実施形態は、イソシアネートを調製するためのプロセス、およびイソシアネートを調製するためのプロセスを使用するためのシステムに関する。
イソシアネートは、不活性溶媒中でアミンをホスゲンと反応させることによって調製することができる。例えば、ホスゲンを溶媒中のアミンと直接接触させることによって、アミンをイソシアネートに変換することができる。連続操作中にそのようなイソシアネートを調製するとき、進行性のファウリングが発生し得ることが知られている。システムのファウリングは、生成速度および/または生成物品質に悪影響を及ぼし得る。したがって、生成速度の大幅な低下、エネルギー消費の増加、および/または生成物品質の変化を強いられることなく、システムのファウリングを補償する方法が求められている。
実施形態は、イソシアネート生成物を調製するためのプロセスを提供することによって実現され得、このプロセスは、ホスゲン入口流、ならびに1種以上のアミンおよび1種以上の不活性溶媒を含む溶媒中のアミン入口流をホスゲン化ミキサーに提供することと、定常状態操作中に少なくとも第1の期間T1と第1の期間T1に続く第2の期間T2とに分割される期間にわたり、ホスゲン化ミキサー内の圧力降下を減少させることによって、ファウリング圧力降下の増加を補償することと、を含む。第2の期間T2中の溶媒中のアミン流内の1種以上のアミンのアミン濃度は、第1の期間T1中よりも高く、第2の期間T2中のホスゲン化ミキサー内のホスゲン対アミン比値は、第1の期間T1中よりも高い。
実施形態の特色は、添付の図面を参照しながら、その例示的な実施形態を詳細に説明することによって、当業者にはより明らかになるであろう。
イソシアネート生成のための例示的なシステムを示す。
イソシアネート生成のための例示的なシステムで使用可能な、例示的なホスゲン化ミキサーを示す。
変動するPMDA濃度およびPAR値に対する品質値を示す実施例のグラフ表示を示し、水平二重線は、比較的一定の品質値を維持するための操作条件の望ましい変化を表す。
比較的一定の品質値を維持するようにシステム操作中のホスゲン化ミキサーの圧力降下(アミン側)およびPAR値の変動を示す実施例のグラフ表示を示す。
実施形態は、イソシアネートを調製するためのプロセスで使用可能なホスゲン化プロセス(液相プロセスおよび/または気相プロセスなど)、およびホスゲン化プロセスを利用するシステムに関する。プロセスおよびシステムは、得られるイソシアネート生成物の指定の生成物品質値(例えば、所定の不純物レベル範囲)を有することを可能にし、イソシアネート生成物の生成速度の大幅な低下を強いられることを回避する。溶媒中のアミン入口流の組成、溶媒中のアミン入口流の流量、および/またはホスゲン入口流の流量は、イソシアネート生成のためのプロセスおよびシステム操作で調整可能である。
そのようなイソシアネートを調製するための連続プロセスの定常状態操作中、溶媒中のアミン流とホスゲン流とを混合するために利用可能なエネルギーは、溶媒中のアミン流の上流制御弁の圧力降下、およびホスゲン化ミキサー内の圧力降下の増加を最小限に抑えることによって最大化することができる。これにより、溶媒中のアミン流の体積流量の範囲の低下(例えば、ファウリング圧力降下の増加に基づく)が生じ得、これは、アミン濃度、およびホスゲン対アミンの比を、少なくとも第1の期間T1と、第1の期間T1に続く第2の期間T2とに分割される一定期間にわたり変動させることによって補償することができる。ホスゲン化ミキサー内の圧力降下を最大化すると、プロセスの全体的な性能の改善を可能にし得、品質の改善、または生成速度の増加、またはエネルギーコストの低下のいずれかに活用することができる。例えば、生成速度と生成物品質値との両方は、例えば、ホスゲン流の流量を増加させる一方で、溶媒中のアミン入口流の溶媒の流れを減少させることによって維持され得る。
圧力降下とは、イソシアネートを調製するためのシステム内の第1の点とシステム内の第2の点との間の圧力の差を意味する。例えば、ホスゲン化ミキサー全体にわたる圧力降下は、ホスゲン化ミキサーの前のプロセスの第1の点とホスゲン化ミキサーの後のプロセスの第2の点との間で決定され得る。ホスゲン化ミキサーのアミン側の圧力降下については、溶媒中のアミン入口流がホスゲン化ミキサーに入る点付近で第1の点を測定してもよく、ホスゲン化ミキサーを出る反応流で第2の点を測定してもよい(例えば、第2の点は、対応する配管内、または配管に接続されたさらに下流の分離器内であってもよい)。ファウリング圧力降下は、ファウリングが発生している配管、例えば、ホスゲン化ミキサーから下流の分離器に通じる配管全体にわたる摩擦および/または乱流散逸による圧力降下(配管全体にわたる総圧力降下とも称される)として決定され得る。局所的なファウリング、ならびに/または表面粗さおよび/もしくは面積変化に基づく摩擦圧力降下の増加に起因して、流れが配管の狭窄部を通過する際の収縮および膨張損失に基づいて、ファウリング圧力降下の増加が発生し得る。
生成速度とは、システムのイソシアネート生成物の生産量、例えば、プラントからの一定期間当たりのPMDI生成の量を意味する。指定の生成速度は、設定された生成速度から±5%の偏差を許容する。生成速度は、100%が指定の生成速度であるパーセンテージで設定することができる。実施形態によれば、イソシアネートを調製するためのプロセス中に、システム内で進行性のファウリングが発生していても、生成速度は比較的一定の値に設定することができる。生成速度は、比較的一定の値として設定することができ、この比較的一定という語句は、指定の値から±5%の偏差を許容する。
指定の生成物品質とは、生成プロセスおよびシステムが、プラント指定の品質尺度に対し特定の値で稼働されることを意味する。指定の生成物品質は、指定の生成物品質値から±10%の相対偏差を許容し、これはまた、指定の生成物品質値範囲とも称される。指定の生成物品質は、生成物流内の特定の不純物の量の尺度(例えば、重量パーセントに基づく尺度)であり得、不純物レベルと称され得る。ポリマーメチレンジフェニルジイソシアネート(PMDI)の生成などでは、指定の生成物品質は、イソシアネートを形成するためのプロセスにおいて特定の流れ中のある特定の望ましくない成分の尺度であり得る。例示的な実施形態では、指定の生成物品質は、あるイソシアネート基と別のイソシアネート基との反応によって形成される副生成物などのある特定の副生成物の形成によるイソシアネート基の損失を測定することができる。そのような副生成物の例としては、カルボジイミド形成、ウレトンイミン形成、および/またはウレトジオン形成を伴うものが挙げられる。実施形態によれば、イソシアネートを調製するためのプロセス中に、指定の生成物品質を比較的一定の値として設定してもよく、この比較的一定という語句は、システム内で進行性のファウリングが発生していても、指定の値から±10%の偏差を許容する。
通常操作とは、起動操作、シャットダウン操作、およびターンダウン操作とは区別される、定常状態操作中を意味する。例えば、通常操作は、起動操作が終了した後に開始され、および/またはシャットダウン操作もしくはターンオーバー操作が開始される前に終了する。定常状態操作は、ホスゲン化ミキサーの公称容量を超える操作を含む。定常状態操作は、ホスゲン化ミキサーの最大容量を下回る操作が含み得る。
図1を参照すると、ホスゲン化プロセス中、少なくとも2つの入口流(例えば、液体流)がホスゲン化ミキサーに供給される。溶媒中のアミン入口流は、少なくともアミン/溶媒ポンプとアミン流制御弁とを含む。第1の圧力点P1は、アミン/溶媒ポンプとアミン流制御弁との間の点の圧力に関する。第2の圧力点P2は、アミン流制御弁とホスゲン化ミキサーとの間の点の圧力に関する。ホスゲン入口流は、少なくともホスゲンポンプとホスゲン流制御弁とを含む。第3の圧力点P3は、ホスゲンポンプとホスゲン流制御弁との間の圧力に関する。第4の圧力点P4は、ホスゲン流制御弁とホスゲン化ミキサーとの間の圧力に関する。少なくとも1つの組み合わせた反応流がホスゲン化ミキサーに存在し、例えば、未反応ホスゲン流をイソシアネート生成物流から分離するための分離器に供給される。第5の圧力点P5は、ホスゲン化ミキサーと分離器との間の、例えばそれらの間の接続パイプにおける圧力に関する。第6の圧力点P6は、分離器内の圧力に関する。例示的な実施形態によれば、ホスゲン化ミキサー全体にわたるアミン側の圧力降下は、圧力点P2と圧力点P5との間で測定され得る。ファウリング圧力降下は、圧力点P5と圧力点P6との間で測定して決定することができる。各圧力点は、独立して、圧力センサーなどの圧力測定デバイスおよび/または圧力測定が手動で行われる点に相当し得る。
典型的には、ホスゲン化プロセスでは、通常操作は、入口流の組成および流量に関して一定で稼働され得る。ホスゲン化ミキサーから分離器に通じる対応する配管接続部のファウリングが増加するにつれて、少なくとも上流制御弁(アミン流制御弁など)を徐々に開いてもよい。そのような操作手順中、ファウリングに起因する圧力降下の変化は、システム全体の全体的な圧力降下が大幅に変動し得るように、上流制御弁によってのみ対処されている。しかしながら、所定の生成物品質値、生成速度を維持し、および/または実質的なエネルギー消費の増加を回避する目的で、イソシアネートの改善された生成方法が求められている。ホスゲン化ミキサーのアミン側の圧力降下については、溶媒中のアミン入口流がホスゲン化ミキサーに入る点付近で第1の点を測定してもよく、ホスゲン化ミキサーを出る反応流で第2の点を測定してもよい(例えば、第2の点は、対応する配管内、または配管に接続されたさらに下流の分離器内であってもよい)。ファウリング圧力降下は、ファウリングが発生している配管、例えば、ホスゲン化ミキサーから下流の分離器に通じる配管全体にわたる総圧力降下として決定され得る。
実施形態によれば、ホスゲン化プロセスでは、通常操作は、最初により高い圧力降下のホスゲン化ミキサーを使用することを含み得、例えば、ホスゲン化ミキサーのアミン側の最初の圧力降下は、典型的なホスゲン化プロセスで見られるものよりも高くてもよい。最初により高い圧力降下のホスゲン化ミキサーは、溶媒中のアミン入口流用に比較的小さなジェットを備えてもよい。システムの定常状態操作の開始時に、最初により高い圧力降下がより高いエネルギーをミキサーに付与し、これにより混合の改善が可能になり、ユーティリティコストの低下、より良好な品質、および/またはより高い生成につながり得る。したがって、様々なパラメータの調整に依存するプロセス全体で、最初のより高い圧力降下をツールとして使用して、比較的一定の生成物品質および生成速度を維持することができる。続いて、ホスゲン化ミキサー内の圧力降下の減少が実現されると、そのような圧力降下を使用して、下流のファウリング圧力降下の増加を補償しながら、依然として比較的一定の生成物品質および生成速度を維持することができる。
さらに、通常操作中に、イソシアネート生成物流の所定の生成速度および生成物品質値を維持するために、溶媒中のアミン入口流におけるアミン濃度、およびホスゲン対アミン比(すなわち、PAR)値を調整してもよい。PAR値は、ホスゲン入口流の流量を調整すること、および/またはホスゲン化ミキサーに入るアミンの量を変えることによって変化させることができる。例えば、イソシアネートの生成プロセスにおけるホスゲン化ミキサー内のアミン側の圧力降下などの他のパラメータが変化していても、ホスゲン入口流の流量を変化させて生成品質を維持することができる。
最初により高い圧力降下のホスゲン化ミキサーの使用と組み合わせると、アミン/溶媒制御弁に起因する最初の圧力降下は、上記の典型的なホスゲン化プロセスに比べて低くなり得る。次いで、通常操作が進むにつれて、溶媒流量を減少させることによるアミン濃度の増加によって、溶媒中のアミン入口流の形成については、溶媒中のアミン入口流の組成を変化させることができる。溶媒中のアミン入口流の全体的な流量は同じに維持しても変化させてもよいが、ホスゲン化ミキサーに入る溶媒中のアミン入口流中のアミンの全体的な濃度は増加させる。例示的な実施形態では、溶媒中のアミン入口流の組成は、溶媒の量を減少させ、アミン濃度を増加させる場合(例えば、システムファウリングが増加する場合)、溶媒中のアミン流の全体的な流量を減少させることができるように調整され得る。別の例示的な実施形態では、溶媒中のアミン流の全体的な流量は変化しない。溶媒中のアミン入口流のアミン濃度を増加させる場合、ホスゲンの流量は同じであっても変化させてもよい。
したがって、ホスゲン化ミキサー下流の配管内で進行性のファウリングが発生している場合でも、最初により高い圧力降下のホスゲン化ミキサー、より高いアミン濃度、およびより高いPAR値の特定の組み合わせにより、イソシアネート生成プラントは比較的一定の生成速度および生成物品質値を維持することが可能であり得る。言い換えれば、実施形態は、システム内で進行性のファウリングが発生している間、関連する一定の生成速度および生成物品質値を維持しようとしながら、エネルギー節約を最大化するためのシステム、プロセス、および手順に関する。
ホスゲン化ミキサー
ホスゲン化ミキサーとして使用可能なスタティックミキサーは、その中に2つの流体流を送達するための方法を組み込むように設計されてもよい。流れがスタティックホスゲン化ミキサーを通過する際、材料の連続的なブレンドが可能である。イソシアネート生成のためのプロセスにおいて、ホスゲン化ミキサーとして使用可能な例示的なスタティックミキサーを図2に示す。
具体的には、図2は、例示的なスタティックミキサー150の断面図を示している。スタティックミキサー150は、長手方向軸156に沿って第1の流れ105がそこを通過することを可能にする内部容積154を画定する、第1の流れ導管153を含む。第1の流れ105は、入口端部152からスタティックミキサー150に入り、内部容積154を通って出口端部158に向かって流れる。第1の流れ105は、ホスゲン入口流であり得る。
図2を参照すると、第1の流れ導管153は、入口端部152および出口端部158を含む。混合導管100は、第1の流れ導管153の入口端部152と出口端部158との間に連結されている。混合導管100は、混合導管100の中心軸103を取り囲む(例えば、囲い込む)側壁101を含む。混合導管100は、中心軸103が第1の流れ導管153の長手軸156と一致するように位置付けられてもよい。側壁101は、混合導管の内部容積107を画定し、これは、第1の流れ導管153の内部容積154と同軸であってもよい。複数のジェット開口部102は、側壁101を貫通して形成されて、混合導管100の内部容積107を混合導管100の外部に流体連通させる。
図2を参照すると、第2の流れ導管155は、第1の流れ導管153に取り付けられている。第2の流れ導管155は、第1の流れ導管153の入口端部152および出口端部158に連結され、混合導管100を取り囲む環状チャンバ159を画定する。環状チャンバ159は、第2の流れ104が複数のジェット開口部102を通って混合導管100の内部容積107に入り、第1の流れ105と混合することを可能にする。第2の流れ104は、溶媒中のアミン入口流であり得る。混合導管100は、第2の流れ104が混合導管100内の複数のジェット開口部102を介して第1の流れ105と混合するのを制限するように、第1の流れ導管153を第2の流れ導管155から隔離する。第2の流れ104は、環状チャンバ159への第2の流れ導管155の入口108でスタティックミキサー150に入り、次いで複数のジェット開口部102を通って混合導管100の内部容積107に入って第1の流れ105と混合する。混合された流れ157は、第1の流れ導管153の出口端部158を通ってスタティックミキサー150を出る。
ホスゲン化ミキサーとして使用可能な混合導管のパラメータおよび構造は、所望の混合結果を得るように設計することができる。例えば、ジェット開口部の数は、導管の直径およびジェット開口部の直径によって制限されるが、より高い圧力降下のスタティックミキサーを形成するには、ジェット開口部の総数または導管の直径を変化させずに、ジェット開口部の直径を減少させてもよい。米国特許公開第2015/0018575号で論じられているように、スタティックミキサーの混合導管は、2個以上のジェット開口部、22個以上のジェット開口部、22〜50個のジェット開口部などを含み得る。ジェット開口部の直径は、1mm〜10mm(例えば、2mm〜7mm、3mm〜5mmなど)であり得る。米国特許公開第2013/0176814号で論じられているように、スタティックミキサーの混合導管は、その内部容積に配置されている1つ以上の流れ障害物を含んでもよい。各流れ障害物は、関連するジェット開口部の上流に位置合わせしてもよい。米国特許第7,901,128号で論じられているように、混合導管は、少なくとも1つのテーパー付きジェット開口部を有してもよい。混合導管は、プレートタイプの設計を使用して、流れに強い乱流を使用することを通じて混合を達成してもよい。スタティックミキサー要素としては、金属または様々なプラスチックで作製された一連の混合要素(例えば、動かないバッフル)を挙げることができる。
イソシアネートの調製
様々なイソシアネートの生成は、ホスゲン化段階を含む。例示的なイソシアネートとしては、ジフェニルメチレンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびキシレンジイソシアネート(XDI)などのポリイソシアネート、ならびにそれらの修飾物などのポリイソシアネートが挙げられる。
イソシアネートの生成では、溶媒中のアミン流は、1種以上のアミンを含むアミン成分と、1種以上の溶媒を含む溶媒成分とを含む。アミン成分としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ステアリルアミン、フェニルアミン、p−トルイジン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,4−ジアミノベンゼン、2、4−および/または2,6−ジアミノトルエン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジフェニルメタン系アルキル置換ジアミン、アニリン−ホルムアルデヒド縮合による既知の様式によって得られるようなジフェニルメタン系ポリアミン混合物、p−キシレンジアミン、過水素化2,4−ジアミノトルエン、過水素化2,6−ジアミノトルエン、2,2’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン、リジンのエチルエステル、リジンのアミノエチルエステル、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、1,6,11−トリアミノウンデカン、ならびにそれらの混合物から選択される1つ以上を挙げることができる。
溶媒成分としては、不活性溶媒、例えば、非ハロゲン化芳香族炭化水素(トルエンおよび/またはキシレンなど)、ハロゲン化芳香族炭化水素(塩素化芳香族炭化水素など)、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を挙げることができる。例示的なハロゲン化芳香族炭化水素としては、クロロベンゼンおよびクロロエチベンゼン(chloroethybenzene)が挙げられ、その両方としては様々な構造が挙げられ、例としては、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、およびトリクロロベンゼンが挙げられる。
例示的な実施形態による液相ホスゲン化プロセスは、PMDI生成のためのプロセスで使用可能であり得る。プロセスは、酸触媒の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させることによって、メチレンジフェニルジアミンおよびジフェニルメタン系ポリアミンを形成することと、メチレンジフェニルジアミンおよびジフェニルメタン系ポリアミンをホスゲン化して、MDI異性体とポリマーMDIとの混合物を生成することと、を含み得、その後、例えば、米国特許第9,090,540号で論じられているように、混合物を様々な画分に分離してもよい。形成されるメチレンジフェニルジアミンおよびジフェニルメタン系ポリアミンは、溶媒中のアミン入口流中でアミン成分を形成し得る。
例示的な実施形態では、PMDIベースの生成物を生成するためのプロセス中に、アニリンをホルムアルデヒドと反応させてメチレンジフェニルジアミン(およびジフェニルメタン系ポリアミン)を形成すると、少なくとも以下に示すような縮合反応が実現され得る:
ジフェニルメタン系の好適なポリアミン混合物は、20:1〜1.6:1のモル量比、および20:1〜1:1のアニリン対酸触媒の定量比でのアニリンとホルムアルデヒドとの縮合によって得ることができる。ホルムアルデヒドは、水溶液の総重量に基づいて、1重量%〜95重量%の含水量を有する水溶液として使用してもよい。メチレン基を供給する他の化合物(例えば、ポリオキシメチレングリコール、パラ−ホルムアルデヒド、および/またはトリオキサン)を、単独でまたはホルムアルデヒドと組み合わせて使用してもよい。強酸、具体的には無機酸は、アニリンとホルムアルデヒドとの反応の酸触媒として好適である。好適な酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、およびメタンスルホン酸が挙げられる。有機および無機イオン交換体、酸性シリコン/アルミニウム混合酸化物、および酸性ゼオライトなどの固体酸触媒もまた使用してもよい。
例示的な実施形態では、アニリンと酸触媒とが、まず一緒に混合される。次いで、アニリンと酸触媒との混合物は、20℃〜100℃の温度でホルムアルデヒドと混合され、予備反応が実行される。他の例示的な実施形態では、酸触媒の不在下で、5℃〜100℃の温度でまずアニリンとホルムアルデヒドとを混合する。そのような例では、アニリンとホルムアルデヒドとの縮合生成物(すなわちアミナール)が形成される。アミナール形成の完了時に、反応混合物中に存在する水は、相分離によって、または蒸留などの他の好適な手順によって除去してもよい。次いで、縮合生成物を酸触媒と混合し、20℃〜100℃の温度で予備反応を実行する。次いで、いずれの場合でも、反応混合物の温度は、段階的または連続的に、100℃〜250℃の温度に上げられる。次いで、反応混合物を、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)などの塩基で中和してもよい。
次いで、上記のプロセスで得られる生成物は、PMDIを形成するためのプロセスで使用されるアミン流を形成する。具体的には、ホスゲン化段階では、少なくともポリマージフェニルメタンジアミン(PMDAとも呼ばれる)は、以下に示すようにホスゲンと反応させてもよい。
例示的な実施形態によれば、上記のホスゲン化プロセスは、ホスゲン化ミキサー内で実施することができる。ホスゲン化プロセスは、50℃〜250℃の温度で実行することができる。ホスゲン化プロセスは、周囲圧力〜50バールの圧力で実行することができる。
ホスゲン化プロセスの後、得られた混合物を分離器に供給してもよく、その間に過剰なホスゲン、不活性有機溶媒、形成された塩化水素、および/またはそれらの混合物を反応混合物から分離する。分離段階の後、プロセスは、PMDIと称されるイソシアネート生成物をもたらし得るが、このPMDIはあるレベルの不純物を含み得る。そのような生成物の混合物としては、MDIの3つの異性体、すなわち4,4’−MDI、2,4’−MDI、および2,2’−MDIを挙げることができる。いくつかの四量体および/またはより高い付加物もまた、形成され得る。このイソシアネート生成物は最終生成物と称され得、混合物の生成物品質を評価することができる。生成速度は、イソシアネート生成物の生産量に基づいてもよい。
イソシアネート生成物はさらに加工されて、精製されたイソシアネート生成物を形成し得、続く精製プロセスを介してPMDIから回収され得る。精製プロセスとしては、蒸留、抽出、または結晶化などの1つ以上の分離方法を挙げることができる。使用される精製プロセスに応じて、モノマーMDIなど、異なるタイプのMDIベースの最終生成物を形成することができる。粗ジイソシアネートおよびポリイソシアネートの例示的な分離は、様々な技術を使用して実施することができ、例えば、例示的な分離技術は、米国特許第9,090,540号で論じられている。例示的な実施形態では、分離プロセスは、1つ以上の蒸留カラムを含み得、分離後に残った有機相を含有する生成物は、洗浄手順を施されて精製有機相を形成し得る。
生成システム
実施形態によれば、イソシアネート生成のためのシステムでは、ホスゲン化ミキサーの機械的エネルギーは、溶媒中のアミン流の圧力降下に依存することによって、溶媒中のアミン流に関連する上流制御弁からミキサーにシフトされる。換言すれば、機械的エネルギーが上流制御値で損なわれることを防止し、代わりにホスゲン化ミキサーに移動してエネルギーを最大化して、溶媒中のアミン流とホスゲン流とを混合することができる。そのため、定常状態操作中に、比較的一定の生成速度(すなわち、指定の生成速度の±5%以内)、および比較的一定の生成物品質値(すなわち、指定の生成物品質値の±10%以内)を維持するために、ホスゲン化ミキサー内の混合速度に対する上流制御弁への依存は減少するが、圧力降下への依存は増加する。溶媒中のアミン入口流からのアミンと、ホスゲン入口流からのホスゲンとの混合速度は、生成物品質に関連し得る。例えば、望ましくない副生成物の形成は、混合速度が増加するにつれて減少し得る。
必要に応じて、溶媒中のアミン流のアミン濃度およびPAR値も調整される。さらに、ホスゲン化ミキサー内のアミン側の圧力降下の減少、およびファウリング圧力降下の増加が実現すると、圧力降下における2つの変化が互いに補償され、システムの圧力降下をほぼ一定に維持することを可能にする。このシステムの圧力降下により、システムのクリーニングが必要になるまでより長い期間操作が可能になり得る。さらに、設計などにより、プラントによるエネルギー使用量の低下を可能にすることができる。例えば、ある特定のPAR値でプラントを操作すると、ホスゲンおよび/または塩化水素のエネルギー集約的な蒸留を低下させることができる。
定常状態操作中、進行性のファウリング(例えば、ホスゲン化ミキサーの出口に接続されている配管内の)に起因する圧力降下の増加は、第1の期間T1と、第1の期間T1に続く第2の期間T2とに分割される期間にわたる、ホスゲン化ミキサー内の圧力降下の減少によって補償される。さらに、第1の期間T1中の溶媒中のアミン流内の1種以上のアミンのアミン濃度は、期間T2中よりも低い。また、期間T1中のホスゲン化ミキサー内のPAR値は、期間T2中よりも低い。全体的な操作期間を、期間T1からTn(nが2〜1000の整数(例えば、2〜500、2〜100、2〜50、2〜20など)である)に分割することができるようにして、アミン濃度およびPAR値の変更を、複数の段階で行ってもよい。続く各期間Tn−1〜Tnでは、アミン濃度およびPAR値の両方を、例えば、両方とも個別の増分で増加させるなどして、変化させる。例えば、アミン濃度およびPAR値は、まず期間Tn−1の開始時に増加させ、次いで期間Tnの開始時に2回目の増加を行う。全体的な操作期間は、T1〜Tnの期間に分割することができ、クリーニング操作が望ましいと決定されるまでの、システムの完全な定常状態操作時間を定めることができる。
ホスゲン化ミキサー内で実現されるアミン側の圧力降下は、様々な要因に依存し得る。例示的な実施形態では、期間T1〜Tnに分割される操作期間にわたって実現されるアミン側の圧力降下は、1バール〜50バール(例えば、1バール〜20バール、1バール〜10バール、1バール〜5バールなど)であり得る。
溶媒中のアミン流のアミン濃度の変化に言及するとき、濃度は、0.2%〜3.0%の範囲(例えば、0.5%〜2.0%、0.5%〜1.5%、0.8%〜1.2%など)において個々の増分で増加させてもよい。各々の続く個々の増分値は、例えば依然として0.2%〜2.0%の範囲内であるが、以前の値と同じでも異なっていてもよい。例えば、ファウリングに対処するために洗浄操作が求められると決定されるまで、アミン濃度の続く各変化において、(実際のアミン濃度の増加として)0.2%〜2.0%の増加であり得る。そのような洗浄操作の後、システム操作は、最初のアミン濃度に戻り、ファウリングが再び発生するにつれて増分で増加させながら進めることができる。濃度とは、質量パーセント、すなわちアミンの質量パーセントを意味する。アミン濃度を変化させるには、溶媒中のアミン入口流を形成するための溶媒流量を、アミン濃度の対応する変化を可能にする速度で変化させる。溶媒流量の変化量は、溶媒中のアミン流の全体的な流量に依存する。
PAR値の変化に言及するとき、値は、0.05〜1.00の範囲(例えば、0.05〜0.50、0.05〜0.30、0.05〜0.25など)の個々の増分で増加させてもよい。各々の続く個々の増分値は、例えば依然として0.05〜0.50の範囲内であるが、以前の値と同じでも異なっていてもよい。例えば、ファウリングに対処するために洗浄操作が求められると決定されるまで、PAR値の続く各変化は、0.05〜0.50の増加であり得る。そのような洗浄操作の後、システム操作は、最初のPAR値に戻り、ファウリングが再び発生するにつれて増分で増加させながら進めることができる。PAR値を変化させるには、ホスゲン入口流の流量を増加させて、PAR値の対応する変化を可能にする。ホスゲン入口流の流量の変化量は、ホスゲン流と溶媒中のアミン流との全体的な流量に依存する。
実施例は、実施形態によるホスゲン化プロセスおよびホスゲン化ミキサーを使用してイソシアネートを調製することに基づいており、図3および図4に関して論じる。実施例は、イソシアネートを調製するためのプロセスにおける、(1)品質値、溶媒中のアミン流のアミン濃度(本明細書ではPMDA濃度とも称される)、およびPAR値との関係、ならびに(2)最初により高い圧力降下とPAR値との関係、の両方を考慮して調製する。実施例では、得られる最終生成物は、不純物を伴うPMDIを含み、PMDI生成物と称され得る。最終生成物は、過剰な未反応ホスゲン、HCl、および/または溶媒が分離されたイソシアネートベースの生成物であり、ホスゲン化ミキサーが存在する生成物とは区別される。
実施例に関して、図3は、変動するPMDA濃度およびPAR値に対する品質値を示すグラフ表示を示している。図3の水平二重線は、比較的一定の品質値および比較的一定の生成速度をもたらすPMDA濃度およびPAR値について、操作条件の望ましい変化を表す。図4は、図3の水平二重線に沿って取られた、定常状態での圧力降下(ホスゲン化ミキサーのアミン側圧力降下とも称される)およびPAR変動値のグラフ表示を示している。
アミン側の圧力降下は、図4で下向きの実線で表されているが、これは溶媒中のアミン入口流の溶媒流量を減らすことによって減少し、溶媒中入口流のアミン濃度の増加につながる。溶媒の流量を減少させることによってアミン濃度を相対的に増加させるように、溶媒中のアミン入口流の溶媒の量は、正味のPMDAの流れを変化させずに低下される。アミン(PMDA)濃度は、溶媒中のアミン流のアミンの質量分率である。圧力降下は、第1の点と第2の点との差として測定する。図1を参照すると、第1の点は、第2の圧力点P2でホスゲン化ミキサーの上流の溶媒中のアミン入口流で測定され、第2の点は、第5の圧力点P5でホスゲン化ミキサーの下流で測定される。
ファウリング圧力降下は、ホスゲン化ミキサーのアミン側の圧力に関連する圧力降下とは別である。ファウリング圧力降下は、第2の点と第3の点との差として測定される。図1を参照すると、第2の点は、第5の圧力点P5でホスゲン化ミキサーの下流で測定され、第3の点は第6の圧力点P6で分離器内で測定される。イソシアネート生成システムは本来、数週間の期間にわたって少なくとも下流の配管が、ファウリングと称される固形物を収集するような、固有のファウリングプロセスである。ファウリングは、配管の直径を縮小し、表面特性を変化させるため、その中の混合物の速度が増し、その配管内の圧力降下が増加する。ファウリング圧力降下は、ホスゲン化ミキサーを下流の分離器に接続するパイプ全体にわたって測定することができる。システム内の総圧力降下は、圧力降下(すなわち、アミン側の圧力降下)と下流のファウリング圧力降下との差として計算することができる。
図4の上向きの破線は、PAR値であり、これは、ホスゲン流量を増加させることによって増加され、比較的一定の品質値を維持するために上げられる。品質値は、ポリマーメチレンジフェニルジイソシアネート(PMDI)などのイソシアネートを形成するプロセスで形成されるある特定の副生成物へのイソシアネート基の損失に関連し、得られる生成物の純度レベルを説明するための基礎として使用することができる。図3の品質値は、最終生成物中のウラトミンおよび/またはウレトンジオンベースの副生成物を組み合わせた総重量の重量割合として表される。品質値は、0重量%〜30.0重量%の範囲であり得る。図3に関して、5.0重量%〜7.0重量%の品質値範囲が提供されている。さらに、図3に示すように、品質値は、溶媒中のアミン入口流のアミン濃度およびPAR値を変化させることによって調整することができる。アミン濃度は、溶媒中のアミン入口流の溶媒流量を減少させることによって増加させ、逆に溶媒流量を増加させることによってアミン濃度を減少させることができる。PAR値は、ホスゲン入口流の流量を増加させることによって増加され、逆にホスゲン入口流の流量を減少させることによってPAR値を減少させることができる。
実施例では、パイロットスケールのイソシアネート生成システムを操作して、最終生成物の0.53kg/秒の比較的一定の生成速度、およびおよそ5.9の比較的一定の品質値の両方を維持している。最終生成物を作製するための定常状態操作としては、およそ0.4kg/秒の流量の最初の溶媒中アミン入口流が挙げられる。最初のアミン濃度(すなわち、PMDA濃度)は、溶媒中のアミン入口流の総重量に基づいて28重量%である。ホスゲン入口流は、0.2〜0.5kg/秒で変動する流量、およびホスゲン流の総重量に基づいて99重量%以上のホスゲン濃度を有する)。実施例は、およそ3.9mmの単一のジェット開口部の直径に起因して、比較的より高いレベルで維持されている最初により高い圧力降下を利用している。ホスゲン化ミキサーでは、アミン側から利用可能な圧力降下が、ホスゲンとアミンとの流れを混合するエネルギーを付与する。さらに、定常状態操作中は、圧力降下が減少して、ファウリング圧力降下を補償する。実施例における目標は、総圧力降下を比較的一定に維持することである。
実施例については、米国特許第7,901,128号で論じられているように、溶媒中のアミン流およびホスゲン流をせん断混合装置で混合する。実施形態は、例えば、さらにより高い最初の圧力降下および/またはエネルギー節約を達成することを目的とする他の混合装置に基づいてもよい。ホスゲン化ミキサーおよび配管においてファウリングが発生した場合アミン側で利用可能な最大圧力降下を利用するために、パイロットプラントは、まずPMDA濃度を増加させて(溶媒流量を減少させることによって)、次いで1分間以内にPAR値を増加させる(ホスゲン入口流の流量を増加させることによって)ことによって操作する。例示的な実施形態では、まずPAR値を変化させてもよく、PMDA濃度もしくはPAR値のそれぞれの他方を変化させる数分から1時間前に、PMDA濃度もしくはPARを変化させてもよく、ならびに/またはPMDA濃度およびPAR値を同時に変化させてもよい。この方策を使用すると、一定の生成速度および品質値の両方を維持することができる。
実施例に関して、およそ28%〜32%の範囲の例示的なPMDA濃度、およそ1.8〜3.0の範囲のPAR値、および9.0バール〜7.1バールの圧力降下で、例示的なパイロットプラントを操作することが可能である。PMDA濃度、PAR値、および圧力降下に関する実際の操作範囲は、フルスケールの生成プラントでは変動し得る。
図3から導き出すことができるように、比較的一定の品質値を維持するには、図3に示すグラフ表示で水平に移動するようにプラント操作を修正する必要がある。例えば、システムがクリーンなとき、およそ5.9の品質値を達成するには、PMDA濃度をおよそ28%に設定してもよく、PAR値をおよそ1.9に設定してもよい。ファウリングが発生するにつれて、およそ5.9の品質値を維持するには、PMDA濃度をおよそ29%に増加させてもよく、PAR値をおよそ2.0に増加させてもよい。ファウリングが実質的に増加した後、およそ5.9の品質値を維持することが依然として可能でありながら、PMDA濃度をおよそ32%に増加させてもよく、PAR値をおよそ3.0に増加させてもよいことがわかる。図4を参照すると、そのような操作手順を使用すると、続くPMDA濃度の増加によって、ホスゲン化ミキサー内の圧力降下を減少させて、下流の配管内のファウリング圧力降下の増加を補償することができる。さらに、比較的一定の生成速度を維持するには、アミン濃度および関連する圧力降下を変動させながら、圧力降下が減少するにつれてPAR値を増加させる。
したがって、下流の配管がファウリングし始めると、PMDA濃度を増加させて、ファウリングに起因するシステム内の圧力降下の増加を補償し、所定の品質値を維持することができる。さらに、PAR値を増加させると、所定の生成速度が維持されるであろう。PMDA濃度とPAR値とのこの組み合わせによって、ファウリングが増加していても、プラントを比較的一定の生成品質および生成速度で稼働させることが可能になるだろう。
実施形態は、イソシアネートを調製するためのプロセス、およびイソシアネートを調製するためのプロセスを使用するためのシステムに関する。
イソシアネートは、不活性溶媒中でアミンをホスゲンと反応させることによって調製することができる。例えば、ホスゲンを溶媒中のアミンと直接接触させることによって、アミンをイソシアネートに変換することができる。連続操作中にそのようなイソシアネートを調製するとき、進行性のファウリングが発生し得ることが知られている。システムのファウリングは、生成速度および/または生成物品質に悪影響を及ぼし得る。したがって、生成速度の大幅な低下、エネルギー消費の増加、および/または生成物品質の変化を強いられることなく、システムのファウリングを補償する方法が求められている。
実施形態は、イソシアネート生成物を調製するためのプロセスを提供することによって実現され得、このプロセスは、ホスゲン入口流、ならびに1種以上のアミンおよび1種以上の不活性溶媒を含む溶媒中のアミン入口流をホスゲン化ミキサーに提供することと、定常状態操作中に少なくとも第1の期間T 1 と第1の期間T 1 に続く第2の期間T 2 とに分割される期間にわたり、ホスゲン化ミキサー内の圧力降下を減少させることによって、ファウリング圧力降下の増加を補償することと、を含む。第2の期間T 2 中の溶媒中のアミン流内の1種以上のアミンのアミン濃度は、第1の期間T 1 中よりも高く、第2の期間T 2 中のホスゲン化ミキサー内のホスゲン対アミン比値は、第1の期間T 1 中よりも高い。
実施形態の特色は、添付の図面を参照しながら、その例示的な実施形態を詳細に説明することによって、当業者にはより明らかになるであろう。
イソシアネート生成のための例示的なシステムを示す。
イソシアネート生成のための例示的なシステムで使用可能な、例示的なホスゲン化ミキサーを示す。
変動するPMDA濃度およびPAR値に対する品質値を示す実施例のグラフ表示を示し、水平二重線は、比較的一定の品質値を維持するための操作条件の望ましい変化を表す。
比較的一定の品質値を維持するようにシステム操作中のホスゲン化ミキサーの圧力降下(アミン側)およびPAR値の変動を示す実施例のグラフ表示を示す。
実施形態は、イソシアネートを調製するためのプロセスで使用可能なホスゲン化プロセス(液相プロセスおよび/または気相プロセスなど)、およびホスゲン化プロセスを利用するシステムに関する。プロセスおよびシステムは、得られるイソシアネート生成物の指定の生成物品質値(例えば、所定の不純物レベル範囲)を有することを可能にし、イソシアネート生成物の生成速度の大幅な低下を強いられることを回避する。溶媒中のアミン入口流の組成、溶媒中のアミン入口流の流量、および/またはホスゲン入口流の流量は、イソシアネート生成のためのプロセスおよびシステム操作で調整可能である。
そのようなイソシアネートを調製するための連続プロセスの定常状態操作中、溶媒中のアミン流とホスゲン流とを混合するために利用可能なエネルギーは、溶媒中のアミン流の上流制御弁の圧力降下、およびホスゲン化ミキサー内の圧力降下の増加を最小限に抑えることによって最大化することができる。これにより、溶媒中のアミン流の体積流量の範囲の低下(例えば、ファウリング圧力降下の増加に基づく)が生じ得、これは、アミン濃度、およびホスゲン対アミンの比を、少なくとも第1の期間T1と、第1の期間T1に続く第2の期間T2とに分割される一定期間にわたり変動させることによって補償することができる。ホスゲン化ミキサー内の圧力降下を最大化すると、プロセスの全体的な性能の改善を可能にし得、品質の改善、または生成速度の増加、またはエネルギーコストの低下のいずれかに活用することができる。例えば、生成速度と生成物品質値との両方は、例えば、ホスゲン流の流量を増加させる一方で、溶媒中のアミン入口流の溶媒の流れを減少させることによって維持され得る。
圧力降下とは、イソシアネートを調製するためのシステム内の第1の点とシステム内の第2の点との間の圧力の差を意味する。例えば、ホスゲン化ミキサー全体にわたる圧力降下は、ホスゲン化ミキサーの前のプロセスの第1の点とホスゲン化ミキサーの後のプロセスの第2の点との間で決定され得る。ホスゲン化ミキサーのアミン側の圧力降下については、溶媒中のアミン入口流がホスゲン化ミキサーに入る点付近で第1の点を測定してもよく、ホスゲン化ミキサーを出る反応流で第2の点を測定してもよい(例えば、第2の点は、対応する配管内、または配管に接続されたさらに下流の分離器内であってもよい)。ファウリング圧力降下は、ファウリングが発生している配管、例えば、ホスゲン化ミキサーから下流の分離器に通じる配管全体にわたる摩擦および/または乱流散逸による圧力降下(配管全体にわたる総圧力降下とも称される)として決定され得る。局所的なファウリング、ならびに/または表面粗さおよび/もしくは面積変化に基づく摩擦圧力降下の増加に起因して、流れが配管の狭窄部を通過する際の収縮および膨張損失に基づいて、ファウリング圧力降下の増加が発生し得る。
生成速度とは、システムのイソシアネート生成物の生産量、例えば、プラントからの一定期間当たりのPMDI生成の量を意味する。指定の生成速度は、設定された生成速度から±5%の偏差を許容する。生成速度は、100%が指定の生成速度であるパーセンテージで設定することができる。実施形態によれば、イソシアネートを調製するためのプロセス中に、システム内で進行性のファウリングが発生していても、生成速度は比較的一定の値に設定することができる。生成速度は、比較的一定の値として設定することができ、この比較的一定という語句は、指定の値から±5%の偏差を許容する。
指定の生成物品質とは、生成プロセスおよびシステムが、プラント指定の品質尺度に対し特定の値で稼働されることを意味する。指定の生成物品質は、指定の生成物品質値から±10%の相対偏差を許容し、これはまた、指定の生成物品質値範囲とも称される。指定の生成物品質は、生成物流内の特定の不純物の量の尺度(例えば、重量パーセントに基づく尺度)であり得、不純物レベルと称され得る。ポリマーメチレンジフェニルジイソシアネート(PMDI)の生成などでは、指定の生成物品質は、イソシアネートを形成するためのプロセスにおいて特定の流れ中のある特定の望ましくない成分の尺度であり得る。例示的な実施形態では、指定の生成物品質は、あるイソシアネート基と別のイソシアネート基との反応によって形成される副生成物などのある特定の副生成物の形成によるイソシアネート基の損失を測定することができる。そのような副生成物の例としては、カルボジイミド形成、ウレトンイミン形成、および/またはウレトジオン形成を伴うものが挙げられる。実施形態によれば、イソシアネートを調製するためのプロセス中に、指定の生成物品質を比較的一定の値として設定してもよく、この比較的一定という語句は、システム内で進行性のファウリングが発生していても、指定の値から±10%の偏差を許容する。
通常操作とは、起動操作、シャットダウン操作、およびターンダウン操作とは区別される、定常状態操作中を意味する。例えば、通常操作は、起動操作が終了した後に開始され、および/またはシャットダウン操作もしくはターンオーバー操作が開始される前に終了する。定常状態操作は、ホスゲン化ミキサーの公称容量を超える操作を含む。定常状態操作は、ホスゲン化ミキサーの最大容量を下回る操作が含み得る。
図1を参照すると、ホスゲン化プロセス中、少なくとも2つの入口流(例えば、液体流)がホスゲン化ミキサーに供給される。溶媒中のアミン入口流は、少なくともアミン/溶媒ポンプとアミン流制御弁とを含む。第1の圧力点P1は、アミン/溶媒ポンプとアミン流制御弁との間の点の圧力に関する。第2の圧力点P2は、アミン流制御弁とホスゲン化ミキサーとの間の点の圧力に関する。ホスゲン入口流は、少なくともホスゲンポンプとホスゲン流制御弁とを含む。第3の圧力点P3は、ホスゲンポンプとホスゲン流制御弁との間の圧力に関する。第4の圧力点P4は、ホスゲン流制御弁とホスゲン化ミキサーとの間の圧力に関する。少なくとも1つの組み合わせた反応流がホスゲン化ミキサーに存在し、例えば、未反応ホスゲン流をイソシアネート生成物流から分離するための分離器に供給される。第5の圧力点P5は、ホスゲン化ミキサーと分離器との間の、例えばそれらの間の接続パイプにおける圧力に関する。第6の圧力点P6は、分離器内の圧力に関する。例示的な実施形態によれば、ホスゲン化ミキサー全体にわたるアミン側の圧力降下は、圧力点P2と圧力点P5との間で測定され得る。ファウリング圧力降下は、圧力点P5と圧力点P6との間で測定して決定することができる。各圧力点は、独立して、圧力センサーなどの圧力測定デバイスおよび/または圧力測定が手動で行われる点に相当し得る。
典型的には、ホスゲン化プロセスでは、通常操作は、入口流の組成および流量に関して一定で稼働され得る。ホスゲン化ミキサーから分離器に通じる対応する配管接続部のファウリングが増加するにつれて、少なくとも上流制御弁(アミン流制御弁など)を徐々に開いてもよい。そのような操作手順中、ファウリングに起因する圧力降下の変化は、システム全体の全体的な圧力降下が大幅に変動し得るように、上流制御弁によってのみ対処されている。しかしながら、所定の生成物品質値、生成速度を維持し、および/または実質的なエネルギー消費の増加を回避する目的で、イソシアネートの改善された生成方法が求められている。ホスゲン化ミキサーのアミン側の圧力降下については、溶媒中のアミン入口流がホスゲン化ミキサーに入る点付近で第1の点を測定してもよく、ホスゲン化ミキサーを出る反応流で第2の点を測定してもよい(例えば、第2の点は、対応する配管内、または配管に接続されたさらに下流の分離器内であってもよい)。ファウリング圧力降下は、ファウリングが発生している配管、例えば、ホスゲン化ミキサーから下流の分離器に通じる配管全体にわたる総圧力降下として決定され得る。
実施形態によれば、ホスゲン化プロセスでは、通常操作は、最初により高い圧力降下のホスゲン化ミキサーを使用することを含み得、例えば、ホスゲン化ミキサーのアミン側の最初の圧力降下は、典型的なホスゲン化プロセスで見られるものよりも高くてもよい。最初により高い圧力降下のホスゲン化ミキサーは、溶媒中のアミン入口流用に比較的小さなジェットを備えてもよい。システムの定常状態操作の開始時に、最初により高い圧力降下がより高いエネルギーをミキサーに付与し、これにより混合の改善が可能になり、ユーティリティコストの低下、より良好な品質、および/またはより高い生成につながり得る。したがって、様々なパラメータの調整に依存するプロセス全体で、最初のより高い圧力降下をツールとして使用して、比較的一定の生成物品質および生成速度を維持することができる。続いて、ホスゲン化ミキサー内の圧力降下の減少が実現されると、そのような圧力降下を使用して、下流のファウリング圧力降下の増加を補償しながら、依然として比較的一定の生成物品質および生成速度を維持することができる。
さらに、通常操作中に、イソシアネート生成物流の所定の生成速度および生成物品質値を維持するために、溶媒中のアミン入口流におけるアミン濃度、およびホスゲン対アミン比(すなわち、PAR)値を調整してもよい。PAR値は、ホスゲン入口流の流量を調整すること、および/またはホスゲン化ミキサーに入るアミンの量を変えることによって変化させることができる。例えば、イソシアネートの生成プロセスにおけるホスゲン化ミキサー内のアミン側の圧力降下などの他のパラメータが変化していても、ホスゲン入口流の流量を変化させて生成品質を維持することができる。
最初により高い圧力降下のホスゲン化ミキサーの使用と組み合わせると、アミン/溶媒制御弁に起因する最初の圧力降下は、上記の典型的なホスゲン化プロセスに比べて低くなり得る。次いで、通常操作が進むにつれて、溶媒流量を減少させることによるアミン濃度の増加によって、溶媒中のアミン入口流の形成については、溶媒中のアミン入口流の組成を変化させることができる。溶媒中のアミン入口流の全体的な流量は同じに維持しても変化させてもよいが、ホスゲン化ミキサーに入る溶媒中のアミン入口流中のアミンの全体的な濃度は増加させる。例示的な実施形態では、溶媒中のアミン入口流の組成は、溶媒の量を減少させ、アミン濃度を増加させる場合(例えば、システムファウリングが増加する場合)、溶媒中のアミン流の全体的な流量を減少させることができるように調整され得る。別の例示的な実施形態では、溶媒中のアミン流の全体的な流量は変化しない。溶媒中のアミン入口流のアミン濃度を増加させる場合、ホスゲンの流量は同じであっても変化させてもよい。
したがって、ホスゲン化ミキサー下流の配管内で進行性のファウリングが発生している場合でも、最初により高い圧力降下のホスゲン化ミキサー、より高いアミン濃度、およびより高いPAR値の特定の組み合わせにより、イソシアネート生成プラントは比較的一定の生成速度および生成物品質値を維持することが可能であり得る。言い換えれば、実施形態は、システム内で進行性のファウリングが発生している間、関連する一定の生成速度および生成物品質値を維持しようとしながら、エネルギー節約を最大化するためのシステム、プロセス、および手順に関する。
ホスゲン化ミキサー
ホスゲン化ミキサーとして使用可能なスタティックミキサーは、その中に2つの流体流を送達するための方法を組み込むように設計されてもよい。流れがスタティックホスゲン化ミキサーを通過する際、材料の連続的なブレンドが可能である。イソシアネート生成のためのプロセスにおいて、ホスゲン化ミキサーとして使用可能な例示的なスタティックミキサーを図2に示す。
具体的には、図2は、例示的なスタティックミキサー150の断面図を示している。スタティックミキサー150は、長手方向軸156に沿って第1の流れ105がそこを通過することを可能にする内部容積154を画定する、第1の流れ導管153を含む。第1の流れ105は、入口端部152からスタティックミキサー150に入り、内部容積154を通って出口端部158に向かって流れる。第1の流れ105は、ホスゲン入口流であり得る。
図2を参照すると、第1の流れ導管153は、入口端部152および出口端部158を含む。混合導管100は、第1の流れ導管153の入口端部152と出口端部158との間に連結されている。混合導管100は、混合導管100の中心軸103を取り囲む(例えば、囲い込む)側壁101を含む。混合導管100は、中心軸103が第1の流れ導管153の長手軸156と一致するように位置付けられてもよい。側壁101は、混合導管の内部容積107を画定し、これは、第1の流れ導管153の内部容積154と同軸であってもよい。複数のジェット開口部102は、側壁101を貫通して形成されて、混合導管100の内部容積107を混合導管100の外部に流体連通させる。
図2を参照すると、第2の流れ導管155は、第1の流れ導管153に取り付けられている。第2の流れ導管155は、第1の流れ導管153の入口端部152および出口端部158に連結され、混合導管100を取り囲む環状チャンバ159を画定する。環状チャンバ159は、第2の流れ104が複数のジェット開口部102を通って混合導管100の内部容積107に入り、第1の流れ105と混合することを可能にする。第2の流れ104は、溶媒中のアミン入口流であり得る。混合導管100は、第2の流れ104が混合導管100内の複数のジェット開口部102を介して第1の流れ105と混合するのを制限するように、第1の流れ導管153を第2の流れ導管155から隔離する。第2の流れ104は、環状チャンバ159への第2の流れ導管155の入口108でスタティックミキサー150に入り、次いで複数のジェット開口部102を通って混合導管100の内部容積107に入って第1の流れ105と混合する。混合された流れ157は、第1の流れ導管153の出口端部158を通ってスタティックミキサー150を出る。
ホスゲン化ミキサーとして使用可能な混合導管のパラメータおよび構造は、所望の混合結果を得るように設計することができる。例えば、ジェット開口部の数は、導管の直径およびジェット開口部の直径によって制限されるが、より高い圧力降下のスタティックミキサーを形成するには、ジェット開口部の総数または導管の直径を変化させずに、ジェット開口部の直径を減少させてもよい。米国特許公開第2015/0018575号で論じられているように、スタティックミキサーの混合導管は、2個以上のジェット開口部、22個以上のジェット開口部、22〜50個のジェット開口部などを含み得る。ジェット開口部の直径は、1mm〜10mm(例えば、2mm〜7mm、3mm〜5mmなど)であり得る。米国特許公開第2013/0176814号で論じられているように、スタティックミキサーの混合導管は、その内部容積に配置されている1つ以上の流れ障害物を含んでもよい。各流れ障害物は、関連するジェット開口部の上流に位置合わせしてもよい。米国特許第7,901,128号で論じられているように、混合導管は、少なくとも1つのテーパー付きジェット開口部を有してもよい。混合導管は、プレートタイプの設計を使用して、流れに強い乱流を使用することを通じて混合を達成してもよい。スタティックミキサー要素としては、金属または様々なプラスチックで作製された一連の混合要素(例えば、動かないバッフル)を挙げることができる。
イソシアネートの調製
様々なイソシアネートの生成は、ホスゲン化段階を含む。例示的なイソシアネートとしては、ジフェニルメチレンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびキシレンジイソシアネート(XDI)などのポリイソシアネート、ならびにそれらの修飾物などのポリイソシアネートが挙げられる。
イソシアネートの生成では、溶媒中のアミン流は、1種以上のアミンを含むアミン成分と、1種以上の溶媒を含む溶媒成分とを含む。アミン成分としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ステアリルアミン、フェニルアミン、p−トルイジン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,4−ジアミノベンゼン、2、4−および/または2,6−ジアミノトルエン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジフェニルメタン系アルキル置換ジアミン、アニリン−ホルムアルデヒド縮合による既知の様式によって得られるようなジフェニルメタン系ポリアミン混合物、p−キシレンジアミン、過水素化2,4−ジアミノトルエン、過水素化2,6−ジアミノトルエン、2,2’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン、リジンのエチルエステル、リジンのアミノエチルエステル、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、1,6,11−トリアミノウンデカン、ならびにそれらの混合物から選択される1つ以上を挙げることができる。
溶媒成分としては、不活性溶媒、例えば、非ハロゲン化芳香族炭化水素(トルエンおよび/またはキシレンなど)、ハロゲン化芳香族炭化水素(塩素化芳香族炭化水素など)、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を挙げることができる。例示的なハロゲン化芳香族炭化水素としては、クロロベンゼンおよびクロロエチベンゼン(chloroethybenzene)が挙げられ、その両方としては様々な構造が挙げられ、例としては、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、およびトリクロロベンゼンが挙げられる。
例示的な実施形態による液相ホスゲン化プロセスは、PMDI生成のためのプロセスで使用可能であり得る。プロセスは、酸触媒の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させることによって、メチレンジフェニルジアミンおよびジフェニルメタン系ポリアミンを形成することと、メチレンジフェニルジアミンおよびジフェニルメタン系ポリアミンをホスゲン化して、MDI異性体とポリマーMDIとの混合物を生成することと、を含み得、その後、例えば、米国特許第9,090,540号で論じられているように、混合物を様々な画分に分離してもよい。形成されるメチレンジフェニルジアミンおよびジフェニルメタン系ポリアミンは、溶媒中のアミン入口流中でアミン成分を形成し得る。
例示的な実施形態では、PMDIベースの生成物を生成するためのプロセス中に、アニリンをホルムアルデヒドと反応させてメチレンジフェニルジアミン(およびジフェニルメタン系ポリアミン)を形成すると、少なくとも以下に示すような縮合反応が実現され得る:
ジフェニルメタン系の好適なポリアミン混合物は、20:1〜1.6:1のモル量比、および20:1〜1:1のアニリン対酸触媒の定量比でのアニリンとホルムアルデヒドとの縮合によって得ることができる。ホルムアルデヒドは、水溶液の総重量に基づいて、1重量%〜95重量%の含水量を有する水溶液として使用してもよい。メチレン基を供給する他の化合物(例えば、ポリオキシメチレングリコール、パラ−ホルムアルデヒド、および/またはトリオキサン)を、単独でまたはホルムアルデヒドと組み合わせて使用してもよい。強酸、具体的には無機酸は、アニリンとホルムアルデヒドとの反応の酸触媒として好適である。好適な酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、およびメタンスルホン酸が挙げられる。有機および無機イオン交換体、酸性シリコン/アルミニウム混合酸化物、および酸性ゼオライトなどの固体酸触媒もまた使用してもよい。
例示的な実施形態では、アニリンと酸触媒とが、まず一緒に混合される。次いで、アニリンと酸触媒との混合物は、20℃〜100℃の温度でホルムアルデヒドと混合され、予備反応が実行される。他の例示的な実施形態では、酸触媒の不在下で、5℃〜100℃の温度でまずアニリンとホルムアルデヒドとを混合する。そのような例では、アニリンとホルムアルデヒドとの縮合生成物(すなわちアミナール)が形成される。アミナール形成の完了時に、反応混合物中に存在する水は、相分離によって、または蒸留などの他の好適な手順によって除去してもよい。次いで、縮合生成物を酸触媒と混合し、20℃〜100℃の温度で予備反応を実行する。次いで、いずれの場合でも、反応混合物の温度は、段階的または連続的に、100℃〜250℃の温度に上げられる。次いで、反応混合物を、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)などの塩基で中和してもよい。
次いで、上記のプロセスで得られる生成物は、PMDIを形成するためのプロセスで使用されるアミン流を形成する。具体的には、ホスゲン化段階では、少なくともポリマージフェニルメタンジアミン(PMDAとも呼ばれる)は、以下に示すようにホスゲンと反応させてもよい。
例示的な実施形態によれば、上記のホスゲン化プロセスは、ホスゲン化ミキサー内で実施することができる。ホスゲン化プロセスは、50℃〜250℃の温度で実行することができる。ホスゲン化プロセスは、周囲圧力〜50バールの圧力で実行することができる。
ホスゲン化プロセスの後、得られた混合物を分離器に供給してもよく、その間に過剰なホスゲン、不活性有機溶媒、形成された塩化水素、および/またはそれらの混合物を反応混合物から分離する。分離段階の後、プロセスは、PMDIと称されるイソシアネート生成物をもたらし得るが、このPMDIはあるレベルの不純物を含み得る。そのような生成物の混合物としては、MDIの3つの異性体、すなわち4,4’−MDI、2,4’−MDI、および2,2’−MDIを挙げることができる。いくつかの四量体および/またはより高い付加物もまた、形成され得る。このイソシアネート生成物は最終生成物と称され得、混合物の生成物品質を評価することができる。生成速度は、イソシアネート生成物の生産量に基づいてもよい。
イソシアネート生成物はさらに加工されて、精製されたイソシアネート生成物を形成し得、続く精製プロセスを介してPMDIから回収され得る。精製プロセスとしては、蒸留、抽出、または結晶化などの1つ以上の分離方法を挙げることができる。使用される精製プロセスに応じて、モノマーMDIなど、異なるタイプのMDIベースの最終生成物を形成することができる。粗ジイソシアネートおよびポリイソシアネートの例示的な分離は、様々な技術を使用して実施することができ、例えば、例示的な分離技術は、米国特許第9,090,540号で論じられている。例示的な実施形態では、分離プロセスは、1つ以上の蒸留カラムを含み得、分離後に残った有機相を含有する生成物は、洗浄手順を施されて精製有機相を形成し得る。
生成システム
実施形態によれば、イソシアネート生成のためのシステムでは、ホスゲン化ミキサーの機械的エネルギーは、溶媒中のアミン流の圧力降下に依存することによって、溶媒中のアミン流に関連する上流制御弁からミキサーにシフトされる。換言すれば、機械的エネルギーが上流制御値で損なわれることを防止し、代わりにホスゲン化ミキサーに移動してエネルギーを最大化して、溶媒中のアミン流とホスゲン流とを混合することができる。そのため、定常状態操作中に、比較的一定の生成速度(すなわち、指定の生成速度の±5%以内)、および比較的一定の生成物品質値(すなわち、指定の生成物品質値の±10%以内)を維持するために、ホスゲン化ミキサー内の混合速度に対する上流制御弁への依存は減少するが、圧力降下への依存は増加する。溶媒中のアミン入口流からのアミンと、ホスゲン入口流からのホスゲンとの混合速度は、生成物品質に関連し得る。例えば、望ましくない副生成物の形成は、混合速度が増加するにつれて減少し得る。
必要に応じて、溶媒中のアミン流のアミン濃度およびPAR値も調整される。さらに、ホスゲン化ミキサー内のアミン側の圧力降下の減少、およびファウリング圧力降下の増加が実現すると、圧力降下における2つの変化が互いに補償され、システムの圧力降下をほぼ一定に維持することを可能にする。このシステムの圧力降下により、システムのクリーニングが必要になるまでより長い期間操作が可能になり得る。さらに、設計などにより、プラントによるエネルギー使用量の低下を可能にすることができる。例えば、ある特定のPAR値でプラントを操作すると、ホスゲンおよび/または塩化水素のエネルギー集約的な蒸留を低下させることができる。
定常状態操作中、進行性のファウリング(例えば、ホスゲン化ミキサーの出口に接続されている配管内の)に起因する圧力降下の増加は、第1の期間T 1 と、第1の期間T 1 に続く第2の期間T 2 とに分割される期間にわたる、ホスゲン化ミキサー内の圧力降下の減少によって補償される。さらに、第1の期間T 1 中の溶媒中のアミン流内の1種以上のアミンのアミン濃度は、期間T 2 中よりも低い。また、期間T 1 中のホスゲン化ミキサー内のPAR値は、期間T 2 中よりも低い。全体的な操作期間を、期間T 1 からT n (nが2〜1000の整数(例えば、2〜500、2〜100、2〜50、2〜20など)である)に分割することができるようにして、アミン濃度およびPAR値の変更を、複数の段階で行ってもよい。続く各期間T n−1 〜T n では、アミン濃度およびPAR値の両方を、例えば、両方とも個別の増分で増加させるなどして、変化させる。例えば、アミン濃度およびPAR値は、まず期間T n−1 の開始時に増加させ、次いで期間T n の開始時に2回目の増加を行う。全体的な操作期間は、T 1 〜T n の期間に分割することができ、クリーニング操作が望ましいと決定されるまでの、システムの完全な定常状態操作時間を定めることができる。
ホスゲン化ミキサー内で実現されるアミン側の圧力降下は、様々な要因に依存し得る。例示的な実施形態では、期間T 1 〜T n に分割される操作期間にわたって実現されるアミン側の圧力降下は、1バール〜50バール(例えば、1バール〜20バール、1バール〜10バール、1バール〜5バールなど)であり得る。
溶媒中のアミン流のアミン濃度の変化に言及するとき、濃度は、0.2%〜3.0%の範囲(例えば、0.5%〜2.0%、0.5%〜1.5%、0.8%〜1.2%など)において個々の増分で増加させてもよい。各々の続く個々の増分値は、例えば依然として0.2%〜2.0%の範囲内であるが、以前の値と同じでも異なっていてもよい。例えば、ファウリングに対処するために洗浄操作が求められると決定されるまで、アミン濃度の続く各変化において、(実際のアミン濃度の増加として)0.2%〜2.0%の増加であり得る。そのような洗浄操作の後、システム操作は、最初のアミン濃度に戻り、ファウリングが再び発生するにつれて増分で増加させながら進めることができる。濃度とは、質量パーセント、すなわちアミンの質量パーセントを意味する。アミン濃度を変化させるには、溶媒中のアミン入口流を形成するための溶媒流量を、アミン濃度の対応する変化を可能にする速度で変化させる。溶媒流量の変化量は、溶媒中のアミン流の全体的な流量に依存する。
PAR値の変化に言及するとき、値は、0.05〜1.00の範囲(例えば、0.05〜0.50、0.05〜0.30、0.05〜0.25など)の個々の増分で増加させてもよい。各々の続く個々の増分値は、例えば依然として0.05〜0.50の範囲内であるが、以前の値と同じでも異なっていてもよい。例えば、ファウリングに対処するために洗浄操作が求められると決定されるまで、PAR値の続く各変化は、0.05〜0.50の増加であり得る。そのような洗浄操作の後、システム操作は、最初のPAR値に戻り、ファウリングが再び発生するにつれて増分で増加させながら進めることができる。PAR値を変化させるには、ホスゲン入口流の流量を増加させて、PAR値の対応する変化を可能にする。ホスゲン入口流の流量の変化量は、ホスゲン流と溶媒中のアミン流との全体的な流量に依存する。
実施例は、実施形態によるホスゲン化プロセスおよびホスゲン化ミキサーを使用してイソシアネートを調製することに基づいており、図3および図4に関して論じる。実施例は、イソシアネートを調製するためのプロセスにおける、(1)品質値、溶媒中のアミン流のアミン濃度(本明細書ではPMDA濃度とも称される)、およびPAR値との関係、ならびに(2)最初により高い圧力降下とPAR値との関係、の両方を考慮して調製する。実施例では、得られる最終生成物は、不純物を伴うPMDIを含み、PMDI生成物と称され得る。最終生成物は、過剰な未反応ホスゲン、HCl、および/または溶媒が分離されたイソシアネートベースの生成物であり、ホスゲン化ミキサーが存在する生成物とは区別される。
実施例に関して、図3は、変動するPMDA濃度およびPAR値に対する品質値を示すグラフ表示を示している。図3の水平二重線は、比較的一定の品質値および比較的一定の生成速度をもたらすPMDA濃度およびPAR値について、操作条件の望ましい変化を表す。図4は、図3の水平二重線に沿って取られた、定常状態での圧力降下(ホスゲン化ミキサーのアミン側圧力降下とも称される)およびPAR変動値のグラフ表示を示している。
アミン側の圧力降下は、図4で下向きの実線で表されているが、これは溶媒中のアミン入口流の溶媒流量を減らすことによって減少し、溶媒中入口流のアミン濃度の増加につながる。溶媒の流量を減少させることによってアミン濃度を相対的に増加させるように、溶媒中のアミン入口流の溶媒の量は、正味のPMDAの流れを変化させずに低下される。アミン(PMDA)濃度は、溶媒中のアミン流のアミンの質量分率である。圧力降下は、第1の点と第2の点との差として測定する。図1を参照すると、第1の点は、第2の圧力点P2でホスゲン化ミキサーの上流の溶媒中のアミン入口流で測定され、第2の点は、第5の圧力点P5でホスゲン化ミキサーの下流で測定される。
ファウリング圧力降下は、ホスゲン化ミキサーのアミン側の圧力に関連する圧力降下とは別である。ファウリング圧力降下は、第2の点と第3の点との差として測定される。図1を参照すると、第2の点は、第5の圧力点P5でホスゲン化ミキサーの下流で測定され、第3の点は第6の圧力点P6で分離器内で測定される。イソシアネート生成システムは本来、数週間の期間にわたって少なくとも下流の配管が、ファウリングと称される固形物を収集するような、固有のファウリングプロセスである。ファウリングは、配管の直径を縮小し、表面特性を変化させるため、その中の混合物の速度が増し、その配管内の圧力降下が増加する。ファウリング圧力降下は、ホスゲン化ミキサーを下流の分離器に接続するパイプ全体にわたって測定することができる。システム内の総圧力降下は、圧力降下(すなわち、アミン側の圧力降下)と下流のファウリング圧力降下との差として計算することができる。
図4の上向きの破線は、PAR値であり、これは、ホスゲン流量を増加させることによって増加され、比較的一定の品質値を維持するために上げられる。品質値は、ポリマーメチレンジフェニルジイソシアネート(PMDI)などのイソシアネートを形成するプロセスで形成されるある特定の副生成物へのイソシアネート基の損失に関連し、得られる生成物の純度レベルを説明するための基礎として使用することができる。図3の品質値は、最終生成物中のウラトミンおよび/またはウレトンジオンベースの副生成物を組み合わせた総重量の重量割合として表される。品質値は、0重量%〜30.0重量%の範囲であり得る。図3に関して、5.0重量%〜7.0重量%の品質値範囲が提供されている。さらに、図3に示すように、品質値は、溶媒中のアミン入口流のアミン濃度およびPAR値を変化させることによって調整することができる。アミン濃度は、溶媒中のアミン入口流の溶媒流量を減少させることによって増加させ、逆に溶媒流量を増加させることによってアミン濃度を減少させることができる。PAR値は、ホスゲン入口流の流量を増加させることによって増加され、逆にホスゲン入口流の流量を減少させることによってPAR値を減少させることができる。
実施例では、パイロットスケールのイソシアネート生成システムを操作して、最終生成物の0.53kg/秒の比較的一定の生成速度、およびおよそ5.9の比較的一定の品質値の両方を維持している。最終生成物を作製するための定常状態操作としては、およそ0.4kg/秒の流量の最初の溶媒中アミン入口流が挙げられる。最初のアミン濃度(すなわち、PMDA濃度)は、溶媒中のアミン入口流の総重量に基づいて28重量%である。ホスゲン入口流は、0.2〜0.5kg/秒で変動する流量、およびホスゲン流の総重量に基づいて99重量%以上のホスゲン濃度を有する)。実施例は、およそ3.9mmの単一のジェット開口部の直径に起因して、比較的より高いレベルで維持されている最初により高い圧力降下を利用している。ホスゲン化ミキサーでは、アミン側から利用可能な圧力降下が、ホスゲンとアミンとの流れを混合するエネルギーを付与する。さらに、定常状態操作中は、圧力降下が減少して、ファウリング圧力降下を補償する。実施例における目標は、総圧力降下を比較的一定に維持することである。
実施例については、米国特許第7,901,128号で論じられているように、溶媒中のアミン流およびホスゲン流をせん断混合装置で混合する。実施形態は、例えば、さらにより高い最初の圧力降下および/またはエネルギー節約を達成することを目的とする他の混合装置に基づいてもよい。ホスゲン化ミキサーおよび配管においてファウリングが発生した場合アミン側で利用可能な最大圧力降下を利用するために、パイロットプラントは、まずPMDA濃度を増加させて(溶媒流量を減少させることによって)、次いで1分間以内にPAR値を増加させる(ホスゲン入口流の流量を増加させることによって)ことによって操作する。例示的な実施形態では、まずPAR値を変化させてもよく、PMDA濃度もしくはPAR値のそれぞれの他方を変化させる数分から1時間前に、PMDA濃度もしくはPARを変化させてもよく、ならびに/またはPMDA濃度およびPAR値を同時に変化させてもよい。この方策を使用すると、一定の生成速度および品質値の両方を維持することができる。
実施例に関して、およそ28%〜32%の範囲の例示的なPMDA濃度、およそ1.8〜3.0の範囲のPAR値、および9.0バール〜7.1バールの圧力降下で、例示的なパイロットプラントを操作することが可能である。PMDA濃度、PAR値、および圧力降下に関する実際の操作範囲は、フルスケールの生成プラントでは変動し得る。
図3から導き出すことができるように、比較的一定の品質値を維持するには、図3に示すグラフ表示で水平に移動するようにプラント操作を修正する必要がある。例えば、システムがクリーンなとき、およそ5.9の品質値を達成するには、PMDA濃度をおよそ28%に設定してもよく、PAR値をおよそ1.9に設定してもよい。ファウリングが発生するにつれて、およそ5.9の品質値を維持するには、PMDA濃度をおよそ29%に増加させてもよく、PAR値をおよそ2.0に増加させてもよい。ファウリングが実質的に増加した後、およそ5.9の品質値を維持することが依然として可能でありながら、PMDA濃度をおよそ32%に増加させてもよく、PAR値をおよそ3.0に増加させてもよいことがわかる。図4を参照すると、そのような操作手順を使用すると、続くPMDA濃度の増加によって、ホスゲン化ミキサー内の圧力降下を減少させて、下流の配管内のファウリング圧力降下の増加を補償することができる。さらに、比較的一定の生成速度を維持するには、アミン濃度および関連する圧力降下を変動させながら、圧力降下が減少するにつれてPAR値を増加させる。
したがって、下流の配管がファウリングし始めると、PMDA濃度を増加させて、ファウリングに起因するシステム内の圧力降下の増加を補償し、所定の品質値を維持することができる。さらに、PAR値を増加させると、所定の生成速度が維持されるであろう。PMDA濃度とPAR値とのこの組み合わせによって、ファウリングが増加していても、プラントを比較的一定の生成品質および生成速度で稼働させることが可能になるだろう。