JP2020198784A - 免疫機能を調節する核酸分子およびその用途 - Google Patents

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維紹 谷口
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英雄 根岸
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Abstract

【課題】TLR7を強力に抑制することによる自己免疫疾患や炎症性疾患の新規な治療手段の提供。及び、TLR7を強力に活性化することによる免疫賦活剤の提供。【解決手段】U11 snRNAのヌクレオチド配列又はSm結合部位の全部もしくは一部を含むその部分配列と相同な配列を含み、かつ1以上のヌクレオチドの2’位の水酸基がメトキシ基で置換されている、TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7のアゴニストの機能を抑制する核酸分子で、特定の配列からなるU11 snRNAのヌクレオチド配列中の特定のアデノシン残基の2’位の水酸基がメトキシ基で置換されたものを除く、核酸分子。【選択図】なし

Description

本発明は、免疫機能を調節する核酸分子およびその用途に関する。より詳細には、本発明は、U11 snRNAの部分配列と相同な配列を含むTLR7アゴニスト作用を有する核酸分子および該核酸分子を含む免疫賦活剤、並びにメチル化修飾されたU11 snRNAの部分配列と相同な配列を含むTLR7アンタゴニスト作用を有する核酸分子および該核酸分子を含むTLR7機能抑制剤に関する。
免疫系は自己と非自己を識別し、病原体を異物として排除することで、生体を守る重要な機構である。免疫系は主に適応免疫系と自然免疫系の二つに大別される。適応免疫系は病原体の分子構造を非常に高い特異性で認識し、強力な応答によって異物の排除を行うとともに、免疫記憶として次の感染に備える細胞群を分化させる。一方、自然免疫系は、比較的低い特異性で病原体のパターン構造を認識し、病原体感染時の初期応答とそれに引き続く適応免疫系活性化への橋渡しを担っている。
近年、病原体成分だけでなく細胞傷害や細胞死等によって細胞外に放出される自己分子(Damage-associated molecular patterns; DAMPs)によってパターン認識受容体(PRR; pattern recognition receptors)経路が活性化されることが明らかになっている。なかでも、核酸は、病原体と宿主に共通の構造を有し、すべての宿主細胞に存在するため、強力かつ多量なDAMPsとして特に注目されている。これまでに免疫原性を有することが報告されている内在性核酸としては、ミトコンドリアDNA、Alu RNA、マイクロRNA、U1 small nuclear RNA(snRNA)等がある。snRNAはmRNA前駆体のスプライシングに関与する核内低分子RNAである。
本発明者らは以前、U11 snRNAが、強い免疫賦活作用(I型インターフェロン(IFN)や炎症性サイトカインの遺伝子発現誘導等)を示すこと、この免疫原性はToll様受容体7(TLR7)シグナルを介して発揮されること、U11 snRNAがメチル化修飾を受けるとその免疫原性は著明に減弱すること等を明らかにした。また、種々の自己免疫疾患モデルにおいて、U11 snRNAの発現が上昇していることも見出した。さらに、本発明者らは、U11 snRNAに相補的なヌクレオチド配列を有する核酸分子(アンチセンス核酸、siRNA等)がU11 snRNAの機能を抑制することを確認している(特許文献1)。
特開2018/191580号公報
本発明は、U11 snRNAのヌクレオチド配列をもとにして、TLR7を強力に抑制する新規物質を同定し、以って自己免疫疾患や炎症性疾患の新規な治療手段を提供することを目的とする。本発明の別の目的は、U11 snRNAのヌクレオチド配列をもとにして、TLR7を強力に活性化する新規物質を同定し、以って新規な免疫賦活剤を提供することである。
上記の目的を達成すべく、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、U11 snRNAと、U1 snRNAのメチル化部位と構造上類似した位置でメチル化修飾を受けたU11 snRNA変異体とを、同時に細胞又は動物個体に投与すると、該メチル化変異体は、単に免疫原性が減弱しているだけでなく、U11 snRNAのアンタゴニストとして機能し、U11 snRNAによる免疫賦活作用を著明に抑制し得ることを見出した。該メチル化変異体は、TLR7の一本鎖RNAからなるアゴニスト(本明細書において「アゴニスト」とは、特にことわらない限り、受容体に結合して該受容体を介したシグナリングを活性化する物質全般を意味し、生理的リガンド及び合成リガンドを包含する表現で用いられる。また、「アンタゴニスト」は、アゴニストと競合的に受容体に結合して該受容体を介したシグナリングを活性化しない物質を意味する。)であるpolyUによる免疫賦活作用も抑制したが、TLR7のアゴニストとして知られるR837(イミダゾキノリン系の低分子化合物)による免疫賦活作用を抑制しなかったことから、TLR7のグアノシン結合部位ではなく、RNA結合部位を抑制することが示唆された。そこで、U11 snRNAの免疫原性に重要であると考えられるUリッチでかつ一本鎖で存在する領域としてSm結合部位を含む領域(ヒトU11 snRNAの85-101番目のヌクレオチド領域)を選択し、該領域のヌクレオチド配列からなり、かつ異なる位置で2’-O位にメチル化修飾が導入された複数種のオリゴRNAを新たに合成し、U11 snRNAによる免疫賦活作用の抑制能を調べた。その結果、これらのメチル化RNAは、メチル化修飾の位置及び数に関係なく、いずれもU11 snRNAの免疫原性を顕著に抑制することを見出した。さらに、該メチル化RNAのホスホジエステル結合をホスホロチオエート結合に置換(S化)することにより、きわめて強力な抑制能を得ることに成功した。
一方で、本発明者らは、U11 sn RNAの種々の20ヌクレオチド未満の部分配列が、U11 snRNA全長と同様、免疫賦活作用を有すること、該免疫賦活作用は、当該部分配列をS化することにより、さらに増大させ得ることを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下のとおりのものである。
[1] U11 snRNAのヌクレオチド配列又はSm結合部位の全部もしくは一部を含むその部分配列と相同な配列を含み、かつ1以上のヌクレオチドの2’位の水酸基がメトキシ基で置換されている、TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7アゴニストの機能を抑制する核酸分子(但し、配列番号1で表されるヒトU11 snRNAのヌクレオチドからなり、該配列中ヌクレオチド番号1、2及び43で示されるアデノシン残基の2’位の水酸基がメトキシ基で置換されたものを除く)。
[2] 2以上のヌクレオチドの2’位の水酸基がメトキシ基で置換されている、[1]に記載の核酸分子。
[3] 前記相同な配列が、
(a)配列番号1で表されるヒトU11 snRNAのヌクレオチド配列中、ヌクレオチド番号85〜101で示される配列もしくはその部分配列、
(b)その非ヒト哺乳動物オルソログにおける(a)と対応する配列、又は
(c)その遺伝子多型における(a)と対応する配列
と相同な配列である、[1]又は[2]に記載の核酸分子。
[4] 1以上のホスホジエステル結合がホスホロチオエート結合で置換されている、[1]〜[3]のいずれかに記載の核酸分子。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の核酸分子を含む医薬。
[6] [1]〜[4]のいずれかに記載の核酸分子、又は配列番号1で表されるヒトU11 snRNAのヌクレオチドからなり、該配列中ヌクレオチド番号1、2及び43で示されるアデノシン残基の2’位の水酸基がメトキシ基で置換された核酸分子を含む、TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7アゴニストの機能抑制剤。
[7] 前記TLR7アゴニストの機能が、TLR7を介した炎症及び/又は免疫応答の活性化である、[6]に記載の剤。
[8] 前記TLRアゴニストの機能が、I型インターフェロン及び/又は炎症性サイトカインの発現誘導である、[6]に記載の剤。
[9] I型インターフェロン及び/又は炎症性サイトカインの発現亢進、並びに/あるいは、TLR7を介したシグナリングの亢進が関与する疾患の治療剤である、[7]又は[8]に記載の剤。
[10] 前記疾患が、自己免疫疾患又は炎症性疾患である、[9]に記載の剤。
[11] U11 snRNAの部分配列と相同な配列を含む、免疫賦活作用を有する核酸分子。
[12] U11 snRNAの部分配列が、Sm結合部位の全部もしくは一部を含む配列であり、TLR7アゴニスト作用を有する、[11]に記載の核酸分子。
[13] [11]又は[12]に記載の核酸分子を含む医薬。
[14] [11]又は[12]に記載の核酸分子を含む免疫賦活剤。
本発明の核酸分子によれば、DAMPsとしての、一本鎖RNAまたは一本鎖構造となり得る二本鎖RNA等からなる、TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7アゴニスト (例えばU11 snRNA、polyU等)を抑制することができる。また、本発明の核酸分子を、I型インターフェロン及び/又は炎症性サイトカインの発現亢進が関与する疾患の治療剤として用いることができる。
また、メチル化修飾のないU11 snRNAのフラグメントは、U11 snRNA全長と同様に免疫賦活作用を奏するので、免疫賦活剤、生体防御応答促進剤、ワクチンアジュバント等に利用することができる。
図1は、ヒトU11 snRNAの二次構造の模式図である。 図2は、関節リウマチ(RA)及び全身性エリテマトーデス(SLE)患者の血清中U11 snRNA又はU1 snRNAのレベル(A及びC左パネル)、並びにそれらとRA及びSLEの病態との相関を示す(B及びC右パネル)。 図3は、種々のU11 snRNAフラグメントの免疫原性を示す。 図4は、U11 snRNAのSm-ss配列フラグメントの免疫原性に及ぼすS化修飾の効果を示す。SM-RNA:Sm-ss配列、SM-PS:S化修飾されたSm-ss配列 図5は、U11 snRNAフラグメント投与によるアジュバント効果を示す。 図6は、メチル化U11 snRNAが、TLR7リガンドである一本鎖RNA(U11 snRNA (TLR3リガンド活性も有する)、polyU)によるIfnb1 mRNA発現誘導を抑制することを示す。 図7は、種々のメチル化RNAによるU11 snRNAの免疫原性の抑制を検証した結果を示す。 図8は、U11 snRNA投与によりマウスに関節炎が誘導できることを示す。 図9は、メチル化U11 snRNA投与により、U11 snRNAによるマウス関節炎を抑制し得ることを示す。 図10は、メチル化U11 snRNAフラグメント投与によるGvHループスモデルの治療効果を示す。
本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
1. TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7アゴニスト (例えばpolyU)の機能を抑制する核酸分子
本発明は、TLR7のRNA結合部位へのTLR7アゴニスト(U11 snRNA、polyU等の一本鎖RNA、または一本鎖構造となり得る二本鎖RNA等)の結合を競合的に阻害するTLR7アンタゴニストであり、該TLR7アゴニストの機能を抑制する核酸分子(以下、「本発明の核酸分子」と記載する場合がある。)を提供する。TLR7には、グアノシンやイミダゾキノリン系のアゴニスト(例、R837、R848等)が結合するポケット(グアノシン結合部位)と、一本鎖RNAからなるアゴニストが結合するポケット(RNA結合部位)とが存在するが、本発明の核酸分子は、このうちRNA結合部位へのアゴニストの結合を阻害するTLR7アンタゴニストである。
ここで、「TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7アゴニストの機能」とは、該TLR7アゴニストが、任意のTLR7の機能、例えば、I型IFN、炎症性サイトカイン、ケモカイン等も含めた様々な遺伝子の誘導や様々な細胞の増殖や分化、細胞死、適応免疫応答の活性化などの作用の、少なくとも1つを活性化することを意味する。従って、前記のいずれかの機能を抑制すれば、本発明の核酸分子に包含される。
本発明の核酸分子は、TLR7のRNA結合部位への結合能を有するTLR7のアゴニスト(例、U11 snRNA、polyU等)の該RNA結合部位への結合を競合的に阻害し、かつTLR7を介したシグナリングを活性化しない、TLR7アンタゴニスト作用を有するものであれば特に制限はなく、例えば、polyUのような、該RNA結合部位に結合し得る任意のヌクレオチド配列からなる一本鎖RNAであり得る。ここで「polyU」とは、ウリジン(U)残基が3以上連続するオリゴRNAを意味する。本発明の好ましい一実施態様においては、本発明の核酸分子はpolyUである。該polyU配列は、連続する3以上のウリジン残基を含む限り、その長さに特に制限はなく、例えば、連続する3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のウリジン残基を含む配列であり得る。
本発明の核酸分子は、1以上の構成ヌクレオチドにおいて、2’位の水酸基がメトキシ基に置換(本明細書において、単に「メチル化修飾」、「メチル化」と略記する場合がある)されていることを特徴とする。好ましくは、2以上の構成ヌクレオチドがメチル化修飾されている。メチル化修飾されているヌクレオチドの位置に特に制限はなく、ヌクレオチド配列の末端及び/又は内部に位置していてもよい。
好ましい一実施態様において、本発明の核酸分子は、U11 snRNAのヌクレオチド配列又はSm結合部位の全部もしくは一部を含むその部分配列と相同な配列を含む。
U11 snRNAのヌクレオチド配列としては、配列番号1で表されるヒトU11 snRNAのヌクレオチド配列(Ensemblデータベースに、Transcript ID: ENST00000602813として登録されている)もしくはその非ヒト哺乳動物オルソログ(例えば、マウスU11 snRNAのヌクレオチド配列は、Ensemblデータベースに、Transcript ID: ENSMUST00000104135として登録されている)、又はその遺伝子多型(例えば、ヒトU11 snRNAの場合はURL: http://www.ensembl.org/Homo_sapiens/Transcript/Variation_Transcript/Table?db=core;g=ENSG00000270103;r=1:28648600-28648730;t=ENST00000602813、マウスU11 snRNAの場合はURL: http://www.ensembl.org/Mus_musculus/Transcript/Variation_Transcript/Table?db=core;g=ENSMUSG00000077323;r=4:132270080-132270213;t=ENSMUST00000104135の、「Variant table」に「Non coding transcript exon variant」として列挙される遺伝子多型)が挙げられる。本明細書においては、以下、特にことわらない限り、配列番号1で表されるヒトU11 snRNAのヌクレオチド配列に基づいて、ヌクレオチドの位置やヌクレオチド配列の範囲等を記載するが、その場合、その遺伝子多型や非ヒト哺乳動物オルソログにおける対応するヌクレオチドやヌクレオチド配列も、当該記載内容に包含されるものである。
配列番号1
5’- aaaaagggcu ucugucguga guggcacacg uagggcaacu cgauugcucu gcgugcggaa
ucgacaucaa gagauuucgg aagcauaauu uuuugguauu ugggcagcug gugaucguug
gucccggcgc ccuuu -3’
(以下、特にことわらない限り、ヌクレオチド配列は、左から右に、5’から3’の方向に記載する。)
本明細書において、U11 snRNAの「Sm結合部位」とは、Smタンパク質群が結合してRNA-タンパク質複合体を形成する、U11 snRNA中の高度に保存された配列モチーフ(PuA(U)3-6GPu;Puはプリンヌクレオチドを示す)を意味する。mfoldにより生成されたヒトU11 snRNAの推定の二次構造を図1に示しているが、当該二次構造において、ステムループI-IIIからなる十字型の二次構造とステムループIVとの間の一本鎖領域内の四角で囲まれた配列(AAUUUUUUGG;配列番号2)がヒトU11 snRNAのSm結合部位であり、これは配列番号1に示されるヒトU11 snRNAのヌクレオチド配列中、ヌクレオチド番号87〜96で示されるヌクレオチド配列に相当する。
従って、「Sm結合部位の全部もしくは一部を含むU11 snRNAの部分配列」としては、配列番号1に示されるヒトU11 snRNAのヌクレオチド配列中、ヌクレオチド番号87〜96で示されるヌクレオチド配列もしくはその部分配列を少なくとも含む、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の部分配列、非ヒト哺乳動物のU11 snRNAにおける対応する配列、あるいは、ヒトU11 snRNAの遺伝子多型における対応する配列が包含され得る。
「Sm結合部位の一部」としては、Sm結合部位中の連続する3ヌクレオチド以上(例、3、4、5、6、7、8、9ヌクレオチド)の部分配列、好ましくは連続する5ヌクレオチド以上の部分配列が挙げられる。Sm結合部位は、ヒトU11 snRNAの場合ウリジン残基が6個連続する配列を含むので、3〜6個の連続するウリジン残基からなるpolyUも「Sm結合部位の一部」に包含される。
本明細書において、「相同な配列」とは、上記のいずれかのU11 snRNAのヌクレオチド配列又はその部分配列に対して、完全に同一であるか、該配列において1以上のヌクレオチドが置換及び/又は欠失及び/又は挿入及び/又は付加したヌクレオチド配列であって、TLR7のRNA結合部位へのリガンドの結合を競合的に阻害するTLR7アンタゴニスト作用を有する配列を意味する。例えば、U11 snRNAのヌクレオチド配列又はその部分配列に対して、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上(例96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の相同性を有する配列が挙げられる。本発明における「ヌクレオチド配列の相同性」は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。あるいは、U11 snRNAのヌクレオチド配列又はその部分配列において、1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜数個(例、1、2、3、4、5個)のヌクレオチドが、置換及び/又は欠失及び/又は挿入及び/又は付加したヌクレオチド配列であってもよい。
別の好ましい実施態様において、本発明の核酸分子は、ステムループI-IIIとステムループIVとの間の一本鎖領域のヌクレオチド配列(本明細書において「Sm-ss配列」と略記する場合がある)もしくはその部分配列と相同な配列を含む。配列番号1に示されるヒトU11 snRNAのヌクレオチド配列においては、ヌクレオチド番号85〜101で示されるヌクレオチド配列がSm-ss配列に相当する。非ヒト哺乳動物のU11 snRNAにおける対応する配列もしくはその部分配列、あるいはヒトU11 snRNAの遺伝子多型における対応する配列もしくはその部分配列に相同な配列を含む核酸分子も、本実施態様に包含される。
Sm-ss配列の部分配列としては、「Sm結合部位の全部もしくは一部」を含む限り特に制限はないが、好ましい一実施態様においては、Sm結合部位の全部を含む配列、例えば、
uaauuuuuugg(配列番号3)
uaauuuuuuggu(配列番号4)
uaauuuuuuggua(配列番号5)
uaauuuuuugguau(配列番号6)
uaauuuuuugguauu(配列番号7)
uaauuuuuugguauuu(配列番号8)
auaauuuuuugg(配列番号9)
auaauuuuuuggu(配列番号10)
auaauuuuuuggua(配列番号11)
auaauuuuuugguau(配列番号12)
auaauuuuuugguauu(配列番号13)
auaauuuuuugguauuu(配列番号14)
(下線部はSm結合部位を示す。)
などが挙げられる。
本発明の核酸分子が、U11 snRNAのヌクレオチド配列又はSm結合部位の全部もしくは一部を含むその部分配列、あるいは、Sm-ss配列もしくはその部分配列と相同な配列を含む場合、少なくとも1つ、好ましくは2以上のメチル化修飾がSm結合部位あるいはSm-ss配列に相同な領域内に導入されていることが好ましい。メチル化修飾の上限は特になく、すべての構成ヌクレオチドの2’-O位がメチル化されていてもよいが、1又は2個のヌクレオチドにメチル化修飾が導入されていれば、十分なU11 snRNAの機能抑制効果が得られ得る。例えば、本発明の核酸分子が、配列番号14に示されるヌクレオチド配列からなるSm-ss配列と相同な配列を含む場合、Sm-ss配列の1〜2番目のヌクレオチドがメチル化されたもの(本明細書において「SmMe」という場合がある)や、Sm-ss配列の1、2、4、5、9、10、14及び15番目のヌクレオチドがメチル化されたもの(本明細書において「Sm8Me」という場合がある)を挙げることができるが、それらに限定されない。
本発明の核酸分子が、U11 snRNAのヌクレオチド配列又はSm結合部位の全部もしくは一部を含むその部分配列、あるいは、Sm-ss配列もしくはその部分配列と相同な配列を含む場合、該相同な配列の長さは特に制限されないが、3ヌクレオチド以上(例、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15ヌクレオチド)であることが好ましい。該相同な配列の長さの上限も特に制限はなく、U11 snRNAの全長に相同な配列であってもよいが、合成の容易さや細胞内移行性等を考慮すれば、例えば100ヌクレオチド以下、好ましくは50ヌクレオチド以下、より好ましくは30ヌクレオチド以下、さらに好ましくは25ヌクレオチド以下、特に好ましくは20ヌクレオチド以下である。従って、該相同な配列の長さは、好ましくは、3〜30ヌクレオチド、より好ましくは5〜25ヌクレオチド、さらに好ましくは10〜20ヌクレオチドであり得る。
本発明の核酸分子が、U11 snRNAのヌクレオチド配列又はSm結合部位の全部もしくは一部を含むその部分配列、あるいは、Sm-ss配列もしくはその部分配列と相同な配列を含む場合、該核酸分子は、該相同な配列のU11 snRNA機能抑制作用を妨げない範囲で、該相同な配列に加えて、その一方もしくは両方の末端に任意の付加的ヌクレオチド(配列)を含み得る。該付加的ヌクレオチド(配列)の長さは、該相同な配列のU11 snRNA機能抑制作用を妨げない限り特に制限はないが、例えば、1ないし数(例、2、3、4、5)ヌクレオチドが挙げられる。
別の好ましい実施態様において、本発明の核酸分子は、Sm結合部位やSm-ss配列に加えて、ステムループ構造を形成する領域のヌクレオチド配列をも含むU11 snRNAの部分ヌクレオチド配列と相同な配列を含むことができる。例えば、配列番号1に示されるヒトU11 snRNAのヌクレオチド配列にあっては、後述の実施例1に示すとおり、ヌクレオチド番号1〜17で示される部分配列(5’付近のステム構造)、ヌクレオチド番号11〜27で示される部分配列(ステムループI)、ヌクレオチド番号68〜84で示される部分配列(ステムループIII)、あるいはヌクレオチド番号102〜118で示される部分配列(ステムループIV)からなるU11 snRNAフラグメントが強い免疫賦活作用を有するので、これらの領域と相同な配列を含む核酸分子等が、本実施態様に包含され得る。
本発明の核酸分子の構成単位は、原則的にリボヌクレオチド残基であるが、U11 snRNA機能抑制作用を妨げない範囲でデオキシリボヌクレオチド残基を含み得る。これらのヌクレオチド残基は、例えば、修飾されていても非修飾であってもよい。本発明の核酸分子は、上記の2’-O位のメチル化修飾に加え、例えば、修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、ヌクレアーゼ耐性が向上し、安定性の改善が可能である。また、本発明の核酸分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基の他に、U11 snRNA機能抑制作用を妨げない範囲で、さらに非ヌクレオチド残基を含んでもよい。
本発明の核酸分子は、例えば、標識物質で標識化されてもよい。標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体等があげられる。標識物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素等の蛍光団があげられ、色素としては、例えば、Alexa488等のAlexa色素等があげられる。同位体としては、例えば、安定同位体および放射性同位体があげられる。安定同位体は、例えば、被曝の危険性が少なく、専用の施設も不要であることから取り扱い性に優れ、また、コストも低減できる。また、安定同位体は、例えば、標識した化合物の物性変化がなく、トレーサーとしての性質にも優れる。安定同位体としては、例えば、2H、13C、15N、17O、18O、33S、34Sおよび36Sがあげられる。
ヌクレオチド残基は、構成要素として、糖、塩基およびリン酸を含む。リボヌクレオチド残基は、糖としてリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびウラシル(U)(チミン(T)に置き換えることもできる)を有し、デオキシリボヌクレオチド残基は、糖としてデオキシリボース残基を有し、塩基として、アデニン(dA)、グアニン(dG)、シトシン(dC)およびチミン(dT)(ウラシル(dU)に置き換えることもできる)を有する。
修飾ヌクレオチド残基は、ヌクレオチド残基の構成要素のいずれが修飾されていてもよい。本発明において、「修飾」は、例えば、前記構成要素の置換、付加および/または脱離、前記構成要素における原子および/または官能基の置換、付加および/または脱離であり得る。修飾ヌクレオチド残基は、例えば、天然に存在する修飾ヌクレオチド残基であっても、人工的に修飾したヌクレオチド残基であってもよい。天然由来の修飾ヌクレオチド残基としては、例えば、リンバックら(Limbach et al.、1994、Summary:the modified nucleosides of RNA、Nucleic Acids Res.22:2183〜2196)を参照できる。
ヌクレオチド残基の修飾としては、例えば、リボース−リン酸骨格(以下、リボリン酸骨格)の修飾があげられる。
前記リボリン酸骨格において、例えば、リボース残基を修飾できる。前記リボース残基は、例えば、2’位炭素を修飾でき、具体的には、例えば、2’位炭素に結合する水酸基を、水素原子、フッ素等のハロゲン原子又は-O-アルキル基(例、-O-Me基)、-O-アシル基(例、-O-COMe基)及びアミノ基からなる群より選ばれる原子又は基、好ましくは、水素原子、メトキシ基及びフッ素原子からなる群より選ばれる原子又は基に置換できる。前記2’位炭素の水酸基を水素に置換することで、リボース残基をデオキシリボースに置換できる。前記リボース残基は、例えば、立体異性体に置換でき、例えば、アラビノース残基に置換してもよい。
リボリン酸骨格は、例えば、非リボース残基および/または非リン酸を有する非リボリン酸骨格に置換してもよい。非リボリン酸骨格は、例えば、リボリン酸骨格の非荷電体があげられる。非リボリン酸骨格に置換されたヌクレオチドの代替物としては、例えば、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン等があげられる。前記代替物は、この他に、例えば、人工核酸モノマー残基があげられる。具体例として、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’-O,4’-C-Ethylenebridged Nucleic Acid)等があげられ、好ましくはPNAである。
リボリン酸骨格において、リン酸基を修飾することもできる。リボリン酸骨格において、糖残基に最も隣接するリン酸基は、αリン酸基と呼ばれる。αリン酸基は、負に荷電し、その電荷は、糖残基に非結合の2つの酸素原子にわたって、均一に分布している。αリン酸基における4つの酸素原子のうち、ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と非結合である2つの酸素原子は、以下、「非結合(non-linking)酸素」ともいう。他方、ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と結合している2つの酸素原子は、以下、「結合(linking)酸素」という。αリン酸基は、例えば、非荷電となる修飾、または、非結合酸素における電荷分布が非対称型となる修飾を行うことが好ましい。
リン酸基は、例えば、非結合酸素を置換してもよい。非結合酸素は、例えば、S(硫黄)、Se(セレン)、B(ホウ素)、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)およびOR(Rは、アルキル基またはアリール基)のいずれかの原子で置換でき、好ましくは、Sで置換される。非結合酸素は、例えば、一方又は両方が置換されていてもよく、好ましくは、一方又は両方がSで置換される。このような修飾リン酸基としては、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、ホスホネート水素、ホスホロアミデート、アルキルまたはアリールホスホネート、およびホスホトリエステル等があげられ、中でも、前記一方又は両方の非結合酸素がSで置換されているホスホロチオエート又はホスホロジチオエートが好ましい。
好ましい一実施態様においては、本発明の核酸分子内のすべてのホスホジエステル結合がホスホロチオエート結合で置換(S化)されている。S化することにより、本発明の核酸分子のU11 snRNA機能抑制作用は著しく向上する。後述の実施例2に示すとおり、メチル化修飾のないU11 snRNAのSm-ss配列をS化した場合には、逆にSm-ss配列のTLR7を介した免疫賦活作用が顕著に上昇することから、当該S化の効果は、核酸分子の安定性の向上やTLR7への結合性の増強によるものであることが示唆される。
リン酸基は、例えば、結合酸素を置換してもよい。結合酸素は、例えば、S(硫黄)、C(炭素)およびN(窒素)のいずれかの原子で置換でき、このような修飾リン酸基としては、例えば、Nで置換した架橋ホスホロアミデート、Sで置換した架橋ホスホロチオエート、およびCで置換した架橋メチレンホスホネート等があげられる。結合酸素の置換は、例えば、本発明の核酸分子の5’末端ヌクレオチド残基および3’末端ヌクレオチド残基の少なくとも一方において行うことが好ましく、5'側の場合、Cによる置換が好ましく、3’側の場合、Nによる置換が好ましい。
リン酸基は、例えば、リン非含有のリンカーに置換してもよい。リンカーとしては、例えば、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキサイドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノ等があげられ、好ましくは、メチレンカルボニルアミノ基およびメチレンメチルイミノ基が挙げられる。
本発明の核酸分子は、例えば、3’末端および5’末端の少なくとも一方のヌクレオチド残基が修飾されてもよい。当該修飾は前述のとおりであり、好ましくは、末端のリン酸基に行うことが好ましい。リン酸基は全体を修飾してもよいし、リン酸基における1つ以上の原子を修飾してもよい。前者の場合、例えば、リン酸基全体の置換でもよいし、欠失でもよい。
末端のヌクレオチド残基の修飾としては、例えば、他の分子の付加があげられる。他の分子としては、例えば、標識物質、保護基等の機能性分子があげられる。保護基としては、例えば、S(硫黄)、Si(ケイ素)、B(ホウ素)、エステル含有基等があげられる。前記標識物質等の機能性分子は、例えば、本発明の核酸分子の検出等に利用できる。
他の分子は、ヌクレオチド残基のリン酸基に付加してもよいし、スペーサーを介して、リン酸基または糖残基に付加してもよい。スペーサーの末端原子は、例えば、リン酸基の結合酸素、または、糖残基のO、N、SもしくはCに、付加または置換できる。糖残基の結合部位は、例えば、3’位のCもしくは5’位のC、またはこれらに結合する原子が好ましい。スペーサーは、例えば、前記PNA等のヌクレオチド代替物の末端原子に、付加または置換することもできる。
スペーサーは特に制限されず、例えば、-(CH2)n-、-(CH2)nN-、-(CH2)nO-、-(CH2)nS-、O(CH2CH2O)nCH2CH2OH、無塩基糖、アミド、カルボキシ、アミン、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミド、およびモルホリノ等、ならびに、ビオチン試薬およびフルオレセイン試薬等が挙げられる。前記式において、nは、正の整数であり、n=3または6が好ましい。
末端に付加する分子は、これらの他に、例えば、色素、インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性担体(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コール酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチド複合体(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射線標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール複合体、テトラアザマクロ環のEu3+複合体)等があげられる。
本発明の核酸分子は、5’末端が、例えば、リン酸基またはリン酸基アナログで修飾されてもよい。リン酸基は、例えば、5’一リン酸((HO)2(O)P-O-5’)、5’二リン酸((HO)2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’三リン酸((HO)2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’−グアノシンキャップ(7-メチル化または非メチル化、7m-G-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’−アデノシンキャップ(Appp)、任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’一チオリン酸(ホスホロチオエート:(HO)2(S)P-O-5’)、5’ジチオリン酸(ホスホロジチオエート:(HO)(HS)(S)P-O-5’)、5’-ホスホロチオール酸((HO)2(O)P-S-5’)、硫黄置換の一リン酸、二リン酸および三リン酸(例えば、5’-α-チオ三リン酸、5’-γ-チオ三リン酸等)、5’-ホスホルアミデート((HO)2(O)P-NH-5’、(HO)(NH2)(O)P-O-5’)、5’−アルキルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、(OH)2(O)P-5’-CH2、Rはアルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル等))、5’-アルキルエーテルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、Rはアルキルエーテル(例えば、メトキシメチル、エトキシメチル等))等があげられる。
ヌクレオチド残基において、塩基は特に制限されない。塩基は、天然の塩基でもよいし、非天然の塩基でもよい。例えば、一般的な塩基、その修飾アナログ等が使用できる。
塩基としては、例えば、アデニンおよびグアニン等のプリン塩基、シトシン、ウラシルおよびチミン等のピリミジン塩基があげられる。前記塩基は、この他に、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、ツベルシジン(tubercidine)等があげられる。塩基は、例えば、2-アミノアデニン、6-メチル化プリン等のアルキル誘導体;2-プロピル化プリン等のアルキル誘導体;5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン;5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン;6-アゾウラシル、6-アゾシトシンおよび6-アゾチミン;5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル;8-ハロ化、アミノ化、チオール化、チオアルキル化、水酸化および他の8-置換プリン;5-トリフルオロメチル化および他の5-置換ピリミジン;7-メチルグアニン;5-置換ピリミジン;6-アザピリミジン;N-2、N-6、およびO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む);5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン;ジヒドロウラシル;3-デアザ−5-アザシトシン;2-アミノプリン;5-アルキルウラシル;7-アルキルグアニン;5-アルキルシトシン;7-デアザアデニン;N6,N6-ジメチルアデニン;2,6-ジアミノプリン;5-アミノ−アリル−ウラシル;N3-メチルウラシル;置換1,2,4-トリアゾール;2-ピリジノン;5-ニトロインドール;3-ニトロピロール;5-メトキシウラシル;ウラシル−5-オキシ酢酸;5-メトキシカルボニルメチルウラシル;5-メチル-2-チオウラシル;5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル;5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル;3-メチルシトシン;5-メチルシトシン;N4-アセチルシトシン;2-チオシトシン;N6-メチルアデニン;N6-イソペンチルアデニン;2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン;N-メチルグアニン;O-アルキル化塩基等であり得る。また、プリンおよびピリミジンには、例えば、米国特許第3,687,808号、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858〜859頁、クロシュビッツ ジェー アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley & Sons、1990、およびイングリッシュら(Englischら)、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30巻、p.613に開示されるものが含まれる。
修飾ヌクレオチド残基は、これらの他に、例えば、塩基を欠失する残基、すなわち、無塩基のリボリン酸骨格を含んでもよい。また、修飾ヌクレオチド残基は、例えば、米国仮出願第60/465,665号(出願日:2003年4月25日)、および国際出願第PCT/US04/07070号(出願日:2004年3月8日)に記載される残基が使用でき、本発明は、これらの文献を援用できる。
本発明の核酸分子の合成方法は、特に制限されず、従来公知の方法が採用できる。前記合成方法は、例えば、遺伝子工学的手法による合成法、化学合成法等があげられる。遺伝子工学的手法は、例えば、インビトロ転写合成法、ベクターを用いる方法、PCRカセットによる方法があげられる。前記ベクターは、特に制限されず、プラスミド等の非ウイルスベクター、ウイルスベクター等があげられる。前記化学合成法は、特に制限されず、例えば、ホスホロアミダイト法およびH-ホスホネート法等があげられる。前記化学合成法は、例えば、市販の自動核酸合成機を使用可能である。前記化学合成法は、一般に、アミダイトが使用される。前記アミダイトは、特に制限されず、市販のアミダイトとして、例えば、RNA Phosphoramidites(2’-O-TBDMSi、商品名、三千里製薬)、ACEアミダイトおよびTOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト等があげられる。
2.機能抑制剤
本発明の核酸分子は、前述のように、U11 snRNA等の一本鎖RNAまたは一本鎖構造となり得る二本鎖RNA等からなる、TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7アゴニストの機能を抑制することができる。したがって、本発明の核酸分子は、例えば、これらのアゴニストによるTLR7の活性化を介した作用、より具体的には、例えば、I型IFN及び/又は炎症性サイトカインの発現誘導作用等に代表される炎症や免疫応答の活性化の抑制のために使用できる。I型IFNとしては、例えば、IFNα、IFNβ等が挙げられる。炎症性サイトカインとしては、例えば、TNFα、IL‐1、IL‐6等が挙げられる。
3.医薬
本発明の核酸分子は、前述のように、U11 snRNA等の一本鎖RNAまたは一本鎖構造となり得る二本鎖RNA等からなる、TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7アゴニストを抑制することができる。このため、本発明の核酸分子は、TLR7を介したシグナリングの亢進、例えば、I型IFN及び/又は炎症性サイトカインの発現亢進が関与する疾患の治療剤として使用できる。I型IFNの発現亢進が関与する疾患としては、例えば、自己免疫疾患等が挙げられる。自己免疫疾患としては、例えば、臓器非特異的自己免疫疾患、臓器特異的自己免疫疾患等が挙げられる。臓器非特異的自己免疫疾患としては、例えば、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状エリテマトーデス、多発性筋炎等、臓器特異的自己免疫疾患としては、例えば、慢性甲状腺炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血等が挙げられる。炎症性サイトカインの発現亢進が関与する疾患としては、例えば、炎症性疾患が挙げられる。炎症性疾患としては、例えば、関節炎(慢性関節リウマチ、変形性関節炎など)、心筋梗塞、ウイルス性脳炎、乾癬、炎症性腸疾患、肺高血圧、敗血症、II型糖尿病、肝線維症、腎硬化症、子宮内膜症等が挙げられる。実際、マウスのRA及びSLEモデル(特開2018/191580号公報参照)やヒトRA及びSLE患者(後述の参考例1参照)において、血中のU11 snRNAレベルが上昇している。
本発明において、「治療」は、例えば、前記疾患の予防、疾患の改善、予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。
本発明の医薬は、有効量の本発明の核酸分子を単独で用いてもよいし、任意の担体、例えば医薬上許容される担体とともに、医薬組成物として製剤化することもできる。
医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル等の滑剤、クエン酸、メントール等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリド等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水等の希釈剤、ベースワックス等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
本発明の核酸分子の標的細胞内への導入を促進するために、本発明の医薬は更に核酸導入用試薬を含むことができる。細胞障害や細胞死等によって細胞外に放出されたU11snRNA等のDAMPsとして作用する核酸分子(一本鎖RNAまたは一本鎖構造となり得る二本鎖RNA等からなるTLR7のアゴニスト)が細胞内に取り込まれると、エンドソームに局在するTLR7に作用すると考えられるため、エンドソームへ本発明の核酸分子を輸送する試薬との併用が好ましい。該核酸導入用試薬としては、アテロコラーゲン;リポソーム;ナノパーティクル;リポフェクチン、リプフェクタミン(lipofectamine)、DOGS(トランスフェクタム)、DOPE、DOTAP、DDAB、DHDEAB、HDEAB、ポリブレン、あるいはポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質等を用いることが出来る。
好ましい一実施態様において、本発明の医薬は、本発明の核酸分子がリポソームに封入されてなる医薬組成物であり得る。リポソームは、1以上の脂質二重層により包囲された内相を有する微細閉鎖小胞であり、通常は水溶性物質を内相に、脂溶性物質を脂質二重層内に保持することができる。本明細書において「封入」という場合には、本発明の核酸分子はリポソーム内相に保持されてもよいし、脂質二重層内に保持されてもよい。本発明に用いられるリポソームは単層膜であっても多層膜であってもよく、また、粒子径は、例えば10〜1000nm、好ましくは50〜300nmの範囲で適宜選択できる。標的組織への送達性を考慮すると、粒子径は、例えば200nm以下、好ましくは100nm以下であり得る。
核酸のような水溶性化合物のリポソームへの封入法としては、リピドフィルム法(ボルテックス法)、逆相蒸発法、界面活性剤除去法、凍結融解法、リモートローディング法等が挙げられるが、これらに限定されず、任意の公知の方法を適宜選択することができる。
本発明の医薬は、経口的にまたは非経口的に、哺乳動物(例、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、サル)に対して投与することが可能であるが、非経口的に投与するのが望ましい。
非経口的な投与(例えば、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容される担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
非経口的な投与に好適な別の製剤としては、噴霧剤等を挙げることが出来る。
医薬組成物中の本発明の核酸分子の含有量は、例えば、医薬組成物全体の約0.1ないし100重量%である。
本発明の医薬の投与量は、投与の目的、投与方法、対象疾患の種類、重篤度、投与対象の状況(性別、年齢、体重など)によって異なるが、例えば、成人に全身投与する場合、通常、本発明の核酸分子の一回投与量として2 nmol/kg以上50 nmol/kg以下、局所投与する場合、1 pmol/kg以上10 nmol/kg以下が望ましい。かかる投与量を1〜10回、より好ましくは5〜10回投与することが望ましい。
本発明の医薬は、例えば、他の自己免疫疾患又は炎症性疾患治療薬、例えば既に上市されているこれらの疾患に対する治療薬と組み合わせて用いることができる。これらの併用薬剤は、本発明の医薬とともに製剤化して単一の製剤として投与することもできるし、あるいは、本発明の医薬とは別個に製剤化して、本発明の医薬と同一もしくは別ルートで、同時もしくは時間差をおいて投与することもできる。また、これらの併用薬剤の投与量は、該薬剤を単独投与する場合に通常用いられる量であってよく、あるいは通常用いられる量より減量することもできる。
4.U11 snRNAの部分配列と相同な配列を含む、免疫賦活作用を有する核酸分子(本発明の核酸分子(II))
後述の実施例1に示されるように、U11 snRNA全長のみならず、その部分配列からなるオリゴヌクレオチドも、優れた免疫賦活作用を有する。従って、本発明はまた、U11 snRNAの部分配列と相同な配列を含む、免疫賦活作用を有する核酸分子を提供する。当該部分配列の位置、配列長は特に制限されないが、例えば、配列番号1で表されるヌクレオチド配列中ヌクレオチド番号1〜17で示される部分配列(5’付近のステム構造)、ヌクレオチド番号11〜27で示される部分配列(ステムループI)、ヌクレオチド番号68〜84で示される部分配列(ステムループIII)、ヌクレオチド番号85〜101で示される部分配列(Sm結合部位を含むSm-ss配列)、あるいはヌクレオチド番号102〜118で示される部分配列(ステムループIV)からなるU11 snRNAフラグメントが強い免疫賦活作用を有するので、ヌクレオチド番号1〜27で示される領域やとヌクレオチド番号68〜118で示される領域の配列又はその部分配列と相同な配列を含む核酸分子等が挙げられる。ヌクレオチド長としては、上記「本発明の核酸分子」と同様のものを挙げることができる。
好ましい一実施態様においては、本発明の核酸分子(II)は、上記「本発明の核酸分子」の好ましい実施態様である、Sm結合部位の全部もしくは一部を含むU11 snRNAの部分配列と相同な配列、より好ましくはSm-ss配列と相同な配列を含み、かつメチル化修飾を有しない核酸分子である。後述の実施列2に示されるように、当該核酸分子は、TLR7を発現しTLR7シグナリングの活性化を測定し得るレポーター細胞において濃度依存的に免疫賦活作用を示すことから、TLR7アゴニスト作用により免疫賦活作用を発揮するものと考えられる。当該核酸分子はS化することにより顕著に免疫賦活作用が増強される。
別の好ましい実施態様において、本発明の核酸分子(II)は、配列番号1で表されるヌクレオチド配列中ヌクレオチド番号68〜84で示される部分配列や、ヌクレオチド番号102〜118で示される部分配列と相同な配列を含むものであり得る。後述の実施列1に示されるように、これらの部分配列からなる核酸分子は、特に強い免疫賦活作用を示すことから、免疫賦活剤、例えばワクチンアジュバントとして好ましく用いることができる。
5.免疫賦活剤
本発明の核酸分子(II)は、免疫賦活効果、好ましくはTLR7を介した免疫賦活効果を奏する。
従って、本発明はまた、本発明の核酸分子(II)を含有する免疫賦活剤を提供する。該免疫賦活剤は、炎症・免疫応答を活性化して生体防御応答を高めたり、アジュバントとしてワクチン等の効果を高めるのに用いることができる。
生体防御応答は、ウイルス、細菌、真菌、常在微生物、がんなど、種類を問わずTLR7応答が関与する生体防御であれば、適用可能である。また、ワクチンについても、抗ウイルスワクチン、抗腫瘍ワクチンなど種類を問わず、パターン認識受容体応答の関与するワクチンであれば、いずれも適用可能である。
本発明の核酸分子(II)は、上記「本発明の核酸分子」と同様にして、医薬として製剤化することができ、また、核酸導入試薬とともに細胞に導入することができる。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されない。
材料および方法
(材料)
1. マウス
Balb/cマウスは日本クレアより購入した。6-12週齢の個体を用いた。BXS yaa- マウスは日本SLCより購入した。7-20週齢の個体を用いた。脾臓細胞は日本クレアより購入した6-12週齢のC57BL/6の遺伝的背景を持つマウスから採取した。C57BL/6の遺伝的背景を持つTlr3-/-マウス、Tlr9-/-マウスは、大阪大学の審良静男博士よりご供与頂いた。
2. RNA
配列番号15:
AAAAAGGGCUUCUGUCGUGAGUGGCACACGCAGGGCAACUCGAUUGCUGUGCGUGCGGAAUCGACAUCAAGAGAUUUCGGAAGCAUAAUUUUUUGGUAAUUGGGCAGCUGGUGAUCGUUGGUCCCGGCCCUU
配列番号16:
A(M)A(M)AAAGGGCUUCUGUCGUGAGUGGCACACGCAGGGCAACUCGA(M)UUGCUGUGCGUGCGGAAUCGACAUCAAGAGAUUUCGGAAGCAUAAUUUUUUGGUAAUUGGGCAGCUGGUGAUCGUUGGUCCCGGCGCCCUU
3. 培地
Dulbecco's Modified Eagle Medium (DMEM)培地
DMEM (4.5 g/l Glucose) with L-Gln and Sodium Pyruvate, liquid(ナカライテスク社)に、終濃度10%の非働化処理を行ったウシ胎児血清(fetal calf serum; FCS)を、シリンジフィルター(孔径0.45μm, Corning)を通して加えた。
Roswell Park Memorial Institute medium (RPMI)培地
RPMI medium 1640(ナカライテスク社)に、終濃度100μMのMEM非必須アミノ酸溶液(ナカライテスク社)、100μM MEMピルビン酸ナトリウム溶液(ナカライテスク社)、 50μM 2‐メルカプトエタノール(2‐ME、ナカライテスク社)、およびFCSを、シリンジフィルター(孔径0.45μm、Corning社)を通して加えた。
4. ヒト血清
ヒト血清は東京大学付属病院にて、健常者、関節リウマチ患者、全身性エリトマトーデス患者のボランティアより採取した。
(方法)
(DOTAPおよびLipofectamine2000による核酸の導入)
任意の体積の0.5μg/mLのRNAと、カチオン性の脂質DOTAP{N-[1-(2,3-Dioleoyloxy)propyl]-N, N, N-trimethylammonium methyl-sulfate}(Roche社)またはLipofectamine2000(Thermo Fisher Scientific 社)とを、Hepes buffered saline(HBS)またはOpti-MEM(Thermo Fisher Scientific 社)に懸濁して室温で5分間静置した。複合体形成のために各溶液をそれぞれ穏やかに混合し、20分室温で静置した。マイクロピペットで複数回、各溶液をそれぞれ緩やかに混合した後、細胞培養液に加えた。
(遺伝子発現解析)
RNAの調製は、RNAiso plus(タカラバイオ社)を用いて、標準プロトコールに従い行った。相補的DNA(complimentary DNA; cDNA)の調製は、PrimeScript RT reagent with gDNA Eraser(タカラバイオ社)を用いて標準プロトコールに従い行った。
定量的RT-PCR(qRT-PCR)はSYBR Premix Ex Taq(タカラバイオ社)とLightcycler480 (Roche Molecular Biochemicals社)を用いて実施した。終濃度0.5μM のsenseプライマー及びanti-senseプライマー、ならびに反応系体積の20%相当量のcDNA溶液(蒸留滅菌水で15から20倍に希釈)を加え、PCR反応を行った。95℃ 1分保温の後、95℃ 10秒、57℃ 5秒、72℃ 10秒のサイクル反応を60回以上行った。Glycerinaldehyde-3-phosphate dehydrogenase(Gapdh)mRNAの発現量で目的遺伝子の発現量を補正した値を相対的遺伝子発現量(Relative expression)とした。qRT-PCRに用いたプライマー(Fasmac社)を以下に示す。
(マウス尾静脈採血)
マウス尾静脈直上をカミソリで切り、血液を採取した。15分間室温で静置した後、遠心分離し(5000 x g、15分間)、血清を単離した。
(qRT-PCR法によるヒト血清中のU11 snRNA相対量の測定)
Nucleospin miRNA plasma(タカラバイオ社)を用いて、液体試料(PBSおよび血清)からRNAを単離した。液体試料50‐250μlに対して350 ngの外部コントロールRNAを加え、PBSにて300μLに希釈したものをサンプルとして用いた。外部コントロールRNAは、green fluorescent protein(GFP)mRNAの塩基番号1062‐1195の134塩基長を試験管内転写により合成したRNAを用いた。試験管内転写はin vitro Transcription T7 Kit (for siRNA Synthesis)(タカラバイオ社)の標準プロトコールに従い、RNAiso plusを用いてRNAを単離後、DEPC処理水に溶解した。使用直前まで−80℃にて保存した。
PrimeScript RT reagent with gDNA Eraser(タカラバイオ社)を用いて、標準プロトコールに従い、単離したRNAからcDNAを調製した。ただしU11 snRNAの逆転写反応において、逆転写プライマーとしてU11 snRNA qRT‐PCR用のanti‐senseプライマーを用い、反応条件を50℃、20分とした。
定量的PCRは遺伝子発現解析と同様に行った。U11 snRNAについては95℃ 1分保温後、95℃ 10秒、61℃ 5秒、72℃ 3秒のサイクル反応を60回以上行った。
(図の描画および統計解析)
図中では平均値と標準偏差を棒グラフとエラーバーで、あるいは測定値及び平均値を円またはバーで、あるいは測定値及び群の中央値と四半分値を黒色線で示した。図の描画にはMicrosoft Excel、Ilustrator及びgraphpadを用いた。
統計解析は、Microsoft Excel またはgraphpadを用いて群間分散分析にはF検定を、群間の平均値の有意差検定にはStudentのt検定を用いた。P値が0.05未満の時、検定された群間上部に示した。0.05以上の際は、群間上部にN.S.(Not Significant)と示した。
結果
参考例1 ヒトRA及びSLE患者血清中でのU11 snRNA増加と病勢との相関
ヒト血清中の相対的なU11 snRNA量を測定した。さらに相対的なU11 snRNA量と病態との関係を、Exelを用いて検証した。血清は健常者、RA及びSLE患者より採取し、病勢に関する情報を含め、東京大学アレルギーリウマチ内科山本一彦教授より頂いた。その結果、血清中U11 snRNA量はヒトRA及びSLE患者の血清中で増加しており(図2A及びC)、U11 snRNA量と、血清中リウマトイド因子量(ACPA/RA)、関節炎スコア(DAS-28 ESR)、SLE病態スコア(SLAM)との間に、相関関係が認められた(図2B及びC)。
実施例1 U11 snRNA部分長による免疫賦活化作用
U11 snRNAの配列の中で、免疫賦活化作用を示す領域の特定を行った。図3に示した終濃度2.0μg/mlのU11snRNAの部分長RNAとDOTAPとの複合体を用いて、マウス脾臓細胞 (野生型マウス) を刺激した。4時間後にRNAを抽出し、qRT-PCR法によりIfnb1 mRNAの発現を解析した(n=3)。その結果、複数のU11 snRNA部分長断片が免疫賦活化作用を有していた(図2)。これらの断片のうち、比較的免疫賦活化作用が高く、かつTLR7のRNA結合部位に結合するTLR7アゴニストに特徴的な、ウリジンリッチで一本鎖構造をとると推定される、Sm-ss配列(配列番号33)をもとにして、TLR7アゴニスト作用を介して強力な免疫賦活化作用を示す核酸分子を探索した。
実施例2 S化修飾を行なったU11 snRNA部分配列の免疫賦活化作用
S化修飾がU11 snRNAの活性に与える影響を解析するため、5μg/ml又は20μg/mlのU11 snRNAの部分長 (Sm-ss配列) 及びS化したSm-ss配列を用いて、TLR7を発現するレポーター細胞(293-TLR7;TLR7シグナルの下流因子であるNFκBのプロモーターの制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子が導入されている)を刺激した。24時間後に細胞を回収し、ルシフェラーゼ活性を測定した(n=3)。
結果を図4に示す。S化修飾はU11 snRNA断片の免疫賦活化作用を阻害せず、むしろその作用を増大させた。薬剤開発の際に、核酸のS化修飾によってその作用が失われることはないと考えられる。
実施例3 U11 snRNA部分配列のアジュバント活性
オボアルブミン(Ovalbumin:OVA、シグマ)を500μg、及び標準プロトコールに従いDotap (Roche)と混合したSm-S 60μgを、Balb/c背景のマウスに腹腔内投与し、さらに1週間後にもう一度、同様の投与を行なった。コントロールマウスには、Sm-Sの代わりに水を用いた混合液を同じ方法で投与した。1週間後及び4週間後にマウス尾静脈より採血を行い、血清を取得した。血清中のIgG2aの相対濃度を以下の方法で測定した。96穴プレート(Nunc)に100μg/mlのOVA溶液を100μl入れ、一晩、4℃で静置後、0.05% Tween20-PBS 200μlによってウェルを三回洗浄後、1% BSA-0.05% Tween20-PBS をウェルに入れ、室温で1-2時間静置した。同様にウェルを3回洗浄後、1% BSA-0.05% Tween20-PBSによって600倍に希釈した血清100μl加え、室温で1-2時間静置した。さらに同様にウェルを3回洗浄後、1% BSA-0.05% Tween20-PBSで45000倍に希釈したHRP標識抗IgG2a抗体 (Goat Anti-Mouse IgG2a, Human ads-HRP, Southern Biotech)を50μl加え1時間室温で静置した。同様にウェルを3回洗浄後、基質液 (OptEIA-substrate A及びB、BD)50μlをウェルに加え、青色の発色を確認後、25μlの硫酸によって、発色反応を停止させた。450nmの吸光度を、マイクロプレートリーダー(バイオラッド)によって測定した。その結果、Sm-Sの投与によって、IgG2aの産生が増強された(図5)。
実施例4 メチル化U11 snRNAによるTLR7リガンドの機能抑制
2.0または4.0μg/mlのメチル化U11 snRNA及び2.0μg/mlのU11 snRNAを同時にDOTAPと複合体形成させ、マウス脾臓細胞(野生型マウス)を刺激した。同様に4.0μg/mlのメチル化U11 snRNA、1.0 μg/mlのR837及び10μg/ml のB-DNA(lipofectamin 2000と混合)についても、同様に刺激した。3時間後にRNAを抽出し、qRT-PCR法によりIfnb1 mRNAの発現を解析した(n=3)。その結果、メチル化U11 snRNAは一本鎖RNA(U11 snRNA、polyU)による遺伝子誘導を特異的に抑制したことから、TLR7アンタゴニストとして機能することが判明した(図6)。一方、メチル化U11 snRNAは、TLR7のグアノシン結合部位に結合する合成リガンドR837や、TLRs非依存的にIfnb1の発現を誘導するB-DNAによる免疫賦活作用を抑制しなかった(図6)。
実施例5 メチル化U11 snRNAフラグメント(Sm-ss配列)によるU11 snRNAの機能抑制
図7に示した4.0μg/mlのメチル化RNA及び2.0μg/mlのU11 snRNAを同時にDOTAPと複合体形成させ、マウス脾臓細胞(野生型マウス)を刺激した。3時間後にRNAを抽出し、qRT-PCR法によりIfnb1 mRNAの発現を解析した(n=3)。これらのRNAはU11 snRNAによるIfnb1 mRNAの発現誘導を抑制した(図7)。特にS化修飾を行ったRNAは強く抑制を示した。
実施例6 U11 snRNA投与によるマウス関節炎の誘導及びメチル化U11 snRNAによるその抑制
Balb/cマウスの後ろ足ひざ関節に0.96μgのU11 snRNA、メチル化U11 snRNA又はtotal RNAと、Dotapとの複合体を注射し、24時間後のひざ関節の腫れをデジタルノギスによって測定した。U11 snRNAの投与はマウスに関節炎を引き起こし、その腫れは他のRNAよりも強力だった(図8)。
Balb/cマウスの後ろ足ひざ関節に0.81 μgのU11 snRNA、あるいは0.81μgのU11 snRNA及びメチル化U11 snRNAを、Dotapとの複合体形成後に注射し、24時間後のひざ関節の腫れをデジタルノギスによって測定した。メチル化U11 snRNA投与はマウス関節炎を抑制することが判明した(図9)。
実施例7 メチル化U11 snRNAフラグメントによるGvHループスモデルの治療効果
日本エスエルシー株式会社から購入したBDF1マウスに、同じく日本エスエルシー株式会社から購入したDBA/2マウスから、常法により採取した脾臓細胞 (1×108 )を腹腔内投与した。さらに1週間後、同様に脾臓細胞をもう一度投与した。同時に、0日、7日、10日、14日目において、400μgのメチル化U11 snRNAフラグメント(Sm-MeS)を腹腔内投与した。コントロールマウスには同様の方法でSm-MeSの溶媒 (水)を投与した。最初の投与から3週間後に尾静脈より採血を行い、血清を取得した。血清中の抗dsDNA抗体の濃度を抗dsDNA-マウス ELISA kit(レビス)を用いて、標準プロトコールに従って解析した。その結果、Sm-MeSの投与によって抗dsDNA抗体の産生が1/3以下に抑制された(図10)。
本発明によれば、U11 snRNA等の一本鎖RNAまたは一本鎖構造となり得る二本鎖RNA等からなる、TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7のアゴニストの機能を抑制することができる。また、本発明の核酸分子を、I型IFN及び/又は炎症性サイトカインの発現亢進が関与する疾患の治療剤として用いることができる。
一方、U11 snRNAの部分配列を含む核酸分子は、免疫賦活作用、好ましくはTLR7を介した免疫賦活作用を有し、生体防御応答の促進やアジュバントとして用いることができる。

Claims (14)

  1. U11 snRNAのヌクレオチド配列又はSm結合部位の全部もしくは一部を含むその部分配列と相同な配列を含み、かつ1以上のヌクレオチドの2’位の水酸基がメトキシ基で置換されている、TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7アゴニストの機能を抑制する核酸分子(但し、配列番号1で表されるヒトU11 snRNAのヌクレオチドからなり、該配列中ヌクレオチド番号1、2及び43で示されるアデノシン残基の2’位の水酸基がメトキシ基で置換されたものを除く)。
  2. 2以上のヌクレオチドの2’位の水酸基がメトキシ基で置換されている、請求項1に記載の核酸分子。
  3. 前記相同な配列が、
    (a)配列番号1で表されるヒトU11 snRNAのヌクレオチド配列中、ヌクレオチド番号85〜101で示される配列もしくはその部分配列、
    (b)その非ヒト哺乳動物オルソログにおける(a)と対応する配列、又は
    (c)その遺伝子多型における(a)と対応する配列
    と相同な配列である、請求項1又は2に記載の核酸分子。
  4. 1以上のホスホジエステル結合がホスホロチオエート結合で置換されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸分子。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子を含む医薬。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸分子、又は配列番号1で表されるヒトU11 snRNAのヌクレオチドからなり、該配列中ヌクレオチド番号1、2及び43で示されるアデノシン残基の2’位の水酸基がメトキシ基で置換された核酸分子を含む、TLR7のRNA結合部位に結合するTLR7アゴニストの機能抑制剤。
  7. 前記TLR7アゴニストの機能が、TLR7を介した炎症及び/又は免疫応答の活性化である、請求項6に記載の剤。
  8. 前記TLR7アゴニストの機能が、I型インターフェロン及び/又は炎症性サイトカインの発現誘導である、請求項6に記載の剤。
  9. I型インターフェロン及び/又は炎症性サイトカインの発現亢進、並びに/あるいは、TLR7を介したシグナリングの亢進が関与する疾患の治療剤である、請求項7又は8に記載の剤。
  10. 前記疾患が、自己免疫疾患又は炎症性疾患である、請求項9に記載の剤。
  11. U11 snRNAの部分配列と相同な配列を含む、免疫賦活作用を有する核酸分子。
  12. U11 snRNAの部分配列が、Sm結合部位の全部もしくは一部を含む配列であり、TLR7アゴニスト作用を有する、請求項11に記載の核酸分子。
  13. 請求項11又は12に記載の核酸分子を含む医薬。
  14. 請求項11又は12に記載の核酸分子を含む免疫賦活剤。
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