関連出願への相互参照
[0001] 本願は、2016年12月13日に出願した欧州特許出願第16203624.8号の優先権を主張し、その全体を本願に参考として組み込む。
[0002] 本発明は、放射源装置及び放射を生成する方法に関する。本発明は、更に、このような放射源を含むEUV光学システムに関する。本発明は、更に、デバイス製造方法及び検査方法に関する。
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、又は1つ以上のダイを含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。リソグラフィは、ICや他のデバイス及び/又は構造の製造における重要なステップの1つとして広く認識されている。しかしながら、リソグラフィを使用して作られるフィーチャの寸法が小さくなるにつれ、リソグラフィは、小型IC若しくは他のデバイス及び/又は構造を製造できるようにするためのより一層重要な要因になりつつある。
[0004] 露光波長を短縮するため、したがって、最小印刷可能サイズを縮小させるためには、極端紫外線(EUV)放射原を使用することが提案されている。EUV放射は、約1〜100nmの範囲内の波長を有する電磁放射である。リソグラフィの目的のために、5〜20nmの範囲内の波長、例えば13〜14nmの範囲内の波長、あるいは例えば6.7nm又は6.8nmといったような5〜10nmの範囲内の波長を使用することがさらに提案されている。
[0005] さらに、このような短い波長の放射は、例えば、反射光測定及び/又はスキャトロメトリによって特性を決定するための小さい構造の検査にも有用である。米国特許出願公開第20160282282号明細書では、EUV放射を用いてターゲット構造のCD及びオーバーレイなどの特性を測定することが提案されている。分光反射光測定は、ゼロ及び/又はより高い回折次数で散乱した放射を用いて行われる。回折信号は、EUV光学システムと基板との間の円錐形マウントを用いてさらに強化される。先願の内容は、本開示に参考として組み込まれる。
[0006] EUV放射に対する可能な放射源は、例えば、レーザ生成プラズマ源、放電プラズマ源又は電子蓄積リングによって提供されるシンクロトロン放射に基づく放射源を含む。レーザ生成プラズマ源は、高エネルギーレーザを用いて適切な燃料材料から成るターゲットにプラズマを生成する。LPP源の例は、例えば、米国特許出願公開第2014264087号明細書(Rafacら)及び米国特許出願公開第2014368802号明細書(Yakuninら)といった公開特許に記載されている。これらの文書の内容は、本明細書中に参考として組み込まれる。これらの例では、液体スズ小滴は、EUV放出プラズマを生成するためにターゲットとして使用される。
[0007] 商業用途のためのEUV源の展開及び適用における主な課題は、所望の放射のより高い生産量を得ることである。LPP源では、レーザ放射の各パルスにおける光の一部は、燃料材料及びプラズマによって反射される。これは2つの欠点をもたらす。第一に、吸収されなかった光は、所望のEUV放射の生成に寄与せず、その点に関しては無駄になる。第二に、レーザビームの高いパワーを考慮すると、反射光は、周辺の光学部品並びにシードレーザ及びレーザ増幅器にダメージを与える可能性がある。吸収を改善させるための慣用ステップとして、放射のプリパルスを用いてターゲットを準備させ、例えば、液体小滴をより平坦及び大きく及び/又はミストに変換する。上記で引用した両方の特許文書は、ターゲットをさらなる放射パルスで準備することによってさらなる改善された変換効率を目的としている。米国特許出願公開第2014264087号明細書では、例えば、異なる波長のさらなるプリパルスをメインパルスに照射してメインパルスレーザ放射の吸収に関連するターゲットの一部の特性を変更する。米国特許出願公開第2014368802号明細書では、プリパルス放射を特定の方向に照射してターゲットに所望の三次元形状又は向きを与え、それによってメインパルス放射は、法線入射ではなく表面に対して傾斜した方向に燃料材料の表面に入射して吸収を高める。
[0008] それでもやはり、反射の問題及びEUV放射への変換の効率をどのように高めるかについての問題は、著しく残る。
[0009] 固体のSnターゲット材料を用いるEUV放射源は、APPLIED PHYSICS LETTERS 96, 111503 (2010), doi:10.1063/1.3364141のS.S.Harilalらによる「Efficient laser-produced plasma extreme ultraviolet sources using grooved Sn targets」に開示されている。レーザ放射のフォーカスビームより大きい溝は、プラズマを閉じ込めてEUV生成ゾーンで強化させるように設計されている。
[0010] 特にEUV放射源を含む放射源の設計における1つ以上の上記の問題に取り組むことが本発明の課題である。
[0011] 本発明は、第1周波数帯における第1放射を提供するための装置を提供する。この装置は、
−第2周波数帯における第2放射をターゲットに誘導して第1放射の生成を引き起こすように構成され、かつ
−第2放射の送出の前及び/又はその間に第3放射をターゲットに誘導するように構成され、第3放射は、ターゲットにわたって多数のピーク(peaks、山)及び谷(troughs)を含むエネルギーの空間的分布を有する電磁場を生成してターゲットの特性に対応する空間的変動を引き起こすように送出される、システムを含む。
[0012] 第1周波数帯における放射は、例えば、1nm〜100nmの範囲の波長、例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有するEUV放射であってもよい。
[0013] LPP放射源のターゲットに格子状構造を作り出すことは、レーザ放射の吸収を上げて放射源の変換効率を高めることが発明者らによって認識された。発明者らは、適切な空間的変動を有する放射を用いて固体金属にエッチングされた格子と同様の効果を得ることができることもさらに認識した。ターゲットは、例えば、液体燃料材料の滴から準備することができるが、本発明は液体燃料材料に限定されない。第3放射は、メインパルス放射のためにターゲットを準備するために使用されるプリパルス放射と同じ又はそれに付加されるものであってもよい。
[0014] フォトニクスでは、一般に、金属ターゲットによる放射の反射は、格子構造がターゲット表面にエッチングされることによって影響され得ることが知られている。例えば、エッチングされた周期的格子構成が入射レーザ放射の特性に適切に調整された場合、いわゆる表面プラズモンポラリトンが燃料材料の表面に励起されることができる。これは、光波が平坦なインターフェースに入射する場合より多くの入射光が吸収されるという趣旨で自由電荷キャリアの表面結合振動に相当する。表面プラズモンポラリトンの物理については、S.A. MaierによるSpringer Business & Science Media, LLC (2007)の「Plasmonics: Fundamentals and Applications」に記載されている。表面プラズモンポラリトンは、LPP放射源における変換効率を高めるために利用され得る現象の種類の単なる一例である。金属のレーザ励起の物理は、一般に、例えば、E.G.GamalyとA.V.RodeによるProg.Quant.Electron.37, 215-323(2013)の「Physics of ultra-short laser interaction with matter: From phonon excitation to ultimate transformations」に記載されている。
[0015] 本発明は、放射源及びEUV光学システムを備えるEUV光学装置さらに提供する。放射源は、上記した発明による装置を含む。EUV光学装置は、例えば、リソグラフィ装置であってもよく、EUV光学システムは、放射源からのEUV放射を用いてパターンを基板に適用するための投影システムを含む。EUV光学装置は、例えば、検査装置であってもよく、EUV光学システムは、放射源からのEUV放射を対象の構造に誘導し、かつ構造との相互作用の後にEUV放射を集めるための照明システムを含む。
[0016] 本発明は、第1周波数帯における第1放射を生成する方法であって、第2周波数帯における第2放射はターゲットに誘導されて第1放射の生成を引き起こす方法をさらに提供する。この方法は、第2放射の送出の前及び/又はその間に第3放射をターゲットに送出することをさらに含み、第3放射は、ターゲットにわたって多数のピーク及び谷を含むエネルギーの空間的分布を有する電磁場を生成してターゲットの特性に対応する空間的変動を引き起こす。
[0017] 本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明しながら添付の図面に示す実施形態を考察の上、当業者に理解されるであろう。
[0018] 本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。
図1は、EUV放射を用いる光学装置の一例として、反射型投影光学系を有するリソグラフィ装置を概略的に示す。
図2は、EUV放射の生成のための、LLP源装置を有する実施形態における、図1の装置のより詳細な図である。
図3は、ターゲットの行路に沿って見た場合における、本発明の一実施形態によるLPP放射源装置内の第2放射、第3放射及びプリパルス放射を送出するための構成の概略的なブロック図である。
図4は、図3の放射源装置におけるa)第3放射の生成の原理及びb)第3放射の効果を示す
図5は、ターゲットの行路を横切る方向から見た場合における、本発明の一実施形態における放射源装置の動作中の様々な時点を示す。
図6は、本発明の実施形態における、第2放射の吸収が表面プラズモンポラリトンの生成によって増大することができる1つのメカニズムを示す。
図7は、本発明のさらなる実施形態を表す図6のメカニズムの3つのバリエーションを示す。
図8は、本発明の実施形態における、第2放射、第3放射及びプリパルス放射のタイミングを示す。
図9は、本発明の実施形態における、第2放射、第3放射及びプリパルス放射のタイミングを示す。
図10は、本発明の実施形態における、第2放射、第3放射及びプリパルス放射のタイミングを示す。
図11は、本発明による放射源装置の別の実施形態における、(a)第3放射の生成の原理及び(b、c)第3放射の効果を示す。
図12は、本発明による放射源装置を含む検査装置の概略図である。
[0019] これらの図面にわたって、同じ参照符号は類似又は対応する特徴を示す。
[0020] 放射源装置について詳細に説明する前に、本発明を適用することができるEUV光学装置の一例として、反射光学系を有するリソグラフィ装置について説明する。
[0021] 図1は、本発明の一実施形態による放射源モジュールSOを含むリソグラフィ装置100を概略的に示している。このリソグラフィ装置は、
‐放射ビームB(例えば、EUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
‐パターニングデバイス(例えば、マスク又はレチクル)MAを支持するように構築され、かつパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに連結されたサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTと、
‐基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、かつ基板を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTと、
‐パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSとを備える。
[0022] 照明システムILとしては、放射を誘導し、整形し、又は制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、又はその他のタイプの光コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光コンポーネントを含むことができる。
[0023] サポート構造MTは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、及び、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。サポート構造は、機械式、真空式、静電式又はその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定又は可動式にすることができるフレーム又はテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。
[0024] 「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、投影ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。放射ビームに付けたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定の機能層に対応することになる。
[0025] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、及びハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、並びに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
[0026] 投影システムは、照明システムのように、使われている露光放射にとって、あるいは真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、及び静電型光学系、又はそれらのあらゆる組合せを含むあらゆる型の投影システムを包含していると広く解釈されるべきである。ガスは放射を吸収しすぎることがあるので、EUV放射に対して真空を用いることが望ましい場合がある。したがって、真空環境を、真空壁及び真空ポンプを用いてビームパス全体に提供することができる。
[0027] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、反射型マスクを採用しているもの)であってもよい。
[0028] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使うことができ、又は準備工程を1つ以上のテーブルで実行しつつ、別の1つ以上のテーブルを露光用に使うこともできる。
[0029] 図1を参照すると、イルミネータILは、放射源モジュールSOから極端紫外線放射ビームを受ける。EUV光を生成する方法には、材料を、例えば、キセノン、リチウム又はスズなどの元素を少なくとも1つ有しかつEUV範囲内の1つ以上の輝線を有するプラズマ状態へと変換することが含まれるが、必ずしもこれに限定されない。そのような方法のうちの1つであり、しばしばレーザ生成プラズマ(「LPP」)と呼ばれる方法では、所要の線発光化学元素を有する材料の小滴、流れ又はクラスタなどの燃料をレーザビームで照射することにより所要のプラズマを生成することができる。放射源モジュールSOは、燃料を励起するレーザビームを提供するためのレーザ(図1中図示なし)を含むEUV放射システムの一部であってよい。結果として生じるプラズマは、出力放射(例えば、EUV放射)を放出し、これは放射源モジュール内に配置された放射コレクタを用いて集められる。レーザ及び放射源モジュールは、例えば、CO2レーザを用いて燃料励起のためのレーザビームを提供した場合、別個の構成要素であってもよい。
[0030] このような場合、レーザは、リソグラフィ装置の一部を形成するとはみなされず、放射ビームは、レーザから放射源モジュールへ、例えば、適切な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムを使って送ることができる。その他の場合においては、例えば、放射源が放電生成プラズマEUVジェネレータ(「DPP源」としばしば呼ばれる)である場合、放射源は、放射源モジュールの一体部分とすることもできる。
[0031] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するアジャスタを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(通常、それぞれσ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、ファセットフィールド及び瞳ミラーデバイスといったさまざまな他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性及び強度分布をもたせることができる。
[0032] 放射ビームBは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAから反射した後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2ポジショナPW及び位置センサPS2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、又は静電容量センサ)を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPM及び別の位置センサPS1を使い、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1及びM2と、基板アライメントマークP1及びP2とを使って、位置合わせされてもよい。
[0033] EUV膜(例えば、ペリクルPE)が、システム内の粒子によるパターニングデバイスの汚染を防ぐために設けられる。このようなペリクルは、示される配置及び/又は他の配置に設けられてもよい。さらなるEUV膜SPFが、スペクトル純度フィルタとして設けられてもよく、これは望ましくない放射波長(例えば、DUV)をフィルタリングするように動作可能である。このような望ましくない波長は、望ましくない形でウェーハW上のフォトレジストに影響を与え得る。SPFは、任意選択として、脱ガス中に開放される粒子による投影システムPS内の投影光学系の汚染を防ぐのに役に立つこともできる(又はこの行為を行うためにSPFの代わりにペリクルを設けてもよい)。これらのEUV膜のいずれも、本明細書中に開示されたあらゆるEUV膜を含んでもよい。
[0034] 示されている装置は、さまざまなモードで使用することができる。スキャンモードにおいては、パターニングデバイスサポート(例えば、マスクテーブル)MT及び基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。パターニングデバイスサポート(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率及び像反転特性によって決めることができる。スキャンモードにおいては、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光時のターゲット部分の幅(非スキャン方向)が限定される一方、スキャン動作の長さによって、ターゲット部分の高さ(スキャン方向)が決まる。当該技術分野では周知であるように、他の種類のリソグラフィ装置及び動作モードも可能である。例えば、ステップモードは公知である。いわゆる「マスクレス」リソグラフィでは、プログラマブルパターニングデバイスを静止状態に保つがパターンは変化し、基板テーブルWTは移動又はスキャンされる。
[0035] 上述の使用モードの組合せ及び/又はバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
[0036] 図2は、放射システム42、照明システムIL及び投影システムPSの形態を有する放射源装置を含むリソグラフィ装置の実施形態をより詳細に示す。図2に示す放射システム42は、放射源としてレーザ生成プラズマを使用する種類のものである。EUV放射は、ガス又は蒸気、例えばXeガス、Li蒸気又はSn蒸気によって生成されてよい。このガス又は蒸気では、電磁スペクトルのEUV範囲内の放射を放出するために非常に高温のプラズマが生成される。非常に高温のプラズマは、例えば、CO2レーザ光を用いて光励起によって少なくとも部分電離プラズマを引き起こすことによって生成される。ある実施形態では、Snを用いてEUV範囲内の放射を放出するためにプラズマを生成する。
[0037] 放射システム42は、図1の装置内の放射源SOの機能を具体化する。放射システム42は放射源チャンバ47を備え、本実施形態では、この放射源チャンバ47は、EUV放射源のみを実質的に囲うのではなく、図2の例では法線入射コレクタ(例えば、多層ミラー)であるコレクタ50も囲う。
[0038] LPP放射源の一部として、レーザシステム61が、コレクタ50内に設けられた開口67を通ってビームデリバリシステム65によって送出されるレーザビーム63を提供するように構築及び配置される。さらに、放射システムは、ターゲット材料源71によって供給されるSn又はXeなどの材料69を含む。本実施形態では、ビームデリバリシステム65は、所望のプラズマ形成位置73に実質的に合焦されるビームパスを確立させるように配置される。
[0039] 動作中、燃料と呼ぶこともあるターゲット材料69は、小滴の形態でターゲット材料源71によって供給される。如何なる理由によりプラズマに変化しない燃料を捉えるために、放射源チャンバ47の反対側にトラップ72が設けられる。このようなターゲット材料69の小滴がプラズマ形成位置73に到達したとき、レーザビーム63は小滴に衝突し、EUV放射放出プラズマが放射源チャンバ47の中に形成される。パルスレーザの場合、レーザ放射のパルスが位置73を通る小滴の経路と一致するようにタイミングを計ることを伴う。これらは、数105Kの電子温度を有する高電離プラズマを生成する。これらのイオンの脱励起及び再結合中に生成されるエネルギー放射は、位置73でプラズマから放出される所望のEUVを含む。プラズマ形成位置73及び開口52は、それぞれコレクタ50の第1焦点及び第2焦点に配置され、EUV放射は、法線入射コレクタミラー50によって中間焦点IFに合焦される。
[0040] 放射ビーム56によって図2に示されるように、放射源チャンバ47から発散される放射ビームは、いわゆる法線入射リフレクタ53,54を介して照明システムILを横切る。法線入射リフレクタは、ペリクルPEを介して、サポート(例えば、レチクル又はマスクテーブル)MT上に位置決めされたパターニングデバイス(例えば、レチクル又はマスク)上にビーム56を誘導する。パターン付きビーム57が形成され、このパターン付きビーム57は、反射要素58,59を介してウェーハステージ又は基板テーブルWTによって支えられた基板上に投影システムPSによって結像される。示されるものより多くの要素が、通常、照明システムIL及び投影システムPSに存在してもよい。例えば、図2に示す2つの要素58及び59ではなく、1つ、2つ、3つ又は4つ以上の反射要素が存在してもよい。
[0041] 当業者には明らかであるように、基準軸X、Y及びZは、装置の形状及び動作、その様々な構成要素及び放射ビーム55、56、57を測定及び説明するために規定することができる。装置の各部分において、X、Y又はZ軸の局所基準フレームを規定することができる。Z軸は、システムにおける所定の箇所で光軸Oの方向とほぼ一致し、パターニングデバイス(レチクル)MAの平面及び基板Wの平面に対してほぼ垂直である。放射源装置(放射システム)42では、X軸が燃料ストリーム(69、以下に記載)の方向とほぼ一致する一方、Y軸はそれと直交し、示されるように紙面から出る方向を指す。その一方、レチクルMAを保持するサポート構造MTの周辺では、X軸はY軸と並んだスキャン方向を概ね横切る。便宜上のため、図2の概略図のこの領域では、X軸は、示されるように紙面から出る方向を指す。これらの表示は当該技術分野では常套手段であり、便宜上のため本明細書中に採用されている。原理上、装置及びその動作を説明するためにあらゆる基準フレームを選択してもよい。
[0042] 望ましいEUV放射に加えて、プラズマは、他の放射の波長、例えば、可視のUV及びDUV範囲内のものも生成する。IR(赤外線)放射もレーザビーム63から生じる。非EUV波長は、照明システムIL及び投影システムPSでは望ましくなく、非EUV放射を遮断するために様々な対策を展開してもよい。図2に概略的に示すように、スペクトル純度フィルタSPFの形態を有するEUV膜フィルタを、IR、DUV及び/又は他の望ましくない波長のために仮想光源点の上流に適用するこができる。図2に示す特定例では、2つのスペクトル純度フィルタが示されており、一方が放射源チャンバ47の中にあり、他方が投影システムPSの出力にある。実質的な実施形態では、スペクトル純度フィルタは1つだけ設けてもよく、いずれの配置又はプラズマ形成位置73とウェーハWとの間のあらゆる箇所にあってもよい。
[0043] 上記したように、リソグラフィ装置は、本開示の放射源装置及び方法を適用することができるEUV光学システムの唯一の種類ではない。特に、検査装置及び方法は、あらゆる改良されたEUV放射源を用いて想定することができる。EUV検査装置の例としては、本明細書中に参考として組み込まれる内容である米国特許出願公開第20160282282号明細書の公報を参考にしている。米国特許出願公開第20160282282号明細書からの検査装置の例は、以下に説明する図12に示す。
[0044] 図3は、放射源装置300の主要構成部品を概略的に示す。この放射源装置300は、図2のリソグラフィ装置内、別のリソグラフィ装置内又は検査装置などの別のEUV光学システム内の放射システム42として使用することができる。右側には、放射源チャンバ47が、ターゲット材料69の小滴及びプラズマ形成位置73を含む燃料ストリームと共に概略的に示されている。図3の図はX軸に沿っており、すなわち、燃料ストリームの方向に沿っている。燃料ストリームの方向を横切る図は、以下に説明する図5で見られる。
[0045] 所望のEUV波長を有する第1放射302を含む放射が、プラズマ形成位置73で形成されたプラズマによって放出される。プラズマを生成するために、レーザ放射のメインパルスを含む第2放射304が、図2の例においてレーザシステム61の一部となり得る第1レーザ源306によって提供される。レーザ放射のメインパルスとの相互作用に対してターゲット材料69を準備させるために、レーザ源306と同じレーザシステムの一部としてなり得る第2レーザ源310によってプリパルス放射308が提供される。メインパルス及びプリパルス放射の生成については本開示では提供されていないが、例えば、上記した米国特許出願公開第2014264087号明細書及び米国特許出願公開第2014368802号明細書で説明された公報で発見することができる。
[0046] 図示した例では、第2放射304及びプリパルス放射308は、ビーム結合光学素子312及びフォーカス構成314を用いて誘導される。図3示す向きでは見られないが、プリパルス放射ビーム308は、通常、第2放射304を含むメインパルスより飛行における早い時間にターゲット材料69の小滴に衝突する。したがって、プリパルス放射ビームは、メインパルスと相対的なX軸上で変位された配置に合焦することができる。コントローラ316は、第1レーザ源306及び第2レーザ源310の動作を同期させて燃料材料69の各小滴に対して適切なタイミングを得る。小滴の送出は、レーザ源306,310のパルス動作とともに、高周波数(例えば、数十キロヘルツ(例えば、50kHz))で繰り返される。結果的に、所望のEUV放射302は、同じ周波数を有するパルスで放出される。
[0047] 先の米国特許出願公開第2014264087号明細書の公報のように、本開示は、第3放射の送出を想定して、ターゲット材料69を調整し、第2放射304の吸収を高め、EUV第1放射302の生成の効率性を高めるが、本開示の原理によると、ターゲットにわたって複数のピーク及び谷を含むエネルギーの分布を有する電磁場をターゲットで生成するように第3放射が提供される。この電磁場における空間的変動は、ターゲットの特性に対応する空間的変動をもたらす。繰り返し空間的変動とも呼ばれる複数のピーク及び谷を有するエネルギー分布は、定期エネルギー分布から区別することができる。この定期エネルギー分布では、放射ビームが、ビームの周辺に向かって減少するエネルギーの中心ピークを有する。以下にさらに説明するように、空間的変動は、例えば、ターゲットの1つ以上の特性に格子パターンを適用する一方向又は二方向の周期的変動であってもよい。この格子パターンは、燃料材料による第2放射の吸収を高めるように調整されてEUV放射源装置の効率を高めることができる。
[0048] 図3の例では、2つの放射ビーム328a及び328bが示されており、この2つのビームは共に、ターゲット材料に衝突する第3放射328を形成する。放射源330a及び330bは、これらのビームを生成する。以下にさらに説明するように、第3放射は、レーザ放射(第2放射304)のメインパルスの照射の前又はその最中にターゲット材料に衝突し得る。以下の説明では、第3放射は、その機能に基づき「格子放射」として記載される。格子放射の送出のタイミングは、コントローラ316によってメインパルス及びプリパルス放射の送出と同期される。
[0049] 図示した例では、格子放射の各ビーム328a/328bは、独自のフォーカス構成332a及び332bを有する。他の実施形態では、格子放射は、メインパルス放射及び/又はプリパルス放射と同じフォーカス構成314を通過してもよい。図示した例では、格子放射ビームは、メインパルス放射ビームの両側に位置決めされる。他の実施形態では、格子放射は、メインパルス放射の片側又は他方側から送出されてもよい。第2放射(メインパルス)、プリパルス放射及び第3放射(格子放射)のいずれも、示されるようにz軸にほぼ沿って又はz軸に対して傾斜角で送出されてもよい。
[0050] 図4(a)は、図3の例のターゲットに格子放射328を照射する原理を示す。ターゲット402の近傍で互いに角度θで合う格子放射のビーム328a及び328bが示されている。この例では、ターゲット402は、プリパルス放射308の照射によって既に準備されている燃料材料69の小滴であると想定される。いくつかの実施形態では、例えば、プリパルス放射308を用いて実質的に球状の小滴を、図面に概略的に示している平坦な「パンケーキ」の形状に変形させる。他の実施形態では、プリパルス放射は、液体燃料材料をより小さい小滴又は蒸気のミストへと分散させるのに十分であってもよい。
[0051] 簡略化のため、ビーム328a及び328bの各々は、404a及び404bで概略的に示されている平面波面を有するコヒーレント放射を含むと想定される。ターゲット402の表面でのビーム間の干渉は、ターゲット402の表面にわたって強度の周期的空間的変動を有する干渉パターンを作り出す。物理的には、2つの放射ビームは干渉して、空間的変動406として概略的に示されているエネルギーの空間的分布を有する電磁場を作り出す。図4(b)は、ターゲット402の表面を、空間的変動406によって形成された格子パターンの線とともに示す。図4(b)内の各影線は、例えば、間により低い強度の領域を有する電磁場内の高エネルギーの帯域を表す。高エネルギーの単純な帯域が示されるが、電磁場は、例えば、エネルギーにおける正弦波変動を有してもよいことが理解されるであろう。
[0052] 2つの格子放射ビームの間に一定の角度を有しながらそれらを干渉させることは、エネルギーの所望の空間的変動を有する電磁場を生成するための単純な方法である。原則として、任意の方法を用いてもよく、図11を参照しながら別の方法を以下に説明する。
[0053] 図5は、放射源装置300の動作中における5つの時点における種々の放射ビームと燃料材料との間の干渉の概略図である。これらの時点をt1〜t5と表示している。図5は、概して、それぞれの時点に対して、燃料小滴のストリームの方向であるX方向に沿ったそれぞれの配置での特定のターゲットのそれぞれの図を示していることが理解されるであろう。時間t1では、代表的な小滴502が燃料材料源71によって放出された。小滴502の移動方向が下向き矢印で示されている。プリパルス放射308は、小滴502に衝突する。時間t2では、小滴502は移動し続けて、プリパルス放射308によって引き起こされたより平坦な形状を採用し始める。燃料材料源71から出る次の小滴502’が示されており、これは実際の実施形態における放射源装置300の動作の反復性を示している。
[0054] 時間t3では、空間的変動406を有する格子放射328は、小滴502における燃料材料の表面に衝突する。図3及び図4に示す配置を有する放射源装置では、格子放射の干渉ビーム328a及び328bの向きは、電磁場における空間的変動406が、全体として図5の図面の平面への方向において周期的となるように構成される。示されるように、軸は、純粋に図面で空間的変動406を見ることができるように局所的に回転されている。空間的変動が特定の方向であるための基本的な条件はないが、小滴502が格子放射の照射中にかなりの距離を移動した場合、高強度の帯域が移動方向と位置合わせされて格子パターンがターゲット上でぼやけないことが好都合となる場合がある。
[0055] 時間t4では、レーザ放射のメインパルス(第2放射304)がターゲット502に照射される。空間的変動406を有する電磁場の影響の下では、ターゲット502の材料の1つ以上の特性が、格子放射内の高強度部分に対応する配置504で変更される。変更は、以下に説明するように種々の形態を有することができる。一例における空間的変動する変更は、ターゲット材料の表面506内の電子ガスの密度の変化から生じる空間的変動する複素誘電関数(複素誘電率)を含む。この空間的変動する誘電関数は、材料の(複素)屈折率を決定し、メインレーザパルスの第2放射304とのターゲット材料の相互作用に影響を与える。この効果は、固体材料から成るターゲットにエッチングされる格子構造の効果と類似し得る。以下に説明する表面プラズモンポラリトンの生成を含むがそれに限定されない種々の効果の範囲により、表面の反射性は変更できることが知られている。言い換えると、液体燃料小滴の場合にターゲット上に格子構造をエッチングする可能性はないが、ターゲットにわたって適切なエネルギーの空間的分布を有する電磁場の提供はターゲットの光学特性を変更させる。
[0056] 時間t5では、第2放射304は、ターゲット502に所望の第1放射302を放出するプラズマ508を完全に又は部分的に形成させた。図2のリソグラフィ装置での使用のために、プラズマが、例えば、5〜20nmの周波数帯のEUV放射を放出するようにターゲット材料を選択することができる。第2放射の反射の減少及び吸収の増加を達成するためにターゲットの光学特性の空間的変動を調整することは、LPP放射源の変換効率を高めることを可能にする。空間的変動が周期的であるか、固定の空間周波数を有するか、又は単一の空間周波数のみを有するための基本的条件はない。
[0057] 図示及び説明の簡略化のため、放射源装置300の動作における種々のイベントが、個別の時点t1〜t5で起きるものとして示された。実際には、これらのいずれの時点が同時であるか、又は他の時点の1つ以上と重なっていてもよい。例えば、原理上、プリパルス放射308に又はプリパルス放射の前にでも空間的変動を与えることができる。しかし、実際には、適用された変更が、メインパルス放射304の照射の時点まで材料内で存続し続ける及び/又は所望のスペーシングを維持又は達成することを確実とするのは難しい場合がある。むしろ、時点t3、t4及び/又はt5を組み合わせるか又は重ねてもよい。例えば、格子放射328をメインパルス放射304と同時に照射するか、又は、メインパルス放射304の少し前に照射してメインパルス放射304中維持されるように時間が重なってもよい。原則として、プリパルス放射308は任意選択である。本開示による第3放射328の照射は、LPP源の分野で公知である様々な技術と組み合わせて用いてもよく、プリパルスの使用は、プラズマ生成及び効率を高めるために慣習的な手段である。
[0058] 上記の記述をまとめると、得られた電界強度が十分に大きい場合、第3放射によって生成される電界における空間的変動強度は、燃料材料の複素誘電関数(例えば、屈折率)の空間的変調へと繋がる。この変調は、様々なメカニズムを通じて生じ得る。そのような1つのメカニズムは、表面プラズモンポラリトンモードを起こすことであり、これは特定の幾何学的形状を要する。なぜなら、理論上、成功する適切な波動ベクトル値は1つしかないからである。表面プラズモンポラリトン波動ベクトルの数学的導出は、例えば、本明細書中に参考として組み込まれる、S.A.MaierによるMaier bookの「Plasmonics: Fundamentals and Applications」Springer Business & Science Media, LLC (2007)、第2.2節、第1〜3章に記載されている。実際には、これは、変調の空間的周期性、メインパルスの波長及びその入射角が、ターゲット材料の誘電特性と調整されてこの波長を正確に励起させなければならないことを意味する。図4に示す角度θの調整は、これを実現するための実用的な方法である。格子放射波長及び入射角の調整は別のメカニズムである。表面プラズモンポラリトン励起を達成するためのいつかの選択肢及び検討を図6及び図7に示している。
[0059] まず図6を参照すると、格子放射328及びメインパルス放射304が同じ波長を有する実施形態が考えられる。これは、例えば、プリパルス放射がメインパルス放射と同じ放射源から多くの場合導き出されるのと同じ方法で、同じ放射源から都合よく得られた結果であり得る。燃料材料の表面506に沿って周期的に間隔をおいて配置された変更504の格子パターンは、例えば、金属燃料材料内の電子ガスの密度を変更することによって確立される。格子パターンの周期性は、事実上、図面で示す期間pの逆数である波数(空間周波数値)によって表される。メインパルス放射304は、表面に沿ったメインパルス放射の波動ベクトル成分及び格子波数の合計が表面プラズモンポラリトン励起状態と一致するようにある角度で表面506に衝突する。矢印602で示すように、プラズモンは右へと伝搬する。
[0060] メインパルス放射と同じ波長の格子放射を用いると、当業者が作製できる最も短い格子周期は、半分の波長である(それは、せん断入射角でターゲット面に衝突する格子パルスを有する非実際的な場合)。その場合、格子空間的周期pが表面プラズモンポラリトン励起状態と一致するために、メインパルスは傾斜角αで入射する必要があり、その場合には、メインパルス自体がターゲット表面に沿って十分に大きい波動ベクトル成分を与えてプラズモンを励起させる。言い換えると、メイン放射の入射角は、表面プラズモンを励起させる要求によって制約される。
[0061] 図7は、格子放射がメインパルス放射より短い波長を有する場合に有効となるいくつかの変形例を示す。図7(a)を参照すると、格子放射の波長が十分に短い場合、法線入射メインパルス(α=0)とした場合、格子パターンは、表面プラズモンポラリトン励起状態と正確に一致する空間的周期pで作製することができる。このような構成では、矢印604,606で示される表面に沿った両方向にプラズモンを励起させることができる。
[0062] 図7(b)では、より大きい格子空間的周期(図6で示すものと同様)が、角度θをより小さい値に変更することによって得られる。図6と同じ方向にプラズモン608を励起させるために、メインパルス放射304に対して非法線入射角αが再度必要となる。より短い波長の格子放射を用いることにより、格子パルス間の角度θが小さくなる。これにより、放射源装置の構成要素のよりコンパクトな構成をもたらす。
[0063] 図7(c)では、格子放射は、より短い波長及びより広い角度θを有する。この場合、格子空間的周期は非常に短く、傾斜入射メインパルス304を用いると、表面プラズモンポラリトンは、図6及び図7(b)に示す方向と反対の方向610に励起することができる。短い格子空間的周期はそれ自体の回折を除去するため、この構成は望ましい場合がある。格子空間的周期pがN(Nは正の整数)で割られたメインパルス波長より短い場合、N次及び−N次の回折次数は存在できない。回折された放射は、反射した放射と同様に、EUV放射の吸収及び生成に有効な損失を表す。したがって、回折次数を除去することは、変換効率を上げるための別の方法である。
[0064] 図6及び図7で示す例が唯一可能なものではなく、本明細書中に開示された技術は、様々な配置で適用されてもよく、格子ピッチ及び空間的変動の他のパラメータを決定するのに余分な柔軟性をシステム設計者に与える。格子パルスがターゲット表面に対する法線の両側に対称的に配置されてない実施形態も挙げられる。光がより深く伝搬する燃料材料のミスト又は蒸気を含むターゲットの場合、当業者はターゲット表面の下で3−D関係を活用してもよい。ミストがターゲットである2つのビーム328a及び328bの場合、格子「線」は、ミストへとより深く延びて励起領域面のセットを形成することができる。これは、平面がメインパルス伝搬方向と平行であった場合にメインパルス放射304をミストへとさらに誘導できるという利点を有することができる。各座標x、y及びzに対して反対方向に伝搬する2つのビームを有することにより、ラチス(lattice)の3−D光等価物、いわゆる光ラチスを作製することもできる。この例は、Austrian Academy of Sciences, Innsbruck, Austriaによる「Optical Lattices and Mott insulator」に記載されている(https://www.uibk.ac.at/exphys/ultracold/projects/rubidium/mott#insulator/を参照)。励起/非励起燃料材料(全てのビームが建設的に干渉する場合は励起され、破壊的に干渉する場合は励起されない)から成る対応する3−Dラチスを作り出すために使用されるこのような3−D光ラチスは、フォトニック結晶のように作用し、光を捉えることもできる。3−Dラチスを形成するのに6つのレーザビームが必要である一方、4つのレーザビームでは2−Dラチスを形成することができる。2つのビームを使用する場合、かつこれらの2つのビームがミストへと十分に深く貫通することが想定されると、これは、上記で説明したような平面のセットである1Dラチスと等しい。
[0065] 図8、図9及び図10は、図5に示す種々のイベントの相対的タイミング(よって、X位置)に対するいくつかの異なる選択肢をかなりの略図で示す例示的タイミング図である。これらの各図では、3つのグラフが、プリパルス放射PP、格子放射GP及びメインパルスMPの相対的タイミングを示す。特定の縮尺通りではなく、共通の時間次元が各グラフの横軸に沿って示される。縦軸は原寸に比例しない。各グラフでは、時点t1、t3及びt4が表示され、燃料小滴502の処理中の図5で示される時点に対応する。図8では、時点t1’が示されており、次の燃料小滴502’を処理する次のパルスシーケンスの始まりを表す。
[0066] 図8では、コントローラ316によって実行されるタイミングは、図5で示されるものと事実上同じである。つまり、プリパルス放射、格子放射及びメインパルス放射のそれぞれは、t1、t3及びt14とそれぞれ表示される個別の時間間隔で到達する。この場合、格子放射の影響は、格子放射パルスの期間より長く残ることが想定されており、それによってターゲット特性の空間的変調は、メインパルスが時間t4に到達したときに残る。
[0067] 図9は、メインパルスが開始する時間t3の前からメインパルスの持続時間を通して延びる持続時間を格子放射が有する以外は、図8に示すものと同様である別のタイミングを示す。これによってターゲット特性の空間的変調がメインパルス周期中に持続することを確実にする。
[0068] 最後に、図10は、格子放射が連続的に有効的に存在してターゲット特性の空間的変調がインパルス周期中に持続することを確実にする実施形態を示す。これらのタイミングスキームに対する多数のバリエーションが可能であることが理解され、最適な性能を達成するために詳細な設計が必要となる。種々の空間的変動を有する格子放射の多数のビームを適用してもよい。例えば、プリパルス放射の照射に応答してターゲットが拡大する一方、連続的又は段階的に拡大する格子パターンを格子放射の適切な構成によってターゲットに適用してもよい。
[0069] 図11を参照すると、この図は、格子放射の2つ以上の干渉ビームを必ずしも使用することなくどのように空間的に変動する強度分布を作り出すことができるかを示す。図11(a)に示すように、格子放射928は、空間光変調器(SLM)934を用いて単一のレーザ930によって提供される放射源放射928’の単一のビームから生成される。図4のナンバリングに従うと、空間光変調器は、放射源放射928’の平面波面904を、ターゲットにわたって複数のピーク及び谷を有する任意選択のエネルギー分布を有する電磁場へと変換する。図面は、ターゲット材料小滴902に衝突する対応する空間的変動906を概略的に示す。当然ながら、フォーカス構成などの他の光学素子を設けてもよい。
[0070] 空間光変調器934は、固定型(つまり、不透明な部分又は位相シフト部分のパターンを有する反射型又は透過型デバイス)であってもよい。あるいは、SLM934は、プログラマブル、例えば、透過型液晶アレイ又は反射型マイクロミラーアレイであってもよい。どちらのタイプのSLMも実際に周知である。プログラマブルSLMを用いて第3放射の分布906を適宜変化させる可能性とは別に、SLMはより多くの任意のパターンが生成されることを可能にする。
[0071] 図11(b)では、図4(b)で示すものと同様に、単純な一次元格子パターンが形成される。図11(c)では、二次元格子パターンが別の例として示されている。多くの場合が当てはまるメインパルス放射が直線偏向であった場合、二次元格子パターンは実際にはあまり魅力的とならない。その場合、メインパルス放射の偏光方向に対して適切に方向づけられた一次元格子は、ターゲット材料へのメインパルス放射の結合を最適化することが期待され得る。ちなみに、このような二次元格子パターンは、ビーム328a及びビーム328bの一対と同様の多数の干渉ビームを用いて生成することができる。既に上記で述べたように、空間的に変動するピッチを有するパターン及び三次元パターンも定義することができる。一部の種類のパターンは、多重ビームの一対よりSLMを用いてより容易に定義することができる。
[0072] プログラマブルSLM934の場合、さらなる選択肢が可能である。SLM934は、例えば、第3放射レーザ930、メインパルスレーザ及びプリパルスレーザを制御する同じコントローラ916の制御の下にあってもよい。第1実施形態では、空間強度分布906の微調整は、例えば、変換効率のフィードバック、反射光などを用いてリアルタイムで実施することができる。例えば、格子ピッチは様々であってよい一方、当然ながらより精巧な調整を行ってもよい。格子パターンの焦点面は、SLMを用いて調整可能フォーカス構成を潜在的に消去しながら調整することができる。そのような例では、空間強度分布の変動は、一連のターゲットとの相互作用中に経時的に変調されて装置の性能を1つ以上のパラメータにおいて最適化することができる。
[0073] SLMが格子パターンを十分に短いタイムスケールで変更させた場合、当業者は、単一のターゲットとの相互作用中に経時的に第3放射の空間的変動を変調させるように装置を構成することもできる。格子生成パルスの通過中に投影されたパターンを変化させることにより、当業者は、例えば、強度分布をターゲット材料の展開する誘電関数に適合させることができる。この誘電関数は、加熱、蒸発及びプラズマ形成によって経時的に変化する。結果的に、適用された強度分布の効果は変動し、固定強度分布は常に最適ではない。望ましい場合、ターゲット材料におけるリアルタイムの誘発変化を測定し、これらの測定値を用いてSLMにフィードバックをするために追加のプローブレーザを設けてもよい。
[0074] 上記の例をまとめると、格子放射によって生成される電磁場における空間的に変化する強度分布は、ターゲットの材料の1つ以上の特性を空間的に変調するように設計される。励起が軽い場合、変調は、伝導帯電子の占有スペクトルにおける強度依存変化によって引き起こされ得る。励起がより活動的であった場合、材料の局所的プラズマ形成又はアブレーションがあり得る。予測される最終的な結果は、物理的(表面起伏を形成するプラズマのバンド又は又はそれを引き起こすアブレーション)又は電気的(空間で局所化された非熱的電子分布)な表面の一部の変調である。全ての場合において、ターゲットにわたる複素誘電関数の空間的変動という効果的な結果となる。必ずしもではないが一般的には、これはターゲットの効果的な屈折率の変動であり得る。なぜなら、屈折率は、単純に誘電関数(複素誘電率)によって決定された複素屈折率の実数成分であるからである。
[0075] 周期的に変動する屈折率を踏まえると、ターゲットの表面は格子のように働き得る。(格子放射ビームの入射角及びその波長によって決定される)この格子の周期性、メインパルスの入射角、その波長及びターゲットの誘電特性は互いに適切に調整された場合、表面で表面プラズモンポラリトンを励起させることが可能である。これらは、メインパルスからエネルギーをとる表面に沿って向けられた波動ベクトルを有する電荷密度の波である。これらの表面プラズモンポラリトンの励起は、そのエネルギーを材料に放散し、格子パルスが存在しない状況に対してメインパルスの全体的な吸収が増大するという実質的な結果となる。
[0076] 表面プラズモンポラリトンの励起は、金属ターゲット内の誘電関数の変更によって生じ得る唯一の吸収促進現象ではない。単一又は他との組み合わせにより多数の異なる現象が利用されてもよい。格子放射によって形成される空間周期的な比誘電関数は、メインパルスが正しい状況下で結合することができる導波管モードを確立することを可能にする。メインパルスから表面に沿って移動する導波管モードへのエネルギーの移動は、吸収の増大へと繋がり得る。なぜなら、電界は常に金属へと有限距離を通り抜け、それによってエネルギーを金属又はプラズマ内の電子へと移動させる。その後このエネルギーは、最終的に熱として放散されて所望の強化されたプラズマ生成に寄与する。
[0077] 図12は、非常に小さいフィーチャのメトロロジに利用できる検査装置の形態を概略的に示す。EUV検査装置1200は、基板W上に形成されたメトロロジターゲットTの特性を測定するために設けられる。ターゲットは、例えば、図2のリソグラフィ装置を用いてリソグラフィによって形成された構造であってよい。様々なハードウェアコンポーネントが概略的に示されており、本明細書中に参考として組み込まれた上記の米国特許出願公開第2016282282号明細書により詳細かつ様々な内容が記載されている。端的には、放射源1230は、放射を照明システム1232に提供する。本開示の原理に従うと、放射源1230は、図3〜図11のいずれを参照して上記した種類のLPP源である。
[0078] 照明システム1232は、ターゲットT上に合焦された照射スポットを形成する光線1204で表すEUV放射ビームを提供する。ターゲットT及び基板Wによって反射された放射は、検出器1213に衝突する前に種々の波長の交線のスペクトル1210に分割される。検出器1213は、例えば、CCD(電荷結合素子)イメージセンサであってよい。照明システム1232は、基準スペクトル1220を検出器1214にも提供する。構成部品1212、1213等は、便宜的に検出システム1233として考えられてもよい。
[0079] この例における基板Wは、光線1204の入射角αが調整されるように位置決めシステム1234を有する可動サポートに設置される。反射した光線1208を捉えるために、検出システム1233には、さらなる可動サポート1236が設けられており、それによって固定式の照明システムに対して角度2α又は基板に対して角度αを通じて移動する。放射のフォーカススポットSが配置される位置に各ターゲットTを運ぶためにさらなるアクチュエータが設けられる(図示せず)。
[0080] プロセッサ1240は、検出器1213及び1214から信号を受信する。特に、検出器1213からの信号STはターゲットスペクトルを表し、検出器1214からの信号SRは基準スペクトルを表す。プロセッサ1240は、基準スペクトルをターゲットスペクトルから減算して、放射源スペクトルの変動に対して正規化されたターゲットの反射スペクトルを含む。1つ以上の入射角に対する結果として生じる反射スペクトルは、ターゲットの特性の測定値、例えば、クリティカルディメンション(CD)又はオーバーレイを計算するためにプロセッサで使用される。
結論
[0081] 結論として、本開示は、EUV放射又は所望の波長を有する他の放射が、反射及び吸収特性の改善された制御用いてプラズマから生成することができる放射源装置及び方法を提供する。効率性を改善することができ、及び/又はレーザ装置へと再び反射する問題を回避又は軽減することができる。改善された放射源装置は、リソグラフィ装置、検査装置又は第1波長帯の放射を用いる任意の光学装置に含まれてもよい。特定の商業用途に関しては、EUV放射は、改善された効率性、例えば5〜20nmの範囲で生成することができる。
[0082] 本明細書で使用される「光」、「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)(例えば、365nm〜126nmの波長又はおよそこれらの値の波長を有する)、及び極端紫外線(EUV)(例えば、1〜100nm又は5〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。リソグラフィ装置及び検査装置はこれらのあらゆる波長並びにイオンビームや電子ビームなどの微粒子ビームを使用することができる。
[0083] 「レンズ」という用語は、文脈によっては、屈折、反射、磁気、電磁気、及び静電型光コンポーネントを含む様々な種類の光コンポーネントのいずれか1つ又はこれらの組合せを指すことができる。
[0084] 本発明の広さ及び範囲は、上述したいずれの例示的実施形態によっても限定されず、唯一添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物によってのみ定義されるものとする。
関連出願への相互参照
[0001] 本願は、2016年12月13日に出願した欧州特許出願第16203624.8号の優先権を主張し、その全体を本願に参考として組み込む。
[0002] 本発明は、放射源装置及び放射を生成する方法に関する。本発明は、更に、このような放射源を含むEUV光学システムに関する。本発明は、更に、デバイス製造方法及び検査方法に関する。
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、又は1つ以上のダイを含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。リソグラフィは、ICや他のデバイス及び/又は構造の製造における重要なステップの1つとして広く認識されている。しかしながら、リソグラフィを使用して作られるフィーチャの寸法が小さくなるにつれ、リソグラフィは、小型IC若しくは他のデバイス及び/又は構造を製造できるようにするためのより一層重要な要因になりつつある。
[0004] 露光波長を短縮するため、したがって、最小印刷可能サイズを縮小させるためには、極端紫外線(EUV)放射原を使用することが提案されている。EUV放射は、約1〜100nmの範囲内の波長を有する電磁放射である。リソグラフィの目的のために、5〜20nmの範囲内の波長、例えば13〜14nmの範囲内の波長、あるいは例えば6.7nm又は6.8nmといったような5〜10nmの範囲内の波長を使用することがさらに提案されている。
[0005] さらに、このような短い波長の放射は、例えば、反射光測定及び/又はスキャトロメトリによって特性を決定するための小さい構造の検査にも有用である。米国特許出願公開第20160282282号明細書では、EUV放射を用いてターゲット構造のCD及びオーバーレイなどの特性を測定することが提案されている。分光反射光測定は、ゼロ及び/又はより高い回折次数で散乱した放射を用いて行われる。回折信号は、EUV光学システムと基板との間の円錐形マウントを用いてさらに強化される。先願の内容は、本開示に参考として組み込まれる。
[0006] EUV放射に対する可能な放射源は、例えば、レーザ生成プラズマ源、放電プラズマ源又は電子蓄積リングによって提供されるシンクロトロン放射に基づく放射源を含む。レーザ生成プラズマ源は、高エネルギーレーザを用いて適切な燃料材料から成るターゲットにプラズマを生成する。LPP源の例は、例えば、米国特許出願公開第2014264087号明細書(Rafacら)及び米国特許出願公開第2014368802号明細書(Yakuninら)といった公開特許に記載されている。これらの文書の内容は、本明細書中に参考として組み込まれる。これらの例では、液体スズ小滴は、EUV放出プラズマを生成するためにターゲットとして使用される。
[0007] 商業用途のためのEUV源の展開及び適用における主な課題は、所望の放射のより高い生産量を得ることである。LPP源では、レーザ放射の各パルスにおける光の一部は、燃料材料及びプラズマによって反射される。これは2つの欠点をもたらす。第一に、吸収されなかった光は、所望のEUV放射の生成に寄与せず、その点に関しては無駄になる。第二に、レーザビームの高いパワーを考慮すると、反射光は、周辺の光学部品並びにシードレーザ及びレーザ増幅器にダメージを与える可能性がある。吸収を改善させるための慣用ステップとして、放射のプリパルスを用いてターゲットを準備させ、例えば、液体小滴をより平坦及び大きく及び/又はミストに変換する。上記で引用した両方の特許文書は、ターゲットをさらなる放射パルスで準備することによってさらなる改善された変換効率を目的としている。米国特許出願公開第2014264087号明細書では、例えば、異なる波長のさらなるプリパルスをメインパルスに照射してメインパルスレーザ放射の吸収に関連するターゲットの一部の特性を変更する。米国特許出願公開第2014368802号明細書では、プリパルス放射を特定の方向に照射してターゲットに所望の三次元形状又は向きを与え、それによってメインパルス放射は、法線入射ではなく表面に対して傾斜した方向に燃料材料の表面に入射して吸収を高める。
[0008] それでもやはり、反射の問題及びEUV放射への変換の効率をどのように高めるかについての問題は、著しく残る。
[0009] 固体のSnターゲット材料を用いるEUV放射源は、APPLIED PHYSICS LETTERS 96, 111503 (2010), doi:10.1063/1.3364141のS.S.Harilalらによる「Efficient laser-produced plasma extreme ultraviolet sources using grooved Sn targets」に開示されている。レーザ放射のフォーカスビームより大きい溝は、プラズマを閉じ込めてEUV生成ゾーンで強化させるように設計されている。
[0010] 特にEUV放射源を含む放射源の設計における1つ以上の上記の問題に取り組むことが本発明の課題である。
[0011] 本発明は、第1周波数帯における第1放射を提供するための装置を提供する。この装置は、
−第2周波数帯における第2放射をターゲットに誘導して第1放射の生成を引き起こすように構成され、かつ
−第2放射の送出の前及び/又はその間に第3放射をターゲットに誘導するように構成され、第3放射は、ターゲットにわたって多数のピーク(peaks、山)及び谷(troughs)を含むエネルギーの空間的分布を有する電磁場を生成してターゲットの特性に対応する空間的変動を引き起こすように送出される、システムを含む。
[0012] 第1周波数帯における放射は、例えば、1nm〜100nmの範囲の波長、例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有するEUV放射であってもよい。
[0013] LPP放射源のターゲットに格子状構造を作り出すことは、レーザ放射の吸収を上げて放射源の変換効率を高めることが発明者らによって認識された。発明者らは、適切な空間的変動を有する放射を用いて固体金属にエッチングされた格子と同様の効果を得ることができることもさらに認識した。ターゲットは、例えば、液体燃料材料の滴から準備することができるが、本発明は液体燃料材料に限定されない。第3放射は、メインパルス放射のためにターゲットを準備するために使用されるプリパルス放射と同じ又はそれに付加されるものであってもよい。
[0014] フォトニクスでは、一般に、金属ターゲットによる放射の反射は、格子構造がターゲット表面にエッチングされることによって影響され得ることが知られている。例えば、エッチングされた周期的格子構成が入射レーザ放射の特性に適切に調整された場合、いわゆる表面プラズモンポラリトンが燃料材料の表面に励起されることができる。これは、光波が平坦なインターフェースに入射する場合より多くの入射光が吸収されるという趣旨で自由電荷キャリアの表面結合振動に相当する。表面プラズモンポラリトンの物理については、S.A. MaierによるSpringer Business & Science Media, LLC (2007)の「Plasmonics: Fundamentals and Applications」に記載されている。表面プラズモンポラリトンは、LPP放射源における変換効率を高めるために利用され得る現象の種類の単なる一例である。金属のレーザ励起の物理は、一般に、例えば、E.G.GamalyとA.V.RodeによるProg.Quant.Electron.37, 215-323(2013)の「Physics of ultra-short laser interaction with matter: From phonon excitation to ultimate transformations」に記載されている。
[0015] 本発明は、放射源及びEUV光学システムを備えるEUV光学装置さらに提供する。放射源は、上記した発明による装置を含む。EUV光学装置は、例えば、リソグラフィ装置であってもよく、EUV光学システムは、放射源からのEUV放射を用いてパターンを基板に適用するための投影システムを含む。EUV光学装置は、例えば、検査装置であってもよく、EUV光学システムは、放射源からのEUV放射を対象の構造に誘導し、かつ構造との相互作用の後にEUV放射を集めるための照明システムを含む。
[0016] 本発明は、第1周波数帯における第1放射を生成する方法であって、第2周波数帯における第2放射はターゲットに誘導されて第1放射の生成を引き起こす方法をさらに提供する。この方法は、第2放射の送出の前及び/又はその間に第3放射をターゲットに送出することをさらに含み、第3放射は、ターゲットにわたって多数のピーク及び谷を含むエネルギーの空間的分布を有する電磁場を生成してターゲットの特性に対応する空間的変動を引き起こす。
[0017] 本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明しながら添付の図面に示す実施形態を考察の上、当業者に理解されるであろう。
[0018] 本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。
図1は、EUV放射を用いる光学装置の一例として、反射型投影光学系を有するリソグラフィ装置を概略的に示す。
図2は、EUV放射の生成のための、LLP源装置を有する実施形態における、図1の装置のより詳細な図である。
図3は、ターゲットの行路に沿って見た場合における、本発明の一実施形態によるLPP放射源装置内の第2放射、第3放射及びプリパルス放射を送出するための構成の概略的なブロック図である。
図4は、図3の放射源装置におけるa)第3放射の生成の原理及びb)第3放射の効果を示す
図5は、ターゲットの行路を横切る方向から見た場合における、本発明の一実施形態における放射源装置の動作中の様々な時点を示す。
図6は、本発明の実施形態における、第2放射の吸収が表面プラズモンポラリトンの生成によって増大することができる1つのメカニズムを示す。
図7は、本発明のさらなる実施形態を表す図6のメカニズムの3つのバリエーションを示す。
図8は、本発明の実施形態における、第2放射、第3放射及びプリパルス放射のタイミングを示す。
図9は、本発明の実施形態における、第2放射、第3放射及びプリパルス放射のタイミングを示す。
図10は、本発明の実施形態における、第2放射、第3放射及びプリパルス放射のタイミングを示す。
図11は、本発明による放射源装置の別の実施形態における、(a)第3放射の生成の原理及び(b、c)第3放射の効果を示す。
図12は、本発明による放射源装置を含む検査装置の概略図である。
[0019] これらの図面にわたって、同じ参照符号は類似又は対応する特徴を示す。
[0020] 放射源装置について詳細に説明する前に、本発明を適用することができるEUV光学装置の一例として、反射光学系を有するリソグラフィ装置について説明する。
[0021] 図1は、本発明の一実施形態による放射源モジュールSOを含むリソグラフィ装置100を概略的に示している。このリソグラフィ装置は、
‐放射ビームB(例えば、EUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
‐パターニングデバイス(例えば、マスク又はレチクル)MAを支持するように構築され、かつパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに連結されたサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTと、
‐基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、かつ基板を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTと、
‐パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSとを備える。
[0022] 照明システムILとしては、放射を誘導し、整形し、又は制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、又はその他のタイプの光コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光コンポーネントを含むことができる。
[0023] サポート構造MTは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、及び、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。サポート構造は、機械式、真空式、静電式又はその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定又は可動式にすることができるフレーム又はテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。
[0024] 「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、投影ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。放射ビームに付けたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定の機能層に対応することになる。
[0025] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、及びハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、並びに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
[0026] 投影システムは、照明システムのように、使われている露光放射にとって、あるいは真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、及び静電型光学系、又はそれらのあらゆる組合せを含むあらゆる型の投影システムを包含していると広く解釈されるべきである。ガスは放射を吸収しすぎることがあるので、EUV放射に対して真空を用いることが望ましい場合がある。したがって、真空環境を、真空壁及び真空ポンプを用いてビームパス全体に提供することができる。
[0027] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、反射型マスクを採用しているもの)であってもよい。
[0028] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使うことができ、又は準備工程を1つ以上のテーブルで実行しつつ、別の1つ以上のテーブルを露光用に使うこともできる。
[0029] 図1を参照すると、イルミネータILは、放射源モジュールSOから極端紫外線放射ビームを受ける。EUV光を生成する方法には、材料を、例えば、キセノン、リチウム又はスズなどの元素を少なくとも1つ有しかつEUV範囲内の1つ以上の輝線を有するプラズマ状態へと変換することが含まれるが、必ずしもこれに限定されない。そのような方法のうちの1つであり、しばしばレーザ生成プラズマ(「LPP」)と呼ばれる方法では、所要の線発光化学元素を有する材料の小滴、流れ又はクラスタなどの燃料をレーザビームで照射することにより所要のプラズマを生成することができる。放射源モジュールSOは、燃料を励起するレーザビームを提供するためのレーザ(図1中図示なし)を含むEUV放射システムの一部であってよい。結果として生じるプラズマは、出力放射(例えば、EUV放射)を放出し、これは放射源モジュール内に配置された放射コレクタを用いて集められる。レーザ及び放射源モジュールは、例えば、CO2レーザを用いて燃料励起のためのレーザビームを提供した場合、別個の構成要素であってもよい。
[0030] このような場合、レーザは、リソグラフィ装置の一部を形成するとはみなされず、放射ビームは、レーザから放射源モジュールへ、例えば、適切な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムを使って送ることができる。その他の場合においては、例えば、放射源が放電生成プラズマEUVジェネレータ(「DPP源」としばしば呼ばれる)である場合、放射源は、放射源モジュールの一体部分とすることもできる。
[0031] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するアジャスタを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(通常、それぞれσ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、ファセットフィールド及び瞳ミラーデバイスといったさまざまな他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性及び強度分布をもたせることができる。
[0032] 放射ビームBは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAから反射した後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2ポジショナPW及び位置センサPS2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、又は静電容量センサ)を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPM及び別の位置センサPS1を使い、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1及びM2と、基板アライメントマークP1及びP2とを使って、位置合わせされてもよい。
[0033] EUV膜(例えば、ペリクルPE)が、システム内の粒子によるパターニングデバイスの汚染を防ぐために設けられる。このようなペリクルは、示される配置及び/又は他の配置に設けられてもよい。さらなるEUV膜SPFが、スペクトル純度フィルタとして設けられてもよく、これは望ましくない放射波長(例えば、DUV)をフィルタリングするように動作可能である。このような望ましくない波長は、望ましくない形でウェーハW上のフォトレジストに影響を与え得る。SPFは、任意選択として、脱ガス中に開放される粒子による投影システムPS内の投影光学系の汚染を防ぐのに役に立つこともできる(又はこの行為を行うためにSPFの代わりにペリクルを設けてもよい)。これらのEUV膜のいずれも、本明細書中に開示されたあらゆるEUV膜を含んでもよい。
[0034] 示されている装置は、さまざまなモードで使用することができる。スキャンモードにおいては、パターニングデバイスサポート(例えば、マスクテーブル)MT及び基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。パターニングデバイスサポート(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率及び像反転特性によって決めることができる。スキャンモードにおいては、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光時のターゲット部分の幅(非スキャン方向)が限定される一方、スキャン動作の長さによって、ターゲット部分の高さ(スキャン方向)が決まる。当該技術分野では周知であるように、他の種類のリソグラフィ装置及び動作モードも可能である。例えば、ステップモードは公知である。いわゆる「マスクレス」リソグラフィでは、プログラマブルパターニングデバイスを静止状態に保つがパターンは変化し、基板テーブルWTは移動又はスキャンされる。
[0035] 上述の使用モードの組合せ及び/又はバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
[0036] 図2は、放射システム42、照明システムIL及び投影システムPSの形態を有する放射源装置を含むリソグラフィ装置の実施形態をより詳細に示す。図2に示す放射システム42は、放射源としてレーザ生成プラズマを使用する種類のものである。EUV放射は、ガス又は蒸気、例えばXeガス、Li蒸気又はSn蒸気によって生成されてよい。このガス又は蒸気では、電磁スペクトルのEUV範囲内の放射を放出するために非常に高温のプラズマが生成される。非常に高温のプラズマは、例えば、CO2レーザ光を用いて光励起によって少なくとも部分電離プラズマを引き起こすことによって生成される。ある実施形態では、Snを用いてEUV範囲内の放射を放出するためにプラズマを生成する。
[0037] 放射システム42は、図1の装置内の放射源SOの機能を具体化する。放射システム42は放射源チャンバ47を備え、本実施形態では、この放射源チャンバ47は、EUV放射源のみを実質的に囲うのではなく、図2の例では法線入射コレクタ(例えば、多層ミラー)であるコレクタ50も囲う。
[0038] LPP放射源の一部として、レーザシステム61が、コレクタ50内に設けられた開口67を通ってビームデリバリシステム65によって送出されるレーザビーム63を提供するように構築及び配置される。さらに、放射システムは、ターゲット材料源71によって供給されるSn又はXeなどの材料69を含む。本実施形態では、ビームデリバリシステム65は、所望のプラズマ形成位置73に実質的に合焦されるビームパスを確立させるように配置される。
[0039] 動作中、燃料と呼ぶこともあるターゲット材料69は、小滴の形態でターゲット材料源71によって供給される。如何なる理由によりプラズマに変化しない燃料を捉えるために、放射源チャンバ47の反対側にトラップ72が設けられる。このようなターゲット材料69の小滴がプラズマ形成位置73に到達したとき、レーザビーム63は小滴に衝突し、EUV放射放出プラズマが放射源チャンバ47の中に形成される。パルスレーザの場合、レーザ放射のパルスが位置73を通る小滴の経路と一致するようにタイミングを計ることを伴う。これらは、数105Kの電子温度を有する高電離プラズマを生成する。これらのイオンの脱励起及び再結合中に生成されるエネルギー放射は、位置73でプラズマから放出される所望のEUVを含む。プラズマ形成位置73及び開口52は、それぞれコレクタ50の第1焦点及び第2焦点に配置され、EUV放射は、法線入射コレクタミラー50によって中間焦点IFに合焦される。
[0040] 放射ビーム56によって図2に示されるように、放射源チャンバ47から発散される放射ビームは、いわゆる法線入射リフレクタ53,54を介して照明システムILを横切る。法線入射リフレクタは、ペリクルPEを介して、サポート(例えば、レチクル又はマスクテーブル)MT上に位置決めされたパターニングデバイス(例えば、レチクル又はマスク)上にビーム56を誘導する。パターン付きビーム57が形成され、このパターン付きビーム57は、反射要素58,59を介してウェーハステージ又は基板テーブルWTによって支えられた基板上に投影システムPSによって結像される。示されるものより多くの要素が、通常、照明システムIL及び投影システムPSに存在してもよい。例えば、図2に示す2つの要素58及び59ではなく、1つ、2つ、3つ又は4つ以上の反射要素が存在してもよい。
[0041] 当業者には明らかであるように、基準軸X、Y及びZは、装置の形状及び動作、その様々な構成要素及び放射ビーム55、56、57を測定及び説明するために規定することができる。装置の各部分において、X、Y又はZ軸の局所基準フレームを規定することができる。Z軸は、システムにおける所定の箇所で光軸Oの方向とほぼ一致し、パターニングデバイス(レチクル)MAの平面及び基板Wの平面に対してほぼ垂直である。放射源装置(放射システム)42では、X軸が燃料ストリーム(69、以下に記載)の方向とほぼ一致する一方、Y軸はそれと直交し、示されるように紙面から出る方向を指す。その一方、レチクルMAを保持するサポート構造MTの周辺では、X軸はY軸と並んだスキャン方向を概ね横切る。便宜上のため、図2の概略図のこの領域では、X軸は、示されるように紙面から出る方向を指す。これらの表示は当該技術分野では常套手段であり、便宜上のため本明細書中に採用されている。原理上、装置及びその動作を説明するためにあらゆる基準フレームを選択してもよい。
[0042] 望ましいEUV放射に加えて、プラズマは、他の放射の波長、例えば、可視のUV及びDUV範囲内のものも生成する。IR(赤外線)放射もレーザビーム63から生じる。非EUV波長は、照明システムIL及び投影システムPSでは望ましくなく、非EUV放射を遮断するために様々な対策を展開してもよい。図2に概略的に示すように、スペクトル純度フィルタSPFの形態を有するEUV膜フィルタを、IR、DUV及び/又は他の望ましくない波長のために仮想光源点の上流に適用するこができる。図2に示す特定例では、2つのスペクトル純度フィルタが示されており、一方が放射源チャンバ47の中にあり、他方が投影システムPSの出力にある。実質的な実施形態では、スペクトル純度フィルタは1つだけ設けてもよく、いずれの配置又はプラズマ形成位置73とウェーハWとの間のあらゆる箇所にあってもよい。
[0043] 上記したように、リソグラフィ装置は、本開示の放射源装置及び方法を適用することができるEUV光学システムの唯一の種類ではない。特に、検査装置及び方法は、あらゆる改良されたEUV放射源を用いて想定することができる。EUV検査装置の例としては、本明細書中に参考として組み込まれる内容である米国特許出願公開第20160282282号明細書の公報を参考にしている。米国特許出願公開第20160282282号明細書からの検査装置の例は、以下に説明する図12に示す。
[0044] 図3は、放射源装置300の主要構成部品を概略的に示す。この放射源装置300は、図2のリソグラフィ装置内、別のリソグラフィ装置内又は検査装置などの別のEUV光学システム内の放射システム42として使用することができる。右側には、放射源チャンバ47が、ターゲット材料69の小滴及びプラズマ形成位置73を含む燃料ストリームと共に概略的に示されている。図3の図はX軸に沿っており、すなわち、燃料ストリームの方向に沿っている。燃料ストリームの方向を横切る図は、以下に説明する図5で見られる。
[0045] 所望のEUV波長を有する第1放射302を含む放射が、プラズマ形成位置73で形成されたプラズマによって放出される。プラズマを生成するために、レーザ放射のメインパルスを含む第2放射304が、図2の例においてレーザシステム61の一部となり得る第1レーザ源306によって提供される。レーザ放射のメインパルスとの相互作用に対してターゲット材料69を準備させるために、レーザ源306と同じレーザシステムの一部としてなり得る第2レーザ源310によってプリパルス放射308が提供される。メインパルス及びプリパルス放射の生成については本開示では提供されていないが、例えば、上記した米国特許出願公開第2014264087号明細書及び米国特許出願公開第2014368802号明細書で説明された公報で発見することができる。
[0046] 図示した例では、第2放射304及びプリパルス放射308は、ビーム結合光学素子312及びフォーカス構成314を用いて誘導される。図3示す向きでは見られないが、プリパルス放射ビーム308は、通常、第2放射304を含むメインパルスより飛行における早い時間にターゲット材料69の小滴に衝突する。したがって、プリパルス放射ビームは、メインパルスと相対的なX軸上で変位された配置に合焦することができる。コントローラ316は、第1レーザ源306及び第2レーザ源310の動作を同期させて燃料材料69の各小滴に対して適切なタイミングを得る。小滴の送出は、レーザ源306,310のパルス動作とともに、高周波数(例えば、数十キロヘルツ(例えば、50kHz))で繰り返される。結果的に、所望のEUV放射302は、同じ周波数を有するパルスで放出される。
[0047] 先の米国特許出願公開第2014264087号明細書の公報のように、本開示は、第3放射の送出を想定して、ターゲット材料69を調整し、第2放射304の吸収を高め、EUV第1放射302の生成の効率性を高めるが、本開示の原理によると、ターゲットにわたって複数のピーク及び谷を含むエネルギーの分布を有する電磁場をターゲットで生成するように第3放射が提供される。この電磁場における空間的変動は、ターゲットの特性に対応する空間的変動をもたらす。繰り返し空間的変動とも呼ばれる複数のピーク及び谷を有するエネルギー分布は、定期エネルギー分布から区別することができる。この定期エネルギー分布では、放射ビームが、ビームの周辺に向かって減少するエネルギーの中心ピークを有する。以下にさらに説明するように、空間的変動は、例えば、ターゲットの1つ以上の特性に格子パターンを適用する一方向又は二方向の周期的又は反復的変動であってもよい。この格子パターンは、燃料材料による第2放射の吸収を高めるように調整されてEUV放射源装置の効率を高めることができる。
[0048] 図3の例では、2つの放射ビーム328a及び328bが示されており、この2つのビームは共に、ターゲット材料に衝突する第3放射328を形成する。放射源330a及び330bは、これらのビームを生成する。以下にさらに説明するように、第3放射は、レーザ放射(第2放射304)のメインパルスの照射の前又はその最中にターゲット材料に衝突し得る。以下の説明では、第3放射は、その機能に基づき「格子放射」として記載される。格子放射の送出のタイミングは、コントローラ316によってメインパルス及びプリパルス放射の送出と同期される。
[0049] 図示した例では、格子放射の各ビーム328a/328bは、独自のフォーカス構成332a及び332bを有する。他の実施形態では、格子放射は、メインパルス放射及び/又はプリパルス放射と同じフォーカス構成314を通過してもよい。図示した例では、格子放射ビームは、メインパルス放射ビームの両側に位置決めされる。他の実施形態では、格子放射は、メインパルス放射の片側又は他方側から送出されてもよい。第2放射(メインパルス)、プリパルス放射及び第3放射(格子放射)のいずれも、示されるようにz軸にほぼ沿って又はz軸に対して傾斜角で送出されてもよい。
[0050] 図4(a)は、図3の例のターゲットに格子放射328を照射する原理を示す。ターゲット402の近傍で互いに角度θで合う格子放射のビーム328a及び328bが示されている。この例では、ターゲット402は、プリパルス放射308の照射によって既に準備されている燃料材料69の小滴であると想定される。いくつかの実施形態では、例えば、プリパルス放射308を用いて実質的に球状の小滴を、図面に概略的に示している平坦な「パンケーキ」の形状に変形させる。他の実施形態では、プリパルス放射は、液体燃料材料をより小さい小滴又は蒸気のミストへと分散させるのに十分であってもよい。
[0051] 簡略化のため、ビーム328a及び328bの各々は、404a及び404bで概略的に示されている平面波面を有するコヒーレント放射を含むと想定される。ターゲット402の表面でのビーム間の干渉は、ターゲット402の表面にわたって強度の周期的又は反復的空間的変動を有する干渉パターンを作り出す。物理的には、2つの放射ビームは干渉して、空間的変動406として概略的に示されているエネルギーの空間的分布を有する電磁場を作り出す。図4(b)は、ターゲット402の表面を、空間的変動406によって形成された格子パターンの線とともに示す。図4(b)内の各影線は、例えば、間により低い強度の領域を有する電磁場内の高エネルギーの帯域を表す。高エネルギーの単純な帯域が示されるが、電磁場は、例えば、エネルギーにおける正弦波変動を有してもよいことが理解されるであろう。
[0052] 2つの格子放射ビームの間に一定の角度を有しながらそれらを干渉させることは、エネルギーの所望の空間的変動を有する電磁場を生成するための単純な方法である。原則として、任意の方法を用いてもよく、図11を参照しながら別の方法を以下に説明する。
[0053] 図5は、放射源装置300の動作中における5つの時点における種々の放射ビームと燃料材料との間の干渉の概略図である。これらの時点をt1〜t5と表示している。図5は、概して、それぞれの時点に対して、燃料小滴のストリームの方向であるX方向に沿ったそれぞれの配置での特定のターゲットのそれぞれの図を示していることが理解されるであろう。時間t1では、代表的な小滴502が燃料材料源71によって放出された。小滴502の移動方向が下向き矢印で示されている。プリパルス放射308は、小滴502に衝突する。時間t2では、小滴502は移動し続けて、プリパルス放射308によって引き起こされたより平坦な形状を採用し始める。燃料材料源71から出る次の小滴502’が示されており、これは実際の実施形態における放射源装置300の動作の反復性を示している。
[0054] 時間t3では、空間的変動406を有する格子放射328は、小滴502における燃料材料の表面に衝突する。図3及び図4に示す配置を有する放射源装置では、格子放射の干渉ビーム328a及び328bの向きは、電磁場における空間的変動406が、全体として図5の図面の平面への方向において周期的又は反復的となるように構成される。示されるように、軸は、純粋に図面で空間的変動406を見ることができるように局所的に回転されている。空間的変動が特定の方向であるための基本的な条件はないが、小滴502が格子放射の照射中にかなりの距離を移動した場合、高強度の帯域が移動方向と位置合わせされて格子パターンがターゲット上でぼやけないことが好都合となる場合がある。
[0055] 時間t4では、レーザ放射のメインパルス(第2放射304)がターゲット502に照射される。空間的変動406を有する電磁場の影響の下では、ターゲット502の材料の1つ以上の特性が、格子放射内の高強度部分に対応する配置504で変更される。変更は、以下に説明するように種々の形態を有することができる。一例における空間的変動する変更は、ターゲット材料の表面506内の電子ガスの密度の変化から生じる空間的変動する複素誘電関数(複素誘電率)を含む。この空間的変動する誘電関数は、材料の(複素)屈折率を決定し、メインレーザパルスの第2放射304とのターゲット材料の相互作用に影響を与える。この効果は、固体材料から成るターゲットにエッチングされる格子構造の効果と類似し得る。以下に説明する表面プラズモンポラリトンの生成を含むがそれに限定されない種々の効果の範囲により、表面の反射性は変更できることが知られている。言い換えると、液体燃料小滴の場合にターゲット上に格子構造をエッチングする可能性はないが、ターゲットにわたって適切なエネルギーの空間的分布を有する電磁場の提供はターゲットの光学特性を変更させる。
[0056] 時間t5では、第2放射304は、ターゲット502に所望の第1放射302を放出するプラズマ508を完全に又は部分的に形成させた。図2のリソグラフィ装置での使用のために、プラズマが、例えば、5〜20nmの周波数帯のEUV放射を放出するようにターゲット材料を選択することができる。第2放射の反射の減少及び吸収の増加を達成するためにターゲットの光学特性の空間的変動を調整することは、LPP放射源の変換効率を高めることを可能にする。空間的変動が周期的であるか、固定の空間周波数を有するか、又は単一の空間周波数のみを有するための基本的条件はない。
[0057] 図示及び説明の簡略化のため、放射源装置300の動作における種々のイベントが、個別の時点t1〜t5で起きるものとして示された。実際には、これらのいずれの時点が同時であるか、又は他の時点の1つ以上と重なっていてもよい。例えば、原理上、プリパルス放射308に又はプリパルス放射の前にでも空間的変動を与えることができる。しかし、実際には、適用された変更が、メインパルス放射304の照射の時点まで材料内で存続し続ける及び/又は所望のスペーシングを維持又は達成することを確実とするのは難しい場合がある。むしろ、時点t3、t4及び/又はt5を組み合わせるか又は重ねてもよい。例えば、格子放射328をメインパルス放射304と同時に照射するか、又は、メインパルス放射304の少し前に照射してメインパルス放射304中維持されるように時間が重なってもよい。原則として、プリパルス放射308は任意選択である。本開示による第3放射328の照射は、LPP源の分野で公知である様々な技術と組み合わせて用いてもよく、プリパルスの使用は、プラズマ生成及び効率を高めるために慣習的な手段である。
[0058] 上記の記述をまとめると、得られた電界強度が十分に大きい場合、第3放射によって生成される電界における空間的変動強度は、燃料材料の複素誘電関数(例えば、屈折率)の空間的変調へと繋がる。この変調は、様々なメカニズムを通じて生じ得る。そのような1つのメカニズムは、表面プラズモンポラリトンモードを起こすことであり、これは特定の幾何学的形状を要する。なぜなら、理論上、成功する適切な波動ベクトル値は1つしかないからである。表面プラズモンポラリトン波動ベクトルの数学的導出は、例えば、本明細書中に参考として組み込まれる、S.A.MaierによるMaier bookの「Plasmonics: Fundamentals and Applications」Springer Business & Science Media, LLC (2007)、第2.2節、第1〜3章に記載されている。実際には、これは、変調の空間的周期性、メインパルスの波長及びその入射角が、ターゲット材料の誘電特性と調整されてこの波長を正確に励起させなければならないことを意味する。図4に示す角度θの調整は、これを実現するための実用的な方法である。格子放射波長及び入射角の調整は別のメカニズムである。表面プラズモンポラリトン励起を達成するためのいつかの選択肢及び検討を図6及び図7に示している。
[0059] まず図6を参照すると、格子放射328及びメインパルス放射304が同じ波長を有する実施形態が考えられる。これは、例えば、プリパルス放射がメインパルス放射と同じ放射源から多くの場合導き出されるのと同じ方法で、同じ放射源から都合よく得られた結果であり得る。燃料材料の表面506に沿って周期的に間隔をおいて配置された変更504の格子パターンは、例えば、金属燃料材料内の電子ガスの密度を変更することによって確立される。格子パターンの周期性は、事実上、図面で示す期間pの逆数である波数(空間周波数値)によって表される。メインパルス放射304は、表面に沿ったメインパルス放射の波動ベクトル成分及び格子波数の合計が表面プラズモンポラリトン励起状態と一致するようにある角度で表面506に衝突する。矢印602で示すように、プラズモンは右へと伝搬する。
[0060] メインパルス放射と同じ波長の格子放射を用いると、当業者が作製できる最も短い格子周期は、半分の波長である(それは、せん断入射角でターゲット面に衝突する格子パルスを有する非実際的な場合)。その場合、格子空間的周期pが表面プラズモンポラリトン励起状態と一致するために、メインパルスは傾斜角αで入射する必要があり、その場合には、メインパルス自体がターゲット表面に沿って十分に大きい波動ベクトル成分を与えてプラズモンを励起させる。言い換えると、メイン放射の入射角は、表面プラズモンを励起させる要求によって制約される。
[0061] 図7は、格子放射がメインパルス放射より短い波長を有する場合に有効となるいくつかの変形例を示す。図7(a)を参照すると、格子放射の波長が十分に短い場合、法線入射メインパルス(α=0)とした場合、格子パターンは、表面プラズモンポラリトン励起状態と正確に一致する空間的周期pで作製することができる。このような構成では、矢印604,606で示される表面に沿った両方向にプラズモンを励起させることができる。
[0062] 図7(b)では、より大きい格子空間的周期(図6で示すものと同様)が、角度θをより小さい値に変更することによって得られる。図6と同じ方向にプラズモン608を励起させるために、メインパルス放射304に対して非法線入射角αが再度必要となる。より短い波長の格子放射を用いることにより、格子パルス間の角度θが小さくなる。これにより、放射源装置の構成要素のよりコンパクトな構成をもたらす。
[0063] 図7(c)では、格子放射は、より短い波長及びより広い角度θを有する。この場合、格子空間的周期は非常に短く、傾斜入射メインパルス304を用いると、表面プラズモンポラリトンは、図6及び図7(b)に示す方向と反対の方向610に励起することができる。短い格子空間的周期はそれ自体の回折を除去するため、この構成は望ましい場合がある。格子空間的周期pがN(Nは正の整数)で割られたメインパルス波長より短い場合、N次及び−N次の回折次数は存在できない。回折された放射は、反射した放射と同様に、EUV放射の吸収及び生成に有効な損失を表す。したがって、回折次数を除去することは、変換効率を上げるための別の方法である。
[0064] 図6及び図7で示す例が唯一可能なものではなく、本明細書中に開示された技術は、様々な配置で適用されてもよく、格子ピッチ及び空間的変動の他のパラメータを決定するのに余分な柔軟性をシステム設計者に与える。格子パルスがターゲット表面に対する法線の両側に対称的に配置されてない実施形態も挙げられる。光がより深く伝搬する燃料材料のミスト又は蒸気を含むターゲットの場合、当業者はターゲット表面の下で3−D関係を活用してもよい。ミストがターゲットである2つのビーム328a及び328bの場合、格子「線」は、ミストへとより深く延びて励起領域面のセットを形成することができる。これは、平面がメインパルス伝搬方向と平行であった場合にメインパルス放射304をミストへとさらに誘導できるという利点を有することができる。各座標x、y及びzに対して反対方向に伝搬する2つのビームを有することにより、ラチス(lattice)の3−D光等価物、いわゆる光ラチスを作製することもできる。この例は、Austrian Academy of Sciences, Innsbruck, Austriaによる「Optical Lattices and Mott insulator」に記載されている(https://www.uibk.ac.at/exphys/ultracold/projects/rubidium/mott#insulator/を参照)。励起/非励起燃料材料(全てのビームが建設的に干渉する場合は励起され、破壊的に干渉する場合は励起されない)から成る対応する3−Dラチスを作り出すために使用されるこのような3−D光ラチスは、フォトニック結晶のように作用し、光を捉えることもできる。3−Dラチスを形成するのに6つのレーザビームが必要である一方、4つのレーザビームでは2−Dラチスを形成することができる。2つのビームを使用する場合、かつこれらの2つのビームがミストへと十分に深く貫通することが想定されると、これは、上記で説明したような平面のセットである1Dラチスと等しい。
[0065] 図8、図9及び図10は、図5に示す種々のイベントの相対的タイミング(よって、X位置)に対するいくつかの異なる選択肢をかなりの略図で示す例示的タイミング図である。これらの各図では、3つのグラフが、プリパルス放射PP、格子放射GP及びメインパルスMPの相対的タイミングを示す。特定の縮尺通りではなく、共通の時間次元が各グラフの横軸に沿って示される。縦軸は原寸に比例しない。各グラフでは、時点t1、t3及びt4が表示され、燃料小滴502の処理中の図5で示される時点に対応する。図8では、時点t1’が示されており、次の燃料小滴502’を処理する次のパルスシーケンスの始まりを表す。
[0066] 図8では、コントローラ316によって実行されるタイミングは、図5で示されるものと事実上同じである。つまり、プリパルス放射、格子放射及びメインパルス放射のそれぞれは、t1、t3及びt14とそれぞれ表示される個別の時間間隔で到達する。この場合、格子放射の影響は、格子放射パルスの期間より長く残ることが想定されており、それによってターゲット特性の空間的変調は、メインパルスが時間t4に到達したときに残る。
[0067] 図9は、メインパルスが開始する時間t3の前からメインパルスの持続時間を通して延びる持続時間を格子放射が有する以外は、図8に示すものと同様である別のタイミングを示す。これによってターゲット特性の空間的変調がメインパルス周期中に持続することを確実にする。
[0068] 最後に、図10は、格子放射が連続的に有効的に存在してターゲット特性の空間的変調がインパルス周期中に持続することを確実にする実施形態を示す。これらのタイミングスキームに対する多数のバリエーションが可能であることが理解され、最適な性能を達成するために詳細な設計が必要となる。種々の空間的変動を有する格子放射の多数のビームを適用してもよい。例えば、プリパルス放射の照射に応答してターゲットが拡大する一方、連続的又は段階的に拡大する格子パターンを格子放射の適切な構成によってターゲットに適用してもよい。
[0069] 図11を参照すると、この図は、格子放射の2つ以上の干渉ビームを必ずしも使用することなくどのように空間的に変動する強度分布を作り出すことができるかを示す。図11(a)に示すように、格子放射928は、空間光変調器(SLM)934を用いて単一のレーザ930によって提供される放射源放射928’の単一のビームから生成される。図4のナンバリングに従うと、空間光変調器は、放射源放射928’の平面波面904を、ターゲットにわたって複数のピーク及び谷を有する任意選択のエネルギー分布を有する電磁場へと変換する。図面は、ターゲット材料小滴902に衝突する対応する空間的変動906を概略的に示す。当然ながら、フォーカス構成などの他の光学素子を設けてもよい。
[0070] 空間光変調器934は、固定型(つまり、不透明な部分又は位相シフト部分のパターンを有する反射型又は透過型デバイス)であってもよい。あるいは、SLM934は、プログラマブル、例えば、透過型液晶アレイ又は反射型マイクロミラーアレイであってもよい。どちらのタイプのSLMも実際に周知である。プログラマブルSLMを用いて第3放射の分布906を適宜変化させる可能性とは別に、SLMはより多くの任意のパターンが生成されることを可能にする。
[0071] 図11(b)では、図4(b)で示すものと同様に、単純な一次元格子パターンが形成される。図11(c)では、二次元格子パターンが別の例として示されている。多くの場合が当てはまるメインパルス放射が直線偏向であった場合、二次元格子パターンは実際にはあまり魅力的とならない。その場合、メインパルス放射の偏光方向に対して適切に方向づけられた一次元格子は、ターゲット材料へのメインパルス放射の結合を最適化することが期待され得る。ちなみに、このような二次元格子パターンは、ビーム328a及びビーム328bの一対と同様の多数の干渉ビームを用いて生成することができる。既に上記で述べたように、空間的に変動するピッチを有するパターン及び三次元パターンも定義することができる。一部の種類のパターンは、多重ビームの一対よりSLMを用いてより容易に定義することができる。
[0072] プログラマブルSLM934の場合、さらなる選択肢が可能である。SLM934は、例えば、第3放射レーザ930、メインパルスレーザ及びプリパルスレーザを制御する同じコントローラ916の制御の下にあってもよい。第1実施形態では、空間強度分布906の微調整は、例えば、変換効率のフィードバック、反射光などを用いてリアルタイムで実施することができる。例えば、格子ピッチは様々であってよい一方、当然ながらより精巧な調整を行ってもよい。格子パターンの焦点面は、SLMを用いて調整可能フォーカス構成を潜在的に消去しながら調整することができる。そのような例では、空間強度分布の変動は、一連のターゲットとの相互作用中に経時的に変調されて装置の性能を1つ以上のパラメータにおいて最適化することができる。
[0073] SLMが格子パターンを十分に短いタイムスケールで変更させた場合、当業者は、単一のターゲットとの相互作用中に経時的に第3放射の空間的変動を変調させるように装置を構成することもできる。格子生成パルスの通過中に投影されたパターンを変化させることにより、当業者は、例えば、強度分布をターゲット材料の展開する誘電関数に適合させることができる。この誘電関数は、加熱、蒸発及びプラズマ形成によって経時的に変化する。結果的に、適用された強度分布の効果は変動し、固定強度分布は常に最適ではない。望ましい場合、ターゲット材料におけるリアルタイムの誘発変化を測定し、これらの測定値を用いてSLMにフィードバックをするために追加のプローブレーザを設けてもよい。
[0074] 上記の例をまとめると、格子放射によって生成される電磁場における空間的に変化する強度分布は、ターゲットの材料の1つ以上の特性を空間的に変調するように設計される。励起が軽い場合、変調は、伝導帯電子の占有スペクトルにおける強度依存変化によって引き起こされ得る。励起がより活動的であった場合、材料の局所的プラズマ形成又はアブレーションがあり得る。予測される最終的な結果は、物理的(表面起伏を形成するプラズマのバンド又は又はそれを引き起こすアブレーション)又は電気的(空間で局所化された非熱的電子分布)な表面の一部の変調である。全ての場合において、ターゲットにわたる複素誘電関数の空間的変動という効果的な結果となる。必ずしもではないが一般的には、これはターゲットの効果的な屈折率の変動であり得る。なぜなら、屈折率は、単純に誘電関数(複素誘電率)によって決定された複素屈折率の実数成分であるからである。
[0075] 周期的に変動する屈折率を踏まえると、ターゲットの表面は格子のように働き得る。(格子放射ビームの入射角及びその波長によって決定される)この格子の周期性、メインパルスの入射角、その波長及びターゲットの誘電特性は互いに適切に調整された場合、表面で表面プラズモンポラリトンを励起させることが可能である。これらは、メインパルスからエネルギーをとる表面に沿って向けられた波動ベクトルを有する電荷密度の波である。これらの表面プラズモンポラリトンの励起は、そのエネルギーを材料に放散し、格子パルスが存在しない状況に対してメインパルスの全体的な吸収が増大するという実質的な結果となる。
[0076] 表面プラズモンポラリトンの励起は、金属ターゲット内の誘電関数の変更によって生じ得る唯一の吸収促進現象ではない。単一又は他との組み合わせにより多数の異なる現象が利用されてもよい。格子放射によって形成される空間周期的な比誘電関数は、メインパルスが正しい状況下で結合することができる導波管モードを確立することを可能にする。メインパルスから表面に沿って移動する導波管モードへのエネルギーの移動は、吸収の増大へと繋がり得る。なぜなら、電界は常に金属へと有限距離を通り抜け、それによってエネルギーを金属又はプラズマ内の電子へと移動させる。その後このエネルギーは、最終的に熱として放散されて所望の強化されたプラズマ生成に寄与する。
[0077] 図12は、非常に小さいフィーチャのメトロロジに利用できる検査装置の形態を概略的に示す。EUV検査装置1200は、基板W上に形成されたメトロロジターゲットTの特性を測定するために設けられる。ターゲットは、例えば、図2のリソグラフィ装置を用いてリソグラフィによって形成された構造であってよい。様々なハードウェアコンポーネントが概略的に示されており、本明細書中に参考として組み込まれた上記の米国特許出願公開第2016282282号明細書により詳細かつ様々な内容が記載されている。端的には、放射源1230は、放射を照明システム1232に提供する。本開示の原理に従うと、放射源1230は、図3〜図11のいずれを参照して上記した種類のLPP源である。
[0078] 照明システム1232は、ターゲットT上に合焦された照射スポットを形成する光線1204で表すEUV放射ビームを提供する。ターゲットT及び基板Wによって反射された放射は、検出器1213に衝突する前に種々の波長の交線のスペクトル1210に分割される。検出器1213は、例えば、CCD(電荷結合素子)イメージセンサであってよい。照明システム1232は、基準スペクトル1220を検出器1214にも提供する。構成部品1212、1213等は、便宜的に検出システム1233として考えられてもよい。
[0079] この例における基板Wは、光線1204の入射角αが調整されるように位置決めシステム1234を有する可動サポートに設置される。反射した光線1208を捉えるために、検出システム1233には、さらなる可動サポート1236が設けられており、それによって固定式の照明システムに対して角度2α又は基板に対して角度αを通じて移動する。放射のフォーカススポットSが配置される位置に各ターゲットTを運ぶためにさらなるアクチュエータが設けられる(図示せず)。
[0080] プロセッサ1240は、検出器1213及び1214から信号を受信する。特に、検出器1213からの信号STはターゲットスペクトルを表し、検出器1214からの信号SRは基準スペクトルを表す。プロセッサ1240は、基準スペクトルをターゲットスペクトルから減算して、放射源スペクトルの変動に対して正規化されたターゲットの反射スペクトルを含む。1つ以上の入射角に対する結果として生じる反射スペクトルは、ターゲットの特性の測定値、例えば、クリティカルディメンション(CD)又はオーバーレイを計算するためにプロセッサで使用される。
[0081] 本発明の態様は、以下の条項を参照して以下に説明される。
[0082] 条項1:第1周波数帯における第1放射を生成する方法であって、第2周波数帯における第2放射はターゲットに誘導されて前記第1放射の生成を引き起こし、前記方法は、前記第2放射の送出の前及び/又はその間に第3放射を前記ターゲットに送出することをさらに含み、前記第3放射は、前記ターゲットにわたって多数のピーク及び谷を含むエネルギーの空間的分布を有する電磁場を生成して前記ターゲットの特性に対応する空間的変動を引き起こす、方法。
[0083] 条項2:前記エネルギーの空間的分布は、1つ以上の方向において周期的である、条項1に記載の方法。
[0084] 条項3:前記ターゲットの前記特性における前記空間的変動は、前記ターゲットにわたって有効屈折率における変動を含む、条項1又は2に記載の方法。
[0085] 条項4:前記ターゲットの前記特性における前記変動は、前記ターゲットにわたって前記ターゲットの燃料材料内の電子ガスの誘電関数における変動を含む、条項1〜3のいずれかに記載の方法。
[0086] 条項5:前記ターゲットの前記特性における前記変動は、前記ターゲットにわたって前記ターゲットの燃料材料の密度における変動を含む、条項1〜4のいずれかに記載の方法。
[0087] 条項6:前記燃料材料の前記密度における前記変動は、前記ターゲットにわたる箇所で前記燃料材料のアブレーションから少なくとも部分的に生じる、条項5に記載の方法。
[0088] 条項7:前記ターゲットは、前記第3放射が送出されるときに液体金属小滴を含む、条項1〜6のいずれかに記載の方法。
[0089] 条項8:前記ターゲットは、前記第3放射が送出されるときに液体金属のミストを少なくとも部分的に含む、条項1〜7のいずれかに記載の方法。
[0090] 条項9:前記ターゲットは、前記第3放射との相互作用の後にプラズマを少なくとも部分的に含む、条項1〜8のいずれかに記載の方法。
[0091] 条項10:燃料材料のある特定の量は、プリパルス放射で照射されて前記第3放射の送出の前に前記ターゲットを形成する、条項1〜9のいずれかに記載の方法。
[0092] 条項11:前記燃料材料は、前記プリパルス放射が送出されるときに液体金属小滴の形態を有する、条項10に記載の方法。
[0093] 条項12:前記ターゲットは、前記第3放射が送出されるときに燃料材料の平坦な小滴又は白雲を含む、条項11に記載の方法。
[0094] 条項13:前記ターゲットにわたって前記エネルギーの空間的分布を有する前記電磁場は、前記第3放射の2つ以上のビームを干渉させることによって生成される、条項1〜12のいずれかに記載の装置。
[0095] 条項14:前記ターゲットにわたって前記エネルギーの空間的分布を有する前記電磁場は、前記第3放射の1つ以上のビームによる空間光変調器との相互作用によって生成される、条項1〜13のいずれかに記載の方法。
[0096] 条項15:前記電磁場の前記エネルギーの空間的分布は、1つのターゲットとの相互作用中に経時的に変調される、条項1〜14のいずれかに記載の方法。
[0097] 条項16:前記電磁場の前記エネルギーの空間的分布は、一連のターゲットとの相互作用中に経時的に変調されて前記放射源の性能を1つ以上のパラメータにおいて最適化する、条項1〜15のいずれかに記載の方法。
[0098] 条項17:前記ターゲットの前記特性における前記空間的変動は、前記第2放射の所与の波長、偏光及び入射角に対して、前記ターゲット内の燃料材料表面の表面プラズモンポラリトン励起状態に調整される、条項1〜16のいずれかに記載の方法。
[0099] 条項18:前記第2放射の前記入射角は、前記燃料材料表面に対して垂直である、条項17に記載の方法。
[0100] 条項19:前記第3放射は、前記第2放射の波長より短い波長を有する、条項1〜18のいずれかに記載の方法。
[0101] 条項20:前記第2放射は約10ミクロンの波長を有し、前記第3放射は2ミクロンより小さい波長を有する、条項19に記載の方法。
[0102] 条項21:前記第1放射は1nm〜100nmの範囲の波長を有する、条項1〜20のいずれかに記載の方法。
[0103] 条項22:前記第1放射は5nm〜20nmの範囲の波長を有する、条項21に記載の方法。
[0104] 条項23:デバイスを製造する方法であって、パターンは、条項1〜22のいずれかに記載の方法によって生成された第1波長の放射を用いて基板に適用される、デバイスを製造する方法。
[0105] 条項24:構造の特性を決定する方法であって、前記構造は、条項1〜22のいずれかに記載の方法によって生成された第1波長の放射を用いて照明され、前記構造との相互作用の後に前記放射は集められる、構造の特性を決定する方法。
結論
[0106] 結論として、本開示は、EUV放射又は所望の波長を有する他の放射が、反射及び吸収特性の改善された制御用いてプラズマから生成することができる放射源装置及び方法を提供する。効率性を改善することができ、及び/又はレーザ装置へと再び反射する問題を回避又は軽減することができる。改善された放射源装置は、リソグラフィ装置、検査装置又は第1波長帯の放射を用いる任意の光学装置に含まれてもよい。特定の商業用途に関しては、EUV放射は、改善された効率性、例えば5〜20nmの範囲で生成することができる。
[0107] 本明細書で使用される「光」、「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)(例えば、365nm〜126nmの波長又はおよそこれらの値の波長を有する)、及び極端紫外線(EUV)(例えば、1〜100nm又は5〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。リソグラフィ装置及び検査装置はこれらのあらゆる波長並びにイオンビームや電子ビームなどの微粒子ビームを使用することができる。
[0108] 「レンズ」という用語は、文脈によっては、屈折、反射、磁気、電磁気、及び静電型光コンポーネントを含む様々な種類の光コンポーネントのいずれか1つ又はこれらの組合せを指すことができる。
[0109] 本発明の広さ及び範囲は、上述したいずれの例示的実施形態によっても限定されず、唯一添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物によってのみ定義されるものとする。