JP2020188008A - 質量分析によりガスを検査するための方法および質量分析計 - Google Patents

質量分析によりガスを検査するための方法および質量分析計 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、質量分析によってガス(4)を検査するための方法に関する。【解決手段】この方法は、イオン(4a、4b)を生成するためにガス(4)をイオン化するステップと、FTイオントラップ(2)において生成されたイオン(4a、4b)のうちの少なくとも一部を貯蔵し、励振し、検出するステップとを含む。この方法において、FTイオントラップ(2)においてイオン(4a、4b)を生成し貯蔵するステップおよび/またはFTイオントラップ(2)中のイオン(4a、4b)の検出の前にイオン(4a、4b)を励振するステップは、イオン(4a、4b)の質量電荷比(m/z)に依存する少なくとも1つの選択IFT励振、特に、SWIFT励振(10)を含む。本発明は、さらに、質量分析計(1)に関する。【選択図】図4

Description

関連出願の参照
本出願は、2015年5月4日付けの独国特許出願第10 2015 208 188.5号の優先権を主張し、その開示全体が参照により本出願の内容に組み込まれる。
本発明は、イオンを生成するためにガスをイオン化するステップと、生成されたイオンの少なくとも一部を、FT(「フーリエ変換」)イオントラップ、特に電気FTイオントラップにおいて貯蔵し、励振し、検出するステップとを含む、質量分析によりガスを検査するための方法に関する。本発明は、さらに、FTイオントラップと、FTイオントラップにおいてイオンを貯蔵し、励振し、検出するための励振デバイスとを含む質量分析計に関する。
イオン貯蔵、イオン分離、およびイオン検出は、従来の質量分析計の主要な機能であり、一般に、異なる構成要素に収納される。結果として、一般的に複雑であるインタフェースが構成要素間で使用されなければならず、それは、第1にコンパクトで効率的な解決策をより困難にし、第2にイオン集団の迅速な操作をより困難にする。その上、信号の損失があり、それは、インタフェースを通るイオンの移送に関連する質量分析計の能力および感度を低下させる。対照的に、多くの機能(例えば、イオン生成、イオン貯蔵、およびイオン検出)が、同じイオントラップに「インシトゥに」、および電気またはオプションとして磁気フーリエ変換イオントラップ(FTイオントラップと略記する)の場合には非常にコンパクトに統合され得る。
イオンまたはイオン化ガス構成物質は、例えば、"A novel electric ion resonance cell design with high signal-to-noise ratio and low distortion for Fourier transform mass spectrometry", by M. Aliman and A. Glasmachers, Journal of The American Society for Mass Spectrometry; Vol. 10, No. 10, October 1999という論文に記載されているように、非反応性で中断なしに測定することができ、そのようなFT鉄トラップにおいて質量電荷比に従って確認または検出することができる。
電気FTイオントラップをもつ質量分析計の一例が、DE 10 2013 208 959 Aに記載されている。FTイオントラップは、リング電極と、2つのさらなる電極(キャップ電極)とを有する。FTイオントラップに貯蔵されたイオンはインシトゥで励振され、励振されたイオンの検出は、貯蔵されたイオンがFTイオントラップのキャップ電極に誘起するミラー電荷を記録および評価することによって実施される。ミラー電荷を測定するために、FTイオントラップに貯蔵されたイオンは、広帯域方式でインシトゥで励振され(刺激され)、前記イオンは、質量電荷比に応じてイオントラップの固有共振周波数で振動する。この手順は、イオンが測定値の後にもはや利用できない従来の破壊的検出方法と本質的に異なる。
WO2015/003819A1は、イオン集団の粒子数が、いわゆるSWIFT(「記憶波形逆フーリエ変換」)の励振の形態のIFT励振によるFT−ICR(「フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴」)トラップにおいて所与の質量電荷比で所定の閾値を超える場合、イオントラップから個々のイオン集団を除去するかまたは前記イオン集団を抑制する実践を開示している。このようにして、イオン集団の特定のサブセットをより正確に測定することができるようにイオントラップから大きいイオン集団を除去することが可能である。
本発明の目的は、質量分析による検査の能力を向上させるために、質量分析によってガスを検査するための方法および関連する質量分析計を開発することである。
第1の態様によれば、この目的は、最初に記載されるタイプの方法によって達成され、FTイオントラップ中のイオンの生成および貯蔵、および/またはFTイオントラップにけるイオンの検出の(直)前のイオンの励振が、イオンの質量電荷比またはイオン共振周波数に依存する少なくとも1つの選択IFT(「逆フーリエ変換」)励振、特にSWIFT(「記憶波形逆フーリエ変換」)励振を含む。
この態様によれば、イオンの生成および貯蔵の間、および/またはFTイオントラップにおいて生成されたイオンまたはイオン信号の検出の直前に、選択イオン励振(以下で刺激とも呼ばれる)、例えば、同じFTイオントラップにおいて広帯域選択イオン刺激を実行することが提案される。一般には、そのような刺激は、FTイオントラップが統合された質量分析計の能力の著しい向上を促進する強力なIFT励振によって、特にSWIFT励振によって実施される。このようにして、以下で詳細に説明するように、FTイオントラップの本質的に新しい性能特性を促進する複雑なイオン操作を実行することも可能である。広帯域選択刺激は、大きいイオン共振周波数帯での励振を意味すると理解される。例として、以下の(m/z)MAX/(m/z)MIN>5、オプションとして>10がそのような広帯域選択励振に当てはまり、ここで、(m/z)MAXは、IFT励振の最大質量電荷比を表し、(m/z)MINは、IFT励振の最小質量電荷比を表す。小さいイオン共振周波数帯によるIFT励振も可能であることが理解されよう。
1つの変形では、FTイオントラップに貯蔵されるべきイオンを選択するための少なくとも1つのIFT励振は、FTイオントラップ中のイオンの生成の間に、および/またはFTイオントラップにおけるイオンの貯蔵の間に実行される。特に、電気FTイオントラップの場合には、FTイオントラップに貯蔵されるべきでなく、質量電荷比の所定の間隔中にある(ここで、この間隔は、複数の非連続的なサブ間隔を有することができる)不要なイオンは、イオン化の間にまたは貯蔵プロセスの間に連続的なSWIFT励振によって既に過度に励振されており、そのため、これらのイオンまたは電荷キャリアはFTイオントラップの周囲電極へと失われ、所望の質量電荷比を有する貯蔵されるべきイオンのみが、FTイオントラップに残り、FTイオントラップに貯蔵される、ことが可能である。
この変形では、イオンはFTイオントラップにおいて生成される、すなわち、検査されるべきガスは電荷中性状態でFTイオントラップに導入される。例として、FTイオントラップ中のイオン化は、最初に引用したWO2015/003819A1に記載されているように実行することができる、すなわち、イオンおよび/またはイオン化ガスの準安定粒子および/または電子をFTイオントラップに導入し、FTイオントラップは、その中で検査されるべき混合ガスまたはガスをイオン化する。原理上、FTイオントラップの外側でイオンをイオン化し、ガスイオンの形態の検査されるべきガスをFTイオントラップに供給することも可能であることが理解されよう。この場合にも、FTイオントラップに貯蔵されるべきイオンまたは蓄積されるべきイオンを、FTイオントラップにイオンを貯蔵している間に選択することができる。
この変形の進展形態では、検査されるべきガスの主要ガス成分の質量電荷比の間隔の外側に質量電荷比があるイオンのみが、貯蔵または蓄積のために選択される。本明細書の意味の範囲内では、主要ガス成分は、体積分率が、検査されるべきガスの50体積%超、多くの用途では90体積%超であるガス構成物質を意味すると理解される。一般には、主要ガス成分は、単一のガス構成物質のみ、例えば、N2またはH2、すなわち、原則として、質量スペクトルにおける1つの質量電荷比のみに対応する単一の物質である。オプションとして、体積分率が、50体積%超、オプションとして、90体積%超である主要ガス成分は、さらに、複数のガス構成物質から構成されてもよい。この場合、主要ガス成分のガス構成物質の各々は、検査されるべきガスの20体積%超、オプションとして30体積%超を有する。
多くの用途では、非常に低い分圧または濃度をもつガストレースまたはガス成分が、高い全圧力をもつ検査されるべきガスのガスマトリクス、例えば、プロセスガス中で検出されなければならない。全圧力に対するこれらの分圧の比は、例えば、体積ppm(10-6ppmV)からpptV(10-12)の程度である。さらにまた上述したSWIFT励振を介して、検査されるべきガスの1つまたは複数の主要ガス成分は、注目するガストレースまたはガス成分のイオンのみが、後続の検出のためにFTイオントラップに蓄積式に貯蔵されるように、フィルタ処理することができる。このようにして、測定されるべきガストレースイオンのイオン化時間の間、FTイオントラップが主要ガス成分の電荷キャリアであふれないように以前から注意されている。その結果、8桁を超える、またはことによると9桁を超えるダイナミックレンジD(D>108または109)を後続の測定で得ることができる。追加として、FTイオントラップの感度(絶対濃度)、したがって、信号対雑音比SNRは、蓄積時間とともに向上する。その結果、個々のガス成分の検出限界は、10-16mbar以下の程度とすることができる。この検出で必要とされる(電気)FTイオントラップのダイナミックレンジは、従来の残留ガス質量分析計の能力を超えている。
さらなる変形では、IFT励振の励振度(degree of excitation)および/または位相角は、第1の励振周波数と第2の励振周波数との間で変えられ、第1の励振周波数と第2の励振周波数の両方は、10%以下だけ、好ましくは5%以下だけ、特に1%以下だけ所定の励振周波数から外れる。励振度は、所定の最大振幅に関連するIFT励振の振幅を表し、一般にパーセント単位で規定される。
(電気)FTイオントラップ中のイオンを検出する場合、高周波交番電界Eがイオンのみに働くと仮定している。実際面では、これは、限られた数の同じ符号をもつ電荷キャリアのみがFTイオントラップの中にある限り当てはまる。電荷キャリアの総数は、「空間電荷」または「イオン雲」と呼ばれる。ラプラス方程式によって記述でき、高周波交番電界Eから導き出される電位φ(E=−grad(φ))は、空間電荷による影響を受ける。FTイオントラップ内の所与の体積における空間電荷による貯蔵電位へのこの影響は、この体積における空間電荷密度ρの増加とともに、および高周波交番電界から発生する関連する部分体積における平均回復力の減少とともに増加する。これは、高周波交番電界のラプラス方程式(1)から得られ、
div(grad(φ))=Δφ=−ρ/εo (1)
ここで、εoは真空誘電率を表し、φは、交番電界Eに関連する高周波交番電位を表す(上述を参照)。
特に、互いに近いイオン共振周波数を有する異なるイオンタイプを励振する場合、イオンパケットの同期振動から生じることがあることは、所々に、大きい空間電荷密度がFTイオントラップの「空間電荷感受性」領域に発生することであり、その結果として、イオンパケット全体がその共振周波数に関して強く干渉されることがあり、または前記イオンパケット全体が、さらに、もはやこれ以上は貯蔵されないことがある。その結果、これは、測定されたイオン共振周波数に大きい変化をもたらすことがあり、それは、結果として、著しく低いイオン分解能をもたらす。
それゆえに、隣接するイオン共振周波数をもつ電荷キャリアパケットまたはイオン(イオン集団)が、同時に同じ運動経路(軌道)に沿って進まない場合に有利であることが分かった。イオンの好適な軌道の(軌道派生の)位相オフセットIFT励振の結果として達成することができること(例えば、好適なSWIFT励振によるイオンパケットのわずかな軌道引き離し)は、十分に低い空間電荷密度が、主として、測定または検出の間生じることである。代替としてまたは追加として、SWIFT励振の励振度または振幅の変化があり、それは、同様に、隣接するイオン集団の間の相互作用をしっかりと減少させるか、または隣接するイオン集団が異なる運動経路または軌道を移動するのを可能にする。
ここで、SWIFT励振の位相角および/または励振度の変化が、第1の励振周波数fion,1と第2の励振周波数fion,2との間(fion,1<fion2)の連続する間隔で生じ、ここで、両方の励振周波数が互いに比較的近い、すなわち、第1および第2の(イオン)励振周波数の両方が、所定の励振周波数fion,aから、10%または5%以下だけ、特に1%以下だけ上方または下方に外れ、すなわち、以下のfion,1≧0.9fion,aおよびfion,2≦1.1fion,aまたは、それに応じて、fion,1≧0.95fion,aおよびfion,2≦1.05fion,aまたはfion,1≧0.99fion,aおよびfion,2≦1.01fion,aが当てはまる。一般には、所定の励振周波数fion,aは、注目するイオン集団またはイオンの質量電荷比に対応する。さらにまた上述した位相角および/または励振度の変化の結果として、この間隔内に存在するイオン集団を異なる軌道に持って行くことができ、その結果として、注目するイオン集団を検査する場合にイオン分解能が向上する。
さらなる変形では、位相角および/または励振度は、励振周波数に応じて第1の励振周波数と第2の励振周波数との間で段階的に変わる。段差の周波数幅は、特に等しいサイズとなるように選択することができる、すなわち、第1の励振周波数と第2の励振周波数との間隔が、等しいサイズのサブ間隔または段差に細分され、それらの間の位相角および/または励振度は変更することができる。しかしながら、部分的な間隔の周波数幅は、同じサイズを有するように必ずしも選択する必要がないことが理解されよう。理想的には、隣接するサブ間隔に割り当てられたイオンを異なる軌道に誘導するために、それぞれ2つの隣接するサブ間隔の間の移行においてその都度励振度および/または位相角の変化がある。
進展形態では、励振度および/または位相角は、励振周波数に応じて、第1の励振周波数と第2の励振周波数との間で段階的に増加するかまたは段階的に減少する。このようにして、隣接するサブ間隔に割り当てられたイオンは、特に簡単な方法で異なる軌道の間に分配され得る。隣接する段差またはサブ間隔の間の励振度および/または位相角の増加または減少は、どの場合にも同じサイズとすることができるが、しかしながら、隣接するサブ間隔間の励振度の増加または減少をその都度異なるように選択するか、またはこれらを変えることも可能である。
隣接する質量電荷比をもつイオンパケットまたはイオンは、対応するイオン共振帯域での短期励振パルスによるイオンパケットへの短期作用によって励振される。異なるイオン共振帯域中のイオンが異なる振幅および位相で励振される場合、さらにまた上述したようにイオンパケット間の相互作用をしっかりと最小にするか、または前記相互作用を故意に増幅することが可能である。イオン集団の間の相互作用のそのような故意の増幅は、特定の状況では有利であることも見いだされ得る。いずれにしても、イオン集団の間の相互作用は、上述のSWIFT励振が適応して影響を及ぼすことができる。
さらなる変形では、同じイオンが、FTイオントラップにおいてIFT励振によって繰り返して選択的に励振され(オプションとして、広帯域選択的に励振され)、イオンの検出はそれぞれのIFT励振の後実行される。それぞれのIFT励振の後の検出の間に、励振されたイオンの数(または励振されたガス構成物質の分圧)が決定される。その都度検出の間に決定されたイオンの数を平均することによって、残りのイオンが励振によって影響を受けることなしに、注目する励振されたイオンの信号対雑音比(SNR)を著しく向上させることが可能である。特に、注目するガストレースまたはガス構成物質の非常に低い分圧(例えば、pptV範囲以下)の場合には、dB単位の10×log10(N)の追加のSNR利得が可能であり、有利である(Nは、同じイオン集団の多数のIFT励振の数を説明する)。ここで、イオンは、測定期間全体にわたって安定して貯蔵することができ、前記イオンはその特性、化学的特性を維持すると仮定されている。
進展形態では、時間的に互いに直ぐに続く2つのIFT励振の間に時間間隔があり、前記時間間隔は、FTイオントラップ中のイオンの平均自由飛行時間よりも大きい。平均自由飛行時間tMは、平均自由行程長さLMを平均速度vMで割ったものに関連づけられ、次のtM=LM/vMが当てはまる。一般に、平均自由飛行時間tMは、約1msを超える(>1ms)。ITF励振、特にSWIFT励振は、イオンが平均自由飛行時間tMの倍数、例えば、3×tMを超えて、5×tMを超えて、または10×tMを超えて横断した後でのみ繰り返される。
中性ガス部分とイオン化ガス粒子との間の衝突の結果としてのイオン化の後、例えば、電荷移動または「プロトン化」などの化学反応があり得、前記化学反応は、元のイオン集団を変更する。そのようなプロセスの化学中間生成物について調査することは多くの用途において重要である。
それゆえに、1つの変形では、イオンを検出するとき、時間的に移動可能な測定時間間隔においてのみ質量分析によるイオン信号の検査が行われる。IFT励振の後、特にSWIFT励振の後、時間的に変化する質量スペクトルが、以下でFFT時間窓とも呼ばれる適切に選択された移動可能な短い測定時間間隔によって計算され提示され得る。時間的に移動させることができる測定時間間隔は、例えば、数ミリ秒、好ましくは10ms以下、特に好ましくは5ms以下の程度の時間期間を有することができる。ガスマトリクスまたは検査されるべきガスに埋め込まれたイオン集団の化学的挙動の時間的表示は、FFT時間窓の連続的または離散的変位によって生じる。
分子量が部分的にはるかに離れておりおよび部分的に互いに近い多数の異なる分子から構成された複雑な分析物を分析するために、大きい質量範囲および非常に高い質量分解能が必要とされる。この要件を満たすために、異なる質量分析方法が、通例、例えば、2つの質量分析法(いわゆるMS/MS)またはより一般的にはn質量分析法(いわゆるMSn)が、互いに組み合わされる。一般に、四重極質量分析計または従来の鉄トラップが、注目する質量領域におけるフィルタ処理または断片化のために使用され、続いて、選択された質量領域が、異なる高解像度質量分析計(例えばフーリエ変換ベース法、場所ベース法、または飛行時間ベース法)を使用してより細かく分析されて、分析計のオーバードライブ(空間電荷課題を参照)が防止され、後続の分析が簡単化される。
上述の手順から、基礎をなすFTイオントラップは、断片化またはフィルタ処理デバイスと高解像度質量分析計の両方に非常によく適していることが明らかになる。ここで、単に、IFTまたはSWIFT励振によって注目する質量領域を迅速に切り替え、上述の手段を使用して質量分解能を著しく向上させることが有利であることが分かった。
さらにまた上述したように、イオンの質量電荷比は、固有振動またはイオン共振周波数に基づくフーリエ変換によってFT質量分析計で非反応的に測定される。一般に、ここで生じるミラー電荷電流はわずかに数フェムトアンペア(10-15A)である。イオン共振周波数は、一般に、kHzからMHzの程度、例えば、約1kHzから200kHzまでであり、それゆえに、いわゆる「ファントム質量」を生成する寄生干渉周波数が重畳されることがある。系統的な干渉周波数、すなわち、測定システムに知られているものは好適な手段によって除去することができるが、測定システムに通常知られていない寄生外部干渉周波数は、質量スペクトルの不正確な解釈をもたらすことがある。
さらなる態様は、最初に記載したタイプの方法、特に、さらにまた上述したような方法に関し、前記方法は、FTイオントラップ中のイオンを励振し、イオンの第1の周波数スペクトルを記録するステップと、FTイオントラップ中のイオンの位相角および/または振動振幅を変更し、および/またはFTイオントラップ中のイオンのイオン共振周波数を変更するステップと、FTイオントラップ中のイオンを再度励振し、イオンの第2の周波数スペクトルを記録するステップと、第1の記録された周波数スペクトルと第2の記録された周波数スペクトルを比較することによって、FTイオントラップにおける干渉周波数を検出するステップとを含む。FTイオントラップ中のイオンの位相角および/または振動振幅の変化は、特に、IFT励振による、具体的にはSWIFT励振によるFTイオントラップ中のイオンの励振の更新の間に実施することができる。
ここで説明する方法を用いて、干渉周波数を、明白に識別することができ、オプションとして、イオン共振周波数の注目する領域から除去することができる。ここで利用されることは、FTイオントラップに貯蔵されているイオンのみが、IFT励振にまたはイオン共振周波数の変化に反応することである。周波数スペクトル中に存在し、この方法では全く影響を受けない残りの周波数成分は、干渉周波数であると識別することができる。干渉周波数であると識別された質量電荷比は、周波数スペクトルに対応する質量スペクトルからフィルタ処理または除去することができる。
IFT励振の場合には、注目するイオンの位相角および/または振動振幅は、実際には任意に影響を受けることができ、ここで、プロセス中にイオンがFTイオントラップから除去されないように注意すべきである。例として、FTイオントラップに貯蔵されたイオンの振幅および/または位相角は、質量スペクトルまたは周波数スペクトルにおける関連するラインの高さが変化するように変更することができるが、干渉周波数のラインは、そのような処置の場合に変化しない。
進展形態では、イオン共振周波数の変更は、FTイオントラップの貯蔵電圧(storage voltage)および/または貯蔵周波数(storage frequency)の変更を含む。なおも上記したように、イオンの質量電荷比を測定するために、イオンは、振動を実行するように励振信号(刺激)によって励振され、その共振周波数は、イオン質量およびイオンの電荷に依存し、イオン共振周波数は、一般に、kHzからMHzの程度、例えば、約1kHzから200kHzの周波数範囲にある。所定の質量電荷比の場合には、それぞれのイオン共振周波数は、高周波貯蔵電圧VRFに正比例し、高周波交番電界の貯蔵周波数fRFの2乗に反比例し、そのため、この挙動を使用して、イオン共振周波数を変位させることができる(以下で周波数SHIFTとも呼ぶ)。
例として、イオン共振周波数は、高周波貯蔵電圧VRFを増加させることによって増加させることができ、逆に、イオン共振周波数は、高周波貯蔵電圧VRFを減少させることによって減少させることができる。イオン共振周波数は、それと関連して、貯蔵周波数fRFの変化の場合には逆に振る舞う。
さらなる変形では、方法は、IFT励振の(直)後の所与のイオン共振周波数におけるイオンの軌跡の開始位相角を、検出のときに記録された時間依存イオン信号に基づいて決定するステップを含む。所定のイオン共振周波数におけるイオンの軌道に沿った移動のまたはイオンタイプに関しての開始位相角を決定するのに、励振の後、離散化誤りを避けるために十分に長い測定時間窓T0で時間依存イオン信号uion(t)を記録することが可能であり、イオンのイオン共振周波数fionはフーリエ解析によって得ることができ、ここで、以下のT0≫1/fionおよびT0=N0×1/fionおよびN0整数≫1が当てはまる。測定時間窓T0は、一般に、測定または検出期間全体の約1/10または1/50未満であり、そのため、(振動)イオン信号uion(t)の包絡線の振幅
Figure 2020188008
は、測定時間窓T0においてほぼ一定のままである。
この場合、測定の開始時または測定時間間隔の軌跡に沿った移動の開始位相角α0は、以下の計算式に従って決定することができる。以下の
Figure 2020188008

Figure 2020188008
が生じ、ここで、φは、イオン共振周波数fionにおけるイオンのIFT励振の開始位相を表し、ここで、
Figure 2020188008
は、測定の開始時(t=0)の(振動)イオン信号uion(t)の振幅の絶対値または包絡線の最大を表す。(2)の角括弧間に置かれた式は、IFT励振の開始位相φがk×πからずれた軌跡に沿った移動の開始位相角α0に対応する場合の最大絶対値を単に有する(φ=α0+k×π,k 整数)。この場合、角括弧間の式の値は、1/2cos(α0)に対応する。その結果、角括弧間の式の値は、IFT励振の開始位相φ=0°では約+1/2であり、角括弧間の式の値は、IFT励振の開始位相φ=180°では約−1/2である。さらにまた上述したように、開始位相φは、質量依存位相シフト軌道IFT励振の場合にはイオン共振周波数に応じて変えられてもよい。このようにして、質量スペクトルにおけるイオンパケットは、それに応じて、違うようにマークを付けることができる。IFT励振の開始位相φが不明である場合、開始位相φ、したがって、軌跡に沿った移動の開始位相角α0は、角括弧内に指定した式の絶対値を最大にすることによって決定することができる。
進展形態では、方法は、追加として、IFT励振の後のイオンの軌跡の開始位相角に基づいてイオンの帯電極性を決定するステップを含む。電気FTイオントラップにおいて、正に帯電したイオンタイプと負に帯電したイオンタイプの両方を同時に捕捉することが可能である。IFT励振(例えば、SWIFT励振)の後のイオン移動の開始位相角α0またはイオンの軌跡を評価することによって、より正確には、式1/2cos(α0)を評価することによって、イオンの極性を検出することが可能であり、イオンが均一な広帯域励振によって刺激された場合、例えば、正に帯電したイオンは、励振直後に電極の一方に移動し、一方、負に帯電したイオンは、その電極から離れたところに移動する。すべてのイオンが、その極性と無関係に励振の後検出される。以下の式が、関連するイオンタイプの各イオン共振周波数fionに適用される場合、
Figure 2020188008
であり、前記式は式(2)から直接生じ、関連するイオンタイプの極性(+または−)を決定することができる。
イオンの電荷極性が分かっている場合、イオン集団を、極性に応じて、例えばSWIFT選択(オプションとして、広帯域選択)励振によって違うように励振することが可能であり、これは、電荷極性に応じて測定電極に加えられる異なる励振過渡現象によって実施される。上述の手順は、基礎をなすFTイオントラップの電極幾何形状に限定されない、すなわち、この方法は、異なる電極幾何形状をもつ測定電極、例えば、エンドキャップ内の測定チップの形態、または環状イオントラップなどの環状測定キャップの形態などの測定電極に適用することができることが理解されよう。
本発明のさらなる態様は、最初に記載したタイプの質量分析計に関し、励振デバイスは、イオンの貯蔵および/または励振の間、イオンの質量電荷比に依存した少なくとも1つの選択IFT励振、特にSWIFT励振を生成するように具現される。ここで説明する質量分析計は、さらにまた上述した方法を実行するのに特に好適である。
FTイオントラップが電気FTイオントラップとして具現され、すなわち、質量分析計が電気イオン共振質量分析計であり、イオンが高周波交番電界によって動的に貯蔵される場合に有利であることが分かった。
進展形態では、質量分析計は、検査されるべきガスをFTイオントラップにおいてイオン化するように具現され、評価デバイスは、イオン化の間(および貯蔵の間)、IFT励振、特にSWIFT励振を生成するように具現されることが好ましい。このために、質量分析計は、電子および/またはイオン化ガスをFTイオントラップに供給するためのデバイスを有することができる。この方法に関連してさらにまた上述したように、FTイオントラップに貯蔵されるべき(蓄積式に)イオンの選択は、このようにしてイオン化の間に既に企てることができ、その結果として、FTイオントラップのダイナミックレンジおよび感度を向上することができる。
さらなる実施形態では、励振デバイスは、第1の励振周波数と第2の励振周波数との間のIFT励振の励振度(または振幅)および/または位相角を変えるように具現され、第1の励振周波数と第2の励振周波数の両方は、10%以下だけ、特に好ましくは5%以下だけ、特に1%以下だけ所定の励振周波数から外れることが好ましい。さらにまた上述したように、質量分解能は、この実施形態では、互いに近い質量電荷比をもつイオンまたはイオン集団が、同じ軌跡に沿って走らないように軌道状におよび狙い通りに適切に励振することによって向上させることができる。
この実施形態の進展形態では、励振デバイスは、励振周波数に応じて、第1の励振周波数と第2の励振周波数との間で位相角および/または励振度を段階的に変えるように具現され、励振度および/または位相角は、励振周波数に応じて、第1の励振周波数と第2の励振周波数との間で段階的に増加するかまたは段階的に減少することが好ましい。励振度または位相角の徐々に、特に、連続的に増加するかまたは連続的に減少する変化の結果として、軌道の十分な間隔、測定の間の低い局所空間電荷密度、および、その結果、より高い質量分解能を得ることが可能である。
さらなる実施形態では、質量分析計は、IFT励振の後にイオンを検出したときに記録された時間依存イオン信号に基づいて、所与のイオン共振周波数をもつイオンの軌跡の位相角を決定するように具現された検出器を含み、検出器は、位相角に基づいて、検出されたイオンの電荷極性を決定するよう具現されることが好ましい。さらにまた上述したように、イオンの電荷極性は、IFT励振の後のイオン移動の位相角の評価によって検出することができる。
本発明のさらなる態様は、特に、さらにまた上述したように、最初に記載したタイプの質量分析計に関し、励振デバイスは、FTイオントラップ中のイオンの位相角および/または振動振幅、および/またはFTイオントラップ中のイオンのイオン共振周波数を変更するように具現され、質量分析計は、追加として、FTイオントラップ中のイオンの位相角および/または振動振幅を変更し、および/またはFTイオントラップ中のイオンのイオン共振周波数を変更する前に記録された第1の周波数スペクトルと、FTイオントラップ中のイオンの位相角および/または振動振幅を変更し、および/またはFTイオントラップ中のイオンのイオン共振周波数を変更した後に記録された第2の周波数スペクトルとの比較に基づいて、FTイオントラップにおける干渉周波数を検出するように具現された検出器を有する。さらにまた上述したように、記録されたスペクトルにおける干渉周波数は、干渉周波数が、イオン共振周波数の変更に対して、またはイオンの位相角および/または振動振幅の変更に対して反応しないか、またはわずかしか反応しないことによって識別することができる。
さらなる実施形態において、FTイオントラップは、FT−ICRイオントラップとしてまたはオービトラップとして具現される。原理上、フーリエ変換による質量分析は、高速測定を実行するために異なるタイプのFTイオントラップを用いて実行することができ、いわゆるイオンサイクロトロン共鳴トラップ(FT−ICRイオントラップ)との組合せが、最も広く普及している。質量分析は、磁気または電気ICRトラップとして具現することができるFT−ICRトラップのサイクロトロン共鳴励振によって実行される。いわゆるオービトラップは、中央にあるスピンドル形状電極を有し、そのまわりでイオンが電気引力によって軌道中に保持され、中央電極の軸に沿った振動が、イオンの偏心注入によって生成され、前記振動は、FT−ICRトラップ(FTによる)と同様に検出され得る信号を検出器プレートに生成する。質量分析計は、さらに、他のタイプのFTイオントラップ、すなわち、貯蔵されたイオンによって測定電極に発生された誘導電流が時間依存で検出および増幅されるイオントラップと組み合わせて動作することができることが理解されよう。
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明にとって本質的な詳細を示す図面の図を参照して、本発明の例示的な実施形態の以下の説明および特許請求の範囲から明らかになる。個々の特徴は、本発明の変形において、各場合にそれ自体個別に、または複数のときに任意の所望の組合せで実現され得る。
例示的な実施形態が、概略図に示され、以下の記載で説明される。
電気FT−ICRイオントラップをもつ質量分析計の概略図である。 SWIFT励振の間のイオン共振周波数に依存する励振度の概略図である。 図1の質量分析計を用いて質量スペクトルを記録するための測定値中のタイミングの概略図である。 主要ガス成分をもつガスの3つの質量スペクトルの概略図である。 (広帯域)選択SWIFT励振の周波数スペクトルおよび時間プロファイルの概略図である。 (広帯域)選択SWIFT励振の周波数スペクトルおよび時間プロファイルの概略図である。 均一なSWIFT励振の場合、または励振度および位相角に関して周波数依存で変化するSWIFT励振の場合の周波数スペクトルの概略図である。 励振されたイオンの関連する軌跡の概略図である。 励振されたイオンの関連する軌跡の概略図である。 多数の(広帯域)選択SWIFT励振および後続の検出の時間プロファイルの概略図である。 時間的に移動可能な測定時間間隔による検出イオン信号の概略図である。 異なる貯蔵電圧で記録された2つの周波数スペクトラムの概略図である。 FT−ICRイオントラップに貯蔵された正電荷イオンの周波数スペクトルの概略図(図10a)および負電荷イオンの周波数スペクトルの概略図(図10b)、ならびにFT−ICRイオントラップに貯蔵されたすべてのイオンの周波数スペクトルの概略図(図10cおよび図10d)である。
図面の以下の説明では、同一の参照符号は、同一の、または機能的に同一の構成要素で使用される。
図1は、電気FT−ICRイオントラップ2を有する質量分析計1を概略的に示す。FT−ICRトラップ2はリング電極3を有し、リング電極3は、例えば、kHzからMHzの程度、例えば、1MHzの周波数fRFと、数百ボルトの振幅VRFとを有することができる高周波AC電圧VRFが印加される。高周波AC電圧VRFは、FT−ICRトラップ2内に高周波交番電界を生成し、検査されるべきガス4のイオン4a、4bは、前記電界中に動的に貯蔵される。
高周波交番電界(Eフィールド)に基づき、イオン4a、4bに平均回復力がより強力に働き、イオン4a、4bがFT−ICRイオントラップ2の中央または中心から遠く離れる。イオン4a、4bの質量電荷比(m/z)を測定するために、イオン4a、4bは、振動を実行するように励振信号S1、S2(刺激)によって励振され、振動の周波数fionは、イオン質量およびイオン電荷に依存し、一般に、kHzからMHzの程度、例えば、約1kHzから200kHzの周波数範囲にある。それぞれの励振信号S1、S2は、第1の励振ユニット5aと一緒に励振デバイス5を形成する第2の励振ユニット5bおよび第3の励振ユニット5cによって生成され、所定の貯蔵周波数fRFをもつ高周波貯蔵電圧VRFを生成するように働く。励振デバイス5は、同期デバイス5dをさらに有し、同期デバイス5dは、3つの励振ユニット5a〜5cを時間的に同期させる。増幅器が、各励振ユニット5a〜5cの下流に配設され、前記増幅器は同様に励振デバイス5の一部である。
非反応性で非破壊性の検出(すなわち、イオン4a、4bが、検出の後依然として存在する)のために、イオン4a、4bの振動信号は、例えば、最初に引用され全体が参照により本明細書の内容に組み込まれるDE 10 2013 208 959 Aに記載されているように、測定電極6a、6bに誘起ミラー電荷の形態でタップされる。ここで詳細に説明するように、それぞれの測定電極6a、6bは、それぞれフィルタ7a、7bを経由して低雑音電荷増幅器8a、8bにそれぞれ接続される。電荷増幅器8a、8bは、第1に、2つの測定電極6a、6bからのイオン信号を捕捉し増幅し、第2に、測定電極6a、6bを、貯蔵周波数fRFに対して仮想接地電位に保持する。電荷増幅器8a、8bによって供給される信号から、イオン信号uion(t)が差形成によって生成され、前記イオン信号の時間プロファイルが、図1の右下に示されている。イオン信号uion(t)は、図示の例では高速フーリエ分析(FFT)のためのアナログ−デジタル変換器9aおよび分光器9bを有する検出器9に送り込まれ、図1の右上に示されている質量スペクトルが生成される。この場合、検出器9または分光器9bは、第1に、FT−ICRイオントラップ2に貯蔵されたイオン4a、4bの固有イオン共振周波数fionの周波数スペクトルを生成し、その周波数スペクトルは、それぞれのイオン4a、4bの質量および電荷へのイオン共振周波数fionの依存性に基づいて質量スペクトルに変換される。質量スペクトルは、検出された粒子または電荷の数を質量電荷比m/zの関数として表す。
結果として、電気FT−ICRトラップ2は、質量スペクトルの直接検出または直接記録を容易にし、その結果として、迅速なガス分析が促進される。しかしながら、フーリエ分光測定法を用いた質量スペクトルの高速記録は、上述の電気FT−ICRトラップ10だけでなく図1に示したトラップタイプの変形でも、例えば、いわゆるオービトラップの場合でも実施することができる。
さらにまた上述したように、FT−ICRイオントラップ2におけるすべてのイオン4a、4bはイオン共振周波数fionを有し、そのイオン共振周波数fionで、貯蔵されたイオン4a、4bはFT−ICRイオントラップ2中で振動し、前記イオン共振周波数は前記イオンの質量電荷比(m/z)に比例する。イオン4a、4bがそれぞれのイオン共振周波数fionで励振される場合、イオン4a、4bは、狙った通りにこのようにして励振されるか、または共振オバーシュートを介してFT−ICRイオントラップ2から投げ出され得る。結果として、特定の質量電荷比m/zをもつイオン4a、4bを選択的に励振することができ、またはそのイオン4a、4bをFT−ICRイオントラップ2に貯蔵するのを防止/抑制することができる。
この原理の一般化は、イオン共振周波数範囲に1つまたは複数の領域(「窓」)をもたらし、それぞれの窓内にイオン共振周波数fionがあるイオン4a、4bを、狙った通りに励振または抑制することができる。逆フーリエ変換を介したこれらの領域の逆変換は、いわゆるIFT励振で必要とされる時間信号を供給する。これは、これらの時間プロファイルが前もって計算される場合、SWIFT励振10と呼ばれる。広帯域選択励振スペクトルをもつSWIFT励振10の一例が図2に示されており、イオン共振周波数fionは貯蔵周波数fRFに関係する。所望の選択励振スペクトルは、イオン共振周波数fionに依存し、結果として、イオン4a、4bの質量電荷比(m/z)に依存する。関連する離散SWIFT時間関数(図2に図示せず)が、図2に示した所望の励振スペクトルを得るためにSWIFT励振の瞬間に出力される。
測定電極6a、6bは、SWIFT励振10のために使用することができる。イオン生成およびイオン貯蔵の間およびさらにイオン信号uion(t)の検出直前に、特定のイオン4a、4bが、第1に、貯蔵されるかまたは貯蔵されないかのいずれかであり、第2に、実際に連続的に励振されるかまたは全く励振されないかのいずれかであるように、SWIFT励振10を介して、イオン4a、4bを測定電極6a、6bの方向に偏らせることができる。
それゆえに、質量分析計1の新しい性能特性を実現するために、いくつかのオプションがSWIFT励振を介して生じる。すべての測定タスクの前提条件は、FT−ICRイオントラップ2内のイオン4a、4bの励振時間が、注目する分子またはイオン4a、4bの平均自由飛行時間よりも実質的に短いことである。例えば、両方が参照により本出願の内容に組み込まれる、"Stored Waveform Inverse Fourier Transform Axial Excitation/Ejection for Quadrupole Ion Trap Mass Spectrometry" by S. Guan and A.G. Marshall, Anal. Chem. 1993, pages 1288-1294という論文、または米国特許第4,945,234号に提示されているように、最適化されたSWIFTアルゴリズムを使用することが有利であることが分かった。最適化SWIFTアルゴリズムは、第1に、できる限り短いSWIFT信号出力を生成し、第2に、測定電極6a、6bに接続された低雑音電荷増幅器8a、8bのオーバードライビングを防止する。
SWIFT励振10は、(正規化)イオン信号uion(t)の包絡線のみを示している図3に示されているように、イオン4a、4bを検出する直前に、すなわち(正規化)イオン信号を記録する前に実施することができる。しかしながら、SWIFT励振10は、図3のタイミングによって同様に表されるように、イオン4a、4bの生成および貯蔵の間にさらに既に実施されていてもよい。この場合、SWIFT励振10は、FT−ICRイオントラップ2に貯蔵されるべきであるイオン4a、4bを選択するように働く。
原理上、ガス4をイオン化することによってイオン4a、4bを生成するための2つのオプションがあり、イオン4a、4bがFT−ICRイオントラップ2内で生成されるか、またはガス4が、電荷中性形態でFT−ICRイオントラップ2に供給され、イオン化がFT−ICRイオントラップ2で実施されるかのいずれかである。例として、FT−ICRイオントラップ2におけるそのようなイオン化は、最初に引用され参照によりこの態様に関する本明細書の内容に組み込まれるWO2015/003819A1に記載されている方法で実行することができる。
イオン化が電気FT−ICRイオントラップ2において実施される場合、連続的なSWIFT励振が、ガス4のイオン化の間に既に実施することができ(図3参照)、その結果として、不要なガス成分は過度に励振され、その結果、不要なガス成分の電荷キャリアは周囲電極、3、6a、6bところで失われ、注目する電荷キャリアまたはイオン4a、4bのみが、計測のためにFT−ICRイオントラップ2に蓄積形式で貯蔵され、その結果、これにより、FT−ICRイオントラップ2が、検出されるべきイオン4a、4bのイオン化時間の間不要な電荷キャリアであふれないことが保証される。分析されるべきまたは検出されるべきイオン4a、4bは、イオン化の直後にまたはFT−ICRイオントラップ2への移送の後に、FT−ICRイオントラップ2に貯蔵され蓄積される。
貯蔵の間または貯蔵の前のそのような選択は、多くの用途では高い全圧力をもつガスマトリクスまたはガス4中の非常に低い分圧または濃度をもつガストレースまたはガス成分の検出が必要とされるので、有利である。そのようなガスの質量スペクトルの一例が、図4の下部に示されている。質量スペクトルが図4の右上に示されている非常に低い分圧によるガストレースが検出されるべきである場合、FT−ICRイオントラップ2に貯蔵されるべきでない不要なガス成分が、検査されるべきガス2の主要ガス成分11であることがある。本明細書の意味の範囲内では、主要ガス成分11は、体積分率が、検査されるべきガス2の50体積%超、多くの用途では90体積%超であるガス構成物質を意味すると理解される。
図4に示した例では、主要ガス成分11は、異なる質量電荷比(m/z)1および(m/z)2をもつ2つのイオン集団を有し、その体積分率は各場合に検査されるべきガス2の30体積%超であり、その結果、主要ガス成分11の全体積分率は、検査されるべきガス2の50体積%超である。質量選択SWIFT励振なしに質量分析計1によって記録されたガス4の質量スペクトルが、図4の左上に示されている。ここで提示された質量スペクトルでは、例えば多数キャリアガスの主要ガス成分11のイオン集団のみを識別することが可能であるが、主要ガス成分11の質量電荷比(m/z)1および(m/z)2が含まれている図4に示した間隔Iの外側に質量電荷比が存在する実際に注目するガストレースを識別することは可能でない。
広帯域選択SWIFT励振10の結果として、間隔I内にあるそれらの質量電荷比m/zの選択フィルタ処理を行うことができ、または主要ガス成分11の第1の質量電荷比(m/z)1および第2の質量電荷比(m/z)2のターゲットフィルタ処理を行うことができる。このようにして、質量電荷比m/zが間隔Iの外側のイオン4a、4bのみが、FT−ICRイオントラップ2に貯蔵され、そのため、これらは、図4の右上の質量スペクトルに基づいて識別することができるように高精度で検出され得る。
全圧力に対する注目するガス構成物質の分圧の比は、例えば、体積ppm(10-6ppmV)からpptV(10-12)の程度とすることができる。ここで、個々のガス成分の検出限界は、10-16mbarの程度とすることができる。このようにして、8桁を超えるダイナミックレンジD(D>108)を達成することができる。追加として、FT−ICRイオントラップ2におけるイオン4a、4bの感度(絶対濃度)、およびそれに応じて信号対雑音比SNRは、貯蔵の間の蓄積時間とともに増加する。
電気FT−ICRイオントラップ2の場合には、高周波交番電界(Eフィールド)が、FT−ICRイオントラップ2における空間電荷によって、より正確には空間電荷密度によって影響を受ける、すなわち、FT−ICRイオントラップ2に存在する電荷またはイオン4a、4bが、イオン4a、4bを貯蔵するように働く高周波交番電界にフィードバックされる。FT−ICRイオントラップ2のそれぞれの部分体積における空間電荷密度が大きいほど、および関連する部分体積における高周波交番電界Eから生じる平均貯蔵力が弱いほど、交番電界Eは強く影響される。
特に、イオン共振周波数または質量電荷比が異なっているが互いに近いイオン4a、4bを励振する場合、高い空間電荷密度が、大きい空間電荷密度の発生に特に敏感であるFT−ICRイオントラップ2の領域の一部に生じることがある。イオンパケット全体のイオン共振周波数は、大きい空間電荷密度によって強く干渉され、それは、結果として、測定分解能の著しい低下をもたらす。
互いに近いイオン共振周波数fionをもつイオン4a、4bが、同時に、同じ運動経路(または同じ軌道)を通らない場合、FT−ICRイオントラップにおける局所空間電荷は低減され得る。これは、図5aに示すように、第1のイオン励振周波数fion1と第2のイオン励振周波数fion2との間で、周波数依存でまたはイオン4a、4bの質量もしくは質量電荷比m/zに応じて、SWIFT励振10の励振度Aを変えることによって達成することができる。図5bは、SWIFT励振の関連時間依存励振信号(S1またはS2)を示す。
図5a、図5bに示した例では、SWIFT励振の励振度Aは、イオン励振周波数fionに応じて段階的に変化し、励振度Aは、第1のイオン励振周波数fion1と第2のイオン励振周波数fion2との間の間隔全体にわたって最大の励振度A(すなわち、SWIFT励振10の最大振幅)の約20%以下だけ変化する。図示の例では、励振度Aは、第1のイオン励振周波数fion1から第2のイオン励振周波数fion2まで段階的に増加し、励振度Aの隣接する段差の間の段差高さは等しいサイズである。代替として、励振度Aは、さらに、第1のイオン励振周波数fion1から第2のより高いイオン励振周波数fion2まで減少してもよいことが理解されよう。その上、段差高さ、すなわち、SWIFT励振10の隣接する段差の励振度の間の差は、必ずしも一定ではなく、段差ごとに変わってもよい。第1のイオン励振周波数fion1と第2のイオン励振周波数fion2との間の励振度Aの連続的な段差のない変化が、同様に、原理上ここで可能である。
SWIFT励振10の励振度Aまたは振幅を変えることに加えてまたは代替として、図6aに示すように、さらに、SWIFT励振10の位相角φを変えてもよい。図示の例では、位相角φは、同様に、ステップバイステップで、正確にはその都度45°の値だけ変更され、SWIFT励振10の位相角φは、図6aに示した例ではイオン励振周波数fionの増加とともに段階的に増加する。SWIFT励振10の位相角φのステップバイステップの減少が、同様に、可能であり、隣接する段差の位相角φの間の差は45°から外れてもよく、特に、段差ごとに変わってもよいことが理解されよう。位相角φのステップバイステップの増加または減少は、360°を法として単に定義される、すなわち、0°の位相角φは、図示の例では8つの段差の後で再び達成されることが同様に理解されよう。ここで、位相角φは、SWIFT励振の時間シフトまたは遅延に対応し、位相角φは、所定のイオン励振周波数fion,aに関係する。
例として、所定のイオン励振周波数fion,aは、分析されるべきイオン集団のイオン共振周波数fionまたは質量電荷比m/zに対応することができる。しかしながら、所定のイオン励振周波数fion,aは、さらに、質量電荷比m/zが互いに近い2つのイオン励振周波数fion1、fion2の間または2つの関連するイオン共振周波数の間の間隔の中にあってもよい。例として、第1の(より小さい)イオン励振周波数fion1は、所定のイオン励振周波数fion,aから、10%以下だけ、好ましくは5%以下だけ、特に1%以下だけ外れることができる。同じことが、第2のより高いイオン励振周波数fion2に当てはまる。図6aに示した例では、比fion1/fion,aは約0.999(偏差:0.1%)であり、一方、比fion2/fion,aは約1.009(偏差:0.9%)である、すなわち、両方のイオン励振周波数fion1、fion2は、さらにまた上述した1%未満の偏差の値の範囲内にある。
図6bは、均一なSWIFT励振、すなわち、一定の励振度Aを有し、その上、同期または位相ロック法で実施されるSWIFT励振(図6aに破線で表されている)の場合のFT−ICRイオントラップ2におけるイオン4a、4bの軌跡Bを示す。図6bにおいて、値zは、z方向、すなわち、FT−ICRイオントラップ2の測定電極6a、6bの方のイオン4a、4bの偏位を示し、ここで、z0は最大偏位を表す。値Tは、所定のイオン励振周波数fion,aによるイオン4a、4bの振動の周期期間を示す。図6bにおいて明確に認識することができることは、イオン4a、4bの軌跡Bが互いに重なって高い空間電荷密度が生じることである。
図6cは、異なる励振度Aによる図6aに示した軌道SWIFT励振10の場合において、追加として、位相角φも図6aに示したように変えられたイオン4a、4bの軌跡Bを、隣接するイオン共振周波数fionまたは隣接する質量電荷比m/zをもつ10個のイオンパケットまたはイオン集団の例を使用して示している。図6cで明確に識別できることは、10個のイオンパケットの軌跡Bは、SWIFT励振10によって空間的に分離され、その結果として、FT−ICRイオントラップ2の局所空間電荷密度が低減され、その結果として、質量分解能が向上することである。典型的には、イオン4a、4bは、測定または検出が実施される前に約100回〜1000回を超えて(周期的)軌跡Bを通過する。このようにして、測定または検出を実行するために、FT−ICRイオントラップ2では非常に低い圧力しか必要とされない。
図7は、SWIFT励振10のさらなる適用を示し、同じイオン4a、4bが、2つの(広帯域)選択SWIFT励振10によってFT−ICRイオントラップ2において連続的に励振され、続いて、その都度検出される。それぞれのSWIFT励振10の後の検出の間に、励振されたイオン4a、4bの数(または励振されたガス構成物質の分圧)が決定される。検出の間に決定されたイオン4a、4bの数をその都度平均することによって、残りのイオンが励振によって影響を受けることなしに、注目する励振されたイオン4a、4bの信号対雑音比(SNR)を著しく向上させることが可能である。
そのような多重検出のための前提条件は、時間的に互いに直ぐに続く2つのIFT励振10の間に時間間隔τがあり、前記時間間隔が、FT−ICRイオントラップ2におけるイオン4a、4bの平均自由飛行時間tMよりも長く、すなわち、τ>tMが当てはまり、ここで、典型的には、tMは約1ミリ秒を超える(>1ms)ことである。SWIFT励振は、イオン4a、4bが、平均自由飛行時間tMの倍数、例えば、3×tMを超えて、5×tMを超えて、または10×tMを超えて横断した後でのみ繰り返される。
図8は、SWIFT励振10の後の時間依存イオン信号uion(t)と、破線で表された時間的に移動可能な測定時間間隔12(FFT時間窓)とを示し、前記測定時間間隔は、例えば、数ミリ秒、好ましくは10ms、特に好ましくは5ms以下の程度の持続時間t1を有する。ガスマトリクスまたは検査されるべきガスに埋め込まれたイオン集団の化学的挙動の時間分解表示は、測定時間間隔12の連続的または離散的変位によって生じ得る。この場合、質量分析による検査は、単に、測定時間間隔12の間のイオン信号uion(t)の値に基づいて企てられる、すなわち、評価は測定時間間隔12においてのみ実行される。これは、例えば、初めに存在したイオン集団を検出期間の間に変更する電荷移動または「プロトン化」などの化学反応が、イオン4a、4bの検出の間に生じる場合、特に有利である。測定時間間隔12においてのみ評価を実行することによって、例えば、実際に実時間でH2+からH3+への移行などの反応を観察することが可能である、すなわち、化学反応の中間生成物も検出することができる。特に、これは、FT−ICRイオントラップ2に貯蔵されている選択されたイオン4a、4bが、実際に、化学反応のために供給されたイオン集団に対応するかどうかを検査することができるようにする。オプションとして、FT−ICRイオントラップ2に蓄積されるべきイオン4a、4bの選択または選択プロセスが、好適な方法で適応され得る。
質量分析計1によって質量スペクトルを記録するとき、記録された質量スペクトル中に、FT−ICRイオントラップ2に貯蔵されたイオン4a、4bによって生成されていないラインをもたらす寄生干渉周波数fRが生じることがある。そのような干渉周波数fRは、質量スペクトルの誤った解釈をもたらすことがある。
質量スペクトル中の干渉周波数fRを識別し適宜除去するために、以下で説明する方法を使用することができる。第1のステップにおいて、イオン共振周波数fion(図9に破線を使用して示されている)の第1の周波数スペクトル13aを記録するために、FT−ICRイオントラップ2中のイオン4a、4bがSWIFT励振によって励振され、続いて、検出される。第2のステップにおいて、FT−ICRイオントラップ2中のイオン4a、4bのイオン共振周波数fionが変更され、第3のステップにおいて、イオン4a、4bが、再び、SWIFT励振10によって励振され、続いて、検出され、第2の周波数スペクトル13bが記録され、第2の周波数スペクトル13bは実線を使用して図9に示されている。
図9に示した2つの周波数スペクトル13a、13bを比較すると、第1の周波数スペクトル13aおよび第2の周波数スペクトル13bは、FT−ICRイオントラップ2のイオン共振周波数fionの位置が両方の周波数スペクトル13a、13bに事実上対応するようにFT−ICRイオントラップ2のイオン共振周波数fionを変化させるとき、周波数が事実上変位しないラインを有することが明確に分かる。これらのラインは、干渉周波数fRであると識別または決定することができる。対照的に、イオン共振周波数fionを変更することによって系統的に変位させることができる2つの周波数スペクトル13a、13b中のラインは、FT−ICRイオントラップ2に貯蔵されたイオン4a、4bに対応づけることができる、すなわち、これらのラインは「実際の」イオン共振周波数fionである。
図9に表されているように、FT−ICRイオントラップ2の貯蔵電圧VRFは、イオン共振周波数fionを変更するために第1の値Vrf1から第2の値Vrf2まで変化させられた。イオン共振周波数fionは、所定の質量電荷比m/zの場合に貯蔵電圧VRFに正比例するので、イオン共振周波数fionは、貯蔵電圧VRFを変更することによってシフトさせることができる。イオン共振周波数fionは、所与の質量電荷比m/zにおいて貯蔵周波数fRFの2乗に反比例するので、イオン共振周波数fionの変化は、代替としてまたは追加として、貯蔵周波数fRFの変化によって同様に実施することができる。
イオン共振周波数fionの変化の代替としてまたはそれに加えて、例えば、図6a〜図6cに例示的に示したように質量依存SWIFT励振10によって、第2のステップにおいて、FT−ICR鉄トラップ2におけるイオン4a、4bの軌跡Bの位相角φおよび/または振動振幅z/z0を変化させることができる。イオン4a、4bの軌跡はそのようなSWIFT励振の場合に変更され、これは、例えば、第1の周波数スペクトル13aと比較して第2の周波数スペクトル13bのラインの高さの変化によって目立つようになる。対照的に、SWIFT励振10は、事実上、干渉周波数fRへの影響がなく、そのため、干渉周波数fRは、さらに、この変形では、2つの周波数スペクトル13a、13bの比較によって検出または識別することもできる。
SWIFT励振10のさらなる適用は、電気FT−ICRイオントラップ2に貯蔵されたイオン4a、4bの電荷極性(正/負)の決定にある。FT−ICRイオントラップ2中の正に帯電したイオン4aおよび負に帯電したイオン4bを決定または識別するために、検出の開始時、すなわち、SWIFT励振10の直後の軌跡Bの位相角α0が、最初に、所定のイオン共振周波数fionで、さらなる上述で規定した式(2)に従って決定され、式(2)は以下で再度転載され、以下の
Figure 2020188008

Figure 2020188008
が生じ、ここで、φは、イオン共振周波数fionでのイオン4a、4bのSWIFT励振10の開始位相を表し、
Figure 2020188008
は、測定の開始時のイオン信号uion(t)の絶対値の最大を表し、ここで、以下が当てはまり、T0≫1/fionおよびT0=N0×1/fionおよびN0整数≫1である。一般に、振動するイオン信号の振幅の値または包絡線の
Figure 2020188008
は、測定時間間隔T0の間にわずかしか変化しない、すなわち、測定間隔T0の期間は、イオンの平均自由飛行時間よりも著しく短い。
電気FT−ICRイオントラップ2では、正に帯電したイオン4aと負に帯電したイオン4bの両方を同時に捕捉することが可能である。すべてのイオン4a、4bは、それらの電荷極性と無関係にSWIFT励振10の後検出され、その結果として、例えば、図10cに示される周波数スペクトルが生じ得る。図10cに示されたFT−ICRイオントラップに貯蔵されたすべてのイオン4a、4bの周波数スペクトルは、図10aに示された正に帯電したイオン4aの周波数スペクトルと、図10bに示された負に帯電したイオン4bの周波数スペクトルとの重ね合せを表す。
SWIFT励振の後のイオン4a、4bのイオン移動または軌跡Bの位相角α0を評価することによって、イオン4a、4bの電荷極性を検出することが可能である。イオン4a、4bが均一な広帯域励振によって刺激される場合、例えば、正に帯電したイオン4aは、SWIFT励振10の直後に第1の測定電極6aの方に移動し、一方、負に帯電したイオン4bは第1の測定電極6aから離れたところに移動する。
例として、以下の式の
Figure 2020188008
が、図10cに示された周波数スペクトルのラインに対応する各イオン共振周波数fionに適用される場合、正イオン4aは、例えば、正符号(α0=0°、極性+1)に基づいて識別することができ、負イオン4bは、負符号(α0=180°、極性−1)に基づいて識別することができる。このようにして、正イオン4aおよび負イオン4bは、図10dに示されるように、すべてのイオン4a、4bの周波数スペクトルにおいて識別することができる。
上述の例では、SWIFT励振10は開始位相φ=0で実行されると仮定されている。しかしながら、さらにまた上述したように、開始位相φは、さらに、質量依存位相シフト軌道SWIFT励振10の場合にはイオン共振周波数fionに応じて変えられてもよい。このようにして、周波数スペクトルまたは質量スペクトルにおけるイオンパケットは、それに応じて、違うようにマークを付けることができる。
イオン4a、4bの電荷極性(正/負または+/−)が分かっている場合、イオン集団は、電荷極性に応じて、例えば、SWIFT(広帯域)の選択励振10によって違うように励振することができる。これは、電荷極性に応じて、それぞれ関連するイオン共振周波数fionで測定電極6a、6bに加えられる異なる励振過渡現象によって実施することができる。上述の手順は、図1に示したFT−ICRイオントラップの電極幾何形状に限定されない、すなわち、この方法は、異なる電極幾何形状をもつ測定電極、例えば、エンドキャップ内の測定チップの形態、または環状イオントラップの環状測定キャップの形態などの測定電極に適用できることが理解されよう。
結論として、FTイオントラップ2を有する質量分析計1の性能特性は、さらにまた上述した方法で著しく向上させることができる。
1. 質量分析によってガス(4)を検査するための方法であって、
イオン(4a、4b)を生成するために前記ガス(4)をイオン化するステップと、
FTイオントラップ(2)において前記生成されたイオン(4a、4b)のうちの少なくとも一部を貯蔵し、励振し、検出するステップと
を含み、
前記FTイオントラップ(2)において前記イオン(4a、4b)を生成し貯蔵するステップおよび/または前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の前記検出の前に前記イオン(4a、4b)を励振するステップが、前記イオン(4a、4b)の質量電荷比(m/z)に依存する少なくとも1つの選択IFT励振、特に、SWIFT励振(10)を含むことを特徴とする方法。
2. 前記FTイオントラップ(2)に貯蔵されるべきイオン(4a、4b)を選択するための少なくとも1つのIFT励振(10)が、前記FTイオントラップ(2)における前記イオン(4a、4b)の前記生成、および/または前記FTイオントラップ(2)における前記イオンの前記貯蔵の間に実行される、1に記載の方法。
3. 質量電荷比(m/z)が、前記ガス(4)の主要ガス成分(11)の前記質量電荷比((m/z)1、(m/z)2)の間隔(I)の外側にあるイオン(4a、4b)のみが、貯蔵のために選択される、2に記載の方法。
4. 前記IFT励振(10)の励振度(A)および/または位相角(φ)が、第1の励振周波数(fion1)と第2の励振周波数(fion2)との間で変えられ、前記第1の励振周波数(fion1)と前記第2の励振周波数(fion2)の両方が、10%以下だけ、好ましくは5%以下だけ、特に1%以下だけ所定の励振周波数(fion,a)から外れる、1から3までのいずれかに記載の方法。
5. 前記位相角(φ)および/または前記励振度(A)が、前記励振周波数(fion)に応じて、前記第1の励振周波数(fion1)と前記第2の励振周波数(fion2)との間で段階的に変わる、4に記載の方法。
6. 前記励振度(A)および/または前記位相角(φ)が、前記励振周波数(fion)に応じて、前記第1の励振周波数(fion1)と前記第2の励振周波数(fion2)との間で段階的に増加するかまたは段階的に減少する、5に記載の方法。
7. 同じイオン(4a、4b)が、前記FTイオントラップ(2)においてIFT励振(10)によって繰り返して選択的に励振され、前記イオン(4a、4b)の検出が、それぞれのIFT励振(10)の後実行される、1から6までのいずれかに記載の方法。
8. 時間的に互いに直ぐに続く2つのIFT励振(10)の間に時間間隔(τ)があり、前記時間間隔が、前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の平均自由飛行時間(tM)よりも大きい、7に記載の方法。
9. 前記イオン(4a、4b)を検出するとき、時間的に移動可能な測定時間間隔(12)においてのみ質量分析によるイオン信号(uion(t))の検査が行われる、1から8までのいずれかに記載の方法。
10. 前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)を励振し、第1の周波数スペクトル(13a)を記録するステップと、
前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の前記位相角(φ)および/または振動振幅(z/z0)を変更し、および/または前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)のイオン共振周波数(fion)を変更するステップと、 前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)を再度励振し、第2の周波数スペクトル(13b)を記録するステップと、
前記第1の記録された周波数スペクトル(13a)と前記第2の記録された周波数スペクトル(13b)を比較することによって前記FTイオントラップ(2)における干渉周波数(fR)を検出するステップと
を含む、1のプリアンブルに記載の、特に、1から9までのいずれかに記載の方法。
11. 前記イオン共振周波数(fion)を変更するステップが、前記FTイオントラップ(2)の貯蔵電圧(VRF)および/または貯蔵周波数(fRF)を変更するステップを含む、10に記載の方法。
12. IFT励振(10)の後の所与のイオン共振周波数(fion)でのイオン(4a、4b)の軌跡(B)の開始位相角度(α0)を、前記イオン(4a、4b)を検出したときに記録された時間依存イオン信号(uion(t))に基づいて決定するステップをさらに含む、1から11までのいずれかに記載の方法。
13. 前記イオン(4a、4b)の電荷極性を、前記IFT励振(10)の後の前記イオン(4a、4b)の前記開始位相角(α0)に基づいて、決定するステップをさらに含む、12に記載の方法。
14. FTイオントラップ(2)と、
前記FTイオントラップ(2)においてイオン(4a、4b)を貯蔵し、励振し、検出するための励振デバイス(5)と
を備える質量分析計(1)であって、
前記励振デバイス(5)が、イオン(4a、4b)の前記貯蔵および/または前記励振の間、前記イオン(4a、4b)の質量電荷比(m/z)に依存する少なくとも1つの選択IFT励振、特に、SWIFT励振(10)を生成するように具現されることを特徴とする質量分析計(1)。
15. 前記FTイオントラップ(2)において、検査されるべきガス(4)をイオン化するように具現され、評価デバイス(5)が、前記イオン化の間、IFT励振、特にSWIFT励振(10)を生成するように具現されることが好ましい、14に記載の質量分析計。
16. 前記励振デバイス(5)が、第1の励振周波数(fion1)と第2の励振周波数(fion2)との間で前記IFT励振の励振度(A)および/または位相角(φ)を変えるように具現され、前記第1の励振周波数(fion1)と第2の励振周波数(fion2)の両方が、10%以下だけ、特に好ましくは5%以下だけ、特に1%以下だけ所定の励振周波数(fion,a)から外れることが好ましい、14または15に記載の質量分析計。
17. 前記励振デバイス(5)が、前記位相角(φ)および/または前記励振度(A)を、前記励振周波数(fion)に応じて、前記第1の励振周波数(fion1)と前記第2の励振周波数(fion2)との間で段階的に変えるように具現され、前記励振度(A)および/または前記位相角(φ)が、前記励振周波数(fion)に応じて、前記第1の励振周波数(fion1)と前記第2の励振周波数(fion2)との間で段階的に増加するかまたは段階的に減少することが好ましい、16に記載の質量分析計。
18. 所与のイオン共振周波数(fion)をもつイオン(4a、4b)の軌跡(B)の開始位相角度(α0)を、前記IFT励振(10)の後に前記イオン(4a、4b)を検出したときに記録された時間依存イオン信号(uion(t))に基づいて、決定するように具現された検出器(9)であり、前記検出器(9)が、前記検出されたイオン(4a、4b)の電荷極性(正、負)を、前記開始位相角度(α0)に基づいて、決定するように具現されることが好ましい、検出器(9)をさらに備える、14から17までのいずれかに記載の質量分析計。
19. 前記励振デバイス(5)が、前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の位相角(φ)および/または振動振幅(z/z0)、および/または前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)のイオン共振周波数(fion)を変更するように具現され、前記質量分析計(1)が、追加として、前記FTイオントラップ(2)における干渉周波数(fR)を、前記位相角(φ)および/または前記振動振幅(z/z0)および/または前記イオン共振周波数(fion)を変更する前に記録された第1の周波数スペクトル(13a)と前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の前記位相角(φ)および/または前記振動振幅(z/z0)および/または前記イオン共振周波数(fion)を変更した後に記録された第2の周波数スペクトル(13b)の比較に基づいて、検出するように具現された検出器(9)を有する、請求項14のプリアンブルに記載の、特に、14から18までのいずれかに記載の前記質量分析計(1)。
20. 前記FTイオントラップ(2)が、FT−ICRイオントラップとして、またはオービトラップとして具現される、14から19までのいずれかに記載の質量分析計。

Claims (18)

  1. 質量分析によってガス(4)を検査するための方法であって、
    イオン(4a、4b)を生成するために前記ガス(4)をイオン化するステップと、
    FTイオントラップ(2)において前記生成されたイオン(4a、4b)のうちの少なくとも一部を貯蔵し、励振し、検出するステップと
    を含み、
    前記FTイオントラップ(2)において前記イオン(4a、4b)を生成し貯蔵するステップおよび/または前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の前記検出の前に前記イオン(4a、4b)を励振するステップが、前記イオン(4a、4b)の質量電荷比(m/z)に依存する少なくとも1つの選択IFT励振、特に、SWIFT励振(10)を含み、
    同じイオン(4a、4b)が、前記FTイオントラップ(2)においてIFT励振(10)によって繰り返して選択的に励振され、前記イオン(4a、4b)の検出が、それぞれのIFT励振(10)の後実行され、
    時間的に互いに直ぐに続く2つのIFT励振(10)の間に時間間隔(τ)があり、前記時間間隔が、前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の平均自由飛行時間(tM)よりも大きい
    ことを特徴とする方法。
  2. 前記FTイオントラップ(2)に貯蔵されるべきイオン(4a、4b)を選択するための少なくとも1つのIFT励振(10)が、前記FTイオントラップ(2)における前記イオン(4a、4b)の前記生成、および/または前記FTイオントラップ(2)における前記イオンの前記貯蔵の間に実行される、請求項1に記載の方法。
  3. 質量電荷比(m/z)が、前記ガス(4)の主要ガス成分(11)の前記質量電荷比((m/z)1、(m/z)2)の間隔(I)の外側にあるイオン(4a、4b)のみが、貯蔵のために選択される、請求項2に記載の方法。
  4. 前記IFT励振(10)の励振度(A)および/または位相角(φ)が、第1の励振周波数(fion1)と第2の励振周波数(fion2)との間で変えられ、前記第1の励振周波数(fion1)と前記第2の励振周波数(fion2)の両方が、10%以下だけ、好ましくは5%以下だけ、特に1%以下だけ所定の励振周波数(fion,a)から外れる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記位相角(φ)および/または前記励振度(A)が、前記励振周波数(fion)に応じて、前記第1の励振周波数(fion1)と前記第2の励振周波数(fion2)との間で段階的に変わる、請求項4に記載の方法。
  6. 前記励振度(A)および/または前記位相角(φ)が、前記励振周波数(fion)に応じて、前記第1の励振周波数(fion1)と前記第2の励振周波数(fion2)との間で段階的に増加するかまたは段階的に減少する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記イオン(4a、4b)を検出するとき、時間的に移動可能な測定時間間隔(12)においてのみ質量分析によるイオン信号(uion(t))の検査が行われる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)を励振し、第1の周波数スペクトル(13a)を記録するステップと、
    前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の前記位相角(φ)および/または振動振幅(z/z0)を変更し、および/または前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)のイオン共振周波数(fion)を変更するステップと、
    前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)を再度励振し、第2の周波数スペクトル(13b)を記録するステップと、
    前記第1の記録された周波数スペクトル(13a)と前記第2の記録された周波数スペクトル(13b)を比較することによって前記FTイオントラップ(2)における干渉周波数(fR)を検出するステップと
    を含む、請求項1のプリアンブルに記載の、特に、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記イオン共振周波数(fion)を変更するステップが、前記FTイオントラップ(2)の貯蔵電圧(VRF)および/または貯蔵周波数(fRF)を変更するステップを含む、請求項8に記載の方法。
  10. IFT励振(10)の後の所与のイオン共振周波数(fion)でのイオン(4a、4b)の軌跡(B)の開始位相角度(α0)を、前記イオン(4a、4b)を検出したときに記録された時間依存イオン信号(uion(t))に基づいて決定するステップをさらに含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記イオン(4a、4b)の電荷極性を、前記IFT励振(10)の後の前記イオン(4a、4b)の前記開始位相角(α0)に基づいて、決定するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
  12. FTイオントラップ(2)と、
    前記FTイオントラップ(2)においてイオン(4a、4b)を貯蔵し、励振し、検出するための励振デバイス(5)と
    を備える質量分析計(1)であって、
    前記励振デバイス(5)が、イオン(4a、4b)の前記貯蔵および/または前記励振の間、前記イオン(4a、4b)の質量電荷比(m/z)に依存する少なくとも1つの選択IFT励振、特に、SWIFT励振(10)を生成するように具現され、
    前記励振デバイス(5)が、同じイオン(4a、4b)を、前記FTイオントラップ(2)においてIFT励振(10)によって繰り返して選択的に励振するように具現され、
    前記励振デバイス(5)が、前記イオン(4a、4b)の検出を、それぞれのIFT励振(10)の後実行するように具現され、
    時間的に互いに直ぐに続く2つのIFT励振(10)の間に時間間隔(τ)があり、前記時間間隔が、前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の平均自由飛行時間(tM)よりも大きい
    ことを特徴とする質量分析計(1)。
  13. 前記FTイオントラップ(2)において、検査されるべきガス(4)をイオン化するように具現され、評価デバイス(5)が、前記イオン化の間、IFT励振、特にSWIFT励振(10)を生成するように具現されることが好ましい、請求項12に記載の質量分析計。
  14. 前記励振デバイス(5)が、第1の励振周波数(fion1)と第2の励振周波数(fion2)との間で前記IFT励振の励振度(A)および/または位相角(φ)を変えるように具現され、前記第1の励振周波数(fion1)と第2の励振周波数(fion2)の両方が、10%以下だけ、特に好ましくは5%以下だけ、特に1%以下だけ所定の励振周波数(fion,a)から外れることが好ましい、請求項12または13に記載の質量分析計。
  15. 前記励振デバイス(5)が、前記位相角(φ)および/または前記励振度(A)を、前記励振周波数(fion)に応じて、前記第1の励振周波数(fion1)と前記第2の励振周波数(fion2)との間で段階的に変えるように具現され、前記励振度(A)および/または前記位相角(φ)が、前記励振周波数(fion)に応じて、前記第1の励振周波数(fion1)と前記第2の励振周波数(fion2)との間で段階的に増加するかまたは段階的に減少することが好ましい、請求項14に記載の質量分析計。
  16. 所与のイオン共振周波数(fion)をもつイオン(4a、4b)の軌跡(B)の開始位相角度(α0)を、前記IFT励振(10)の後に前記イオン(4a、4b)を検出したときに記録された時間依存イオン信号(uion(t))に基づいて、決定するように具現された検出器(9)であり、前記検出器(9)が、前記検出されたイオン(4a、4b)の電荷極性(正、負)を、前記開始位相角度(α0)に基づいて、決定するように具現されることが好ましい、検出器(9)をさらに備える、請求項12から15までのいずれか1項に記載の質量分析計。
  17. 前記励振デバイス(5)が、前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の位相角(φ)および/または振動振幅(z/z0)、および/または前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)のイオン共振周波数(fion)を変更するように具現され、前記質量分析計(1)が、追加として、前記FTイオントラップ(2)における干渉周波数(fR)を、前記位相角(φ)および/または前記振動振幅(z/z0)および/または前記イオン共振周波数(fion)を変更する前に記録された第1の周波数スペクトル(13a)と前記FTイオントラップ(2)中の前記イオン(4a、4b)の前記位相角(φ)および/または前記振動振幅(z/z0)および/または前記イオン共振周波数(fion)を変更した後に記録された第2の周波数スペクトル(13b)の比較に基づいて、検出するように具現された検出器(9)を有する、請求項14のプリアンブルに記載の、特に、請求項12から16までのいずれか1項に記載の前記質量分析計(1)。
  18. 前記FTイオントラップ(2)が、FT−ICRイオントラップとして、またはオービトラップとして具現される、請求項12から17までのいずれか1項に記載の質量分析計。
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