JP7384752B2 - 検体成分の分離分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、検体成分の分離分析方法に関する。
キャピラリー電気泳動法などの連続試料導入を用いた成分の分離分析システムにおいて、検出器で取得した吸光度などの検出データを縦軸に取り、時間を横軸に取って得られた曲線を元波形として作成し、この元波形を時間について微分して得られたエレクトロフェログラムなどの微分波形を用いて成分分析を行う技術がある。
微分波形において現れる各ピークは導入された試料中に含有される各成分に対応する。また、各ピークのトップが認められた時間の差異によって、成分を同定することができる。さらに、各ピークがエレクトロフェログラム中で占める面積は当該成分の試料中の含有量の指標となる。たとえば、血液を試料とした連続試料導入によるヘモグロビン測定システムの微分波形は、下記特許文献1及び特許文献2に示されるような形状となる。
特開2018-72336号公報 特開2013-174625号公報
キャピラリー電気泳動によるヘモグロビンの分離分析は、たとえば、ヘモグロビン分子表面が正電荷を帯びていることを利用して、キャピラリー管内で陰極へ泳動させることにより行われる。この場合、キャピラリー管内壁にヘモグロビン分子が吸着することを防ぐため、泳動液中にコンドロイチン硫酸などの陰イオンポリマーを含有させ、キャピラリー管内壁を負電荷を帯びた分子で被覆させることが行われる。しかし何らかの原因で、同じ検体を測定しても、測定のたびに各成分のピーク面積が変化することがあり得る。そのため、正確な分離分析ができない。
そこで本開示の実施態様は、検体に含まれる各成分を正しく分離分析することを課題とする。
本開示の流路液で満たされた分離流路に検体液を導入して前記検体液に含まれる検体成分を分析するための分析方法は、前記分離流路に前記検体液が導入される第1の時点から前記分離流路の所定位置で前記検体成分の光学特性値が測定される第3の時点までの時間に対する、前記第1の時点から前記流路液と前記検体液との界面が前記所定位置に到達する第2の時点までの時間の割合に相当する補正係数を得て、前記検体成分の測定された前記光学特値を前記補正係数で補正する。
本発明の実施態様では、検体液が分離流路を流れる速度と検体成分が分離流路を流れる速度との速度差に依存する濃縮率が試薬濃度の変化や環境温度などの環境要因により変化しても、各成分を正しく測定することができる。
本発明に係る分析システムの一例を示すシステム概略図である。 図1の分析システムに用いられる分析チップを示す平面図である。 図2のIII-III線に沿う断面図である。 制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。 本発明に係る分析方法を示すフロー図である。 準備工程の手順を示すフロー図である。 図6の準備工程の一工程を示す断面図である。 図6の準備工程の一工程を示す断面図である。 図6の準備工程の一工程を示す断面図である。 図6の準備工程の一工程を示す断面図である。 分析工程の手順を示すフロー図である。 波形形成工程によって形成された波形データの一例を示すグラフである。 最離間点の決定を示すグラフである。 界面検出時点以後の微分波形の一例である。 図14に示す微分波形を基に得られたエレクトロフェログラムである。
本開示の流路液で満たされた分離流路に検体液を導入して前記検体液に含まれる検体成分を分析するための分析方法は、分離流路に検体液が導入される第1の時点から前記分離流路の所定位置で前記検体成分の光学特性値が測定される第3の時点までの時間に対する、前記第1の時点から前記流路液と前記検体液との界面が前記所定位置に到達する第2の時点までの時間の割合に相当する補正係数を得る。換言すると、検体液が分離流路を流れる速度に対する検体成分が分離流路を流れる速度の割合に相当する補正係数を得る。そして、得た補正係数で測定された光学特値を補正する。
分離分析方法は、流路内を流れる検体成分の移動速度の差に基づいて分離分析する方法であればよい。検体に含まれる各検体成分は、分離流路をその各検体成分の性質に応じたそれぞれの移動速度で流れる。そのため、各検体成分は、分離流路を流れるにつれて分離される。そして分離流路で分離された各成分を検出することで、各成分を同定、又は定量するものである。分離分析方法は、たとえば、電気泳動、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーでもよい。分離分析方法は、検体や検体成分の種類、性質などを考慮して、適宜選択できる。特に、温度影響や環境影響によって、流路中の検体成分の移動速度が変動する分離分析方法においては、本発明は特に有用である。また、前記分離方法に応じて、上述の分離流路は、カラムともキャピラリー管とも称される。
分離分析方法としては、特にキャピラリー電気泳動が好ましい。キャピラリー電気泳動の分離条件は、検体の種類や性質、分離する検体成分の種類、検体成分の性質などを考慮して、適宜変更することができる。たとえば、検体成分が有する正電荷量の違いに応じて分離する場合は、検体液が前記キャピラリー管の両端にそれぞれ設置された陽極及び陰極のうち、陰極に向かって泳動されるものである。したがって泳動液には、陰イオンポリマーが含有されていることが望ましい。また、この陰イオンポリマーは、コンドロイチン硫酸であることが望ましい。また、たとえば、検体成分が有する負電荷量の違いに応じて分離する場合は、前記キャピラリー管の両端にそれぞれ設置された陽極及び陰極のうち、陽極に向かって泳動されるものである。したがって泳動液には、陽イオンポリマーが含有されていることが望ましい。
光学特性値の単位時間当たりの変化量の時間分布とは、縦軸に、光学特性値の単位時間当たりの変化量、横軸に光学特性値の単位時間当たりの変化量に対応する時間としてグラフに表したものである。光学特性値の単位時間当たりの変化量の時間分布は、キャピラリー電気泳動法の測定結果から得られるエレクトロフェログラム、又は液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーの測定結果から得られるクロマトグラムを含む。横軸は分析を開始した時点を基準点としてもよいし、あるいは、検体成分が分離流路に導入された時点を基準点としてもよい。キャピラリー電気泳動法においては、電圧を印加した時点を横軸の基準点として、エレクトロフェログラムを作成してもよい。
分離分析方法においては、まず分離流路内は、検体成分の分離分析前に、流路液で満たす。流路液は、たとえば、キャピラリー電気泳動法では泳動液、液体クロマトグラフィーでは溶離液である。キャピラリー管に泳動液を満たす方法は適宜選択できる。たとえば、ポンプを用いて、キャピラリー管に接続する泳動槽からキャピラリー管に泳動液を送液することで、キャピラリー管に泳動液を満たしてもよい。
そして、検出部を有する分離流路に、検体成分を含む検体液を連続的に導入する。分離流路への検体液の導入方法は適宜選択できる。たとえばヘモグロビン分子をキャピラリー電気泳動法で分離分析する場合、泳動液で満たされたキャピラリー管の両端に一対の電極を配置する。そしてキャピラリー管の陽極側の端部に検体液を接触させる。そしてキャピラリー管に電圧を印加して電気泳動を開始すると、キャピラリー管の内部の泳動液は電気浸透流として陽極側から陰極側に流れる。すると、泳動液が陽極側から陰極側に流れるに伴い、電気浸透流の速度でヘモグロビン成分を含む検体液がキャピラリー管の陽極側から導入される。そして、検体液とキャピラリー管を満たしていた泳動液の界面は維持されたまま、検体液は電気浸透流の速度でキャピラリー管を流れ、界面はキャピラリー管に設けられた検出部に到達する。これと同時に、電気浸透流の速度でキャピラリー管に導入されたヘモグロビン成分は、その各ヘモグロビン分子の性質に応じたそれぞれの移動速度でキャピラリー管を流れ、キャピラリー管に設けられた検出部に到達する。
たとえば、キャピラリー管に含まれる泳動液にコンドロイチン硫酸のような陰イオンポリマーが含有されているときには、この陰イオンポリマーは陰極から陽極に向けて流れる。すなわち電気浸透流の流れる方向とは逆方向に動いている。そしてヘモグロビン分子表面の正電荷が多いほど、陰イオンポリマーに静電的に吸着し、捕捉されやすくなる。つまりヘモグロビン分子はキャピラリー管内では上記したように電気浸透流による陽極から陰極への方向への力と陰イオンポリマーによる電気浸透流とは逆方向である陰極から陽極への方向への力を受ける。よって、ヘモグロビン分子表面の正電荷が多いほど、より大きな電気浸透流に対向する力を受けることで、より遅い泳動速度で陰極側に移動する。
このように、キャピラリー管に検体中の成分が導入される速度と、キャピラリー管内をその成分が流れる速度に速度差が生じるため、検体中の成分がキャピラリー管の検出部に到達したときの検体成分の濃度は、その速度差に応じて、変化する。つまり、キャピラリー管内をその成分が流れる速度は、キャピラリー管に検体中の成分が導入される速度よりも遅いため、キャピラリー管の検出部に到達したときの検体成分の濃度は、キャピラリー管に導入される前よりも、高くなっている。
次に、検出部に到達した検体液に含まれる検体成分の光学特性を検出し、光学特性値の単位時間当たりの変化量を算出する。検体液は分離流路に連続的に送液されるため、最初は移動速度の速い成分のみが検出部で測定されるが、徐々に移動速度の遅い成分が加わっていく。そのため、検出部で測定した検体成分の光学特性値を用いて、横軸を経過時間、及び縦軸を光学特性値としてグラフを描くと、経過時間につれて単調に増加する曲線(たとえば、吸光度曲線)が得られる。換言すると、検出部に到達した検体液には、分離流路を流れる移動速度が検体液と同じ検体成分である等速成分に加えて、等速成分が分離流路に導入される時点よりも早い時点で分離流路に導入される、検体液より移動速度が遅い検体成分である低速成分や、等速成分が分離流路に導入される時点よりも後の時点で分離流路に導入される、検体液より移動速度が速い高速成分が含まれる。つまり、検出部に到達した検体液には、分離流路を流れる移動速度が検体液と同じ検体成分に加えて、異なる検体成分も含まれる。そのため、光学特性値は、分離流路を流れる移動速度が異なる検体成分も含めた値として得られ、そのままの光学特性値では検体成分の分離分析に用いることができない。
そこで、分離流路を流れる検体液の光学特性値を所定の時間間隔で連続的に測定し、その光学特性値の単位時間当たりの変化量を算出する。この光学特性値の単位時間当たりの変化量は、検出部に到達した検体液に含まれる検体成分であって、分離流路を流れる移動速度が同じ検体成分の濃度の変化量を示す。そのため、光学特性値の単位時間当たりの変化量を用いて、光学特性値の単位時間当たりの変化量の時間分布を作成し、その時間分布から得られたピーク面積を求める。これにより分離流路を流れる移動速度が同じ検体成分の分離分析ができる。光学特性値の単位時間当たりの変化量は、光学特性値を時間で微分した値ともいえる。
光学特性値の単位時間当たりの変化量の時間分布には、山(ピーク)と谷(ボトム)とをもった曲線が描かれる。そして、山として描かれるピークは、流路を流れる移動速度が同じ検体成分が集まった分画であり、その面積は、検出部に到達した検体液に含まれる検体成分の濃度の変化量の積算値を示す。換言すると、その面積は分離流路に検体中の成分が導入される速度と分離流路をその成分が流れる速度の速度差による濃縮率を加味した値である。そのため、このピーク面積は、検体液が分離流路を流れる速度と検体成分が分離流路を流れる速度の速度差が環境要因などの何らかの原因で変化し、検体成分の濃縮される割合が変化すると変化する。よって正確な検体成分の分離分析ができない。この課題は、検体成分が分離流路内を移動する速度の違いに基づいて検体成分を分離する分離流路に検体液を連続的に流し、その分離流路を流れる検体液の光学特性値の単位時間当たりの変化量から検体成分を分離分析する方法であれば生じる。
キャピラリー電気泳動法を例に挙げて説明すると、キャピラリー管内に導入された検体液に含まれる検体成分は、キャピラリー管内を電気浸透流よりも遅い速度で流れている。一方で、その検体液は電気浸透流としてキャピラリー管内を流れ、それに伴いキャピラリー管外からキャピラリー管内に新たな検体液が連続的に供給される。そのため、その検体に含まれるヘモグロビン成分は、キャピラリー管内に導入される際に濃縮され、キャピラリー管外の濃度よりも高い濃度で、キャピラリー管の測定部に到達し、検出される。そのため、光学特性値の単位時間当たりの変化量は、ヘモグロビン成分の濃度だけでなく、上述のキャピラリー管内を検体成分が移動する速度と電気浸透流の速度との速度差による濃縮の影響を加味した値として得られる。
キャピラリー管を流れる電気浸透流の速度や検体成分の移動速度は、環境温度の変化による泳動液や検体液のpH変化や、長期間の保存による泳動液中の塩濃度の増加などの環境要因によって変化する。そのため、キャピラリー管内に検体成分が供給される速度と、その検体成分がキャピラリー管内で流れる速度との間に速度差も、同様に環境要因によって変化する。すると、そのヘモグロビン成分が測定部に到達する際の濃度が変化し、光学特性値の単位時間当たりの変化量は変化する。そのため、光学特性値の単位時間当たりの変化量から得られるエレクトロフェログラムから算出されるピーク面積も変動し、正確なヘモグロビン成分の分離分析ができない。
そこで、検体液が分離流路を流れる速度(V0)に対する、検体成分が分離流路を流れる速度(Vx)の割合又は比(Vx/V0)に相当する補正係数を算出する。そして、分離流路を流れる前記検体液の光学特性を検出して得られる、光学特性値の単位時間当たりの変化量の時間分布から、この補正係数で補正された検体成分を含む分画のピーク面積を算出する。この補正されたピーク面積は、検体液が分離流路を流れる速度と検体成分が分離流路を流れる速度の速度差により生じる濃縮によって変動した面積を排除した面積になる。そのため、試薬濃度の変化や環境温度などの環境要因によって、検体液が分離流路を流れる速度と検体成分が分離流路を流れる速度の速度差が変化しても、その速度差に依存しない検体成分のピーク面積を算出でき、これに基づいて正確な検体成分の分離分析ができる。この補正係数は、分離流路に検体液が導入される際に、検体液が分離流路を流れる速度と検体成分が分離流路を流れる速度の速度差によって、検体液に含まれるその検体成分が濃縮される割合の逆数といえる。
補正されたピーク面積は、光学特性値の単位時間当たりの変化量の時間分布から検体成分を含む分画のピーク面積を算出する工程において、補正係数を用いて算出すればよい。たとえば、光学特性値の単位時間当たりの変化量を、光学特性値の単位時間当たりの変化量に対応する検体成分の補正係数で乗じて補正する。そして補正して得られた光学特性値の単位時間当たりの変化量から、光学特性値の単位時間当たりの変化量の時間分布を作成し、検体成分を含む分画のピーク面積を算出してもよい。また、補正された光学特性値の単位時間当たりの変化量の時間分布はピーク面積を算出する部分だけを作成してもよいし、ピーク面積を算出しない部分を含めて作成してもよい。
また、光学特性値の単位時間当たりの変化量から、光学特性値の単位時間当たりの変化量の時間分布を作成し、検体成分を含む分画のピーク面積を算出する。そして、算出した検体成分を含む分画のピーク面積を、その検体成分の補正係数で乗じて補正してもよい。この場合、分画のピークトップが検出された時間を用いて補正係数を算出し、この補正係数が分画全体を代表するとみなして、ピーク面積を補正してもよい。また、分画内の複数の時間を用いてそれぞれの補正係数を算出し、その平均の補正係数が分画全体を代表するとみなして、ピーク面積を補正してもよい。
補正係数は、検体液が分離流路を流れる速度(V0)と検体成分が前記分離流路を流れる速度(Vx)を別々に測定し、検体液が分離流路を流れる速度に対する、前記検体成分が前記分離流路を流れる速度の割合(Vx/V0)を算出してもよい。検体液が分離流路を流れる速度は、たとえば、分離流路を流れる検体の単位時間当たりの量を分離流路の断面積で除して算出してもよい。また検体成分が分離流路を流れる速度は、たとえば、検体液が検体流路に導入された時点(第1の時点)から、検体流路上に設けられた検体成分を検出する検出部で検体成分が検出された時点(第3の時点)までの時間で、検体流路の導入口から検出部までの距離を除することで算出してもよい。
ここで、Vxを検体成分の速度、V0を検体液の速度、Lxを検体成分が分離流路を移動する距離、L0を検体液が分離流路を移動する距離、Txを検体成分がLxを移動するのにかかる時間、及び、T0を検体液がL0を移動するのにかかる時間とすると、
Vx/V0=(Lx/Tx)/(L0/T0)
となる。そして、Lx=L0である場合は、
Vx/V0=T0/Tx
となる。このように、速度の割合は時間の割合で置き換えることができる。
検体成分と検体液と分離流路を満たす流路液の界面を同じ検出部で検出する場合は、分離流路に検体液の導入を開始した時点から検体成分を検出部で検出した時点までの時間(Tx)に対する、分離流路に検体液の導入を開始した時点から検体液と分離流路を満たす流路液の界面を検体流路上の検出部で検出した時点までの時間(T0)の割合(T0/Tx)を、補正係数としてもよい。検体液と分離流路を満たす流路液の界面は、検体液が移動する速度で分離流路を移動する。そして、検体成分と検体液と分離流路を満たす流路液の界面が移動する距離は、ともに分離流路の端部から検出部までの距離だからである。
キャピラリー電気泳動法を例に説明すると、上述したように、泳動液が満たされているキャピラリー管の両端に電圧を印加すると、キャピラリー管内に一対の電極のうちの一方(たとえば、陰極)へ向けて電気浸透流が生じる。すると、キャピラリー管を満たしている泳動液が一方(たとえば、陰極)に向けて流れ、キャピラリー管の他方(たとえば、陽極)の導入口に接している検体液が、キャピラリー管に導入される。そのため、検体流路に検体液の導入を開始した時点を、キャピラリー管に電圧印加を開始した時点として補正係数を算出してもよい。
上述の分析方法は、検体測定、フェログラムの作成、補正係数の算出、光学測定値の補正を一連で行っている。この他にも、
(1)工場出荷時に予め補正係数を求めておいて、その補正係数をメモリに保存し、実際の検体測定時に保存した補正係数を使って補正する。
(2)分析装置を最初に使用する時に実際の検体で補正係数を求めて補正する。
(3)分析装置を毎回使用するごとに実際の検体で補正係数を求めて補正する。
など、種々の方法が考えられる。
検体液と分離流路とを満たす流路液の界面は、検体液が分離流路を流れる速度と同じ速度で分離流路を流れる物質を検体液に加えることで形成してもよい。換言すると、分離流路に流しても分離されない物質を検体液に加えることで形成してもよい。検体に分離流路に流しても分離されない物質を直接加えてもよいし、分離流路に流しても分離されない物質を加えた希釈液で検体液を希釈することで、検体液に加えてもよい。これにより、検体液と流路液に、分離流路に流しても分離されない物質の濃度の差が生まれ、界面を形成できる。なお、検体液を希釈液で希釈した液を検体液としてもよい。
キャピラリー電気泳動法を例に検体液と分離流路とを満たす流路液の界面について説明する。たとえば、分子内塩を含む希釈液で検体を希釈する。これにより、希釈液で希釈された検体液と、キャピラリー管内を満たしている泳動液との間に、分子内塩の濃度差が生じ、界面が形成される。分子内塩は1分子内に正電荷と負電荷との両方を持つため、検体成分の電荷量の違いに応じて検体成分を分離するキャピラリー電気泳動においては、キャピラリー管を流れる検体液と同じ速度でキャピラリー管を移動する。そのため、分子内塩の濃度差で形成した界面を検出することで、キャピラリー管を流れる検体液の移動速度を測定できる。分子内塩は、好ましくは、低分子の分子内塩である。また、界面は検体液と泳動液との間に分子内塩の濃度差を生じさせて形成させればよく、検体液よりも十分に高い濃度で分子内塩を含む泳動液を用いることで形成してもよい。また、このような分子内塩としては、3-(1-ピリジノ)プロパンスルホン酸が好ましい。界面の検出方法は、界面で生じる屈折率の違いを検出してもよいし、分子内塩自体を検出してもよい。
光学特性は、検体成分を検出できる光学的な性質である。たとえば、検体成分が有する吸光波長、発光波長、励起光の波長が挙げられる。光学特性値は、光学特性を検出して得られる光学特性値の強度であり、吸光度、発光強度、蛍光強度が挙げられる。分離流路に設ける検出部は、検出する光学特性に応じて適宜用いることができる。たとえば吸光度計、発光検出器、蛍光検出器である。
本発明における検体液は、血液や尿などの生体検体であってもよいし、それ以外の検体であってもよい。また、気体や固体に含まれる検体成分を抽出した液体であってもよい。本開示においては、特に生体検体であることが好ましく、血液であることがより好ましい。また、検体液は、血液のような検体を緩衝液など適当な希釈液で希釈した液であってもよい。たとえば、キャピラリー電気泳動の場合、検体を泳動液又は泳動液に似た組成の溶液で希釈することが好ましい。
また、本発明における検体成分は、分析の対象となり得る成分であればよい。たとえば、正電荷、又は負電荷を有する成分が挙げられる。このような検体成分としては、特にヘモグロビンであることが好ましい。
なお、上記では、検体成分がキャピラリー管を流れる速度が、検体成分が流路内に供給される速度よりも遅い場合について説明した。しかし、検体成分が流路内を流れる速度が、検体成分が流路内に供給される速度よりも速い場合も同様に、本発明を実施できる。つまり、検体成分が流路内を流れる速度が、検体成分が流路内に供給される速度よりも速い場合は、その検体成分は、キャピラリー管外での濃度よりも低い濃度で、キャピラリー管の検出部位に到達し、検出される。そのため、光学特性値の単位時間当たりの変化量は検体成分の濃度だけでなく、上述の速度差による希釈の影響を加味された値として得られる。つまり、検体成分の濃度が示す値よりも低い値として得られる。そこで、上述の補正係数を用いて同様にシグナル強度の単位時間当たりの変化量を補正することで、各成分を正しく分離分析できる。
以下、本開示における実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、キャピラリー電気泳動を例に挙げて説明するが、上述のように、本発明は、キャピラリー電気泳動に限定されるものではない。
[分析システム]
図1は、本開示の安定型A1cの測定方法が実施される分析システムA1の一例の概略構成を示している。分析システムA1は、分析装置1及び分析チップ2を備えて構成されている。分析システムA1は、人体から採取された血液である血液検体Saを対象として血中ヘモグロビンの分子表面電荷に基づいて、陽イオン交換を原理とする分離分析を実行するシステムである。
<分析チップの準備>
分析チップ2は、血液検体Saを保持し、かつ分析装置1に装填された状態で血液検体Saを対象とした分析の場を提供するものである。本実施形態においては、分析チップ2は、1回の分析を終えた後に廃棄されることが意図された、いわゆるディスポーザブルタイプの分析チップとして構成されている。図2及び図3に示すように、分析チップ2は、本体21、混合槽22、導入槽23、フィルタ24、排出槽25、電極槽26、キャピラリー管27及び連絡流路28を備えている。図2は、分析チップ2の平面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。なお、分析チップ2は、ディスポーザブルタイプのものに限定されず、複数回の分析に用いられるものであってもよい。また、本実施形態の分析システムは、別体の分析チップ2を分析装置1に装填する構成に限定されず、分析チップ2と同様の機能を果たす機能部位が分析装置1に一体に組み込まれた構成であってもよい。
本体21は、分析チップ2の土台となるものであり、その材質は特に限定されず、たとえば、ガラス、溶融シリカ、プラスチック等があげられる。本実施形態においては、本体21は、図3における上側部分2Aと下側部分2Bとが別体に形成されており、これらが互いに結合された構成である。なお、これに限らず、たとえば、本体21を一体的に形成してもよい。
混合槽22は、後述する血液検体Saと希釈液Ldとを混合する混合工程が行われる箇所の一例である。混合槽22は、たとえば、本体21の上記上側部分2Aに形成された貫通孔によって、上方に開口した凹部として構成されている。導入槽23は、混合槽22における混合工程によって得られた試料溶液としての検体液Smが導入される槽である。導入槽23は、たとえば、本体21の上記上側部分2Aに形成された貫通孔によって、上方に開口した凹部として構成されている。
フィルタ24は、導入槽23への導入経路の一例である導入槽23の開口部に設けられている。フィルタ24の具体的構成は限定されず、好適な例として、たとえばセルロースアセテート膜フィルタ(ADVANTEC社製、孔径0.45μm)が挙げられる。
排出槽25は、電気泳動法における電気浸透流の下流側に位置する槽である。排出槽25は、たとえば、本体21の上記上側部分2Aに形成された貫通孔によって,上方に開口した凹部として構成されている。電極槽26は、電気泳動法による分析工程において、陽極31が挿入される槽である。電極槽26は、たとえば、本体21の上記上側部分2Aに形成された貫通孔によって、上方に開口した凹部として構成されている。連絡流路28は、導入槽23と電極槽26とを繋いでおり、導入槽23と電極槽26との導通経路を構成している。
キャピラリー管27は、導入槽23と排出槽25とを繋ぐ微細流路であり、電気泳動法における電気浸透流(EOF、electro-osmotic flow)が生じる場である。キャピラリー管27は、たとえば本体21の上記下側部分2Bに形成された溝として構成されている。なお、本体21には、キャピラリー管27への光の照射及びキャピラリー管27を透過した光の出射を促進するための凹部等が適宜形成されていてもよい。キャピラリー管27のサイズは特に限定されないが、その一例を挙げると、その幅が25μm~100μm、その深さが25μm~100μm、その長さが5mm~150mmである。分析チップ2全体のサイズは、キャピラリー管27のサイズ及び混合槽22、導入槽23、排出槽25及び電極槽26のサイズや配置等に応じて適宜設定される。
なお、上記構成の分析チップ2は一例であって、電気泳動法による分析が可能な構成の分析チップを適宜採用することができる。
<分析装置>
分析装置1は、血液検体Saが点着された分析チップ2が装填された状態で、血液検体Saを対象とした分析処理を行う。分析装置1は、図1に示すように、陽極31,陰極32、光源41、光学フィルタ42、レンズ43、スリット44、検出器5、分注器6、ポンプ61、希釈液槽71、泳動液槽72及び制御部8を備えている。なお、光源41、光学フィルタ42、レンズ43及び検出器5は、本発明でいう測定部の一例を構成する。
陽極31及び陰極32は、電気泳動法においてキャピラリー管27に所定の電圧を印加するための一対の電極である。陽極31は、分析チップ2の電極槽26に挿入されるものであり、陰極32は、分析チップ2の排出槽25に挿入されるものである。陽極31及び陰極32の間に印加される電圧は特に限定されないが、たとえば0.5kV~20kVである。
光源41は、電気泳動法において光学測定値としての吸光度を測定するための光を発する部位である。光源41は、たとえば所定の波長域の光を出射するLEDチップを具備する。光学フィルタ42は、光源41からの光のうち所定の波長の光を減衰させつつ、その余の波長の光を透過させるものである。レンズ43は、光学フィルタ42を透過した光を分析チップ2のキャピラリー管27の分析箇所へと集光するためのものである。スリット44は、レンズ43によって集光された光のうち、散乱などを引き起こしうる余分な光を除去するためのものである。
検出器5は、分析チップ2のキャピラリー管27を透過してきた光源41からの光を受光するものであり、たとえばフォトダイオードやフォトICなどを具備して構成されている。
このように、光源41から発した光が検出器5へと至る経路が光路である。そして、当該光路がキャピラリー管27と交わる位置でそのキャピラリー管27を流れる溶液(すなわち、試料溶液及び泳動液のいずれか又はその混合溶液)について光学測定値が測定される。すなわち、キャピラリー管27において光源41から検出器5へ至る光路が交わる位置が、光学測定値の測定部である。この光学測定値としては、たとえば吸光度が挙げられる。吸光度は、該光路の光がキャピラリー管27を流れる溶液によって吸収された度合いを表すものであり、入射光強度と透過光強度の比の常用対数の値の絶対値を表したものである。この場合、検出器5としては汎用的な分光光度計を利用することができる。なお、吸光度を使用せずとも、単純に透過光強度の値そのものなど、光学測定値であれば本発明に利用することができる。以下においては、光学測定値として吸光度を使用した場合を例に説明する。
分注器6は、所望の量の希釈液Ldや泳動液Lm及び検体液Smを分注するものであり、たとえばノズルを含む。分注器6は図示しない駆動機構によって分析装置1内の複数の所定位置を自在に移動可能である。ポンプ61は、分注器6への吸引源及び吐出源である。また、ポンプ61は、分析装置1に設けられた図示しないポートの吸引源及び吐出源として用いてもよい。これらのポートは、泳動液Lmの充填などに用いられる。また、ポンプ61とは別の専用のポンプを備えてもよい。
希釈液槽71は、希釈液Ldを貯蔵するための槽である。希釈液槽71は、分析装置1に恒久的に設置された槽でもよいし、所定量の希釈液Ldが封入された容器が分析装置1に装填されたものであってもよい。泳動液槽72は、泳動液Lmを貯蔵するための槽である。泳動液槽72は、分析装置1に恒久的に設置された槽でもよいし、所定量の泳動液Lmが封入された容器が分析装置1に装填されたものであってもよい。
制御部8は、分析装置1における各部を制御するものである。制御部8は、図4のハードウェア構成に示すように、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83及びストレージ84を有する。各構成は、バス89を介して相互に通信可能に接続されている。
CPU81は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU81は、ROM82又はストレージ84からプログラムを読み出し、RAM83を作業領域としてプログラムを実行する。CPU81は、ROM82又はストレージ84に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
ROM82は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM83は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ84は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本態様では、ROM82又はストレージ84には、測定や判定に関するプログラムや各種データが格納されている。また、ストレージ84には、測定データを保存しておくこともできる。
制御部8は、上記ハードウェア構成のうちCPU81が、前記したプログラムを実行することによって、分析装置10において図5に示すような各工程を実施する。これらの工程の詳細については後述する。
<希釈液、泳動液、検体液の調製>
希釈液Ldは、血液検体Saと混合されることにより、試料溶液としての検体液Smを生成するためのものである。希釈液Ldの主剤は特に限定されず、水、生理食塩水が挙げられ、好ましい例として後述する泳動液Lmと類似の成分の液体が挙げられる。また、希釈液Ldは、上記主剤の他に、必要に応じて添加物が添加されてもよい。本実施形態では、この添加物として、1-(3-スルホプロピル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩が希釈液Ldに添加される。この分子内塩は、検体液Smと泳動液Lmとでその濃度差を生じさせるために添加される。この分子内塩は、静電気力の影響を受けずに電気浸透流の流れでキャピラリー管27内を移動する。そのため、この分子内塩濃度の差により生じる検体液Smと泳動液Lmとの界面が検出されるまでの時間は、電気浸透流の速度の基準となる。
なお、このような添加物としては、キャピラリー管27内での液体の流れ以外に泳動速度に影響を受けないような物質であればよく、上記分子内塩以外にも、キャピラリー管27内での分離方法によって適宜選択できる。ただし、キャピラリー電気泳動法で分離することから、低分子の電荷を有していない物質が好ましい。また、検体液Smと泳動液Lmとの間に、この物質の濃度差が生じればよいため、希釈液Ldにこの成分が含まれていてもよいし、泳動液Lmに含まれていてもよい。さらには、このような濃度差が生じるのであれば、希釈液Ldと泳動液Lmとの両方に含まれていてもよい。
また、希釈液Ldに含まれるその他の組成も、分離方法によって適宜選択できる。
泳動液Lmは、電気泳動法による分析工程において、排出槽25及びキャピラリー管27に充填され、電気泳動法における電気浸透流を生じさせる媒体である。泳動液Lmは、特に制限されないが、酸を用いたものが望ましい。上記酸は、たとえば、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、フタル酸、マロン酸、リンゴ酸がある。また、泳動液Lmは、弱塩基を含むことが好ましい。上記弱塩基としては、たとえば、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリス等がある。泳動液LmのpHは、たとえば、pH4.5~6の範囲である。泳動液Lmのバッファーの種類は、MES、ADA、ACES、BES、MOPS、TES、HEPES等がある。また、泳動液Lmにも、希釈液Ldの説明で述べたのと同様に、必要に応じて添加物が添加されてもよい。本実施形態では、この添加物として、コンドロイチン硫酸が泳動液Lmに添加される。コンドロイチン硫酸は、キャピラリー管27の内壁を陰イオンポリマーで被覆する目的に加え、ヘモグロビン分子表面の正電荷と結合することで、正電荷の多寡に応じて泳動速度に差を付ける目的で添加される。
また、泳動液Lmに含まれるその他の組成も、分離方法によって適宜選択できる。
なお、泳動液Lm及び希釈液Ldとしては、後述する界面検出時点において、血液検体が希釈液Ldで希釈された検体液Smと泳動液Lmとの界面の到達に起因する光学測定値の変化が生じる組み合わせであれば任意に選択できる。
次に、分析システムA1を用いて行う本発明に係る分析方法の一例について、以下に説明する。図5は、本実施形態の分析方法を示すフロー図である。本分析方法は、準備工程S1、電気泳動工程S2、及び分析工程S3を有する。
<準備工程S1>
図6は、準備工程S1における具体的な手順を示すフロー図である。本実施形態において、準備工程S1は、同図に示すように、試料採取工程S11、混合工程S12、泳動液充填工程S13、及び導入工程S14を有する。
<試料採取工程S11>
まず、血液検体Saを用意する。本実施形態においては、血液検体Saは、人体から採取された血液である。血液としては、全血、成分分離血液又は溶血処理が施されたもの等であってもよい。そして、血液検体Saが分注された分析チップ2を分析装置1に装填する。
<混合工程S12>
次いで、血液検体Saと希釈液Ldとを混合する。具体的には、図7に示すように、所定量の血液検体Saが分析チップ2の混合槽22に点着されている。次いで、分注器6によって希釈液槽71の希釈液Ldを所定量吸引し、図8に示すように、所定量の希釈液Ldを分析チップ2の混合槽22に分注する。そして、ポンプ61を吸引源及び吐出源として、分注器6から希釈液Ldの吸引及び吐出を繰り返す。これにより、混合槽22において血液検体Saと希釈液Ldとが混合され、試料溶液としての検体液Smが得られる。血液検体Saと希釈液Ldとの混合は、分注器6の吸引及び吐出以外の方法によって行ってもよい。
<泳動液充填工程S13>
次いで、分注器6によって泳動液槽72の泳動液Lmを所定量吸引し、図9に示すように、所定量の泳動液Lmを分析チップ2の排出槽25に分注する。そして、上述したポートで排出槽25の上方の開口を覆い、ポートから排出槽25内部に空気を吐出や吸引を適宜実施するなどの手法により、排出槽25及びキャピラリー管27に泳動液Lmを充填する。
<導入工程S14>
次いで、図10に示すように、混合槽22から所定量の検体液Smを分注器6によって採取する。そして、分注器6から導入槽23に所定量の検体液Smを導入する。この導入においては、導入槽23への導入経路の一例である導入槽23の開口部に設けられたフィルタ24を検体液Smが通過する。また、本実施形態においては、検体液Smが導入槽23から連絡流路28を通じて電極槽26へと充填される。この際、導入槽23から連絡流路28を介した電極槽26への検体液Smの流動が起こることとなるが、導入槽23から連絡流路28へは、キャピラリー管27の長手方向に対してほぼ直交する方向へ検体液Smが流動する(図2参照)。一方、キャピラリー管27の泳動液Lmはこの段階ではほとんど移動していない。この結果、導入槽23とキャピラリー管27との接続部(図3参照)においてせん断流が生じることで、検体液Smと泳動液Lmとの明瞭な界面が生じた状態となる。なお、検体液Smと泳動液Lmとの界面が生じる方法であれば、物理的に導入槽23とキャピラリー管27との境界に移動可能なフィルタを設けたり、制御的に流動方法を変更したりする等、あらゆる手段を採用することができる。
<電気泳動工程S2>
次いで、電極槽26(図2参照)に陽極31を挿入し、排出槽25に陰極32(図1参照)を挿入する。続いて、制御部8からの指示により陽極31及び陰極32に電圧を印加する。この電圧は、たとえば0.5kV~20kVである。これにより電気浸透流を生じさせ、導入槽23から排出槽25へとキャピラリー管27中において検体液Smを徐々に移動させる。この際、導入槽23に検体液Smが充填されているため、キャピラリー管27において検体液Smが連続的に供給されている状態で、上記分析成分であるヘモグロビン(Hb)を電気泳動させることとなる。このとき、検体液Smと泳動液Lmとの上記した界面が維持された状態のまま、検体液Smは泳動液Lmを下流方向へ押しやりつつキャピラリー管27を泳動していくことになる。また、光源41からの発光を開始し、検出器5による吸光度の測定を行う。そして、陽極31及び陰極32への電圧印加開始時からの経過時間と吸光度との関係を測定する。
このとき、導入槽23及びキャピラリー管27においてヘモグロビンは、電気浸透流により陰極32側へ移動させられる力と、ヘモグロビンの静電気力により陰極32側へ移動させられる力と、コンドロイチン硫酸と結合することで、陽極31側に押し戻される力とを受ける。
ここで、導入槽23の泳動方向に垂直な断面積は、キャピラリー管27の断面積よりも非常に大きい。そのため、この導入槽23内に電位差はほとんどなく、ヘモグロビンの静電気力により陰極32側へ移動させられる力と、コンドロイチン硫酸と結合することで、陽極31側に押し戻される力は、ほとんど働かない。そのため、電気浸透流による力を受けて、ヘモグロビンはキャピラリー管27に導入される。
一方、キャピラリー管27の断面積は、導入槽23の泳動方向に垂直な断面積に対して非常に小さいため、キャピラリー管27内の電位差は導入槽23内の電位差よりも大きくなる。そのため、キャピラリー管27において、ヘモグロビンは、電気浸透流により陰極32側へ移動させられる力と、ヘモグロビンの静電気力により陰極32側へ移動させられる力と、コンドロイチン硫酸と結合することで、陽極31側に押し戻される力とを受ける。しかし、ヘモグロビンの正電荷に由来する静電気力は、電気浸透流による力やコンドロイチン硫酸と結合することで陽極31側に押し戻される力と比べて非常に小さく、無視できる。そして、電気浸透流の力はコンドロイチン硫酸と結合することで陽極31側に押し戻される力と比較して大きい。そのため、キャピラリー管27内においては、ヘモグロビンは、電気浸透流による力からコンドロイチン硫酸と結合することで陽極31側に押し戻される力を差し引いた合計の力を受けて、陽極31側から陰極32側に移動する。つまりヘモグロビンはキャピラリー管27に電気浸透流の速度で供給されるが、キャピラリー管27内は電気浸透流よりも遅い速度で泳動する。このコンドロイチン硫酸と結合することで陽極31側に押し戻される力は、ヘモグロビンの種類によって異なる。具体的には、分子表面の正電荷が多いほど、コンドロイチン硫酸との結合も多くなるため、この陽極31側に押し戻される力は大きくなる。したがって、ヘモグロビンの種類、具体的には分子表面の正電荷が多いヘモグロビンほどキャピラリー流路内の移動速度が遅くなり、これによりヘモグロビンの各成分が分離される。一方、キャピラリー管27内に検体液Smに含まれるヘモグロビンが供給される電気浸透流の速度はそのヘモグロビンがキャピラリー管27内で移動する速度よりも遅く、速度差がある。そのため、キャピラリー管27の検体液の導入口においてヘモグロビンは濃縮される。そして、ヘモグロビン分子表面の正電荷が多いほど上述の速度差が大きくなるため、濃縮率は高くなる。
<分析工程S3>
ここで、検体液Sm中の移動速度が比較的速い成分に対応した吸光度ピークは、上記電圧印加開始時(第1の時点)からの経過時間が比較的短い時点(第3の時点)で現れる。一方、検体液Sm中の移動速度が比較的遅い成分に対応した吸光度ピークは、上記電圧印加開始時(第1の時点)からの経過時間が比較的長い時点(第3の時点)で現れる。このことを利用して、検体液Sm中の成分の分析(分離測定)が行われる。測定された吸光度を基に、制御部8の制御によって、図11に示す分析工程S3が実行される。本実施形態の分析工程S3は、波形形成工程S31、界面検出時間決定工程S32及び成分同定工程S33を含む。
<波形形成工程S31>
本工程においては、測定された上記吸光度を制御部8による演算処理により、エレクトロフェログラムを作成する。ここで、電圧印加開始時を測定開始時として、当該測定開始後の経過時間に対応した光学測定値である吸光度の変化を表す測定波形としてのエレクトロフェログラムが形成される。本実施形態の波形形成工程S31は、微分波形形成工程S311を含む。微分波形形成工程S311は、測定された上記吸光度を時間微分することによって微分値の波形を形成する。図12は、微分波形形成工程S311によって形成された微分波形の一例を示している。図中のx軸は時間軸であり、y軸は微分値軸である。以降の図及び説明においては、時間軸xに沿った負方向側を方向x1側及び正方向側を方向x2側とし、微分値軸yに沿った負方向側を方向y1側及び正方向側を方向y2側とする。
<界面検出時間決定工程S32>
本工程は、電圧印加によりキャピラリー管の下流方向に泳動する検体液Smと泳動液Lmとの界面が検出器5に到達した時点である界面到達時点を決定する工程である。この検体液Smと泳動液Lmとの界面は、電気泳動開始後に最初に現れるピークである。この検体液Smと泳動液Lmとの界面のピークを図13に示す。次いで、図13に示すように、この検体液Smと泳動液Lmとの界面が示すピークのうち、このエレクトロフェログラムにおける基準値Lsから微分値が最も離間している点を決定する。図示された例においては、基準値Lsから方向y2に離間した点が基準値Lsから最も離間しており、この点が最離間点PLとして決定される。ここで、前記した電気泳動工程S2において電圧の印加を開始した時点を0として、この最離間点PLが検出された時点が界面検出時点であり、電気泳動の開始(第1の時点)からこの界面検出時点(第2の時点)までの経過時間を界面検出時間とする。
<成分同定工程S33>
前記した波形形成工程S31において得られる、界面検出時点以後の微分波形の一例を、図14に示す。同図においては、x軸は電圧の印加を開始した時点を0とした泳動時間(単位:sec)を示し、y軸は吸光度を時間微分した値であるslope値(単位:mAbs/sec)を示している。すなわちこのslope値とは、経過時間につれて単調に漸増する吸光度曲線の、各時点における傾きの値であり、経過時間ごとの光学特性値の単位時間当たりの変化量である。また、泳動時間11.5秒付近のピークは、図13に示す最離間点PLであり、この最離間点PLが現れる時点における経過時間が、前記した界面検出時間決定工程で決定された界面検出時間である。このPLで表されるピークは、実際には、1-(3-スルホプロピル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩が最初に検出された時点を示している。この1-(3-スルホプロピル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩は、コンドロイチン硫酸と結合せず、流路内を電気浸透流の速度で陽極から陰極への方向に流れる。つまり、この分子内塩がキャピラリー管27に導入される際の速度と、キャピラリー管27内を流れる速度とはいずれも電気浸透流の速度であり、これらの間に速度差はない。そのため、この分子内塩を検出することで、検体液の先端を検出できる。成分同定工程S33においては、この界面検出時間を基準に、各経過時間におけるslope値の補正係数を算出して、補正された光学特性値の単位時間当たりの変化量を求めて、これにより作成したエレクトロフェログラムを基に、ヘモグロビン成分を含む分画のピーク面積を算出する。
上述のように、ヘモグロビン分子表面の正電荷が多いほど、濃縮率は高くなる。したがって、たとえば、経過時間が後のヘモグロビンであるほど、図14で表される微分波形の面積から測定される検体成分の成分量は大きくなる。つまり、同じ成分量の検体成分であっても、流路を流れる速度が遅い検体成分は、流路を流れる速度が速い成分よりも成分量が多いと測定されてしまう。
一方、希釈液Ld及び泳動液Lmの保存中に試薬濃度の変化や濃縮や環境温度の変化が生じると、電気浸透流の速度やコンドロイチン硫酸の移動速度が変化する。そのため、各種ヘモグロビン成分がキャピラリー管27に導入される前後の移動速度の差も変化し、濃縮率も変化する。すると、同じ血液検体を測定しても、保存影響や環境温度の影響で単位時間当たりの吸光度の変化量(すなわち、光学特性値の単位時間当たりの変化量としてのslope値)が変化する。その結果、この単位時間当たりの吸光度の測定結果を用いて算出した所定のヘモグロビン成分(たとえば、HbA1c)のピーク面積も変化し、この所定のヘモグロビン成分の、総ヘモグロビンに対する割合も変化する。したがって、標準検体を用いて作成した検量線に基づいてこの所定のヘモグロビン成分の値を算出すると、同じ血液検体でも測定条件や測定環境により値が変動し、正しい値を測定することができない。
このように、ヘモグロビン成分のキャピラリー管27内での移動速度に起因して濃縮を被っている光学特性値の単位時間当たりの変化量や、測定条件や測定環境により変動を被った光学特性値の単位時間当たりの変化量を、濃縮や測定環境に依存しておらず、実際のヘモグロビン成分の量を示す値に近づけるための補正が、以下の工程にて行われる。
まず、S331に示す補正後変化量決定工程において、各経過時間を界面検出時間で除した値が得られる。この値は、経過時間ごとに検出された成分が濃縮を被った率と考えられ、相対検出時間(補正係数の逆数)と称する。そして、各経過時間における光学特性値の単位時間当たりの変化量としてのslope値を、この相対検出時間で除した補正後変化量が得られる。
次に、S332に示すエレクトロフェログラム作成工程において、各経過時間に対応する補正後変化量をプロットすることで、エレクトロフェログラムが得られる。図14に示す微分波形を基に得られたエレクトロフェログラムを、図15に示す。なお、対照のため、図14に示す微分波形は破線で示している。同図によって、経過時間が大きくなるほど濃縮率が大きくなるため、実際の成分の比率がより過大に見積もられていたことが分かる。
ここで、測定条件や測定環境が、ヘモグロビン成分のキャピラリー管27内での移動速度に影響を与え、速度差が変化して、濃縮率が変化していたとしても、その測定環境における濃縮の割合を示す相対検出時間を用いて、光学特性値の単位時間当たりの変化量を補正している。したがって、上記の補正後変化量決定工程において各経過時間を界面検出時間で除した相対検出時間で光学特性値の単位時間当たりの変化量を補正することで、測定条件や測定環境の変化によるヘモグロビン測定値への影響を除外することができる。
そして、S333に示すピーク面積算出工程において、得られたエレクトロフェログラムからヘモグロビンの各成分が同定された上で、各成分のピーク面積が算出される。具体的には、界面検出時点以降で最大となるピークを有する分画がHbA0と特定される。そして、界面検出時点からHbA0のピークまでに出現する各ピークについては、界面検出時点からHbA0のピークが検出された時間までの間の経過時間に対する、界面到達時点から当該ピークの検出時間までの経過時間の比率によって当該ピークが示す成分が同定される。たとえば、図14においては、HbA1cを示すピーク(図中の斜線部分の領域)がこのようにして同定される。
そして、このようにして同定された各ピークから、各成分の量が算出される。具体的には、ある成分として同定されたピークを極大値として、その極大値を含む分画の面積を当該ピークに対応する成分の量とすることができる。ここで、その分画の両端は適宜定めることができ、たとえば、その極大値の両側にある極小値をもってその両端としてもよい。
また、各ピークのピーク面積は、ヘモグロビンを含む分画の全ピーク面積(具体的には、図14中の実線部分の面積)に対する割合として表されることとしてもよい。
なお、実際には、経過時間と吸光度とが対になっているデータが一旦、ストレージ84(図4参照)に保存され、そのデータを基にピーク面積の算出が行われることになる。よって、たとえば図14に示すような微分波形を得る工程は省いて、吸光度を時間微分した値をさらに相対検出時間で除して得られる補正後変化量を直に算出して、この補正後変化量を基にエレクトロフェログラムを作成することとしてもよい。
実施例1として、8人の被験者からそれぞれ採取したヒト静脈血を用いて、上記した実施形態のヘモグロビンの分離分析方法を実施した。これらの検体を、検体1~検体8と称する。
(1)電気泳動測定
陰イオン性擬似固定相(コンドロイチン硫酸Cナトリウム)を含む泳動液及び希釈液を使用したキャピラリー電気泳動により、HbA1cの測定を実施した。
検体液を希釈液で希釈し、その検体希釈液を導入槽に導入した。そしてキャピラリー管に電圧を印加して電気泳動を行った。電気泳動は、67μAの定電流制御によって実施した。そして電圧印加後、キャピラリー管の下流にある検出器で泳動される検体液の415nmの吸光度を40秒間にわたり、20ミリ秒間隔で取得した。
なお、希釈液は以下の組成とした。
クエン酸:40mM
コンドロイチン硫酸Cナトリウム:1%w/v
1-(3-スルホプロピル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩(東京化成工業):500mM
エマルゲンLS-110(花王):0.1%w/v
アジ化ナトリウム:0.02%w/v
上記組成に対し、pH調整用のジメチルアミノエタノールでpH6.0に調整した。
また、泳動液は以下の組成とした。
クエン酸:40mM
ピペラジン:20mM
コンドロイチン硫酸Cナトリウム:1.25%w/v
エマルゲンLS-110(花王):0.1%w/v
アジ化ナトリウム:0.02%w/v
上記組成に対し、pH調整用のジメチルアミノエタノールでpH5.0に調整した。
(2)エレクトロフェログラムの作成
得られた吸光度データを、単位時間当たりの吸光度変化量(slope値)に変換した。その後、横軸に経過時間、縦軸にslope値をとり、図14に示すようなエレクトロフェログラムを得た。横軸の経過時間においては、電圧印加を開始した時点(第1の時点)を分離分析の基準点とし、0秒の時点とした。
(3)エレクトロフェログラムの補正
得られたエレクトロフェログラムから、希釈液中に含まれる1-(3-スルホプロピル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩のピークを特定し、このピークの検出時間を、界面検出時間(T)とした。
そして、エレクトロフェログラムのT以降の全データに対して、全データのそれぞれの経過時間をTで除算することで、Tに対する全データのそれぞれの相対検出時間を算出した。この相対検出時間は、上記実施形態でいう補正係数の逆数としての意義を有する。
そして、エレクトロフェログラムのT以降の全データのそれぞれに対して、以下の式によって補正後変化量を得た。
補正後変化量=slope値÷相対検出時間(補正係数の逆数)
そして、横軸に経過時間、縦軸に補正後変化量をとり、図14に示すような補正エレクトロフェログラムを得た。
(4)HbA1c面積比率の算出
補正エレクトロフェログラムから、総ヘモグロビン量に対応するヘモグロビンを含む分画と、HbA1cを含む分画とを同定した。そして、総ヘモグロビン面積(たとえば、図15の実線部分の面積)に対する、HbA1cピーク面積(たとえば、図15の斜線を施したピークの面積)の割合である、HbA1c面積比率を算出した。
(5)検量線の作成
あらかじめ総ヘモグロビン量に対するHbA1c量の比率であるHbA1c値が既知である標準検体のHbA1c面積比率を、23℃の環境下、上記(1)~(3)の手順で、測定した。そして、HbA1c面積比率からHbA1c値を算出する検量線を作成した。
(6)環境温度影響の確認
上記した(1)~(4)の手順で、HbA1c値が異なる8つの検体のHbA1c面積比率を8℃、13℃、23℃、32℃及び37℃の環境温度条件下、測定した。そして、上記(5)で得た検量線からHbA1c値を算出した。なお、1検体の1温度条件につき4回繰り返し測定を行い、この4回の測定結果の平均値を測定値とした。そして、8検体のそれぞれについて、最も高い値と最も低い値との差として定義される最大誤差を求めた。
(7)比較例1
実施例と同じ検体にて、上記(3)の手順を行わず、上記(4)の手順では補正していないエレクトロフェログラムからHbAc面積比率を算出したものを比較例1とした。
(8)結果
実施例1及び比較例1についての結果を、下記表1及び表2にそれぞれ示す。なお、それぞれの数値は%表示である。
上記表1及び表2から、比較例1に対して実施例1では、全ての検体において環境温度の変化による測定値の誤差が小さくなっていることが分かる。したがって、本実施形態のヘモグロビンの分離分析方法を実施することで、少なくともHbA1c値をより正確に測定することができると考えられる。
実施例2として、6人の被験者からそれぞれ採取したヒト静脈血を用いて、上記した実施形態のヘモグロビンの分離分析方法を実施した。これらの検体を、検体9~検体14と称する。これら検体のうち、検体9~11は、公知の対照法によってHbCを総ヘモグロビン量に対するHbC量の比率であるHbC値で含むことが分かっている検体であり、また、検体12~14は、同じく公知の対照法によってHbFを総ヘモグロビン量に対するHbF量の比率であるHbF値で含むことが分かっている検体である。
(1)電気泳動測定
前記実施例1と同様に行った。
(2)エレクトロフェログラムの作成
前記実施例1と同様に行った。
(3)エレクトロフェログラムの補正
前記実施例1と同様に行った。
(4)HbC値及びHbF値の算出
検体9~11について、補正エレクトロフェログラムから総ヘモグロビン量に対応するヘモグロビンを含む分画とHbCを含む分画を同定した。そして、総ヘモグロビン面積(たとえば、図14の実線部分の面積)に対する、HbCピーク面積の割合である、HbC面積比率を算出した。そしてこれをHbC値とした。同様に、検体12~14について、総ヘモグロビン面積に対する、HbFピーク面積の割合である、HbF面積比率を算出した。そしてこれをHbF値とした。
(5)環境温度
上記した(1)~(4)の手順は、23℃の環境温度条件下にてそれぞれ実施した。なお、各検体につき4回繰り返し測定を行い、この4回の測定結果の平均値を測定値とした。
(6)比較例2
実施例2と同じ検体にて、上記(3)の手順を行わず、上記(4)の手順では補正していないエレクトロフェログラムからHbC値及びHbF値を算出したものを比較例1とした。
(7)結果
実施例2及び比較例2についての結果を、HbC値の測定について下記表3に、及び、HbF値の測定について下記表4にそれぞれ示す。なお、それぞれの数値は%表示である。なお、それぞれの検体について、前記の公知の対照法であらかじめ既知となっている測定値も併記した。それぞれの数値は%表示である。
上記表3及び表4から、比較例2に対して実施例2のHbC値及びHbF値は、全ての検体において対照法による測定値に近いことが分かる。これは、補正係数を用いた補正によって、検体成分の濃縮の影響を含まないピーク面積が算出され、そのピーク面積から各ヘモグロビン分画の面積比率が算出されているからである。したがって、本実施形態のヘモグロビンの分離分析方法を実施することで、検量線を用いなくても、総ヘモグロビン量に対するHbC量の比率であるHbC値、総ヘモグロビン量に対するHbF量の比率であるHbF値をより正確に測定することができると考えられる。
本発明は、キャピラリー電気泳動法によるヘモグロビンの分離分析方法に利用可能である。
A1 分析システム
1 分析装置
2 分析チップ
2A 上側部分
2B 下側部分
5 検出器
6 分注器
8 制御部
21 本体
22 混合槽
23 導入槽
24 フィルタ
25 排出槽
26 電極槽
27 キャピラリー管
28 連絡流路
31 陽極
32 陰極
41 光源
42 光学フィルタ
43 レンズ
44 スリット
61 ポンプ
71 希釈液槽
72 泳動液槽

Claims (14)

  1. 流路液で満たされた分離流路に検体液を導入して前記検体液に含まれる検体成分を分析するための検体成分の分離分析方法であって、
    前記分離流路に前記検体液が導入される第1の時点から前記分離流路の所定位置で前記検体成分の光学特性値が測定される第3の時点までの時間に対する、前記第1の時点から前記流路液と前記検体液との界面が前記所定位置に到達する第2の時点までの時間の割合に相当する補正係数を得て、
    前記検体成分の測定された前記光学特値を前記補正係数で補正する、検体成分の分離分析方法。
  2. 前記補正係数は、前記検体液が前記分離流路を流れる速度に対する前記検体成分が前記分離流路を流れる速度の割合に相当する、請求項1に記載の検体成分の分離分析方法。
  3. 前記検体成分の測定値の単位時間当たりの変化量を前記補正係数で補正し、単位時間当たりの補正された前記変化量の時間分布から前記検体成分を含む分画の面積を得て、それによって前記検体成分の測定値を前記補正係数で補正する、請求項1又は請求項2に記載の検体成分の分離分析方法。
  4. 前記検体成分の測定値の単位時間当たりの変化量の時間分布から前記検体成分を含む分画のピーク面積を算出し、前記ピーク面積を前記補正係数で補正し、それにより前記検体成分の測定値を前記補正係数で補正する、請求項1又は請求項2に記載の検体成分の分離分析方法。
  5. 前記分離分析方法は、キャピラリー電気泳動法であり、前記分離流路はキャピラリー管であり、前記流路液は泳動液であり、前記第1の時点はキャピラリー管に電圧印加を開始した時点である、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の検体成分の分離分析方法。
  6. 前記分離分析方法は、キャピラリー電気泳動法であり、前記分離流路はキャピラリー管であり、前記流路液は泳動液であり、前記第1の時点はキャピラリー管に電圧印加を開始した時点であり、前記時間分布は、エレクトロフェログラムである、請求項3又は請求項4に記載の検体成分の分離分析方法。
  7. 前記キャピラリー電気泳動法は前記検体液が前記キャピラリー管に設置された陰極に向かって泳動されるものであり、
    前記泳動液には陰イオンポリマーが含有されている、請求項5又は請求項6に記載の検体成分の分離分析方法。
  8. 前記陰イオンポリマーはコンドロイチン硫酸である、請求項7に記載の検体成分の分離分析方法。
  9. 前記泳動液は分子内塩を有する、請求項5から請求項8までのいずれか1項に記載の検体成分の分離分析方法。
  10. 前記検体液は血液を希釈液で希釈して得られる液である、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の検体成分の分離分析方法。
  11. 前記希釈液は分子内塩を有する、請求項10に記載の検体成分の分離分析方法。
  12. 前記分子内塩は3-(1-ピリジノ)プロパンスルホン酸である、請求項9又は11に記載の検体成分の分離分析方法。
  13. 前記光学特性値は吸光度である、請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の検体成分の分離分析方法。
  14. 前記検体成分はヘモグロビンである、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の検体成分の分離分析方法。
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