JP2020179525A - 銅害防止膜、銅害防止膜付き銅部材の製造方法および銅害防止方法 - Google Patents

銅害防止膜、銅害防止膜付き銅部材の製造方法および銅害防止方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020179525A
JP2020179525A JP2019082196A JP2019082196A JP2020179525A JP 2020179525 A JP2020179525 A JP 2020179525A JP 2019082196 A JP2019082196 A JP 2019082196A JP 2019082196 A JP2019082196 A JP 2019082196A JP 2020179525 A JP2020179525 A JP 2020179525A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
copper
plating
resin
coating
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019082196A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6733971B1 (ja
Inventor
正博 水島
Masahiro Mizushima
正博 水島
博幸 本多
Hiroyuki Honda
博幸 本多
駿介 小澤
Shunsuke Ozawa
駿介 小澤
和彦 河本
Kazuhiko Kawamoto
和彦 河本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimizu Co Ltd
Original Assignee
Shimizu Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shimizu Co Ltd filed Critical Shimizu Co Ltd
Priority to JP2019082196A priority Critical patent/JP6733971B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6733971B1 publication Critical patent/JP6733971B1/ja
Publication of JP2020179525A publication Critical patent/JP2020179525A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Abstract

【課題】 銅部材を被覆する樹脂塗膜に銅イオンが拡散して生じる塗膜の劣化や膜破壊を防止するとともに、どのような樹脂塗膜にも適用できる銅部材用塗膜、塗膜付き銅部材の製造方法および銅害防止方法を提供する。【解決手段】 銅部材に形成される銅部材用塗膜であって、該銅部材の表面を被覆するめっき皮膜層と、該めっき皮膜層を被覆する樹脂層とからなることを特徴とする銅部材用塗膜である。銅部材と樹脂層との間にめっき皮膜層を設けることで、銅部材から樹脂層への銅イオンの拡散を抑制して、銅害を防止することができる。【選択図】 なし

Description

本発明は、銅部材用塗膜、塗膜付き銅部材の製造方法および銅害防止方法に関する。
銅は、その高い導電性および熱伝導性により、電気自動車用のモータ、インバータ用の銅コイル、銅バスバーなどの電気部品に使用され、また熱交換器や冷凍機などにも使用されている。
電気部品においては絶縁のため、熱交換器等においては腐食防止などのために、露出が必要な箇所を除き、銅表面が絶縁膜で被覆されるが、この絶縁膜は銅害により、酸化等を受け劣化することが知られている。
特に、電気自動車用のモータやインバータ用の銅コイル、銅バスバー等などの電気部品においては、高い絶縁性を有することを担保するために耐熱試験をクリアすることが必要であるが、耐熱試験において、銅イオンが絶縁膜に拡散し、絶縁膜を構成する樹脂を劣化させて、クラックを生じさせるため、絶縁性が低下するという問題がある。また、電気機器の小型化、高出力化の流れの中で、高電流、高電圧で使用されるため、発熱や放電等が生じやすく、これと前記銅害とが相俟って、絶縁膜の破壊が起きやすいという問題がある。
銅害を回避するために、従来から絶縁膜中に銅害防止剤や酸化防止剤を配合することが行われており、たとえばポリアミド樹脂に銅化合物を添加した組成物と、プロピレン重合体に耐熱安定剤と銅害防止剤を配合した組成物と変性ポリオレフィンとの三者を溶融混合したポリアミド樹脂組成物(特許文献1)がある。
また、ポリプロピレン系樹脂と銅不活性化剤として分子量が400以上のヒドラジン系化合物とを有する電線保護材の成形に用いられる樹脂組成物(特許文献2)、導体の被覆層中の遮水層に、銅やその他の金属イオンをキレート作用により安定化し酸化劣化を抑制する2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジドなどを配合した樹脂組成物から形成されている絶縁電線(特許文献3)などがある。
特開平2−208359号公報 特開2015−162929号公報 特開2018−73608号公報
しかしながら、前記の銅害防止剤は、いずれも有機化合物であり、銅イオンとキレートを形成させて銅害を抑制するというものであって、塗膜に混合して用いた場合には、塗膜表面からの揮散や分解(特に熱分解)などにより、長期間の効果を得ることができないという問題がある。また、特許文献1、2記載の発明では、被覆樹脂が特定のものに限定されており、汎用性がないという問題がある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、銅部材の表面にめっき皮膜層を設けた場合には、銅イオンの拡散がめっき皮膜層によって阻止され、樹脂層を劣化させないことを見出し、本発明を完成した。
本発明は、銅からなる表層部分を有する銅部材の前記表層部分に設けられる塗膜であって、
前記表層部分の表面を被覆するめっき皮膜層と、
該めっき皮膜層を被覆する樹脂層と、を含むことを特徴とする銅部材用塗膜である。
また、本発明は、前記銅部材が通電部品であり、前記樹脂層が電気絶縁性を有することを特徴とすることを特徴とする。
また、本発明は、前記めっき皮膜層が非シアン系めっき皮膜層であり、前記樹脂層が電着塗料で形成された電気絶縁性を有する層であることを特徴とする。
また、本発明は、前記めっき皮膜層が亜鉛、コバルト、スズおよびニッケルから選ばれる1種もしくは2種以上の金属または前記金属と銅との合金からなることを特徴とする。
さらに、本発明は、銅からなる表層部分を有する銅部材の前記表層部分の表面を覆うめっき皮膜層を形成するめっき工程と、
該めっき皮膜層を樹脂層で被覆する被覆工程と、を含むことを特徴とする塗膜付き銅部材の製造方法である。
さらに、本発明は、銅からなる表層部分を有する銅部材の前記表層部分の表面と樹脂層との間に、前記表面を覆うめっき皮膜層を形成したことを特徴とする銅害防止方法である。
本発明の銅部材用塗膜は、これまで銅部材の表面に施されていた絶縁塗膜や防食塗膜などの塗膜が受けていた銅害を、塗膜と銅部材との間にめっき皮膜層を設けることにより防止するものであるので、絶縁塗膜や防食塗膜の組成を変更する必要がなく、どのような絶縁塗膜、防食塗膜にも適用でき、汎用性が高いという効果を奏する。
また、本発明によれば、銅部材の表層部分を被覆するめっき皮膜層と、該めっき皮膜層を被覆する樹脂層からなる銅部材用塗膜は、銅部材からの加熱や長期間の使用による銅イオンの拡散を、めっき皮膜層によって阻止するので、長期間にわたり塗膜の劣化が抑制される。
また、本発明によれば、銅部材が通電部品であり、めっき皮膜層を被覆する樹脂層が電気絶縁性を有する場合、電気絶縁性を確認するための、耐熱試験においても銅イオンの樹脂層への拡散を抑制するので、樹脂層の劣化によるクラックを生じることがなく、長期間安定した絶縁性能を維持することができる。
さらに、樹脂層の劣化によるクラックを生じることがないので、塗膜の製造において歩留まりがよいという効果も奏する。
さらに、本発明は、めっき皮膜層が非シアン系めっき皮膜層であり、樹脂層が電着塗料で形成された電気絶縁性を有する層であるので、非シアン系めっき皮膜層の銅部材に対する高い密着性と絶縁性とが相俟って、長期間安定した塗膜とすることができる。
さらに、本発明の銅部材用塗膜で被覆された銅部材は、塗膜の劣化がないので、長期間安定した電気絶縁性および防食性を維持できるという効果を奏する。
本発明の銅部材用塗膜は、銅部材の表層部分に形成されためっき皮膜層と、該めっき皮膜層を被覆する樹脂層とを含む二層構造の塗膜である。
本発明において、銅部材としては、銅からなる表層部分を有している部材であればよく、特に限定されない。また、本発明の銅部材は、銅部材用塗膜で覆われる表層部分が銅で形成されているものであればよく、全体が銅のみで構成されたものであってもよい。
銅部材としては、たとえば、被覆電線、銅バスバー、情報関連機器、FA(ファクトリオートメーション)機器、OA(オフィスオートメーション)機器などに用いられるモータ関連部品、具体的にはプリンタ、ディスク駆動装置、ファクシミリ装置、複写機などに使用されている小形モータ、自動車用電装品に用いられるモータ関連部品、具体的にはモータやインバータ用の銅コイル(丸線コイル、角線コイル、ジェネレータまたはオルタネータのコア、回転子、固定子などの電気部材、さらには、また放熱板、マグネットワイヤ、蛍光灯の安定器などがあげられる。
めっき皮膜層を構成する金属としては、特に限定されず、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)などの金属、またはこれらの金属を2種以上組み合わせた合金、あるいは前記の金属もしくは合金のいずれかと銅との合金があげられる。
本発明においてめっき皮膜層として、銅の合金を用いる場合には、銅の含有量が高いとめっき皮膜層に起因する銅害が発生するおそれがあるので、合金中の銅含有量が80重量%以下であることが好ましい。
めっき皮膜層を構成する具体的な金属としては、たとえば、亜鉛、コバルト、スズ、ニッケルのいずれか、またはスズ−コバルト、銅−スズ、銅−亜鉛、スズ−亜鉛、銅−亜鉛−スズの合金などがあげられる。
本発明においては、銅部材が通電部品であって帯磁が望ましくないときは、めっき皮膜層は、前記めっき金属のうち、ニッケル以外またはニッケルを含まない合金であるのが好ましい。
めっき皮膜層は、その厚さが0.1〜10μmであればよく、0.5〜5μmが好ましく、とりわけ0.5〜3μmが好ましい。めっき皮膜層の厚さが、0.1μm以下であれば、銅害の防止効果を十分に得ることができず、10μm以上の場合にはめっき応力により塗膜密着性が低下する。
本発明のめっき皮膜層は、既知のめっき方法によって形成されたものであればよくその方法を問わない。既知のめっき方法としては、置換めっき、溶融めっき、電気めっき、無電解めっきなどで形成されたものでもよい。さらには、電気めっきの場合、バレルめっき、ラックめっき、パルスめっきなどのいずれの方法で形成されたものであってもよい。
めっき皮膜層が亜鉛からなる場合には、溶融めっきのほか、塩化浴、酸性アンモン浴、硫酸浴などの酸性亜鉛浴、シアン浴、ジンケート浴などのアルカリ性亜鉛浴が利用でき、めっき皮膜層がコバルトからなる場合には、ピロリン酸浴が使用できる。めっき皮膜層がスズからなる場合には、硫酸浴、フェノールスルホン酸浴、ホウフッ化浴などの酸性スズめっき浴、ピロリン酸浴、グルコン酸浴などの中性スズめっき浴が利用できる。
まためっき皮膜層がニッケルからなる場合には、ワット浴、スルファミン酸浴、ウッド浴、黒色浴などの既知のめっき浴が使用できる。
上記めっき浴に使用される成分としては、金属源として、金属亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、スルホン酸亜鉛などの亜鉛化合物、塩化コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルトなどのコバルト化合物、硫酸第一スズ、酸化第一スズ、塩化第一スズ、ピロリン酸第一スズ、スズ酸ナトリウムなどのスズ化合物、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、スルファミン酸ニッケルなどから適宜選択することができる。これらの金属は、無機酸、有機酸などとの塩であってもよく、酸化物であってもよい。
これらの金属のめっき液中の濃度は、通常この分野において採用される濃度範囲となるよう調整すればよいが、その一例をあげると、めっき浴中の濃度として1〜400g/L、好ましくは20〜300g/Lとなるよう用いる。
さらに、めっき皮膜層が合金からなる場合には、前記濃度の範囲内で、金属源を適宜組み合わせればよいが、たとえば合金めっきの好ましい例をあげると、スズ−亜鉛合金の場合には、めっき浴1L中の濃度が、スズ(NaSnO・3HOとして)18〜22g、亜鉛(ZnSO・7HOとして)2〜6gである。
また、スズ−コバルト合金の場合には、めっき浴1L中の濃度が、スズ(SnCl・2HOとして)5〜9g、コバルト(CoCl・6HOとして)2〜6gである。
さらに、スズ−銅合金の場合には、めっき浴1L中の濃度が、スズ(Snとして)1〜5g、銅(CuSO・5HOとして)4〜8gである。
さらに、銅−亜鉛合金の場合には、めっき浴1L中の濃度が、銅(CuSO・5HOとして)3〜7g、亜鉛(ZnSO・5HOとして)1〜5gである。
また、銅−亜鉛−スズ合金の場合には、めっき浴1L中の濃度が、銅(CuSO・5HOとして)3〜7g、亜鉛(ZnSO・7HOとして)1〜5g、スズ(NaSnO・3HOとして)3〜7gである。
これらの合金めっき浴には、ピロリン酸カリウムまたはロッシェル塩をめっき浴1L中の濃度として220〜330g、120〜180gとなるよう添加することが好ましい。
さらに、金属成分以外に、めっきに必要な成分として、錯化剤、導電度塩、アノード溶解促進剤、pH調整剤、界面活性剤、めっき浴安定剤等を用いることができ、具体的にはたとえば、シアン化アルカリ金属、ピロリン酸塩、クエン酸塩、EDTA、アンモニウム塩、アミノカルボン酸塩、硫酸、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、酢酸、乳酸、クエン酸などのカルボン酸もしくはその塩、リン酸塩、ホウ酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリコール、チオシアン酸ナトリウム、クレゾールスルホン酸、β-ナフトール、ジヒドロキシジフェニルスルホン、メトキシベンズアルデヒド、ポリアルキレンオキサイド、POEPOP共重合体、ペプトン、ホルムアルデヒド、PEG、芳香族アルデヒド、複素環アルデヒド、モノエタノールアミン、イミダゾール・エピハロヒドリン反応生成物、チオカルバジド、ポリアミンスルホン、PVA、アルキル化ポリアミン、ゼラチン、ロッシェル塩、エチレンジアミン、ジメチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアミン誘導体などを選択して、めっき浴に配合することができる。
また、無電解めっきの場合には、還元剤、安定剤等を存在させることができ、かかる成分として、次亜リン酸、亜リン酸、ホルムアルデヒド、ジメチルアミノポラン、ホウ水素化ナトリウム、ヒドラジン、鉛化合物、ビスマス化合物、イオウ化合物などがあげられる。
本発明において、めっき浴としては、市販のめっき浴を使用することができ、かかる市販のめっき浴としては、たとえば、銅−スズ合金めっき(商品名:FC−X、株式会社シミズ製)、銅−亜鉛合金めっき(商品名;ルナゴールド、株式会社シミズ製)、銅−亜鉛−スズ合金めっき(商品名;ロイヤルホワイト、株式会社シミズ製)などがあげられる。
めっき条件は、前記既知のめっき方法において採用される条件を採用することができるが、めっき電流密度としてはたとえば0.1〜10A/dm、好ましくは0.3〜5A/dmであり、とりわけ0.5〜2A/dmが好ましい。
めっき浴温度は、20〜60℃であればよく、好ましくは30〜50℃である。
本発明において、樹脂層としては、めっき皮膜層が銅イオンの樹脂層への拡散を阻止して、樹脂層への銅害を防止するので、銅害防止剤を用いる従来の塗膜のように、樹脂層を構成する樹脂との相溶性や銅害防止剤と樹脂との組み合わせを考慮する必要がなく、これまで銅部材の被覆に用いられてきた塗膜のすべてを本発明の樹脂層として好適に使用でき、特に限定されない。
樹脂層を構成する樹脂材料として、具体的には、たとえばポリアミドイミド樹脂,アクリルメラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂およびフォルマール樹脂等を主成分とする樹脂材料があげられる。
このうち、本発明の銅部材が通電部品である場合には、樹脂層は電気絶縁性を有する絶縁膜であるのが好ましく、絶縁膜としては、ポリアミドイミド樹脂、アクリルメラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂およびフォルマール樹脂等を主成分とするものがあげられる。
本発明において、好ましい樹脂層としては、エレコートIE、エレコートHR、エレコートAMG、エレコートPI(いずれも商品名、株式会社シミズ製)などの電着塗料により形成される樹脂層のほか、電気絶縁性のある塗料(スプレー塗装など)であればよく、塗布用、含浸用(含浸ワニスなど)、ワニスなどがあげられる。特に絶縁性のよい原料を用いるほかは一般塗料と本質的には同じ塗料であれば、天然樹脂・油脂系のほか、油溶性フェノール系、ポリアミド、エポキシ、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーンなどの合成樹脂を有機溶剤に溶かしたものなど、電気絶縁膜として広く用いられている樹脂により形成される樹脂層があげられる。
本発明の樹脂層は、銅部材の用途に応じて厚さを調整すればよく、特に制限されないが、その厚さが5〜500μmであればよく、20〜200μmが好ましい。
また、銅部材が通電部品であり、樹脂層が電着塗料で形成される層の場合には、その厚さが5〜100μmであればよく、20〜50μmが好ましい。
前記めっき皮膜層を被覆する樹脂層は、どのような塗装方法で形成されたものでもよく、たとえば、電着塗装、浸漬塗装、吹付塗装、静電塗装、粉体塗装など、種々の方法で形成されるものがあげられる。
また、絶縁膜を形成するための塗料としては、溶媒型塗料であってもよく、粉体塗料であってもよく、熱硬化型塗料であっても、紫外線硬化型塗料であってもよく、電着塗料であってもよいが、均一な樹脂層厚さが容易に得られることや、樹脂層の層厚制御が容易であるなどの理由で、電着塗料が好ましい。
電着塗料としては、アニオン電着塗料、カチオン電着塗料のいずれも使用することができる。
電着塗料としては、酸性基を含有する親水性樹脂または塩基性基を含有する親水性樹脂を含むものが好ましく、かかる樹脂としてはたとえば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースエステル系樹脂などに酸性基または塩基性基を導入した樹脂があげられる。
このうち、アクリル樹脂、エポキシ樹脂に酸性基または塩基性基を含有した樹脂が電着塗料として使用しやすいので好ましく、酸性基または塩基性基を有するアクリル共重合体、エポキシアミンアダクト樹脂が好ましい。
前記酸性基または塩基性基を有するアクリル共重合体としては、酸性基または塩基性基を有する単量体を他の重合性単量体と共重合したものがあげられる。
酸性基を有するアクリル共重合体は、たとえば、カルボキシル基含有単量体(a)、ヒドロキシル基含有単量体(b)、その他の単官能性単量体(c)を共重合して得ることができる。
(a)としては公知のものが使用でき、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの、分子内にカルボキシル基および重合性二重結合を有する化合物があげられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。カルボキシル基含有単量体は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
(b)としては公知のものが使用でき、たとえば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ基アルキル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルなどがあげられる。
前記カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルは、カプロラクトンに(メタ)アクリル酸が付加されたものであり、市販品が使用できる。カプロラクトンに(メタ)アクリル酸が付加された市販品としては、たとえば、プラクセルFM1、プラクセルFM2、プラクセルFM3、プラクセルFA1、プラクセルFA2、プラクセルFA3(登録商標、株式会社ダイセル製)などがあげられる。
ヒドロキシ基含有単量体は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。これらの内で、(メタ)アクリル酸エステル2−ヒドロキシエチルが好ましい。ヒドロキシ基含有単量体は非イオン性であるが共重合体に親水性を付与することができる。本発明において(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの両方を言うものとする。
(c)としては特に限定はなく使用できるが、たとえば、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、環状アルキル(メタ)アクリル酸エステル、フッ素化アルキル(メタ)アクリル酸エステルのほか、酢酸ビニル、N−フェニルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミドなどがあげられる。
前記炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどがあげられる。
前記環状アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジルなどのアラルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボニル、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレートなどがあげられる。
前記フッ素化アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸2−(パーフロロオクチル)エチル、メタクリル酸トリフロロメチルなどがあげられる。
(c)は、1種または2種以上を併用することができる。
さらに、塩基性基を有するアクリル共重合体としては、たとえば(メタ)アクリル酸のアミノ誘導体(d)、前記ヒドロキシル基含有単量体(b)、および前記その他の単官能性単量体(c)を共重合したものがあげられる。
(d)としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドなどがあげられる。
ヒドロキシル基含有単量体(b)、およびその他の単官能性単量体(c)としては、前記したものがあげられる。
アクリル共重合体における単量体の配合量については、上記の単量体(a)、(b)、(c)または(d)、(b)、(c)の組み合わせを任意の比率で行うことができ、各単量体の配合量としては、特に限定されないが、たとえば(a)または(d)を5〜30重量%、(b)を5〜30重量%、および(c)を40〜90重量%含むものが好ましい。
共重合体の重合条件としては通常のアクリル重合の条件が好ましく適用できる。この場合には、公知の水溶性有機溶剤中で重合を行ってもよく、たとえば、全体の40〜80重量%の水溶性有機溶剤が用いられる。
重合して得られる酸性基または塩基性基を含有するアクリル共重合体の重量平均分子量Mwは、好ましくは1,000〜40,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が1,000以上では、水中への分散性が良好であり、電着塗料自体の沈降が生じにくい。40,000以下であると、ゆず肌等の塗装の不良現象が発生せず均一な外観を得ることができる。
アクリル共重合体の重量平均分子量Mwはゲルパーミエーション(GPC)法で測定でき、たとえば、次のようにして測定できる。GPC装置(商品名:HLC−8220GPC、東ソー社製)において、温度40℃に設定したカラムを用い、試料溶液100mlを注入して測定する。試料溶液としては、アクリル共重合体(乾燥品)の0.25%テトラヒドロフラン溶液を一晩放置して溶解したものを用いる。分子量校正曲線は標準ポリスチレン(単分散ポリスチレン)を用いて作成する。
また、エポキシアミンアダクト樹脂としては、エポキシ樹脂のエポキシ基を1級および2級アミンで30〜100%変性した誘導体が好ましく使用できる。反応には全体の40〜80重量%の水性有機溶剤に溶解させたものを用いることができる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂などがあげられる。
これらのエポキシ樹脂は、市販のものを好適に使用することができ、かかる市販のものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるJER828、JER834、JER1001、JER1004、JER1007、JER1009(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製)、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂であるJER152、JER154(いずれも商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂であるエピコート604(商品名、三菱ケミカル株式会社製)、ダイマー酸型エポキシ樹脂であるJER872(商品名、三菱ケミカル株式会社製)などを用いることができるが、これらに限定されない。
エポキシ樹脂のエポキシ基を変性させる1級アミンとしては、炭素数1〜4のモノアルカノールアミン、炭素数1〜4のモノアルキルアミンがあげられる。炭素数1〜4のモノアルカノールアミンとしてはモノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノイソプロパ\~ノールアミンなどがあげられ、炭素数1〜4のモノアルキルアミンとしてはジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミンなどがあげられる。
また、2級アミンとしては、炭素数1〜4のジアルカノールアミン、炭素数1〜4のモノアルカノールアミン、炭素数1〜4のジアルキルアミンがあげられる。炭素数1〜4のジアルカノールアミンとしてはジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどがあげられる。また炭素数1〜4のモノアルカノールアミンとしてはメチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミンなどがあげられる。炭素数1〜4のジアルキルアミンとしてはジエチルアミン、ジn−ブチルアミンなどがあげられる。上記の1級アミンおよび2級アミンは例示されたものに限定されない。上記のアルカノールアミンは付加物の親水性を向上するので好適に用いられる。
1級および2級アミンはエポキシ基に反応して付加する。配合比率はエポキシ基1当量に1級または2級アミンのHが0.5〜1.2当量を用いるのが好ましい。反応は室温〜50℃で行うのが好ましい。このようにしてアミノ基が付加したエポキシアミンアダクト樹脂が得られる。
また、上記の電着塗料用樹脂組成物の絶縁特性および塗膜の一般的な性質を発現するために、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのメラミン樹脂、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどを三量体化し、メチルエチルケトオキシム、ε−カプロラクタム、フェノール、ジケトンなどでブロックしたブロック化イソシアネート、ポリイミド樹脂などを上記樹脂と混合してもよい。これらの樹脂は酸性基を含有する親水性樹脂または塩基性基を含有する親水性樹脂の水酸基、カルボキシル基などの官能基と反応・架橋して、樹脂の性能を強化することができる。
上記のポリイミド樹脂としては、下記芳香族テトラカルボン酸二無水物(e)、芳香族ジアミン(f)を適当な有機溶剤中で等モル反応させたのち、脱水閉環反応させイミド化を完結させた溶剤可溶性イミド樹脂が使用できる。
(e)としては、3,4,3’,4’−ベンゾサルホンテトラカルボン酸ジ無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルテトラカルボン酸ジ無水物、ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルジ無水物、2,2−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジ無水物などがあげられる。
(f)としては、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)−ベンゼン、2,2’−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどがあげられる。
また、N,N’−m−キシレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−m−キシレンビスナジイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスアリルナジイミドなどの熱架橋性イミド化合物も使用できる。
これらの架橋樹脂はアクリル共重合体、エポキシアミンアダクト樹脂のいずれにも適用できるが、アクリル共重合体はメラミン樹脂と、エポキシアミンアダクト樹脂はポリイミド樹脂と用いられると樹脂の特性が発揮できるので特に好ましい。これらのメラミン樹脂やポリイミド樹脂の配合量は樹脂合計量に対して好ましくは15〜60重量%であり、より好ましくは20〜50重量%である。
かかる電着塗料は市販のものを好適に使用することができ、たとえば、エレコートIE、エレコートAMG、エレコートPI(いずれも商品名、株式会社シミズ製)などの電着塗料のほか、電気絶縁性のある塗料、塗布用(スプレー塗装など),含浸用(含浸ワニスなど)などの塗料があげられる。
また、電着塗料以外の塗料であっても市販のものを好適に使用することができ、市販品としては、たとえば、電気絶縁性のある塗料、塗布用(スプレー塗装など)、含浸用(含浸ワニスなど)がある。特に絶縁性のよい原料を用いるほかは一般塗料と本質的には同じ。天然樹脂・油脂系のほか、油溶性フェノール系、ポリアミド・エポキシ,ポリウレタン、ポリエステル、シリコーンなどの合成樹脂を有機溶剤に溶かしたものが広く用いられている。
本発明において、銅部材用塗膜は、銅部材の表面にめっき皮膜層を形成したのちに、樹脂層で当該めっき皮膜層を被覆すればよいが、めっき皮膜層が非シアン系めっき皮膜層である場合には、めっき皮膜層が酸化されやすいため、めっき工程終了後、水洗して、めっき皮膜層の表面が乾燥することがないように電着塗装することが好ましい。
本発明の塗膜付き銅部材の製造方法を、以下に具体的に説明する。ここで、銅部材は、全体が銅のみからなる部材として説明するが、表層部分が銅からなり、他の部分が銅以外の金属材料(銅合金を含む)で構成されている銅部材であっても同様である。
まず、銅部材の表面に金属の脱脂に常用されるアルカリ金属リン酸塩水溶液を噴霧するか、前記水溶液に銅部材を浸漬して、弱アルカリ脱脂を行う。
この脱脂は、20〜50℃程度の温度下に行われ、1〜10分間程度で終了する。
ついで、銅部材を水洗したのち、酸洗処理を行う。酸洗処理は、金属の酸洗に常用される硫酸、硝酸、リン酸などの水溶液に銅部材を浸漬するなど、酸水溶液と銅成形体とを接触させて行う。酸洗処理の温度は20〜30℃程度で、15〜60秒間程度で終了する。
ついで、銅部材を水洗した後、めっき工程を行う。
めっき工程は、めっき浴槽に銅部材を浸漬して、めっき浴およびめっき方法に即した条件下でめっき処理を行い、めっき処理後の銅部材は純水で洗浄する。
純水で洗浄したのち、めっき皮膜層が形成された銅部材は乾燥してもよいが、めっき皮膜層が非シアン系めっき皮膜層の場合には、めっき皮膜層が酸化されやすいので、めっき皮膜層が乾燥しないように、皮膜表面に水分が残留した湿潤状態を維持して後段の電着塗装を行うことが望ましい。
具体的には、めっき皮膜表面に酸化被膜が形成され、銅害防止効果および密着性が低下することを防ぐために、めっき後に水洗工程を挟み、電着工程に移行するまでの時間が5分間以内であることが好ましい。とりわけ好ましくは1分以内に処理することであり、めっき皮膜表面の活性化状態を保つことができ、塗膜密着性においてより効果的である。
電着塗装は、めっき皮膜層を樹脂層で被覆する被覆工程の一例であり、公知の方法に従い、たとえば、水性電着塗料を満たした通電槽中に、めっき皮膜層付きの銅部材を完全にまたは部分的に浸漬して陽極(カチオン型)、陽極(アニオン型)とし、通電することにより実施できる。
電着塗装条件も特に制限されず、銅部材の形状、大きさ、電着塗料の種類、通電槽の大きさおよび形状、得られる銅部材の用途などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は、浴温度10〜50℃程度、印加電圧10〜450V程度、電圧印加時間1〜10分間程度、水性電着塗料の液温10〜45℃で実施する。
ついで、水洗し、乾燥したのち、電着塗膜の焼き付けを行う。焼き付けは、予備乾燥と硬化加熱とを含む。予備乾燥後に硬化加熱が行われる。予備乾燥は、60〜140℃程度の加熱下に行われ、3〜30分間程度で終了する。硬化加熱は、150〜220℃程度の加熱下に行われ、10〜60分間程度で終了する。このようにして、樹脂層が得られる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例で使用した材料および方法>
試験片;縦7cm×横5cm×厚さ0.3mmの銅板を、10重量%アクチベータ強アルカリ脱脂液に、50℃で1分間浸漬して脱脂し、水洗したのち、5重量%硫酸水溶液に常温で30秒間浸漬して酸洗し、水洗したものを用いた。
安全扉(爆発ベント)付恒温器(型式:SPHH−102、エスペック株式会社社製)中に、各実施例で得られた銅部材用塗膜を有する試験片を静置し、240℃で所定時間維持して、塗膜の状態を目視で確認するとともに、絶縁破壊電圧変化を、耐電圧試験器(MODEL 8526、鶴賀電機株式会社製)で測定した。
実施例1〜16
試験片を、表1または表2に示す組成を有する浴1〜浴8のめっき浴に浸漬し、表3に示すめっき条件でめっきを施して、めっき皮膜層で被覆されためっき試験片を製造した。
このめっき試験片を、めっき皮膜層が乾燥することがないように、各工程を5分以内に連続的に純水洗浄したのち、カチオン系ポリイミド電着塗料エレコートPI(商品名、株式会社シミズ製)を用いて、180Vで2分間電着塗装したのち純水洗浄し、110℃で15分間予備乾燥し、210℃で30分間硬化加熱することにより、銅部材用塗膜を有する試験片を得た。
比較例1
実施例1で用いたものと同じ試験片に、カチオン系ポリイミド電着塗料エレコートPI(商品名、株式会社シミズ製)を用いて、180Vで2分間電着塗装したのち純水洗浄し、110℃で15分間予備乾燥し、210℃で30分間焼き付けることにより、めっき皮膜層を有しない樹脂層のみの塗膜を有する試験片を得た。
比較例2
N−(2H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)サリチルアミド(CAS No:36411−52−6、商品名アデカスタブCDA−1、株式会社ADEKA製)を酸化防止剤として樹脂層中に3重量%添加したものを用いる以外は、比較例1と同様に処理して試験片を得た。
比較例3
3,3’−チオビスプロピオン酸ジトリデシル(CAS No:10595−72−9、商品名アデカスタブAO−503 株式会社ADEKA製)を酸化防止剤として樹脂層中に3重量%添加したものを用いる以外は、比較例1と同様に処理して試験片を得た。
比較例4および5
表3に示すめっき条件で、めっき膜厚を変えること以外は、実施例15,16と同様に処理して試験片を得た。
表1、2中、A〜Pは以下の化合物を表す。また、表1、2中の数値は、めっき浴1L(リットル)中の濃度(g/L)を示す。
A:SnCl2・2HO(塩化第一スズ)
B:Sn(ピロリン酸第一スズ)
C:NaSnO・3HO(スズ酸ナトリウム)
D:CoCl・6HO(塩化コバルト)
E:CuSO・5HO(硫酸銅)
F:ZnSO・7HO(硫酸亜鉛)
G:K(ピロリン酸カリウム)
H:KNaC・4HO(ロッシェル塩)
I:KSnO・3HO(スズ酸カリウム)
J:ZnO(酸化亜鉛)
K:NiCl2・6HO(塩化ニッケル)
L:NiSO・6HO(硫酸ニッケル)
M:ホウ酸
N:KOH(水酸化カリウム)
O:NaOH(水酸化ナトリウム)
P:CHCOOK(酢酸カリウム)
実施例1〜実施例16および比較例1〜5で得られた試験片について、240℃における耐熱試験を行って塗膜の状態を確認するとともに、絶縁破壊電圧変化を測定して、絶縁性を評価した。結果は表4に示すとおりである。
表4から明らかなように、実施例の銅部材用塗膜は、240℃で250時間経過後も、銅イオンの拡散によるクラックは発生せず、高い耐熱性と絶縁性とを維持していた。比較例1〜3の塗膜は、実施例の塗膜にくらべて、短時間で絶縁性の低下がみられ、150時間経過後にはクラックが発生し、絶縁破壊が生じた。比較例4は、クラックは発生しないものの、絶縁性は実用が困難な程度にまで低下し、比較例5は、200時間経過後にはクラックが発生し、絶縁破壊が生じた。
上記において、10℃2倍則で計算(アレニウスの式)すると、240℃で160時間の加熱は、180℃で1万時間の加熱に相当するので、本発明の銅部材用塗膜の顕著な効果が明らかである。
本発明は、銅からなる表層部分を有する銅部材の前記表層部分に設けられる銅害防止膜であって、
前記表層部分の表面を被覆する厚さ0.1〜10μmのめっき皮膜層と、
該めっき皮膜層を被覆する電着塗料からなる樹脂層と、を含み、
前記めっき皮膜層が亜鉛、コバルトおよびスズから選ばれる1種もしくは2種以上の金属または前記金属と銅との合金からなることを特徴とする銅害防止膜である。
さらに、本発明は、銅からなる表層部分を有する銅部材の前記表層部分の表面を覆う厚さ0.1〜10μmのめっき皮膜層であって、亜鉛、コバルトおよびスズから選ばれる1種もしくは2種以上の金属または前記金属と銅との合金からなるめっき皮膜層を形成するめっき工程と、
該めっき皮膜層を電着塗料からなる樹脂層で被覆する被覆工程と、を含むことを特徴とする銅害防止膜付き銅部材の製造方法である。
さらに、本発明は、銅からなる表層部分を有する銅部材の前記表層部分の表面と電着塗料からなる樹脂層との間に、前記表面を覆う厚さ0.1〜10μmのめっき皮膜層であって、亜鉛、コバルトおよびスズから選ばれる1種もしくは2種以上の金属または前記金属と銅との合金からなるめっき皮膜層を形成したことを特徴とする銅害防止方法である。
実施例1〜14
試験片を、表1または表2に示す組成を有する浴1〜浴のめっき浴に浸漬し、表3に示すめっき条件でめっきを施して、めっき皮膜層で被覆されためっき試験片を製造した。
実施例1〜実施例14および比較例1〜5で得られた試験片について、240℃における耐熱試験を行って塗膜の状態を確認するとともに、絶縁破壊電圧変化を測定して、絶縁性を評価した。結果は表4に示すとおりである。

Claims (6)

  1. 銅からなる表層部分を有する銅部材の前記表層部分に設けられる塗膜であって、
    前記表層部分の表面を被覆するめっき皮膜層と、
    該めっき皮膜層を被覆する樹脂層と、を含むことを特徴とする銅部材用塗膜。
  2. 前記銅部材が通電部品であり、前記樹脂層が電気絶縁性を有することを特徴とする請求項1に記載の銅部材用塗膜。
  3. 前記めっき皮膜層が非シアン系めっき皮膜層であり、前記樹脂層が電着塗料で形成された電気絶縁性を有する層であることを特徴とする請求項1または2に記載の銅部材用塗膜。
  4. 前記めっき皮膜層が亜鉛、コバルト、スズおよびニッケルから選ばれる1種もしくは2種以上の金属または前記金属と銅との合金からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅部材用塗膜。
  5. 銅からなる表層部分を有する銅部材の前記表層部分の表面を覆うめっき皮膜層を形成するめっき工程と、
    該めっき皮膜層を樹脂層で被覆する被覆工程と、を含むことを特徴とする塗膜付き銅部材の製造方法。
  6. 銅からなる表層部分を有する銅部材の前記表層部分の表面と樹脂層との間に、前記表面を覆うめっき皮膜層を形成したことを特徴とする銅害防止方法。
JP2019082196A 2019-04-23 2019-04-23 銅害防止膜、銅害防止膜付き銅部材の製造方法および銅害防止方法 Active JP6733971B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019082196A JP6733971B1 (ja) 2019-04-23 2019-04-23 銅害防止膜、銅害防止膜付き銅部材の製造方法および銅害防止方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019082196A JP6733971B1 (ja) 2019-04-23 2019-04-23 銅害防止膜、銅害防止膜付き銅部材の製造方法および銅害防止方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6733971B1 JP6733971B1 (ja) 2020-08-05
JP2020179525A true JP2020179525A (ja) 2020-11-05

Family

ID=71892462

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019082196A Active JP6733971B1 (ja) 2019-04-23 2019-04-23 銅害防止膜、銅害防止膜付き銅部材の製造方法および銅害防止方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6733971B1 (ja)

Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0353935A (ja) * 1989-07-24 1991-03-07 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ポリイミド前駆体への銅拡散防止法
JP2006289959A (ja) * 2005-03-14 2006-10-26 Nippon Steel Chem Co Ltd 銅張り積層板
JP2008050635A (ja) * 2006-08-23 2008-03-06 National Institute Of Advanced Industrial & Technology Cu−Ni−有機電着薄膜積層構造体及びその形成方法
JP2008111169A (ja) * 2006-10-31 2008-05-15 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd 表面処理銅箔、極薄プライマ樹脂層付表面処理銅箔及びその表面処理銅箔の製造方法並びに極薄プライマ樹脂層付表面処理銅箔の製造方法
JP2008202108A (ja) * 2007-02-21 2008-09-04 National Institute Of Advanced Industrial & Technology Cu−Ni−有機電着薄膜積層構造体及びその形成方法
WO2009157456A1 (ja) * 2008-06-24 2009-12-30 古河電気工業株式会社 電気電子部品用複合材料およびそれを用いた電気電子部品
JP2012004221A (ja) * 2010-06-15 2012-01-05 Furukawa Electric Co Ltd:The 表面処理粗化銅箔及び銅張積層基板
JP2013099869A (ja) * 2011-11-07 2013-05-23 Nippon Parkerizing Co Ltd 樹脂フィルム付金属製外装材及びその製造方法
WO2016038923A1 (ja) * 2014-09-09 2016-03-17 古河電気工業株式会社 プリント配線板用銅箔及び銅張積層板
JPWO2016038923A1 (ja) * 2014-09-09 2017-04-27 古河電気工業株式会社 プリント配線板用銅箔及び銅張積層板

Patent Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0353935A (ja) * 1989-07-24 1991-03-07 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ポリイミド前駆体への銅拡散防止法
JP2006289959A (ja) * 2005-03-14 2006-10-26 Nippon Steel Chem Co Ltd 銅張り積層板
JP2008050635A (ja) * 2006-08-23 2008-03-06 National Institute Of Advanced Industrial & Technology Cu−Ni−有機電着薄膜積層構造体及びその形成方法
JP2008111169A (ja) * 2006-10-31 2008-05-15 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd 表面処理銅箔、極薄プライマ樹脂層付表面処理銅箔及びその表面処理銅箔の製造方法並びに極薄プライマ樹脂層付表面処理銅箔の製造方法
JP2008202108A (ja) * 2007-02-21 2008-09-04 National Institute Of Advanced Industrial & Technology Cu−Ni−有機電着薄膜積層構造体及びその形成方法
WO2009157456A1 (ja) * 2008-06-24 2009-12-30 古河電気工業株式会社 電気電子部品用複合材料およびそれを用いた電気電子部品
JP2012004221A (ja) * 2010-06-15 2012-01-05 Furukawa Electric Co Ltd:The 表面処理粗化銅箔及び銅張積層基板
JP2013099869A (ja) * 2011-11-07 2013-05-23 Nippon Parkerizing Co Ltd 樹脂フィルム付金属製外装材及びその製造方法
WO2016038923A1 (ja) * 2014-09-09 2016-03-17 古河電気工業株式会社 プリント配線板用銅箔及び銅張積層板
JPWO2016038923A1 (ja) * 2014-09-09 2017-04-27 古河電気工業株式会社 プリント配線板用銅箔及び銅張積層板

Also Published As

Publication number Publication date
JP6733971B1 (ja) 2020-08-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN100488766C (zh) 贴附树脂的金属箔、粘合金属的层压板、使用它们的印刷电路板及其制造方法
TWI330058B (ja)
TWI262041B (en) Formation method of metal layer on resin layer, printed wiring board, and production method thereof
JP5513109B2 (ja) 電着塗料組成物及び電着方法
CN104812944B (zh) 附载体铜箔
US4889602A (en) Electroplating bath and method for forming zinc-nickel alloy coating
US20090029186A1 (en) Surface-treated copper foil, manufacturing method of the surface-treated copper foil, and surface-treated copper foil coated with very thin primer resin layer
JP5296493B2 (ja) 絶縁部材
JP4172704B2 (ja) 表面処理銅箔およびそれを使用した基板
CA2752651A1 (en) Plastic articles, optionally with partial metal coating
CN1265686C (zh) 软性印刷电路板
JP5464838B2 (ja) 絶縁部材の製造方法
US4019877A (en) Method for coating of polyimide by electrodeposition
JP2012036314A (ja) 電着塗料用樹脂組成物、水性電着塗料、塗装方法および塗装物
JP4594615B2 (ja) 絶縁電線及び絶縁コイル
CN104822524B (zh) 附载体铜箔
CN101528007A (zh) 带有粘着辅助剂的金属箔、印刷线路板及其制造方法
JP6733971B1 (ja) 銅害防止膜、銅害防止膜付き銅部材の製造方法および銅害防止方法
JP5259041B2 (ja) 樹脂組成物および水性電着塗料
JP5606212B2 (ja) 着色した電着塗料用樹脂組成物、水性電着塗料、塗装方法および塗装物
WO2013150991A1 (ja) 絶縁電線及びその製造方法
JP4594672B2 (ja) 錫−亜鉛合金電気めっき方法
JP2013234257A (ja) 電着塗料組成物および電着方法、ならびに絶縁部材
JP5399685B2 (ja) リード線付き電子部品およびリード線の絶縁被覆方法
JP6439055B2 (ja) アミン変性エポキシ樹脂及びカチオン電着塗料組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190423

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200117

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200128

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200327

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200630

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200706

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6733971

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250