I.定義
本開示は、特定の組成物または生物学的系に制限されるものではなく、当然ながら、変動し得ることを理解されたい。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、限定することを意図するものではないこともまた、理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容により別途明確に指示されない限り、複数形の参照物を含む。したがって、たとえば、「1つの分子」への言及は、必要に応じて、2つまたはそれを上回るそのような分子の組合せなども含む。
「約」という用語は、本明細書において使用されるとき、当該技術分野の当業者に容易に理解される、それぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書において、「約」ある値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体に関する実施形態を含む(また、それについて記載する)。
本開示の態様および実施形態は、態様および実施形態を「含むこと」、それら「からなること」、およびそれら「から本質的になること」を含むことが理解される。
「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体、ダイアボディ、および一本鎖分子)、ならびに抗体断片(たとえば、Fab、F(ab’)2、およびFv)が含まれる。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において、「抗体」と互換可能に使用される。
基本的な4本鎖の抗体ユニットは、2つの同一な軽鎖(L)および2つの同一な重鎖(H)から構成されるヘテロ四量体の糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と称される追加のポリペプチドを伴う、基本的なヘテロ四量体ユニット5つからなり、10個の抗原結合部位を含むが、一方でIgA抗体は、基本的な4本鎖ユニット2〜5個からなり、これらが重合して、J鎖との組合せで多価集合体が形成され得る。IgGの場合は、4本鎖ユニットは、一般に、約150,000ダルトンである。それぞれのL鎖は、1つの共有結合ジスルフィド結合によってH鎖に連結され、一方で、2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプに応じて1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに連結されている。それぞれのH鎖およびL鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有する。それぞれのH鎖は、N末端に、可変ドメイン(VH)を有し、それに続いて、α鎖およびγ鎖のそれぞれについては3つの定常ドメイン(CH)を有し、μおよびεアイソタイプについては4つのCHドメインを有する。それぞれのL鎖は、N末端に、可変ドメイン(VL)を有し、それに続いて、その反対側の末端に、定常ドメインを有する。VLは、VHと整列しており、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖および重鎖の可変ドメイン間の接合部を形成すると考えられている。VHおよびVLの対が、一緒になって、単一の抗原結合部位を形成する。様々なクラスの抗体の構造および特性については、たとえば、Basic and Clinical Immunology、第8版、Daniel P. Sties、Abba I. TerrおよびTristram G. Parsolw(編)、Appleton & Lange、Norwalk、CT、1994年、71頁、および第6章を参照されたい。
任意の脊椎動物種に由来するL鎖には、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと称される明確に異なる2つの種類のうちの1つが割り当てられ得る。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンには、異なるクラスまたはアイソタイプが割り当てられ得る。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという5つのクラスがあり、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと表記される重鎖を有する。γおよびαのクラスは、さらに、CHの配列および機能における比較的わずかな違いに基づいて、サブクラスに分けられ、たとえば、ヒトは、以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと称される複数の多型性バリアントで存在し得(JefferisおよびLefranc、2009年、mAbs、1巻、4号、1〜7頁において概説されている)、それらのいずれも、本開示における使用に好適である。ヒト集団における一般的なアロタイプバリアントは、a、f、n、zという文字で表記されるものである。
「単離された」抗体は、同定され、その産生環境の成分から(たとえば、天然または組換えにより)分離および/または回収されているものである。一部の実施形態では、単離されたポリペプチドは、その産生環境に由来するすべての他の成分と関連しない。その産生環境の混入成分、たとえば、組換えでトランスフェクトした細胞から生じるものは、抗体の研究、診断上、または治療上の使用を典型的に妨害するであろう材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を挙げることができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、(1)たとえば、ローリー法によって決定した場合に、抗体の95重量%を上回って、また一部の実施形態では、99重量%を上回って、(1)スピニングカップ配列決定装置(spinning cup sequenator)の使用によって、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルー染色もしくは銀染色を使用して、非還元もしくは還元条件下において、SDS−PAGEにより均質となるまで、精製される。単離された抗体は、その抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のin situの抗体を含む。通常は、しかしながら、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において使用されるとき、実質的に均質な抗体集団から得られた抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、わずかな量で存在し得る、可能性のある天然の変異および/または翻訳後修飾(たとえば、異性化、アミド化)を除き、同一である。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖に、C末端切断を有する。たとえば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のC末端において、切断されている。一部の実施形態では、C末端切断により、重鎖からC末端リシンが除去される。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖に、N末端切断を有する。たとえば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のN末端において、切断されている。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、高度に特異性であり、単一の抗原性部位に指向する。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、高度に特異性であり、複数の抗原性部位に指向する(たとえば、二重特異性抗体または多重特異性抗体)。「モノクローナル」という修飾語は、抗体が、実質的に均質な抗体集団から得られているという特徴を示すものであり、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるものではない。たとえば、本開示に従って使用するモノクローナル抗体は、たとえば、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ技術、およびヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部またはすべてを有するヒトもしくはヒト様抗体を動物において産生するための技術を含め、様々な技法によって、作製することができる。
「ネイキッド抗体」という用語は、細胞傷害性部分や放射性標識にコンジュゲートしていない抗体を指す。
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、または「完全抗体」という用語は、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために、互換可能に使用される。具体的には、完全抗体には、Fc領域を含む重鎖および軽鎖を有するものが含まれる。定常ドメインは、天然の配列の定常ドメイン(たとえば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。一部の事例では、インタクトな抗体は、1つまたは複数のエフェクター機能を有し得る。
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分、インタクトな抗体の抗原結合領域および/または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、およびFv断片;ダイアボディ;線形抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapataら、Protein Eng.、8巻(10号):1057〜1062頁[1995年]を参照されたい);一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と称される2つの同一な抗原結合性断片と、その残りの容易に結晶化する能力を反映した呼称である「Fc」断片とが得られた。Fab断片は、1つのL鎖全体と共にH鎖の可変領域ドメイン(VH)、および一方の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)で構成される。それぞれのFab断片は、抗原結合に関しては、1価である、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab’)2断片が得られるが、これは、おおまかには、異なる抗原結合活性を有する2つのFab断片がジスルフィド結合したものに相当し、依然として抗原に架橋することが可能である。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域に由来する1つまたは複数のシステインを含め、CH1ドメインのカルボキシ末端にいくつかの追加の残基を有することが、Fab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’の本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた、公知である。
Fc断片は、両方のH鎖のカルボキシ末端部分がジスルフィドによって一緒に結合されたものを含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって決定され、この領域は、ある特定の種類の細胞において見出されるFc受容体(FcR)によって認識される領域でもある。
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む、最小限の抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインおよび1つの軽鎖可変領域ドメインが緊密な非共有結合で結合した二量体からなる。これら2つのドメインのフォールディングにより、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する、6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖からそれぞれ3つずつのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりも低い親和性ではあるものの、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
「sFv」または「scFv」とも略される「一本鎖Fv」は、VHおよびVL抗体ドメインが、単一のポリペプチド鎖に接続されたものを含む、抗体断片である。一部の実施形態では、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に、sFvが抗原結合のために所望される構造を形成するのを可能にする、ポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの概説に関しては、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer-Verlag、New York、269〜315頁(1994年)を参照されたい。
本開示の抗体の「機能性断片」は、一般にはインタクトな抗体の抗原結合領域もしくは可変領域を含む、インタクトな抗体の一部分、またはFcR結合能力を保持するかもしくはそれが修飾されている抗体のFv領域を含む。抗体断片の例としては、線形抗体、一本鎖抗体分子、および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的に、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であり、一方で鎖(複数可)の残りの部分が、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにそのような抗体の断片における対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含むが、それらが、所望される生物学的活性を呈する場合に限る(米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851〜6855頁(1984年))。本明細書における目的とされるキメラ抗体としては、抗体の抗原結合領域が、たとえば、マカクザルに目的の抗原で免疫することによって産生された抗体に由来する、PRIMATIZED(登録商標)抗体が挙げられる。本明細書において使用されるとき、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
非ヒト(たとえば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む、キメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRに由来する残基が、所望される特異性、親和性、および/または能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRに由来する残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基が、対応する非ヒト残基で置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、結合親和性など、抗体の性能をさらに洗練するためになされ得る。一般には、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここで、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のものに対応するが、FR領域は、抗体の性能、たとえば、結合親和性、異性化、免疫原性などを改善する、1つまたは複数の個々のFR残基置換を含み得る。一部の実施形態では、FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、H鎖では6つ以下であり、L鎖では3つ以下である。ヒト化抗体はまた、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含み得る。さらなる詳細については、たとえば、Jonesら、Nature、321巻:522〜525頁(1986年);Riechmannら、Nature、332巻:323〜329頁(1988年);およびPresta、Curr. Op. Struct. Biol.、2巻:593〜596頁(1992年)を参照されたい。たとえば、VaswaniおよびHamilton、Ann. Allergy, Asthma & Immunol.、1巻:105〜115頁(1998年);Harris、Biochem. Soc. Transactions、23巻:1035〜1038頁(1995年);HurleおよびGross、Curr. Op. Biotech.、5巻:428〜433頁(1994年);ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号もまた、参照されたい。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、単一の抗原性部位に指向する。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、複数の抗原性部位に指向する。代替的なヒト化の方法は、米国特許第7,981,843号および米国特許出願公開第2006/0134098号に記載されている。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端側のドメインを指す。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」および「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体のもっとも可変的な部分であり(同じクラスの他の抗体と比べて)、抗原結合部位を含む。
「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、本明細書において使用されるとき、配列が超可変であり、かつ/または構造的に定義されるループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVHにあり(H1、H2、H3)、3つがVLにある(L1、L2、L3)。天然の抗体の場合、H3およびL3は、6つのHVRの中でもっとも多様性を示し、H3は、特に、抗体に対する微細な特異性を付与する固有の役割を果たすと考えられている。たとえば、Xuら、Immunity、13巻:37〜45頁(2000年);JohnsonおよびWu、Methods in Molecular Biology、248巻:1〜25頁(Lo編、Human Press、Totowa、NJ、2003年))を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる天然のラクダ抗体は、軽鎖の非存在下においても機能性であり、安定である。たとえば、Hamers-Castermanら、Nature、363巻:446〜448頁(1993年)およびSheriffら、Nature Struct. Biol.、3巻:733〜736頁(1996年)を参照されたい。
いくつかのHVRの描写が使用されており、本明細書において包含される。Kabatの相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列可変性に基づくものであり、もっとも一般的に使用されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institute of Health、Bethesda、MD、(1991年))。ChothiaのHVRは、代わりに、構造的ループの位置に言及する(ChothiaおよびLesk、J. Mol. Biol.、196巻:901〜917頁(1987年))。「contact」HVRは、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づくものである。これらのHVRのそれぞれに由来する残基を、以下に示す。
別途示されない限り、可変ドメインの残基(HVR残基およびフレームワーク領域の残基)は、Kabatら(上記)に従って番号付けされている。
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるHVR残基以外の可変ドメインの残基である。
「Kabatにおけるような可変ドメイン残基の番号付け」または「Kabatにおけるようなアミノ酸位置の番号付け」という表現、およびそれらの変化形は、Kabatら(上記)において、抗体の編集物(compilation)の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用されている番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用すると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮形に相当する、より少ないアミノ酸を含み得るか、またはそれへの挿入に相当する、追加のアミノ酸を含み得る。たとえば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に、単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)、および重鎖FR残基82の後に、挿入された残基(たとえば、Kabatによる残基82a、82b、および82cなど)を含み得る。所与の抗体に関するKabatの残基番号付けは、その抗体の配列の相同性の領域における、「標準的な」Kabatで番号付けした配列とのアラインメントによって、決定され得る。
本明細書の目的での「アクセプターヒトフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来するVLまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、または既存のアミノ酸配列変化を含んでもよい。一部の実施形態では、既存のアミノ酸の変化の数は、10個もしくはそれよりも少ない、9個もしくはそれよりも少ない、8個もしくはそれよりも少ない、7個もしくはそれよりも少ない、6個もしくはそれよりも少ない、5個もしくはそれよりも少ない、4個もしくはそれよりも少ない、3個もしくはそれよりも少ない、または2個もしくはそれよりも少ない。
参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインし、最大の配列同一性パーセントが達成されるように、必要に応じてギャップを導入した後に、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合として定義され、いずれの保存的置換も、配列同一性の一部とは考えない。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のアラインメントは、当業者の技能の範囲内である様々な手段で、たとえば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含め、配列をアラインするための適切なパラメーターを決定することができる。たとえば、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対する、アミノ酸配列同一性%(これは、代替として、所与のアミノ酸配列Aが、所与のアミノ酸配列Bへ、所与のアミノ酸配列Bと、または所与のアミノ酸配列Bに対して、ある特定のアミノ酸配列同一性%を有するまたは含むとして表記することができる)は、以下のように計算される:
100を分数X/Yに乗じる
ここで、Xは、配列によるそのプログラムでのAとBとのアラインメントにおいて、同一なマッチとしてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合には、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくないことが、理解される。
特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに「結合する」、「特異的に結合する」、または「特異的である」抗体とは、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、その特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合するものである。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)の、無関係の非Siglec−8ポリペプチドへの結合は、当該技術分野において公知の方法(たとえば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって測定した場合、その抗体のSiglec−8への結合の約10%未満である。一部の実施形態では、Siglec−8に結合する抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦2nM、≦1nM、≦0.7nM、≦0.6nM、≦0.5nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(たとえば、10−8Mもしくはそれを下回る、10−8M〜10−13M、たとえば、10−9M〜10−13M)の解離定数(Kd)を有する。
「抗Siglec−8抗体」または「ヒトSiglec−8に結合する抗体」という用語は、ヒトSiglec−8のポリペプチドまたはエピトープに、任意の他のポリペプチドまたは無関係の非Siglec−8ポリペプチドのエピトープに実質的に結合することなく、結合する抗体を指す。
「Siglec−8」という用語は、本明細書において使用されるとき、ヒトSiglec−8タンパク質を指す。この用語はまた、スプライスバリアントまたはアレルバリアントを含め、Siglec−8の天然に存在するバリアントを含む。例示的なヒトSiglec−8のアミノ酸配列は、配列番号72に示されている。別の例示的なヒトSiglec−8のアミノ酸配列は、配列番号73に示されている。一部の実施形態では、ヒトSiglec−8タンパク質は、免疫グロブリンFc領域に融合されたヒトSiglec−8細胞外ドメインを含む。例示的な免疫グロブリンFc領域に融合されたヒトSiglec−8細胞外ドメインのアミノ酸配列は、配列番号74に示されている。配列番号74において下線で示されているアミノ酸配列は、Siglec−8 Fc融合タンパク質アミノ酸配列のFc領域を示す。
「アポトーシスを誘導する」かまたは「アポトーシス性」である抗体とは、標準的なアポトーシスアッセイ、たとえば、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞の縮小、小胞体の拡張、細胞断片化、および/または膜小胞(アポトーシス体と称される)の形成によって判定される、プログラム細胞死を誘導するものである。たとえば、本開示の抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)のアポトーシス活性は、細胞をアネキシンVで染色することによって示すことができる。
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列のFc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に帰属し得る生物学的活性を指し、抗体のアイソタイプに応じて変動する。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、ファゴサイトーシス、細胞表面受容体(たとえば、B細胞受容体)の下方調節、ならびにB細胞活性化が挙げられる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」とは、分泌されたIgが、ある特定の細胞傷害性細胞(たとえば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合することにより、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が、抗原を保持する標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒素により標的細胞を殺滅することを可能にする、細胞傷害の形態を指す。抗体は、細胞傷害性細胞を「装備(arm)」し、この機序による標的細胞の殺滅に必要である。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方で単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血系細胞におけるFcの発現は、RavetchおよびKinet、Annu. Rev. Immunol.、9巻:457〜92頁(1991年)の464頁の表3に要約されている。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、ADCCを強化する。目的の分子のADCC活性を評価するために、in vitro ADCCアッセイ、たとえば、米国特許第5,500,362号および同第5,821,337号に記載されているものを、行ってもよい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替として、または追加として、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、たとえば、Clynesら、PNAS USA、95巻:652〜656頁(1998年)に開示されているものなどの動物モデルにおいて、評価することができる。ADCC活性および他の抗体特性を変化させる他のFcバリアントとしては、Ghetieら、Nat Biotech.、15巻:637〜40頁、1997年;Duncanら、Nature、332巻:563〜564頁、1988年;Lundら、J. Immunol、147巻:2657〜2662頁、1991年;Lundら、Mol Immunol、29巻:53〜59頁、1992年;Alegreら、Transplantation、57巻:1537〜1543頁、1994年;Hutchinsら、Proc Natl. Acad Sci USA、92巻:11980〜11984頁、1995年;Jefferisら、Immunol Lett.、44巻:111〜117頁、1995年;Lundら、FASEB J、9巻:115〜119頁、1995年;Jefferisら、Immunol Lett、54巻:101〜104頁、1996年;Lundら、J Immunol、157巻:4963〜4969頁、1996年;Armourら、Eur J Immunol、29巻:2613〜2624頁、1999年;Idusogieら、J Immunol、164巻:4178〜4184頁、200;Reddyら、J Immunol、164巻:1925〜1933頁、2000年;Xuら、Cell Immunol、200巻:16〜26頁、2000年;Idusogieら、J Immunol、166巻:2571〜2575頁、2001年;Shieldsら、J Biol Chem、276巻:6591〜6604頁、2001年;Jefferisら、Immunol Lett、82巻:57〜65頁、2002年;Prestaら、Biochem Soc Trans、30巻:487〜490頁、2002年;Lazarら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、103巻:4005〜4010頁、2006年;米国特許第5,624,821号、同第5,885,573号、同第5,677,425号、同第6,165,745号、同第6,277,375号、同第5,869,046号、同第6,121,022号、同第5,624,821号、同第5,648,260号、同第6,194,551号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,277,375号、同第7,335,742号、および同第7,317,091号によって開示されているものが挙げられる。
「Fc領域」という用語は、本明細書において、天然配列のFc領域およびバリアントのFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義して使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は、多様であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基またはPro230位から、そのカルボキシル末端までの一片として定義される。本開示の抗体において使用するのに好適な天然配列のFc領域には、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が含まれる。単一のアミノ酸置換(Kabatの番号付けによるS228P、IgG4Proと表記される)が、組換えIgG4抗体において観察される異種性をなくすために導入され得る。Angal, S.ら、(1993年)、Mol Immunol、30巻、105〜108頁を参照されたい。
「フコシル化されていない」または「フコース欠損」抗体は、Fc領域に結合した炭水化物構造が、低減したフコースを有するかまたはフコースが欠如している、Fc領域を含むグリコシル化抗体バリアントを指す。一部の実施形態では、低減しフコースを有するかまたはフコースが欠如している抗体は、改善されたADCC機能を有する。フコシル化されていない抗体またはフコース欠損抗体は、細胞株において産生される同じ抗体におけるフコースの量と比べて、低減したフコースを有する。一部の実施形態では、本明細書において企図されるフコシル化されていない抗体またはフコース欠損抗体の組成物は、組成物中の抗体のFc領域に結合したN結合型グリカンのうちの約50%未満がフコースを含む、組成物である。
「フコシル化」または「フコシル化された」という用語は、抗体のペプチド骨格に結合したオリゴ糖内におけるフコース残基の存在を指す。具体的には、フコシル化された抗体は、抗体のFc領域に結合したN結合型オリゴ糖の一方または両方において、もっとも内側のN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基、たとえば、ヒトIgG1 Fcドメインの297位のAsn(Fc領域残基のEU番号付け)に、α(1,6)結合型フコースを含む。Asn297は、免疫グロブリンにおけるわずかな配列変動性に起因して、297位からアミノ酸約3個分上流または下流に、すなわち、294位と300位との間に、位置する場合もある。
「フコシル化度」は、当該技術分野において公知の方法によって同定される、たとえば、マトリックス支援レーザー脱離−イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)によって評価される、N−グリコシダーゼFで処置した抗体組成物中の、すべてのオリゴ糖に対するフコシル化されたオリゴ糖の割合である。「完全フコシル化抗体」の組成物においては、本質的にすべてのオリゴ糖が、フコース残基を含む、すなわち、フコシル化されている。一部の実施形態では、完全フコシル化抗体の組成物は、少なくとも約90%のフコシル化度を有する。したがって、そのような組成物中の個々の抗体は、典型的に、Fc領域における2つのN結合型オリゴ糖のそれぞれに、フコース残基を含む。逆に、「完全非フコシル化」抗体の組成物においては、オリゴ糖は本質的にすべてがフコシル化されておらず、そのような組成物中の個々の抗体は、Fc領域における2つのN結合型オリゴ糖のいずれにも、フコース残基を含まない。一部の実施形態では、完全非フコシル化抗体の組成物は、約10%未満のフコシル化度を有する。「部分フコシル化抗体」の組成物においては、オリゴ糖の一部のみが、フコースを含む。そのような組成物中の個々の抗体は、Fc領域におけるN結合型オリゴ糖のいずれにもフコース残基を含まなくてもよく、それらの一方もしくは両方に含んでもよいが、ただし、この組成物が、本質的にすべての個々の抗体がFc領域におけるN結合型オリゴ糖にフコース残基が欠如しているものから構成されるのでも、本質的にすべての個々の抗体がFc領域におけるN結合型オリゴ糖の両方にフコース残基を含むものから構成されるのでもないことを条件とする。一実施形態では、部分フコシル化抗体の組成物は、約10%〜約80%(たとえば、約50%〜約80%、約60%〜約80%、または約70%〜約80%)のフコシル化度を有する。
「結合親和性」とは、本明細書において使用されるとき、ある分子(たとえば、抗体)の単一の結合部位と、その結合パートナー(たとえば、抗原)との間の非共有結合的相互作用の強度を指す。一部の実施形態では、Siglec−8(これは、本明細書に記載されるSiglec−8−Fc融合タンパク質など、二量体であってもよい)に対する抗体の結合親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書において記載されるものを含め、当該技術分野において公知の一般的な方法によって測定することができる。
「結合アビディティー」とは、本明細書において使用されるとき、ある分子(たとえば、抗体)の複数の結合部位と、その結合パートナー(たとえば、抗原)との結合の強度を指す。
本明細書における抗体をコードする「単離された」核酸分子は、同定され、それが産生された環境において通常関連性のある少なくとも1つの混入核酸分子から分離された、核酸分子である。一部の実施形態では、単離された核酸は、産生環境と関連するすべての成分と関係がない。本明細書におけるポリペプチドおよび抗体をコードする単離された核酸分子は、それが天然に見出される形態または環境ではない形態をしている。したがって、単離された核酸分子は、細胞において天然に存在している本明細書におけるポリペプチドおよび抗体をコードする核酸とは区別される。
「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効となるのを許容するような形態にあり、製剤が投与されるであろう個体にとって、許容できないほどに毒性である追加の成分を含まない、調製物である。そのような製剤は、無菌である。
「担体」には、本明細書において使用されるとき、用いられる投薬量および濃度において、それに曝露される細胞または哺乳動物にとって非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤が含まれる。生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液であることが多い。生理学的に許容される担体の例としては、バッファ、たとえば、ホスフェート、シトレート、および他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、たとえば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、たとえば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、たとえば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリシン;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;キレート剤、たとえば、EDTA;糖アルコール、たとえば、マンニトールもしくはソルビトール;塩形成対イオン、たとえば、ナトリウム;ならびに/または非イオン性表面活性物質、たとえば、TWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)が挙げられる。
本明細書において使用されるとき、「処置」または「処置すること」という用語は、臨床病理の過程において、処置されている個体または細胞の天然の経過を変化させるように設計される臨床介入を指す。処置の望ましい作用としては、疾患進行速度の減少、疾患状態の緩和または軽減、ならびに寛解または予後の改善が挙げられる。個体は、たとえば、疾患(たとえば、アレルギー性眼疾患)と関連する1つまたは複数の症状が、軽減または排除された場合、「処置」が成功している。たとえば、個体は、処置が、疾患を患っているものの生活の質の向上、疾患を処置するために必要とされる他の医薬の用量の減少、疾患の再発頻度の低減、疾患の重症度の減少、疾患の発症もしくは進行の遅延、ならびに/または個体の生存の延長をもたらす場合、「処置」が成功している。
本明細書において使用されるとき、「と併せて」または「と組み合わせて」とは、1つの処置モダリティを、別の処置モダリティに加えて、投与することを指す。そのため、「と併せて」または「と組み合わせて」とは、1つの処置モダリティを、他の処置モダリティを個体に投与する前、最中、または後に投与することを指す。
本明細書において使用されるとき、「予防(prevention)」または「予防すること」という用語には、個体における疾患の発症または再発に関して、予防法(prophylaxis)を提供することが含まれる。個体は、疾患の素因を有するか、疾患に罹患しやすいか、または疾患を発症する危険性にある可能性があるが、まだ疾患であると診断されていない。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、疾患(たとえば、アレルギー性眼疾患)の発症を遅延させるために使用される。
本明細書において使用されるとき、疾患(たとえば、アレルギー性眼疾患)を発症する「危険性にある」個体は、検出可能な疾患または疾患の症状を有する場合も有さない場合もあり、本明細書に記載される処置方法の前に検出可能な疾患または疾患の症状を示している場合も示していない場合もある。「危険性にある」とは、個体が、1つまたは複数の危険因子を有することを指し、この危険因子は、当該技術分野において公知のように、疾患(たとえば、アレルギー性眼疾患)の発症と相関性がある測定可能なパラメーターである。これらの危険因子のうちの1つまたは複数を有する個体は、これらの危険因子のうちの1つまたは複数を有さない個体よりも、疾患を発症する確率が高い。
「有効量」とは、少なくとも、必要とされる投薬量および期間で、治療的結果または予防的結果(prophylactic result)を含め、所望されるかまたは示される作用を達成するのに有効な量を指す。有効量は、1回または複数回の投与で提供され得る。「治療有効量」は、少なくとも、特定の疾患の測定可能な改善を達成するのに必要な最小限の濃度である。本明細書における治療有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、および体重などの因子、ならびに抗体が個体において所望される応答を誘起する能力に応じて、変動し得る。治療有効量はまた、抗体の任意の毒性または有害な作用を、治療上有益な作用が上回るものであり得る。「予防有効量」は、必要とされる投薬量および期間で、所望される予防的結果を達成するのに有効な量を指す。予防的用量は、疾患の前または早期段階において個体に使用されるため、典型的には、予防有効量は、治療有効量よりも少なくてよいが、必ずしもそうでなくてもよい。
「慢性的な」投与とは、初期の治療的効果(活性)を長期間維持するための、急性モードとは対照的な持続的な医薬(複数可)の投与を指す。「間欠的な」投与とは、中断することなく連続的に行われるのではなく、周期的な性質である処置である。
「添付文書」という用語は、治療製品の商用パッケージに慣例的に含まれる指示を指して使用され、そのような治療製品の使用に関する適応症、使用法、投薬量、投与、組合せ療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む。
本明細書において使用されるとき、「個体」または「対象」は、哺乳動物である。処置の目的での「哺乳動物」には、ヒト、家庭動物および農場動物、ならびに動物園の動物、競技用の動物、もしくは愛玩用の動物、たとえば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどが含まれる。一部の実施形態では、個体または対象は、ヒトである。
II.方法
個体におけるアレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を処置および/または予防するための方法であって、個体に、有効量の、本明細書に記載されるヒトSiglec−8に結合する抗体(たとえば、抗Siglec−8抗体)または前記抗体を含む組成物を投与するステップを含む、方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗体は、抗体および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物中にある。一部の実施形態では、個体は、ヒトである。
A.アレルギー性眼疾患
本開示のある特定の態様は、アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を有する個体に関する。一部の実施形態では、個体は、アレルギー性結膜炎を有する。一部の実施形態では、個体は、アトピー性角結膜炎を有する。一部の実施形態では、個体は、春季カタルを有する。一部の実施形態では、個体は、巨大乳頭結膜炎を有する。
一部の実施形態では、個体は、アレルギー性結膜炎であると診断されている。一部の実施形態では、個体は、アレルギー性結膜炎を発症する危険性にある。アレルギー性結膜炎は、結膜におけるI型過敏性(すなわち、IgEに媒介される)アレルギー反応を特徴とする、いくつかのアレルギー性眼疾患を指す。季節性アレルギー性結膜炎、通年性アレルギー性結膜炎(たとえば、アトピー性結膜炎またはアトピー性角結膜炎)、ならびに春季カタルを含む、季節性および通年性の両方の形態が知られている。
一部の実施形態では、個体は、アトピー性角結膜炎もしくは春季カタルであると診断されているか、またはアトピー性角結膜炎もしくは春季カタルを発症する危険性にある。いずれの形態の角結膜炎も、そう痒、発赤、腫脹、および眼漏(discharge)を含む、眼表面のアレルギー性炎症を特徴とする。春季カタルを有する個体はまた、典型的に、上部眼瞼結膜に巨大乳頭が存在するが、一方で、巨大乳頭は、アトピー性角結膜炎においては存在する場合もしない場合もある(La Rosa, M.ら、(2013年)、Ital. J. Pediatr.、39巻:18頁)。春季カタルは、温かい気候においてだけみられるが、アトピー性角結膜炎は、季節性の変動がほとんどまたはまったくない状態で観察され得る。
一部の実施形態では、個体は、巨大乳頭結膜炎であると診断されているか、または巨大乳頭結膜炎を発症する危険性にある。巨大乳頭結膜炎は、乳頭肥厚(たとえば、上部眼瞼結膜の)を特徴とする。しばしば、刺激およびIgE産生は、コンタクトレンズの使用によって、たとえば、タンパク質の蓄積および/または機械的刺激により、生じる。
アレルギー性眼疾患の症状としては、限定されないが、結膜そう痒、結膜発赤、結膜腫脹、眼漏、潰瘍形成(たとえば、角膜潰瘍形成)、流涙、眼瞼肥厚、痂皮形成、瞼球癒着、眼周囲の湿疹、睫毛欠損、羞明、角膜炎、巨大乳頭、眼部疼痛、異物感、および白内障を挙げることができる。
本明細書において互換可能に使用される「参照」または「参照値」という用語は、アレルギー性眼疾患を有さない個体(またはそのような個体の群)における値または症状の測定値または特徴付けを指し得る。「参照値」は、絶対値、相対値、上限および/または下限を有する値、値の範囲、平均値(average value)、中央値、平均値(mean value)、またはベースライン値と比較した値であり得る。同様に、「ベースライン値」は、絶対値、相対値、上限および/または下限を有する値、値の範囲、平均値(average value)、中央値、平均値(mean value)、または参照値と比較した値であり得る。参照値は、1つの個体から、2つの異なる個体から、または個体の群(たとえば、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくはそれよりも多くの個体の群)から、得ることができる。一部の実施形態では、参照値は、当該技術分野における標準値またはベンチマーク値を指す。一部の実施形態では、参照値は、1つまたは複数の個体(たとえば、アレルギー性眼疾患を有さない)からde novoで計算された値を指す。
一部の実施形態では、個体から得られた結膜擦過標本は、好酸球を含む。好酸球の存在についての結膜擦過標本の検査を使用して、アレルギー性眼疾患を診断することができるが(たとえば、春季カタル、Bonini, S.ら、(2004年)、Eye、18巻:345〜351頁に記載されている)、しかしながら、好酸球の浸潤は、表面上の擦過では到達できないより深部の結膜組織に存在している可能性がある(Abelson, M.B.ら、(1983年)、Arch. Ophthalmol.、101巻:555〜556頁を参照されたい)。
一部の実施形態では、個体から得られた血清試料は、アレルギー性眼疾患を有さない個体と比較して、IgEの増加を有する。一部の実施形態では、個体から得られた涙液試料は、アレルギー性眼疾患を有さない個体と比較して、IgEの増加を有する。涙液試料におけるIgEレベルを測定するための技法は、当該技術分野において公知であり、たとえば、総涙液IgEのためのAllerwatch(登録商標)イムノクロマトグラフィー試験(Hitachi Chemical Co.)を参照されたい。血清試料におけるIgEレベルを測定するための技法もまた、当該技術分野において公知であり(たとえば、サンドイッチ放射免疫測定)、様々な年齢の患者から得られた血清試料における平均IgE濃度の正常範囲が、記載されている(Homburger HA: Allergic diseases. In Clinical Diagnosis and Management by Laboratory Methods.、第21版、New York、WB Saunders Company、2007年、961〜971頁を参照されたい)。
一部の実施形態では、アレルゲンを使用した、個体に投与される皮膚上または皮内アレルギー検査により、アレルギー応答が生じる。皮膚上(たとえば、皮膚プリック試験、スクラッチ試験、穿刺試験、またはパッチ試験)および皮内(たとえば、真皮内)でのアレルギー検査のための方法は、当該技術分野において公知である。典型的には、1つまたは複数のアレルゲンを、少量で、皮膚の小さな範囲に導入し(たとえば、皮膚上または皮内の経路、たとえば、針で刺すかまたは注射を通じて)、次いで、アレルギー応答(たとえば、発赤、腫脹、そう痒、膨疹形成など)について、医師がモニタリングする。一部の実施形態では、アレルギー応答は、IgEに媒介される反応の指標である。アレルギー性眼疾患については、皮膚上または皮内アレルギー検査は、チリダニ、ペットの鱗屑、および花粉を含むがこれらに限定されない、空気により伝搬されるアレルゲンに対する過敏性について、行われ得る。
B.処置に対する応答
一部の実施形態では、本明細書に記載される個体(たとえば、アレルギー性眼疾患を有する個体)に、有効量の、本明細書に記載されるヒトSiglec−8に結合する抗体(たとえば、抗Siglec−8抗体)を投与することにより、抗体の投与前のベースラインレベルと比較して、個体における1つまたは複数の(たとえば、1つもしくは複数、2つもしくはそれを上回る、3つもしくはそれを上回る、4つもしくはそれを上回るなどの)症状が、低減する。
本明細書において互換可能に使用される「ベースライン」または「ベースライン値」という用語は、療法(therapy)(たとえば、抗Siglec−8抗体)の投与の前または療法の投与の開始時における、症状の測定または特徴付けを指す。ベースライン値は、本明細書において企図されるアレルギー性眼疾患の症状の低減または改善を判定するために、参照値と比較することができる。参照値および/またはベースライン値は、1つの個体から、2つの異なる個体から、または個体の群(たとえば、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくはそれよりも多くの個体の群)から、得ることができる。
アレルギー性眼疾患を有する個体における処置に対する応答は、当該技術分野において公知の方法によって評価することができる。たとえば、アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を有する個体における処置に対する応答は、本明細書に記載されるその任意の症状の低減または改善であり得る。アレルギー性眼疾患の症状としては、結膜そう痒、結膜発赤、結膜腫脹、眼漏、潰瘍形成、流涙、眼瞼肥厚、痂皮形成、瞼球癒着、眼周囲の湿疹、睫毛欠損、羞明、角膜炎、巨大乳頭、および白内障を挙げることができるが、これらに限定されない。処置に対する応答は、個体におけるアレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)の完全寛解(CR)、部分寛解(PR)、または臨床改善(Cl)をもたらし得る。
アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、巨大乳頭結膜炎)の処置に対する応答を測定するための技法は、当該技術分野において公知である。たとえば、処置に対する応答を測定するための技法としては、限定することなく、1つまたは複数の臨床症状の減少(たとえば、上記に記載されている)、結膜擦過(たとえば、好酸球の検出のため)、ならびに血清および/または涙液試料におけるIgEの検査を挙げることができる。一部の実施形態では、アレルギー性結膜炎症状(ACS)アンケートを使用して、アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)と関連する症状を評価する。
C.投与
疾患の予防または処置について、活性薬剤の適切な投薬量は、上記に定義されるような処置しようとする疾患の種類、疾患の重症度および経過、薬剤が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、これまでの治療歴、個体の臨床病歴および薬剤に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存する。薬剤は、好適には、1回、または一連の処置にわたって、個体に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)の投与間の間隔は、約1ヶ月間であるか、またはそれよりも長い。一部の実施形態では、投与間の間隔は、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間であるか、またはそれよりも長い。本明細書において使用されるとき、投与間の間隔とは、抗体の1回の投与と、抗体の次回の投与との間の期間を指す。本明細書において使用されるとき、約1ヶ月間の間隔には、4週間が含まれる。したがって、一部の実施形態では、投与間の間隔は、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約16週間、約20週間、約24週間であるか、またはそれよりも長い。一部の実施形態では、処置には、抗体の複数回の投与が含まれ、ここで、投与間の間隔は、変動してもよい。たとえば、第1の投与と第2の投与との間の間隔は、約1ヶ月間であり、後続の投与間の間隔は、約3ヶ月間である。一部の実施形態では、第1の投与と第2の投与との間の間隔は、約1ヶ月間であり、第2の投与と第3の投与との間の間隔は、約2ヶ月間であり、後続の投与間の間隔は、約3ヶ月間である。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、固定用量(flat dose)で投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、1用量当たり約0.1mg〜約1800mgの投薬量で、個体に投与される。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、1用量当たり、およそで0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、および1800mgのうちのいずれかの投薬量で、個体に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、1用量当たり約150mg〜約450mgの投薬量で、個体に投与される。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、1用量当たり、およそで150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、および450mgのうちのいずれかの投薬量で、個体に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、1用量当たり約0.1mg/kg〜約20mg/kgの投薬量で、個体に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、1用量当たり約0.01mg/kg〜約10mg/kgの投薬量で、個体に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、約0.1mg/kg〜約10mg/kgまたは約1.0mg/kg〜約10mg/kgの投薬量で、個体に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、およそで0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kg、または10.0mg/kgのうちのいずれかの投薬量で、個体に投与される。上記に記載される投薬頻度のうちのいずれかを、使用することができる。上記に記載される任意の投薬頻度を、本明細書に記載される方法および組成物の使用において、使用することができる。本明細書に記載される抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)での処置の有効性は、1週間ごとから3ヶ月間ごとの範囲の間隔で、本明細書に記載される方法またはアッセイのうちのいずれかを使用して、評価することができる。一部の実施形態では、処置の有効性(たとえば、1つまたは複数の症状の低減または改善)は、ヒトSiglec−8に結合する抗体の投与の後、約1ヶ月間ごと、約2ヶ月間ごと、約3ヶ月間ごと、約4ヶ月間ごと、約5ヶ月間ごと、約6ヶ月間ごと、またはそれよりも長い期間ごとに、評価される。一部の実施形態では、処置の有効性(たとえば、1つまたは複数の症状の低減または改善)は、約1週間ごと、約2週間ごと、約3週間ごと、約4週間ごと、約5週間ごと、約6週間ごと、約7週間ごと、約8週間ごと、約9週間ごと、約10週間ごと、約11週間ごと、約12週間ごと、約16週間ごと、約20週間ごと、約24週間ごと、またはそれよりも長い期間ごとに、評価される。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、毎月、最大で3.0mg/kgの投薬量で、静脈内注入によって、個体に投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、毎月、最大で3.0mg/kgの投薬量で、皮下注射によって、個体に投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、4週間ごとに、最大3.0mg/kgの投薬量で、静脈内注入によって、個体に投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、4週間ごとに、最大で3.0mg/kgの投薬量で、皮下注射によって、個体に投与される。
本明細書に記載されるヒトSiglec−8に結合する抗体は、単独または他の薬剤と組み合わせてのいずれかで、本明細書に記載される方法において使用することができる。たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体は、アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を処置および/または予防するための1つまたは複数の(たとえば、1つもしくは複数、2つもしくはそれを上回る、3つもしくはそれを上回る、4つもしくはそれを上回るなどの)追加の治療剤と、共投与され得る。本明細書において企図される治療剤としては、コルチコステロイド(たとえば、ブデソニド、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、またはプレジゾン(predisone))、抗ヒスタミン剤(たとえば、レボカバスチン塩酸塩またはオロパタジン)、ケトチフェン、アゼラスチン、エピナスチン、ベポスタチン、シクロスポリン、および非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)が挙げられるが、これらに限定されない。
上記に示されるような組合せ療法には、組合せ投与(2つまたはそれを上回る治療剤が、同じかまたは別個の製剤に含まれる)および別個の投与が包含され、別個の投与の場合には、本開示の抗体の投与は、1つまたは複数の追加の治療剤の投与の前、それと同時、および/またはその後に、行い得る。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体の投与および1つまたは複数の追加の治療剤の投与は、互いに約1ヶ月以内、約2ヶ月以内、約3ヶ月以内、約4ヶ月以内、約5ヶ月以内、または約6ヶ月以内に行う。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体の投与および1つまたは複数の追加の治療剤の投与は、互いに約1週間以内、約2週間以内、または約3週間以内に行う。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体の投与および1つまたは複数の追加の治療剤の投与は、互いに約1日以内、約2日以内、約3日以内、約4日以内、約5日以内、または約6日以内に行う。
抗Siglec8抗体および/または1つもしくは複数の追加の治療剤は、当該技術分野において公知の任意の好適な投与経路によって投与することができ、これには、経口投与、舌下投与、頬側投与、局所投与(topical administration)、直腸投与、吸入によるもの、経皮投与、皮下注射、皮内注射、静脈内(IV)注射、動脈内注射、筋肉内注射、心臓内注射、骨内注射、腹腔内注射、経粘膜投与、膣投与、硝子体内投与、関節内投与、関節周囲投与、局所投与(local administration)、皮膚上投与、またはこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
D.抗体
本開示のある特定の態様は、ヒトSiglec−8に結合する単離された抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合するアゴニスト抗体)を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する:(1)ヒトSiglec−8に結合すること、(2)ヒトSiglec−8の細胞外ドメインに結合すること、(3)ヒトSiglec−8に、マウス抗体2E2および/もしくはマウス抗体2C4よりも高い親和性で結合すること、(4)ヒトSiglec−8に、マウス抗体2E2および/もしくはマウス抗体2C4よりも高いアビディティーで結合すること、(5)サーマルシフトアッセイにおいて、約70℃〜72℃もしくはそれよりも高いTmを有すること、(6)低減されたフコシル化度を有するか、もしくはフコシル化されていないこと、(7)好酸球上に発現するヒトSiglec−8に結合し、好酸球のアポトーシスを誘導すること、(8)マスト細胞上に発現するヒトSiglec−8に結合し、マスト細胞を枯渇させるかもしくはその数を低減させること、(9)マスト細胞上に発現するヒトSiglec−8に結合し、マスト細胞のFcεRI依存性活性(たとえば、ヒスタミンの放出、PGD2の放出、Ca2+フラックス、および/もしくはβ−ヘキソサミニダーゼの放出など)を阻害すること、(10)ADCC活性を向上させるように操作されていること、(11)マスト細胞上に発現するヒトSiglec−8に結合し、ADCC活性によってマスト細胞を殺滅すること(in vitroおよび/もしくはin vivoで)、(12)ヒトおよび非ヒト霊長類のSiglec−8に結合すること、(13)ヒトSiglec−8のドメイン1、ドメイン2、および/もしくはドメイン3に結合するか、またはヒトSiglec−8のドメイン1、ドメイン2、および/もしくはドメイン3を含むSiglec−8ポリペプチド(たとえば、本明細書に記載される融合タンパク質)に結合すること、ならびに(14)マウス抗体2E2または2C4のEC50よりも低いEC50で、活性化した好酸球を枯渇させること。米国特許第9,546,215号および/または国際公開第WO2015089117号に記載されている抗体のうちのいずれも、本明細書に提供される方法、組成物、およびキットにおいて使用を見出し得る。
一態様では、本開示は、ヒトSiglec−8に結合する抗体を提供する。一部の実施形態では、ヒトSiglec−8は、配列番号72のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトSiglec−8は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、マスト細胞上に発現するヒトSiglec−8に結合し、マスト細胞を枯渇させるか、またはその数を低減させる。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、マスト細胞上に発現するヒトSiglec−8に結合し、マスト細胞により媒介される活性を阻害する。
一態様では、本発明は、ヒトSiglec−8に結合する抗体を提供する。一部の実施形態では、ヒトSiglec−8は、配列番号72のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトSiglec−8は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン1内のエピトープに結合し、ここで、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン2内のエピトープに結合し、ここで、ドメイン2は、配列番号113のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン3内のエピトープに結合し、ここで、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8の細胞外ドメイン内の線形エピトープに結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8の細胞外ドメイン内の立体構造エピトープに結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、好酸球上に発現するヒトSiglec−8に結合し、好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、マスト細胞上に発現するヒトSiglec−8に結合し、マスト細胞を枯渇させる。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、マスト細胞上に発現するヒトSiglec−8に結合し、マスト細胞により媒介される活性を阻害する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、マスト細胞上に発現するヒトSiglec−8に結合し、ADCC活性によってマスト細胞を殺滅する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、マスト細胞を枯渇させ、マスト細胞の活性化を阻害する。一部の実施形態では、本明細書における抗体は、活性化した好酸球を枯渇させ、マスト細胞の活性化を阻害する。一部の実施形態では、本明細書における抗体(たとえば、フコシル化されていない抗Siglec−8抗体)は、血中好酸球を枯渇させ、マスト細胞の活性化を阻害する。
ヒトSiglec−8および非ヒト霊長類Siglec−8に結合する単離された抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。霊長類交差反応性を有する抗体の同定は、非ヒト霊長類における抗Siglec−8抗体の前臨床試験に有用であろう。一態様では、本発明は、非ヒト霊長類Siglec−8に結合する抗体を提供する。一態様では、本発明は、ヒトSiglec−8および非ヒト霊長類Siglec−8に結合する抗体を提供する。一部の実施形態では、非ヒト霊長類Siglec−8は、配列番号118のアミノ酸配列またはその一部分を含む。一部の実施形態では、非ヒト霊長類Siglec−8は、配列番号119のアミノ酸配列またはその一部分を含む。一部の実施形態では、非ヒト霊長類は、ヒヒ(たとえば、Papio Anubis)である。一部の実施形態では、ヒトSiglec−8および非ヒト霊長類Siglec−8に結合する抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン1内のエピトープに結合する。さらなる実施形態では、ヒトSiglec−8のドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトSiglec−8および非ヒト霊長類Siglec−8に結合する抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン3内のエピトープに結合する。さらなる実施形態では、ヒトSiglec−8のドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトSiglec−8および非ヒト霊長類Siglec−8に結合する抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト抗体である。一部の実施形態では、ヒトSiglec−8および非ヒト霊長類Siglec−8に結合する抗体は、マウス抗体である。一部の実施形態では、ヒトSiglec−8および非ヒト霊長類Siglec−8に結合する抗体は、ヒトIgG1抗体である。
一態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、モノクローナル抗体である。一態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、抗体断片(抗原結合性断片を含む)、たとえば、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、または(Fab’)2断片である。一態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、抗体断片(抗原結合性断片を含む)、たとえば、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、または(Fab’)2断片を含む。一態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。一態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体のいずれかは、精製されている。
一態様では、Siglec−8に結合するマウス2E2抗体およびマウス2C4抗体と競合する抗Siglec−8抗体が、提供される。マウス2E2抗体およびマウス2C4抗体と同じエピトープに結合する抗Siglec−8抗体もまた、提供される。Siglec−8に対するマウス抗体である2E2抗体および2C4抗体は、米国特許第8,207,305号、米国特許第8,197,811号、米国特許第7,871,612号、および米国特許第7,557,191号に記載されている。
一態様では、Siglec−8への結合について、本明細書に記載される任意の抗Siglec−8抗体(たとえば、HEKA、HEKF、1C3、1H10、4F11、2C4、2E2)と競合する抗Siglec−8抗体が、提供される。本明細書に記載される任意の抗Siglec−8抗体(たとえば、HEKA、HEKF、1C3、1H10、4F11、2C4、2E2)と同じエピトープに結合する抗Siglec−8抗体もまた、提供される。
本開示の一態様では、抗Siglec−8抗体をコードするポリヌクレオチドが、提供される。ある特定の実施形態では、抗Siglec−8抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが、提供される。ある特定の実施形態では、そのようなベクターを含む宿主細胞が、提供される。本開示の別の態様では、抗Siglec−8抗体または抗Siglec−8抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物が、提供される。ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)の処置のための医薬製剤である。ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)の予防のための医薬製剤である。
一態様では、マウス抗体2C4のHVR配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、マウス抗体2E2のHVR配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、HVRは、KabatのCDRまたはChothiaのCDRである。
一態様では、マウス抗体1C3のHVR配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、マウス抗体4F11のHVR配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、マウス抗体1H10のHVR配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、HVRは、KabatのCDRまたはChothiaのCDRである。
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン1内のエピトープに結合し、ここで、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン2内のエピトープに結合し、ここで、ドメイン2は、配列番号113のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン3内のエピトープに結合し、ここで、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗Siglec−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン2内のエピトープに結合し、ここで、ドメイン2は、配列番号113のアミノ酸配列を含む。
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗Siglec−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン3内のエピトープに結合し、ここで、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8および非ヒト霊長類Siglec−8に結合する。
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗Siglec−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8のドメイン1内のエピトープに結合し、ここで、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトSiglec−8および非ヒト霊長類Siglec−8に結合する。
一態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗Siglec−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。
一態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗Siglec−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。
一態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗Siglec−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗Siglec−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗Siglec−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗Siglec−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。
別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗Siglec−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。
本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、任意の好適なフレームワーク可変ドメイン配列を含み得るが、ただし、抗体が、ヒトSiglec−8に結合する能力を保持することを条件とする。本明細書において使用されるとき、重鎖フレームワーク領域は、「HC−FR1〜FR4」と表記され、軽鎖フレームワーク領域は、「LC−FR1〜FR4」と表記される。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、配列番号26、34、38、および45の重鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれ、HC−FR1、HC−FR2、HC−FR3、およびHC−FR4)を含む。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、配列番号48、51、55、および60の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれ、LC−FR1、LC−FR2、LC−FR3、およびLC−FR4)を含む。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、配列番号48、51、58、および60の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれ、LC−FR1、LC−FR2、LC−FR3、およびLC−FR4)を含む。
一実施形態では、抗Siglec−8抗体は、フレームワーク配列および超可変領域を含む重鎖可変ドメインを含み、ここで、フレームワーク配列は、それぞれ、配列番号26〜29(HC−FR1)、配列番号31〜36(HC−FR2)、配列番号38〜43(HC−FR3)、および配列番号45または46(HC−FR4)のHC−FR1〜HC−FR4配列を含み、HVR−H1は、配列番号61のアミノ酸配列を含み、HVR−H2は、配列番号62のアミノ酸配列を含み、HVR−H3は、配列番号63のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗Siglec−8抗体は、フレームワーク配列および超可変領域を含む重鎖可変ドメインを含み、ここで、フレームワーク配列は、それぞれ、配列番号26〜29(HC−FR1)、配列番号31〜36(HC−FR2)、配列番号38〜43(HC−FR3)、および配列番号45または46(HC−FR4)のHC−FR1〜HC−FR4配列を含み、HVR−H1は、配列番号61のアミノ酸配列を含み、HVR−H2は、配列番号62のアミノ酸配列を含み、HVR−H3は、配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗Siglec−8抗体は、フレームワーク配列および超可変領域を含む軽鎖可変ドメインを含み、ここで、フレームワーク配列は、それぞれ、配列番号48または49(LC−FR1)、配列番号51〜53(LC−FR2)、配列番号55〜58(LC−FR3)、および配列番号60(LC−FR4)のLC−FR1〜LC−FR4配列を含み、HVR−L1は、配列番号64のアミノ酸配列を含み、HVR−L2は、配列番号65のアミノ酸配列を含み、HVR−L3は、配列番号66のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗Siglec−8抗体は、フレームワーク配列および超可変領域を含む軽鎖可変ドメインを含み、ここで、フレームワーク配列は、それぞれ、配列番号48または49(LC−FR1)、配列番号51〜53(LC−FR2)、配列番号55〜58(LC−FR3)、および配列番号60(LC−FR4)のLC−FR1〜LC−FR4配列を含み、HVR−L1は、配列番号64のアミノ酸配列を含み、HVR−L2は、配列番号65のアミノ酸配列を含み、HVR−L3は、配列番号71のアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号23または24から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号23または24から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、重鎖HVR配列は、以下を含む。
a)HVR−H1(IYGAH(配列番号61));
b)HVR−H2(VIWAGGSTNYNSALMS(配列番号62));および
c)HVR−H3(DGSSPYYYSMEY(配列番号63);DGSSPYYYGMEY(配列番号67);DGSSPYYYSMDY(配列番号68);DGSSPYYYSMEV(配列番号69);またはDGSSPYYYGMDV(配列番号70))
一部の実施形態では、重鎖HVR配列は、以下を含む。
a)HVR−H1(SYAMS(配列番号88);DYYMY(配列番号89);またはSSWMN(配列番号90));
b)HVR−H2(IISSGGSYTYYSDSVKG(配列番号91);RIAPEDGDTEYAPKFQG(配列番号92);またはQIYPGDDYTNYNGKFKG(配列番号93));およびc)HVR−H3(HETAQAAWFAY(配列番号94);EGNYYGSSILDY(配列番号95);またはLGPYGPFAD(配列番号96))
一部の実施形態では、重鎖FR配列は、以下を含む。
a)HC−FR1(EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLT(配列番号26);EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFSLT(配列番号27);QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSIS(配列番号28);またはQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLT(配列番号29));
b)HC−FR2(WVRQAPGKGLEWVS(配列番号31);WVRQAPGKGLEWLG(配列番号32);WVRQAPGKGLEWLS(配列番号33);WVRQAPGKGLEWVG(配列番号34);WIRQPPGKGLEWIG(配列番号35);またはWVRQPPGKGLEWLG(配列番号36));
c)HC−FR3(RFTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号38);RLSISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号39);RLTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号40);RFSISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号41);RVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAR(配列番号42);またはRLSISKDNSKNQVSLKLSSVTAADTAVYYCAR(配列番号43));および
d)HC−FR4(WGQGTTVTVSS(配列番号45);またはWGQGTLVTVSS(配列番号46))
一部の実施形態では、軽鎖HVR配列は、以下を含む。
a)HVR−L1(SATSSVSYMH(配列番号64));
b)HVR−L2(STSNLAS(配列番号65));および
c)HVR−L3(QQRSSYPFT(配列番号66);またはQQRSSYPYT(配列番号71))
一部の実施形態では、軽鎖HVR配列は、以下を含む。
a)HVR−L1(SASSSVSYMH(配列番号97);RASQDITNYLN(配列番号98);またはSASSSVSYMY(配列番号99));
b)HVR−L2(DTSKLAY(配列番号100);FTSRLHS(配列番号101);またはDTSSLAS(配列番号102));および
c)HVR−L3(QQWSSNPPT(配列番号103);QQGNTLPWT(配列番号104);またはQQWNSDPYT(配列番号105))
一部の実施形態では、抗体は、
(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む、重鎖可変領域、ならびに/もしくは(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、軽鎖可変領域、
(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む、重鎖可変領域、ならびに/もしくは(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、軽鎖可変領域、または
(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2、および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む、重鎖可変領域、ならびに/もしくは(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2、および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、軽鎖可変領域
を含む。
一部の実施形態では、軽鎖FR配列は、以下を含む。
a)LC−FR1(EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号48);またはEIILTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号49));
b)LC−FR2(WFQQKPGQAPRLLIY(配列番号51);WFQQKPGQAPRLWIY(配列番号52);またはWYQQKPGQAPRLLIY(配列番号53));
c)LC−FR3(GIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号55);GVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号56);GVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号57);またはGIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号58));および
d)LC−FR4(FGPGTKLDIK(配列番号60))
一部の実施形態では、ヒトSiglec−8に結合する抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒト化抗Siglec−8抗体)が、本明細書において提供され、ここで、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、抗体は、
(a)重鎖可変ドメインであって、
(1)配列番号26〜29から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号31〜36から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38〜43から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3、および
(7)配列番号45〜46から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR4を含む、重鎖可変ドメイン、
ならびに/または
(b)軽鎖可変ドメインであって、
(1)配列番号48〜49から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51〜53から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号55〜58から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3、および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4を含む、軽鎖可変ドメイン
を含む。
一態様では、配列番号2〜10から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号16〜22から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、配列番号2〜14から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号16〜24から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、配列番号2〜10から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号23もしくは24から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、配列番号11〜14から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号16〜22から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、配列番号11〜14から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号23もしくは24から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、配列番号6の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号16もしくは21から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。
一態様では、配列番号106〜108から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号109〜111から選択される軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、配列番号106の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号109の軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、配列番号107の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号110の軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一態様では、配列番号108の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号111の軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。
一部の実施形態では、配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、配列番号106〜108から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比べて置換、挿入、または欠失を含むが、そのアミノ酸配列を含む抗体は、ヒトSiglec−8に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失(たとえば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸)は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、配列番号106〜108から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
一部の実施形態では、配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、配列番号109〜111から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比べて置換、挿入、または欠失を含むが、そのアミノ酸配列を含む抗体は、ヒトSiglec−8に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失(たとえば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸)は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、配列番号16または21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、配列番号109〜111から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
一態様では、本開示は、(a)表1に示されるものから選択される1つ、2つ、もしくは3つのVH HVR、および/または(b)表1に示されるものから選択される1つ、2つ、もしくは3つのVL HVRを含む、抗Siglec−8抗体を提供する。
一態様では、本開示は、(a)表2に示されるものから選択される1つ、2つ、もしくは3つのVH HVR、および/または(b)表2に示されるものから選択される1つ、2つ、もしくは3つのVL HVRを含む、抗Siglec−8抗体を提供する。
一態様では、本開示は、(a)表3に示されるものから選択される1つ、2つ、3つ、もしくは4つのVH FR、および/または(b)表3に示されるものから選択される1つ、2つ、3つ、もしくは4つのVL FRを含む、抗Siglec−8抗体を提供する。
一部の実施形態では、表4に示される抗体、たとえば、HAKA抗体、HAKB抗体、HAKC抗体などの重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインを含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。
免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという5つのクラスがあり、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと表記される重鎖を有する。γおよびαのクラスは、さらに、サブクラスに分けられ、たとえば、ヒトは、以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと称される複数の多型性バリアントで存在し得(JefferisおよびLefranc、2009年、mAbs、第1巻、4号、1〜7頁において概説されている)、それらのいずれも、本明細書における実施形態の一部における使用に好適である。ヒト集団における一般的なアロタイプバリアントは、a、f、n、zという文字、またはそれらの組合せで表記されるものである。本明細書における実施形態のいずれでも、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含み得る。さらなる実施形態では、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1またはIgG4を含む。一部の実施形態では、抗体は、IgG1抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgG4抗体である。一部の実施形態では、ヒトIgG4は、アミノ酸置換S228Pを含み、ここで、アミノ酸残基は、KabatにおけるようにEUインデックスに従って番号付けされている。一部の実施形態では、ヒトIgG1は、配列番号78のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG4は、配列番号79のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗Siglec−8抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗体は、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み得る。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、活性化した好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、休止中の好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、活性化した好酸球を枯渇させ、マスト細胞の活性化を阻害する。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、マスト細胞を枯渇させるかまたは低減させ、マスト細胞の活性化を阻害する。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、マスト細胞を枯渇させるかまたはその数を低減させる。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、ADCC活性によってマスト細胞を殺滅する。一部の実施形態では、抗体は、組織におけるSiglec−8を発現するマスト細胞を枯渇させるかまたは低減させる。一部の実施形態では、抗体は、生物学的流体におけるSiglec−8を発現するマスト細胞を枯渇させるかまたは低減させる。
1.抗体の親和性
一部の態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4と比較して、およそ同じかまたはより高い親和性および/またはより高いアビディティーで、ヒトSiglec−8に結合する。ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec−8抗体は、≦1μM、≦150nM、≦100nM、≦50nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(たとえば、10−8 Mもしくはそれを下回る、たとえば、10−8M〜10−13M、たとえば、10−9M〜10−13M)の解離定数(Kd)を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4よりも、約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、または約10倍高い親和性で、ヒトSiglec−8に結合する。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
一実施形態では、抗Siglec−8抗体の結合親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイによって、決定することができる。たとえば、KdまたはKd値は、固定した抗原CM5チップにより、約10の応答ユニット(RU)で25℃においてBIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用することによって、測定することができる。簡単に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore(登録商標)Inc.)を、供給業者の指示(instruction)に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。捕捉抗体(たとえば、抗ヒトFc)を、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で希釈した後、30μl/分の流速で注入し、さらに、抗Siglec−8抗体を固定する。動態測定のために、二量体Siglec−8の2倍連続希釈物を、25℃において、およそ25μl/分の流速で0.05% Tween 20を含むPBS(PBST)中に注入する。結合速度(kon)および解離速度(koff)を、単純な一対一のラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、結合および解離のセンサグラムを同時に当てはめることによって、計算する。平衡解離定数(Kd)は、koff/konの比として計算される。たとえば、Chen, Y.ら、(1999年)、J. Mol. Biol.、293巻:865〜881頁を参照されたい。
別の実施形態では、バイオレイヤー干渉法を使用して、Siglec−8に対する抗Siglec−8抗体の親和性を決定してもよい。例示的なアッセイにおいて、Siglec−8−Fcタグ化タンパク質を、抗ヒト捕捉センサーに固定し、漸増濃度のマウス、キメラ、またはヒト化抗Siglec−8 Fab断片とともにインキュベートして、たとえば、Octet Red 384 System(ForteBio)などの機器を使用して親和性測定値を得る。
抗Siglec−8抗体の結合親和性は、たとえば、関連技術分野において周知の標準的な技法を使用して、Munsonら、Anal. Biochem.、107巻:220頁(1980年)に記載されているスキャッチャード解析によっても決定することができる。Scatchard, G.、Ann. N.Y. Acad. Sci.、51巻:660頁(1947年)もまた、参照されたい。
2.抗体のアビディティー
一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体の結合アビディティーは、表面プラズモン共鳴アッセイによって、決定することができる。たとえば、KdまたはKd値は、BIAcore T100を使用することによって測定することができる。捕捉抗体(たとえば、ヤギ抗ヒトFcおよびヤギ抗マウスFc)を、CM5チップに固定する。フローセルには、抗ヒト抗体または抗マウス抗体を固定することができる。アッセイは、ある特定の温度および流速、たとえば、25℃において30μl/分の流速で、行われる。二量体Siglec−8を、様々な濃度、たとえば、15nM〜1.88pMの範囲の濃度で、アッセイ緩衝液中に希釈する。抗体が捕捉され、高性能注入を行った後、解離が行われる。フローセルは、緩衝液、たとえば、50mMグリシン、pH1.5により再生される。結果は、空の参照セルおよび複数回のアッセイ緩衝液注入でブランクとし、1:1のグローバルフィットパラメーターを用いて分析する。
3.競合アッセイ
競合アッセイを使用して、2つの抗体が、同一もしくは立体的にオーバーラップするエピトープを認識することによって同じエピトープに結合するか、または1つの抗体が、別の抗体の抗原への結合を競合的に阻害するかを決定することができる。これらのアッセイは、当該技術分野において公知である。典型的に、抗原または抗原を発現する細胞を、マルチウェルプレートに固定し、未標識抗体が、標識抗体の結合を遮断する能力を、測定する。そのような競合アッセイの一般的な標識は、放射性標識または酵素標識である。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、ある細胞(たとえば、マスト細胞)の細胞表面上に存在するエピトープへの結合について、本明細書に記載される2E2抗体と競合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、ある細胞(たとえば、マスト細胞)の細胞表面上に存在するエピトープへの結合について、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、ある細胞(たとえば、マスト細胞)の細胞表面上に存在するエピトープへの結合について、本明細書に記載される2C4抗体と競合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、ある細胞(たとえば、マスト細胞)の細胞表面上に存在するエピトープへの結合について、配列番号2(米国特許第8,207,305号に見出される)のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号4(米国特許第8,207,305号に見出される)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。
4.熱安定性
一部の態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8は、サーマルシフトアッセイにおいて、少なくとも約70℃、少なくとも約71℃、または少なくとも約72℃の融解温度(Tm)を有する。例示的なサーマルシフトアッセイにおいて、ヒト化抗Siglec−8抗体を含む試料は、Tmを決定するために、qPCRサーマルサイクラーにおいて、1サイクル当たり1℃の増加で71サイクルの間、蛍光色素(Sypro Orange)とともにインキュベートされる。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、マウス2E2抗体および/またはマウス2C4抗体と比較して、同様または高いTmを有する。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、キメラ2C4抗体と比較して、同じかまたは高いTmを有する。一部の実施形態では、抗Siglec−8抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体と比較して、同じかまたは高いTmを有する。
5.生物学的活性のアッセイ
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、マスト細胞を枯渇させる。細胞のアポトーシスを評価するためのアッセイ、たとえば、アネキシンVでの染色およびTUNNELアッセイは、当該技術分野において周知である。
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、ADCC活性を誘導する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、ADCC活性によって、Siglec−8を発現するマスト細胞を殺滅する。一部の実施形態では、組成物は、フコシル化されていない(すなわち、無フコシル化(afucosylated))抗Siglec−8抗体を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されるフコシル化されていない抗Siglec−8抗体を含む組成物は、部分的にフコシル化されている抗Siglec−8抗体を含む組成物と比較して、ADCC活性が強化される。ADCC活性を評価するためのアッセイは、当該技術分野において周知であり、本明細書に記載されている。例示的なアッセイでは、ADCC活性を測定するために、エフェクター細胞および標的細胞が使用される。エフェクター細胞の例としては、ナチュラルキラー(NK)細胞、大型顆粒リンパ球(LGL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、ならびにNKおよびLGLを含むPBMC、または細胞表面上にFc受容体を有する白血球、たとえば、好中球、好酸球、およびマクロファージが挙げられる。エフェクター細胞は、目的の疾患(たとえば、アレルギー性眼疾患)を有する個体を含め、任意の供給源から単離することができる。標的細胞は、評価しようとする抗体が認識することができる抗原を細胞表面上に発現する任意の細胞である。そのような標的細胞の例は、細胞表面上にSiglec−8を発現するマスト細胞である。そのような標的細胞の別の例は、細胞表面上にSiglec−8を発現する細胞株(たとえば、Ramos細胞株)である(たとえば、Ramos 2C10))。標的細胞は、細胞溶解の検出を可能にする試薬で標識することができる。標識するための試薬の例としては、放射活性物質、たとえば、クロム酸ナトリウム(Na2 51CrO4)が挙げられる。たとえば、Immunology、14巻、181頁(1968年);J. Immunol. Methods.、172巻、227頁(1994年);およびJ. Immunol. Methods.、184巻、29頁(1995年)を参照されたい。
マスト細胞に対する抗Siglec−8抗体のADCCおよびアポトーシス活性を評価するための別の例示的なアッセイにおいて、ヒトマスト細胞は、公開されているプロトコールに従ってヒト組織もしくは生物学的流体から単離されるか(Guhlら、Biosci. Biotechnol. Biochem.、2011年、75巻:382〜384頁;Kulkaら、Current Protocols in Immunology、2001年(John Wiley & Sons, Inc.))、またはたとえばYokoiら、J Allergy Clin Immunol.、2008年、121巻:499〜505頁によって記載されているように、ヒト造血幹細胞から分化される。精製されたマスト細胞を、滅菌の96ウェルU底プレートにおいて、完全RPMI培地中に再懸濁させ、抗Siglec−8抗体の存在下または非存在下において、30分間、0.0001ng/ml〜10μg/mlの範囲の濃度で、インキュベートする。試料を、ADCCを誘導するために、精製されたナチュラルキラー(NK)細胞または新鮮なPBLありおよびなしで、さらに4〜48時間インキュベートする。アポトーシスまたはADCCによる細胞の殺滅は、マスト細胞を検出するための蛍光コンジュゲート抗体(CD117およびFcεR1)、ならびに生存細胞および死細胞または死滅していく細胞を区別するためのアネキシン−Vおよび7AADを使用して、フローサイトメトリーによって分析する。アネキシン−Vおよび7AADでの染色は、製造業者の指示に従って行われる。
一部の態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体は、マスト細胞により媒介される活性を阻害する。マスト細胞トリプターゼは、マスト細胞の総数および活性化のバイオマーカーとして使用されている。たとえば、総トリプターゼおよび活性トリプターゼ、ならびにヒスタミン、N−メチルヒスタミン、および11−ベータ−プロスタグランジンF2を、血液または尿において測定して、マスト細胞の低減を評価することができる。例示的なマスト細胞活性アッセイについては、たとえば、米国特許出願公開第20110293631号を参照されたい。
E.抗体の調製
本明細書に記載される抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)は、抗体を生成するための当該技術分野において利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、以下の節においてより詳細に記載されている。
1.抗体断片
本開示は、抗体断片を包含する。抗体断片は、従来の手段、たとえば、酵素消化によって、または組換え技法によって、生成することができる。ある特定の状況では、抗体全体ではなく、抗体断片を使用することに利点がある。ある特定の抗体断片の概説については、Hudsonら、(2003年)、Nat. Med.、9巻:129〜134頁を参照されたい。
抗体断片の産生のために、様々な技法が開発されている。従来的には、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解による消化を介して得られていた(たとえば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods、24巻:107〜117頁(1992年)およびBrennanら、Science、229巻:81頁(1985年)を参照されたい)。しかしながら、これらの断片は、現在では、組換え宿主細胞によって、直接産生することができる。Fab、Fv、およびScFv抗体断片は、すべて、E.coliにおいて発現されE.coliから分泌され得るため、これらの断片を大量に容易に産生することが可能である。抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab’−SH断片は、E.coliから直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab’)2断片を形成することができる(Carterら、Bio/Technology、10巻:163〜167頁(1992年))。別のアプローチによると、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、増加したin vivo半減期を有するFabおよびF(ab’)2断片は、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の技法は、当業者には明らかである。ある特定の実施形態では、抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第WO93/16185号、米国特許第5,571,894号、および同第5,587,458号を参照されたい。FvおよびscFvは、定常領域がないインタクトな結合部位を有する唯一の種であり、したがって、これらは、in vivoでの使用中に、非特異的な結合を低減させるのに好適であり得る。scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかに、エフェクタータンパク質の融合をもたらすように、scFv融合タンパク質を構築することができる。Antibody Engineering、Borrebaeck編(上記)を参照されたい。抗体断片はまた、たとえば、例として、米国特許第5,641,870号に記載されている、「線形抗体」であってもよい。そのような線形抗体は、単一特異性であっても二重特異性であってもよい。
2.ヒト化抗体
本開示は、ヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が、当該技術分野において公知である。たとえば、ヒト化抗体は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、非ヒトである供給源から導入されていてもよい。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基と称されることが多く、これらは、典型的に、「インポート」可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的には、Winterの方法(Jonesら、(1986年)、Nature、321巻:522〜525頁;Riechmannら、(1988年)、Nature、332巻:323〜327頁;Verhoeyenら、(1988年)、Science、239巻:1534〜1536頁)に従って、超可変領域配列で、ヒト抗体の対応する配列を置換することによって、行われ得る。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、インタクトなヒト可変ドメインよりも実質的に少ないものが、非ヒト種に由来する対応する配列で置換されている。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、一部の超可変領域残基および可能性としては一部のFR残基が、げっ歯類抗体における類似の部位に由来する残基によって置換された、ヒト抗体である。
ヒト化抗体を作製するのに使用する、軽鎖および重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減するために重要であり得る。いわゆる「ベストフィット」方法によると、げっ歯類(たとえば、マウス)抗体の可変ドメインの配列が、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対して、スクリーニングされる。げっ歯類の配列にもっとも近いヒト配列が、次いで、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして許容される(Simsら、(1993年)、J. Immunol.、151巻:2296頁;Chothiaら、(1987年)、J. Mol. Biol.、196巻:901頁。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体に使用され得る(Carterら、(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:4285頁;Prestaら、(1993年)、J. Immunol.、151巻:2623頁。
さらに、一般には、抗体を、抗原に対する高い親和性の保持および他の望ましい生物学的特性を保持してヒト化することが望ましい。この目標を達成するために、1つの方法によると、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列および様々な概念上のヒト化産物の分析のプロセスによって、調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者には熟知されている。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される三次元立体構造を図示および表示する、コンピュータプログラムが、利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が、可能となる。このようにして、所望される抗体の特徴、たとえば、標的抗原(複数可)に対する親和性の増加が達成されるように、FR残基を、レシピエント配列およびインポート配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、超可変領域残基が、抗原結合への影響に、直接的かつもっとも実質的に、関与している。
3.ヒト抗体
本開示のヒト抗Siglec−8抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列(複数可)を、公知のヒト定常ドメイン配列(複数可)と組み合わせることによって、構築することができる。あるいは、本開示のヒトモノクローナル抗Siglec−8抗体は、ハイブリドーマ方法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株について、たとえば、Kozbor J. Immunol.、133巻:3001頁(1984年);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51〜63頁(Marcel Dekker, Inc.、New York、1987年);およびBoernerら、J. Immunol.、147巻:86頁(1991年)によって、記載されている。
免疫した場合に、内因性免疫グロブリン産生の非存在下においてヒト抗体の全レパートリーを産生することができる、トランスジェニック動物(たとえば、マウス)を産生することが、可能である。たとえば、キメラおよび生殖系変異体マウスにおける抗体の重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失が、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが、記載されている。そのような生殖系変異体マウスにおけるヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイの移入により、抗原負荷した場合に、ヒト抗体の産生が生じる。たとえば、Jakobovitsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:2551頁(1993年);Jakobovitsら、Nature、362巻:255頁(1993年);Bruggermannら、Year in Immunol.、7巻:33頁(1993年)を参照されたい。
また、遺伝子シャッフリングを使用して、非ヒト(たとえば、げっ歯類)抗体から、ヒト抗体を得ることができるが、ここで、このヒト抗体は、出発物である非ヒト抗体に類似する親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング(epitope imprinting)」とも称されるこの方法によると、本明細書に記載されるファージディスプレイ技法によって得られた非ヒト抗体断片の重鎖または軽鎖いずれかの可変領域が、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置き換えられ、非ヒト鎖/ヒト鎖のscFvまたはFabキメラの集団が作製される。抗原での選択により、非ヒト鎖/ヒト鎖のキメラscFvまたはFabの単離をもたらし、ここで、ヒト鎖は、初代ファージディスプレイクローンにおける対応する非ヒト鎖の除去の際に破壊された抗原結合部位を修復する、すなわち、エピトープが、ヒト鎖パートナーの選択を支配する。残りの非ヒト鎖を置き換えるためにこのプロセスを繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開されたPCT国際公開第WO93/06213号を参照されたい)。従来のCDRグラフトによる非ヒト抗体のヒト化とは異なり、この技法では、非ヒト起源のFR残基もCDR残基も有さない、完全ヒト抗体が得られる。
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。ある特定の実施形態では、結合特異性のうちの一方は、Siglec−8に対するものであり、他方は、任意の他の抗原に対するものである。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、Siglec−8の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体はまた、細胞傷害性剤を、Siglec−8を発現する細胞に局在化させるために使用することもできる。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(たとえば、F(ab’)2二重特異性抗体)として、調製することができる。
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野において公知である。MilsteinおよびCuello、Nature、305巻:537頁(1983年)、1993年5月13日に公開された国際公開第WO93/08829号、ならびにTrauneckerら、EMBO J.、10巻:3655頁(1991年)を参照されたい。二重特異性抗体を生成することに関するさらなる詳細については、たとえば、Sureshら、Methods in Enzymology、121巻:210頁(1986年)を参照されたい。二重特異性抗体には、架橋型抗体または「ヘテロコンジュゲート」抗体が含まれる。たとえば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体のうちの一方が、アビジンに結合され得、他方がビオチンに結合され得る。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の従来の架橋方法を使用して作製することができる。好適な架橋剤は当該技術分野で周知であり、多数の架橋技法とともに米国特許第4,676,980号に開示されている。
5.単一ドメイン抗体
一部の実施形態では、本開示の抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、単一のポリペプチド鎖である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.;たとえば、米国特許第6,248,516号B1を参照されたい)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてまたは一部分からなる。
6.抗体バリアント
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が、企図される。たとえば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、適切な変更を、抗体をコードするヌクレオチド配列に導入することによって、またはペプチド合成によって、調製することができる。そのような修飾としては、たとえば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換が挙げられる。最終的な構築物に到達するように、欠失、挿入、および置換の任意の組合せを行うことができるが、ただし、最終的な構築物が、所望される特徴を有することを条件とする。アミノ酸の改変は、配列が作製される時点で、対象抗体のアミノ酸配列に導入され得る。
変異誘発に好ましい位置である、抗体のある特定の残基または領域の同定に有用な方法は、CunninghamおよびWells、(1989年)、Science、244巻:1081〜1085頁によって記載されている「アラニンスキャニング変異誘発」と称される。本明細書では、残基または標的残基の群が同定され(たとえば、荷電残基、たとえば、arg、asp、his、lys、およびglu)、中性または負に荷電したアミノ酸(たとえば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、アミノ酸と抗原との相互作用に影響する。置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、次いで、置換の部位にまたはそれに代えて、さらなるバリアントまたは他のバリアントを導入することによって、洗練される。したがって、アミノ酸配列の変動を導入するための部位は事前に決定されるが、変異自体の性質は、事前に決定されるわけではない。たとえば、所与の部位における変異の性能を分析するために、アラニンスキャニングまたはランダム変異誘発が、標的コドンまたは領域において行われ、発現する免疫グロブリンが、所望される活性についてスクリーニングされる。
アミノ酸配列の挿入には、長さが1個の残基から、100個もしくはそれを上回る残基を含むポリペプチドまでの範囲に及ぶ、アミノ末端および/またはカルボキシ末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドに対して抗体のN末端またはC末端への融合体が挙げられる。
一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖に、C末端切断を有する。たとえば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のC末端において、切断されている。一部の実施形態では、C末端切断により、重鎖からC末端リシンが除去される。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖に、N末端切断を有する。たとえば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のN末端において、切断されている。一部の実施形態では、モノクローナル抗体のトランケート型形態は、組換え技法によって作製することができる。
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変される。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的に、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型は、炭水化物部分の、アスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニンは、炭水化物部分の、アスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列であり、ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である。したがって、これらのトリペプチド配列のうちのいずれかがポリペプチドに存在することにより、潜在的なグリコシル化部位が生じる。O結合型グリコシル化は、糖であるN−アセチルガラクトサミン(N-aceylgalactosamine)、ガラクトース、またはキシロースのうちの一つが、ヒドロキシアミノ酸に結合することを指し、ヒドロキシアミノ酸は、もっとも一般的にはセリンまたはスレオニンであるが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンも使用可能である。
抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、便宜上、(N結合型グリコシル化部位については)上述のトリペプチド配列のうちの1つまたは複数が、作製されるかまたは除去されるように、アミノ酸配列を改変させることによって、達成される。改変はまた、(O結合型グリコシル化部位については)1つまたは複数のセリンまたはスレオニン残基の、元の抗体の配列への付加、欠失、または置換によって、作製することもできる。
抗体がFc領域を含む場合は、そこに結合する炭水化物を、改変してもよい。たとえば、フコースが欠如している成熟炭水化物構造が抗体のFc領域に結合している抗体が、米国特許出願第2003/0157108号(Presta, L.)に記載されている。また、同第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)も参照されたい。抗体のFc領域に結合した炭水化物においてバイセクト型N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を有する抗体は、Jean−Mairetらの国際公開第WO2003/011878号およびUmanaらの米国特許第6,602,684号において言及されている。抗体のFc領域に結合したオリゴ糖において少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体は、Patelらの国際公開第WO1997/30087号において報告されている。改変された炭水化物が抗体のFc領域に結合している抗体については、国際公開第WO1998/58964号(Raju, S.)および同第WO1999/22764号(Raju, S.)も参照されたい。修飾されたグリコシル化を有する抗原結合性分子については、米国特許出願公開第2005/0123546号(Umanaら)もまた、参照されたい。
ある特定の実施形態では、グリコシル化バリアントは、Fc領域を含み、ここで、Fc領域に結合した炭水化物構造は、フコースが欠如している。そのようなバリアントは、改善されたADCC機能を有する。必要に応じて、Fc領域は、ADCCをさらに改善するその中の1つまたは複数のアミノ酸置換、たとえば、Fc領域の298位、333位、および/または334位における置換(残基のEu番号付け)をさらに含む。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体に関連する刊行物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号、国際公開第WO2000/61739号、同第WO2001/29246号、米国特許出願公開第2003/0115614号、同第2002/0164328号、同第2004/0093621号、同第2004/0132140号、同第2004/0110704号、同第2004/0110282号、同第2004/0109865号、国際公開第2003/085119号、同第WO2003/084570号、同第WO2005/035586号、同第WO2005/035778号、同第WO2005/053742号、Okazakiら、J. Mol. Biol.、336巻:1239〜1249頁(2004年);Yamane-Ohnukiら、Biotech. Bioeng.、87巻:614頁(2004年)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生する細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripkaら、Arch. Biochem. Biophys.、249巻:533〜545頁(1986年)、Presta, Lの米国特許出願第2003/0157108号A1、およびAdamsらの国際公開第WO2004/056312号A1、特に実施例11)、ならびにノックアウト細胞株、たとえば、アルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(Yamane-Ohnukiら、Biotech. Bioeng.、87巻:614頁(2004年))、ならびにβ1,4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(acetylglycosminyltransferase)III(GnT−III)およびゴルジμ−マンノシダーゼII(ManII)を過剰発現する細胞が挙げられる。
野生型CHO細胞において産生される同じ抗体におけるフコースの量と比べて、低減したフコースを有する抗体が、本明細書において企図される。たとえば、抗体は、天然のCHO細胞(たとえば、天然のグリコシル化パターンをもたらすCHO細胞、たとえば、天然のFUT8遺伝子を含むCHO細胞)によって産生された場合に別段有するであろうものよりも低い量のフコースを有する。ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec−8抗体は、その抗体上のN結合型グリカンのうちの約50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満がフコースを含む、抗体である。ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗Siglec−8抗体は、その抗体上のN結合型グリカンのうちのいずれも、フコースを含まない抗体、すなわち、抗体は、完全にフコースがないか、またはフコースを有さないか、またはフコシル化されていないか、または無フコシル化である。フコースの量は、たとえば、国際公開第WO2008/077546号に記載されるように、MALDI−TOF質量分析法によって測定される、Asn297に結合しているすべての糖構造(たとえば、複合体構造、ハイブリッド構造、または高マンノース構造)の合計と比べて、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定することができる。Asn297は、Fc領域のおよそ297位に位置するアスパラギン残基を指すが(Fc領域残基のEu番号付け)、しかしながら、Asn297はまた、抗体におけるわずかな配列の変動に起因して、297位からアミノ酸±約3個分上流または下流、すなわち、294位から300位の間に、位置し得る。一部の実施形態では、抗体の重鎖のうちの少なくとも1つまたは2つは、フコシル化されていない。
一実施形態では、抗体は、その血清半減期を改善するように改変される。抗体の血清半減期を増加させるために、たとえば、米国特許第5,739,277号に記載されるように、サルベージ受容体結合エピトープを抗体(特に、抗体断片)に組み込むことができる。本明細書において使用されるとき、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のin vivo血清半減期を増加させることに関与する、IgG分子(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す(米国出願公開第2003/0190311号、米国特許第6,821,505号、米国特許第6,165,745号、米国特許第5,624,821号、米国特許第5,648,260号、米国特許第6,165,745号、米国特許第5,834,597号)。
別の種類のバリアントは、アミノ酸置換バリアントである。これらのバリアントは、抗体分子における少なくとも1つのアミノ酸残基が、異なる残基によって置き換えられている。置換変異誘発の目的の部位としては、超可変領域が挙げられるが、FRの改変もまた、企図される。保存的置換は、表5において、「好ましい置換」の題目で示されている。そのような置換が、生物学的活性の望ましい変化をもたらす場合、表5において「例示的な置換」と称されているか、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載されている、さらなる実質的な変化を導入し、その産物をスクリーニングしてもよい。
抗体の生物学的特性における実質的な修飾は、(a)置換の範囲における、たとえば、シートもしくはヘリックス構成としてのポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、またはc)側鎖のかさ高さを維持することに対する作用が有意に異なる置換を選択することによって達成される。アミノ酸は、側鎖の特性における類似性によって分類することができる(A. L. Lehninger、Biochemistry、第2版、73〜75頁、Worth Publishers、New York、(1975年))。
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
あるいは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの一つのメンバーを、別のクラスと交換することを必要とする。そのように置換された残基はまた、保存的置換部位、または残りの(保存されていない)部位に導入され得る。
1つの種類の置換バリアントは、親抗体(たとえば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる開発に選択される、結果として得られるバリアント(複数可)は、それらが生成された親抗体と比べて、修飾された(たとえば、改善された)生物学的特性を有する。そのような置換バリアントを生成するための便宜的な手段には、ファージディスプレイを使用した親和性成熟が含まれる。簡単に述べると、いくつかの超可変領域部位(たとえば、6〜7個の部位)を、それぞれの部位においてすべての可能性のあるアミノ酸置換を生成するように変異させる。そのようにして生成した抗体は、それぞれの粒子内にパッケージングされたファージコートタンパク質(たとえば、M13の遺伝子III産物)の少なくとも一部との融合体として、線維状ファージ粒子により提示される。ファージにより提示されたバリアントは、次いで、それらの生物学的活性(たとえば、結合親和性)について、スクリーニングされる。修飾の候補となる超可変領域部位を同定するために、スキャニング変異誘発(たとえば、アラニンスキャニング)を行って、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定することができる。代替として、または追加として、抗体と抗原との間の接触点を同定するために、抗原−抗体の複合体の結晶構造を分析することが、有益な場合がある。そのような接触残基および隣接する残基は、本明細書に詳述されているものを含め、当該技術分野において公知の技法による置換の候補である。そのようなバリアントが生成されると、バリアントのパネルを、本明細書に記載されるものを含め、当該技術分野において公知の技法を使用してスクリーニングに供し、1つまたは複数の関連するアッセイにおいて優れた特性を有する抗体を、さらなる開発に選択することができる。
抗体のアミノ酸配列バリアントをコードする核酸分子は、当該技術分野において公知の様々な方法によって調製される。これらの方法としては、天然の供給源(天然に存在するアミノ酸配列バリアントの場合)からの単離、またはオリゴヌクレオチドに媒介される(もしくは部位指向的)変異誘発、PCR変異誘発、および抗体の初期調製バリアントもしくは非バリアントバージョンのカセット変異誘発が挙げられるが、これらに限定されない。
本開示の抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入し、それによって、Fc領域バリアントを生成することが、望ましい場合がある。Fc領域バリアントは、ヒンジシステインのアミノ酸修飾(たとえば、置換)を含む、1つまたは複数のアミノ酸位置において、アミノ酸修飾(たとえば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(たとえば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。一部の実施形態では、Fc領域バリアントは、ヒトIgG4 Fc領域を含む。さらなる実施形態では、ヒトIgG4 Fc領域は、アミノ酸置換S228Pを含み、ここで、アミノ酸残基は、KabatにおけるようにEUインデックスに従って番号付けされている。
この説明および当該技術分野の教示によると、一部の実施形態では、本開示の抗体が、野生型対応物抗体と比較して、たとえば、Fc領域において、1つまたは複数の改変を含み得ることが、企図される。これらの抗体は、いずれにせよ、その野生型対応物と比較して、治療上の有用性に必要とされる同じ特徴を実質的に保持するであろう。たとえば、国際公開第WO99/51642号に記載されているように、改変された(すなわち、改善されたかまたは減少したかのいずれかの)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらすであろうある特定の改変が、Fc領域に行われ得ることが、考えられる。また、Fc領域バリアントの他の例に関しては、DuncanおよびWinter、Nature、322巻:738〜40頁(1988年)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、および国際公開第WO94/29351号も参照されたい。国際公開第WO00/42072号(Presta)および同第WO2004/056312号(Lowman)は、FcRへの結合が改善または減少した抗体バリアントについて記載している。これらの特許公開の内容は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。Shieldsら、J. Biol. Chem.、9巻(2号):6591〜6604頁(2001年)もまた、参照されたい。半減期が増加し、母体IgGの胎児への移行に関与する胎児性Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyerら、J. Immunol.、117巻:587頁(1976年)およびKimら、J. Immunol.、24巻:249頁(1994年))は、米国特許出願公開第2005/0014934号A1(Hintonら)に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する、その抗体中に1つまたは複数の置換を有するFc領域を含む。改変されたFc領域アミノ酸配列および増加もしくは減少したC1q結合能力を有するポリペプチドバリアントは、米国特許第6,194,551号B1、国際公開第WO99/51642号に記載されている。それらの特許公開の内容は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。Idusogieら、J. Immunol.、164巻:4178〜4184頁(2000年)もまた、参照されたい。
7.ベクター、宿主細胞、および組換え方法
本開示の抗体の組換え産生のために、それをコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために、複製ベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(たとえば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離し、配列決定される。多数のベクターが、利用可能である。ベクターの選択は、使用する宿主細胞に、部分的に依存する。一般に、宿主細胞は、原核生物または真核生物(一般に、哺乳動物)のいずれかを起源とする。IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE定常領域を含め、任意のアイソタイプの定常領域を、この目的で使用することができること、ならびにそのような定常領域が、任意のヒトまたは動物種から得ることができることが、理解される。
原核生物宿主細胞を使用した抗体の生成
a)ベクターの構築
本開示の抗体のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組換え技法を使用して、得ることができる。所望されるポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離し、配列決定することができる。あるいは、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成装置またはPCR技法を使用して、合成することができる。得られた後、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主において異種ポリヌクレオチドを複製し、発現することができる、組換えベクターに挿入される。当該技術分野において利用可能であり、公知である、多数のベクターを、本開示の目的で使用することができる。適切なベクターの選択は、主として、ベクターに挿入する核酸のサイズ、およびベクターで形質転換する具体的な宿主細胞に依存する。それぞれのベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、またはその両方)およびそれが存在する具体的な宿主細胞との適合性に応じて、様々な成分を含む。ベクターの成分としては、一般に、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸インサート、および転写終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
一般に、宿主細胞と適合性のある種に由来するレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。ベクターは、通常、複製部位、ならびに形質転換される細胞における表現型選択を提供することができるマーキング配列を有する。たとえば、E.coliは、典型的に、E.coli種に由来するプラスミドであるpBR322を使用して、形質転換される。pBR322は、遺伝子コーディングアンピシリン(Amp)およびテトラサイクリン(Tet)耐性を含み、したがって、形質転換された細胞を同定する容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドもしくはバクテリオファージはまた、微生物(microbial organism)が内因性タンパク質の発現のために使用することができるプロモーターを含み得るか、またはそれを含むように修飾され得る。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例は、Carterらの米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
加えて、宿主微生物と適合性のあるレプリコンおよび制御配列を含むファージベクターを、これらの宿主に関連して形質転換ベクターとして使用することができる。たとえば、λGEM.TM.−11などのバクテリオファージは、E.coli LE392などの感受性宿主細胞を形質転換するために使用することができる組換えベクターの作製に利用され得る。
本開示の発現ベクターは、ポリペプチド成分のそれぞれをコードする2つまたはそれを上回るプロモーター−シストロン対を含み得る。プロモーターは、シストロンに対して上流(5’)に位置し、その発現を調整する、非翻訳調節配列である。原核生物プロモーターは、典型的に、誘導性および構成性の2つのクラスに入る。誘導性プロモーターは、その制御下において、培養条件における変化、たとえば、栄養素の存在もしくは非存在または温度の変化に応答して、増加したレベルのシストロンの転写を開始させる、プロモーターである。
可能性のある様々な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが、周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素消化によって供給源のDNAからプロモーターを取り出し、単離したプロモーター配列を本開示のベクターに挿入することによって、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに、作動可能に連結することができる。天然のプロモーター配列および多数の異種プロモーターの両方を、標的遺伝子の増幅および/または発現を導くために使用することができる。一部の実施形態では、異種プロモーターは、一般に、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較して、標的遺伝子のより多くの転写およびそのより高収量の発現が可能であるため、異種プロモーターが利用される。
原核生物宿主で使用するのに好適なプロモーターとしては、PhoAプロモーター、β−ガラクタマーゼ、およびラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにハイブリッドプロモーター、たとえば、tacまたはtrcプロモーターが挙げられる。しかしながら、細菌において機能する他のプロモーター(たとえば、他の公知の細菌プロモーターまたはファージプロモーター)も、同様に好適である。それらのヌクレオチド配列は、公開されており、それによって、当業者は、任意の必要とされる制限部位を供給するリンカーまたはアダプターを使用して、それらを、標的軽鎖および重鎖をコードするシストロンに作動可能にライゲーションすることができる(Siebenlistら、(1980年)、Cell、20巻:269頁)。
本開示の一態様では、組換えベクター内のそれぞれのシストロンは、膜を越えて発現するポリペプチドの転移を導く、分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの成分であり得るか、またはシグナル配列は、ベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本開示の目的で選択されるシグナル配列は、宿主細胞によって認識され、プロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドにとって固有のシグナル配列を認識およびプロセシングしない原核生物宿主細胞については、シグナル配列は、たとえば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、およびMBPからなる群から選択される、原核生物シグナル配列によって置換される。本開示の一実施形態では、発現系の両方のシストロンにおいて使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはそのバリアントである。
別の態様では、本開示による免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質において生じ得、したがって、それぞれのシストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。これに関して、免疫グロブリン軽鎖および重鎖は、細胞質内で、発現され、フォールディングされ、アセンブルされて、機能性免疫グロブリンが形成される。ある特定の宿主株(たとえば、E.coli trxB株)は、ジスルフィド結合の形成に好ましい細胞質条件を提供し、それによって、発現するタンパク質サブユニットの適切なフォールディングおよびアセンブリを可能にする。ProbaおよびPluckthun、Gene、159巻:203頁(1995年)。
本開示の抗体はまた、分泌され、適切にアセンブルされる本開示の抗体の収量を最大にするために、発現するポリペプチド成分の定量的な比を調整することができる発現系を使用することによって、産生することができる。そのような調整は、少なくとも部分的に、ポリペプチド成分の翻訳強度を同時に調整することによって、達成される。
翻訳強度を調整する(modulating)ための1つの技法は、Simmonsらの米国特許第5,840,523号に開示されている。その技法は、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)のバリアントを利用する。所与のTIRについて、一連のアミノ酸または核酸配列バリアントを、ある範囲の翻訳強度で作製し、それによって、特定の鎖の所望される発現レベルにこの因子を調整する(adjust)ための便宜的な手段を提供することができる。TIRバリアントは、アミノ酸配列を改変させ得るコドンの変化をもたらす従来の変異誘発技法によって、生成することができる。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列における変化は、サイレントである。TIRにおける改変としては、たとえば、シグナル配列における改変とともに、シャインダルガーノ配列の数または間隔における改変を挙げることができる。変異体シグナル配列を生成するための1つの方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)、コーディング配列の開始のときにおける「コドンバンク」の生成である。これは、それぞれのコドンの第3のヌクレオチド位置を変化させることによって達成することができ、追加として、一部のアミノ酸、たとえば、ロイシン、セリン、およびアルギニンは、バンク作製の際に複雑性を追加し得る複数の第1および第2の位置を有する。この変異誘発の方法は、Yansuraら、(1992年)、METHODS: A Companion to Methods in Enzymol.、4巻:151〜158頁に詳細に記載されている。
一実施形態では、ベクターのセットは、その中に含まれるそれぞれのシストロンに対してある範囲のTIR強度で生成される。この限定されたセットは、それぞれの鎖の発現レベルの比較、ならびに様々なTIR強度の組合せにおける所望される抗体産物の生成をもたらす。TIR強度は、Simmonsらの米国特許第5,840,523号に詳細に記載されている、レポーター遺伝子の発現レベルを定量することによって、決定することができる。翻訳強度の比較に基づいて、所望される個々のTIRを選択して、それらを本開示の発現ベクター構築物において組み合わせる。
本開示の抗体の発現に好適な原核生物宿主細胞としては、古細菌および真正細菌、たとえば、グラム陰性またはグラム陽性生物が挙げられる。有用な細菌の例としては、Escherichia(たとえば、E.coli)、Bacilli(たとえば、B.subtilis)、Enterobacteria、Pseudomonas種(たとえば、P.aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusが挙げられる。一実施形態では、グラム陰性細胞が使用される。一実施形態では、E.coli細胞が、本開示の宿主として使用される。E.coli株の例としては、W3110株(Bachmann、Cellular and Molecular Biology、第2巻(Washington, D.C.: American Society for Microbiology、1987年)、1190〜1219頁、ATCC受託番号27,325)およびその誘導体が挙げられ、遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc−fepE)degP41 kanRを有する33D3株を含む(米国特許第5,639,635号)。他の株およびその誘導体、たとえば、E.coli 294(ATCC 31,446)、E.coli B、E.coli λ 1776(ATCC 31,537)、およびE.coli RV308(ATCC 31,608)もまた、好適である。これらの例は、制限するものではなく例示である。定義された遺伝子型を有する上述の細菌のうちのいずれかの誘導体を構築するための方法は、当該技術分野において公知であり、たとえば、Bassら、Proteins、8巻:309〜314頁(1990年)に記載されている。一般に、細菌の細胞におけるレプリコンの複製能を考慮して、適切な細菌を選択することが必要である。たとえば、周知のプラスミド、たとえば、pBR322、pBR325、pACYC177、またはpKN410を使用してレプリコンを供給する場合、E.coli、Serratia、またはSalmonella種を、宿主として好適に使用することができる。典型的に、宿主細胞は、分泌するタンパク質分解酵素の量は最小限であるべきであり、追加のプロテアーゼ阻害剤が、細胞培養に組み込まれ得ることが望ましい場合がある。
b)抗体の産生
宿主細胞を、上記の発現ベクターで形質転換し、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望される配列をコードする遺伝子を増幅するために適宜修飾した従来の栄養培地において培養する。
形質転換とは、DNAが複製可能となるように、染色体外エレメントとしてまたは染色体組込み体によって、DNAを、原核生物宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、そのような細胞に適した標準的な技法を使用して行われる。実質的な細胞壁障壁を含む細菌細胞については、一般に、塩化カルシウムを用いたカルシウム処置が使用される。形質転換のための別の方法では、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用されるさらに別の技法は、エレクトロポレーションである。
本開示のポリペプチドを産生するのに使用される原核生物細胞は、当該技術分野において公知でかつ選択された宿主細胞の培養に好適な培地で成長させる。好適な培地の例としては、ルリアブロス(LB)に必要な栄養補充物質を加えたものが挙げられる。一部の実施形態では、培地はまた、発現ベクターを含む原核生物細胞の成長を選択的に可能にするように、発現ベクターの構築に基づいて選択される、選択剤を含有する。たとえば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の成長のために、アンピシリンが、培地に添加される。
炭素、窒素、および無機リン酸源以外の任意の必要な補充物質もまた、単独で、または別の補充物質もしくは培地との混合物、たとえば、複合窒素源として導入されて、適切な濃度で含まれ得る。必要に応じて、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリスリトール、およびジチオスレイトールからなる群から選択される、1つまたは複数の還元剤を含有し得る。
原核生物宿主細胞は、好適な温度で培養される。ある特定の実施形態では、E.coliの成長について、成長温度は、約20℃〜約39℃、約25℃〜約37℃、または約30℃の範囲である。培地のpHは、主として宿主生物に応じて、約5〜約9の範囲の任意のpHであり得る。ある特定の実施形態では、E.coliについては、pHは、約6.8〜約7.4、または約7.0である。
誘導性プロモーターが、本開示の発現ベクターにおいて使用される場合、タンパク質の発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下において誘導される。本開示の一態様では、ポリペプチドの転写を制御するために、PhoAプロモーターが使用される。したがって、形質転換された宿主細胞は、誘導のために、リン酸塩制限培地において培養される。ある特定の実施形態では、リン酸塩制限培地は、C.R.A.P.培地である(たとえば、Simmonsら、J. Immunol. Methods、(2002年)、263巻:133〜147頁を参照されたい)。当該技術分野において公知のように、利用されるベクター構築物に応じて、様々な他の誘導物質を使用することができる。
一実施形態では、本開示の発現するポリペプチドは、宿主細胞の周縁質内に分泌され、そこから回収される。タンパク質回収は、典型的に、一般に、浸透圧ショック、超音波処理、または溶解などの手段によって、微生物を破壊することを伴う。細胞が破壊されると、細胞残屑または細胞全体を、遠心分離または濾過によって除去することができる。タンパク質は、たとえば、親和性樹脂クロマトグラフィーによってさらに精製することができる。あるいは、タンパク質を、培養培地へと移し、そこで単離することができる。細胞は、培養物から除去され得、培養上清は、産生されたタンパク質のさらなる精製のために、濾過および濃縮され得る。発現するポリペプチドは、さらに、一般に知られている方法、たとえば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウエスタンブロットアッセイを使用して、単離および同定することができる。
本開示の一態様では、抗体の産生は、発酵プロセスによって大量に行われる。様々な大規模な流加発酵手順が、組換えタンパク質の産生に利用可能である。大規模な発酵は、少なくとも1000リットルの容量を有し、ある特定の実施形態では、約1,000〜100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、酸素および栄養素、特に、グルコースを分配するために、撹拌インペラを使用する。小規模な発酵とは、一般に、容量がおよそ100リットル以下であり、約1リットル〜約100リットルの範囲であり得る発酵槽における発酵を指す。
発酵プロセスにおいて、タンパク質発現の誘導は、典型的に、細胞が、好適な条件下において、所望される密度まで、たとえば、OD550の約180〜220に、成長した後に開始され、この段階では、細胞は、静止期初期にある。当該技術分野において公知であり、上述されているように、利用されるベクター構築物に応じて、様々な誘導物質を使用することができる。細胞は、誘導前に、より短い期間成長させてもよい。細胞は、通常、約12〜50時間誘導されるが、より長いかまたは短い誘導時間を使用してもよい。
本開示のポリペプチドの産生収量および品質を改善するために、様々な発酵条件を、修正することができる。たとえば、分泌される抗体ポリペプチドの適正なアセンブリおよびフォールディングを改善するために、シャペロンタンパク質、たとえば、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、および/もしくはDsbG)、またはFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロリルシス、トランスイソメラーゼ)を過剰発現する追加のベクターを使用して、宿主原核生物細胞を共形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞において産生される異種タンパク質の適正なフォールディングおよび可溶性を促進することが実証されている。Chenら、(1999年)、J. Biol. Chem.、274巻:19601〜19605頁、Georgiouらの米国特許第6,083,715号、Georgiouらの米国特許第6,027,888号、BothmannおよびPluckthun、(2000年)、J. Biol. Chem.、275巻:17100〜17105頁;RammおよびPluckthun、(2000年)、J. Biol. Chem.、275巻:17106〜17113頁;Arieら、(2001年)、Mol. Microbiol.、39巻:199〜210頁。
発現する異種タンパク質(特に、タンパク質分解に感受性のもの)のタンパク質分解を最小限に抑えるために、タンパク質分解酵素が欠損しているある特定の宿主株を、本開示に使用することができる。たとえば、宿主細胞株を、公知の細菌性プロテアーゼ、たとえば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI、およびこれらの組合せをコードする遺伝子における遺伝子変異(複数可)を達成するように修飾することができる。一部のE.coliプロテアーゼ欠損株が、利用可能であり、たとえば、Jolyら、(1998年)、上記、Georgiouらの米国特許第5,264,365号、Georgiouらの米国特許第5,508,192号、Haraら、Microbial Drug Resistance、2巻:63〜72頁(1996年)に記載されている。
一実施形態では、タンパク質分解酵素が欠損しており、1つまたは複数のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドが形質転換されている、E.coli株が、本開示の発現系において宿主細胞として使用される。
c)抗体の精製
一実施形態では、本明細書において産生される抗体タンパク質は、さらなるアッセイおよび使用のために、実質的に均質である調製物が得られるように、さらに精製される。当該技術分野において公知の標準的なタンパク質精製方法を、利用することができる。以下の手順は、好適な精製手順の例である:免疫親和性もしくはイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカもしくはカチオン交換樹脂、たとえば、DEAEでのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、およびたとえば、Sephadex G−75を使用したゲル濾過。
一態様では、固相に固定したプロテインAが、本開示の抗体産物の免疫親和性精製に使用される。プロテインAは、抗体のFc領域に高い親和性で結合するStaphylococcus aureas由来の41kDの細胞壁タンパク質である。Lindmarkら、(1983年)、J. Immunol. Meth.、62巻:1〜13頁。プロテインAを固定する固相は、ガラスもしくはシリカ表面を含むカラムであり得るか、または制御された細孔ガラスカラムもしくはケイ酸カラムであり得る。一部の適用では、カラムは、できる限り混入物質の非特異的な粘着を防止するために、試薬、たとえば、グリセロールでコーティングされる。
精製の第1のステップとして、上述の細胞培養物に由来する調製物を、プロテインAを固定した固相に適用して、目的の抗体を、プロテインAに特異的に結合させる。固相を、次いで、洗浄して、固相に非特異的に結合した混入物質を除去する。最後に、目的の抗体を、溶出によって、固相から回収する。
真核生物宿主細胞を使用した抗体の生成
真核生物宿主細胞において使用するためのベクターは、一般に、以下の非限定的な成分のうちの1つまたは複数を含む:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。
a)シグナル配列成分
真核生物宿主細胞において使用するためのベクターはまた、成熟タンパク質または目的のポリペプチドのN末端に特定の切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドを含み得る。選択される異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識され、プロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであり得る。哺乳動物細胞における発現の場合、哺乳動物シグナル配列ならびにウイルス分泌リーダー、たとえば、単純ヘルペスgDシグナルが、利用可能である。そのような前駆体領域のDNAを、リーディングフレームにおいて、抗体をコードするDNAにライゲーションする。
b)複製起点
一般に、複製起点の成分は、哺乳動物発現ベクターには必要ない。たとえば、SV40起点は、典型的に、初期プロモーターを含むという理由でのみ使用され得る。
c)選択遺伝子成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択可能なマーカーとも称される、選択遺伝子を含み得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、たとえば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)関連する場合には、栄養要求性欠損を補うタンパク質、または(c)複合培地から利用可能ではない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択スキームの1つの例は、宿主細胞の成長を停止させる薬物を利用する。異種遺伝子の形質転換が成功した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、そのため、選択レジメンを生き残る。そのような優勢選択の例は、薬物であるネオマイシン、ミコフェノール酸、およびハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞の好適な選択可能なマーカーの別の例は、抗体核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能にするもの、たとえば、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−IおよびII、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどである。
たとえば、一部の実施形態では、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、まず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地において、すべての形質転換体を培養することによって、同定される。一部の実施形態では、野生型DHFRが利用される場合に適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である(たとえば、ATCC CRL−9096)。
あるいは、抗体、野生型DHFRタンパク質、および別の選択可能なマーカー、たとえば、アミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードするDNA配列で形質転換または共形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含む野生型宿主)は、選択可能なマーカーの選択剤、たとえば、アミノグリコシド抗生物質、たとえば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418を含有する培地における細胞成長によって、選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。宿主細胞としては、NS0、CHOK1、CHOK1SV、または誘導体を挙げることができ、グルタミンシンテターゼ(GS)が欠損した細胞株が含まれる。哺乳動物細胞の選択可能なマーカーとしてGSを使用するための方法は、米国特許第5,122,464号および米国特許第5,891,693号に記載されている。
d)プロモーター成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、目的のポリペプチド(たとえば、抗体)をコードする核酸に作動可能に連結される、プロモーターを含む。プロモーター配列は、真核生物については公知である。たとえば、事実上すべての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位からおよそ25〜30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始部から70〜80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域であり、ここで、Nは、任意のヌクレオチドであり得る。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端には、AATAAA配列があり、これは、コーディング配列の3’末端へのポリA尾部の付加のシグナルであり得る。ある特定の実施形態では、これらの配列のうちのいずれかまたはすべては、好適なことに、真核生物発現ベクターに挿入することができる。
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、たとえば、ウイルス、たとえば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(たとえば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40)のゲノムから、異種哺乳動物プロモーター、たとえば、アクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られたプロモーターによって、制御されるが、ただし、このようなプロモーターが、宿主細胞系と適合性があることを条件とする。
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、便宜的に、SV40ウイルス複製起点も含む、SV40制限断片として得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、便宜的に、HindIII E制限断片として得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用して、哺乳動物宿主においてDNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の修正形は、米国特許第4,601,978号に記載されている。Reyesら、Nature、297巻:598〜601頁(1982年)もまた参照されたく、これは、単純ヘルペスウイルスに由来するチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ−インターフェロンcDNAの発現について記載している。あるいは、ラウス肉腫ウイルスの長鎖末端反復配列を、プロモーターとして使用してもよい。
e)エンハンサーエレメント成分
より高次の真核生物による本開示の抗体をコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加することが多い。現在では、哺乳動物遺伝子に由来する多くのエンハンサー配列が、公知である(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、およびインスリン)。しかしながら、典型的には、真核生物細胞ウイルスに由来するエンハンサーを使用する。例としては、複製起点の後期側(塩基対100〜270)のSV40エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、マウスサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントについて記載しているYaniv、Nature、297巻:17〜18頁(1982年)もまた、参照されたい。エンハンサーは、スプライシングされて抗体ポリペプチドをコードする配列の5’または3’の位置でベクターに入り得るが、一般には、プロモーターの5’部位に位置する。
f)転写終結成分
真核生物宿主細胞において使用される発現ベクターは、mRNAの転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列も含み得る。そのような配列は、通常、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’、場合によって3’の非翻訳領域から得ることができる。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分に、ポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第WO94/11026号およびそこに開示されている発現ベクターを参照されたい。
g)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書におけるベクターにおいてDNAをクローニングまたは発現させるのに好適な宿主細胞としては、脊椎動物宿主細胞を含む、本明細書に記載される高次真核生物細胞が挙げられる。培養(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖は、日常的な手技となっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換したサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(293または懸濁培養における成長のためにサブクローニングした293細胞、Grahamら、J. Gen Virol.、36巻:59頁(1977年));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaubら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77巻:4216頁(1980年));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol. Reprod.、23巻:243〜251頁(1980年));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y. Acad. Sci.、383巻:44〜68頁(1982年));MRC 5細胞;FS4細胞;CHOK1細胞、CHOK1SV細胞、または誘導体、ならびにヒト肝臓癌株(Hep G2)である。
宿主細胞を、抗体産生のための上記の発現ベクターまたはクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望される配列をコードする遺伝子を増幅するために適宜修飾した従来の栄養培地において培養する。
h)宿主細胞の培養
本開示の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地において培養され得る。市販の培地、たとえば、Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)が、宿主細胞を培養するのに好適である。加えて、Hamら、Meth. Enz.、58巻:44頁(1979年)、Barnesら、Anal. Biochem.、102巻:255頁(1980年)、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、または同第5,122,469号、国際公開第WO90/03430号、同第WO87/00195号、または米国特許再発行出願第30,985号に記載されている培地のいずれかを、宿主細胞の培養培地として使用してもよい。これらの培地のいずれかには、必要な場合ホルモンおよび/または他の成長因子(たとえば、インスリン、トランスフェリン、または上皮成長因子)、塩(たとえば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝物質(たとえば、HEPES)、ヌクレオチド(たとえば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(たとえば、GENTAMYCIN(商標)薬)、微量元素(マイクロモル濃度範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、ならびにグルコースまたは同等のエネルギー源が、補充され得る。任意の他の補充物質もまた、当業者に公知であろう適切な濃度で含まれ得る。培養条件、たとえば、温度、pHなどは、発現に選択される宿主細胞でこれまでに使用されているものであり、当業者には明らかである。
i)抗体の精製
組換え技法を使用する場合、抗体は、細胞内で産生され得るか、または培地内に直接分泌され得る。抗体が、細胞内で産生される場合、第1のステップとして、宿主細胞または溶解した断片のいずれかである微粒子残屑が、たとえば、遠心分離または限外濾過によって、除去され得る。抗体が培地内に分泌される場合、そのような発現系からの上清を、まず、市販のタンパク質濃縮フィルター、たとえば、AmiconまたはMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを使用して、濃縮してもよい。タンパク質分解を阻害するために、プロテアーゼ阻害剤、たとえば、PMSFが、前述のステップのうちのいずれかに含まれてもよく、外来性の混入物質の成長を防止するために、抗生物質が含まれてもよい。
細胞から調製された抗体組成物は、たとえば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、および親和性クロマトグラフィーを使用して、精製され得るが、親和性クロマトグラフィーが、便宜的な技法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの好適性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用することができる(Lindmarkら、J. Immunol. Methods、62巻:1〜13頁(1983年))。すべてのマウスアイソタイプおよびヒトγ3については、プロテインGが推奨される(Gussら、EMBO J.、5巻:1567〜1575頁(1986年))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、アガロースであり得るが、他のマトリックスも利用可能である。機械的に安定なマトリックス、たとえば、制御された細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースで達成できるよりも高速の流速および短い処理時間を可能にする。抗体が、CH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が、精製に有用である。タンパク質精製のための他の技法、たとえば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン交換樹脂またはカチオン交換樹脂(たとえば、ポリアスパラギン酸カラム)でのSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿もまた、回収しようとする抗体に応じて利用可能である。
任意の予備的な精製ステップ(複数可)に続いて、目的の抗体および混入物質を含む混合物を、たとえば、約2.5〜4.5のpHで溶出緩衝液を使用して、低い塩濃度(たとえば、約0〜0.25Mの塩)で行われる低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、さらなる精製に供してもよい。
一般に、上述の方法と一致する、および/または当業者により目的とされる特定の抗体にとって適切であるとみなされる、研究、試験、および臨床使用に使用するための抗体を調製するための様々な方法は、当該技術分野において十分に確立されている。
フコシル化されていない抗体の産生
低減したフコシル化度を有する抗体を調製するための方法が、本明細書において提供される。たとえば、本明細書において企図される方法としては、タンパク質フコシル化が欠損している細胞株(たとえば、Lec13 CHO細胞、アルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子ノックアウトCHO細胞、β1,4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIを過剰発現し、さらにゴルジμ−マンノシダーゼIIを過剰発現する細胞など)の使用、ならびに抗体の産生に使用される細胞培養培地におけるフコース類似体(複数可)の添加が挙げられるが、これらに限定されない。Ripkaら、Arch. Biochem. Biophys.、249巻:533〜545頁(1986年);Presta, Lの米国特許出願第2003/0157108号A1;国際公開第WO2004/056312号A1;Yamane-Ohnukiら、Biotech. Bioeng.、87巻:614頁(2004年);および米国特許第8,574,907号を参照されたい。抗体のフコース含量を低減させるためのさらなる技法には、米国特許出願公開第2012/0214975号に記載されているGlymaxx技術が含まれる。抗体のフコース含量を低減させるためのさらなる技法にはまた、抗体の産生に使用される細胞培養培地における1つまたは複数のグリコシダーゼ阻害剤の添加も含まれる。グリコシダーゼ阻害剤としては、α−グルコシダーゼI、α−グルコシダーゼII、およびα−マンノシダーゼIが挙げられる。一部の実施形態では、グリコシダーゼ阻害剤は、α−マンノシダーゼIの阻害剤である(たとえば、キフネシン)。
本明細書において使用されるとき、「コアフコシル化」とは、N結合型グリカンの還元末端における、N−アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)へのフコースの付加(「フコシル化」)を指す。そのような方法によって産生される抗体およびその組成物もまた、提供される。
一部の実施形態では、Fc領域(またはドメイン)に結合した複合N−グリコシド結合型糖鎖のフコシル化が、低減する。本明細書において使用されるとき、「複合N−グリコシド結合型糖鎖」は、典型的に、アスパラギン297(Kabatの番号付けによる)に結合するが、複合N−グリコシド結合型糖鎖は、他のアスパラギン残基にも結合し得る。「複合N−グリコシド結合型糖鎖」は、マンノースのみがコア構造の非還元末端に組み込まれる高マンノース型の糖鎖は除外されるが、1)コア構造の非還元末端側が、ガラクトース−N−アセチルグルコサミン(「gal−GlcNAc」とも称される)の1つまたは複数の分枝を有し、Gal−GlcNAcの非還元末端側が、必要に応じて、シアル酸、バイセクト型N−アセチルグルコサミンなどを有する、複合型、または2)コア構造の非還元末端側が、高マンノースN−グリコシド結合型糖鎖および複合N−グリコシド結合型糖鎖の両方の分枝を有する、ハイブリッド型は含まれる。
一部の実施形態では、「複合N−グリコシド結合型糖鎖」は、コア構造の非還元末端側が、ガラクトース−N−アセチルグルコサミン(「gal−GlcNAc」とも称される)を有さないか、またはその1つもしく複数の分枝を有し、Gal−GlcNAcの非還元末端側が、必要に応じて、シアル酸、バイセクト型N−アセチルグルコサミンなどといった構造をさらに有する、複合型を含む。
本方法によると、典型的に、ごくわずかな量のフコースが、複合N−グリコシド結合型糖鎖に組み込まれる。たとえば、様々な実施形態では、組成物中、抗体のうちの約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満が、フコースによるコアフコシル化を有する。一部の実施形態では、組成物中、抗体の実質的にすべてが、フコースによるコアフコシル化を有さない(すなわち、約0.5%未満)。一部の実施形態では、組成物中、抗体のうちの約40%を上回る、約50%を上回る、約60%を上回る、約70%を上回る、約80%を上回る、約90%を上回る、約91%を上回る、約92%を上回る、約93%を上回る、約94%を上回る、約95%を上回る、約96%を上回る、約97%を上回る、約98%を上回る、また約99%を上回るものが、フコシル化されていない。
一部の実施形態では、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的にすべてが、フコース残基を含まない(すなわち、約0.5%未満)抗体が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗体の重鎖のうちの少なくとも1つまたは2つがフコシル化されていない抗体が、本明細書において提供される。
上述のように、様々な哺乳動物宿主発現ベクター系を、抗体を発現させるために使用することができる。一部の実施形態では、培養培地には、フコースが補充されていない。一部の実施形態では、有効量のフコース類似体が、培養培地に添加されている。この文脈において、「有効量」とは、抗体の複合N−グリコシド結合型糖鎖へのフコースの組込みを、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%減少させるのに十分な、類似体の量を指す。一部の実施形態では、本方法によって産生される抗体は、フコース類似体の非存在下において培養された宿主細胞から産生された抗体と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%の、コアフコシル化されていないタンパク質を含む(たとえば、コアフコシル化が欠如している)。
糖鎖の還元末端においてフコースがN−アセチルグルコサミンに結合していない糖鎖の、糖鎖の還元末端においてフコースがN−アセチルグルコサミンに結合している糖鎖に対する含量(content)(たとえば、比)は、たとえば、実施例に記載のように決定することができる。他の方法としては、ヒドラジン分解または酵素消化(たとえば、Biochemical Experimentation Methods 23巻:Method for Studying Glycoprotein Sugar Chain (Japan Scientific Societies Press)、Reiko Takahashi編、(1989年)を参照されたい)、放出された糖鎖を蛍光標識または放射性同位体標識した後に、クロマトグラフィーによって標識された糖鎖を分離することが挙げられる。また、放出された糖鎖の組成は、HPAEC−PAD方法により鎖を分析することによって、決定することができる(たとえば、J. Liq Chromatogr.、6巻:1557頁(1983年)を参照されたい)。(概して、米国特許出願公開第2004/0110282号を参照されたい)。
III.組成物
一部の態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、Siglec−8に結合する抗体)のうちのいずれかを含む、組成物(たとえば、医薬組成物)もまた、本明細書において提供される。一部の態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体を含む組成物であって、抗体が、Fc領域およびFc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖を含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖のうちの約50%未満が、フコース残基を含む、組成物が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗体は、Fc領域およびFc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖を含み、ここで、N−グリコシド結合型炭水化物鎖のうちの約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、または約15%未満が、フコース残基を含む。一部の態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体を含む組成物であって、抗体が、Fc領域およびFc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖を含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖のうちの実質的にすべてが、フコース残基を含まない、組成物が、本明細書において提供される。
治療用製剤は、所望される程度の純度を有する活性成分を、随意の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって、保管用に調製される(Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & Wiklins刊、Gennaro編、Philadelphia、Pa.、2000年)。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投薬量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、これらには、緩衝物質、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、メタ重亜硫酸ナトリウムを含む抗酸化剤;保存剤、等張剤、安定剤、金属複合体(たとえば、Zn−タンパク質複合体);キレート剤、たとえば、EDTA、ならびに/または非イオン性表面活性物質が含まれる。
緩衝物質は、特に、安定性がpH依存性である場合に、治療有効性を最適化する範囲にpHを制御するために使用することができる。緩衝物質は、約50mM〜約250mMの範囲の濃度で存在し得る。本開示での使用に好適な緩衝剤としては、有機および無機両方の酸、ならびにそれらの塩が挙げられる。たとえば、シトレート、ホスフェート、スクシネート、タータレート、フマレート、グルコネート、オキサレート、ラクテート、アセテート。加えて、緩衝物質は、ヒスチジンおよびトリメチルアミン塩、たとえば、Trisから構成されてもよい。
保存剤は、微生物の増殖を防止するために添加され得、典型的には、約0.2%〜1.0%(重量/体積)の範囲で存在する。本開示での使用に好適な保存剤としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;ベンザルコニウムハロゲン化物(たとえば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、たとえば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾールが挙げられる。
「安定剤」として知られていることも多い、等張剤は、組成物中の液体の等張性を調整または維持するために存在し得る。大型の荷電した生体分子、たとえば、タンパク質および抗体とともに使用される場合、それらは、荷電したアミノ酸側鎖群と相互作用し、それによって、分子間および分子内での相互作用の可能性を減少させることができるため、「安定剤」と称されることが多い。等張剤は、他の成分の相対的な量を考慮して、約0.1重量%〜約25重量%、または約1〜約5重量%の任意の量で存在し得る。一部の実施形態では、等張剤としては、多価糖アルコール、三価またはそれを上回る価数の糖アルコール、たとえば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールが挙げられる。
追加の賦形剤としては、以下のうちの1つまたは複数の機能を果たし得る剤が挙げられる:(1)増量剤、(2)可溶性増強剤、(3)安定剤、および(4)変性または容器の壁部への付着を防止する剤。そのような賦形剤としては、多価糖アルコール(上記に列挙されている);アミノ酸、たとえば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リシン、オルニチン、ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなど;有機糖または糖アルコール、たとえば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクシトール、グリセロール、シクリトール(たとえば、イノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、たとえば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、たとえば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、たとえば、ポリビニルピロリドン;単糖類(たとえば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖類(たとえば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖類、たとえば、ラフィノース;ならびに多糖類、たとえば、デキストリンまたはデキストランが挙げられる。
非イオン性表面活性物質または界面活性剤(「湿潤剤」としても知られている)は、治療剤を可溶化させるのを補助するため、ならびに治療用タンパク質を撹拌に誘導される凝集から保護するために、存在し得、これらは、活性な治療用タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく、製剤をせん断表面応力に曝露することを可能にする。非イオン性表面活性物質は、約0.05mg/ml〜約1.0mg/mlまたは約0.07mg/ml〜約0.2mg/mlの範囲で存在する。一部の実施形態では、非イオン性表面活性物質は、約0.001%〜約0.1%重量/体積または約0.01%〜約0.1%重量/体積または約0.01%〜約0.025%重量/体積の範囲で存在する。
好適な非イオン性表面活性物質としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)−20、TWEEN(登録商標)−80など)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油10、50、および60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用することができるアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
製剤を、in vivo投与に使用するためには、製剤は、滅菌でなければならない。製剤は、滅菌濾過膜を通じた濾過によって、滅菌にすることができる。本明細書における治療用組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、たとえば、皮下注射針による穿刺可能なストッパーを有する静注溶液バッグまたはバイアルに、入れられる。
投与の経路は、公知かつ許容されている方法に従い、たとえば、単回もしくは複数回のボーラス、または好適な様式での長期間にわたる注入、たとえば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内、もしくは関節内の経路による注射もしくは注入、局所投与、吸入、または持続放出もしくは徐放手段によるものがある。
本明細書における製剤はまた、処置されている特定の適応症に必要な場合、1つより多い活性化合物、好ましくは、互いに有害に作用しない相補的な活性を有するものを含有してもよい。そのような活性化合物は、意図される目的に有効な量で、組み合わせて存在することが好ましい。
IV.製品またはキット
別の態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)を含む製品またはキットが、提供される。製品またはキットは、本開示の方法における抗体の使用のための指示をさらに含んでもよい。したがって、ある特定の実施形態では、製品またはキットは、個体に有効量のヒトSiglec−8に結合する抗Siglec−8抗体を投与するステップを含む、個体におけるアレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を処置および/または予防するための方法において、ヒトSiglec−8に結合する抗Siglec−8抗体を使用するための指示を含む。ある特定の実施形態では、製品は、ヒトSiglec−8に結合する抗体を含む医薬と、アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を処置および/または予防するために前記医薬の投与を必要とする個体に前記医薬を投与するための指示を含む添付文書とを含む。一部の実施形態では、添付文書は、処置が、アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を有する個体における1つまたは複数の症状を、医薬の投与前のベースラインレベルと比較して、低減するのに有効であることをさらに示す。一部の実施形態では、個体は、抗体を含む医薬の投与の前に、アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を有すると診断されている。ある特定の実施形態では、個体は、ヒトである。
製品またはキットは、さらに、容器を含み得る。好適な容器としては、たとえば、ボトル、バイアル(たとえば、二腔バイアル)、シリンジ(たとえば、単腔または二腔シリンジ)、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど、様々な材料から形成することができる。容器により、製剤が保持される。
製品またはキットは、容器上または容器に付随し、製剤の再構成および/または使用に関する指示(direction)を示し得る、ラベルまたは添付文書をさらに含み得る。ラベルまたは添付文書は、さらに、製剤が、皮下、静脈内、または他の投与様式で、個体におけるアレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を処置および/または予防するのに有用であるか、またはそれに意図されることを示し得る。製剤を保持している容器は、単回使用のバイアルまたは複数回使用のバイアルであってもよく、後者は、再構成された製剤の反復投与を可能にする。製品またはキットは、さらに、好適な希釈剤を含む第2の容器を含み得る。製品またはキットは、他の緩衝物質、希釈剤、フィルター、ニードル、シリンジ、および使用の指示(instruction)を伴う添付文書を含め、商業上、治療上、およびユーザーの視点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
特定の実施形態では、本開示は、単回用量の投与単位のキットを提供する。そのようなキットは、単一または複数チャンバのプレフィルドシリンジの両方を含む、治療用抗体の水性製剤の容器を含む。例示的なプレフィルドシリンジは、Vetter GmbH、Ravensburg、Germanyから入手可能である。
別の実施形態では、オートインジェクターデバイスでの投与のための本明細書に記載される製剤を含む製品またはキットが、本明細書において提供される。オートインジェクターは、作動すると、患者または投与者による追加の必要な作業なしに、その内容物を送達する、注射デバイスとして説明することができる。これらは、送達の速度が一定でなければならず、送達の時間が、いくらか長い場合の、治療用製剤の自己投薬に好適である。
別の態様では、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)を含む製品またはキットが、提供される。製品またはキットは、本開示の方法における抗体の使用のための指示をさらに含んでもよい。したがって、ある特定の実施形態では、製品またはキットは、個体に有効量のヒトSiglec−8に結合する抗Siglec−8抗体を投与するステップを含む、個体におけるアレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を処置または予防するための方法において、ヒトSiglec−8に結合する抗Siglec−8抗体を使用するための指示を含む。ある特定の実施形態では、製品またはキットは、ヒトSiglec−8に結合する抗体を含む医薬と、アレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を処置および/または予防するために前記医薬の投与を必要とする個体に前記医薬を投与するための指示を含む添付文書とを含む。
本開示はまた、本明細書に記載される抗Siglec−8抗体(たとえば、ヒトSiglec−8に結合する抗体)を、個体におけるアレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を処置または予防するための1つまたは複数の追加の医薬(たとえば、第2の医薬)と組み合わせて含む、製品またはキットも提供する。製品またはキットは、本開示の方法において、抗体を、1つまたは複数の追加の医薬と組み合わせて使用するための指示をさらに含んでもよい。たとえば、本明細書における製品またはキットは、必要に応じて、第2の医薬を含む容器をさらに含み、その場合、抗Siglec−8抗体が、第1の医薬であり、その製品またはキットは、有効量の第2の医薬で個体を処置するためのラベルまたは添付文書での指示をさらに含む。したがって、ある特定の実施形態では、製品またはキットは、ヒトSiglec−8に結合する抗Siglec−8抗体を、個体におけるアレルギー性眼疾患(たとえば、アレルギー性結膜炎、角結膜炎、または巨大乳頭結膜炎)を処置または予防するための方法において、1つまたは複数の追加の医薬と組み合わせて使用するための指示を含む。ある特定の実施形態では、製品またはキットは、ヒトSiglec−8に結合する抗体を含む医薬(たとえば、第1の医薬)、1つまたは複数の追加の医薬、および第1の医薬を1つまたは複数の追加の医薬(たとえば、第2の医薬)と組み合わせて投与するための指示を含む添付文書を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤としては、コルチコステロイド(たとえば、ブデソニド、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、またはプレジゾン)、抗ヒスタミン剤(たとえば、レボカバスチン塩酸塩またはオロパタジン)、ケトチフェン、アゼラスチン、エピナスチン、ベポスタチン、シクロスポリン、および非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)を挙げることができるが、これらに限定されない。
本明細書に記載される態様および実施形態は、例示目的のものにすぎないこと、ならびにその様々な修正または変化が、当業者には示唆され、本出願および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれることが、理解される。
本開示は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解される。実施例は、しかしながら、本開示の範囲を限定するとみなされるものではない。本明細書に記載される実施例および実施形態は、例示目的のものにすぎないこと、ならびにその様々な修正または変化が、当業者には示唆され、本出願の趣旨および範囲内および添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが、理解される。
(実施例1)
アレルギー性結膜炎のin vivoマウスモデルにおける、抗Siglec−8抗体の評価
アレルギー性結膜炎のマウスモデル(Giavina-Bianchi, P.ら、(2008年)、Acta Ophthalmol.、86巻:670〜675頁)を含め、様々なアレルギー性眼疾患を研究するための動物モデルが、確立されている(たとえば、Groneberg, D.A.ら、(2003年)、Allergy、58巻:1101〜1113頁を参照されたい)。アレルギー性結膜炎のマウスモデルにおける抗Siglec−8抗体の効果の評価のために、Siglec−8トランスジェニックマウスを、アレルゲンの全身投与によって感作し、次いで、眼部アレルゲン負荷に供し、続いて、負荷後15分間〜24時間の時間間隔で、結膜炎の臨床評価を行って、初期および後期の炎症応答を観察する。
Giavina-Bianchi, P.ら、(2008年)、Acta Ophthalmol.、86巻:670〜675頁によって記載されているC57Bl/6マウスの「Der p」モデルを、以下のように実施する。0日目に、マウスに、D.pteronyssinus(「Der p」)抽出物から調製した溶液で、免疫する。10日後に、アレルギー性結膜炎を誘発するために、眼部負荷を行う。
臨床分析、および検査室分析のための材料の収集は、眼部負荷の20分後および最大24時間後に実施する。具体的には、マウスに、5〜500マイクログラムのアレルゲンを含有する免疫溶液を、両後肢の基底部および下腹部に皮下投与する。
用量の4分の1ずつを、それぞれの後肢に注射し、残っている半量を、腹部に注射する。感作の10日後に、マウスに、2滴のアレルゲン溶液(4〜5マイクログラム/マイクロリットル)で、両眼に負荷を行う。負荷後20分間から24時間の間隔で、マウスを、結膜浮腫、眼瞼浮腫、結膜充血、および涙液分泌について、試験する。組織および分泌物を、サイトカインについて、ならびにマスト細胞および好酸球を含む炎症細胞の存在について、分析する。抗Siglec−8抗体の活性の評価のために、該抗体またはアイソタイプ対照抗体を、0.1〜5.0mg/kgの用量レベルで腹腔内(ip)投与によって、眼部負荷の1日前もしくは3日前に、または感作の時点から週2回の投与を使用して、投与する。
卵白アルブミンに誘発される結膜炎については、Siglec−8トランスジェニックマウスを、Izushi, K.ら、(2002年)、Eur. J. Pharmacol.、440巻:79〜82頁によって記載されている方法に従って、0.1mgの卵白アルブミンを1mgの水酸化アルミニウムアジュバントおよび0.3mgの百日咳毒素とともに腹腔内投与することによって感作し、4日目に、50マイクログラムの卵白アルブミンを皮下(sc)投与することにより追加免疫し、17日目に、0.75mgの卵白アルブミンで眼部負荷によって負荷する。抗Siglec−8抗体での処置、臨床分析、および検査室分析を、上記に記載のように行う。
ブタクサに誘発される結膜炎については、Siglec−8トランスジェニックマウスを、Magone, M.T.ら、(1998年)、Clin. Immunol. Immunopathol.、87巻(1号):75〜84頁によって記載されているように、0日目に、50マイクログラムのブタクサ抽出物および5mgの水酸化アルミニウムの皮下投与によって感作し、9日目に、眼部負荷を、1.25mgのブタクサ抽出物を用いて行う。抗Siglec−8抗体での処置、臨床分析、および検査室分析を、上記に記載のように行う。
(実施例2)
アトピー性角結膜炎(AKC)、春季カタル(VKC)、および通年性アレルギー性結膜炎(PAC)を有する患者における、抗Siglec−8抗体での処置の有効性および安全性を評価するための非盲検パイロット研究の構造
アレルギー性眼疾患に罹患する人々の数は、ここ数十年間で上昇しており、現在では、人口の少なくとも15〜20%に影響しているとみられている(La Rosa, M.ら、(2013年)、Ital. J. Pediatr.、39巻:18頁)。アレルギー性眼疾患は、異なる作用機序を有するいくつかの特定の臨床的実体を包含する。本研究は、AKC、VKC、またはPACを有する患者における抗Siglec−8抗体での処置の安全性および有効性を試験するように設計される。
合計でおよそ30人の対象に、6回用量の抗Siglec−8抗体HEKA(フコシル化されていないIgG1)を、最大3mg/kgで、毎月の静脈内注入として与える。臨床検査室パラメーターおよび有害事象は、有害事象の共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)(CTCAE)バージョン4.03を使用して評価する。有害事象の収集は、初回の研究薬注入の時点で開始して、309日目(±7日間)または早期終了(ET)訪問にて終了する。絶対末梢血好酸球数および好塩基球数の測定は、−1日目の投薬前に開始して、309日目またはET訪問にて終了する。アレルギー性結膜炎症状(ACS)アンケートは、AKC、VKC、またはPACと関連する症状を評価するために使用し、それぞれの対象が、スクリーニングから309日目またはET訪問まで、研究中毎日記入する。
組入れ基準は、以下のものを含む:
(a)年齢(18歳以上かつ80歳以下)、
(b)AKC、VKC、またはPACの診断が確認されており、以下の症状のうちの少なくとも1つについて、スクリーニング期間に記入されたすべての毎日のACSアンケートから計算された平均の症状スコアが3以上であること(最低14日間の毎日のACSアンケートが記入されていなければならない)、
1.そう痒
2.羞明
3.眼部疼痛
4.異物感
5.眼漏
(c)アレルギー性結膜炎(AKC、VKC、またはPAC)の処置のための局所的コルチコステロイドおよび/または全身的コルチコステロイドの使用の履歴
(d)スクリーニング前の14日間およびスクリーニング期間中の許容されるAKC、VKC、またはPACの医薬(複数可)の用量(複数可)の安定、および研究参加の全期間中、同じ用量(複数可)のAKC、VKC、またはPAC医薬(複数可)を継続することへのコミットメント(用量の修正が、予測できなかった医療上の必要性に起因するものである場合は除く)、
(e)卵および寄生虫をスクリーニングする試験で陰性であること、ならびに
(f)妊娠検査が陰性であること(女性)。
除外基準は、以下のものを含む:
(a)子宮頸部におけるin situ癌、早期前立腺がん、または非黒色腫皮膚がんを除く、悪性腫瘍の病歴
(b)抗体の初回投薬前48時間以内のコンタクトレンズの使用
(c)研究薬の投与前30日以内(または生物製剤品については、90日もしくは5半減期(5 half-lives)のいずれか長い方)に最後の介入が行われる同時介入研究に参加していること、
(d)直前の6ヶ月間における化学療法または放射線療法での処置、
(e)スクリーニングの6ヶ月以内での臨床上有意な蠕虫寄生虫感染の処置、
(f)スクリーニング前の30日(もしくは5半減期のいずれか長い方)の間の、またはスクリーニング期間の間の、局所充血緩和剤、局所血管収縮剤、局所カルシニューリン阻害剤、局所的コルチコステロイド、オマリズマブ、デュピルマブ、全身免疫抑制薬、または10mgを上回る1日用量のプレドニゾンもしくは同等物による全身的コルチコステロイドの使用(アトピー性皮膚炎のための局所的コルチコステロイド、鼻炎のためのコルチコステロイド点鼻スプレー、およびアレルギー性喘息のための吸入コルチコステロイドは、許容される)、
(g)本研究における処置の開始前30日以内、処置期間の間の弱毒生ワクチンでのワクチン接種、または研究薬投与の5半減期(4ヶ月)以内にワクチン接種が予定されていること、
(h)スクリーニングの時点で、肝炎の血清学の結果が陽性であること、ただし、ワクチン接種済みの患者または過去に肝炎があったが解決している患者は除く、ならびに
(i)スクリーニングの時点で、HIV血清学の結果が陽性であること。
一次評価項目は、臨床検査室パラメーター、および有害事象の共通用語規準(CTCAE)、バージョン4.03を使用して評価した場合の有害事象の評価に基づく、抗体での処置の安全性および忍容性である。
二次評価項目には、次のものが含まれる。
(a)絶対末梢血好酸球数および好塩基球数におけるベースラインからの変化(−1日目の投薬前に開始して、309日目またはET訪問まで)、
(b)疾患特異的患者アンケート、アレルギー性結膜炎症状(ACS)アンケートによって毎日測定される、AKC、VKC、またはPACと関連するベースライン症状からの変化(スクリーニングから、309日目またはET訪問まで、研究の間中)。
必要に応じた二次評価項目には、次のものが含まれる。
(a)National Eye Institute Visual Functioning Questionnaire−25(NEI VFQ 25)によって測定される、生活の質のベースラインからの変化(−1日目の投薬前に開始して、309日目またはET訪問まで)、
(b)中央読影センター(centralized image reading center)によって評価した、細隙灯カラー写真における眼兆候のベースラインからの変化(点状角膜染色を含む)(−1日目の投薬前に開始して、309日目またはET訪問まで)、
(c)治験責任医師(Investigator)または副治験責任医師(Subinvestigator)によって評価される、眼科検査による眼症状スコアのベースラインからの変化(−1日目の投薬前に開始し、309日目またはET訪問まで)、
(d)必要に応じた涙液分泌流体(涙液)試料において測定される炎症媒介因子および抗Siglec−8抗体HEKA(フコシル化されていないIgG1)の濃度のベースラインからの変化(−1日目の投薬前に開始し、309日目またはET訪問まで)、
(e)必要に応じた結膜生検における好酸球およびマスト細胞の組織病理学的検査のベースラインからの変化(−1日目の投与前および169日目またはET訪問にて採取)、
(f)ACS疾患特異的アンケートによって測定される、5つの異なる症状についての毎日の症状スコアの兆候および症状のベースラインからの変化(スクリーニングから、309日目またはET訪問まで、研究の間中)、
(g)National Eye Institute Visual Functioning Questionnaire 25(NEI VFQ 25)の生活の質アンケートによって測定される、兆候および症状のベースラインからの変化、ならびに
(i)付随するアトピー性状態(アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎)の評価によって測定される、兆候および症状のベースラインからの変化。
配列
すべてのポリペプチド配列は、別途示されない限り、N末端からC末端の方向で提示する。
すべての核酸配列は、別途示されない限り、5’から3’の方向で提示する。