JP2020183419A - 癌治療のためのシタラビンコンジュゲート - Google Patents

癌治療のためのシタラビンコンジュゲート Download PDF

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Abstract

【課題】医学的に障害のある(medically compromised)患者に対する、シタラビンによる腫瘍疾患を処置する方法の提供。【解決手段】式:A−シタラビン(式中、Aは、アミノ酸の残基を表し、前記アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択される)を有する、シタラビンとアスパラギン酸などのアミノ酸とのコンジュゲート化合物またはその医薬的に許容できる塩の治療有効量を含む医薬組成物を、そのような処置を必要とする対象に投与することを含む、腫瘍疾患を処置する方法。【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明は、癌の処置に使用するためのシタラビンとアミノ酸とを含むコンジュゲートに関する。詳細には本発明は、医学的に障害のある(medically compromised)患者の血液癌の処置に使用するためのシタラビンとアスパラギン酸とのコンジュゲートに関する。
発明の背景
抗増殖薬
代謝抑制剤、抗腫瘍薬またはDNA共有結合剤としても知られる抗増殖薬は、本質的な代謝経路を阻害することにより作用し、一般的には悪性疾患の処置に用いられる。しかし、正常細胞への高い毒性および重度の副作用が、治療薬としてのそれらの使用を制限している。望ましくない副作用としては、骨髄中の幹細胞、腸管の上皮細胞、毛包細胞などの急速に分裂する正常細胞に及ぼす細胞障害性の作用による、貧血、嘔吐および脱毛が挙げられる。
抗増殖薬に関連する別の主要な問題は、薬物に対する腫瘍の固有のまたは獲得型の耐性である。例えばL−アスパラギナーゼによる処置後の初期寛解率は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者においては極めて高いものの、再発および関連の薬物耐性が、臨床での重要な問題となっている。研究により、アスパラギナーゼ耐性細胞ではアスパラギンシンテターゼ(AS)発現が増加することが実証されており、AS活性上昇が悪性細胞の薬物耐性による生存を可能にするという仮説が導かれた。
ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体
ヌクレオシド類似体は、核酸への取り込みに関してその生理学的相対物と競合し、急性白血病の処置において重要な地位を獲得している。これらのうち最も重要なものが、アラビノースヌクレオシドであり、これは元々、海綿クリプトテチア・クリプタから単離された特有のクラスの代謝抑制物質であるが、現在は合成されている。それらは、シトシンとアラビノシド糖の間のN−グリコシル結合に対してシス配置の2’−OH基が存在するために、生理的なデオキシリボヌクレオシドとは異なる。複数のアラビノースヌクレオシドは、有用な抗腫瘍および抗ウイルス効果を有する。このクラスのうち最も活性のある細胞障害剤が、シトシンアラビノシド(シタラビンまたはAra−C)である。シタラビンは現在、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、および骨髄異形成症候群(MDS)などの白血球細胞の癌を処置するのに用いられている。しかしシタラビンは、高毒性であり、小脳毒性および骨髄抑制などの重度の副作用を有する。それゆえシタラビン処置は、限定されており、高齢患者、および肝臓、腎臓または小脳の機能障害を有する患者では制限されることが多い。
シチジン代謝抑制剤の領域における類似体開発という一つの目的は、Ara−Cの阻害活性を保持しながら脱アミノ化に耐性がある化合物を発見することである。幾つかの臨床試験において抗白血病活性を示したが、望ましくない副作用を有した(Woodcock et al.,1980)、シクロシチジン(Ho DHW,1974)およびN−ベヘノイルAra−C(Kodama et al.,1989)を含む多数のデアミナーゼ耐性類似体が開発されている。他の代表的な化合物は、N−パルミトイルAra−C、2’−アジド−2’−デオキシAra−C、Ara−Cの5’−(コルチゾン21−ホスホリル)エステル、Ara−Cの5’−アシルエステル(例えば、5’−パルミチン酸エステル)、N−ベヘノイルAra−C、ポリ−H−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミンとのAra−Cコンジュゲート、ジヒドロ−5−アザシチジン、5−アザ−アラビノシルシトシン、5−アザ2’−デオキシシチジンおよび2’−2’−ジフルオロデオキシシチジン(Hartel et al.,1990およびHeineman et al.,1988)である。
ゲムシタミン(2,2−ジフルオロデオキシシチジン、dFdC)は、Ara−C以降に臨床試験に入った最も重要なシチジン類似体である。それは、膵臓癌、肺癌、および膀胱移行上皮癌の患者のための標準的な第一選択治療に組み込まれるようになった。
ヌクレオチド類似体は、癌以外の適応にも用いられている。例えば、フッ素化シトシン類似体であるフルシトシンは、抗真菌薬として用いられている。
アミノ酸および増殖性疾患
アスパラギンは、急速に増殖する細胞により必要とされる非必須アミノ酸である。哺乳動物細胞は、
グルタミン+アスパラギン酸塩+ATP+HO=グルタミン酸塩+アスパララギン+AMP+PPi
と表され得る反応において、アミノ基をグルタミンのアミドからアスパラギン酸塩のβ−カルボキシルへ転移するATP依存性酵素であるアスパラギンシンテターゼ(EC.6.3.5.4)を用いて、アスパラギン酸塩からアスパラギンを合成することができる。
悪性細胞は多くの場合、その代謝および増殖を支えるためにアスパラギンを含むアミノ酸をより多量に必要とする。悪性細胞は、多量のアミノ酸の必要性を満たすために、アミノ酸を環境から能動輸送する能力を発達させている。その上、特定の腫瘍では、アスパラギンシンテターゼ欠損が起こり、そのためにそれらの腫瘍は血清などの他の供給源からのアスパラギンの外部供給に依存する。この観察により、化学療法薬としての酵素L−アスパラギナーゼ(CE3.5.1.1)が開発された。L−アスパラギナーゼは、L−アスパラギンをアスパラギン酸塩およびアンモニアに加水分解し、このためL−アスパラギンを血清から欠乏させて、腫瘍の成長を阻害する。L−アスパラギナーゼは、主に急性リンパ芽球性白血病(ALL)の処置で用いられ、急性非リンパ性白血病を含む他の血液癌に対して何らかの活性を示す。
病院で用いられるL−アスパラギナーゼは、細菌供給源から精製された2種の非修飾(ネイティブ)形態および1つのPEG化化合物として利用可能である。米国特許第4,179,337号には、酵素が、約500〜約20,000ダルトンの分子量を有するPEGにカップリングされている、PEG化L−アスパラギナーゼが教示されている。
アスパラギンシンテターゼのインビボダウンレギュレーションは、腫瘍の成長を阻害するための効率的なメカニズムを提供し得る。しかし細胞は、アスパラギンシンテターゼ遺伝子の転写制御を伴う、アスパラギンシンテターゼmRNA、タンパク質、および酵素活性の協調的上昇によりアミノ酸枯渇に応答する。
代謝的アプローチは最初、L−アスパラギンおよびL−アスパラギン酸類似体の作製によりアスパラギンシンテターゼの活性を阻害するために利用された。5−カルボキサミド−4−アミノ−3−イソオキサゾリドン(Stammer et al.,1978)およびN−置換スルホンアミドおよびN’−置換スルホニルヒドラジドを含む類似体が、L−アスパラギンの硫黄類似体として調製されている(Brynes S et al.,1978a;Brynes S et al.,1978b)。米国特許第4,348,522号には、抗腫瘍活性を呈することが示されているPALA、つまりN−ホスホアセチル(phosphonacetyl)−L−アスパラギン酸の塩が教示されており、それは大腸癌および膵臓癌の併用化学療法として現在、臨床試験の最中である。
アスパラギン酸−Ara−Cは、CD4陽性細胞を標的とするためのペプチドT−Ara−Cコンジュゲートの合成のための原材料として用いられた(Manfredini et al.,2000)。
生物学的利用率の増加または部位特異性の増加などの所望の特性を付与するためにプロドラッグを使用することは、医薬品開発の技術分野における認識されたコンセプトである。例えば、抗体への薬物の直接的または間接的コンジュゲーションにより、薬物の解離を最小限にして標的部位に到達し得る安定したコンジュゲートが作製される。最大の効能が得られるように、薬物のターゲティングを、選択的薬物放出メカニズムと組み合わせることもできる。
米国特許第4,296,105号には、インビトロでドキソルビシンより高い抗腫瘍活性および低い毒性を有する、アミノ酸残基のヒドロキシ基で任意選択により置換されたアミノ酸に連結されたドキソルビシン誘導体が記載されている。
米国特許第5,962,216号には、標的細胞により分泌される因子または複数の因子により切断されるまで細胞へ進入することができない腫瘍活性化プロドラッグが教示されている。
米国特許第5,650,386号には、少なくとも1種の活性剤と、該活性剤の担体として作用する少なくとも1種の修飾された非αアミノ酸またはポリアミノ酸と、を含む組成物が教示されている。該アミノ酸修飾としては、少なくとも1種の遊離アミノ基のアシル化またはスルホン化が挙げられる。
米国特許第6,623,731号、同第6,428,780号および同第6,344,213号には、生物活性剤のための担体として修飾されたアミノ酸を含む非共有結合混合物が教示されている。
米国特許第5,106,951号には、オリゴペプチド上の2つの芳香族側鎖間に非共有結合で挿入された芳香族薬物と、癌細胞を標的とするために該オリゴペプチドに共有結合した抗体または抗体断片と、を含むコンジュゲートが開示されている。
米国特許第6,617,306号には、治療薬のインビボ送達のための、ジスルフィド結合により該治療薬と連結された担体が教示されている。米国特許第6,617,306号によれば、該担体は、ポリマーと、該ポリマーにコンジュゲートされた少なくとも1種のチオール化合物と、を含み、それによって該チオール化合物のチオール基と該治療薬のチオール基とが、ジスルフィド結合を形成する。
国際特許出願国際公開第00/33888号には、標的細胞に進入することが可能な治療薬と、オリゴペプチドと、安定化基と、任意選択によるリンカーと、を含む切断可能な抗腫瘍および抗炎症化合物が教示されている。
本発明の発明者らの一部に対する国際特許出願公開第2005/072061号、ならびに米国特許第7,989,188号および同第8,993,278号には、アミノ酸側鎖の官能基に共有結合された薬物を含む化合物が開示されており、そのような化合物は、薬物を腫瘍細胞に標的化するのに有用である。
抗腫瘍活性を有するが正常組織への細胞障害性が低い化合物を、癌患者に投与することを含む、癌を処置する方法へのアンメットニーズが依然として存在する。
発明の概要
本発明は、医学的に障害のある対象における腫瘍疾患の処置に使用するための、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択される単一アミノ酸にコンジュゲートしたシタラビンを含むプロドラッグを提供する。
本発明は一部として、急性リンパ性白血病(ALL)または急性骨髄性白血病(AML)を有する高齢患者に、本明細書の以下でAstarabine(登録商標)と称される化合物、即ち、シタラビンがアスパラギン酸の側鎖のカルボキシル基に共有結合しているシタラビンとアスパラギン酸とのコンジュゲートを投与することにより、これらの患者の生存が延長した、という予想外の発見に基づいている。
白血病またはリンパ腫を有する75歳以上の患者に投与され得るシタラビンの最高標準治療用量が、20mg/m対象表面積であることは、公知である。しかし、この年齢の患者のほとんどは、その重度の副作用により低用量のシタラビンでさえ耐容することができず、それゆえシタラビンで処置されることは決してない。AMLまたはALLを有する75歳以上の患者に投与されたプロドラッグAstarabine(登録商標)が、約2g/mまたはそれより高い用量の1日量で安全かつ耐容性が良好であったことを、ここに初めて開示する。プロドラッグAstarabine(登録商標)は、高齢患者における新たに診断された白血病および続発性白血病を減弱または根絶するのに有効であった。
さらに、Astarabine(登録商標)を、シタラビンの最高標準治療用量より有意に高い(例えば、5〜30倍高い)用量で高齢患者、即ち60歳以上の患者に投与できること、およびそのような用量のAstarabine(登録商標)が処置の際または処置後に有意な薬物関連副作用を示さなかったことを、開示する。
一態様によれば、本発明は、一般式(I):
A−シタラビン (I)
(式中、Aは、アミノ酸残基を表し、該アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択され;
シタラビンは、Aの側鎖官能基を通してAに結合する)
を有する化合物またはその医薬的に許容できる塩の治療有効量を含む医薬組成物を、そのような処置を必要とする対象に投与することを含む、腫瘍疾患を処置する方法であって、
該対象が、シタラビンによる処置を受けることができない医学的に障害のある対象である、方法を提供する。
一実施形態によれば、Aは、アスパラギン酸残基であり、該化合物は、Astarabine(登録商標)と称される式(1):
Figure 2020183419
の構造により表される。
別の実施形態によれば、Aは、グルタミン酸残基であり、該化合物は、式(2):
Figure 2020183419
の構造により表される。
幾つかの実施形態によれば、該医薬的に許容できる塩は、有機酸もしくは無機酸の塩、または酸の残基である。追加の実施形態によれば、該酸は、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸およびシュウ酸からなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。一実施形態によれば、該化合物は、Astarabine(登録商標)であり、該医薬的に許容できる塩は、酢酸塩である。別の実施形態によれば、該化合物は、Astarabine(登録商標)であり、該医薬的に許容できる塩は、塩酸塩である。
追加の実施形態によれば、該腫瘍疾患は、血液癌および非血液癌からなる群から選択される。さらなる実施形態によれば、該血液癌は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群(MDS)からなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
まださらなる実施形態によれば、該白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、および慢性リンパ芽球性白血病(CLL)からなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
なおさらなる実施形態によれば、該AMLは、新たに診断されたAML、続発性AML、および再発/難治性のAMLからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
さらなる実施形態によれば、該リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫(NHL)から選択される。
幾つかの実施形態によれば、該医学的に障害のある対象は、高齢の対象、肝機能障害を有する対象、腎機能障害を有する対象、膵機能障害を有する対象、骨髄機能障害を有する対象、小脳機能障害を有する対象、免疫障害を有する対象、シタラビンの使用を限定する任意の他の臓器機能障害を有する対象、再発または難治性の血液癌を有する対象、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
追加の実施形態によれば、該高齢の対象は、50歳以上、例えば60歳、70歳、75歳またはそれ以上の対象である。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
さらなる実施形態によれば、Astarabine(登録商標)は、シタラビン単独の最高標準治療用量より少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、または少なくとも30倍高い1日量で投与される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
まださらなる実施形態によれば、Astarabine(登録商標)は、約0.3g/m〜約10g/m対象表面積の範囲内の1日量、例えば約0.3g/m、0.5g/m、0.8g/m、1g/m、1.5g/m、2g/m、2.3g/m、2.5g/m、3g/m、3.5g/m、4g/m、または4.5g/m対象表面積、またはそれらの間にある任意の値なの1日量で投与される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
なおさらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、非経口投与される。さらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、経皮、または小胞内(intravesicularly)に投与される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。特定の実施形態によれば、該医薬組成物は、静脈内投与される。例示的実施形態によれば、該医薬組成物は、静脈内点滴により15分間〜3時間、例えば30分間〜1時間の範囲内の期間、投与される。
追加の実施形態によれば、該医薬組成物は、連続する少なくとも3日間、例えば3、4、5、6、8、10、12、もしくは14日間またはそれらの間の任意の整数日の間に1日1回投与される。さらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、連続する6日間の1日1回投与を1ヶ月あたり1または2回投与される。まださらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、3週間または少なくとも1ヶ月間にわたり2日に1回投与される。
1つの例示的な実施形態によれば、該化合物は、Astarabine(登録商標)の酢酸塩であり、該対象は、AMLまたはALLを有する少なくとも75歳の対象であり、該医薬組成物は、シタラビンの最高標準治療用量より少なくとも2倍高い1日量で投与される。
別の例示的な実施形態によれば、該化合物は、Astarabine(登録商標)の塩酸塩であり、該対象は、AMLまたはALLを有する少なくとも75歳の対象であり、該医薬組成物は、シタラビンの治療用量の最大標準より少なくとも2倍大きい日用量で投与される。
別の態様によれば、本発明は、式I:
A−シタラビン (I)
(式中、Aは、アミノ酸の残基を表し、該アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択され;
シタラビンは、Aの側鎖官能基を通してAに結合する)
の構造により表される化合物またはその医薬的に許容できる塩の治療有効量を含む医薬組成物を、そのような処置を必要とする対象に投与することを含む、腫瘍疾患を処置する方法であって、
該化合物の有害作用が、非コンジュゲート化シタラビンの有害作用と比較して低減され、そのため該対象が用量制限毒性を経験することなく、該化合物がシタラビンの最高標準治療用量より少なくとも2倍高い投与量で投与され得る、方法を提供する。
一実施形態によれば、Aは、アスパラギン酸残基であり、該化合物は、Astarabine(登録商標)と称される式(1):
Figure 2020183419
の構造により表される。
別の実施形態によれば、Aは、グルタミン酸残基であり、該化合物は、式(2):
Figure 2020183419
の構造により表される。
幾つかの実施形態によれば、該医薬的に許容できる塩は、有機酸もしくは無機酸の塩、または酸の残基である。追加の実施形態によれば、該酸は、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸およびシュウ酸からなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。特定の実施形態によれば、該化合物は、Astarabine(登録商標)であり、該医薬的に許容できる塩は、酢酸塩である。別の実施形態によれば、該化合物は、Astarabine(登録商標)であり、該医薬的に許容できる塩は、塩酸塩である。
追加の実施形態によれば、該腫瘍疾患は、血液癌および非血液癌からなる群から選択される。さらなる実施形態によれば、該血液癌は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群(MDS)からなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
まださらなる実施形態によれば、該白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、および慢性リンパ芽球性白血病(CLL)からなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
なおさらなる実施形態によれば、該AMLは、新たに診断されたAML、続発性AML、および再発した/難治性のAMLからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
さらなる実施形態によれば、該リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫(NHL)から選択される。
幾つかの実施形態によれば、該対象は、シタラビンによる処置を受けることができない医学的に障害のある対象である。さらなる実施形態によれば、該医学的に障害のある対象は、高齢の対象、肝機能障害を有する対象、腎機能障害を有する対象、膵機能障害を有する対象、骨髄機能障害を有する対象、小脳機能障害を有する対象、免疫障害を有する対象、シタラビンの使用を制限する任意の他の臓器機能障害を有する対象、再発または難治性の血液癌を有する対象、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
追加の実施形態によれば、該高齢の対象は、50歳以上、例えば60歳、70歳、75歳またはそれ以上の対象である。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
さらなる実施形態によれば、Astarabine(登録商標)は、シタラビン単独の最高標準治療用量より少なくとも2倍から少なくとも30倍高い、例えば少なくとも3、5、10、15、20、または30倍高い1日量で投与される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
まださらなる実施形態によれば、Astarabine(登録商標)は、約0.3g/m〜約10g/m対象表面積の範囲内の1日量、例えば0.3g/m、0.5g/m、0.8g/m、1g/m、1.5g/m、2g/m、2.3g/m、2.5g/m、3g/m、3.5g/m、4g/m、または4.5g/m対象表面積、またはそれらの間の任意の整数値などの1日量で投与される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
なおさらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、非経口投与される。さらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、経皮、または小胞内に投与される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。特定の実施形態によれば、該医薬組成物は、静脈内に、好ましくは点滴により投与される。
追加の実施形態によれば、該医薬組成物は、連続する少なくとも3日間、例えば3、4、5、6、8、10、12、もしくは14日間またはそれらの間の任意の整数日の間に1日1回投与される。さらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、連続する6日間の1日1回投与を1ヶ月あたり1または2回投与される。まださらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、3週間または少なくとも1ヶ月にわたり2日に1回投与される。
1つの例示的な実施形態によれば、該化合物は、Astarabine(登録商標)の酢酸塩であり、該医薬組成物は、シタラビンの最高標準治療用量より少なくとも2倍高い1日量で投与される。
別の例示的な実施形態によれば、該化合物は、Astarabine(登録商標)の塩酸塩であり、該医薬組成物は、シタラビンの最高標準治療用量より少なくとも2倍高い1日量で投与される。
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の原理に従うシタラビンによる処置を受けることができない医学的に障害のある対象における腫瘍疾患を処置する際の使用のための、式I:
A−シタラビン (I)
(式中、Aは、アミノ酸の残基を表し、該アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択され;
シタラビンは、Aの側鎖官能基を通してAに結合する)
の構造により表される化合物またはその医薬的に許容できる塩を含む医薬組成物を提供する。
まださらなる態様によれば、本発明は、式(I):
A−シタラビン (I)
(式中、Aは、アミノ酸の残基を表し、該アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択され;
シタラビンは、Aの側鎖官能基を通してAに結合する)
の構造により表される化合物またはその医薬的に許容できる塩を含む医薬組成物であって、
該化合物の有害作用が、非コンジュゲート化シタラビンの有害作用と比較して低減されており、そのため該対象が用量制限毒性を経験することなく、該化合物がシタラビンの最高標準治療用量より少なくとも2倍高い投与量で投与される、医薬組成物を提供する。
本発明のこれらおよび他の実施形態は、図面、説明および以下の特許請求の範囲と合わせれば明白となろう。
Astarabine(登録商標)の最大耐量(MTD)のインビボ測定を示す。インビボ耐容性/毒性試験を利用して、マウスにおけるAstarabine(登録商標)の単回投与(図1A)、またはマウスにおけるAstarabine(登録商標)の14日間1日1回の反復投与(図1B)のMTDを決定した。MTDを、静脈内(IV)または腹腔内(IP)投与について評価した。結果を、シタラビンのMTDと比較した。 Astarabine(登録商標)の最大耐量(MTD)のインビボ測定を示す。インビボ耐容性/毒性試験を利用して、マウスにおけるAstarabine(登録商標)の単回投与(図1A)、またはマウスにおけるAstarabine(登録商標)の14日間1日1回の反復投与(図1B)のMTDを決定した。MTDを、静脈内(IV)または腹腔内(IP)投与について評価した。結果を、シタラビンのMTDと比較した。 インビボでの移植ヌードマウスの中空糸モデルにおけるヒト白血病成長に及ぼすAstarabine(登録商標)の影響を示す。白血病モデルのマウスに、以下の処置の1つを連続する7日間1日1回投与した:6.25mg/マウス/日の用量のAstarabine(登録商標)、25mg/マウス/日の用量のAstarabine(登録商標)、1.5mg/マウス/日の用量のAra−C、または生理食塩水(対照)。インビボ白血病の成長を、測定した。図2Aは、Molt−4白血病細胞の成長を示す。図2Bは、CCRF−CEM白血病細胞の成長を示す。 インビボでの移植ヌードマウスの中空糸モデルにおけるヒト白血病成長に及ぼすAstarabine(登録商標)の影響を示す。白血病モデルのマウスに、以下の処置の1つを連続する7日間1日1回投与した:6.25mg/マウス/日の用量のAstarabine(登録商標)、25mg/マウス/日の用量のAstarabine(登録商標)、1.5mg/マウス/日の用量のAra−C、または生理食塩水(対照)。インビボ白血病の成長を、測定した。図2Aは、Molt−4白血病細胞の成長を示す。図2Bは、CCRF−CEM白血病細胞の成長を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、医学的に障害のある患者、詳細には75歳以上の高齢患者に、単一のアミノ酸に共有結合されたシタラビンのコンジュゲートを投与することを含む、腫瘍疾患を処置する方法であって、そのような患者が典型的には、重度の有害作用のために非コンジュゲート化シタラビンでは処置することができず、したがって支持療法のみが与えられている、方法を提供する。本発明は、血液癌を有すると診断されているが、シタラビンで処置することができない、医学的に障害のある患者、詳細には高齢患者を処置するための長年にわたる要望を満たしている。本発明のコンジュゲートは、非コンジュゲート化形態で投与された場合に毒性であり得る用量のシタラビンによるこれらの癌患者の処置を可能にする。
定義
本明細書で用いられる用語「医学的に障害のある」対象は、医学的に脆弱である、または医学的に障害を有する対象の部分集団を指し、そのため彼らは、重度の有害作用により非コンジュゲート化シタラビンに耐容性を示すことができない。医学的に障害のある対象としては、腎機能障害、肝機能障害、膵機能障害、骨髄機能障害、小脳機能障害、免疫障害、シタラビンの使用を限定する任意の他の臓器、組織または系の機能障害、およびそれらの組み合わせに罹患している、またはそれらを有する対象が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で用いられる用語「非コンジュゲート化シタラビン」は、遊離でありアミノ酸に共有結合していないシタラビンまたはその類似体もしくは誘導体を指す。
用語「腎機能障害」、「肝機能障害」、「膵機能障害」、「骨髄機能障害」および「小脳機能障害」は、臓器/組織機能、例えば腎臓、肝臓、膵臓、骨髄、および小脳が正常な状態に比較して低減している状態を指す。一般に臓器/組織機能障害は、臓器機能の検査項目の任意の1つまたは複数の測定値が正常値(参照値)の範囲から逸脱していることを特徴とする状態である。
シタラビンの「最高標準治療用量」および「推奨される最高用量」という用語は、本明細書では互換的に用いられ、ヒト対象への投与のために米国FDAにより認可されたシタラビンの投与量、例えば1日量を指し、その投与量は、許容できない有害作用を誘発せず、対象の年齢および身体状態に依存し、50歳以下の対象は、典型的には3g/mの対象表面積までのシタラビンの1日量で処置することができ、50〜60歳の対象は、典型的には1.5g/mまでのシタラビンの1日量で処置することができ、60〜75歳以下の対象は、典型的には0.1g/m〜0.5g/mのシタラビンの1日量で処置することができ、75歳以下の対象は、20g/mまでのシタラビンの1日量で処置することができる。しかし、75歳以上の対象のほとんどが、重度の副作用により、シタラビンで全く処置することができないことに注意すべきである。
用語「用量制限毒性」は、Common Terminology Criteria of Adverse Events Version 3.0(CTCAE)に従って定義されている。以下の事象のいずれかが、薬物処置サイクル内で観察される場合、対象への化合物投与により用量制限毒性が起こっている:連続する5日間以上のグレード4の好中球減少症(即ち、絶対好中球数(ANC)≦500細胞/mm)または発熱性好中球減少症(即ち、発熱≦38.5℃でANC≦1000細胞/mm);グレード4の血小板減少症(即ち、≦25,000細胞/mmまたは血小板移植を必要とする出血エピソード);グレード4の疲労またはECOGパフォーマンスステータスの2ポイント低下;適切な/最大の医学的介入の利用にもかかわらずグレード3以上の吐気、下痢、嘔吐、および/または筋肉痛;グレード3以上の非血液毒性(疲労を除く);該化合物による処置に関連する毒性からの回復遅延による2週間を超える再処置遅延;グレード2以上の臨床的に有意な心毒性(例えば、安静時駆出率の40%〜50%以下への低下または15%〜24%以下の内径短縮率;心筋型トロポニンT≧0.05ng/mL)。
化合物の「治療有効量」という用語は、化合物が投与される対象に有益な効果を提供するのに十分な化合物量である。化合物の有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重などの因子に応じて変動し得る。
用語「処置」、「処置する」、「処置すること」などは、疾患の進行の緩徐化、停止または逆転を包含することを意味する。これらの用語はまた、疾患が実際に除去されていなくても、そしてたとえ疾患の進行自体が緩徐化または逆転されなくても、疾患の1つまたは複数の症状を緩和、改善、減弱、除去、または低減することを包含する。対象は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
用語「薬物の残基」は、アミノ酸−薬物コンジュゲートA−Dの形成のためにアミノ酸を結合するために用いられる官能基を除く薬物を指す。同様に用語「アミノ酸の残基」は、アミノ酸−薬物コンジュゲートA−Dの形成のために薬物を結合するために用いられる官能基以外のアミノ酸を指す。
本明細書で記載の数値に関連する用語「約」は、記載の値±10%と理解すべきである。
本発明で用いられるアミノ酸は、市販される、または日常的な合成法により入手できるものである。指示がなければ、LまたはD異性体が、用いられ得る。
一態様によれば、本発明は、一般式(I):
A−シタラビン (I)
(式中、Aは、アミノ酸の残基を表し、該アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択され;
シタラビンは、Aの側鎖官能基を通してAに結合する)
を有する化合物またはその医薬的に許容できる塩の治療有効量を含む医薬組成物を、シタラビンによる処置を受けることができない医学的に障害のある対象に投与することを含む、腫瘍疾患を処置する方法を提供する。
薬物の「医薬的に許容できる塩」という用語は、IUPACの規定に従う塩を指す。医薬的に許容できる塩は、薬物に結合した塩形態の不活性成分である。本明細書で用いられる用語「医薬的に許容できる塩」は、一般式(I)、(II)の化合物、例えば化合物(1)および(2)の塩、または生存する生物に対して実質的に非毒性である一般式に包含される任意の他の塩形態を指す。典型的には医薬的に許容できる塩としては、本発明の化合物と、医薬的に許容できる無機質、塩基、酸または塩との反応により調製されるそれらの塩が挙げられる。酸の塩は、酸付加塩としても公知である(本明細書の以下参照)。医薬的に許容できる塩は、当該技術分野で公知である(Stahl and Wermuth,2011,Handbook of pharmaceutical salts,Second edition)。
本発明の幾つかの実施形態によれば、該アミノ酸は、遊離非修飾アミノ末端およびカルボキシル末端を有し得るか、または該アミノ末端およびカルボキシル末端の一方もしくは両方が修飾され得る。したがって本発明の化合物は、一般式II:
Figure 2020183419
(式中、A’は、アミノ酸の側鎖を表し、前記アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択され;
Dは、シタラビンの残基、またはその類似体もしくは誘導体を表し;
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素および低級アルキルからなる群から選択され;
Xは、カルボキシル、アミドおよびヒドラジドからなる群から選択される)
により表され得る。
好ましい実施形態によれば、R1、R2およびR3は、それぞれ水素である。
別の好ましい実施形態によれば、Xは、カルボキシル基である。
特定の実施形態によれば、R1、R2およびR3は、それぞれ水素であり、Xは、カルボキシルである。
幾つかの実施形態によれば、Xは、カルボキシアミドとして存在するアミド基である。
シタラビンの類似体としては、N−ベヘノイルAra−C、N−パルミトイルAra−C、2’−アジド−2’−デオキシAra−C、Ara−Cの5’−(コルチゾン21−ホスホリル)エステル、Ara−Cの5’−アシルエステル、N−ベヘノイルAra−C、ポリ−H(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミンでのAra−Cコンジュゲート、ジヒドロ−5−アザシチジン、5−アザ−アラビノシルシトシンおよび5−アザ2’−デオキシシチジンが挙げられるが、これらに限定されない。
幾つかの実施形態によれば、本発明の化合物の医薬的に許容できる塩は、一般式(III):
A−D・Y (III)
(式中、Aは、アミノ酸の残基であり、前記アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択され;
Dは、シタラビン、またはその類似体もしくは誘導体であり;
Yは、医薬的に許容できる有機もしくは無機酸、または酸の残基である)
により表される。
幾つかの実施形態によれば、Yは、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸およびシュウ酸からなる群から選択される医薬的に許容できる酸である。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
例示的実施形態によれば、コンジュゲートAstarabine(登録商標)の塩形態は、酢酸塩または塩酸塩である。
任意の理論または作用機序に束縛されるのを望むものではないが、本発明のアミノ酸−シタラビンコンジュゲートは、アミノ酸トランスポータを介して癌細胞に輸送され、それにより多剤耐性(MDR)機序を迂回し、細胞内でこれらのコンジュゲートが切断されてシタラビンを放出し、細胞の成長を停止させるか、または細胞を死滅させる。遊離シタラビンおよび遊離シタラビン代謝産物が、癌細胞で検出されたため、本発明のコンジュゲートは、プロドラッグとして作用する。
医薬組成物
本発明は、本発明の化合物の少なくとも1種と、医薬的に許容できる担体または希釈剤と、を含み、任意選択で1種または複数の賦形剤をさらに含む、医薬組成物を提供する。
用語「医薬的に許容できる」は、動物、より詳細にはヒトにおける使用について、連邦もしくは州政府の規制当局により認可されているか、または米国薬局方もしく他の一般に認識された薬局方に列挙されていることを意味する。
用語「担体」は、治療化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、石油、動物、植物または合成起源のものなど、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油など、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒など、水および油などの滅菌の液体であり得る。
治療化合物の静脈内投与では、水が、好ましい担体である。食塩水溶液ならびにデキストロースおよびグリセロールの水溶液もまた、用いられ得る。
特定の実施形態によれば、静脈内投与のためのAstarabine(登録商標)の製剤は、約300mOsmの浸透圧および4〜8のpHを有する等張水溶液である。したがってAstarabine(登録商標)の医薬的に許容できる担体は、約300mOsmの浸透圧および4〜8のpHを有する、緩衝食塩水溶液、緩衝デキストロース溶液、または緩衝グリセロール溶液であり得る。
Astarabine(登録商標)溶液の緩衝液は、4〜8の範囲内のイオン化pKを有する医薬的に許容できるモノイオン緩衝液系またはポリイオン緩衝液系であり得る。
例えば、ACES(N−(アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸);酢酸塩;N−(2−アセトアミド)−2−イミノ二酢酸;BES(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]−2−アミノエタンスルホン酸);ビシン(2−(ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸);ビス−トリスメタン(2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール);ビス−トリスプロパン(1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン);炭酸塩;クエン酸塩;3,3−ジメチルグルタル酸塩;DIPSO(3−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸);N−エチルモルホリン;グリセロール−2−リン酸塩;グリシン;グリシン−アミド;HEPBS(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−4−ブタンスルホン酸);HEPES(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸);HEPPS(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(3−プロパンスルホン酸));HEPPSO(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸);ヒスチジン;ヒドラジン;イミダゾール;マレイン酸塩;2−メチルイミダゾール;MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸);MOBS(4−(N−モルホリノ)−ブタンスルホン酸);MOPS(3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸;MOPSO(3−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(hydroypropanesulfonic acid);シュウ酸塩;リン酸塩;ピペラジン;PIPES(1,4−ピペラジン−ジエタンスルホン酸);POPSO(ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸));コハク酸塩;亜硫酸塩;TAPS(3−[[1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−イル]アミノ]プロパン−1−スルホン酸);TAPSO(3−[[1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−イル]アミノ]−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸);酒石酸;TES(2−[[1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−イル]アミノ]エタンスルホン酸);THAM(トリス)(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール);およびトリシン(N−(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)グリシン)などの4〜8のpKを有する様々な緩衝液が、Astarabine(登録商標)溶液のpHを調整するのに用いられ得る。
幾つかの実施形態によれば、該緩衝液は、非限定的に、ACES、BES、DIPSO、HEPBS、HEPES、HEPPS、HEPPSO、MES、MOBS、MOPS、MOPSO、PIPES、POPSO、亜硫酸塩、TAPS、TAPSO、およびTE緩衝液を含むスルホン酸誘導体緩衝液である。
追加の実施形態によれば、該緩衝液は、非限定的に、酢酸塩、N−(2−アセトアミド)−2−イミノ二酢酸、2−(ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸、炭酸塩、クエン酸塩、3,3−ジメチルグルタル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、および酒石酸緩衝液をはじめとするカルボン酸誘導体緩衝液である。
さらなる実施形態によれば、該緩衝液は、非限定的に、ビシン、グリシン、グリシン−アミド、ヒスチジン、およびトリシン緩衝液をはじめとするアミノ酸誘導体緩衝液である。
さらなる実施形態によれば、該緩衝液は、非限定的に、グリセロール−2−リン酸塩、およびリン酸塩緩衝液をはじめとするリン酸誘導体緩衝液である。
あるいは、Astarabine(登録商標)製剤のための緩衝食塩水は、例えばハンクス平衡塩溶液、アール平衡塩溶液、ゲイ平衡塩溶液、HEPES緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水、Plasma−lyte、リンゲル液、酢酸リンゲル液、乳酸リンゲル液、クエン酸生理食塩水、またはトリス緩衝生理食塩水であり得る。
Astarabine(登録商標)配合剤のための緩衝デキストロース溶液は、例えばクエン酸デキストロース溶液またはエリオットB溶液であり得る。
例示的実施形態によれば、Astarabine(登録商標)の注射用溶液は、Baxterから購入したPlasma−lyte AまたはCompound Sodium Lactateである。
該組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態をとり得る。該組成物は、トリグリセリド、微結晶セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンなどの従来の結合剤および担体と共に、坐剤として製剤化され得る。
該医薬組成物は、非限定的に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムを含む医薬賦形剤をさらに含み得る。該組成物は、所望なら、微量の糖アルコール、湿潤または乳化剤、およびpH調整剤を含有し得る。ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度の調整剤もまた、想定される。
非経口投与用の医薬組成物もまた、活性化合物の懸濁液として製剤化され得る。そのような懸濁液は、油性注射懸濁液または水性注射懸濁液として調製され得る。油性懸濁液の注射では、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルなどの合成脂肪酸エステル、トリグリセリド、またはリポソームを含む、適切な親油性溶媒またはビヒクルが、用いられ得る。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意選択で、該懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために、適切な安定化剤、または化合物の溶解度を増加させる薬剤を含有し得る。
経粘膜および経皮投与では、透過されるバリアに適した浸透剤が、製剤中で用いられ得る。例えばDMSOまたはポリエチレングリコールをはじめとするそのような浸透剤は、当該技術分野で公知である。
経口投与では、該化合物は、該活性化合物を、当該技術分野で周知の医薬的に許容できる担体および賦形剤と混合することにより、容易に製剤化され得る。そのような担体により、対象が経口摂取するために、本発明の化合物を錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することができる。経口使用のための薬理学的調製剤を、固体賦形剤を使用して作製し、場合により得られた混合物をすりつぶし、所望により適切な助剤を添加した後に、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを得ることができる。適切な賦形剤は、詳細にはラクトース、スクロース、マンニトールもしくはソルビトールを含む糖などの充填剤;例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボメチルセルロースナトリウム(sodium carbomethylcellulose)などのセルロース調製物;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容できるポリマーである。所望なら、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤が、添加され得る。
加えて、本発明の化合物の胃環境への暴露を防止することが望ましい場合には、腸溶性コーティングが有用であり得る。
経口で使用され得る医薬組成物としては、ゼラチンで構成されたプッシュフィットカプセルに加え、ゼラチンおよび可塑化剤、例えばグリセロールまたはソルビトールで構成された軟密封カプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、そして任意選択で安定化剤と混合された有効成分を含有し得る。
軟カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁され得る。加えて安定化剤が、添加され得る。
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で周知の工程により、例えば従来の混合、溶解、造粒、すりつぶし、粉砕、糖衣錠作製(dragee−making)、湿式ふるい、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥工程により、製造され得る。
投与される組成物の投与量は、処置される対象、癌のステージ、投与経路、および処方する医師の判断を含む多くの因子に依存するであろう。
治療的使用
本発明は、本明細書において上記の一般式(I)、(II)を有する化合物、例えば化合物(1)もしくは(2)、またはその医薬的に許容できる塩の治療有効量と、医薬的に許容できる担体と、を含む医薬組成物を、そのような処置を必要とする対象に投与することを含む、腫瘍疾患またはウイルス疾患を処置する方法を提供する。
腫瘍疾患は、血液癌または非血液癌から選択され得る。
血液癌としては、非限定的に骨髄性白血病、リンパ性白血病、例えば急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫およびワルデンストレームマクログロブリン血症を含む白血病、リンパ腫、骨髄腫および骨髄異形成症候群(MDS)が挙げられる。
用語「骨髄異形成症候群(MDS)」は、血球減少症、無効造血、および過形成骨髄を特徴とする不均一な群の造血系悪性腫瘍を指す。MDSは、急性骨髄性白血病(AML)への移行が症例のおよそ30〜40%で起こる、前白血病状態である。同種間幹細胞移植が提供されなければ、MDSは一般に、不治の病気と見なされる。
固形腫瘍としても知られる非血液癌としては、肉腫、癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫および黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
非血液癌としては、臓器の癌が挙げられ、該臓器の癌としては、乳癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肺癌、子宮頸癌、膵臓癌、前立腺癌、精巣癌、甲状腺癌、卵巣癌、脳癌、例えば上衣腫、神経膠腫、神経膠芽腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、松果体腫、聴神経腫、血液芽腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、神経芽腫、網膜芽腫、およびそれらの転移が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
本発明はさらに、発癌性ウイルスであるウイルス性物質により引き起こされる感染の処置のための方法を提供する。したがって本発明は、ウイルスの癌遺伝子により引き起こされるウイルス感染の処置のための方法を提供する。そのようなウイルスの非限定的例としては、ヒト乳頭腫ウイルス、B型肝炎、C型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、ヒトTリンパ球好性ウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、およびメルケル細胞ポリオーマウイルスが挙げられる。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
ウイルス疾患は、非限定的にヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、および水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)を含む他のウイルスにより引き起こされ得る。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。一実施形態によれば、該ウイルス性疾患は、ヘルペスウイルス脳炎である。
本発明の方法は、免疫疾患または障害を有する対象における腫瘍疾患を処置するのに有用であり得る。免疫疾患または障害としては、関節リウマチ(RA)、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群、I型糖尿病、免疫性血小板減少性紫斑病、多発性硬化症、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫、結核、およびワルデンストレームマクログロブリン血症が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の方法は、肝機能障害、腎機能障害、膵機能障害、骨髄機能障害、および小脳機能障害などの臓器機能障害を有する対象における腫瘍疾患を処置するのに有用であり得る。
用語「肝機能障害」は、肝機能が正常な状態と比較して低減した状態を指す。一般に肝機能障害は、肝機能の検査項目(例えば、血中AST、ALT、ALP、TTT、ZTT、総ビリルビン、総タンパク質、アルブミン、乳酸デヒドロゲナーゼ、コリンエステラーゼレベルなど)の任意の1つまたは複数の測定値が、正常値(参照値)の範囲から逸脱していることを特徴とする状態である。肝機能障害は、例えば劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変、肝臓癌、自己免疫性肝炎、薬物アレルギー性肝障害、および原発性胆汁性肝硬変などの疾患の特徴である。
腎機能障害は、例えば急性腎不全、糸球体腎炎、慢性腎不全、高窒素血症、尿毒症、免疫性腎疾患、急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、バージャー病、慢性腎炎/タンパク尿症候群、尿細管間質性疾患、腎毒性障害、腎梗塞、アテローム塞栓性腎疾患、腎皮質壊死症、悪性腎血管硬化症、腎静脈塞栓症、尿細管性アシドーシス、腎性糖尿、腎性尿崩症、バーター症候群、リドル症候群、多発性嚢胞腎、間質性腎炎、急性溶血性尿毒症症候群、髄質嚢胞腎、髄質海綿腎、遺伝性腎炎、およびネイル・パテラ症候群などの疾患の特徴である。
膵機能障害は、例えば糖尿病、高血糖、耐糖能異常、およびインスリン抵抗性などの疾患の特徴である。
骨髄機能障害は、例えば骨髄炎、造血異常、イオン欠乏性貧血(ion deficiency anemia)、悪性貧血、巨大赤芽球増多症、溶血性貧血、および再生不良性貧血などの疾患の特徴である。
小脳機能障害は、例えば筋緊張低下、神経原性発声発語障害、測定障害、拮抗運動反復不全、反射異常、および企図振戦などの運動および神経行動障害の特徴である。
本発明の医薬組成物は、非経口および経口投与経路からなる群から選択される任意の適切な投与経路により投与され得る。幾つかの実施形態によれば、該投与経路は、非経口投与を介する。様々な実施形態において、該投与経路は、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脳内、脳室内、髄腔内または皮内投与経路である。例えば、該医薬組成物は、例えば静脈内(i.v.)または腹腔内(i.p.)注射または点滴により、全身に投与され得る。特定の実施形態によれば、該医薬組成物は、静脈内点滴により30分〜2時間、例えば1時間投与される。本発明の組成物は、局所投与してもよく、追加の活性剤および/または賦形剤をさらに含んでもよい。
本明細書に記載された化合物の毒性および治療有効性は、細胞培養または実験動物における標準の薬学的手順により、例えば対象化合物のIC50(細胞成長の50%阻害を提供する濃度)およびMTD(被験動物の最大耐量)を決定することにより、決定され得る。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒト対象における使用のための投与量範囲を配合する際に用いられ得る。厳密な処方、投与経路、および投与量は、個々の医師により患者の状態を考慮して選択され得る(例えば、Fingl,et al.,1975,の“The Pharmacological Basis of Therapeutics”,Ch.1 pp.l参照)。
該化合物、例えばAstarabine(登録商標)は、約0.3g/m〜約10g/m対象表面積の範囲内の1日量で投与され得る。幾つかの実施形態によれば、該化合物、例えばAstarabine(登録商標)は、約0.5g/m〜約5g/m対象表面積の範囲内の1日量で投与され得る。幾つかの実施形態によれば、該化合物は、約0.5g/m〜約4.5g/m対象表面積の範囲内の1日量で投与され得る。他の実施形態によれば、該化合物、例えばAstarabine(登録商標)は、約0.3、0.5、0.8、1、1.5、2、2.3、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10g/m対象表面積の1日量で投与される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
幾つかの実施形態によれば、Astarabine(登録商標)は、0.3g/m〜4.5g/m対象表面積の範囲内の1日量で静脈内点滴により投与される。
幾つかの実施形態によれば、該医薬組成物は、少なくとも月1回投与される。追加の実施形態によれば、該医薬組成物は、少なくとも月2回投与される。さらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、少なくとも週1回投与される。さらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、少なくとも週2回投与される。さらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、少なくとも1週間にわたり1日1回投与される。さらなる実施形態によれば、該医薬組成物は、少なくとも1週間、または対象が治癒するまで少なくとも1日1回投与される。
幾つかの実施形態によれば、該医薬組成物は、連続する少なくとも2、3、4、5、6、8、10、12、または少なくとも14日間の1日1回を1ヶ月に1回投与される。別法として、該医薬組成物は、少なくとも2、3、4、5、6、もしくは12日間の1日1回を1ヶ月に1回投与され、またはさらに別法として該医薬組成物は、患者が治癒するまで毎日もしくは週2回投与される。
幾つかの実施形態において、該医薬組成物が、癌の再発を予防するために用いられる場合、該医薬組成物は、臨床医の指導に従って長期間にわたり定期的に投与され得る。
幾つかの例において、多量の初回負荷量を投与し、続いて処置期間に周期的な(例えば、週1回の)維持量を投与することが有利であり得る。該化合物はまた、徐放性送達系、ポンプ、および他の公知の持続的点滴の送達系により送達され得る。投与レジメンは、薬物動態に基づいて特定の化合物の所望の循環レベルを提供するように変化させることができる。したがって、治療薬の所望の循環レベルが維持されるように、用量が計算される。
典型的には該有効用量は、該化合物の活性および有効性、ならびに対象の状態に加えて、処置される対象の体重または表面積により決定される。用量および投与レジメンはまた、特定の対象における該化合物の投与に伴う任意の有害副作用の存在、性質および程度によっても決定される。
以下の実施例は、単に例示で本質的に非限定的であると見なされなければならない。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの修正、交換および変更を施し得ることは、本発明が関係する当業者に明白であろう。
実施例1
異なる細胞株に及ぼすAstarabine(登録商標)の影響
異なる細胞株に及ぼすAstarabine(登録商標)の影響を評価した。手短に述べると、様々な細胞株を、ATCCまたはECACCから得た。血液細胞を、10〜20%FBSおよび1%グルタミンを含有するRPMI培地で生育させた。固形腫瘍細胞は、10〜20%FBSおよび1%グルタミンを含有するDMEM培地で生育させた。細胞を、96ウェルプレートに50,000細胞/mlでウェルあたり0.2mlを播種した。被験物質を、食塩水またはPBSで希釈して、最終濃度0.1nM〜10μM、容量20μlで添加した。試験は、3回の反復実験で実施し、PBSを対照として用いた。プレートを37℃、5%COで72時間インキュベートした。暴露期間の終了時に、MTT試薬[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]を用いたMTTアッセイを、実施した。MTTを、5mg/ml濃度、0.02ml容量で各ウェルに添加した。プレートを37℃で3時間インキュベートした。プレートを、3500rpmで5分間遠心分離して、上清を吸引した。MTT結晶を含有するペレットをそれぞれ、DMSO 0.2mlに溶解した。吸光度を、波長570nmのELISAリーダーを用いて決定した。
結果を、表1に概説する。
Figure 2020183419
1 − Ogbomo et al.,Neoplasia 10(12):1402−1410,2008;
2 − Qin et al.,Clin.Cancer Res.13(14):4225−4232,2007;
3 − Manfredini et al.,Bioorg.Med.Chem.8: 539−547, 2000;
4 − Breistol et al.,Cancer Res.59:2944−2949,1999;
5 − Groveet al.,Cancer Res.55:3008−3011,1995;
6 − Ruiz Van Haperen,Cancer Res.54:4138−4143,1994
結果から、アッセイされた血液癌細胞株のほとんどがAstarabine(登録商標)に感受性であったが、固形腫瘍細胞株では感受性がより低かったことが実証された。
ヒト白血病細胞株におけるAstarabine(登録商標)代謝産物アッセイは、遊離シタラビン代謝産物を検出しており、Astarabine(登録商標)がシタラビンのプロドラッグであることが示された。
実施例2
マウスにおけるAstarabine(登録商標)の最大耐量および有効性
Astarabine(登録商標)の最大耐量(MTD)を、腹腔内(IP)または静脈内(IV)に1回または複数回注射として注射した。
単回投与IP:10週齢IRCマウスに、1428〜8271mg/kg(それぞれ50〜300mg/マウス)の範囲内のAstarabine(登録商標)を単回、IP注射した。臨床評価には、運動の観察、飼料および飲水の摂取が含まれた。全群のマウスが、正常な行動を示した。7日後に、マウスを血液学的検査および生化学的検査用に試料採取し、死体解剖に供した。
高用量のAstarabine(登録商標)(8271mg/kg)を注射したマウスから得られた血液試料は、回復の7日後に正常な結果を示した。全てのマウスにおいて、肉眼的所見を認めず、全組織が正常であることが示された。IP経路により投与された8271mg/kg濃度のAstarabine(登録商標)は、Astarabine(登録商標)単回投与IP急性毒性のMTDであると考えられた。
反復投与IP:Astarabine(登録商標)をIRCマウスに156〜781mg/kg/日(それぞれ5〜25mg/マウス/日)の漸増用量で7日間IP投与した。
全てのマウスを、薬物投与の期間および回復期間に毎日検査した。臨床評価には、運動の観察、飼料および飲水の摂取が含まれた。全群のマウスが、投与期間および回復期間に正常な行動を示した。実験終了時に、血液学的検査および生化学的検査の血液テストは、正常であることを示した。肉眼での剖検により、異常な所見は示されなかった。
5467mg/kgの累積用量となる781mg/kg/日濃度のAstarabine(登録商標)の7日間IP投与は、マウスにおいてMTD(最大耐量)であると考えられた。
単回投与IV:IRCマウスに、1000〜8000mg/kgの範囲内の用量のAstarabine(登録商標)を1回、IV注射した。マウスを14日間評価した。結果から、8000mg/kg用量のAstarabine(登録商標)は、雄性および雌性の両方のICRマウスにより耐容されることが示された。以下のパラメータ:臨床兆候、体重、飼料摂取および血液分析は、この用量、即ち8000mg/kgで雄性および雌性の両方のマウスで正常であった。この用量レベルで、薬物依存性の死亡は認められなかった。それゆえ、8000mg/kgがマウスにおける単回IV投与でのAstarabine(登録商標)のMTDであると結論づけられる。
反復投与IV:IRCマウスにAstarabine(登録商標)を400mg/kg/日〜1200mg/kg/日の範囲内の投与量で14日間毎日、IP注射した。マウスにおけるこの14日間静脈内反復投与試験の結果に基づき、Astarabine(登録商標)のIV最大耐量が、400mg/kg/日の連続する14日間の投与であると結論づけられた。この群での総投与用量は、5600mg/kgであった。臨床観察、神経行動学的観察、運動活性の観察、体重、飼料摂取、血液分析および尿分析などの測定されたパラメータの全てが、非処置群と比較して正常範囲内であった。したがって400mg/kg/日の濃度のAstarabine(登録商標)は、マウスにおけるNOAEL(無毒性量)であると考えられた。マウスにおける単回投与のMTDを決定するインビボ耐容性/毒性試験を、図1Aに示し、マウスにおける反復投与のMTDを決定するインビボ耐容性/毒性試験を、図1Bに示す。
次に、インビボでのAstarabine(登録商標)の有効性を、ヌードマウスに移植したヒト白血病(Molt−4およびCCRF−CEM細胞)中空糸モデルで試験した。Astarabine(登録商標)を、6.25mg/マウス/日および25mg/マウス/日の用量で連続する7日間1日1回腹腔内(IP)に注射し、シタラビンを1.5mg/マウス/日の用量で注射した。白血病細胞の成長を、本明細書の上記の実施例1に記載された通り、MTTアッセイを利用して測定した。
結果から、6.25mg/マウス/日および25mg/マウス/日の用量のAstarabine(登録商標)、または1.5mg/マウス/日の用量のシタラビンが、インビボ中空糸Molt−4白血病モデルにおいて、Molt−4細胞の成長をそれぞれ76.9%、82.8%および81.1%阻害することが示された。同様に、6.25mg/マウス/日および25mg/マウス/日の用量のAstarabine(登録商標)、または1.5mg/マウス/日の用量のシタラビンは、インビボCCRF−CEM白血病モデルにおいて、CCRF−CEM細胞の成長をそれぞれ71.9%、72.0%および73.3%阻害した。したがってこれらの結果から、CCRM−CEMおよびMolt−4ヒト白血病細胞に対するAstarabine(登録商標)の治療有効性が示される。Astarabine(登録商標)の有効性は、シタラビンと類似であった。図2Aは、Molt−4白血病モデルにおける応答を示す。図2Bは、CCRF−CEM白血病モデルにおける応答を示す。
結果から、Astarabine(登録商標)が、抗癌活性を維持しながら、薬物耐容性を改善し、動物における毒性を、シタラビンについて報告された毒性と比較して10〜20倍、低減することが示される。したがってAstarabine(登録商標)は、様々な白血病の処置のための、シタラビンのるより安全で非毒性の代替物質としては作用し得る。
実施例3
Astarabineの処方および投与
薬物Astarabine(登録商標)を、アンプルあたり1gのガラスアンプル中の滅菌凍結乾燥粉末として供給した。この薬物を、注射用滅菌水10mlに溶解して、最終濃度100mg/mlのAstarabine(登録商標)を得た。水に完全に溶解した後、該薬物を注射溶液/点滴でさらに希釈した。投与された用量を、患者の年齢および医学的状態に応じてg/mで計算した。
A.薬物の投与量0.5g/m
患者の送達投与量を、以下の式に従って計算した:
薬物投与量(g/m)×患者の体表面積(BSA)(m)=患者に投与された投与量(グラム(g))
計算例:0.5g/m×1.72m=0.86g(860mg)
したがって100mg/ml Astarabine(登録商標)溶液からの8.6ml(860mg)の容量を、注射用滅菌緩衝生理食塩水、例えば乳酸リンゲル液273mOsm/L(pH6.5)500mlに添加した。Astarabine(登録商標)配合剤を、点滴により1時間にわたり患者に投与した。
B.薬物の投与量4.5g/m
計算例:4.5g/m×1.65m=7.425g
100mg/ml Astarabine(登録商標)溶液からの74.25ml(7.425g)の容量を、注射用滅菌緩衝生理食塩水、例えばPlasma−lyte−A、294mOsm/L(pH7.4)500mlに添加して、点滴により1時間にわたり患者に投与した。
実施例4
高齢患者におけるAstarabine(登録商標)の有効性
AMLおよびALL患者におけるAstarabine(登録商標)の性能および安全性を評価するために、臨床試験を実施した。
試験計画
第I/IIa相非盲検非対照単一施設試験に、処置を行う医師の判断により、再発性もしくは難治性急性白血病の18歳以上の患者、または集中治療に不適であるそれらの患者を登録した。この試験は、Rambam IRBにより認可された(認可番号0384−11)。
患者を、それぞれ患者3名を含む4種のAstarabine(登録商標)漸増用量コホートに登録した。処置物質を、1時間の点滴として連続する6日間1日1回投与した。
各点滴のAstarabine(登録商標)用量
− 年齢≦50歳:0.5g/m、1.5g/m、3g/m、4.5g/m
− 年齢>50歳:0.3g/m、0.8g/m、1.5g/m、2.3g/m
結果
患者10名のアウトカムを、表2に表す。患者9名はAMLを有し、そのうち患者5名は、難治性/再発したAMLを有し、患者4名は集中治療に不適である新たに診断された続発性AMLを有した。患者1名は、新たに診断されたALLを有した。年齢中央値は、80歳であった。
10ヶ月の期間の終了時点で:
患者4名が生存し、そのうち2名は処置後7および9ヶ月目に、持続的な完全寛解(CR)状態にあった。
患者4名は、疾患進行により死亡し、1名は処置後7日目に突然死したが、処置と無関係な事象であると推定された。好中球減少性発熱以外の有意な副作用は、治療の間または治療後に記録されなかった。
Figure 2020183419
結果から、シタラビンのプロドラッグであるAstarabine(登録商標)が、80歳以上の患者であっても、安全で耐容性が非常に良好であることが示唆される。注目すべきこととして、Astarabine(登録商標)投与は、急性白血病を有する患者10名のうち3名で寛解をもたらしており、この化合物は、新たに白血病と診断された患者において特に有効であった。
本発明が、本明細書において上記で詳細に図示および記載されたものに限定されないことは、当業者に認識されよう。むしろ本発明の範囲は、本明細書で上記の様々な特色の組み合わせおよび部分的組み合わせならびに変更および修正の両方を含む。それゆえ本発明は、詳細に記載された実施形態に限定されないと解釈されなければならず、本発明の範囲および概念は、以下の特許請求の範囲を参照することでより容易に理解されよう。

Claims (1)

  1. 一般式(I):
    A−シタラビン (I)
    (式中、Aは、アミノ酸の残基を表し、前記アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択される)
    を有する化合物またはその医薬的に許容できる塩の治療有効量を含む医薬組成物を、そのような処置を必要とする対象に投与することを含む、腫瘍疾患を処置する方法であって、
    前記対象が、シタラビンによる処置を受けることができない医学的に障害のある対象であり、前記医薬組成物が、医薬的に許容できる担体をさらに含む、方法。
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