JP2020508285A - 遊離脂肪酸としての高純度のエイコサペンタエン酸は、潰瘍性大腸炎患者の便中カルプロテクチンレベルを減少させ、臨床的再発を防止する - Google Patents
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Abstract
【課題】潰瘍性大腸炎(UC)患者の便中カルプロテクチンレベルを減少させ、臨床的再発を防止する方法に関する。【解決手段】本発明は、UC患者において、便中カルプロテクチンレベルを減少させ、臨床的再発の危険性を減少させるための、高純度の、遊離脂肪酸としてのエイコサペンタエン酸(EPA−FFA)の有効量を投与する方法に関する。遊離脂肪酸形態のエイコサペンタエン酸(EPA−FFA)は、少なくとも95%の純度を有し、更に好ましくは少なくとも99%の純度を有する。【選択図】図1
Description
関連出願の相互参照
本出願は、参照としてその全体が本明細書に援用される、2017年2月9日出願の米国仮特許出願第62/456,816号の優先権を主張する。
本出願は、参照としてその全体が本明細書に援用される、2017年2月9日出願の米国仮特許出願第62/456,816号の優先権を主張する。
技術分野
本発明は、潰瘍性大腸炎の被験者における糞便カルプロテクチンレベルおよび再発を減少させるための、高純度の、遊離脂肪酸としてのエイコサペンタエン酸(EPA−FFA)の使用に関する。
本発明は、潰瘍性大腸炎の被験者における糞便カルプロテクチンレベルおよび再発を減少させるための、高純度の、遊離脂肪酸としてのエイコサペンタエン酸(EPA−FFA)の使用に関する。
潰瘍性大腸炎(UC)とは、活動期と寛解期が交替で現れることを特徴とする、大腸に影響を及ぼす慢性の炎症状態である1。臨床活性に先立って、進行性の無症候粘膜炎症がしばしば生じる。前臨床状態の効果的な治療は臨床的再発を予防する場合もあり、UC管理において重要な役割を演じる可能性がある。
36キロダルトンのカルシウム結合及び亜鉛結合蛋白質である便中カルプロテクチン(FC)は、顆粒球中の総細胞質蛋白量の60%までを占める。FCは、最高7日間糞便中で安定であり、顆粒球の便中排泄と高い相関関係を有しており、炎症性腸疾患(IBD)患者における粘膜炎症の有用なマーカーでもある2。特に、UC患者においては、150μg/gを超えるFCレベルは、内視鏡的活性3および組織学的活性4と関連しており、臨床的再発を予想するのに有用である5〜7。
長鎖食用n−3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)、特にエイコサペンタエン酸(EPA、n―3系魚油の主要成分)は、いくつかの慢性炎症疾患に有益である8。EPAは、免疫学的反応および炎症反応の調整に関係している。EPAは、n−6PUFAを置換することにより細胞膜組成を調節し、細胞シグナル伝達における脂質ラフト形成へ影響を及ぼし9、レゾルビン、ディフェンシン、マレシンなどの抗炎症仲介物質の生産をもたらす8。
実験的証拠は、炎症性腸疾患(IBD)におけるn−3PUFAの役割の生物学的蓋然性を暗に示してはいるが、IBDにおけるn−3PUFA効果の臨床データは、未だに論争の的となっており、相反している(クローン病(CD)に関しては特にそうである)10〜12。特に、最近の疫学研究は、n−3PUFAがUCの進行に対して保護を提供し得ることを示唆しているが13〜15、結果は矛盾している。
従って、インビボでの安定性および純度が更に高く、効力および活性も更に高いオメガ3PUFAの必要性が求められている。特に、潰瘍性大腸炎の被験者における便中カルプロテクチンレベルおよび再発を減少させる能力を有する、遊離脂肪酸形態の単離/精製オメガ3PUFA使用が求められている。
本発明は、便中カルプロテクチンレベルが150μg/g以上として定義される臨床的再発の危険性のある無症候性のUC患者グループにおいて、便中カルプロテクチンレベルを減少させ再発を予防する面での、高純度のエイコサペンタエン酸(遊離脂肪酸として)(EPA−FFA)の効果を示すことに関する。遊離脂肪酸としてのエイコサペンタエン酸は、少なくとも90%の純度を有することが好ましく、少なくとも95%であることが更に好ましく、少なくとも99%であることが最も好ましい。
1つの態様において、本発明は、6か月期間中に、便中カルプロテクチンレベルを150μg/g以下に減少させる、更に好ましくは糞便1g当たり110ug以下に減少させる、最も好ましくはFCを約100μg/g以上減少させるのに効果的な量で、少なくとも90%の純度、更に好ましくは少なくとも95%の純度、最も好ましくは少なくとも99%の純度を有するEPA−FFAを潰瘍性大腸炎の被験者に投与することにより、該被験者における便中カルプロテクチンレベルおよび再発を減少させる方法を提供する。重要な点であるが、本発明は、結果が示すように、高純度のEPA−FFAを6か月間投与することにより、FCを少なくとも100μg/g減少させることを証明している。精製されたEPA−FFAは、薬学的に許容されるキャリアと一緒に、またはそれなしで投与できる。
別の態様において、本発明は、6か月期間中に、便中カルプロテクチンレベルを糞便1g当たり150μg以下に減少させる、更に好ましくは110ug以下に減少させる、最も好ましくは85ug以下に減少させるのに効果的な治療量で、少なくとも90%の純度、更に好ましくは少なくとも95%の純度、最も好ましくは少なくとも99%の純度を有するEPA−FFAを、単独で、またはUCの治療に使用される別の治療剤と組み合わせて、潰瘍性大腸炎の被験者に投与することにより、該被験者における便中カルプロテクチンレベルおよび再発を減少させる方法を提供する。EPA−FFAと組み合わせてもよい治療剤には、スルファサラジン、メサラミン、オルサラジン、バルサラジドなどのアミノサリチル酸(aminosalicylates)(5−ASA)、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ブデソニドなどのコルチコステロイド、メトロニダゾール、アンピシリン、シプロフロキサシンなどの抗生物質、および抗体などの生物学的治療剤が含まれる。
更に別の態様において、本発明は、便中カルプロテクチンレベルを糞便1g当たり150μg以下に減少させる、更に好ましくは110ug以下に減少させるのに効果的な治療量の、少なくとも90%の純度、更に好ましくは少なくとも95%の純度、最も好ましくは少なくとも99%の純度を有するEPA−FFAを、単独で、またはUCの治療に使用される別の治療剤と組み合わせて有している組成物を提供する。EPA−FFAと組み合わせてもよい治療剤には、スルファサラジン、メサラミン、オルサラジン、バルサラジドなどのアミノサリチル酸(5−ASA)、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ブデソニドなどのコルチコステロイド、メトロニダゾール、アンピシリン、シプロフロキサシンなどの抗生物質、および抗体などの生物学的治療剤が含まれる。
更に別の態様において、本発明は、便中カルプロテクチンレベルを糞便1g当たり150μg以下に減少させる、更に好ましくは110ug以下に減少させるのに効果的な治療量の、少なくとも90%の純度、更に好ましくは少なくとも95%の純度、最も好ましくは少なくとも99%の純度を有するEPA−FFAを含有する組成物の使用を提供する。治療量は、一日当たり約250mgから一日当たり4gが好ましく、一日当たり約1000mgから2gが更に好ましい。加えて、EPA−FFAは、スルファサラジン、メサラミン、オルサラジン、バルサラジドなどのアミノサリチル酸(5−ASA)、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ブデソニドなどのコルチコステロイド、メトロニダゾール、アンピシリン、シプロフロキサシンなどの抗生物質、および抗体などの生物学的治療剤と組み合わせてもよい。
別の態様において、本発明は、高純度のEPA−FFAを投与する前に約150μg/g超から約200μg/gの便中カルプロテクチン(FC)レベルを有する患者で測定されるFC量と比較して、6か月期間中に、FC量を約100μg/g以上減少させる方法を提供する。EPA−FFAは、少なくとも90%の純度、更に好ましくは少なくとも95%の純度、最も好ましくは少なくとも99%の純度を有し、一日当たり約250mgから一日当たり4gの治療量、更に好ましくは一日当たり約1000mgから2gの治療量である。
更に、本発明は、高純度のEPA−FFAを投与する前に約150μg/g超から約200μg/gの便中カルプロテクチン(FC)レベルを有する患者で測定されるFC量と比較して、6か月期間中に、FC量を約100μg/g以上減少させる高純度のEPA−FFAの使用を提供する。EPA−FFAは、少なくとも90%の純度、更に好ましくは少なくとも95%の純度、最も好ましくは少なくとも99%の純度を有し、一日当たり約250mgから一日当たり4gの治療量、更に好ましくは一日当たり約1000mgから2gの治療量である。
本発明の上記長所および特徴並びに他の長所および特徴は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明により更に十分に記載される。
臨床的再発の防止は潰瘍性大腸炎(UC)患者の治療における主要な成果である。高レベルの便中カルプロテクチンは粘膜炎症を示し、UC患者の多くのグループにおいて臨床的再発の予想となることが示されている。最近の疫病研究は、n−3多価不飽和脂肪酸によりUCの進行が防止されることを示している。n−3魚油の主要成分であるエイコサペンタエン酸は、慢性炎症疾患において抗炎症特性を有することが証明されている。本発明の目標は、便中カルプロテクチンレベルが150μg/g以上で定義される臨床的再発の危険性のある無症候性のUC患者グループにおいて、便中カルプロテクチンレベルを減少させ再発を予防する面での、高純度のエイコサペンタエン酸(遊離脂肪酸として)(EPA−FFA)の効果を明確にすることであった。
本明細書に記載されるように、高純度EPA−FFAの投与により6か月間治療を受けた60人のUC患者におけるプラセボ対照試験によって、重篤な有害事象なしに便中カルプロテクチンレベルが減少することが見出された。従って、高純度EPA−FFAは治療患者の便中カルプロテクチンレベル(FC)の量の減少に有用であり、斯かる物質の使用は、高純度EPA−FFAを用いたUC患者において、効果試験を行うことが可能であり得、また、無症候寛解の特定も可能であり得る。
本発明は、EPA−FFAの投与が便中カルプロテクチンの予防または便中カルプロテクチンレベルの減少にインビボで有効であるという知見に基づいている。
本発明の医療用製剤、医薬品、または組成物を調製するのに使用されるEPA−FFAは、少なくとも90%の純度を有し、任意の他の多価不飽和脂肪酸は、最低限か、または薬学的に僅かな量しか含んでいないことが好ましい。95%超の純度が推奨され、任意の他の多価不飽和脂肪酸を実質的に含まない商業的に入手可能な最高グレードの素材(純度約99%)が最も好ましい。
従って、本発明の1つの態様によれば、遊離脂肪酸としての高純度エイコサペンタエン酸は、治療対象の被験者において便中カルプロテクチンを減少させるための医療用製剤または医薬品の調製に使用される。
EPAは、遊離脂肪酸として魚油、植物、または微生物中に見出され、あるいはアシルグリセロール、リン脂質、スルホリピド、または糖脂質などのコンジュゲートとして見出され、当業界で周知の種々の手段により抽出されてよい。斯かる手段には、メタノールやクロロホルムなどの有機溶媒による抽出、超音波処理、二酸化炭素などを使用する超臨界流体抽出、圧搾などの物理的手段、またはそれらの組み合わせが含まれる。必要であれば、水層を酸性化して負荷電部分をプロトン化し、それにより、有機層への目的産物の分配を増大させてもよい。抽出後、窒素流下に有機溶媒を蒸発させ除去してもよい。コンジュゲートとして単離される場合は、目的産物を酵素的または化学的に切断し、遊離脂肪酸またはより複雑性の減った目的コンジュゲートを放出させ、それを更なる操作の対象とすることにより、望ましい最終産物を製造してもよい。
更なる精製が必要な場合には標準的方法が使用できる。斯かる方法には、抽出、尿素処理、分別結晶化、HPLC、分別蒸留、シリカゲルクロマトグラフィー、高速遠心分離または蒸留、あるいは斯かる技術の組み合わせが含まれる。酸やアルケニル基などの反応基の保護は、アルキル化やヨウ素化などの周知の技術を用いて任意の工程で行ってよい。保護基は任意の工程で除去してよい。EPAを含む画分の精製は、初期エステル化、尿素処理、超臨界流体抽出、およびクロマトグラフィーを実施して遊離脂肪酸を単離することにより達成するのが望ましい。
トリグリセリドからEPAを単離するには、加水分解またはエステル交換により脂肪酸を遊離させて、精製を成功させる必要がある。精製は、分別蒸留、分子蒸留、クロマトグラフィーなどの技術で達成できる。特に望ましいクロマトグラフィー法では、欧州特許EP 0712 651などに記載されるように、超臨界流体を使用し、移動相として二酸化炭素が用いられる。斯かる技術を使用することにより、EPAを100%近くのレベルまで精製できることが見出された。実際的には、EPAはエチルエステルまたはメチルエステルとして精製し、それを加水分解することにより、遊離脂肪酸の形態へ戻してもよい。精製することにより、高度に濃縮された産物、最終産物には望ましくない他の脂肪酸を含まない産物を調製できる。加えて、他の化学物質、例えば、モノグリセリド、ジグリセリド、炭化水素、農薬残留物などが除去できる。毒素、嗜好性の悪さに寄与する化合物、または飽和脂肪酸などの望ましくない脂肪酸のレベルが実質的に減少しているので、高純度のEPAは人が消化するのに適している。遊離脂肪酸形態のEPAは、予め酵素変換する必要なく、消化管で容易に吸収できる。斯かる方法を使用することにより、約150kgの未精製EPAは、実質的に純粋なEPA−FFA(少なくとも純度90%)50kgに変換できる。
更なる精製が必要な場合には標準的方法が使用できる。斯かる方法には、抽出、尿素処理、分別結晶化、HPLC、分別蒸留、シリカゲルクロマトグラフィー、高速遠心分離または蒸留、あるいは斯かる技術の組み合わせが含まれる。酸やアルケニル基などの反応基の保護は、アルキル化やヨウ素化などの周知の技術を用いて任意の工程で行ってよい。保護基は任意の工程で除去してよい。EPAを含む画分の精製は、初期エステル化、尿素処理、超臨界流体抽出、およびクロマトグラフィーを実施して遊離脂肪酸を単離することにより達成するのが望ましい。
好ましいEPA遊離脂肪酸は、ALFA(商標)の商標名で商業的に入手可能(S.L.A. Pharma社、英国)である。このPUFAは遊離脂肪酸形態の99%純粋なEPAであり、小腸でpH5.5で内容物が確実に放出されるように設計されたpH依存性腸溶コーティングカプセル形態に製剤化できる。他の成分としては、AA(0.5%以下)および微量の他の脂肪酸が含まれる。斯かるEPA調製物の主な利点は、多くの魚油製品と比べて純度が高いこと、全身での生物利用能を最大化する遊離脂肪酸であること、500mgのカプセル入りなので投与量設定が容易であること、および消化管の副作用を最小化する遅延放出の特徴を有していることである。
純度99%のEPA−FFAは、一日当たり約250mgから4gの量で投与されるのが好ましく、一日当たり約1000mgから約2gの量であるのが更に好ましい。毎日投与されるのが好ましいが、投与量次第では、一日おき、一週間に一度、またはより長い期間に一度、約1か月から8か月投与し得る。特に、純度99%EPAのALFA(商標)カプセルの忍容性は素晴らしく、主に小腸でのEPAの送達は、他の魚油製剤を用いた以前の治療において妨げとなっていた不快な味や臭いを最大限抑えるものである。
EPA−FFAは、単独でまたはUCの治療に使用される別の治療剤と組み合わせて、複数の送達形式で製剤化してもよい。活性成分は、液体または固体組成物として経口で投与してもよい。経口投与に適した組成物には、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤、粉末などの固体形態、および液体、シロップ、エリクシル剤、懸濁物などの液状形態が含まれる。非経口投与に役立つ形態には、滅菌溶液、乳濁液、懸濁液などが含まれる。
固体組成物の形態は、固体キャリア、および香味剤、潤滑剤、溶解剤、懸濁剤、充填剤、滑剤、圧縮剤、結合剤、または錠剤崩壊剤として作用する1つ以上の物質を含んでもよいし、カプセル化用の素材を含んでもよい。粉末の場合、キャリアは、微粉化状態の活性成分と混合された微粉化状態の固体である。錠剤の場合、活性成分は、必要な圧縮特性を有するキャリアと適切な割合で混合され、望ましい形状およびサイズに成形される。適切な固体キャリアには、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、イオン交換樹脂などが含まれる。
溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、エリクシル剤、および加圧組成物を調製するのに、液体キャリアが使用される。活性成分は、水、有機溶媒、両者の混合物、または薬学的に許容されるオイルまたは脂質などの薬学的に許容される液体キャリアに溶解または懸濁してもよい。液体キャリアは、溶解剤、乳化剤、緩衝液、保存剤、甘味剤、香味剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘性調整剤、安定化剤、浸透圧調節剤などの他の適切な医薬品添加物を含んでもよい。経口投与および非経口投与用の液体キャリアの適切な例には、水(部分的には上記の添加物、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム液を含む)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)およびそれらの誘導体、並びにオイル(例えば、分留ココナッツオイルおよび落花生油)が含まれる。非経口投与に関しては、キャリアはオレイン酸エチルやミリスチン酸イソプロピルなどの油状エステルであってもよい。非経口投与用の滅菌液体組成物において、滅菌液体キャリアは有用である。加圧組成物用の液体キャリアは、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される推進薬であってよい。
本発明を詳細に記載したが、添付の請求項に規定された本発明の範囲を逸脱することなく、変更および変形が可能であることは明白である。更に、以下の実施例は非限定的な例として提供されている点は理解されるべきである。
本発明は、二重盲検、無作為、プラセボ対照試験を提供する。便中カルプロテクチンレベル150μg/g以上で、少なくとも試験前の3か月間安定した治療状態にある60人のUC患者を、6か月間、毎日2gのEPA−FFA(500mg徐放カプセル2用量、毎日2回)か、あるいはプラセボ(カプリン酸およびカプリル酸の500mg徐放カプセル2用量、毎日2回)を投与するため、1対1の割合で無作為化した。患者はベースラインにおいて全結腸内視鏡検査を受けた。便中カルプロテクチンレベル、臨床評価、および実験的評価を、ベースライン、3か月目および6か月目、または臨床的再発が生じた時点(部分的Mayoスコア2以上の増加を伴う症状および/または治療の変更が必要な症状の発生として定義された)で行った。再発を生じた患者は内視鏡評価を受けた。
コホート集団は、臨床的特性および人口学的特性の面で違いのないことが分かった。しかし、驚いたことに、便中カルプロテクチンレベルは、プラセボグループと比較して、EPA−FFAグループにおいて有意に減少した(p=0.004)。治療企図解析において、EPA−FFAグループの患者の76.7%およびプラセボグループの患者の50%が、6か月の治療で臨床的寛解を維持した(χ2、p=0.03)。二値ロジスティック回帰分析は、EPA−FFAが再発した患者数に影響を及ぼした唯一の要因であることを示した(HR0.30、95%CI0.10−0.92、p=0.03)。3か月目および6か月目の累積無再発生存率は、それぞれプラセボグループにおける80%および50%に対し、EPA−FFAグループにおいては、それぞれ86.7%および76.7%であった(ログランク試験、p=0.04)。両方の治療とも安全で忍容性良好であり、主な副作用は生じなかった。従って、驚いたことに並びに予期せぬことに、EPA−FFAは便中カルプロテクチンレベルを減少させること、並びにUC患者における無症候寛解の維持の面で安全かつ許容できる治療であることが見出された。
材料および方法
(試験デザインおよび患者)
適格な患者は、FCレベル150μg/g以上の定義による粘膜活性を有し、少なくとも過去3か月間に部分的Mayoスコア2未満で定義される安定な臨床的寛解にある16、臨床的基準、内視鏡的基準、および組織学的基準に基づいてUCの診断を受けた18歳以上の個人であった。過去3か月間変更のない、UC併用療法の使用(経口メサラジン、免疫調節剤、および生物学的治療剤など)は容認された。除外基準は、1)最近のステロイド使用(3か月未満)、局所メサラジン(3か月未満)、または他の実験的医薬品(3か月未満)、2)非ステロイド抗炎症剤および/または抗凝固剤の併用使用、3)直腸炎、4)妊娠または授乳、5)EPAまたはn−3PUFAへの既知のまたは疑わしい過敏症、および6)重度の併存疾患(重度の心肺疾患、肝疾患、腎疾患、神経障害、精神病、糖尿病、または出血性障害)である。患者全員が同意説明書を提出した。
(試験デザインおよび患者)
適格な患者は、FCレベル150μg/g以上の定義による粘膜活性を有し、少なくとも過去3か月間に部分的Mayoスコア2未満で定義される安定な臨床的寛解にある16、臨床的基準、内視鏡的基準、および組織学的基準に基づいてUCの診断を受けた18歳以上の個人であった。過去3か月間変更のない、UC併用療法の使用(経口メサラジン、免疫調節剤、および生物学的治療剤など)は容認された。除外基準は、1)最近のステロイド使用(3か月未満)、局所メサラジン(3か月未満)、または他の実験的医薬品(3か月未満)、2)非ステロイド抗炎症剤および/または抗凝固剤の併用使用、3)直腸炎、4)妊娠または授乳、5)EPAまたはn−3PUFAへの既知のまたは疑わしい過敏症、および6)重度の併存疾患(重度の心肺疾患、肝疾患、腎疾患、神経障害、精神病、糖尿病、または出血性障害)である。患者全員が同意説明書を提出した。
選択基準を満足させた患者は、C反応性蛋白(CRP)(通常の上限5mg/L)を含む血液検査およびベースラインで複数の生検を有する全結腸内視鏡検査を受けた。次に、彼らは、6か月間、一日当たり2gのEPA−FFA(2x500mgの胃耐性徐放性カプセル、毎日2回)または2gのプラセボ(2x500mgの、分画植物脂肪酸のトリグリセリドであるカプリン酸およびカプリル酸の胃耐性徐放性カプセル、毎日2回)を投与するため、1対1の割合で無作為化された。病院の治験薬サービスユニット(IDS)において、無作為化リストをコンピュータ作成したが、患者全員、調査担当者、および研究チーム全体が治療割り当てに関しては知らされていなかった。
主要評価項目は、6か月目にFCレベルのベースラインから100ポイントの減少(100μg/g以上)を達成した患者の割合であった。副次評価項目は、6か月目に、安定な部分的Mayoスコア2未満で定義される臨床的寛解の維持を治療の変更なしに達成した患者数であった。主要評価項目および副次評価項目を達成した患者数からなる総合評価項目も計算した。
3か月目および6か月目、または臨床的再発が生じた時点(部分的Mayoスコア2以上の増加を伴う症状および治療の変更が必要な症状の発生として定義される)において、臨床的評価、FC測定、および血液検査を繰り返した。治療の変更は、ステロイドおよび/または免疫抑制的な生物学的治療剤の導入により進行中の治療を拡大させるものとして定義された。臨床的再発を生じた患者だけが第二内視鏡評価を受けた。食習慣の変更(ビーガンまたは菜食主義者の食事への変更を含む)は、各試験来院の際に確認した。治療遵守はカプセル数によって評価した。容認可能なレベルの遵守は、処方されたカプセルの80〜100%が外来クリニックに返却されなかった場合に達成されたものと評価した。
(便中カルプロテクチン定量化)
便中カルプロテクチン分析は、スクリーニング段階、3か月目および6か月目、または臨床的再発が生じた時点(結腸内視鏡検査の24時間前)に行った。FCカットオフレベルである150μg/g以上を、内視鏡的活性および/または組織学的活性を示すもの、並びに以前証明されたように4−7、初期臨床的再発を示すものと考えられた。斯かる推定に基づき、FCの100ポイント低下(μg/g)は臨床的に意味のある変化と考えられる。
便中カルプロテクチン分析は、スクリーニング段階、3か月目および6か月目、または臨床的再発が生じた時点(結腸内視鏡検査の24時間前)に行った。FCカットオフレベルである150μg/g以上を、内視鏡的活性および/または組織学的活性を示すもの、並びに以前証明されたように4−7、初期臨床的再発を示すものと考えられた。斯かる推定に基づき、FCの100ポイント低下(μg/g)は臨床的に意味のある変化と考えられる。
(内視鏡評価および組織学的評価)
ベースライン時点および臨床的再発が生じた時点で、複数の大腸検査を伴う結腸内視鏡検査を行った。内視鏡的粘膜炎症のグレーディングをMaro内視鏡サブスコアに従って記録した16。内視鏡的活性は、Mayo内視鏡サブスコアがゼロを越える場合と定義した17。生検サンプルは、カットオフ値3.1以上を活性な組織学的炎症を示すものとして、Geboesグレーディングシステムに従って採点した18。
ベースライン時点および臨床的再発が生じた時点で、複数の大腸検査を伴う結腸内視鏡検査を行った。内視鏡的粘膜炎症のグレーディングをMaro内視鏡サブスコアに従って記録した16。内視鏡的活性は、Mayo内視鏡サブスコアがゼロを越える場合と定義した17。生検サンプルは、カットオフ値3.1以上を活性な組織学的炎症を示すものとして、Geboesグレーディングシステムに従って採点した18。
(便中カルプロテクチン定量化)
朝最初の便通における糞便サンプルを、分析を行う前の最高24時間、冷蔵庫に2〜8℃で保存した。FCレベルの定量化を、定量的酵素結合免疫吸着測定(Calprest、Eurospital社、トリエステ、イタリア)を用いて、製造元の指示に従って行った。既知の濃度のカルプロテクチンを用いた標準を参照として使用した。測定範囲は15〜3000μg/gであった。
朝最初の便通における糞便サンプルを、分析を行う前の最高24時間、冷蔵庫に2〜8℃で保存した。FCレベルの定量化を、定量的酵素結合免疫吸着測定(Calprest、Eurospital社、トリエステ、イタリア)を用いて、製造元の指示に従って行った。既知の濃度のカルプロテクチンを用いた標準を参照として使用した。測定範囲は15〜3000μg/gであった。
(内視鏡評価および組織学的評価)
生検が異なるレベルの活性を示した場合に、最高レベルの炎症を考慮した。評価対象の時点は、内視鏡検査官および病理学者には知らされなかった(ベースライン対再発)。
生検が異なるレベルの活性を示した場合に、最高レベルの炎症を考慮した。評価対象の時点は、内視鏡検査官および病理学者には知らされなかった(ベースライン対再発)。
(統計学的分析)
EPA−FFAグループの患者の少なくとも70%およびプラセボグループの患者の30%においてFCがベースラインから100ポイント減少した(40%の差)と仮定すると(有意水準5%、パワー80%、フィッシャーの正確検定(両側検定))、登録されるべき患者数は56人である。脱落率を7%と仮定すると、60人の患者を登録させる必要があった。治療のために無作為化され試験薬剤を少なくとも1用量投与された患者全員が治療企図(ITT)解析に含まれた。有害事象(AE)または他の理由で試験を中断した患者は、非応答者とみなした。各グループについて記述統計(標準偏差(SD)を有する平均値または四分位範囲(IQR)を有する中央値)が報告された。主要目的、副次目的、および総合目的を評価するのに、二値ロジスティック回帰分析を実行した。FCの正規分布が推定できなかったので、各時点におけるグループ間のFCレベルの差を比較するのにノンパラメトリックなマン・ホイットニーのU検定を使用し、3か月目および6か月目におけるベースラインからのFC変化を各グループ内で評価するのに、フリードマン検定による分散分析を使用した。フリードマン検定で有意に至る場合、事後ウィルコクソン符号順位検定(ボンフェローニ補正)を実行した。3か月目および6か月目において、各処置グループの無再発生存(RFS)を推定するのにカプランマイヤー法を用い、それらを比較するのにログランク検定を使用した。0.05未満のp値を有意と見なした。統計分析を行うのに、IBM SPSSバージョン23.0(シカゴ、イリノイ州、USA)を使用した。
EPA−FFAグループの患者の少なくとも70%およびプラセボグループの患者の30%においてFCがベースラインから100ポイント減少した(40%の差)と仮定すると(有意水準5%、パワー80%、フィッシャーの正確検定(両側検定))、登録されるべき患者数は56人である。脱落率を7%と仮定すると、60人の患者を登録させる必要があった。治療のために無作為化され試験薬剤を少なくとも1用量投与された患者全員が治療企図(ITT)解析に含まれた。有害事象(AE)または他の理由で試験を中断した患者は、非応答者とみなした。各グループについて記述統計(標準偏差(SD)を有する平均値または四分位範囲(IQR)を有する中央値)が報告された。主要目的、副次目的、および総合目的を評価するのに、二値ロジスティック回帰分析を実行した。FCの正規分布が推定できなかったので、各時点におけるグループ間のFCレベルの差を比較するのにノンパラメトリックなマン・ホイットニーのU検定を使用し、3か月目および6か月目におけるベースラインからのFC変化を各グループ内で評価するのに、フリードマン検定による分散分析を使用した。フリードマン検定で有意に至る場合、事後ウィルコクソン符号順位検定(ボンフェローニ補正)を実行した。3か月目および6か月目において、各処置グループの無再発生存(RFS)を推定するのにカプランマイヤー法を用い、それらを比較するのにログランク検定を使用した。0.05未満のp値を有意と見なした。統計分析を行うのに、IBM SPSSバージョン23.0(シカゴ、イリノイ州、USA)を使用した。
結果
(試験対象集団)
60人が選択基準を満足させ、登録され、ITT母集団に含まれ、そのうち30人が活性物質グループに、30人がプラセボグループに含まれた(図1)。2つの処置グループはベースライン人口学的特性および臨床的特性を十分満足させた(表1)。ベースラインの中央値FCレベルは、計画されたEPA−FFAグループおよび計画されたプラセボグループにおいて、それぞれ177(IQR161.5−210.3)μg/gおよび181(IQR154.5−208.3)であった。ベースラインの結腸内視鏡検査において、患者全員が1以下のMayo内視鏡サブスコアを示し、EPA−FFAグループおよびプラセボグループにおいて、それぞれ30人の患者中24人(80%)および30人の患者中19人(63.3%)がMayo内視鏡サブスコア1を示した。患者全員の組織学的Geboesスコアは3.1と4.1の間にあった。
(試験対象集団)
60人が選択基準を満足させ、登録され、ITT母集団に含まれ、そのうち30人が活性物質グループに、30人がプラセボグループに含まれた(図1)。2つの処置グループはベースライン人口学的特性および臨床的特性を十分満足させた(表1)。ベースラインの中央値FCレベルは、計画されたEPA−FFAグループおよび計画されたプラセボグループにおいて、それぞれ177(IQR161.5−210.3)μg/gおよび181(IQR154.5−208.3)であった。ベースラインの結腸内視鏡検査において、患者全員が1以下のMayo内視鏡サブスコアを示し、EPA−FFAグループおよびプラセボグループにおいて、それぞれ30人の患者中24人(80%)および30人の患者中19人(63.3%)がMayo内視鏡サブスコア1を示した。患者全員の組織学的Geboesスコアは3.1と4.1の間にあった。
(主要評価項目:6か月目におけるFCレベルの100ポイント減少)
3か月目に、プラセボグループの患者30人中4人(13.3%)に比べ、EPA−FFAグループの患者30人中16人(56.3%)がFCレベルの100ポイント減少を達成した(オッズ比(OR)7.59、95%信頼区間(CI)2.04−28.15、p=0.002)。6か月目に、EPA−FFAグループにおいて30人の患者中19人(63.3%)およびプラセボグループにおいて30人の患者中4人(13.3%)がFCレベルの100ポイント減少を達成した(OR12.0、95%CI3.12−46.24、p<0.001)(図2A)。
3か月目に、プラセボグループの患者30人中4人(13.3%)に比べ、EPA−FFAグループの患者30人中16人(56.3%)がFCレベルの100ポイント減少を達成した(オッズ比(OR)7.59、95%信頼区間(CI)2.04−28.15、p=0.002)。6か月目に、EPA−FFAグループにおいて30人の患者中19人(63.3%)およびプラセボグループにおいて30人の患者中4人(13.3%)がFCレベルの100ポイント減少を達成した(OR12.0、95%CI3.12−46.24、p<0.001)(図2A)。
(副次評価項目:6か月目における臨床的寛解の維持)
6か月目に、60人の患者中38人が臨床的寛解を維持した。内訳は、EPA−FFAグループにおいて30人の患者中23人(76.7%)、プラセボグループにおいて30人の患者中15人(50%)であった(OR3.29、95%CI1.08−9.95、p=0.035)(図2B)。3か月目および6か月目の累積RFSはEPA−FFAグループにおいてそれぞれ86.7%および76.7%、プラセボグループにおいてそれぞれ80%および50%であった(ログランクp=0.04)(図3)。
6か月目に、60人の患者中38人が臨床的寛解を維持した。内訳は、EPA−FFAグループにおいて30人の患者中23人(76.7%)、プラセボグループにおいて30人の患者中15人(50%)であった(OR3.29、95%CI1.08−9.95、p=0.035)(図2B)。3か月目および6か月目の累積RFSはEPA−FFAグループにおいてそれぞれ86.7%および76.7%、プラセボグループにおいてそれぞれ80%および50%であった(ログランクp=0.04)(図3)。
(総合評価項目:6か月目におけるFCレベルの100ポイント減少および臨床的寛解の維持)
6か月目に、EPA−FFAグループおよびプラセボグループにおいて、30人の患者中19人(63.3%)および30人の患者中4人(13.3%)が、それぞれFCレベルの100ポイント減少および臨床寛解の維持の両方を達成した(OR13、95%CI2.71−62.9、p=0.001)。
6か月目に、EPA−FFAグループおよびプラセボグループにおいて、30人の患者中19人(63.3%)および30人の患者中4人(13.3%)が、それぞれFCレベルの100ポイント減少および臨床寛解の維持の両方を達成した(OR13、95%CI2.71−62.9、p=0.001)。
(治療グループ間および治療グループ内のFCレベルの比較)
3つのFC測定が利用可能な副次評価項目を達成した患者(EPA−FFAおよびプラセボグループにおいて、それぞれn=23およびn=15)だけを考慮すると、3か月目および6か月目において、EPA−FFAグループの中央値FCレベルは、プラセボグループのそれよりも有意に低かった(マン・ホイットニー、それぞれp=0.002およびp<0.001)。3か月目および6か月目においてFCレベルがベースラインから有意に減少したのはEPA−FFAグループ内だけであった(フリードマン:χ2(df2)=24.02、p=0.001)。ボンフェローニ補正を伴う事後ウィルコクソン符号順位検定では、p<0.017(3比較)で有意水準が設定された。EPA−FFAグループにおいて、ベースライン、3か月目、および6か月目における中央値(IQR)FCレベルは、それぞれ176(160−207)μg/g、53(40−117)μg/g、および40(16−64)μg/gであった。ベースラインから3か月目(Z=−3.362、p=0.001)およびベースラインから6か月目(Z=−3.711、p<0.001)で中央値FCレベルにおいて統計学的に有意な減少があった。3か月目と6か月目の間のFCレベルには、統計学的に有意な減少は何ら観測されなかった(Z=−1.429、p=0.153)。しかし、プラセボグループ内では、ベースラインと、3か月目と、6か月目との間に、FCレベルにおいて、何ら統計学的に有意な減少は観測されなかった(フリードマン:χ2(df2)=3.73、p=0.155)(図4)。
3つのFC測定が利用可能な副次評価項目を達成した患者(EPA−FFAおよびプラセボグループにおいて、それぞれn=23およびn=15)だけを考慮すると、3か月目および6か月目において、EPA−FFAグループの中央値FCレベルは、プラセボグループのそれよりも有意に低かった(マン・ホイットニー、それぞれp=0.002およびp<0.001)。3か月目および6か月目においてFCレベルがベースラインから有意に減少したのはEPA−FFAグループ内だけであった(フリードマン:χ2(df2)=24.02、p=0.001)。ボンフェローニ補正を伴う事後ウィルコクソン符号順位検定では、p<0.017(3比較)で有意水準が設定された。EPA−FFAグループにおいて、ベースライン、3か月目、および6か月目における中央値(IQR)FCレベルは、それぞれ176(160−207)μg/g、53(40−117)μg/g、および40(16−64)μg/gであった。ベースラインから3か月目(Z=−3.362、p=0.001)およびベースラインから6か月目(Z=−3.711、p<0.001)で中央値FCレベルにおいて統計学的に有意な減少があった。3か月目と6か月目の間のFCレベルには、統計学的に有意な減少は何ら観測されなかった(Z=−1.429、p=0.153)。しかし、プラセボグループ内では、ベースラインと、3か月目と、6か月目との間に、FCレベルにおいて、何ら統計学的に有意な減少は観測されなかった(フリードマン:χ2(df2)=3.73、p=0.155)(図4)。
(治療グループ間のCRPレベルの比較)
中央値CRPレベルは、3か月目および6か月目において、2つの処置グループ間に有意な差は見られず(マン・ホイットニー、それぞれp=0.8およびp=0.55)、各グループ内においても、試験中に有意な変化はなかった(フリードマン:EPA−FFAおよびプラセボに関して、それぞれχ2(df2)=0.44、p=0.80およびχ2(df2)=0、p=1)。
中央値CRPレベルは、3か月目および6か月目において、2つの処置グループ間に有意な差は見られず(マン・ホイットニー、それぞれp=0.8およびp=0.55)、各グループ内においても、試験中に有意な変化はなかった(フリードマン:EPA−FFAおよびプラセボに関して、それぞれχ2(df2)=0.44、p=0.80およびχ2(df2)=0、p=1)。
(再発を経験した患者の特徴)
脱落した4人の患者(妊娠が1人、軽度のAE(有害事象)が3人)を除き、18人の患者が臨床的再発(平均フォローアップ4.78か月目、95%CI4.11−5.45)を経験した。再発当時の中央値(IQR)FCレベルは、プラセボグループ(n=13)よりもEPA−FFAグループ(n=5)において有意に低かった(それぞれ412μg/g(374−495)および535μg/g(476.5−738)(マン・ホイットニー、p=0.01)。再発時に、部分的Mayoスコア、Mayo内視鏡サブスコア、およびGeboesスコアにおいて、グループ間に差は観測されなかった(表2)。
脱落した4人の患者(妊娠が1人、軽度のAE(有害事象)が3人)を除き、18人の患者が臨床的再発(平均フォローアップ4.78か月目、95%CI4.11−5.45)を経験した。再発当時の中央値(IQR)FCレベルは、プラセボグループ(n=13)よりもEPA−FFAグループ(n=5)において有意に低かった(それぞれ412μg/g(374−495)および535μg/g(476.5−738)(マン・ホイットニー、p=0.01)。再発時に、部分的Mayoスコア、Mayo内視鏡サブスコア、およびGeboesスコアにおいて、グループ間に差は観測されなかった(表2)。
(安全性およびコンプライアンス)
軽度のAEの所為で3人の患者が試験を中断した。2人(各処置グループから1人ずつ)はそれぞれ処置開始から1か月目および3か月目に下痢を起こし、1人(EPA−FFAグループ)は3か月目に腫脹(bloating)が生じたからである。いずれの処置グループにおいても重篤なAEは報告されなかった。試験を完了した患者全員が、(処方されたカプセルの80〜100%が外来クリニックに返却せず)順守基準(adherence criteria)を満足させた。
軽度のAEの所為で3人の患者が試験を中断した。2人(各処置グループから1人ずつ)はそれぞれ処置開始から1か月目および3か月目に下痢を起こし、1人(EPA−FFAグループ)は3か月目に腫脹(bloating)が生じたからである。いずれの処置グループにおいても重篤なAEは報告されなかった。試験を完了した患者全員が、(処方されたカプセルの80〜100%が外来クリニックに返却せず)順守基準(adherence criteria)を満足させた。
考察
今回の試験は、FCレベルで表される粘膜炎症の減少およびUC患者における症状再発の防止における高純度EPA−FFAの有益効果を証明する最初の臨床試験である。選択された主要評価項目はFCの減少であるが、これは臨床的寛解を示す組織炎症減少のマーカーとして使用された。斯かる評価項目を有する最初の無作為プラセボ対照試験において、FCレベルの100ポイント減少の選択は恣意的ではあるが、150μg/g未満のFC値は組織学的に低い活性を示すことを、公表された文献データが示している4。
今回の試験は、FCレベルで表される粘膜炎症の減少およびUC患者における症状再発の防止における高純度EPA−FFAの有益効果を証明する最初の臨床試験である。選択された主要評価項目はFCの減少であるが、これは臨床的寛解を示す組織炎症減少のマーカーとして使用された。斯かる評価項目を有する最初の無作為プラセボ対照試験において、FCレベルの100ポイント減少の選択は恣意的ではあるが、150μg/g未満のFC値は組織学的に低い活性を示すことを、公表された文献データが示している4。
最近の疫学データは、UCの発生を減少させるn−3PUFAの潜在的有益効果を示している。Ananthakrishnanらは26年に亘る大規模なコホート研究においてUCの症例を先見の明を持って分析(看護師研究調査)し、高用量のn−3PUFAの摂取がUC発生のリスク減少に関連していることを見出した14。更に、n−3PUFAに対する、炎症誘発性のn−6PUFAの比が高い消費は、UCのリスク増大に関連している15、19。
しかし、魚油誘導体を用いた以前のUC臨床試験は様々な結果を報告している20、21。斯かる研究は、いくつかの有益効果(炎症の減少、ステロイド使用の必要性の減少など)を報告してはいるが、臨床的再発防止における魚油誘導体による明確な保護効果は証明できていない。斯かる様々な結果が生じる理由は、研究デザインの違い、使用されたn−3PUFAの処方、用量範囲の広さ、患者の遵守率の低さ、投与時間の不適正、プラセボとしてのオリーブ油または他のPUFAの使用などに関係しているのかもしれない22。
本研究において、活性n−3PUFAを、胃耐性カプセルを用いて、遊離脂肪酸(FFA)形態の2gの高純度EPA(95%超)として処方した。n−3PUFAのFFA形態は、エチルエステルおよびトリグリセリド製剤と比べ、製薬学的に最も好ましい特徴を提供することが以前の研究で証明されている23−25。更に、毎日2gのEPA−FFAを8週間摂取したIBD患者および健康なボランティアによる研究において、EPAは血漿リン脂質および赤血球細胞膜に一貫して取り入れられた。EPA−FFAは、ドコサペンタノン酸を通してドコサヘキサノン酸に迅速に変換される。EPAは、n−3PUFAの「ユニバーサルな供給源」と見なし得る26。
今回の試験は、予防治療の適格患者を選択するのに、迫り来る臨床的再発の代用としてFCを用いた最初の試験である。FCは粘膜炎症に関して非常に信頼できるマーカーであり、内視鏡スコア3、5、組織学的炎症段階4、および臨床的再発の予測能力5−7と高い相関関係を有していることが、以前公表された強力なデータにより既に確立されている。FCは、新しい治療への応答の予測因子として高品質で十分に設計された臨床試験にますます多く取り入れられている27。症状再発の高リスク患者を短期間で特定するための最適なFCカットオフレベルはまだ論争中の課題ではあるが、他の公表データ6、7に支持されるの以前の経験5は、150μg/gが斯かる目的のための妥当なカットオフ値であることを示している。再発のリスクを抱える患者を正確に特定するのは重要であろう。FCおよび本明細書記載の結果は、症状が起きる前に、斯かるサブグループの患者を特定および治療する方法を提供し、急性の病巣拡大エピソード、入院、毒性のより高い薬剤の必要性、患者の身体障害などを減少させるものである。(リスク患者特定の面で)最適でないマーカーによる負の影響は、EPIC 1試験28で確認されている。CD再発を予防するためのn−3PUFAの使用を調査する大規模試験では28、臨床的寛解にある363人のCD患者が含まれており、再発リスクの唯一の基準として、以前の寛解期間(3か月と12か月の間)が用いられた29。1年間のフォローアップ後の結果は、同程度の低い率の再発を示していた(活性物質グループ31.6%、プラセボグループ35.7%)。斯かる失敗の理由は、再発の高リスクを抱える患者を特定するための基準レベルが低かったのかもしれない。試験登録時における、CD用の信頼のおける炎症マーカー(CRPなど)を使用すれば、再発の高リスクを抱える患者をより良く分類できたかもしれない。
粘膜/組織学的炎症はUCの悪化経過の予測因子であるが30、低レベルのFCは継続的な臨床的寛解を予測するものである31。斯かる知見と関連するが、FCレベルの有意な減少は、無症状疾病経過を延長させるための重要な評価項目であることも本明細書は示している。進行中のUC治療へのEPA−FFAの添加は軽度の粘膜炎症を軽減し、疾病の臨床活動も安定化させるという概念を、本明細書のデータは支持している。更に、長期のUCを患う20人の患者を対象に行われた予備調査において、同用量のEPA−FFAが内視鏡的/組織学的炎症を改善し、杯細胞の分化を刺激した32。
本発明においてプラセボ治療群において再発率が高いことが決定されており(6か月で50%)、再発の高リスクを抱える患者の特定にFCが有効であることを支持している5。臨床経過6、7および疾病パターンの予測因子としてFCを試験した他の研究によれば、CRPは、研究期間全体を通して有意に変化することがなく、従って、UC疾病活動をモニターするにあたり、FCと比べ低い感度であることが確認されている33。
本試験の結果には、登録した患者数が少ない、単一センターの設計である、フォローアップ期間が比較的短いなど、いくつかの限界がある。しかし、FC増加の患者における臨床的再発の症例の大多数はフォローアップの最初の6か月間に生じている34。FCは粘膜炎症を評価する信頼できるマーカーであるが、疾病活動の確実な証拠を提供するため、ベースラインおよび臨床的再発の時点で、結腸内視鏡検査が複数の生検を伴って追加的に行われた。スクリーニング段階と比べて安定したFCレベルを有しており試験の最終段階で無症候を維持する患者は、Mayo内視鏡サブスコアも変わっていないと推測するのは妥当であるが、治療の終わりに生検を伴う第二結腸内視鏡検査を行わいことは本試験の相対的限界である。選択された主要評価項目は、組織炎症の減少(臨床的寛解を示す)のマーカーとして、FCレベルの減少を使用することであった。斯かる評価項目を有する最初の無作為プラセボ対照試験において、FCレベルの100ポイント減少の選択は自由裁量によるものではあるが、150μg/g未満のFC値は組織学的に低い活性を示すことを、公表された文献データが示している4。
結論として、EPA−FFAの使用はUCの重要な炎症マーカーである便中カルプロテクチンレベルを減少させること、並びにUC患者の無症状寛解を維持するための安全かつ有望な治療であることを、斯かる心強いデータが証明している。
(参考文献)
表1.患者の人口学的特性およびベースライン特性
表2.臨床的再発における患者の特性(n=18)
Claims (24)
- 潰瘍性大腸炎を有する被験者において便中カルプロテクチンレベルおよび再発を減少させる方法であって、便中カルプロテクチンレベルを150μg/g未満に減少させるのに有効な治療量の、少なくとも95%の純度を有するEPA−FFAを前記被験者に投与することを含む、方法。
- 前記EPA−FFAが少なくとも99%の純度を有する、請求項1の方法。
- 前記便中カルプロテクチンレベルが約110μg/g以下に減少される、請求項1の方法。
- 前記精製されたEPA−FFAが、薬学的に許容されるキャリアと一緒に、またはそれなしで、投与される、請求項1の方法。
- 前記治療量が、一日当たり約250mgから4gの量である、請求項1の方法。
- 前記治療量が、一日当たり約1000mgから2gの量である、請求項1の方法。
- 前記治療量が、毎日、週に一度、および/または1〜8か月、投与される、請求項6の方法。
- 潰瘍性大腸炎(UC)を有する被験者において便中カルプロテクチンレベルおよび再発を減少させるための方法であって、便中カルプロテクチンレベルを150μg/g未満に減少させるのに有効な治療量の、少なくとも95%の純度を有するEPA−FFAを、UC治療に使用される別の治療剤と組み合わせて、前記被験者に投与することを含む、方法。
- 前記EPA−FFAと組み合わされてよい前記別の治療剤が、アミノサリチル酸(5−ASA)、コルチコステロイド、免疫調節剤、抗生物質、および生物学的治療剤からなる群から選択される、請求項8の方法。
- 前記EPA−FFAが、少なくとも99%の純度を有する、請求項8の方法。
- 便中カルプロテクチンレベルが、約110μg/g以下に減少される、請求項8の方法。
- 前記治療量が、一日当たり約250mgから4gの量である、請求項8の方法。
- 前記治療量が、一日当たり約1000mgから2gの量である、請求項8の方法。
- 前記治療量が、毎日、週に一度、および/または1〜8か月、投与される、請求項8の方法。
- UC治療に使用される別の治療剤と組み合わせて、便中カルプロテクチンレベルを150μg/g未満に減少させるのに有効な量の、少なくとも99%の純度を有するEPA−FFAを含む、組成物。
- 前記別の治療剤が、アミノサリチル酸(5−ASA)、コルチコステロイド、免疫調節剤、抗生物質、および生物学的治療剤からなる群から選択される、請求項15の組成物。
- 便中カルプロテクチンレベルを糞便1g当たり110ug未満に減少させるのに有効な治療量の、少なくとも95%の純度を有するEPA−FFAの使用。
- 前記治療量が、一日当たり500mgから約2gである、請求項17の使用。
- 高純度のEPA−FFAを投与する前に約150μg/g超から約200μg/gの便中カルプロテクチン(FC)レベルを有する患者で測定されるFC量と比較して、3〜6か月間にわたって、FC量を約100μg/g以上減少させる方法。
- 前記EPA−FFAが、少なくとも95%の純度を有する、請求項19の方法。
- 前記EPA−FFAが、一日当たり約250mgから一日当たり4gの治療量で投与される、請求項19の方法。
- 高純度のEPA−FFAを投与する前に約150μg/g超から約200μg/gの便中カルプロテクチン(FC)レベルを有する患者で測定されるFC量と比べて、3〜6か月間にわたって、FC量を少なくとも100μg/g以上減少させるための、高純度のEPA−FFAの使用。
- 前記EPA−FFAが、少なくとも95%の純度を有する、請求項22の使用。
- 前記EPA−FFAが、一日当たり約250mgから一日当たり4gの治療量で投与される、請求項22の使用。
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