以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るステアバイワイヤ式の車両用操向装置の全体構成を示す図である。図1に示すステアバイワイヤ(SBW:Steer By Wire)式の車両用操向装置(以下、「SBWシステム」とも称する)は、ハンドル1の操作を電気信号によって操向車輪8L,8R等からなる転舵機構に伝えるシステムである。図1に示されるように、SBWシステムは、反力装置60及び駆動装置70を備え、コントロールユニット(ECU)50が両装置の制御を行う。
反力装置60は、ハンドル1の操舵トルクTsを検出するトルクセンサ10及び操舵角θhを検出する舵角センサ14、減速機構3、角度センサ74、反力用モータ61等を備えている。これらの各構成部は、ハンドル1のコラム軸2に設けられている。
反力装置60は、舵角センサ14にて操舵角θhの検出を行うと同時に、操向車輪8L,8Rから伝わる車両の運動状態を反力トルクとして運転者に伝達する。反力トルクは、反力用モータ61により生成される。トルクセンサ10は、操舵トルクTsを検出する。また、角度センサ74が、反力用モータ61のモータ角θmを検出する。
駆動装置70は、駆動用モータ71、ギア72、角度センサ73等を備えている。駆動用モータ71により発生する駆動力は、ギア72、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。
駆動装置70は、運転者によるハンドル1の操舵に合わせて、駆動用モータ71を駆動し、その駆動力を、ギア72を介してピニオンラック機構5に付与し、タイロッド6a,6bを経て、操向車輪8L,8Rを転舵する。ピニオンラック機構5の近傍には角度センサ73が配置されており、操向車輪8L,8Rの転舵角θtを検出する。ECU50は、反力装置60及び駆動装置70を協調制御するために、両装置から出力される操舵角θhや転舵角θt等の情報に加え、車速センサ12からの車速Vs等を基に、反力用モータ61を駆動制御する電圧制御指令値Vref1及び駆動用モータ71を駆動制御する電圧制御指令値Vref2を生成する。
コントロールユニット(ECU)50には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット50は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTsと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいて電流指令値の演算を行い、反力用モータ61及び駆動用モータ71に供給する電流を制御する。
コントロールユニット50には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40等の車載ネットワークが接続されている。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
コントロールユニット50は、主としてCPU(MCU、MPU等も含む)で構成される。図2は、SBWシステムを制御するコントロールユニットのハードウェア構成を示す模式図である。
コントロールユニット50を構成する制御用コンピュータ1100は、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)1004、インターフェース(I/F)1005、A/D(Analog/Digital)変換器1006、PWM(Pulse Width Modulation)コントローラ1007等を備え、これらがバスに接続されている。
CPU1001は、SBWシステムの制御用コンピュータプログラム(以下、制御プログラムという)を実行して、SBWシステムを制御する処理装置である。
ROM1002は、SBWシステムを制御するための制御プログラムを格納する。また、RAM1003は、制御プログラムを動作させるためのワークメモリとして使用される。EEPROM1004には、制御プログラムが入出力する制御データ等が格納されている。制御データは、コントロールユニット30に電源が投入された後にRAM1003に展開された制御用コンピュータプログラム上で使用され、所定のタイミングでEEPROM1004に上書きされる。
ROM1002、RAM1003、及びEEPROM1004等は情報を格納する記憶装置であって、CPU1001が直接アクセスできる記憶装置(一次記憶装置)である。
A/D変換器1006は、操舵トルクTs、及び操舵角θhの信号等を入力し、ディジタル信号に変換する。
インターフェース1005は、CAN40に接続されている。インターフェース1005は、車速センサ12からの車速Vの信号(車速パルス)を受け付けるためのものである。
PWMコントローラ1007は、反力用モータ61及び駆動用モータ71に対する電流指令値に基づいてUVW各相のPWM制御信号を出力する。
このようなSBWシステムに本開示を適用した実施形態1の構成について説明する。
図3は、実施形態1に係るコントロールユニットの内部ブロック構成の一例を示す図である。本実施形態では、捩れ角Δθに対する制御(以下、「捩れ角制御」とする)と、転舵角θtに対する制御(以下、「転舵角制御」とする)を行い、反力装置を捩れ角制御で制御し、駆動装置を転舵角制御で制御する。なお、駆動装置は他の制御方法で制御しても良い。
コントロールユニット50は、内部ブロック構成として、目標操舵トルク生成部200、捩れ角制御部300、変換部500、操舵エンド制御部900、目標転舵角生成部910、及び転舵角制御部920を備えている。
目標操舵トルク生成部200は、本開示において車両の操舵系をアシスト制御する際の操舵トルクの目標値である目標操舵トルクTrefを生成する。変換部500は、目標操舵トルクTrefを目標捩れ角Δθrefに変換する。捩れ角制御部300は、反力用モータ61に供給する電流の制御目標値であるモータ電流指令値Imcを生成する。
ここでは、まず、目標操舵トルク生成部200について、図4を参照して説明する。
図4は、目標操舵トルク生成部の一構成例を示すブロック図である。図4に示すように、目標操舵トルク生成部200は、基本マップ部210、乗算部211、微分部220、ダンパゲインマップ部230、ヒステリシス補正部240、SAT情報補正部250、乗算部260、及び加算部261,262,263を備える。図5は、基本マップ部が保持する基本マップの特性例を示す図である。図6は、ダンパゲインマップ部が保持するダンパゲインマップの特性例を示す図である。
基本マップ部210には、操舵角θh及び車速Vsが入力される。基本マップ部210は、図5に示す基本マップを用いて、車速Vsをパラメータとするトルク信号Tref_a0を出力する。すなわち、基本マップ部210は、車速Vsに応じたトルク信号Tref_a0を出力する。
図5に示すように、トルク信号Tref_a0は、操舵角θhの大きさ(絶対値)|θh|の増加に伴い徐々に変化率が小さくなる曲線に沿って増加する特性を有する。また、トルク信号Tref_a0は、車速Vsの増加に伴い増加する特性を有する。なお、図5では操舵角θhの大きさ|θh|に応じたマップを構成しているが、正負の操舵角θhに応じたマップを構成しても良い。この場合、トルク信号Tref_a0の値は、正負の値を取り得、後述する符号計算は不要となる。以下の説明では、図5に示す操舵角θhの大きさ|θh|に応じた正の値であるトルク信号Tref_a0を出力する態様について説明する。
符号抽出部213は、操舵角θhの符号を抽出する。具体的には、例えば、操舵角θhの値を、操舵角θhの絶対値で除算する。これにより、符号抽出部213は、操舵角θhの符号が「+」の場合には「1」を出力し、操舵角θhの符号が「−」の場合には「−1」を出力する。
微分部220には、操舵角θhが入力される。微分部220は、操舵角θhを微分して、角速度情報である舵角速度ωhを算出する。微分部220は、算出した舵角速度ωhを乗算部260に出力する。
ダンパゲインマップ部230には、車速Vsが入力される。ダンパゲインマップ部230は、図6に示す車速感応型のダンパゲインマップを用いて、車速Vsに応じたダンパゲインDGを出力する。
図6に示すように、ダンパゲインDGは、車速Vsが高くなるに従い徐々に大きくなる特性を有する。ダンパゲインDGは、操舵角θhに応じて可変する態様としても良い。
乗算部260は、微分部220から出力される舵角速度ωhに対して、ダンパゲインマップ部230から出力されるダンパゲインDGを乗算し、トルク信号Tref_bとして加算部262に出力する。
ヒステリシス補正部240は、操舵角θh及び操舵状態信号STsに基づき、下記(1)式及び(2)式を用いてトルク信号Tref_cを演算する。操舵状態信号STsについては、ここでは説明を省略するが、モータ角速度ωmの符号に基づき、操舵方向が右切りか左切りかを判定した結果を示す状態信号である。なお、下記(1)式及び(2)式において、xは操舵角θh、yR=Tref_c及びyL=Tref_cはトルク信号(第4トルク信号)Tref_cとする。また、係数aは1よりも大きい値であり、係数cは0よりも大きい値である。係数Ahysは、ヒステリシス特性の出力幅を示し、係数cは、ヒステリシス特性の丸みを表す係数である。
yR=Ahys{1−a−c(x−b)}・・・(1)
yL=−Ahys{1−ac(x−b’)}・・・(2)
右切り操舵の際には、上記(1)式を用いて、トルク信号(第4トルク信号)Tref_c(yR)を算出する。左切り操舵の際には、上記(2)式を用いて、トルク信号(第4トルク信号)Tref_c(yL)を算出する。なお、右切り操舵から左切り操舵へ切り替える際、又は、左切り操舵から右切り操舵へ切り替える際には、操舵角θh及びトルク信号Tref_cの前回値であるの最終座標(x1,y1)の値に基づき、操舵切り替え後の上記(1)式及び(2)式に対し、下記(3)式又は(4)式に示す係数b又はb’を代入する。これにより、操舵切り替え前後の連続性が保たれる。
b=x1+(1/c)loga{1−(y1/Ahys)}・・・(3)
b’=x1−(1/c)loga{1−(y1/Ahys)}・・・(4)
上記(3)式及び(4)式は、上記(1)式及び(2)式において、xにx1を代入し、yR及びyLにy1を代入することにより導出することができる。
係数aとして、例えば、ネイピア数eを用いた場合、上記(1)式、(2)式、(3)式、(4)式は、それぞれ下記(5)式、(6)式、(7)式、(8)式で表せる。
yR=Ahys[1−exp{−c(x−b)}]・・・(5)
yL=−Ahys[{1−exp{c(x−b’)}]・・・(6)
b=x1+(1/c)loge{1−(y1/Ahys)}・・・(7)
b’=x1−(1/c)loge{1−(y1/Ahys)}・・・(8)
図7は、ヒステリシス補正部の特性例を示す図である。図7に示す例では、上記(7)式及び(8)式において、Ahys=1[Nm]、c=0.3と設定し、0[deg]から開始し、+50[deg]、−50[deg]の操舵をした場合の、ヒステリシス補正されたトルク信号Tref_cの特性例を示している。図7に示すように、ヒステリシス補正部240から出力されるトルク信号Tref_cは、0の原点→L1(細線)→L2(破線)→L3(太線)のようなヒステリシス特性を有している。
なお、ヒステリシス特性の出力幅を表す係数であるAhys及び丸みを表す係数であるcを、車速Vs及び操舵角θhの一方又は双方に応じて可変としても良い。
また、舵角速度ωhは、操舵角θhに対する微分演算により求めているが、高域のノイズの影響を低減するために適度にローパスフィルタ(LPF)処理を実施している。また、ハイパスフィルタ(HPF)とゲインにより、微分演算とLPFの処理を実施しても良い。更に、舵角速度ωhは、操舵角θhではなく、上側角度センサが検出するハンドル角θ1又は下側角度センサが検出するコラム角θ2に対して微分演算とLPFの処理を行って算出しても良い。舵角速度ωhの代わりにモータ角速度ωmを角速度情報として使用しても良く、この場合、微分部220は不要となる。
乗算部211は、基本マップ部210から出力されるトルク信号Tref_a0に対して、符号抽出部213から出力される「1」又は「−1」を乗算し、トルク信号Tref_aとして加算部261に出力する。
本実施形態におけるトルク信号Tref_aが、本開示の「第2トルク信号」に対応する。
上述のように求められたトルク信号Tref_a、Tref_b、及びTref_c、並びに、後述する操舵エンド制御部900から出力されるトルク信号Tref_eは、加算部261,262,263で加算され、目標操舵トルクTrefとして出力される。
捩れ角制御では、捩れ角Δθが、操舵角θh等を用いて目標操舵トルク生成部200及び変換部500を経て算出される目標捩れ角Δθrefに追従するような制御を行う。反力用モータ61のモータ角θmは角度センサ74で検出され、モータ角速度ωmは、角速度演算部951にてモータ角θmを微分することにより算出される。また、電流制御部130は、捩れ角制御部300から出力されるモータ電流指令値Imc及びモータ電流検出器140で検出される反力用モータ61の電流値Imrに基づいて、反力用モータ61を駆動して、電流制御を行う。
以下、捩れ角制御部300について、図8を参照して説明する。
図8は、捩れ角制御部の一構成例を示すブロック図である。捩れ角制御部300は、目標捩れ角Δθref、捩れ角Δθ及びモータ角速度ωmに基づいてモータ電流指令値Imcを演算する。捩れ角制御部300は、捩れ角フィードバック(FB)補償部310、捩れ角速度演算部320、速度制御部330、安定化補償部340、出力制限部350、減算部361及び加算部362を備えている。
変換部500から出力される目標捩れ角Δθrefは、減算部361に加算入力される。捩れ角Δθは、減算部361に減算入力されると共に、捩れ角速度演算部320に入力される。モータ角速度ωmは、安定化補償部340に入力される。
捩れ角FB補償部310は、減算部361で算出される目標捩れ角Δθrefと捩れ角Δθの偏差Δθ0に対して補償値CFB(伝達関数)を乗算し、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθが追従するような目標捩れ角速度ωrefを出力する。補償値CFBは、単純なゲインKppでも、PI制御の補償値など一般的に用いられている補償値でも良い。
目標捩れ角速度ωrefは、速度制御部330に入力される。捩れ角FB補償部310及び速度制御部330により、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθを追従させ、所望の操舵トルクを実現することが可能となる。
捩れ角速度演算部320は、捩れ角Δθに対して微分演算処理を行い、捩れ角速度ωtを算出する。捩れ角速度ωtは、速度制御部330に出力される。捩れ角速度演算部320は、微分演算として、HPFとゲインによる擬似微分を行なっても良い。また、捩れ角速度演算部320は、捩れ角速度ωtを別の手段や捩れ角Δθ以外から算出し、速度制御部330に出力するようにしても良い。
速度制御部330は、I−P制御(比例先行型PI制御)により、目標捩れ角速度ωrefに捩れ角速度ωtが追従するようなモータ電流指令値Imca1を算出する。
減算部333は、目標捩れ角速度ωrefと捩れ角速度ωtとの差分(ωref−ωt)を算出する。積分部331は、目標捩れ角速度ωrefと捩れ角速度ωtとの差分(ωref−ωt)を積分し、積分結果を減算部334に加算入力する。
捩れ角速度ωtは、比例部332にも出力される。比例部332は、捩れ角速度ωtに対してゲインKvpによる比例処理を行い、比例処理結果を減算部334に減算入力する。減算部334での減算結果は、モータ電流指令値Imca1として出力される。なお、速度制御部330は、I−P制御ではなく、PI制御、P(比例)制御、PID(比例積分微分)制御、PI−D制御(微分先行型PID制御)、モデルマッチング制御、モデル規範制御等の一般的に用いられている制御方法でモータ電流指令値Imca1を算出しても良い。
安定化補償部340は、補償値Cs(伝達関数)を有しており、モータ角速度ωmからモータ電流指令値Imca2を算出する。追従性及び外乱特性を向上させるために、捩れ角FB補償部310及び速度制御部330のゲインを上げると、高域の制御的な発振現象が発生してしまう。この対策として、モータ角速度ωmに対し、安定化するために必要な伝達関数(Cs)を安定化補償部340に設定する。これにより、EPS制御システム全体の安定化を実現することができる。
加算部362は、速度制御部330からのモータ電流指令値Imca1と安定化補償部340からのモータ電流指令値Imca2とを加算し、モータ電流指令値Imcbとして出力する。
出力制限部350は、モータ電流指令値Imcbに対する上限値及び下限値が予め設定されている。出力制限部350は、モータ電流指令値Imcbの上下限値を制限して、モータ電流指令値Imcを出力する。
なお、本実施形態における捩れ角制御部300の構成は一例であり、図8に示す構成とは異なる態様であっても良い。例えば、捩れ角制御部300は、安定化補償部340を具備しない構成であっても良い。
転舵角制御では、目標転舵角生成部910にて操舵角θh及び後述する操舵エンド制御部900から出力される転舵比率ゲインGに基づいて目標転舵角θtrefが生成される。目標転舵角θtrefは、転舵角θtと共に転舵角制御部920に入力され、転舵角制御部920にて、転舵角θtが目標転舵角θtrefとなるようなモータ電流指令値Imctが演算される。そして、モータ電流指令値Imct及びモータ電流検出器940で検出される駆動用モータ71の電流値Imdに基づいて、電流制御部930が、電流制御部130と同様の構成及び動作により、駆動用モータ71を駆動して、電流制御を行う。
以下、目標転舵角生成部910について、図9を参照して説明する。
図9は、目標転舵角生成部の一構成例を示すブロック図である。目標転舵角生成部910は、制限部931、レート制限部932及び補正部933を備える。
制限部931は、操舵角θhの上下限値を制限した操舵角θh1を出力する。図8に示す捩れ角制御部300内の出力制限部350と同様に、操舵角θhに対する上限値及び下限値を予め設定して制限をかける。
レート制限部932は、操舵角の急変を回避するために、操舵角θh1の変化量に対して制限値を設定して制限をかけ、操舵角θh2を出力する。例えば、1サンプル前の操舵角θh1からの差分を変化量とし、その変化量の絶対値が所定の値(制限値)より大きい場合、変化量の絶対値が制限値となるように、操舵角θh1を加減算し、操舵角θh2として出力し、制限値以下の場合は、操舵角θh1をそのまま操舵角θh2として出力する。なお、変化量の絶対値に対して制限値を設定するのではなく、変化量に対して上限値及び下限値を設定して制限をかけるようにしても良く、変化量ではなく変化率や差分率に対して制限をかけるようにしても良い。
補正部933は、操舵角θh2を補正して、目標転舵角θtrefを出力する。本実施形態では、操舵角θh2に対し、後述する係数Kt、及び操舵エンド制御部900から出力される転舵比率ゲインGを乗じて、目標転舵角θtrefを求める。
以下、転舵角制御部920について、図10を参照して説明する。
図10は、転舵角制御部の一構成例を示すブロック図である。転舵角制御部920は、目標転舵角θtref、及び操向車輪8L,8Rの転舵角θtに基づいてモータ電流指令値Imctを演算する。転舵角制御部920は、転舵角フィードバック(FB)補償部921、転舵角速度演算部922、速度制御部923、出力制限部926、及び減算部927を備えている。
目標転舵角生成部910から出力される目標転舵角θtrefは、減算部927に加算入力される。転舵角θtは、減算部927に減算入力されると共に、転舵角速度演算部922に入力される。
転舵角FB補償部921は、減算部927で算出される目標転舵角速度ωtrefと転舵角θtとの偏差Δθt0に対して補償値CFB(伝達関数)を乗算し、目標転舵角θtrefに転舵角θtが追従するような目標転舵角速度ωtrefを出力する。補償値CFBは、単純なゲインKppでも、PI制御の補償値など一般的に用いられている補償値でも良い。
目標転舵角速度ωtrefは、速度制御部923に入力される。転舵角FB補償部921及び速度制御部923により、目標転舵角θtrefに転舵角θtを追従させ、所望のトルクを実現することが可能となる。
転舵角速度演算部922は、転舵角θtに対して微分演算処理を行い、転舵角速度ωttを算出する。転舵角速度ωttは、速度制御部923に出力される。速度制御部923は、微分演算として、HPFとゲインによる擬似微分を行なっても良い。また、速度制御部923は、転舵角速度ωttを別の手段や転舵角θt以外から算出し、速度制御部923に出力するようにしても良い。
速度制御部923は、I−P制御(比例先行型PI制御)により、目標転舵角速度ωtrefに転舵角速度ωttが追従するようなモータ電流指令値Imctaを算出する。なお、速度制御部923は、I−P制御ではなく、PI制御、P(比例)制御、PID(比例積分微分)制御、PI−D制御(微分先行型PID制御)、モデルマッチング制御、モデル規範制御等の一般的に用いられている制御方法でモータ電流指令値Imctaを算出しても良い。
減算部928は、目標転舵角速度ωtrefと転舵角速度ωttとの差分(ωtref−ωtt)を算出する。積分部924は、目標転舵角速度ωtrefと転舵角速度ωttとの差分(ωtref−ωtt)を積分し、積分結果を減算部929に加算入力する。
転舵角速度ωttは、比例部925にも出力される。比例部925は、転舵角速度ωttに対して比例処理を行い、比例処理結果を出力制限部926にモータ電流指令値Imctaとして出力する。
出力制限部926は、モータ電流指令値Imctaに対する上限値及び下限値が予め設定されている。出力制限部926は、モータ電流指令値Imctaの上下限値を制限して、モータ電流指令値Imctを出力する。
なお、本実施形態における転舵角制御部920の構成は一例であり、図10に示す構成とは異なる態様であっても良い。
このような構成において、実施形態1の動作例を、図11のフローチャートを参照して説明する。図11は、実施形態1の動作例を示すフローチャートである。
動作を開始すると、角度センサ73は転舵角θtを検出し、角度センサ74はモータ角θmを検出し(ステップS110)、転舵角θtは転舵角制御部920に、モータ角θmは角速度演算部951にそれぞれ入力される。
角速度演算部951は、モータ角θmを微分してモータ角速度ωmを算出し、捩れ角制御部300に出力する(ステップS120)。
その後、目標操舵トルク生成部200において、目標操舵トルクTrefを生成し(ステップS130)、変換部500は、目標操舵トルク生成部200で生成された目標操舵トルクTrefを目標捩れ角Δθrefに変換し(ステップS140)、捩れ角制御部300は、目標捩れ角Δθref、捩れ角Δθ、及びモータ角速度ωmに基づき、モータ電流指令値Imcを演算する(ステップS150)。そして、電流制御部130は、捩れ角制御部300から出力されたモータ電流指令値Imcに基づいて電流制御を実施し、モータ20が駆動される(ステップS160)。
一方、転舵角制御においては、目標転舵角生成部910が操舵角θhを入力し、操舵角θhは制限部931に入力される。制限部931は、予め設定された上限値及び下限値により操舵角θhの上下限値を制限し(ステップS170)、操舵角θh1としてレート制限部932に出力する。レート制限部932は、予め設定された制限値により操舵角θh1の変化量に対して制限をかけ(ステップS180)、操舵角θh2として補正部933に出力する。補正部933は、操舵角θh2を補正して目標転舵角θtrefを求め(ステップS190)、転舵角制御部920に出力する。
転舵角θt及び目標転舵角θtrefを入力した転舵角制御部920は、減算部927にて目標転舵角θtrefから転舵角θtを減算することにより、偏差Δθt0を算出する(ステップS200)。偏差Δθt0は転舵角FB補償部921に入力され、転舵角FB補償部921は、偏差Δθt0に補償値を乗算することにより偏差Δθt0を補償し(ステップS210)、目標転舵角速度ωtrefを速度制御部923に出力する。転舵角速度演算部922は転舵角θtを入力し、転舵角θtに対する微分演算により転舵角速度ωttを算出し(ステップS220)、速度制御部923に出力する。速度制御部923は、速度制御部330と同様にI−P制御によりモータ電流指令値Imctaを算出し(ステップS230)、出力制限部926に出力する。出力制限部926は、予め設定された上限値及び下限値によりモータ電流指令値Imctaの上下限値を制限し(ステップS240)、モータ電流指令値Imctとして出力する(ステップS250)。
モータ電流指令値Imctは電流制御部930に入力され、電流制御部930は、モータ電流指令値Imct及びモータ電流検出器940で検出された駆動用モータ71の電流値Imdに基づいて、駆動用モータ71を駆動し、電流制御を実施する(ステップS260)。
なお、図11におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。また、転舵角制御部920での追従制御は、一般的に用いられている制御構造で行っても良い。転舵角制御部920については、目標角度(ここでは目標転舵角θtref)に対して実角度(ここでは転舵角θt)が追従する制御構成であれば、車両用装置に用いられている制御構成に限定されず、例えば、産業用位置決め装置や産業用ロボット等に用いられている制御構成を適用しても良い。
また、本実施形態では、図1に示されるように、1つのECU50で反力装置60及び駆動装置70の制御を行っているが、反力装置60用のECUと駆動装置70用のECUをそれぞれ設けても良い。この場合、ECU同士は通信によりデータの送受信を行うことになる。
図12は、実施形態1に係る操舵エンド制御部の一構成例を示すブロック図である。図12に示すように、操舵エンド制御部900は、エンド目標操舵トルク生成部901及び転舵比率ゲイン演算部905を備えている。
実施形態1に係る操舵エンド制御部900には、操舵角θh及びエンド操舵角θh_eが入力される。本実施形態では、最大転舵角θt_maxに対応する操舵角がエンド操舵角θh_eとして設定される。ここで、最大転舵角θt_maxとは、駆動装置70を含む転舵機構において、構造的に定まる機械的なタイヤ角度の最大切れ角、または、制御誤差を考慮した、それよりも僅かに小さい値を示す。エンド操舵角θh_eは、例えば、コントロールユニット50を構成する制御用コンピュータ1100のEEPROM1004等に記憶されていても良いし、操舵エンド制御部900が保持する態様であっても良い。
エンド目標操舵トルク生成部901は、操舵角θh及びエンド操舵角θh_eに基づき、運転者によるハンドル1の操作を制限するためのトルク信号Tref_eを生成して出力する。
本実施形態におけるトルク信号Tref_eが、本開示の「第1トルク信号」に対応する。
転舵比率ゲイン演算部905は、エンド操舵角θh_eに基づき、上述した目標転舵角生成部910に適用する転舵比率ゲインGを演算して出力する。
実施形態1に係る操舵エンド制御部900の具体的な動作について、図12から図14を参照して説明する。図13は、実施形態1に係るエンド目標操舵トルク生成部から出力されるトルク信号Tref_eの一例を示す図である。図14は、実施形態1において目標操舵トルク生成部から出力される目標操舵トルクTrefの一例を示す図である。図13において、横軸は操舵角θhの絶対値|θh|を示し、縦軸はトルク信号Tref_eの絶対値|Tref_e|を示している。図14において、横軸は操舵角θhの絶対値|θh|を示し、縦軸は目標操舵トルクTrefの絶対値|Tref|を示している。
図13に示すように、トルク信号Tref_e(第1トルク信号)は、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e以上となる領域において、所定の変化率でゼロから増加する特性を有している。また、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e以上となる領域におけるトルク信号Tref_e(第1トルク信号)の変化率は、トルク信号Tref_a(第2トルク信号)の最大変化率よりも大きい。
本実施形態において、エンド目標操舵トルク生成部901は、下記(9)式を用いてトルク信号Tref_eを演算する。
Tref_e=Ke×max(0,(|θh|−θh_e))×sign(θh)
・・・(9)
上記(9)式において、係数Keは、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e以上となる領域(図13参照)におけるトルク信号Tref_eの傾きを決定する係数値である。図13に示すように、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e未満となる領域において、トルク信号Tref_eの絶対値|Tref_e|は0となる。また、図13に示すように、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e以上となる領域において、トルク信号Tref_eの絶対値|Tref_e|は傾きが係数Keの直線となる。係数Keの値が大きいほど、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e以上となる領域において、トルク信号Tref_eが急峻に立ち上がる。
目標操舵トルク生成部200は、上述したトルク信号Tref_a(第2トルク信号)に対し、トルク信号Tref_b、トルク信号Tref_c、及び上述したトルク信号Tref_eを加算して、目標操舵トルクTrefを生成する(図4参照)。これにより、図14に示すように、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e以上となる領域において急峻に立ち上がる目標操舵トルクTrefを生成することができる。本実施形態に係る車両用操向装置(SBWシステム)は、この目標操舵トルクTrefを適用して反力用モータ61を制御することにより、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e以上となる領域において運転者がハンドル1から受ける反力が大きくなり、運転者によるハンドル1の操作が制限される。
また、本実施形態において、転舵比率ゲイン演算部905は、下記(10)式を用いて転舵比率ゲインGを演算する。
G=(θt_max/Kt)/θh_e・・・(10)
上記(10)式において、係数Ktは、転舵比率ゲインGの基準値(タイヤ角/操舵角基本換算ゲイン、以下、単に「基本換算ゲイン」とも称する)である。基本換算ゲインKtは、ハンドルの操作量である操舵角θhに対するタイヤの転舵角θtの変化量の基本比率を表している。例えば、操舵角が360[deg]であるとき、タイヤの転舵角θtが30[deg]とする場合、Kt=30/360=1/12となる。すなわち、例えば車両の車速Vsが30[km/h]以上の領域において転舵比率ゲインG=1で一定となるとき、操舵角θhの操作量に対する転舵角θtの変化量は、基本換算ゲインKtで変化する。また、例えば車両の車速Vsが30[km/h]未満の領域において転舵比率ゲインG>1となるとき、操舵角θhの操作量に対する転舵角θtの変化量は、基本換算ゲインKtよりも高い比率で変化することとなる。
上述したように、実施形態1に係る車両用操向装置(SBWシステム)は、トルクの目標値である目標操舵トルクTrefを生成する目標操舵トルク生成部200と、ハンドル1の操舵角θh、及び、最大転舵角θt_maxに対応するエンド操舵角θh_eに基づき、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e未満となる領域においてゼロとなり、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e以上となる領域において、所定の傾きでゼロから直線的に増加するトルク信号Tref_e(第1トルク信号)を生成するエンド目標操舵トルク生成部901と、を備える。目標操舵トルク生成部200は、少なくとも操舵角θhの絶対値|θh|の増加に伴い徐々に変化率が小さくなる曲線に沿って増加するトルク信号Tref_a(第2トルク信号)に対し、トルク信号Tref_e(第1トルク信号)を加算して、目標操舵トルクTrefを生成する。
これにより、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_e以上となる領域では、運転者がハンドル1から受ける反力が大きくなり、運転者によるハンドル1の操作が制限される。
このように、本実施形態によれば、最大転舵角θt_maxに対応して、ハンドル1の操作を制限することができる。
(実施形態2)
図15は、実施形態2に係るコントロールユニットの内部ブロック構成の一例を示す図である。図16は、実施形態2に係る操舵エンド制御部の一構成例を示すブロック図である。なお、上述した実施形態1で説明した構成と同じ構成部には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図15に示すように、実施形態2に係る操舵エンド制御部900aには、操舵角θhに加えて、車両の車速Vsが入力される。また、図16に示すように、操舵エンド制御部900aは、実施形態1の構成に加え、エンド操舵角設定部904を備えている。
エンド操舵角設定部904は、エンド操舵角マップ906を備えている。エンド操舵角マップ906は、車両の車速Vsに応じたエンド操舵角θh_eが設定されている。エンド操舵角マップ906は、例えば、コントロールユニット50を構成する制御用コンピュータ1100のEEPROM1004等に記憶されていても良いし、操舵エンド制御部900aが保持する態様であっても良い。
実施形態2に係る操舵エンド制御部900aのエンド操舵角設定部904には、車両の車速Vsが入力される。エンド操舵角設定部904は、エンド操舵角マップ906に基づき、車速Vsに応じたエンド操舵角θh_eを出力する。以下、θt_max/Ktが360[deg]となるように基本換算ゲインKtを設定した例について説明する。
図17は、実施形態2に係るエンド操舵角マップの一例を示す図である。図17において、横軸は車速Vsを示し、縦軸はエンド操舵角θh_eを示している。図18は、実施形態2に係るエンド目標操舵トルク生成部から出力されるトルク信号Tref_eの一例を示す図である。図19は、実施形態2において目標操舵トルク生成部から出力される目標操舵トルクTrefの一例を示す図である。図18において、横軸は操舵角θhの絶対値|θh|を示し、縦軸はトルク信号Tref_eの絶対値|Tref_e|を示している。図19において、横軸は操舵角θhの絶対値|θh|を示し、縦軸は目標操舵トルクTrefの絶対値|Tref|を示している。
図17に示す例では、車速Vsの大きさが第1車速V1以上の領域を第1領域とし、この第1領域におけるエンド操舵角θh_eを、360[deg]の一定値としている。また、車速Vsの大きさが第1車速V1よりも小さい第3車速V3以上、かつ、第1車速V1未満の領域を第2領域とし、この第2領域におけるエンド操舵角θh_eを、180[deg]以上、かつ、360[deg]未満とし、車速Vsの大きさが小さくなるに従い、エンド操舵角θh_eが360[deg]から180[deg]に至るまでの範囲内において徐々に小さくなるようにしている。また、車速Vsの大きさが0[km/h]以上、かつ、第3車速V3未満の領域を第3領域とし、この第3領域におけるエンド操舵角θh_eを、180[deg]の一定値としている。
なお、図17に示す例では、車速Vsの大きさが第3車速V3よりも大きく第1車速V1よりも小さい第2車速V2におけるエンド操舵角θh_eを240[deg]としている。
図17に示す例において、第3車速V3を例えば10[km/h]、第2車速V2を例えば20[km/h]、第1車速V1を例えば30[km/h]としても良い。
実施形態2に係る操舵エンド制御部900aの具体的な動作について、図16から図20を参照して説明する。図20は、図17に示す例において、転舵比率ゲイン演算部から出力される転舵比率ゲインの一例を示す図である。図20において、横軸は車速Vsを示し、縦軸は転舵比率ゲインGを示している。
本実施形態において、エンド目標操舵トルク生成部901及び転舵比率ゲイン演算部905の具体的な動作は実施形態1と同様であるが、図17から図19に示すように、エンド操舵角θh_eの値を、車速Vsに応じて変化させている点が異なっている。また、エンド操舵角θh_eの変化カーブを図17に示す態様とすることにより、図20に示すように、第1領域における転舵比率ゲインGは、「1.0」の一定値となり、第3領域における転舵比率ゲインGは、「2.0」の一定値となり、第2領域における転舵比率ゲインGは、車速Vsの大きさが第3車速V3から大きくなるに従い、「2.0」から「1.0」に至るまでの範囲内で徐々に小さくなる。なお、図17から図20に示す例は一例であって、第3車速V3、第2車速V2、第1車速V1の具体的な数値、エンド操舵角θh_eの具体的な数値、転舵比率ゲインGの具体的な数値はこれに限るものではない。
上述したように、車速Vsの大きさが第1車速V1以上の高速域、すなわち第1領域では、エンド操舵角θh_eを360[deg]の一定値とすることにより、転舵比率ゲインGを「1.0」の一定値とすることができる。これにより、高速域における車両の挙動を安定させることができる。
また、車速Vsの大きさが0以上、かつ、第3車速V3未満の低速域、すなわち第3領域では、エンド操舵角θh_eを180[deg]の一定値とすることにより、転舵比率ゲインGを「2.0」の一定値とすることができる。これにより、低速域における車両の挙動を安定させることができ、安定して十字路やクランク等を走行することができる。
また、車速Vsの大きさが第3車速V3以上、かつ、第1車速V1未満の中速域、すなわち第2領域では、車速Vsの大きさが小さくなるに従い、エンド操舵角θh_eが360[deg]から180[deg]に至るまでの範囲内において徐々に小さくなるようにすることにより、車速Vsの大きさが第3車速V3から大きくなるに従い、転舵比率ゲインGを「2.0」から「1.0」に至るまでの範囲内で徐々に小さくすることができる。これにより、車速Vsの変化に伴うタイヤの転舵角の急変動を抑制することができ、安定した操舵感を得ることができる。
上述したように、本実施形態では、少なくとも車両の車速Vsに応じてエンド操舵角θh_eを設定するエンド操舵角設定部904と、エンド操舵角θh_eに基づき、タイヤの目標転舵角を生成する際に操舵角θhに乗じる転舵比率ゲインGを演算する転舵比率ゲイン演算部905と、を備える。
具体的に、エンド操舵角設定部904は、車両の車速Vsが第1車速V1以上の領域を第1領域、車両の車速Vsが第1車速V1よりも小さい第3車速V3以上、かつ、第1車速V1未満の領域を第2領域、車両の車速Vsが0以上、かつ、第3車速V3未満の領域を第3領域、としたとき、第3領域におけるエンド操舵角θh_eを、第1領域におけるエンド操舵角θh_eよりも小さい値に設定する。そしてさらに、第1領域におけるエンド操舵角θh_eを一定値(例えば、360[deg])に設定し、第3領域におけるエンド操舵角を第1領域におけるエンド操舵角θh_eとは異なる一定値(例えば、180[deg])に設定し、第2領域におけるエンド操舵角θh_eを第1領域におけるエンド操舵角θh_e(例えば、360[deg])から第3領域におけるエンド操舵角θh_e(例えば、180[deg])に至るまでの範囲内において徐々に小さい値となるように設定する。
これにより、車速Vsに応じたエンド操舵角θh_eに連動して、転舵比率ゲインGを変化させることができる。
具体的には、車速Vsの大きさが第1車速V1以上の高速域、すなわち第1領域では、エンド操舵角θh_eを360[deg]の一定値とすることにより、転舵比率ゲインGを「1.0」の一定値とすることができる。
また、車速Vsの大きさが0以上、かつ、第3車速V3未満の低速域、すなわち第3領域では、エンド操舵角θh_eを180[deg]の一定値とすることにより、転舵比率ゲインGを「2.0」の一定値とすることができる。
また、車速Vsの大きさが第3車速V3以上、かつ、第1車速V1未満の中速域、すなわち第2領域では、車速Vsの大きさが小さくなるに従い、エンド操舵角θh_eが360[deg]から180[deg]に至るまでの範囲内において徐々に小さくなるようにすることにより、車速Vsの大きさが第3車速V3から大きくなるに従い、転舵比率ゲインGを「2.0」から「1.0」に至るまでの範囲内で徐々に小さくすることができる。
このように、本実施形態によれば、最大転舵角θt_maxに対応するエンド操舵角θh_eを車速Vsに応じて変化させることで、車速Vsに応じた操舵角でハンドル1の操作を制限することができ、車速Vsに応じたエンド操舵角θh_eに連動して、転舵比率ゲインGを変化させることができるので、走行安定性の向上に寄与することができる。
(実施形態3)
図21は、実施形態3に係る操舵エンド制御部の一構成例を示すブロック図である。なお、上述した実施形態1,2で説明した構成と同じ構成部には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態3に係る操舵エンド制御部900bの構成では、エンド操舵角設定部904aがエンド操舵角演算部907を備える点で実施形態2とは異なる。エンド操舵角マップ906aは、実質的に実施形態2のエンド操舵角マップ906と同様である。エンド操舵角マップ906aは、車両の車速Vsに応じた基本エンド操舵角θh_e0が設定されている。エンド操舵角マップ906aは、例えば、コントロールユニット50を構成する制御用コンピュータ1100のEEPROM1004等に記憶されていても良いし、操舵エンド制御部900bが保持する態様であっても良い。
エンド操舵角演算部907は、操舵角θh及び基本エンド操舵角θh_e0に基づき、エンド操舵角θh_eを演算して、エンド目標操舵トルク生成部901及び転舵比率ゲイン演算部905に出力する。
以下、エンド操舵角演算部907の処理について説明する。図22は、実施形態3に係るエンド操舵角演算部の処理の第1例を示すフローチャートである。実施形態3に係るエンド操舵角演算部907の処理の第1例において、θh_e’は、エンド操舵角演算部907から出力されたエンド操舵角θh_eの前回値を示している。
操舵角θh及び基本エンド操舵角θh_e0が入力されると(ステップS101)、エンド操舵角演算部907は、エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’を保持しているか否かを判定する(ステップS102)。なお、エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’は、エンド操舵角演算部907が保持する態様であっても良いし、例えば、コントロールユニット50を構成する制御用コンピュータ1100のRAM1003又はEEPROM1004に保持しておき、ステップS102において読み出す態様であっても良い。
エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’を保持していない場合(ステップS102;No)、エンド操舵角演算部907は、基本エンド操舵角θh_e0をエンド操舵角θh_eとして出力し(ステップS103)、当該エンド操舵角θh_eをエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’として記憶する(ステップS104)。以下、ステップS101の処理に戻り、同様の処理を繰り返し行う。
エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’を保持している場合(ステップS102;Yes)、エンド操舵角演算部907は、操舵角θhの絶対値|θh|が所定の第1閾値θhth1未満(|θh|<θhth1)であるか否かを判定する(ステップS105)。ここで、ステップS105において判定に用いる第1閾値θhth1としては、例えば、180[deg]とすることができる。なお、このステップS105において判定に用いる第1閾値θhth1は一例であって、これに限るものではない。
操舵角θhの絶対値|θh|が第1閾値θhth1未満(|θh|<θhth1)である場合(ステップS105;Yes)、エンド操舵角演算部907は、基本エンド操舵角θh_e0をエンド操舵角θh_eとして出力し(ステップS103)、当該エンド操舵角θh_eをエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’として記憶する(ステップS104)。以下、ステップS101の処理に戻り、同様の処理を繰り返し行う。
操舵角θhの絶対値|θh|が第1閾値θhth1以上(|θh|≧θhth1)である場合(ステップS105;No)、エンド操舵角演算部907は、エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’をエンド操舵角θh_eとして出力し(ステップS106)、当該エンド操舵角θh_eをエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’として記憶する(ステップS104)。以下、ステップS101の処理に戻り、同様の処理を繰り返し行う。
上述した実施形態3に係るエンド操舵角演算部907の処理の第1例の処理によれば、操舵角θhの絶対値|θh|が所定の第1閾値θhth1以上(|θh|≧θhth1)である場合には、エンド操舵角θh_eの変化が制限される。これにより、比較的変化割合の大きくなる大舵角領域での、車速変化によるタイヤの転舵角の変化を抑制することができ、運転者の操舵感に与える違和感を軽減できる。
図23は、実施形態3に係るエンド操舵角演算部の処理の第2例を示すフローチャートである。実施形態3に係るエンド操舵角演算部907の処理の第2例においても、θh_e’は、実施形態3に係るエンド操舵角演算部907の処理の第1例と同様に、エンド操舵角演算部907から出力されたエンド操舵角θh_eの前回値を示している。
図23に示す実施形態3に係るエンド操舵角演算部907の処理の第2例において、ステップS201からステップS204までの処理は、上述した実施形態3に係るエンド操舵角演算部907の処理の第1例のステップS101からステップS104までの処理と同様である。
エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’を保持している場合(ステップS202;Yes)、エンド操舵角演算部907は、操舵角θhの絶対値|θh|が基本エンド操舵角θh_e0未満(|θh|<θh_e0)であるか否かを判定する(ステップS205)。
操舵角θhの絶対値|θh|が基本エンド操舵角θh_e0未満(|θh|<θh_e0)である場合(ステップS205;Yes)、エンド操舵角演算部907は、基本エンド操舵角θh_e0をエンド操舵角θh_eとして出力し(ステップS203)、当該エンド操舵角θh_eをエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’として記憶する(ステップS204)。以下、ステップS201の処理に戻り、同様の処理を繰り返し行う。
操舵角θhの絶対値|θh|が基本エンド操舵角θh_e0以上(|θh|≧θh_e0)である場合(ステップS205;No)、エンド操舵角演算部907は、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’未満(|θh|<θh_e’)であるか否かを判定する(ステップS206)。
操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’未満(|θh|<θh_e’)である場合(ステップS206;Yes)、エンド操舵角演算部907は、操舵角θhの絶対値|θh|をエンド操舵角θh_eとして出力し(ステップS207)、当該エンド操舵角θh_eをエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’として記憶する(ステップS204)。以下、ステップS201の処理に戻り、同様の処理を繰り返し行う。
操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’以上(|θh|≧θh_e’)である場合(ステップS206;No)、エンド操舵角演算部907は、エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’をエンド操舵角θh_eとして出力し(ステップS208)、当該エンド操舵角θh_eをエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’として記憶する(ステップS204)。以下、ステップS201の処理に戻り、同様の処理を繰り返し行う。
上述した実施形態2では、例えば実施形態2において説明した図17に示すようなエンド舵角マップで運用している場合に、操舵角θhを360[deg]の状態で運転者がハンドル1を保舵しながら、車速Vsを30[km/h]から10[km/h]まで減速したとき、操舵角θhが180[deg]までハンドル1が押し戻されることとなり、運転者の操舵感に違和感を与える可能性がある。上述した実施形態3に係るエンド操舵角演算部907の処理の第2例の処理によれば、操舵角θhの絶対値|θh|が基本エンド操舵角θh_e0以上の領域にある場合には、エンド操舵角θh_eの変化が制限される。これにより、車速Vsの変化に伴うエンド操舵角の変化を抑制することができ、運転者の操舵感に与える違和感を軽減できる。
上述したように、実施形態3に係る車両用操向装置(SBWシステム)は、車両の車速Vsに応じた基本エンド操舵角θh_e0が設定されたエンド操舵角マップ906と、操舵角θh及び基本エンド操舵角θh_e0に基づき、エンド操舵角θh_eを演算するエンド操舵角演算部907と、を備える。
これにより、車両の車速Vsや操舵角θhの変動によって運転者の操舵感に与える違和感を軽減できる。
(実施形態4)
図24は、実施形態4に係る操舵エンド制御部の一構成例を示すブロック図である。なお、上述した実施形態1〜3で説明した構成と同じ構成部には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態4に係る操舵エンド制御部900cの構成では、エンド操舵角設定部904bが変化量制限部908を備える点で実施形態3とは異なる。
エンド操舵角マップ906aは、実質的に実施形態2のエンド操舵角マップ906と同様である。エンド操舵角マップ906aは、車両の車速Vsに応じた基本エンド操舵角θh_e0が設定されている。エンド操舵角マップ906aは、例えば、コントロールユニット50を構成する制御用コンピュータ1100のEEPROM1004等に記憶されていても良いし、操舵エンド制御部900bが保持する態様であっても良い。
エンド操舵角演算部907aは、実質的に実施形態3のエンド操舵角演算部907と同様である。エンド操舵角演算部907aは、操舵角θh及び基本エンド操舵角θh_e0に基づき、エンド操舵角θh_e1を演算して、変化量制限部908に出力する。
変化量制限部908は、エンド操舵角θh_e1の変化量を制限して、エンド操舵角θh_eをエンド目標操舵トルク生成部901及び転舵比率ゲイン演算部905に出力する。
以下、エンド操舵角演算部907a及び変化量制限部908の処理について説明する。図25は、実施形態4に係るエンド操舵角演算部及び変化量制限部の処理の第1例を示すフローチャートである。実施形態4に係るエンド操舵角演算部907aの処理の第1例において、θh_e1’は、エンド操舵角演算部907aから出力されたエンド操舵角θh_e1の前回値を示している。また、θh_e’は、変化量制限部908から出力されたエンド操舵角θh_eの前回値を示している。
操舵角θh及び基本エンド操舵角θh_e0が入力されると(ステップS301)、エンド操舵角演算部907aは、エンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’を保持しているか否かを判定する(ステップS302)。なお、エンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’は、エンド操舵角演算部907aが保持する態様であっても良いし、例えば、コントロールユニット50を構成する制御用コンピュータ1100のRAM1003又はEEPROM1004に保持しておき、ステップS302において読み出す態様であっても良い。
エンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’を保持していない場合(ステップS302;No)、エンド操舵角演算部907aは、基本エンド操舵角θh_e0をエンド操舵角θh_e1として出力し(ステップS304)、当該エンド操舵角θh_e1をエンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’として記憶する(ステップS305)。
エンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’を保持している場合(ステップS302;Yes)、エンド操舵角演算部907aは、操舵角θhの絶対値|θh|が所定の第1閾値θhth1未満(|θh|<θhth1)であるか否かを判定する(ステップS303)。ここで、ステップS303において判定に用いる第1閾値θhth1としては、例えば、180[deg]とすることができる。なお、このステップS303において判定に用いる第1閾値θhth1は一例であって、これに限るものではない。
操舵角θhの絶対値|θh|が第1閾値θhth1未満(|θh|<θhth1)である場合(ステップS303;Yes)、エンド操舵角演算部907aは、基本エンド操舵角θh_e0をエンド操舵角θh_e1として出力し(ステップS304)、当該エンド操舵角θh_e1をエンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’として記憶する(ステップS305)。
操舵角θhの絶対値|θh|が第1閾値θhth1以上(|θh|≧θhth1)である場合(ステップS303;No)、エンド操舵角演算部907aは、エンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’をエンド操舵角θh_e1として出力し(ステップS306)、当該エンド操舵角θh_e1をエンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’として記憶する(ステップS305)。
エンド操舵角θh_e1が変化量制限部908に入力されると、変化量制限部908は、入力されたエンド操舵角θh_e1とエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’との差分値の絶対値が所定の第2閾値θhth2未満(|θh_e1−θh_e’|<θhth2)であるか否かを判定する(ステップS307)。ここで、ステップS307において判定に用いる第2閾値θhth2としては、例えば、10[deg/s]に相当する値とすることができる。なお、このステップS307において判定に用いる第2閾値θhth2は一例であって、これに限るものではない。
エンド操舵角θh_e1とエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’との差分値の絶対値が第2閾値θhth2未満(|θh_e1−θh_e’|<θhth2)である場合(ステップS308;Yes)、変化量制限部908は、基本エンド操舵角θh_e1をエンド操舵角θh_eとして出力し(ステップS308)、当該エンド操舵角θh_eをエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’として記憶する(ステップS309)。以下、ステップS301の処理に戻り、同様の処理を繰り返し行う。
エンド操舵角θh_e1とエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’との差分値の絶対値が第2閾値θhth2以上(|θh_e1−θh_e’|≧θhth2)である場合(ステップS307;No)、続いて、変化量制限部908は、エンド操舵角θh_e1からエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’を減算した値が第2閾値θhth2以上(θh_e1−θh_e’≧θhth2)であるか否かを判定する(ステップS310)。
エンド操舵角θh_e1とエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’との差分値の絶対値が第2閾値θhth2以上(|θh_e1−θh_e’|≧θhth2)であり(ステップS307;No)、かつ、エンド操舵角θh_e1からエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’ を減算した値が第2閾値θhth2以上(θh_e1−θh_e’≧θhth2)である場合(ステップS310;Yes)、変化量制限部908は、エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’に第2閾値θhth2を加算してエンド操舵角θh_eとして出力し(ステップS311)、当該エンド操舵角θh_eをエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’として記憶する(ステップS309)。以下、ステップS301の処理に戻り、同様の処理を繰り返し行う。
エンド操舵角θh_e1とエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’との差分値の絶対値が第2閾値θhth2以上(|θh_e1−θh_e’|≧θhth2)であり(ステップS307;No)、かつ、エンド操舵角θh_e1からエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’ を減算した値が第2閾値θhth2未満(θh_e1−θh_e’<θhth2)である場合(ステップS310;No)、すなわち、θh_e1−θh_e’≦(−θhth2)を満たす場合、変化量制限部908は、エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’から第2閾値θhth2を減算してエンド操舵角θh_eとして出力し(ステップS312)、当該エンド操舵角θh_eをエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’として記憶する(ステップS309)。以下、ステップS301の処理に戻り、同様の処理を繰り返し行う。
上述した実施形態4に係るエンド操舵角演算部の処理の第1例の処理によれば、操舵角θhの絶対値|θh|が所定の第1閾値θhth1以上(|θh|≧θhth1)である場合には、エンド操舵角θh_e1の変化が制限される。これにより、比較的変化割合の大きくなる大舵角領域での、車速変化によるタイヤの転舵角の変化を抑制することができ、運転者の操舵感に与える違和感を軽減できる。
また、エンド操舵角θh_e1の変化量が所定値以上である場合には、エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’に所定値を加算もしくは減算した値をエンド操舵角θh_eとする。これにより、転舵比率ゲインGの時間変化量が制限される。このため、転舵角の急変に伴う車両の挙動の急変を抑制することができ、運転者の操舵感に与える違和感を軽減できる。
図26は、実施形態4に係るエンド操舵角演算部の処理及び変化量制限部の第2例を示すフローチャートである。
操舵角θh及び基本エンド操舵角θh_e0が入力されると(ステップS401)、エンド操舵角演算部907aは、エンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’を保持しているか否かを判定する(ステップS402)。
エンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’を保持している場合(ステップS402;Yes)、エンド操舵角演算部907aは、操舵角θhの絶対値|θh|が基本エンド操舵角θh_e0未満(|θh|<θh_e0)であるか否かを判定する(ステップS403)。
操舵角θhの絶対値|θh|が基本エンド操舵角θh_e0未満(|θh|<θh_e0)である場合(ステップS403;Yes)、エンド操舵角演算部907aは、基本エンド操舵角θh_e0をエンド操舵角θh_e1として出力し(ステップS404)、当該エンド操舵角θh_e1をエンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’として記憶する(ステップS405)。
操舵角θhの絶対値|θh|が基本エンド操舵角θh_e0以上(|θh|≧θh_e0)である場合(ステップS403;No)、エンド操舵角演算部907aは、操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’未満(|θh|<θh_e’)であるか否かを判定する(ステップS406)。
操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’未満(|θh|<θh_e’)である場合(ステップS406;Yes)、エンド操舵角演算部907aは、操舵角θhの絶対値|θh|をエンド操舵角θh_e1として出力し(ステップS404)、当該エンド操舵角θh_e1をエンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’として記憶する(ステップS405)。
操舵角θhの絶対値|θh|がエンド操舵角θh_eの前回値θh_e’以上(|θh|≧θh_e’)である場合(ステップS406;No)、エンド操舵角演算部907aは、エンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’をエンド操舵角θh_e1として出力し(ステップS408)、当該エンド操舵角θh_e1をエンド操舵角θh_e1の前回値θh_e1’として記憶する(ステップS405)。
図26に示す実施形態4に係るエンド操舵角演算部907a及び変化量制限部908の処理の第2例において、ステップS409からステップS414までの処理は、上述した実施形態4に係るエンド操舵角演算部907a及び変化量制限部908の処理の第1例のステップS307からステップS312までの処理と同様である。
上述した実施形態4に係るエンド操舵角演算部907a及び変化量制限部908の処理の第2例の処理によれば、操舵角θhの絶対値|θh|が基本エンド操舵角θh_e0以上の領域にある場合には、エンド操舵角θh_e1の変化が制限される。これにより、車速Vsの変化に伴うエンド操舵角の変化を抑制することができ、運転者の操舵感に与える違和感を軽減できる。
また、エンド操舵角θh_e1の変化量が所定値以上である場合には、エンド操舵角θh_eの前回値θh_e’に所定値を加算もしくは減算した値をエンド操舵角θh_eとする。これにより、転舵比率ゲインGの時間変化量が制限される。このため、転舵角の急変に伴う車両の挙動の急変を抑制することができ、運転者の操舵感に与える違和感を軽減できる。
上述したように、実施形態4に係る車両用操向装置(SBWシステム)は、車両の車速Vsに応じた基本エンド操舵角θh_e0が設定されたエンド操舵角マップ906と、操舵角θh及び基本エンド操舵角θh_e0に基づき、エンド操舵角θh_e1を演算するエンド操舵角演算部907aと、エンド操舵角θh_e1を制限して、エンド操舵角θh_eをエンド目標操舵トルク生成部901及び転舵比率ゲイン演算部905に出力する変化量制限部908と、を備える。
これにより、車両の車速Vsや操舵角θhの変動によって運転者の操舵感に与える違和感を軽減できる。
また、転舵角の急変に伴う車両の挙動の急変を抑制することができ、運転者の操舵感に与える違和感を軽減できる。
なお、上述した実施形態4では、エンド操舵角θh_e1の変化量を制限する例について説明したが、エンド操舵角θh_e1の変化率を制限する態様であっても良いし、エンド操舵角θh_e1の差分率を制限する態様であっても良い。
また、上述で使用した図は、本開示に関して定性的な説明を行うための概念図であり、これらに限定されるものではない。また、上述の実施形態は本開示の好適な実施の一例ではあるが、これに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。