JP2004004082A - イオントラップ質量分析計の改良された使用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】イオン化および反応工程の間でRFトラッピング場を変える必要なく、試薬ガスのイオン化の間、イオントラップ内で生成されるサンプルイオン除去する。
【解決手段】広帯域補助AC電圧を所定のカットオフ質量の上下のイオンを除去するために印加する。試料ガスが電子衝突イオン化によりイオン化されるとき形成される高い質量のサンプルイオンを、あるいは試料ガスの存在下で電子衝突イオン化実験を行うとき低い質量の試料イオンを除去する。また非共鳴の低周波補助電圧をイオントラップされたイオンに衝突誘導解離を受けさせるためにイオントラップに印加する。イオンの細分片という多重生成がこの方法で同時に形成され、MSn実験が可能となる。低周波補助場は、高い質量のイオンを補助電圧の大きさの関数でイオントラップから飛び出させるという付加的特性を有し、補助電圧の大きさの走査や不所望の高い質量のサンプルイオンの除去に使用し得る。
【選択図】 図2
【解決手段】広帯域補助AC電圧を所定のカットオフ質量の上下のイオンを除去するために印加する。試料ガスが電子衝突イオン化によりイオン化されるとき形成される高い質量のサンプルイオンを、あるいは試料ガスの存在下で電子衝突イオン化実験を行うとき低い質量の試料イオンを除去する。また非共鳴の低周波補助電圧をイオントラップされたイオンに衝突誘導解離を受けさせるためにイオントラップに印加する。イオンの細分片という多重生成がこの方法で同時に形成され、MSn実験が可能となる。低周波補助場は、高い質量のイオンを補助電圧の大きさの関数でイオントラップから飛び出させるという付加的特性を有し、補助電圧の大きさの走査や不所望の高い質量のサンプルイオンの除去に使用し得る。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、イオントラップ質量分析計(以下イオントラップ装置)をそのイオントラップ装置に補助電圧を印加することにより使用する方法に関し、特に、化学イオン化モードでイオントラップ装置を動作させ、多重質量分析実験(MSという)を行う方法に関する。
【0002】
【従来技術および発明が解決しようとする課題】
しばしば、イオン貯蔵またはイオントラップ検出器といわれている四重極イオントラップは質量分析を行う周知の装置である。イオントラップはリング電極、および内側トラッピング容積を画成する2つの共軸のエンドキャップ電極から成る。電極のそれぞれは好適には双曲面を有し、適当なACおよびDC電圧(通常、それぞれ“V”および“U”と表される)が電極に加えられるとき、四重極トラッピング場が生成される。これは単に、リング電極とエンドキャップ電極との間に、固定された周波数(通常“f”と表される)を印加することで達成される。追加的なDC電圧の使用は任意である。
【0003】
典型的に、イオントラップはサンプル分子を、イオン化するイオントラップに導入することによる操作される。動作トラッピング・パラメータに依存して、イオンは比較的長期間トラップ内に安定して含まれ得る。あるトラップ条件で、広範囲な質量がトラップ内に同時に保持される。このようにトラップされたイオンを検知する種々の手段が知られている。知られている一つの方法は、一つまたはそれ以上のトラップ・パラメータを走査し、その結果、イオンが連続して不安定になり、イオンを電子増倍管またはこれと同等な検出器を用いて検出できるところのトラップを出て行く。他の方法は、一連の質量のイオンをトラップから連続して走査し、検出するという共鳴放出技術の使用である。
【0004】
トラッピング場の数学的記述は、複雑であるがよく展開されている。イオントラップの使用者には馴染みのある安定性包絡線が図1に示されている。ある半径r0で、U、Vおよびfがある値をもつイオントラップに対し、イオンの質量電荷数(m/e)がトラップされるかどうかは、以下の2つの式についての解に依存する。
【0005】
az=(−8eU)/(mr0 2ω2)
qz=(4eV)/(mr0 2ω2)
ここで、ωは2πfに等しい。
【0006】
これらの式を解くことで、ある値m/eに対しaおよびqが与えられる。あるイオンに対し、点(a,q)が図1の安定性包絡線内にあるとき、そのイオンは四重極場によりトラップされる。点(a,q)が図1の安定性包絡線の外にでているとき、そのイオンはイオントラップ内にトラップされず、イオントラップ内で生成されたいかなるイオンも急速に出て行く。U、Vまたはfの値を変えることで、特定の質量のイオンを四重極場内にトラップできるか否かを制御できる。この分野で、質量および質量/電荷数という言葉は交換して使用できることは知られている。しかし、正確には質量/電荷数という言葉の使用が適切である。
【0007】
DC電圧が存在しないと、上記式は事実上、z軸方向、すなわち電極の軸線方向での安定性に関連する。イオンはr方向、すなわちその軸線に対し半径方向で不安定になる前にこの軸線方向で不安定になる。したがって、安定性の問題はz方向の安定性に限定するのが通常である。安定性における差(differential)は、不安定なイオンがz軸方向、すなわち軸線方向にイオントラップから出て行くという事実から生ずる。
【0008】
市販のイオントラップの機器において、DC電圧、Uはゼロにセットされる。上記式のうちの第1の式から分かるように、U=0のとき、すべての質量値に対しaz=0である。上記式のうちの第2の式から分かるように、qzの値はイオン粒子の質量に逆比例する。すなわち、質量の値が大きくなればなるほど、qzの値は低くなる。さらに、Vの値が高くなればなるほど、qzの値は高くなる。図1の安定性包絡線から分かるように、U=0の場合で、ある値のvに対し、あるカットオフ値より上の全ての質量のものが四重極場内にトラップされる。カットオフ値より上の全ての質量のものがこのようなトラッピング場内で安定であるけれども、トラップされる特定の質量のイオンの量が空間電荷効果により限定される。以下で議論するように、このような量についての限定はまた、Vの大きさの関数となる。
【0009】
イオントラップ内でサンプル分子をイオン化する種々の方法が知られている。おそらく、最も一般的な方法は、サンプルを電子ビームに晒すことである。電子がサンプル分子に衝突すると、サンプル分子はイオン化される。この方法は、一般的に電子衝突イオン化または“EI”といわれている。
【0010】
イオントラップでサンプル分子をイオン化する一般的に使用されている方法は化学イオン化または“CI”である。化学イオン化は、イオントラップ内で通常EIによりイオン化され、サンプルイオンを形成するためにサンプル分子と反応できる試薬ガスを使用する。一般的に使用される試薬ガスには、エタン、イソブタン、アンモニアがある。化学イオン化が“より柔軟な”イオン化技術と考えられている。多くのサンプルに関し、CI技術ではEI技術よりもイオン生成量が少なく、そのため質量分析計が簡単化される。化学イオン化は、四重極イオントラップのみならず、四重極質量フィルター等のような殆どの在来のタイプの質量分析計とともに日常的に使用される周知の技術である。
【0011】
他の、より特殊なイオン化方法もまた質量分析計に使用できる。たとえば、光イオン化は、イオントラップ内に含まれるすべての分子に効果を及ぼす、電子衝突イオン化と似た周知の技術である。
【0012】
今日使用されている多くのイオントラップ質量分析計システムはサンプル分離および導入装置のようなガスクロマトグラフ(“GC”)を含む。この目的でGCを使用するとき、GCから抽出されたサンプルが連続して質量分析計(これは周期的な質量分析をなすようにセットされる)へ流入する。このような分析は、典型的に約1秒当たり1度の走査の頻度(周波数)で達成され得る。この頻度は、ピークが数秒から何十秒の間にわたって近代的な高分解能のGCから典型的に抽出さることから、受け入れることのできるものである。この装置でCI実験を実行するとき、試薬ガスの連続流が維持される。実際上の問題として、GCからイオントラップへのサンプルガスの流れを妨げることは望ましいことではない。同様に、サンプル流上でCIおよびEI実験の両方をなすとき、イオントラップへの試薬ガスの流れを妨げることは望ましいことではない。
【0013】
CIを実行するとき、試薬ガス(これは化学的にサンプルガスと反応し、イオン化する)をイオン化する必要がある。特に、イオントラップでの電子衝突イオン化は試薬ガスをイオン化する望ましい方法である。しかし、電子ビームが試薬ガスをイオン化するために、注入されるとき、サンプルがイオントラップに存在すると、サンプルもまたEIに支配される。前述したように、サンプルをイオントラップに導入される前に分離するためにクロマトグラフィが使用される場合、サンプルガスの流れを妨げることは現実的ではない。したがって、サンプルをイオン化することもなく試薬ガスをイオン化することが現実的な方法である。したがって、緩和処理が図られない限り、サンプルイオンがCIおよびEIの両方により形成され、潜在的に混乱した結果に至ることになる。
【0014】
この問題の従来の解決手段は、“四重極イオントラップ化学イオン化質量分析計の操作方法”と題する、米国特許第4,686,367号(ローリス等、1987年8月11日に発行)に記載されている。この米国等第4,686,367号の方法は、試薬ガスがイオン化される一方で、イオントラップによりトラップされたサンプルイオンの数を最小にすることで、サンプルへのEIの効果を最小化するもののようである。これを行うものとして教示する方法は、EIプロセスの間にイオントラップに低電圧Vを印加することで、その結果低い質量の試薬ガスはトラップされるが、高い質量のイオンの数は少ない。この特許の言葉でいうと、“十分に低いRF値(すなわち、Vの値)では、高い分子量のイオンは十分にトラップされない。そのため、低いRF電圧では低い質量のイオンのみが貯蔵される。”(第5欄、第33−36行)。
上で説明しように、RFのみの方法(上記特許では好適なものとし、イオントラップの商業ベースとして知れられている実施例において使用される方法)を使用して操作すると、イオントラップは本質的に、RFトラッピング電圧の値によりセットされるカットオフ質量より上の全ての質量のものをトラップする。低い質量のイオンをトラップするために、イオンが試薬イオンであろうと、サンプルイオンであろうと、Vを十分に低い値にセットすることが必要である。Vを十分に低くセットすると、空間電荷効果のため高い質量のイオンをトラップするとき、イオントラップは本質的に効率が悪くなる。これを理論的な考察では、特定の質量のイオンを貯蔵するイオントラップの内部の容積がVの値に比例し、その質量に反比例する。したがって、あるVの値に対し、イオントラップのより小さい容積が低い質量のイオンよりも高い質量のイオンを貯蔵するために利用可能となる。その容積が非常に小さいとき、貯蔵され得るイオンの数は空間電荷効果により減少する。
【0015】
Vを低値にセットすると、すべての高い質量のイオンがイオントラップより出て行くことに注目すべきである。このようなイオンは安定性包絡線内で図を描くaおよびqの値を有し続ける。米国特許第4,686,367号の技術に従ってなされ得るすべては、EIプロセスの間、イオントラップ内の高い質量のイオンの数を減ずることである。この点で、“低RF電圧で低い質量のイオンのみが貯蔵される”というこの特許の記述は誤りのようである。以下で記述するように、米国特許第4,686,367号の方法を用いてなした実験で、実験の結果はEIにより生成された高い質量のイオンの検出可能な量が存在することを示す。さらに、トラップされ続く高い質量のイオンの数が質量に依存し、その結果質量が試薬イオンに近いがそれよりも高いサンプルイオンの実質的な数がトラップされることになる。
【0016】
試薬分子がさまざまな質量を有する種々のイオンを形成する。最も低い試薬イオンをトラップすることのみ必要な電圧(これは高い質量のイオンを除去するために必要な電圧)より実質的に低いRF電圧でのイオン化はトラップされる試薬イオンの数を高い質量のサンプルイオンとともに減少させる。この効果は質量に関連し、その結果より高い質量の試薬イオンがイオントラップから不相応と思えるほど失われる。
【0017】
イオントラップ内に一つのサンプルの流上でEIおよびCI実験の両方をなすときに関連した問題が存在する。上述したように、実際上の理由のため、試薬ガスのイオントラップへの流れを停止することは望ましくない。しかし、EI実験が実行されるとき、試薬ガスが存在するならば、試薬ガスはイオン化され、それらが反応の生ずる前にイオントラップから除去されない限り、試薬ガスイオンが生成され、サンプルのCI(化学的イオン化)がなされ得る。サンプル流上でEI実験がなされるときは、この問題が生じない。その理由は、試薬ガス流がこの実験の間、単に離しておけるからである。
【0018】
しかし、トラッピング電圧を低下する方法を適用しても、イオントラップから低い質量の試薬イオンを除去していないのでこの問題を解決することにはならない。米国特許第4,686,367号が教示するように、この問題を解決するために使用する一つの解決策は、低い質量の試薬イオンを貯蔵しないようにRFトラッピング電圧を上昇させることである。しかし、これは、トラッピング条件を通常使用されるものから変化させる不所望の効果をもたらす。たとえば、トラッピング電圧が質量20およびそれ以上のイオンを貯蔵するためにセットされると、イオントラップに入る電子の平均イオン化エネルギーは70eVである。質量43のメタン質量イオンを除去するように、質量45およびそれ以上のイオンのみを貯蔵するためのトラッピング電圧の上昇は、平均電子エネルギーの2倍になる。このような増加は、多くの組成物の質量スペクトルを変化させ、サンプルイオンに対するトラッピング効率を減少させる。
【0019】
CIプロセスにおいて、質量分析を受ける生成物イオンの数を最適にすることが望ましい。生成物イオンが非常に少ないと、質量分析はノイズのあるものとなり、生成物イオンが非常に多いと、分解能および線形性が失われる。生成物イオンの形成は、イオントラップにある試薬イオンの数、イオントラップ内のサンプル分子の数、試薬イオンとサンプルイオンと間の反応率、および試薬イオンがサンプル分子と反応できる反応時間の関数である。EIイオン化時間を増加させること、すなわち、より長い時間電子ビームを維持することによりイオントラップ内に存在する試薬イオンの数を増加させることができる。同様に、反応時間を増加させることで、イオントラップ内で形成されたサンプルイオンの数を増加させることができる。
【0020】
この課題に向けられた従来の方法は、“化学イオン化モードでの四重極イオントラップ質量分析計の操作のダイナミックレンジおよび感度を増加させる方法”と題する米国特許第4,771,172号(ウエバー−グラボウ等、1988年9月13日に発行)に示されている。この特許は、結果を最適化するように、CIモードでイオントラップで使用するパラメータを調節する方法に関する。パラメータを最適するために、この特許は、各質量分析に先立って、米国特許第4,686,367号の方法に従ってなされるCI“前走査(prescan)”を成し遂げる方法を教示する。この前走査は完全なCI走査サイクルで、このサイクルで、イオン化および反応時間が通常の分析的走査において使用するものよりも短い値に固定され、生成物イオンが通常の分析的走査の場合より速くイオントラップから走査される。前走査の間、イオントラップから飛び出し、生じた生成物イオンは質量分析されず、イオン信号は全生成物イオン信号を与えるために単に積分される。前走査の間、イオントラップ内の生成物イオンの総数が測定され、パラメータ、すなわち後に続く質量分析走査に対しイオン化時間および/または反応時間が調節される。
【0021】
したがって、この特許は、イオントラップ内で生成物イオンの決定総数を得るため、イオントラップ内の含有量の“前走査”を最初になすことから成る2段プロセスに関し、その後に米国特許第4,686,367号に教示するタイプの質量分析走査がなされ、質量分析のパラメータが前走査の間に収集されたデータに基づいて調節される。イオントラップ内のサンプル量を見積もるために前走査を使用してダイナミックレンジを広げる、従来の方法の欠点は、前走査を実行するための追加の時間を必要とし、したがって同じ時間でなし得る分析走査が少なくなるということである。各前走査が時間を消費するばかりでなく、それぞれが、質量分析走査に対してパラメータを調節したときに、その使用とは別に独立した価値をもたないデータを生成する。しかし、質量分析走査パラメータに調節は、条件を変えたときにのみ必要となる。各走査に対しては調節を行う必要はなく、したがって、多くの場合、時間を消費することに加えて、前走査はどの有用な目的もかなえることがない。したがって、ダイナミックレンジ内で走査するために、化学イオン化実験の間、イオントラップを調節する改良された方法が必要となる。
【0022】
いわゆるMSn実験を行う際にイオントラップ質量分析計を使用したいという要請がある。MSn実験において、一種類の一塊のイオンがイオントラップで分離され、細分片に解離する。サンプル種から直接生成されたその細分片は従来はドウター(daughter)イオンとして知られ、サンプルはペアレント(parent)イオンといわれている。そのドウターイオンはまたグランドドウター(granddaughter)イオンを生成すべく分離される。nの値は形成されるイオン発生の数をいう。したがって、MS2またはMS/MS実験では、ドウターイオンのみが形成され、分析される。
【0023】
MSn実験を行う従来の方法が、“MS/MSモードでイオントラップを走査する方法”と題する米国特許4,736,101号(サイカ等、1988年4月5日に発行)に記載されている。当該イオン種類の分離後に、ペアレントイオンは当該イオンの共鳴周波数に同調された一つの補助AC周波数の発生手段により共鳴励起される。補助周波数の振幅は、イオントラップ内でイオンの発信がより大きくなるように、イオンがエネルギーを得られるが、しかし、イオンがイオントラップから飛び出すほど十分に大きくはないレベルにセットされる。イオンがイオントラップ内で振動するので、それらはイオントラップ内で減衰ガスの分子と衝突し、衝突誘導される解離を受け、ドウターイオンが形成される。ドウターイオンの質量/電荷数と関連した共鳴周波数を適用することにより、それらイオンは同様に細分片に分かれ得る。
【0024】
米国特許第4,736,101号の方法の困難なところは、当該イオンの正確な共鳴周波数が演繹的に決定できず、帰納的に決定されなければならないことである。イオンの共鳴周波数(永年周波数ともいわれる)は、質量/電荷数、イオントラップ内のイオンの数、単純には正確に決定できない他のパラメータとともに変化する。したがって、イオン種の正確な共鳴周波数は経験的に決定されなければならない。経験的な決定は、静的なサンプルがイオントラップに導入されるとき別段の困難性もなく成し遂げられるけれども、GCの出力のようなダイナミックなサンプルが使用されるとき、非常に困難となる。
【0025】
当該サンプルイオンの前述した問題を解説するための従来のアプローチは、計算された周波数を中心とした広帯域励起を使用することである。たとえば、このような広帯域励起が約10kHzの帯域を有し得る。他の方法は、周波数前走査を行うこと、すなわち当該領域の周波数レンジにわたって補助場を掃引し、共鳴周波数を経験的に観測することである。しかし、これらの解決策のいずれも満足のいくものではない。
【0026】
そこで、本発明の目的は、より単純で従来から知られている方法よりも効率的で、イオン化および反応プロセスの間でRFトラッピング場を変える必要なく、試薬ガスのイオン化の間、イオントラップ内で生成されるサンプルイオンを除去する新規な方法を提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、試薬ガスの存在の下でイオントラップ内で電子衝突イオン化実験を行い、これによりイオントラップ内で形成する試薬ガスを、それらがサンプル分子と反応する前にイオントラップから除去する方法を提供することである。
【0028】
さらに、本発明の目的は、イオントラップのダイナミックレンジ内で操作するためにイオントラップにおいて利用する実験パラメータを最適化する方法を提供することである。
【0029】
さらに、本発明の他の目的は、イオントラップ内でサンプル種の共鳴周波数の経験的な決定を必要としない、イオントラップ内でMSn実験を行う、単純で高効率な方法を提供することである。
【0030】
さらに、本発明の他の目的は、イオントラップを走査し、質量スペクトルを得る他の方法を提供することである。
【0031】
【課題を解決するための手段】
これら、および当業者が以下の説明、特許請求の範囲、図面を読むことにより明らかになるであろう他の目的は、補助場をイオントラップに印加することによる新規な方法により実施できる。一実施例において、本発明は、所望の範囲にある質量電荷数を有するイオンが安定してトラップされるように、イオントラップのトラッピング場のパラメータを調節し、イオントラップの内容物をイオン化し、試薬イオンでなくサンプルイオンをイオントラップから飛び出させるために、補助AC電圧をイオントラップに印加することから成る。補助AC電圧は高い質量のサンプルイオンの共鳴周波数に対応する周波数成分を有する広帯域電圧、または、選択されたカットオフ質量以上の質量のみをイオントラップから飛び出さるために、選択された振幅を有する低周波電圧のいずれかでもよい。
【0032】
本発明の他の実施例において、補助AC場がイオントラップの内容物の電子イオン化の間に形成される、サンプルイオンでなく試薬イオンを、共鳴して飛び出させて除去するために使用される。その結果、EI実験が、トラッピング場の再調節をすることなく、試薬ガス流の存在で行い得る。
【0033】
本発明の他の実施例において、イオントラップの一つの走査の間に測定される最高ピークに関連した質量のスペクトルデータが調節のために使用され、必要なら、イオントラップがダイナミックレンジ内で走査されるように、実験パラメータが続く走査の間利用される。
【0034】
本発明の他の実施例において、低周波補助双極電圧がイオントラップに印加され、イオントラップ内でイオンを細分化するために使用され、イオントラップの内容物を走査するために使用し得る。
【0035】
【実施例】
本発明を実施するための装置が図2に示されている。イオントラップ10の断面が示されている。このイオントラップ10は、上エンドキャップ電極30及び下エンドキャップ電極35とともに同軸的に整合されたリング電極20から成る。好適に、これらトラップの電極は、双曲線状の内側表面を有するが例えば断面の形状が円の弧となる電極であってもトラッピング場を形成し得る。イオントラップ質量分析計の設計と組み立ては、当業者において周知であって、詳細な説明が為される必要はない。ここで説明される型のイオントラップの商業用モデルは、モデル指定サターンの下で本件譲受人によって販売されている。
【0036】
サンプルガス、例えばガスクロマトグラフ40からのガスが、イオントラップ10内へ導入される。GC(ガスクロマトグラフ)が典型的には大気圧で作動するので、イオントラップが大きく減じられた圧力で作動する間は、圧力を減じる手段(図示せず)が必要となる。このような圧力を減じる手段は在来のもので、当業者によって周知である。本発明は、サンプルソースとしてGCを使用して説明されるが、このサンプルソースは本発明の一部分として考慮されるものではなく、ガスクロマトグラフを使用するとの制限をなすものではない。他のサンプルソース、例えば特殊なインターフェースを有する液体クロマトグラフのようなものも使用され得る。
【0037】
化学的イオン化試験を行うための試薬ガス50のガス源もイオントラップに接続される。サンプルとイオントラップ10の内側に導入されるガスは、後述のように、電子ボンバートメントによってイオン化することができる。フィラメント電源65によって電力が与えられる熱イオンフィラメント60からの電子ビームは、ゲート電極70によって制御される。上エンドキャップ電極30の中央には、フィラメント60及びゲート電極70によって生成された電子ビームがトラップの内側に進入できるように穴があけられている。この電子ビームがサンプルと試薬の分子にトラップ内で衝突することにより、それらがイオン化される。サンプルガスおよび試薬ガスの電子衝突イオン化は、詳細な説明を要しない周知のプロセスである。
【0038】
トラッピング場は、所望の範囲内の質量電荷数のイオンが安定的にトラップされるような所望の周波数及び振幅を有するAC(交流)電圧の適用によって形成される。RF発生器80は、この場を形成するために使用され、リング電極へ印加される。トラッピング場を修正し図1の安定性線図の異なる部分で動作するようにDC(直流)電圧を印加してもよいことが周知であるが、実際上として、商業的に利用できるイオントラップは全てACトラッピング場だけを使用して作動する。
【0039】
イオンの質量電荷数を決定するためのいろいろな方法が知られ、このイオンがイオントラップ内にトラップされることでサンプルの質量スペクトルが得られる。1つの知られている方法は、連続した質量電荷数のイオンが順番どおりに飛び出すようにトラップを走査することである。第1の知られているトラップ走査の方法は、イオンが順次不安定になり、例えば電子増倍管手段90を使用してイオンが検出されるトラップを出ていくように、AC電圧の大きさのようなトラッピングパラメータの1つを走査することである。
【0040】
他の知られているトラップ走査方法は、イオントラップ10の上下エンドキャップ30及び35を横切って印加される補助AC双極子電圧を含む。このような電圧は、変圧器110によって上下エンドキャップ電極に結合される補助波形生成器100によって形成される。補助AC場は、トラップ内にイオンを共鳴的に飛び出させるために使用される。トラップ内の各々のイオンは、共鳴周波数を有し、この共鳴周波数は、その質量電荷数の関数でありトラッピング場のパラメータである。イオンがその共鳴周波数で補助RF場によって励起されるとき、場からエネルギーを得るし、もし効果的なエネルギーがイオンに接続されるならば、その強制振動はトラップの境界領域を越える。すなわち、トラップから飛び出す。このようにして飛び出したイオンは、電子増倍管90又は同等の検出器によっても検出される。共鳴放射走査技術を使用するとき、トラップの内容物は、補助RF場の周波数の1つを走査するか又はACトラッピング電圧、V、の大きさのようなトラッピングパラメータの1つを走査することによって順番に走査される。AC電圧の大きさを走査することが好適とされる。更に、イオントラップを走査する方法を以下で説明する。
【0041】
本発明の1つの実施例で、補助RF生成器100は、先に説明したとおりトラップを走査するために使用することができ、試薬ガスがイオン化されている時間中にEIによって形成されるサンプルイオンを共鳴的に飛び出させるために使用される広帯域RF場を生成することが可能である。図3の(a)は、試薬ガスをイオン化するために使用される電子ビームのゲートを示している。t1で開始してt2で終了するように電子ゲート70がオンになり、中性の試薬ガスから試薬イオンを形成するために電子ビームがトラップに進入できる。電子がトラップ内に入ることを可能にする電子ゲートに一致する図3の(b)に示されるように、補助波形生成器100は、t1に開始しt2に終了する時間間隔において、トラップの上下エンドキャップ30及び35に広帯域信号を印加する。示されるとおり、広帯域励起はゲート時間を越える。変形的に、補助広帯域信号の印加は、t1よりも遅れて又はt2よりも遅れても、すなわち、電子のイオン化が完了した後に開始し得る。同様に、補助信号は、t1よりも前の時間で開始することもできる。不必要なサンプルイオンの除去のための補助場が、イオンが形成される伸長した時間間隔の終了後の伸長した時間間隔の間“on”の状態を保たれることは重要なことである。
【0042】
上下エンドキャップへ印加される広帯域AC電圧は、協調することのないもの(双極励起)又は協調するもの(四重極励起)のいずれかであり得る。四重極励起を得ることの他の方法は、上下エンドキャップへではなく、図11に示されるようにリング電極への補助波形の適用である。
【0043】
補助波形は、トラップされたイオンによる共鳴パワーの吸収により、最大質量の試薬イオンよりも大きい質量の不必要なサンプルイオンを飛び出させるような十分な振幅の周波数の範囲を含んでいる。サンプルイオンの各々は、補助波形の周期成分に共鳴する。それに従って、それらは補助場からパワーを吸収し、トラッピング場から出て行く。この補助場が不必要なイオンを飛び出させた後、それはオフとなりCI試薬イオンがCIサンプルイオンを生産するためにサンプル原子と反応する。これらのイオンは、その後、先に説明したとおり、在来の方法で検出するためにトラップから走査される。
【0044】
先に説明した補助波形は、広帯域であり、飛び出す最も低い質量に対応する最初の周波数成分と飛び出される最も高い質量に対応する最後の周波数成分とを有する。最初の周波数と最後の周波数との間は一連の離散した周波数成分であり、この離散した周波数成分は、均等または不均等な間隔がとられ、任意的か又は固定した関数的関係を有する。この周波数成分の振幅は一様とすることができ、或いは、それらは、ハードウェアの周波数従属性に対して補償するように又はトラップ内に貯蔵された質量の分布のためq値の分布に対して補償するように関数的な形状に仕立てることができる。広帯域波形は、波形の最初と最後の成分の間の共鳴周波数を有する全てのイオンがこの補助場によって共鳴的に飛び出されるように、十分な数の周波数成分を有している。したがって、EI中に形成される全てのサンプルイオンは、質量解析走査以前にトラップから除去され、影響が及ぼされる質量範囲内にはギャップが無い。
【0045】
実際上、CI試験で使用される試薬ガスは、トラップの内容物のEI中に形成される試薬イオンが、ほとんどの場合において質量電荷数がサンプルイオンよりも低いように、分子質量が全て低い。稀な場合であるが、試薬ガスよりも低い質量のサンプルイオンが形成される場合、特定周波数が、特定の質量のものをその他のものと共に飛び出させるため、広帯域励起に付加してもよい。
【0046】
従来技術を越えた発明の利点は、CI試薬ガスのイオン化中にEIによって形成される不必要なサンプルイオンを取り除く能力である。これらのイオンを飛び出させる能力により、一層大きい放出電流と一層長いイオン化時間の利用が可能となる。従って、CIの感度が増加する。
【0047】
図4は、従来技術で使用される走査条件を使用するテトラクロルエタンのサンプルの残存EIスペクトルを示す。図5は、広帯域波形を使用するイオン化工程の間に形成されるサンプルイオンの除去を示す。図6は、従来技術の方法を使用するトラップ内に存するメタンの試薬ガスを有するトリクロルエタンとPFTBAのサンプルの残存EIスペクトルを示す。図7は、本願発明の広帯域波形を使用するイオン化工程中に形成されるサンプルイオンの除去を示す。質量がそれらよりも僅かに上であるサンプルイオンが除去されたにもかかわらず、質量43のところに試薬イオンが残存していることがわかる。図8は、補助波形がオフであることを除いて、図7と同様の条件下のスペクトルを示している。図9は、従来技術の方法を使用するヘクサクロルベンゼンのスペクトルを示している。EIイオンの混合細分片が、質量282、284、286、288及び290のところで観測される。さらに、(CIから)陽子が付加されたサンプルによるイオンが、質量283、285、287、289及び291のところで観測される。図10は、ここで説明された方法を使用するスペクトルを示している。EIプロセスからの不必要なイオンが、ほぼ完璧に取り除かれていることがわかる。
【0048】
本発明のその他の様態において、1つの走査から得るデータは、トラップを確実にダイナミックレンジで作動するため、それに続く走査のパラメータを調整するために必要であれば使用される。好適には、走査の最も強いイオンの振幅(ベースピーク)が、次の走査のイオン化及び又は反応時間を調整するために使用される。ベースピークの大きさは、ベースピークの実質的に一定のイオン数が保たれるように、それに続く走査のイオン化及び反応時間を調整するために使用される。走査中にトラップから飛び出される電荷の多くがベースピークのためであることから、それは、トラップ内のサンプルからの全電荷量の良好な表示となる。トラップ内でほぼ一定の全サンプル電荷を保つことによって、サンプルのダイナミックレンジが増加し得る。変形的に、1つの走査からの質量スペクトル情報で、例えば当該サンプルイオンのみに注目するため、つまり特定の種類のものを最適化するためにそれに続く質量分析走査のパラメータを調整することが可能である。好適に、先行する走査を基にした走査のパラメータを調整するとき、反応時間とイオン化時間の両方が、設定した比率で変化する。これは、1つの走査から次の走査へその結果を標準化することを一層容易にする。
【0049】
この発明の方法の利点は、広いダイナミックレンジのサンプルに対する走査時間を減少させることである。これは、トラップ内のサンプル量の計測として、先行する走査からのベースピークの強さを使用することによって達成される。したがって、従来技術で使用される、時間を消費する前走査の必要性がなくなる。
【0050】
広帯域補助場も、EI試験が行われる場合、トラップからの試薬イオンを除去するために使用される。イオントラップの使用者は、同一のサンプルでEI及びCI試験の両方を行うことを希望し得る。このような状況の下で、EIを行っている間にトラップ内へ試薬ガスの流れを停止することは好ましくなく、まだ試薬イオンが存在していることが、恐らく分析データを混乱させるであろう。補助RF広帯域励起を使用することによって、サンプルの電子衝突イオン化中に形成された全ての試薬イオンは、それらが形成されるとすぐにトラップから共鳴的に飛び出す。図3に示される同一のタイミングシーケンスは、本発明におけるこの態様を実施するために使用され得る。本発明におけるこの実施例で、広帯域RF励起は、周波数範囲が低い質量の試薬イオンのみを除去するように設定されるべきことを除いて、先に説明した変形例に従うことで為される。
【0051】
図2の波形生成器100は、質量スペクトルを得るためにCI試験を行い、MSn試験を行い、そしてトラップの内容物を走査するために低周波数非共鳴場を印加するために使用される。波形生成器100からの低周波数補助電圧が、イオントラップ10の上下エンドキャップ30及び35に双極場として印加される。この双極場の周波数は、トラップ内に蓄積される全てのイオン(サンプルイオン或いは試薬イオン)の共鳴周波数に無関係である。この波形は、好適に方形波であるが、正弦波形、鋸波形または三角波形を含むほとんど全ての波形であってもよい。とくに、補助電圧の周波数は、100Hzから数千Hzの間というように比較的低いものである。本発明が、サンプルイオンの共鳴周波数範囲の開始付近である約10000Hz以下の周波数で為され得ることが試験よりわかる。しかし、好適に、この周波数は数百Hzの範囲内であるべきである。
【0052】
補助方形波双極場がトラッピン場のプソイドポテンシャルウェルの中央をz軸に沿う異なった位置へ変形的に移されるとされている。トラッピング場のプソイドポテンシャルウェルの中心がそれぞれ移され、トラッピング場からトラップされたイオンが変換エネルギーを取り出し、新しい中心の周りで振動を開始する。したがって、この振動の中心の移動は、振動の大きさを増大する。一般に、イオンが背景のガスへエネルギーを失うとき、これらイオンは、新しい中心へ向かって移動する。もし、方形波のところで極性を変えるときのようにプソイドポテンシャル場の中心が移動するならば、このプロセスは反復する。場が変化される以前にイオンが新しい中心に向かって移り得るように、補助双極場の周波数は低くとるべきであることがわかるだろう。
【0053】
上述したように、プソイドポテンシャルウェルの中心が移動する場合、イオンは、空間内の新しい点の周囲で振動を開始し、一層付勢的になる。イオンに付加されるエネルギーは、多数のイオンが減衰ガスと衝突することで解離するのに十分なものである。それによって、ドウターイオンが形成される。このプロセスが反復されるとき、より一層のイオンが解離する。この方法の他の利点は、共鳴励起以上のエネルギーをイオンに与えることであり、したがって、いくつかの場合において、結果的に一層イオンの細分化となり得る。
【0054】
先に説明された方法が、イオントラップ内のイオンの共鳴周波数に頼っていないことから、トラップ内のイオン全てに同時に動作する。したがって、この方法を使用して、それぞれのイオンの細分片に係わる共鳴周波数を印加する必要なく、様々なイオンの細分片の生成物を形成することが可能である。もし望むのであれば、当該種類のイオンは、最初にトラップ内で分離される。
【0055】
この方法を使用すると、成分識別を容易にする成分の完全な“指紋”を得ることが可能である。ただ、質量電荷数は、それだけでペアレントイオンを明確に識別するために使用することができない。しかし、親イオンの質量電荷数だけでなく全てのイオンの細分片の質量の知識は、そのペアレントを明確に識別するために使用することができる。
【0056】
低周波電圧をイオントラップに印加することは、一定のカットオフされた質量以上の質量を有するイオンがイオントラップから除去されるためのメカニズムとして使用され得ることが分かった。このカットオフの質量は、補助的低周波電圧値の関数である。どのようにしてイオントラップが動作しているかという1つのモデルは、イオンが、他の物質との間の質量電荷数の関数であるポテンシャルウェルの“深さ”を有するポテンシャルウェル内に本質的にトラップされることである。質量が大きくなると、ウェルはより浅くなる。低周波の補助場の適用により大きい質量のイオン除去という現象が観測されることが大きい質量に係わるポテンシャルウェルの深さが比較的浅いことに関係しているとされている。特に、プソイドポテンシャルウェルの中心の転移により、大きい質量のイオンがウェルバリアーに勝るのに十分なエネルギーを得て、イオントラップを出て行くと考えられる。
【0057】
この現象は、化学イオン化試験およびイオントラップの走査の両方を有利にするために利点され得る。先に説明したとおり、化学イオン化試験を行うとき、試薬ガスのEI中で形成される大きい質量のサンプルイオンを除去することが必要である。このサンプルイオンの除去の変形的な方法は、先に説明したとおり、試薬イオンが影響なく,出て行く一方で、トラップから全てのサンプルイオンを除去するために効果的な値の低周波補助場を印加することである。この補助低周波場を印加することにおけるタイミングシーケンスは、図3に描かれているとおりであるか又はそれと共に関係して先に説明された全ての変形的タイミングシーケンスであってよい。この転に関し注目すべきは、間隔が千分の一秒以下である図3の(a)のイオン化期間が、低周波補助電圧の半周期よりも短い間隔であることである。したがって、図3の(b)に示されるように補助電圧の適用間隔は、より一層長い間隔であり、図3には示していない。
【0058】
低周波補助電圧の適用も、質量スペクトルが得られるようにイオントラップを走査するためのメカニズムとして使用され得る。これは、補助的低周波電圧値によって為される。もしこの補助電圧が開始時にあって低く更に上向きの勾配であるなら、大半はトラップから小さくなる順番で順次飛び出す。変形的に、低周波補助電圧は、一定に保たれ、同等の効果を得るためにトラッピングパラメータの一つが走査される。
【0059】
図12は、在来方法で得られた1、1、1−トリクロロエタンの質量スペクトルである。質量97でのピークは、CH3CCl2 +に対応する。対比して、図13は、低周波補助方形波電圧(100Hz、42ボルト)が20ミリ秒間印加されたことを除いて図12と同様の試験パラメータを使用して得られる1、1、1−トリクロロエタンの質量スペクトルである。質量97のピーク強度が減少され、質量61(CH2CCL+)のイオンが豊富にあることが、図13からわかる。非共鳴励起の結果のように、質量97のイオンはエネルギーを吸収し、質量61のイオンを形成するために解離された。
【0060】
図14および図15は、補助方形波の周波数がそれぞれ300と600Hzに設定されたことを除いて、図12および図13の結果を得るために使用されたパラメータと同一のものを使用して得られた1、1、1−トリクロロエタンのスペクトルを示している。図13、14および15のスペクトルの類似性は、解離が広い範囲にわたって補助場の周波数と大きく独立していることを示している。最後に、図16は、従来技術の方法を使用して、すなわち非共鳴低周波方形波を使用するのではなく、139.6KHz(イオン質量97のz軸の共鳴周波数)の非共鳴正弦波を800mVのレベルで20ms間印加することで得られた1、1、1−トリクロロエタンの質量スペクトルを示している。両方法によるドウターイオンの生成量がほぼ同一であることがわかる。
【0061】
図17、18および19は、本発明の方法が、イオントラップから大きい質量のイオンを除去するためにどのように使用されたかを示すために、いろいろな条件下でのPFTBAの質量スペクトルを示している。図17は、ペアレントイオン及び細分片イオンの両方を含む完全な質量スペクトルを示している。図18は、131以上の質量を有する全てのイオンが、補助方形波の電圧が20Vに上昇したときにトラップから除去されたことを示している。図19は、電圧が33Vへ上昇すると100以上の質量を有する全てのイオンがトラップから除去されることを示している。
【0062】
図20、21および22は、低周波補助場を使用することによってイオントラップから大きい質量のイオンが除去できる化学イオン化試験の応用例が示されている。図20、21および22は、それぞれ図5、7および10と同一のCI試験であることを示している。しかし、トラップから不必要なサンプルイオンを除去するために広帯域共鳴飛び出しが使用されたのではなく、低周波補助波形が使用された。結果は、どちらの方法によっても実質的に同一であることがわかる。図20の結果は、600Hzの周波数を有する補助場を使用して得られ、図21の結果は、300Hzの周波数の補助場を使用して得られ、そして、図22の結果は、400Hzの周波数を有する補助場を使用して得られた。それぞれの場合において、補助電圧の大きさは20と40Vとの間であった。
【0063】
本発明が好適実施例と関連して説明されてきたけれども、このように説明された事柄が制限をもたらすことを意図としたものではなく、その他の変形物および同等物が当業者によって容易に為されるであろう。このことから、本発明の範囲は、特許請求の範囲を参照することによってのみ決定されるべきである。例えば、本発明が電子衝突イオン化の工程の前になした化学イオン化試験を行うことに関連して部分的に説明されてきたけれども、その方法が電子衝突イオン化に代わって光イオン化を使用して行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオントラップに関連する安定線図を示す。
【図2】本発明の方法を実施するために使用される装置の部分的概要図を示す。
【図3】本発明に従って電子衝突イオン化のために使用される電子ビームのゲートに関係する補助広帯域AC場の制御を示しているグラフである。
【図4】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図5】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図6】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図7】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図8】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図9】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図10】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図11】本発明を実施するために使用される図2の装置の変形的配列を示す。
【図12】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示すサンプルの質量スペクトルである。
【図13】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示すサンプルの質量スペクトルである。
【図14】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示すサンプルの質量スペクトルである。
【図15】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示すサンプルの質量スペクトルである。
【図16】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示すサンプルの質量スペクトルである。
【図17】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示す質量スペクトルである。
【図18】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示す質量スペクトルである。
【図19】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示す質量スペクトルである。
【図20】化学イオン化試験を行うことで使用される補助的低周波場がどのように適用されているかを示す質量スペクトルである。
【図21】化学イオン化試験を行うことで使用される補助的低周波場がどのように適用されているかを示す質量スペクトルである。
【図22】化学イオン化試験を行うことで使用される補助的低周波場がどのように適用されているかを示す質量スペクトルである。
【符号の説明】
10 ...イオントラップ
20 ...リング電極
30 ...上エンドキャップ電極
35 ...下エンドキャップ電極
40 ...ガスクロマトグラフ
50 ...試薬ガス
60 ...熱イオンフィラメント
65 ...フィラメント電源
70 ...ゲート電極
80 ...トラッピング場用RF発生器
90 ...電子増倍管
100...補助波形生成器
110...変圧器
【産業上の利用分野】
本発明は、イオントラップ質量分析計(以下イオントラップ装置)をそのイオントラップ装置に補助電圧を印加することにより使用する方法に関し、特に、化学イオン化モードでイオントラップ装置を動作させ、多重質量分析実験(MSという)を行う方法に関する。
【0002】
【従来技術および発明が解決しようとする課題】
しばしば、イオン貯蔵またはイオントラップ検出器といわれている四重極イオントラップは質量分析を行う周知の装置である。イオントラップはリング電極、および内側トラッピング容積を画成する2つの共軸のエンドキャップ電極から成る。電極のそれぞれは好適には双曲面を有し、適当なACおよびDC電圧(通常、それぞれ“V”および“U”と表される)が電極に加えられるとき、四重極トラッピング場が生成される。これは単に、リング電極とエンドキャップ電極との間に、固定された周波数(通常“f”と表される)を印加することで達成される。追加的なDC電圧の使用は任意である。
【0003】
典型的に、イオントラップはサンプル分子を、イオン化するイオントラップに導入することによる操作される。動作トラッピング・パラメータに依存して、イオンは比較的長期間トラップ内に安定して含まれ得る。あるトラップ条件で、広範囲な質量がトラップ内に同時に保持される。このようにトラップされたイオンを検知する種々の手段が知られている。知られている一つの方法は、一つまたはそれ以上のトラップ・パラメータを走査し、その結果、イオンが連続して不安定になり、イオンを電子増倍管またはこれと同等な検出器を用いて検出できるところのトラップを出て行く。他の方法は、一連の質量のイオンをトラップから連続して走査し、検出するという共鳴放出技術の使用である。
【0004】
トラッピング場の数学的記述は、複雑であるがよく展開されている。イオントラップの使用者には馴染みのある安定性包絡線が図1に示されている。ある半径r0で、U、Vおよびfがある値をもつイオントラップに対し、イオンの質量電荷数(m/e)がトラップされるかどうかは、以下の2つの式についての解に依存する。
【0005】
az=(−8eU)/(mr0 2ω2)
qz=(4eV)/(mr0 2ω2)
ここで、ωは2πfに等しい。
【0006】
これらの式を解くことで、ある値m/eに対しaおよびqが与えられる。あるイオンに対し、点(a,q)が図1の安定性包絡線内にあるとき、そのイオンは四重極場によりトラップされる。点(a,q)が図1の安定性包絡線の外にでているとき、そのイオンはイオントラップ内にトラップされず、イオントラップ内で生成されたいかなるイオンも急速に出て行く。U、Vまたはfの値を変えることで、特定の質量のイオンを四重極場内にトラップできるか否かを制御できる。この分野で、質量および質量/電荷数という言葉は交換して使用できることは知られている。しかし、正確には質量/電荷数という言葉の使用が適切である。
【0007】
DC電圧が存在しないと、上記式は事実上、z軸方向、すなわち電極の軸線方向での安定性に関連する。イオンはr方向、すなわちその軸線に対し半径方向で不安定になる前にこの軸線方向で不安定になる。したがって、安定性の問題はz方向の安定性に限定するのが通常である。安定性における差(differential)は、不安定なイオンがz軸方向、すなわち軸線方向にイオントラップから出て行くという事実から生ずる。
【0008】
市販のイオントラップの機器において、DC電圧、Uはゼロにセットされる。上記式のうちの第1の式から分かるように、U=0のとき、すべての質量値に対しaz=0である。上記式のうちの第2の式から分かるように、qzの値はイオン粒子の質量に逆比例する。すなわち、質量の値が大きくなればなるほど、qzの値は低くなる。さらに、Vの値が高くなればなるほど、qzの値は高くなる。図1の安定性包絡線から分かるように、U=0の場合で、ある値のvに対し、あるカットオフ値より上の全ての質量のものが四重極場内にトラップされる。カットオフ値より上の全ての質量のものがこのようなトラッピング場内で安定であるけれども、トラップされる特定の質量のイオンの量が空間電荷効果により限定される。以下で議論するように、このような量についての限定はまた、Vの大きさの関数となる。
【0009】
イオントラップ内でサンプル分子をイオン化する種々の方法が知られている。おそらく、最も一般的な方法は、サンプルを電子ビームに晒すことである。電子がサンプル分子に衝突すると、サンプル分子はイオン化される。この方法は、一般的に電子衝突イオン化または“EI”といわれている。
【0010】
イオントラップでサンプル分子をイオン化する一般的に使用されている方法は化学イオン化または“CI”である。化学イオン化は、イオントラップ内で通常EIによりイオン化され、サンプルイオンを形成するためにサンプル分子と反応できる試薬ガスを使用する。一般的に使用される試薬ガスには、エタン、イソブタン、アンモニアがある。化学イオン化が“より柔軟な”イオン化技術と考えられている。多くのサンプルに関し、CI技術ではEI技術よりもイオン生成量が少なく、そのため質量分析計が簡単化される。化学イオン化は、四重極イオントラップのみならず、四重極質量フィルター等のような殆どの在来のタイプの質量分析計とともに日常的に使用される周知の技術である。
【0011】
他の、より特殊なイオン化方法もまた質量分析計に使用できる。たとえば、光イオン化は、イオントラップ内に含まれるすべての分子に効果を及ぼす、電子衝突イオン化と似た周知の技術である。
【0012】
今日使用されている多くのイオントラップ質量分析計システムはサンプル分離および導入装置のようなガスクロマトグラフ(“GC”)を含む。この目的でGCを使用するとき、GCから抽出されたサンプルが連続して質量分析計(これは周期的な質量分析をなすようにセットされる)へ流入する。このような分析は、典型的に約1秒当たり1度の走査の頻度(周波数)で達成され得る。この頻度は、ピークが数秒から何十秒の間にわたって近代的な高分解能のGCから典型的に抽出さることから、受け入れることのできるものである。この装置でCI実験を実行するとき、試薬ガスの連続流が維持される。実際上の問題として、GCからイオントラップへのサンプルガスの流れを妨げることは望ましいことではない。同様に、サンプル流上でCIおよびEI実験の両方をなすとき、イオントラップへの試薬ガスの流れを妨げることは望ましいことではない。
【0013】
CIを実行するとき、試薬ガス(これは化学的にサンプルガスと反応し、イオン化する)をイオン化する必要がある。特に、イオントラップでの電子衝突イオン化は試薬ガスをイオン化する望ましい方法である。しかし、電子ビームが試薬ガスをイオン化するために、注入されるとき、サンプルがイオントラップに存在すると、サンプルもまたEIに支配される。前述したように、サンプルをイオントラップに導入される前に分離するためにクロマトグラフィが使用される場合、サンプルガスの流れを妨げることは現実的ではない。したがって、サンプルをイオン化することもなく試薬ガスをイオン化することが現実的な方法である。したがって、緩和処理が図られない限り、サンプルイオンがCIおよびEIの両方により形成され、潜在的に混乱した結果に至ることになる。
【0014】
この問題の従来の解決手段は、“四重極イオントラップ化学イオン化質量分析計の操作方法”と題する、米国特許第4,686,367号(ローリス等、1987年8月11日に発行)に記載されている。この米国等第4,686,367号の方法は、試薬ガスがイオン化される一方で、イオントラップによりトラップされたサンプルイオンの数を最小にすることで、サンプルへのEIの効果を最小化するもののようである。これを行うものとして教示する方法は、EIプロセスの間にイオントラップに低電圧Vを印加することで、その結果低い質量の試薬ガスはトラップされるが、高い質量のイオンの数は少ない。この特許の言葉でいうと、“十分に低いRF値(すなわち、Vの値)では、高い分子量のイオンは十分にトラップされない。そのため、低いRF電圧では低い質量のイオンのみが貯蔵される。”(第5欄、第33−36行)。
上で説明しように、RFのみの方法(上記特許では好適なものとし、イオントラップの商業ベースとして知れられている実施例において使用される方法)を使用して操作すると、イオントラップは本質的に、RFトラッピング電圧の値によりセットされるカットオフ質量より上の全ての質量のものをトラップする。低い質量のイオンをトラップするために、イオンが試薬イオンであろうと、サンプルイオンであろうと、Vを十分に低い値にセットすることが必要である。Vを十分に低くセットすると、空間電荷効果のため高い質量のイオンをトラップするとき、イオントラップは本質的に効率が悪くなる。これを理論的な考察では、特定の質量のイオンを貯蔵するイオントラップの内部の容積がVの値に比例し、その質量に反比例する。したがって、あるVの値に対し、イオントラップのより小さい容積が低い質量のイオンよりも高い質量のイオンを貯蔵するために利用可能となる。その容積が非常に小さいとき、貯蔵され得るイオンの数は空間電荷効果により減少する。
【0015】
Vを低値にセットすると、すべての高い質量のイオンがイオントラップより出て行くことに注目すべきである。このようなイオンは安定性包絡線内で図を描くaおよびqの値を有し続ける。米国特許第4,686,367号の技術に従ってなされ得るすべては、EIプロセスの間、イオントラップ内の高い質量のイオンの数を減ずることである。この点で、“低RF電圧で低い質量のイオンのみが貯蔵される”というこの特許の記述は誤りのようである。以下で記述するように、米国特許第4,686,367号の方法を用いてなした実験で、実験の結果はEIにより生成された高い質量のイオンの検出可能な量が存在することを示す。さらに、トラップされ続く高い質量のイオンの数が質量に依存し、その結果質量が試薬イオンに近いがそれよりも高いサンプルイオンの実質的な数がトラップされることになる。
【0016】
試薬分子がさまざまな質量を有する種々のイオンを形成する。最も低い試薬イオンをトラップすることのみ必要な電圧(これは高い質量のイオンを除去するために必要な電圧)より実質的に低いRF電圧でのイオン化はトラップされる試薬イオンの数を高い質量のサンプルイオンとともに減少させる。この効果は質量に関連し、その結果より高い質量の試薬イオンがイオントラップから不相応と思えるほど失われる。
【0017】
イオントラップ内に一つのサンプルの流上でEIおよびCI実験の両方をなすときに関連した問題が存在する。上述したように、実際上の理由のため、試薬ガスのイオントラップへの流れを停止することは望ましくない。しかし、EI実験が実行されるとき、試薬ガスが存在するならば、試薬ガスはイオン化され、それらが反応の生ずる前にイオントラップから除去されない限り、試薬ガスイオンが生成され、サンプルのCI(化学的イオン化)がなされ得る。サンプル流上でEI実験がなされるときは、この問題が生じない。その理由は、試薬ガス流がこの実験の間、単に離しておけるからである。
【0018】
しかし、トラッピング電圧を低下する方法を適用しても、イオントラップから低い質量の試薬イオンを除去していないのでこの問題を解決することにはならない。米国特許第4,686,367号が教示するように、この問題を解決するために使用する一つの解決策は、低い質量の試薬イオンを貯蔵しないようにRFトラッピング電圧を上昇させることである。しかし、これは、トラッピング条件を通常使用されるものから変化させる不所望の効果をもたらす。たとえば、トラッピング電圧が質量20およびそれ以上のイオンを貯蔵するためにセットされると、イオントラップに入る電子の平均イオン化エネルギーは70eVである。質量43のメタン質量イオンを除去するように、質量45およびそれ以上のイオンのみを貯蔵するためのトラッピング電圧の上昇は、平均電子エネルギーの2倍になる。このような増加は、多くの組成物の質量スペクトルを変化させ、サンプルイオンに対するトラッピング効率を減少させる。
【0019】
CIプロセスにおいて、質量分析を受ける生成物イオンの数を最適にすることが望ましい。生成物イオンが非常に少ないと、質量分析はノイズのあるものとなり、生成物イオンが非常に多いと、分解能および線形性が失われる。生成物イオンの形成は、イオントラップにある試薬イオンの数、イオントラップ内のサンプル分子の数、試薬イオンとサンプルイオンと間の反応率、および試薬イオンがサンプル分子と反応できる反応時間の関数である。EIイオン化時間を増加させること、すなわち、より長い時間電子ビームを維持することによりイオントラップ内に存在する試薬イオンの数を増加させることができる。同様に、反応時間を増加させることで、イオントラップ内で形成されたサンプルイオンの数を増加させることができる。
【0020】
この課題に向けられた従来の方法は、“化学イオン化モードでの四重極イオントラップ質量分析計の操作のダイナミックレンジおよび感度を増加させる方法”と題する米国特許第4,771,172号(ウエバー−グラボウ等、1988年9月13日に発行)に示されている。この特許は、結果を最適化するように、CIモードでイオントラップで使用するパラメータを調節する方法に関する。パラメータを最適するために、この特許は、各質量分析に先立って、米国特許第4,686,367号の方法に従ってなされるCI“前走査(prescan)”を成し遂げる方法を教示する。この前走査は完全なCI走査サイクルで、このサイクルで、イオン化および反応時間が通常の分析的走査において使用するものよりも短い値に固定され、生成物イオンが通常の分析的走査の場合より速くイオントラップから走査される。前走査の間、イオントラップから飛び出し、生じた生成物イオンは質量分析されず、イオン信号は全生成物イオン信号を与えるために単に積分される。前走査の間、イオントラップ内の生成物イオンの総数が測定され、パラメータ、すなわち後に続く質量分析走査に対しイオン化時間および/または反応時間が調節される。
【0021】
したがって、この特許は、イオントラップ内で生成物イオンの決定総数を得るため、イオントラップ内の含有量の“前走査”を最初になすことから成る2段プロセスに関し、その後に米国特許第4,686,367号に教示するタイプの質量分析走査がなされ、質量分析のパラメータが前走査の間に収集されたデータに基づいて調節される。イオントラップ内のサンプル量を見積もるために前走査を使用してダイナミックレンジを広げる、従来の方法の欠点は、前走査を実行するための追加の時間を必要とし、したがって同じ時間でなし得る分析走査が少なくなるということである。各前走査が時間を消費するばかりでなく、それぞれが、質量分析走査に対してパラメータを調節したときに、その使用とは別に独立した価値をもたないデータを生成する。しかし、質量分析走査パラメータに調節は、条件を変えたときにのみ必要となる。各走査に対しては調節を行う必要はなく、したがって、多くの場合、時間を消費することに加えて、前走査はどの有用な目的もかなえることがない。したがって、ダイナミックレンジ内で走査するために、化学イオン化実験の間、イオントラップを調節する改良された方法が必要となる。
【0022】
いわゆるMSn実験を行う際にイオントラップ質量分析計を使用したいという要請がある。MSn実験において、一種類の一塊のイオンがイオントラップで分離され、細分片に解離する。サンプル種から直接生成されたその細分片は従来はドウター(daughter)イオンとして知られ、サンプルはペアレント(parent)イオンといわれている。そのドウターイオンはまたグランドドウター(granddaughter)イオンを生成すべく分離される。nの値は形成されるイオン発生の数をいう。したがって、MS2またはMS/MS実験では、ドウターイオンのみが形成され、分析される。
【0023】
MSn実験を行う従来の方法が、“MS/MSモードでイオントラップを走査する方法”と題する米国特許4,736,101号(サイカ等、1988年4月5日に発行)に記載されている。当該イオン種類の分離後に、ペアレントイオンは当該イオンの共鳴周波数に同調された一つの補助AC周波数の発生手段により共鳴励起される。補助周波数の振幅は、イオントラップ内でイオンの発信がより大きくなるように、イオンがエネルギーを得られるが、しかし、イオンがイオントラップから飛び出すほど十分に大きくはないレベルにセットされる。イオンがイオントラップ内で振動するので、それらはイオントラップ内で減衰ガスの分子と衝突し、衝突誘導される解離を受け、ドウターイオンが形成される。ドウターイオンの質量/電荷数と関連した共鳴周波数を適用することにより、それらイオンは同様に細分片に分かれ得る。
【0024】
米国特許第4,736,101号の方法の困難なところは、当該イオンの正確な共鳴周波数が演繹的に決定できず、帰納的に決定されなければならないことである。イオンの共鳴周波数(永年周波数ともいわれる)は、質量/電荷数、イオントラップ内のイオンの数、単純には正確に決定できない他のパラメータとともに変化する。したがって、イオン種の正確な共鳴周波数は経験的に決定されなければならない。経験的な決定は、静的なサンプルがイオントラップに導入されるとき別段の困難性もなく成し遂げられるけれども、GCの出力のようなダイナミックなサンプルが使用されるとき、非常に困難となる。
【0025】
当該サンプルイオンの前述した問題を解説するための従来のアプローチは、計算された周波数を中心とした広帯域励起を使用することである。たとえば、このような広帯域励起が約10kHzの帯域を有し得る。他の方法は、周波数前走査を行うこと、すなわち当該領域の周波数レンジにわたって補助場を掃引し、共鳴周波数を経験的に観測することである。しかし、これらの解決策のいずれも満足のいくものではない。
【0026】
そこで、本発明の目的は、より単純で従来から知られている方法よりも効率的で、イオン化および反応プロセスの間でRFトラッピング場を変える必要なく、試薬ガスのイオン化の間、イオントラップ内で生成されるサンプルイオンを除去する新規な方法を提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、試薬ガスの存在の下でイオントラップ内で電子衝突イオン化実験を行い、これによりイオントラップ内で形成する試薬ガスを、それらがサンプル分子と反応する前にイオントラップから除去する方法を提供することである。
【0028】
さらに、本発明の目的は、イオントラップのダイナミックレンジ内で操作するためにイオントラップにおいて利用する実験パラメータを最適化する方法を提供することである。
【0029】
さらに、本発明の他の目的は、イオントラップ内でサンプル種の共鳴周波数の経験的な決定を必要としない、イオントラップ内でMSn実験を行う、単純で高効率な方法を提供することである。
【0030】
さらに、本発明の他の目的は、イオントラップを走査し、質量スペクトルを得る他の方法を提供することである。
【0031】
【課題を解決するための手段】
これら、および当業者が以下の説明、特許請求の範囲、図面を読むことにより明らかになるであろう他の目的は、補助場をイオントラップに印加することによる新規な方法により実施できる。一実施例において、本発明は、所望の範囲にある質量電荷数を有するイオンが安定してトラップされるように、イオントラップのトラッピング場のパラメータを調節し、イオントラップの内容物をイオン化し、試薬イオンでなくサンプルイオンをイオントラップから飛び出させるために、補助AC電圧をイオントラップに印加することから成る。補助AC電圧は高い質量のサンプルイオンの共鳴周波数に対応する周波数成分を有する広帯域電圧、または、選択されたカットオフ質量以上の質量のみをイオントラップから飛び出さるために、選択された振幅を有する低周波電圧のいずれかでもよい。
【0032】
本発明の他の実施例において、補助AC場がイオントラップの内容物の電子イオン化の間に形成される、サンプルイオンでなく試薬イオンを、共鳴して飛び出させて除去するために使用される。その結果、EI実験が、トラッピング場の再調節をすることなく、試薬ガス流の存在で行い得る。
【0033】
本発明の他の実施例において、イオントラップの一つの走査の間に測定される最高ピークに関連した質量のスペクトルデータが調節のために使用され、必要なら、イオントラップがダイナミックレンジ内で走査されるように、実験パラメータが続く走査の間利用される。
【0034】
本発明の他の実施例において、低周波補助双極電圧がイオントラップに印加され、イオントラップ内でイオンを細分化するために使用され、イオントラップの内容物を走査するために使用し得る。
【0035】
【実施例】
本発明を実施するための装置が図2に示されている。イオントラップ10の断面が示されている。このイオントラップ10は、上エンドキャップ電極30及び下エンドキャップ電極35とともに同軸的に整合されたリング電極20から成る。好適に、これらトラップの電極は、双曲線状の内側表面を有するが例えば断面の形状が円の弧となる電極であってもトラッピング場を形成し得る。イオントラップ質量分析計の設計と組み立ては、当業者において周知であって、詳細な説明が為される必要はない。ここで説明される型のイオントラップの商業用モデルは、モデル指定サターンの下で本件譲受人によって販売されている。
【0036】
サンプルガス、例えばガスクロマトグラフ40からのガスが、イオントラップ10内へ導入される。GC(ガスクロマトグラフ)が典型的には大気圧で作動するので、イオントラップが大きく減じられた圧力で作動する間は、圧力を減じる手段(図示せず)が必要となる。このような圧力を減じる手段は在来のもので、当業者によって周知である。本発明は、サンプルソースとしてGCを使用して説明されるが、このサンプルソースは本発明の一部分として考慮されるものではなく、ガスクロマトグラフを使用するとの制限をなすものではない。他のサンプルソース、例えば特殊なインターフェースを有する液体クロマトグラフのようなものも使用され得る。
【0037】
化学的イオン化試験を行うための試薬ガス50のガス源もイオントラップに接続される。サンプルとイオントラップ10の内側に導入されるガスは、後述のように、電子ボンバートメントによってイオン化することができる。フィラメント電源65によって電力が与えられる熱イオンフィラメント60からの電子ビームは、ゲート電極70によって制御される。上エンドキャップ電極30の中央には、フィラメント60及びゲート電極70によって生成された電子ビームがトラップの内側に進入できるように穴があけられている。この電子ビームがサンプルと試薬の分子にトラップ内で衝突することにより、それらがイオン化される。サンプルガスおよび試薬ガスの電子衝突イオン化は、詳細な説明を要しない周知のプロセスである。
【0038】
トラッピング場は、所望の範囲内の質量電荷数のイオンが安定的にトラップされるような所望の周波数及び振幅を有するAC(交流)電圧の適用によって形成される。RF発生器80は、この場を形成するために使用され、リング電極へ印加される。トラッピング場を修正し図1の安定性線図の異なる部分で動作するようにDC(直流)電圧を印加してもよいことが周知であるが、実際上として、商業的に利用できるイオントラップは全てACトラッピング場だけを使用して作動する。
【0039】
イオンの質量電荷数を決定するためのいろいろな方法が知られ、このイオンがイオントラップ内にトラップされることでサンプルの質量スペクトルが得られる。1つの知られている方法は、連続した質量電荷数のイオンが順番どおりに飛び出すようにトラップを走査することである。第1の知られているトラップ走査の方法は、イオンが順次不安定になり、例えば電子増倍管手段90を使用してイオンが検出されるトラップを出ていくように、AC電圧の大きさのようなトラッピングパラメータの1つを走査することである。
【0040】
他の知られているトラップ走査方法は、イオントラップ10の上下エンドキャップ30及び35を横切って印加される補助AC双極子電圧を含む。このような電圧は、変圧器110によって上下エンドキャップ電極に結合される補助波形生成器100によって形成される。補助AC場は、トラップ内にイオンを共鳴的に飛び出させるために使用される。トラップ内の各々のイオンは、共鳴周波数を有し、この共鳴周波数は、その質量電荷数の関数でありトラッピング場のパラメータである。イオンがその共鳴周波数で補助RF場によって励起されるとき、場からエネルギーを得るし、もし効果的なエネルギーがイオンに接続されるならば、その強制振動はトラップの境界領域を越える。すなわち、トラップから飛び出す。このようにして飛び出したイオンは、電子増倍管90又は同等の検出器によっても検出される。共鳴放射走査技術を使用するとき、トラップの内容物は、補助RF場の周波数の1つを走査するか又はACトラッピング電圧、V、の大きさのようなトラッピングパラメータの1つを走査することによって順番に走査される。AC電圧の大きさを走査することが好適とされる。更に、イオントラップを走査する方法を以下で説明する。
【0041】
本発明の1つの実施例で、補助RF生成器100は、先に説明したとおりトラップを走査するために使用することができ、試薬ガスがイオン化されている時間中にEIによって形成されるサンプルイオンを共鳴的に飛び出させるために使用される広帯域RF場を生成することが可能である。図3の(a)は、試薬ガスをイオン化するために使用される電子ビームのゲートを示している。t1で開始してt2で終了するように電子ゲート70がオンになり、中性の試薬ガスから試薬イオンを形成するために電子ビームがトラップに進入できる。電子がトラップ内に入ることを可能にする電子ゲートに一致する図3の(b)に示されるように、補助波形生成器100は、t1に開始しt2に終了する時間間隔において、トラップの上下エンドキャップ30及び35に広帯域信号を印加する。示されるとおり、広帯域励起はゲート時間を越える。変形的に、補助広帯域信号の印加は、t1よりも遅れて又はt2よりも遅れても、すなわち、電子のイオン化が完了した後に開始し得る。同様に、補助信号は、t1よりも前の時間で開始することもできる。不必要なサンプルイオンの除去のための補助場が、イオンが形成される伸長した時間間隔の終了後の伸長した時間間隔の間“on”の状態を保たれることは重要なことである。
【0042】
上下エンドキャップへ印加される広帯域AC電圧は、協調することのないもの(双極励起)又は協調するもの(四重極励起)のいずれかであり得る。四重極励起を得ることの他の方法は、上下エンドキャップへではなく、図11に示されるようにリング電極への補助波形の適用である。
【0043】
補助波形は、トラップされたイオンによる共鳴パワーの吸収により、最大質量の試薬イオンよりも大きい質量の不必要なサンプルイオンを飛び出させるような十分な振幅の周波数の範囲を含んでいる。サンプルイオンの各々は、補助波形の周期成分に共鳴する。それに従って、それらは補助場からパワーを吸収し、トラッピング場から出て行く。この補助場が不必要なイオンを飛び出させた後、それはオフとなりCI試薬イオンがCIサンプルイオンを生産するためにサンプル原子と反応する。これらのイオンは、その後、先に説明したとおり、在来の方法で検出するためにトラップから走査される。
【0044】
先に説明した補助波形は、広帯域であり、飛び出す最も低い質量に対応する最初の周波数成分と飛び出される最も高い質量に対応する最後の周波数成分とを有する。最初の周波数と最後の周波数との間は一連の離散した周波数成分であり、この離散した周波数成分は、均等または不均等な間隔がとられ、任意的か又は固定した関数的関係を有する。この周波数成分の振幅は一様とすることができ、或いは、それらは、ハードウェアの周波数従属性に対して補償するように又はトラップ内に貯蔵された質量の分布のためq値の分布に対して補償するように関数的な形状に仕立てることができる。広帯域波形は、波形の最初と最後の成分の間の共鳴周波数を有する全てのイオンがこの補助場によって共鳴的に飛び出されるように、十分な数の周波数成分を有している。したがって、EI中に形成される全てのサンプルイオンは、質量解析走査以前にトラップから除去され、影響が及ぼされる質量範囲内にはギャップが無い。
【0045】
実際上、CI試験で使用される試薬ガスは、トラップの内容物のEI中に形成される試薬イオンが、ほとんどの場合において質量電荷数がサンプルイオンよりも低いように、分子質量が全て低い。稀な場合であるが、試薬ガスよりも低い質量のサンプルイオンが形成される場合、特定周波数が、特定の質量のものをその他のものと共に飛び出させるため、広帯域励起に付加してもよい。
【0046】
従来技術を越えた発明の利点は、CI試薬ガスのイオン化中にEIによって形成される不必要なサンプルイオンを取り除く能力である。これらのイオンを飛び出させる能力により、一層大きい放出電流と一層長いイオン化時間の利用が可能となる。従って、CIの感度が増加する。
【0047】
図4は、従来技術で使用される走査条件を使用するテトラクロルエタンのサンプルの残存EIスペクトルを示す。図5は、広帯域波形を使用するイオン化工程の間に形成されるサンプルイオンの除去を示す。図6は、従来技術の方法を使用するトラップ内に存するメタンの試薬ガスを有するトリクロルエタンとPFTBAのサンプルの残存EIスペクトルを示す。図7は、本願発明の広帯域波形を使用するイオン化工程中に形成されるサンプルイオンの除去を示す。質量がそれらよりも僅かに上であるサンプルイオンが除去されたにもかかわらず、質量43のところに試薬イオンが残存していることがわかる。図8は、補助波形がオフであることを除いて、図7と同様の条件下のスペクトルを示している。図9は、従来技術の方法を使用するヘクサクロルベンゼンのスペクトルを示している。EIイオンの混合細分片が、質量282、284、286、288及び290のところで観測される。さらに、(CIから)陽子が付加されたサンプルによるイオンが、質量283、285、287、289及び291のところで観測される。図10は、ここで説明された方法を使用するスペクトルを示している。EIプロセスからの不必要なイオンが、ほぼ完璧に取り除かれていることがわかる。
【0048】
本発明のその他の様態において、1つの走査から得るデータは、トラップを確実にダイナミックレンジで作動するため、それに続く走査のパラメータを調整するために必要であれば使用される。好適には、走査の最も強いイオンの振幅(ベースピーク)が、次の走査のイオン化及び又は反応時間を調整するために使用される。ベースピークの大きさは、ベースピークの実質的に一定のイオン数が保たれるように、それに続く走査のイオン化及び反応時間を調整するために使用される。走査中にトラップから飛び出される電荷の多くがベースピークのためであることから、それは、トラップ内のサンプルからの全電荷量の良好な表示となる。トラップ内でほぼ一定の全サンプル電荷を保つことによって、サンプルのダイナミックレンジが増加し得る。変形的に、1つの走査からの質量スペクトル情報で、例えば当該サンプルイオンのみに注目するため、つまり特定の種類のものを最適化するためにそれに続く質量分析走査のパラメータを調整することが可能である。好適に、先行する走査を基にした走査のパラメータを調整するとき、反応時間とイオン化時間の両方が、設定した比率で変化する。これは、1つの走査から次の走査へその結果を標準化することを一層容易にする。
【0049】
この発明の方法の利点は、広いダイナミックレンジのサンプルに対する走査時間を減少させることである。これは、トラップ内のサンプル量の計測として、先行する走査からのベースピークの強さを使用することによって達成される。したがって、従来技術で使用される、時間を消費する前走査の必要性がなくなる。
【0050】
広帯域補助場も、EI試験が行われる場合、トラップからの試薬イオンを除去するために使用される。イオントラップの使用者は、同一のサンプルでEI及びCI試験の両方を行うことを希望し得る。このような状況の下で、EIを行っている間にトラップ内へ試薬ガスの流れを停止することは好ましくなく、まだ試薬イオンが存在していることが、恐らく分析データを混乱させるであろう。補助RF広帯域励起を使用することによって、サンプルの電子衝突イオン化中に形成された全ての試薬イオンは、それらが形成されるとすぐにトラップから共鳴的に飛び出す。図3に示される同一のタイミングシーケンスは、本発明におけるこの態様を実施するために使用され得る。本発明におけるこの実施例で、広帯域RF励起は、周波数範囲が低い質量の試薬イオンのみを除去するように設定されるべきことを除いて、先に説明した変形例に従うことで為される。
【0051】
図2の波形生成器100は、質量スペクトルを得るためにCI試験を行い、MSn試験を行い、そしてトラップの内容物を走査するために低周波数非共鳴場を印加するために使用される。波形生成器100からの低周波数補助電圧が、イオントラップ10の上下エンドキャップ30及び35に双極場として印加される。この双極場の周波数は、トラップ内に蓄積される全てのイオン(サンプルイオン或いは試薬イオン)の共鳴周波数に無関係である。この波形は、好適に方形波であるが、正弦波形、鋸波形または三角波形を含むほとんど全ての波形であってもよい。とくに、補助電圧の周波数は、100Hzから数千Hzの間というように比較的低いものである。本発明が、サンプルイオンの共鳴周波数範囲の開始付近である約10000Hz以下の周波数で為され得ることが試験よりわかる。しかし、好適に、この周波数は数百Hzの範囲内であるべきである。
【0052】
補助方形波双極場がトラッピン場のプソイドポテンシャルウェルの中央をz軸に沿う異なった位置へ変形的に移されるとされている。トラッピング場のプソイドポテンシャルウェルの中心がそれぞれ移され、トラッピング場からトラップされたイオンが変換エネルギーを取り出し、新しい中心の周りで振動を開始する。したがって、この振動の中心の移動は、振動の大きさを増大する。一般に、イオンが背景のガスへエネルギーを失うとき、これらイオンは、新しい中心へ向かって移動する。もし、方形波のところで極性を変えるときのようにプソイドポテンシャル場の中心が移動するならば、このプロセスは反復する。場が変化される以前にイオンが新しい中心に向かって移り得るように、補助双極場の周波数は低くとるべきであることがわかるだろう。
【0053】
上述したように、プソイドポテンシャルウェルの中心が移動する場合、イオンは、空間内の新しい点の周囲で振動を開始し、一層付勢的になる。イオンに付加されるエネルギーは、多数のイオンが減衰ガスと衝突することで解離するのに十分なものである。それによって、ドウターイオンが形成される。このプロセスが反復されるとき、より一層のイオンが解離する。この方法の他の利点は、共鳴励起以上のエネルギーをイオンに与えることであり、したがって、いくつかの場合において、結果的に一層イオンの細分化となり得る。
【0054】
先に説明された方法が、イオントラップ内のイオンの共鳴周波数に頼っていないことから、トラップ内のイオン全てに同時に動作する。したがって、この方法を使用して、それぞれのイオンの細分片に係わる共鳴周波数を印加する必要なく、様々なイオンの細分片の生成物を形成することが可能である。もし望むのであれば、当該種類のイオンは、最初にトラップ内で分離される。
【0055】
この方法を使用すると、成分識別を容易にする成分の完全な“指紋”を得ることが可能である。ただ、質量電荷数は、それだけでペアレントイオンを明確に識別するために使用することができない。しかし、親イオンの質量電荷数だけでなく全てのイオンの細分片の質量の知識は、そのペアレントを明確に識別するために使用することができる。
【0056】
低周波電圧をイオントラップに印加することは、一定のカットオフされた質量以上の質量を有するイオンがイオントラップから除去されるためのメカニズムとして使用され得ることが分かった。このカットオフの質量は、補助的低周波電圧値の関数である。どのようにしてイオントラップが動作しているかという1つのモデルは、イオンが、他の物質との間の質量電荷数の関数であるポテンシャルウェルの“深さ”を有するポテンシャルウェル内に本質的にトラップされることである。質量が大きくなると、ウェルはより浅くなる。低周波の補助場の適用により大きい質量のイオン除去という現象が観測されることが大きい質量に係わるポテンシャルウェルの深さが比較的浅いことに関係しているとされている。特に、プソイドポテンシャルウェルの中心の転移により、大きい質量のイオンがウェルバリアーに勝るのに十分なエネルギーを得て、イオントラップを出て行くと考えられる。
【0057】
この現象は、化学イオン化試験およびイオントラップの走査の両方を有利にするために利点され得る。先に説明したとおり、化学イオン化試験を行うとき、試薬ガスのEI中で形成される大きい質量のサンプルイオンを除去することが必要である。このサンプルイオンの除去の変形的な方法は、先に説明したとおり、試薬イオンが影響なく,出て行く一方で、トラップから全てのサンプルイオンを除去するために効果的な値の低周波補助場を印加することである。この補助低周波場を印加することにおけるタイミングシーケンスは、図3に描かれているとおりであるか又はそれと共に関係して先に説明された全ての変形的タイミングシーケンスであってよい。この転に関し注目すべきは、間隔が千分の一秒以下である図3の(a)のイオン化期間が、低周波補助電圧の半周期よりも短い間隔であることである。したがって、図3の(b)に示されるように補助電圧の適用間隔は、より一層長い間隔であり、図3には示していない。
【0058】
低周波補助電圧の適用も、質量スペクトルが得られるようにイオントラップを走査するためのメカニズムとして使用され得る。これは、補助的低周波電圧値によって為される。もしこの補助電圧が開始時にあって低く更に上向きの勾配であるなら、大半はトラップから小さくなる順番で順次飛び出す。変形的に、低周波補助電圧は、一定に保たれ、同等の効果を得るためにトラッピングパラメータの一つが走査される。
【0059】
図12は、在来方法で得られた1、1、1−トリクロロエタンの質量スペクトルである。質量97でのピークは、CH3CCl2 +に対応する。対比して、図13は、低周波補助方形波電圧(100Hz、42ボルト)が20ミリ秒間印加されたことを除いて図12と同様の試験パラメータを使用して得られる1、1、1−トリクロロエタンの質量スペクトルである。質量97のピーク強度が減少され、質量61(CH2CCL+)のイオンが豊富にあることが、図13からわかる。非共鳴励起の結果のように、質量97のイオンはエネルギーを吸収し、質量61のイオンを形成するために解離された。
【0060】
図14および図15は、補助方形波の周波数がそれぞれ300と600Hzに設定されたことを除いて、図12および図13の結果を得るために使用されたパラメータと同一のものを使用して得られた1、1、1−トリクロロエタンのスペクトルを示している。図13、14および15のスペクトルの類似性は、解離が広い範囲にわたって補助場の周波数と大きく独立していることを示している。最後に、図16は、従来技術の方法を使用して、すなわち非共鳴低周波方形波を使用するのではなく、139.6KHz(イオン質量97のz軸の共鳴周波数)の非共鳴正弦波を800mVのレベルで20ms間印加することで得られた1、1、1−トリクロロエタンの質量スペクトルを示している。両方法によるドウターイオンの生成量がほぼ同一であることがわかる。
【0061】
図17、18および19は、本発明の方法が、イオントラップから大きい質量のイオンを除去するためにどのように使用されたかを示すために、いろいろな条件下でのPFTBAの質量スペクトルを示している。図17は、ペアレントイオン及び細分片イオンの両方を含む完全な質量スペクトルを示している。図18は、131以上の質量を有する全てのイオンが、補助方形波の電圧が20Vに上昇したときにトラップから除去されたことを示している。図19は、電圧が33Vへ上昇すると100以上の質量を有する全てのイオンがトラップから除去されることを示している。
【0062】
図20、21および22は、低周波補助場を使用することによってイオントラップから大きい質量のイオンが除去できる化学イオン化試験の応用例が示されている。図20、21および22は、それぞれ図5、7および10と同一のCI試験であることを示している。しかし、トラップから不必要なサンプルイオンを除去するために広帯域共鳴飛び出しが使用されたのではなく、低周波補助波形が使用された。結果は、どちらの方法によっても実質的に同一であることがわかる。図20の結果は、600Hzの周波数を有する補助場を使用して得られ、図21の結果は、300Hzの周波数の補助場を使用して得られ、そして、図22の結果は、400Hzの周波数を有する補助場を使用して得られた。それぞれの場合において、補助電圧の大きさは20と40Vとの間であった。
【0063】
本発明が好適実施例と関連して説明されてきたけれども、このように説明された事柄が制限をもたらすことを意図としたものではなく、その他の変形物および同等物が当業者によって容易に為されるであろう。このことから、本発明の範囲は、特許請求の範囲を参照することによってのみ決定されるべきである。例えば、本発明が電子衝突イオン化の工程の前になした化学イオン化試験を行うことに関連して部分的に説明されてきたけれども、その方法が電子衝突イオン化に代わって光イオン化を使用して行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオントラップに関連する安定線図を示す。
【図2】本発明の方法を実施するために使用される装置の部分的概要図を示す。
【図3】本発明に従って電子衝突イオン化のために使用される電子ビームのゲートに関係する補助広帯域AC場の制御を示しているグラフである。
【図4】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図5】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図6】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図7】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図8】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図9】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図10】本発明と従来技術とを比較するサンプルの質量スペクトルである。
【図11】本発明を実施するために使用される図2の装置の変形的配列を示す。
【図12】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示すサンプルの質量スペクトルである。
【図13】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示すサンプルの質量スペクトルである。
【図14】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示すサンプルの質量スペクトルである。
【図15】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示すサンプルの質量スペクトルである。
【図16】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示すサンプルの質量スペクトルである。
【図17】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示す質量スペクトルである。
【図18】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示す質量スペクトルである。
【図19】イオントラップから大きい質量のイオンを除去するために使用される補助的低周波場の適用がどのように為されているかを示す質量スペクトルである。
【図20】化学イオン化試験を行うことで使用される補助的低周波場がどのように適用されているかを示す質量スペクトルである。
【図21】化学イオン化試験を行うことで使用される補助的低周波場がどのように適用されているかを示す質量スペクトルである。
【図22】化学イオン化試験を行うことで使用される補助的低周波場がどのように適用されているかを示す質量スペクトルである。
【符号の説明】
10 ...イオントラップ
20 ...リング電極
30 ...上エンドキャップ電極
35 ...下エンドキャップ電極
40 ...ガスクロマトグラフ
50 ...試薬ガス
60 ...熱イオンフィラメント
65 ...フィラメント電源
70 ...ゲート電極
80 ...トラッピング場用RF発生器
90 ...電子増倍管
100...補助波形生成器
110...変圧器
Claims (8)
- 化学イオン化多重走査モードで使用されるイオントラップ質量分析計のダイナミックレンジを調節する方法であって、
(a)所望の質量電荷数の範囲内のイオンが安定してトラップされるように、前記イオントラップ質量分析計に、トラッピング場を印加する工程と、
(b)サンプルおよび試薬ガスをイオントラップ質量分析計に導入する工程と、
(c)イオン化期間の間、前記サンプルおよび試薬ガスをイオン化する工程と、
(d)前記イオン化期間の間に形成されるサンプルイオンを前記イオントラップ質量分析計から除去する工程と、
(e)サンプルイオンを形成するために、化学イオン化期間の間サンプル分子と前記試薬イオンとの反応を可能にする工程と、
(f)連続した質量電荷数のサンプルイオンを順番にイオントラップ質量分析計から出て行かせるために前記イオントラップ質量分析計を走査する工程と、
(g)サンプルイオンがイオントラップ質量分析計から出て行くときサンプルイオンを検出する工程と、
(h)最高の濃度で存在するサンプルイオンを特定し、前記サンプルイオンの濃度を検出する工程と、
(i)イオン化期間、もしくは化学イオン化期間のいずれか、またはその両方を調節するために、前記濃度の情報を使用して工程(a)から(g)を繰り返す工程と、
から成る方法。 - イオントラップ質量分析計でペアレントイオンを細分化する方法であって、
ペアレントイオンをイオントラップ質量分析計内で形成し、トラッピングする工程と、
前記ペアレントイオンがバックグランドガスでの衝突誘導解離を受けうように、ペアレントイオンの共鳴周波数と異なる周波数を有する低周波補助AC双極場をイオントラップ質量分析計に印加する工程と、
イオントラップ質量分析計の内容物の質量スペクトルを得る工程と、
から成る方法。 - 請求項2に記載の方法であって、
前記低周波補助AC双極場が100−10,000Hzの範囲にある周波数を有する、ところの方法。 - 請求項2に記載の方法であって、
前記低周波補助AC双極場が、前記ペアレントイオントからイオンの細分片を多重に生成するのに十分な長さの期間間隔の間イオントラップ質量分析計にかけられる、ところの方法。 - 請求項4に記載の方法であって、
ペアレントイオンを明白に特定するために、イオントラップ質量分析計の内容物の質量スペクトルを利用する工程をさらに含む、ところの方法。 - イオントラップ質量分析計の内容物の質量スペクトルを得るために、イオントラップ質量分析計を走査する方法であって、
所望の範囲内の質量電荷数を有するイオンがイオントラップ質量分析計内で安定してトラップされるように、イオントラップ質量分析計のトラッピング場のパラメータを調節する工程と、
サンプルイオンをイオントラップ質量分析計に導入する工程と、
低周波補助AC双極場をイオントラップ質量分析計に印加する工程と、
連続した質量電荷数のイオンがイオントラップ質量分析計から順番に非共鳴に飛び出すように、トラッピング場のパラメータまたは低周波AC双極場の振幅の、少なくとも一方を走査する工程と、
イオントラップ質量分析計から飛び出したイオンを検出する工程と、
から成る方法。 - 請求項6に記載の方法であって、
前記走査工程が、低周波補助AC双極場の振幅を増加させることから成る、ところの方法。 - 請求項6に記載の方法であって、
前記低周波補助AC双極場が、100−10,000Hzの範囲の周波数を有する、ところの方法。
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