JP2020502076A - 歯科用組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、特定のラジカル重合性化合物およびラジカル開始剤系を含む歯科用組成物に関する。さらに本発明は、歯科用組成物における特定のラジカル重合性化合物およびその使用に関する。本発明の特定のラジカル重合性化合物は、アリル(メタ)アクリルアミド基およびリン酸エステル基を有する。

Description

本発明は、特定のラジカル重合性化合物およびラジカル開始剤系を含む歯科用組成物に関する。さらに本発明は、特定のラジカル重合性化合物および歯科用組成物における使用方法に関する。本発明の特定のラジカル重合性化合物は、N−アリル(メタ)アクリルアミド基およびリン酸エステル基を有する。
10−メタクリロイロキシデシルリン酸二水素(MDP)は、歯科用組成物の構成要素として頻繁に使用され、重合性基および酸性基に基づいて機能性を提供する。しかしながら、MDPは高い動的粘度、わずか約80%の低い化学純度、わずか約−41kJ/molの限定的な重合熱ΔHのため問題がある。
歯科用組成物で使用するためのさらなる重合性酸性リン酸エステルモノマーは、EP1911434A1、US2010/041790A1およびWO2014/040729A1に開示されている。
本発明の目的は、MDPと比較して低い動的粘度、高い化学純度、および高い重合熱を有しながら、従来の(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミドと共重合性であるラジカル重合性化合物を含む歯科組成物を提供することである。さらに、硬化した時、歯科用組成物は、例えば曲げ係数において、有利な機械的特性を提供する。
第一の態様によると、本発明は、
(a)以下の式(I)のラジカル重合性化合物、またはその塩と、
Figure 2020502076

(式中、
およびRの一方が
以下の式(II)または(III)の基を表し、RおよびRの他方は同一または異なるものであってもよく、独立して水素原子または式(II)または(III)の基を表し:
Figure 2020502076

(式中、
は、水素原子またはメチル基であり、
はC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基またはC2−6アルケニル基であり、
nは0〜14の整数を表し;
mは1〜14の整数でありおよび、
およびRそれぞれが、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRおよびRは同一または異なるものであってもよく、フッ素置換メチレン基またはフッ素置換されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、独立して水素またはフッ素原子を表す);
(b)ラジカル開始剤系と、を含む、歯科用組成物を提供する。
第二の態様によると、本発明は、以下の式(I)のラジカル重合性化合物またはその塩を提供する。
Figure 2020502076

(式中、
およびRの一方が
以下の式(II)または(III)の基を表し、RおよびRの他方は同一または異なるものであってもよく、独立して水素原子または式(II)または(III)の基を表し:
Figure 2020502076

(式中、
は、水素原子またはメチル基であり、
1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基またはC2−6アルケニル基であり、
nは0〜14の整数を表し;
mは1〜14の整数を表し;および、
およびRそれぞれが、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRおよびRは同一または異なるものであってもよく、フッ素置換メチレン基またはフッ素置換されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、独立して水素またはフッ素原子を表す。)
第三の態様によると、本発明は、歯科用組成物中の上記式(I)に定義されたラジカル重合性化合物またはその塩の使用を提供する。
本発明は、式(I)のラジカル重合性化合物が23℃で好ましくは最大で10Pa・sの低い動的粘度を有するという認識に基づき、この化合物の有利な処理、ならびに式(I)のラジカル重合性化合物を含む歯科用組成物の有利な取扱いを提供する。さらに、式(I)のラジカル重合性化合物は、好ましくは95%超の高化学純度で提供され得る。最後に、式(I)のラジカル重合性化合物は、MDPの重合熱ΔHよりも約50〜80%高い重合熱ΔH、好ましくは約−62〜−74kJ/molを有する。硬化した時、歯科用組成物は、例えば曲げ弾性率において、有利な機械的特性を提供する。
「N−アリル(メタ)アクリルアミド」とは、アミド基の窒素原子がアリル基によって置換される(メタ)アクリルアミド基を指す。
「重合」という用語は、多数の化合物を組み合わせることによって大きな分子、すなわち高分子またはポリマーを形成することに関連する。化合物の文脈での「重合性」という用語は、共有結合の形成下で化合物を重合する能力を指す。重合性化合物は、線形の高分子を形成し得るか、または三次元ネットワーク構造を有する架橋ポリマーを形成するために組み合わせ得る。単一の重合性官能基を有する重合性化合物は直鎖状ポリマーを形成し、一方少なくとも二つの重合性官能基を有する重合性化合物はポリマーネットワークとしても知られる架橋ポリマーを形成し得る。
本明細書で使用される用語「ラジカル重合性化合物」は、少なくとも一つのラジカル重合性結合、好ましくは炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。少なくとも二つの重合性官能基を含む本発明の重合性化合物は、分子間環状構造の形成がより小さな分子間架橋を提供し、それによって重合応力を低減させることができる点で特有である。
「浸出の問題」は、例えば70%未満の変換率が不十分なため、重合歯科用組成物から浸出する未反応モノマーに起因して生じ得る。これにより、毒物学的懸念を生じさせ、および/または硬化した歯科用組成物の機械的特性が不十分である場合がある。
用語「硬化」は、官能性重合性化合物、例えばモノマー、オリゴマー、または更にはポリマーのポリマーネットワーク、好ましくは架橋ポリマーネットワークへの重合を意味する。
「ラジカル開始剤系」という用語は本明細書で使用される場合、重合性化合物の重合化を開始することができる任意の化合物または化合物の混合物を意味する。
本明細書で使用される用語「保存安定性」は、所定の温度範囲で、例えば約2年間の保存後でさえも、歯科用組成物がその特性、特にその作業時間および設定時間を維持することを意味する。
「接着剤組成物」という用語は、修復材料を硬い歯組織に結合するように適合された歯科用組成物を指す。一般に、歯科用接着剤組成物は、一つ以上の酸性基を含み得る重合性モノマーと、適切な溶媒中の開始剤系との混合物を含有する。「セルフエッチング」は、異なる治療工程においてエナメル質または象牙質を予備的にエッチングすることなく、歯科用接着剤組成物を歯に塗布し得ることを意味する。「自己プライマー」は、異なる治療工程において歯科用プライミング組成物を予備的に塗布することなく、歯科用接着剤組成物を歯に塗布し得ることを意味する。
「浸潤剤」という用語は、カリエスエナメル病変および象牙質細管などの多孔性固体に容易に浸透することによって浸潤するように適合された液体歯科用組成物を意味する。浸潤後、浸潤剤は硬化されてもよい。
本発明は、ラジカル開始剤系によって重合性または共重合性である歯科用組成物を提供する。
歯科用組成物は、口腔内で使用される歯科用材料であってもよい。本発明による歯科用組成物は、歯科用接着剤組成物、歯科用セメント、歯科用複合材料、歯科用プライマー、および歯科用浸潤剤、特に加水分解安定性のある一部セルフエッチング、セルフプライミング歯科用接着剤組成物から選択されることが好ましい。
ラジカル重合性化合物(a)
本発明の歯科用組成物は、(a)ラジカル重合性化合物を含む。歯科用組成物は、一つまたは複数のラジカル重合性化合物(a)を含み得る。
ラジカル重合性化合物(a)は以下の式(I):を有する。
Figure 2020502076
式(I)において、RおよびRの一方が以下の式(II)または(III)の基を表し、また、RおよびRの他方は同一または異なるものであってもよく、独立して水素原子または式(II)または(III)の基を表す:
Figure 2020502076
式(II)において、Rは、水素原子またはメチル基である。好ましくは、Rは水素原子である。式(II)において、nは0〜14の整数を表す。nは、3〜12の整数であることが好ましく、4〜10であることがさらに好ましく、5〜7であることが最も好ましい。
式(III)において、RはC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基またはC2−6アルケニル基である。好ましくは、RはC1−6アルキル基である。式(III)において、mは1〜14の整数を表す。
式(II)および(III)において、RおよびRそれぞれが、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRおよびR}は同一または異なるものであってもよく、フッ素置換メチレン基またはフッ素置換されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、独立して水素またはフッ素原子を表す。
1−6アルキル基およびRのC2−6アルケニル基は、直鎖または分岐であり得る。具体的には、C1−6アルキル基は直鎖C1−6アルキル基または分岐C3−6アルキル基であり得る。C2−6アルケニル基は直鎖C2−6アルケニル基または分岐C3−6アルケニル基であり得る。
直鎖または分岐アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチルまたはヘキシルである。直鎖または分岐アルケニル基の例はエテニル、n−プロペニル、i−プロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、tert−ブテニルsec−ブテニル、ペンテニルまたはヘキセニルである。
のC3−6シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
好ましい実施形態によると、RはC1−3アルキル基、C4−6シクロアルキル基またはC3−5アルケニル基である。より好ましくは、RはC3−5アルケニル基、特にアリル基である。mは、1〜12、より好ましくは1〜6、特に1〜3の整数である。
式(II)または(III)のRおよびRが独立して水素またはフッ素原子を表すが、結果として得られるフッ素置換メチレン基は、一つまたは二つのフッ素原子で置換されることが好ましく、フッ素置換されたm員またはn員のポリメチレン鎖は、二つ以上のフッ素原子、より好ましくは四つ以上のフッ素原子で置換される。最も好ましくは、フッ素置換メチレン基またはフッ素置換されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖は、フッ素原子で透過され、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖のすべてのRAおよびRBはフッ素原子を表す。フッ素原子を表すRおよび/またはRを有する式(II)または(III)の基で、式(I)の化合物は、式(I)の化合物と比較して、本歯科用組成物の、例えば象牙質へのより耐久性の高い結合を提供し得るが、式中、RAおよびRBは水素原子のみを表す。特に、熱変化荷重における長期安定マイクロ引張樹脂−象牙質接着強度(μTBS)の観点から、より耐久性の高い結合が得られ得る。
式(I)のラジカル重合性化合物は、塩の形態であってもよい。塩は、アルカリ金属塩、好ましくはナトリウムまたはカリウム塩であってもよい。
およびRの一方が水素原子である式(I)の化合物は、リン酸モノエステルである。RおよびRの両方が式(II)または(III)の基である式(I)の化合物は、リン酸ジエステルである。
一般的にリン酸モノおよびジエステルの調製が周知であり、典型的な製造ルートが例えば、Houben−Weyl et al.、Houben−Weyl Methods of Organic Chemistry、Vol.XII/2:Organic phorphorus Chemical II、1964、143〜210頁および226〜274頁に記載されている。
具体的には、式(I)のリン酸モノエステル化合物は、例えば、式(II)の基を式(I)の化合物に導入するための式(VI)の前駆体化合物から出発して調整されてもよい。式(VI)の前駆体化合物は、スキーム1に示すように、例えば式(VI)の化合物から得られた式(V)のアリル化合物から誘導されてもよい:
Figure 2020502076
式(IV)、(V)および(VI)の化合物において、nおよびRは、式(I)の化合物の式(II)の基について上記で定義されたのと同じ意味を有し、また式(II)の基のRおよびRは、例示的に水素原子を表す。
例えば、M. Porel et al.、Journal of the American Chemical Society、2014、136、13162〜13165頁は、上記のスキーム1に示す合成経路に従うN−(2−ヒドロキシエチル)−N−2−プロペン−1−yl−2−プロペンアミドの調製を開示する。この調製は、式(IV)の前駆体化合物に対して類似して適用され得る。
当然のことながら、式(VI)の出発化合物において、XがNHである場合、ハロゲン化アリル、好ましくは臭化物または塩化物が適用され、XがBr、Cl、またはIである場合、アリルアミンが適用される。
式(VI)の出発化合物は、C2−18アルキルジオールの一つのヒドロキシル基をヨウ素、臭素または塩素原子で置換するために、例えばC2−18アルキルジオールをヨウ化水素酸、臭化水素酸または塩酸(Hl、HBr、HCl)と反応させることによって調製することができる。
式(IV)、(V)および(VI)の化合物では、Zは、後続する工程でのリン酸エステル基の形成を可能にする任意の反応基であり得る。好ましくは、Zは保護基で任意で保護され得るヒドロキシル(OH)基である。基Zが保護されている場合、リン酸エステル基を形成する前に脱保護工程が実施され得る。
式(I)の化合物に式(III)の基を導入するために、式(VII)の前駆体を使用することができ、スキーム2に示す通り、前駆体は式(IX)の化合物を式(VIII)の化合物と反応させることにより得ることができる:
Figure 2020502076
式(VII)および(IX)の化合物において、mおよびRは式(I)の化合物の式(III)の基について上記で定義されたのと同じ意味を有し、式(II)の基のRおよびRは、例示的に水素原子を表す。
式(VII)および(IX)の化合物において、Z*は任意の反応基であってもよく、後続する工程でリン酸エステル基を形成することができる。好ましくは、Z*は任意で保護されたヒドロキシル(OH)基である。基Z*が保護されている場合、リン酸エステル基を形成する前に脱保護工程が実施され得る。
式(VIII)の化合物は、アリルアミンをハロゲン化物化合物R−Hal(Hal=Br、Cl、I)と反応させることによって、またはハロゲン化アリル(臭化物、塩化物、またはヨウ化物)を第一級アミンR−NHと反応させることによって調製してもよく、式中、Rは式(I)の化合物の基(III)について上記で定義されたのと同じ意味を有する。
式(VI)、(V)および(IV)ならびに式(VII)および(IX)の基Z*については、保護基、例えばヒドロキシル基については、式(VI)の化合物を式(VI)の前駆体化合物に変換する、または式(IX)の化合物を式(VII)の前駆体化合物に変換するのに適用される反応条件下で開裂できない限り特に限定されず、通常塩基性反応条件である。例えば、ZまたはZ*は、任意の従来の保護基、好ましくはP.G.M.Wuts and T.W.Greene,Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,4th Edition,John Wiley and Sons Inc.,2007に記載されるヒドロキシル保護基によって保護され得る。ヒドロキシル基を表すZまたはZ*に対する特に好ましい保護基は、例えば、プラチナまたはパラジウムなどの適切な触媒の存在下で水素化によって簡単に除去できるアリルおよびベンジルエーテル基などである。
例えば、Z=OHである式(IV’)の前駆体化合物は、スキーム3に示される調製によって式(I)の化合物に変換され得る:
Figure 2020502076
式(IV’)および(XI)の化合物において、mおよびRは式(I’’)の化合物の式(II)の基について上記で定義されたのと同じ意味を有し、式(II)の基のRおよびRは、例示的に水素原子を表す。
スキーム3に示すように、式(IV’)の前駆体化合物は、オキシ塩化リン(POCl)または式(X)の化合物と反応させることにより、式(I’’)の化合物に変換してもよい。別の方法として、POClまたは式(X)の化合物に、ホスホロジクロリド酸無水物(Cl−PO−O−PO−Cl)を使用してもよい。
式(X)の化合物において、Aはヒドロキシル基、ハロゲン原子または−O−PO−(OProt)を表し、プロト(Prot)は水素原子または保護基を表す。すなわち、式(X)の化合物は、リン酸、二つの保護基プロトを有するリン酸ハロゲン化物ジエステル、またはピロリン酸のテトラエステル(OProt)−PO−O−PO−(OProt))を表し得る。
プロトが保護基を表す式(X)の化合物では、式(IV’)の前駆体化合物から誘導される二つまたは三つの単位を有する望ましくないジエステルまたはトリエステルの形成が、保護基によって効率的に回避され得る。それにより、式(I’’)の化合物の純度および収率は、反応性の高いPOClの合成と比較して増加し得る。
しかしながら、オキシ塩化リン(POCl)は、式(IV’)の前駆体化合物を式(I’’)の化合物に変換する試薬として好ましい。POClは、容易に利用可能であり、経済的であるため、式(I’’)の化合物の精製を複雑にし得る望ましくないジエステルまたはトリエステルまたは分解生成物の形成は、適切な反応制御によって効果的に回避され得る。
特にPOClとの反応は、−30〜50℃}の範囲の温度で、式(IV’)の前駆体化合物および塩基としてのアミンにPOClを含有する溶液を滴下することにより実施することができる。適切な溶媒は、炭化水素、エーテルまたはエステルなどの無水溶媒から選択され得る。好ましくは、溶媒はエーテルである。適切なアミンは、トリエチルアミンなどの第三級アミンであってもよい。反応は、場合に応じて30分〜約48時間実施され得る。反応後、混合物を濾過して、反応において形成された塩酸塩を分離する。その後、混合物を氷水に注ぎ込む。混合物は分離されてもよく、エーテル層は炭酸ナトリウムなどの適切な塩基で塩基性化される。従って、pHは、塩酸を使用することによって約10に調節され、その後約4に下げられる。次いで、有機層を分離し、硫酸マグネシウムなどの適切な乾燥剤で乾燥させる。次に、式1の望ましい化合物は、減圧下での蒸発によって得られ得る。
上述のプロトの保護基は、式(IV’)の化合物を式(XI)の化合物に変換するための反応条件下で開裂できない限り、特に限定されない。プロトは、例えば、P.G.M.Wuts and T.W.Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,4th Edition,John Wiley and Sons Inc.,2007に記載されているリン酸エステル基についての任意の従来の保護基であってもよい。特に好ましい保護基は例えば、フェニルおよびベンジルエステル基であり、プラチナまたはパラジウムなどの適切な触媒の存在下で水素化によって簡単に除去され得る。
スキーム3に示す調製の代替として、式(I)のリン酸モノエステル化合物を、スキーム4に示すように調製してもよい:
Figure 2020502076
式(IV’)および(XII)の化合物において、nおよびRは式(I)の化合物の式(II)の基について上記で定義されたのと同じ意味を有し、式(II)の基のRおよびRは、例示的に水素原子を表す。
L.M.Liraらは、Tetrahedron Letters 54、2013、1690〜1692頁で脂肪族アルコールのリン酸モノエステルのワンポット合成を開示し、合成はトリクロロアセトニトリルとの組み合わせで軽度のエステル化剤としてのリン酸二水素テトラブチルアンモニウムを適用する。スキーム4に示すように、この合成は、式(IV’)の前駆体化合物を、式(XII)のテトラブチルアンモニウム塩を介して式(I’’)の化合物に変換するためにも適用され得、これはプロトン化によって遊離酸に簡単に変換され得る。このワンポット合成では、式(XII)のテトラブチルアンモニウム塩は、酸性溶離液を有する適切なイオン交換カラムを通して溶出することによって、プロトン化されて精製され得る。
およびRが異なる式(I)のリン酸ジエステル化合物は、例えば、式(I)のリン酸モノエステル化合物から開始されるよう調製され得、スキーム3に示すものと類似の反応にかけられ、ここで式(IV’)の化合物の代わりに式(I)のリン酸モノエステル化合物が使用される。
およびRが同一である式(I)のリン酸ジエステル化合物は、例えば、オキシ塩化リン(POCl)と反応することによって、式(IV)の前駆体化合物から出発して調製されてもよい。しかしながら、リン酸ジエステルを得るために、POClは、式(IV)の化合物の前駆体に対する計算量、例えば約1モル当量のPOClおよび式(IV)の化合物の前駆体の約2モル当量に対して提供される必要がある。さらに、ジエステルの優勢形成は、式(IV)の化合物の前駆体のPOClへの追加の種類を適切に選択することによって、例えば、POClを式(IV)の化合物の前駆体の総量を含む反応混合物に非連続的に追加することによって、および適切に付加速度および反応温度を設定することによって確実にすることができる。
式(I)の化合物は、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、および最も好ましくは少なくとも99%の高化学純度で得ることができる。
式(I)の化合物では、式(II)または(III)のアリル基は分子内環化重合反応において(メタ)アクリル基の重合性炭素−炭素二重結合と一緒になってもよく、式(I)のリン酸モノエステル化合物について以下のスキーム5に例示されており、Rは水素原子であり、Rは式(II)の基であり、式(II)の基のおよびRは例示的に水素原子を表すと考えられる:
Figure 2020502076
分子内環化重合により、追加的な反応エンタルピーが得られる。すなわち、式(I)の化合物の反応性は、隣接したN−アリル基を欠く従来の(メタ)アクリレートと比較して増加する。この分子内環化重合は、重合エンタルピー−ΔHに関して62〜74kJ/molの増加した反応性を提供することが好ましい。このΔRHは、MDPと比較して約50〜80%高い。式(I)の化合物の高重合エンタルピー−Δは、好ましくは少なくとも70%の高い転化率を提供し、それによって浸出の問題が軽減される。さらに、環化重合は、N−アリル(メタ)アクリルアミド基を欠く重合性化合物と比較して重合応力を減少させることができる分子内周期化に起因してネットワーク密度を減少させる。
上記の環化重合による環の形成を、例えば、赤外分光法(IR)のみによりまたは更なる分析方法、例えば核磁気共鳴分光法(NMR)と組み合わせて確認することができる。
式(I’)のラジカル重合性化合物、またはその塩が好ましい:
Figure 2020502076

(式中、
’およびR’の一方は
以下の式(II’)または(III’)の基を表し、また、R’およびR’の他方は同一または異なるものであってもよく、独立して水素原子または式(II’)または(III’)の基を表し:
Figure 2020502076

(式中、
’は、水素原子またはメチル基、好ましくはメチル基であり、
’はC1−3アルキル基、C4−6シクロアルキル基またはC3−5アルケニル基、最も好ましくはアリル基であり、
n’は0〜10の整数、最も好ましくは3〜7を表し;および
m’は1〜6の整数、より好ましくは1〜3、最も好ましくは2を表し、および
およびRそれぞれが、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRおよびRは同一または異なるものであってもよく、フッ素置換メチレン基またはフッ素置換されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように独立して水素またはフッ素原子を表し;好ましくはRおよびRそれぞれが、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRおよびRそれぞれが、ペルフルオロ化メチレン基またはペルフルオロ化されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、フッ素原子を表す。
特に好ましいリン酸モノエステル化合物は、以下の式(I’’)を有する:
Figure 2020502076

式中、R’’は、水素原子またはメチル基を表し、n’’は3〜7の整数を表し、RおよびRそれぞれが、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRおよびRB’それぞれが、ペルフルオロ化メチレン基またはペルフルオロ化されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、フッ素原子を表す。
式(I’’)の特に好ましいラジカル重合性化合物は、以下の構造式を有する:
Figure 2020502076

Figure 2020502076

式(I)のリン酸ジエステル化合物は、以下の三種類に分割され得る:
i) RおよびRの両方は同一または異なるものであってもよく、独立して式(II)または(III)の基を表し、
ii) RおよびRの両方は同一または異なるものであってもよく、独立して式(II)の基を表す、または
iii) RおよびRの両方は同一または異なるものでであってもよく、独立して式(III)の基を表す。
タイプi)、ii)およびiii)、RおよびRは同じであることが好ましい。
式(I)のリン酸ジエステル化合物は、タイプii)またはiii)であることが好ましい。
リン酸ジエステルは、以下の式(I’’’)の化合物であることがより好ましい:
Figure 2020502076

式中、R’’’はC1−3アルキル基、C4−6シクロアルキル基またはC3−5アルケニル基、最も好ましくはアリル基を表し、m’’’は、1〜3の整数、最も好ましくは2を表し、およびRA’およびRB’それぞれが、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRA’およびRB’それぞれが、ペルフルオロ化メチレン基またはペルフルオロ化されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、フッ素原子を表す。
リン酸ジエステルは以下の式(I’’’)の化合物であることが最も好ましい:
Figure 2020502076

式(I)のラジカル重合性化合物は加水分解安定性であり、これは歯科用組成物などの酸性媒体中の加水分解に安定していることを意味する。具体的には、これらの化合物はカルボン酸エステル基など、一ヶ月以内に室温でpH3の水溶性媒体中で加水分解する基を含まない。
式(I)のラジカル重合性化合物の動的粘性は、23℃で最大10Pa・sであることが好ましい。
一般に、本発明による歯科用組成物では、式(I)のラジカル重合性化合物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.1〜90重量パーセント、より好ましくは5〜40重量パーセントの量で含有される。
歯科用接着剤組成物について、式(I)の重合性化合物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは10〜40重量パーセント、より好ましくは15〜35重量パーセントの量で含有される。
具体的には、歯科用浸潤剤については、式(I)の重合性化合物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは少なくとも50重量パーセント、より好ましくは60〜95重量パーセント、最も好ましくは65〜80重量パーセントの量で含有される。
式(I)の大量の(a)ラジカル重合性化合物に対しては、浸潤剤の形態の本発明の歯科用組成物は、カリエスエナメル病変に容易に浸透し、次いでそれらを浸潤させる。式(I)の化合物はまた、優れた硬化特性および有利な加水分解の安定性を有するため、優れた密封特性および長寿命の両方を有する歯科用浸潤剤を提供できる。
ラジカル開始剤系(b)
さらに、本発明の歯科用組成物は、(b)ラジカル開始剤系を含む。ラジカル開始剤系(b)は、本発明による式(I)のラジカル重合性化合物の重合を開始する能力を有する任意の化合物または系を使用してもよい。ラジカル開始剤系(b)は、光開始剤系、レドックス開始剤系、またはそれらの混合物であってもよい。
用語「光開始剤」は、例えば、光化学プロセスにおいて、光に暴露することにより、または共開始剤との相互作用により活性化された場合に、フリーラジカルを形成する任意の化学物質を意味する。
用語「レドックス開始剤系」は、酸化剤及び還元剤、ならびに必要に応じて触媒、例えば金属塩との組み合わせ、を意味する。レドックス開始剤系はラジカルを形成するレドックス反応を生じさせる。これらのラジカルはラジカル重合性化合物の重合を開始させる。典型的には、レドックス開始剤系を、酸化剤および還元剤の少なくとも部分的な分解をもたらす水および/または有機溶媒と接触させることによってレドックス開始剤系を活性化する、即ちレドックス反応を開始させる。任意の触媒を添加して、レドックス反応を、したがってラジカル重合性化合物の重合を促進することができる。
光開始剤とレドックス開始剤との混合物は「二重硬化開始剤系」と呼ばれる。
例えば、適切な光開始剤系は、二成分系または三成分系の形態であってもよい。例えば、米国特許第5,545,676号に記載されるように、二成分系は、光開始剤及び電子供与化合物を含んでもよく、三成分系はヨードニウム塩、スルホニウム塩またはホスホニウム塩、光開始剤、及び電子供与化合物を含んでもよい。
ラジカル開始剤系(b)に好適な光開始剤は、ノリッシュI型およびノリッシュII型光開始剤である。
好適なノリッシュI型光開始剤は、ホスフィンオキシドおよびSi−またはGe−アシル化合物である。
ホスフィンオキシド開始剤は約380nm〜約450nmの機能的波長範囲を有し、米国特許第4,298,738号、同第4,324,744号、及び同第4,385,109号、ならびに欧州特許公開第0173567号に記載されているようなアシルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシドを含む。アシルホスフィンオキシドの具体例として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4−ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリス(2−メトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイル−ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシドを挙げることができる。約380nm超〜約450nmの波長範囲で照射された場合、フリーラジカル開始が可能な市販されているホスフィンオキシド光開始剤は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403)、重量比25:75のビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(IRGACURE 1700)との混合物、重量比1:1のビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCUR 4265)との混合物、及びエチル2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィナート(LUCIRIN LR8893X)、を含む。典型的には、ホスフィンオキシド開始剤は、組成物の総重量に基づいて、触媒有効量、例えば0.1重量%〜5.0重量%で組成物中に存在する。
Si−またはGe−アシル化合物光開始剤は、以下の式(XV)を有することが好ましい:
−R
(XV)
(式中、
は、次式(XVI)の基である:
Figure 2020502076

(式中、
MはSiまたはGeであり、
10は、置換もしくは非置換ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルカルボニル基を表し、
11は、置換もしくは非置換ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルカルボニル基を表し、
12は、置換または非置換ヒドロカルビル基を表し、
(i)はXと同じ意味を有し、これにより式(XV)の化合物は対称であってもまたは非対称であってもよく、あるいは
(ii)は次式(XVII)の基であり、
Figure 2020502076

(式中、
は、単結合、酸素原子、またはNR’基を表し、NR’は置換ヒドロカルビル基若しくは非置換ヒドロカルビル基を表し、
13は、置換もしくは非置換ヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)ジヒドロカルビルシリル基、もしくは3ジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基を表し、または
(iii) MがSiである場合、Rは置換ヒドロカルビル基または非置換ヒドロカルビル基であってもよい。
驚くべきことに、式(XV)の光開始剤化合物は、歯科用組成物に特に適切なラジカル開始剤を表すことが見出された。式(XV)の化合物を用いると、高い重合効率が達成され、着色の問題が生じず、またはカンファーキノンなどの従来の光開始剤を含む重合系では、着色が効率的に抑制される。さらに、式(XV)の化合物は、歯科用途において典型的に適用される波長範囲内で光吸収を有し、それらは歯科用組成物の成分と適合性があり、さらに生理学的に無害であると考えられる。
従って、式(XV)の化合物は光開始剤として特に好ましい。
式(XV)の化合物に関連して、本明細書で使用する「置換された」という用語は、R10、R11、R12、R13、およびR’が、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、および−NRR基から成る群から選択される置換基で置換されていてもよいことを意味し、式中RおよびRは互いに独立してC1−6アルキル基を表す。ここで、ハロゲン原子の例示は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素とすることができる。C1〜6アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、及びn−ブチルである。C1〜6アルコキシ基の例示は、例えば、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシである。これらの置換基におけるアルキル部分は、直鎖状、分岐または環状であってもよい。好ましくは、置換基は、塩素原子、ニトロ基、C1〜4アルコキシ基及び−NR基(式中、R及びRは互いに独立してC1〜4アルキル基を表す)から選択される。
10、R11、およびR12が置換される場合、それらは1〜3個の置換基、より好ましくは1個の置換基で置換されることが好ましい。
式(XV)の化合物において、R10、R11、およびR12部分は、以下のように定義されてもよい:
10およびR11は、互いに独立して、置換もしくは非置換ヒドロカルビル基、またはヒドロカルビルカルボニル基を表し、R12は、置換または非置換ヒドロカルビル基を表す。
ヒドロカルビル基は、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、またはアリール基であってもよい。
アルキル基は、直鎖または分岐C1〜20アルキル基、典型的にはC1〜8アルキル基であってもよい。C1〜6アルキル基の例としては、1〜6個の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、及びn−ヘキシルを挙げることができる。
シクロアルキル基は、C3〜20シクロアルキル基、典型的にはC3〜8シクロアルキル基であってもよい。シクロアルキル基の例としては、3〜6個の炭素原子を有する基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを挙げることができる。
シクロアルキルアルキル基は、4〜20個の炭素原子を有してもよく、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐アルキル基と3〜14個の炭素原子を有するシクロアルキル基との組み合わせを含んでもよい。シクロアルキルアルキル(−)基の例としては、例えば、メチルシクロプロピル(−)メチルシクロブチル(−)、メチルシクロペンチル(−)、メチルシクロヘキシル(−)、エチルシクロプロピル(−)、エチルシクロブチル(−)、エチルシクロペンチル(−)、エチルシクロヘキシル(−)、プロピルシクロプロピル(−)、プロピルシクロブチル(−)、プロピルシクロペンチル(−)、プロピルシクロヘキシル(−)を挙げることができる。
アリールアルキル(−)基は、C7〜20アリールアルキル(−)基、典型的には、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐アルキル基と6〜10個の炭素原子を有するアリール(−)基との組み合わせであってもよい。アリールアルキル(−)基の具体例は、ベンジル(−)基またはフェニルエチル(−)基である。
アリール基は、6〜10個の炭素原子を有するアリール基を含むことができる。アリール基の例は、フェニル及びナフチルである。
10およびR11のヒドロカルビルカルボニル基は、有機残基Rorgが上記で定義されたヒドロカルビル残基であるアシル基(Rorg−(C=O)−)を表す。
式(XV)の化合物は、一個または二個のヒドロカルビルカルボニル基を含んでもよく、即ちR10またはR11のいずれか一方がヒドロカルビルカルボニル基であるか、またはR10およびR11の両方がヒドロカルビルカルボニル基である。好ましくは、式(XV)の化合物は、一個のヒドロカルビルカルボニル基を含む。
好ましくは、ヒドロカルビルカルボニル基はアリールカルボニル基であり、より好ましくはベンゾイル基である。
好ましくは、R10およびR11は、直鎖または分岐C1−6アルキル基、およびフェニル基またはベンゾイル基から成る群から独立して選択され、これらの基は、ハロゲン原子、ニトロ基、C1−4アルコキシ基、および−NR基から選択される一〜三個の置換基で所望により置換されてもよく、式中、RおよびRは互いに独立してC1−4アルキル基を表し、R12は直鎖または分岐C1−6アルキル基またはフェニル基である。
最も好ましくは、R10およびR11は、直鎖または分岐C1−4アルキル基、およびフェニル基またはベンゾイル基から成る群から独立して選択され、これらの基は、ハロゲン原子、ニトロ基、C1−4アルコキシ基および−NR基から選択されたものから成る群から選択される一個の置換基で所望により置換されてもよく、式中、RおよびRは互いに独立してC1−4アルキル基を表し、R12は直鎖または分岐C1−4アルキル基である。
式(XV)の化合物では、Rと同じ意味を有してもよく、これにより式(XV)の化合物は対称または非対称であってもよい。あるいは、Rは、置換または非置換ヒドロカルビル基、または式(XVII)の基を表してもよい。好ましくは、RがXと同じ意味を有する場合、式(XV)の化合物は非対称である。Rが置換または非置換ヒドロカルビル基を表す場合、ヒドロカルビル基は、Rについて上記で定義されたものと同じ意味を有し、且つそれらから独立して選択される。
式(XV)の化合物の式(XVII)の基において、R13は、置換または非置換ヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)−ジヒドロカルビルシリル基、またはジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基を表す。
式(XVII)のR13がトリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)−ジヒドロカルビルシリル基、またはジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基である場合、ヒドロカルビルおよびヒドロカルビルカルボニル基の各々は、R10、R11およびR12について定義されたものと同じ意味を有し、且つそれらから独立して選択される。
式(XVII)では、R’はR12について定義されたのと同じ意味を有し、且つそれらから独立して選択される。
式(XV)の化合物においてM*がSiである場合、Rはまた、置換または非置換ヒドロカルビル基であってもよく、ヒドロカルビル基は、R12について上記で定義されたものと同じ意味を有し、且つそれらから独立して選択される。
例えば、RがXと同じ意味を有し、且つ対称である式(XV)の化合物は、以下の構造式を有してもよい:
Figure 2020502076

例えば、Rが式(XVII)の基を表し、Yが結合、酸素原子、またはNP’基であり、またR13が置換もしくは非置換ヒドロカルビル基を表す式(XV)の化合物は、以下の構造式を有してもよい:
Figure 2020502076

例えば、Rが式(XVII)の基を表し、R13がトリヒドロカルビルシリル基を表す式(XV)の化合物は、以下の構造式を有する:
Figure 2020502076

例えば、M*がSiであり、Rが置換または非置換ヒドロカルビル基を表す式(XV)の化合物は、以下の構造式を有してもよい:
Figure 2020502076

好ましくは、式(XV)の化合物は、以下から成る群から選択され:
Figure 2020502076

M*=Siである式(XV)の化合物が特に好ましい。
最も好ましくは、式(XV)の化合物は、以下から成る群から選択され:
式(XV)の化合物は、以下から成る群から選択され:
Figure 2020502076

特に好ましくは、M=Siである。
好適なノリッシュI型光開始剤は、例えば、約400nm〜約520nm(好ましくは約450nm〜約500nm)の範囲内の光を吸収するモノケトンおよびジケトンである。特に好適な化合物は、約400nm〜約520nm(更により好ましくは、約450〜約500nm)の範囲内の光を吸収するαジケトンを含む。例としては、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロ−ヘキサンジオン、フェノールアントラキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン、及び別の1−アリール−2−アルキル−1,2−エタンジオン、ならびに環状αジケトンが挙げられる。好適な電子供与体化合物は、置換アミン、例えばエチルジメチルアミノベンゾエートまたはジメチルアミノベンゾニトリルを含む。
第三級アミン還元剤は、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用されることができる。適切な芳香族第三級アミンの例としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンエチル4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エステル、及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。脂肪族第三級アミンの例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、及びトリエタノールアミントリメタクリレートが挙げられる。
アミン還元剤は、組成物の総重量に基づいて、0.1重量%〜5.0重量%の量で組成物中に存在してもよい。
歯科用組成物が酸性組成物の形態である場合、即ち組成物のpH7が未満である場合、組成物のpHに応じて、式(XV)の化合物は、エステル基を含有しないか、または一ヶ月以内に室温にてpH3の水性媒体中で著しく加水分解しないエステル基のみという条件で選択することが好ましい。それにより、未硬化歯科用組成物の保存期間の安定性、ならびに患者の口の内での硬化後の安定性に関して、7未満のpHを有する組成物である酸性歯科用組成物の有利な安定性が確保される。従って、酸性歯科用組成物のためには、Rが式(XVII)(Yは酸素原子である)の基であるものを除いて、式(XV)の化合物が特に好ましい。
さらに、アシルシリル部分(−C(=O)−Si−)は塩基性条件、即ち7よりも高いpHに対して感受性がある場合があるので、アシルシリル部分が選択された塩基性pHの水性媒体中で一ヶ月の間室温にて開裂されないという条件で、7より高い組成物のpH値を適宜選択することが好ましい。
式(XV)の化合物は、市販されているか、または公表された手順に従って調製され得る既知の化合物であってもよい。
M*がSiであり、Rが置換または非置換のヒドロカルビル基を表す式(XV)の化合物は、例えばYamamoto K.et al.,J.Tetrahedron Lett.,1980,vol.21,1653〜1656頁に記載されているように、ジシランとのワンステップPd−触媒反応によって容易に調製され得る。
Figure 2020502076
スキーム6では、ジシランとしてヘキサメチルシランを用いて、反応が例示的に示されており、これにより、R10、R11、およびR12がメチル基を表す式(XV)の化合物が得られる。メチル以外の炭化水素置換基を有するジシランを適用することにより、R10、R11およびR12を変えることができると考えられている。
が式(XVII)の基を表し、式中、Yが酸素原子であり、R13がヒドロカルビル基を表す式(XV)の化合物は、例えば、Nicewicz D.A.et al.,Org.Synth.,2008,85の278ページ〜286ページに記載された三段階合成により調製されてもよい。この三段階合成では、アセトアセテートがアジド化合物に変換され、これを次にトリヒドロカルビルシリルトリフルオロメタン−スルホネートと反応させてトリヒドロカルビルシリルジアゾアセテートを得て、これを最終的にペルオキシ一硫酸カリウムと反応させて標的化合物に到達する:
Figure 2020502076
スキーム7では、この反応は、式(XV)の化合物を得るために例示的に示され、式中、式(XV)のX、R10およびR11はメチル基を表し、およびR12はtert−ブチル基を表す。これは、R10、R11およびR12はt−BuMeSiOSOCF以外のトリヒドロカルビルシリルトリフルオロメタン−スルホナートを適用することにより変化することができる。
あるいは、M*がSiであり、Rが式(XVII)の基を表し、且つYが酸素原子を表す式(XV)の化合物は、Nicewicz D.A.,J.Am.Chem.Soc.,2005,127(17),6170〜6171頁に記載されるように、ZnIおよびEtNの存在下でシリルグリオキシレート、末端アルキン、およびアルデヒドのシングルポット三成分カップリング反応により調製されてもよい。シリルグリオキシレート化合物のさらなる合成は、例えばJ.Org.Chem.,2012,77(10)、4503〜4515頁及びBoyce G.R.et al.Org.Lett.,2012,14(2)、652〜655頁に記載されている。
例えば、式(XV)の以下の化合物が知られており、市販されており、それらのケミカルアブストラクト(CAS)番号は括弧内に記載されている:ベンゾイルトリフェニルシラン(1171−49−9)、ベンゾイルトリメチルシラン(5908−41−8)、1−[(トリメチルシリル)カルボニル]−ナフタレン(88313−80−8)、1−メトキシ−2−[(トリメチルシリル)−カルボニル]−ベンゼン(107325−71−3)、(4−クロロベンゾイル)(トリフェニル)シラン(1172−90−3)、(4−ニトロベンゾイル)(トリフェニル)シラン(1176−24−5)、(メチルジフェニルシリル)フェニル−メタノン(18666−54−1)、(4−メトキシベンゾイル)トリフェニルシラン(1174−56−7)、およびtert−ブチル(tert−ブチルジメチルシリル)グリオキシレート(852447−17−7)。
式(XV)の全ての化合物は式(XVI)の基を含み、
Figure 2020502076

式中、M*、R10、R11およびR12は上記のように定義される。M*の選択に応じて、式(XVI)の基は、アシルシランまたはアシルゲルマン基を表す。UV−VIS光に暴露すると、M*とアシル基との間の結合は開裂される場合があり、これによりシリル/ゲルマニルおよびアシルラジカルが重合開始構造として形成されるが、ラジカルへの開裂と競合して、カルベン構造が形成される場合がある:
Figure 2020502076
重合開始ラジカルの形成とカルベン形成との間の競合は、アシルシランに関して、El−Roz,M.らによるCurrent Trends in Polymer Science,2011,vol.15の1〜13頁に記載されている。
加えて、RがXと同じ意味を有するか、または式(XVII)の基である式(XV)の化合物の場合、1,2−ジケトン基(−C(=O)−C(=O)−)のC−C結合は、UV−VIS光に暴露されると二つのアシルラジカルへと開裂される場合がある。この開裂は、Rが式(XVII)の基であり、Yが酸素原子である式(XV)の化合物について、即ちグリオキシレート(−O−C=O)−C(=O)−)化合物について、例示的に示されている:
Figure 2020502076
さらに、式(XV)の化合物では、Rが、式(XVII)(式中、Yが酸素原子であり、R13が置換または非置換ヒドロカルビル基である)の化合物である場合には、ラジカル開裂に対する第三の可能性がある。即ち、分子内または分子間の水素引き抜きが起こる場合があり、水素ラジカルが抽出される:
Figure 2020502076
グリオキシレート基の開裂と水素引き抜き機構の両方は、ケイ素もゲルマニウムも含まない光開始剤(エチルフェニルグリオキシレート(Irgacure(登録商標)MBF)など)で知られている。
がXと同じ意味を有するか、または式(XVII)の基である式(XV)の化合物では、本発明者らは分子モデリング計算を行い、計算から−C(=O)−C(=O)−基のC−C結合はSi−CまたはGe−C結合よりも弱いために、Si−CまたはGe−C結合の開裂が除外される可能性があると思われる。
光開始剤系は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩及びテトラアリールまたはテトラアルキルホスホニウム塩をさらに含んでもよい。これらの塩は、光開始剤の重合性能を改善するための共開始剤として機能する場合があるが、カチオン重合のための開始剤としても機能する場合がある。
例えば、ジアリールヨードニウム塩は、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム(DPI)テトラフルオロボレート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウム(Me2−DPI)テトラフルオロボレート、フェニル−4−メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(3−ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、DPIヘキサフルオロホスフェート、Me2−DPIヘキサフルオロホスフェート、DPIヘキサフルオロアルセネート、ジ(4−フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−2−チエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、3,5−ジメチルピラゾリル−4−フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、DPIヘキサフルオロアンチモネート、2,2’−DPIテトラフルオロボレートジ(2,4−ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−アセトアミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(2−ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びDPIヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される。
特に好ましいヨードニウム化合物としては、ジフェニルヨードニウム(DPI)ヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウム(Me2−DPI)ヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Irgacure(登録商標)250、BASF SEから市販されている製品)、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムテトラフルオロボレート、4−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、及び4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムボレートが挙げられる。
特に好ましい実施形態によれば、ヨードニウム化合物は、DPIヘキサフルオロホスフェート及び/または4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
好ましいトリアリールスルホニウム塩は、以下の式:
Figure 2020502076

PF6のS−(フェニル)チアントレニウムヘキサフルオロホスフェートである。
特に好ましいホスホニウム塩は、テトラアルキルホスホニウム塩、テトラキス−(ヒドロキシメチル)−ホスホニウム(THP)塩またはテトラキス−(ヒドロキシメチル)−ホスホニウムヒドロキシド(THPOH)塩であり、式中、テトラアルキルホスホニウム塩のアニオンはギ酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物から成る群より選択される。
特に好ましい光開始剤系は、式(XV)の光開始剤を、所望によりカンファーキノンに加えて、上述のようにジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩またはテトラアリール若しくはテトラアルキルホスホニウム塩と組み合わせて含む。
適切なレドックス開始剤系は還元剤および酸化剤を含み、これらは式(I)の(a)ラジカル重合性化合物または光の存在と無関係の(c)さらなるラジカル重合性化合物の重合性基の重合を開始することができるフリーラジカルを生成する。還元剤および酸化剤は、ラジカル開始剤系(b)が十分に保存に安定しており、望ましくない着色がないように選択され、典型的な歯科条件下での保存および使用を可能にするに。さらに、還元剤および酸化剤は、開始剤系(b)が樹脂系と十分に混和して組成物中にラジカル開始剤系が溶解できるように選択される。
有用な還元剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及び米国特許第5,501,727号に記載されているような金属錯体化アスコルビン酸化合物;アミン、即ち、第三級アミン(4−tert−ブチルジメチルアニリンなど);芳香族スルフィン酸塩(p−トルエンスルフィン酸塩及びベンゼンスルフィン酸塩なdl);チオ尿素(1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、及び1,3−ジブチルチオ尿素など);並びにそれら混合物、が挙げられる。他の補助還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、亜ジチオン酸または亜硫酸陰イオンの塩、及びそれらの混合物が挙げられてもよい。
適切な酸化剤としては、過硫酸及びその塩、例えば、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、セシウム及びアルキルアンモニウム塩が挙げられる。追加の酸化剤としては、ベンゾイルペルオキシドなどの過酸化物、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びアミルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド、並びに、塩化コバルト(III)及び塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)などの遷移金属の塩、過ホウ酸及びそれらの塩、過マンガン酸及びそれらの塩、過リン酸及びそれらの塩、並びにそれらの混合物が挙げられる。一つ若しくは複数の異なる酸化剤または一つ若しくは複数の異なる還元剤を開始剤系に使用してもよい。少量の遷移金属化合物を添加してレドックス硬化の速度を促進してもよい。還元剤及び酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在する。
還元剤または酸化剤は、組成物の貯蔵安定性を増強するため、及び必要に応じて、還元剤及び酸化剤を一緒に包装できるようにするためにマイクロカプセル化されてもよい(米国特許第5,154,762号)。封入剤を適切に選択することにより、貯蔵安定状態で酸化剤と還元剤とを組み合わせ、且つ酸官能性成分及び所望により充填剤さえも組み合わせることができる場合がある。さらに、水不溶性封入剤を適切に選択することにより、微粒子反応性ガラス及び水と一緒に還元剤及び酸化剤を貯蔵安定状態で組み合わせられる。
開始剤系の活性種の量は特に限定されない。好適には、ラジカル開始剤系(b)中の光開始剤の量は、式(I)のラジカル重合性化合物または(c)さらなるラジカル重合性化合物などのモノマーの総量に基づいて、0.001〜5mol%の範囲である。
さらなるラジカル重合性化合物(c)
本発明の歯科用組成物は、式(I)の(a)ラジカル重合性化合物以外の(c)さらなるラジカル重合性化合物を任意で含み得る。歯科用組成物は、一つまたは複数のさらなるラジカル重合性化合物(c)を含み得る。
本明細書で使用される用語「さらなるラジカル重合性化合物」は、モノマー、オリゴマーおよびポリマーを含む。
さらなるラジカル重合性化合物(c)は、そのラジカル重合性基について特に限定されない。さらなるラジカル重合性化合物(c)は、一つまたは複数のラジカル重合性基を有していてもよい。少なくとも一つのラジカル重合性基は、例えば、ラジカル重合性炭素−炭素二重結合であることができ、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリルアミド基から選択されることができ、好ましくは(メタ)アクリロイル基であることができる。
モノマーの形態のさらなるラジカル重合性化合物(c)の好適な例は、(メタ)アクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸のアミド、ウレタンアクリレートまたはメタクリレート、およびポリオールアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択され得る。
(メタ)アクリレートは、好ましくは以下の式(A)、(B)および(C):
Figure 2020502076

式中、R20、R 20、R** 20、およびR*** 20
独立して水素原子、−COOM、直鎖状C1−18またはC3−6シクロアルキル基で置換されてもよい分岐状C3−18、C6−14アリールまたはC3−14ヘテロアリール基、−COOM、−POM、−O−POまたは−SOM*、C1−16アルキル基で置換されてもよいC〜C18シクロアルキル基、C6−14アリール基またはC3−14ヘテロアリール基、またはC〜C18アリール基またはC〜C18ヘテロアリール基、−COOM、−POM、−O−POまたは−SOM*を表し:
21は、水素原子、直鎖状C1−18または分枝状C3−18アルキル基またはC3−6シクロアルキル基で置換されてもよいC〜C18アルケニル基、C6−14アリールまたはC3−14ヘテロアリール基、−COOM、−POM、−O−POまたは−SOM*、C1−16アルキル基で置換されてもよいC〜C18シクロアルキル基、C6−14アリール基またはC3−14ヘテロアリール基、−COOM、−POM、−O−POまたは−SOM*、またはC〜C18アリール基またはC〜C18ヘテロアリール基を表し:
22は1〜45個の炭素原子を有する二価の有機残基を表し、それにより、二価の有機残基は、1〜7個のC3−12シクロアルキレン基、1〜7個のC6−14アリーレン基、1〜7個のカルボニル基、1〜7個のカルボキシル基(−(C=O)−O−もしくは−O−(C=O−)、1〜7個のアミド基(−(C=O)−NH−もしくは−NH−(C=O)−)、または1〜7個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−もしくは−O−(C=O)−NH−)、ならびに酸素、窒素および硫黄から選択される1〜14個のヘテロ原子のうちの少なくとも一つを含んでいてもよく、この二価の有機残基は、ヒドロキシル基、チオール基、C6−14アリール基、−COOM、−POM、−O−POまたは−SOM*からなる群から選択される一つもしくは複数の置換基で置換されていてもよく;好ましくは、R22は、C〜C18アルキレン基またはC〜C18アルケニレン基であり、一つもしくは複数の−OH基で置換されてもよく、このアルキレンまたはアルケニレン基は、1〜4個のC6−10アリーレン基、1〜4個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−もしくは−O−(C=O)−NH−)、および1〜8個の酸素原子のうちの少なくとも一つを含んでいてもよく:
23は、飽和二価もしくは多価置換もしくは非置換のC〜C18炭化水素基、飽和二価もしくは多価置換もしくは非置換の環状C〜C18炭化水素基、二価もしくは多価置換もしくは非置換のC〜C18アリールもしくはヘテロアリール基、二価もしくは多価置換もしくは非置換C〜C18アルキルアリール基もしくはアルキルヘテロアリール基、二価もしくは多価置換もしくは非置換のC〜C30アラルキル基、または1〜14個の酸素原子を有する二価もしくは多価置換もしくは非置換のC〜C45モノ−、ジ−、もしくはポリエーテル残基を表し:
mは整数であり、好ましくは1〜10の範囲であり、
(式中、
20、R 20、R** 20、*** 20、R21、およびR22のうちのいずれか一つのMは、それぞれ互いに独立して、それぞれ水素原子または金属原子を表し、
20、R 20、R** 20、*** 20、R21、およびR22のうちのいずれか一つのM*は、それぞれ互いに独立して、それぞれ金属原子を表す]の化合物から選択され得る。
20、R 20、R** 20およびR*** 20について、直鎖状C1−18アルキル基または分枝状C3−18アルキル基は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、またはヘキシルであってもよい。R21およびR*21について、C1−18アルキル基またはC2−18アルケニル基は、例えばエチル(エテニル)、n−プロピル(プロペニル)、i−プロピル(プロペニル)、n−ブチル(ブテニル)、イソブチル(イソブテニル)、tert−ブチル(ブテニル)、sec−ブチル(ブテニル)、ペンチル(ペンテニル)、またはヘキシル(ヘキセニル)であってもよい。
20、R 20、R** 20、R*** 20およびR21について、アリール基は、例えば、フェニル基またはナフチル基であってもよく、C3−14ヘテロアリール基は、窒素、酸素、硫黄から選択される1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい。
22について、「二価の有機残基は、〜のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい」という句において、二価の有機残基に含まれていてもよい基が共有結合によって二価の有機残基に組み込まれることを意味する。例えば、BisGMAでは、フェニルの形態の二個のアリール基と酸素の形態の二個のヘテロ原子がR22の二価の有機残基に組み込まれている。あるいは、更なる例として、UDMAでは、二個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−または−O−(C=O)−NH−)がR22の二価の有機残基に組み込まれている。
式(B)において、点線の結合は、R20およびR*** 20が、COに対して(Z)または(E)配置であってもよいことを示す。
好ましくは、式(A)、(B)および(C)において、R20、R 20、R** 20、およびR*** 20は、互いに独立して、水素原子;C3−6シクロアルキル基、C6−14アリールまたはC3−14ヘテロアリール基で置換されていてもよい直鎖状C1−16または分枝状C3−16アルキル基;C1−16アルキル基、C6−14アリールまたはC3−14ヘテロアリール基で置換されていてもよいC3−6シクロアルキル基;C6−14アリールまたはC3−14ヘテロアリール基を表わす。より好ましくは、式(B)において、R20、R 20、R** 20、およびR*** 20は、互いに独立して、水素原子;C4−6シクロアルキル基、C6−10アリールもしくはC4−10ヘテロアリール基で置換されていてもよい直鎖状C1−8または分枝状C3−8アルキル基;C1−6アルキル基、C6−10アリールもしくはC4−10ヘテロアリール基で置換されていてもよいC4−6シクロアルキル基;またはC6−10アリール基を表す。更により好ましくは、R20、R 20、R** 20、およびR*** 20は、互いに独立して、水素原子、シクロヘキシル基もしくはフェニル基で置換されていてもよい直鎖状C1−4もしくは分枝状CもしくはCアルキル基、またはC1−4アルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基を表す。最も好ましくは、R20、R 20、R** 20、およびR*** 20は、互いに独立して、水素原子、または直鎖状C1−4もしくは分枝状CまたはCアルキル基を表す。
好ましくは、式(A)において、R21は、水素原子;C3−6シクロアルキル基、C6−14アリールもしくはC3−14ヘテロアリール基で置換されていてもよい直鎖状C1−16もしくは分枝状C3−16アルキル基またはC2−16アルケニル基;C1−16アルキル基、C6−14アリールもしくはC3−14ヘテロアリール基で置換されていてもよいC3−6シクロアルキル基;C6−14アリールまたはC3−14ヘテロアリール基を表す。より好ましくは、R21は、水素原子、直鎖状C1〜10若しくは分岐C3〜10アルキル、またはC2〜10アルケニル基(C4〜6シクロアルキル基、C6〜10アリール基、またはC4〜10ヘテロアリール基で置換されていてもよい)、C4−6シクロアルキル基(C1〜6アルキル基、C6〜10アリール基若しくはC4〜10ヘテロアリール基、またはC6〜10アリール基で置換されていてもよい)を表す。更により好ましくは、R21は、水素原子;シクロヘキシル基またはフェニル基で置換されていてもよい直鎖状C1−10もしくは分枝状C3−10アルキル基または直鎖状C2−10もしくは分枝状C3−10アルケニル基;またはC1−4アルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基を表す。なお更により好ましくは、R21は、非置換のC1−10アルキル基またはC2−10アルケニル基、更により好ましくは非置換C2−6アルキル基またはC3−6アルケニル基、最も好ましくはエチル基またはアリル基を表す。
式(A)、(B)、および(C)のメタクリレート化合物は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAグリセロレートジメタクリレート(「bis−GMA」CAS No.1565−94−2)、4,4,6,16(または4,6,6,16)−テトラメチル−10,15−ジオキソ−11,14−ジオキサ−2,9−ジアザヘプタデカ−16−エン酸2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペン−1−イル)オキシ]エチルエステル(CAS No.72869−86−4)(UDMA)、グリセロールモノアクリレートおよびグリセロールジアクリレート、例えば1,3−グリセロールジメタクリレート(GDM)、グリセロールモノメタクリレートおよびグリセロールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシド繰り返し単位の数は2〜30で変化する)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシド繰り返し単位の数は2〜30で変化する、特にトリエチレングリコールジメタクリレート(「TEGDMA」)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールならびにジペンタエリスリトールのモノアクリレートおよびモノメタクリレート、ジアクリレートおよびジメタクリレート、トリアクリレートおよびトリメタクリレートならびにテトラアクリレートおよびテトラメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサンエチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−アクリルオキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−メタクリレート]プロパン、ならびに2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−アクリレート]プロパン、からなる群から選択されることができる。
最も好ましくは、式(B)の化合物は、
Figure 2020502076

からなる群から選択される。
特に好ましいモノ−もしくはビス−または(メタ)アクリルアミドおよびポリ[(メタ)アクリルアミド]は以下の式(D)、(E)、および(F):
Figure 2020502076

(式中、R24、R 24、R** 24、R*** 24は、式(A)、(B)および(C)について上記に定義したR20、R 20、R** 20、R*** 20と同じ意味であり、R25、R 25は、互いに独立して、式(A)について上記に定義したR21と同義の残基を表し、R27およびm’は、式(C)について上記に定義したR23、mと同義である)を有する。
式(E)中、R26は炭素数1〜45の二価の置換もしくは無置換の有機残基を表し、それにより、前記有機残基は、1〜7個のC3−12シクロアルキレン基、1〜7個のC6−14アリーレン基、1〜7個のカルボニル基、1〜7個のカルボキシル基(−(C=O)−O−または−O−(C=O−)、1〜7個のアミド基(−(C=O)−NH−または−NH−(C=O)−)、1〜7個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−または−O−(C=O)−NH−)、ならびに酸素、窒素および硫黄から選択される1〜14個のヘテロ原子のうちの少なくとも一つを含んでいてもよく、この二価の有機残基は、ヒドロキシル基、チオール基、C6−14アリール基、−COOM、−POM、−O−PO、または−SOM*からなる群から選択される一つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。好ましくは、R26は、C〜C18アルキレン基またはC〜C18アルケニレン基であり、これらは、1〜4個のC6−10アリーレン基およびC3−8シクロアルキレン基、1〜4個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−または−O−(C=O)−NH−)、および1〜8個の酸素原子または窒素原子のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
26について、句「二価の有機残基は、〜のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい」は、式(B)の化合物のR22について上記に定義したのものと同様の意味を有する。
式(D)、(E)、(F)において、点線の結合は、R24およびR*** 24が、COに対して(Z)または(E)配置であることができることを示す。
式(D)の化合物において、R25およびR25*は、R25およびR25 がC−C結合により、またはエーテル基、チオエーテル基、アミン基、およびアミド基からなる群から選択される官能基により、結合した環を一緒に形成してもよい。
式(D)、(E)、(F)による好ましいメタクリルアミドは以下の式:
Figure 2020502076

を有する。
式(D)、(E)、(F)による好ましいアクリルアミドは、以下の式:
Figure 2020502076

を有する。
最も好ましいアクリルアミドは、ビス−(メタ)アクリルアミド:
構造式;
Figure 2020502076

を有するN,N’−ジアリル−1,4−ビスアクリルアミド−(2E)−ブタ−2−エン(BAABE)、
及び、
構造式;を有するN,N’−ジエチル−1,3−ビスアクリルアミド−プロパン(BADEP)、である。
Figure 2020502076
特に好ましいさらなるラジカル重合性化合物(c)は、N置換アルキルアクリルまたはアクリル酸アミドモノマー、好ましくは式(A)、(B)、(D)および(E)の化合物から選択され、より好ましくは式(D)および(E)の化合物から選択され、最も好ましくは式(E)の化合物から選択される。
ポリマーの形態のさらなるラジカル重合性化合物(c)は、好ましくは、ラジカル重合性ポリ酸ポリマーから選択される。
用語「重合性ポリ酸ポリマー」と共に用いられる用語「重合性」は、ラジカル形成を含む付加重合において共有結合によって結合することができるポリマーを意味する。「ラジカル重合性ポリ酸ポリマー」は、ラジカル重合によって、架橋剤と、例えば、ラジカル重合性(炭素−炭素)二重結合を有するモノマーと共有結合することができ、歯科用組成物を硬化する場合にグラフトポリマーおよび/または架橋ポリマーを形成する。
用語「ラジカル重合性ポリ酸ポリマー」と共に使用される用語「ポリ酸」は、ポリマーが、反応性ガラスとのセメント反応に関与し得る複数の酸性基、好ましくはカルボン酸基を有することを意味する。カルボン酸基は、好ましくは、骨格中に存在し、アクリル酸、メタクリル酸、および/またはイタコン酸に由来する。
他の更なる成分
本発明による歯科用組成物は、上述の成分の他に、追加的な任意の成分を含んでもよい。
例えば、本発明による歯科用組成物は、適切な溶媒を含んでもよい。
溶媒は、(d)有機水溶性溶媒および/または水から選択されることが好ましい。有機水溶性溶媒は、エタノール、プロパノール(n−、i−)、ブタノール(n−、iso−、tert.−)、およびアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジイソプロピルケトンなどのケトン、およびDMSOなどの極性非プロトン溶媒からなる群から選択され得る。
歯科用浸潤剤の形態の歯科用組成物については、DMSOは有機水溶性溶媒として特に好ましい。
本発明の歯科用組成物は、組成物の総重量に基づいて5〜75重量パーセントの量で溶媒を含んでもよい。
好ましくは、本発明による歯科用組成物は、水を含まない。
本発明による歯科用組成物は、(e)充填剤を含むことができる。歯科用組成物は、一つまたは複数の充填剤(e)を含んでもよい。好ましくは、充填剤(e)は、微粒子ガラス充填剤、シラン化ガラスフレーク、粒状予備重合充填剤、粉砕予備重合充填剤、および充填剤凝集体から選択される。
用語「微粒子ガラス充填剤」は、熱溶融プロセスによりガラスに変態され、様々なプロセスにより粉砕される主として金属酸化物の固体混合物を指す。ガラスは、微粒子状の形態である。更に、微粒子ガラス充填剤は、例えば、シラン化処理または酸処理により表面改質され得る。
充填剤(e)の場合、ガラス成分を、「不活性ガラス」、「反応性ガラス」、および「フッ化物徐放性ガラス」から選択することができる。
用語「不活性ガラス」は、セメント反応において酸性基を含むポリマーと反応することができないガラスを指す。不活性ガラスは、例えば、Journal of Dental Research、1979年6月、1607〜1619ページ、またはより最近では、米国特許第4814362号、同第5318929号、同第5360770号、及び米国特許出願公開第2004/0079258A1号に記載されている。具体的には、米国特許出願公開第2004/0079258A1号により、強塩基性酸化物、例えばCaO、BaO、SrO、MgO、ZnO、NaO、KO、LiOを弱塩基性酸化物、例えばスカンジウムまたはランタニド系列中のもので置換した不活性ガラスが知られている。
用語「反応性ガラス」は、セメント反応において酸性基を含むポリマーと反応することができるガラスを指す。ガラスは、微粒子状の形態である。任意の従来の反応性歯科用ガラスを本発明のために使用することができる。微粒子反応性ガラスの具体例は、カルシウムアルミノシリケートガラス、カルシウムアルミノフルオロシリケートガラス、カルシウムアルミニウムフルオロボロシリケートガラス、ストロンチウムアルミノシリケートガラス、ストロンチウムアルミノフルオロシリケートガラス、ストロンチウムアルミノフルオロボロシリケートガラスから選択される。好適な反応性ガラスは、金属酸化物の形態、例えば、酸化亜鉛および/もしくは酸化マグネシウム、ならびに/または例えば米国特許第US−A3,655,605号、同US−A3,814,717号、同US−A4,143,018号、同US−A4,209,434号、同US−A4,360,605号および同US−A4,376,835号に記載のイオン溶出性ガラスの形態であってもよい。
用語「フッ化物徐放性ガラス」は、フッ化物を放出することができるガラスを指す。ガラスがフッ化物徐放性、好ましくは持続的フッ化物徐放性を有するという条件で、フッ化物を含有するガラス無機粒子を形成するために酸化物の混合物に添加することによって、フッ化物放出能力を与えることができる。このような無機粒子は、フッ化ナトリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化ランタン、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム、及びカルシウム含有フルオロアルミノシリケートガラスからなる群から選択することができる。
好ましくは、微粒子ガラス充填剤は、上記に定義した反応性ガラスまたはフッ化物徐放性ガラス、より好ましくは反応性ガラスである。
最も好ましくは、微粒子ガラス充填剤は、
1) 20〜45重量%のシリカと、
2) 20〜40重量%のアルミナと、
3) 20〜40重量%の酸化ストロンチウムと、
4) 1〜10重量%のPと、
5) 3〜25重量%のフッ化物と、を含む反応性微粒子ガラス充填剤である。
本歯科用組成物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%の微粒子ガラス充填剤を含む。
微粒子ガラス充填剤は、例えば電子顕微鏡法により、またはMALVERN Mastersizer SもしくはMALVERN Mastersizer 3000装置により具現される従来のレーザー回折粒度分布測定法を用いる測定で、一般に0.005〜100μm、好ましくは0.01〜40μm、より好ましくは0.05〜20μm、最も好ましくは0.1〜3μmの平均粒子径を有する。
微粒子ガラス充填剤は、単峰性または多峰性(例えば、二峰性)粒度分布を有してもよく、多峰性微粒子ガラス充填剤は、異なる平均粒子径を有する二つ以上の微粒子画分の混合物を表す。
本明細書で使用される用語「シラン化」は、充填剤がその表面にシランカップリング剤を、例えば少なくとも部分的に、好ましくは完全に充填剤の表面を覆うコーティングの形態で有することを意味する。
典型的に、シランカップリング剤は式(Y)
(R14,R15,R16)Si(R (Y)
のオルガノシランが用いられ、式中nは1〜3であり、置換基R14、R15、R16の数は4−nであり、R14、R15、R16のうちの少なくとも一つは重合性基を表す。二個または三個の基Rが存在する場合、同じでも互いに異なっていてもよいRは、被覆しようとする充填材料の表面と反応することができる加水分解性基を表す。Rは、アルコキシ基、エステル基、ハロゲン原子及びアミノ基からなる群から選択されてもよく、アルコキシ基は、好ましくは直鎖状C1−8または分枝状もしくは環状C3−8アルコキシ基であり、そしてエステル基は、好ましくは直鎖状C1−8または分枝状もしくは環状C3−8アルキル基を有するカルボキシレートである。最も好ましくは、加水分解性の基Rは、アルコキシル基を表す。
基R14、R15およびR16は、同一または異なるものであってもよく、非反応性基および/または重合性基を表すが、但し、R14、R15およびR16のうちの少なくとも一つは重合性基を表す。R14、R15およびR16の非反応性基をアルキル基、好ましくは直鎖状C1−8または分枝状もしくは環状C3−8アルキル基で表すことができる。R14、R15およびR16の重合性基は、好ましくは(メタ)アクリル基、ビニル基またはオキシラン基からなる群から選択され、より好ましくは(メタ)アクリル基またはビニル基、最も好ましくは(メタ)アクリル基であり、(メタ)アクリル基は、例えばメタクリルオキシまたはメタクリルオキシアルキルの形態であってもよく、ここでアルキルは直鎖状C1−8または分枝状もしくは環状C3−8アルキル基を意味する。
特に好ましいオルガノシランは、例えば3−メタクリロキシトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)−ビニルシランもしくはトリス(アセトキシ)−ビニルシラン、または欧州特許出願公開第0969789A1号に開示されているオルガノシランの特定の群、即ち3−メタクリル−オキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシ−モノクロロシラン、3−メタクリル−オキシプロピルジクロロモノメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリ−クロロシラン、3−メタクリロキシ−プロピルジクロロモノメチル−シラン、及び3−メタクリロキシプロピルモノクロロジメチルシランのうちのいずれか一つである。
式(Y)のオルガノシランの代わりにまたはそれに加えて、いわゆるダイポーダル(dipodal)オルガノシランを用いることができる。ダイポーダルオルガノシランは、典型的には式(Z);
((R14、R15、R16)Si−R17CH−R (Z)、
(式中、R14、R15、R16およびRは、式(Y)のオルガノシランについて上記に定義したのと同じ意味を有し、R17はアルキレン基、好ましくは直鎖状C1−8または分枝状もしくは環状C3−8アルキレン基を表す)の化合物である。
本明細書で使用される用語「フレーク」は、ガラスがフレークの形態であること、すなわちその長径がその厚さよりも少なくとも2倍大きいことを意味する。平均長径の平均厚さに対する比は、本明細書では「平均アスペクト比」と呼ばれる。
1〜70μmのメジアン粒子径(D50)を有する複合充填剤粒子を供給するために、前述の充填剤の凝集体を、
a) 1〜1200nmのメジアン粒子径(D50)を有する微粒子充填剤、好ましくは上記の微粒子ガラス充填剤を、その微粒子充填剤の表面上にポリマーコーティング層を形成する重合性皮膜形成剤を含有するコーティング組成物でコーティングすることであって、前記ポリマーコーティング層は、コーティング層の表面に反応性基を示してもよく、前記反応性基は付加重合性基及びステップ成長重合性基から選択され、それによりその後または同時にコーティング微粒子充填剤を形成する、コーティングすることと;
b) コーティングされた微粒子充填剤を造粒するために、必要に応じて更なる架橋剤の存在下で、及び必要に応じて反応性基を示さない更なる微粒子充填剤の存在下でコーティング微粒子充填剤を凝集させることであって、造粒物は、コーティング微粒子充填剤粒子と、少なくとも一つのコーティング層によって互いに分離されそして互いに結合する任意の更なる微粒子充填剤粒子とを含有し、それにより、少なくとも一つのコーティング層は、反応性基と必要に応じて更なる架橋剤とを反応させることによって得られる架橋基によって架橋されてもよい、凝集させることと;
c) コーティング微粒子充填剤の造粒物を必要に応じて粉砕すること、分級すること及び/またはふるい分けすることと;
d) コーティング微粒子充填剤の造粒物を必要に応じて更に架橋することと;
を含むプロセスであって、反応性基は反応性基及び必要に応じて更なる架橋剤を反応させることによって得られる架橋性基に変換され、欧州特許出願公開第2604247A1号に更に記載されるように、微粒子充填剤は体積基準で複合充填剤粒子の主成分である、プロセスによって得ることができる。
造粒され、粉砕された予備重合充填剤を得るために、上記の方法の工程b)は省略され、そして粉砕工程c)は好適な造粒粒子径または粉砕粒子径を得るために好適な粉砕装置を用いて行われる。
本発明による歯科用組成物は、好ましくは、組成物の総重量に基づいて1〜85重量パーセントの量の充填剤(e)を含有する。
特に好ましい充填剤(e)は、
(e−1) 0.1〜3μmの平均粒子径を有する一つまたは複数の微粒子ガラス充填剤(e);および
(e−2) 一つまたは複数のシラン化ガラスフレークを含み、
(i) シラン化ガラスフレークは50nm〜1000nmの平均厚さを有し、
(ii) シラン化ガラスフレークは2:1〜50:1の範囲の平均アスペクト比(長径/厚さ)を有する。
本明細書で使用される「平均厚さ」は、以下のように決定され得る。試料の100以上のガラスフレークの厚さを、走査形電子顕微鏡(SEM)によって測定する。次に、測定した厚さの合計を、厚さを測定したガラスフレークの数で割る。
特に好ましい充填剤(e)において、微粒子ガラス充填剤(e−1)は、0.1〜3μm、好ましくは0.2〜2μm、より好ましくは0.3〜1.5μm、最も好ましくは0.5〜1.2μmの平均粒子径を有する。微粒子ガラス充填剤(e−1)の平均粒子径が0.1μm未満である場合、歯科用組成物の取扱性を低下させる可能性がある。微粒子ガラス充填剤(e−1)の平均粒子径が3.0μmより大きい場合、硬化した歯科用組成物の光沢性を低下させる可能性がある。
好ましくは、微粒子ガラス充填剤(e−1)は反応性ガラスまたはフッ化物徐放性ガラスである。より好ましくは、微粒子ガラス充填剤(e−1)は反応性ガラスである。
好ましくは、歯科用組成物は微粒子ガラス充填剤(e−1)を組成物の総重量に基づいて、0.5〜60重量パーセント、好ましくは1〜50重量パーセント、より好ましくは3〜40重量パーセントの量を含有する。
微粒子ガラス充填剤(e−1)は、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.9、最も好ましくは少なくとも0.95の球形度を有する。
本明細書で使用される用語「球形度」は、微粒子ガラス充填剤(e−1)の形態の与えられた粒子と同じ体積を有する球の表面積の、微粒子ガラス充填剤(e−1)の形態の粒子の表面積に対する比を意味する。
好ましくは、微粒子ガラス充填剤(e−1)はシラン化されており、より好ましくは上記に定義したオルガノシランでシラン化されている。
シラン化ガラスフレーク(e−2)は、好ましくは、50nm〜1000nmの平均厚さ、および/または2:1〜50:1の範囲の平均アスペクト比(長径/厚さ)を有する。シラン化ガラスフレークの上記平均厚さは50〜1000μmであるが、異なる厚さを有するシラン化ガラスフレークの画分の重量は試料中で変動し得る。シラン化ガラスフレークは、少なくとも90重量%の量において、好ましくは30nm〜1500nmの厚さ、より好ましくは40nm〜1000nmの厚さを有するシラン化ガラスフレークの画分を含む。
シラン化ガラスフレーク(e−2)の特定の平均厚さおよび特定の平均アスペクト比を選択することにより、優れた光沢および光沢保持率を長期間得ることができる。本発明によれば、硬化した歯科用組成物のポリマーマトリックス内でシラン化ガラスフレーク(e−2)を自己整列させることが可能であり、それによりガラスフレークを部分的に重なり合わせることによって配置することができる。平面状の重なり合う自己整列により、硬化した歯科用組成物の滑らかな表面が得られる。したがって、歯科用組成物は、球または繊維の形態のガラスを含有する従来の組成物と比較して初期光沢を改善する。
本明細書で使用される用語「光沢」は、表面が正反射方向にどれだけ良好にまたは不良に光を反射するかを示す光学特性を意味する。光沢は、材料の屈折率、入射光の角度、表面形状によって影響を受ける。見かけの光沢は、正反射の量、即ち入射光に対して対称的な角度で等しい量で表面から反射される光に依存する。正反射は、光学分野で衆知のフレネル方程式によって計算されることができる。マイクロメートルの範囲の表面粗さは、正反射状態に影響する。正反射光の強度が低いということは、表面が粗く、光を他の方向に散乱させることを意味する。具体的には、完全に無反射の表面はゼロ光沢単位(G.U.)を有するが、完全な鏡は60°の測定角度で1000G.U.を有する。60°の測定角度が視覚的観察に最も近い相関を与えるために使用するのに最良の角度であると考えられるので、典型的に、光沢測定には、60°の測定角度が用いられる。10G.U.以下は低光沢を意味し、10〜70G.U.は半光沢と見なされ、70G.U.より上は高光沢と見なされる。本発明による硬化した歯科用組成物から調製された歯科用修復物については、半光沢(10〜70G.U.)および高光沢(>70G.U.)が好ましく、高光沢が特に好ましい。
シラン化ガラスフレーク(e−2)の特定の選択は、初期光沢を改善するだけでなく、比較的長い期間にわたって光沢を保持することができる。
本明細書で使用される用語「光沢保持」は、硬化した歯科用組成物が、材料除去方法、例えば研磨もしくはポリッシングによる加工を受ける場合でも、または同様に、硬化した歯科用組成物が、典型的な毎日の負荷、例えば歯磨き、口腔内の唾液、および患者による歯ぎしりもしくは噛みしめに曝される場合でも、比較的長期間にわたってその初期光沢を保持することを意味する。平面状の重なり合う配置では、ガラスフレーク状粒子が機械的荷重によって除去される可能性が低いので、ガラスフレークのこの配列は前述の荷重に対してより安定していることが容易に理解される。即ち、硬化した歯科用組成物の表面は比較的長期間にわたって滑らかなままであろう。更に、耐薬品性に関して、例えば唾液および/または食物由来の酸の観点から、ガラスフレークの平面状の重なり合う配列は一種のバリアを形成し、そのバリアは硬化した歯科用組成物およびその裏の歯を化学的影響、例えば酸性度による劣化から保護する。
さらに、シラン化ガラスフレーク(e−2)は、未硬化歯科用組成物の有利な粘度をもたらし得る。具体的には、シラン化ガラスフレーク(e−2)は、歯科用組成物のチキソトロピック挙動をもたらし得る。
本発明によれば、微粒子ガラス充填剤(e−1)とシラン化ガラスフレーク(e−2)との組み合わせは、歯科用組成物の粘度を所望の範囲内に調整するのに好適である。ガラスフレークは平面状の重なり合う配列形態における有利な配置をとり、その配置は均一な強化および寸法安定性の向上をもたらし得るため、シラン化ガラスフレーク(e−2)はまた、硬化した歯科用組成物の機械的特性および長期の機械的耐性の点から有利であり得る。
シラン化ガラスフレーク(e−2)と微粒子ガラス充填剤(e−1)との組み合わせは、硬化した歯科用組成物について十分にバランスのとれた特性を得るために特に選択される。シラン化ガラスフレーク(e−2)と微粒子ガラス充填剤(e−1)との特定の組み合わせにより、優れた光沢、光沢保持率、および長期の耐薬品性ならびに優れた機械的特性および長期の機械的耐性を達成することができる。小さいナノサイズのシラン化ガラスフレーク(e−2)は、最大3μmのかなり大きくなり得る微粒子ガラス充填剤(e−1)の間および周囲に容易に配置される。それにより、小さいナノサイズのシラン化ガラスフレーク(e−2)は、上記の平面状の重なり合う配列形態で自己整列することができ、それにより一種のバリアまたはシールド効果をもたらすことができる。即ち、大きな微粒子ガラス充填剤(e−1)粒子はシラン化ガラスフレーク(e−2)の平面状の重なり合う配列によってシールドされるので、大きな微粒子ガラス充填剤(e−1)粒子は、硬化した歯科用組成物から、機械的な力および化学的影響による除去がされない。このシールドの結果、大きな微粒子ガラス充填剤(e−1)ではなく、もしあれば、せいぜい、小さいナノサイズのシラン化ガラスフレーク(e−2)が硬化した歯科用組成物から除去される。このシールド効果により、小さい粒子を除去した後でも、硬化した歯科用組成物の表面は依然として滑らかであり、優れた光沢を有するので、非常に劣化した光沢を有する著しく不規則な表面をもたらす大きな粒子が除去された硬化組成物と比較して、優れた光沢が保持される。更に、上記のシールド効果はまた良好な機械的および化学的耐性の両方を提供することも可能であり、よってシールド効果が攻撃的な化学的影響、例えば酸性液体が大きな粒子に浸透するのを防止する。この浸透により、機械的な力が加えられた場合に粒子が除去される可能性があり、それにより光沢および長期の機械的耐性が低下する。
例えば、米国特許出願公開第2006/0241205A1号に教示されているように、微粒子ガラス充填剤(e−1)がガラスフレーク(e−2)よりも小さい場合、上記のシールド効果が得られる可能性が低いことは容易に理解される。ガラスフレークは、例えば(球状)ガラス充填剤粒子の形態の構造充填剤よりも大きいので、(球状)ガラス充填剤粒子の間におよびその周囲に容易には配置されることはできないが、むしろ(球状)ガラス充填剤粒子およびガラスフレークの別々の層を形成することができる。なぜなら大きいガラスフレークを小さい(球状)ガラス充填剤粒子間に平面状の重なり合う配列で配置することができないためである。しかし、大きなガラスフレークの層が(球状)ガラス充填剤粒子を覆う場合、大きなガラスフレークは機械的な力または化学的影響によって硬化した歯科用組成物の表面から容易に除去され得る。そして、光沢ならびに化学的および機械的耐性の劣化は、本発明による歯科用組成物と比較して非常に高い。
好ましくは、微粒子ガラス充填剤(e−1)は、0.3〜2、より好ましくは0.4〜1.2の平均粒子径を有する。
シラン化ガラスフレーク(e−2)については、それらが80nm〜1000nmの平均厚さを有することが好ましい。
最も好ましくは、微粒子ガラス充填剤(e−1)は0.4〜1.2の平均粒子径を有し、そしてシラン化ガラスフレーク(e−2)は(a)50nm〜1000nmの平均厚さ、および(b)2:1〜50:1の範囲の平均アスペクト比(長径/厚さ)を有する。
シラン化ガラスフレーク(e−2)のガラスは、酸化物として重量パーセントで以下の成分を含むのが好ましい:
SiO=64−70
=2−5
ZnO=1−5
NaO=8−13
MgO=1−4
CaO=3−7
Al=3−6、
ならびに最大3重量%のKOおよびTiO
シラン化ガラスフレーク(e−2)のガラスは、不活性ガラスであることが好ましく、用語「不活性ガラス」は、微粒子ガラス充填剤(e−1)について上述したのと同じ意味を有する。
シラン化ガラスフレーク(e−2)は、アスペクト比が少なくとも20:1のガラスフレークを粉砕し、続いて粉砕されたガラスフレークをシラン化することによって得られることが好ましい。ガラスフレークの粉砕は特に限定されず、充填材料を粉砕するために典型的に用いられる任意の装置、例えばボールミル粉砕装置を用いて実施されることができる。
このようにして得られた粉砕ガラスフレークを、重合性化合物(ii)と反応性の一つまたは複数の重合性基を有するシランでシラン化することができる。歯科用組成物の充填材料をシラン化するためのシランは公知であり、それらの非常に多様な歯科用途は、例えばJ.M.Antonucci、Journal of Research of the National Institute of Standards and Technology、2005年、110巻、5号、541〜558ページに記載されている。
シラン化ガラスフレーク(e−2)は、好ましくは、光散乱によって決定される粒子径分布を有し、ここで、粒子の少なくとも70パーセント、より好ましくは少なくとも75パーセント、さらにより好ましくは少なくとも80パーセントは、50μm未満の粒子径を有する。
シラン化ガラスフレーク(e−2)は1.46〜1.60の範囲の屈折率を有することが好ましい。
微粒子ガラス充填剤(e−1)およびシラン化ガラスフレーク(e−2)は、微粒子ガラス充填剤(e−1)の平均粒子径とシラン化ガラスフレーク(e−2)の平均厚さとの比を、好ましくは10:1〜1:1、より好ましくは7:1〜1.2:1、最も好ましくは、4:1〜1.4:1の範囲内で選択することによって好適に選択され得る。
歯科用組成物はシラン化ガラスフレーク(e−2)を組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.5〜40重量パーセント、より好ましくは1〜30重量パーセント、さらにより好ましくは3〜20重量パーセントの量を含有する。
歯科用組成物において、微粒子ガラス充填剤(e−1)の重量とシラン化ガラスフレーク(e−2)の重量との比は、好ましくは80:1〜0.5:1、より好ましくは40:1〜1:1、さらにより好ましくは20:1〜1.5:1、さらにいっそうより好ましくは10:1〜2:1、最も好ましくは5:1〜2.5:1の範囲である。
一部式または多部式歯科用組成物
本発明による歯科用組成物は、一部式または多部式歯科用組成物であってもよい。
本明細書で使用される用語「一部式」は、歯科用組成物の全ての構成要素が単一部分に含まれることを意味する。
本明細書で使用される用語「多部式」は、歯科用組成物の構成要素が多数の別々の部分に含まれることを意味する。例えば、構成要素の第一の部分は第一の部分に含まれ、さらに構成要素の第二の部分は第二の部分に含まれ、構成要素の第三の部分は第三の部分に含まれてもよく、構成要素の第四の部分は第四の部分に含まれてもよい、などである。
好ましくは、歯科用組成物は一部式または二部式歯科用組成物、より好ましくは一部式歯科用組成物である。
一部式歯科用組成物については、水がなく、任意で有機溶媒を含まないことが好ましい。水および/または有機溶媒は、歯科用組成物の保存中にラジカル重合性化合物の、特にレドックス開始剤系の望ましくない活性化をもたらす場合がある。
二部式歯科用組成物では、第一の部分は、好ましくは固体である少なくともラジカル開始剤系(b)、および任意で例えば微粒子ガラス充填剤などの充填剤(e)などの固体成分を含むことが好ましい。第二の部分は、好ましくは少なくともラジカル重合性化合物(a)、および任意で有機水溶性溶媒および/または水を含む。第二の部分には水がないことが好ましい。
歯科組成物の特徴
本歯科用組成物のpHは用途、例えば接着剤としての用途を考慮して適切に設定されるが、その組成物中および/または修復剤中に含まれる他の成分との化学的適合性も考慮して適切に設定される。本発明による歯科用組成物は酸性であることが好ましい。より好ましくは、pHは、最大でも6であり、より好ましくはpHが最大でも4であり、最も好ましくはpHが最大で2である。
一部セルフエッチング、セルフプライミング歯科用接着剤組成物の形態の本歯科用組成物については、pHは0.1〜6の範囲であることが好ましく、0.5〜4であることがより好ましい。
pHがこの範囲を超える場合、式(I)のラジカル重合性化合物の加水分解安定性が減少することがあり、それによって歯科用組成物の貯蔵寿命が低下し得る。
水性歯科用組成物の前述のpH値は、歯科用組成物に含まれる成分、および意図される用途に応じて適宜調節される場合がある。歯科用組成物のpHは当技術分野において知られている任意の手段によって、例えば、所定量の一つまたは複数の酸性化合物をその水溶性歯科用組成物に添加することによって調節されてもよい。この文脈では、「酸性化合物」という用語はpKが約−10〜50の範囲内である化合物を意味する。適切な無機酸の例は、硫酸、ホスホン酸、リン酸、塩酸、硝酸などであり、これらは単独で、または互いに組み合わせて使用されてもよい。適切な有機酸の例は、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、イタコン酸、ポリ(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルリン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、コハク酸、リンゴ酸、タンニン酸、トルエンスルホン酸、アジピン酸、酒石酸、及びアスコルビン酸から成る群より選択されることが好ましいカルボン酸である。水性歯科用組成物の設定pH値は、20℃の温度でpK値が約9〜50の範囲内である有機弱酸または無機弱酸とその対応する塩の組み合わせである安定化させられる典型的な化学的緩衝系によって場合がある。あるいは、その緩衝系は20℃の温度におけるpK値が約6〜8の範囲である有機化合物を代表するノーマン・グッド緩衝液(グッド緩衝液)の形態であってもよく、生化学的に不活性であり、且つ人体などの生体系での適用に適切である。典型的な化学緩衝系の例は、酸性酸/酢酸塩緩衝液、リン酸二水素塩/リン酸一水素塩緩衝液、またはクエン酸/クエン酸緩衝液である。グッド緩衝液の例は、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2−N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、またはN−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)である。用語「pH値」に関連し、pH値/系は、典型的には、水が主な化合物である水性系、例えば、歯科用組成物の液相の約55〜90重量パーセントの量で存在し得る水性系、に関することが留意される。歯科用組成物のpH値は、水性系のpH値を決定するための適切な標準手段、例えば、ガラス電極によって決定されてもよい。
好ましい無水製剤の形態での本歯科用組成物などの非水性系については、pH値は、水の代わりに、有機溶媒を含む系について決定される必要がある。これらの有機溶媒は、例えば、エタノール、プロパノール(n−、i−)、ブタノール(n−、イソ−、tert−)などのアルコール、ケトン、アセトンなどのケトンから成る群から選択され得る。これらの有機溶媒を含むこうした非水性系のpH値の決定は、ガラス電極によっても実施され得る。ところが、pH値を正しく決定するために、非水性系でのpH値を測定するための電極の製造者の指示を考慮に入れる必要がある。
本発明による歯科用組成物は、50℃の保存温度で少なくとも一週間加水分解に安定であることが好ましい。このような保存の後、こうした歯科用組成物から調製される接着剤のエナメルおよび/または象牙質への接着強度は、少なくとも10MPaが好ましく、15MPaであることがより好ましい。
本発明による歯科用組成物は、23℃で1000mPa・s未満の動的粘度を有することが好ましい。
式(I)のラジカル重合性化合物、およびその使用
本発明はさらに、以下の式(I)のラジカル重合性化合物またはその塩に関する:
Figure 2020502076

(式中、
およびRの一方が
以下の式(II)または(III)の基を表し、また、RおよびRの他方は同一または異なるものであってもよく、独立して水素原子または式(II)または(III)の基を表し:
Figure 2020502076

(式中、
は、水素原子またはメチル基であり、
はC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基またはC2−6アルケニル基であり、
nは0〜14の整数を表し;
mは1〜14の整数を表し;および、
およびRそれぞれが、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRおよびRは同一または異なるものであってもよく、フッ素置換メチレン基またはフッ素置換されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、独立して水素またはフッ素原子を表す。
式(I)のラジカル重合性化合物は、歯科用組成物について上述の通りであることが好ましい。
式(I)のラジカル重合性化合物、またはその塩は、歯科用組成物、特に上述の歯科用組成物中で使用され得る。
特に好ましい実施形態
特に好ましい実施形態によれば、本発明による歯科用組成物は、
(a)以下の式(I)のラジカル重合性化合物、またはその塩と、
Figure 2020502076

(式中、
’およびR’の一方が
以下の式(II’)または(III’)の基を表し、また、R’およびR’の他方は同一または異なるものであってもよく、独立して水素原子または式(II’)または(III’)の基を表し:
Figure 2020502076

(式中、
’は水素原子またはメチル基、好ましくはメチル基であり、
’はC1−3アルキル基、C4−6シクロアルキル基またはC3−5アルケニル基、最も好ましくはアリル基であり、
n’は0〜10の整数、好ましくは3〜7を表し;および
m’は1〜6の整数、より好ましくは1〜3、最も好ましくは2を表し、および
A’およびRB’それぞれが、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRA’およびRB’それぞれが、ペルフッ素化置換メチレン基またはペルフッ素化されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、フッ素原子を表し、
最も好ましくは、式(I)のラジカル重合性化合物は、上述の式(I’’)および(I’’’)の化合物である);
(b)ラジカル開始剤系とを含み、
ここで歯科用組成物が酸性であることが好ましく、より好ましくは歯科用組成物が最大で6のpH、より好ましくは最大で4のpH、最も好ましくは最大で2のpHを有する。
別の特に好ましい実施形態によると、本発明によるラジカル重合性化合物は、上述の式(I’)を有する。
さらに、特に好ましい実施形態によると、式(I’)の上述のラジカル重合性化合物は、歯科用組成物で使用される。
特に好ましい実施形態は、説明の一般的な部分で上述した特徴のいずれか一つによって修正され得る。
本発明を以下の実施例により更に説明する。
実施例1
N−アクリル−8−アリルアミノ−オクチルリン酸エステルの調製
N−アクリル−8−アリルアミノ−オクチルリン酸エステル、Rが式(II)の基であり、R=水素原子であり、n=6およびR=水素原子である、式(I)の化合物、が以下のようにオクタンジオールから始まる四段階で調製された:
ステップ1:8−ブロモ−オクタノールの調製
16g(110mmol)のオクタンジオールを250mlトルエンに溶解した。15.5mlのHBr(137mmol、1.25当量、48%)を加えた後、反応混合物をディーンスターク受信機で還流して、反応物から水を除去した。8時間後、混合物を室温まで冷却し、蒸留水で二回洗浄し、塩水で一回洗浄した。硫酸ナトリウムで濾過し、溶媒を蒸発させた後、臭化物を定量的収率で得た。NMRスペクトルでは、残留トルエンが観察され、その後の工程には影響はなかった。
20°C=1.23g/ml(lit:1.22g/ml)
13C NMR(CDCl;ppm):62.95(OH),34.04(BrCH ),32.78/32.71(Br)および(CHOH),29.23/28.73/28.09/25.65(CH
ステップ2:8−アリルアミノ−オクタノールの調製
18g(130mmol、1.2当量)KCOを60ml(800mmol、7.3当量)アリルアミンで懸濁した。20mlジクロロメタンに溶解した22.9g8−ブロモオクタノールを、30分間にわたり滴下した。混合物を室温で一晩攪拌した。濾過および蒸発後、望ましい化合物を98%の収率で得た。
ステップ3:N−アクリル−8−アリルアミノ−オクタノールの調製
15g(81mmol)8−アリルアミノ−オクタノールを、100mlのTHFに溶解し、8mlのHOに溶解した5.54gKOH(136mmol、1.7当量)を加え、混合物を氷で冷却した。10mlのTHFに溶解された8.1g(90mmol、1.1当量)塩化アクリルを30分間にわたって滴下した。混合物を3時間室温で攪拌した。その後、酢酸エチル中のBHT(10g/L=45mmol/L)の1.5ml溶液を加えた。その後、溶媒を蒸発させ、100mlの水を加えた。この混合物を100mlの酢酸イソプロピルで二回抽出し、次いで有機相を50mlの1N硫酸で二回、50mlの飽和NaHCO溶液で二回および50mlで二回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて90%の収率でアクリレートを得た。
13C NMR(CDCl;ppm):166.37/165.85(C=O),133.28/133.11(CHH−CH),128.07/127.82(CHH−CO),127.75/127.42(=CH−CO),116.96/116.55(=CH−CH),62.70/62.66(OH),50.07/49.59(CH=CH−),47.26/46.57(N−−CH),32.60/32.57(CHCHOH),29.21/29.17/29(CH CHOH),27.58/26.79/26.59/25.57/25.55(CH).
ステップ4:N−アクリル−8−アリルアミノ−オクチルリン酸エステル(ALP−8)の調製
9.6g(63mmol)POClを80mlのEtOに溶解し、氷で冷却する。80mlのEtO中、N−アクリル−8−アリルアミノ−オクタノール(15g、63mmol)およびNEt(8.7ml、63mmol)の溶液を90分間にわたり滴下した。混合物を室温でさらに二時間攪拌し、次いで50mlの水と塩水の混合物を1:1で加え、混合物を30分間攪拌した。その後、混合物を分離漏斗に移し、二つの有機物および一つの水相を形成した。下水相を上部有機相から分離した。THFを、二つの有機相が一つの均一相(約120ml)に形成されるまで、有機相に加えた。次いで、有機相を塩水で洗浄した。次に、有機相を三角フラスコおよび15g硫酸ナトリウム、6g(71mmol)のNaHCOに移した。木炭1gを添加し、次いで20分間攪拌した。溶媒を濾過および蒸発した後、88%の収率で無色から黄色の油を得た。
13C NMR(CDCl;ppm):165.12/164.73(C=O),134.57/133.91(CHH−CH),128.51/128.28(CHH−CO),127.34/127.06(=CH−CO),116.59/115.82(=CH−CH),66.98/64.03(O),49.44/47.79(CH=CH−),46.69/45.84(N−−CH),30.13/29.03(CHCHO),28.81/28.70(CH CHO),27.30/26.40/26.01/25.24/25.09(CH
31P−NMR(ppm):0.19
上記合成経路は、本発明による式(I)の任意の化合物の調製のために適合され得る。
実施例2
N−アクリル−10−アリルアミノ−デカノールをN−アクリル−8−アリルアミノ−オクタノールについて記載された合成に従って調製した。
N−アクリル−10−アリルアミノ−デシルリン酸エステル(ALP−10)
20g(130mmol)POClを60mlの2−メチルTHFに溶解し、氷で冷却した。50mlの2−メチルTHF中アルコール(30g、118mmol)N−アクリル−10−アリルアミノ−デカノールおよびNEt(19ml、118mmol)の溶液を、45分間にわたり滴下した。混合物を室温でさらに二時間攪拌し、次いで60mlの水を加え、混合物を30分間攪拌した。その後、混合物を分離漏斗に移した。有機相を水で一回洗浄し、次いで80mlの4N NaOH溶液に加え、2時間攪拌した。塩基性水相(製品を含む)を単離し、有機相を80mlの2N NaOH溶液でさらに抽出した。次いで、合わせた水相を濃縮して酸性化した。HClをpH1にする。その後、80mlの2−メチルTHFを加え、混合物を一時間攪拌した。有機相を分離し、水相を2−メチルTHFでさらに抽出した。合わせた有機相にDT−TBHQ(2.5g/lを含む2−メチルTHF溶液30ml)を添加し、その後、NaSOで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させて黄色の油状物(32g、78%、92mmol)を得た。
H NMR(MeOD):δ(ppm)=6.78−6.59(m,1 H,HCCC(O)),6.28−6.21(m,1 H,),5.92−5.81(m,1 H,NCHCH),5.77−5.69(m,1 H, CCHC(O)),5.23−5.12(m,2 H,NC CHCH),4.08−4.03(m,2 H,NC CHCH),3.99−3.94(m,2 H,NC CH),3.41−3.36(m,2 H, COPO),1.69−1.63 (m,2 H,NCH ),1.62−1.54(m,2 H, CHCOPO),1.43−1.37(m,2 H,NCHCH ),1.33(m,10H,CH);
31P NMR(MeOD):δ(ppm)=0.12(s,1 P,O
実施例3:歯科用組成物の調製および試験
1.二部式歯科用セメント組成物
表1による組成物を有するベースペーストの二部式歯科セメント組成物および表2による組成物を有する触媒ペーストが調製された。
表1:ベースペーストの組成物
Figure 2020502076
表2:触媒ペーストの組成
Figure 2020502076
表1および2で使用される略語は、以下の意味を有する:
Figure 2020502076
ベースペーストと触媒ペーストの調製:
表1および2に従ったベースペーストおよび触媒ペーストの組成物のための構成要素の記述された量はそれぞれ、遮光プラスチック容器に入れられ、その穴のある蓋で閉じられた。それぞれの容器をスピードミキサーDAC600−2VAC−P(Hauschild)内に配置し、2分間2500rpmで二回混合し、1000rpm/100mbarで1分間一回混合した。蓋の穴は、さらに使用するまで光密着テープで閉じ、容器は室温で保存された。
試験:金属後の荷重負荷
歯構造上のセルフアドヒーシブセメントの結合強度を決定するために、抽出されたヒト臼歯は、320および600グリットの研磨紙を使用して平坦な表面を露出させるために湿潤粉砕された。ステンレス鋼ロッド(直径3.17mm)をサンドブラストし、超音波洗浄し、乾燥させた。セメント(ベースペースト:触媒ペースト、1:1 V:V、ハンドミックス)を鋼製ロッドの表面に塗布し、歯表面上に配置し、37℃/相対湿度50%で220g負荷下で5分間自己硬化させた。試料を37℃の水中に24時間保存した。剪断接着強度(SBS)を、Instron3366で1mm/分のクロスヘッド速度で得た。
表3:金属後の荷重方法を使用したSBSの結果
Figure 2020502076

試験: 3点曲げ
機械的データは、ISO4049:2009に従い3点曲げモードで測定された。測定前に、試料(ベースペースト:触媒ペースト、1:1 V/V、ハンドミックス)を、光オーブンLicuLite(Dentsply Detrey)を用いて2辺から2分間硬化し、37℃で24時間水中で保存した。
表4:3点曲げ試験の結果
Figure 2020502076

実験結果は、N−アクリル−8−アリルアミノ−オクチルリン酸エステル(ALP−1,8)を含む触媒ペースト2および3を用いると、ALP−1,8を含まない触媒ペースト1と比較して非常に高い曲げ弾性(FM)を得ることができ、せん断接着強度(SBS)および曲げ強度(FS)は、触媒ペースト1と比較して実質的に同一のレベルまたは増大していることを示す。
2. 歯科用接着剤
表5に従った組成物を有する歯科用接着剤組成物を調製し、表6に報告したように試験した。
表5
Figure 2020502076
Figure 2020502076

Claims (15)

  1. 歯科用組成物であって、
    (a)以下の式(I)のラジカル重合性化合物、またはその塩:
    Figure 2020502076

    [式中、
    およびRの一方が
    以下の式(II)または(III)の基を表し、そして、RおよびRの他方が、同一または異なるものであってもよく、独立に水素原子または式(II)または(III)の基を表し:
    Figure 2020502076

    (式中、
    は、水素原子またはメチル基であり;
    はC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基またはC2−6アルケニル基であり、nは0〜14の整数を表し;
    mは1〜14の整数を表し;および、
    およびRはそれぞれ、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRおよびRは同一または異なるものであってもよく、フッ素置換メチレン基またはフッ素置換されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように独立に水素またはフッ素原子を表す)]、および、
    (b)ラジカル開始剤系
    を含む、歯科用組成物。
  2. またはRのいずれかが水素原子、またはその塩である、式(I)の化合物を含む、請求項1に記載の歯科用組成物。
  3. およびRの両方が同一または異なるものであってもよく、独立に式(II)または(III)の基、またはその塩を表す、式(I)の化合物を含む、請求項1に記載の歯科用組成物。
  4. およびRの両方が同一または異なっていてもよく、式(II)の基、またはその塩を表す、式(I)の化合物を含む、請求項3に記載の歯科用組成物。
  5. およびRの両方が同一または異なるものであってもよく、式(III)の基、またはその塩を表す、式(I)の化合物を含む、請求項3に記載の歯科用組成物。
  6. およびRが同一である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の歯科医用組成物。
  7. 前記式(I)のラジカル重合性化合物の動的粘度が、23℃で10Pa・s以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
  8. が水素原子である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
  9. がアリル基である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
  10. nが4〜7の整数である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
  11. 前記式(I)のラジカル重合性化合物が、組成物の総重量に基づいて0.1〜90重量パーセント、より好ましくは5〜40重量パーセントの量で含有される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
  12. 以下の特徴の少なくとも一つを有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
    i) 23℃で1000mPas未満の動的粘度;および/または
    ii) 6以下のpH、より好ましくは4以下のpH
  13. 以下の式(I)のラジカル重合性化合物、またはその塩。
    Figure 2020502076

    [式中、
    およびRの一方が
    以下の式(II)または(III)の基を表し、そして、RおよびRの他方が同一または異なるものであってもよく、独立に水素原子または式(II)または(III)の基を表し:
    Figure 2020502076

    (式中、
    は、水素原子またはメチル基であり;
    はC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基またはC2−6アルケニル基であり;
    nは0〜14の整数を表し;
    mは1〜14の整数を表し;および
    およびRはそれぞれ、メチレン基またはm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、水素原子を表す、またはRおよびRは同一または異なるものであってもよく、フッ素置換メチレン基またはフッ素置換されたm員もしくはn員のポリメチレン鎖が存在するように、独立に水素またはフッ素原子を表す)]
  14. 以下の化合物、またはその塩から選択される、請求項13に記載のラジカル重合性化合物。
    Figure 2020502076
  15. 歯科用組成物における請求項14で定義されるラジカル重合性化合物またはその塩の使用。
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