルアルデヒドであることがより好ましい。したがって、ポリビニルアセタール骨格は、ポリビニルブチラール骨格であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂Xは、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂Xには、ビニル化合物が共重合されていてもよい。すなわち、ポリビニルアセタール樹脂Xは、ポリビニルアセタール樹脂の構造単位とビニル化合物との共重合体であってもよい。本発明では、ビニル基と共重合したポリビニルアセタール樹脂も、ポリビニルアセタール樹脂というものとする。
ビニル化合物は、ビニル基(HC=CH−)を有する化合物である。ビニル化合物は、ビニル基を有する構造単位を有する重合体であってもよい。
上記共重合体は、ポリビニルアセタール樹脂とビニル化合物とのブロック共重合体であってもよく、ポリビニルアセタール樹脂にビニル化合物がグラフトしたグラフト共重合体であってもよい。上記共重合体は、グラフト共重合体であることが好ましい。
ビニル化合物としては、エチレン、アリルアミン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、無水マレイン酸、マレイミド、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、ビニルアミン及、又は(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらのビニル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
細胞の接着性をより一層高める観点からは、ポリビニルアセタール樹脂Xは、ブレンステッド塩基性基又はブレンステッド酸性基を有することが好ましく、ブレンステッド塩基性基を有することがより好ましい。すなわち、ポリビニルアセタール樹脂Xの一部がブレンステッド塩基性基又はブレンステッド酸性基により変性されていることが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂Xの一部がブレンステッド塩基性基で変性されていることがより好ましい。
ブレンステッド塩基性基は、水素イオンHを他の物質から受け取ることができる官能基の総称である。ブレンステッド塩基性基としては、イミン構造を有する置換基、イミド構造を有する置換基、アミン構造を有する置換基、又はアミド構造を有する置換基等のアミン系塩基性基が挙げられる。ブレンステッド塩基性基は、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシアミノ基、ウレア基、グアニジン、ビグアニド等の共役アミン系官能基、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ヘキサメチレンテトラアミン、モルホリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、アザトロピリデン、ピリドン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ピラゾール、オキサゾール、イミダゾリン、トリアゾール、チアゾール、チアジン、テトラゾール、インドール、イソインドール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、メラミン等のヘテロ環アミノ系官能基、ポルフィリン、クロリン、コリン等の環状ピロール系官能基、又はそれらの誘導体等が挙げられる。
ブレンステッド酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、マレイン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、又はこれらの塩等が挙げられる。ブレンステッド酸性基は、カルボキシル基であることが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂Xは、イミン構造を有する構造単位、イミド構造を有する構造単位、アミン構造を有する構造単位、又はアミド構造を有する構造単位を有することが好ましく、イミン構造を有する構造単位、又はアミン構造を有する構造単位を有することがより好ましい。この場合、これらの構造単位のうちの1種のみを有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
ポリビニルアセタール樹脂Xは、イミン構造を有する構造単位を有していてもよい。イミン構造とは、C=N結合を有する構造をいう。特に、ポリビニルアセタール樹脂Xは、イミン構造を側鎖に有することが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂Xは、イミド構造を有する構造単位を有していてもよい。イミド構造を有する構造単位は、イミノ基(=NH)を有する構造単位であることが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂Xは、イミノ基を側鎖に有することが好ましい。この場合、イミノ基は、ポリビニルアセタール樹脂Xの主鎖を構成する炭素原子に直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して主鎖に結合していてもよい。
ポリビニルアセタール樹脂Xは、アミン構造を有する構造単位を有していてもよい。上記アミン構造におけるアミン基は、第一級アミン基であってもよく、第二級アミン基であってもよく、第三級アミン基であってもよく、第四級アミン基であってもよい。
アミン構造を有する構造単位は、アミド構造を有する構造単位であってもよい。上記アミド構造とは、−C(=O)−NH−を有する構造をいう。
ポリビニルアセタール樹脂Xは、アミン構造又はイミン構造を側鎖に有することが好ましい。この場合、アミン構造又はイミン構造は、ポリビニルアセタール樹脂Xの主鎖を構成する炭素原子に直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して主鎖に結合していてもよい。
なお、イミン構造を有する構造単位の含有率、イミド構造を有する構造単位の含有率、アミン構造を有する構造単位の含有率、アミド構造を有する構造単位の含有率は、H−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により測定することができる。
(ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する合成樹脂X)
本発明に用いる細胞培養用足場材料は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する合成樹脂Xを含むことが好ましい。上記合成樹脂Xは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する合成樹脂を含むことが好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する合成樹脂であることがより好ましい。
本明細書において、「ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する合成樹脂X」を、「ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂X」と記載することがある。
従って、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂Xは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する樹脂である。
ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂Xは、(メタ)アクリル酸エステルの重合により、あるいは(メタ)アクリル酸エステルと、上記他のモノマーとの重合により得られる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール類、(メタ)アクリル酸ホスホリルコリン等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、又はステアリル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数1〜3のアルコキシ基及びテトラヒドロフルフリル基等の置換基で置換されていてもよい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、又はイソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、4−(メタ)アクリロイルモルホリン、3−(メタ)アクリロイル−2−オキサゾリジノン、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、又は6−(メタ)アクリルアミドヘキサン酸等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール類としては、例えば、メトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、又はヒドロキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ホスホリルコリンとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルと共重合される他のモノマーとしては、ビニル化合物が好適に用いられる。ビニル化合物としては、エチレン、アリルアミン、ビニルピロリドン、無水マレイン酸、マレイミド、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、ビニルアミン、又は(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ビニル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
また、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂Xは、ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂Xと同様に、一部にブレンステッド塩基性基、またはブレンステッド酸性基を有していてもよい。ブレンステッド塩基性基及びブレンステッド酸性基については、上述した通りである。
(合成樹脂X以外の樹脂)
細胞培養用足場材料は、合成樹脂X以外のポリマーを含んでいてもよい。該ポリマーとしては、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
[細胞培養用足場材料]
本発明に用いる細胞培養用足場材料は、上記合成樹脂Xを含む。本発明の効果を効果的に発揮させる観点及び生産性を高める観点からは、上記細胞培養用足場材料100重量%中、上記合成樹脂Xの含有量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは97.5重量%以上、特に好ましくは99重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。したがって、上記細胞培養用足場材料は、上記合成樹脂Xであることが最も好ましい。上記合成樹脂Xの含有量が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
上記細胞培養用足場材料は、上記合成樹脂X以外の成分を含んでいてもよい。上記合成樹脂以外の成分としては、多糖類、セルロース、合成ペプチド、ポリペプチド等が挙げられる。
本発明の効果を効果的に発揮させる観点から、上記合成樹脂X以外の成分の含有量は少ないほどよい。上記細胞培養用足場材料100重量%中、該成分の含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは2.5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0重量%(未含有)である。したがって、細胞培養用足場材料は、合成樹脂X以外の成分を含まないことが最も好ましい。
上記細胞培養用足場材料は、動物由来の原料を実質的に含まないことが好ましい。動物由来の原料を含まないことにより、安全性が高く、かつ、製造時に品質のばらつきが少ない細胞培養用足場材料を提供することができる。なお、「動物由来の原料を実質的に含まない」とは、細胞培養用足場材料中における動物由来の原料が、3重量%以下であることをいう。上記細胞培養用足場材料は、細胞培養用足場材料中における動物由来の原料が、1重量%以下であることが好ましく、0重量%であることがより好ましい。すなわち、上記細胞培養用足場材料は、動物由来の原料を全く含まないことがより好ましい。
(細胞培養用足場材料からなる樹脂膜を用いた細胞培養)
細胞培養用足場材料は、細胞を培養するために用いられる。上記細胞培養用足場材料は、細胞を培養する際の該細胞の足場として用いられる。したがって、本発明に係る樹脂膜は、細胞を培養するために用いられ、また、細胞を培養する際の該細胞の足場として用いられる。
上記細胞としては、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ及びサル等の動物細胞が挙げられる。また、上記細胞としては、体細胞等が挙げられ、例えば、幹細胞、前駆細胞及び成熟細胞等が挙げられる。上記体細胞は、癌細胞であってもよい。
上記幹細胞としては、間葉系幹細胞(MSC)、iPS細胞、ES細胞、Muse細胞、胚性がん細胞、胚性生殖幹細胞、及びmGS細胞等が挙げられる。
上記成熟細胞としては、神経細胞、心筋細胞、網膜細胞及び肝細胞等が挙げられる。
(細胞培養用足場材料の形状)
本発明に係る樹脂膜は、細胞培養用足場材料により形成される。上記樹脂膜は、細胞培養用足場材料を用いて形成される。上記樹脂膜は、膜状の細胞培養用足場材料であることが好ましい。上記樹脂膜は、細胞培養用足場材料の膜状物であることが好ましい。上記樹脂膜の厚みは特に限定されない。
本明細書では、上記細胞培養用足場材料を含む、粒子、繊維、多孔体、又はフィルムも提供する。この場合、上記細胞培養用足場材料の形状は特に限定されず、粒子であっても、繊維であっても、多孔体であっても、フィルムであってもよい。なお、上記粒子、繊維、多孔体、又はフィルムは、上記細胞培養用足場材料以外の構成要素を含んでいてもよい。
上記細胞培養用足場材料を含むフィルムは、細胞を平面培養(二次元培養)するために用いられることが好ましい。また、上記細胞培養用足場材料を含む、粒子、繊維、又は多孔体は、細胞を三次元培養するために用いられることが好ましい。
(細胞培養用容器)
本発明は、細胞の培養領域の少なくとも一部に上記樹脂膜を備える、細胞培養用容器にも関する。図1は、本発明の一実施形態に係る細胞培養用容器を示す模式的正面断面図である。
細胞培養用容器1は、容器本体2と、樹脂膜3とを備える。容器本体2の表面2a上に樹脂膜3が配置されている。容器本体2の底面上に樹脂膜3が配置されている。細胞培養用容器1に液体培地を添加し、また、細胞を樹脂膜3の表面に播種することで、細胞を平面培養することができる。
なお、容器本体は、第1の容器本体の底面上にカバーガラス等の第2の容器本体を備えていてもよい。第1の容器本体と第2の容器本体とは分離可能であってもよい。この場合、第2の容器本体の表面上に、樹脂膜が配置されていてもよい。
上記容器本体として、従来公知の容器本体(容器)を用いることができる。上記容器本体の形状および大きさは特に限定されない。
上記容器本体としては、1個又は複数個のウェル(穴)を備える細胞培養用プレート、及び細胞培養用フラスコ等が挙げられる。上記プレートのウェル数は特に限定されない。該ウェル数としては、特に限定されないが、例えば、2、4、6、12、24、48、96、384等が挙げられる。上記ウェルの形状としては、特に限定されないが、真円、楕円、三角形、正方形、長方形、五角形等が挙げられる。上記ウェル底面の形状としては、特に限定されないが、平底、丸底、凹凸等が挙げられる。
上記容器本体の材質は特に限定されないが、樹脂、金属及び無機材料が挙げられる。上記樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイソプレン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン等が挙げられる。上記金属としては、ステンレス、銅、鉄、ニッケル、アルミ、チタン、金、銀、白金等が挙げられる。上記無機材料としては、酸化ケイ素(ガラス)、酸化アルミ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、窒化ケイ素等が挙げられる。
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
細胞培養用足場材料の原料として、以下の合成樹脂を合成した。
(実施例1)
攪拌装置を備えた反応機に、イオン交換水2700mL、平均重合度1700、鹸化度98モル%、アセチル基度2mol%のポリビニルアルコールを300重量部投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。得られた溶液に、触媒として、塩酸濃度が0.2重量%となるように35重量%塩酸を添加した。次いで、温度を15℃に調整し、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド22重量部を添加した。次いで、n−ブチルアルデヒド148重量部を添加し、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂を析出させた。析出してから15分後に、塩酸濃度が1.8重量%となるように35重量%塩酸を添加した後、50℃に加熱し、50℃で2時間保持した。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させた。得られたポリビニルブチラール樹脂99.7重量部を、20重量%の溶液となるようにテトラヒドロフランに溶解させ、開始剤としてIrgacure184を5重量部、及びジメチルアミノアクリレート0.3重量部を添加し、グラフト重合を行うことで、合成樹脂を得た。
得られた合成樹脂は、ブチラール化度70.7モル(mol)%、アセチル化度1モル(mol)%、水酸基量28モル(mol)%、カチオン変性度0.3モル(mol)%であった。なお、得られた合成樹脂における構造単位の含有率は、合成樹脂をDMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解した後、H−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により測定した。以下の実施例及び比較例においても、同様にして測定した。
(実施例2)
実施例1と同様にして得られたポリビニルブチラール樹脂98重量部を、20重量%の溶液となるようにテトラヒドロフランに溶解させ、開始剤としてIrgacure184を5重量部、及びジメチルアミノアクリレート2重量部を添加し、グラフト重合を行うことで、合成樹脂を得た。
(実施例3)
実施例1と同様にして得られたポリビニルブチラール樹脂90重量部を、20重量%の溶液となるようにテトラヒドロフランに溶解させ、開始剤としてIrgacure184を5重量部、及びジメチルアミノアクリレート10重量部を添加し、グラフト重合を行うことで、合成樹脂を得た。
(実施例4)
実施例1と同様にして得られたポリビニルブチラール樹脂90重量部を、20重量%の溶液となるようにテトラヒドロフランに溶解させ、開始剤としてIrgacure184を5重量部、ビニルピロリドン5重量部、及びラウリルメタクリレート5重量部を添加し、グラフト重合を行うことで、合成樹脂を得た。
(実施例5)
実施例1と同様にして得られたポリビニルブチラール樹脂90重量部を、20重量%の溶液となるようにテトラヒドロフランに溶解させ、開始剤としてIrgacure184を5重量部、及びビニルイミダゾール10重量部を添加し、グラフト重合を行うことで、合成樹脂を得た。
(実施例6)
ビニルピロリドン5重量部、ブチルメタクリレート71重量部、及びエチルアクリレート24重量部を混合し、(メタ)アクリルモノマー溶液を得た。得られた(メタ)アクリルモノマー溶液にIrgacure184(BASF社製)0.1重量部を溶解させ、PETフィルム上に塗布した。塗布物を25℃にてアイグラフィックス社製、UVコンベア装置「ECS301G1」を用い、365nmの波長の光を積算光量2000mJ/cmで照射することでポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂溶液を得た。得られたポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂溶液を80℃、3時間真空乾燥させることでポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂としての合成樹脂を得た。
(比較例1)
合成樹脂として、ポリスチレン樹脂をそのまま用いた。
(比較例2)
合成樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂をそのまま用いた。
(比較例3)
合成樹脂として、ポリスチレン樹脂をそのまま用いた。
(比較例4)
合成樹脂として、ポリメタクリル酸メチル樹脂をそのまま用いた。
(比較例5)
合成樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂をそのまま用いた。
(比較例6)
実施例1と同様にして得られたポリビニルブチラール樹脂A 90重量部を、20重量%の溶液となるようにテトラヒドロフランに溶解させ、開始剤としてIrgacure184を5重量部、及びアクリル酸10重量部を添加し、グラフト重合を行うことで、合成樹脂を得た。
(比較例7)
実施例1と同様にして得られたポリビニルブチラール樹脂A 90重量部を、20重量%の溶液となるようにテトラヒドロフランに溶解させ、開始剤としてIrgacure184を5重量部、及びジエチルアミノアクリレート10重量部を添加し、グラフト重合を行うことで、合成樹脂を得た。
[評価]
(等電点)
細胞培養用容器の作製;
実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた各合成樹脂0.1重量部をブタノール・メタノール混合溶媒(9:1)19.9重量部に溶解させた。得られた溶液200μLを、ポリスチレンディッシュにキャストした後、60℃で120分間加熱して、表面が平滑な樹脂膜(細胞培養用足場材料からなる樹脂膜)が形成された細胞培養用容器を得た。なお、以下の測定には、この樹脂膜を用いた。
等電点の測定;
ゼータ電位測定機器(アントンパール社製、型番SURPASS 3)を用いて、実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた樹脂膜のゼータ電位をそれぞれ求めた。まず、0.1mMのKCl溶液を用意した。次に、セルに足場材料の樹脂膜をセットしたあと、pH電極及び導電率計を設定した。HClとNaOH溶液を用いて、pH3.0〜9.0まで滴定することでゼータ電位が0になるときのpH(等電点)を測定した。
(貯蔵弾性率)
実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた樹脂膜の25℃及び100℃における貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA−200)により引張条件下、周波数10Hz、−150℃から150℃の温度範囲を昇温速度5℃/分にて測定した。得られた引張貯蔵弾性率のグラフから25℃及び100℃における貯蔵弾性率を求め、25℃貯蔵弾性率/100℃貯蔵弾性率を算出した。長さ50mm、幅5mm〜20mm、厚み0.1mm〜1.0mmの測定サンプルを用いて、10Hz、ひずみ0.1%、温度−150℃〜150℃、及び昇温速度5℃/minの条件で行った。また、得られた25℃及び100℃における貯蔵弾性率から、比((25℃における貯蔵弾性率)/(100℃における貯蔵弾性率))を算出した。
(水膨潤倍率)
実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた樹脂膜(測定サンプル)を、25℃の水に24時間浸漬した。浸漬前と後のサンプルの重さを測定し、水膨潤率=(浸漬後のサンプル重量−浸漬前のサンプル重量)/(浸漬前のサンプル重量)×100(%)を算出した。
(表面自由エネルギー)
実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた樹脂膜の表面自由エネルギーについて接触角計(協和界面化学社製、DMo−701)を用いて測定した。樹脂膜上に純水1μLを滴下し、30秒後の液滴像を撮影することで純水の接触角を得た。また、上記樹脂膜上にジヨードメタン1μLを滴下し、30秒後の液滴像を撮影することでジヨードメタンの接触角を得た。得られた接触角から、Kaelble−Uyの理論式を用いて表面自由エネルギーの分散項成分γ(dSFE)及び双極子成分γ(pSFE)を算出した。
(接着性)
得られた細胞培養用容器にリン酸緩衝生理食塩水1mLを加えて37℃のインキュベーター内で1時間静置後、培養容器内のリン酸緩衝生理食塩水を除いた。35mmディッシュにコンフルエント状態になったh−iPS細胞253G1のコロニーを加え、次に1mLの0.5mMエチレンジアミン/リン酸緩衝溶液を加え、室温で2分静置した。その後、エチレンジアミン/リン酸緩衝溶液を除き、1.5mLのTeSRE8培地でピペッティングにより50μm〜200μmに砕かれた細胞塊を0.5×10cells培養容器に播種し、培地TeSR E8(STEM CELL社製)1mLおよび、ROCK−Inhibitor(Y27632)10μM存在下、37℃、CO濃度5%のインキュベーター内で培養を行った。24時間毎に培地を1000μL除き、新たなTeSR E8を1000μL加えることで培地交換を行った。
細胞塊培養試験において、細胞塊が剥がれるまでの接着維持可能時間を測定した。また、以下の基準に従って評価した。
[評価基準]
〇〇…培地交換後72時間以上接着維持した。
〇…培地交換後48時間以上接着維持したが、72時間未満で全ての細胞が剥離した。
×…培地交換後24時間以下で全ての細胞が剥離した。
結果を下記の表1に示す。
Figure 2021003102
1…細胞培養用容器
2…容器本体
2a…表面
3…樹脂膜

Claims (8)

  1. 合成樹脂を含む、細胞培養用足場材料からなる樹脂膜であって、
    前記合成樹脂のカチオン変性度が、0.2モル%以上、50モル%以下であり、
    前記樹脂膜の等電点が、2.8以上、6.0以下である、樹脂膜。
  2. 表面自由エネルギーの分散項成分が24.5mJ/m以上、45.0mJ/m以下、かつ、極性項成分が1.0mJ/m以上、20.0mJ/m以下である、請求項1に記載の樹脂膜。
  3. 水膨潤倍率が50%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂膜。
  4. 100℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上、1.0×10Pa以下であり、
    25℃における貯蔵弾性率と100℃における貯蔵弾性率との比((25℃における貯蔵弾性率)/(100℃における貯蔵弾性率))が、1.0×10以上、1.0×10以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂膜。
  5. 前記細胞培養用足場材料が、動物由来の原料を実質的に含まない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂膜。
  6. 前記合成樹脂がビニル重合体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂膜。
  7. 前記合成樹脂が、少なくともポリビニルアルコール誘導体又はポリ(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂膜。
  8. 容器本体と、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂膜とを備え、
    前記容器本体の表面上に、前記樹脂膜が配置されている、細胞培養用容器。
JP2020110429A 2019-06-26 2020-06-26 樹脂膜及び細胞培養用容器 Pending JP2021003102A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019119077 2019-06-26
JP2019119077 2019-06-26

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021003102A true JP2021003102A (ja) 2021-01-14

Family

ID=74097397

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020110429A Pending JP2021003102A (ja) 2019-06-26 2020-06-26 樹脂膜及び細胞培養用容器

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021003102A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2020230886A1 (ja) 細胞培養用足場材料により形成された樹脂膜、細胞培養用担体及び細胞培養用容器
KR102370115B1 (ko) 줄기 세포 배양용 스캐폴드 재료 및 그것을 사용한 줄기 세포의 배양 방법
JP7480037B2 (ja) 細胞培養用足場材料及び細胞培養用容器
WO2020203769A1 (ja) 細胞培養用足場材料、細胞培養用容器、細胞培養用繊維及び細胞の培養方法
WO2020203770A1 (ja) 細胞培養用足場材料、細胞培養用容器、細胞培養用担体、細胞培養用繊維及び細胞の培養方法
JP2021023287A (ja) 細胞培養用足場材及び細胞培養用容器
WO2021024943A1 (ja) 細胞培養用足場材及び細胞培養用容器
JP2021003102A (ja) 樹脂膜及び細胞培養用容器
JP2021003103A (ja) 樹脂膜及び細胞培養用容器
WO2022168871A1 (ja) 細胞培養用マイクロキャリア及び細胞の培養方法
TW202246483A (zh) 細胞培養用微載體及細胞之培養方法
JP2021003061A (ja) 細胞培養用足場材料及び細胞培養用容器
WO2020241675A1 (ja) 細胞培養用足場材料により形成された樹脂膜及び細胞培養用容器
JP2021003062A (ja) 細胞培養用足場材料及び細胞培養用容器
TWI839518B (zh) 藉由細胞培養用支架材料所形成之樹脂膜、細胞培養用載體、及細胞培養用容器
JP7271870B2 (ja) 多能性幹細胞の培養基材及び多能性幹細胞の製造方法
JP2019118345A (ja) 幹細胞培養用足場材料及びそれを用いた幹細胞培養方法
EP4239051A1 (en) Microfluidic chip, cell analysis device, cell analysis system, and cell analysis method
JP2019115322A (ja) 幹細胞培養用容器

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230307

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240130

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240327

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20240625