以下、複数の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。第1実施形態では、モジュール化した構成とモジュール化の基本的な考え方について説明する。図1に示すように、車両用装置1は、メイン基板2と、そのメイン基板2に接続されるモジュール3とを備えている。なお、図1では1つのモジュール3を示しているが、メイン基板2に複数のモジュール3を接続する構成とすることもできる。
メイン基板2は、詳細は後述するが、車両用装置1を制御する主体となる制御部4、記憶部5、音声処理部6、および電源回路7などを備えている。制御部4は、図示しないCPU等を備えたマイクロコンピュータで構成されており、記憶部5に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、車両用装置1の全体を制御する。
また、制御部4は、モジュール3を制御する。本実施形態の場合、モジュール3は、後述するように国ごとによって異なる周波数のラジオ放送を受信するもの、つまりは、車両用装置1の製品モデルによって異なる無線放送を受信するものである。この製品モデルは、例えば国や地域など、車両用装置1の仕向け先によって異なっている。
そのため、制御部4には、ラジオ放送の受信や周波数の切り替えなどを制御するためのラジオアプリ8が設けられている。このラジオアプリ8は、ラジオ放送を受信する際のHuman Machine Interfaceを構成する。以下、Human Machine InterfaceをHMIと称する。本実施形態の場合、ラジオアプリ8は、想定される製品モデルの全てに対応したものとして設けられている。つまり、製品モデルによってラジオアプリ8を変更する必要は無く、接続されたモジュール3に応じて例えば記憶部5に記憶されている国ごとあるいは地域ごとのHMIのうち、に応じたHMIを選択する。
記憶部5は、例えばembedded Multi Media Cardのような不揮発性のメモリによって構成されており、制御部4で実行されるコンピュータプログラムなどの各種のデータを記憶している。以下、embedded Multi Media CardをeMMCと称する。
音声処理部6は、例えばデジタル信号処理プロセッサなどで構成されており、モジュール3側から送信された音声信号を処理する。モジュール側からは、I2SやSPIの形式で音声信号が送信される。音声処理部6は、音声信号を処理すると、スピーカ9に対して出力し、スピーカ9から音声が出力される。なお、制御部4がデジタル信号処理用のハードウェアを内蔵している場合や、制御部4で実行するソフトウェアより音声処理を行う場合などには、音声処理部6を制御部4に設ける構成とすることができる。
電源回路7は、車両に搭載されているバッテリ10に接続されており、メイン基板2に実装されている各デバイスに電源を供給する。また、電源回路7は、モジュール3にも電源を供給する。
また、メイン基板2には、モジュール3との間を電気的に接続するために、複数のスルーホール11が設けられている。これら複数のスルーホール11により、モジュール3を接続するための基板側接続部12が構成されている。この基板側接続部12には、モジュール3側に設けられているピンヘッダ13の各ピンが挿入およびはんだ付けされる。これにより、メイン基板2とモジュール3とが電気的に接続される。このピンヘッダ13は、モジュール側接続部に相当する。
このモジュール3には、モジュール側制御部14、モジュール側記憶部15、モジュール3内に電源を供給するモジュール側電源回路16、複数のチューナ17A〜17C、およびアンテナコネクタ18A〜18Bが実装されている。チューナ17は、いわゆるシリコンチューナのような金属シールド構造のものを採用することもできるが、複数のデバイスを用いて、いわゆるディスクリート回路で構成することもできる。なお、チューナ17の数は一例であり、これに限定されない。また、アンテナコネクタ18は、チューナ17と一体に形成されているものであってもよい。
モジュール側制御部14は、モジュール3に実装されているチューナ17の制御を行う。このモジュール側制御部14は、制御部4から送信された制御コマンドに基づいて、チューナ17の周波数の設定や変更を行う。このとき、制御部4から送信される制御コマンドは、チューナ17の種類に関わらず、共通の制御コマンドが用いられている。また、モジュール側制御部14は、車両用装置1の製品モデルによって異なるチューナ17の種類を制御部4に通知する。
このモジュール3からは、I2SやSPIなどの所定の信号形式で、音声信号を出力する。つまり、制御部4とモジュール側制御部14との間は、車両用装置1の製品モデルに関わらず、制御コマンドや音声信号などの電気的な接続態様においても、基板側接続部12とピンヘッダ13との物理的な接続態様においても、共通するインターフェースで接続されている。なお、チューナ17から直接的に音声信号を出力する構成とすることもできるし、モジュール側制御部14を経由して音声信号を出力する構成とすることもできる。
モジュール側記憶部15は、eMMCなどの不揮発性のメモリで構成されており、モジュール側制御部14が実行するコンピュータプログラムを記憶している。また、モジュール側記憶部15は、制御部4から行われたチューナ17の設定などを記憶する。モジュール側記憶部15は、国や地域によって違いはあるものの、アナログ方式であれば、例えばLast Frequency、Last Preset Number、Present Channel、AM放送のStation List、FM放送のStation Listなどを記憶する。また、モジュール側記憶部15は、アナログ方式であれば、例えば交通情報バンドや交通情報周波数などを記憶する。
チューナ17は、ラジオ放送を受信するためのものである。本実施形態の場合、チューナ17AはAM放送を受信するものであり、チューナ17BはFM放送を受信するものであり、チューナ17Cはデジタル放送を受信するものを想定している。このため、チューナ17Aおよびチューナ17Bは、アナログ葬式のラジオ放送を受信するための共通のアンテナ19Aに接続され、チューナ17Cはデジタル方式のラジオ放送を受信するためのアンテナ19Cに接続されている。ただし、チューナ17Cは、例えば日本やアメリカ合衆国などのデジタル方式のラジオ放送が実施されている国や地域ごとに実装されるか否かが選択される。
これらのチューナ17A〜17Cは、図2に示すように、製品モデルによって周波数が異なるラジオ放送を受信する。具体的には、図2にJPとして示す日本向けであれば、受信すべきFM放送の周波数範囲がF0〜F1(MHz)、チューニング時のステップ幅がSF0(kHz)であり、受信すべきAM放送の周波数範囲がF2〜F3(kHz)、チューニング時のステップ幅がSA0(kHz)のようになっている。
また、図2にEPとして示す欧州向けであれば、受信すべきFM放送の周波数範囲がF10〜F11(MHz)、チューニング時のステップ幅がSF10(kHz)であり、受信すべきAM放送の周波数範囲がF12〜F13(kHz)、チューニング時のステップ幅がSA10(kHz)のようになっている。
また、図2にUSとして示すアメリカ合衆国向けであれば、受信すべきFM放送の周波数範囲がF20〜F21(MHz)、チューニング時のステップ幅がSF20(kHz)であり、受信すべきAM放送の周波数範囲がF22〜F23(kHz)、チューニング時のステップ幅がSA20(kHz)のようになっている。
また、図2にCNとして示す中華人民共和国向けであれば、受信すべきFM放送の周波数範囲がF30〜F31(MHz)、チューニング時のステップ幅がSF30(kHz)であり、受信すべきAM放送の周波数範囲がF32〜F33(kHz)、チューニング時のステップ幅がSA30(kHz)のようになっている。
このモジュール3が接続されるメイン基板2は、図3に示すように、例えばメータディスプレイ20やセンターディスプレイ21などの表示器に接続されている。これらの表示器には、後述するように、車両の状態に関する情報や走行に必要となる情報、あるいはナビゲーション画面26やメニュー画面27などの情報を表示するために設けられている。また、車両用装置1は、ナビゲーション時の案内音声の出力や音楽の再生あるいはラジオ放送の音声の出力などを行うスピーカ9に接続されている。この車両用装置1は、各種の情報をユーザに提示するいわゆる車両インフォテイメントを実現するコックピットシステムを構成している。
メータディスプレイ20は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成されており、図4に示すように、運転者の正面付近に位置するメータパネル22に設けられている。本実施形態の場合、メータパネル22全体が表示器で構成されてメータディスプレイ20となっており、速度計23や回転数計24あるいは複数の警告灯25などがフルグラフィック表示される構成となっている。なお、メータパネル22の例えば中央部分にメータディスプレイ20を設け、速度計23や回転数計24および各種の警告灯25などを別途設ける構成とすることもできる。
このメータディスプレイ20には、例えば速度や警告あるいは法規により定められている情報、燃料の残量やシートベルト装着の有無など、車両の状態に関する情報や車両の走行あるいは安全に関する情報が主として表示される。以下、これらの情報を便宜的に制御系の情報と称する。また、メータディスプレイ20には、車両用装置1を起動する際の起動メッセージ、および、車両用装置1を停止させる際の停止メッセージも表示される。
センターディスプレイ21は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成されており、いわゆるセンターコンソール付近に設けられている。このセンターディスプレイ21には、図5に示すように、例えばナビゲーション画面26やメニュー画面27などが表示される。また、センターディスプレイ21は、テレビ放送や再生している楽曲の情報などを表示することもできる。つまり、センターディスプレイ21には、主として、ナビゲーション画面26やメニュー画面27等、いわゆるマルチメディア系の情報が表示される。
このように、車両用装置1は、車両の状態に関する情報を表示する機能部とマルチメディア系の情報を表示する機能部とを含む複数の機能部が統合され、各種の情報をユーザに対して視覚的あるいは聴覚的に提示可能な統合型のものとなっている。
また、車両用装置1では、メータディスプレイ20およびセンターディスプレイ21は、互いにシームレスな表示が可能となっている。そのため、例えばナビゲーション画面26をメータディスプレイ20に表示したり、速度をセンターディスプレイ21に表示したりすることができる。ただし、車両用装置1に接続される表示器の数や配置あるいは種類は一例であり、これらに限定されない。
制御部4は、図示しないCPU等を有するいわゆるマイクロコンピュータで構成されている。この制御部4は、eMMCなどの不揮発性メモリなどで構成された記憶部5に記憶されているプログラムを実行することにより車両用装置1の全体を制御する。また、記憶部5には、国ごとあるいは地域ごとに異なるラジオ放送を受信するための複数のHMIが記憶されている。
本実施形態の場合、制御部4は、図6に示すように、例えば2つのオペレーティングシステム28が動作する仮想化環境が構築されている。つまり、車両用装置1では、1つのハードウェア上で複数のシステムが動作している。以下、オペレーティングシステム28をOS28と称する。本実施形態では、OS28AおよびOS28Bは、OS28Aが機能として備えるハイパーバイザ29上で動作している。ただし、ハイパーバイザ29を個別に設け、そのハイパーバイザ29上でOS28AおよびOS28Bを動作させる構成とすることもできる。
OS28Aは、いわゆるリアルタイムOSであり、OS28Bに比べてリアルタイム性が要求される処理、例えば、車両の走行あるいは安全に関係する処理などを主に実行する機能部が設けられている。このようなリアルタイムOSは、一般的に、OS28A自体に不具合が起きにくく、また、アプリケーションの実行時間などを予測あるいは制限できる等、汎用OSに比べて相対的に安定性が高いと考えることができる。
OS28Bは、いわゆる汎用OSであり、OS28Aに比べるとリアルタイム性能は相対的に低いものの、マルチメディア機能のような汎用的な処理を容易に実行できるというメリットがある。そして、制御部4は、それぞれのOS28上で各種のアプリケーションを実行することにより、各種の機能部を制御している。
制御部4が備える機能部としては、例えばメータディスプレイ20に制御系の情報を表示するメータアプリ30、ラジオ放送を視聴するラジオアプリ8、センターディスプレイ21にナビゲーション画面26を表示するナビアプリ31、メニュー画面27を表示するメニューアプリ32、および外部の装置と通信する通信アプリ33などがある。これらの機能部は、制御部4上で実行されるプログラムによってソフトウェアで実現されている。なお、図6に示す機能部の数や種類は一例であり、これらに限定されない。
メータディスプレイ20に表示される制御系の情報は、車両の走行や安全に関するものであることから、迅速な表示と、適切な更新とが求められる。そのため、メータアプリ30は、より安定性の高いOS28A上に設けられている。メータアプリ30が描画する情報は、図3に示すように、メータ表示回路34を経由して、例えばLVDS形式の描画データとしてメータディスプレイ20に送信される。また、メータアプリ30は、バッテリ10から供給される電源電圧が低下した場合に動作を維持する必要性がある機能部であると言える。
このメータアプリ30は、車両用装置1の起動時には、車両用装置1の起動を示す起動メッセージおよび起動画像の少なくとも一方を描画する。また、メータアプリ30は、車両用装置1の停止時には、車両用装置1の停止を示す停止メッセージおよび停止画像のうち少なくとも一方を描画する。なお、起動メッセージや起動画像、あるいは停止メッセージや停止画像は、静止画、動画あるいはアニメーションなどにより描画される。
一方、例えばラジオ放送の視聴やナビゲーション画面26あるいはメニュー画面27の表示は、制御系の情報に比べるとリアルタイム性をそれほど必要としないとともに、画像や映像あるいは楽曲や案内音声などマルチメディア系の情報である。そのため、ナビアプリ31およびメニューアプリ32は、OS28B上に実装されている。
これらナビアプリ31およびメニューアプリ32が表示する情報は、センター表示回路35を経由して例えばLVDS形式の描画データとしてセンターディスプレイ21に送信される。また、楽曲や案内音声は、オーディオアンプ36を経由して音声信号としてスピーカ9に出力されて再生される。また、ナビアプリ31およびメニューアプリ32は、バッテリ10から供給される電源電圧が低下した場合に動作を維持する必要性が、上記したメータアプリ30に比べると相対的に低い機能部であると言える。
また、外部の装置と通信する通信アプリ33は、様々な装置に接続されることが想定されることから、汎用的な処理を行うためにOS28Bに実装されている。この通信アプリ33は、例えばUSBやWi−FiあるいはBluetooth(登録商標)などの通信方式により、例えばユーザが所有する携帯端末や記憶装置などの外部の装置と通信する。
本実施形態では、上記の通信方式を実現するためのデバイス類は、メイン基板2に接続される通信モジュール37としてモジュール化されている。この場合、例えばWi−Fiで利用可能な周波数帯域は、国や地域によって異なるものの、モジュール化することにより、通信モジュール37を取り換えることにより、モジュール3と同様に国や地域によって異なる仕様に対応することが可能になる。なお、他の通信方式を採用したり、複数の通信方式を採用したりする構成とすることができる。
この車両用装置1は、バッテリ10から電源が供給される。より詳細には、車両用装置1には、図3に示すように、バッテリ10にヒューズ38を経由して接続される経路と、イグニッションに連動したスイッチ39を経由して接続される経路とから電源が供給される。以下、バッテリ10からヒューズ38を経由して供給される電源を+Bと称し、スイッチ39を経由して供給される電源をIGと称する。なお、図3では、説明のために+BおよびIGを相対的に太い実線にて示している。
さて、車両用装置1には、エンジン始動時のクランキングによってバッテリ10からの電圧が一時的に低下した場合であっても動作を維持したい制御系の機能部と、動作を維持する必要性が相対的に低いマルチメディア系の機能部とが混在している。以下、マルチメディア系の機能部を、便宜的にMM系の機能部と称する。
制御系の機能部は、制御部4、記憶部5、メータ表示回路34などのデバイスを利用して動作する。以下、制御系の機能部によって利用されるデバイスを、便宜的に制御系デバイス40と称する。一方、MM系の機能部は、センター表示回路35、オーディオアンプ36などのデバイスやあるいは通信モジュール37を利用して動作する。以下、MM系の機能部によって利用されるデバイスを、便宜的にMM系デバイス41と称する。
制御系デバイス40には、第1電源回路7Aから電源が供給される。この第1電源回路7Aは、バッテリ10から供給される電源電圧に電圧低下が起きた場合であっても制御系デバイス40に電源が供給可能となるように、低電圧対応の回路構成となっている。より詳細には、第1電源回路7Aは、電源の供給が可能になる最低動作電圧が、クランキング時に想定される電圧の下限値よりも低く設定されている。
この第1電源回路7Aには、IGおよび+Bが、それぞれダイオード42を介してワイヤードORで入力されている。そのため、例えば車両の輸送時などにおいて暗電流を低減するためにヒューズ38を外した場合であっても、スイッチ39をオン操作することにより、第1電源回路7Aから制御系デバイス40に対して電源の供給が可能になる。このため、メータディスプレイ20への表示などが可能になる。また、第1電源回路7A、低電圧に対応しているため、クランキング時に電圧低下が起きた場合であっても、制御系デバイス40が正常に動作できるだけの電源を供給することができる。
一方、MM系デバイス41は、第2電源回路7Bから電源が供給される。この第2電源回路7Bは、最低動作電圧がバッテリ10の定格電圧よりも低く設定されているものの、第1電源回路7Aのような低電圧に対応した回路構成にはなっていない。そのため、バッテリ10からの電源電圧に大きな電圧低下が生じた場合には、MM系デバイス41への電源の供給が不安定になる可能性がある。この第2電源回路7Bには、+Bが入力されている。
これら第1電源回路7Aおよび第2電源回路7Bは、電源制御部43によって制御されている。この電源制御部43は、常時通電されており、通常はスリープ状態となっている。そして、電源制御部43は、CAN回線44を介して接続されている外部のECU45から車両用装置1を起動するための起動信号が入力されると起動して、各電源回路の制御を開始する。本実施形態では、起動信号として、車両のドアが開放されたことを示す信号を採用している。
この電源制御部43には、電圧検知回路46による電源電圧の検知結果も入力されている。電圧検知回路46は、例えばヒステリシス付きのコンパレータで構成されており、電源電圧と所定の基準電圧とを比較する。そして、電圧検知回路46は、電源電圧が基準電圧を下回っていればLレベルの信号を検知結果として出力し、電源電圧が基準電圧以上であればHレベルの信号を検知結果として出力する。
そして、電源制御部43は、電圧検知回路46の検知結果に基づいて、第1電源回路7Aと第2電源回路7Bを制御する。例えば、電源制御部43は、クランキングによりバッテリ10からの電圧が低下した場合には第1電源回路7Aのみを動作させ、バッテリ10の電圧が通常電圧であれば第1電源回路7Aと第2電源回路7Bの双方を動作させるといった制御を行っている。
また、メイン基板2には、外部の装置などと接続するための複数個や複数種類のコネクタで構成される外部コネクタ47が設けられている。なお、図3には、説明の簡略化のために、複数のコネクタを便宜的に1つの外部コネクタ47で示している。
次に、上記した構成の作用について説明する。
ラジオ放送は、上記したように受信する周波数範囲やステップ幅が国ごとあるいは地域ごとに異なっている。ただし、ラジオ放送を受信するハードウェア部分をモジュール化した場合には、メインの基板側でチューナ17を制御する必要がある。
その結果、せっかくモジュール化したにも関わらず、チューナ17に併せてメイン基板側のソフトウェアを変更したり、チューナ17のピンアサインに併せて異なるメインの基板を用意したりする必要があり、モジュール化したものを単に取り換えるだけでは仕様を変更することができず、モジュール化のメリットを有効に活用することができなかった。そこで、本実施形態では、以下のようにしてモジュール化のメリットを有効に活用できるようにしている。
まず、製品モデルによって仕様が異なるラジオ放送を受信する場合、それぞれの仕様に応じたHMIを用意する必要がある。そのため、車両用装置1は、記憶部5に、国ごとあるいは地域ごとのHMIを記憶している。
そして、モジュール3には、ラジオ放送を受信するためのデバイスとしてのチューナ17に加えて、それらのチューナ17を制御するモジュール側制御部14を設けている。つまり、本実施形態のモジュール3は、モジュール3側でラジオ放送を受信するためのチューナ17の制御を行えるようにしている。
このモジュール側制御部14は、制御部4から送信された制御コマンドに基づいて、チューナ17の周波数の設定や変更を行う。このとき、制御部4から送信される制御コマンドは、チューナ17の種類に関わらず、共通の制御コマンドが用いられている。これは、ラジオ放送を受信する場合には、例えば周波数を上げるチューンアップや周波数を下げるチューンダウンの操作など、国や地域によらず共通する態様で所望のラジオ放送を選択したりすることができるためである。
つまり、ラジオ放送を受信する場合には、例えばチューンアップするという制御コマンドを送信すれば、実際に使用されるチューナ17に関わらず、同じ動作をさせることができる。換言すると、ラジオ放送を受信する場合には、周波数の設定や変更を行うために実際に使用されるコマンドを、抽象化した制御コマンドに置き換えることが可能となり、国や地域によらず共通の制御コマンドを用いることができるようになる。なお、次のチャンネルへスキップしたり、お気に入りの放送を登録したりすることなどについても同様に、共通の操作態様で行うことができる。
また、ラジオ放送を受信する場合、受信結果としては、国や地域によらず、音声信号が得られることになる。換言すると、ラジオ放送を受信する機能をモジュール化した場合、モジュール側からは、音声信号という共通の出力が行われることになる。そして、音声信号は、上記したI2SやSPIなどの物理的および電気的に仕様が決まっている形式で出力することができる。
そして、制御コマンドが共通化できれば、メイン基板2側とモジュール3側との間で制御コマンドを送受信するための信号ピンの数や配置を固定することができる。また、音声信号は、上記したように仕様が決まっている形式で出力することができるため、メイン基板2側とモジュール3側との間で音声信号を送受信するための信号ピンの数や配置を固定することができる。
このように、モジュール3は、モジュール側制御部14が設けられ、チューナ17の実際の制御をモジュール3内で行うことができるようにしている。つまり、ラジオ放送を受信する機能部を、その機能部つまりはチューナ17の制御機能ごとモジュール化している。これにより、メイン基板2とモジュール3との間は、電気的な接続態様においても物理的な接続態様においてもインターフェースを共通化することができる。これにより、モジュール3を単に取り換えるだけ、国ごとあるいは地域ごとに異なるラジオ放送の仕様に対応することが可能になる。
ところで、モジュール3を取り換えた場合、メイン基板2側において何かしらの変更を加えなければならないと、モジュール化のメリットが薄れてしまう。そのため、モジュール側制御部14は、製品モデルを示す情報を制御部4に通知する。具体的には、モジュール側制御部14は、図7に示す処理を実行し、電源が供給されて起動すると、ステップS1において、制御部4に情報を通知する。
このとき通知される情報としては、製品モデルを特定可能な情報であればよく、例えば出荷先の国や地域に応じた車両パラメータをモジュール側記憶部15に記憶しておき、起動時に車両パラメータを読み出して制御部4に通知することができる。
そして、モジュール側制御部14は、ステップS2において、制御部4から制御コマンドを受信したかを判定し、受信していないと判定した場合には、ステップS2においてNOとなることから、制御コマンドの受信を待機する。一方、モジュール側制御部14は、制御コマンドを受信したと判定した場合には、受信していないと判定した場合には、ステップS2においてYESとなることから、ステップS3において受信した制御コマンドに対応した処理を実行する。
続いて、モジュール側制御部14は、ステップS4において、処理を実行したことによって何らかの設定を変更したかを判定し、設定を変更していないと判定した場合には、ステップS4においてNOとなることから、ステップS1に移行して制御コマンドを待機する。
これに対して、モジュール側制御部14は、設定を変更したと判定した場合には、ステップS4においてYESとなることから、ステップS5において、変更した設定をモジュール側記憶部15に記憶する。これにより、例えば周波数が変更された後に電源が切られた場合であっても、次回の動作時にその設定を読み出すことにより、ユーザの操作を必要とすることなく、チャンネルを最後に視聴した放送に併せることなどができる。
このように、本実施形態のモジュール3は、モジュール側制御部14を備えることにより、モジュール3側でチューナ17の実際の制御を可能とすることにより、電気的および物理的に共通のインターフェースでメイン基板2と接続され、共通の制御コマンドで制御されるとともに、音声信号を共通の出力態様で出力している。
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
モジュール3は、制御部4が実装されているメイン基板2に接続される車両用装置1用のものであって、ラジオ放送を受信するための少なくとも1つ以上のチューナ17と、チューナ17を制御するモジュール側制御部14と、メイン基板2との間を電気的に接続するモジュール側接続部としてのピンヘッダ13を備えている。
そして、チューナ17は、車両用装置1の製品モデルによって仕様が異なるものが実装され、ピンヘッダ13は、チューナ17の仕様に関わらず、電気的および物理的に共通のインターフェースでメイン基板2との間を接続し、モジュール側制御部14は、チューナ17の仕様に関わらず共通の制御コマンドをメイン基板2側から受信することによってチューナ17を制御する。
これにより、ラジオ放送を受信するハードウェア部分であるチューナ17のみをモジュール化した場合とは異なり、チューナ17の制御をモジュール3側で行うことが可能になる。そのため、メイン基板2側からは、抽象化した制御コマンドを用いて実質的にチューナ17を制御することができ、チューナ17に併せてメイン基板2側のソフトウェアを変更したり、チューナ17のピンアサインに併せて異なるメイン基板2を用意したりする必要がなくなる。したがって、モジュール化のメリットを有効に活用することができる。
モジュール3は、チューナ17の仕様に関わらず共通の出力態様でメイン基板2側に音声信号を出力する。これにより、制御コマンドだけでなく、音声信号についてもインターフェースを共通化することができる。
モジュール3は、不揮発性のモジュール側記憶部15を備え、モジュール側制御部14は、チューナ17の設定をモジュール側記憶部15に記憶する。これにより、車両用装置1の電源が切られてモジュール3が動作を停止しても、次回の動作時にその設定を読み出すことができ、ユーザの操作を必要とすることなく例えば最後に視聴していたチャンネルを視聴することができるなど、利便性を向上させることができる。
モジュール側制御部14は、製品モデルを示す情報をメイン基板2側に通知する。これにより、モジュール3と接続して電源を入れることにより、メイン基板2側の制御部4は、モジュール3の製品モデルを把握することができる。したがって、接続されるモジュール3ごとに制御部4側のソフトウェアの変更をする必要がなく、モジュール化のメリットを有効に活用することができる。この場合、実施形態のように製品モデルに応じたHMIを記憶部5に記憶しておくことにより、自動的に適切なHMIが選択することが可能となり、利便性をさらに向上させることができる。
また、接続用のインターフェースを共通化するとともにモジュール側制御部14を設けたことにより、例えば試験装置に接続して制御コマンドを出力することなどにより、モジュール3単体としてのテストを、メイン基板2に実装しなくても行うことができるようになる。これにより、モジュール3を例えば外注する際、メイン基板2側の仕様やソフトウェアを公開しなくてもテストを行うことができるとともに、例えばソフトウェアのライセンスなどを含めて、自社と外注先との知的財産の区分けを適切に行うことができる。
車両用装置1は、車両用装置1を制御する主体となる制御部4と、制御部4が実装されているメイン基板2と、車両用装置1の製品モデルによって仕様が異なる機能部としてのチューナ17が実装されるモジュール3と、を備えている。そして、モジュール3は、当該モジュール3に実装される機能部を制御するモジュール側制御部14が実装されており、メイン基板2とモジュール3とは、機能部の仕様に関わらず共通のインターフェースで接続されており、モジュール側制御部14は、機能部の仕様に関わらず共通の制御コマンドを制御部4から受信することによって機能部を動作させる。
このような車両用装置1によっても、ラジオ放送を受信するハードウェア部分であるチューナ17をモジュール化した場合とは異なり、チューナ17の制御をモジュール3側で行うことが可能になる。そのため、メイン基板2側からは、抽象化した制御コマンドを用いて実質的にチューナ17を制御することができ、チューナ17に併せてメイン基板2側のソフトウェアを変更したり、チューナ17のピンアサインに併せて異なるメイン基板2を用意したりする必要がなくなる。したがって、モジュール化のメリットを有効に活用することができる。
車両用装置1は、モジュール3には、機能部としてのチューナ17が少なくとも1つ以上実装されている。これにより、例えばアナログ方式のラジオ放送やデジタル方式のラジオ放送などの複数の機能をモジュール化することができる。
車両用装置1は、モジュール3には、機能部の設定を記憶する不揮発性のモジュール側記憶部15が設けられている。これにより、車両用装置1の電源が切られてモジュール3が動作を停止しても、次回の動作時にその設定を読み出すことができ、ユーザの操作を必要とすることなく例えば最後に視聴していたチャンネルを視聴することができるなど、利便性を向上させることができる。
車両用装置1は、メイン基板2には、複数のモジュール3や通信モジュール37が接続される。これにより、例えばラジオ放送の周波数帯やWi−Fiで利用可能な周波数帯域などの国や地域によって異なる仕様に柔軟に対応することができる。
車両用装置1は、モジュール3には、機能部として、ラジオ放送を受信するための少なくとも1つ以上のチューナ17が実装されており、チューナ17は、車両用装置1の製品モデルによって仕様が異なるものが実装されている。そして、モジュール側接続部としてのピンヘッダ13は、チューナ17の仕様に関わらず、電気的および物理的に共通のインターフェースでメイン基板2との間を接続し、モジュール側制御部14は、チューナ17の仕様に関わらず、抽象化された共通の制御コマンドをメイン基板側から受信することによってチューナ17を制御する。
これにより、チューナ17に対して周波数の設定や変更を行うために実際に使用されるコマンドの代わりに、抽象化した制御コマンドに置き換えることが可能となり、国や地域によらず共通の制御コマンドを用いることができるようになる。すなわち、モジュール3を取り換えた場合であっても、制御部4側のソフトウェアの変更が不要となる。
車両用装置1では、モジュール3は、チューナ17の仕様に関わらず共通の出力態様で音声出力する。つまり、車両用装置1では、制御コマンドだけでなく、チューナ17から得られる音声信号についても、共通するインターフェースで取得する。これにより、配線パターンを共通化することが可能となり、インターフェースを共通化することができる。
車両用装置1は、モジュール3には、受信方式が異なる複数のチューナ17が設けられている。これにより、例えばアナログ方式であればFM放送とAM放送を受信でき、さらにはデジタル方式のラジオ放送を受信できるなど、国や地域への対応がより容易になる。
車両用装置1は、車両に搭載されているバッテリ10に電圧低下が生じた場合であっても電源供給が可能に構成されている低電圧対応の第1電源回路7Aと、第1電源回路7Aよりも最低動作電圧が高く設定されている第2電源回路7Bとを備え、制御部4は、第1電源回路7Aから電源が供給され、モジュール3は、第2電源回路7Bから電源が供給される。
これにより、制御系の機能部を制御する制御部4については電圧が低下したときにも動作させることができる。一方、モジュール3については電圧が低下した時に電力が不足しないように動作を停止させることができる。したがって、電圧が低下した場合であっても制御系つまりは車両の走行や安全に関わると想定される警告灯25などの表示を継続することができる。
実施形態では、モジュール3にはアナログ方式のラジオ放送を受信するチューナ17A、17Bとデジタル方式のラジオ放送を受信するチューナ17Cとをモジュール3にともに実装する例を示したが、アナログ方式の受信方式とデジタル方式の受信方式とで別々にモジュール化する構成とすることができる。これにより、互いのノイズの影響などを抑制することができる。なお、ラジオ放送を受信する機能部に限らず、実施形態のようにラジオ放送を受信する機能部を設けたモジュール3と、USBなどのデジタル通信を行う機能部を設けた通信モジュール37のように別々にモジュール化することもできる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、車両用装置1において重要な要件であるメイン基板2とモジュール3との接続態様について説明する。なお、車両用装置1の構成については第1実施形態と共通する。
図8に示すように車両用装置1は、概ね直方体状の筐体50内に、メイン基板2、モジュール3および通信モジュール37を収容している。
筐体50の背板50Aには、メイン基板2の外部コネクタ47を構成する複数の外部コネクタ47A〜47D、モジュール3のアンテナコネクタ18A〜18B、および通信モジュール37に設けられている通信コネクタ37Aが露出している。また、筐体50を正面から見た場合の左方となる左側板50Bには、複数の排気口51が形成されている。この排気口51は、筐体50内の空気を排出するための開口である。
この筐体50は、いわゆるDIN規格に基づいて設計されており、横幅にある程度の制限がある。そのため、図9に示すように、筐体50の内部には、メイン基板2とモジュール3および通信モジュール37が立体的に配置されている。具体的には、メイン基板2は、筐体50の底板50Cに平行する向きに取り付けられている。つまり、メイン基板2は、底板50Cに固定されている。
モジュール3は、メイン基板2の図示左方側の左端部において、メイン基板2から立ち上がる状態で配置されている。このモジュール3は、メイン基板2に対して概ね垂直になる状態で接続されるとともに、後述するように筐体50に対して固定されている。また、通信モジュール37は、メイン基板2の上方側において、メイン基板2と平行となる状態で配置されている。この通信モジュール37は、メイン基板2に対して概ね平行となる状態で接続されるとともに、筐体50に固定されている。
筐体50の内部には、メイン基板2の図示右方側にファン52が設けられている。このファン52は、底板50Cに対して垂直となるように配置されている。筐体50の図示しない右側面には、ファン52の概ね直径に対応する範囲に図示しない開口や孔部が形成されている。そのため、ファン52が駆動されると、筐体50の外部から内部に向かって空気を吸入される。そして、筐体50内に吸入された空気は、排気口51から排出される。そのため、モジュール3は、筐体50の前後方向において、排気口51を完全には覆わない長さに形成されている。
ここで、車両用装置1のようにメイン基板2とは別体となるモジュール3を設ける際の課題について説明する。車両用装置1は、車両に搭載されるものであり、一般的に、いわゆるDIN規格に基づいてその大きさが設計されている。その場合、車両用装置1は、大きさ例えば横幅や縦幅の寸法が制限されることがある。
そして、複数の機能部を統合した車両用装置1の場合、各機能部で利用するデバイスがある程度の数になることから、筐体50内のスペースを有効に利用することが求められる。また、機能部が増えると外部との接続用コネクタの数も増えることから、コネクタの配置についても考慮する必要がある。そのため、車両用装置1は、モジュール3をメイン基板2に対して立体的に配置することにより、筐体50内のスペースを有効活用できるようにしている。
ただし、モジュール3や通信モジュール37をメイン基板2に対して立体的に配置する場合には、次のような問題が懸念される。すなわち、車両用装置1は、車両に搭載されることから、振動に常にさらされることになる。そのため、モジュール3をメイン基板2に対して立体的に配置する場合には、接続箇所に応力が集中し、損傷を招くおそれがある。また、モジュール3のように複数のチューナ17を実装可能な構成の場合、モジュール3自体の重量が増えて応力が大きくなることが想定される。
この場合、可動コネクタを用いてモジュール3とメイン基板2とが相対的に移動可能にすれば、応力が集中することによる損傷のおそれを低減することができると考えられる。しかし、可動コネクタは、弾性を有する接点と接触させることにより可動にする構成となっている。そのため、車両用装置1のように常に振動が加わることが想定される場合には、接点部分にずれが生じて電気的なノイズが発生したり、接点そのものの消耗が問題になったりするおそれがある。
そこで、車両用装置1では、以下のようにしてそれらの問題を解消している。モジュール3は、図10に示すように、モジュール側制御部14やチューナ17などが実装されているモジュール側基板60と、モジュール側基板60が取り付けられている固定部材61と、固定部材61と逆側においてモジュール側基板60覆うカバー部材62とを備えている。このモジュール3は、全体として、薄い直方体状の外形となっている。
モジュール側基板60は、図11に示すように、概ね平板状に形成されているものの、車両用装置1の背板50A側となる図示右方側は、メイン基板2側が切り取られた形状となっている。そして、この切り取られている部分の図示上方側部位であって、背板50A側の端部に、アンテナコネクタ18が実装されている。このアンテナコネクタ18は、モジュール側基板60の表面から図示下方に突出する高さを有しているとともに、金属製のシールドカバー60Aによって覆われている。このシールドカバー60Aは、ねじ60Cによって固定部材61に固定される。
また、アンテナコネクタ18は、メイン基板2に接続される側とは逆側に位置して設けられている。そのため、モジュール3をメイン基板2に接続した場合、アンテナコネクタ18は、メイン基板2から浮いた状態に位置することになり、アンテナコネクタ18の下方側に空きスペースが形成される。
固定部材61は、金属材料で形成されており、モジュール側基板60とカバー部材62を支えることができるとともに、車両用装置1に加わる振動に耐えうる剛性を有している。この固定部材61は、図10に示すように、モジュール側基板60と平行に配置される本体部61Aを備えている。
この本体部61Aは、概ねモジュール側基板60を覆う大きさに形成されており、メイン基板2側からモジュール側基板60へのノイズの影響、および、モジュール側基板60からメイン基板2側へのノイズの影響を抑えるシールド部材として機能する。また、本体部61Aは、複数の孔部が設けられており、モジュール側基板60の冷却効率の向上とモジュール3の軽量化とが図られている。
本体部61Aには、図示は省略するが、モジュール側基板60を固定するための固定構造が設けられている。また、本体部61Aは、図示左端側の辺と上端側の辺、および下端側の辺の一部がカバー部材62側に折り曲げられて爪状部が形成されている。そして、この爪状部と、カバー部材62の設けられている複数の開口部62Aとが係合することにより、本体部61Aにカバー部材62が固定される。この開口部62Aは、モジュール側基板60の側方において、複数箇所に配置されている。
この本体部61Aは、図示下方となるメイン基板2側において、ピンヘッダ13が突出する大きさに形成されている。また、本体部61Aには、ピンヘッダ13の背板50A側であって、ピンヘッダ13の長手方向の延長線上となる位置に、メイン基板2にはんだ付けされる凸部61A1が設けられている。つまり、凸部61A1は、全体として薄い直方体状の外形となっているモジュール3の厚みの範囲内に設けられている。この凸部61A1は、補助固定部に相当する。
また、本体部61Aのメイン基板2側の端部には、メイン基板2の表面に接触可能なように本体部61Aから折り曲げられ、メイン基板2と共締めされて筐体50の底板50Cに固定するためのフランジ61A2が設けられている。フランジ61A2には、ねじを挿入するための挿入口61A3が形成されている。このフランジ61A2は、第2の固定部に相当する。
また、本体部61Aのメイン基板2側の端部には、ピンヘッダ13を挟んで凸部61A1と反対側に、メイン基板2が挿入される切り欠き61A4を有し、メイン基板2よりも下方まで延びる部位であって、メイン基板2に対して概ね垂直になる板状の保持部61A5が形成されている。この保持部61A5は、本体部61Aの端部を折り曲げることにより形成されている。
本体部61Aの背板50A側の端部には、アンテナコネクタ18Aを避けて本体部61Aから立ち上がっている壁部62Bとなっている。この壁部62Bの先端側は、アンテナコネクタ18に接触しないように折り曲げられて本体部61Aと平行に延びる延伸部62Cとなっている。延伸部62Cの側部は、モジュール側基板60側に折り曲げられており、上記した爪状部が設けられている。
また、延伸部62Cの先端は、背板50Aと当接するように折り曲げられて当接部61Dとなっている。当接部61Dの両端側には、ねじ穴61Eが形成されている。このねじ穴61Eは、固定部材61を背板50Aに固定する際に利用される。この当接部61Dは、第1の固定部に相当する。また、当接部61Dは、中央部分が背板50Aとは逆側に凸となる形状に形成されており、その中心にシールドカバー60Aをねじ止めするためのねじ穴61Fが形成されている。この当接部61Dの中央部分は、シールドカバー60Aをねじ止めしてもねじが背板50Aとの接触面に突出しない大きさに形成されている。
このように、固定部材61は、本体部61Aから当接部61Dまで、ならびに、凸部61A1やフランジ61A2あるいは保持部61A5が全て一体となった一体構造となっている。ここで、参考例として、モジュール3を単純にメイン基板2に接続した状態を図12に示す。
この図12に示すように、モジュール3は、メイン基板2から概ね垂直に立ち上がって配置されることになる。そして、モジュール3は、複数のチューナ17が実装されること、また、固定部材61が剛性の高い金属部材で形成されていることから、そのままでは振動に対して弱い配置構造になっている。
そのため、振動耐性を高めるためには、モジュール3を筐体50に固定する必要があると考えられる。このとき、車両用装置1のような製品においては、組み立てが容易であるといった生産性も重要になる。
そこで、モジュール3は、図9に示したように、メイン基板2から立ち上がる態様でメイン基板2に電気的に接続されているとともに、箱状の筐体50の異なる2面に対して固定されている。本実施形態の場合、モジュール3は、筐体50の背板50Aと、メイン基板2と共締めされる底板50Cの2面に対して固定されている。また、モジュール3は、筐体50の端の方に寄せて配置されている。
このとき、モジュール3の振動を抑制するためには、メイン基板2と共締めされる位置からなるべく離れた位置でモジュール3を固定することが望ましいと考えられる。そのため、モジュール3は、モジュール3の上端側となる位置で背板50Aに固定されている。より詳細には、モジュール3は、メイン基板2から離間して設けられているアンテナコネクタ18の位置で背板50Aに固定されている。
さらに、モジュール3は、メイン基板2にはんだ付けされるピンヘッダ13の近傍において凸部61A1をメイン基板2にはんだ付けすることでメイン基板2に固定されている。また、モジュール3は、ピンヘッダ13の近傍においてフランジ61A2によってメイン基板2に固定されている。このように、ピンヘッダ13の近傍で固定することにより、モジュール3が振動した際に応力がピンヘッダ13のはんだ付け箇所に集中することが抑制される。
また、アンテナコネクタ18とメイン基板2との間には空きスペースが形成されるため、その空きスペースにメイン基板2の外部コネクタ47を配置することができる。これにより、複数の機能部を統合したことによって外部コネクタ47の数が増えがちな車両用装置1において、それぞれのコネクタを上下方向にずらして立体的に配置することが可能となり、大きさが決まっている筐体50の表面スペースを有効活用することができる。
また、筐体50の背板50Aは、メイン基板2の外部コネクタ47を配置するために元々利用される部位であるため、その背板50Aにアンテナコネクタ18を配置すれば、構造が複雑化することを招くことがない。換言すると、メイン基板2の外部コネクタ47と同じ側にアンテナコネクタ18を配置する構成としたことにより、組み立てが困難になってしまうことを防止できる。
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
車両用装置1は、制御部4が実装されているメイン基板2と、メイン基板2に接続され、車両用装置1の製品モデルによって異なる機能部が実装されるモジュール3と、を備えている。そして、モジュール3は、メイン基板2から立ち上がる態様で当該メイン基板2に電気的に接続されているとともに、箱状の筐体50の異なる2面に対して固定されている。
これにより、大きさが制限されることがある車両用装置1において、モジュール3を立体的に配置することが可能になる。また、モジュール3を2面に対して固定することにより、モジュール3とメイン基板2との接続箇所に応力が集中することを抑制できる。したがって、筐体50内のスペースを有効活用できるとともに、車両用装置1に想定される振動に対応することができる。
モジュール3は、モジュール側基板60と、モジュール側基板60を固定する固定部材61とを有し、固定部材61は、筐体50に固定される第1の固定部としての当接部61Dと、第2の固定部としてのフランジ61A2とを有している。そして、当接部61Dおよびフランジ61A2は、固定部材61に一体構造で設けられている。これにより、固定部材61の剛性を利用して、モジュール3を強固に筐体50に固定することができる。
固定部材61は、金属材料で形成されており、モジュール側基板60の一面側を覆うシールド部材として機能する。これにより、メイン基板2側からモジュール側基板60へのノイズの影響、および、モジュール側基板60からメイン基板2側へのノイズの影響を抑えることができる。
固定部材61には、モジュール側基板60のメイン基板2への固定を補助する補助固定部としての凸部61A1が設けられている。これにより、モジュール側基板60とメイン基板2との接続箇所を補強することができ、応力によって損傷するおそれを低減することができる。
凸部61A1は、モジュール側基板60とメイン基板2とが接続されている接続箇所となるピンヘッダ13において、ピンヘッダ13の長手方向における外側に位置して設けられている。これにより、全体として薄い直方体状の外形となっているモジュール3の厚みの範囲内で補助的な固定を行うことができ、メイン基板2のスペースを不必要に占有してしまうことを防止することができる。
モジュール3には、無線放送を受信する機能部としてのチューナ17が少なくとも1つ以上実装されている。チューナ17は、例えば金属シールド構造のものはある程度の重さがある。そのため、チューナ17が複数実装される場合には、モジュール3の重量が増加し、振動による影響を受けやすくなる。そのような場合であっても、上記したように2面で筐体50に固定することにより、応力の集中などの振動による影響を抑制することができる。
メイン基板2には、外部接続用の外部コネクタ47が設けられており、モジュール3は、外部コネクタ47が配置されている例えば筐体50の背板50Aの1面において、外部コネクタ47の上方にずれた位置で筐体50に固定されている。これにより、大きさに制限がある車両用装置1の内部スペースや表面スペースを有効に利用することができる。
また、モジュール3は、筐体50の端の方に寄せて配置されている。筐体50の端は、2面の角に近いことから、例えば背板50Aの中央付近に比べると相対的に剛性が高いと考えられる。そのため、モジュール3を筐体50の端の方に寄せて配置することにより、背板50Aへの固定位置が角に近くなり、その結果、モジュール3をより強固に固定することができる。
実施形態では主としてモジュール3について説明したが、通信モジュール37のようにメイン基板2に対して平行に配置されるものについても、筐体50の2面に対して固定することにより、応力の集中などの振動による影響を抑制することができる。
実施形態ではピンヘッダ13によりモジュール3とメイン基板2とを接続する例を示したが、カードエッジコネクタにより接続する構成とすることもできる。また、ピンヘッダ13を直接的にメイン基板2にはんだ付けするのではなく、メイン基板2側にソケットを設け、ピンヘッダ13をソケットに挿入する構成とすることもできる。このような構成によっても、上記したようにモジュール3への振動の影響を抑制することができる。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に含まれるものである。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。