JP2020177156A - 物体像再生方法 - Google Patents

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昌士 岡本
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Abstract

【課題】顕微鏡用対物レンズ等の拡大レンズと観察物体との間に、1/4波長版等の屈折光学素子を挿入すると、それにより収差が発生するが、その収差の影響を排除できる、ディジタルホログラフィイメージング装置における物体像再生方法を提供する。【解決手段】拡大レンズから出力される拡大物体光束と、光源から発する光による参照光束とを重畳せしめることによって、撮像素子の撮像面に形成される干渉像を撮像素子によって撮像して干渉像データを取得し、取得した干渉像データから物体像を再生することを、データ取得時の光の伝播方向とは逆方向の回折光学的光伝播シミュレーションを、拡大レンズに前置した屈折光学素子を超えて、さらにその前段まで行うことにより、その屈折光学素子が無かった場合の物体像を再生する【選択図】 図2

Description

本発明は、例えばディジタルホログラフィ顕微鏡のような、観察対象の物体を拡大するための拡大レンズを有するディジタルホログラフィイメージング装置における物体像再生方法に関する。
ここで、ディジタルホログラフィイメージングとは、元々の光学的ホログラフィにおいては、写真乾板にホログラム干渉縞を記録し、それに光を当てて照明することにより立体像を再構成していたものを、写真乾板の代わりに、撮像素子を用いて撮像することによって、ディジタルデータとしてホログラム干渉縞を取得し、それに光を当てた場合に生ずるであろう光学現象を、コンピュータを用いてシミュレーションを行うことによって立体像を再構成する技術である。
歴史を含め、ディジタルホログラフィイメージングの方法に関しては、WO2008/123408号公報に説明がある。
シミュレーションの内容は、濃度型回折格子、すなわち光透過率が平面上の位置に依存して変化するフィルタであるホログラム、を透過した参照光、すなわち平面上の位置に依存して振幅変調を受けた参照光が、波として空間中を伝播して実像または虚像を形成する光学現象であり、これは、伝播距離条件によってフレネル回折、あるいはフラウンホーファー回折と呼ばれる回折現象であり、キルヒホッフ・ホンゲンスの回折積分理論と呼ばれるものに、可能な近似を適用して計算を行う。
なお、計算は、光電界の正弦波振動を exp(iωt) ( i は虚数単位、 ω は角周波数、 t は時刻)の形式で表す、複素表示の変数を定義して行う(関数 exp(iωt) 自体は共通であるから計算時は省略する)。
一般論として、結像レンズの光入射側に屈折光学素子を挿入すると、収差が発生して結像性能が劣化するため、そのような余計な屈折光学素子の挿入は、できる限り避けたいところであるが、何らかの不可避の事情によって、挿入せざるを得ない場合がある。
拡大レンズを有するディジタルホログラフィイメージング装置においても、物体と拡大レンズとの間に、止むを得ず、例えば波長板(1/2波長板,1/4波長板など)や偏光板,保護や隔離のためのカバーガラスなどの、平板状の、あるいは球面等の曲面の表面を有する屈折光学素子を挿入した場合、この屈折光学素子によって発生した収差を含んで干渉像データが記録されてしまうため、そのまま物体像再生を行うと、結像の尖鋭度が劣化した像が生成される。
特に拡大レンズによる拡大率(倍率)が高い場合は、拡大レンズに取り込まれる、物体から発した結像光束の拡がり角が大きいことにより、大きな収差が発生して劣化の程度が著しくなり易く、そのため、そのような余計な屈折光学素子を挿入しなかった場合に得られたであろう物体像再生方法の実現が望まれる。
このことの実現のために、前記屈折光学素子を使用することを前提として収差補正を行った拡大レンズの設計・製作を行うことにより、その収差を除去することが、原理的・技術的には可能である。
しかし、そのような特別に設計した拡大レンズを製作すること自体が高コスト化の要因となるし、屈折光学素子が挿入されるときと挿入されないときがあったり、挿入される屈折光学素子の厚さや表面形状が変更されたりする場合は、それぞれの状況に対応した、複数種類の拡大レンズを製作する必要があり、さらに高コスト化する問題がある。
このような問題の解決に関連するものとして、例えば、米国特許7649160号公報には、ディジタルホログラフィイメージングの物体像再生の計算処理において、ディジタル波面演算を使用して、フーリエ平面でフィルタリングすることによって波面修正を行い、収差を補正する技術が記載されている。
また、特表2002−526815号公報には、干渉縞撮像データに基づくホログラム再生シミュレーションにより、位相コントラスト像を取得するもので、拡大または縮小光学系の収差を補正するために、位相マスク関数を乗算する技術が記載されている。
ところが、いま述べた従来技術では、単純なフィルタリングや位相マスク関数乗算を行うものでしかないため、都合の悪い情報を除去して、再生像の見栄えを良くする効果はあるが、前記した屈折光学素子が挿入されなかったとした場合の、正しい物体像再生を行うことはできなかった。
米国特許7649160号 特表2002−526815号
本発明が解決しようとする課題は、拡大レンズとして、そのような屈折光学素子を挿入しないことを前提として収差補正されて製作された、比較的安価な市販の顕微鏡用対物レンズを使用した場合でも、挿入した屈折光学素子による収差の影響を排除できる、ディジタルホログラフィイメージング装置における物体像再生方法を提供することにある。
本発明における第1の発明の物体像再生方法は、光源(Us)から発する光による照明光束(Fi)によって照明された物体(To)の拡大像を生成するための拡大レンズ(Ue)を有し、該拡大レンズ(Ue)から出力される拡大物体光束(Fe)と、前記光源(Us)から発する光による参照光束(Fr)とを重畳せしめることによって、撮像素子(Uf)の撮像面(Pf)に形成される干渉像(If)を前記撮像素子(Uf)によって撮像して干渉像データ(Df)を取得し、該干渉像データ(Df)を用いた計算によって前記物体(To)の像を再生するためのディジタルホログラフィイメージング装置であって、前記物体(To)と前記拡大レンズ(Ue)との間に屈折光学素子(Ux)が挿入されたディジタルホログラフィイメージング装置における、前記物体(To)の像を再生するための物体像再生方法であって、
前記干渉像データ(Df)を用いて、前記撮像面(Pf)から前記拡大レンズ(Ue)の出力像平面(Pd)に向かう方向の光伝播シミュレーションによって、前記拡大レンズ(Ue)の出力像平面(Pd)における光電界分布 Ψd を計算する第1の工程と、
前記出力像平面(Pd)における前記光電界分布 Ψd を用いて、前記拡大レンズ(Ue)が無収差レンズであることを仮定した場合における前記拡大レンズの入力像平面(Pc)における光電界分布 Ψc を計算する第2の工程と、
前記入力像平面(Pc)における前記光電界分布 Ψc を用いて、前記屈折光学素子(Ux)が存在しないと仮定した場合における干渉像データ取得時の光の伝播方向と同じ方向の光伝播シミュレーションによって、前記屈折光学素子(Ux)の出力側境界面(Sb)における光電界分布 Ψb を計算する第3の工程と、
前記出力側境界面(Sb)における前記光電界分布 Ψb を用いて、前記屈折光学素子(Ux)の内部領域における干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションによって、前記屈折光学素子(Ux)の入力側境界面(Sa)における光電界分布 Ψa を計算する第4の工程と、
前記入力側境界面(Sa)における前記光電界分布 Ψa を用いて、前記物体(To)が存在する空間における干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションによって、前記物体(To)の位置の近傍に設けた物体観察面(Po)における光電界分布 Ψo を計算する第5の工程と、
を含むことを特徴とするものである。
本発明における第2の発明の物体像再生方法は、前記屈折光学素子(Ux)が平行平板であるディジタルホログラフィイメージング装置において、
前記第4の工程と前記第5の工程に替えて、
前記出力側境界面(Sb)における前記光電界分布 Ψb を用いて、干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションによって、前記物体(To)の位置の近傍に設けた物体観察面(Po)における光電界分布 Ψo を計算するに際しては、前記出力側境界面(Sb)の点から前記入力側境界面(Sa)を経由して前記物体観察面(Po)の点に至る光路長を、フェルマーの原理に従う光路を見出して計算する第4’の工程とすることを特徴とするものである。
本発明における第3の発明の物体像再生方法は、前記照明光束(Fi)を生成するための光束を前記拡大レンズ(Ue)の出力側から入射せしめることと、前記拡大物体光束(Fe)と前記参照光束(Fr)とを合波することのための偏光ビームスプリッタ(PBS)と、合波された前記拡大物体光束(Fe)と前記参照光束(Fr)とに干渉性を持たせるための偏光フィルタ(PF)とを、前記ディジタルホログラフィイメージング装置がさらに有し、前記屈折光学素子(Ux)が1/4波長板であることを特徴とするものである。
拡大レンズとして、そのような屈折光学素子を挿入しないことを前提として収差補正されて製作された、比較的安価な市販の顕微鏡用対物レンズを使用した場合でも、挿入した屈折光学素子による収差の影響を排除できる、ディジタルホログラフィイメージング装置における物体像再生方法を提供することができる。
本発明の技術に関連する概念の概略図を表す。 本発明のための装置を簡略化して示すブロック図を表す。 本発明の技術に関連する概念の概略図を表す。 本発明のための装置の実施例の一部の一形態を簡略化して示す模式図を表す。
本発明に関する説明において、共役という用語に関しては、幾何光学分野における一般用語として、例えば、AとBとは共役である、と言うとき、少なくとも近軸理論に基づき、レンズ等の結像機能を有する光学素子の作用によってAがBに、またはBがAに結像されることを意味する。
このとき、A,Bは像であって、孤立した点像が対象として含まれることは当然として、複数の点像からなる集合や、点像が連続的に分布した拡がりのある像も対象として含める。
ここで、点像あるいは像点(すなわち像)とは、幾何光学分野における一般用語として、実際に光がその点から放射されているもの、光がその点に向かって収束して行ってスクリーンを置くと明るい点が映るもの、光がその点に向かって収束して行くように見える(が、その点は光学系の内部にあってスクリーンを置けない)もの、光がその点から放射されているように見える(が、その点は光学系の内部にあってスクリーンを置けない)もの、の何れをも含み、区別しないし、このとき、結像における収差やピント外れ等によってボケが生じ、理想的な点や回折限界像でなくなる現象は無視する。
一般のカメラレンズを例にとると、通常は開口絞りがレンズの内部に存在するが、光が入る側からレンズを見ときに、レンズを通して見える開口絞りの像を入射瞳、光が出る側からレンズを見ときに、レンズを通して見える開口絞りの像を射出瞳、入射瞳の中心に向かう、または射出瞳の中心から出て来る光線(通常は子午光線)を主光線と呼ぶ。
また広義には、主光線以外の光線は周辺光線と呼ばれる。
ただし、レーザのような指向性を有する光を扱う光学系では、開口絞りによって光束を切り出す必要が無いために開口絞りが存在しない場合が多く、その場合は、光学系における光の存在形態によって、それらが定義される。
通常は、放射点からの放射光束における、光の方向分布の中心光線を主光線とし、光学系に入射する主光線またはその延長線が光軸と交わる位置に入射瞳があり、光学系から射出する主光線またはその延長線が光軸と交わる位置に射出瞳があると考える。
ただし、厳密な話をすると、このように定義した主光線と光軸とが、例えば調整誤差のために交わらず、ねじれの位置にあるに過ぎない場合も考えられる。
しかし、このような現象は本質とは無関係であり、また議論しても不毛であるため、以下においては、このような現象は生じないと見なす、あるいは、主光線と光軸とが最接近する位置において交わっていると見なすことにする。
また、光学系のなかの隣接する2個の部分光学系AとBに注目し、Aの直後にBが隣接しているとしたとき、(Aの出力像がBの入力像となるのと同様に)Aの射出瞳はBの入射瞳となるし、そもそも光学系のなかに任意に定義した部分光学系の入射瞳・射出瞳は、(開口絞りが存在すれば全てそれの像であるし、存在しなくても)全て共役のはずであるから、特に区別が必要無ければ、入射瞳・射出瞳を単に瞳と呼ぶ。
本発明の説明および図面においては、光学系の光軸をw軸と呼んでいるが、もし反射鏡によって光軸が折り曲げられた場合は、元のw軸に沿う光線が反射されて進む方向もw軸と呼び、新たな座標軸を取ることはしない。
本発明のディジタルホログラフィイメージング装置における前記拡大レンズ(Ue)として、例えば金属顕微鏡、実体顕微鏡などに装着するために市販されている、顕微鏡対物レンズを使用することができる。
これらは、比較的安価ではあるが、非常に良好に諸収差の補正が行われており、実質的に無収差レンズと見なすことができる。
以下においては、本発明の技術に関連する概念の概略図である図1を参照して、無収差レンズにおいて成立する、光学的諸量の関係を明らかにする。
図に示すように、無収差であると仮定した、前記拡大レンズ(Ue)から規定位置にある入力像平面(Pc)の上に座標 U,V をとり、これと共役な出力像平面(Pd)の上に座標 U',V' をとるものとする。
光学系は光軸(w)に関して軸対象で、軸 V と軸 V' とは平行であり、光軸(w)と軸 V 、軸 V' で規定される平面を子午平面とする。
そして、前記入力像平面(Pc)の上の、光軸(w)の上( V = 0 )に、入力像点(Ao)があるとき、これと共役な出力像点(Bo)が、前記出力像平面(Pd)の上の、光軸(w)の上( V' = 0 )に、無収差で結像しているとする。
さらに、前記入力像平面(Pc)の上に、高さ V を有する軸外の入力像点(Ah)があるとき、これと共役な出力像点(Bh)が、前記出力像平面(Pd)の上の、高さ V' を有して軸外に、同じく無収差で結像しているとする。
また、前記入力像平面(Pc)のある入力像空間の屈折率を η とする。
なお、図では前記入力像平面(Pc)から前記出力像平面(Pd)への結像が縮小であるかのように描かれているが、これは、入力側(前記拡大レンズ(Ue)より左側)の空間における描画要素が多く複雑であるのに対し、出力側(前記拡大レンズ(Ue)より右側)の空間における描画要素が少なく単純であるであるため、図が無駄に大きくなることを避けるための便宜として、このように描いた。
また、図では入力像に対して出力像が倒立しており、結像の倍率は負である場合を描いてある。
前記拡大レンズ(Ue)は1個の単レンズのように描いてあるが、それは、複数枚のレンズから成る組み合わせレンズであっても、その近軸理論的基本機能は1個のレンズと同等である、という幾何光学の原理に基づいて、そのように集約的に描いたもので、前記拡大レンズ(Ue)を構成するレンズの枚数に制約は無い。
前記入力像点(Ao)から前記出力像点(Bo)への結像が無収差であるから、前記入力像点(Ao)から前記出力像点(Bo)に至る光路長は、光線によらず一定の値 Ωo でなければならない。
理由は、前記入力像点(Ao)から発した光の波面は、歪みの無い球面を形成しており、また前記出力像点(Bo)に向かう光の波面も、歪みの無い球面を形成していなければならず、そのためには、前記入力像点(Ao)から何れの光線を辿って波が伝播しても、同じ位相で前記出力像点(Bo)に到達しなければならないからである。
同様に、前記入力像点(Ah)から前記出力像点(Bh)への結像が無収差であるから、前記入力像点(Ah)から前記出力像点(Bh)に至る光路長は、光線によらず一定の値 Ωh でなければならない。
このように、 Ωo , Ωh が定数であることは判ったが、以下において、 Ωo と Ωh との関係、すなわち Ωh の V に対する依存性について明らかにする。
いま、入力光束として、前記拡大レンズ(Ue)の入力側焦点(F)に向かって集束する光束が入力されているとする。
そうすると、この入力光束のうちの、前記入力像点(Ao)を通る光線は、当然、光軸(w)の上にある入力側焦点(F)を通過した上で前記拡大レンズ(Ue)を通過した後、光軸(w)に一致する光線として前記出力像点(Bo)に至る。
一方、前記入力光束のうちの、前記入力像点(Ah)を通る光線は、入力光線(Lh)として光軸(w)の上にある前記入力側焦点(F)を通過した上で前記拡大レンズ(Ue)を通過した後、同じく光軸(w)に平行な光線として前記出力像点(Bh)に至る。
このとき、前記入力側焦点(F)を中心とし、前記出力像平面(Pd)に接する球面(Sf)を考え、これと前記入力光線(Lh)とが点(Ph)で交差するものとする。
また、前記出力像点(Bo)は前記球面(Sf)の上にある。
前記入力光束は、前記入力側焦点(F)から球面波として発散するが、それが前記拡大レンズ(Ue)を通過して出力される段階では、光軸(w)の方向に進む平行光束、すなわち波面が前記出力像平面(Pd)に平行である平面波になっているから、該出力像平面(Pd)の上にある前記出力像点(Bo)および前記出力像点(Bh)における位相は同位相であり、よって、前記入力側焦点(F)から前記出力像点(Bo)に至る光路長と前記入力側焦点(F)から前記出力像点(Bh)に至る光路長とは等しい。
また、前記入力像点(Ao)と前記点(Ph)とは、同じ前記球面(Sf)の上の点であり、前記球面(Sf)の中心であるから、前記入力像点(Ao)から前記入力側焦点(F)に至る光路長と、前記点(Ph)から前記入力側焦点(F)に至る光路長とは等しい。
したがって、前記入力像点(Ah)から前記出力像点(Bh)に至る光路長 Ωh は、前記入力像点(Ao)から前記出力像点(Bo)に至る光路長 Ωo に、前記入力像点(Ah)から前記点(Ph)に至る光路長を加えたものとなる。
前記入力側焦点(F)から前記出力像平面(Pd)に至る距離、すなわち前記球面(Sf)の半径を Wf と書き、また、記号 ^ は累乗を表し(よって ^2 は2乗を表す)、さらに、関数 sqrt は平方根を表すとすれば、前記入力像点(Ah)から前記点(Ph)に至る光路長 Γh は、 U,V の関数として以下の式(式1)
Γh(U,V) = η・{ sqrt( Wf^2 + U^2 + V^2 ) − Wf }
のように書ける。
ただし、図は軸 V,V' が子午平面上にある場合を描いてあるが、式1では、前記入力像点(Ah)および出力像点(Bh)が U,U' 座標を有する場合に拡張した。
これを用いて、前記入力像点(Ah)から前記出力像点(Bh)に至る光路長 Ωh は、以下の式(式2)
Ωh(U,V) = Ωo + Γh(U,V)
によって求めることができる。
前記した式2は、無収差の前記拡大レンズに対しては、その規定位置にある前記入力像平面(Pc)の上の、光軸(w)からの変位 U,V を有する点から、それに共役な前記出力像平面(Pd)の上の点に至る2点間の光路長は、前記した式1の分だけ U,V に依存することを教えるものである。
これまでの議論より明らかなように、それら2点については、それらが像点であるか光路中の通過点であるかには無関係であるから、前記入力像平面(Pc)と共役の前記出力像平面(Pd)への結像の倍率を g と書くと、前記入力像平面(Pc)の上での光電界分布 Ψc(U,V) は、共役な前記出力像平面(Pd)の上での光電界分布 Ψd(U',V') の縦横スケールを単に g 分の1に縮小し、前記した式1の補正を加えて求めることができ、よって以下の式(式3)
Ψc(U,V) = Ψd(g・U, g・V)・exp(i・k・Γh(U,V))
によって求めればよいことが判る。
ただし、 i は虚数単位、 λ は波長、 k は波数で k=2π/λ である。
ここで、前記した式1を導いた過程から明らかなように、前記拡大レンズ(Ue)への入力光束が平行光束であれば、出力光束も平行光束となる場合、すなわち前記拡大レンズ(Ue)がアフォーカル系(望遠系)である場合は、前記拡大レンズ(Ue)の焦点距離が無限大、したがって Wf = ∞ であるから、 Γh(U,V) = 0 である。
因みに、結像光束の拡がり角が大きい場合でも、像の高さ V,V' の2次以上が無視できるとした場合に、無収差レンズが満たすべき条件として、正弦条件と呼ばれるものがよく知られているが、その導出過程から Γh(U,V) = 0 が導かれる(参考文献:M. Born,E. Wolf (草川徹,横田英嗣 訳):光学の原理II(Principles of Optics),東海大学出版会発行,1980年12月20日 第4刷, 4.1)。
実際、前記した式1は、像の高さの2次以上の項しか含まない。
本発明のためのディジタルホログラフィイメージング装置(以降、本装置と称す)を簡略化して示すブロック図である図2を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
本装置の照明光束生成光学系(Ui)は、照明光束(Fi)を生成して、観察対象の物体(To)に照射し、それを照明する。
前記照明光束(Fi)による照明を受けて前記物体(To)から発した光は、前記物体(To)が有する情報を担う物体情報光束(Fo)として、拡大レンズ(Ue)に向かう。
なお、本図は、前記照明光束(Fi)のうちの、前記物体(To)によって反射された成分が前記物体情報光束(Fo)を形成する、反射照明の光学系として描いてあるが、前記照明光束(Fi)のうちの、前記物体(To)を透過した成分が前記物体情報光束(Fo)を形成する、透過照明の光学系であってもよい。
先に述べたように、本装置には無収差レンズとして扱うことができる顕微鏡用対物レンズが好適に利用可能であるが、後述するように、結像をテレセントリックとするために、顕微鏡用対物レンズに追加レンズを後置する場合がある。
前記物体(To)の像の拡大のための機能が主として顕微鏡用対物レンズによって担われ、追加レンズのパワーが強くない場合は、これらを組み合わせたレンズも1個の無収差レンズとして扱うことができるから、以降においては、前記拡大レンズ(Ue)として、このような構成のレンズ系も含むものとする。
前記したように、本発明においては、前記物体(To)と前記拡大レンズ(Ue)との間に、屈折光学素子(Ux)が挿入されている場合を対象としている。
そのため、本図では、前記物体情報光束(Fo)は、前記屈折光学素子(Ux)に入射し、それを透過した屈折素子透過光束(Fx)が前記拡大レンズ(Ue)に入射するように描いてある。
なお、当面は、簡単のため、前記屈折光学素子(Ux)は光軸(w)に垂直においた平行平板、すなわちその入力側境界面(Sa)および出力側境界面(Sb)が光軸(w)に垂直な平面である場合を扱うが、後述するように、これらの何れか一方または両方が平面ではない場合についても本発明は適用できる。
近軸光学理論の教えるところによると、本装置が空気中に置かれるとして、前記屈折光学素子(Ux)の厚さを τx 、屈折率を ηx とすると、前記拡大レンズ(Ue)の側から前記屈折光学素子(Ux)を通して観察した前記物体(To)の表面が光軸(w)と交差する軸上物点(Oo)は、以下の式(式4)
Lx = ( 1 − 1/ηx )・τx
の Lx だけ、光軸(w)の方向に近づいた、軸上物点屈折像(Oc)として見えるた(軸方向像浮揚)め、この位置の近傍に前記拡大レンズ(Ue)のピントを合わせることになる。
前記物体情報光束(Fo)は、前記拡大レンズ(Ue)を通過後、拡大物体光束(Fe)となって、前記拡大レンズ(Ue)の出力像空間に、前記物体(To)が拡大された物体拡大像(Td)を形成する。
図には、理解を助けるために、前記軸上物点(Oo)や前記軸上物点屈折像(Oc)と共役な、前記出力像平面(Pd)の上の軸上物点拡大像(Od)を描いてある。
前記拡大レンズ(Ue)から出力される前記拡大物体光束(Fe)の適当な位置に、CCDやCMOSイメージセンサ等を含んで構成される撮像素子(Uf)の撮像面(Pf)を配置するとともに、参照光束生成光学系(Ur)によって生成された、前記拡大物体光束(Fe)と可干渉な参照光束(Fr)を、前記拡大物体光束(Fe)と重畳するように前記撮像面(Pf)に対して照射し、結果として前記撮像面(Pf)の上に干渉像(If)が形成される。
本図では、前記撮像素子(Uf)を、前記物体拡大像(Td)の位置よりも前記拡大レンズ(Ue)の側、すなわち前方に設置する構成を例示したが、後方に設置する構成でもよく、さらに、前記物体拡大像(Td)の位置に設置する構成も可能である。
なお、本明細書では、光の進む方向の側にある場合を後方、その逆の側にある場合を前方と称す。
前記撮像素子(Uf)は前記干渉像(If)を撮像して、該干渉像(If)の明るさ分布をディジタルデータ化した干渉像データ(Df)を生成する。
さらに、本装置は処理装置(Up)を有しており、これは前記撮像素子(Uf)から前記干渉像データ(Df)を受信して記憶する。
前記処理装置(Up)は、前記撮像素子(Uf)から前記干渉像データ(Df)を受信するためのインターフェイス、CPUやGPU等のプロセッサ、前記干渉像データ(Df)を始め、OSや計算に必要な処理プログラム等を記憶する不揮発性メモリ、前記したOSや計算に必要な処理プログラム等がロードされ、処理計算の遂行に必要なデータを記憶するメモリなどを備えたコンピュータによって実現することができ、記憶した前記干渉像データ(Df)を読出して、ディジタルホログラフィイメージング技術に基づく計算によって光電界の再構成を行う。
なお、光電界の再構成のためのディジタルホログラフィイメージングにおける計算内容の概略については、先にシミュレーションの内容として説明した通りであるが、より具体的な計算手順について、後に説明がある。
図2に関し、若干補足しておく。
これまでは、例えば U,V と U',V' のように、考察する空間が異なれば、異なる座標系を定義して議論してきたが、以降においては、前記撮像面(Pf)、前記拡大レンズの出力像平面(Pd)や入力像平面(Pc)、出力側境界面(Sb)、等々の面において、光軸(w)に垂直にとる座標は、全て共通の u,v と書くこととし、各場所での軸 u,v それぞれは、互いに平行であるとする。
なお、図の煩雑化を避けるため、前記出力像平面(Pd)のみに軸 u を描いてある。
また、前記出力像平面(Pd)は、平面 u,v によって規定されるものであるが、入力像平面(Pc)、出力側境界面(Sb)、等々の面も同様に、その面を軸 v で代表させるものとして描いてある。
図では、前記物体(To)に対して前記照明光束(Fi)が、また、前記撮像素子(Uf)に対して前記参照光束(Fr)が、光軸(w)に対する大きな斜めの角度を有して直接的に照射されて重畳されるように描いてあるが、これは、図に描かれる構造の複雑化を避けるために概念的に描いたためであり、普通は偏光ビームスプリッタを使用してこれらを合波し、照射することが多い。
前記照明光束生成光学系(Ui)と前記参照光束生成光学系(Ur)とが独立のものであるように描いてあるが、前記照明光束生成光学系(Ui)から生成される前記拡大物体光束(Fe)と、前記参照光束生成光学系(Ur)から生成される前記参照光束(Fr)とは可干渉でなければならないから、前記照明光束生成光学系(Ui)と前記参照光束生成光学系(Ur)の光源は共通である。
また、前記参照光束(Fr)は、前記拡大物体光束(Fe)に対して空間的直流成分以外を除去する空間周波数フィルタを作用させて生成してもよい。
本装置は、通常この種の装置がそうであるように、空気中に置かれているものとし、よってその空間の屈折率が1であるとして諸計算を行うが、屈折率が1でない空間(例えば後述する液体中)に置かれる場合は、その値に合わせて計算を行えばよい。
以下においては、前記処理装置(Up)が、読出された前記干渉像データ(Df)から、前記物体(To)の位置の近傍に設けた物体観察面(Po)における光電界分布 Ψo(u,v) を計算する方法について、複数の工程に分けて説明する。
第1の工程は、前記したように、前記干渉像データ(Df)によって表現される多諧調の明暗パターンである前記干渉像(If)から成る濃度型回折格子によって振幅変調を受けた参照光が、波として空間中を伝播する現象のシミュレーション、すなわちキルヒホッフ・ホンゲンスの回折積分理論に基づく計算を行うことにより、前記拡大レンズ(Ue)の出力像平面(Pd)における光電界分布 Ψd(u,v) を計算する工程である。
ここで、前記撮像素子(Uf)を、前記物体拡大像(Td)の位置よりも、前方に設置する構成の場合は、干渉像データ取得時の光の伝播方向と同じ方向の光伝播シミュレーションを、後方に設置する構成の場合は、干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションを行うことになる。
なお、いま述べた、濃度型回折格子によって振幅変調を受けた参照光が、波として空間中を伝播する現象のシミュレーションの代わりに、 Fourier-transform method (参考文献:Takeda,M., et al. : Fourier-transform method of fringe-pattern analysis for computer-based topography and interferometry, J.Opt.Soc.Am, Vol.72,No.1(1982), pp.156-160.)として知られる変換法を用いて、前記干渉像データ(Df)を、前記干渉像(If)の位置における光電界の位相分布に変換し、この光電界分布を有する光が伝播する様子のシミュレーションによって前記拡大レンズ(Ue)の出力像平面(Pd)における光電界分布 Ψd(u,v) を計算するようにしてもよい。
ここで、キルヒホッフ・ホンゲンスの回折積分理論に基づく光伝播シミュレーションの計算手順の概略について、簡単に説明しておく。
いま、伝播の源となる光電界(振幅と位相)が、ある波源分布面(平面や曲面)に分布している、すなわちその面上の点の座標の関数として定義されているとして、その面より光軸方向に離れた、ある光到達面(平面や曲面)での光電界分布を知りたいとする。
このとき、先ず、光到達面上の1点Pを選ぶ。
次に、波源分布面上の1点Sを選ぶ。
そして、波源としての点Sから発した波が、球面波として点Pまで伝播したときに、点Pが感じる波、すなわち伝播波の位相と振幅を計算する。
具体的には、点Sから点Pに至る光路長を計算して光路長に相当する位相遅れを求め、それを点Sの波源の位相に加算した値を伝播波の位相とし、点Sの振幅(必要ならその振幅に光路長に相当する減衰を掛けたもの)に比例する値を伝播波の振幅とする。
そのような波源分布面上の1点Sからの伝播波に関する計算を、点Pの位置に依存する、波源分布面上の有効領域 Σp 内の全ての点Sに対して行い、それら伝播波の寄与を、可干渉的に重ね合わせることにより、点Pの光電界を決定する。
そのような1点Pについての光電界の計算を、光到達面上の必要とする全ての点に対して行うことにより、光到達面における光電界分布を得ることができる。
ただし、前記した波源分布面上の有効領域 Σp とは、点Pに向けて光を届かせ得る場所に位置する波源分布面上の点の集合を指し、具体的には、点Sから点Pに向かう光伝播経路直線を考えたとき、その光伝播経路直線が点Pを通る主光線を軸とした規定の拡がり角の範囲内にあるような点Sの集合であり、例えば、点Pを通る主光線の方向単位ベクトル ip と、点Sから点Pに向かう方向単位ベクトル is とのスカラー積と、前記した規定の拡がり角の範囲で決まる限界値 ρ との関係が以下の式(式5)
ip・is ≧ ρ
を満たす場合、その点Sは有効領域 Σp に属すると判定すればよい。
なお、点Pを通る主光線は、光伝播シミュレーションを行う空間における瞳の中心と点Pとを結ぶ直線によって定めればよく、また ρ の値は、瞳の大きさによって定めればよい。
第2の工程は、前記した第1の工程で求めた前記光電界分布 Ψd(u,v) を用いて、前記拡大レンズ(Ue)が無収差レンズであることを仮定することによって、前記拡大レンズの入力像平面(Pc)における光電界分布 Ψc(u,v) を計算する工程である。
この工程については、前記入力像平面(Pc)から前記出力像平面(Pd)への拡大結像時の倍率を g としたとき、逆方向の縮小結像を考えればよいから、前記した式3に相当する以下の式(式6)
Ψc(u,v) = Ψd(g・u, g・v)・exp(i・k・Γh(u,v))
によって計算すればよい。
いま求めた前記光電界分布 Ψc(u,v) は、前記照明光束(Fi)による照明を受けて前記物体(To)から発した前記物体情報光束(Fo)が前記屈折光学素子(Ux)を通過後の前記屈折素子透過光束(Fx)が形成する虚像における光電界分布である。
したがって、前記屈折光学素子による収差の影響を排除するためには、前記屈折素子透過光束(Fx)を、干渉像データ取得時の光の伝播方向とは逆方向に辿って前記屈折光学素子(Ux)を通過する前の前記物体情報光束(Fo)が形成する光電界分布を求め、この光電界分布に基づいて前記物体(To)の像を再生すればよいことが判る。
ところが、前記光電界分布 Ψc(u,v) は、前記屈折光学素子(Ux)の出力側境界面(Sb)から発した前記屈折素子透過光束(Fx)が形成する虚像における光電界分布で、それが存在する前記入力像平面(Pc)は、前記出力側境界面(Sb)より前方に位置する。
そのため、前記入力像平面(Pc)における前記光電界分布 Ψc(u,v) を、一旦、前記入力像平面(Pc)より後方に位置する前記出力側境界面(Sb)における光電界分布に変換する必要がある。
これを行うための第3の工程は、前記した第2の工程で求めた前記光電界分布 Ψc(u,v) を用いて、干渉像データ取得時の光の伝播方向と同じ方向の光伝播シミュレーションによって、前記屈折光学素子(Ux)の出力側境界面(Sb)における光電界分布 Ψb(u,v) を計算する工程である。
当然ながら、この工程は、空気中にある前記屈折素子透過光束(Fx)の光電界分布を記述する座標面を光軸方向に離れた別の座標面に変更するだけであるから、光伝播シミュレーションは空気中で行うべきものであり、よって、この工程での光伝播シミュレーションは、前記屈折光学素子(Ux)は存在しないと仮定して行う。
第4の工程は、前記した第3の工程で求めた前記光電界分布 Ψb(u,v) を用いて、前記屈折光学素子(Ux)の内部領域、すなわち屈折率が ηx である領域における干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションによって、前記屈折光学素子(Ux)の入力側境界面(Sa)における光電界分布 Ψa(u,v) を計算する工程である。
前記した第4の工程で求めた前記光電界分布 Ψa(u,v) は、前記物体情報光束(Fo)が前記屈折光学素子(Ux)に入射する直前の、前記入力側境界面(Sa)における光電界分布であるから、前記屈折光学素子による収差の影響を受けていないため、この光電界分布に基づいて計算を行えば、屈折光学素子による収差の影響を排除した前記物体(To)の像の再生が可能となる。
それを行うための第5の工程は、前記光電界分布 Ψa(u,v) を用いて、前記物体(To)が存在する空間における干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションによって、前記物体(To)の位置の近傍に設けた物体観察面(Po)における光電界分布 Ψo(u,v) を計算する工程である。
すなわち、図2の本装置によって取得した前記干渉像データ(Df)に基づいて、以上において説明した、前記第1の工程および前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4の工程、前記第5の工程によれば、前記屈折光学素子(Ux)が存在したとしても、それにより発生する収差の影響を排除して前記物体(To)の像を再生することができる。
以上において説明した、第1の工程から第5の工程に至る工程から成る物体像再生方法においては、前記屈折光学素子(Ux)の前記入力側境界面(Sa)や前記出力側境界面(Sb)の形状は、光軸(w)に垂直な平面に限定されない。
理由は、先に光伝播シミュレーションの計算手順の概略を述べた内容から明らかなように、波源分布面や光到達面の形状に関する制約が何も無いからである。
例えば、波源分布面や光到達面の形状が曲面であるならば、前記した点Sや点Pをその曲面上にとって計算すればよい。
さらに、前記入力側境界面(Sa)や前記出力側境界面(Sb)の形状の如何によらず、前記屈折光学素子(Ux)は、その内部領域の全部がある屈折率の媒質で満たされるものに限定されない。
例えば、前記屈折光学素子(Ux)が、屈折率の異なる複数枚の屈折光学素子(空気を含む)を合わせたものであった場合は、前記第4の工程は、前記出力側境界面(Sb)における前記光電界分布 Ψb(u,v) から開始して、干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションによって、前記屈折光学素子(Ux)の内部の屈折率境界面のそれぞれにおける光電界分布を、順々に計算して行く工程とし、最終的に前記屈折光学素子(Ux)の入力側境界面(Sa)における光電界分布 Ψa(u,v) を計算する工程とすればよい。
先に述べた方法では、前記出力側境界面(Sb)における前記光電界分布 Ψb(u,v) を用いて、前記物体(To)の位置の近傍に設けた物体観察面(Po)における光電界分布 Ψo(u,v) を計算するに際し、前記屈折光学素子(Ux)の入力側境界面(Sa)における光電界分布 Ψa(u,v) を計算するための工程を挿入して、前記第4の工程と前記第5の工程の2工程によって行った。
しかし、本発明のディジタルホログラフィイメージング装置において、前記屈折光学素子(Ux)が平行平板である場合は、前記屈折光学素子(Ux)の入力側境界面(Sa)における光電界分布 Ψa(u,v) を計算することなく、前記出力側境界面(Sb)における前記光電界分布 Ψb(u,v) から直接に、前記物体(To)の位置の近傍に設けた物体観察面(Po)における光電界分布 Ψo(u,v) を計算することが可能である。
このことを本発明の技術に関連する概念の概略図である図3を参照して説明する。
本図の(a)において、平行平板である屈折光学素子(Ux)は、簡単のために、当面は、その入力側境界面(Sa)および出力側境界面(Sb)が、光軸(w)に垂直になるように配置されているとする。
このとき、図の軸 W' は、光軸(w)に平行である。
なお、後述するように、ここで説明する方法は、前記入力側境界面(Sa),出力側境界面(Sb)が光軸(w)に垂直でない場合に対しても適用できる。
本図は、前記物体(To)の上から選んだ点(O’)における光電界分布 Ψo(u,v) を光伝播シミュレーションによって計算するために、波源として前記出力側境界面(Sb)の上から選んだ点(B’)と、前記点(O’)と前記点(B’)とを結ぶ光の経路を描いたものである。
なお、図における光の方向を表す矢印は、図2と同様に、干渉像データ取得時の光の伝播方向に描いてある。
フェルマーの原理によると、このときの光の経路は、前記点(O’)から前記点(B’)に至る光路長が最短である経路となる。
言い換えれば、点(A’)における屈折は、その光路長を最短にするように生じる。
フェルマーの原理を愚直に実践するならば、例えば変分法のような方法で光の経路、すなわち点(A’)の位置を見出して、その光路長を得ることになるが、スネルの法則はフェルマーの原理から導かれるものであるため、以降では、光の経路をフェルマーの原理に基づいて見出す方法の一例として、スネルの法則を利用して光の経路を見出す仕方について述べる。
なお、図の軸 V' は、軸 V' と軸 W' とから規定される平面上に前記点(O’),前記点(A’),前記点(B’)が存在するように定義されるものとする。
前記点(A’)における光の入射角 θ と屈折角 φ の関係は、スネルの法則より以下の式(式7)
sinθ = η・sinφ
のように表される。
変数 s と、それを引数とする関数 Ti(s) および To(s) を、前記した式7を適用して、以下の式(式8)
s = sinθ
Ti(s) = tanθ = s/sqrt( 1 − s^2 )
To(s) = tanφ = s/sqrt( η^2 − s^2 )
のように定義する。
このとき、前記点(B’)の座標を V',W' と書くとすると、 V' は、
V' = ( W' − τ)・tanθ + τ・tanφ
により計算できるから、結局これは、以下の式(式9)
V' = ( W' − τ)・Ti(s) + τ・To(s)
のように表すことができる。
V' は、光伝播シミュレーションの計算過程で選んだ前記点(O’)と前記点(B’)とを、軸 W' に垂直な平面に投影した2点間の距離であるから、その値は既知である。
よって、前記した式9を s を未知数とする方程式と見て、数値的に解いて s の値を決定すれば、フェルマーの原理に従う光路に基づいて、前記入力側境界面(Sa)を経由して前記物体観察面(Po)の点と前記出力側境界面(Sb)の点とを結ぶ光路を決定できたことになる。
前記点(O’)と前記点(A’)とを結ぶ経路の長さは
( W' − τ)・sqrt( 1 + (tanθ)^2 )
であり、
前記点(A’)と前記点(B’)とを結ぶ経路の長さは
τ・sqrt( 1 + (tanφ)^2 )
であるから、前記点(O’)と前記点(B’)とを結ぶ、フェルマーの原理に従う光路に基づく光路長 Γob は、以下の式(式10)
Γob = ( W' − τ)・sqrt( 1 + (Ti(s))^2 )
+ η・τ・sqrt( 1 + (To(s))^2 )
によって求められる。
なお、いま述べた光路長 Γob を得る過程においては、屈折点である前記点(A’)の座標を陽に求めることはしていないことに留意されたく、この点について、後で補足を述べる。
因みに、角度 θ と φ が比較的小さく、その3次以上を無視することができる場合は、近似により、前記した方程式9は、以下の式(式11)
s = V'/{ ( W' − τ) + τ/η }
と解けるから、前記した式10の光路長 Γob は、以下の式(式12)
Γob = ( W' − τ)・{ 1 + s^2/2 }
+ η・τ・{ 1 + s^2/(2η^2) }
によって求められる。
3次以上を無視できない場合でも、前記した式11で求めた s の値は、前記した方程式9を数値的に解く際の初期値として利用できる。
これまでは、簡単のために、入力側境界面(Sa)および出力側境界面(Sb)が、光軸(w)に垂直になるように配置されている場合を想定したが、それが垂直でない場合は、単に軸 W' が光軸(w)と平行にならないだけで、光伝播シミュレーションの計算の過程で選ぶ、前記出力側境界面(Sb)の上の前記点(B’)と、前記物体(To)の上の前記点(O’)を、図2の u,v,w 座標系から前記した V',W' 座標系に座標変換した上で、光路長 Γob を計算すればよいから、ここで述べた方法は、入力側境界面(Sa)および出力側境界面(Sb)が、光軸(w)に垂直でない場合にも適用可能である。
以上において説明したように、前記屈折光学素子(Ux)が平行平板である場合は、先に説明した第1の工程から第3の工程によって、前記出力側境界面(Sb)における前記光電界分布 Ψb(u,v) を計算すれば、第4’の工程によって前記物体(To)の位置の近傍に設けた物体観察面(Po)における光電界分布 Ψo(u,v) を計算することができる。
そして第4’の工程は、前記光電界分布 Ψb(u,v) を用いて、先に光伝播シミュレーションの計算手順の概略について述べたような、干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションによって、前記物体(To)の位置の近傍に設けた物体観察面(Po)における光電界分布 Ψo(u,v) を計算するに際して、前記出力側境界面(Sb)の点から前記入力側境界面(Sa)を経由して前記物体観察面(Po)の点に至る光路長を、フェルマーの原理に従う光路を見出して計算する工程である。
すなわち、図2の本装置によって取得した前記干渉像データ(Df)に基づいて、以上において説明した、前記第1の工程および前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4’の工程によれば、平行平板の前記屈折光学素子(Ux)が存在したとしても、それにより発生する収差の影響を排除して前記物体(To)の像を再生することができる。
ところで、図3の(b)に示したように、前記点(O’)と前記点(B’)の位置を不変に保ったまま、前記屈折光学素子(Ux)を平行移動した場合を想定すると、前記点(O’)から点(C’)に向かうベクトルと点(C”)から前記点(B’)に向かうベクトルの和は、前記点(O’)から前記点(A’)向かうベクトルに等しく、前記点(C’)から前記点(C”)に向かうベクトルは、前記点(A’)から前記点(B’)向かうベクトルに等しいため、前記点(O’)と前記点(B’)とを結ぶ光路長は、図の(a)と(b)で変わらない。
よって、前記屈折光学素子(Ux)の挿入位置の平行移動は、像再生の結果に影響を及ぼさないことが判る。
また、前記第3の工程によって光電界分布を計算する面を、前記屈折光学素子(Ux)の出力側境界面(Sb)ではなく、それよりも前記拡大レンズ(Ue)の側に位置する任意の面、例えば前記屈折光学素子(Ux)の出力側境界面(Sb)から離れた仮想の平面や前記拡大レンズ(Ue)の光入射側のレンズ面などに変更しても、同様に像再生の結果に影響を及ぼさない。
したがって、このような変更には技術上の意味は無く、以上において述べた本発明の技術と均等な技術である。
図3の(a)に示した光路を前記した式9に基づいて見出すことは、フェルマーの原理によるものではなく、光線追跡によるものではないか、との疑問が生ずるかも知れないので、ここで補足しておく。
先に光伝播シミュレーションの計算手順の概略について述べたように、波源分布面上の点Sから光到達面上の点Pに到達する伝播波が必ず存在するものとして、有効領域 Σp 内の全ての点Sからの伝播波の寄与を、可干渉的に重ね合わせることにより、点Pの光電界を決定する。
このとき、点Sから点Pに至る伝播波の光路長は、その間に屈折面が存在しない場合は、単に直線距離に基づいて計算すればよいが、屈折面である前記入力側境界面(Sa)が存在する場合は、伝播波の屈折を考慮して計算しなければならない。
本発明では、フェルマーの原理から導かれる法則であるスネルの法則を満足する伝播波が存在するとして、(特に近似できるとした場合の、前記した式11,式12を見ればよく理解できるように、前記点(O’)と点(B’)との間の、 V',W' 方向の隔たりの値のみから)屈折点の座標を陽に求めることなく、その経路の光路長を直接求めたのであって、よってフェルマーの原理に従う解法を実践していることが判る。
一方、光線追跡の場合は、例えば位相分布の勾配を計算するなどして、点Sにおける光線の方向を決定した上で、その光線が直進して屈折面に達し、そこで屈折した光線が直進して光到達面に到達したときの座標を決定する計算を行うが、この場合、波源分布面と光到達面との間に屈折面があっても無くても、その座標が点Pの座標である保証は無く、よって点Sから点Pに至る伝播波の光路長を求めることはできない。
次に、照明光束生成光学系(Ui)および参照光束生成光学系(Ur)、拡大レンズ(Ue)、撮像素子(Uf)などからなる、落射照明型のディジタルホログラフィ顕微鏡としての光学系の具体的な構成について、本発明のための装置の実施例の一部の一形態を簡略化して示す模式図である図4を参照して説明する。
本図の前記拡大レンズ(Ue)は、顕微鏡用対物レンズ(Ue1)と追加レンズ(Ue2)とから成り、これらは共焦点配置をとることにより、アフォーカル系を構成している。
共焦点の位置に開口絞リ(Ua)を設けることにより、前記拡大レンズ(Ue)の結像は、入力像側(物体側)、出力像側の両方においてテレセントリックとなる。
このようにすることにより、再生される物体像の大きさについて、前記顕微鏡用対物レンズ(Ue1)と物体(To)との距離、および光軸(w)方向の前記物体拡大像(Td)の再生位置への依存性を低くすることができるとともに、撮像素子(Uf)が撮像する干渉像(If)の干渉縞が不必要に細かくなることを防止できる利点がある。
ヘリウム−ネオンレーザ等の光源(Us)からの光源ビーム(As)は、ビーム分割のためのビームスプリッタ(BS)によって、照明光束生成光学系用ビーム(Ai)と参照光束生成光学系用ビーム(Ar)とに分割される。
前記参照光束生成光学系(Ur)はミラー(Mr)およびビームエキスパンダ(BEr)から構成されており、前記参照光束生成光学系用ビーム(Ar)は、前記ミラー(Mr)によって反射された後、集光レンズ(Lrf)とコリメータレンズ(Lrc)とから構成される前記ビームエキスパンダ(BEr)に入力され、必要な太さになるようビームが拡大された平行光束として参照光束(Fr”)が生成される。
なお、前記集光レンズ(Lrf)の集光点に一致するようピンホール開口(Uh)を設置すれば、前記ビームエキスパンダ(BEr)に空間的直流成分以外を除去する空間周波数フィルタの機能を兼ね備えさせることができ、これにより、前記ピンホール開口(Uh)に至るまでの光路に存在する光学素子の表面に付着した塵などが生む光ノイズを除去して、前記参照光束(Fr”)を浄化することができる。
一方、前記照明光束生成光学系(Ui)はミラー(Mi)およびビームエキスパンダ(BEi)から構成されており、前記照明光束生成光学系用ビーム(Ai)は、前記ミラー(Mi)によって反射された後、集光レンズ(Lif)とコリメータレンズ(Lic)とから構成される前記ビームエキスパンダ(BEi)に入力され、必要な太さになるようビームが拡大された平行光束として照明光束(Fi”)が生成される。
なお、前記ビームエキスパンダ(BEi)に対しても前記ピンホール開口(Uh)と同様のピンホール開口を設置するとよいが、本図においては省略してある。
前記照明光束(Fi”)は、偏光ビームスプリッタ(PBS)に向かう。
いま、前記照明光束(Fi”)が、紙面に平行な偏光(以降、この偏光を破線の両方向矢印の偏光状態シンボル(pp)で表す)を有するよう光学系が組み立てられているとするならば、前記照明光束(Fi”)は、前記偏光ビームスプリッタ(PBS)の偏光分離機能面にP偏光で入射し、それを高効率で透過して、落射照明のための照明光束(Fi’)として前記拡大レンズ(Ue)に向かう。
前記したように、前記拡大レンズ(Ue)はアフォーカル系であるから、平行光束の形態を有する前記照明光束(Fi’)が前記拡大レンズ(Ue)を通過後は、ビーム系が縮小された、同じく平行光束の形態を有する照明光束として物体(To)の照明に利用される。
ただし、前記拡大レンズ(Ue)の前記顕微鏡用対物レンズ(Ue1)と前記物体(To)との間には、前記した平行平板型の屈折光学素子(Ux)としての1/4波長板(Rt)を挿入して、これを透過した後の照明光束(Fi)が、円偏光(この偏光を回転矢印破線円の偏光状態シンボル(pc)で表す)を有するようにしてある。
そのため、前記物体(To)からの反射像を形成する物体情報光束(Fo)が、前記顕微鏡用対物レンズ(Ue1)に向けて前記1/4波長板(Rt)を透過した後の、前記屈折素子透過光束(Fx)としての物体情報光束(Fo’)は、紙面に垂直な偏光(この偏光を破線円で囲んだ黒丸の偏光状態シンボル(ps)で表す)を有するようになり、前記拡大レンズ(Ue)を再度通過して、拡大物体光束(Fe”)として前記偏光ビームスプリッタ(PBS)に戻る。
該偏光ビームスプリッタ(PBS)では、前記拡大物体光束(Fe”)は、前記偏光ビームスプリッタ(PBS)の偏光分離機能面にS偏光で入射し、それによって高効率で反射されて、拡大物体光束(Fe’)として偏光フィルタ(PF)に向かう。
一方、前記参照光束(Fr”)も前記照明光束(Fi”)と同様に紙面に平行な偏光を有するとすれば、前記偏光ビームスプリッタ(PBS)の偏光分離機能面にP偏光で入射し、それを高効率で透過して、前記拡大物体光束(Fe’)と合波され、参照光束(Fr’)として前記偏光フィルタ(PF)に向かう。
しかし、合波された前記拡大物体光束(Fe’)は紙面に垂直、前記参照光束(Fr’)は紙面に平行な偏光を有しているため、そのままでは、これらは干渉しない。
そのため、前記偏光フィルタ(PF)は、紙面に平行と垂直の中間の角度の偏光(この偏光を破線楕円で囲んだ破線両方向矢印の偏光状態シンボル(pa)で表す)の成分のみを透過するよう、角度を調整して配置することにより、前記偏光フィルタ(PF)を透過した前記拡大物体光束(Fe)と前記参照光束(Fr)とは干渉性を有するようになる。
そして、撮像素子(Uf)の撮像面に干渉像(If)が形成されるため、前記したように干渉像データを取得することができる。
ここで、前記拡大レンズ(Ue)の前記顕微鏡用対物レンズ(Ue1)と前記物体(To)との間に前記1/4波長板(Rt)を挿入する理由は、前記照明光束(Fi’)が前記追加レンズ(Ue2)や前記追加レンズ(Ue2)を構成するレンズ面、さらには、前記1/4波長板(Rt)の前記顕微鏡用対物レンズ(Ue1)への対向面や前記偏光ビームスプリッタ(PBS)の前記追加レンズ(Ue2)への対向面から反射して戻った迷光が、前記撮像素子(Uf)に混入して余計な光ノイズを生ずることを、前記偏光ビームスプリッタ(PBS)の機能を利用して防止するためである(参考文献:特許−3014158号公報)。
実際、そのような迷光が生じても、その偏光は紙面に平行であるから、前記偏光ビームスプリッタ(PBS)の戻っても、その偏光分離機能面にP偏光で入射し、それを高効率で透過して、前記撮像素子(Uf)の方向へは向かわないため、光ノイズ防止の効果が発揮される。
このように、前記1/4波長板(Rt)による光ノイズ防止は有効であるが、これが、無視できない厚さを有することにより、前記屈折光学素子(Ux)としての副作用を呈するため、前記顕微鏡用対物レンズ(Ue1)が取り込む、結像光束の拡がり角の大きさに依存する収差を発生する問題がある。
因みに、この収差の問題を回避するために、前記1/4波長板(Rt)に替えて、結像光束の拡がり角が小さい箇所に対する、図において破線で示した1/4波長板(Rt’)の挿入とする対策もあると考えるかも知れないが、この場合には、前記した(反射する面として挙げたものの最後のものを除く全てからの)迷光の偏光が紙面に垂直になって前記偏光ビームスプリッタ(PBS)に戻り、前記撮像素子(Uf)に向かうため、光ノイズ防止の効果は無い。
いま述べた、前記屈折光学素子(Ux)としての前記1/4波長板(Rt)が発生する収差の問題は、図4の本装置によって取得した干渉像データに基づき、前記第1の工程および前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4の工程、前記第5の工程に基づき、あるいは、前記第1の工程および前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4’の工程に基づき解決することができ、前記1/4波長板(Rt)の収差の影響を排除したディジタルホログラフィイメージング技術に基づく計算によって、前記物体(To)の近傍の光電界の再構成を行うことができる。
なお、この装置の場合、入力像側、出力像側の両方においてテレセントリックであり、主光線は全て光軸(w)に平行であるから、前記した式5の判定は、 is の w 成分のみで決まる。
また、この装置における前記拡大レンズ(Ue)はアフォーカル系であるから、前記したように Γh(u,v) = 0 としてよい。
ここで、前記拡大レンズ(Ue)の前記入力像平面(Pc)および前記出力像平面(Pd)の位置について補足しておく。
前記拡大レンズ(Ue)を構成する前記顕微鏡用対物レンズ(Ue1)および前記追加レンズ(Ue2)、前記開口絞リ(Ua)は自ら構造を決定するものであるから、それらの相対位置は既知である。
入力像側、出力像側の両方においてテレセントリックとなるという条件を課すと、前記顕微鏡用対物レンズ(Ue1)に相対的な前記入力像平面(Pc)の位置、および前記追加レンズ(Ue2)に相対的な前記出力像平面(Pd)の位置は、近軸光学理論に基づき容易に計算できる。
なお、前記第1の工程において、前記拡大レンズ(Ue)の出力像平面(Pd)における光電界分布 Ψd(u,v) を計算する際に、前記撮像素子(Uf)の前記撮像面(Pf)から前記出力像平面(Pd)に至る相対距離を決定する必要があるが、これについては、前記拡大レンズ(Ue)と前記偏光ビームスプリッタ(PBS)、前記撮像素子(Uf)は自ら構造を決定するものであるから、それらの相対位置は既知であり、よって、決定可能である。
たたし、前記偏光ビームスプリッタ(PBS)は厚いガラス板と同等であるから、前記した式4と同様の計算により、光軸(w)の方向での前記出力像平面(Pd)のシフトを補正する必要がある。
さらに、ここで、1/4波長板について補足しておく。
1/4波長板は、複屈折性を有する材料(例えば水晶)を含んで構成された光学素子で、進相軸と遅相軸との2軸を有しており、入射光の偏光方向が、進相軸に平行な場合と、遅相軸に平行な場合とでは、位相差が実質的に1/4波長となるような厚さを有し、本図の光学系では、入射光の偏光方向と各軸との角度が45度となるように1/4波長板を設置することにより、直線偏光を円偏光に変換するために用いている。
ただし、位相差が真に1/4波長となるような厚さは極めて薄く、単独では製造または形状維持が困難であるため、第1の形態として、そのような材料の薄膜を、ガラス板表面に形成したもの、または、2枚のガラス板で挟んだものが製造されたり、あるいは第2の形態として、1/4波長の位相差に相当する厚さの差を有する2枚の複屈折性材料を用意して、進相軸どうし遅相軸どうしが直交するように合わせたものが製造されたり、さらにあるいは第3の形態として、位相差が波長の整数倍と1/4波長の和になる厚さとしたものが製造されるなどしている。
したがって、前記第4の工程または前記第4’の工程においては、第1の形態のものでは、実質的に収差を発生させるものは前記ガラス板であるため、その屈折率と厚さ(2枚のガラス板で挟んだものの場合は厚さの和)を、前記屈折光学素子(Ux)の屈折率 ηx と厚さ τx として計算すればよい。
第2の形態のものでは、進相軸と遅相軸の差異影響がほとんど打ち消し合う構造であるため、進相軸に平行な偏光に対する屈折率と遅相軸に平行な偏光に対する屈折率との平均の屈折率と2枚の複屈折材料の厚さの和を、前記屈折光学素子(Ux)の屈折率 ηx と厚さ τx として計算すればよい。
第3の形態のものでは、厚さが増すほど進相軸と遅相軸の屈折率の差異の収差への影響が累積するが、極端に厚いものでない限り(厚いほど、与える位相差の誤差が波長偏差に過敏になるため、そのような波長板は実用的でなく、極端に厚いものは実際上存在しない)、進相軸に平行な偏光に対する屈折率と遅相軸に平行な偏光に対する屈折率との平均の屈折率と複屈折材料の厚さを、前記屈折光学素子(Ux)の屈折率 ηx と厚さ τx として計算すればよい。
図4では、前記参照光束(Fr)の軸が、前記拡大物体光束(Fe)の軸と同軸であるように描いてあるが、前記参照光束(Fr)の光軸を、撮像素子(Uf)の撮像面に対して垂直ではなく、少し傾けて設定することにより、前記拡大物体光束(Fe)の光軸と同軸にしない、いわゆるオフアクシス型とするものを想定している。
正弦波的な濃度型回折格子からは、+1次,0次,−1次の回折光が発生することに対応して、(ディジタルホログラフィイメージングを含む)ホログラフィにおいては、再構成される像も、正規像である+1次像,0次像(透過光),−1次像(共役像)の3種類が発生する。
オフアクシス型にしない場合(インライン型の場合)は、これら3種類の像を形成する光束が全て同じ方向に出力され、正規像に対して邪魔なノイズが重畳される結果となる。
オフアクシス型にする目的は、そのようにすることによって、これら3種類の像を形成する光束の方向が分離され、正規像に対して邪魔なノイズが重畳される問題を回避することにある。
ただし、オフアクシス型にすると干渉像(If)の干渉縞が細かくなるため、撮像素子(Uf)として、画素寸法が微細で大画素数のものを使う必要が生じ、計算処理も重くなる欠点がある。
この問題を回避したい場合は、インライン型とした上で、前記した正規像に対して邪魔なノイズが重畳される問題を回避することが必要であるが、これに関しては従来より多種類の提案が行われている。
例えば、一例を挙げれば、前記参照光束(Fr)の位相をシフトさせた、複数枚の前記干渉像(If)を撮像し、そのデータを用いた計算によって像を再構成する方法がある。(OPTICS LETTERS, Vol.22, No.16, Aug.15, 1997 p1268-1270, Yamaguchi I. et al: "Phase-shifting digital holography")
本装置においても、これを適用することが可能であり、前記参照光束(Fr)の位相をシフトさせるために、例えば、ピエゾ素子等による微動機構を用いて前記ミラー(Mr)を移動可能なように改造することにより実現できる。
本装置の特に光学系の構成につき、若干補足しておく。
前記撮像素子(Uf)のダイナミックレンジを有効に利用するためには、前記干渉像(If)のコントラストが最も高くなるよう、前記撮像素子(Uf)の撮像面における、前記拡大物体光束(Fe)の照度と、前記参照光束(Fr)の照度とは概ね等しいことが望ましく、よって、条件に応じて、これらのバランスを調整することができる機構を設けるべきである。
その一例として、前記偏光フィルタ(PF)を光軸(w)の回りに連続的に回転させることができるようにしてもよい。
図示した光学系においては、前記光源ビーム(As)を前記ビームスプリッタ(BS)で分離して生成した前記照明光束生成光学系用ビーム(Ai)と前記参照光束生成光学系用ビーム(Ar)とを、空中を飛ばすことによって、前記照明光束生成光学系(Ui)と前記参照光束生成光学系(Ur)とに導くものを例示したが、例えば光ファイバを使用した光回路技術を利用して、光ファイバ中に導かれた光源からの光に対し、方向性結合器によって照明光用の光と参照光用の光とに分離し、光ファイバによって前記照明光束生成光学系(Ui)と前記参照光束生成光学系(Ur)とに導くようにしてもよい。
その際に用いる光ファイバの種類としては、偏波保存型シングルモードファイバを選択することが好適である。
以上においては、本装置が落射照明型のディジタルホログラフィ顕微鏡で、前記屈折光学素子(Ux)が前記1/4波長板(Rt)である実施例について詳細に説明したが、本発明は、それ以外の屈折光学素子(Ux)に対しても、また、落射照明型でない反射型の、あるいは透過照明型のディジタルホログラフィイメージング装置に対しても有効である。
例えば、撮像対象物と本装置とが厚いガラス板で隔離されている場合や、撮像対象物が液体中にある場合(液体とガラス板の両方がある場合も含む)、に、これらガラス板や液体の存在による収差を除去したいとき、本発明を有効に活用できる。
その際、ガラス板が平行平板ではなく、例えば楔型であったり、表面が球面であった場合でも、前記した、表面形状に合わせた計算を行うことにより、収差を除去することが可能である。
なお、いま述べた、撮像対象物が液体中にある場合では、前記第5の工程または前記第4’の工程において、空気中としていた空間が液体になる訳であるから、空間の屈折率に液体の屈折率を適用して計算すればよい。
また撮像対象物が液体中にある場合で、撮像対象物が液体中に浮遊しているときは、撮像対象物の液体中での深さ、すなわち前記物体(To)より前記拡大レンズ(Ue)の側に存在する液体層の厚さを知る必要がある。
そのためには、例えば合焦法によって前記物体(To)の光軸(w)方向の位置を決定した上で、その液体の屈折率を前記した式4に適用した計算により、軸方向像浮揚を補正して、液体層の厚さを知ることができる。
本発明は、例えばディジタルホログラフィ顕微鏡のような、観察対象の物体を拡大するための拡大レンズを有するディジタルホログラフィイメージング装置を設計・製造する産業において利用可能である。
A’ 点
Ah 入力像点
Ai 照明光束生成光学系用ビーム
Ao 入力像点
Ar 参照光束生成光学系用ビーム
As 光源ビーム
B’ 点
BEi ビームエキスパンダ
BEr ビームエキスパンダ
Bh 出力像点
Bo 出力像点
BS ビームスプリッタ
C’ 点
C” 点
Df 干渉像データ
F 入力側焦点
Fe 拡大物体光束
Fe’ 拡大物体光束
Fe” 拡大物体光束
Fi 照明光束
Fi’ 照明光束
Fi” 照明光束
Fo 物体情報光束
Fo’ 物体情報光束
Fr 参照光束
Fr’ 参照光束
Fr” 参照光束
Fx 屈折素子透過光束
If 干渉像
Lh 入力光線
Lic コリメータレンズ
Lif 集光レンズ
Lrc コリメータレンズ
Lrf 集光レンズ
Mi ミラー
Mr ミラー
O’ 点
Oc 軸上物点屈折像
Od 軸上物点拡大像
Oo 軸上物点
pa 偏光状態シンボル
PBS 偏光ビームスプリッタ
pc 偏光状態シンボル
Pc 入力像平面
Pd 出力像平面
PF 偏光フィルタ
Pf 撮像面
Ph 点
Po 物体観察面
pp 偏光状態シンボル
ps 偏光状態シンボル
Rt 4波長板
Rt’ 4波長板
Sa 入力側境界面
Sb 出力側境界面
Sf 球面
Td 物体拡大像
To 物体
Ua 開口絞リ
Ue 拡大レンズ
Ue1 顕微鏡用対物レンズ
Ue2 追加レンズ
Uf 撮像素子
Uh ピンホール開口
Ui 照明光束生成光学系
Up 処理装置
Ur 参照光束生成光学系
Us 光源
Ux 屈折光学素子
w 光軸

Claims (3)

  1. 光源(Us)から発する光による照明光束(Fi)によって照明された物体(To)の拡大像を生成するための拡大レンズ(Ue)を有し、該拡大レンズ(Ue)から出力される拡大物体光束(Fe)と、前記光源(Us)から発する光による参照光束(Fr)とを重畳せしめることによって、撮像素子(Uf)の撮像面(Pf)に形成される干渉像(If)を前記撮像素子(Uf)によって撮像して干渉像データ(Df)を取得し、該干渉像データ(Df)を用いた計算によって前記物体(To)の像を再生するためのディジタルホログラフィイメージング装置であって、前記物体(To)と前記拡大レンズ(Ue)との間に屈折光学素子(Ux)が挿入されたディジタルホログラフィイメージング装置における、前記物体(To)の像を再生するための物体像再生方法であって、
    前記干渉像データ(Df)を用いて、前記撮像面(Pf)から前記拡大レンズ(Ue)の出力像平面(Pd)に向かう方向の光伝播シミュレーションによって、前記拡大レンズ(Ue)の出力像平面(Pd)における光電界分布 Ψd を計算する第1の工程と、
    前記出力像平面(Pd)における前記光電界分布 Ψd を用いて、前記拡大レンズ(Ue)が無収差レンズであることを仮定した場合における前記拡大レンズの入力像平面(Pc)における光電界分布 Ψc を計算する第2の工程と、
    前記入力像平面(Pc)における前記光電界分布 Ψc を用いて、前記屈折光学素子(Ux)が存在しないと仮定した場合における干渉像データ取得時の光の伝播方向と同じ方向の光伝播シミュレーションによって、前記屈折光学素子(Ux)の出力側境界面(Sb)における光電界分布 Ψb を計算する第3の工程と、
    前記出力側境界面(Sb)における前記光電界分布 Ψb を用いて、前記屈折光学素子(Ux)の内部領域における干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションによって、前記屈折光学素子(Ux)の入力側境界面(Sa)における光電界分布 Ψa を計算する第4の工程と、
    前記入力側境界面(Sa)における前記光電界分布 Ψa を用いて、前記物体(To)が存在する空間における干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションによって、前記物体(To)の位置の近傍に設けた物体観察面(Po)における光電界分布 Ψo を計算する第5の工程と、
    を含むことを特徴とする物体像再生方法。
  2. 前記屈折光学素子(Ux)が平行平板であるディジタルホログラフィイメージング装置において、
    前記第4の工程と前記第5の工程に替えて、
    前記出力側境界面(Sb)における前記光電界分布 Ψb を用いて、干渉像データ取得時の光の伝播方向と逆方向の光伝播シミュレーションによって、前記物体(To)の位置の近傍に設けた物体観察面(Po)における光電界分布 Ψo を計算するに際しては、前記出力側境界面(Sb)の点から前記入力側境界面(Sa)を経由して前記物体観察面(Po)の点に至る光路長を、フェルマーの原理に従う光路を見出して計算する第4’の工程とすることを特徴とする請求項1に記載の物体像再生方法。
  3. 前記照明光束(Fi)を生成するための光束を前記拡大レンズ(Ue)の出力側から入射せしめることと、前記拡大物体光束(Fe)と前記参照光束(Fr)とを合波することのための偏光ビームスプリッタ(PBS)と、合波された前記拡大物体光束(Fe)と前記参照光束(Fr)とに干渉性を持たせるための偏光フィルタ(PF)とを、前記ディジタルホログラフィイメージング装置がさらに有し、前記屈折光学素子(Ux)が1/4波長板であることを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の物体像再生方法。
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