JP2020503292A - β−セクレターゼ阻害剤としてのチアジン誘導体および使用方法 - Google Patents

β−セクレターゼ阻害剤としてのチアジン誘導体および使用方法 Download PDF

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Abstract

本開示は、β−セクレターゼ酵素(BACE)活性の調節に有用な化合物の群を提供する。本化合物は、一般式I:を有し、式Iの可変要素R1、R1’、R2、R2’、R3、R4、R5、R6、R7およびbは、本明細書で定義される。本開示は、本化合物を含む医薬組成物、ならびにBACEの生物活性に起因するAβプラーク形成および沈着に関連する障害および/または病態の治療のための化合物および組成物の使用も提供する。このようなBACE介在性の障害は、例えば、アルツハイマー病、認知障害、認知機能障害および他の中枢神経系病態を含む。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月15日に出願された米国仮特許出願第62/434,714号明細書の利益を主張しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本開示は、概して、アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素(BACE)活性の調節のための薬学的に活性な化合物およびその医薬組成物に関する。本明細書では、BACEの生物活性に起因するβ−アミロイドプラークの形成および沈着に関連する障害および/または病態の治療のためのこれらの化合物およびその医薬組成物の使用が提供される。このようなBACE介在性の障害は、例えば、アルツハイマー病、認知障害、認知機能障害および他の中枢神経系病態を含む。
アルツハイマー病(AD)は、世界中で1200万人を超える高齢者が患っており、重要なことに罹患者数が増え続けている。ADは、60歳を過ぎて臨床的に診断された認知症の大部分を占める。ADは、一般に、記憶力、論理的思考、判断力および見当識の進行性低下によって特徴付けられる。この疾患が進行するにつれて、複数の認知機能に広範な障害が生じるまで運動能力、感覚能力および発声能力に支障をきたす。認知機能の喪失は、徐々に生じる。重度の認知機能障害を有する患者および/または末期のADと診断された患者は、一般に、寝たきりであり、失禁があり、療護に依存している。AD患者は、最初の診断後、平均して約9〜10年で最終的に死亡する。身体機能を奪い、概して屈辱的であり、最終的に致死的なADの作用のために、診断され次第ADを効果的に治療する必要がある。
ADは、脳における2つの主要な生理学的変化によって特徴付けられる。第1の変化であるβアミロイドプラークの形成は、ADが脳および脳血管(βアミロイド血管症)における特徴的なβアミロイド(Aβ)ペプチド沈着物(通常、Aβ「プラーク」または「プラーク沈着物」と称される)の形成によって引き起こされるという考えを表す「アミロイドカスケード仮説」を裏付ける。Aβおよび付随するアミロイドプラークの形成がADの病態生理学の中心となり、この難治性神経変性障害の初期に関与する可能性があることを豊富な証拠が示唆している。Yan et al.,Lancet Neurol.13(3):319−329(2014)。ADにおける第2の変化は、微小管結合タンパク質タウの凝集形態からなる神経細胞内神経原線維変化の形成である。AD患者で見出される以外に、神経細胞内神経原線維変化は、他の認知症誘発性障害においても見出される。Joachim et al.,Alzheimer.Dis.Assoc.Disord.6(1):7−34(1992)。
Aβペプチドの進行性脳沈着がADの病理発生で有力な役割を果たし、認知症状に数年またはさらには数十年先行する場合があることをいくつかの証拠が示している。Selkoe,Neuron 6(4):487−498(1991)。培養物中で増殖させた神経細胞からのAβペプチドの放出ならびに健常者およびAD患者の両方の脳脊髄液(CSF)におけるAβペプチドの存在が実証されている。Seubert et al.,Nature 359:325−327(1992)。AD患者の剖検により、記憶および認知に重要であると考えられるヒト脳の領域中にAβおよびタウペプチドを含む多数の病変が明らかになった。
さらに限定された解剖学的分布でのより少数のこれらの病変は、臨床的ADを有しないほとんどの高齢者の脳で見出される。アミロイドを含有するプラークおよび血管性アミロイド血管症は、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血(HCHWA−D)および他の神経変性障害を有する個体の脳でも見出された。
Aβペプチドの形成は、AD発症の原因となる前兆または要因であると推定されている。より詳細には、認知に関与する脳の領域でのAβペプチドの沈着は、AD発症の主な要因と考えられる。Aβプラークは、主としてAβペプチドで構成される。Aβペプチドは、大きい膜貫通アミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質切断から誘導され、約39〜42のアミノ酸残基で構成されるペプチドである。Aβ 1−42(42アミノ酸長)は、AD患者の脳におけるこれらのプラーク沈着の主成分であると考えられている。Citron,Trends Pharmacol.Sci.25(2):92−97(2004)。
同様のプラークは、レビー小体型認知症のいくつかのバリアントおよび筋肉疾患である封入体筋炎に現れる。Aβペプチドは、脳アミロイド血管症において脳血管を覆う凝集体も形成する。これらのプラークは、タンパク質のミスフォールディングによる疾患と関連するプリオンなどの他のペプチドによって共有されるタンパク質フォールドである、特徴的なβシート構造を示す原繊維Aβ凝集体で構成される。実験用ラットの研究は、ペプチドの二量体可溶性形態がAD発症における原因物質であり、可溶性アミロイドβオリゴマーの最小のシナプス毒性種であることを示唆している。Shankar et al.,Nat.Med.14(8):837−842(2008)。
β−セクレターゼおよびγ−セクレターゼを含むいくつかのアスパルチルプロテアーゼがAPPのプロセシングまたは切断に関与し、その結果、Aβペプチドが形成される。β−セクレターゼ(BACE、通常、メマプシンとも呼ばれる)は、まずAPPを切断して2つのフラグメント:(1)第1のN末端フラグメント(sAPPβ)および(2)第2のC−99フラグメントを生成し、その後、γ−セクレターゼによって切断されてAβペプチドを生じる。APPは、α−セクレターゼによって切断されて、Aβプラーク形成をもたらさないAPPの分泌形態であるsAPPαを生成することも判明している。この代替的な経路は、Aβペプチドの形成を妨げる。APPのタンパク質分解プロセシングフラグメントについての説明は、例えば、米国特許第5,441,870号明細書、同第5,712,130号明細書および同第5,942,400号明細書に見出される。
BACEは、501のアミノ酸を含むアスパルチルプロテアーゼ酵素であり、β−セクレターゼ特異的切断部位でのAPPのプロセシングに関与する。BACEは、BACE1およびBACE2の2つの形態で存在し、APPの特異的切断部位に応じてそのように称される。βセクレターゼは、Sinha et al.,Nature 402:537−540(1999)および国際特許出願国際公開第2000/017369号パンフレットで記載されている。Aβペプチドは、BACEによって開始されるAPPプロセシングの結果として蓄積することが提唱されている。さらに、β−セクレターゼ切断部位でのAPPのインビボプロセシングは、Aβペプチド生成の速度を制限するステップであると考えられる。Sabbagh et al.,Alzheimer’s Disease Review 3:1−19(1997)。したがって、BACE酵素活性の阻害は、ADの治療に望ましい。
研究は、BACEの阻害がADの治療と関連し得ることを示している。BACE酵素は、Aβペプチドの生成に必須である。BACEノックアウトマウスは、Aβペプチドを生成せず、神経細胞脱落およびある種の記憶欠損を含むAD関連病理を有しない。Cole et al.,Molecular Neurodegeneration 2:22,pages 1−25(2007)。APPを過剰発現するトランスジェニックマウスと交配させると、BACE欠損マウスの後代は、対照動物と比較して脳抽出物中のAβペプチド量の減少を示す。Luo et al.,Nat.Neurosci.4(3):231−232(2001)。BACEがAβペプチドの形成を開始するという事実およびBACEレベルがこの疾患において上昇するという観察結果は、BACE阻害、したがってAβペプチドおよびその関連する毒性の低減を目的とする治療法の開発のための直接的かつ有力な理由を提供する。この目的のために、β−セクレターゼ活性の阻害および対応する脳内Aβペプチドの減少は、ADおよび他のAβペプチドまたはプラーク関連障害を治療するための治療方法を提供するはずである。
したがって、ADに対する可能性のある治療としてAβペプチド形成および沈着を制御または低減するアプローチは、研究者および投資家の両方から同様に非常に大きい注目、支持および協力を得ている。小分子γ−セクレターゼ阻害剤であるLY450139(「セマガセスタット」)というAβペプチド低下剤は、ADの治療のための第III相臨床試験に進んだ。血漿におけるセマガセスタットの薬物動態ならびにセマガセスタット投与に対する薬力学的反応としての血漿および脳脊髄液(CSF)のAβペプチドレベルが単回および複数回用量で健常ヒト対象において評価され、また薬物動態および薬力学的変化も軽度〜中等度のAD患者において2回の臨床試験で評価された(Henley et al.,Expert Opin.Pharmacother.10(10):1657−1664(2009);Siemers et al.,Clin.Neuropharmacol.30(6):317−325(2007);およびSiemers et al.,Neurology 66(4):602−604(2006))。ADおよびプラーク関連障害を治療するための試みにおいて、さらなるアプローチがとられている。例えば、Yan et al.,Lancet Neurology 13(3):319−329(2014)を参照されたい。
さらに、以下の例示的な特許出願公報の各々は、ADおよび他のβ−セクレターゼ介在性障害を治療するのに有用なBACEの阻害剤を記載している:国際公開第2014/098831号パンフレット、国際公開第2014/099794号パンフレット、国際公開第2014/099788号パンフレット、国際公開第2014/097038号パンフレット、国際公開第2014/093190号パンフレット、国際公開第2014/066132号パンフレット、国際公開第2014/065434号パンフレット、国際公開第2014/062553号パンフレット、国際公開第2014/062549号パンフレット、国際公開第2014/045162号パンフレット、国際公開第2014/013076号パンフレット、国際公開第2013/182638号パンフレット、国際公開第2013/164730号パンフレット、国際公開第2013/030713号パンフレット、国際公開第2013/028670号パンフレット、国際公開第2013/004676号パンフレット、国際公開第2012/162334号パンフレット、国際公開第2012/162330号パンフレット、国際公開第2012/147762号パンフレット、国際公開第2012/139425号パンフレット、国際公開第2012/138734号パンフレット、米国特許出願公開第2012/0245157号明細書、米国特許出願公開第2012/0245154号明細書、米国特許出願公開第2012/0238557号明細書、国際公開第2011/029803号パンフレット、国際公開第2011/005738号パンフレット、米国特許出願公開第2011/0152253号明細書、国際公開第2010/013794号パンフレット、国際公開第2010/013302号パンフレット、米国特許出願公開第2010/0160290号明細書、米国特許出願公開第2010/0075957号明細書、国際公開第2009/151098号パンフレット、国際公開第2009/134617号パンフレット、米国特許出願公開第2009/0209755号明細書、米国特許出願公開第2009/0082560号明細書、欧州特許第2703401号明細書(国際公開第2012/146762号パンフレットの均等物)および欧州特許第1942105号明細書。
リソソームアスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンD(CatD)は、真核生物で遍在的に発現される。CatD活性は、飲食作用、貪食作用または自己貪食作用により送達されたその中のエンドソーム区画内およびリソソーム区画内におけるタンパク質基質の酸依存的な広範囲のタンパク質分解または部分的なタンパク質分解の達成に必須である。CatDは、細胞質ゾルおよび細胞外環境において生理的pHで小さいサイズの基質に作用する場合もある。マウスおよびショウジョウバエのCatDノックアウトモデルにより、組織の恒常性維持および器官発生におけるCatDの多重の病態生理学的役割が目立ってきている。
タンパク質CatDの阻害は、望ましくない副作用において関連付けられている。例えば、CatDの阻害は、有害な網膜発生および網膜萎縮症に関連すると考えられている。特に、マウスでは、CatDは網膜光受容細胞の代謝維持に必須であり、その不足によりその細胞のアポトーシスが誘導される一方、内顆粒層(INL)神経細胞の脱落は、ミクログリア細胞からの一酸化窒素放出により媒介されることが判明した。しかしながら、そのまさに同じマウスにおいて、カテプシンBまたはLを欠損するマウスの網膜に萎縮性の変化が検出されなかったことも判明した。Koike et al.,Mol.Cell Neurosci.22(2):146−161(2003)。さらに、CatD欠損の動物モデルは、バッテン病として一括して知られる小児神経変性疾患の群である神経セロイドリポフスチン症(NCL)において観察される表現型に類似した進行性で過酷な神経変性表現型により特徴付けられる。アポトーシス促進性分子であるBaxの標的欠失によってアポトーシスマーカーが妨げられるが、CatD欠損により誘導される神経細胞死および神経変性は、妨げられないことが示され、これは、マクロオートファジー・リソソーム性分解経路の変化が、アポトーシスが存在しないなかでNCL/バッテン病における神経細胞死を媒介し得ることを示唆する。Shacka et al.,Autophagy 3(5):474−476(2007)。最後に、CatDの阻害の有害作用は、Folio et al.,PLoS One 6(7):e21908(2011)に提示されているデータから明らかである。そのPLoS One論文の著者らは、CatDのノックダウンがゼブラフィッシュにおいて網膜色素上皮に影響を与え、浮袋の個体発生を障害し、かつ早期死亡を引き起こすことを見出した。ゼブラフィッシュにおけるCatDノックダウンにより生じた主な表現型の変化は、1.眼および網膜色素上皮の異常発生;2.浮袋の欠如;3.皮膚色素沈着過剰;4.成長の低下および早期死亡であった。レスキュー実験により、これらの表現型の変化に至る発生過程におけるCatDの関与が確認された。
さらにこの文献を考慮すると、このような毒性所見がヒトBACE介在性AD臨床試験の終了に影響を及ぼした可能性がある。Eli Lillyは、ラット毒性試験において、より高用量の化合物を3ヶ月投与するとラットの眼の色素上皮を損傷することを示した後、LY2811376の第I相臨床試験を終了した。網膜層は、封入体および広範囲の損傷を有した。第I相投薬試験を終了し、眼の診断のために招かれた人々は、異常を示さなかった。(Alzheimer’s Research Forum News,3−31−2011 reporting on Martin Citron’s presentation at the AD/PD Conference 3−2011 in Barcelona,Spain)。
米国特許第5,441,870号明細書 米国特許第5,712,130号明細書 米国特許第5,942,400号明細書 国際公開第2000/017369号 国際公開第2014/098831号 国際公開第2014/099794号 国際公開第2014/099788号 国際公開第2014/097038号 国際公開第2014/093190号 国際公開第2014/066132号 国際公開第2014/065434号 国際公開第2014/062553号 国際公開第2014/062549号 国際公開第2014/045162号 国際公開第2014/013076号 国際公開第2013/182638号 国際公開第2013/164730号 国際公開第2013/030713号 国際公開第2013/028670号 国際公開第2013/004676号 国際公開第2012/162334号 国際公開第2012/162330号 国際公開第2012/147762号 国際公開第2012/139425号 国際公開第2012/138734号 米国特許出願公開第2012/0245157号明細書 米国特許出願公開第2012/0245154号明細書 米国特許出願公開第2012/0238557号明細書 国際公開第2011/029803号 国際公開第2011/005738号 米国特許出願公開第2011/0152253号明細書 国際公開第2010/013794号 国際公開第2010/013302号 米国特許出願公開第2010/0160290号明細書 米国特許出願公開第2010/0075957号明細書 国際公開第2009/151098号 国際公開第2009/134617号 米国特許出願公開第2009/0209755号明細書 米国特許出願公開第2009/0082560号明細書 欧州特許第2703401号明細書(国際公開第2012/146762号の均等物) 欧州特許第1942105号明細書
Yan et al.,Lancet Neurol.13(3):319−329(2014) Joachim et al.,Alzheimer.Dis.Assoc.Disord.6(1):7−34(1992) Selkoe,Neuron 6(4):487−498(1991) Seubert et al.,Nature 359:325−327(1992) Citron,Trends Pharmacol.Sci.25(2):92−97(2004) Shankar et al.,Nat.Med.14(8):837−842(2008) Sinha et al.,Nature 402:537−540(1999) Sabbagh et al.,Alzheimer’s Disease Review 3:1−19(1997) Cole et al.,Molecular Neurodegeneration 2:22,pages 1−25(2007) Luo et al.,Nat.Neurosci.4(3):231−232(2001) Henley et al.,Expert Opin.Pharmacother.10(10):1657−1664(2009) Siemers et al.,Clin.Neuropharmacol.30(6):317−325(2007) Siemers et al.,Neurology 66(4):602−604(2006) Yan et al.,Lancet Neurology 13(3):319−329(2014) Koike et al.,Mol.Cell Neurosci.22(2):146−161(2003) Shacka et al.,Autophagy 3(5):474−476(2007) Folio et al.,PLoS One 6(7):e21908(2011) Alzheimer’s Research Forum News,3−31−2011 reporting on Martin Citron’s presentation at the AD/PD Conference 3−2011 in Barcelona,Spain
したがって、他のタンパク質または生物学的経路の発現および/または機能による介入あるいはその低減および/または直接的もしくは間接的阻害に場合により起因する望ましくない副作用の問題がなく、BACEの活性を調節し、かつBACEに対して選択的な化合物を提供することが望ましい。
本明細書で開示される化合物は、β−セクレターゼ活性の調節に有用であり、かつADの治療法として有用である。特に、本明細書で提供される化合物は、Aβペプチドの形成の制御または低減に有用であり、結果として脳およびCNSの両方におけるAβプラークの形成の制御および/または低減に有用である。この目的のために、本化合物は、ADならびに他のβ−セクレターゼおよび/またはプラーク関連および/または介在性障害の治療に有用である。例えば、本化合物は、ADならびに脳におけるAβペプチドの沈着または蓄積およびプラーク形成を伴う他の疾患または病態の急性および/または慢性の予防および/または治療に有用である。
第1に、本明細書では、式I
Figure 2020503292
(式中、
およびR1’は、独立して、H、C1〜6アルキル、−C(O)OC1〜6アルキル、−C(O)NHC1〜6アルキルまたは−C(O)−ヘテロシクロアルキルであり、C1〜6アルキルならびに−C(O)OC1〜6アルキルおよび−C(O)NHC1〜6アルキルのC1〜6アルキル部分は、1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され;
およびR2’は、Hであり;
bは、R、R1’、RおよびR2’が存在する場合、単結合であり;
bは、RおよびR1’の1つならびにRおよびR2’の1つが存在しない場合、二重結合であり;
は、C1〜4アルキルであり;
は、ハロゲンであり;
は、HまたはFであり;および
およびRの1つは、FまたはHであり、かつRおよびRの他方は、6員窒素含有ヘテロアリールであり、ヘテロアリールは、ハロゲン、−CNまたは2−プロピニルオキシで任意選択的に置換され、R、RまたはRの少なくとも1つは、Fである)
の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供される。
第2に、本明細書では、式Iの化合物と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
第3に、本明細書では、薬剤として使用するための式Iの化合物またはその医薬組成物が提供される。
第4に、本明細書では、対象の脳脊髄液におけるβアミロイドペプチドのレベルの低減に使用するための式Iの化合物またはその医薬組成物が提供される。
第5に、本明細書では、対象におけるアルツハイマー病、認知機能障害またはこれらの組み合わせの治療に使用するための式Iの化合物またはその医薬組成物が提供される。加えて、本明細書では、対象における軽度の認知機能障害、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管症、変性性認知症、パーキンソン病に関連する認知症、核上性麻痺に関連する認知症、大脳皮質基底核変性症に関連する認知症、びまん性レビー小体型アルツハイマー病またはこれらの組み合わせから選択される神経障害の治療に使用するための式Iの化合物またはその医薬組成物が提供される。
第6に、本明細書では、対象の脳におけるプラークの形成の低減に使用するための式Iの化合物またはその医薬組成物が提供される。
ここで、本開示の実施形態に詳細に言及する。本開示のある種の実施形態が記載されることになるが、本開示の実施形態をそれらの記載された実施形態に限定することが意図されないことが理解されるであろう。反対に、本開示の実施形態に対する言及は、添付の特許請求の範囲によって定義されるとおりの本開示の実施形態の趣旨および範囲内に包含され得るような代替形態、修正形態および均等物を包含するように意図される。
実施形態1として、本明細書では、式I
Figure 2020503292
(式中、
およびR1’は、独立して、H、C1〜6アルキル、−C(O)OC1〜6アルキル、−C(O)NHC1〜6アルキルまたは−C(O)−ヘテロシクロアルキルであり、C1〜6アルキルならびに−C(O)OC1〜6アルキルおよび−C(O)NHC1〜6アルキルのC1〜6アルキル部分は、1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され;
およびR2’は、Hであり;
bは、R、R1’、RおよびR2’が存在する場合、単結合であり;
bは、RおよびR1’の1つならびにRおよびR2’の1つが存在しない場合、二重結合であり;
は、C1〜4アルキルであり;
は、ハロゲンであり;
は、HまたはFであり;および
およびRの1つは、FまたはHであり、かつRおよびRの他方は、6員窒素含有ヘテロアリールであり、ヘテロアリールは、ハロゲン、−CNまたは2−プロピニルオキシで任意選択的に置換され、R、RまたはRの少なくとも1つは、Fである)
の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供される。
代替的な実施形態1として、本明細書では、式I
Figure 2020503292
(式中、
およびR1’は、独立して、H、C1〜6アルキル、−C(O)OC1〜6アルキル、−C(O)NHC1〜6アルキルまたは−C(O)−ヘテロシクロアルキルであり、C1〜6アルキルならびに−C(O)OC1〜6アルキルおよび−C(O)NHC1〜6アルキルのC1〜6アルキル部分は、1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され;
およびR2’は、Hであり;
bは、R、R1’、RおよびR2’が存在する場合、単結合であり;
bは、RおよびR1’の1つならびにRおよびR2’の1つが存在しない場合、二重結合であり;
は、C1〜4アルキルであり;
は、ハロゲンであり;
は、HまたはFであり;および
およびRの1つは、FまたはHであり、かつRおよびRの他方は、6員窒素含有ヘテロアリールであり、ヘテロアリールは、−CNまたは2−プロピニルオキシで任意選択的に置換され、R、RまたはRの少なくとも1つは、Fである)
の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供される。
実施形態2として、本明細書では、実施形態1による化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、式Iの化合物は、式IIの化合物である。
Figure 2020503292
実施形態3として、本明細書では、実施形態1による化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、式Iの化合物は、式IIIAの化合物である。
Figure 2020503292
実施形態4として、本明細書では、実施形態1による化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、式Iの化合物は、式IIIBの化合物である。
Figure 2020503292
実施形態5として、本明細書では、実施形態1、2および4のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、Rは、H、
Figure 2020503292
であり、および
1’は、Hまたはメチルである。
実施形態6として、本明細書では、実施形態1、2、4および5のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、R1’は、メチルである。
実施形態7として、本明細書では、実施形態1〜6のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、Rは、メチルである。
実施形態8として、本明細書では、実施形態1〜7のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、Rは、Fである。
実施形態9として、本明細書では、実施形態1〜8のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、RおよびRは、FまたはHであり、かつRおよびRの他方は、ピリジルまたはピラジニルであり、ピリジルまたはピラジニルは、Cl、−CNまたは2−プロピニルオキシで任意選択的に置換される。
実施形態10として、本明細書では、実施形態1〜8のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、RおよびRは、FまたはHであり、かつRおよびRの他方は、ピリジルまたはピラジニルであり、ピリジルまたはピラジニルは、−CNまたは2−プロピニルオキシで任意選択的に置換される。
実施形態11として、本明細書では、実施形態1〜9のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、RおよびRの1つは、
Figure 2020503292
である。
実施形態12として、本明細書では、実施形態1〜10のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、RおよびRの1つは、
Figure 2020503292
である。
実施形態13として、本明細書では、実施形態1〜12のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、
は、Fであり;および
は、Hである。
実施形態14として、本明細書では、実施形態1〜12のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、
は、Fであり;および
は、Hである。
実施形態15として、本明細書では、実施形態1〜12のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、
は、Hであり;および
は、Fである。
実施形態16として、本明細書では、実施形態1〜12のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供され、ここで、
は、Hであり;および
は、Fである。
実施形態17として、本明細書では、
(S,Z)−4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−アミン;
(S,Z)−6−(2−(3−(2−アミノ−4−メチル−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
(S,Z)−4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−アミン;
(S,Z)−6−(2−(3−(2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル;
2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル;
2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル;
2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル;
2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル;
2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル;
6−((Z)−2−(3−((4S,6S)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
6−((Z)−2−(3−((4S,6R)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
(4S,6R)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;
(4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;
((4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−イル)(モルホリノ)メタノン;
(4S,6S)−2−アミノ−N−(2,2−ジフルオロエチル)−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;または
(4S,6S)−2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド
から選択される、実施形態1の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供される。
実施形態18として、本明細書では、
(S,Z)−6−(2−(3−(2−アミノ−4−メチル−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
(S,Z)−6−(2−(3−(2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル;
2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル;
6−((Z)−2−(3−((4S,6S)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
6−((Z)−2−(3−((4S,6R)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
(4S,6R)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;
(4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;
((4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−イル)(モルホリノ)メタノン;
(4S,6S)−2−アミノ−N−(2,2−ジフルオロエチル)−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;または
(4S,6S)−2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド
から選択される、実施形態1の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩が提供される。
実施形態19として、本明細書では、実施形態1〜18のいずれかによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
実施形態20として、本明細書では、薬剤として使用するための、実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは実施形態19による医薬組成物が提供される。
実施形態21として、本明細書では、対象の脳脊髄液におけるβアミロイドペプチドのレベルの低減に使用するための、実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは実施形態19による医薬組成物が提供される。
実施形態22として、本明細書では、対象におけるアルツハイマー病、認知機能障害またはこれらの組み合わせの治療に使用するための、実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは実施形態19による医薬組成物が提供される。
実施形態23として、本明細書では、対象における軽度の認知機能障害、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管症、変性性認知症、パーキンソン病に関連する認知症、核上性麻痺に関連する認知症、大脳皮質基底核変性症に関連する認知症、びまん性レビー小体型アルツハイマー病またはこれらの組み合わせから選択される神経障害の治療に使用するための、実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは実施形態19による医薬組成物が提供される。
実施形態24として、本明細書では、対象の脳におけるプラークの形成を低減するための、実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは実施形態19による医薬組成物が提供される。
実施形態25として、本明細書では、対象の脳脊髄液におけるβアミロイドペプチドのレベルを低減するための薬剤の調製における、実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは実施形態19による医薬組成物の使用が提供される。
実施形態26として、本明細書では、対象におけるアルツハイマー病、認知機能障害またはこれらの組み合わせを治療するための薬剤の調製における、実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは実施形態19による医薬組成物の使用が提供される。
実施形態27として、本明細書では、対象における軽度の認知機能障害、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管症、変性性認知症、パーキンソン病に関連する認知症、核上性麻痺に関連する認知症、大脳皮質基底核変性症に関連する認知症、びまん性レビー小体型アルツハイマー病またはこれらの組み合わせから選択される神経障害の治療のための薬剤の調製における、実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは実施形態19による医薬組成物の使用が提供される。
実施形態28として、本明細書では、対象の脳におけるプラークの形成の低減のための薬剤の調製における、実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは実施形態19による医薬組成物の使用が提供される。
実施形態29として、本明細書では、βアミロイドペプチドのレベルの低減を、それを必要とする対象の脳脊髄液において行う方法であって、治療有効量の実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩を対象に投与する工程を含む方法が提供される。
実施形態30として、本明細書では、アルツハイマー病、認知機能障害またはこれらの組み合わせの治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩を対象に投与する工程を含む方法が提供される。
実施形態31として、本明細書では、軽度の認知機能障害、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管症、変性性認知症、パーキンソン病に関連する認知症、核上性麻痺に関連する認知症、大脳皮質基底核変性症に関連する認知症、びまん性レビー小体型アルツハイマー病またはこれらの組み合わせから選択される神経障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩を対象に投与する工程を含む方法が提供される。
実施形態32として、本明細書では、プラークの形成の低減を、それを必要とする対象の脳において行う方法であって、治療有効量の実施形態1〜18のいずれか1つによる化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩を対象に投与する工程を含む方法が提供される。
ある種の実施形態に対する代替的な実施形態が提供される場合、ある種の実施形態に対する参照は、適宜、提供される前記ある種の実施形態の代替物に対する参照でもあるとみなされる。例えば、実施形態32におけるとりわけ実施形態1に対する参照は、上記に提供される代替的な実施形態1に対する参照も含むものとする。
前述の記載は、単に本開示のある特定の態様をまとめたものであり、決して本開示を限定することを意図するものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
定義
以下の定義は、本開示の範囲の理解を促進するために提供される。
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分量、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という表現によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、特に記載のない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、それらの各試験測定値において判明する標準偏差に応じて変動し得る近似値である。
本明細書で使用される場合、任意の可変要素が化学式に2つ以上存在する場合、各存在におけるその定義は、他の存在毎におけるその定義と無関係である。化学構造および化学名が不一致である場合、化学構造により化合物の同一性を決定する。
立体異性体
本開示の化合物は、例えば、二重結合、1つ以上の不斉炭素原子および回転障害を有する結合を含有する場合があり、したがって、二重結合異性体(すなわち幾何異性体(E/Z))、エナンチオマー、ジアステレオマーまたはアトロプ異性体などの立体異性体として存在し得る。したがって、本開示の範囲は、立体異性体的に純粋な形態(例えば、幾何的に純粋な、鏡像異性的に純粋な、ジアステレオ異性的に純粋な、かつアトロプ異性的に純粋な)および本明細書で開示される任意の化学構造(全てまたは一部)の立体異性体の混合物(例えば、幾何異性体、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびアトロプ異性体の混合物)を含む、例示される化合物の可能な全ての立体異性体を包含することを理解すべきである。本開示は、立体異性体的に純粋な形態を含む医薬組成物および本明細書で開示される任意の化合物の立体異性体的に純粋な形態の使用も包含する。さらに、本開示は、本明細書で開示される任意の化合物の立体異性体の混合物を含む医薬組成物および前記医薬組成物または立体異性体の混合物の使用も包含する。これらの立体異性体またはその混合物は、当技術分野でよく知られる方法および本明細書で開示される方法に従って合成され得る。立体異性体の混合物は、キラルカラムまたはキラル分割剤などの標準的な手法を用いて分割され得る。例えば、Jacques et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley−Interscience,New York,1981);Wilen et al.,Tetrahedron 33:2725;Eliel,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw−Hill,NY,1962);およびWilen,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions,page 268(Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN,1972)を参照されたい。
本明細書で使用される場合、用語「立体異性体」または「立体異性体的に純粋な」化合物は、化合物の他の立体異性体を実質的に含まない、化合物の1種の立体異性体(例えば、幾何異性体、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびアトロプ異性体)を指す。例えば、1つのキラル中心を有する立体異性体的に純粋な化合物は、その化合物の鏡像エナンチオマーを実質的に含まないことになり、かつ2つのキラル中心を有する立体異性体的に純粋な化合物は、その化合物の他のエナンチオマーまたはジアステレオマーを実質的に含まないことになる。典型的な立体異性体的に純粋な化合物は、約80重量%を超えるその化合物の1種の立体異性体および約20重量%未満のその化合物の他の立体異性体、約90重量%を超えるその化合物の1種の立体異性体および約10重量%未満のその化合物の他の立体異性体、約95重量%を超えるその化合物の1種の立体異性体および約5重量%未満のその化合物の他の立体異性体、または約97重量%を超えるその化合物の1種の立体異性体および約3重量%未満のその化合物の他の立体異性体を含む。構造の立体化学または構造の一部が例えば太字または破線で示されない場合、構造または構造の一部は、その全ての立体異性体を包含するものとして解釈されるべきである。波線で描かれる結合は、両方の立体異性体が包含されることを示す。これは、分子の残部への基の結合点を示す、結合に垂直に描かれる波線と混同されるべきではない。
互変異性体
当業者に知られるとおり、本明細書で開示されるある種の化合物は、1種以上の互変異性形態で存在し得る。1つの化学構造は、1つの互変異性形態を表すためにのみ使用され得るため、便宜上、所与の構造式の化合物に対する参照は、前記構造式の他の互変異性体を含むと理解されるはずである。例えば、以下は、式Iの化合物の互変異性体を示す:
Figure 2020503292
したがって、本開示の範囲は、本明細書で開示される化合物の全ての互変異性形態を包含するものと理解されるべきである。
同位体標識化合物
さらに、本開示の範囲は、式Iの化合物などの本明細書で開示される化合物の全ての薬学的に許容される同位体標識化合物を含み、ここで、1つ以上の原子が、同じ原子番号を有するが自然界で通常見出される原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換される。本明細書で開示される化合物への含有に好適な同位体の例としては、HおよびHなどの水素、11C、13Cおよび14Cなどの炭素、36Clなどの塩素、18Fなどのフッ素、123Iおよび125Iなどのヨウ素、13Nおよび15Nなどの窒素、15O、17Oおよび18Oなどの酸素、32Pなどのリンならびに35Sなどの硫黄の同位体が挙げられる。式Iのある種の同位体標識化合物、例えば放射性同位体を組み込んだものは、薬物および/または基質の組織分布の研究に有用である。放射性同位体のトリチウム(H)および炭素−14(14C)は、組み込みが簡単であり、容易な検出手段であることを考慮すると、この目的のために特に有用である。重水素(H)などの同位体による置換は、より大きい代謝安定性の結果としてもたらされる特定の治療上の利点、例えばインビボ半減期の増大または投薬必要量の減少をもたらし得、したがって好ましい場合があり得る。11C、18F、15Oおよび13Nなどのポジトロン放出同位体による置換は、例えば標的占有率を調べるためのポジトロン放出断層撮影(PET)試験において有用であり得る。本明細書で開示される化合物の同位体標識化合物は、通常、当業者に知られる従来の手法により、または従来用いられる非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いる添付の一般的合成スキームおよび実施例において記載されるものと類似のプロセスにより調製することができる。
溶媒和物
上述のとおり、本明細書で開示される化合物ならびにその立体異性体、互変異性体および同位体標識形態または前述のもののいずれかの薬学的に許容される塩は、溶媒和形態または非溶媒和形態で存在し得る。
本明細書で使用する場合、用語「溶媒和物」は、本明細書で記載される化合物またはその薬学的に許容される塩および化学量論的または非化学量論的な量の1つ以上の薬学的に許容される溶媒分子を含む分子複合体を指す。溶媒が水である場合、溶媒和物は「水和物」と呼ばれる。
したがって、本開示の範囲は、本明細書で開示される化合物ならびにその立体異性体、互変異性体および同位体標識形態または前述のもののいずれかの薬学的に許容される塩の全ての溶媒和物を包含するものと理解されるべきである。
非結晶および結晶形態
ある種の実施形態では、本明細書で記載される化合物およびその立体異性体、互変異性体、同位体標識形態または前述のもののいずれかの薬学的に許容される塩または前述のもののいずれかの溶媒和物は、非結晶形態および結晶形態(多形)などの様々な形態で存在し得る。したがって、本開示の範囲は、全てのこのような形態を包含するものと理解されるべきである。
種々の定義
本節では、本明細書で開示される化合物、組成物および使用の範囲を説明するために使用される追加の用語を定義することになる。
本明細書で使用する場合、用語「Cx〜yアルキル」は、x〜y個の炭素原子、例えば1〜4個および1〜6個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の炭化水素を指す。C1〜4アルキルの代表的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチルおよびtert−ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。C1〜6アルキルの代表的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチルおよびn−ヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する場合、用語「シクロアルキル」は、飽和炭素環分子から水素を除去することによって得られる炭素環置換基を指し、環状骨格は、3〜8個の炭素を有する。「シクロアルキル」は単環式環であり得、その例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「ハロゲン」は、−F、−Cl、−Brまたは−Iを指す。
本明細書で使用する場合、用語「6員窒素含有ヘテロアリール」は、炭素または窒素から選択される6個の環原子を有するヘテロアリール環を指し、1〜4個の環原子が窒素である。6員窒素含有ヘテロアリールの例としては、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルおよびピリダジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロシクロアルキル」は、上で定義されるとおりのシクロアルキルを指し、環炭素原子の少なくとも1個が、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子で置き換えられる。6員ヘテロシクロアルキルの例としては、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される」は、通常、対象、特にヒトにおける使用について認識されているものを指す。
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容され、かつ親化合物の所望の薬理活性を有する化合物の塩を指す。このような塩としては:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸と形成される酸付加塩;もしくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸などの有機酸と形成される酸付加塩;または(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオンもしくはアルミニウムイオンにより置き換えられる場合;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミン、ジシクロヘキシルアミンなどの有機塩基と配位させる場合に形成される塩が挙げられる。このような塩のさらなる例は、Berge et al.,J.Pharm.Sci.66(1):1−19(1977)。また、Stahl et al.,Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,2nd Revised Edition(2011)も参照されたい。
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される賦形剤」は、医薬組成物または製剤を調製するために本明細書で開示される化合物または塩と組み合わされ得る広範囲の成分を指す。典型的に、賦形剤としては、希釈剤、着色剤、ビヒクル、抗粘着剤、流動促進剤、崩壊剤、香味剤、コーティング剤、結合剤、甘味料、潤滑剤、吸着剤、保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、ヒトおよび動物を指し、これには、霊長動物、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラットおよびマウスが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、対象はヒトである。
本明細書で使用する場合、用語「治療」は、対象を治療して、対象の疾患もしくは病態の1つ以上の徴候および症状を緩和するか、または1つ以上のこのような徴候および症状を除去するだけでなく、無症候性の対象を予防的に治療して疾患もしくは病態の発症を予防するか、または疾患もしくは病態の進行を予防するか、遅らせるか、もしくは逆転させることも指す。
本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」は、研究者、獣医、医学博士もしくは他の臨床医によって求められる、組織、系または対象の生物学的または医学的応答を誘発することになる本明細書で開示される化合物の量を指す。本用語は、研究者、獣医、医学博士または他の臨床医により、組織、系または対象において予防することが求められる生物学的または医学的事象の発生のリスクを予防または低減することになる本明細書で開示される化合物の量も包含する。
一般的合成手順
本明細書で提供される化合物は、本節および以下の節において記載される手順に従って合成することができる。本明細書で記載される合成方法は、単に例示的なものであり、本明細書で開示される化合物は、当業者によって理解されるとおりの代替の合成戦略を使用する代替経路によっても合成され得る。一般的合成手順および本明細書で提供される具体例は、例示に過ぎず、決して本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されるはずである。
一般に、式Iの化合物を以下のスキームに従って合成することができる。以下のスキームで使用される任意の可変要素は、別途注記のない限り、式Iについて定義されるとおりの可変要素である。全ての出発材料は、例えば、Sigma−Aldrich Chemical Company,Inc.、St.Louis、MO、USAから市販されているか、または当技術分野で知られており、かつ通例の技術を用いる既知の手順を使用することによって合成され得る。出発材料は、本明細書で開示される手順を介しても合成され得る。
Figure 2020503292
アルケンivは、スキーム1に示されるとおりに合成され得る。出発材料R−Brを2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチルと反応させてエステルiを得る。次に、エステルiを例えば水素化ホウ素ナトリウムで還元してアルコールiiを得る。次に、アルコールiiのOH基を、脱離基中のOH基の変換後、例えばアルコールiiをピリジンなどの塩基の存在下でトリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させた後、例えばヨウ化ナトリウムから供給されるIと反応させることによる求核置換により、ヨード基に変換して化合物iiiを得る。次に、化合物iiiをカリウムtert−ブトキシドなどの塩基と反応させることによってアルケンivを得る。
Figure 2020503292
スルホンviiiは、スキーム2に示されるとおりに合成され得る。まず、RCHOHのOH基を例えばトリメチルアミンなどの塩基の存在下でRCHOHを塩化メタンスルホニルと反応させることによって脱離基に変換して、化合物vを得る。次に、化合物vを水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下で3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオールと反応させて化合物viを得る。あるいは、XがCl、BrまたはIであるRCHXを炭酸カリウムなどの塩基の存在下で3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオールと直接反応させて化合物viを得ることができる。スルホンviiは、例えば、過酸化水素を用いる酸化条件下で化合物viを反応させることによって得られる。スルホンviiiは、リチウムジイソプロピルアミドなどの塩基の存在下でスルホンviiをN−フルオロジベンゼンスルホンイミドなどの求電子性フッ素化剤と反応させて得られた。
Figure 2020503292
最終化合物xiiは、スキーム3に示されるとおりに合成され得る。まず、XがCl、BrまたはIである化合物ixの遊離アミノ基を、例えばN,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)などの塩基の存在下での二炭酸ジ−tert−ブチルとの反応により適切に保護する。次に、適切に保護された化合物xを例えば酢酸カリウムなどの塩基および[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)などの好適なパラジウム触媒の存在下でビス(ピナコラト)ジボロンを反応させることによってボロン酸xiに変換する。最終化合物xiiは、ジ−BOC保護戦略が採用された場合、ボロン酸xiを鈴木条件下、例えばビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)−ジクロロパラジウム(II)およびリン酸カリウムなどの塩基の存在下で化合物ivと反応させた後、鈴木生成物を例えばトリフルオロ酢酸と反応させることによりアミノ基を脱保護することによって得られる。
Figure 2020503292
最終化合物xvおよびxviは、スキーム4に示されるとおりに合成され得る。まず、化合物ixの遊離アミノ基を、例えばトリメチルアミンなどの塩基の存在下での安息香酸無水物との反応により適切に保護する。次に、適切に保護された化合物xを、酢酸カリウムなどの塩基およびビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)−ジクロロパラジウム(II)などの好適なパラジウム触媒の存在下で化合物xと例えばカリウムビニルトリフルオロボラートとを反応させることによってアルケンxiiiに変換する。アルデヒドxivは、アルケンxiiiを、例えば四酸化オスミウム、4−メチルモルホリン−N−オキシドおよび過ヨウ素酸カリウムを用いる酸化条件に置くことによって得られる。次に、アルデヒドxivをリチウムビス(トリメチルシリル)アミドなどの塩基の存在下で化合物viiiと反応させ、続いてベンゾイル保護戦略が採用される場合、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)を使用するアミノ基から保護基を除去する条件にして最終化合物xvおよび/またはxviが得られる。
Figure 2020503292
最終化合物xviiiおよびxixは、スキーム5に示されるとおりに合成され得る。適切に保護された化合物xを、酢酸カリウムなどの塩基およびビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)−ジクロロパラジウム(II)などの好適なパラジウム触媒の存在下で化合物xと例えばビスピナコラトジボロンとを反応させることによってボロン酸エステルxviiに変換する。次に、ボロン酸エステルxviiを例えば酢酸カリウムなどの塩基およびビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)−ジクロロパラジウム(II)などの好適なパラジウム触媒の存在下で好適なヨウ化ビニルとカップリングする。ヨウ化ビニルは、当技術分野で知られる方法によって合成され得る。ベンゾイル保護戦略が採用される場合、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)を使用するアミノ基から保護基を除去する条件を適用して最終化合物xviiiおよび/またはxixを得る。
当業者によって理解されるように、上述の合成スキームおよび代表的な例は、本出願において記載および特許請求される化合物を合成し得るあらゆる手段の包括的な一覧を含むことを意図するものではない。さらなる方法が当業者に明らかであろう。加えて、上述の様々な合成工程を代替の順番または順序で実施して所望の化合物を得ることができる。
例えば、これらの手順において、工程は、必要に応じて追加の保護/脱保護工程が先行する場合も追従する場合もある。特に、1つ以上の官能基、例えばカルボキシ、ヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基は、それらが特定の反応または化学変換に関与することが意図されないため、本明細書で開示される化合物を調製する際に保護されるかまたは保護される必要が有る場合、様々な既知の従来的な保護基が使用され得る。例えば、ペプチド、核酸、それらの誘導体および糖類を含み、複数の反応中心、キラル中心ならびに場合により反応試薬および/または反応条件の影響を受けやすい他の部位を有する、天然および合成化合物の合成に通常利用される保護基が使用され得る。
本明細書に記載される化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基の手法(保護および脱保護)は、当技術分野で知られており、例えばR.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd edition,John Wiley and Sons(1999);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);A.Katritzky and A.Pozharski,Handbook of Heterocyclic Chemistry,2nd edition(2001);M.Bodanszky,A.Bodanszky,The Practice of Peptide Synthesis,Springer−Verlag,Berlin Heidelberg(1984);J.Seyden−Penne,Reductions by the Alumino−and Borohydrides in Organic Synthesis,2nd edition,Wiley−VCH,(1997);およびL.Paquette,editor,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)において記載されるものを含む。
本明細書に記載される全ての合成手順は、既知の反応条件下、有利には本明細書に記載される条件下で溶媒の非存在下または存在下(通常)のいずれかにおいて実施することができる。当業者に理解されるように、溶媒は、出発材料および使用される他の試薬に関して不活性であるべきであり、それらを溶解することが可能であるべきである。溶媒は、触媒、縮合剤または中和剤、例えばイオン交換体、典型的には例えばH形態のカチオン交換体の非存在下または存在下で反応物質を部分的または完全に可溶化させることが可能であるべきである。溶媒が反応の進行または速度を許容し、かつ/またはそれらに影響を及ぼす能力は、一般に、溶媒の種類および特性、温度、圧力、アルゴンまたは窒素下の不活性雰囲気などの雰囲気条件、ならびに濃度を含む反応条件、ならびに反応物質自体に依存する。
本明細書で提供される化合物を合成するための反応の実施に好適な溶媒としては、水;低級アルキル−低級アルカノアート、例えばEtOAcを含むエステル;脂肪族エーテル、例えばEtOおよびエチレングリコールジメチルエーテルまたは環状エーテル、例えばTHFを含むエーテル;液体芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエンおよびキシレン;アルコール、例えばMeOH、EtOH、1−プロパノール、iPrOH、n−ブタノールおよびt−ブタノール;ニトリル、例えばCHCN;ハロゲン化炭化水素、例えばCHCl、CHClおよびCCl;酸アミド、例えばDMF;スルホキシド、例えばDMSO;複素環窒素塩基、例えばピリジンを含む塩基;カルボン酸、例えば低級アルカンカルボン酸、例えばAcOH;無機酸、例えばHCl、HBr、HFおよびHSO;カルボン酸無水物、例えば低級アルカン酸無水物、例えば無水酢酸;環状、直鎖状または分岐状炭化水素、例えばシクロヘキサン、ヘキサン、ペンタンおよびイソペンタン;ならびにこれらの溶媒の混合物、例えば純粋に有機溶媒の混合液または水含有溶媒の混合液、例えば水溶液が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒および溶媒混合物は、反応「後処理」ならびに反応物の処理および/または反応生成物の単離、例えばクロマトグラフィーにおいても使用され得る。
精製方法は、当技術分野において知られており、例えば結晶化、クロマトグラフィー(例えば、液相および気相)、抽出、蒸留、トリチュレーションならびに逆相HPLCを含む。温度、実施時間、圧力および雰囲気(不活性ガス、環境)などの反応条件は、当技術分野において知られており、反応に適切であるように調整され得る。
本開示は、単離され、その場で生成され、かつ単離されないにしても、最終的な所望の化合物を得る前に記載される合成手順により生成される構造を含む「中間体」化合物をさらに包含する。一過性の出発材料からの工程の実施により生じる構造、任意の段階で記載の方法から逸脱した結果生じる構造および反応条件下で出発材料を形成する構造は、全て本開示の範囲に含まれる「中間体」である。
さらに、これらの中間体を作製し、かつさらに反応させるためのプロセスも本開示の範囲に包含されるものと理解される。
本明細書では、新規の出発材料および/または中間体ならびにそれらの調製のためのプロセスも提供される。選択された実施形態において、そのような出発材料が使用され、かつ所望の化合物を得るように反応条件が選択される。出発材料は、既知であるか、市販のものであるか、または当技術分野において知られる方法に従うか、もしくは類似する方法において合成され得る。多くの出発材料を既知のプロセスに従って調製し得、また特に実施例に記載されるプロセスを用いて調製し得る。出発材料の合成において、必要に応じて官能基を好適な保護基で保護し得る。保護基、それらの導入および除去は、上に記載されている。
本節では、式Iの化合物およびその作製方法の具体例を提供する。
略称の一覧表
Figure 2020503292
一般的な分析方法および精製方法
本節では、本明細書で提供される特定の化合物を調製するために使用される一般的な分析方法および精製方法の説明が提供される。
クロマトグラフィー:
別段の指示がない限り、粗生成物含有残渣を粗製材料または濃縮物をBiotageまたはIscoブランドのいずれかのシリカゲルカラム(充填済みまたはSiOを用いて個別に充填)に通過させ、かつ指定されるとおりの溶媒勾配を用いてそのカラムから生成物を溶出することによって精製した。例えば、(330gのSiO、0〜40%EtOAc/ヘキサン)という説明は、生成物が、ヘキサン中の0%〜40%のEtOAcの溶媒勾配を用いる、330グラムのシリカで充填されたカラムからの溶出によって得られたことを意味する。
分取HPLC法:
そのように指定される場合、本明細書で記載される化合物を、以下の2つのHPLCカラム:(a)Phenomenex Lunaまたは(b)Geminiカラム(5ミクロンまたは10ミクロン、C18、150×50mm)の1つを利用する以下の機器:Shimadzu、Varian、Gilsonの1つを使用する逆相HPLCによって精製した。
その機器による典型的な実施には、水(0.1%TFA)中の10%(v/v)〜100%のMeCN(0.1%v/v TFA)の直線勾配による10分にわたる45mL/分での溶出が含まれ、条件を変えて最適な分離を達成することができる。
プロトンNMRスペクトル:
別段の指示がない限り、全てのH NMRスペクトルをBruker NMR機器上において300MHzまたは400MHzで収集した。そのように特徴付けられる場合、全ての観察されたプロトンは、指定される適切な溶媒中のテトラメチルシラン(TMS)または他の内部標準からの百万分率(ppm)での低磁場シフトとして報告される。
19F NMRスペクトル
別段の指示がない限り、全ての19F NMRスペクトルをBruker NMR機器上において376MHzで収集した。全ての観察されたプロトンは、百万分率(ppm)での低磁場シフトとして報告される。
質量スペクトル(MS)
別段の指示がない限り、出発材料、中間体および/または例示化合物についての全ての質量スペクトルデータは、(M+H)分子イオンを有する質量/電荷(m/z)として報告される。報告された分子イオンを、PE SCIEX API 150EX MS機器またはAgilent 1100シリーズ LC/MSDシステムを利用するエレクトロスプレー検出法(一般にESI MSと呼ばれる)により得た。当業者により理解されるように、臭素などの同位体原子を有する化合物は、通常、検出された同位体パターンに従って報告される。
化合物の名称
本明細書で開示および記載される化合物は、(1)Chem Officeにおいて利用可能なChem−Draw Ultra 12.0.3ソフトウェアによって提供される命名規則、または(2)ISISデータベースソフトウェア(Advanced Chemistry Design LabsまたはACDソフトウェア)によって提供される命名規則のいずれかを用いて命名された。
具体例
本節では、本明細書で提供される化合物の具体例を合成するための手順が提供される。全ての出発材料は、別途注記のない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company,Inc.、St.Louis、MO、USAから市販されているか、または当技術分野で知られており、かつ通例の技術を用いる既知の手順を使用することによって合成され得る。
中間体
中間体1:(Z)−5−クロロ−2−(1−フルオロ−2−ヨードビニル)ピリジン
Figure 2020503292
2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(1a)の調製
2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(105g、520mmol)をDMSO(1.2L)中の銅(0)粉末(66.0g、1039mmol)の懸濁液に窒素雰囲気下において室温でゆっくりと加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、2−ブロモ−5−クロロピリジン(Shanghai Fchemicals Technology Co.,Ltd.、Shanghai、China)(50.0g、260mmol)を一度に加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌した。これをCeliteのパッドに通して濾過し、濾液を酢酸エチル(1L)と、飽和塩化アンモニウム(100mL)と、水(100mL)との間で分配した。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。合わせた有機溶液を水(2×100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(0〜10%酢酸エチル/ヘキサン)による残渣の精製により、透明な液体として1aを得た(60g、収率64%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=236.0.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.63−8.59(m,1H),7.85(dt,J=8.4,1.6Hz,1H),7.70(dt,J=8.4,0.9Hz,1H),4.11(q,J=7.1,1.0Hz,2H),1.26(t,J=7.1,1.0Hz,3H).
2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2,2−ジフルオロエタン−1−オール(1b)の調製
エタノール(600mL)中の1a(47.0g、199mmol)の溶液に水素化ホウ素ナトリウム(7.5g、199mmol)を0℃で少量ずつ加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。これを水(500mL)でクエンチし、減圧下で濃縮した。粗製材料を水(500mL)で希釈し、酢酸エチル(2×500mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(0〜10%酢酸エチル/ヘキサン)による残渣の精製により、淡黄色固体として1bを得た(35g、収率91%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=194.2.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.64−8.58(m,1H),7.86(dd,J=8.4,2.4Hz,1H),7.70(dt,J=8.5,1.5Hz,1H),4.24(t,J=12.4Hz,2H).注記:OHプロトンは、観察されなかった。
5−クロロ−2−(1,1−ジフルオロ−2−ヨードエチル)ピリジン(1c)の調製
DCM(500mL)中の1b(31g、160mmol)の溶液にトリエチルアミン(49.1mL、352mmol)を0℃で加えた後、塩化メタンスルホニル(23.7mL、304mmol)を滴下して加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を水(500mL)で希釈し、DCM(2×500mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(250mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をN,N−ジメチルアセトアミド(600mL)中で溶解させ、ヨウ化ナトリウム(96g、641mol)で少量ずつ処理した。反応混合物を110℃で36時間加熱した。これを室温に冷却し、水(500mL)で希釈し、酢酸エチル(2×500mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(500mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜10%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、褐色固体として1cを得た(30g、収率60%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=303.9.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.59(s,1H),7.87−7.84(m,1H),7.27(d,J=2.0Hz,1H),4.27(t,J=12.4Hz,2H).
(Z)−5−クロロ−2−(1−フルオロ−2−ヨードビニル)ピリジン(1)の調製
DMSO(50mL)中の1c(30g、99mmol)の溶液に水(50mL)中のKOH(19.4g、346mmol)の溶液を0℃で滴下して加えた。反応混合物を室温で10時間撹拌した。これを水(150mL)で希釈し、15分間撹拌した。沈殿した固体を濾過により回収し、水(2×100mL)で洗浄し、乾燥させて、白色の結晶性固体として(Z)−5−クロロ−2−(1−フルオロ−2−ヨードビニル)ピリジンを得た(1、24.7g、収率87%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=284.0.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.54−8.51(m,1H),7.74(dd,J=8.5,2.4Hz,1H),7.50(ddd,J=8.5,1.8,0.8Hz,1H),6.94(d,J=34.3Hz,1H).
中間体2:(Z)−6−(1−フルオロ−2−ヨードビニル)ニコチノニトリル
Figure 2020503292
2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(2a)の調製
ジメチルスルホキシド(6L)中の銅(0)粉末(Spectrochem PVT.LTD.、Mumbai、India)(413g、6557mmol)の懸濁液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(Matrix Scientific、Columbia、SC、USA)(665g、3279mmol)を窒素雰囲気下において室温で滴下して加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、2−ブロモ−5−シアノピリジン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、USA)(300g、1639mmol)を少量ずつ加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌した。これをceliteのパッドに通して濾過し、濾液を酢酸エチル(3L)と塩化アンモニウム飽和溶液(2.5mL)との間で分配した。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(2×2L)で抽出した。合わせた有機層を水(2×2L)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0〜10%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、無色の油として2aを得た(320g、収率86%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=227.1.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.93(d,J=2.0Hz,1H),8.18(dd,J=8.2,2.1Hz,1H),7.90(dd,J=8.1,1.0Hz,1H),4.39(q,J=7.1Hz,2H),1.34(t,J=7.1Hz,3H).
6−(1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチル)ニコチノニトリル(2b)の調製
THF(1.5L)中の2a(105g、464mmol)の溶液に水素化ホウ素ナトリウム(10.5g、279mmol)を−20℃で少量ずつ加えた。反応混合物を−20℃で30分間撹拌し、メタノール(525mL)を−20℃で滴下して加えた。反応混合物を−20℃で1時間撹拌し、水(500mL)でクエンチした。これを減圧下で濃縮した。残渣を水(0.5L)で希釈し、酢酸エチル(2×1L)で抽出した。合わせた有機溶液をNaSOで乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0〜25%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、淡黄色固体として2bを得た(43.0g、収率50%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=185.1.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.97−8.90(m,1H),8.18(dd,J=8.2,2.1Hz,1H),7.89(dd,J=8.3,0.9Hz,1H),4.29(t,J=12.4Hz,2H).注記:OHプロトンは、観察されなかった。
6−(1,1−ジフルオロ−2−ヨードエチル)ニコチノニトリル(2c)の調製
アセトニトリル(1.3L)中の2b(87g、472mmol)の溶液にピリジン(74.7g、945mmol)を加えた後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、USA)(240g、850mmol)を窒素雰囲気下において−10℃で滴下して加えた。反応混合物を室温で5時間撹拌した。これを0℃に冷却し、ヨウ化ナトリウム(354g、2362mmol)を少量ずつ加えた。反応混合物を60℃で2時間加熱した。これを室温に冷却し、水(2L)で希釈し、酢酸エチル(3×3L)で抽出した。合わせた有機溶液をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗製材料をシリカゲルカラム(0〜10%酢酸エチル/ヘキサン)で精製して、淡黄色固体として2cを得た(107g、収率77%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=295.0.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.95(s,1H),8.17−8.14(m,1H),7.87−7.85(d,J=8.0Hz,1H),3.97(t,J=14.4Hz,2H).
6−(1,1−ジフルオロ−2−ヨードエチル)ニコチノニトリル(2)の調製
THF(580mL)中の2c(58g、197mmol)の溶液にカリウムtert−ブトキシド(26.6g、237mmol)を0℃で少量ずつ加えた。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、NHCl飽和水溶液(100mL)および水(100mL)でクエンチした。これを酢酸エチル(3×700mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(0〜5%酢酸エチル/ヘキサン)による残渣の精製により、淡黄色固体として6−(1,1−ジフルオロ−2−ヨードエチル)ニコチノニトリルを得た(2、33g、収率61%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=274.9.H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 9.04(dd,J=2.1,1.0Hz,1H),8.45(dd,J=8.3,2.1Hz,1H),7.81(dt,J=8.3,1.1Hz,1H),7.42(d,J=36.4Hz,1H).
中間体(3):(Z)−2−クロロ−5−(1−フルオロ−2−ヨードビニル)ピラジン
Figure 2020503292
2−(5−クロロピラジン−2−イル)−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(3a)の調製
DMSO(5L)中の銅(0)粉末(244g、3877mmol)の懸濁液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(394g、1939mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、2−ブロモ−5−クロロピラジン(Shanghai Fchemicals Technology Co.,Ltd.、Shanghai、China)(250g、1292mmol)を少量ずつ加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌し、次に塩化アンモニア飽和水溶液(2.0L)でクエンチした。混合物をceliteパッドに通して濾過し、濾液を酢酸エチル(2×2L)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜2%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、粘着性の無色の液体として3aを得た(215g、収率70%)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 9.05(d,J=1.4Hz,1H),8.98(dd,J=1.4,0.7Hz,1H),4.39−4.34(m,2H),1.24(t,J=7.1Hz,3H).
2−(5−クロロピラジン−2−イル)−2,2−ジフルオロエタノール(3b)の調製
エタノール(400mL)中の3a(215g、909mmol)の溶液に水素化ホウ素ナトリウム(34.4g、909mmol)を0℃で少量ずつ加えた。反応混合物を0℃で30分間撹拌した後、これを水(200mL)でクエンチし、混合物を減圧下で濃縮した。残渣を水(750mL)で希釈し、酢酸エチル(2×1.0L)で抽出した。合わせた有機溶液をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜10%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、無色の液体として3bを得た(130g、収率73%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=195.0.H NMR(300MHz,DMSO−d)δ 8.97(dt,J=1.4,0.7Hz,1H),8.82(d,J=1.4Hz,1H),5.70(t,J=6.4Hz,1H),4.01(td,J=13.8,6.4Hz,2H).
2−クロロ−5−(1,1−ジフルオロ−2−ヨードエチル)ピラジン(3c)の調製
アセトニトリル(1.3L)中の3b(130g、668mmol)の溶液にピリジン(54.0mL、668mmol)を0℃で加えた後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(147mL、869mmol)を滴下して加えた。反応混合物を0℃で30分間、続いて室温で10分間撹拌した。これを室温においてヨウ化ナトリウム(300g、2004mmol)で少量ずつ処理し、続いて70℃で2時間撹拌した。室温に冷却した後、反応物をチオ硫酸ナトリウム飽和水溶液(2.0L)でクエンチし、酢酸エチル(2×2.0L)で抽出した。合わせた有機層を塩水(2.0L)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(2%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、黄色固体として3cを得た(150.0g、収率71%)。H NMR(300MHz,DMSO−d)δ 8.96(s,1H),8.89(s,1H),4.07(t,J=16.4Hz,2H).
(Z)−2−クロロ−5−(1−フルオロ−2−ヨードビニル)ピラジン(3)の調製
DMSO(900mL)中の3c(150g、493mmol)の溶液に5.0MのNaOH水溶液(148mL、740mmol)を加えた。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次に水(100mL)でクエンチし、EtOAc(2×200mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(300mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜5%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、白色固体として(Z)−2−クロロ−5−(1−フルオロ−2−ヨードビニル)ピラジンを得た(3、78g、収率54%)。H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.59(q,J=1.4Hz,1H),8.54(q,J=1.4Hz,1H),7.05(dd,J=34.1,1.3Hz,1H).
実施例
実施例100:(S,Z)−4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−アミン
Figure 2020503292
(4−(2−フルオロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−イル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)カルバミン酸(S)−tert−ブチル(100b)の調製
(4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−イル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)カルバミン酸(S)−tert−ブチル(100a、国際公開第2016022724号パンフレットに記載された方法に従って調製される)(1.07g、2.01mmol)、ジオキサン(11mL)、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.66g、2.62mmol)、酢酸カリウム(592mg、6.04mmol)の混合物をアルゴンで5分間パージし、続いてジクロロメタンとの[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)錯体(0.12g、0.14mmol)で処理した。混合物を85℃に1.5時間加熱した。室温に冷却した後、混合物をceliteのパッドに通して濾過し、ケーキをEtOAcで洗浄した。濾液を真空中で濃縮して、暗褐色の油として(4−(2−フルオロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−イル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)カルバミン酸(S)−tert−ブチル(100b)を得て、これを理論収率であると想定する粗製物として使用した。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=579.
(4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−イル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)カルバミン酸(S,Z)−tert−ブチル(100c)の調製
ジオキサン(1.5mL)および水(0.25mL)中の(4−(2−フルオロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−イル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)カルバミン酸(S)−tert−ブチル(100b、0.100g、0.173mmol)、(Z)−5−クロロ−2−(1−フルオロ−2−ヨードビニル)ピリジン(1、000000000003220020.073g、0.259mmol)、Pd(Amphos)Cl(Sigma−Aldrich)(0.012g、0.017mmol)、KPO(110mg、0.519mmol)の混合物をアルゴンで5分間パージし、続いて80℃で30分間加熱した。混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc/ヘプタン)により精製して、白色固体として(4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−イル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)カルバミン酸(S,Z)−tert−ブチルを得た(100c、58.4mg、収率56%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=608.
実施例100の調製
(4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−イル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)カルバミン酸(S,Z)−tert−ブチル(100c、58.4mg、0.096mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.055g、0.288mmol)およびジオキサン(1.5mL)の混合物を80℃に2.5時間加熱した。混合物をNaCO飽和水溶液で希釈し、EtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(1回目は、勾配としてヘプタン中において0〜100%のEtOAc/EtOH(3:1)を使用し、2回目は、勾配としてDCM中において0〜100%のEtOAcを使用する)により2回精製して、オフホワイトの固体として(S,Z)−4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−アミンを得た(実施例100、22mg、収率60%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=378.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.54(s,1H),7.72(ddd,J=2.15,5.33,7.97Hz,2H),7.57−7.64(m,1H),7.54(dd,J=0.98,8.41Hz,1H),6.92−7.10(m,2H),6.23−6.35(m,2H),4.46(br s,2H),1.74(s,3H).19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −110.77(d,J=1.73Hz,1F),−124.20(d,J=1.73Hz,1F).
実施例101:(S,Z)−6−(2−(3−(2−アミノ−4−メチル−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル
Figure 2020503292
白色固体としての本化合物(32mg、全体的な収率69%)を、ボロン酸エステル100b(106mg、0.18mmol)およびヨウ化ビニル2(65mg、0.24mmol)から出発して実施例100について記載されたものと同様の方法で調製した。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=369.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.82(d,J=0.98Hz,1H),8.01(dd,J=2.05,8.31Hz,1H),7.77(dd,J=2.15,7.82Hz,1H),7.60−7.71(m,2H),7.23(d,J=36.39Hz,1H),7.07(dd,J=8.61,11.35Hz,1H),6.25−6.34(m,2H),1.74(s,3H).NHは、NMRにおいて不明確であった。19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −109.27(d,J=2.60Hz,1F),−125.67(d,J=2.60Hz,1F).
実施例102:(S,Z)−4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−アミン
Figure 2020503292
(S)−4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−アミンHCl塩(102b)の調製
撹拌機、窒素ガス注入口および温度プローブを備える500mLの三口丸底フラスコに1−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−1−エタノン(9.8g、45.2mmol、AAT Pharmaceuticals)およびMe−THF(100mL)を充填した。混合物を−20℃に冷却し、塩化ビニルマグネシウム、テトラヒドロフラン中1.6M溶液(39.5mL、63.2mmol、Sigma Aldrich)をゆっくりと加え、そこで温度を−10℃未満に制御した。次に、反応物を0℃まで温め、2時間撹拌した。反応物を0℃に冷却し、40mLの5重量%NHCl溶液でクエンチした。混合物を室温で撹拌し、二相を分離した。有機層を塩水(300mL)で洗浄し、濃縮して、油として2−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オールを得た(12.0g、収率約100%)。
2−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)ブタ−3−エン−2−オール(58.04g、237mmol)およびチオ尿素(36.02g、473mmol)の混合物に酢酸(475mL、237mmol)に続いて5MのHCl水溶液(48mL、240mmol)を室温で加えた。反応混合物を50℃で3日間加熱し、濃縮した。残渣をトルエン(200mL)で希釈し、真空中で濃縮して、オフホワイトの固体としてカルバムイミドチオ酸(E)−3−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)ブタ−2−エン−1−イル塩酸塩(80.0g、236mmol)を得て、これを粗製物として使用した。
トリフルオロ酢酸(470mL、236mmol)中のカルバムイミドチオ酸(E)−3−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)ブタ−2−エン−1−イル塩酸塩(80.0g、236mmol)の溶液にメタンスルホン酸(61mL、940mmol)を加えた。反応混合物を60℃で2.5日間加熱し、続いて真空下で濃縮した。残渣をEtOAc中で溶解させ、pH>10になるまで5MのNaOH水溶液を滴下して加えて塩基性化した。水相をEtOAc(2回)で抽出し、合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(10〜50%EtOAc(10%MeOH[2M NH])/ヘキサン)による残渣の精製により、淡褐色の固体として4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−アミンを得た(102a、47.6g、収率67%)。材料をキラルSFCにかけて、淡橙色の油として(S)−4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−アミン(第1の溶出ピーク)を得て、これをオフホワイトの固体としての(S)−4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−アミン塩酸塩に変換した(102b、24.98g)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=303/305.SFC条件:CHIRALPAK AS−Hカラム(5μM、21×250mm、S/N=5172);波長=224nmM;移動相=(0.2%ジエチルアミンを含む30%MeOH、70%二酸化炭素);流速=60mL/分;圧力=172Bar;T=40℃。
(S)−N−(4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−イル)ベンズアミド(102c)の調製
DMF(15mL)中の(S)−4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−アミン塩酸塩(102b、1.50g、4.42mmol)の混合物にトリエチルアミン(1.54mL、11.04mmol)および安息香酸無水物(1.34g、5.92mmol)をN下で加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、続いてNaCO飽和水溶液で希釈し、EtOAcで抽出した。有機溶液を水に続いて塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜60%EtOAc/ヘプタン)により精製して、白色固体として(S)−N−(4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−イル)ベンズアミドを得た(102c、1.66g、収率92%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=407,409.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 12.04−12.59(m,1H),8.23(d,J=7.24Hz,2H),7.36−7.55(m,5H),6.92−7.06(m,1H),2.84−2.99(m,2H),2.63−2.79(m,1H),2.06−2.19(m,1H),1.80(s,3H).19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −113.63(s).
実施例102の調製
1,4−ジオキサン(15mL)中の(S)−N−(4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−イル)ベンズアミド(102c、0.84g、2.06mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.68g、2.68mmol)および酢酸カリウム(0.61g、6.19mmol)の混合物をアルゴンでパージし、続いてジクロロメタンとの[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)錯体(0.084g、0.103mmol)を加えた。混合物を100℃で2.5時間加熱し、室温に冷却し、celiteに通して濾過し、ケーキをEtOAcで洗浄した。濾液を真空中で濃縮して、(S)−N−(4−(2−フルオロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−イル)ベンズアミド(102d)を得て、これを粗製物として使用した。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=455.
ジオキサン(1.5mL)および水(0.25mL)中の102d(0.300g、0.66mmol)、ヨウ化ビニル(1、0.187g、0.66mmol)、Pd(Amphos)Cl(0.023g、0.033mmol)、リン酸三カリウム(420mg、1.98mmol)の混合物をアルゴンでパージし、続いて80℃に30分間加熱した。混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc/ヘプタン)により精製して、黄色固体として(S,Z)−N−(4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−イル)ベンズアミドを得た(171mg、収率54%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=484.
EtOH(3mL)中の(S,Z)−N−(4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−イル)ベンズアミド(170mg、0.35mmol)、O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(0.29g、3.51mmol)およびピリジン(0.278g、3.51mmol)の混合物を70℃に1時間加熱した。混合物を真空中で濃縮した。残渣をNaCO飽和水溶液で希釈し、EtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc/EtOH(3:1)/ヘプタン)により精製して、オフホワイトの固体として(S,Z)−4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−アミンを得た(実施例102、78mg、収率58%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=380.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.54(s,1H),7.72(dd,J=2.45,8.51Hz,1H),7.59−7.70(m,2H),7.53−7.58(m,1H),6.96−7.11(m,2H),2.95(ddd,J=3.72,6.26,12.13Hz,1H),2.70(dt,J=3.52,11.64Hz,1H),2.47(ddd,J=3.52,6.06,13.89Hz,1H),1.89(ddd,J=3.52,10.76,14.08Hz,1H),1.64(s,3H).NHは、NMRにおいて不明確であった。19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −111.21(s,1F),−124.00(br.s.,1F).
実施例103:(S,Z)−6−(2−(3−(2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル
Figure 2020503292
20mLのバイアルを実施例102(58mg、0.15mmol)、シアン化亜鉛(54mg、0.45mmol)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル(19mg、0.046mmol)、Pd(dba)(21mg、0.023mmol)およびDMA(3mL)で充填した。バイアルをアルゴンでパージし、密閉した。混合物を120℃で3.5時間加熱し、室温に冷却し、celiteのベッドに通して濾過し、ケーキをEtOAcで洗浄した。濾液を水および塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc/EtOH(3:1)/ヘプタン)により精製して、黄色固体として標題の化合物を得た(実施例103、40.8mg、収率72%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=371.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.83(s,1H),8.01(dd,J=2.05,8.31Hz,1H),7.69(t,J=7.04Hz,3H),7.25(d,J=39.32Hz,1H),7.04−7.12(m,J=8.71,11.83Hz,1H),2.97(dt,J=3.72,6.06Hz,1H),2.70(dt,J=3.52,11.44Hz,1H),2.45(ddd,J=3.62,6.31,13.94Hz,1H),1.92(ddd,J=3.62,10.71,14.04Hz,1H),1.64(s,3H).NHは、NMRにおいて不明確であった。19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −109.73(d,J=1.73Hz,1F),−125.55(br.s.,1F).
実施例104:2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル;および
実施例105:2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル
Figure 2020503292
4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(104b)の調製
メタノール(12mL)中の4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(S)−メチル(104a、国際公開第2016022724号パンフレットに記載された方法に従って調製される)(3.58g、6.07mmol)および水素化トリブチルスズ(Sigma−Aldrich)(5.72mL、21.25mmol)の混合物を室温で3日間撹拌し、続いて真空中で濃縮した。残渣をDMF(10mL)中で溶解させ、炭酸カリウム(0.42g、3.04mmol)に続いてヨードメタン(0.38mL、6.07mmol)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、続いて水で希釈し、EtOAc(3回)で抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜25%EtOAc/ヘプタン)により精製して2種の溶出液を得た:第1の溶出液は、無色の油として回収された104a(1.48g)、MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=589/591であり、第2の溶出液は、無色の油としての4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(104b、1.17g、収率33%、2種のジアステレオマーの混合物として)であった。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=591/593.
2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(2−フルオロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(104c)の調製
1,4−ジオキサン(20mL)中の4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(104b、1.17g、1.98mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.66g、2.61mmol)、酢酸カリウム(0.58g、5.93mmol)の混合物をアルゴンでパージし、続いてジクロロメタンとの[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)錯体(0.097g、0.119mmol)を加えた。混合物を90℃に1時間加熱し、室温に冷却し、celiteのパッドに通して濾過し;ケーキをEtOAcで洗浄した。濾液を真空中で濃縮して、2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(2−フルオロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(104c)を得て、これを粗製物として使用した。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=639.
2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(104d)の調製
1,4−ジオキサン(12mL)および水(2mL)中の粗製のボロン酸エステル104c(1.26g、1.98mmol)、ヨウ化ビニル(1、1.12g、3.96mmol)、ビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(0.14g、0.20mmol)およびリン酸三カリウム(1.32g、6.00mmol)の混合物をアルゴンでパージし、続いて80℃に30分間加熱した。混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。粗製物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜70%EtOAc/ヘプタン)により精製して、ベージュ色の固体として2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチルを得た(104d、1.11g、2工程で収率84%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=668.
実施例104および105の調製
1,4−ジオキサン(5mL)中の2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(104d、0.572g、0.856mmol)および4−メチルベンゼンスルホン酸水和物(0.407g、2.141mmol)の混合物を90℃に1時間加熱した。混合物を真空中で濃縮し、残渣を数滴の濃硫酸で処理した(気泡が形成された)。混合物をNaCO飽和水溶液で中和し、EtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc/DCM)により精製して、104および105のジアステレオマー混合物を得た(153mg、収率41%)。
少量のジアステレオマー混合物を逆相HPLCにかけて、実施例104および105を得た。相対立体化学を任意に割り当てた。2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル(104):MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=438.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.54(d,J=2.35Hz,1H),7.91(dd,J=1.96,8.02Hz,1H),7.72(dd,J=2.45,8.51Hz,1H),7.65(ddd,J=2.25,4.60,8.41Hz,1H),7.55(dd,J=1.27,8.51Hz,1H),6.98−7.13(m,2H),4.24−4.31(m,1H),3.67(s,3H),2.67(dd,J=4.11,13.89Hz,1H),1.87−2.01(m,1H),1.60(s,3H).NHは、不明確であった。19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −111.32(s,1F),−124.18(br.s.,1F).2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル(105):MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=438.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.51−8.57(m,1H),7.73(dd,J=2.45,8.51Hz,1H),7.67(ddd,J=2.35,4.65,8.46Hz,1H),7.56(dd,J=1.37,8.41Hz,1H),7.46(dd,J=2.15,8.02Hz,1H),6.93−7.12(m,2H),3.73(s,3H),3.60(dd,J=3.52,12.72Hz,1H),3.07(dd,J=3.62,13.99Hz,1H),1.73−1.83(m,1H),1.71(d,J=0.78Hz,3H).NHは、不明確であった。19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −110.96(s,1F),−123.74(br.s.,1F).
実施例106:2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル;および
実施例107:2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル
Figure 2020503292
THF(10mL)中の2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(104d、0.55g、0.82mmol)の溶液にリチウムジイソプロピルアミド(1.64mLのTHF/ヘプタン/エチルベンゼン中2M溶液、3.29mmol)を−78℃で滴下して加えた。混合物を1時間撹拌し、続いてヨウ化メチル(0.31mL、4.94mmol)を加え、混合物を室温に徐々に温めた。反応物をNHCl飽和水溶液でクエンチし、EtOAcで抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。粗製物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜50%EtOAc/ヘプタン)により精製して、白色固体として2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(106a、0.23g、収率41%)を得た。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=682.
106a(0.23g、0.33mmol)および硫酸(0.09mL、1.67mmol)の混合物を室温で30分間撹拌し、続いて0℃に冷却し、NaCO飽和水溶液で中和した。混合物をEtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLCにより精製して、実施例106(48mg、収率32%)および107(33mg、収率22%)を得た。相対立体化学を広範なNMR分析により確認した。2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル(106):MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=452.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.54(d,J=2.35Hz,1H),7.72(dd,J=2.45,8.51Hz,1H),7.62(ddd,J=2.35,4.55,8.36Hz,1H),7.55(dd,J=1.27,8.51Hz,1H),7.45(dd,J=2.15,8.02Hz,1H),6.93−7.07(m,2H),4.63(br.s.,2H),3.32(d,J=14.48Hz,1H),3.01(s,3H),1.72(d,J=14.48Hz,1H),1.67(d,J=0.78Hz,3H),1.58(s,3H).19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −109.53(d,J=2.60Hz,1F),−124.20(br.s.,1F).2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル(107):MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=452.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.54(d,J=2.35Hz,1H),7.69−7.77(m,2H),7.63−7.68(m,1H),7.56(dd,J=1.27,8.51Hz,1H),6.96−7.10(m,2H),3.78(s,3H),2.63(d,J=14.48Hz,1H),1.70(br.s.,1H),1.59(s,3H),1.36(s,3H).NHは、不明確であった。19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −111.03(br.s.,1F),−123.91(br.s.,1F).
実施例108:2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル;および
実施例109:2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル
Figure 2020503292
4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(108a)の調製
THF(20mL)中の4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(104b、1.54g、2.60mmol)の混合物にリチウムジイソプロピルアミド(THF/ヘプタン/エチルベンゼン中2.0M溶液、1.95mL、3.90mmol)を−78℃で加えた。黄色の混合物を30分間撹拌し、続いてヨウ化メチル(0.81mL、13.02mmol)を加え、混合物を0℃に徐々に温めた。0℃で1時間撹拌した後、反応物をNHCl飽和水溶液でクエンチし、EtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。粗製物をシリカゲルクロマトグラフィー(0 25%EtOAc/ヘプタン)により精製して、黄色の油として4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチルを得た(108a、1.48g、収率94%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=605/607.
2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(2−フルオロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(108b)の調製
ジオキサン(25mL)中の4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(108a、1.48g、2.44mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.81g、3.17mmol)、酢酸カリウム(0.72g、7.32mmol)の混合物をアルゴンでパージし、続いてジクロロメタンとの[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)錯体(0.12g、0.15mmol)を加えた。混合物を90℃に2.5時間加熱し、室温に冷却し、celiteに通して濾過した。ケーキをEtOAcで洗浄した。濾液を真空中で濃縮して、2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(2−フルオロ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(108b)を得て、これを粗製物として使用した。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=653.
実施例108および109の調製
1,4−ジオキサン(6mL)および水(1mL)中のボロン酸エステル108b(0.500g、0.766mmol)、ヨウ化ビニル2(0.315g、1.149mmol)、ビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(0.054g、0.077mmol)、リン酸三カリウム(505mg、2.298mmol)の混合物をアルゴンでパージし、続いて80℃に30分間加熱した。混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。粗製物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜50%EtOAc/ヘプタン)により精製して、ベージュ色の固体として2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチルを得た(108c、0.397g、収率77%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=673.
1,4−ジオキサン(0.5mL)中の2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(108c、52.5mg、0.078mmol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(39mg、0.207mmol)の混合物を80℃に2時間加熱し、室温に冷却し、NaCO飽和水溶液でクエンチした。混合物をEtOAcで抽出した。有機層を水に続いて塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc:EtOH(3:1)/ヘプタン)により精製して2種の化合物を得た:白色固体としての実施例108(12mg、収率35%)および白色固体としての実施例109(20mg、収率58%)。相対立体化学を実施例106および107のものとのNMRデータ比較によって割り当てた。2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル(108):MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=443.1H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.82(s,1H),8.01(dd,J=2.05,8.31Hz,1H),7.60−7.74(m,2H),7.51(dd,J=2.15,8.02Hz,1H),7.14−7.25(m,1H),7.00−7.08(m,1H),4.28−4.88(m,2H),3.31(d,J=14.28Hz,1H),3.01(s,3H),1.72(d,J=14.48Hz,1H),1.66(d,J=0.78Hz,3H),1.58(s,3H).19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −108.03(s,1F),−125.68(s,1F).2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル(109):MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=443.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.82(d,J=0.98Hz,1H),8.01(dd,J=2.05,8.31Hz,1H),7.82(dd,J=2.05,7.92Hz,1H),7.63−7.73(m,2H),7.15−7.28(m,1H),7.07(dd,J=8.51,11.84Hz,1H),4.56(br.s,2H),3.79(s,3H),2.66(d,J=14.28Hz,1H),2.28(d,J=14.48Hz,1H),1.57(s,3H),1.37(s,3H).19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −109.48(d,J=1.73Hz,1F),−125.51(d,J=1.73Hz,1F).
実施例110:6−((Z)−2−(3−((4S,6S)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル
Figure 2020503292
THF(3mL)および水(3mL)中の108c(0.300g、0.446mmol)および水酸化リチウム水和物(0.037g、0.892mmol)の混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を1NのHCl(3mL)で中和し、続いて真空中で濃縮して酸110aを得て、これを粗製物として使用した。
(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロホスファート(COMU)(Acros Organics)(0.520g、1.214mmol)をDMF(3mL)中の粗製の110aおよびモルホリン(0.317mL、3.64mmol)の溶液に室温で加えた。2時間後、反応混合物をNaCO飽和水溶液およびEtOAcで希釈した。有機層を水に続いて塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。得られた黄色油を1,4−ジオキサン(3mL)中で溶解させ、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.289g、1.518mmol)で処理した。混合物を80℃に2時間加熱し、NaCO飽和水溶液およびEtOAcで希釈した。有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー:0〜100%EtOAc/ヘプタンにより精製した。オフホワイトの半固体として生成物を得た。生成物を、逆相分取HPLC(20分間かけて水(0.1%TFA)中における10%(v/v)〜100%MeCN(0.1%v/v TFA)の直線勾配により45mL/分で溶出するGeminiカラム(5ミクロン、C18、150×30mm))によりさらに精製して、白色固体として6−((Z)−2−(3−((4S,6S)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(4−モルホリニルカルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロエテニル)−3−ピリジンカルボニトリルを得た(110、11mg、収率4%)。2D NMRおよびX線分析の両方により構造を確認した。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=498.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.82(s,1H),8.01(dd,J=2.05,8.31Hz,1H),7.74(dd,J=2.05,7.92Hz,1H),7.62−7.70(m,2H),7.15−7.26(m,1H),7.06(dd,J=8.51,11.84Hz,1H),3.59−3.74(m,8H),2.73(d,J=14.87Hz,1H),2.42(d,J=14.87Hz,1H),1.66(s,3H),1.26(s,3H).NHは、不明確であった。19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −108.90(s,1F),−125.45(s,1F).実施例110の相対立体化学をX線結晶構造およびNMR分析により確認した。
実施例111:6−((Z)−2−(3−((4S,6R)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル
Figure 2020503292
THF(0.3mL)、アセトニトリル(0.3mL)および水(0.2mL)中の2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル(108、38mg、0.086mmol)および水酸化リチウム水和物(12mg、0.274mmol)の混合物を室温で2時間撹拌し、続いてHCl(0.3mLの1M溶液)で処理し、真空中で濃縮した。エーテルを加え、混合物を濃縮して、黄色固体として(4S,6R)−2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸を得て(37mg、100%)、これを粗製物として使用した。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=429.
DMA(2mL)中の(4S,6R)−2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(37mg、0.086mmol)、プロピルホスホン酸無水物溶液(Sigma−Aldrich)(酢酸エチル中50重量%、0.22mL、0.345mmol)およびモルホリン(0.10mL、1.123mmol)の混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を濾過し、ケーキをMeOHで洗浄した。濾液を濃縮し、残渣を逆相HPLC(0.1%TFAを伴う0〜80%水/MeCN)により精製した。画分を1NのNaOHで中和し、DCMで抽出した。有機溶液を濃縮して、白色固体として6−((Z)−2−(3−((4S,6R)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリルを得た(実施例111、10mg、収率23%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=498.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.82(s,1H),8.01(dd,J=2.15,8.22Hz,1H),7.58−7.73(m,3H),7.15−7.27(m,1H),7.06(dd,J=8.22,11.93Hz,1H),4.57(br.s.,2H),3.44−3.58(m,4H),3.31(br.s.,4H),3.02(d,J=14.48Hz,1H),1.99(d,J=14.48Hz,1H),1.70(s,6H).19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −108.05(br.s.,1F),−125.98(s,1F).実施例111の相対立体化学をNMR分析および実施例110のNMRデータとの比較により確かめた。
実施例112:(4S,6R)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;および
実施例113:(4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド
Figure 2020503292
2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピラジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチル(112a)の調製
1,4−ジオキサン(24mL)および水(4mL)中のボロン酸エステル108b(3.11g、4.76mmol)、ヨウ化ビニル3(2.51g、8.81mmol)、ビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(0.30g、0.43mmol)およびKPO(3.14g、14.28mmol)の混合物をアルゴンでパージし、続いて80℃に1時間加熱した。混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜50%EtOAc/ヘプタン)により精製して、黄色固体として2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピラジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S)−メチルを得た(112a、3.12g、収率96%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=683.
(4S)−2−((tert−ブトキシカルボニル)((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)アミノ)−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(112b)の調製
THF(8mL)中の112a(1.02g、1.49mmol)、プロプルギルアルコール(0.924mL、15.630mmol)および炭酸セシウム(1.455g、4.470mmol)の混合物を70℃で一晩加熱し、続いて室温に冷却し、HCl(10mLの1M溶液)で中和した。混合物をEtOAcで抽出した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%(EtOAc/EtOH=3/1)/DCM)により精製して、黄色固体として酸112bを得た(0.30g、収率29%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=689.2種のジアステレオマーの比は、LC積分により判断された約1:6であった。
実施例112および113の調製
DCM(0.5mL)中の酸112b(50.4mg、0.073mmol)、プロパンホスホン酸環状無水物溶液(酢酸エチル中50重量%、0.10mL、0.146mmol)およびメタンアミン(THF中2.0M溶液、0.18mL、0.366mmol)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応物をNaHCO飽和水溶液でクエンチし、EtOAcで抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc/ヘプタン)により精製して、白色固体としてアミド112cを得た(36.8mg、72%)。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=702.
1,4−ジオキサン(1mL)中のアミド112c(32.8mg、0.047mmol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(17mg、0.089mmol)の混合物を80℃で1時間加熱した。室温に冷却した後、混合物をNaCO飽和水溶液で中和し、EtOAcで抽出した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc/EtOH(3:1)/ヘプタン)により精製して、2種の化合物を得た:第1の溶出液は、白色固体としての実施例112(2mg、収率9%)であり、第2の溶出液は、白色固体としての実施例113(12mg、収率55%)であった。立体化学をNMR分析に基づいて割り当てた。(4S,6R)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド(112):MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=472.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.38(s,1H),8.26(s,1H),7.55(ddd,J=2.25,4.45,8.36Hz,1H),7.35(dd,J=2.15,7.82Hz,1H),7.02(dd,J=8.41,11.74Hz,1H),6.72−6.86(m,1H),6.51(d,J=4.69Hz,1H),5.00−5.06(m,2H),5.00−5.06(m,2H),3.52(d,J=14.28Hz,1H),2.81−2.87(m,1H),2.49−2.56(m,1H),2.08(d,J=4.70Hz,3H),1.66(s,3H),1.55(s,3H).19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −108.28(br.s.,1F),−126.46(d,J=40.75Hz,1F).(4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド(113):MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=472.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.38(s,1H),8.26(s,1H),7.76(dd,J=2.15,7.82Hz,1H),7.61(ddd,J=2.25,4.60,8.41Hz,1H),7.05(dd,J=8.51,11.64Hz,2H),6.74−6.93(m,1H),5.03(d,J=2.35Hz,2H),3.09(d,J=14.09Hz,1H),2.85(d,J=4.89Hz,3H),2.53(t,J=2.35Hz,1H),1.69(d,J=14.09Hz,1H),1.50(s,3H),1.49(br.s.,3H).NHは、不明確であった。19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −110.85(br.s.,1F),−125.90(d,J=39.88Hz,1F).
実施例114:((4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−イル)(モルホリノ)メタノン
Figure 2020503292
白色固体としての本化合物(10mg、全体的な収率26%)を、モルホリン(13mg、0.146mmol)および酸112b(50mg、0.073mmol)から出発して実施例113について記載されたものと同様の方法で調製した。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=528.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.37(s,1H),8.25(s,1H),7.58−7.69(m,2H),7.04(dd,J=8.31,11.84Hz,1H),6.75−6.92(m,1H),5.03(d,J=2.35Hz,2H),3.66(dd,J=4.21,17.31Hz,8H),2.77(d,J=14.67Hz,1H),2.53(t,J=2.35Hz,1H),2.37(d,J=14.87Hz,1H),1.66(s,3H),1.25(s,3H).NHは、不明確であった。19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −110.82(br.s.,1F),−125.57(d,J=39.88Hz,1F).相対立体化学を実施例110と類似の方法で2D NMRにより確認した。
実施例115:(4S,6S)−2−アミノ−N−(2,2−ジフルオロエチル)−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド
Figure 2020503292
白色固体としての本化合物(13mg、全体的な収率34%)を、2,2−ジフルオロエチルアミン(Matrix Scientific)(30mg、0.366mmol)および酸112b(50mg、0.073mmol)から出発して実施例113について記載されたものと同様の方法で調製した。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=522.H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ 8.38(s,1H),8.26(s,1H),7.77(dd,J=1.86,7.92Hz,1H),7.57−7.65(m,1H),7.26−7.30(m,1H),7.05(dd,J=8.41,11.74Hz,1H),6.76−6.91(m,1H),5.69−6.07(m,1H),4.94−5.10(m,2H),5.03(d,J=2.35Hz,2H),3.55−3.76(m,2H),3.08(d,J=14.09Hz,1H),2.53(t,J=2.35Hz,1H),1.71(d,J=14.09Hz,1H),1.51(s,3H),1.49(s,3H).19F NMR(376MHz,クロロホルム−d)δ −111.09(br.s.,1F),−123.18−−122.72(m,1F),−125.83(d,J=39.88Hz,1F).相対立体化学を実施例110と類似の方法で2D NMRにより確認した。
実施例116:(4S,6S)−2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド
Figure 2020503292
本化合物を、エステル109から出発して実施例111について記載されたものと同様の2工程のプロトコルで調製した。MS(ESI 陽イオン)m/z:[M+1]=442.H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 9.07(s,1H),8.44(dd,J=2.05,8.31Hz,1H),7.96(d,J=6.85Hz,1H),7.85(d,J=8.22Hz,2H),7.69(br.s.,1H),7.15−7.35(m,2H),6.05(br.s.,2H),3.28(s,1H),2.62(d,J=4.50Hz,3H),2.54(d,J=4.69Hz,1H),1.37(s,3H),1.24(s,3H).19F NMR(376MHz,DMSO−d)δ −109.64(br.s.,1F),−124.59(d,J=39.88Hz,1F).
生物学的評価
本節では、本明細書で提供される具体例の生物学的評価が提供される。特に、表2は、生物活性のデータを含有する。表2に提示されるデータは、BACE1酵素アッセイ、BACE1細胞アッセイ、BACE2酵素アッセイおよびCatDアッセイにおいて得られる具体例についてのIC50(μM)を提供する。
Figure 2020503292
表2において提示される結果は、下記のインビトロアッセイにより生成された。これらのアッセイを使用して、本明細書で記載される化合物のいずれかを試験して、BACE活性を調節し、かつAβ前駆体タンパク質の切断を制御して、それによりAβタンパク質の産生を減少させるか、または阻害する化合物の能力を評価しかつ特徴付け得る。
インビトロでの酵素的BACE1およびBACE2のFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)アッセイ
C末端に6−Hisタグを有するヒト組換え体BACE1およびBACE2の両方に関するcDNAを一過性タンパク質発現ベクターにクローン化し、続いて哺乳動物細胞株にトランスフェクトした。これらの組換え体タンパク質を、Ni−NTA親和性クロマトグラフィー(Qiagen)を用いてさらに精製した。これらの選別で使用されるアッセイ緩衝液は、0.05M酢酸塩、pH4.5、最終濃度8%のDMSO、100μMゲナポール(その臨界ミセル濃度未満の非イオン性界面活性剤である)であった。通常、段階希釈に従う約1uLのDMSO中において試験化合物と1時間プレインキュベートされたβ−セクレターゼ酵素(BACE1に関して0.02nM、BACE2に関して0.64nM)をそれに加えた。FRET基質(50nM)の添加によりアッセイを効率的に開始し、その複合物を1時間インキュベートした。pHを中性に上げるトリス緩衝液の添加によりFRETアッセイを終了させ、蛍光を測定した。FRET基質は、BACE切断部位の反対側に市販のフルオロフォアおよびクエンチャーを有するペプチドであった。このアッセイに用いられる特定のFRET基質は、Amgenの社内で作製された。市販のFRET基質、例えばThermoFisher Scientificによって販売されるBACE1 FRETアッセイキット(カタログ番号P2985)と共に提供されるFRET基質を当業者の技量の範囲内で適切に変更して本アッセイに使用し得る。FRET基質のタンパク質切断により、蛍光の消光を解除した(励起488nmおよび発光590nm)。
実施例の各々についてのインビトロでのBACE FRET酵素データが表2に提供される。
インビトロのBACE1細胞ベースアッセイ
細胞ベースアッセイにより、試験化合物で処理されたアミロイド前駆体タンパク質を発現する細胞の馴化培地におけるAβ40の阻害または減少を測定する。アミロイド前駆体タンパク質(APP)を安定に発現する細胞を45K細胞/ウェルの密度で384ウェルプレート(Corning/BioCoat 354663)に蒔いた。次に、試験化合物を、開始濃度が62.5μMである22段階の用量反応濃度で細胞に加えた。化合物をDMSO中の原液から希釈し、細胞に対する試験化合物の最終DMSO濃度は、0.625%であった。10%FBSを加えたDMEM中において、37℃および5%COで細胞を一晩培養した。試験化合物との24時間のインキュベーション後、馴化培地を回収し、HTRF(ホモジニアス時間分解蛍光法)を用いてAβ40レベルを測定した。化合物のIC50を、試験化合物の濃度の関数として対照のパーセントまたはAβ40の阻害パーセントから算出した。
Aβ40を検出するHTRFを384ウェルプレート(Costar 3658)において実施した。細胞上清からAβ40を検出するために使用された抗体ペアは、ConfAb40抗体(Amgen内製)およびビオチン化6E10(BIOLEGEND)であった。ConfAb40に代えて、市販の抗体であるAbcam、Cambridge、MA 02139−1517からの抗βアミロイド1−40抗体[BDI350](製品コード:ab20068)を本アッセイで使用し得る。濃度は、HTRF緩衝液(1Mヘペス pH7.5、1M NaCL、1%BSA、0.5%Tween 20)中において、0.35μg/mLのConfAb40抗体および1.33μg/mLの6E10ビオチン化抗体ならびに4.5μg/mLのストレプトアビジンアロフィコシアニンコンジュゲート(ThermoFisher Scientific)であった。
馴化培地を上記抗体およびストレプトアビジンアロフィコシアニンコンジュゲートと23℃で30〜60分間インキュベートした。最終的な読み取りは、PerkinElmerのEnvisionで実施した。
実施例の各々についてのインビトロでのBACEの細胞ベースのデータが表2に提供される。
インビトロでの酵素的カテプシンD(CatD)FRETアッセイ
組換え体CatDは、CHO細胞で発現された。CatDのためのアッセイ緩衝液は、0.05Mのクエン酸塩pH3.5、最終濃度10%DMSO、5mMのCHAPSであった。通常、段階希釈に従う約1uLのDMSO中において阻害剤と1時間プレインキュベートされたCatD酵素(9nM)をそれに加える。様々なFRET基質(CatDに関して20nM)の添加によりアッセイを効率的に開始し、その複合物を1時間インキュベートした。pHを中性に上げるトリス緩衝液の添加によりFRETアッセイを終了させ、蛍光を測定した。FRET基質は、CatD切断部位の反対側に市販のフルオロフォアおよびクエンチャーを有するペプチドであった。CatD基質のペプチド配列は、Gulnik et al.,FEBS Lett.413(2):379−384(1997)の表1の配列番号1に基づいた。FRET基質のタンパク質切断により、蛍光の消光を解除した(CatD励起500nmおよび発光580nm)。
あるいは、CatDアッセイは、Yasuda et al.,J.Biochem.125(6):1137−1143(1999)に記載される手順に従って実施してもよい。加えて、CatDおよびカテプシンEアッセイは、国際特許出願国際公開第2011069934号パンフレットに記載されている。
実施例の各々についてのインビトロでのCatD FRETアッセイデータは、表2に提供され、上記の1つ目の手順で実施された。高マイクロモル濃度のCatDのデータ(CatDに対して非常に低活性または不活性)によって示されるとおり、本明細書で開示される化合物は、CatDの活性を阻害する能力がほとんど乃至全くないという予期しない特性を有する。したがって、この驚くべき選択性プロファイルにより、本明細書で提供される化合物は、網膜萎縮症ならびに眼および網膜色素上皮の異常発生の任意のリスクがCatDの正常な機能および活性に関連するため、そのリスクを最小化、低減化または完全に排除すると考えられる。
β−セクレターゼのインビボでの阻害
マウス、ラット、イヌおよびサルを含むいくつかの動物モデルを使用して、試験化合物投与後にインビボでのβ−セクレターゼ活性の阻害を検査し得る。本手順を使用して、本明細書で提供される化合物は、脳内だけでなく脳脊髄液(CSF)中におけるAβペプチドの形成および/または沈着を低減することが示され得る。本実験で使用される動物は、野生型動物、トランスジェニック動物または遺伝子ノックアウト動物であり得る。例えば、Hsiao et al.,Science 274:99−102(1996)において記載されるとおりに作製および実施されるTg2576マウスモデルおよび他の非トランスジェニック動物または遺伝子ノックアウト動物は、試験化合物の存在下におけるAβペプチド産生のインビボ阻害を解析するのに有用である。
一般に、2ヶ月齢〜18ヶ月齢のTg2576マウス、遺伝子ノックアウトマウスまたは非トランスジェニック動物に対し、シクロデキストラン、リン酸緩衝液、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他の好適なビヒクルなどのビヒクル中に製剤化された試験化合物を投与する。化合物の投与から1時間〜24時間後に動物を殺処理し、脳ならびに脳脊髄液(CSF)および血漿をAβレベルおよび試験化合物の濃度の分析のために取り出す(Dovey et al.,J.Neurochem.,76(1):173−181(2001))。0時点より、標準的な従来の製剤、例えば2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、1%Tween 80中の最大で100mg/kgの阻害性試験化合物を強制経口投与または静脈内注射などの他の送達手段によって動物に投与する。別の群の動物は、試験化合物を含有しない2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、1%Tween 80のみを受容し、ビヒクル対照群としての役割を果たす。試験期間の最後に動物を殺処理し、脳組織、血漿または脳脊髄液を回収する。脳を10倍体積の50mMのNaCl中0.2%のジエチルアミン(DEA)(w/v)(Best et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.313(2):902−908(2005))または10倍体積のトリス−緩衝生理食塩水(約7.6のpH)中の0.5%TritonX−100のいずれかにおいてホモジナイズする。ホモジネートを355,000g、4℃で30分間遠心分離する。次に、CSFまたは脳上清をECL(電気化学発光)技術に基づく特異的サンドイッチELISAアッセイによりAβの存在について分析する。例えば、ラットAβ40は、捕捉抗体としてのビオチン化−4G8(Signet)および検出抗体としてのFab40(Aβ40のC末端に特異的な内製の抗体)を使用して測定される。例えば、200gの雄スプラーグドーリーラットへの2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、1%Tween 80(pH2.2)中の30mg/kgの経口用量の試験化合物の投与から4時間後、Aβペプチドレベルは、ビヒクル処理、すなわち対照マウスで測定されたレベルと比較する場合、脳脊髄液および脳においてそれぞれX%およびY%の減少と測定される。あるいは、Meso Scale Diagnostics(MSD)、Rockville、Maryland 20850−3173から市販されているV−PLEX abeta40ペプチド(4G8)キット(カタログ番号K150SJE−1)と共に販売される抗体を本アッセイに使用し得る。
本手順を使用して、本明細書で提供される化合物は、4時間後に3mpk、10mpkまたは30mpk(mpk=動物のkg体重当たりのmg化合物)の投与濃度のいずれかでマウスまたはラットの脳脊髄液(CSF)ならびに脳におけるAβペプチドの形成および/または沈着を低減することが示され得る。
使用方法
アミロイドカスケード仮説によれば、アミロイド−β(Aβ)ペプチドの脳沈着は、アルツハイマー病(AD)の病因にとって重大な意味を有する。Aβペプチドの生成は、β−セクレターゼ(BACE1)がアミロイド前駆体タンパク質を切断するときに開始される。De Meyerらは、対象の脳脊髄液(CSF)におけるAβペプチドの蓄積が最初に軽度の認知機能障害として明らかになり、最終的にADにつながる症状の進行における推定上の役割を再確認している。Arch Neurol.67(8):949−956(2010)。β−セクレターゼ(BACE)およびγ−セクレターゼを含む、例えばアスパルチルプロテアーゼ酵素によるタンパク質切断によってアミロイド前駆体タンパク質(APP)から生成されるAβペプチドは、ADの病因において原因となる役割を果たしている可能性がある(Tanzi et al.,Cell 120(4):545−555(2005);Walsh et al.,Neuron 44(1):181−193(2004))。Aβの毒性の詳細な機構は、不明であるが、Aβのオリゴマー形態がシナプス構造およびシナプス機能を変えることによって認知の低下に寄与している可能性がある(Palop et al.,Nat.Neurosci.13(7):812−818(2010);Selkoe,Behav.Brain Res.192(1):106−113(2008);Shankar et al.,Nat.Med.14(8):837−842(2008))。変異体APPを過剰発現し、かつ高レベルのAβを生成するトランスジェニックマウスモデルは、アミロイドプラークの沈着、シナプス欠損、学習および記憶障害ならびに他の行動異常を示す(Games et al.,Nature 373:523−527(1995);Goetz et al.,Mol.Psychiatry 9(7):664−683(2004);Hsia et al.,Proc.Natl.Academy of Science USA(96):3228−3233,1999;Hsiao et al.,Science(274):99−102,1996,citing Harris et al,Neuron(68):428−441,2010)。
長年にわたり、BACE1は、ADを予防または治療するための薬剤を設計するための主要な標的であった。Vassar et al.,Lancet Neurol.13:319−329(2014)。いくつかの製薬企業は、現在、ヒト臨床試験においてBACE1阻害剤を追求している。同文献の要約書。
例えば、BACE1の小分子阻害剤であるMK−8931は、第I相臨床試験に入った最初の分子であった。Yan,Transl.Neurodegener.5(13):1−11(2016)4頁。MK−8931は、直ちに顕著な副作用がなく優れた安全性プロファイルを有することが示された。同文献。Merckは、MK−8931が持続的かつ用量依存的にCSFのAβペプチド濃度を有意に低減したことを示すことにより、MK−8931が脳に入り、β−セクレターゼを遮断することを示すことができた。Vassar et al.,Lancet Neurol.13:319−329(2014)323頁。MK−8931は、現在、健忘性の軽度の認知機能障害(前駆AD)を有するAD患者の治療のための化合物の効力および安全性を評価するために第II/III相臨床試験において評価されている。Yan,Transl.Neurodegener.5(13):1−11(2016)4頁。
さらに、Eisaiによって同定されたBACE阻害剤であるE2609は、非ヒト霊長類のCSFおよび血漿中のAβペプチドレベルにおいて有意な低減を示した。Yan,Transl.Neurodegener.5(13):1−11(2016)7頁。E2609は、第I相臨床試験において、最大200mgの用量を繰り返した後に臨床上有意な安全性への懸念を示さなかった。同文献。14日の投与後、CSF中のAβペプチドレベルの低減は、ベースラインと比較して統計的に有意であった(46.2%(25mg)、61.9%(50mg)、73.8%(100mg)、79.9%(200mg))。同文献。2014年11月、Eisaiは、ADまたは前駆ADに起因する軽度の認知機能障害(MCI)および陽性のアミロイドPET−スキャンを有する患者における第II相用量設定試験をBiogenと共同で実施することを表明した。
加えて、企業は、無症候性の患者を標的とする療法も開発している。日本の塩野義製薬株式会社によって最初に開発され、後にJanssenと共同で開発されたJNJ−54861911は、血液脳関門を通過し、かつAβペプチドの濃度を用量依存的に低減する能力を実証した。Yan,Transl.Neurodegener.5(13):1−11(2016)5−7頁。例えば、1日1回の95mgの経口用量により、CSFにおいて最大95%のAβペプチドの減少を達成した。同文献。2015年10月、Janssenおよび塩野義製薬は、アルツハイマー型認知症を発症するリスクのある無症候性の対象を標的とする第II/III相試験に着手した。同文献。
同様に、AmgenおよびNovartisは、2015年末にNovartisのBACE阻害剤CNP520を共同開発するための提携を発表した。Yan,Transl.Neurodegener.5(13):1−11(2016)8頁。この研究は、とりわけ、CNP520が「参加者の年齢および遺伝子型に基づいて臨床症状を発症するリスクのある参加者のアルツハイマー病(AD)と関連する臨床症状の発症および進行を遅延させることができる」ことを示すことを目指している。https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02565511(最終アクセス日2016年10月23日)。
本明細書で開示される化合物は、本明細書で開示される具体例に関する表2に示されるとおりにβ−セクレターゼ酵素の活性を調節し、かつ特異的に阻害して、それによりAβペプチドの生成を低減することが示された。したがって、本明細書で提供される化合物は、例えば、ADを含むが、これに限定されないβ−セクレターゼ関連疾患の予防または治療に有用である。本明細書で提供される化合物は、β−セクレターゼ酵素の活性を調節し、それにより脳脊髄液および脳の両方におけるAβペプチドの生成を制御し、かつAβペプチドの形成および沈着を低減して、脳におけるAβプラークの減少をもたらす能力を有する。
より具体的には、本明細書で開示される化合物のための以下の使用が提供される。
対象の脳脊髄液におけるβアミロイドペプチドレベルを低減するのに使用するための、本明細書で開示される化合物が提供される。
対象におけるAD、認知機能障害またはこれらの組み合わせを治療するのに使用するための、本明細書で開示される化合物が提供される。一実施形態において、本明細書で提供される化合物は、軽度、中等度および重度のADを含むが、これらに限定されない、ADの様々な段階および程度を治療するのに有用である。別の実施形態において、本明細書で提供される化合物は、発症前AD、ADに起因する軽度の認知機能障害(MCI)およびADに起因する認知症を治療するのに有用である。さらに別の実施形態において、本明細書で提供される化合物は、前駆対象を治療するために使用され得る。
対象における軽度の認知機能障害、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管症、変性性認知症、パーキンソン病に関連する認知症、核上性麻痺に関連する認知症、大脳皮質基底核変性症に関連する認知症、びまん性レビー小体型ADまたはこれらの組み合わせから選択される神経障害を治療するのに使用するための、本明細書で開示される化合物が提供される。
対象の脳におけるプラークの形成を低減するのに使用するための、本明細書で開示される化合物が提供される。
前述したとおり、ある種の実施形態では、本明細書で記載される化合物は、その全ての立体異性体、互変異性体、同位体標識形態、または前述のもののいずれかの薬学的に許容される塩、または前述のもののいずれかの溶媒和物、または前述のもののいずれかの非結晶形態および結晶形態(多形)を含むものと理解されるべきである。したがって、本開示において提供される方法および使用の範囲は、全てのこのような形態を用いる方法および使用も包含するものと理解されるべきである。
ヒトの治療に有用である他に、本明細書で提供される化合物は、哺乳類、齧歯類などを含むコンパニオンアニマル、エキゾチックアニマルおよび家畜の獣医学的治療に有用であり得る。例えば、ウマ、イヌおよびネコを含む動物を本明細書で提供される化合物で治療し得る。
用量、処方および投与経路
投与される化合物の量ならびに本明細書で開示される化合物および/または組成物による神経障害およびβ−セクレターゼ介在性疾患の治療のための投与計画は、対象の年齢、体重、性別および医学的状態、疾患の種類、疾患の重症度、投与の経路および頻度ならびに使用される特定の化合物を含む様々な要因に依存する。約0.01〜500mg/kg、またはいくつかの実施形態では約0.01〜約50mg/kg、およびさらに他の実施形態では約0.01〜約30mg/kg体重の1日用量が適切であり得る。さらに他の実施形態では、約0.1〜約10mg/kg体重の1日用量が適切である場合があり、かつ本明細書で開示される全ての使用に有用であるはずである。1日用量は、1日当たり1〜4回の投与など1日に複数回投与され得る。
開示される使用において、本明細書で開示される化合物を単独で投与することも可能であろうが、投与される化合物は、通常、医薬組成物中の活性成分として存在することになる。したがって、別の実施形態において、本明細書では、本明細書で開示される化合物を希釈剤、担体、アジュバントなどの薬学的に許容される賦形剤ならびに必要に応じて他の活性成分と併せて含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の本明細書で開示される化合物を含み得る。
本明細書で開示される化合物は、任意の好適な投与経路により、そのような経路に適合した医薬組成物の形態および目的の治療に有効な用量で投与され得る。本明細書の化合物および組成物は、担体、アジュバントおよびビヒクルなどの通常の薬学的に許容される賦形剤を含有する投与単位製剤で、例えば経口的に、粘膜的に、局所的に、直腸的に、例えば吸入スプレーによって肺的に、または血管内、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、胸骨内および点滴技術などによって非経口的に投与され得る。
経口投与のために、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、懸濁液または液体の形態であり得る。医薬組成物は、通常、特定量の活性成分を含有する投与単位の形態で作製される。このような投与単位の例は、錠剤またはカプセルである。例えば、これらは、約1〜2000mg、約1〜500mgおよび約5〜150mgの活性成分量を含有し得る。
治療目的のため、本明細書で提供される化合物は、通常、1つ以上の希釈剤または指定の投与経路に適切な他の「賦形剤」と組み合わされる。
1用量基準で経口投与される場合、本明細書で提供される化合物をラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンならびに/またはポリビニルアルコールと混合して最終製剤を形成し得る。例えば、活性化合物および賦形剤は、簡便な投与のための既知の許容される方法により、打錠またはカプセル化され得る。好適な製剤の例には、丸剤、錠剤、軟質および硬質シェルゲルカプセル、トローチ、経口的に溶解可能な形態ならびにそれらの遅延放出製剤もしくは徐放製剤などがあるが、これらに限定されるものではない。特に、カプセルまたは錠剤製剤は、活性化合物と共に分散剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの1つ以上の徐放剤を含み得る。
非経口投与用の製剤は、水系もしくは非水系等張性無菌注射溶液または懸濁液の形態であり得る。これらの溶液および懸濁液は、経口投与用の製剤での使用に関して言及される担体もしくは希釈剤の1つ以上を用いるか、または他の好適な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤を用いることにより、無菌の粉末または顆粒から調製され得る。本化合物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ごま油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、トラガカントゴムおよび/または各種緩衝液中で溶解され得る。他の賦形剤および投与方法は、製薬業界で十分かつ広く知られている。活性成分は、生理食塩水、デキストロースまたは水などの好適な賦形剤と共に、プロピレングリコールなどの共溶媒または例えばTween 80などの乳化剤の1つ以上を任意選択的に含む組成物として注射によっても投与され得る。このような製剤は、シクロデキストリン(例えば、Captisol)などの化合物も含み得る。
無菌注射製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液としての無菌注射溶液または懸濁液でもあり得る。使用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、溶媒または懸濁媒体として無菌の固定油が通常使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意のブランドの固定油が使用され得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製に使用される。
活性成分は、生理食塩水、デキストロースまたは水などの好適な担体との組成物として注射によっても投与され得る。1日の非経口の投与計画は、約0.1〜約30mg/総体重kgとなり、いくつかの実施形態では約0.1〜約10mg/kgであり得る。
経肺投与のために、医薬組成物は、エアロゾルの形態においてまたは乾燥粉末エアロゾルを含む吸入器で投与され得る。
医薬組成物は、滅菌などの従来の製薬操作にかけられ得、かつ/または保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などの従来の賦形剤を含有し得る。錠剤および丸剤は、腸溶性コーティングを用いてさらに調製することができる。このような組成物は、湿潤剤、甘味剤、香味剤および芳香剤などの賦形剤も含み得る。したがって、本開示のさらに別の実施形態では、ある量の式Iによる化合物を薬学的に許容される希釈剤と組み合わせて薬剤を製造する工程を含む、薬剤の製造方法が提供される。
さらに別の実施形態において、本明細書では、ある量の本明細書で提供される化合物を薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて薬剤を製造する工程を含む、ADの治療のための薬剤の製造方法が提供される。
併用
本明細書で開示される化合物は、単独の活性医薬品として服用または投与することができるが、それらは、1つ以上の本明細書で提供される化合物と併用するか、または他の薬剤と組み合わせて用いることができる。併用剤として投与する場合、治療剤は、同時または異なる時点で逐次的に投与される別個の組成物として製剤化され得るか、または治療剤を単一の組成物として与え得る。
本明細書で提供される化合物および別の医薬品の使用を定義する上での「併用療法(co−therapy)」(または「併用療法(combination−therapy)」)という語句は、薬剤の組み合わせの有益な効果を提供することになる投与計画で逐次的な各薬剤の投与を包含するものであり、かつこれらの活性薬剤の固定比を有する単一カプセル中または各薬剤についての複数の別個のカプセル中などにおける実質的に同時のこれら薬剤の同時投与を包含するものでもある。
具体的には、本明細書で提供される化合物の投与は、β−セクレターゼ、γ−セクレターゼの予防もしくは治療において当業者に知られるさらなる療法ならびに/またはAβペプチドの形成および/もしくは沈着に影響を及ぼすか、そうでなければ脳でのプラークの形成に関与することが知られる他の試薬と併用され得る。
固定用量として製剤化される場合、そのような組み合わせ品は、許容される投与量範囲内で本明細書に開示される化合物を用いる。本明細書で提供される化合物は、他の既知の医薬と共に逐次的にも投与され得る。本開示は、投与の順序において限定されず、本明細書で提供される化合物は、既知の抗炎症剤の投与前、それと同時、またはその後に投与され得る。
前述の説明は、例示に過ぎず、本開示を記載された化合物、組成物および方法に限定することを意図するものではない。当業者にとって明らかである変形形態および変更形態は、添付の特許請求の範囲で定義されるとおりの本発明の範囲および性質に含まれるものである。以上の説明から、当業者は、本発明の本質的特徴を容易に確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく本発明の種々の変更形態および改変形態を行って本発明を各種の用途および条件に適合させることができる。
本明細書で引用された全ての参考文献、例えば科学論文または特許出願公報は、各参考文献があらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されるのと同程度に、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。

Claims (32)

  1. 式I
    Figure 2020503292
    (式中、
    およびR1’は、独立して、H、C1〜6アルキル、−C(O)OC1〜6アルキル、−C(O)NHC1〜6アルキルまたは−C(O)−ヘテロシクロアルキルであり、前記C1〜6アルキルならびに−C(O)OC1〜6アルキルおよび−C(O)NHC1〜6アルキルのC1〜6アルキル部分は、1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され;
    およびR2’は、Hであり;
    bは、R、R1’、RおよびR2’が存在する場合、単結合であり;
    bは、RおよびR1’の1つならびにRおよびR2’の1つが存在しない場合、二重結合であり;
    は、C1〜4アルキルであり;
    は、ハロゲンであり;
    は、HまたはFであり;および
    およびRの1つは、FまたはHであり、かつRおよびRの他方は、6員窒素含有ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは、ハロゲン、−CNまたは2−プロピニルオキシで任意選択的に置換され、R、RまたはRの少なくとも1つは、Fである)
    の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  2. 式Iの前記化合物は、式II
    Figure 2020503292
    の化合物である、請求項1に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  3. 式Iの前記化合物は、式IIIA
    Figure 2020503292
    の化合物である、請求項1に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  4. 式Iの前記化合物は、式IIIB
    Figure 2020503292
    の化合物である、請求項1に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  5. は、H、
    Figure 2020503292
    であり;および
    1’は、Hまたはメチルである、請求項1、2または4のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  6. 1’は、メチルである、請求項1、2、4または5のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  7. は、メチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  8. は、Fである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  9. およびRは、FまたはHであり、かつRおよびRの他方は、ピリジルまたはピラジニルであり、前記ピリジルまたはピラジニルは、Cl、−CNまたは2−プロピニルオキシで任意選択的に置換される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  10. およびRは、FまたはHであり、かつRおよびRの他方は、ピリジルまたはピラジニルであり、前記ピリジルまたはピラジニルは、−CNまたは2−プロピニルオキシで任意選択的に置換される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  11. およびRの1つは、
    Figure 2020503292
    である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  12. およびRの1つは、
    Figure 2020503292
    である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  13. は、Fであり;および
    は、Hである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  14. は、Fであり;および
    は、Hである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  15. は、Hであり;および
    は、Fである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  16. は、Hであり;および
    は、Fである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  17. (S,Z)−4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−4H−1,3−チアジン−2−アミン;
    (S,Z)−6−(2−(3−(2−アミノ−4−メチル−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
    (S,Z)−4−(5−(2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−アミン;
    (S,Z)−6−(2−(3−(2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
    2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル;
    2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル;
    2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル;
    2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−クロロピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル;
    2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル;
    2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル;
    6−((Z)−2−(3−((4S,6S)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
    6−((Z)−2−(3−((4S,6R)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
    (4S,6R)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;
    (4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;
    ((4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−イル)(モルホリノ)メタノン;
    (4S,6S)−2−アミノ−N−(2,2−ジフルオロエチル)−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;または
    (4S,6S)−2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド
    から選択される、請求項1の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  18. (S,Z)−6−(2−(3−(2−アミノ−4−メチル−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
    (S,Z)−6−(2−(3−(2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
    2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6R)−メチル;
    2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボン酸(4S,6S)−メチル;
    6−((Z)−2−(3−((4S,6S)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
    6−((Z)−2−(3−((4S,6R)−2−アミノ−4,6−ジメチル−6−(モルホリン−4−カルボニル)−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−4−イル)−4−フルオロフェニル)−1−フルオロビニル)ニコチノニトリル;
    (4S,6R)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;
    (4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(2−プロピン−1−イルオキシ)−2−ピラジニル)エテニル)フェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;
    ((4S,6S)−2−アミノ−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−イル)(モルホリノ)メタノン;
    (4S,6S)−2−アミノ−N−(2,2−ジフルオロエチル)−4−(2−フルオロ−5−((Z)−2−フルオロ−2−(5−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)ピラジン−2−イル)ビニル)フェニル)−4,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド;または
    (4S,6S)−2−アミノ−4−(5−((Z)−2−(5−シアノピリジン−2−イル)−2−フルオロビニル)−2−フルオロフェニル)−N,4,6−トリメチル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−6−カルボキサミド
    から選択される、請求項1の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
  19. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
  20. 薬剤として使用するための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは請求項19に記載の医薬組成物。
  21. 対象の脳脊髄液におけるβアミロイドペプチドのレベルの低減に使用するための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは請求項19に記載の医薬組成物。
  22. 対象におけるアルツハイマー病、認知機能障害またはこれらの組み合わせの治療に使用するための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは請求項19に記載の医薬組成物。
  23. 対象における軽度の認知機能障害、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管症、変性性認知症、パーキンソン病に関連する認知症、核上性麻痺に関連する認知症、大脳皮質基底核変性症に関連する認知症、びまん性レビー小体型アルツハイマー病またはこれらの組み合わせから選択される神経障害の治療に使用するための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは請求項19に記載の医薬組成物。
  24. 対象の脳におけるプラークの形成を低減するための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは請求項19に記載の医薬組成物。
  25. 対象の脳脊髄液におけるβアミロイドペプチドのレベルを低減するための薬剤の調製における、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは請求項19に記載の医薬組成物の使用。
  26. 対象におけるアルツハイマー病、認知機能障害またはこれらの組み合わせを治療するための薬剤の調製における、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは請求項19に記載の医薬組成物の使用。
  27. 対象における軽度の認知機能障害、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管症、変性性認知症、パーキンソン病に関連する認知症、核上性麻痺に関連する認知症、大脳皮質基底核変性症に関連する認知症、びまん性レビー小体型アルツハイマー病またはこれらの組み合わせから選択される神経障害の治療のための薬剤の調製における、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは請求項19に記載の医薬組成物の使用。
  28. 対象の脳におけるプラークの形成の低減のための薬剤の調製における、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩あるいは請求項19に記載の医薬組成物の使用。
  29. βアミロイドペプチドのレベルの低減を、それを必要とする対象の脳脊髄液において行う方法であって、治療有効量の請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩を前記対象に投与する工程を含む方法。
  30. アルツハイマー病、認知機能障害またはこれらの組み合わせの治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩を前記対象に投与する工程を含む方法。
  31. 軽度の認知機能障害、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管症、変性性認知症、パーキンソン病に関連する認知症、核上性麻痺に関連する認知症、大脳皮質基底核変性症に関連する認知症、びまん性レビー小体型アルツハイマー病またはこれらの組み合わせから選択される神経障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくは互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩を前記対象に投与する工程を含む方法。
  32. プラークの形成の低減を、それを必要とする対象の脳において行う方法であって、治療有効量の請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物もしくはその互変異性体または前記化合物もしくは互変異性体の薬学的に許容される塩を前記対象に投与する工程を含む方法。
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