JP2020197177A - モデルλ値補償方法及び車両動作制御装置 - Google Patents
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Abstract
Description
かかる排気ガス再循環装置においては、例えば、エアフロセンサにより検出された吸入空気量と燃料噴射量制御処理の実行によって算出された燃料噴射量の指示値とを基に算出された理論上のλ{供給される空気量/(理論空燃比×指示噴射量)}の値であるモデルλ値と、λセンサによって検出された実測値とを用いてEGR量を適切に維持する制御が行われる場合がある。
このため、モデルλ値との位相差、応答差がより拡大し、EGR量の適切な補正が確保困難となり、エミッションの悪化やさらなる煤の発生を招き、λセンサへの煤の堆積を促進して、λセンサの応答性のさらなる悪化を招くという悪循環に陥るという問題がある。
λセンサと内燃機関との離間距離に起因して前記λセンサの検出値に内包される応答遅れによって生ずる前記λセンサの検出値と、所定の演算式を用いて算出される理論上のλの値であるモデルλ値との間の位相差、応答差を補償すべく、前記モデルλ値に対して一次遅延フィルタによる補正が施されて車両の動作制御に用いられるよう構成されてなる車両動作制御装置における前記モデルλ値補償方法であって、
前記λセンサの検出値と前記モデルλ値の取得と保存を繰り返し行いつつ、一定期間経過する度に、当該一定期間に保存された前記λセンサの検出値と前記モデルλ値に対して、それぞれ周波数分析を施して周波数成分及び前記各周波数成分の信号レベルを抽出し、少なくとも所定の周波数範囲において前記λセンサの検出値の前記周波数分析における前記信号レベルと前記一次遅延フィルタによる遅延が施される前のモデルλ値の前記周波数分析における前記信号レベルとの差が所定差分基準閾値を超えた場合、前記一次遅延フィルタの遅延特性を定めるフィルタ係数を補正し、前記λセンサの応答性低下により生ずる前記モデルλ値との位相差、応答差を実質的に相殺可能に構成されてなるものである。
また、上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る車両動作制御装置は、
電子制御ユニットを用いて、λセンサと内燃機関との離間距離に起因して前記λセンサの検出値に内包される応答遅れによって生ずる前記λセンサの検出値と、所定の演算式を用いて算出される理論上のλの値であるモデルλ値との間の位相差、応答差を補償すべく前記モデルλ値に対して一次遅延フィルタによる補正が施されて車両の動作制御に供されるよう構成されてなる車両動作制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記λセンサの検出値と前記モデルλ値の取得と保存を繰り返しつつ、一定期間経過する度に、当該一定期間に保存されたλセンサの検出値とモデルλ値に対して、それぞれ周波数分析を施して周波数成分及び前記各周波数成分の信号レベルを抽出し、少なくとも所定の周波数範囲において前記λセンサの検出値の前記信号レベルと前記一次遅延フィルタによる遅延が施される前のモデルλ値の前記信号レベルとの差が所定差分基準閾値を超えたと判定された場合、前記一次遅延フィルタのフィルタ係数を補正し、前記λセンサの応答性低下により生ずる前記モデルλ値との位相差、応答差を実質的に相殺可能に構成されてなるものである。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるモデルλ値補償方法が適用される車両動作制御装置の構成例について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における車両動作制御装置は、特に、排気再循装置の動作制御を主としたものであり、図1には、かかる排気再循環装置の構成例が示されている。
本発明の実施の形態における排気再循環装置は、高圧排気再循環通路5と低圧排気再循環通路6の2つ排気再循環通路が設けられた構成を有しており、かかる構成自体は従来から知られているものである。
このエンジン1のインテークマニホールド4aには、燃料の燃焼のために必要な空気を取り入れる吸気管2が、また、エキゾーストマニホールド4bには、排気のための排気管3が、それぞれ接続されている。
この高圧排気再循環通路5には、吸気管2側から、高圧排気再循環通路5の連通状態、換言すれば、排気の還流量を調整するための高圧EGRバルブ7と、通過する排気の冷却を行うための高圧EGRクーラ8が順に配設されている。
また、水冷インタークーラ14と高圧排気再循環通路5との間には、吸入空気の量を調整するためのインテークスロットルバルブ15が設けられている。
この低圧排気再循環通路6には、排気管3側から低圧EGRクーラ19、低圧EGRバルブ20が順に設けられている。
吸気管2において、インテークスロットルバルブ15と高圧排気再循環通路5との接続部分との間には、吸気圧センサ31と吸気温度センサ32が設けられている。吸気圧センサ31によりエンジン1の吸気圧が、吸気温度センサ32により吸気温度が、それぞれ検出可能となっている。
なお、図1においては、発明の実施の形態におけるモデルλ値補償処理に関連する各種センサが主として示されており、他のセンサについては図示が省略されている。
上述のように電子制御ユニット50に入力された各種の検出信号は、燃料噴射弁30の燃料噴射制御処理や、後述する本発明の実施の形態におけるモデルλ値補償処理等に供されるようになっている。
まず、本発明の実施の形態における電子制御ユニット50は、従来同様、燃料噴射弁30の燃料噴射制御やEGR制御、空燃比制御等が実行可能に構成されたものであることを前提とする。
本発明の実施の形態において前提とする従来同様のEGR制御処理は、高圧EGRバルブ7、低圧EGRバルブ20の設定すべき開度を、エンジン回転数と指示噴射量とに基づいて目標バルブ開度として算出し、実際の開度が目標バルブ開度なるようにフィードバック制御するものである。
EGR制御においては、この目標バルブ開度を、先のモデルλ値とλセンサ33の検出値とに基づいて補正を行っている。
したがって、結果的に、先の実噴射量の不足分に相当する燃料噴射量を考慮した目標EGR量、換言すれば、補正された目標EGR量が読み出されることとなる。
本発明の実施の形態におけるモデルλ値補償処理は、λセンサ33の検出値に内包される伝搬遅延(応答遅れ)により生ずるモデルλ値との間の位相差、応答差を相殺するためにモデルλ値に対して施される伝搬遅延フィルタ(一次遅延フィルタ)による伝搬遅延補正が、λセンサ33への煤の堆積によるλセンサ33の応答低下に起因して適合しなくなることを抑圧、低減するためのものである。
エンジン1が始動されたと判定されると、λセンサ33の検出値とモデルλ値の読込と保存が行われる(図2のステップS110参照)。
かかるモデルλ値は、例えば、一般的には、燃料噴射弁30に対する指示噴射量とエアマスセンサ22により検出された吸入空気量とを用いて所定の演算式により算出される。
ステップS120において、総走行距離増加分が所定増加距離を越えたと判定された場合(YESの場合)、次述するステップS130の処理へ進む一方、総走行距離増加分は所定増加距離を越えていないと判定された場合(NOの場合)は、先のステップS110へ戻り、処理が繰り返されることとなる。
なお、総走行距離は、いわゆるオドメータにより取得可能なデータである。
このように、本発明の実施の形態においては、一定期間経過する度に、その間に取得、保存されたλセンサ33の検出値とモデルλ値について周波数分析が行われるものとなっている。
かかる周波数分析の手法は、従前から良く知られている、例えば、高速フーリエ変換が好適であるが、特定の手法に限定される必要はない。
具体的には、λセンサ33の検出値の周波数分析結果において、比較的高い周波数成分が減衰し、比較的低い周波数成分の信号レベルが増大する傾向となる(図3において二点鎖線の特性線参照)。
ここで、周波数成分差分は、λセンサ33の検出値の周波数分析結果におけるある周波数成分における信号レベルと、モデルλ値の周波数分析結果におけるある周波数成分における信号レベルとの差を意味する。
この場合、抽出された全周波数成分について、周波数成分差分がそれぞれ所定の差分基準閾値を超えているか否それぞれ判定するのが理想であるが、実際には、予め特定した周波数範囲について判定するようにしても支障はない。
例えば、図3の特性線例においては、符号aが付された楕円で囲まれた箇所の周波数範囲がこれに相当する。
いずれの場合も、差分基準閾値の具体的な値は、試験結果やシミュレーション結果に基づいて定めるのが好適である。
一方、ステップS140において、周波数成分差分は差分基準閾値を超えていないと判定された場合(NOの場合)には、先のステップS120へ戻り、一連の処理が繰り返されることとなる。
先に説明したように、従来、λセンサ33の検出値に内包される伝搬遅延に起因するλセンサ33の検出値とモデルλ値の間の位相差、応答差を相殺すべくモデルλ値に対して伝搬遅延フィルタ(一次遅延フィルタ)による補正を施している。
伝搬遅延フィルタの遅延特性は、いわゆるフィルタ係数を適宜設定することで定められるのが一般的であり、本発明の実施の形態においても同様であるとする。
すなわち、フィルタ係数に対して補正係数が乗ぜられ、伝搬遅延フィルタのフィルタ特性(遅延特性)が補正されることとなる。
補正係数は、λセンサ33への煤の堆積等に起因して生ずる、モデルλ値とλセンサ33の検出値との位相差、応答差のレベルを考慮しつつ、試験結果やシミュレーション結果等に基づいて適切な値を設定するのが好適である。
図4において、横軸はエアマスセンサ22により検出された吸入空気量を、縦軸は伝搬遅延フィルタの時定数を、それぞれ表している。
また、同図において、点線で示された特性線は、伝搬遅延フィルタ係数補正後における吸入空気量の変化に対する伝搬遅延フィルタの時定数の変化例である。
すなわち、伝搬遅延フィルタ係数補正後においては、モデルλ値に対して伝搬遅延フィルタ係数補正前よりも伝搬遅延フィルタの時定数の増大に対応したさらなる伝搬遅延が施されることとなる。
すなわち、まず、本発明の実施の形態において前提とした従来のEGR制御においては、吸入空気量に応じて適宜、伝搬遅延フィルタの時定数を変えて吸入空気量に応じた伝搬遅延が施されるものとなっている。
このため、上述の吸入空気量に対する時定数の変化特性を示す特性線図は、伝搬遅延フィルタ係数補正が適切か否かを判断するための手段の1つとして用いることができる。
ステップS160において、エンジン1が停止していると判定された場合(YESの場合)は、一連の処理は終了されることとなる。
一方、ステップS160において、エンジン1は停止していない判定された場合(NOの場合)は、先のステップS120に戻り、一連の処理が繰り返されることとなる。
33…λセンサ
50…電子制御ユニット
Claims (4)
- λセンサと内燃機関との離間距離に起因して前記λセンサの検出値に内包される応答遅れによって生ずる前記λセンサの検出値と、所定の演算式を用いて算出される理論上のλの値であるモデルλ値との間の位相差、応答差を補償すべく、前記モデルλ値に対して一次遅延フィルタによる補正が施されて車両の動作制御に用いられるよう構成されてなる車両動作制御装置における前記モデルλ値補償方法であって、
前記λセンサの検出値と前記モデルλ値の取得と保存を繰り返し行いつつ、一定期間経過する度に、当該一定期間に保存された前記λセンサの検出値と前記モデルλ値に対して、それぞれ周波数分析を施して周波数成分及び前記各周波数成分の信号レベルを抽出し、少なくとも所定の周波数範囲において前記λセンサの検出値の前記周波数分析における前記信号レベルと前記一次遅延フィルタによる遅延が施される前のモデルλ値の前記周波数分析における前記信号レベルとの差が所定差分基準閾値を超えた場合、前記一次遅延フィルタの遅延特性を定めるフィルタ係数を補正し、前記λセンサの応答性低下により生ずる前記モデルλ値との位相差、応答差を実質的に相殺可能としたことを特徴とするモデルλ値補償方法。 - 前記フィルタ係数の補正は、前記フィルタ係数に補正係数を乗ずることで行われ、
前記補正係数は、前記一次遅延フィルタにより前記モデルλ値に施される遅延が、前記λセンサの応答性低下により生ずる前記モデルλ値との位相差、応答差に対応するよう設定されたものであることを特徴とする請求項1記載のモデルλ値補償方法。 - 電子制御ユニットを用いて、λセンサと内燃機関との離間距離に起因して前記λセンサの検出値に内包される応答遅れによって生ずる前記λセンサの検出値と、所定の演算式を用いて算出される理論上のλの値であるモデルλ値との間の位相差、応答差を補償すべく前記モデルλ値に対して一次遅延フィルタによる補正が施されて車両の動作制御に供されるよう構成されてなる車両動作制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記λセンサの検出値と前記モデルλ値の取得と保存を繰り返しつつ、一定期間経過する度に、当該一定期間に保存されたλセンサの検出値とモデルλ値に対して、それぞれ周波数分析を施して周波数成分及び前記各周波数成分の信号レベルを抽出し、少なくとも所定の周波数範囲において前記λセンサの検出値の前記信号レベルと前記一次遅延フィルタによる遅延が施される前のモデルλ値の前記信号レベルとの差が所定差分基準閾値を超えたと判定された場合、前記一次遅延フィルタのフィルタ係数を補正し、前記λセンサの応答性低下により生ずる前記モデルλ値との位相差、応答差を実質的に相殺可能に構成されてなることを特徴とする車両動作制御装置。 - 前記電子制御ユニットは、
前記フィルタ係数に補正係数を乗じて前記フィルタ係数の補正を実行し、
前記補正係数は、前記一次遅延フィルタにより前記モデルλ値に施される遅延が、前記λセンサの応答性低下により生ずる前記モデルλ値との位相差、応答差に対応するよう設定されたものであることを特徴とする請求項3記載の車両動作制御装置。
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