JP2020186088A - 角材の転回装置及び転回方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】角材を周方向に90度転回させるにあたり、設備稼働率を向上させ、また整備負荷を軽減させつつ、複数種類の角材に適用可能な転回装置及び転回方法を提供する。【解決手段】スラブ30の側面視において当該スラブ30を周方向に90度転回させる転回装置10は、スラブ30に当接して転回させるための転回部材11と、転回部材11を鉛直方向に昇降させる昇降機構13と、を有する。転回部材11は、側面視における一端部に設けられ、上方に突出した凸部11aと、側面視において他端部から凸部11aに向けて下方に傾斜した傾斜部11bと、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、角材の側面視において当該角材を周方向に90度転回させる転回装置、及び当該転回装置を用いた転回方法に関する。
例えば製鉄所の圧延設備では、スラブやビレット、ブルームなどの角材に対して、表面研削、表面疵検査あるいは超音波探傷などが行われる。この際、搬送方向に並べて配置された複数の搬送ローラからなる搬送テーブルに載置された角材を、側面視において周方向に90度転回させる必要が生じる場合がある。
従来、上述のように角材を周方向に90度転回させる装置として、様々な転回装置が提案されている。
例えば特許文献1に記載された転回装置は、角材を転回させるための転回爪と、転回爪を昇降させる、例えば昇降シリンダなどの昇降機構とを有する。転回爪は、固定支点ピンを回転中心に回転自在に、かつ昇降機構に支持された移動支点により昇降自在に配置される。そして、かかる転回装置では、転回爪が、搬送ローラに搭載された角材をその周方向に90度転回させながら持上げ、搬送ローラに移載する。
また、例えば特許文献2に記載された転回装置は、ローラテーブルの下方に設置された昇降装置と、この昇降装置から案内棒を介して上方に設置されたリフターとを有する。リフターの上面略中央部には、角材(被圧延材)の幅に相当する幅をもつ凹溝が形成されている。そして、かかる転回装置では、昇降装置を駆動しリフターを上昇させると、リフターと角材が接触し、角材は回動すると共に90度転回して凹溝におさまる。その後、駆動装置によりリフターを下降させ、角材をローラテーブルに移載する。
特開2017−7807号公報 実開昭52−151134号公報
特許文献1に記載された転回装置は、その構造がリンク機構であるため、固定支点となるピンが必要となる。このようなピンは経時使用によりガタつき、かかる場合、角材が転回不良を起こす。また、ピンは摩耗し又は折損するため、設備動作不良による設備稼働率の低下を招く。さらに、ピンのガタつきや摩耗、折損などに対する管理が必要となるため、整備負荷が増大する。
特許文献2に記載された転回装置では、角材を回動させて凹溝をおさめる際、凹溝の底面の角部に応力が集中し、当該角部からリフターに亀裂が入りやすい。そしてこのようにリフターが破損すると、設備稼働率の低下を招き、また整備負荷が増大する。さらに、凹部の幅は特定の角材の幅に相当するため、本転回装置で転回可能な角材はこの特定の角材に限定され、様々な寸法の角材を取り扱う設備には適用できない。あるいは、様々な寸法の角材に適用するには、これら角材に応じて転回装置のリフターなどの部材を変更する必要があり、設備稼働率が低下する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、角材を周方向に90度転回させるにあたり、設備稼働率を向上させ、また整備負荷を軽減させつつ、複数種類の角材に適用可能な転回装置及び転回方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、角材の側面視において当該角材を周方向に90度転回させる転回装置であって、前記角材に当接して転回させるための転回部材と、前記転回部材を鉛直方向に昇降させる昇降機構と、を有し、前記転回部材は、前記側面視における一端部に設けられ、上方に突出した凸部と、前記側面視において他端部から前記凸部に向けて下方に傾斜した傾斜部と、を備えることを特徴としている。
前記転回装置は、前記側面視において前記凸部の一側面と前記傾斜部の上面に沿って設けられるアタッチメントをさらに有し、前記アタッチメントの上面は、前記凸部の一側面に平行な面と前記傾斜部の上面に平行な面とを有していてもよい。
前記転回装置において、前記アタッチメントの下面には、下方に突起した突起部が設けられ、前記傾斜部の上面には、前記突起部が嵌め込まれる溝部が形成されていてもよい。
前記転回装置において、前記角材は搬送ローラに載置され、前記搬送ローラにおける前記角材の載置面は、表面粗度を向上させる加工が施されていてもよい。
別な観点による本発明は、転回装置を用いて、搬送ローラに載置された角材を当該角材の側面視において周方向に90度転回させる転回方法であって、前記転回装置は、前記側面視における一端部に設けられ、上方に突出した凸部と、前記側面視において他端部から前記凸部に向けて下方に傾斜した傾斜部とを備えた転回部材と、前記転回部材を鉛直方向に移動させる昇降機構と、を有し、前記転回方法は、前記昇降機構によって前記転回部材を上昇させ、前記凸部と前記角材を当接させる第1の工程と、その後、前記昇降機構によって前記転回部材をさらに上昇させ、前記角材の一面が前記傾斜部の上面に当接するまで、当該角材を転回させる第2の工程と、前記昇降機構によって前記転回部材を下降させて、前記角材を前記搬送ローラに載置する第3の工程と、を有することを特徴としている。
前記転回方法において、前記第1の工程の前に、前記搬送ローラ上において、前記側面視における中心位置からずらして前記角材を載置してもよい。
本発明によれば、転回部材が前記凸部と前記傾斜部を有するので、昇降機構によって転回部材を昇降させることで、角材の側面視において当該角材を周方向に90度転回させることができる。
本発明の転回部材は、従来の転回爪(転回部材)のピンやリフター(転回部材)の凹溝が不要であり、その耐久性を向上させることができる。また、リンク機構のピンなどが不要で、転回装置の部品点数を削減することができる。その結果、転回装置が設置される設備に対し、その稼働率を向上させることができ、また転回装置の整備負荷を軽減することができる。
しかも本発明によれば、昇降機構によって転回部材を上昇させて、角材の一面が傾斜部の上面に当接するまで当該角材を転回させるが、傾斜部の上面が角材の一面より十分大きいため、様々な寸法の角材を転回させることができる。したがって、本発明は、複数種類の角材に適用することができる。
なお本発明では、角材の一面を傾斜部の上面に当接させた後、昇降機構によって転回部材を下降させて、角材が斜めの状態、すなわち完全に90度転回しない状態で搬送ローラに受け渡され、その後自重により角材は90度まで転回し搬送ローラに載置される。これに対し、従来文献2に記載の転回装置において角材は、リフター(転回部材)の凹溝で90度転回した後に、リフターを下降させることで搬送ローラに受け渡される。したがって、本発明と従来文献2の転回装置では、転回部材から搬送ローラに角材を受け渡す際の、当該角材の姿勢が異なっている。
本実施形態にかかる転回装置の構成の概略を模式的に示す側面図である。 本実施形態にかかる転回装置の構成の概略を模式的に示す平面図である。 搬送ローラに載置されたスラブが側面視において周方向に90度転回する様子を模式的に示す説明図である。 搬送ローラに載置されるスラブのずれ量を算出するための回帰式を示したグラフである。 スラブを転回中に、転回部材及び搬送ローラと、スラブとの間に作用する力を示す説明図である。 他の実施形態にかかる転回装置の構成の概略を模式的に示す側面図である。 他の実施形態にかかる転回装置の構成の概略を模式的に示す平面図である。 他の実施形態にかかる転回装置の構成の概略を模式的に示す側面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<転回装置の構成>
先ず、本実施形態にかかる転回装置の構成について説明する。本実施形態では、例えば圧延設備において転回装置が、角材としてのスラブを転回させる場合について説明する。図1は、本実施形態にかかる転回装置10の構成の概略を模式的に示す側面図である。図2は、転回装置10の構成の概略を模式的に示す平面図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図1及び図2に示すように転回装置10は、搬送方向(X軸方向)に並べて配置された複数の搬送ローラ20からなる搬送テーブルに載置されたスラブ30を、当該スラブ30の短手方向の側面視において(スラブ30の短手方向側面と平行なYZ面を見て)周方向に90度転回させる。転回装置10は、例えば隣接する搬送ローラ20、20間に設けられている。なお、以下では、上述した側面視におけるスラブ30の転回について説明し、側面視であると都度記載することは省略する。
転回装置10は、スラブ30に当接して転回させるための転回部材11と、シャフト12を介して転回部材11を鉛直方向に昇降させる昇降機構13と、を有している。昇降機構13の構成は、転回部材11を昇降できれば特に限定されるものではないが、例えば油圧、空圧、電動ジャッキなどの駆動機構が用いられる。
転回部材11には、凸部11aと傾斜部11bが形成されている。凸部11aは、一端部(Y軸正方向端部)において、上方に突出して設けられている。傾斜部11bは、他端部(Y軸負方向端部)から凸部11aに向けて下方に傾斜して設けられている。
以下の説明においては、転回部材11の上面の4つの頂点を、Y軸負方向から正方向側に向けてA点、B点、C点、D点という。すなわち、A点は、傾斜部11bの上面のY軸負方向側の頂点である。B点は、傾斜部11bの上面のY軸正方向側の頂点である。C点は、凸部11aの上面のY軸負方向側の頂点である。D点は、凸部11aの上面のY軸正方向側の頂点である。また、A点、B点間の面をAB面といい、B点、C点間の面をBC面といい、C点、D点間の面をCD面という。
<転回装置の動作>
次に、以上のように構成された転回装置10を用いてスラブ30を転回させる方法について説明する。図3は、搬送ローラ20に載置されたスラブ30が側面視において周方向に90度転回する様子を模式的に示す説明図である。すなわち、本実施形態では、スラブ30の第一面30aが搬送ローラ20に載置された状態から、第二面30bが搬送ローラ20に載置されるまで、スラブ30を90度転回させる。
最初、図3(a)に示すように搬送ローラ20に載置されたスラブ30に対し、当該スラブ30の下方に転回部材11が待機している。そしてこの状態から、図3(b)に示すように昇降機構13によって転回部材11を上昇させ、凸部11aのCD面の一部とスラブ30の第一面30aの一部とを当接させる。
その後、図3(c)に示すように昇降機構13によって転回部材11をさらに上昇させる。そうすると、凸部11aのC点がスラブ30の第一面30aに当接した状態で、スラブ30の第一面30aにおけるY軸負方向端部のE点を支点に、当該スラブ30が転回する。この際、後述するように搬送ローラ20に対するスラブ30の摩擦係数が十分に大きいため、スラブ30のE点は搬送ローラ20に対して移動しない。
その後、図3(d)に示すように昇降機構13によって転回部材11をさらに上昇させ、スラブ30をさらに転回させる。そして、スラブ30のE点が、転回部材11の傾斜部11bのAB面に当接する。すなわち、スラブ30が、搬送ローラ20から転回部材11に受け渡される。
その後、図3(e)に示すように昇降機構13によって転回部材11をさらに上昇させ、スラブ30の第二面30bが傾斜部11bのAB面に当接するまで、当該スラブ30を転回させる。この際、傾斜部11b(AB面)がY軸負方向から正方向に向けて下方に傾斜しているので、スラブ30が反対側まで転回しすぎることはない。
その後、図3(f)に示すように昇降機構13によって転回部材11を下降させる。そうすると、スラブ30が転回部材11から搬送ローラ20に受け渡され、スラブ30の第二面30bが搬送ローラ20に載置される。この際、スラブ30は自重によって、第二面30bが傾斜した状態から水平方向まで転回し、搬送ローラ20に載置される。こうして、転回装置10を用いてスラブ30が90度転回される。
本実施形態によれば、凸部11aと傾斜部11bを備えた特殊な形状の転回部材11を用いて、昇降機構13による単純な直線駆動により、スラブ30を周方向に90度転回させることができる。そして、このように転回装置10は、従来の転回爪(転回部材)のピンが不要であり、部品点数を削減することができる。その結果、転回装置10が設置される圧延設備に対し、その稼働率を向上させることができ、また転回装置10の整備負荷を軽減することができる。
しかも、図3(e)に示したように昇降機構13によって転回部材11を上昇させて、スラブ30の第二面30bが傾斜部11bのAB面に当接するまで当該スラブ30を転回させるが、AB面が第一面30aより十分大きいため、様々な寸法のスラブ30を転回させることができる。したがって、転回装置10は、複数種類(寸法)のスラブ30に適用することができる。
<転回部材の最適形状>
次に、上述したようにスラブ30を転回させるための、転回部材11の最適な形状寸法について図1に基づいて説明する。
(転回部材の寸法)
圧延設備では複数種類(寸法)のスラブ30が圧延されるが、転回部材11の寸法を設計するに際しては、これらスラブ30のうち、短手方向側面(以下、単に側面という)のアスペクト比が最も大きいものを基準にする。そして、例えばスラブ30のアスペクト比が小さく、転回部材11で90度転回させることができない場合には、後述するアタッチメント40で対応してもよい。
本実施形態では、例えば表1に示す4つのスラブ30A〜30Dを対象に、転回部材11の寸法を決定する。スラブ30の幅をL1、高さをL2とすると、スラブ30A〜30Dの側面のアスペクト比L1/L2の範囲は、1.17〜1.27となる。そして、スラブ30Bのアスペクト比が最も大きく1.27であり、転回部材11の設計をするに際しては、この最大アスペクト比のスラブ30Bを基準にする。
具体的には、転回部材11の距離lと高さhを決定する。転回部材11の他の寸法については、スラブ30の転回に影響を及ぼすものではなく、任意に決定できる。なお、距離lは、搬送ローラ20の中心線X(圧延ラインの中心線X)から凸部11aのC点までの水平方向距離である。高さhは、凸部11aの高さであり、B点とC点間の鉛直方向距離である。
距離lは、スラブ30の幅L1の関数であり、下記式(1)から算出される。式(1)中、係数aは例えば0.29〜0.57に設定される。具体的に係数aは、表1に示したスラブ30A〜30Dのすべてが転回できる範囲に設定されている。本実施形態では、係数aは0.39に設定され、距離lは5mmに決定される。
l=a×L1 ・・・(1)
高さhは、スラブ30の高さL2の関数であり、下記式(2)から算出される。式(2)中、係数bは例えば0.97〜1.36に設定される。具体的に係数bは、表1に示したスラブ30A〜30Dのすべてが転回できる範囲に設定されている。本実施形態では、係数bは1.36に設定され、高さhは150mmに決定される。
h=b×L2 ・・・(2)
Figure 2020186088
(転回部材の角度)
転回部材11において、傾斜部11bのAB面の水平方向からの傾斜角θは、図3(e)に示したようにスラブ30の第二面30bがAB面に当接する際、当該スラブ30が反対側まで転回し過ぎない角度、すなわちスラブ30が180度転回しないような角度に設定される。具体的に傾斜角θは、例えば5度程度に設定される。
<スラブのずれ量>
次に、上述したようにスラブ30を転回させるための、搬送ローラ20上のスラブ30の最適な載置位置について説明する。
図3(a)に示したように転回前において搬送ローラ20に載置されるスラブ30は、図1に示すようにずれ量eだけずらして載置されるのが好ましい。具体的には、圧延設備におけるガイドを設定して、このように搬送ローラ20上のスラブ30の載置位置をずれ量eだけずらす。なお、ずれ量eは、搬送ローラ20の中心線X(圧延ラインの中心線X)からスラブ30の第二面30bまでの水平方向距離である。
ずれ量eは、スラブ30の幅L1と転回部材11の距離lの関数であり、下記式(3)から算出される。式(3)中、係数α、β、γは、図4に示すグラフに基づいて決定される。
e=α×L1+β×l+γ ・・・(3)
図4は、表1に示した4つのスラブ30A〜30Dに対し、横軸の(l+L1/2)と、縦軸の(L1−e)をそれぞれ算出してプロットしたものである。本実施形態では、距離lは上述した5mmとしている。幅L1は、上記表1に記載のスラブ30A〜30Dの幅L1である。ずれ量eは、上記表1に記載したスラブ30A〜30Dをそれぞれ転回させることが可能なずれ量eを算出したものである。そして、この4つのプロットに対して、一次方程式の回帰式を算出すると、下記(4)が導出される。そして、これをずれ量eについて整理し、上記式(3)の係数α、β、γが求められ、下記式(3’)が導出される。
(L1-e)=1.6667(l+L1/2)−27.5 ・・・(4)
e=0.1665×L1−1.667×l+27.5 ・・・(3’)
このようにずれ量eを設定すると、図1に示すようにスラブ30の重心Gが、搬送ローラ20の中心線X(圧延ラインの中心線X)と凸部11aのC点との間に位置することになる。そうすると、図3に示したようにスラブ30を転回させる際、当該スラブ30が反対側まで転回しすぎることはない。
<搬送ローラに対するスラブの摩擦>
次に、上述したようにスラブ30を転回させるための、搬送ローラ20に対するスラブ30の摩擦係数について説明する。
図3(c)に示したようにスラブ30を転回させる際には、当該スラブ30のE点を支点に転回させる。この際、E点が搬送ローラ20上で水平方向に移動しないようにするため、搬送ローラ20に対するスラブ30の摩擦係数を十分に大きくする必要がある。
図5は、転回部材11及び搬送ローラ20と、スラブ30との間に作用する力を示している。図5中、F1は、スラブ30のE点において、搬送ローラ20からスラブ30に鉛直方向に作用する力である。Fnは、転回部材11のC点において、スラブ30に作用する力である。F2はFnの鉛直方向成分であり、FtはFnの水平方向成分である。Wは、スラブ30の重量であり、当該スラブ30の重心に作用する。すなわち、WはF1とF2の合計である。
本実施形態では、搬送ローラ20に対するスラブ30の摩擦係数をμとする。そうすると、E点に作用する摩擦力はμ×F1となり、C点に作用する摩擦力はμ×F2となり、E点が移動しない条件として下記式(5)が成立する。上述したようにWはF1とF2の合計であるから、式(5)を摩擦係数μで整理すると、下記式(6)が導出される。換言すれば、搬送ローラ20に対するスラブ30の摩擦係数μが式(6)を満たしていれば、E点は移動せず、スラブ30を適切に転回させることができる。
μ×(F1+F2)>Ft ・・・(5)
μ>Ft/W ・・・(6)
ここで、スラブ30の転回に伴い、当該スラブ30の水平方向からの傾き角φが変動するため、F1、F2、Ftもこの傾き角φに応じて変動する。したがって、摩擦係数μは、傾き角φ毎に、式(6)に基づいて算出する必要がある。実際に本発明者らは、表1に示した4つのスラブ30A〜30Dに対し、傾き角φを変動させて摩擦係数μを算出したところ、E点が移動しない限界となる限界摩擦係数μは0.25となった。これに対し、一般的な材料の搬送ローラ20とスラブ30の間の摩擦係数は0.28以上であり、算出した限界摩擦係数μの0.25より大きい。このため、通常の圧延設備においては、E点は移動せず、スラブ30を適切に回動させることができる。
なお、式(6)で算出される限界摩擦係数μが、搬送ローラ20とスラブ30の間の摩擦係数より大きくなる場合には、搬送ローラ20におけるスラブ30の載置面に、表面粗度を向上させる加工を施してもよい。かかる加工としては、例えばショットブラスト加工や切削加工、ローレット加工などがある。かかる場合、搬送ローラ20とスラブ30の間の摩擦係数が大きくなるので、E点を搬送ローラ20上で水平方向に移動させずに、スラブ30を適切に回動させることができる。
<他の実施形態>
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図6に示すように転回装置10は、アタッチメント40をさらに有していてもよい。アタッチメント40は、転回部材11のAB面とBC面に沿って設けられる。
ここで、アタッチメント40の上面の4つの頂点を、Y軸負方向から正方向側に向けてK点、L点、M点、N点という。また、K点、L点間の面をKL面といい、L点、M点間の面をLM面といい、M点、N点間の面をMN面という。アタッチメント40において、KL面はAB面と平行であり、LM面はBC面と平行である。また、MN面はCD面と繋がり、MN面とCD面で平坦面を構成する。このようにアタッチメント40の上面は、転回部材11の上面と略相似形となる。
アタッチメント40下面のY軸正方向端部には、下方に突起した突起部40aが設けられている。転回部材11には、傾斜部11bの上面(AB面)のY軸正方向端部において、溝部11cが形成されている。突起部40aの形状は、溝部11cの形状に適合する。そして、突起部40aが溝部11cに嵌め込まれることで、アタッチメント40が転回部材11に係止される。なお、突起部40aは例えばボルトによって溝部11cに締結されてもよい。
かかる場合、距離lは、搬送ローラ20の中心線X(圧延ラインの中心線X)からアタッチメント40のM点までの水平方向距離となる。また、高さhは、アタッチメント40のL点とM点間の鉛直方向距離となる。そうすると、距離lと高さhのいずれも、アタッチメント40を設けた方が設けない場合に比べて小さくなる。
上述したように距離lと高さhは、それぞれ下記式(1)、(2)で算出されるため、アタッチメント40を設けることで、転回できるスラブ30の寸法L1、L2の範囲が広がる。具体的には、例えばスラブ30のアスペクト比L1/L2が小さくなっても、転回部材11にアタッチメント40を設けることで、当該小さいアスペクト比のスラブ30を適切に転回させることができる。
l=a×L1 ・・・(1)
h=b×L2 ・・・(2)
以上の実施形態では、転回装置10が1つの転回部材11を有する場合について説明したが、図7及び図8に示すように転回装置10は、複数の転回部材11を有していてもよい。各転回部材11は、隣接する隣接する搬送ローラ20、20間に設けられている。また、これら複数の転回部材11は連結部材14によって連結され、昇降機構13によって同時に昇降される。かかる場合、例えば転回対象が長尺の角材であっても対応できる。
以上の実施形態では、転回装置10が適用される設備として圧延設備を例に説明したが、これに限定されない。転回装置10は、例えば連続鋳造設備や板継ぎ用溶接設備などにも適用可能である。
また、以上の実施形態では、転回装置10の転回対象としてスラブ30を例に説明したが、これに限定されない。転回装置10は、例えばビレットやブルームなどの他の鉄鋼半製品、アルミニウム合金などの非鉄半製品、木材などの角材にも適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、角材の側面視において当該角材を周方向に90度転回させる際に有用である。
10 転回装置
11 転回部材
11a 凸部
11b 傾斜部
11c 溝部
12 シャフト
13 昇降機構
14 連結部材
20 搬送ローラ
30(30A〜30D) スラブ
30a 第一面
30b 第二面
40 アタッチメント
40a 突起部

Claims (6)

  1. 角材の側面視において当該角材を周方向に90度転回させる転回装置であって、
    前記角材に当接して転回させるための転回部材と、
    前記転回部材を鉛直方向に昇降させる昇降機構と、を有し、
    前記転回部材は、
    前記側面視における一端部に設けられ、上方に突出した凸部と、
    前記側面視において他端部から前記凸部に向けて下方に傾斜した傾斜部と、を備えることを特徴とする、角材の転回装置。
  2. 前記側面視において前記凸部の一側面と前記傾斜部の上面に沿って設けられるアタッチメントをさらに有し、
    前記アタッチメントの上面は、前記凸部の一側面に平行な面と前記傾斜部の上面に平行な面とを有することを特徴とする、請求項1に記載の角材の転回装置。
  3. 前記アタッチメントの下面には、下方に突起した突起部が設けられ、
    前記傾斜部の上面には、前記突起部が嵌め込まれる溝部が形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の角材の転回装置。
  4. 前記角材は搬送ローラに載置され、
    前記搬送ローラにおける前記角材の載置面は、表面粗度を向上させる加工が施されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の角材の転回装置。
  5. 転回装置を用いて、搬送ローラに載置された角材を当該角材の側面視において周方向に90度転回させる転回方法であって、
    前記転回装置は、
    前記側面視における一端部に設けられ、上方に突出した凸部と、前記側面視において他端部から前記凸部に向けて下方に傾斜した傾斜部とを備えた転回部材と、
    前記転回部材を鉛直方向に移動させる昇降機構と、を有し、
    前記転回方法は、
    前記昇降機構によって前記転回部材を上昇させ、前記凸部と前記角材を当接させる第1の工程と、
    その後、前記昇降機構によって前記転回部材をさらに上昇させ、前記角材の一面が前記傾斜部の上面に当接するまで、当該角材を転回させる第2の工程と、
    前記昇降機構によって前記転回部材を下降させて、前記角材を前記搬送ローラに載置する第3の工程と、を有することを特徴とする、角材の転回方法。
  6. 前記第1の工程の前に、前記搬送ローラ上において、前記側面視における中心位置からずらして前記角材を載置することを特徴とする、請求項5に記載の角材の転回方法。
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