JP2020519598A - pH依存的抗体の調製方法 - Google Patents

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Abstract

pH依存的抗原結合の改善を示す操作された抗体を調製するための方法を開示する。該方法は、抗体CDR中の規定されたアミノ酸位置の部分集合での、ヒスチジン残基の導入に基づく。ヒスチジン置換のために選択されるアミノ酸位置の集合は、天然抗体レパートリーからの機能的抗体のCDR中でのヒスチジン出現率のヒートマップから導き出す。該方法は、pH依存的抗体バリアントを同定するためのより簡便で時間のかからないアプローチを提供する。【選択図】図1

Description

(発明の分野)
本開示は、抗体工学の分野、特に標的抗原とのpH依存的結合を示す抗体バリアントを操作するための方法、並びに該方法によって調製された抗体に関する。
(背景)
標的抗原とのpH依存的結合を示す抗体を操作することへの関心は、ますます高まっている。特に、酸性pHでの抗原結合が中性pHにおけるものと比較して低下を示す抗体を同定することに関心が集まっている。
pH感受性抗原結合を取り入れることにより、操作された抗体のインビボでの機能を改善することができる。抗体を操作すると、中性pH(例えば、pH 7.4)で高親和性抗原結合を保持し、かつ酸性pH(例えば、pH 4.5〜6.0)で結合の低下を示す場合がある。エンドソーム経路に入ると、pH依存的抗原結合により、酸性化エンドソーム(約pH 6.0)における抗体-抗原複合体の解離及びFcRnによって仲介される遊離抗体のリサイクリングが可能となり、ひいては抗体の低頻度化又は抗体用量の減少を可能にし得る抗原クリアランスの強化が促進される。
典型的に、pH依存的抗体-抗原結合は、相互作用する抗体の結合又はフォールディングの構造的変化を仲介する、イオン性ヒスチジン残基の存在に依存している。低pH値でのヒスチジンプロトン化に際し誘導される静電相互作用の変化により、結合親和性が減少し得る。
ヒスチジンを置換する様々な戦略を使用することにより、タンパク質にpH感受性を取り入れることを目指す様々なタンパク質工学アプローチが記載されている。例えば、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)の受容体相互作用部位の構造モデリングによりガイドされた合理的設計により、ヒスチジンで置換した際にpH感受性バリアントをもたらす突然変異部位を同定することが可能となった(Sarkarらの文献、Nat Biotechnol, Vol. 20, pp908-13, 2002)。しかしながら、タンパク質中のpH感受性を仲介し得る個別のヒスチジン置換位置の評価は、時間がかかり、かつ予測不能である。
代替のアプローチとして、好適なハイスループット技術、例えば酵母表面ディスプレイ(YSD)又はファージディスプレイを用いたコンビナトリアルライブラリのスクリーニングが、様々な異なるタンパク質スキャフォールド中でのpH感受性結合の操作に応用されている。Schroterらの文献、mAbs, vol. 7(1), 138-151, 2015には、可逆的pH感受性抗原結合のために抗体重鎖及び軽鎖可変ドメインを操作する一般的戦略が記載されている。このアプローチは、重鎖及び軽鎖のコンビナトリアルヒスチジン置換ライブラリの作製及びスクリーニングに依存している。このアプローチでは、ヒスチジン突然変異をVH及びVL領域の相補性決定領域(CDR)にランダムに導入する。ヒスチジン突然変異は、VHドメイン及びVLドメインのCDR中の任意のアミノ酸位置に導入することができる。ヒスチジン突然変異の割合は、ライブラリのバリアント当たり平均して3つのランダム突然変異を達成するように調整する。従って、完全なライブラリは理論上、CDR中の3つのランダムなヒスチジン置換の全ての考え得る組合わせを含むバリアントを包含する。
このコンビナトリアルライブラリアプローチは、実にTNFとのpH依存的結合を示すアダリムマブの操作されたバリアントの同定の成功を可能にした。しかしながら、この戦略は、考え得るヒスチジン置換のために、VHドメイン及びVLドメインのCDR中の全てのアミノ酸位置をサンプリングするのに要求されるライブラリのサイズが大きいことが原因で、比較的時間がかかる。さらに、この戦略では、ヒスチジン残基を不利な位置に導入することによる全体の抗体構造及び安定性は考慮されない。
(発明の概要)
標的抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体バリアントを調製するための代替方法であって、従来技術の方法より実施が簡便かつ時間のかからない、前記方法が要望されている。さらにまた、pH依存的抗原結合を示し、中性pHでの抗原結合能に過度の影響を及ぼさない、操作された抗体の同定を可能にする方法が、要望されている。
これらの要望に対処するため、本件出願人は機能的(すなわち、抗原結合性の)抗体可変ドメインの大きなレパートリーの相補性決定領域(CDR)中のヒスチジン残基の天然出現率の体系的解析を実施した。この解析の結果、本件出願人はネイティブ抗体中での天然ヒスチジン出現率の「ヒートマップ」を導き出すことができた。この「ヒートマップ」は、抗体レパートリー中にヒスチジンが天然に出現し得るCDR中の「ホットスポット」アミノ酸残基のリスト、及びまた、典型的にヒスチジンが天然には出現しないCDR中の「コールドスポット」アミノ酸残基のリストの両方を提供する。これら「ホットスポット」及び「コールドスポット」リストは、例えば合理的設計又はコンビナトリアルアプローチにおけるpH依存的抗体バリアントの操作に応用することができる。
第1の態様において、本発明は、その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を調製する方法であって:親抗体の少なくとも1つのアミノ酸残基をヒスチジン残基で置換することにより、該操作された抗体を調製することを含み、以下のホットスポットリスト:
Figure 2020519598
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基をヒスチジンで置換し、かつ以下のコールドスポットリスト:
Figure 2020519598
からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されておらず、該操作された抗体がその抗原とのpH依存的結合を示す、前記方法を提供する。
該操作された抗体は、該ヒスチジンによる置換の結果として、該親抗体と比較して、pH依存的結合の改善(すなわち、より高いpH依存性)を示す。
本発明は、その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を調製する方法であって:
(a) 抗原と結合する親抗体を提供する工程;
(b) 該親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々が少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、以下のホットスポットリスト:
Figure 2020519598
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
Figure 2020519598
からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程;
(c) 該操作されたバリアントのパネルを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし、それによって該抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を同定する工程、を含む、前記方法をさらに提供する。
工程(c)で同定された該操作された抗体は、該ヒスチジンによる置換の結果として、該親抗体と比較して、pH依存的結合の改善(すなわち、より高いpH依存性)を示す。
本発明は、その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を調製する方法であって:
(a) 抗原と結合する親抗体を同定する工程;
(b) 該親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々が少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、以下のホットスポットリスト:
Figure 2020519598
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
Figure 2020519598
からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程;
(c) 該操作されたバリアントのパネルを該標的抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし、それによってヒスチジンの存在により該抗原とのpH依存的結合が付与される選択されたアミノ酸位置を同定する工程;
(d) 該親抗体の1以上のさらに操作されたバリアントを調製する工程であって、該バリアントの各々が工程(c)で同定された2以上の選択されたアミノ酸位置にヒスチジンを含む、前記工程;及び
(e) 該さらに操作されたバリアントを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし;それによって該抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を同定する工程、を含む、前記方法をさらに提供する。
工程(e)で同定された該操作された抗体は、該ヒスチジンによる置換の結果として、該親抗体と比較して、pH依存的結合の改善(すなわち、より高いpH依存性)を示す。
第2の態様において、本発明は、その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体であって、該操作された抗体のCDR中の少なくとも1つのアミノ酸がヒスチジン残基であり、以下のホットスポットリスト:
Figure 2020519598
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基であり、かつ以下のコールドスポットリスト:
Figure 2020519598
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基でないことを特徴とする、前記操作された抗体を提供する。
(詳細な説明)
本開示は、標的抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を調製する方法であって、親抗体の可変ドメイン中の(及び優先的にはそのCDR中の)選択されたアミノ酸をヒスチジン残基で置換することに基づく、前記方法を提供する。イオン性ヒスチジン残基を抗体分子のVH及び/又はVLドメインに導入すると、抗原結合のpH依存性が変化し得ることは、当該技術分野において一般に公知である。しかしながら、今日に至るまで利用可能なpH依存的抗原結合を操作するための方法は、CDR中の全てのアミノ酸残基を考え得るヒスチジンによる置換のためにサンプリングするランダムなコンビナトリアルライブラリのスクリーニングに大いに依存してきた。
本方法は、ヒスチジンで置換する特定のアミノ酸残基の選択を、機能的抗体分子のVH及びVLドメイン中の、より詳細にはそのCDR中の特定のアミノ酸位置でのヒスチジン残基の天然出現率により、また、CDR中の他のアミノ酸位置でのヒスチジン残基の天然不存在率により、ガイドする点で従来技術の方法と異なる。従って、本明細書で開示する方法は、可変ドメイン(及び特にCDR)中のアミノ酸位置の予め選択された部分集合から選択されるアミノ酸位置でのヒスチジン置換に基づく一方、CDR中の他の残基は好ましくはヒスチジンで置換されないものとして予め選択される。
ヒスチジンで置換する候補として予め選択するアミノ酸残基を、本明細書では「ホットスポット」残基と呼ぶ(表A)。これらはCDR中のアミノ酸位置又はCDR近傍のフレームワーク位置であり、これらの位置ではヒスチジンが機能的抗体レパートリー中に天然に出現することが観察される。
表A(ホットスポット残基位置)
Figure 2020519598
好ましくはヒスチジンで置換しないものとして予め選択するアミノ酸残基を、本明細書では「コールドスポット」残基と呼ぶ(表B)。これらはCDR中のアミノ酸位置又はCDR近傍のフレームワーク位置であり、これらの位置ではヒスチジンが機能的抗体レパートリー中に観察されない。
表B(コールドスポット残基位置)
Figure 2020519598
本開示は、その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を調製する方法であって、親抗体の少なくとも1つのアミノ酸残基をヒスチジン残基(本明細書ではHISと略し得る)で置換することにより、該操作された抗体を調製することを含む、前記方法を提供する。該操作された抗体は、該ヒスチジンによる置換の結果として、該親抗体と比較して、pH依存的結合の改善(すなわち、より高いpH依存性)を示す。「親抗体」とは、対象となる抗原と結合することができる任意の抗体とし得る。親抗体は、典型的には従来型の四鎖免疫グロブリンであり、これらにおいては、抗原結合特異性が対となったVH及びVLドメインによって付与される 。しかしながらまた、この方法は他の親抗体、並びに抗原結合断片、例えばFab、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディなど、及び対となったVH及びVLドメインによって提供される抗原結合部位を含む任意の他の改変免疫グロブリン構成における、pH依存的結合の操作に応用可能である。ある実施態様において、親抗体又はその可変ドメイン若しくはCDRは、これらに限定されないが、ラマ、ラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ、ビクーナ、又はグアナコを含むラクダ科動物種に由来し得る。ラクダ科動物モノクローナル抗体の調製は、その内容が参照により本明細書に組み込まれているWO2010/001251に詳細に記載されている。親抗体及びそれに由来する操作された抗体の他の好ましい特徴は、本明細書の別所に記載する。親抗体が結合する抗原の性質は、特に制限されない。
操作された抗体は、親抗体の1以上の選択されたアミノ酸残基をヒスチジンで置換することによって調製する。操作された抗体は、親抗体と比較して全部で1、2、3、4、5、又はそれ以上のヒスチジンによる置換を含み得る。ヒスチジンで置換された選択されたアミノ酸残基は、典型的に抗体可変ドメインのCDR中又はCDR近傍のフレームワーク位置に位置する。対となったVH及びVLドメインを含む抗体分子の場合、ヒスチジンによる置換のために選択する残基は、VHドメインのCDR若しくはVLドメインのCDR、又はVHドメイン及びVLドメインの両方のCDR中に位置し得る。
本明細書に記載するように、ヒスチジンで置換する少なくとも1つのアミノ酸位置は、「ホットスポット」リストから選択しなくてはならない(表A)。ある実施態様において、ヒスチジンで置換する少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つのアミノ酸位置を、「ホットスポット」リストから選択する。ある実施態様において、操作された抗体中の全てのヒスチジン置換を、ホットスポットリスト(表A)から選択されるアミノ酸位置に施す。すなわち、ホットスポットリスト中の残基のみをヒスチジンによる置換のために選択し得る。しかしながら、他の実施態様において、少なくとも1つのヒスチジン置換をホットスポットリスト(表A)から選択される位置に施すことを条件として、ヒスチジン置換をホットスポットリストにない1以上の位置に含めることができる。例として、以下に論ずるように、ある実施態様において1以上のヒスチジン置換をVH CDR3及び/又はVL CDR3中の「コールドスポット」位置に含めることができる。
本明細書に記載するように、親抗体には好ましくはヒスチジンによる置換のために選択されない特定のアミノ酸位置がある。これらのアミノ酸位置は、「コールドスポット」リスト(表B)に示されているアミノ酸位置である。本明細書に記載の方法に従って調製する操作された抗体は、コールドスポットリスト(表B)にあるヒスチジンで置換されない少なくとも1つのアミノ酸位置を含まなくてはならない。ある実施態様において、コールドスポットリスト(表B)にある少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つのアミノ酸位置は、ヒスチジンで置換しない。さらなる実施態様において、コールドスポットリスト(表B)にあるアミノ酸位置のいずれもヒスチジンで置換しない。
VH CDR3及びVL CDR3の場合、表Bに列記される1以上のコールドスポットアミノ酸残基位置にもヒスチジン残基を導入し、かつ結果として得る抗体バリアント(複数可)をpH依存的結合について試験することは、差支えない(かつある実施態様では有益となり得る)。VH CDR3及びVL CDR3の性質が高度に変化することを考慮すると、(ホットスポット位置に加え、又はこれらに代えて)これらのCDR中のコールドスポット位置にヒスチジン残基を導入することは、CDR1及びCDR2中のコールドスポット位置に導入した場合よりも抗体構造中でより許容されやすく、かつpH依存的抗原結合への重要な寄与をなし得る。従って、VH CDR3及びVL CDR3中の列記されたコールドスポット位置でのヒスチジンの置換は、本発明の全ての態様で許容される。
具体的な一実施態様において、ヒスチジンで置換された全てのアミノ酸残基を、ホットスポットリスト(表A)から選択するが、ここで1以上の以下の残基:H100g、H100k、H100m、H100n、L95、L95d、L95e、L95f、L97をさらにヒスチジンで置換し得ることを条件とする。
(pH依存的結合)
本明細書に記載の方法に従って1以上のヒスチジン置換が導入された操作された抗体は、標的抗原とのpH依存的結合を示し得る。
抗体-抗原結合相互作用との関連で本明細書で使用する用語「pH依存的結合」とは、酸性pHでの抗体の抗原結合活性が、中性pHでの抗体の抗原結合活性と異なることを意味する。
抗原結合活性の様々な尺度を、酸性pHでの抗原結合活性の中性pHでの抗原結合活性に対する差の指標として使用することができる。
一実施態様において、その抗原に対する抗体の「親和性」は、抗原結合活性の指標として使用することができる。好ましい実施態様において、操作された抗体の酸性pHでのその抗原に対する親和性が、操作された抗体の中性pHでのその抗原に対する親和性よりも低い場合、操作された抗体は「pH依存的結合」を示す。
一実施態様において、抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)(抗体のオフ速度koffとも呼ぶ)を抗原結合活性の指標として使用することができる。好ましい実施態様において、酸性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)が、中性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)よりも高い場合、操作された抗体は、「pH依存的結合」を示す。
解離速度定数(kd)をpH依存的結合の指標として使用する実施態様において、酸性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)の、中性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)に対する比は、少なくとも1.5、又は少なくとも2、又は少なくとも5、又は少なくとも10となり得る。
他の実施態様において、酸性pH(例えば、pH 5.5)での操作された抗体の解離速度定数(kd)は、同じ酸性pHでの親抗体の解離速度定数(kd)よりも高い。そのような実施態様において、酸性pH(例えば、pH 5.5)でのkdは、ヒスチジン置換の結果として親抗体と比較して高い。ある実施態様において、酸性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)の、同じ酸性pHでの親抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)に対する比は、少なくとも1.5、又は少なくとも2、又は少なくとも5、又は少なくとも10となり得る。インビボでの抗体リサイクリング経路を鑑みるに、酸性pH(例えば、pH 5.5)での解離速度(kd)は、pH依存的結合の特に妥当な尺度である。酸性pH(pH 5.5〜6.0)での抗原-抗体複合体の解離がより速くなれば、酸性化エンドソーム中での抗原の放出が可能となる。
一実施態様において、平衡解離定数(KD)は、抗原結合活性の指標として使用することができる。好ましい実施態様において、酸性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)が、中性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)よりも高い場合、操作された抗体は、「pH依存的結合」を示す。
平衡解離定数(KD)をpH依存的結合の指標として使用する実施態様において、酸性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)の、中性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)に対する比は、1.5超、又は2超、又は5超、又は10超となり得る。特に好ましい実施態様において、操作された抗体は酸性pHでの抗原結合に対して中性pHで20〜40倍強い抗原結合を示し得る。
平衡解離定数(KD)を抗原結合活性の指標として使用する非限定的な実施態様において、操作された抗体は、酸性pH(例えば、pH 5.5)で10〜20 nMの範囲のその抗原に対する平衡解離定数(KD)を示し得る;それに対し、操作された抗体の中性pH(例えば、pH 7.4)でのその抗原に対するKDは、およそ0.5 nM以下となり得る。
pH依存的結合を示すために使用できる他の抗原結合活性の尺度には、親和性定数又は会合速度定数(ka)又はオン速度(kon)があり得る。
アンタゴニスト抗体について、抗原結合活性の尺度は遮断能、すなわち好適なアッセイにおけるIC50とし得る。
好ましい実施態様において、1以上のヒスチジン置換を含む操作された抗体は、親抗体と比較して高いその抗原との結合のpH依存性を示す。「より高い結合のpH依存性」とは、酸性pHでの抗原結合活性及び中性pHでの抗原結合活性の差が、操作された抗体に対して、その由来となる親抗体に対するよりも有意に大きいことを意味する。
いくつかの実施態様において、親抗体はその標的抗原との結合の顕著なpH依存性を示し得ず、pH依存性は1以上のヒスチジン置換の結果として操作されたバリアントに導入され得る。他の実施態様において、親抗体は測定可能なpH依存性を示す場合があり、このpH依存性は1以上のヒスチジン置換の結果として操作されたバリアントにおいて有意に高くなる。
ある実施態様において、中性pHでの抗原-抗体結合力を著しく損なうことなく、操作された抗体にpH依存性を導入することが可能な場合がある。そのような実施態様において、操作された抗体は、その由来となる親抗体と比較して有意に低い酸性pHでの抗原結合活性を示し得るのに対し、中性pHでの操作された抗体の抗原結合活性は、中性pHでのその由来となる親抗体の抗原結合活性と同等となり得る(すなわち、有意に異ならない)。
本明細書に記載する、ヒスチジン置換の候補となるアミノ酸を機能的抗体レパートリー中でのヒスチジンの天然出現率の「ヒートマップ」に従って選択する方法の1つの利点は、ヒスチジン残基が典型的に抗体レパートリー中にそれが天然に出現し得る「ホットスポット」アミノ酸位置にのみ導入され、従って抗体構造中で許容されることである。ホットスポット位置でのヒスチジン置換により中性pHでの抗原結合活性の強度に顕著な影響を及ぼすことなく抗原結合のpH依存性を付与することができることが認められている。
一実施態様において、操作された抗体は親抗体と比較して高いその抗原との結合のpH依存性を示す一方で、中性pHでの親抗体の抗原結合活性を少なくとも80%保持する。さらなる実施態様において、操作された抗体は、中性pHでの親抗体の抗原結合活性を少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%保持し得る一方で、依然としてpH依存的結合を示す。
好ましい実施態様において、操作された抗体は親抗体と比較して高いその抗原との結合のpH依存性を示す一方で、中性pHでの親抗体の該抗原に対する親和性を少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%保持する。
平衡解離定数(KD)を抗原結合活性の指標として使用する実施態様において、操作された抗体は中性pHでの標的抗原に対する親抗体のKDよりも20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は5%以下大きい中性pHでの標的抗原に対する平衡解離定数(KD)を示し得る。他の実施態様において、操作された抗体は、中性pHでの標的抗原に対する親抗体のKDと実質的に等しい中性pHでの標的抗原に対する平衡解離定数(KD)を示し得る。
他の実施態様において、pH依存性を導入すると、中性pHでのその抗原に対する操作された抗体の親和性が低下する場合がある。しかしながら、所望の結合のpH依存性が達成されることを条件として、標的抗原の性質、抗体の意図された用途、及びまた親抗体の特性によっては中性pHでの親和性の低下は許容し得る場合がある。例えば、親抗体が中性pHでその抗原に対する特に高い親和性を示すならば、このことにpH依存性の顕著な向上が付随する場合(すなわち中性pHでの結合及び酸性pHでの結合の間に所望の「倍数差」が達成されることを条件として)中性pHでのその抗原に対する操作された抗体の親和性の低下は許容され得る。ある実施態様において、所望の結合のpH依存性もまた達成されることを条件として、中性pHでのその標的抗原に対する操作された抗体の親和性は、中性pHでのその抗原に対する親抗体の親和性よりも最大10倍低く、又は20倍低くさえなり得る。
上記実施態様の各々において、「酸性pH」とは、pH 4.0〜pH 6.5、好ましくはpH 4.5〜pH 6.0、より好ましくはpH 5.5〜pH 6.0、及びより好ましくはpH 5.5〜pH 5.8の範囲のpHを指す。
上記実施態様の各々において、「中性pH」とは、pH 6.7〜pH 10.0、好ましくはpH 7.0〜pH 8.0、より好ましくはpH 7.4の範囲のpHを指す。
特定の実施態様において、pH依存的結合は、酸性pH 5.5での抗体の抗原結合活性を中性pH 7.4での同抗体の抗原結合活性と比較することによって評価することができる。
他の実施態様において、pH依存的結合は、酸性pH 6.0での抗体の抗原結合活性を中性pH 7.4での同抗体の抗原結合活性と比較することによって評価することができる。
規定されたpHでの抗体の抗原結合活性を決定するための適切な方法及び条件は、一般に当該技術分野において公知である。例として、規定されたpHでの抗体の抗原結合活性は、添付する実験実施例に記載の通りBiacore(登録商標)(GE Healthcare)により、ELISAにより、又はMSDプラットフォームを使用して測定することができる。
(ヒスチジン出現率のヒートマップ)
本明細書に記載の親抗体のアミノ酸残基は、天然抗体レパートリー中の機能的抗体のCDR中の特定のアミノ酸位置でのヒスチジン残基の出現率の「ヒートマップ」に基づいて、ヒスチジンによる置換のために選択し、又はヒスチジンにより置換しないものとし得る。この「ヒートマップ」は、抗体レパートリー中にヒスチジンが天然に出現し得るCDR中の「ホットスポット」アミノ酸残基位置及びCDR近傍のフレームワーク位置のリスト、並びにまた、典型的にヒスチジンが天然には出現しないCDR中の「コールドスポット」アミノ酸残基位置及びCDR近傍のフレームワーク位置のリストの両方を提供する。
「抗体レパートリー」とは、抗原結合活性を示す抗体集団を意味する。「天然抗体レパートリー」は、典型的に標的抗原を用いた宿主の免疫化によって生産された抗体集団である。これらレパートリーは、2以上の標的抗原に対する抗体を含み得る。本開示において、ヒスチジン出現率の「ヒートマップ」は、それ自体複数の異なる標的抗原を用いた宿主動物の免疫化により誘導された、多様なラマ抗体のレパートリーに由来している。また、これらの免疫化から単離された抗体を特異的ファージディスプレイ選択によってスクリーニングし、これによりpH依存的抗原結合を示す抗体の富化が可能となった。
(置換する残基の選択)
任意の所与の親抗体について、ヒスチジンによる置換の候補アミノ酸残基の選択を、ヒスチジン出現率のヒートマップによりガイドする。
アミノ酸残基の「置換(substitution)」又は「置換(replacement)」という用語は、本明細書で互換的に使用する。親抗体の操作されたバリアントである操作された抗体の文脈において、「置換」には親抗体の規定されたアミノ酸位置でのアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基、すなわち親抗体のその位置には天然に出現しないヒスチジン残基で置換されることが要求される。
本明細書に記載のヒスチジン出現率の「ヒートマップ」は、ヒスチジンが天然に出現することが観察されるホットスポットアミノ酸位置のリストを提供する。操作された抗体の由来となる対象とする親抗体は、ホットスポットリストにある1以上のアミノ酸位置にヒスチジン残基を天然に含み得る。これらの状況にあって、天然のヒスチジン残基はpH依存的抗原結合に寄与し得るため、一般に操作された抗体中に保持されるであろう。しかしながら、本明細書に記載の方法においては、この天然に出現するヒスチジンはヒスチジン置換として数に入れない。従って、本明細書に記載の方法には、操作された抗体が、その由来となる親抗体と比較して、1以上のホットスポットアミノ酸位置に少なくとも1つの追加のヒスチジン残基を含まなくてはならないことが要求される。操作された抗体への1以上の追加のヒスチジン残基の導入により、既にホットスポットヒスチジン残基を含んでいる親抗体についてさえ、操作された抗体のpH依存的結合が改善され得る(すなわち、より高い標的抗原との結合のpH依存性をもたらす)。
ヒスチジンで置換する候補アミノ酸残基は、VH及びVLドメインのCDR中のアミノ酸位置及びCDR近傍のフレームワーク位置がKABAT付番体系(Kabatらの文献、「免疫学の対象となるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))に従って同定された「ホットスポット」リスト(表A)から選択する。操作された抗体は、表Aから選択されるアミノ酸位置に少なくとも1つのヒスチジン置換を含まなくてはならない。
様々なアプローチを使用して、対象とする親抗体にpH依存的抗原結合を付与するための最も適切なヒスチジン置換を選択することができる。その標的抗原との親抗体の結合相互作用についての構造的情報が利用可能である場合、ヒスチジン置換のためのホットスポットリストから候補アミノ酸を選択するために「合理的設計」アプローチを利用することは、適切であり得る。抗原-抗体結合相互作用に直接関与し、又は親抗体の抗原結合接触面の全体的構造に影響を及ぼす可能性が高いホットスポット残基を、そのような構造的情報に基づいて選択することができる。続いて1以上の選択されたホットスポット残基又はそれらの異なる組合わせがヒスチジンで置換された親抗体の操作されたバリアントを合成し、例えば本明細書に記載のスクリーニング方法を使用してpH依存的抗原結合についてスクリーニングすることができる。
また、ヒスチジンによる置換の候補残基は、親抗体の可変ドメインのファミリー又はサブタイプに基づいて選択することができる。本明細書では、同様に抗体レパートリー中のヒスチジン出現率のヒートマップに由来する、様々なサブタイプに特異的なホットスポット残基のリストを記載する。ある実施態様において、親抗体のVH及び/又はVLドメインの可変ドメインのファミリー又はサブタイプが公知であり、ヒスチジンによる置換の候補残基は以下のサブタイプ特異的又はファミリー特異的なホットスポットリストから選択することができる。これらのリストは限定することを意図するものではなく、単に特定の可変ドメインのファミリー又はサブタイプについてのヒスチジンによる置換に最も適切であり得るアミノ酸位置の模範を提供するものである。任意の所与の可変ドメインについて、考え得るヒスチジンで置換するアミノ酸位置は、可変ドメインのファミリー又はサブタイプにかかわらず、完全ホットスポットリスト(表A)から選択することができる。
VH3ファミリーの重鎖可変ドメインについて:
表VH3A(VH3ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表VH3B(VH3ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
VH1ファミリーの重鎖可変ドメインについて:
表VH1A(VH1ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表VH1B(VH1ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
VH4ファミリーの重鎖可変ドメインについて:
表VH4A(VH4ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表VH4B(VH4ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
λタイプの軽鎖可変ドメインについて:
表VλA(Vλのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表VλB(Vλのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
Vλ1ファミリーの軽鎖可変ドメインについて:
表Vλ1A(Vλ1ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表Vλ1B(Vλ1ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
Vλ2ファミリーの軽鎖可変ドメインについて:
表Vλ2A(Vλ2ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表Vλ2B(Vλ2ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
Vλ3ファミリーの軽鎖可変ドメインについて:
表Vλ3A(Vλ3ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表Vλ3B(Vλ3ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
Vλ5ファミリーの軽鎖可変ドメインについて:
表Vλ5A(Vλ5ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表Vλ5B(Vλ5ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
Vλ8ファミリーの軽鎖可変ドメインについて:
表Vλ8A(Vλ8ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表Vλ8B(Vλ8ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
κタイプの軽鎖可変ドメインについて:
表VΚA(VΚのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表VΚB(VΚのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
VΚ1ファミリーの軽鎖可変ドメインについて:
表VΚ1A(VΚ1ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表VΚ1B(VΚ1ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
VΚ2ファミリーの軽鎖可変ドメインについて:
表VΚ2A(VΚ2ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表VΚ2B(VΚ2ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
VΚ4ファミリーの軽鎖可変ドメインについて:
表VΚ4A(VΚ4ファミリーのホットスポット残基)
Figure 2020519598
表VΚ4B(VΚ4ファミリーのコールドスポット残基)
Figure 2020519598
(バリアントのパネルのスクリーニング)
本発明の方法の特定の実施態様は、親抗体の操作されたバリアントのパネルの構築と、それに続き所望のpH依存的結合を示す1以上の操作されたバリアントを同定するために該パネルをスクリーニングすることに基づくことができる。バリアントのパネルを構築すれば、ヒートマップに規定されるアミノ酸位置での多数の考え得るヒスチジン置換を、体系的に突然変異解析することが可能となる。この方法は、バリアントのパネルの構築をヒスチジン出現率のヒートマップによってガイドし、従ってヒスチジンによる置換の候補としてCDR中の全ての考え得るアミノ酸位置及びそれらの組合わせをサンプリングすることを必要とせず、又はそのようにすることを妥当でないものとする点で、従来技術におけるコンビナトリアル方法と異なる。
本明細書に記載の体系的突然変異解析方法は一般に:
(a) 抗原と結合する親抗体を提供する工程;
(b) 該親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々が少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、ホットスポットリスト(表A)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつコールドスポットリスト(表B)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程;
(c) 該操作されたバリアントのパネルを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし、それによって該抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を同定する工程、を含む。
この方法には、対象とする親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製することが要求され、パネル中の操作されたバリアントの各々は、少なくとも1つのアミノ酸がヒスチジンにより置換されていることによって親抗体と異なる。また、ヒスチジンで置換するアミノ酸位置の選択は、ヒスチジン出現率のヒートマップに基づく。パネル中の操作されたバリアントの各々は、ホットスポットリスト(表A)から選択されるアミノ酸位置での少なくとも1つのヒスチジンによる置換を含まなくてはならない一方、コールドスポットリスト(表B)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基は、ヒスチジンで置換されていない。好ましくは、パネル中の操作されたバリアントの各々には、異なるパターンのヒスチジン置換を含める。そうすれば、異なるヒスチジン置換によるpH依存的抗原結合への効果を並行して解析することが可能となる。
方法の一実施態様において、パネル中の操作されたバリアントの各々は、列記されたホットスポットアミノ酸位置(表A)の1つに単一のヒスチジン置換を含み得る。好ましくは、パネル中の操作されたバリアントの各々は、列記されたホットスポットアミノ酸位置(表A)の1つに異なるヒスチジン置換を含む。そのようなパネルにより、個別のホットスポットアミノ酸位置でのヒスチジン置換によるpH依存的結合への効果を解析することが可能となる。操作されたバリアントのパネルはホットスポットリストの全体を代表し得る。すなわち、表Aに列記されたアミノ酸位置の各々に単一のヒスチジン置換を有するバリアントを含むことができ、又はホットスポットリストの選択された部分集合、例えば1以上の具体的な可変ドメインのファミリー若しくはサブタイプと関連する置換の部分集合などを代表し得る。さらにまた、パネルはVH CDR3又はVL CDR3中の1以上の「コールドスポット」位置にヒスチジン置換を含むバリアントを含み得る。
他の実施態様において、工程(b)で調製したパネルは、2以上、3以上、4以上、又は5以上のヒスチジン置換の様々な組合わせを含む操作されたバリアントを含み得るが、これには少なくとも1つの該置換が表Aから選択されるホットスポットアミノ酸位置になくてはならない一方、表Bからの少なくとも1つのアミノ酸は、ヒスチジンで置換されていないことを条件とする。好ましくは、該ヒスチジン置換の全てを表Aから選択されるホットスポットアミノ酸位置で行う。このパネルにより、pH依存的結合を付与するヒスチジン残基の組合わせ(及び特にホットスポットヒスチジン置換の組合わせ)をスクリーニングすることが可能となる。さらにまた、パネルはVH CDR3又はVL CDR3中の1以上の「コールドスポット」位置でのヒスチジン置換を、任意に1以上のホットスポットアミノ酸位置でのヒスチジン置換と組合わせて含むバリアントを含み得る。
ある実施態様において、ヒスチジンで置換することによりpH依存的結合を付与することができる単一のアミノ酸位置を同定するために、初期スクリーニングを先に記載の通り単一ヒスチジン置換を含む操作されたバリアントのパネルに対して実施することができる。
この初期スクリーニングの結果に基づいて、既にpH依存的結合を付与するものとして同定されたヒスチジン置換を組合わせた1以上のさらに操作されたバリアントを構築することができる。そのような方法は:
(a) 抗原と結合する親抗体を同定する工程;
(b) 該親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々が少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、ホットスポットリスト(表A)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつコールドスポットリスト(表B)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程(ここで、好ましくは該操作されたバリアントの各々は、異なるパターンのヒスチジン置換を含む);
(c) 該操作されたバリアントのパネルを該標的抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし、それによってヒスチジンの存在により該抗原とのpH依存的結合が付与される選択されたアミノ酸位置を同定する工程;
(d) 該親抗体の1以上のさらに操作されたバリアントを調製する工程であって、該バリアントの各々が工程(c)で同定された2以上の選択されたアミノ酸位置にヒスチジンを含む、前記工程;及び
(e) 該さらに操作されたバリアントを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし;それによって該抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を同定する工程、を含み得る。
方法の特定の実施態様において、VHドメイン及びVLドメイン中のヒスチジン置換は、それらのpH依存的結合に対する効果を個別に解析することができる。従って、一実施態様において、工程(b)は、該親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々がVHドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、重鎖ホットスポットリスト(表HA)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ重鎖コールドスポットリスト(表HB)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程を含む。さらにまた、パネルはVH CDR3中の「コールドスポット」位置にヒスチジン置換を含むバリアントを含み得る。
典型的に、操作されたバリアントは、親抗体のVLドメインと対をなす、1以上のヒスチジン置換を含む突然変異体VHドメインを含む。そのようなライブラリを用いると、VHドメイン中のpH依存的結合を付与するヒスチジン置換をスクリーニングすることが可能となる。
表HA(VHホットスポット残基位置)
Figure 2020519598
表HB(VHコールドスポット残基位置)
Figure 2020519598
さらなる実施態様において、工程(b)は、該親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々がVLドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、軽鎖ホットスポットリスト(表LA)から選択される少なくともアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ軽鎖ホットスポットリスト(表LB)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程を含む。さらにまた、パネルはVL CDR3中の「コールドスポット」位置にヒスチジン置換を含むバリアントを含み得る。
典型的に、操作されたバリアントは、親抗体のVHドメインと対をなす、1以上のヒスチジン置換を含む突然変異体VLドメインを含む。そのようなライブラリを用いると、VLドメイン中のpH依存的結合を付与するヒスチジン置換をスクリーニングすることが可能となる。
表LA(VLホットスポット残基位置)
Figure 2020519598
表LB(VLコールドスポット残基位置)
Figure 2020519598
λクラスの軽鎖バリアントについて、「ホットスポット」及び「コールドスポット」残基位置は以下のリストから選択することができる:
表VλA(Vλホットスポット残基)
Figure 2020519598
表VλB(Vλコールドスポット残基)
Figure 2020519598
κクラスの軽鎖バリアントについて、「ホットスポット」及び「コールドスポット」残基位置は以下のリストから選択することができる:
表VΚA(VΚホットスポット残基位置)
Figure 2020519598
表VΚB(VΚコールドスポット残基位置)
Figure 2020519598
ある実施態様において、個別の初期VH及びVLドメインスクリーニングによって同定されたVH及びVLドメインのヒスチジン置換を、単一の操作されたバリアント中で組合わせることができる。続いて、さらなるスクリーニングを実施して、pH依存的結合を示すVH及びVLの組合わせを同定することができる。そのような方法は:
(a) 抗原と結合する親抗体を同定する工程;
(b) 該親抗体の操作されたバリアントの第1のパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々がVHドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、重鎖ホットスポットリスト(表HA)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ重鎖コールドスポットリスト(表HB)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程;
(c) 該操作されたバリアントの第1のパネルを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし;それによってヒスチジンの存在によりpH依存的結合が付与されるVHドメイン中の1以上の選択されたアミノ酸位置を同定する工程;
(d) 該親抗体の操作されたバリアントの第2のパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々がVLドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、軽鎖ホットスポットリスト(表LA)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ軽鎖ホットスポットリスト(表LB)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程;
(e) 該操作されたバリアントの第2のパネルを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし;それによってヒスチジンの存在によりpH依存的結合が付与されるVLドメイン中の1以上の選択されたアミノ酸位置を同定する工程;
(f) 該親抗体の1以上のさらに操作されたバリアントを調製する工程であって、該バリアントの各々が、工程(c)で同定されたVHドメイン中の1以上の選択されたアミノ酸位置のアミノ酸がヒスチジンで置換されていることによって該親抗体と異なり、かつ工程(e)で同定されたVLドメイン中の1以上の選択されたアミノ酸位置のアミノ酸がヒスチジンで置換されていることによって該親抗体と異なる、前記工程;及び
(g) 該さらに操作されたバリアントを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし;それによって該抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を同定する工程、を含み得る。
このアプローチにより、初期(個別)のVH及びVLドメインのスクリーニングにおいて同定されたヒスチジン突然変異間の相乗効果を同定することが可能である。例えば、VH及びVLドメインの突然変異の異なる組合わせの間の相乗作用効果を同定するために、最も性能の高いVH突然変異(すなわち、最も大きなpH依存性を付与する突然変異)を多数の異なるVL突然変異と組合わせ、又は最も性能の高いVL突然変異を異なるVH突然変異と組合わせることができる。この実施態様において、VH CDR3又はVL CDR3及びこれらの組合わせ中の「コールドスポット」位置にもヒスチジン置換を含むことは、差支えない。
(スクリーニング方法)
様々なスクリーニング方法を使用して、標的抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を同定することができる。そのようなスクリーニング方法は:
(a) 酸性pHでの操作された抗体の抗原結合活性を決定する工程;
(b) 中性pHでの操作された抗体の抗原結合活性を決定する工程;
(c) その酸性pHでの抗原結合活性が中性pHでの抗原結合活性と異なる操作された抗体を選択する工程、を含む。
規定されたpHでの抗原結合活性を決定するための適切な方法及び条件は、一般に当該技術分野において公知である。例として、規定されたpHでの抗体の抗原結合活性は、添付する実験実施例に記載の通りBiacore(登録商標)(GE Healthcare)により、決定することができる。他の好適な技術には、ELISA又はMSDがあり、これらを使用して、異なるpH条件下(例えば、pH 7.4及びpH 5.5)、特定の抗体濃度(例えば、EC50)での抗原結合を決定することができる。
本明細書に記載の方法は、中性pH及び酸性pHでの操作された抗体の抗原結合活性を測定する工程、並びに操作された抗体がpH依存的結合を示すかどうかを決定するために中性pH及び/又は酸性pHでの結合の1以上のパラメータを比較する工程、を含み得る。
ある実施態様において、操作された抗体の抗原結合活性は、添付する実施例に記載の通り2点pH ELISA(dual pH ELISA)によって測定することができる。この設定において、抗体の抗原との最初の結合を中性pH(例えば、pH 7.4)で評価し、それに続き酸性pH(例えば、pH 5.5)で洗浄工程を行う。これにより、抗体の会合、解離、又はそれら両方に対するpHの効果を識別することが可能となり、抗体の標的抗原との結合が中性pHで起こり、かつ抗原の放出が酸性のエンドソーム内pHで起こるインビボでの状況をより適切に代表し得る。
典型的に、選択された操作された抗体は、酸性pHで中性pHにおけるよりも低いその抗原に対する親和性を示す。初期スクリーニングにおいて、酸性pHでの親和性の中性pHでの親和性に対する有意な差が少しでも認められれば、pH依存的結合を示すことができる。
酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)、すなわちオフ速度が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高い場合がある。初期スクリーニングにおいて、酸性pHでの(kd)の中性pHでの(kd)に対する有意な差が少しでも認められれば、pH依存的結合を示すことができる。他の実施態様において、酸性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)の、中性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)に対する比は、少なくとも1.5、又は少なくとも2、又は少なくとも5、又は少なくとも10となり得る。複数のヒスチジン突然変異を組合わせると、全体のpH依存性の度合いが増加し得る。
酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該平衡解離定数(KD)よりも高い場合がある。初期スクリーニングにおいて、酸性pHでのKDの中性pHでのKDに対する有意な差が少しでも認められれば、pH依存的結合を示すことができる。酸性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)の、中性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)に対する比は、1.5超、又は2超、又は5超、又は10超となり得る。
複数のヒスチジン突然変異を組合わせると、全体のpH依存性の度合いが増加し得る。特に好ましい実施態様において、ヒスチジン突然変異を組合わせることにより、酸性pHでの抗原結合に対して中性pHでおよそ20〜40倍強い抗原結合を達成し得る。
本明細書の別所に記載の通り、pH依存的結合の改善は、中性pHでの標的抗原に対する親和性への顕著な影響の有無にかかわらず、達成することができる。
平衡解離定数(KD)を抗原結合活性の指標として使用する非限定的な実施態様において、操作された抗体は、酸性pH(例えば、pH 5.5)で10〜20 nMの範囲のその抗原に対する平衡解離定数(KD)を示し得る;それに対し、操作された抗体の中性pH(例えば、7.4)でのその抗原に対するKDは、およそ0.5 nM以下となり得る。
上記実施態様の各々において、「酸性pH」とは、pH 4.0〜pH 6.5、好ましくはpH 4.5〜pH 6.0、より好ましくはpH 5.5〜pH 6.0、及びより好ましくはpH 5.5〜pH 5.8の範囲のpHを指す。
上記実施態様の各々において、「中性pH」とは、pH 6.7〜pH 10.0、好ましくはpH 7.0〜pH 8.0、より好ましくはpH 7.4の範囲のpHを指す。
特定の実施態様において、pH依存的結合は、酸性pH 5.5での抗体の抗原結合活性を中性pH 7.4での同抗体の抗原結合活性と比較することによって評価することができる。
他の実施態様において、pH依存的結合は、酸性pH 6.0での抗体の抗原結合活性を中性pH 7.4での同抗体の抗原結合活性と比較することによって評価することができる。
本明細書に記載の方法は、さらに又は代替として、酸性pH及び/又は中性pHでの親抗体の抗原結合活性を測定する工程、並びにこの結合相互作用のパラメータを操作された抗体-抗原相互作用の対応する結合パラメータと比較する工程、を含み得る。
酸性pH(例えば、pH 5.5)での操作された抗体の解離速度定数(kd)は、同じ酸性pHでの親抗体の解離速度定数(kd)よりも高くなり得る。そのような実施態様において、酸性pH(例えば、pH 5.5)でのkdは、ヒスチジン置換の結果として親抗体と比較して高い。
酸性pHでの操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)の、同じ酸性pHでの親抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)に対する比は、少なくとも1.5、又は少なくとも2、又は少なくとも5、又は少なくとも10となり得る。
(操作された抗体)
また、本明細書では、その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体であって、該操作された抗体のCDR中の少なくとも1つのアミノ酸がヒスチジン残基であり、ホットスポットリスト(表A)から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基であり、かつコールドスポットリスト(表B)からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基ではないことを特徴とする、前記操作された抗体を提供する。
「操作された抗体」とは、そのアミノ酸配列がインビトロで意図的に変更された、又は突然変異を加えられた抗体を意味する。本開示において、「操作された抗体」とは、抗体のCDRのアミノ酸配列が1以上の追加のヒスチジン残基を導入するために意図的に変更された、又は突然変異を加えられた抗体バリアントである。
抗体VL及びVHドメインのCDRは典型的に、以下のアミノ酸を含むものとして定義することができる:軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34 (CDRL1)、50〜56 (CDRL2)、及び89〜97 (CDRL3)、並びに重鎖可変ドメイン中の残基31〜35又は31〜35c (CDRH1), 50〜65 (CDRH2)、及び95〜102 (CDRH3)(Kabatらの文献、「免疫学の対象となるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」, 第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。
操作された抗体は、VHドメイン、又はVLドメイン、又はVHドメイン及びVLドメインの両方のCDR中に全部で1、2、3、4、5、又はそれより多くのヒスチジン残基を含み得る。
操作された抗体のCDR中の少なくとも1つのヒスチジン残基は、「ホットスポット」リスト(表A)から選択されるアミノ酸位置に出現しなくてはならない。ある実施態様において、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つのヒスチジン残基は、ホットスポットリストから選択されるアミノ酸位置に出現しなくてはならない。ある実施態様において、操作された抗体中の全てのヒスチジン残基はホットスポットリスト(表A)から選択されるアミノ酸位置に出現する。本明細書に記載するように、操作された抗体のCDR中には、好ましくはヒスチジン残基によって占有されない特定のアミノ酸位置が存在する。これらのアミノ酸位置は、「コールドスポット」リスト(表B)に示されているアミノ酸位置である。操作された抗体は、コールドスポットリスト(表B)にあるヒスチジン残基によって占有されない少なくとも1つのアミノ酸位置を含まなくてはならない。ある実施態様において、コールドスポットリスト(表B)にある少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つのアミノ酸位置は、ヒスチジンではない。さらなる実施態様において、コールドスポットリスト(表B)にあるアミノ酸位置のいずれもヒスチジンではない。この例外として、ある実施態様において、VH CDR3又はVL CDR3及びこれらの組合わせ中の「コールドスポット」位置にもヒスチジン置換を含むことは、差支えない。
操作された抗体は、その抗原とのpH依存的結合を示す。これは、酸性pHでの抗体の抗原結合活性が、中性pHでの抗体の抗原結合活性と異なることを意味する。
一実施態様において、該操作された抗体は、中性pHにおけるよりも酸性pHでその抗原との親和性が低い。
一実施態様において、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)は、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高い。
一実施態様において、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)は、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該平衡解離定数(KD)よりも高い。
特に好ましい実施態様において、操作された抗体は酸性pHでの抗原結合に対して中性pHで20〜40倍強い抗原結合を示し得る。
平衡解離定数(KD)を抗原結合活性の指標として使用する非限定的な実施態様において、操作された抗体は、酸性pH(例えば、pH 5.5)で10〜20 nMの範囲のその抗原に対する平衡解離定数(KD)を示し得る;それに対し、操作された抗体の中性pH(例えば、7.4)でのその抗原に対するKDは、およそ0.5 nM以下となり得る。
(操作された抗体の構造)
本明細書に記載の操作された抗体は典型的に、抗原結合特異性が対をなし、6つのCDRが抗原結合部位に寄与するVH及びVLドメインによって提供される従来型の四鎖免疫グロブリンである。しかしながらまた、用語「操作された抗体」は、これらに限定はされないが、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディなどを含む従来の免疫グロブリンの抗原結合断片及び操作された抗原結合コンストラクト、及び対となったVH及びVLドメインによって提供される抗原結合部位を含む任意の他の改変免疫グロブリン構成を包含する。
操作された抗体は、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインの1以上又は全てを含む定常領域を含み得る。特に、操作された抗体は、1以上の抗体エフェクター機能を付与し得るFc領域(CH2及びCH3ドメインから構成される)を含むことができる。操作された抗体のFc領域はそれ自体有用な機能特性を付与するために操作され、又は改変され得る。
操作された抗体は:IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMを含む任意の抗体クラスのものとすることができる。好ましい実施態様において、操作された抗体は、IgGである。操作された抗体は:IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4を含む任意のサブクラス(アイソタイプ)のIgGとし得る。
好ましい実施態様において、操作された抗体は新生児Fc受容体(FcRn)と結合することができるFc領域を含み得る。特に、Fc領域が中性pHでFcRnに対する強い結合親和性を示すことが、望ましい場合がある。操作された抗体のFc領域は、新生児Fc受容体、FcRnとの結合を強化するために、改変することができる。FcRnとの高められた結合を付与するFc改変の例には、Fc領域のCH2及び/又はCH3ドメイン中の1以上のアミノ酸位置でのアミノ酸置換がある。
好適なFc突然変異には、Vaccaroらの文献、Nature Biotechnology, Vol. 23, 1283-1288 (2005).に記載されたAbdeg(商標)突然変異がある。Abdeg(商標)突然変異体はヒトIgGの操作されたバリアントであり、これらに限定はされないが、Met252、Ser254、Thr256、His 433、及びAsn434を、Tyr252、Thr254、Glu256、Lys433、及びPhe434(EU付番)にする突然変異を含むヒトIgG1を含む。Abdeg(商標)突然変異を有する操作された抗体(例えば、操作されたヒトIgG1)は、その野生型対応物と比較して強化されたFcRnとの結合親和性を示し、細胞表面でのエクソサイトーシス事象の間にFcRnとより安定に結合する。本明細書で規定する好ましい操作された抗体は、可変ドメインのCDR中の1以上のヒスチジン置換をFc領域中のAbdeg突然変異と組合わせる。
さらに好適なFc突然変異は、US 8,163,881に記載のNHance(商標)突然変異を含む。NHance(商標)突然変異体はヒトIgGの操作されたバリアントであり、これらに限定はされないが、His 433及びAsn434をLys433及びPhe434(EU付番)にする突然変異を含むヒトIgG1を含む。NHance(商標)突然変異を有する操作された抗体(例えば、操作されたヒトIgG1)は、その野生型対応物と比較して強化されたFcRnとの結合親和性を示す。本明細書で規定する好ましい操作された抗体は、可変ドメインのCDR中の1以上のヒスチジン置換をFc領域中のNHance(商標)突然変異と組合わせる。
好ましい実施態様において、操作された抗体は、CDR中に1以上のヒスチジン置換を含むラクダ科動物由来抗体(例えば、ラマ抗体)の可変ドメインの操作されたバリアントである可変ドメイン(VH及びVL)、並びにAbdeg(商標)突然変異Tyr252、Thr254、Glu256、Lys433、及びPhe434(EU付番)を含むヒトIgG(例えば、ヒトIgG1)のFc領域を含み得る。
さらに好ましい実施態様において、操作された抗体は、CDR中に1以上のヒスチジン置換を含むラクダ科動物由来抗体(例えば、ラマ抗体)の可変ドメインの操作されたバリアントである可変ドメイン(VH及びVL)、並びにNHance(商標)突然変異Lys433及びPhe434(EU付番)を含むヒトIgG(例えば、ヒトIgG1)のFc領域を含み得る。
pH依存的抗原結合に加え、高められたFcRnとの結合親和性という2つの特性を示す操作された抗体は、活性抗原除去効果を発揮することができ、インビボで血漿から可溶性抗原を排除するのに有用である。「活性抗原除去」という概念は、操作された抗体を利用して、細胞表面エンドサイトーシス受容体の活動を模倣するものであり、これにより血漿から標的抗原を選択的に排除することが可能となる。簡潔に説明すると、操作された抗体は血漿中(中性pH)に存在する対応する抗原と結合して、抗原-抗体複合体を形成する。この複合体は、エンドソーム中へとランダムに吸収され(通常飲作用により)、そこでpHが酸性になると、抗体Fc部分はFcRnと結合する。操作された抗体のpH依存的抗原結合特性のために、結合した抗原は酸性エンドソーム内に放出され、リソソーム経路により分解へと向かう。遊離抗体(依然としてFcRnと結合するが、もはやその抗原とは結合しない)は続いてリサイクルされて細胞表面に戻り、そこでさらなるラウンドの抗原結合及び内部移行に参加することができる。pH 7.4での結合に実質的に影響を及ぼすことなく酸性pHでのFcRnとの結合を促進するFc突然変異により、この「活性抗原除去」プロセスを強化することができる。
また、先に列記した具体的なFc突然変異に加え、操作された抗体は、抗体のエンドソームへの取り込みを改善する、例えばpIの変化、電荷の変化、pH 7.4及び/又はpH6.0でのFcRn 親和性の変化を含む任意の他の突然変異又は改変;任意の他の「高効率リサイクリング(high recycling)」Fc受容体、例えばFcγ受容体、特にFcγRIIbなどとの結合の増加を促進する任意の突然変異又は改変;免疫複合体形成を増加させる任意の突然変異(例えば、補体結合部位)を含み得る。
操作された抗体は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ラクダ科動物、又は他の哺乳動物種からの親抗体の操作されたバリアント又はキメラ抗体とし得る。特定の実施態様において、操作された抗体は、ラクダ科動物種、例えばラマ、ラクダ、ヒトコブラクダ、グアナコ、ビクーナなどから単離したラクダ科動物抗体の操作されたバリアント、又は可変ドメイン(若しくはそのCDR)がラクダ科動物種(例えば、ラマ)に由来し、定常ドメインがヒトに由来するラクダ科動物-ヒトキメラ抗体(例えば、ラマ-ヒトキメラ)の操作されたバリアントとすることができる。ラクダ科動物抗体及びラクダ科動物-ヒトキメラ抗体を生産する技術は、その内容が参照により本明細書に組み込まれているWO 2010/001251に記載されている。
操作された抗体の抗原結合特異性、すなわちそれが結合する標的抗原の性質は、特に制限されない。本件出願人は、本明細書で提供する方法論が抗原結合特性の異なる多数の様々な親抗体のpH依存的バリアントの操作に応用可能であることを実証した。従って、pH依存的抗原結合を操作するための記載された技術は、一般応用性の原理となり、1つの具体的な標的抗原と結合する抗体に限定されない。
(例証)
本発明は、以下の実施例によってさらに例証されるが、さらに限定するものとして解釈するべきではない。本件出願の全体にわたって引用されている全ての参考文献、特許及び公開特許出願の内容は、明白に参照により本明細書に組み込まれる。
(図面の簡単な説明)
機能的アッセイを使用して測定した、親抗体18E2の操作されたバリアントにおけるpH依存的抗原結合を例証する。リガンド:受容体相互作用の阻害のIC50を、pH 7.4及びpH5.5の両方で、親抗体18E2及び1又は2つの規定されたヒスチジン突然変異を含む18E2の操作されたバリアントについて測定した。 MSD技術を使用して測定した、親抗体5D1のヒスチジン突然変異体のpH依存的結合を例証する。 MSD技術を使用して測定した、親抗体5D1のヒスチジン突然変異体のpH依存的結合を例証する。 MSD技術を使用して測定した、親抗体5D1のヒスチジン突然変異体のpH依存的結合を例証する。
(実施例1:ヒートマップの構築)
大きな抗体レパートリー中でヒスチジン残基が天然に許容されるVドメイン中のアミノ酸残基位置を同定するため、いくつかの標的抗原プロジェクトから得た多数の機能的(抗原結合性)抗体のVH、Vλ、及びVκドメイン又は対応するFab断片の配列をプールし、解析した。
各標的抗原プロジェクトには、精製抗原又は標的を発現するDNA(DNAワクチン接種)による活動的ラマの免疫化、Fab又はscFvファージディスプレイライブラリ構築、並びにファージディスプレイによる特異的結合因子の選択及びスクリーニングが含まれていた。ファージディスプレイは、通常溶出剤としてトリプシンを使用して最高3ラウンドの選択を行い、続いてペリプラズム抽出物中でFab(又はscFv)を発現させ、ELISA、MSD、又はSPR(Biacore)によりFab(又はscFv)結合因子を同定する、標準的手順に従って実施した。トリプシンによる溶出に加え、pH依存的結合を有する抗体をさらに富化させるため、続いて並行ファージディスプレイプロセスを行った。このプロセスでは、TBS(50mMトリス pH 5.5、及び150mM NaCl)中のpH 5.5の溶出液を使用して、最高3ラウンドの選択を行った。続いて全ての配列をプールし、タイプ(VH、Vλ、又はVκ)及びサブファミリー(例えば、VH1、VH2、及びVH3)に細分した。任意の厳密な重複配列を除去し、特有の配列のみを使用してVドメインの各位置でのヒスチジン残基の数を数えた。これにより、免疫化したラマ由来の抗体のVドメイン中のどのアミノ酸位置でヒスチジンが受け入れられるかを示す「ヒートマップ」が作成された。さらに、このデータセットは免疫化したラマからのRNAを使用したハイスループット配列決定法により同定される配列を使用して、さらに完全なものとすることができる。
(実施例2:pH依存性を高めるためのヒートマップの使用)
高い親和性、機能性(例えば、リガンド:受容体相互作用の遮断)、及び好ましくは多少のpH依存性の観点から要求される特徴を有する親抗体又はFab断片を、ヒートマップを使用したヒスチジン工学のために選択した。
最初に少数のヒスチジン突然変異を単一の親抗体について試験した。抗体18E2のVHドメイン中の位置H35及びVLドメイン中の位置L34に突然変異を加えた。この抗体の標的抗原はコンフォメーションエピトープの存在のためにBiacore(登録商標)では対応できないことから、pH依存性の効果は抗体のリガンド:受容体相互作用を遮断する能力を測定した。全てのタンパク質をpH 7.4又はpH 5.5でインキュベートする場合、IC50を測定した。結果を表1及び図1に示す。データから、単一の突然変異を導入すると、この抗体のpH依存性が4倍増加することが観察されたことが示唆される。興味深いことに、突然変異したVHを突然変異したVλと組合わせることにより、pH 7.4での過剰な効果を伴うことなくpH依存性がさらに改善された。
表:1
Figure 2020519598
これらのデータから、ヒートマップにより規定された位置でのヒスチジンによるアミノ酸の置換が機能していること、すなわちpH依存性を強化することができることが確認された。他の位置でのヒスチジン突然変異により、より優れた(又はより劣った)効果がもたらされ得るものと予想することができるため、体系的な突然変異解析を実施した。
(実施例3:pH依存性を高めるためのヒートマップを使用した完全突然変異解析)
第2の抗原標的に対し方向づけられた抗体5D1のpH依存性をヒートマップを使用して導入した。ヒートマップによれば、5D1のVH中の18個の位置はヒスチジン置換の影響を受けやすく、5D1のVλ中の12個の位置はヒスチジン置換の影響を受けやすかった(表2を参照されたい)。ヒスチジン残基はVLの位置55及び91に天然に存在し、その結果試験することとなる突然変異体の数がさらに減少したことに留意されたい。VLの最も近い生殖細胞系列はVL8であるため、初期スクリーニングにおいてFR2中の位置L49はヒスチジンに突然変異させなかった。しかしながら、CDR2ループの構造的保存に基づいて、この位置も同様にヒートマップに従って突然変異させることができたはずであった。
表2
Figure 2020519598
各々の突然変異について、合成遺伝子を発注した(Geneart, Thermo Scientific)。凍結乾燥させたDNAをH2Oで希釈し、標準的なDNA再クローニング方法(制限酵素及びT4リガーゼ)を使用して、ヒト定常ドメイン(VHに対してはCH1-CH2-CH3、又はVλに対してはCλ、又はVκに対してはCκ)を含む哺乳動物発現ベクターに再クローニングした。作製したコンストラクトは配列を確認して10 mlの浮遊させたHEK293細胞に一過的にトランスフェクションするために使用し、各々単一のHIS置換を含む操作されたバリアント抗体のパネルを作製した。
各単一のVH 5D1突然変異体に野生型軽鎖を個別にトランスフェクションし、一方各単一のVL 5D1突然変異体に野生型重鎖を個別にトランスフェクションした。HEK293細胞をFreestyle 293発現培地(Gibco)中37℃、5% CO2で増殖させ、最適密度0.5〜0.8×106細胞/mLの下トランスフェクションを実施した。トランスフェクション混合物には、HEK293培養物1 mL当たり40 μLのOPTI-MEM(Gibco)、1.5 μgのポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences)、及び0.5 μg DNAを含めた。重鎖及び軽鎖に適用する比は、1〜3とした。
細胞へのトランスフェクションの4時間後、全培養物体積の10%となる9 % Primatone HS/ UF(Kerry BioScience/ Sheffield)を加えた。培養物を100 rpmで振盪しながら6日間インキュベートし、その後1,000×gで10分間遠心分離することにより収集した。1×PBS中のプロテインA-セファロースビーズ(GE Healthcare)の50%スラリーを細胞培養物上清1 mL当たり10 μL加えた。ビーズを含む上清を、ローター上4℃、25 rpmで少なくとも2時間インキュベートした。ビーズを低い減速速度で610×g、2分間遠心分離することによりペレット化した。機能的mABと結合したビーズを96ウェル0.45 μmフィルタープレート(PALL)に移し、かつ引き続き1×PBS、0.5 M NaCl(ChemLab)を含む1×PBS、及び0.15 M NaCl(ChemLab)を含む0.5×PBSで洗浄した。各回では、洗浄工程間で真空を適用した。結合したmABを0.3 M NaCl (ChemLab) を含むpH 3の50 mMクエン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)を使用して溶出した。溶出した画分をpH 8の1M KHPO4/KH2PO4(VWR)によって中和し、タンパク質濃度をNanoDrop 2000(Thermo Scientific)で測定した。Biacoreにより、又はMSDプラットフォームを使用して、スクリーニングを行った。
Biacoreによるスクリーニングでは、いくつかの設定を使用することができる。「直接的」設定においては、CM5チップ(GE Healthcare)上にコーティングされた抗原と精製抗体の結合は、製造業者の説明書に従い、pH 7.4のHBSEP緩衝液 (0.01 M 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)pH 7.4、0.15 M NaCl(ChemLab)、3 mM EDTA, 0.005%(v/ v)Surfactant P20)中25℃で、pH 7.4若しくはpH 5.5として、又は同じ緩衝液を使用するが1 M HClを加えることによりpH 5.5に調整して測定した。異なる「捕捉」設定において、突然変異型抗体は全てのチャネルにおいてポリクローナル抗ヒトIgGでコーティングされたチップ上に捕捉される。mABをHBSEPに注入してRUを150〜300に到達させ、続いてpH 7.4の、又はpHを5.5に調整したHBSEP緩衝液中様々な濃度のリガンド(検体)を注入した。各サイクルの後、pH 1.5の10 mMグリシンを10秒間注入することにより、チップ表面の再生を行った。全ての速度論的解析は、GE Healthcareによって提供される適切なソフトウェアを使用して実施した。
MSDプラットフォームを使用した抗体の試験について、プレート(MSD)を1×PBS中4℃で標的により一晩コーティングした。続いてプレートを600 rpmで振盪しながら200 μLの1×PBSで3回洗浄し、150 μL の 1%(m/ v)カゼイン(Sigma-Aldrich)を含む1×PBSを用いて室温で1〜2時間ブロッキングした。続いてプレートを200 μLの0.05%(m/ v)Tween(Merck)(pH 7.4)を含む1×PBS又は0.05%(m/ v)Tween(Merck)(pH 5.5)を含むクエン酸緩衝液(0.05 Mクエン酸(Sigma-Aldrich)、0.14 Mクエン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)、0.15 M NaCl(ChemLab))で3回洗浄した。用量反応曲線を計算するため、pH 7.4又はpH 5.5とする1×PBST(0.05%(m/ v)Tweenを含むPBS)(pH 7.4)又は0.05%(m/ v)Tween(Merck)を含むクエン酸緩衝液(pH 5.5)中に様々な濃度で加えたmABの25 μLを、ウェルに加えた。600 rpmで振盪しながら室温で1時間インキュベートした後、ウェルをpH 7.4又はpH 5.5の1×PBSTで4回洗浄した。最後の洗浄工程について、PBST pH 7.4又はクエン酸緩衝液pH 5.5により、600 rpmで振盪しながら室温で5〜10分間余分にインキュベーションを実施した。全てのウェルを1×PBS(pH 7.4)で最後に洗浄し、0.1%カゼイン(Sigma-Aldrich)-1×PBS(pH 7.4)中の1:2000ヤギ抗ヒトFc Sulfo (MSD)の25 μLを加え、600 rpmで振盪しながら室温で1時間置いた。洗浄工程後、200 μLの1×PBST(pH 7.4)、150 μLのMSD読取緩衝液(MSD)を各ウェルに加え、プレートをQuickPlex SQ 120装置(MSD)において読み取った。
単一のpH設定に加え(抗体結合及び洗浄を同じ7.4又は5.5のpHで行う)、本発明者らは抗体結合をpH 7.4で行うが、洗浄をpH 5.5のクエン酸緩衝液中で行う、2点pH ELISAも試験した。この設定により、会合又は解離又はそれら両方に対するpHの効果を識別することが可能となり、結合がpH 7.4で起こり、かつ抗原の放出がpH 5.5-6.0のエンドソーム中で起こるに違いないインビボの状況がより適切に代表される。
表2に示した全ての単一突然変異体をスクリーニングした後、いくつかの単一突然変異体はpH依存的結合に対する効果を有するようであった(表3)。例えば、5D1VLm3、5D1VHm6、5D1VHm14は5D1wtと比較して顕著なpH依存的結合を有していた。さらに、5D1VHm13は有利な速度論を伴うpH依存性の幾分の改善を有していた。
表:3
Figure 2020519598
Figure 2020519598
また、pH依存性は図2及び3、並びに表4に示すように、MSD技術を使用して観察した。これらの突然変異体の効果は図2に示す曲線により可視化されている。図2では、洗浄の間pH 5.5が適用され(最大の結合が減少する)、並びに結合及び洗浄の両方の間にpH 5.5が適用される(突然変異体5D1VLm3及び5D1VHm6について最大の結合が失われる)。これに対し、pH 7.4で測定したEC50は、野生型親抗体と同程度のままであった。
表:4
Figure 2020519598
これらのデータはpH依存性が導入されても、その効果は解離段階よりも会合段階に対して顕著であることを示唆している。従って、pH依存性を強化するために、さらにヒスチジン突然変異を導入することは、有益となり得る。
(実施例:4 pH依存性をさらに増加させるヒスチジン突然変異の組合わせ)
VLm3、VHm6、及びVHm13は全てpH依存性に対する効果を有するため、これらの突然変異を同じ抗体中で組合わせた。二重HIS突然変異体VLm3/VHm6及びVLm3/VHm13は、HEK293細胞のトランスフェクションの間単純に各々の鎖をコードするプラスミドを一緒に組合わせることにより、作製した。得られた抗体のpH依存性は、MSDで試験した(図4を参照されたい)。
突然変異の組合わせは、表5に示すように、pH依存性に対する非常に肯定的な効果を有していた。二重変異体がpH 5.5で示す結合は、非常に乏しかった(pH5.5-pH5.5設定)。
対照的に、大部分のpH 7.4での抗体結合は、pH 5.5での洗浄の間に放出された(pH7.4-pH 5.5設定)。
表:5
Figure 2020519598
nd:低い結合のためにEC50が測定可能でない
(実施例5:抗体3D6のpH依存性を高めるためのヒートマップを使用した完全突然変異解析)
第2の抗原標的に対し方向づけられた抗体3D6のpH依存性をヒートマップを使用して導入した。ヒートマップ及びCDR長によれば、3D6のVH中の25個の位置はヒスチジン置換の影響を受けやすく、3D6のVκ中の16個の位置はヒスチジン置換の影響を受けやすかった(表6を参照されたい)。これら25個の位置のうち21個を初期スクリーニングにおいて試験した。
表:6
Figure 2020519598
各突然変異について、合成遺伝子を注文し(Geneart, Thermo Scientific)、適切な発現ベクターにクローニングし、抗体を実施例3に示すように作製した。抗体のpH依存性を、Biacore T200チップを高量の抗ヒトFc抗体(8000 RU)でコーティングした捕捉設定で試験した。続いて、pH 7.4のHBS-EP中の3D6抗体の野生型又は突然変異体(2 μg/ml)を注入して、好ましくは100〜200 RUに到達させた。シグナルを安定化させた後、標的を2.5又は10 nMで注入し、pH 7.4又は5.5のHBS-EP緩衝液を使用して洗浄した。pH 7.4での平衡解離定数KD(M)は、 T200ソフトウェアを使用して測定した。会合をpH 7.4で行ったため、解離定数(kd 1/s)のみをpH 5.5でのフィッティングから抽出した。結果を表7及び8に提示する。
表:7
Figure 2020519598
表:8
Figure 2020519598
これらのデータは、pH 7.4での結合の損失を最小限にしながらpH依存性が3D6に導入されたことを示す。pH依存性を強化するために、単一ヒスチジン突然変異を組合わせることは、有益となり得る。
(実施例:6 抗体3D6においてpH依存性をさらに増加させるヒスチジン突然変異の組合わせ)
表7又は8における結果に基づいて、顕著なpH依存性を導入し、かつ/又はpH 7.4での結合を改善する突然変異を同じドメイン中で組合わせて、新たな突然変異体VHm23、VHm24、VHm25、VHm26、VKm16、VKm17、VKm18、及びVKm19(表9)を作製した。例えば、3D6VHm23は突然変異VHm9及びVHm13を有し、3D6VHm24は、突然変異VHm0及びVHm16を有するなどである。
表:9
Figure 2020519598
新たなVH及びVK突然変異体は、HEK293細胞のトランスフェクションの間単純に各々の鎖をコードするプラスミドを互いに一緒に組合わせることにより、さらに組合わせた。例えば、抗体3D6VHm23/VKm11は、VHm23突然変異体DNAを突然変異体VKm11 DNAと共トランスフェクションすることにより組合わせた。精製後、結果として得た抗体のpH依存性を実施例5に記載の通りBiacore(登録商標)を使用して試験した。優れたpH依存性及びpH 7.4での優れた親和性を有する抗体は、加える標的の濃度が高い(0.04 nM; 0.1 nM; 0.37 nM; 1.1 nM; 3.3 nM、及び10 nM)ことを唯一の相違点としてさらに特性評価した。pH 7.4でのKD(M)は、 T200ソフトウェアを使用して測定した。解離定数(kd s-1)のみをpH 5.5でのフィッティングから抽出した。上位5つの抗体を表10に示す。
表:10
Figure 2020519598
Biacoreからの結果は、本明細書で提示する方法を用いると、pH 7.4での結合の損失を最小限にして、高いpH依存性を有する抗体を迅速に同定することが可能となることを明確に示している。

Claims (55)

  1. その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を調製する方法であって:
    親抗体の少なくとも1つのアミノ酸残基をヒスチジン残基で置換することにより、該操作された抗体を調製することを含み、以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されておらず、該操作された抗体がその抗原とのpH依存的結合を示す、前記方法。
  2. 前記操作された抗体が、中性pHにおけるよりも酸性pHでその抗原との親和性が低い、請求項1記載の方法。
  3. 酸性pHでの前記操作された抗体-抗原相互作用の解離速度定数(kd)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高い、請求項1記載の方法。
  4. 酸性pHでの前記操作された抗体-抗原相互作用の前記解離速度定数(kd)が、酸性pHでの親抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高い、請求項1記載の方法。
  5. 酸性pHでの前記操作された抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該平衡解離定数(KD)よりも高い、請求項1又は2記載の方法。
  6. 前記ホットスポットリストから選択される少なくとも2つのアミノ酸残基をヒスチジンで置換する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記ホットスポットリストから選択される少なくとも3つのアミノ酸残基をヒスチジンで置換する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記ホットスポットリストから選択される少なくとも4つのアミノ酸残基をヒスチジンで置換する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  9. 以下の残基:H100g、H100k、H100m、H100n、L95、L95d、L95e、L95f、L97の1以上もヒスチジンで置換する、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
  10. 前記コールドスポットリストから選択される少なくとも2つのアミノ酸残基をヒスチジンで置換しない、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
  11. 前記コールドスポットリストから選択される少なくとも3つのアミノ酸残基をヒスチジンで置換しない、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
  12. VHCDR1、VHCDR2、VLCDR1、及びVLCDR2の前記コールドスポットリストから選択されるアミノ酸残基のいずれもヒスチジンで置換しない、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
  13. 前記親抗体又はそのCDRがラクダ科動物種に由来する、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
  14. その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を調製する方法であって:
    (a) 抗原と結合する親抗体を提供する工程;
    (b) 該親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々が少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程;
    (c) 該操作されたバリアントのパネルを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし、それによって該抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を同定する工程、を含む、前記方法。
  15. パート(c)で同定した前記操作された抗体が、中性pHにおけるよりも酸性pHでその抗原との親和性が低い、請求項14記載の方法。
  16. パート(c)で同定した前記操作された抗体が、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の前記解離速度定数(kd)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高いことを特徴とする、請求項14記載の方法。
  17. パート(c)で同定した前記操作された抗体が、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の前記解離速度定数(kd)が、酸性pHでの前記親抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高いことを特徴とする、請求項14記載の方法。
  18. パート(c)で同定した前記操作された抗体が、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の前記平衡解離定数(KD)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該平衡解離定数(KD)よりも高いことを特徴とする、請求項14又は15記載の方法。
  19. 工程(b)が、前記親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製する工程を含み、該パネル中の該操作されたバリアントの各々が、VHドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、請求項14〜18のいずれか1項記載の方法。
  20. 工程(b)が、前記親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製する工程を含み、該パネル中の該操作されたバリアントの各々が、VLドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、請求項14〜18のいずれか1項記載の方法。
  21. 前記親抗体の前記VLドメインがλクラスに属し、かつ以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、請求項20記載の方法。
  22. 前記親抗体の前記VLドメインがκクラスに属し、かつ以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、請求項20記載の方法。
  23. その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を調製する方法であって:
    (a) 抗原と結合する親抗体を同定する工程;
    (b) 該親抗体の操作されたバリアントのパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々が少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程;
    (c) 該操作されたバリアントのパネルを該標的抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし、それによってヒスチジンの存在により該抗原とのpH依存的結合が付与される選択されたアミノ酸位置を同定する工程;
    (d) 該親抗体の1以上のさらに操作されたバリアントを調製する工程であって、該バリアントの各々が工程(c)で同定された2以上の選択されたアミノ酸位置にヒスチジンを含む、前記工程;及び
    (e) 該さらに操作されたバリアントを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし;それによって該抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を同定する工程、を含む、前記方法。
  24. パート(e)で同定した前記操作された抗体が、中性pHにおけるよりも酸性pHでその抗原との親和性が低い、請求項23記載の方法。
  25. パート(e)で同定した前記操作された抗体が、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の前記解離速度定数(kd)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高いことを特徴とする、請求項23記載の方法。
  26. パート(e)で同定した前記操作された抗体が、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の前記解離速度定数(kd)が、酸性pHでの前記親抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高いことを特徴とする、請求項23記載の方法。
  27. パート(e)で同定した前記操作された抗体が、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の前記平衡解離定数(KD)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該平衡解離定数(KD)よりも高いことを特徴とする、請求項23又は24記載の方法。
  28. 工程(b)の前記パネル中の前記操作されたバリアントの各々が、前記ホットスポットリストから選択されたアミノ酸位置での単一のヒスチジン置換を含む、請求項23〜27のいずれか1項記載の方法。
  29. 工程(d)の前記さらに操作されたバリアントが、工程(c)で同定された3以上の前記選択されたアミノ酸位置にヒスチジン残基を含む、請求項23〜28のいずれか1項記載の方法。
  30. 工程(d)の前記さらに操作されたバリアントが、工程(c)で同定された4以上の前記選択されたアミノ酸位置にヒスチジン残基を含む、請求項23〜28のいずれか1項記載の方法。
  31. 工程(d)の前記さらに操作されたバリアントが、以下のアミノ酸位置:H100g、H100k、H100m、H100n、L95、L95d、L95e、L95f、L97の1以上にヒスチジン残基をさらに含む、請求項23〜28のいずれか1項記載の方法。
  32. その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を調製する方法であって:
    (a) 抗原と結合する親抗体を同定する工程;
    (b) 該親抗体の操作されたバリアントの第1のパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々が、VHドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程;
    (c) 該操作されたバリアントの第1のパネルを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし;それによってヒスチジンの存在によりpH依存的結合が付与されるVHドメイン中の1以上の選択されたアミノ酸位置を同定する工程;
    (d) 該親抗体の操作されたバリアントの第2のパネルを調製する工程であって、該パネル中の該操作されたバリアントの各々がVLドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって該親抗体と異なり、以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、前記工程;
    (e) 該操作されたバリアントの第2のパネルを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし;それによってヒスチジンの存在によりpH依存的結合が付与されるVLドメイン中の1以上の選択されたアミノ酸位置を同定する工程;
    (f) 該親抗体の1以上のさらに操作されたバリアントを調製する工程であって、該バリアントの各々が、工程(c)で同定されたVHドメイン中の1以上の選択されたアミノ酸位置のアミノ酸がヒスチジンで置換されていることによって該親抗体と異なり、かつ工程(e)で同定されたVLドメイン中の1以上の選択されたアミノ酸位置のアミノ酸がヒスチジンで置換されていることによって該親抗体と異なる、前記工程;
    (g) 該さらに操作されたバリアントを該抗原とのpH依存的結合についてスクリーニングし;それによって該抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体を同定する工程、を含む、前記方法。
  33. 前記親抗体の前記VLドメインがλクラスに属し、かつ以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、請求項32記載の方法。
  34. 前記親抗体の前記VLドメインがκクラスに属し、かつ以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されており、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    からの少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジンで置換されていない、請求項32記載の方法。
  35. パート(g)で同定した前記操作された抗体が、中性pHにおけるよりも酸性pHでその抗原との親和性が低い、請求項32〜34のいずれか1項記載の方法。
  36. パート(g)で同定した前記操作された抗体が、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の前記解離速度定数(kd)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高いことを特徴とする、請求項32〜34のいずれか1項記載の方法。
  37. パート(g)で同定した前記操作された抗体が、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の前記解離速度定数(kd)が、酸性pHでの前記親抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高いことを特徴とする、請求項32〜34のいずれか1項記載の方法。
  38. パート(g)で同定した前記操作された抗体が、酸性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の前記平衡解離定数(KD)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該平衡解離定数(KD)よりも高いことを特徴とする、請求項32〜37のいずれか1項記載の方法。
  39. 工程(f)の前記さらに操作されたバリアントが、工程(c)及び(e)で同定された全部で3以上の前記選択されたアミノ酸位置にヒスチジンを含む、請求項32〜38のいずれか1項記載の方法。
  40. 工程(f)の前記さらに操作されたバリアントが、工程(c)及び(e)で同定された全部で4以上の前記選択されたアミノ酸位置にヒスチジンを含む、請求項32〜38のいずれか1項記載の方法。
  41. 工程(f)の前記さらに操作されたバリアントが、以下のアミノ酸位置:H100g、H100k、H100m、H100n、L95、L95d、L95e、L95f、L97の1以上にヒスチジン残基をさらに含む、請求項32〜38のいずれか1項記載の方法。
  42. 前記親抗体又はそのCDRがラクダ科動物種に由来する、請求項14〜41のいずれか1項記載の方法。
  43. その抗原とのpH依存的結合を示す操作された抗体であって、該操作された抗体のCDR中の少なくとも1つのアミノ酸がヒスチジン残基であり、以下のホットスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基であり、かつ以下のコールドスポットリスト:
    Figure 2020519598
    から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基でないことを特徴とする、前記操作された抗体。
  44. 前記操作された抗体が、中性pHにおけるよりも酸性pHでその抗原との親和性が低い、請求項43記載の操作された抗体。
  45. 酸性pHでの前記操作された抗体-抗原相互作用の前記解離速度定数(kd)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該解離速度定数(kd)よりも高い、請求項43記載の操作された抗体。
  46. 酸性pHでの前記操作された抗体-抗原相互作用の前記平衡解離定数(KD)が、中性pHでの該操作された抗体-抗原相互作用の該平衡解離定数(KD)よりも高い、請求項43又は44記載の操作された抗体。
  47. 前記ホットスポットリストから選択される少なくとも2つのアミノ酸残基がヒスチジンである、請求項43〜46のいずれか1項記載の操作された抗体。
  48. 前記ホットスポットリストから選択される少なくとも3つのアミノ酸残基がヒスチジンである、請求項43〜46のいずれか1項記載の操作された抗体。
  49. 前記ホットスポットリストから選択される少なくとも4つのアミノ酸残基がヒスチジンである、請求項43〜46のいずれか1項記載の操作された抗体。
  50. 以下のアミノ酸位置:H100g、H100k、H100m、H100n、L95、L95d、L95e、L95f、L97の1以上にヒスチジン残基をさらに含む、請求項43〜49のいずれか1項記載の操作された抗体。
  51. 表Bに列記される位置の少なくとも2つのアミノ酸残基がヒスチジンではない、請求項43〜50のいずれか1項記載の操作された抗体。
  52. 前記コールドスポットリストから選択される位置の少なくとも3つのアミノ酸残基がヒスチジンではない、請求項43〜50のいずれか1項記載の操作された抗体。
  53. 以下のアミノ酸位置:H100g、H100k、H100m、H100n、L95、L95d、L95e、L95f、L97の1以上にヒスチジンを含み得ることを条件として、前記コールドスポットリストに記載の位置のいずれのアミノ酸残基もヒスチジンではない、請求項43〜50のいずれか1項記載の操作された抗体。
  54. ラクダ科動物抗体の操作されたバリアントである、請求項43〜53のいずれか1項記載の操作された抗体。
  55. Fc領域を含み、新生児Fc受容体(FcRn)と結合する、請求項43〜54のいずれか1項記載の操作された抗体。
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