JP2020200361A - 複合樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】セルロースナノファイバーが樹脂中に均一に分散した皮膜を形成することが可能な複合樹脂組成物、及びその製造方法を提供する。【解決手段】水性分散媒と、前記水性分散媒に乳化している樹脂粒子と、前記水性分散媒に分散しているセルロースナノファイバーと、を含有する複合樹脂組成物であって、前記樹脂粒子は、(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記複合樹脂組成物をその不揮発分が0.01〜0.1質量%の範囲内となる量の水で希釈した液を測定用基材に滴下して乾燥させた試料を、原子間力顕微鏡により観察した場合に、前記セルロースナノファイバーが分散し、かつ、そのセルロースナノファイバーに前記樹脂粒子がまとわりついている構造が観察される複合樹脂組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、複合樹脂組成物及び複合樹脂組成物の製造方法に関する。
セルロースナノファイバー(以下、「CNF」と記載することがある。)は、主に植物の細胞壁に由来するセルロース繊維をナノサイズまで細かく解きほぐす(解繊する)ことで得られる繊維素材である。CNFは、軽量、高強度、高弾性率、熱による変形が小さい等の多くの利点に加え、植物由来の様々なバイオマスから取り出すことができる点で環境負荷が小さく、持続型資源として注目されており、ゴムや樹脂等の他の素材との複合材料の開発も進められている。
例えば特許文献1には、平均直径が3〜400nmであるセルロースナノファイバーを樹脂中に含有し、透明化度と強度を両立した成形体の製造を可能とするべく構成された複合樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、ラテックスエマルジョンの保持力等を高くするために、天然ゴム系ラテックスやアクリル系エマルジョン等に、セルロースナノファイバーを所定量配合したラテックスエマルジョンが開示されている。
さらに、特許文献3には、重合性化合物とセルロースナノファイバーとを溶媒に分散させた分散液中で、重合性化合物を重合させることにより得られる、複合樹脂組成物が開示されている。また、特許文献4には、セルロースナノファイバー分散液中で、エチレン性不飽和単量体を共重合させることで、エチレン性不飽和単量体からなる共重合体とセルロースナノファイバーを含有する複合体を製造する方法が開示されている。
特開2012−167202号公報 特開2015−218228号公報 特開2014−105217号公報 特開2016−155897号公報
CNF及び樹脂を含有する従来の複合樹脂組成物では、CNFと樹脂の混合時において、CNFが凝集したり、不均一に分散したりするなど、CNFの分散性が低いことがある。前述の特許文献3及び4では、所定の重合性化合物、CNF、乳化剤、及び水を含有する分散液中で、上記重合性化合物を重合させることにより、CNFの樹脂中での分散性を高めることが提案されている。
一方、CNF及び樹脂を含有する複合樹脂組成物から、皮膜等の成形物を形成する場合には、CNFを含有させたことによる効果(例えば引張強度等の向上)が充分に発揮されるように、ひびやCNFの凝集物がほとんど確認されない皮膜を得ることが望ましい。本発明者らの検討の結果、上述の従来技術においては、複合樹脂組成物や皮膜等の成形物の製造条件次第では、複合樹脂組成物から、CNFが樹脂中に高いレベルで均一に分散した皮膜を形成できない場合があることがわかった。
したがって、本発明は、セルロースナノファイバーが樹脂中に充分均一に分散した皮膜を形成することが可能な複合樹脂組成物、及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明は、水性分散媒と、前記水性分散媒に乳化している樹脂粒子と、前記水性分散媒に分散しているセルロースナノファイバーと、を含有する複合樹脂組成物であって、前記樹脂粒子は、(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記複合樹脂組成物をその不揮発分が0.01〜0.1質量%の範囲内となる量の水で希釈した液を測定用基材に滴下して乾燥させた試料を、原子間力顕微鏡により観察した場合に、前記セルロースナノファイバーが分散し、かつ、そのセルロースナノファイバーに前記樹脂粒子がまとわりついている構造が観察される複合樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子が水性分散媒に乳化している樹脂エマルションと、セルロースナノファイバーとを、温度が50℃以上の条件下で接触させて、それらを混合する混合工程を含み、前記混合工程により、前記水性分散媒と、前記水性分散媒に乳化している前記樹脂粒子と、前記水性分散媒に分散している前記セルロースナノファイバーと、を含有する複合樹脂組成物を得る、複合樹脂組成物の製造方法を提供する。
本発明によれば、セルロースナノファイバーが樹脂中に充分均一に分散した皮膜を形成することが可能な複合樹脂組成物、及びその製造方法を提供することができる。
実施例1及び5、並びに比較例4で得られた各樹脂組成物についての原子間力顕微鏡(AFM)による観察画像である。 実施例1〜3、比較例1、3及び4で得られた各皮膜の表面を撮影した写真である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
前述の通り、セルロースナノファイバー(CNF)及び樹脂を含有する従来の複合樹脂組成物では、CNFの分散性が低いことがある。これに対し、特許文献3及び4では、樹脂を形成する所定の重合性化合物、CNF、乳化剤及び水を含有する分散液中で、所定の重合性化合物を乳化重合させて得られる複合樹脂組成物によって、CNFの樹脂中での分散性を高めることが提案されている。
しかしながら、本発明者らの検討の結果、従来の複合樹脂組成物の製造条件や、複合樹脂組成物からの皮膜等の成形物の作製条件等によっては、その複合樹脂組成物から、CNFが樹脂中に高いレベルで均一に分散した成形物を形成できない場合があることがわかった。
具体的には、本発明者らは、水性分散媒中に(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子のうちの少なくとも1種の樹脂粒子が乳化した樹脂エマルションと、CNFとを含有する複合樹脂組成物について検討した。より具体的には、上記樹脂エマルションを得る際の初期仕込み水に、CNFを含有する水分散液も仕込み、そこで、上記樹脂粒子を形成する単量体成分を滴下して重合させる方法を試験的に行った。その結果、その方法では、重合段階において、CNFを含む凝集物を多量に生じてしまう場合があることがわかった(後記比較例10参照)。また、上記単量体成分、水、及び乳化剤を含有するプレエマルション中に、CNFを含有する水分散液を含有させておき、上記単量体成分を重合させる方法を試験的に行った場合にも、重合段階において、CNFを含む凝集物を多量に生じてしまう場合があることがわかった(後記比較例11参照)。したがって、これらの場合に得られた複合樹脂組成物から皮膜を形成しようとすると、ひびや、CNFを含む凝集物が存在する皮膜が形成されることとなる。
上記結果を踏まえて、本発明者らは、複合樹脂組成物からひびや凝集物がほとんど確認されないような均質な皮膜を得るためには、皮膜形成前の複合樹脂組成物において、CNFを凝集させることなく、より高いレベルで均一に分散させておく必要があると考え、複合樹脂組成物の製造方法について鋭意研究を重ねた。その中で、多段重合の技術を応用し、まず1段目として上記単量体成分の重合を完了させてから、2段目以降としてCNFを含有する水分散液を添加することで、水性分散媒に乳化した樹脂粒子と、水性分散媒に分散したCNFとを含有する複合樹脂組成物を得る方法を試みた。その結果、その方法で得られた複合樹脂組成物は、CNFが樹脂中に均一に分散した皮膜を形成することが可能であることがわかった。
上記の方法では、上記単量体成分を重合させた重合物を含有する樹脂エマルションを得た後、CNFを含有する水分散液を添加していることになることから、次に、本発明者らは、予め製造した樹脂エマルションに、室温下(約23℃)でCNFを含有する水分散液を添加する方法を試みた。しかし、その方法で得られた複合樹脂組成物で形成される皮膜においては、CNFの樹脂中での分散性は低いことがわかった。この結果を踏まえて、本発明者らがさらに検討したところ、予め製造した樹脂エマルションを所定温度に加熱し、その温度条件下の樹脂エマルションにCNFを添加する方法によって得られた複合樹脂組成物は、CNFが樹脂中に均一に分散した皮膜を形成することが可能であることがわかった。上述した多段重合のような方法において、2段目以降としてCNFを添加する方法も、重合直後にCNFを添加することから、CNFを添加するときに樹脂エマルションの温度が常温以上となっていたことも踏まえて、本発明者らは、さらなる検証実験を行った。その結果、樹脂エマルションと、CNFとを、温度が50℃以上の条件下で接触させて、それらを混合する工程を含む方法によって、CNFが樹脂中に充分均一に分散した皮膜を形成することが可能であることが見出された。
また、上記製造方法で得られた複合樹脂組成物は、CNFが樹脂中に充分均一に分散した皮膜を形成可能であったことから、本発明者らは、皮膜形成前の複合樹脂組成物において、CNFがより高いレベルで均一に分散しているものと考え、その複合樹脂組成物を分析した。液体である複合樹脂組成物中のCNFの分散性については、一般的に詳細に確認することが難しい。そこで、複合樹脂組成物の状態に近い状態で観察するために、複合樹脂組成物を大量の水で希釈し、その液を測定用基材に1滴〜数滴滴下して乾燥させることで、皮膜が形成されていない試料(非皮膜乾燥試料)とし、その試料を原子間力顕微鏡(AFM)により観察することとした。その結果、CNFが樹脂中に充分均一に分散した皮膜を形成可能であった複合樹脂組成物については、CNFが分散し、かつ、そのCNFに樹脂粒子がまとわりついている構造が観察され、この構造は、CNFの樹脂中での分散性が低い皮膜を形成した複合樹脂組成物については確認されず、特異的であることが見出された。
上述した検討の結果見出された複合樹脂組成物、及び複合樹脂組成物の製造方法について、以下に詳細に説明する。
<複合樹脂組成物>
本発明の一実施形態の複合樹脂組成物は、水性分散媒と、水性分散媒に乳化している樹脂粒子と、水性分散媒に分散しているセルロースナノファイバー(CNF)と、を含有する。この複合樹脂組成物における樹脂粒子は、(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。そして、この複合樹脂組成物は、複合樹脂組成物をその不揮発分が0.01〜0.1質量%の範囲内となる量の水で希釈した液を測定用基材に滴下して乾燥させた試料を、原子間力顕微鏡により観察した場合に、CNFが分散し、かつ、そのCNFに樹脂粒子がまとわりついている構造が観察されるものである。
このような構成によって、複合樹脂組成物は、CNFが樹脂中に充分均一に分散した皮膜を形成することが可能となる。原子間力顕微鏡によって上記構造が観察される複合樹脂組成物では、水性分散媒中に、CNFがほとんど凝集することなく、より高いレベルで均一に分散しているとともに、そのCNFの周りに樹脂粒子がまとわりつくように分散しているものと考えられる。それにより、複合樹脂組成物は、CNFが樹脂中に高いレベルで均一に分散し、均質な皮膜を形成することができるものと考えられる。なお、複合樹脂組成物は、CNFが樹脂中に充分均一に分散した皮膜を形成可能であることから、その複合樹脂組成物を用いることによって、CNFが樹脂中に充分均一に分散した成形物を得ることも可能となる。
上記の原子間力顕微鏡(AFM)による観察には、具体的には、複合樹脂組成物を水で数百質量倍(例えば500質量倍)程度に希釈し、複合樹脂組成物の不揮発分を0.01〜0.1質量%の範囲内に調整した液(希釈液)を用いる。そして、その希釈液から、皮膜が形成されていない乾燥試料(非皮膜乾燥試料)とする。具体的には、上記希釈液を、測定用基材として、AFM観察に用いられるマイカ標準試料(日立ハイテクサイエンス社製)に1滴〜数滴(0.01〜0.1mLの範囲内で)滴下し、乾燥シリカゲルを封入したガラス製デシケータ内で24時間乾燥させたものを試料とする。乾燥の際の温度条件は、複合樹脂組成物の性状に応じて、希釈液中の樹脂粒子が粒子形態をとることのできる温度とすることができる。そして、上記試料について、原子間力顕微鏡(商品名「AFM5100N」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察する。こうしたAFMによる観察において、後記実施例で示されるように、セルロースナノファイバー(CNF)を軸部とし、その軸部に沿って軸部の周りに、樹脂粒子が葡萄の房状に集まっている構造が観察されることが好ましい。
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバー(CNF)は、複合樹脂組成物において、水性分散媒に分散して存在している。CNFの種類は特に制限されず、どのような種類のCNFでも使用可能である。CNFの種類としては、例えば、主に物理的・機械的解繊処理により得られたCNF(以下、「機械解繊型CNF」と記載することがある。)、及び主に化学的な解繊処理により得られたCNF(以下、「化学解繊型CNF」と記載することがある。)、並びにそれらを何れも主要な処理として組み合わせた処理により得られたCNF等を挙げることができる。それらのうちの1種のCNFを単独で用いてもよく、2種以上のCNFを併用してもよく、2種以上のCNFの混合物を用いてもよい。また、例えばパルプ等の原料(原料繊維)から製造したCNFを用いてもよいし、市販のCNF製品を用いてもよい。
機械解繊型CNFとしては、例えば、水中対向衝突法(ACC法)により得られたCNFや、機械を用いて粉砕する方法により得られたCNF、その他の別の物理的・機械的解繊処理の方法で得られたCNF等を挙げることができる。ACC法によるCNFは、例えば、パルプ等の原料を含有する懸濁水を加圧し、相対するノズルから噴射及び衝突させ、衝突時に発生するエネルギーによって繊維間の結合を開裂して原料をナノサイズに微細化することで、得ることができる。ACC法によるCNFとしては、例えば、中越パルプ工業社製の商品名「nanoforest(登録商標)」等を用いることができる。また、機械的な粉砕によるCNFは、例えば、原料を含有する懸濁水を、湿式の撹拌装置(例えば高圧ホモジナイザー、超高速ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、及びビーズミル等)を用いて高速で撹拌し、原料を機械的に解繊することで得ることができる。
化学解繊型CNFとしては、例えば、パルプ等の原料を含有する懸濁水を、化学処理又は酵素処理してから水中で繊維を取り出す(解繊する)方法により得られたCNF、その他の化学的な解繊処理の方法で得られたCNF等を挙げることができる。化学処理を用いた方法により得られるCNFとしては、例えば、TEMPO触媒酸化法により製造されたCNFを挙げることができる。このようなTEMPO酸化CNFとしては、例えば、日本製紙社製の商品名「cellenpia(登録商標)」、及び第一工業製薬社製の商品名「レオクリスタ(登録商標)」等を用いることができる。また、酵素処理を用いた方法により得られるCNFとしては、例えば、セルラーゼ(セルロースの加水分解酵素)で処理することにより製造されたCNFを挙げることができる。
CNFの主要な原料としては、各種のパルプを挙げることができる。パルプとしては、材質の違いから、例えば、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプ等の木材パルプ;イネパルプ、ケナフパルプ、麻(リネン)パルプ、クワパルプ、バガスパルプ、ワラパルプ、綿パルプ、竹パルプ、果実パルプ、ラグパルプ、及びリンターパルプ等の非木材パルプ;古紙パルプ;並びに合成繊維パルプ等を挙げることができる。また、パルプとしては、製法の違いから、例えば、砕木パルプ(GP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、及びケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ;並びにクラフトパルプ(KP)、サルファイドパルプ(SP)、及びアルカリパルプ(AP)等の化学パルプ;並びに未晒パルプ及び晒パルプ等を挙げることができる。さらに、CNFの原料としては、例えば、動物性材料(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌等)、及び微生物産生物等に由来するセルロース等を挙げることもできる。
CNFのサイズは、繊維幅が概ねナノサイズ(1000nm以下)であれば特に制限されない。CNFの繊維幅は、例えば、1〜1000nmの範囲内であることが好ましく、2〜500nmの範囲内であることがより好ましく、3〜300nmの範囲内であることがさらに好ましい。CNFの繊維長は、例えば、0.1〜500μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜100μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜50μmの範囲内であることがさらに好ましい。
CNFを使用する際、CNFを複合樹脂組成物に含有させる際には、CNFを水性分散媒に分散させた液状、ペースト状、及びゲル状等のものを用いてもよく、CNFを乾燥させた固体状のものを用いてもよい。複合樹脂組成物を製造しやすい観点から、CNFの含有量が例えば0.01〜10質量%程度の範囲内に調整された水分散液を用いることが好ましい。
複合樹脂組成物中のセルロースナノファイバー(CNF)の含有量は、複合樹脂組成物中の樹脂粒子(樹脂粒子を構成する単量体成分の総量)100質量部当たり、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。複合樹脂組成物から得られる皮膜等の成形物の引張強度を高める観点から、上記のCNFの含有量は、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.5質量部以上であることがよりさらに好ましい。また、複合樹脂組成物から得られる皮膜等の成形物の延性(伸度)を高める観点から、上記のCNFの含有量は、8質量部以下であることがより好ましく、7質量部以下であることがさらに好ましく、5質量部以下であることがよりさらに好ましい。
(水性分散媒)
複合樹脂組成物に含有されている水性分散媒としては、一般に樹脂エマルションにおいて用いられている水性分散媒と同様、水が好適であり、水のみを使用してもよいし、水と水溶性有機溶剤との混合物を使用してもよい。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチルカルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びN−メチルピロリドン等を挙げることができるが、これらに限定されず、また、水溶性有機溶剤の1種又は2種以上を使用してもよい。
(樹脂粒子)
樹脂粒子は、複合樹脂組成物において、水性分散媒に乳化して存在しており、水性分散媒とともに樹脂エマルションを形成しているものである。樹脂粒子は、(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
本明細書において、「(メタ)アクリル」との文言には、「アクリル」及び「メタクリル」の両方の文言が含まれることを意味する。また、同様に、「(メタ)アクリレート」との文言には、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方の文言が含まれることを意味する。
さらに、本明細書において、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリル酸エステルが重合した重合体や、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含む単量体成分が重合した共重合体をいう。同様に、「スチレン系樹脂」とは、スチレン系単量体が重合した重合体や、スチレン系単量体を主成分として含む単量体成分が重合した共重合体をいう。そして、「(メタ)アクリロニトリル系樹脂」とは、(メタ)アクリロニトリルが重合した重合体や、(メタ)アクリロニトリルを主成分として含む単量体成分が重合した共重合体をいう。樹脂を形成する単量体成分における「主成分」とは、当該樹脂を形成する単量体成分中の含有量が最も多い単量体(一の単量体)をいう。樹脂を形成する単量体成分中に主成分が2種以上あってもよく、そのうちのいずれかが上述の主成分に該当すればよく、また、「(メタ)アクリル系樹脂」、「スチレン系樹脂」、及び「(メタ)アクリロニトリル系樹脂」のうちの2種以上に該当することになる樹脂でもよい。以下、単独重合及び共重合を区別することなく、それら両方を含めて単に「重合」と記載することがある。
上記各樹脂を形成する単量体成分には、主成分である単量体のほか、それ以外の、重合性不飽和結合を有する単量体(重合性単量体)の1種又は2種以上が含まれてもよい。したがって、上記の各樹脂粒子は、主成分である単量体に由来する構造単位のほか、それ以外の重合性単量体の1種又は2種以上に由来する構造単位が含まれていてもよい。本明細書において、「構造単位」とは、樹脂(重合体)を形成する重合性単量体の単位を意味する。「(重合性単量体に)由来する構造単位」とは、例えば、単量体における重合性二重結合(C=C)が開裂して単結合(−C−C−)となった構造単位等が挙げられる。
樹脂粒子を形成する単量体成分中の主成分となる単量体(含有量が最も多い一の単量体)の含有量(粒子中の主成分となる単量体に由来する構造単位の含有割合)は、樹脂粒子を形成する単量体成分の全質量を基準として、20〜90質量%の範囲内であることが好ましく、30〜80質量%の範囲内であることがより好ましく、40〜70質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂粒子に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、及び(メタ)アクリル酸アリールエステル、並びにそれら以外の他の(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上を用いることができる。これらのなかでも、(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成する単量体成分は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましく、それを主成分として含むことがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;並びにシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環式の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を用いることができる。これらのなかでも、炭素原子数が1〜18(より好ましくは1〜12)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、及び(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、及びナフチルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、及びナフチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
他の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリルレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;2−クロロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、及びパーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、及び3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びカルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びその誘導体;2−スルホエチル(メタ)アクリレート、及び3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基を有する(メタ)アクリレート;2−(ホスホノオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のリン酸基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸2−イソシアナトエチル等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート;メトキシポリエチエレングリコール(メタ)アクリレート、及びフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル基又はアリール基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
(メタ)アクリル系樹脂粒子を形成する単量体成分中の(メタ)アクリル酸エステルの総含有量(当該樹脂粒子中の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の総含有割合)は、当該樹脂粒子を形成する単量体成分の全質量を基準として、50〜100質量%であることが好ましく、60〜99質量%であることがより好ましく、65〜98質量%であることがさらに好ましい。
また、スチレン系樹脂粒子及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子を形成する各単量体成分も、それらの主成分(それぞれ、スチレン系単量体及び(メタ)アクリロニトリル)のほか、(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことがより好ましい。スチレン系樹脂粒子及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子を形成する各単量体成分中の(メタ)アクリル酸エステルの総含有量(当該樹脂粒子中の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の総含有割合)は、当該樹脂粒子を形成する単量体成分の全質量を基準として、5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。
スチレン系樹脂粒子に用いられるスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−,p−メチルスチレン、o−,m−,p−エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、o−,m−,p−ヒドロキシスチレン、o−,m−,p−メトキシスチレン、o−,m−,p−エトキシスチレン、o−,m−,p−クロロスチレン、o−,m−,p−ブロモスチレン、o−,m−,p−フルオロスチレン、及びo−,m−,p−クロロメチルスチレン等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらのなかでも、スチレン系樹脂粒子を形成する単量体成分は、少なくともスチレンを含むことが好ましく、それを主成分として含むことがより好ましい。
また、(メタ)アクリル系樹脂粒子及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子を形成する各単量体成分も、それらの主成分(それぞれ、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリロニトリル)のほか、スチレン系単量体を含んでいてもよい。
(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子に用いられる(メタ)アクリロニトリルは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルであり、これらの一方又は両方を用いることができる。
また、(メタ)アクリル系樹脂粒子及びスチレン系樹脂粒子を形成する各単量体成分も、それらの主成分(それぞれ、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系単量体)のほか、(メタ)アクリロニトリルを含んでいてもよい。
前述の通り、(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子を形成する各単量体成分は、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系単量体、及び(メタ)アクリロニトリルのほか、他の重合性単量体を含んでいてもよい。他の重合性単量体としては、複合樹脂組成物を調製しやすくなる観点から、不飽和カルボン酸系単量体が好ましく、樹脂粒子は、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。本明細書において、不飽和カルボン酸系単量体には、不飽和カルボン酸、並びにその無水物及びモノエステルが含まれる。
不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、及びシトラコン酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、及び無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、及びイタコン酸モノブチルエステル等の不飽和カルボン酸のモノエステルを挙げることができる。これらの不飽和カルボン酸系単量体のうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、これらのなかでも、(メタ)アクリル酸を用いることがより好ましい。
樹脂粒子を形成する単量体成分中の不飽和カルボン酸系単量体の総含有量(樹脂粒子中の不飽和カルボン酸系単量体に由来する構造単位の総含有割合)は、樹脂粒子を形成する単量体成分の全質量を基準として、30質量%以下であることが好ましい。この不飽和カルボン酸系単量体の総含有量は、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。また、樹脂粒子に不飽和カルボン酸系単量体を使用する場合には、上記の不飽和カルボン酸系単量体の総含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。
不飽和カルボン酸系単量体以外の他の重合性単量体として、例えば、上述の(メタ)アクリロニトリル以外の窒素原子を有する不飽和単量体;ビニル系単量体;不飽和アルコール;ビニルエーテル系単量体;ビニルエステル系単量体;エポキシ基を有する不飽和単量体;及びスルホン酸基を有する不飽和単量体;等を挙げることもできる。
窒素原子を有する不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−[2−ジメチルアミノエチル](メタ)アクリルアミド、N−[3−ジメチルアミノプロピル](メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、及び4−メタクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N−ビニルアセトアミド、及びN−ビニル−N−メチルアセトアミド等のビニル基を有するアセトアミド系単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニル−2−オキサゾリン、及び2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のビニル基を有する含窒素複素環式化合物等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。窒素原子を有する不飽和単量体のなかでも、複合樹脂組成物を調製しやすくなる観点から、上記の(メタ)アクリルアミド系単量体が好ましく、(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
樹脂粒子を形成する単量体成分中の(メタ)アクリロニトリル以外の上記窒素原子を有する不飽和単量体の総含有量(樹脂粒子中の上記窒素原子を有する不飽和単量体に由来する構造単位の総含有割合)は、樹脂粒子を形成する単量体成分の全質量を基準として、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、樹脂粒子に上記窒素原子を有する不飽和単量体を使用する場合には、上記の不飽和カルボン酸系単量体の総含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。
ビニル系単量体としては、例えば、塩化ビニル及びフッ化ビニル等が挙げられる。不飽和アルコールとしては、例えば、ビニルアルコール及びアリルアルコール等が挙げられる。ビニルエーテル系単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、及びジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニル等が挙げられる。エポキシ基を有する不飽和単量体としては、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。スルホン酸基を有する不飽和単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、及び2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
さらに、樹脂粒子を形成する単量体成分には、重合性単量体として、架橋剤としての機能を有し得る単量体(架橋性単量体)を用いることも可能である。架橋性単量体には、重合性不飽和結合を2以上有する単量体を用いることができる。架橋性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びグリセリンジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン;並びにジアリルフタレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
また、架橋性単量体としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を挙げることもでき、それらの1種又は2種以上を用いることが可能である。
複合樹脂組成物における樹脂粒子は、前述の水性分散媒中で、上述した1種又は2種以上の重合性単量体を含む単量体成分を重合させることで、得ることができる。また、例えば、複合樹脂組成物に含有される水性分散媒とは別途に製造された樹脂粒子を、複合樹脂組成物に含有される水性分散媒に、強制乳化や自己乳化等の方法によって後乳化させてもよい。樹脂粒子は、複合樹脂組成物に含有される水性分散媒中で、樹脂粒子を形成する単量体成分を乳化重合させて得られたものが好ましい。
樹脂粒子の動的光散乱法による平均粒子径は、特に限定されないが、25〜1000nmであることが好ましく、35〜600nmであることがより好ましく、45〜400nmであることがさらに好ましい。本明細書において、樹脂粒子の動的光散乱法による平均粒子径は、動的光散乱法を利用した粒度分布測定装置(例えば、商品名「濃厚系粒径アナライザー FPAR−1000」、大塚電子社製)を用いて、キュムラント法解析により、求められる平均粒子径を意味する。
樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、−50〜100℃であることが好ましい。本明細書において、樹脂粒子のTgは、樹脂粒子が単独重合体である場合には、DSC測定による値である。また、樹脂粒子が共重合体である場合には、その樹脂粒子のTgは、上記単独重合体のTgを用いて、以下のFOX式から求められる理論値である。
1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・W/Tg
上記式中、Tgは、n種の単量体成分(単量体1〜n)の重合体(共重合体)のガラス転移温度(単位:K)を表す。W、W、・・・Wは、n種の単量体成分の総量に対する各単量体(1、2、・・・n)の質量分率を表し、Tg、Tg、・・・Tgは、各単量体(1、2、・・・n)の単独重合体のガラス転移温度(単位:K)を表す。例えば、後述する実施例で使用した単量体等を例に挙げると、その単量体の単独重合体のガラス転移温度は次の通りであり、それらの値を後述する実施例で製造した樹脂粒子のTgの算出に用いた。
n−ブチルアクリレート(BA):−55℃
メチルメタクリレート(MMA):105℃
スチレン(ST):100℃
アクリロニトリル:105℃
アクリル酸(AAc):105℃
アクリルアミド(AM):165℃
なお、樹脂粒子は、コア部とシェル部とを有する粒子(いわゆるコア−シェル型樹脂粒子)であってもよい。樹脂粒子がコア部とシェル部を有する場合、コア部とシェル部とが完全に相溶し、これらを区別できない均質構造のものであってもよく、これらが完全には相溶せずに不均質に形成されるコア・シェル複合構造やミクロドメイン構造であってもよい。上記コア・シェル複合構造においては、コア部の表面がシェル部によって被覆された形態であることが好ましい。この場合、コア部の表面は、シェル部によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々においてコア部が露出している形態であってもよい。
(その他の成分)
複合樹脂組成物は、必要に応じて、前述の(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子以外の他の樹脂粒子や、前述のCNF以外の各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、顔料及び染料等の着色剤、金属化合物、溶剤、可塑剤、分散剤、界面活性剤(乳化剤)、発泡剤、滑剤、ゲル化剤、造膜助剤、凍結防止剤、架橋剤、pH調整剤、粘度調整剤、防腐剤、防黴剤、殺菌剤、防錆剤、難燃剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等を挙げることができる。これらの添加剤の1種又は2種以上を用いてもよい。
複合樹脂組成物中のCNFの分散性をより高める観点から、複合樹脂組成物は、界面活性剤(乳化剤)を含有してもよく、また、同様に、例えば分散剤等として機能し得るセルロース系高分子化合物を含有してもよい。乳化剤としては、後述する乳化重合の際に用いることが可能な乳化剤を挙げることができ、樹脂エマルションにおける樹脂粒子の合成の際に用いられた乳化剤でもよいし、樹脂粒子の合成とは別途に配合された乳化剤でもよい。セルロース系高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
複合樹脂組成物の不揮発分(固形分)は、複合樹脂組成物の全質量を基準として、1〜70質量%の範囲内であることが好ましく、5〜60質量%の範囲内であることがより好ましく、10〜50質量%の範囲内であることがさらに好ましい。本明細書において、複合樹脂組成物の不揮発分(固形分)は、JIS K6833−1:2008の規定に準拠して測定される値をとることができる。
複合樹脂組成物の25℃での粘度は、1〜10000mPa・sの範囲内であることが好ましく、1〜5000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、5〜1000mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。本明細書において、複合樹脂組成物の25℃での粘度は、JIS K6833−1:2008の規定に準拠して測定される値をとることができる。
<複合樹脂組成物の製造方法>
次に、前述に概要を挙げた、複合樹脂組成物の製造方法について、詳細に説明する。本発明の一実施形態の複合樹脂組成物の製造方法は、(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子が水性分散媒に乳化している樹脂エマルションと、セルロースナノファイバーとを、温度が50℃以上の条件下で接触させて、それらを混合する混合工程を含む。この混合工程により、水性分散媒と、水性分散媒に乳化している樹脂粒子と、水性分散媒に分散しているセルロースナノファイバーと、を含有する複合樹脂組成物を得る。なお、この複合樹脂組成物の製造方法の説明で用いられる樹脂粒子、水性分散媒、セルロースナノファイバー(CNF)等は、前述の実施形態に係る複合樹脂組成物の説明で挙げたものと同様に説明されるものである。
上記構成の製造方法によって、CNFが樹脂中に充分均一に分散した皮膜を形成することが可能な複合樹脂組成物を製造することが可能となる。また、この複合樹脂組成物の製造方法では、前述の実施形態に係る複合樹脂組成物を製造することもできる。これらの効果がより奏されやすい観点から、混合工程における樹脂エマルションとCNFとを接触させる際の温度は、55℃以上であることが好ましく、より好ましくは60℃以上であり、100℃以下であることが好ましい。
樹脂エマルションとCNFとを接触させる際には、複合樹脂組成物を製造しやすい観点から、CNFを含有する水分散液を用いることが好ましい。この水分散液中のCNFの含有量は、0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜10質量%の範囲内であることがより好ましく、0.2〜5質量%の範囲内であることがさらに好ましい。また、樹脂エマルションとCNFとの混合にかける時間としては、例えば、10〜120分の範囲内であることが好ましく、20〜90分の範囲内であることがより好ましく、30〜90分の範囲内であることがさらに好ましい。混合工程後、得られた複合樹脂組成物を常温(5〜35℃の範囲内)まで冷却することが好ましい。
混合工程では、樹脂エマルションとCNFとを上記温度条件下で接触させることができれば、樹脂エマルションにCNFを添加してもよいし、CNFに樹脂エマルションを添加してもよいし、それら両方を別容器に添加することで接触させてもよい。複合樹脂組成物を製造しやすい観点から、混合工程は、セルロースナノファイバーを含有する水分散液、及び樹脂エマルションのいずれか一方(添加されるもの)に、いずれか他方(添加するもの)を、いずれか一方(添加されるもの)の温度が50℃以上の条件下で添加する工程を含むことが好ましい。この際、複合樹脂組成物中のCNFの分散性をさらに高める観点から、上記いずれか他方(添加するもの)の温度も50℃以上の条件下とすることがさらに好ましい。
例えば、上記いずれか一方(添加されるもの)がCNFを含有する水分散液であり、上記いずれか他方(添加するもの)が樹脂エマルションであるという場合、換言すれば、CNFを含有する水分散液に樹脂エマルションを添加する場合、次の方法を採り得る。すなわち、その場合の複合樹脂組成物の製造方法は、混合工程の前に、CNFを含有する水分散液を50℃以上に加熱する加熱工程をさらに含み、混合工程は、加熱工程により50℃以上に加熱されたCNFを含有する水分散液に、樹脂エマルションを添加する工程を含むことができる。
また、例えば、上記いずれか一方(添加されるもの)が樹脂エマルションであり、上記いずれか他方(添加するもの)がCNFを含有する水分散液であるという場合、換言すれば、樹脂エマルションにCNFを含有する水分散液を添加する場合、次の方法を採り得る。すなわち、その場合の複合樹脂組成物の製造方法は、混合工程の前に、樹脂エマルションを50℃以上に加熱する加熱工程をさらに含み、混合工程は、加熱工程により50℃以上に加熱された樹脂エマルションに、CNFを含有する水分散液を添加する工程を含むことができる。
複合樹脂組成物の製造方法で用いられる樹脂エマルションについては、複合樹脂組成物の製造方法の一環で製造した樹脂エマルションを用いてもよいし、予め製造しておいたものや市場から購入したもの等の予め製造された樹脂エマルションを準備して用いてもよい。予め製造された樹脂エマルションは、例えば、複合樹脂組成物の製造方法における後述の重合工程のように製造することができる。
また、複合樹脂組成物の製造方法では、上記いずれか一方(添加されるもの)が樹脂エマルションであり、上記いずれか他方(添加するもの)がCNFを含有する水分散液であるという場合、混合工程の前に、CNFを添加する対象となる樹脂エマルションを製造することができる。すなわち、この場合の複合樹脂組成物の製造方法は、混合工程の前に、樹脂粒子を形成する単量体成分を、温度が50℃以上の条件下で乳化重合させて樹脂エマルションを得る重合工程をさらに含むことができる。そして、この場合、混合工程は、重合工程に続けて、重合工程で得られた、温度が50℃以上の樹脂エマルションに、上述のCNFを含有する水分散液を添加する工程を含むことが好ましい。このように、樹脂エマルションの温度を50℃以上の条件とするにあたって、樹脂粒子を形成する単量体成分の重合熱を利用することで、生産効率を高めることも期待できる。
重合工程に続けて行う混合工程において用いられるCNFを含有する水分散液には、重合工程で用いた単量体成分とともに樹脂粒子を形成する単量体成分(残りの単量体成分)、及び乳化剤を含有させてもよい。また、その混合工程では、重合工程で得られた樹脂エマルションに、CNFを含有する水分散液と、上記単量体成分(残りの単量体成分)、乳化剤、及び水を含有するプレエマルションとを別々に添加してもよい。これらの方法のように、混合工程においても単量体成分を用い、重合工程で得られた樹脂エマルションに対して、さらに単量体成分を重合させてもよい。さらに、CNFを含有する水分散液には、上述したセルロース系高分子化合物を含有させてもよい。
重合工程では、水性分散媒となる水等の水性媒体中で、樹脂粒子を形成する1種又は2種以上の重合性単量体(単量体成分)を乳化重合させることで樹脂エマルションを得ることが好ましい。具体的には、水性媒体(好ましくは水)中で、重合開始剤及び界面活性剤(乳化剤)等の存在下、樹脂粒子を形成する単量体成分を乳化重合させることが好ましい。乳化重合の方法としては、水性媒体、単量体成分、及び重合開始剤等を一括混合して乳化重合する方法や、水性媒体及び単量体成分等を含有するプレエマルションを用いて乳化重合する方法等を挙げることができる。より具体的には、水性媒体及び単量体成分等を予め混合して調製したプレエマルションと、重合開始剤とを、別途用意された水性媒体にそれぞれ滴下し、水性媒体中で単量体成分を乳化重合させることがより好ましい。
乳化重合の際の重合温度は、上述の通り、50℃以上の条件とし、55℃以上の条件とすることが好ましく、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、100℃以下の条件とすることが好ましい。乳化重合の際の重合時間や、使用する重合開始剤及び乳化剤等の種類及び使用量等は、従来公知の乳化重合と同様の範囲内で適宜決めることができる。例えば、重合時間は、1〜15時間程度の範囲内が好ましい。また、上述のプレエマルションや、重合開始剤の添加(滴下)方法も特に限定されず、例えば、一括添加法、連続添加法、及び多段添加法等の方法を採ることができ、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、及び過酸化水素等の過酸化物、並びにアゾ化合物等を挙げることができ、1種又は2種以上の重合開始剤を用いることができる。また、過酸化物と併用したレドックス重合開始剤や、重合促進剤として、1種又は2種以上の還元剤を用いることもできる。
過硫酸塩の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウム等を挙げることができる。有機過酸化物の具体例としては、過酸化ベンゾイル及びジラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド及びジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシラウレート及びt−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類、クメンハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等を挙げることができる。アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、及び4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等を挙げることができる。還元剤の具体例としては、アスコルビン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、亜硫酸及びその塩、重亜硫酸及びその塩、チオ硫酸及びその塩、並びに鉄(II)塩等を挙げることができる。
樹脂粒子を合成する際には、その樹脂粒子の分子量を調整するために、公知の連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、ヘキシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、及びn−,又はt−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類等を用いることができる。
樹脂粒子を合成する際に用いることが可能な乳化剤(界面活性剤)としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等を挙げることができ、1種又は2種以上の乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム;並びにポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム、及びポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等の反応性アニオン性界面活性剤等を挙げることができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン誘導体;並びにポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、及びポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル等の反応性ノニオン性界面活性剤等を挙げることができる。
重合工程により樹脂粒子を得た後、より好ましくはさらに混合工程後、得られた複合樹脂組成物を中和剤により、中和することが好ましい。樹脂粒子がカルボキシ基を有する場合、そのカルボキシ基を塩基性の中和剤で中和することが好ましい。中和により、複合樹脂組成物が安定化されることになる。中和剤としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム及び炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、及びジエチレントリアミン等の有機アミン類等を挙げることができ、1種又は2種以上を用いることができる。
以上詳述した通り、本発明の一実施形態の複合樹脂組成物は、上述した樹脂粒子、CNF、及び水性分散媒を含有し、前述した条件で得られる試料(非皮膜乾燥試料)を、AFMにより観察した場合に、CNFを含む凝集物が確認され難く、CNFが分散し、かつ、そのCNFに樹脂粒子がまとわりついている構造が観察されるものである。また、本発明の一実施形態の製造方法で得られる複合樹脂組成物は、上記樹脂粒子が水性分散媒に乳化している樹脂エマルションに、その樹脂エマルションの温度が50℃以上の条件下でCNFを添加することで得られるものである。
そのため、それらの複合樹脂組成物によって、CNFが樹脂中に充分均一に分散し、かつ、皺やひび(クラック)が生じにくい皮膜等の成形物を形成することが可能となる。その結果、それらの複合樹脂組成物によって、CNFを含まないこと以外は同等の樹脂組成物から得られる皮膜等の成形物と比べて、引張強度を高めた皮膜等の成形物が得られることが期待できる。また、CNFは保水能が高く、緩やかに乾燥され、さらに線熱膨張係数が小さいという特徴を有することから、CNFを含まないこと以外は同等の樹脂組成物と比べて、乾燥による皮膜形成時の収縮が抑制されることが期待できる。
さらに、本発明の一実施形態の複合樹脂組成物及び本発明の一実施形態の製造方法によって得られる複合樹脂組成物は、ゲル分率の高い皮膜等の成形物を形成することも可能である。そのため、それらの複合樹脂組成物によって、CNFを含まないこと以外は同等の樹脂組成物から得られる皮膜等の成形物と比べて、耐溶剤性が向上した皮膜等の成形物が得られることも期待できる。
なお、本発明の一実施形態の複合樹脂組成物は、以下のような構成をとることが可能である。
[1]水性分散媒と、前記水性分散媒に乳化している樹脂粒子と、前記水性分散媒に分散しているセルロースナノファイバーと、を含有する複合樹脂組成物であって、前記樹脂粒子は、(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記複合樹脂組成物をその不揮発分が0.01〜0.1質量%の範囲内となる量の水で希釈した液を測定用基材に滴下して乾燥させた試料を、原子間力顕微鏡により観察した場合に、前記セルロースナノファイバーが分散し、かつ、そのセルロースナノファイバーに前記樹脂粒子がまとわりついている構造が観察される複合樹脂組成物。
[2]前記原子間力顕微鏡による観察において、前記セルロースナノファイバーを軸部とし、前記軸部に沿って前記軸部の周りに、前記樹脂粒子が葡萄の房状に集まっている構造が観察される上記[1]に記載の複合樹脂組成物。
[3]前記複合樹脂組成物中の前記セルロースナノファイバーの含有量が、前記複合樹脂組成物中の前記樹脂粒子100質量部当たり、0.1〜10質量部の範囲内である上記[1]又は[2]に記載の複合樹脂組成物。
[4]前記樹脂粒子は、不飽和カルボン酸系単量体、及び(メタ)アクリルアミド系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体に由来する構造単位をさらに含む上記[1]〜[3]のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
また、本発明の一実施形態の複合樹脂組成物の製造方法は、以下のような構成をとることが可能である。
[5](メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子が水性分散媒に乳化している樹脂エマルションと、セルロースナノファイバーとを、温度が50℃以上の条件下で接触させて、それらを混合する混合工程を含み、前記混合工程により、前記水性分散媒と、前記水性分散媒に乳化している前記樹脂粒子と、前記水性分散媒に分散している前記セルロースナノファイバーと、を含有する複合樹脂組成物を得る、複合樹脂組成物の製造方法。
[6]前記混合工程は、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液、及び前記樹脂エマルションのいずれか一方に、いずれか他方を、前記いずれか一方の温度が50℃以上の条件下で添加する工程を含む上記[5]に記載の複合樹脂組成物の製造方法。
[7]前記混合工程は、前記いずれか他方の温度も50℃以上の条件下で、前記いずれか他方を前記いずれか一方に添加する工程を含む上記[6]に記載の複合樹脂組成物の製造方法。
[8]前記いずれか一方は、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液であり、前記いずれか他方は、前記樹脂エマルションであり、前記混合工程の前に、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液を50℃以上に加熱する加熱工程をさらに含み、前記混合工程は、前記加熱工程により50℃以上に加熱された前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液に、前記樹脂エマルションを添加する工程を含む、上記[6]又は[7]に記載の複合樹脂組成物の製造方法。
[9]前記いずれか一方は、前記樹脂エマルションであり、前記いずれか他方は、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液であり、前記混合工程の前に、前記樹脂エマルションを50℃以上に加熱する加熱工程をさらに含み、前記混合工程は、前記加熱工程により50℃以上に加熱された前記樹脂エマルションに、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液を添加する工程を含む、上記[6]又は[7]に記載の複合樹脂組成物の製造方法。
[10]前記いずれか一方は、前記樹脂エマルションであり、前記いずれか他方は、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液であり、前記混合工程の前に、前記樹脂粒子を形成する単量体成分を、温度が50℃以上の条件下で乳化重合させて前記樹脂エマルションを得る重合工程をさらに含み、前記混合工程は、前記重合工程に続けて、前記重合工程で得られた、温度が50℃以上の前記樹脂エマルションに、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液を添加する工程を含む、上記[6]又は[7]に記載の複合樹脂組成物の製造方法。
以下、実施例及び比較例を挙げて、前述の一実施形態のさらなる具体例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<樹脂組成物の製造例A>
以下の実施例1〜11では、予め製造しておいた樹脂エマルションを用いて、その樹脂エマルションと、セルロースナノファイバー(CNF)とを、特定の温度条件下で接触させて、それらを混合することにより、複合樹脂組成物を製造した。具体的には、実施例1〜8では、樹脂エマルションを特定の温度に加熱した後、それにCNFを含有する水分散液(約20℃)を添加し、実施例9では、樹脂エマルションに添加する際のCNFを含有する水分散液も特定の温度に加熱した条件とした。実施例10では、CNFを含有する水分散液を特定の温度に加熱した後、それに樹脂エマルション(約20℃)を添加し、実施例11では、CNFを含有する水分散液に添加する際の樹脂エマルションも特定の温度に加熱した条件とした。なお、相対的な評価を行い易くするため、各例において、樹脂(重合体)のガラス転移温度(Tg;理論値)が同等となるように、樹脂を形成する単量体成分の組成を調整した。
(調製例1)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水53.5質量部を仕込み、撹拌しながら内温を80℃まで昇温させた。
一方、上記セパラブルフラスコとは別に、n−ブチルアクリレート(以下、「BA」と記載することがある。)42.9質量部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と記載することがある。)54.6質量部、アクリル酸(以下、「AAc」と記載することがある。)2.0質量部、及びアクリルアミド(以下、「AM」と記載することがある。)0.5質量部からなる単量体成分(総量100質量部)、並びにアニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム2.0質量部(花王社製の商品名「ラテムルE−1000A」(固形分30質量%)6.7質量部)、及び脱イオン水38.0質量部を、ホモディスパーで乳化させ、プレエマルションを調製した。
次に、上記セパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、そのセパラブルフラスコ内の脱イオン水に、調製したプレエマルションを滴下ロートから3時間かけて均一に滴下し、これと同時に、5質量%過硫酸アンモニウム水溶液6.0質量部を、3時間かけて均一に滴下した。それらの滴下終了後、80℃で3時間熟成して反応(重合)を終了させた。次いで、室温(23±2℃)まで冷却後、25質量%アンモニア水1.0質量部を添加して中和し、pHを調整して、(メタ)アクリル系樹脂粒子を含有する樹脂エマルション(不揮発分:約50質量%)を得た。なお、この樹脂エマルション中の(メタ)アクリル系樹脂粒子のTg(理論値)は15℃である。
(比較例1)
比較例1では、調製例1で得られた樹脂エマルションをそのまま、比較例1の樹脂組成物として使用した。以下の実施例1〜7、9〜11及び比較例2〜7では、調製例1で得られた樹脂エマルションを複合樹脂組成物の製造に使用した。
(実施例1)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、調製例1で得られた樹脂エマルションを入れ、80℃まで昇温させた。上記セパラブルフラスコ内の樹脂エマルションを80℃に維持した状態で、その樹脂エマルションに、機械解繊型CNF(ACC法によるCNF)を含有する水分散液(中越パルプ工業社製の商品名「nanoforest−S(BB−C)」(固形分1.2質量%)を固形分が0.75質量%になるように脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)を、滴下ロートから1時間かけて均一に滴下した。その滴下終了後、室温(23±2℃)まで冷却し、得られた液を、120メッシュのろ布を用いてろ過し、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例2)
CNFを含有する水分散液を樹脂エマルションに添加する際の樹脂エマルションの温度条件を60℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例3)
CNFを含有する水分散液を樹脂エマルションに添加する際の樹脂エマルションの温度条件を50℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例4)
CNFを含有する水分散液の添加量を、400質量部(CNFとして3.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して3質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例5)
CNFを含有する水分散液の添加量を、667質量部(CNFとして5.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して5質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例6)
実施例1において使用した機械解繊型CNFを含有する水分散液133質量部を、化学解繊型CNFを含有する水分散液(日本製紙社製の商品名「cellenpia」(TEMPO酸化CNF標準品;固形分1.0質量%)を固形分が0.75質量%になるように脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の化学解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例7)
実施例1において使用した機械解繊型CNFを含有する水分散液133質量部を、化学解繊型CNFを含有する水分散液(日本製紙社製の商品名「cellenpia」(TEMPO酸化CNF短繊維品;固形分5.0質量%)を固形分が0.75質量%になるように脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の化学解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例8)
まず、調製例1で使用したアニオン性乳化剤の使用量を、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム1.9質量部(花王社製の商品名「ラテムルE−1000A」(固形分30質量%)6.3質量部)に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法により、(メタ)アクリル系樹脂粒子(Tg(理論値):15℃)を含有する樹脂エマルション(不揮発分:約50質量%)を得た。また、機械解繊型CNF(ACC法によるCNF)を含有する水分散液(中越パルプ工業社製の商品名「nanoforest−S(BB−C)」(固形分1.2質量%)を固形分が0.75質量%になるように脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)、アニオン性乳化剤として、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム0.1質量部(花王社製の商品名「ラテムルE−1000A」(固形分30質量%)0.3質量部)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)1.0質量部(第一工業製薬社製の商品名「セロゲン6A」(固形分100質量%))を混合し、CNFを含有する水分散液を得た。
次に、撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、上記で得られた樹脂エマルションを入れ、80℃まで昇温させた。上記セパラブルフラスコ内の樹脂エマルションを80℃に維持した状態で、その樹脂エマルションに、上記で得られたCNFを含有する水分散液を、滴下ロートから1時間かけて均一に滴下した。その滴下終了後、室温(23±2℃)まで冷却し、得られた液を、120メッシュのろ布を用いてろ過し、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の機械解繊型CNFと、1質量部のCMCとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例9)
樹脂エマルションにCNFを含有する水分散液を添加する前に、CNFを含有する水分散液も80℃に加熱しておき、80℃の樹脂エマルションに、CNFを含有する80℃の水分散液を添加したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
(実施例10)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、機械解繊型CNF(ACC法によるCNF)を含有する水分散液(中越パルプ工業社製の商品名「nanoforest−S(BB−C)」(固形分1.2質量%)を固形分が0.75質量%になるように脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)を入れ、80℃まで昇温させた。上記セパラブルフラスコ内を80℃に維持した状態で、フラスコ内のCNFを含有する水分散液に、調製例1で得られた樹脂エマルションを、滴下ロートから1時間かけて均一に滴下した。その滴下終了後、室温(23±2℃)まで冷却し、得られた液を、120メッシュのろ布を用いてろ過し、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例11)
CNFを含有する水分散液に樹脂エマルションを添加する前に、樹脂エマルションも80℃に加熱しておき、CNFを含有する80℃の水分散液に80℃の樹脂エマルションを添加したこと以外は、実施例10と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
(比較例2)
CNFを含有する水分散液を樹脂エマルションに添加する際の樹脂エマルションの温度条件を45℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
(比較例3)
CNFを含有する水分散液を樹脂エマルションに添加する際の樹脂エマルションの温度条件を40℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
(比較例4)
CNFを含有する水分散液を樹脂エマルションに添加する際の樹脂エマルションの温度条件を20℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
(比較例5)
CNFを含有する水分散液を樹脂エマルションに添加する際の樹脂エマルションの温度条件を20℃に変更したこと、及びCNFを含有する水分散液の添加量を400質量部(CNFとして3.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
(比較例6)
CNFを含有する水分散液を樹脂エマルションに添加する際の樹脂エマルションの温度条件を20℃に変更したこと、及びCNFを含有する水分散液の添加量を667質量部(CNFとして5.0質量部)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
(比較例7)
実施例10において、CNFを含有する水分散液に樹脂エマルションを添加する際に、CNFを含有する水分散液を昇温させず、約20℃に維持した状態としたこと以外は、実施例10と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。
<樹脂組成物の製造例B>
以下の実施例12〜24では、樹脂粒子を形成する単量体成分を特定の温度条件下で乳化重合させて樹脂エマルションを得る工程に続けて(その樹脂エマルションを冷却せずに)、CNFを含有する水分散液(約20℃)を添加して、樹脂エマルションにCNFを複合させた複合樹脂組成物を製造した。なお、相対的な評価を行い易くするため、各例において、樹脂(重合体)のガラス転移温度(Tg;理論値)が同等となるように、樹脂を形成する単量体成分の組成を調整した。
(実施例12)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水53.5質量部を仕込み、撹拌しながら内温を80℃まで昇温させた。
一方、上記セパラブルフラスコとは別に、n−ブチルアクリレート(BA)42.9質量部、メチルメタクリレート(MMA)54.6質量部、アクリル酸(AAc)2.0質量部、及びアクリルアミド(AM)0.5質量部からなる単量体成分(総量100質量部)、並びにアニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム2.0質量部(花王社製の商品名「ラテムルE−1000A」(固形分30質量%)6.7質量部)、及び脱イオン水38.0質量部を、ホモディスパーで乳化させ、プレエマルションを調製した。
次に、上記セパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、そのセパラブルフラスコ内の脱イオン水に、調製したプレエマルションを滴下ロートから3時間かけて均一に滴下し、これと同時に、5質量%過硫酸アンモニウム水溶液6.0質量部を、3時間かけて均一に滴下した。それらの滴下終了後、直ちに、機械解繊型CNF(ACC法によるCNF)を含有する水分散液(中越パルプ工業社製の商品名「nanoforest−S(BB−C)」(固形分1.2質量%)を固形分が0.75質量%になるように脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)を、上記セパラブルフラスコ内に滴下ロートから1時間かけて均一に滴下し、そのまま80℃で3時間熟成した。その後、室温(23±2℃)まで冷却し、25質量%アンモニア水1.0質量部を添加して中和し、pHを調整して得られた液を、120メッシュのろ布を用いてろ過し、複合樹脂組成物を得た。
このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。この樹脂組成物中の(メタ)アクリル系樹脂粒子のTg(理論値)は15℃である。
(実施例13)
CNFを含有する水分散液の添加量を、66.7質量部(CNFとして0.5質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して0.5質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例14)
CNFを含有する水分散液の添加量を、100質量部(CNFとして0.75質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して0.75質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例15)
CNFを含有する水分散液の添加量を、400質量部(CNFとして3.0質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して3質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例16)
CNFを含有する水分散液の添加量を、667質量部(CNFとして5.0質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して5質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例17)
実施例12において使用した機械解繊型CNFを含有する水分散液133質量部を、化学解繊型CNFを含有する水分散液(日本製紙社製の商品名「cellenpia」(TEMPO酸化CNF標準品;固形分1.0質量%)を固形分が0.75質量%になるように脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の化学解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例18)
実施例12において使用した機械解繊型CNFを含有する水分散液133質量部を、化学解繊型CNFを含有する水分散液(日本製紙社製の商品名「cellenpia」(TEMPO酸化CNF短繊維品;固形分5.0質量%)を固形分が0.75質量%になるように脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の化学解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例19)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水53.5質量部を仕込み、撹拌しながら内温を60℃まで昇温させた。
一方、上記セパラブルフラスコとは別に、n−ブチルアクリレート(BA)42.9質量部、メチルメタクリレート(MMA)54.6質量部、アクリル酸(AAc)2.0質量部、及びアクリルアミド(AM)0.5質量部からなる単量体成分(総量100質量部)、並びにアニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム2.0質量部(花王社製の商品名「ラテムルE−1000A」(固形分30質量%)6.7質量部)、及び脱イオン水38.0質量部を、ホモディスパーで乳化させ、プレエマルションを調製した。
次に、上記セパラブルフラスコ内の内温を60℃に維持しながら、そのセパラブルフラスコ内の脱イオン水に、調製したプレエマルションを滴下ロートから3時間かけて均一に滴下し、これと同時に、5質量%過硫酸アンモニウム水溶液6.0質量部、及び10質量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液2.5質量部を、3時間かけて均一に滴下した。それらの滴下終了後、直ちに、機械解繊型CNF(ACC法によるCNF)を含有する水分散液(中越パルプ工業社製の商品名「nanoforest−S(BB−C)」(固形分1.2質量%)を固形分が0.75質量%になるように脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)を、上記セパラブルフラスコ内に滴下ロートから1時間かけて均一に滴下し、そのまま60℃で3時間熟成した。その後、室温(23±2℃)まで冷却し、25質量%アンモニア水1.0質量部を添加して中和し、pHを調整して得られた液を、120メッシュのろ布を用いてろ過し、複合樹脂組成物を得た。
このようにして、単量体成分100質量部に対して1質量部のセルロースナノファイバーを複合させた(メタ)アクリル系樹脂粒子を含有する樹脂エマルションを製造した。すなわち、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。なお、この樹脂エマルション中の(メタ)アクリル系樹脂粒子のTg(理論値)は15℃である。
(実施例20)
実施例12において使用した単量体成分(総量100質量部)を、n−ブチルアクリレート(BA)42.3質量部、メチルメタクリレート(MMA)27.6質量部、スチレン(以下、「ST」と記載することがある。)27.6質量部、アクリル酸(AAc)2.0質量部、及びアクリルアミド(AM)0.5質量部からなる単量体成分(総量100質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例21)
実施例12において使用した単量体成分(総量100質量部)を、n−ブチルアクリレート(BA)42.2質量部、メチルメタクリレート(MMA)45.5質量部、アクリロニトリル(以下、「AN」と記載することがある。)9.8質量部、アクリル酸(AAc)2.0質量部、及びアクリルアミド(AM)0.5質量部からなる単量体成分(総量100質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例22)
実施例12において使用した単量体成分(総量100質量部)を、n−ブチルアクリレート(BA)41.9質量部、メチルメタクリレート(MMA)6.8質量部、スチレン(ST)48.8質量部、アクリル酸(AAc)2.0質量部、及びアクリルアミド(AM)0.5質量部からなる単量体成分(総量100質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、スチレン系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例23)
実施例12において使用した単量体成分(総量100質量部)を、n−ブチルアクリレート(BA)42.7質量部、メチルメタクリレート(MMA)6.8質量部、アクリロニトリル(AN)48.0質量部、アクリル酸(AAc)2.0質量部、及びアクリルアミド(AM)0.5質量部からなる単量体成分(総量100質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(実施例24)
実施例12において使用した単量体成分(総量100質量部)を、n−ブチルアクリレート(BA)42.5質量部、及びメチルメタクリレート(MMA)57.5質量部からなる単量体成分(総量100質量部)に変更したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有する複合樹脂組成物を得た。このようにして、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子と、その樹脂粒子(樹脂粒子を形成した単量体成分)100質量部に対して1質量部の機械解繊型CNFとを含有する複合樹脂組成物を製造した。
(比較例8)
実施例12における、CNFを含有する水分散液の代わりにそれに準ずる量の脱イオン水を滴下ロートから1時間かけて滴下したこと以外は、実施例12と同様の方法により、CNFを含有せず、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子とを含有する樹脂組成物を製造した。
(比較例9)
実施例19における、CNFを含有する水分散液の代わりにそれに準ずる量の脱イオン水を滴下ロートから1時間かけて滴下したこと以外は、実施例19と同様の方法により、CNFを含有せず、水と、(メタ)アクリル系樹脂粒子とを含有する樹脂組成物を製造した。
(比較例10)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水53.5質量部、機械解繊型CNF(ACC法によるCNF)を含有する水分散液(中越パルプ工業社製の商品名「nanoforest−S(BB−C)」(固形分1.2質量%)を固形分が0.75質量%になるよう脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)を仕込み、撹拌しながら内温を80℃まで昇温させた。
一方、上記セパラブルフラスコとは別に、n−ブチルアクリレート(BA)42.9質量部、メチルメタクリレート(MMA)54.6質量部、アクリル酸(AAc)2.0質量部、及びアクリルアミド(AM)0.5質量部からなる単量体成分(総量100質量部)、並びにアニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム2.0質量部(花王社製の商品名「ラテムルE−1000A」(固形分30質量%)6.7質量部)、及び脱イオン水38.0質量部を、ホモディスパーで乳化させ、プレエマルションを調製した。
次に、上記セパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、そのセパラブルフラスコ内の脱イオン水とCNFを含有する水分散液との混合物に、調製したプレエマルションを滴下ロートから3時間かけて均一に滴下し、これと同時に、5質量%過硫酸アンモニウム水溶液6.0質量部を、3時間かけて均一に滴下した。しかし、CNFを含む凝集物が多量に生じてしまい、複合樹脂組成物を得ることができなかった。
(比較例11)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、脱イオン水91.5質量部を仕込み、撹拌しながら内温を80℃まで昇温させた。
一方、上記セパラブルフラスコとは別に、n−ブチルアクリレート(BA)42.9質量部、メチルメタクリレート(MMA)54.6質量部、アクリル酸(AAc)2.0質量部、及びアクリルアミド(AM)0.5質量部からなる単量体成分(総量100質量部)、並びにアニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム2.0質量部(花王社製の商品名「ラテムルE−1000A」(固形分30質量%)6.7質量部)、及び機械解繊型CNF(ACC法によるCNF)を含有する水分散液(中越パルプ工業社製の商品名「nanoforest−S(BB−C)」(固形分1.2質量%)を固形分が0.75質量%になるよう脱イオン水で希釈した液)133質量部(CNFとして1.0質量部)を、ホモディスパーで乳化させ、プレエマルションを調製した。
次に、上記セパラブルフラスコ内の内温を80℃に維持しながら、そのセパラブルフラスコ内の脱イオン水に、調製したCNFを含有するプレエマルションを滴下ロートから3時間かけて均一に滴下し、これと同時に、5質量%過硫酸アンモニウム水溶液6.0質量部を、3時間かけて均一に滴下した。しかし、CNFを含む凝集物が多量に生じてしまい、複合樹脂組成物を得ることができなかった。
<評価方法>
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物について、不揮発分、粘度、分散状態、皮膜外観、引張強度、伸度、及びゲル分率をそれぞれ以下に述べる方法にしたがって、測定又は評価した。
(不揮発分)
JIS K6828−1:2003の規定に準じて、乾燥温度140℃、乾燥時間0.5時間の条件で、各樹脂組成物の不揮発分(固形分)(質量%)を測定した。
(粘度)
JIS K6833−1:2008の規定に準拠し、BH型回転粘度計(東機産業社製、BHII形粘度計)を用いて、回転速度10rpm、温度25℃の条件で、各樹脂組成物の粘度(mPa・s)を測定した。
(CNF及び樹脂粒子の分散性)
製造した樹脂組成物を水で500質量倍に希釈し、不揮発分を0.01〜0.1質量%の範囲内に調整し、希釈液を得た。この希釈液を、測定用基材であるマイカ標準試料(日立ハイテクサイエンス社製)に1滴(0.04mL)滴下し、希釈液中の樹脂粒子が粒子形態をとれることが確認された温度23±2℃の環境下で、乾燥シリカゲルを封入したガラス製デシケータ内で24時間乾燥させて試料を作製した。この試料を原子間力顕微鏡(AFM;日立ハイテクノロジーズ社製の商品名「AFM5100N」)を用いて観察し、以下の評価基準にしたがって、CNF及び樹脂粒子の分散性を評価した。なお、比較例1、8及び9については、CNFを使用しなかったため、本評価の対象からは外した。また、このAFMによる観察結果の例として、実施例1及び5、並びに比較例4で得られた各観察画像(50μm角領域の観察画像と10μm角領域の観察画像)を図1に示す。
A:CNFが均一に分散されていて、CNFを含む凝集体がほとんど観察されず、ほぼ全てのCNFに、CNFを軸部とし、その軸部に沿う周囲に樹脂粒子が葡萄の房状に集まってまとわりついている構造が観察された。
B:CNFが均一に分散されていて、CNFを含む凝集体がほとんど観察されず、一部〜大部分のCNFに、CNFを軸部とし、その軸部に沿う周囲に樹脂粒子が葡萄の房状に集まってまとわりついている構造が観察された。
C:CNFを含む凝集体が観察され、それに伴い樹脂粒子も凝集しているような構造が観察された。
(皮膜外観)
製造した樹脂組成物100質量部に、造膜助剤としてテキサノール10質量部を混合した混合液を、剥離基板上に塗布し、23℃、50%RHの環境下で1週間乾燥させて、長さ約210mm、幅約90mm、厚さ約0.6mmの皮膜を作製した。作製した皮膜を目視にて観察し、以下の評価基準にしたがって、皮膜の外観を評価した。この皮膜外観の観察結果の例として、実施例1〜3、比較例1、3及び4で得られた各皮膜の写真を図2に示す。
A:皮膜にひび割れはほとんど確認されず、CNFが均一に分散されていて凝集体がほとんど確認されなかった。
B:皮膜に小さなひび割れ(皮膜の一長辺に対するひび割れの総長さが100%以下のひび割れ)が確認されたが、CNFが均一に分散されていて凝集体がほとんど確認されなかった。
C:皮膜にひび割れはほとんど確認されなかったが、CNFを含む凝集体が確認された。
D:皮膜に大きなひび割れ(皮膜の一長辺に対するひび割れの総長さが100%超のひび割れ)が確認された。
(引張強度及び伸び)
製造した樹脂組成物100質量部に、造膜助剤としてテキサノール10質量部を混合した混合液を、23℃、50%RHの環境下で1週間乾燥させ、短冊状(測定部の長さ約40mm、幅約10mm、厚さ約0.6mm)の皮膜試料を作製した。その皮膜試料について、引張試験機(エー・アンド・デイ社製の商品名「テンシロン万能試験機 RTG−1210」)を用いて、23℃、引張速度300mm/minの条件にて引張試験を行い、引張強度(MPa)及び伸び(%)を測定した。
(ゲル分率)
製造した樹脂組成物を60℃の環境下で20時間乾燥させ、厚さ約1mm、約20mm角の皮膜試料を作製し、この皮膜試料の質量W(g)を測定した。この皮膜試料を酢酸エチルに浸漬させ、23℃、50%RHの環境下で20時間静置した。その後、予め質量W(g)を測定しておいた200メッシュの金網を用いて、酢酸エチルに浸漬させた皮膜試料をろ過し、金網上に不溶分を得た。金網上の不溶分を80℃の環境下で6時間乾燥させ、金網上に乾燥不溶分を得た。この金網と、金網に付着し一体化している乾燥不溶分との総質量W(g)を測定した。そして、以下の式により、ゲル分率を求めた。
ゲル分率(質量%)=((W−W)/W)×100
以上の評価結果を、各実施例及び比較例で使用した単量体及びCNFの量とともに表1〜6に示す。表中の「樹脂/CNF比」は、樹脂組成物中の樹脂粒子(樹脂粒子を構成する単量体成分の総量)100質量部当たりの樹脂組成物中のCNFの含有量を表す。また、表中の「複合方法」欄における「配合〜(X℃)」は、ベース材料として、まずCNF非含有の樹脂エマルションを作製し、それを一旦冷却(反応停止)したものを用いた実施例1〜11及び比較例2〜7で行った方法を表す。具体的には、「配合1(X℃)」(実施例1〜8及び比較例2〜6参照)は、X℃の樹脂エマルションにCNFを含有する約20℃の水分散液を添加したことによる方法を表し、「配合2(X℃)」(実施例9参照)は、X℃の樹脂エマルションにCNFを含有する80℃の水分散液を添加したことによる方法を表す。同様に、「配合3(X℃)」(実施例10及び比較例7参照)は、CNFを含有するX℃の水分散液に約20℃の樹脂エマルションを添加したことによる方法を表し、「配合4(X℃)」(実施例11参照)は、CNFを含有するX℃の水分散液に80℃の樹脂エマルションを添加したことによる方法を表す。また、「反応(X℃)」(実施例12〜24参照)は、単量体成分をX℃で重合させてベースとなる樹脂エマルションを作製しつつ、その樹脂エマルションを冷却せずに、CNFを添加し複合させた方法を表す。
表1〜6に示すように、実施例1〜24で製造した各複合樹脂組成物は、CNF及び樹脂粒子の分散性の評価結果がA又はBであった。すなわち、実施例1〜24で製造した各複合樹脂組成物では、その複合樹脂組成物から作製した試料について、AFMにより観察した場合に、CNFが分散し、かつ、そのCNFを軸部とし、その軸部に沿う周囲に樹脂粒子が葡萄の房状に集まってまとわりついている構造が確認された(例えば図1中の実施例1及び5参照)。その結果、実施例1〜24で製造した各複合樹脂組成物は、CNFが樹脂中に充分均一に分散した皮膜を形成することが可能であることが確認された(例えば図2中の実施例1〜3参照)。
一方、表1〜6に示すように、比較例2〜7で製造した各複合樹脂組成物は、CNF及び樹脂粒子の分散性の評価結果がCであった。すなわち、比較例2〜7で製造した各複合樹脂組成物では、その複合樹脂組成物から作製した試料について、AFMにより観察した場合に、CNFを含む凝集体が観察され、それに伴い樹脂粒子も凝集しているような構造が観察された(例えば図1中の比較例4参照)。その結果、比較例2〜7で製造した各複合樹脂組成物からは、CNFを含む凝集体が存在する皮膜が形成された(例えば図2中の比較例3及び4参照)。

Claims (10)

  1. 水性分散媒と、前記水性分散媒に乳化している樹脂粒子と、前記水性分散媒に分散しているセルロースナノファイバーと、を含有する複合樹脂組成物であって、
    前記樹脂粒子は、(メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
    前記複合樹脂組成物をその不揮発分が0.01〜0.1質量%の範囲内となる量の水で希釈した液を測定用基材に滴下して乾燥させた試料を、原子間力顕微鏡により観察した場合に、前記セルロースナノファイバーが分散し、かつ、そのセルロースナノファイバーに前記樹脂粒子がまとわりついている構造が観察される複合樹脂組成物。
  2. 前記原子間力顕微鏡による観察において、前記セルロースナノファイバーを軸部とし、前記軸部に沿って前記軸部の周りに前記樹脂粒子が葡萄の房状に集まっている構造が観察される請求項1に記載の複合樹脂組成物。
  3. 前記複合樹脂組成物中の前記セルロースナノファイバーの含有量が、前記複合樹脂組成物中の前記樹脂粒子100質量部当たり、0.1〜10質量部の範囲内である請求項1又は2に記載の複合樹脂組成物。
  4. 前記樹脂粒子は、不飽和カルボン酸系単量体、及び(メタ)アクリルアミド系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体に由来する構造単位をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合樹脂組成物。
  5. (メタ)アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、及び(メタ)アクリロニトリル系樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子が水性分散媒に乳化している樹脂エマルションと、セルロースナノファイバーとを、温度が50℃以上の条件下で接触させて、それらを混合する混合工程を含み、
    前記混合工程により、前記水性分散媒と、前記水性分散媒に乳化している前記樹脂粒子と、前記水性分散媒に分散している前記セルロースナノファイバーと、を含有する複合樹脂組成物を得る、複合樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記混合工程は、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液、及び前記樹脂エマルションのいずれか一方に、いずれか他方を、前記いずれか一方の温度が50℃以上の条件下で添加する工程を含む請求項5に記載の複合樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記混合工程は、前記いずれか他方の温度も50℃以上の条件下で、前記いずれか他方を前記いずれか一方に添加する工程を含む請求項6に記載の複合樹脂組成物の製造方法。
  8. 前記いずれか一方は、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液であり、前記いずれか他方は、前記樹脂エマルションであり、
    前記混合工程の前に、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液を50℃以上に加熱する加熱工程をさらに含み、
    前記混合工程は、前記加熱工程により50℃以上に加熱された前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液に、前記樹脂エマルションを添加する工程を含む、請求項6又は7に記載の複合樹脂組成物の製造方法。
  9. 前記いずれか一方は、前記樹脂エマルションであり、前記いずれか他方は、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液であり、
    前記混合工程の前に、前記樹脂エマルションを50℃以上に加熱する加熱工程をさらに含み、
    前記混合工程は、前記加熱工程により50℃以上に加熱された前記樹脂エマルションに、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液を添加する工程を含む、請求項6又は7に記載の複合樹脂組成物の製造方法。
  10. 前記いずれか一方は、前記樹脂エマルションであり、前記いずれか他方は、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液であり、
    前記混合工程の前に、前記樹脂粒子を形成する単量体成分を、温度が50℃以上の条件下で乳化重合させて前記樹脂エマルションを得る重合工程をさらに含み、
    前記混合工程は、前記重合工程に続けて、前記重合工程で得られた、温度が50℃以上の前記樹脂エマルションに、前記セルロースナノファイバーを含有する水分散液を添加する工程を含む、請求項6又は7に記載の複合樹脂組成物の製造方法。

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