JP2021001804A - 安定型A1cの測定方法 - Google Patents
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Description
血中ヘモグロビンの分離分析における安定型A1cの測定方法であって、分離分析で得られるヘモグロビンの時間分布における化学修飾されたHbA0を含む分画のピーク面積から、又はHbA0として同定される分画に対し、正電荷量が低い側に隣接する分画のピーク面積から、HbA0が化学修飾されずに残った割合である残存率を算出する工程、及び、ヘモグロビンの時間分布から得られた、HbA0を含む分画のピーク面積又はヘモグロビンを含む分画の全ピーク面積に対する、安定型A1cを含む分画のピーク面積の割合を残存率で補正する工程、を含んでなる。
たとえば、キャピラリー電気泳動法やイオン交換を原理としたHPLC法の場合、ヘモグロビン分子表面の電荷の多寡に応じて移動速度が変動する。そのため、分離開始からそのヘモグロビン分子がキャピラリー管内やカラム内を移動して特定の地点を通過するまでの経過時間、つまりそのヘモグロビン分子が所定の距離を移動するためにかかった時間は、そのヘモグロビン分子の分子表面電荷の多寡とみなすことができる。そして、泳動開始からの経過時間に応じたシグナル(たとえば、吸光度)の強度が、いくつかの山(ピーク)と谷(ボトム)とをもった曲線、すなわちエレクトロフェログラム又はクロマトグラムとして表現される。このエレクトロフェログラム又はクロマトグラムの形状を基にして、ヘモグロビンがいくつかの分画に分離される。たとえば、特定のピークを中心とした分画が、ヘモグロビンの特定の成分として同定される。
図1は、本開示の安定型A1cの測定方法が実施される分析システムA1の一例の概略構成を示している。分析システムA1は、分析装置1及び分析チップ2を備えて構成されている。分析システムA1は、人体から採取された血液である試料Saを対象として血中ヘモグロビンの分子表面電荷に基づいて、陽イオン交換を原理とするヘモグロビンの分離分析を実行するシステムである。以下、分子表面の正電荷量の違いを利用した電気泳動を原理とする分析システムを用いて本発明を説明するが、本発明は、電気泳動を原理とする分離分析に限定されない。
分析チップ2は、試料Saを保持し、かつ分析装置1に装填された状態で試料Saを対象とした分析の場を提供するものである。本実施形態においては、分析チップ2は、1回の分析を終えた後に廃棄されることが意図された、いわゆるディスポーザブルタイプの分析チップとして構成されている。図2及び図3に示すように、分析チップ2は、本体21、混合槽22、導入槽23、フィルタ24、排出槽25、電極槽26、キャピラリー管27及び連絡流路28を備えている。図2は、分析チップ2の平面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。なお、分析チップ2は、ディスポーザブルタイプのものに限定されず、複数回の分析に用いられるものであってもよい。また、本実施形態の分析システムは、別体の分析チップ2を分析装置1に装填する構成に限定されず、分析チップ2と同様の機能を果たす機能部位が分析装置1に一体に組み込まれた構成であってもよい。
分析装置1は、試料Saが点着された分析チップ2が装填された状態で、試料Saを対象とした分析処理を行う。分析装置1は、図1に示すように、電極31,32、光源41、光学フィルタ42、レンズ43、スリット44、検出器5、分注器6、ポンプ61、希釈液槽71、泳動液槽72及び制御部8を備えている。なお、光源41、光学フィルタ42、レンズ43及び検出器5は、本発明でいう測定部の一例を構成する。
希釈液Ldは、試料Saと混合されることにより、試料溶液としての混合試料Smを生成するためのものである。希釈液Ldの主剤は特に限定されず、水、生理食塩水が挙げられ、好ましい例として後述する泳動液Lmと類似の成分の液体が挙げられる。また、希釈液Ldは、上記主剤の他に、必要に応じて添加物が添加されてもよい。
次に、分析システムA1を用いて行うヘモグロビンの分離分析の一例について、以下に説明する。図5は、本実施形態におけるヘモグロビンの分離分析方法を示すフロー図である。本分離分析方法は、準備工程S1、電気泳動工程S2、及び分析工程S3を有する。
図6は、準備工程S1における具体的な手順を示すフロー図である。本実施形態において、準備工程S1は、同図に示すように、試料採取工程S11、混合工程S12、泳動液充填工程S13、及び導入工程S14を有する。
まず、試料Saを用意する。本実施形態においては、試料Saは、人体から採取された血液である。血液としては、全血、成分分離血液又は溶血処理が施されたもの等であってもよい。そして、試料Saが分注された分析チップ2を分析装置1に装填する。
次いで、試料Saと希釈液Ldとを混合する。具体的には、図7に示すように、所定量の試料Saが分析チップ2の混合槽22に点着されている。次いで、分注器6によって希釈液槽71の希釈液Ldを所定量吸引し、図8に示すように、所定量の希釈液Ldを分析チップ2の混合槽22に分注する。そして、ポンプ61を吸引源及び吐出源として、分注器6から希釈液Ldの吸引及び吐出を繰り返す。これにより、混合槽22において試料Saと希釈液Ldとが混合され、試料溶液としての混合試料Smが得られる。試料Saと希釈液Ldとの混合は、分注器6の吸引及び吐出以外の方法によって行ってもよい。
次いで、分注器6によって泳動液槽72の泳動液Lmを所定量吸引し、図9に示すように、所定量の泳動液Lmを分析チップ2の排出槽25に分注する。そして、上述したポートで排出槽25の上方の開口を覆い、ポートから排出槽25内部に空気を吐出や吸引を適宜実施するなどの手法により、排出槽25及びキャピラリー管27に泳動液Lmを充填する。
次いで、図10に示すように、混合槽22から所定量の混合試料Smを分注器6によって採取する。そして、分注器6から導入槽23に所定量の混合試料Smを導入する。この導入においては、導入槽23への導入経路の一例である導入槽23の開口部に設けられたフィルタ24を混合試料Smが通過する。また、本実施形態においては、混合試料Smが導入槽23から連絡流路28を通じて電極槽26へと充填される。この際、導入槽23から連絡流路28を介した電極槽26への混合試料Smの流動が起こることとなるが、導入槽23から連絡流路28へは、キャピラリー管27の長手方向に対してほぼ直交する方向へ混合試料Smが流動する(図2参照)。一方、キャピラリー管27の泳動液Lmはこの段階ではほとんど移動していない。この結果、導入槽23とキャピラリー管27との接続部(図3参照)においてせん断流が生じることで、混合試料Smと泳動液Lmとの明瞭な界面が生じた状態となる。なお、混合溶液Smと泳動液Lmとの界面が生じる方法であれば、物理的に導入槽23とキャピラリー管27との境界に移動可能なフィルタを設けたり、制御的に流動方法を変更したりする等、あらゆる手段を採用することができる。
次いで、電極槽26(図2参照)に電極31(図1参照)を挿入し、排出槽25に電極32(図1参照)を挿入する。続いて、制御部8からの指示により電極31及び電極32に電圧を印加する。この電圧は、たとえば0.5kV〜20kVである。これにより電気浸透流を生じさせ、導入槽23から排出槽25へとキャピラリー管27中において混合試料Smを徐々に移動させる。この際、導入槽23に混合試料Smが充填されているため、キャピラリー管27において混合試料Smが連続的に供給されている状態で、上記分析成分であるヘモグロビン(Hb)を電気泳動させることとなる。このとき、混合試料Smと泳動液Lmとの上記した界面が維持された状態のまま、混合試料Smは泳動液Lmを下流方向へ押しやりつつキャピラリー管27を泳動していくことになる。また、光源41からの発光を開始し、検出器5による吸光度の測定を行う。そして、電極31及び電極32からの電圧印加開始時からの経過時間と吸光度との関係を測定する。
ここで、混合試料Sm中の移動速度が比較的速い成分(換言すると、分子表面の正電荷量が比較的少ない成分)に対応した吸光度ピークは、上記電圧印加開始時からの経過時間が比較的短い時点で現れる。一方、混合試料Sm中の移動速度が比較的遅い成分(換言すると、分子表面の正電荷量が比較的多い成分)に対応した吸光度ピークは、上記電圧印加開始時からの経過時間が比較的長い時点で現れる。このことを利用して、混合試料Sm中の成分の分析(分離測定)が行われる。測定された吸光度を基に、制御部8の制御によって、図11に示す分析工程S3が実行される。本実施形態の分析工程S3は、波形形成工程S31、界面到達時点決定工程S32及び成分同定工程S33を含む。
本工程においては、測定された上記吸光度を制御部8による演算処理により、電圧印加開始時を測定開始時として、当該測定開始後の経過時間に対応した光学測定値である吸光度の変化量を表す測定波形としてのエレクトロフェログラムが形成される。具体的には、測定された上記吸光度を時間微分することによって微分値の波形を形成する。形成されたエレクトロフェログラムの縦軸で表される吸光度の時間に対する微分した値は、検出されたヘモグロビンの量を示すものである。図12は、吸光度の時間微分によって形成された微分波形の一例を示している。図中のx軸は時間軸であり、y軸は微分値軸である。以降の図及び説明においては、時間軸xに沿った負方向側を方向x1側及び正方向側を方向x2側とし、微分値軸yに沿った負方向側を方向y1側及び正方向側を方向y2側とする。
本工程においては、電圧印加によりキャピラリー管の下流方向に泳動する混合試料Smと泳動液Lmとの界面が検出器5に到達した時点である界面到達時点を決定する工程である。この混合試料Smと泳動液Lmとの界面は、電気泳動開始後に最初に現れるピークである。この混合試料Smと泳動液Lmとの界面のピークを図13に示す。図13に示すように、この混合試料Smと泳動液Lmとの界面が示すピークのうち、このエレクトロフェログラムにおける基準値Lsから微分値が最も離間している点を決定する。図示された例においては、基準値Lsから方向y2に離間した点が基準値Lsから最も離間しており、この点が最離間点PLとして決定される。ここで、前記した電気泳動工程S2において電圧の印加を開始した時点を0として、この最離間点PLが検出された時点を界面到達時点とする。
前記した波形形成工程S31において得られる、界面到達時点以後の微分波形の一例を、図14に示す。同図においては、x軸は電圧の印加を開始した時点を0とした泳動時間(単位:sec)を示し、y軸は吸光度を時間微分した値であるSLOPE値(単位:mAbs/sec)を示している。また、泳動時間11.5秒付近のピークは、図13に示す最離間点PLであり、この時点が界面到達時点である。そして、本工程において、この微分波形からヘモグロビン成分が特定される。具体的には、界面到達時点以降で最大となるピークを有する分画αがHbA0と特定される。そして、界面到達時点からHbA0のピークまでに出現する各ピークについては、界面到達時点からHbA0のピークが検出された時間までの間の時間に対する、界面到達時点から当該ピークの検出時間までの時間の比率によって当該ピークが示す成分が同定される。たとえば、図14においては、安定型A1c(S−A1c)を示すピーク(分画β)がこのようにして同定される。
カルバミル化されたHbA0と、アルデヒド化されたHbA0とでは分子表面の電荷量が近いと考えられ、分画γに、カルバミル化されたHbA0とアルデヒド化されたHbA0の合成ピークが生じる場合がある。その場合は、合成ピークである分画γのピーク面積を化学修飾されたHbA0のピーク面積とし、合成ピークである分画γのピーク面積から残存率(Q)を算出してもよい。を、補正前値(X)の補正に用いる化学修飾されたHbA0を含む分画のピーク面積としてもよい。同様に、HbA0がカルバミル化される際にともに生じる物質と、HbA0がアルデヒド化される際にともに生じる物質も、その分子表面の電荷量が近いと考えられ、分画δに合成ピークを形成する場合がある。その場合も同様に、合成ピークである分画δピーク面積から化学修飾されたHbA0のピーク面積を算出し、算出した化学修飾されたHbA0のピーク面積から残存率(Q)を算出してもよい。
実施例1として、通常検体に人為的にシアン酸ナトリウムを添加してヘモグロビンをカルバミル化した検体において、本開示の安定型A1cの測定方法が有効であることを示す。
通常検体として、健常者から採取した全血を使用した。この通常検体に、下記表1に示すような終濃度となるようシアン酸ナトリウムを添加して37℃でインキュベートした検体1〜検体4を調製し、これらをそれぞれ前記した試料Sa(図7参照)として使用した。検体中のシアン酸ナトリウム濃度に応じて、検体中のヘモグロビンはカルバミル化される。
前記した泳動液Lm(図9参照)は、以下の組成とした。
クエン酸:40mM
コンドロイチン硫酸Cナトリウム:1.25%w/v
ピペラジン:20mM
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(商品名:エマルゲンLS−110、花王社製):0.1%w/v
アジ化ナトリウム:0.02%w/v
プロクリン300:0.025%w/v
以上の成分の他、pH調整用のジメチルアミノエタノールを滴下して、pH5.0に調整した。
前記した希釈液Ld(図8参照)は、以下の組成とした。
クエン酸:38mM
コンドロイチン硫酸Cナトリウム:0.95%w/v
1−(3−スルホプロピル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩(NDSB−201):475mM
2−モルホリノエタンスルホン酸(MES):19mM
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(商品名:エマルゲンLS−110、花王社製):0.4%w/v
アジ化ナトリウム:0.02%w/v
プロクリン300 0.025%w/v
以上の成分の他、pH調整用のジメチルアミノエタノールを滴下して、pH6.0に調整した。
1.5μLの試料Saを60μLの希釈液Ldに添加して、混合試料Sm(図8〜図10参照)を調製した。この混合試料Smを前記した分析システムA1に供して、ヘモグロビンの分離分析を実行した。
電圧を印加した時点を分離分析の開始の時点とし、電圧を印加した時点を0秒の時点としたエレクトロフェログラムを得た。シアン酸ナトリウムが添加されていない検体1のエレクトロフェログラムは、図15に示すとおりである。最離間点PLが検出された界面到達時点は泳動時間11.5秒付近である。また、HbF分画である分画εは泳動時間17.3秒付近にピークを有する。安定型A1c分画である分画βは泳動時間21秒付近にピークを有する。HbA0分画である分画αは泳動時間27.3秒付近にピークを有する。そして、分画βより早い泳動時間19秒付近(19.4秒)にピークを有する分画γは、不安定型A1cを含む分画とされているが、この分画にはカルバミル化を被ったHbA0も含まれる。また、分画αより早い泳動時間25秒付近(25.2秒)にピークを有する分画δには、HbA0がカルバミル化される際にカルバミル化HbA0と共に生成される物質が含まれる。
図15〜図18における分画βから、安定型A1cピーク面積の割合としての補正前値(X)は、下記表2に示すとおりに算出された。
次に、安定型A1cとして同定される分画βに対し、正電荷量が低い側、換言すると泳動速度が速い側で隣接する分画γを用いて、下記表3に示すように補正前値(X)の補正を行った。
分画δによる補正では、表4中の左端列に掲げるヘモグロビンを含む分画の全ピーク面積に対する分画δのピーク面積の割合から、カルバミル化やアルデヒド化の影響を被っていないと考えられる健常者の検体が通常有する分画δのピーク面積の割合である4%を所定のピーク面積値として控除した。なお、この控除する値は複数の健常者の検体を分離分析して得た分画δのピーク面積の割合の統計上の値であってもよく、必ずしもこの4%には限定されない。そして、HbA0が化学修飾される際にともに生成される物質のピーク面積は、カルバミル化HbA0のピーク面積である分画γの約1.65倍を示す。このことから分画δから4%が控除された値をこの所定の係数である1.65で除した値をヘモグロビンを含む分画の全ピーク面積に対するカルバミル化HbA0のピーク面積の割合とみなし、これを修飾率(P)とした。この他、残存率(Q)、補正後値(Y)及び相対誤差の算出は表3と同様である。ただし、表4中の補正後値(Y)は、前記表2中の補正前値(X)を表4中の残存率(Q)で除した値である。また、表4中の相対誤差は、表3と同様に、各検体の補正後値(Y)から、化学修飾の影響を受けていないと考えられる検体1の補正前値(X)(表2参照)を減じた値の、検体1の補正前値(X)に対する割合である。
以上の表2〜表4のまとめとして、各検体のシアン酸ナトリウム濃度に対して、補正をしなかった場合と、分画γによる補正を行った場合と、分画δによる補正を行った場合とにおける相対誤差を下記表5に掲げる。
実施例1として、通常検体に人為的にアセトアルデヒドを添加してヘモグロビンをアルデヒド化した検体においても、本開示の安定型A1cの測定方法が有効であることを示す。
通常検体として、健常者から採取した全血を使用した。この通常検体に、下記表6に示すような終濃度となるようアセトアルデヒドを添加して37℃でインキュベートした検体1〜検体4を調製し、これらをそれぞれ前記した試料Sa(図7参照)として使用した。検体中のアセトアルデヒド濃度に応じて、検体中のヘモグロビンはアルデヒド化される。
電圧を印加した時点を分離分析の開始の時点とし、電圧を印加した時点を0秒の時点としたエレクトロフェログラムを得た。アセトアルデヒドが添加されていない検体5のエレクトロフェログラムは、図20に示すとおりである。最離間点PLが検出された界面到達時点は泳動時間11.9秒付近である。また、HbF分画である分画εは泳動時間18.8秒付近にピークを有する。安定型A1c分画である分画βは泳動時間21.9秒付近にピークを有する。HbA0分画である分画αは泳動時間28.3秒付近にピークを有する。そして、分画βより早い泳動時間20.4秒付近にピークを有する分画γは、不安定型A1cを含む分画とされているが、この分画にはアルデヒド化を被ったHbA0も含まれる。また、分画αより早い泳動時間26.2秒付近にピークを有する分画δには、HbA0がアルデヒド化される際に生成される物質が含まれる。
図20〜図22における分画βから、安定型A1cピーク面積の割合としての補正前値(X)は、下記表7に示すとおりに算出された。なお、補正前値(X)の算出方法については前記した実施例1と同様である。
次に、安定型A1cとして同定される分画βに対し、正電荷量が低い側、換言すると泳動速度が速い側で隣接する分画γを用いて、下記表8に示すように補正前値(X)の補正を行った。
HbA0として同定される分画αに対し、正電荷量が低い側、換言すると泳動速度が速い側で隣接する分画δを用いて、前記表7の補正前値(X)の補正を行った場合について説明する。なお、この分画δによる補正では、前記実施例1と同様の理由から分画δのピーク面積の割合から4%が所定のピーク面積値として控除されている。そしてHbA0が化学修飾される際にともに生成される物質のピーク面積は、分画γに含まれるアルデヒド化HbA0のピーク面積の約1.65倍を示す。このことから分画δから4%が控除された値をこの1.65という所定の係数で除することにより修飾率(P)を算出した。この他、残存率(Q)、補正後値(Y)及び相対誤差の算出は表8と同様である。ただし、表9中の補正後値(Y)は、前記表7中の補正前値(X)を表9中の残存率(Q)で除した値である。また、表9中の相対誤差は、表8と同様に、各検体の補正後値(Y)から、化学修飾の影響を受けていないと考えられる検体5の補正前値(X)(表7参照)を減じた値の、検体5の補正前値(X)に対する割合である。
以上の表7〜表9のまとめとして、各検体のアセトアルデヒド濃度に対して、補正をしなかった場合と、分画γによる補正を行った場合と、分画δによる補正を行った場合とにおける相対誤差を下記表10に掲げる。
実施例3として、通常検体に人為的にグルコースを添加し、不安定型A1cを生じさせた。この検体を用いた検討から、本開示のHbA0が化学修飾される際に化学修飾されたHbA0とともに生成される物質を含む分画を用いて補正する安定型A1cの測定方法が、さらに有効であることを示す。
通常検体として、健常者から採取した全血を使用した。この通常検体に、下記表11に示すような終濃度となるようD−グルコースを添加して37℃でインキュベートした検体8〜検体12を調製し、試料Sa(図7参照)を調製した。検体中のD−グルコース濃度の増加に応じて、検体中の不安定型A1c濃度は増加する。
電圧を印加した時点を分離分析の開始の時点とし、電圧を印加した時点を0秒の時点としたエレクトロフェログラムを得た。グルコースが添加されていない検体8のエレクトロフェログラムは、図24に示すとおりである。最離間点PLが検出された界面到達時点は泳動時間12.3秒付近である。また、HbF分画である分画εは泳動時間18.3秒付近にピークを有する。安定型A1c分画である分画βは泳動時間22.1秒付近にピークを有する。HbA0分画である分画αは泳動時間28.4秒付近にピークを有する。そして、分画βより早い泳動時間20.8秒付近にピークを有する分画γは、不安定型A1cを含む分画とされているが、この分画にはカルバミル化を被ったHbA0、アルデヒド化を被ったHbA0も含まれる。また、分画αより早い泳動時間26.3秒付近にピークを有する分画δには、HbA0がカルバミル化又はアルデヒド化される際に生成される物質が含まれる。
図24〜図28における分画βから、安定型A1cピーク面積の割合としての補正前値(X)は、下記表12に示すとおりに算出された。なお、補正前値(X)の算出方法については前記した実施例1と同様である。
次に、安定型A1cとして同定される分画βに対し、正電荷量が低い側、換言すると泳動速度が速い側で隣接する分画γを用いて、下記表13に示すように補正前値(X)の補正を行った。
HbA0として同定される分画αに対し、正電荷量が低い側、換言すると泳動速度が速い側で隣接する分画δを用いて、前記表12の補正前値(X)の補正を行った場合について説明する。なお、この分画δによる補正では、前記実施例1と同様の理由から分画δのピーク面積の割合から4%が所定のピーク面積値として控除されている。そしてHbA0が化学修飾される際にともに生成される物質のピーク面積は、分画γに含まれるアルデヒド化HbA0のピーク面積の約1.65倍を示す。このことから分画δから4%が控除された値をこの所定の係数である1.65で除することにより修飾率(P)を算出した。この他、残存率(Q)、補正後値(Y)及び相対誤差の算出は表13と同様である。ただし、表14中の補正後値(Y)は、前記表12中の補正前値(X)を表14中の残存率(Q)で除した値である。また、表14中の相対誤差は、表13と同様に、各検体の補正後値(Y)から、検体8の補正前値(X)(表7参照)を減じた値の、検体8の補正前値(X)に対する割合である。
以上の表11〜表14のまとめとして、各グルコース濃度で処理した検体を、分画γによる補正を行った場合と、分画δによる補正を行った場合とにおける相対誤差を下記表15に掲げる。
1 分析装置
2 分析チップ
2A 上側部分
2B 下側部分
5 検出器
6 分注器
8 制御部
21 本体
22 混合槽
23 導入槽
24 フィルタ
25 排出槽
26 電極槽
27 キャピラリー管
28 連絡流路
31 電極
32 電極
41 光源
42 光学フィルタ
43 レンズ
44 スリット
61 ポンプ
71 希釈液槽
72 泳動液槽
Claims (10)
- 血中ヘモグロビンの分離分析における安定型A1cの測定方法であって、
前記分離分析で得られるヘモグロビンの時間分布における化学修飾されたHbA0を含む分画のピーク面積から、又はHbA0として同定される分画に対し、正電荷量が低い側に隣接する分画のピーク面積から、HbA0が化学修飾されずに残った割合である残存率を算出する工程、及び、
前記ヘモグロビンの時間分布から得られた、HbA0を含む分画のピーク面積又はヘモグロビンを含む分画の全ピーク面積に対する、安定型A1cを含む分画のピーク面積の割合を前記残存率で補正する工程、
を含んでなる、安定型A1cの測定方法。 - 前記残存率は、HbA0を含む分画のピーク面積と化学修飾されたHbA0を含む分画のピーク面積との合計値に対する、化学修飾されたHbA0を含む分画のピーク面積の割合である修飾率から算出される、請求項1に記載の安定型A1cの測定方法。
- 前記残存率は、前記ヘモグロビンの時間分布におけるヘモグロビンを含む分画の全ピーク面積に対する、化学修飾されたHbA0を含む分画のピーク面積の割合である修飾率から算出される、請求項1に記載の安定型A1cの測定方法。
- 前記残存率は、前記ヘモグロビンの時間分布におけるヘモグロビンを含む分画の全ピーク面積に対する、化学修飾されたHbA0を含む分画のピーク面積から所定のピーク面積値を控除した値の割合である修飾率から算出される、請求項1に記載の安定型A1cの測定方法。
- 前記残存率は、HbA0を含む分画のピーク面積と、HbA0として同定される分画に対し正電荷量が低い側に隣接する分画のピーク面積を所定の係数で除して得られるピーク面積補正値との合計値に対する、前記ピーク面積補正値の割合である修飾率から算出される、請求項1に記載の安定型A1cの測定方法。
- 前記残存率は、前記ヘモグロビンの時間分布におけるヘモグロビンを含む分画の全ピーク面積に対する、HbA0として同定される分画に対し正電荷量が低い側に隣接する分画のピーク面積を所定の係数で除して得られるピーク面積補正値の割合である修飾率から算出される、請求項1に記載の安定型A1cの測定方法。
- 前記残存率は、前記ヘモグロビンの時間分布におけるヘモグロビンを含む分画の全ピーク面積に対する、HbA0として同定される分画に対し正電荷量が低い側に隣接する分画のピーク面積から所定のピーク面積値を控除した値をさらに所定の係数で除して得られるピーク面積補正値の割合である修飾率から算出される、請求項1に記載の安定型A1cの測定方法。
- 前記化学修飾は、カルバミル化及びアルデヒド化のいずれか一方又は両方である、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の安定型A1cの測定方法。
- 前記ヘモグロビンの時間分布は、クロマトグラムである、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の安定型A1cの測定方法。
- 前記ヘモグロビンの時間分布は、キャピラリー電気泳動法で得られるエレクトロフェログラムである、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の安定型A1cの測定方法。
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