JP2020184972A - 新規培地 - Google Patents

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晃文 松山
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華雪 大倉
洋子 大倉
Yoko Okura
洋子 大倉
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Abstract

【課題】二酸化炭素非生理的高濃度でない条件で細胞、組織または臓器を培養するための培地、該培地を用いる細胞、組織または臓器の培養方法、保存方法および輸送方法、該培地を用いて細胞、組織または臓器を培養することによる物質の製造方法等を提供する。【解決手段】オロト酸、および/または1種類以上のピリミジンヌクレオシド、および/または1種類以上のピリミジン塩基からなる群より選択される1以上の化合物を含む、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織または臓器を培養するための培地、該培地を用いる細胞、組織または臓器の培養、製造、保存および輸送方法、該培地にて細胞、組織または臓器を培養することによる物質の製造方法、ならびに該培地を作製するための組成物。【選択図】なし

Description

本発明は二酸化炭素非生理的高濃度でない条件で細胞、組織または臓器を培養するための培地、該培地を用いる細胞、組織または臓器の培養方法、保存方法および輸送方法、該培地を用いて細胞、組織または臓器を培養することによる物質の製造方法等に関する。
細胞、組織または臓器の培養は、二酸化炭素非生理的高濃度で行われることが一般的で、通常、二酸化炭素濃度は5%にて培養される(非特許文献1等参照)。このような培養に用いる細胞培養装置(COインキュベーター)は、CO濃度を保持するための機構やCOの配管などが必要であった。細胞、組織または臓器を用いる物質の大量生産のためには、大がかりなCO保持装置や配管が必要で、コスト、スペース、エネルギーの面で不利である。また、細胞、組織または臓器の保存や輸送は、一般的には凍結保存して行われているが、融解時に細胞、組織または臓器に損傷が発生するという問題がある。
廣川 化学と生物 実験ライン 43 細胞生物学実験法 I,細胞培養法,14ページ
COインキュベーターを用いずに細胞、組織または臓器を培養、保存および運搬することのできる培地が必要とされていた。
細胞、組織または臓器の培養にCOインキュベーターを用いるのは、外来COを用いて培地中の重炭酸緩衝系を作動させてpHを維持するためであると一般に考えられている。本発明者らは、この点について検討を行い、COは培地pHの維持のみならず、細胞、組織または臓器の増殖や維持に必要であるためであると考察した。すなわち、本発明者らは、COはピリミジン塩基生合成の基質でもあると考察した。
カルバモイルリン酸シンテターゼIIによって、重炭酸イオン、グルタミンおよびATPからカルバモイルリン酸が生合成される。カルバモイルリン酸はピリミジン塩基生合成系に入る。本発明者らは、この重炭酸イオンの供給源がCOであると考察した。換言すれば、カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物が培地組成中に含まれていれば、重炭酸イオンは必須ではなく、COインキュベーターを用いなくても細胞や組織を培養することが可能であると考察した。
本発明者らは、カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を含む培地にて、COインキュベーターを使用せずに細胞を培養することに成功し、上記考察を実証し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は以下のものを提供する:
(1)カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を含む、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養するための培地。
(2)カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物が、オロト酸、および/または1種類以上のピリミジンヌクレオシド、および/または1種類以上のピリミジン塩基である、(1)記載の培地。
(3)重炭酸イオンを含まない(1)または(2)記載の培地。
(4)糖としてガラクトースを含む(1)〜(3)のいずれか記載の培地。
(5)二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である(1)〜(4)のいずれか記載の培地。
(6)二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞を培養する方法であって、(1)〜(5)のいずれか記載の培地にて細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養することを含む方法。
(7)二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である(6)記載の方法。
(8)二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を保存する方法であって、(1)〜(5)のいずれか記載の培地にて細胞を保存することを含む方法。
(9)二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である(8)記載の方法。
(10)二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を輸送する方法であって、(1)〜(5)のいずれか記載の培地中の細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を輸送することを含む方法。
(11)二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である(10)記載の方法。
(12)(1)〜(5)のいずれか記載の培地にて二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養し、および/または増殖させることを含む、細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器の製造方法。
(13)二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である(12)記載の方法。
(14)細胞が、間葉系組織由来の細胞である、(12)または(13)記載の方法。
(15)細胞が、脂肪組織由来多系統前駆細胞(ADMPC)、MUSE細胞(SSEA−3陽性細胞)、がん細胞、がん組織、多能性幹細胞、多能性幹細胞由来細胞、ダイレクトリプログラミング細胞、リンパ球、皮膚扁平上皮細胞、毛根細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、腸管上皮(幹)細胞、ワクチン産生細胞、細胞株、または遺伝子導入細胞である、(12)または(13)記載の方法。
(16)(1)〜(5)のいずれか記載の培地にて二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養し、タンパク質、ペプチド、エクソソーム、またはウイルスを産生させることを含む、タンパク質、エクソソーム、またはウイルスの製造方法。
(17)二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である(16)記載の方法。
(18)カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を含む、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養するための培地を調製するための組成物。
(19)カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物が、オロト酸、および/または1種類以上のピリミジンヌクレオシド、および/または1種類以上のピリミジン塩基である、(18)記載の組成物。
(20)重炭酸塩を含まない(18)または(19)記載の組成物。
(21)糖としてガラクトースを含む(18)〜(20)のいずれか記載の組成物。
(22)二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である(18)〜(21)のいずれか記載の組成物。
本発明によれば、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下、例えば大気条件下で細胞、組織または臓器を培養、保存および輸送できる。本発明の培地や方法を用いることにより、細胞の培養、保存および輸送にCOインキュベーターが不要となる。したがって、本発明の培地や方法を用いることにより、省コスト、省スペース、省エネルギーでの細胞、組織または臓器の培養、保存および輸送、ならびに細胞や組織による物質の製造などが可能となる。
図1は、本発明の培地を用いて培養した間葉系組織由来細胞の累積細胞倍加数の経時変化を示す。 図2は、本発明の培地を用いて培養した肺がん細胞の累積細胞倍加数の経時変化を示す。
本発明は、1の態様において、カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を含む、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養するための培地を提供する。本発明の培地は、培養開始時においてカルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を含んでいる。
本発明の培地成分としてのカルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物は公知であり、その種類は特に限定されない。これらの成分のうち好ましいものは、培地に添加することで細胞に取り込まれやすいものである。そのような成分の例としては、オロト酸、ピリミジンヌクレオシド(例えばウリジン、シチジン、デオキシシチジン、チミジン、デオキシチミジン)、ピリミジン塩基(例えばウラシル、シトシン、チミン)などの化合物が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、本発明の組成物は、オロト酸、および/または1種類以上のピリミジンヌクレオシド、および/または1種類以上のピリミジン塩基を含む。好ましくは、本発明の培地は、オロト酸、ウリジン、シチジン、デオキシシチジン、チミジン、デオキシチミジン、ウラシル、シトシン、およびチミンからなる群より選択される1種類以上の化合物を含む。
本発明の培地中のオロト酸、ピリミジンヌクレオシド、ピリミジン塩基などのカルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物の量は、例えば大気条件下で細胞を培養する際に、培地中のこれらの成分量を増減させることにより、決定することができる。一般的には、培地中のこれらの各成分の濃度は約3mg/L以上、例えば約5mg/L以上、約7mg/mL以上または約10mg/L以上であってもよい。これらの成分の培地中の濃度範囲は、細胞や組織の増殖や維持に悪影響を与えない濃度範囲とすることができる。これらの成分の濃度範囲は、培地中のこれらの成分量を増減させて細胞、組織または臓器の増殖を調べることにより、決定することができる。
本発明の培地の組成は、上記の量のカルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を成分として含むこと以外は、通常の細胞培養、組織培養または臓器培養用の培地の組成であってよい。培地は基礎培地であってもよい。細胞、組織または臓器や組織の培養によく用いられる培地としては、MEM、DMEM、F−12、DMED/F−12、MCDB101、MCOB201、RPMI1640、L−15、メソカルト(MethoCult)などが挙げられるが、これらに限定されない。培地は液体培地であってもよく、固体培地であってもよい。培地は血清培地であってもよく、無血清培地であってもよい。様々な培地が公知であり、当業者が細胞の種類、培養の規模、細胞が産生する物質などを考慮して、適宜選択することができる。
二酸化炭素非生理的高濃度でない条件とは、培地に接している雰囲気中のCO濃度が約5%未満、例えば約3%以下、好ましくは約1%以下、例えば約0.7%以下であることをいう。典型的な二酸化炭素非生理的高濃度でない条件は、大気条件である。大気条件とは、CO濃度が約0.02%〜約0.07%、好ましくは約0.03%〜約0.06%、例えば約0.03%〜約0.05%であることをいう。二酸化炭素非生理的高濃度でない条件での細胞の培養は、COインキュベーターを使用せずに行うことができる。
細胞は、あらゆる種類の動物細胞であってよい。好ましくは、細胞は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞の例としてはヒト細胞、サル細胞、マウス細胞、ラット細胞、ウサギ細胞、モルモット細胞、ハムスター細胞、ブタ細胞、ウシ細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ウマ細胞、ヒツジ細胞、ヤギ細胞などが挙げられるが、これらの細胞に限定されない。好ましくは、細胞は間葉系由来の細胞である。好ましい細胞の例としては、間葉系組織由来の細胞が好ましい。脂肪組織由来多系統前駆細胞(ADMPC)、MUSE細胞(SSEA−3陽性細胞)、がん細胞、がん組織、多能性幹細胞、多能性幹細胞由来細胞、ダイレクトリプログラミング細胞、リンパ球、皮膚扁平上皮細胞、毛根細胞、血管内皮細胞(血管内皮前駆細胞を含む)、腸管上皮(幹)細胞、ワクチン産生細胞、細胞株、遺伝子修飾細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子修飾細胞は、上記細胞に遺伝子改変、遺伝子導入あるいは遺伝子をノックアウトした細胞である。遺伝子修飾細胞の例としてはCAR−Tが挙げられるがこれに限定されない。
組織は動物のあらゆる組織を包含する。組織の例としては筋肉組織、骨組織、臓器組織(腎組織、脾組織など)、脳組織、神経組織、血管組織、皮膚組織、胎盤組織、血液組織、がん組織などが挙げられるが、これらに限定されない。
臓器は動物のあらゆる臓器を包含する。臓器の例としては胃、小腸、結腸、十二指腸、大腸、膵臓、肝臓、胆嚢、脾臓、肺、心臓、腎臓、脾臓などが挙げられるが、これらに限定されない。
再生組織は、細胞を培養することにより構築される組織である。様々な再生組織が知られており、それらの製造方法も公知である。再生組織の形状についても特に限定されず、線状、シート状などであってもよく、管状、塊状などの3次元組織であってもよい。再生組織は、3Dプリンターを用いて作製されたものであってもよい。
再生臓器は、再生組織を培養することにより構築される臓器である。様々な再生臓器が知られており、それらの製造方法も公知である。再生臓器の形状は、動物体内にある組織と同様の形状であってもよく、動物体内の組織構築を足場としてもよく、異なる形状であってもよい。再生臓器は、3Dプリンターを用いて作製されたものであってもよい。
本発明の培地を用いる細胞、組織、臓器、再生組織、再生臓器の培養は、公知の方法に従って行うことができる。
本発明の培地は、重炭酸イオンを含むものであってもよく、重炭酸イオンを含まないものであってもよい。本発明の培地は緩衝系を含むものであることが好ましい。緩衝系はいずれのものであってもよく、リン酸緩衝系、HEPES緩衝系、重炭酸緩衝系などの公知のものであってよい。
本発明の培地の成分としての糖は、細胞、組織または臓器が利用できるものであるかぎりあらゆる種類の糖であってよい。培地の糖の例としてはグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、リボース、デオキシリボースなどが挙げられるが、これらに限定されない。1の具体例において、本発明の培地はガラクトースを唯一の糖として、あるいは糖の1つとして含む。
本発明は、さらなる態様において、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養する方法であって、本発明の培地にて細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養することを含む方法を提供する。本発明の培養方法は、COインキュベーターを使用せずに実施することができる。1の具体例において、本発明の培養方法は大気条件下で実施される。そのため、本発明の培養方法は、省コスト、省スペース、省エネルギーで実施することができる。特に、細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器の大規模な培養の場合に、CO保持設備を必要としない本発明の培養方法は有利である。
本発明は、さらなる態様において、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を保存する方法であって、本発明の培地にて細胞を保存することを含む方法を提供する。本発明の方法を用いて細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を保存する場合、通常の培養温度よりも低温にて保存する。保存温度は、細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器の種類、サイズ、量、保存容器の種類などに応じて、適宜選択、変更することができる。本発明の保存方法は、COインキュベーターを使用せずに実施することができる。1の具体例において、本発明の保存方法は大気条件下で実施される。そのため、本発明の保存方法は、省コスト、省スペース、省エネルギーで実施することができる。細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を凍結保存した場合、使用時に融解しなければならず、融解による細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器の損傷が問題となる。本発明の保存方法によれば、液体培地(凍結しない)にて細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を保存できるので、融解による損傷を回避できる。そのため細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器の培養効率または生存率が上がる。そのうえ、細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養または使用するまでのタイムラグを短縮することもできる。
本発明は、さらなる態様において、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を輸送する方法であって、本発明の培地中の細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を輸送することを含む方法を提供する。本発明の輸送方法は、COインキュベーターを使用せずに実施することができる。1の具体例において、本発明の輸送方法は大気条件下で実施される。そのため、本発明の輸送方法は、省コスト、省スペース、省エネルギーで実施することができる。本発明の輸送方法によれば、培養しながら細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を輸送することもできる。そのため、細胞到着後すぐさま細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養または使用することができる。
本発明は、さらなる態様において、本発明の培地にて二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養し、および/または増殖させることを含む、細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器の製造方法を提供する。1の具体例において、本発明の製造方法は大気条件下で実施される。本発明の製造方法は、COインキュベーターを使用せずに実施することができる。そのため、本発明の製造方法は、省コスト、省スペース、省エネルギーで実施することができる。特に、細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を大規模に製造する場合に、CO保持設備を必要としない本発明の製造方法は有利である。
本発明の上記方法により製造される細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器は、あらゆる種類のものであってよい。細胞を製造する場合、間葉系組織由来幹細胞(MSC)、脂肪組織由来多系統前駆細胞(ADMPC)、がん細胞、がん組織、多能性幹細胞、多能性幹細胞由来細胞、ダイレクトリプログラミング細胞、リンパ球(T細胞)、ワクチン産生細胞、または細胞株などを製造してもよいが、これらに限定されない。T細胞はCAR−T細胞であってもよい。本発明の方法により得られた細胞を、再生医療等製品または細胞調製物として、あるいは再生医療等製品または細胞調製物の原料または中間体として用いてもよい。
本発明は、さらなる態様において、本発明の培地にて二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養し、物質を生産させることを含む、物質の製造方法を提供する。1の具体例において、本発明の上記方法は大気条件下で実施される。本発明の上記方法は、COインキュベーターを使用せずに実施することができる。そのため、本発明の上記方法は、省コスト、省スペース、省エネルギーで実施することができる。特に、物質を大規模に製造する場合に、CO保持設備を必要としない本発明の上記方法は有利である。
物質は特に限定されないが、タンパク質、ペプチド、エクソソーム、またはウイルスなどが例示される。タンパク質、ペプチドは抗体およびその一部分であってもよい。
本発明は、さらなる態様において、カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を含む、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養するための培地を調製するための組成物を提供する。培地および二酸化炭素非生理的高濃度でない条件については上で説明したとおりである。
本発明の組成物の形態は特に限定されず、粉末、顆粒、ペレット、フレークなどの固形であってもよく、ペースト、ゲルなどの半固体であってもよく、濃縮液、懸濁液、水溶液などの液状であってもよい。水等の適切な媒体にて本発明の組成物を希釈することにより本発明の培地を得ることができる。
本発明の組成物の組成は、上記の量のカルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を成分として含むこと以外は、通常の培地を作製するための組成物と同様の組成であってよい。
本発明の組成物は、本発明の培地の全成分を含んでいてもよく、一部の成分を含んでいてもよい。
本発明の組成物は、本発明の培地を作製するためのキットの形態であってもよい。該キットは、本発明の培地の全成分または一部の成分を入れた1個または複数個の容器を含んでいてもよい。該容器のうち1つまたはそれ以上がカルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を含む。通常は、該キットには取扱説明書が添付される。
本発明の組成物の成分としてのカルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物の種類は特に限定されない。これらの成分のうち好ましいものは、培地に添加することで細胞に取り込まれやすいものである。そのような成分の例としては、オロト酸、ピリミジンヌクレオシド(例えばウリジン、シチジン、デオキシシチジン、チミジン、デオキシチミジン)、ピリミジン塩基(例えばウラシル、シトシン、デオキシシトシン、チミン、デオキシチミン)などの化合物が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、本発明の組成物は、オロト酸、および/または1種類以上のピリミジンヌクレオシド、および/または1種類以上のピリミジン塩基を含む。
本発明の組成物中のオロト酸、ピリミジンヌクレオシド、ピリミジン塩基などのカルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物の量は、本発明の組成物を用いて培地を調製した場合に、培地中のこれらの各成分の濃度が約3mg/L以上、例えば約5mg/L以上、約7mg/mL以上または約10mg/L以上となるような量であってもよい。これらの成分の培地中の濃度範囲は、細胞や組織の増殖や維持に悪影響を与えない濃度範囲とすることができる。これらの成分の濃度範囲は、培地中のこれらの成分量を増減させて細胞、組織または臓器の増殖を調べることにより、決定することができる。
本発明の組成物は、重炭酸塩または重炭酸イオンを含むものであってもよく、重炭酸塩または重炭酸イオンを含まないものであってもよい。本発明の組成物は緩衝系を含むものであってもよく、緩衝系を含まないものであってもよい。緩衝系はいずれのものであってもよく、リン酸緩衝系、HEPES緩衝系、重炭酸緩衝系などの公知のものであってよい。
本発明の組成物の成分としての糖は、細胞、組織または臓器が利用できるものであるかぎりあらゆる種類の糖であってよい。培地の糖の例としてはグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、リボース、デオキシリボースなどが挙げられるが、これらに限定されない。1の具体例において、本発明の組成物はガラクトースを唯一の糖として、あるいは糖の1つとして含む。
明細書中の用語は、特に断らない限り、生物学、生化学、化学、医学、薬学などの分野において通常理解されている意味に解される。
以下に実施例を示して本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
間葉系組織由来細胞の増殖が、COインキュベーターを使用せずに本発明の培地を用いて可能であるか検討した。
<実験方法>
間葉系組織由来細胞
間葉系組織の代表例として皮下脂肪を用いた。ドナーから同意を得て入手した手術時余剰試料である吸引皮下脂肪組織を、リベラーゼにて37℃、60分処理した。PBS(ナカライテスク社製)にて3回洗浄後、残渣を除去し、5%牛胎児血清(fetal bovine serum)(GE社製 Hycloneブランド)、100ユニット/mLペニシリン(ナカライテスク社製)、及び100ユニット/mLストレプトマイシン(ナカライテスク社製)を含むDMEM(Life Technologies社製)培地にて37℃、二酸化炭素5%の条件下で細胞を継代培養した。2日ないし3日おきに培地交換し、5継代した細胞を間葉系組織由来細胞として得た。
<培養条件>
該間葉系組織由来細胞を、37℃、COインキュベーターを用いず、大気条件下で、下記組成の培地中で培養した。培地交換は3日ないし4日おきに行った。
培地(表1の組成):添加剤として5%牛胎児血清(fetal bovine serum)(GE Hyclone)、5ng/mL bFGF(ぺプロテック社製)、1xITS(insulin-transferrin-selenite, Life Technologies)、および100ユニット/mLペニシリン(ナカライテスク社製)、及び100ユニット/mLストレプトマイシン(ナカライテスク社製)を含む。
<継代培養>
継代培養における細胞数と成長速度を累積細胞倍加数(Cumulative population doublings)を算出した。結果を図1に示す。
COインキュベーターを使用せずに本発明の培地を用いて間葉系組織由来細胞を増殖させることが可能であることが確認された。
肺がん患者由来の肺がん細胞(PDC: Patient-derived Cancer cells)の増殖が、COインキュベーターを使用せずに本発明の培地を用いて可能であるか検討した。
<実験方法>
がん細胞
肺腺がん患者から同意を得て入手した手術時余剰試料である肺腺がん組織を、ハサミにて細切し、リベラーゼにて37℃、60分処理した。PBSにて3回洗浄後、フィルターにて残渣を除去し、20% KSR(Knockout Serum Replacement, Life Technologies)および5ng/mL bFGF(ぺプロテック社製)含有RPMI1640にて37℃、二酸化炭素5%の条件下で7日間培養した。7日目以降は5%牛胎児血清(fetal bovine serum)(GE社製 Hycloneブランド)、5ng/mL bFGF(ぺプロテック社製)、1xITS(insulin-transferrin-selenite, Life Technologies社製)含有SteMedia(細胞科学(CSTI)社製)に培地を変更して37℃、二酸化炭素5%の条件下で培養、2日ないし3日おきに培地交換し、増殖する細胞をがん細胞として得た。
<培養条件>
該がん細胞を、37℃、COインキュベーターを用いず、大気条件下で、下記組成の培地中で培養した。培地交換は3日ないし4日おきに行った。
培地(表1の組成):添加剤として5%牛胎児血清(fetal bovine serum)(GE社製 Hycloneブランド)、5ng/mL bFGF(ぺプロテック社製)、1xITS(insulin-transferrin-selenite, Life Technologies社製)、および100ユニット/mLペニシリン(ナカライテスク社製)、及び100ユニット/mLストレプトマイシン(ナカライテスク社製)を含む。
<継代培養>
継代培養における細胞数と成長速度を累積細胞倍加数(Cumulative population doublings)を算出した。結果を図2に示す。
COインキュベーターを使用せずに本発明の培地を用いてがん細胞を増殖させることが可能であることが確認された。
本発明は、細胞、組織等の再生医療用材料の製造、抗体、ワクチン等の医薬品の製造、ならびに医学、薬学、生物学等の研究などにおいて利用可能である。

Claims (22)

  1. カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を含む、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養するための培地。
  2. カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物が、オロト酸、および/または1種類以上のピリミジンヌクレオシド、および/または1種類以上のピリミジン塩基である、請求項1記載の培地。
  3. 重炭酸イオンを含まない請求項1または2記載の培地。
  4. 糖としてガラクトースを含む請求項1〜3のいずれか1項記載の培地。
  5. 二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である請求項1〜4のいずれか1項記載の培地。
  6. 二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞を培養する方法であって、請求項1〜5のいずれか1項記載の培地にて細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養することを含む方法。
  7. 二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である請求項6記載の方法。
  8. 二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を保存する方法であって、請求項1〜5のいずれか1項記載の培地にて細胞を保存することを含む方法。
  9. 二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である請求項8記載の方法。
  10. 二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を輸送する方法であって、請求項1〜5のいずれか1項記載の培地中の細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を輸送することを含む方法。
  11. 二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である請求項10記載の方法。
  12. 請求項1〜5のいずれか1項記載の培地にて二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養し、および/または増殖させることを含む、細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器の製造方法。
  13. 二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である請求項12記載の方法。
  14. 細胞が、間葉系組織由来の細胞である、請求項12または13記載の方法。
  15. 細胞が、脂肪組織由来多系統前駆細胞(ADMPC)、MUSE細胞(SSEA−3陽性細胞)、がん細胞、がん組織、多能性幹細胞、多能性幹細胞由来細胞、ダイレクトリプログラミング細胞、リンパ球、皮膚扁平上皮細胞、毛根細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、腸管上皮(幹)細胞、ワクチン産生細胞、細胞株、または遺伝子導入細胞である、請求項12または13記載の方法。
  16. 請求項1〜5のいずれか記載の培地にて二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養し、タンパク質、ペプチド、エクソソーム、またはウイルスを産生させることを含む、タンパク質、エクソソーム、またはウイルスの製造方法。
  17. 二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である請求項16記載の方法。
  18. カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物を含む、二酸化炭素非生理的高濃度でない条件下で細胞、組織、臓器、再生組織、または再生臓器を培養するための培地を調製するための組成物。
  19. カルバモイルリン酸シンテターゼIIの下流の産生物が、オロト酸、および/または1種類以上のピリミジンヌクレオシド、および/または1種類以上のピリミジン塩基である、請求項18記載の組成物。
  20. 重炭酸塩を含まない請求項18または19記載の組成物。
  21. 糖としてガラクトースを含む請求項18〜20のいずれか1項記載の組成物。
  22. 二酸化炭素非生理的高濃度でない条件が、大気条件である請求項18〜21のいずれか1項記載の組成物。
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