JP2020176594A - エンジンの制御方法および制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンして燃費性能を高めつつ燃焼安定性を確保する。
【解決手段】希薄燃焼領域Aでエンジンが運転されているときは、混合気の空燃比が理論空燃比よりも高い状態で混合気を燃焼させる希薄燃焼モードを実施し、このときに、気筒2内に既燃ガスを再導入させるとともに、気筒2の壁温が高いときの方が低いときよりも気筒2に再導入される既燃ガスの量を少なくする。希薄燃焼領域よりもエンジン回転数が高い領域でエンジンが運転されているときは、気筒2内の混合気の空燃比が理論空燃比以下の状態で混合気を燃焼させるストイキ/リッチ燃焼モードを実施する。気筒2の壁温が高いときの方が低いときよりも、希薄燃焼領域Aの範囲を規定するエンジン回転数の上限値を高い値にする。
【選択図】図8
【解決手段】希薄燃焼領域Aでエンジンが運転されているときは、混合気の空燃比が理論空燃比よりも高い状態で混合気を燃焼させる希薄燃焼モードを実施し、このときに、気筒2内に既燃ガスを再導入させるとともに、気筒2の壁温が高いときの方が低いときよりも気筒2に再導入される既燃ガスの量を少なくする。希薄燃焼領域よりもエンジン回転数が高い領域でエンジンが運転されているときは、気筒2内の混合気の空燃比が理論空燃比以下の状態で混合気を燃焼させるストイキ/リッチ燃焼モードを実施する。気筒2の壁温が高いときの方が低いときよりも、希薄燃焼領域Aの範囲を規定するエンジン回転数の上限値を高い値にする。
【選択図】図8
Description
本発明は、エンジンの制御方法およびエンジンの制御装置に関する。
車両等に設けられるエンジンにおいて、燃費性能を高めるためにエンジンに形成された気筒内の混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン(理論空燃比よりも高く)して混合気を燃焼させることが行われている。ただし、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンにすると、燃焼が不安定になりやすいという問題がある。
これに対して、例えば特許文献1には、エンジン負荷が低くエンジン回転数が低い領域において、排気弁を排気行程に加えて吸気行程にも開弁させることで排気通路に一旦排出された既燃ガスを再び気筒内に導入しながら、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンにしたエンジンが開示されている。
特許文献1のエンジンによれば、高温の既燃ガスが気筒に再導入されることで燃焼室内の温度を高めることができ、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンにしても安定して混合気を燃焼させることができる。しかしながら、エンジン回転数が高いときには、排気弁が開弁している時間は短くなることで十分な既燃ガスを気筒に再導入できなくなり、燃焼安定性を十分に確保できないおそれがある。
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンにして燃費性能を高めつつ燃焼安定性を確保できるエンジンの制御方法および制御装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、エンジンの制御方法であって、気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比よりも高い状態で混合気が燃焼する希薄燃焼モードと、気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比以下となる状態で混合気が燃焼するストイキ/リッチ燃焼モードとのいずれの燃焼モードを実施するかを決定するモード決定工程と、前記モード決定工程で決定された燃焼モードで混合気が燃焼するようにエンジンの各部を制御する燃焼制御工程と、気筒の壁温を推定または取得する壁温取得工程とを含み、前記燃焼制御工程では、前記希薄燃焼モードの実施時に、気筒内で生成されて気筒外に排出された既燃ガスを気筒に再導入させるとともに、前記壁温取得工程で推定または取得された気筒の壁温である取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも気筒に再導入される既燃ガスの量を少なくし、前記モード決定工程では、所定の希薄燃焼領域でエンジンが運転されているときは前記希薄燃焼モードを実施すべき燃焼モードとして決定し、前記希薄燃焼領域よりもエンジン回転数が高いストイキ/リッチ燃焼領域でエンジンが運転されているときは前記ストイキ/リッチ燃焼モードを実施すべき燃焼モードとして決定するとともに、前記取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも、前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を高い値に設定する、ことを特徴とするエンジンの制御方法を提供する(請求項1)。
この方法では、気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比よりも高い状態(リーンな状態)で混合気を燃焼させる希薄燃焼モードの実施時つまり希薄燃焼の実施時に高温の既燃ガスが混合気に混入されるので、混合気の温度を高めて燃焼安定性を高めることができる。そのため、混合気の空燃比を理論空燃比よりも高くしながらこれを適切に燃焼させることができる。
ここで、気筒の壁温が低い時は燃焼安定性が悪くなりやすい。これに対して、本方法では、気筒の壁温が低いときには高いときよりも多量の高温の既燃ガスが気筒に再導入されるので、燃焼安定性の悪化を抑制することができる。
ただし、既燃ガスを気筒に再導入するためには気筒と外部の通路(吸気通路や排気通路)とを連通させる必要があるが、エンジン回転数が高いときはこの連通期間の時間が短くなり気筒内に再導入される既燃ガスが確保されないおそれがある。これに対して、この方法では、気筒の壁温が低いときは、希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値つまり希薄燃焼領域に含まれるエンジン回転数の最大値を低い値に設定して、エンジン回転数がより低い運転条件のときに燃焼モードが希薄燃焼モードからストイキ/リッチ燃焼モードに切り替えられる。そのため、既燃ガスの量が不足している状態で希薄燃焼が実施されるのを回避することができ、燃焼安定性を確保することができる。
そして、気筒の壁温が高く燃焼安定性が高いとき、つまり、エンジン回転数が高いこと伴って気筒に再導入される既燃ガスの量が少なく抑えられても燃焼安定性を確保できるときには、希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を高い値に設定している。そのため、気筒の壁温が高いときには、より広い領域で安定した希薄燃焼を実現することができ、燃費性能を高めることができる。
このように、本方法では、気筒の壁温に応じて気筒に再導入される既燃ガスの量と希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値とを適切に変更しており、安定した希薄燃焼を実現して燃費性能を確実に高めることができる。
前記構成において、好ましくは、前記モード決定工程では、前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値として、希薄燃焼開始回転数上限値と、当該希薄燃焼開始回転数上限値よりも高い希薄燃焼終了回転数上限値とを決定し、前記ストイキ/リッチ燃焼モードの実施中にエンジン回転数が前記希薄燃焼開始回転数上限値以下になると、前記ストイキ/リッチ燃焼モードから前記希薄燃焼モードへと実施すべき燃焼モードを切替え、前記希薄燃焼モードの実施中にエンジン回転数が前記希薄燃焼終了回転数上限値より高くなると、前記希薄燃焼モードから前記ストイキ/リッチ燃焼モードへと実施すべき燃焼モードを切替えるとともに、前記取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも前記希薄燃焼開始回転数上限値および前記希薄燃焼終了回転数上限値をそれぞれ高い値に設定する(請求項2)。
この構成によれば、希薄燃焼モードから他の燃焼モードに頻繁に切り替えられるのを防止できるとともに、希薄燃焼モードが実施される運転領域を気筒の壁温に応じて適切に変更できる。
前記構成において、好ましくは、前記モード決定工程では、前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を前記取得気筒壁温に応じて段階的に変化させる(請求項3)。
この構成によれば、希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を変更するための制御構成を簡素化できる。
また、本発明は、エンジンの制御装置であって、エンジンに形成された気筒内の空気と燃料の混合気の空燃比を変更可能な空燃比変更手段と、気筒内で生成されて気筒外に排出された既燃ガスを気筒に再導入させるEGR実行手段と、気筒の壁温を推定あるいは取得する壁温取得手段と、前記空燃比変更手段、前記EGR実行手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、所定の希薄燃焼領域でエンジンが運転されているときは、混合気の燃焼モードが、気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比よりも高い状態で混合気が燃焼する希薄燃焼モードとなり、前記希薄燃焼領域よりもエンジン負荷が高いときは、混合気の燃焼モードが、気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比以下となる状態で混合気が燃焼するストイキ/リッチ燃焼モードとなるように、前記空燃比変更手段を制御するとともに、前記希薄燃焼モードの実施中、既燃ガスが気筒内に再導入されるように、且つ、前記壁温取得手段により推定あるいは取得された気筒の壁温である取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも気筒に再導入される既燃ガスの量が少なくなるように前記EGR実行手段を制御し、前記取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも、前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を高い値に設定する、ことを特徴とするエンジンの制御装置を提供する(請求項4)。
この装置によっても、前記の方法と同様に、気筒の壁温に応じて気筒に再導入される既燃ガスの量と希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値とを適切に変更することができ、安定した希薄燃焼を実現して燃費性能を確実に高めることができる。
前記構成において、好ましくは、前記制御手段は、前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値として、希薄燃焼開始回転数上限値と、当該希薄燃焼開始回転数上限値よりも高い希薄燃焼終了回転数上限値とを決定し、前記ストイキ/リッチ燃焼モードの実施中にエンジン回転数が前記希薄燃焼開始回転数上限値以下になると混合気の燃焼モードが前記希薄燃焼モードに切替わり、前記希薄燃焼モードの実施中にエンジン回転数が前記希薄燃焼終了回転数上限値より高くなると混合気の燃焼モードが前記ストイキ/リッチ燃焼モードに切替わるように、前記空燃比変更手段を制御し、前記取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも前記希薄燃焼開始回転数上限値および前記希薄燃焼終了回転数上限値をそれぞれ高い値に設定する(請求項5)。
この構成によれば、前記の構成と同様に、燃焼モードが希薄燃焼モードから他の燃焼モードに頻繁に切り替えられるのを防止できるとともに、希薄燃焼モードが実施される運転領域を気筒の壁温に応じて適切に変更できる。
前記構成において、好ましくは、前記制御手段は、前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を前記取得気筒壁温に応じて段階的に変化させる(請求項6)。
この構成によれば、前記の構成と同様に、希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を変更するための制御構成を簡素化できる。
以上説明したように、本発明のエンジンの制御方法および制御装置によれば、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンして燃費性能を高めつつ燃焼安定性を確保することができる。
(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明のエンジンの制御方法および制御装置が適用されたエンジンの全体構成を概略的に示したシステム図である。本図に示されるエンジンシステムは、車両に搭載されており、走行用の動力源となるエンジン本体1を備える。本実施形態では、エンジン本体1として、4サイクルのガソリン直噴エンジンが用いられている。エンジンシステムは、エンジン本体1に加えて、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路30と、エンジン本体1から排出される排気が流通する排気通路40と、排気通路40を流通する排気の一部を吸気通路30に還流するEGR装置50を備えている。
図1は、本発明のエンジンの制御方法および制御装置が適用されたエンジンの全体構成を概略的に示したシステム図である。本図に示されるエンジンシステムは、車両に搭載されており、走行用の動力源となるエンジン本体1を備える。本実施形態では、エンジン本体1として、4サイクルのガソリン直噴エンジンが用いられている。エンジンシステムは、エンジン本体1に加えて、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路30と、エンジン本体1から排出される排気が流通する排気通路40と、排気通路40を流通する排気の一部を吸気通路30に還流するEGR装置50を備えている。
エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、気筒2を上から閉塞するようにシリンダブロック3の上面に取り付けられたシリンダヘッド4と、気筒2にそれぞれ往復摺動可能に挿入されたピストン5とを有している。エンジン本体1は、典型的には複数の気筒2(例えば、図1の紙面と直交する方向に並ぶ4つの気筒2)を有する多気筒型のものであるが、ここでは簡略化のため、1つの気筒2のみに着目して説明を進める。
ピストン5の上方には燃焼室6が画成されており、燃焼室6には、ガソリンを主成分とする燃料が、後述するインジェクタ15からの噴射によって供給される。そして、供給された燃料が燃焼室6で空気と混合されつつ燃焼し、その燃焼による膨張力で押し下げられたピストン5が上下方向に往復運動する。なお、燃焼室6に噴射される燃料には、主成分としてガソリンを含有したものが用いられる。この燃料には、ガソリンに加えてバイオエタノール等の副成分が含まれてもよい。
ピストン5の下方には、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸7が設けられている。クランク軸7は、ピストン5とコネクティングロッド8を介して連結され、ピストン5の往復運動(上下運動)に応じて中心軸回りに回転駆動される。
気筒2の幾何学的圧縮比、つまりピストン5が上死点にあるときの燃焼室6の容積とピストン5が下死点にあるときの燃焼室6の容積との比は、後述するSPCCI燃焼(部分圧縮着火燃焼)に好適な値として、13以上30以下に設定される。
シリンダブロック3には、クランク軸7の回転角度(クランク角)およびクランク軸7の回転数(エンジン回転数)を検出するクランク角センサSN1が設けられている。また、シリンダブロック3には、シリンダブロック3に形成されたウォータジャケットを流通してエンジン本体1を冷却するためのエンジン冷却水の温度(以下、適宜、エンジン水温という)を検出するエンジン水温センサSN2が設けられている。
シリンダヘッド4には、燃焼室6に開口する吸気ポート9および排気ポート10と、吸気ポート9を開閉する吸気弁11と、排気ポート10を開閉する排気弁12とが設けられている。なお、当実施形態のエンジンのバルブ形式は、吸気2バルブ×排気2バルブの4バルブ形式であり、吸気ポート9、排気ポート10、吸気弁11および排気弁12は、1つの気筒2についてそれぞれ2つずつ設けられている。本実施形態では、1つの気筒2に接続された2つの吸気ポート9のうちの一方に、開閉可能なスワール弁18が設けられており、気筒2内のスワール流(気筒軸線の回りを旋回する旋回流)の強さが変更される。
吸気弁11および排気弁12は、シリンダヘッド4に配設された一対のカム軸等を含む動弁機構13、14により、クランク軸7の回転に連動して開閉駆動される。
吸気弁11用の動弁機構13には、吸気弁11の少なくとも開時期を変更可能な吸気VVT13aが内蔵されている。同様に、排気弁12用の動弁機構14には、排気弁12の少なくとも閉時期を変更可能な排気VVT14aが内蔵されている。
本実施形態では、これら吸気VVT13aおよび排気VVT14aの制御により、排気弁12の閉弁時期が吸気弁11の開弁時期よりも遅角側の時期とされて、吸気弁11および排気弁12がともに所定の期間開弁するバルブオーバーラップが実現される。また、吸気VVT13aおよび排気VVT14aの制御により、これら吸気弁11と排気弁12の双方が開弁する期間であるバルブオーバーラップ期間が変更される。吸気弁11と排気弁12とがバルブオーバーラップするように駆動されると、燃焼室6から吸気通路30と排気通路40の少なくとも一方に既燃ガスが排出された後、この既燃ガスが再び燃焼室6に導入される内部EGRが行われ、燃焼室6に既燃ガス(内部EGRガス)が残留することになる。燃焼室6に残留する既燃ガスである内部EGRガスの量は、バルブオーバーラップ期間によって変化し、前記のバルブオーバーラップ期間の調整によって内部EGRガスの量が調整される。なお、吸気VVT13a(排気VVT14a)は、吸気弁11(排気弁12)の開時期(閉時期)を固定したまま閉時期(開時期)のみを変更するタイプの可変機構であってもよいし、吸気弁11(排気弁12)の開時期および閉時期を同時に変更する位相式の可変機構であってもよい。
シリンダヘッド4には、燃焼室6に燃料(主にガソリン)を噴射するインジェクタ15と、インジェクタ15から燃焼室6に噴射された燃料と燃焼室6に導入された空気との混合気に点火する点火プラグ16とが設けられている。シリンダヘッド4には、さらに、燃焼室6の圧力である筒内圧を検出する筒内圧センサSN3が設けられている。
インジェクタ15は、その先端部に複数の噴孔を有した多噴孔型のインジェクタであり、当該複数の噴孔から放射状に燃料を噴射することが可能である。インジェクタ15は、その先端部がピストン5の冠面の中心部と対向するように設けられている。なお、図示は省略するが、本実施形態では、ピストン5の冠面に、その中央部を含む領域をシリンダヘッド4とは反対側(下方)に凹陥させたキャビティが形成されている。
点火プラグ16は、インジェクタ15に対し吸気側に幾分ずれた位置に配置されている。
吸気通路30は、吸気ポート9と連通するようにシリンダヘッド4の一側面に接続されている。吸気通路30の上流端から取り込まれた空気(吸気、新気)は、吸気通路30および吸気ポート9を通じて燃焼室6に導入される。
吸気通路30には、その上流側から順に、吸気中の異物を除去するエアクリーナ31と、吸気の流量を調整する開閉可能なスロットル弁32と、吸気を圧縮しつつ送り出す過給機33と、過給機33により圧縮された吸気を冷却するインタークーラ35と、サージタンク36とが設けられている。
吸気通路30の各部には、吸気の流量(吸気量)を検出するエアフローセンサSN4と、吸気の温度(吸気温)を検出する吸気温センサSN5とが設けられている。エアフローセンサSN4は、吸気通路30におけるエアクリーナ31とスロットル弁32との間の部分に設けられ、当該部分を通過する吸気の流量を検出する。吸気温センサSN5は、サージタンク36に設けられ、当該サージタンク36内の吸気の温度を検出する。
過給機33は、エンジン本体1と機械的に連係された機械式の過給機(スーパーチャージャ)である。過給機33の具体的な形式は特に問わないが、例えばリショルム式、ルーツ式、または遠心式といった公知の過給機のいずれかを過給機33として用いることができる。過給機33とエンジン本体1との間には、締結と解放を電気的に切り替えることが可能な電磁クラッチ34が介設されている。電磁クラッチ34が締結されると、エンジン本体1から過給機33に駆動力が伝達されて、過給機33による過給が行われる。一方、電磁クラッチ34が解放されると、前記駆動力の伝達が遮断されて、過給機33による過給が停止される。
吸気通路30には、過給機33をバイパスするためのバイパス通路38が設けられている。バイパス通路38は、サージタンク36と後述するEGR通路51とを互いに接続している。バイパス通路38には開閉可能なバイパス弁39が設けられている。バイパス弁39は、サージタンク36に導入される吸気の圧力つまり過給圧を調整するための弁である。例えば、バイパス弁39の開度が大きくなるほど、バイパス通路38を通じて過給機33の上流側に逆流する吸気の流量が多くなる結果、過給圧は低くなる。
排気通路40は、排気ポート10と連通するようにシリンダヘッド4の他側面に接続されている。燃焼室6で生成された既燃ガス(排気)は、排気ポート10および排気通路40を通じて外部に排出される。
排気通路40には触媒コンバータ41が設けられている。触媒コンバータ41には、排気に含まれる有害成分(HC、CO、NOx)を浄化するための三元触媒41aと、排気中に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するためのGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルタ)41bとが、この順で上流側から内蔵されている。
排気通路40には、排気の温度(排気温)を検出する排気温センサSN6が設けられている。排気温センサSN6は、排気通路40のうち触媒コンバータ41よりも上流側の部分に設けられている。
EGR装置50は、排気通路40と吸気通路30とを接続するEGR通路51と、EGR通路51に設けられたEGRクーラ52およびEGR弁53とを有している。EGR通路51は、排気通路40における触媒コンバータ41よりも下流側の部分と、吸気通路30におけるスロットル弁32と過給機33との間の部分とを互いに接続している。EGRクーラ52は、EGR通路51を通じて排気通路40から吸気通路30に還流される排気(外部EGRガス)を熱交換により冷却する。EGR弁53は、EGRクーラ52よりも下流側(吸気通路30に近い側)のEGR通路51に開閉可能に設けられ、EGR通路51を流通する排気の流量を調整する。
EGR通路51には、EGR弁53の上流側の圧力と下流側の圧力との差を検出するための差圧センサSN7が設けられている。
排気通路40には、排気通路40を開閉する排気シャッタ弁61が設けられている。排気シャッタ弁61は、排気通路40のうちEGR通路51の接続部分よりも下流側に取り付けられている。排気シャッタ弁61は、不図示の駆動装置によって開閉駆動されて、排気通路40の流路面積を変更する。排気シャッタ弁61の開度が閉じ側の開度とされると、排気通路40の流路面積が低減することでエンジンの背圧は上昇する。エンジンの背圧が上昇すると、燃焼室6から排気通路40に導出される排気の量は低減し、燃焼室6内に残留する既燃ガスである内部EGRガスの量は増加する。
本実施形態では、前記のように、吸気弁11と排気弁12のバルブオーバーラップ期間の調整によって内部EGRの量が調整されるとともに、排気シャッタ弁61によっても内部EGRガスの量が増減されるようになっている。これより、これら吸気弁11と排気弁12の開閉時期を変更する吸気VVT13aと排気VVT14aおよび排気シャッタ弁61が、請求項の「EGR実行手段」に相当する。また、燃焼室6内の混合気の空燃比は、主としてスロットル弁32の開度とインジェクタ15とによって変更され、少なくともこれらスロットル弁32とインジェクタ15とが請求項の「空燃比変更手段」として機能する。
(2)制御系統
図3は、エンジンの制御系統を示すブロック図である。本図に示されるECU100は、エンジンを統括的に制御するためのマイクロプロセッサであり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
図3は、エンジンの制御系統を示すブロック図である。本図に示されるECU100は、エンジンを統括的に制御するためのマイクロプロセッサであり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
ECU100には各種センサによる検出信号が入力される。例えば、ECU100は、前述したクランク角センサSN1、エンジン水温センサSN2、筒内圧センサSN3、エアフローセンサSN4、吸気温センサSN5、排気温センサSN6、差圧センサSN7と電気的に接続されており、これらのセンサによって検出された情報(つまりクランク角、エンジン回転数、エンジン水温、筒内圧、吸気量、吸気温、排気温、EGR弁53の前後差圧)がECU100に逐次入力される。また、車両には、当該車両を運転するドライバーにより操作されるアクセルペダルの開度を検出するアクセルセンサSN8が設けられており、このアクセルセンサSN8による検出信号もECU100に入力される。
ECU100は、前記各センサからの入力信号に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつエンジンの各部を制御する。すなわち、ECU100は、吸気VVT13a、排気VVT14a、インジェクタ15、点火プラグ16、スワール弁18、スロットル弁32、電磁クラッチ34、バイパス弁39、EGR弁53、および排気シャッタ弁61(排気シャッタ弁61を駆動する装置)等と電気的に接続されており、前記演算の結果等に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。このECU100は、請求項の「制御手段」および「壁温取得手段」に相当する。つまり、本実施形態では、ECU100が、「制御手段」と「壁温取得手段」の双方の機能を果たす。
(3)基本制御
図4は、エンジン回転数とエンジン負荷とに応じた燃焼モードの相違を説明するためのマップ図である。本図に示すように、エンジンの運転領域は、3つの運転領域、第1運転領域Aと第2運転領域Bと第3運転領域Cとに大別される。第3運転領域Cは、エンジン回転数が所定のSI実施回転数N1以上の領域である。第1運転領域Aは、エンジン回転数がSI実施回転数N1未満の領域のエンジン負荷が低い側であって極低負荷領域を除く領域である。第2運転領域Bは、第1運転領域Aと第3運転領域C以外の残余の領域である。
図4は、エンジン回転数とエンジン負荷とに応じた燃焼モードの相違を説明するためのマップ図である。本図に示すように、エンジンの運転領域は、3つの運転領域、第1運転領域Aと第2運転領域Bと第3運転領域Cとに大別される。第3運転領域Cは、エンジン回転数が所定のSI実施回転数N1以上の領域である。第1運転領域Aは、エンジン回転数がSI実施回転数N1未満の領域のエンジン負荷が低い側であって極低負荷領域を除く領域である。第2運転領域Bは、第1運転領域Aと第3運転領域C以外の残余の領域である。
詳細は後述するが、第1運転領域AではリーンSPCCI燃焼モードが実施され、第2運転領域BではストイキSPCCI燃焼モードが実施され、第3運転領域CではSI燃焼モードが実施される。
本実施形態では、前記の第1運転領域Aが請求項の「希薄燃焼領域」に相当し、リーンSPCCI燃焼モードが請求項の「希薄燃焼モード」に相当する。また、ストイキSPCCI燃焼モードが請求項の「ストイキ/リッチ燃焼モード」に相当する。そして、第2運転領域Bのうち第1運転領域Aよりもエンジン回転数が高い領域(エンジン回転数が後述する開始側上限エンジン回転数Nmx_Iあるいは終了側上限エンジン回転数Nmx_Oよりも高い領域)が請求項の「ストイキ/リッチ燃焼領域」に相当する。
以下では、適宜、第1運転領域AをリーンSPCCI領域Aといい、第2運転領域BをストイキSPCCI領域Bといい、第3運転領域CをSI領域Cという。
本実施形態では、リーンSPCCI領域Aを区画するエンジン負荷とエンジン回転数とが、燃焼モードを他のモードからリーンSPCCI燃焼モードに切り替えるときと、リーンSPCCI燃焼モードから他のモードに切り替えるときとで異なる値とされている。
具体的には、ストイキSPCCI燃焼モードまたはSI燃焼モードが実施されているときは、リーンSPCCI領域Aは、エンジン負荷が所定の開始側上限エンジン負荷Tmx_I以下且つ開始側下限エンジン負荷Tmn_I以上で(Tmn_IはTmx_Iよりも低い値に設定されている)、エンジン回転数が所定の開始側上限エンジン回転数Nmx_I以下に設定された開始側領域A_Iとされる。そして、ストイキSPCCI燃焼モードまたはSI燃焼モードが実施されているときに、エンジンの運転ポイントがこの開始側領域A_I内に移行すると、燃焼モードがリーンSPCCI燃焼モードに切り替えられる。
一方、リーンSPCCI燃焼モードが実施されているときは、リーンSPCCI領域Aは、エンジン負荷が所定の終了側上限エンジン負荷Tmx_O以下且つ終了側下限エンジン負荷Tmn_O以上で(Tmn_OはTmx_Oよりも低い値に設定されている)、エンジン回転数が所定の終了側上限エンジン回転数Nmx_O以下に設定された終了側領域A_Oとされる。そして、リーンSPCCI燃焼モードが実施されているときに、エンジンの運転ポイントがこの終了側領域A_Oから外れると、燃焼モードがリーンSPCCI燃焼モード以外のモード(ストイキSPCCI燃焼モードまたはSI燃焼モード)に切り替えられる。
なお、終了側上限エンジン負荷Tmx_Oは、前記の開始側上限エンジン負荷Tmx_Iよりも高い値に設定されている。終了側下限エンジン負荷Tmn_Oは、前記の開始側下限エンジン負荷Tmn_Iよりも低い値に設定されている。終了側上限エンジン回転数Nmx_Oは、前記の開始側上限エンジン回転数Nmx_Iよりも高い値に設定されている。
ここで、前記の開始側上限エンジン回転数Nmx_Iが請求項の「希薄燃焼開始回転数上限値」に相当し、前記の終了側上限エンジン回転数Nmx_Oが請求項の「希薄燃焼終了回転数上限値」に相当する。
(3−1)リーンSPCCI領域AおよびストイキSPCCI領域B
リーンSPCCI領域AおよびストイキSPCCI領域Bでは、SI燃焼とCI燃焼とをミックスした圧縮着火燃焼(以下、これをSPCCI燃焼という)が実行される。なお、SPCCI燃焼における「SPCCI」とは、「Spark Controlled Compression Ignition」の略である。
リーンSPCCI領域AおよびストイキSPCCI領域Bでは、SI燃焼とCI燃焼とをミックスした圧縮着火燃焼(以下、これをSPCCI燃焼という)が実行される。なお、SPCCI燃焼における「SPCCI」とは、「Spark Controlled Compression Ignition」の略である。
SI燃焼とは、点火プラグ16により混合気に点火し、その点火点から周囲へと燃焼領域を拡げていく火炎伝播により混合気を強制的に燃焼させる形態のことである。CI燃焼とは、ピストン5の圧縮により高温・高圧化された環境下で混合気を自着火により燃焼させる形態のことである。そして、これらSI燃焼とCI燃焼とをミックスしたSPCCI燃焼とは、混合気が自着火する寸前の環境下で行われる火花点火により燃焼室6内の混合気の一部をSI燃焼させ、当該SI燃焼の後に(SI燃焼に伴うさらなる高温・高圧化により)燃焼室6内の残りの混合気を自着火によりCI燃焼させる、という燃焼形態のことである。
図5は、SPCCI燃焼が起きたときのクランク角に対する熱発生率(J/deg)の変化を示したグラフである。SPCCI燃焼では、SI燃焼時の熱発生がCI燃焼時の熱発生よりも穏やかになる。例えば、SPCCI燃焼が行われたときの熱発生率の波形は、図5に示すように、立ち上がりの傾きが相対的に小さくなる。また、燃焼室6における圧力変動(つまりdP/dθ:Pは筒内圧 θはクランク角度)も、SI燃焼時はCI燃焼時よりも穏やかになる。言い換えると、SPCCI燃焼時の熱発生率の波形は、SI燃焼によって形成された相対的に立ち上がりの傾きが小さい第1熱発生率部(M1で示した部分)と、CI燃焼によって形成された相対的に立ち上がりの傾きが大きい第2熱発生部(M2で示した部分)とが、この順に連続するように形成される。
SI燃焼によって、燃焼室6内の温度および圧力が高まると、これに伴い未燃混合気が自着火し、CI燃焼が開始される。図5に例示するように、この自着火のタイミング(つまりCI燃焼が開始するタイミング)で、熱発生率の波形の傾きが小から大へと変化する。すなわち、SPCCI燃焼における熱発生率の波形は、CI燃焼が開始するタイミングで現れる変曲点(図5のX)を有している。
CI燃焼の開始後は、SI燃焼とCI燃焼とが並行して行われる。CI燃焼は、SI燃焼よりも熱発生が大きいため、熱発生率は相対的に大きくなる。ただし、CI燃焼は、圧縮上死点の後に行われるため、熱発生率の波形の傾きが過大になることはない。すなわち、圧縮上死点を過ぎるとピストン5の下降によりモータリング圧力が低下するので、このことが熱発生率の上昇を抑制する結果、CI燃焼時のdP/dθが過大になることが回避される。このように、SPCCI燃焼では、SI燃焼の後にCI燃焼が行われるという性質上、燃焼騒音の指標となるdP/dθが過大になり難く、単純なCI燃焼(全ての燃料をCI燃焼させた場合)に比べて燃焼騒音を抑制することができる。
CI燃焼の終了に伴いSPCCI燃焼も終了する。CI燃焼はSI燃焼に比べて燃焼速度が速いので、単純なSI燃焼(全ての燃料をSI燃焼させた場合)に比べて燃焼終了時期を早めることができる。言い換えると、SPCCI燃焼では、燃焼終了時期を膨張行程内において圧縮上死点に近づけることができる。これにより、SPCCI燃焼では、単純なSI燃焼に比べて燃費性能を向上させることができる。
(a)リーンSPCCI領域A
リーンSPCCI領域Aでは、燃費性能を高めるために、燃焼室6内の空燃比(A/F)が理論空燃比よりも高く(リーンに)されつつSPCCI燃焼が実施されて、混合気の燃焼モードとして、空燃比が理論空燃比よりも高い混合気をSPCCI燃焼させるリーンSPCCI燃焼モードが実施される。以下では、空燃比が理論空燃比よりも高い混合気のSPCCI燃焼をリーンSPCCI燃焼という。
リーンSPCCI領域Aでは、燃費性能を高めるために、燃焼室6内の空燃比(A/F)が理論空燃比よりも高く(リーンに)されつつSPCCI燃焼が実施されて、混合気の燃焼モードとして、空燃比が理論空燃比よりも高い混合気をSPCCI燃焼させるリーンSPCCI燃焼モードが実施される。以下では、空燃比が理論空燃比よりも高い混合気のSPCCI燃焼をリーンSPCCI燃焼という。
本実施形態では、リーンSPCCI領域Aにおいて、燃焼室6内で生成されるNOxであるrawNOxの量が十分に小さくなる程度にまで燃焼室6内の空燃比が高くされる。例えば、リーンSPCCI領域Aにおいて燃焼室6内の空燃比は30程度とされる。
リーンSPCCI領域Aでは、インジェクタ15は、燃焼室6内の空燃比(A/F)が前記のように理論空燃比よりも高くなるような量の燃料を燃焼室6に噴射する。本実施形態では、1サイクル中に燃焼室6に供給すべき燃料の全量が吸気行程中に燃焼室6に噴射されるように、インジェクタ15は駆動される。例えば、図6に示すように、リーンSPCCI領域Aでは、吸気行程中に大半の燃料が噴射され(Q1)、圧縮行程中に2回に分けて残りの燃料が噴射される(Q2、Q3)。
リーンSPCCI領域Aでは、図6に示すように、点火プラグ16は、圧縮上死点付近で混合気に点火する。この点火をきっかけにSPCCI燃焼が開始され、燃焼室6内の一部の混合気が火炎伝播により燃焼(SI燃焼)し、その後に残りの混合気が自着火により燃焼(CI燃焼)する。なお、混合気を活性化させるために、圧縮上死点付近で実施する点火よりも前に追加で点火を行ってもよい。
リーンSPCCI領域Aでは、スロットル弁32の開度は全開または全開に近い開度とされる。
リーンSPCCI領域Aでは、EGR弁53は全閉とされて、燃焼室6に導入される外部EGRガスの量がゼロとされる。これは、混合気の温度が低下して燃焼安定性が悪化するのを防止するためである。具体的には、本実施形態では、前記のように外部EGRガスはEGRクーラ52により冷却されており、外部EGRガスの温度は比較的温度が低い。そのため、このような比較的温度の低い外部EGRガスが燃焼室6に導入されると、混合気の温度が十分に上昇せず適切なCI燃焼が実現されないおそれがある。そこで、リーンSPCCI領域Aでは、燃焼室6への外部EGRガスの導入を停止する。
リーンSPCCI領域Aでは、吸気VVT13aおよび排気VVT14aが、吸気弁11と排気弁12を、これら吸気弁11と排気弁12とが排気上死点を跨いで所定期間開弁してバルブオーバーラップが実現するように駆動する。これは、混合気の温度を高めるためである。具体的には、吸気弁11と排気弁12とのバルブオーバーラップが実施されると、前記のように内部EGRが実行されて、燃焼室6に高温の既燃ガスが残留することになる。高温の既燃ガスが燃焼室6に残留すれば、混合気の温度が高められることで混合気を適切にCI燃焼させることができる。そこで、リーンSPCCI領域Aでは、吸気VVT13aおよび排気VVT14a(吸気弁11および排気弁12)を前記のように制御する。リーンSPCCI領域Aでは、例えば、吸気弁11と排気弁12のバルブオーバーラップ期間は、50〜70°CA(クランク角)程度とされ、リーンSPCCI領域Aの全域でほぼ一定とされる。
リーンSPCCI領域Aでは、スワール弁18は全閉もしくは全閉に近い低開度まで閉じられる。
リーンSPCCI領域Aでは、過給機33の駆動は停止される。すなわち、電磁クラッチ34が解放されて過給機33とエンジン本体1との連結が解除されるとともに、バイパス弁39が全開とされることにより、過給機33による過給が停止される。
リーンSPCCI領域Aでは、排気シャッタ弁61の開度は全開あるいは全開よりも閉じ側の開度とされる。リーンSPCCI領域Aにおける排気シャッタ弁61の開度の詳細な制御については後述する。
(b)ストイキSPCCI領域B
エンジン負荷が極めて低い領域では、燃焼室6内で生成される燃焼エネルギーが低いために混合気の温度が低く抑えられる。エンジン回転数が高い領域では、吸気弁11と排気弁12のバルブオーバーラップ期間の時間が短くなることで燃焼室6に残留する既燃ガスつまり内部EGRガスの量が少なくなるため、混合気の温度が低く抑えられる。これより、これらの領域では、SI燃焼が緩慢になって適切なタイミングでCI燃焼を生じさせるのが困難になり、燃焼安定性が悪化しやすい。これに対して、混合気の空燃比を理論空燃比以下とすれば、SI燃焼の燃焼速度を速くして適切なタイミングでCI燃焼を生じさせることが可能になり、燃焼安定性が高まるとともに、NOxを三元触媒41aにおいて浄化することが可能になる。また、エンジン負荷が高い領域では、燃焼室6内に供給される燃料の量が多いことで混合気の空燃比をリーンにするのが困難になる。
エンジン負荷が極めて低い領域では、燃焼室6内で生成される燃焼エネルギーが低いために混合気の温度が低く抑えられる。エンジン回転数が高い領域では、吸気弁11と排気弁12のバルブオーバーラップ期間の時間が短くなることで燃焼室6に残留する既燃ガスつまり内部EGRガスの量が少なくなるため、混合気の温度が低く抑えられる。これより、これらの領域では、SI燃焼が緩慢になって適切なタイミングでCI燃焼を生じさせるのが困難になり、燃焼安定性が悪化しやすい。これに対して、混合気の空燃比を理論空燃比以下とすれば、SI燃焼の燃焼速度を速くして適切なタイミングでCI燃焼を生じさせることが可能になり、燃焼安定性が高まるとともに、NOxを三元触媒41aにおいて浄化することが可能になる。また、エンジン負荷が高い領域では、燃焼室6内に供給される燃料の量が多いことで混合気の空燃比をリーンにするのが困難になる。
これより、本実施形態では、リーンSPCCI領域Aよりもエンジン負荷が低い領域と、リーンSPCCI領域Aよりもエンジン負荷が高い領域と、リーンSPCCI領域Aよりもエンジン回転数が高い領域とを含むストイキSPCCI領域Bでは、燃焼室6内の空燃比を理論空燃比以下としつつ混合気をSPCCI燃焼させる。すなわち、ストイキSPCCI領域Bでは、混合気の燃焼モードとして、空燃比が理論空燃比以下の混合気をSPCCI燃焼させるストイキSPCCI燃焼モードが実施される。以下では、適宜、空燃比が理論空燃比以下の混合気のSPCCI燃焼をストイキSPCCI燃焼という。本実施形態では、ストイキSPCCI領域Bにおいて、混合気の空燃比はほぼ理論空燃比とされる。なお、ストイキSPCCI燃焼モードは、前記のように、混合気の空燃比が理論空燃比以下とされる燃焼モードであり、混合気の空燃比がストイキであって理論空燃比とされる燃焼モードに限らず、混合気の空燃比が理論空燃比よりも小さくされる燃焼モードも含む。 ストイキSPCCI領域Bでは、インジェクタ15は、前記のように空燃比が理論空燃比となるような量の燃料を燃焼室6に噴射する。本実施形態では、1サイクル中に噴射すべき燃料の大半が吸気行程中に噴射され、残りの燃料が圧縮行程中に噴射されるように、インジェクタ15は駆動される。
ストイキSPCCI領域Bでも、点火プラグ16は、圧縮上死点付近で混合気に点火する。ストイキSPCCI領域Bにおいても、この点火をきっかけにSPCCI燃焼が開始され、燃焼室6内の一部の混合気が火炎伝播により燃焼(SI燃焼)し、その後に残りの混合気が自着火により燃焼(CI燃焼)する。
ストイキSPCCI領域Bでも、スロットル弁32の開度は全開または全開に近い開度とされる。
ストイキSPCCI領域Bでは、混合気の空燃比が理論空燃比とされることで燃焼安定性が高められており、混合気の温度が多少低くても混合気を適切にCI燃焼させることが可能になる。これより、ストイキSPCCI領域Bでは、EGR弁53が開かれて外部EGRガスが燃焼室6に導入される。ただし、エンジン負荷が高いときは多量の空気を燃焼室6に導入せねばならないため、外部EGRガスの燃焼室6への導入量を低減する必要がある。そこで、ストイキSPCCI領域Bでは、燃焼室6に導入される外部EGRガスの量が高負荷側ほど少なくなるようにEGR弁53の開度が制御され、エンジン負荷が最大となる領域ではEGR弁53は全閉にされる。
ストイキSPCCI領域Bでも、吸気VVT13aおよび排気VVT14aは、吸気弁11と排気弁12を、これら吸気弁11と排気弁12とが排気上死点を跨いで所定期間開弁するように(吸気弁11と排気弁12のバルブオーバーラップが実現されるように)駆動する。
ストイキSPCCI領域Bでは、スワール弁18は、全閉/全開を除いた適宜の中間開度まで開かれ、その開度は、エンジン負荷が高いほど大きくされる。
過給機33は、ストイキSPCCI領域Bのうちエンジン回転数およびエンジン負荷がともに低い側では停止される。一方、ストイキSPCCI領域Bのその他の領域では、過給機33は稼働される。すなわち、電磁クラッチ34が締結されて過給機33とエンジン本体1とが連結される。このとき、サージタンク36内の圧力(過給圧)が、運転条件(回転数/負荷)ごとに予め定められた目標圧力に一致するように、バイパス弁39の開度が制御される。
ストイキSPCCI領域Bでは、排気シャッタ弁61は全開とされる。
(3−2)SI領域
SI領域Cでは、比較的オーソドックスなSI燃焼が実行される。このSI燃焼の実現のために、SI領域Cでは、インジェクタ15は、少なくとも吸気行程と重複する所定の期間にわたって燃料を噴射する。点火プラグ16は、圧縮上死点付近で混合気に点火する。SI領域Cでは、この点火をきっかけにSI燃焼が開始され、燃焼室6内の混合気の全てが火炎伝播により燃焼する。
SI領域Cでは、比較的オーソドックスなSI燃焼が実行される。このSI燃焼の実現のために、SI領域Cでは、インジェクタ15は、少なくとも吸気行程と重複する所定の期間にわたって燃料を噴射する。点火プラグ16は、圧縮上死点付近で混合気に点火する。SI領域Cでは、この点火をきっかけにSI燃焼が開始され、燃焼室6内の混合気の全てが火炎伝播により燃焼する。
SI領域Cでは、過給機33は稼働される。スロットル弁32は全開とされる。EGR弁53は、燃焼室6内の空燃比(A/F)が理論空燃比もしくはこれよりややリッチとなるように、その開度が制御される。スワール弁18は全開とされる。排気シャッタ弁61は全開とされる。
(4)燃焼室の壁温に応じた制御
(4−1)リーンSPCCI領域Aの範囲
前記のように、リーンSPCCI燃焼は混合気の空燃比が理論空燃比よりも高くされることで燃焼安定性が悪化しやすい。そのため、燃焼室6の壁温が低く混合気の温度上昇が抑制されるときには、リーンSPCCI燃焼を実施しようとしてもこれを適切に実現できないおそれがある。これに対して、高温の既燃ガスである内部EGRガスの量を多くすれば、混合気の温度を高めることができる。しかしながら、内部EGRガスの量が多くなると燃焼室6内に導入可能な空気の量が低減するので、得られるエンジントルクが低くなってしまう。また、前記のように、エンジン回転数が高いときには、吸気弁11と排気弁12とをバルブオーバーラップさせることによって燃焼室6に導入できる内部EGRガスの量が少なくなる。そのため、エンジン回転数が高いときは、混合気の温度を十分に高めるのに必要な内部EGRガス量を確保できなくなる。そこで、ECU100は、燃焼室6の壁温つまり気筒2の壁温に応じてリーンSPCCI領域Aの範囲を変更する。
(4−1)リーンSPCCI領域Aの範囲
前記のように、リーンSPCCI燃焼は混合気の空燃比が理論空燃比よりも高くされることで燃焼安定性が悪化しやすい。そのため、燃焼室6の壁温が低く混合気の温度上昇が抑制されるときには、リーンSPCCI燃焼を実施しようとしてもこれを適切に実現できないおそれがある。これに対して、高温の既燃ガスである内部EGRガスの量を多くすれば、混合気の温度を高めることができる。しかしながら、内部EGRガスの量が多くなると燃焼室6内に導入可能な空気の量が低減するので、得られるエンジントルクが低くなってしまう。また、前記のように、エンジン回転数が高いときには、吸気弁11と排気弁12とをバルブオーバーラップさせることによって燃焼室6に導入できる内部EGRガスの量が少なくなる。そのため、エンジン回転数が高いときは、混合気の温度を十分に高めるのに必要な内部EGRガス量を確保できなくなる。そこで、ECU100は、燃焼室6の壁温つまり気筒2の壁温に応じてリーンSPCCI領域Aの範囲を変更する。
ECU100は、エンジン水温センサSN2で検出されたエンジン水温に基づいて燃焼室6の壁温を推定する。ECU100は、推定した燃焼室6の壁温(以下、適宜、燃焼室壁温という)に応じて、リーンSPCCI領域Aの範囲を規定するエンジン負荷の上限値つまりリーンSPCCI領域Aに含まれるエンジン負荷の最大値、および、リーンSPCCI領域Aの範囲を規定するエンジン回転数の上限値つまりリーンSPCCI領域Aに含まれるエンジン回転数の最大値を変更する。これにより、ECU100は、リーンSPCCI領域Aを、図7に示す第1領域A1と、図8に示す第2領域A2と、図9に示す第3領域A3との間で切り替える。
ECU100は、開始側上限エンジン負荷Tmx_Iを、燃焼室壁温が第1判定温度以上のときは第1開始側上限負荷Tmx1_Iに設定し、燃焼室壁温が第1判定温度未満且つ第2判定温度以上のときは、第1開始側上限負荷Tmx1_Iよりも小さい第2開始側上限負荷Tmx2_Iに設定し、燃焼室壁温が第2判定温度未満のときは第2開始側上限負荷Tmx2_Iよりも小さい第3開始側上限負荷Tmx3_Iに設定する。なお、第1判定温度、第2判定温度、各開始側上限負荷Tmx1_I、Tmx2_I、Tmx3_Iは、予め設定されてECU100に記憶されている。また、第2判定温度は、第1判定温度よりも低い温度に設定されている。例えば、第1判定温度は116°に設定され、第2判定温度は90°に設定される。
ECU100は、終了側上限エンジン負荷Tmx_Oを、燃焼室壁温が第1判定温度以上のときは第1終了側上限負荷Tmx1_Oに設定し、燃焼室壁温が第1判定温度未満且つ第2判定温度以上のときは第1終了側上限負荷Tmx1_Oよりも小さい第2終了側上限負荷Tmx2_Oに設定し、燃焼室壁温が第2判定温度未満のときは第2終了側上限負荷Tmx2_Oよりも小さい第3終了側上限負荷Tmx3_Oに設定する。なお、各終了側上限負荷Tmx1_O、Tmx2_O、Tmx3_Oも、予め設定されてECU100に記憶されている。
第1終了側上限負荷Tmx1_Oは第1開始側上限負荷Tmx1_Iよりも大きい値に設定され、第2終了側上限負荷Tmx2_Oは第2開始側上限負荷Tmx2_Iよりも大きい値に設定され、第3終了側上限負荷Tmx3_Oは第3開始側上限負荷Tmx3_Iよりも大きい値に設定されている。
ECU100は、開始側上限エンジン回転数Nmx_Iを、燃焼室壁温が第1判定温度以上のときは第1開始側上限回転数Nmx1_Iに設定し、燃焼室壁温が第1判定温度未満且つ第2判定温度以上のときは第1開始側上限回転数Nmx1_Iよりも小さい第2開始側上限回転数Nmx2_Iに設定し、燃焼室壁温が第2判定温度未満のときは第2開始側上限回転数Nmx2_Iよりも小さい第3開始側上限回転数Nmx3_Iに設定する。なお、各開始側上限回転数Nmx1_I、Nmx2_I、Nmx3_Iも、予め設定されてECU100に記憶されている。
ECU100は、終了側上限エンジン回転数Nmx_Oを、燃焼室壁温が第1判定温度以上のときは第1終了側上限回転数Nmx1_Oに設定し、燃焼室壁温が第1判定温度未満且つ第2判定温度以上のときは第1終了側上限回転数Nmx1_Oよりも小さい第2終了側上限回転数Nmx2_Oに設定し、燃焼室壁温が第2判定温度未満のときは第2終了側上限回転数Nmx2_Oよりも小さい第3終了側上限回転数Nmx3_Oに設定する。なお、各終了側上限回転数Nmx1_O、Nmx2_O、Nmx3_Oも、予め設定されてECU100に記憶されている。
第1終了側上限回転数Nmx1_Oは第1開始側上限回転数Nmx1_Iよりも大きい値に設定され、第2終了側上限回転数Nmx2_Oは第2開始側上限回転数Nmx2_Iよりも大きい値に設定され、第3終了側上限回転数Nmx3_Oは第3開始側上限回転数Nmx3_Iよりも大きい値に設定されている。
一方、ECU100は、開始側下限エンジン負荷Tmn_I、終了側下限エンジン負荷Tmn_O、開始側下限エンジン回転数Nmn_Iを、それぞれ予め設定された所定値に決定し、燃焼室壁温に関わらずこれら所定値に維持する。
これより、燃焼室壁温が第1判定温度以上のときは、リーンSPCCI領域Aは、エンジン負荷が第1開始側上限負荷Tmx1_I以下且つ開始側下限エンジン負荷Tmn_I以上で、エンジン回転数が第1開始側上限回転数Nmx1_I以下且つ開始側下限エンジン回転数Nmn_I以上の開始側第1領域A1_I(リーンSPCCI燃焼モードではない燃焼モードが実施されているとき)、あるいは、エンジン負荷が第1終了側上限負荷Tmx1_O以下且つ終了側下限エンジン負荷Tmn_O以上で、エンジン回転数が第1終了側上限回転数Nmx1_O以下の終了側第1領域A1_O(リーンSPCCI燃焼モードが実施されているとき)とされる。以下では、これら開始側第1領域A1_Iと終了側第1領域A1_Oとをまとめて第1領域A1という。
また、燃焼室壁温が第1判定温度以上且つ第2判定温度未満のときは、リーンSPCCI領域Aは、エンジン負荷が第2開始側上限負荷Tmx2_I以下且つ開始側下限エンジン負荷Tmn_I以上で、エンジン回転数が第2開始側上限回転数Nmx2_I以下且つ開始側下限エンジン回転数Nmn_I以上の開始側第2領域A2_I(リーンSPCCI燃焼モードではない燃焼モードが実施されているとき)、あるいは、エンジン負荷が第2終了側上限負荷Tmx2_O以下且つ終了側下限エンジン負荷Tmn_O以上で、エンジン回転数が第2終了側上限回転数Nmx2_O以下の終了側第2領域A2_O(リーンSPCCI燃焼モードが実施されているとき)とされる。以下では、これら開始側第2領域A2_Iと終了側第2領域A2_Oとをまとめて第2領域A2という。
また、燃焼室壁温が第2判定温度未満のときは、リーンSPCCI領域Aは、エンジン負荷が第3開始側上限負荷Tmx3_I以下且つ開始側下限エンジン負荷Tmn_I以上で、エンジン回転数が第3開始側上限回転数Nmx3_I以下且つ開始側下限エンジン回転数Nmn_I以上の開始側第3領域A3_I(リーンSPCCI燃焼モードではない燃焼モードが実施されているとき)、あるいは、エンジン負荷が第3終了側上限負荷Tmx3_O以下且つ終了側下限エンジン負荷Tmn_O以上で、エンジン回転数が第3終了側上限回転数Nmx3_O以下の終了側第3領域A3_O(リーンSPCCI燃焼モードではない燃焼モードが実施されているとき)とされる。以下では、これら開始側第3領域A3_Iと終了側第3領域A3_Oとをまとめて第3領域A3という。
このように、本実施形態では、燃焼室壁温に応じて、リーンSPCCI領域Aが第1領域A1と第2領域A2と第3領域A3とで切り替えられて、燃焼室壁温が低いときの方が高いときよりも、リーンSPCCI領域Aの範囲を規定するエンジン負荷の上限値およびエンジン回転数の上限値がそれぞれ小さくされる。
なお、本実施形態では、リーンSPCCI領域Aでエンジンが運転されていないとき、つまり、リーンSPCCI燃焼が実施されていないときにのみ、リーンSPCCI領域Aの切替えが行われるようになっており、リーンSPCCI燃焼の実施中に燃焼室壁温が第1判定温度あるいは第2判定温度をまたいで変化しても、リーンSPCCI領域Aの切替は実施されない。
また、リーンSPCCI領域Aの範囲が変更されるのに伴ってストイキSPCCI領域Bの範囲も変更される。具体的には、SI実施回転数N1未満の領域のうち変更後のリーンSPCCI領域Aを除く領域がストイキSPCCI領域Bに設定される。
(4−2)排気シャッタ弁61の制御
本実施形態では、リーンSPCCI領域Aにおいて、排気シャッタ弁61の制御パターンが、燃焼室壁温に応じて、図10に示す第1パターンと第2パターンと第3パターンとに切り替えられる。
本実施形態では、リーンSPCCI領域Aにおいて、排気シャッタ弁61の制御パターンが、燃焼室壁温に応じて、図10に示す第1パターンと第2パターンと第3パターンとに切り替えられる。
ECU100は、燃焼室壁温が第1判定温度以上のときは、排気シャッタ弁61の制御パターンを第1パターンに設定する。第1パターンは、排気シャッタ弁61をエンジン負荷およびエンジン回転数に関わらず全開にするパターンであり、燃焼室壁温が第1判定温度以上のときは、リーンSPCCI領域A(第1領域A1)の全域において排気シャッタ弁61は全開にされる。
これに対して、ECU100は、燃焼室壁温が第1判定温度未満且つ第2判定温度以上のときは、排気シャッタ弁61の制御パターンを第2パターンに設定する。第2パターンは、リーンSPCCI領域A(第2領域A2)において、排気シャッタ弁61の開度を全開よりも閉じ側の開度とするパターンである。これより、燃焼室壁温が第1判定温度未満且つ第2判定温度以上のときは、リーンSPCCI領域A(第2領域A2)の全域において排気シャッタ弁61は全開よりも閉じ側であって燃焼室壁温が第1判定温度以上のときの開度よりも閉じ側とされる。
本実施形態では、第2パターンは、エンジン負荷が低いほど排気シャッタ弁61の開度が閉じ側の開度となるように設定されている。これより、燃焼室壁温が第1判定温度未満且つ第2判定温度以上のときは、リーンSPCCI領域A(第2領域A2)において、排気シャッタ弁61はエンジン負荷が低いほど閉じられる。なお、排気シャッタ弁61の開度はエンジン回転数に対しては一定の値に維持されるようになっており、エンジン負荷が同じ場合はエンジン回転数が異なっても排気シャッタ弁61の開度は同じ開度とされる。
また、ECU100は、燃焼室壁温が第2判定温度未満のときは、排気シャッタ弁61の制御パターンを第3パターンに設定する。第3パターンは、リーンSPCCI領域A(第3領域A3)において、排気シャッタ弁61の開度を、全開よりも閉じ側で、且つ、第2パターンの開度よりも閉じ側の開度とするパターンである。具体的には、第3パターンの排気シャッタ弁61の開度は、同じ運転ポイント(エンジン回転数およびエンジン負荷が同じとき)での第2パターンの排気シャッタ弁61の開度よりも小さい(閉じ側の)開度に設定されている。これより、燃焼室壁温が第2判定温度のときは、リーンSPCCI領域A(第3領域A3)の全域において排気シャッタ弁61は全開よりも閉じ側にされるとともに、燃焼室壁温が第2判定温度以上のときよりも閉じ側とされる。
本実施形態では、第3パターンも第2パターンと同様に、エンジン負荷が低いほど排気シャッタ弁61の開度が閉じ側の開度となるように設定されている。これより、燃焼室壁温が第2判定温度未満のときは、リーンSPCCI領域A(第3領域A3)において、排気シャッタ弁61はエンジン負荷が低いほど閉じられる。なお、第3パターンにおいても、排気シャッタ弁61の開度はエンジン回転数に対しては一定の値に維持されるようになっており、エンジン負荷が同じ場合はエンジン回転数が異なっても排気シャッタ弁61の開度は同じ開度とされる。
ここで、本実施形態では、リーンSPCCI領域Aでエンジンが運転されていないとき、つまり、リーンSPCCI燃焼が実施されないときにのみ、排気シャッタ弁61の制御パターンの切替えが行われるようになっている。そのため、リーンSPCCI燃焼の実施中に燃焼室壁温が第1判定温度あるいは第2判定温度をまたいで変化しても、排気シャッタ弁61の制御パターンの切替えは実施されない。
(4−3)制御の流れ
前記の燃焼壁温に応じたリーンSPCCI領域Aの範囲の変更手順および排気シャッタ弁61の制御パターンの変更手順をまとめると図11、図12のフローチャートのようになる。
前記の燃焼壁温に応じたリーンSPCCI領域Aの範囲の変更手順および排気シャッタ弁61の制御パターンの変更手順をまとめると図11、図12のフローチャートのようになる。
まず、ステップS1にて、ECU100は、各センサSN1〜SN8で検出された値を取得する。次に、ステップS2にて、ECU100は、エンジン水温に基づいて燃焼室壁温を推定する。
次に、ステップS3にて、ECU100は、リーンSPCCI燃焼ではない燃焼が実施されているか否かを判定する。つまり、ストイキSPCCI燃焼あるいはSI燃焼の実施中であるか否かを判定する。
ステップS3の判定がNOであってリーンSPCCI燃焼が実施されている場合(リーンSPCCI燃焼モードが実施されている場合)は、ステップS4に進む。ステップS4にて、ECU100は、リーンSPCCI領域Aを現在設定されている領域に維持する。また、ステップS5にて、排気シャッタ弁61の制御パターンを現在設定されているパターンに維持する。
一方、ステップS3の判定がYESであってストイキSPCCI燃焼あるいはSI燃焼が実施されている場合は、ステップS6に進む。
ステップS6にて、ECU100は、燃焼室壁温が第1判定温度以上であるか否かを判定する。ステップS6の判定がYESであって燃焼室壁温が第1判定温度以上の場合は、ステップS7に進み、ECU100は、リーンSPCCI領域Aを第1領域A1に設定する。また、その後ステップS8に進み、ECU100は、排気シャッタ弁61の制御パターンを第1パターンに設定する。
一方、ステップS6の判定がNOであって燃焼室壁温が第1判定温度未満の場合は、ステップS9に進む。ステップS9にて、ECU100は、燃焼室壁温が第2判定温度以上であるか否かを判定する。ステップS9の判定がYESであって燃焼室壁温が第2判定温度以上(且つ第1判定温度未満)の場合は、ステップS10に進む。ステップS10にて、ECU100は、リーンSPCCI領域Aを第2領域A2に設定する。また、その後ステップS11に進み、ECU100は、排気シャッタ弁61の制御パターンを第2パターンに設定する。
また、ステップS9の判定がNOであって燃焼室壁温が第2判定温度未満の場合は、ステップS12に進む。ステップS12にて、ECU100は、リーンSPCCI領域Aを第3領域A3に設定する。また、その後ステップS13に進み、ECU100は、排気シャッタ弁61の制御パターンを第3パターンに設定する。
ステップS5、S8、S11、S13の後は、ステップS14に進む。ステップS14にて、ECU100は、現在の運転ポイントが、ステップS4、S7、S10、S12のいずれかで設定されたリーンSPCCI領域Aに含まれるか否かを判定する。なお、このとき、ステップS3の判定がYESの場合は、ステップS4、S7、S10、S12のいずれかで設定されたリーンSPCCI領域Aのうち開始側の領域(開始側第1領域A1_I、開始側第2領域A2_I、開始側第3領域A3_I)に運転ポイントが含まれるか否かを判定する。一方、ステップS3の判定がNOの場合は、ステップS4で設定されたリーンSPCCI領域Aのうち終了側の領域(終了側第1領域A1_O、終了側第2領域A2_O、終了側第3領域A3_O)に運転ポイントが含まれるか否かを判定する。
ステップS14の判定がYESであって、現在の運転ポイントがリーンSPCCI領域Aに含まれる場合は、ステップS16に進む。ステップS16にて、ECU100は、燃焼モードをリーンSPCCI燃焼モードとして、リーンSPCCI燃焼を実施する。また、ECU100は、排気シャッタ弁61をステップS5、S8、S11、S13のいずれかで設定した制御パターンで制御する。
一方、ステップS14の判定がNOであって、現在の運転ポイントがリーンSPCCI領域Aに含まれない場合は、ステップS15に進む。ステップS15にて、ECU100は、現在の運転ポイントがストイキSPCCI領域B(ステップS4,S7、S10、S12で設定されたリーンSPCCI領域AであってステップS14の判定に用いた領域に対応するストイキSPCCI領域B)に含まれるか否かを判定する。この判定がYESであって現在の運転ポイントがストイキSPCCI領域Bに含まれる場合は、ステップS17に進み、ECU100は、燃焼モードをストイキSPCCI燃焼モードに決定してストイキSPCCI燃焼を実施する。また、ECU100は、排気シャッタ弁61を全開にする。一方、ステップS15の判定がNOであって現在の運転ポイントがストイキSPCCI領域Bに含まれない場合は、ステップS18に進み、ECU100は、燃焼モードをSI燃焼モードに決定してSI燃焼を実施する。また、ECU100は、排気シャッタ弁61を全開にする。
ここで、前記のステップS2は、燃焼室6の壁温つまり気筒2の壁温を推定するステップであり、請求項の「壁温取得工程」に相当する。また、ステップS2で推定された前記燃焼室壁温が、請求項の「取得気筒壁温」に相当する。前記のステップS6〜S15は、いずれの燃焼モードを実施するかを決定するステップであり、これらのステップが請求項の「モード決定工程」に相当する。また、ステップS16、S17、S18は、決定された燃焼モードで混合気を燃焼させるステップ、つまり、決定された燃焼モードで混合気が燃焼するようにインジェクタ15や排気シャッタ弁61等のエンジンの各部を(3)で説明したように制御するステップであり、これらのステップが請求項の「燃焼制御工程」に相当する。
(5)作用等
以上のように、本実施形態では、燃焼室壁温が第2基準温度未満の低い温度のときは、リーンSPCCI領域Aが第3領域A3に設定されて、リーンSPCCI領域Aの範囲を規定するエンジン回転数の上限値が比較的低い値(第3開始側上限回転数Nmx3_Iまたは第3終了側上限回転数Nmx3_O)に設定される。そのため、燃焼が不安定になるのを回避できる。
以上のように、本実施形態では、燃焼室壁温が第2基準温度未満の低い温度のときは、リーンSPCCI領域Aが第3領域A3に設定されて、リーンSPCCI領域Aの範囲を規定するエンジン回転数の上限値が比較的低い値(第3開始側上限回転数Nmx3_Iまたは第3終了側上限回転数Nmx3_O)に設定される。そのため、燃焼が不安定になるのを回避できる。
具体的には、燃焼室壁温が低いときはリーンSPCCI燃焼の燃焼安定性は低下する。これに対して、本実施形態では、燃焼室壁温が第2基準温度未満のときには、リーンSPCCI領域Aにおける排気シャッタ弁61の制御パターンが第3パターンとされて、第1パターンおよび第2パターンに比べて、つまり、燃焼室壁温が第2基準温度以上の場合に比べて、排気シャッタ弁61の開度が閉じ側にされる。そのため、混合気の温度を高めて燃焼安定性を高めることができる。
ただし、前記のように、エンジン回転数が高いときは、吸気弁11と排気弁12のバルブオーバーラップ期間の時間が短くなる。つまり、排気通路40あるいは吸気通路30に排出された既燃ガスを燃焼室6に再導入させることができる時間が短くなる。そのため、エンジン回転数が高いときは、十分な量の既燃ガスを燃焼室6に残留できなくなる。
これに対して、本実施形態では、燃焼室壁温が第2基準温度未満であって燃焼安定性が低い場合は、エンジン回転数が比較的低いときにのみリーンSPCCI燃焼が実施されて、比較的低いエンジン回転数でリーンSPCCI燃焼から燃焼安定性の高いストイキSPCCI燃焼に切り替えられる。つまり、安定したリーンSPCCI燃焼を実現するために必要な内部EGRガス量を確保できないときには、ストイキSPCCI燃焼に切り替えられる。そのため、内部EGRガス量が不足して燃焼が不安定になるのを確実に回避できる。
一方、燃焼室壁温が第2基準温度以上であって、リーンSPCCI燃焼の燃焼安定性が高く燃焼安定性を確保するのに必要な内部EGRガス量を少なくできるときには、リーンSPCCI領域Aが第2領域A2に設定されて、リーンSPCCI領域Aの範囲を規定するエンジン回転数の上限値がより高い値(第2開始側上限回転数Nmx2_Iまたは第2終了側上限回転数Nmx2_O)に設定される。従って、燃焼室壁温が第2基準温度以上のときには、燃焼安定性を確保しつつより広い範囲でリーンSPCCI燃焼を実現することができ、燃費性能を高めることができる。また、燃焼室壁温が第2基準温度以上のときには、リーンSPCCI領域Aにおける排気シャッタ弁61の制御パターンが第2パターンとされて排気シャッタ弁61の開度が開き側にされる。これより、エンジンの背圧を小さくしてポンピングロスを低減できる。
さらに、燃焼室壁温が第1基準温度以上であって、リーンSPCCI燃焼の燃焼安定性がより一層高いときには、リーンSPCCI領域Aにおける排気シャッタ弁61の制御パターンが第1パターンとされて排気シャッタ弁61の開度が全開にされるとともに、リーンSPCCI領域Aの範囲を規定するエンジン回転数の上限値がさらに高い値(第1開始側上限回転数Nmx1_Iまたは第1終了側上限回転数Nmx1_O)に設定される。そのため、燃焼室壁温が第1基準温度以上のときには、燃焼安定性を確保しつつさらに広い範囲でリーンSPCCI燃焼を実現すること、および、ポンピングロスを低減することができ、燃費性能をより一層高めることができる。
また、本実施形態では、リーンSPCCI燃焼モードを開始する領域として、開始側領域A_Iが設定され、リーンSPCCI燃焼モードが継続される領域として、終了側領域A_Oが設定されるとともに、終了側領域A_Oの範囲を規定するエンジン回転数の上限値(終了側領域A_Oに含まれるエンジン回転数の最大値)が開始側領域A_Iの範囲を規定するエンジン回転数の上限値(開始側領域A_Iに含まれるエンジン負荷の最大値)よりも高い値に設定されている。そのため、燃焼モードがリーンSPCCI燃焼モードと他のモードとに頻繁に切り替わるのを防止でき、この切り替わりに伴って燃焼安定性が悪化するのを防止できる。また、開始側領域A_Iのエンジン回転数の上限値(最大値)と、終了側領域A_Oのエンジン回転数の上限値(最大値)との双方が、燃焼室壁温に応じて変更されることで、リーンSPCCI燃焼モードが実施される領域を燃焼室壁温に応じて適切に変更できる。
(6)変形例
前記実施形態では、燃焼モードとして、リーンSPCCI燃焼とストイキSPCCI燃焼とSI燃焼とを切り替える場合について説明したが、ストイキSPCCI燃焼あるいはSI燃焼は省略してもよい。つまり、燃焼モードがリーンSPCCI燃焼とストイキSPCCI燃焼とのみに切り替えられる、あるいは、リーンSPCCI燃焼とSI燃焼モードとに切り替えられるように構成してもよい。
前記実施形態では、燃焼モードとして、リーンSPCCI燃焼とストイキSPCCI燃焼とSI燃焼とを切り替える場合について説明したが、ストイキSPCCI燃焼あるいはSI燃焼は省略してもよい。つまり、燃焼モードがリーンSPCCI燃焼とストイキSPCCI燃焼とのみに切り替えられる、あるいは、リーンSPCCI燃焼とSI燃焼モードとに切り替えられるように構成してもよい。
また、前記実施形態のリーンSPCCI領域に対応する第1運転領域Aは、混合気がその空燃比が理論空燃比よりも高い状態で燃焼する領域であればよい。また、ストイキSPCCI領域に対応する第2運転領域Bは、混合気がその空燃比が理論空燃比以下の状態で燃焼する領域であればよい。これら運転領域A、Bの燃焼形態はSPCCI燃焼に限らない。例えば、第1運転領域Aにおいて、全ての混合気がCI燃焼させられる、あるいは、SI燃焼させられてもよい。リーンSPCCI燃焼に限らず、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンの場合は、燃焼室壁温が低いことに伴って燃焼安定性が悪化し、燃焼安定性を高めるのに高温の既燃ガスを燃焼室6に導入する必要がある。従って、第1運転領域Aと第2運転領域Bとが前記のように構成されれば、前記実施形態に係る効果と同様の効果を得ることができる。
前記実施形態では、リーンSPCCI領域Aが、範囲が互いに異なる開始側領域A_Iと終了側領域A_Oとを含む場合について説明したが、開始側領域A_Iと終了側領域A_Oとは同じ範囲に設定されてもよい。
前記実施形態では、燃焼室壁温が第1判定温度以上の場合と、第1判定温度未満且つ第2判定温度以上の場合と、第2判定温度未満の場合とで、リーンSPCCI領域Aの範囲および排気シャッタ弁61の制御パターンを変更した場合について説明した。つまり、燃焼室壁温に応じて、これら範囲および制御パターンが3段階に変更される場合について説明したが、これら範囲および制御パターンは燃焼室壁温に応じて連続的に変更されてもよい。ただし、前記変更を段階的に行うように構成すれば、リーンSPCCI領域Aの範囲を変更するための制御構成および排気シャッタ弁61の制御パターンを変更するための制御構成を簡素化することができる。なお、段階的に変更する場合においても、3段階には限らず2段階等であってもよい。
前記実施形態では、ECU100を壁温取得手段として機能させて、ECU100によってエンジン水温を用いて燃焼室壁温を推定した場合について説明した。そして、この推定した燃焼室壁温に基づいてリーンSPCCI領域Aの範囲および排気シャッタ弁61の制御パターンを変更する場合について説明した。これに対して、エンジン水温そのものに基づいてリーンSPCCI領域Aの範囲および排気シャッタ弁61の制御パターンを変更してもよい。また、燃焼室6の壁温を直接検出するセンサを設けて、このセンサによって前記の範囲および制御パターンの変更に用いる燃焼室6の壁温を取得するようにしてもよい。この場合には、このセンサの検出値に基づいて、リーンSPCCI領域Aの範囲および排気シャッタ弁61の制御パターンを変更すればよい。
前記実施形態では、吸気弁11と排気弁12とのバルブオーバーラップの実施とバルブオーバーラップ期間の変更および排気シャッタ弁61の開度変更によって燃焼室6に高温の既燃ガスを導入するとともにその導入量を調整する場合について説明したが、燃焼室6に高温の既燃ガスするためおよびその導入量を調整するための構成はこれに限らない。例えば、排気通路40内の排気がEGRクーラ52を通らずに高温のまま吸気通路30に還流されるように構成し、この還流した排気を燃焼室6に導入させ、その導入量を調整するようにしてもよい。
1 エンジン本体
2 気筒
6 燃焼室
13a 吸気VVT(EGR実行手段)
14a 排気VVT(EGR実行手段)
15 インジェクタ(空燃比変更手段)
32 スロットル弁(空燃比変更手段)
61 排気シャッタ弁(EGR実行手段)
100 ECU(制御手段、壁温取得手段)
A 希薄燃焼領域
2 気筒
6 燃焼室
13a 吸気VVT(EGR実行手段)
14a 排気VVT(EGR実行手段)
15 インジェクタ(空燃比変更手段)
32 スロットル弁(空燃比変更手段)
61 排気シャッタ弁(EGR実行手段)
100 ECU(制御手段、壁温取得手段)
A 希薄燃焼領域
Claims (6)
- エンジンの制御方法であって、
気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比よりも高い状態で混合気が燃焼する希薄燃焼モードと、気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比以下となる状態で混合気が燃焼するストイキ/リッチ燃焼モードとのいずれの燃焼モードを実施するかを決定するモード決定工程と、
前記モード決定工程で決定された燃焼モードで混合気が燃焼するようにエンジンの各部を制御する燃焼制御工程と、
気筒の壁温を推定または取得する壁温取得工程とを含み、
前記燃焼制御工程では、前記希薄燃焼モードの実施時に、気筒内で生成されて気筒外に排出された既燃ガスを気筒に再導入させるとともに、前記壁温取得工程で推定または取得された気筒の壁温である取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも気筒に再導入される既燃ガスの量を少なくし、
前記モード決定工程では、所定の希薄燃焼領域でエンジンが運転されているときは前記希薄燃焼モードを実施すべき燃焼モードとして決定し、前記希薄燃焼領域よりもエンジン回転数が高いストイキ/リッチ燃焼領域でエンジンが運転されているときは前記ストイキ/リッチ燃焼モードを実施すべき燃焼モードとして決定するとともに、前記取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも、前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を高い値に設定する、ことを特徴とするエンジンの制御方法。 - 請求項1に記載のエンジンの制御方法において、
前記モード決定工程では、
前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値として、希薄燃焼開始回転数上限値と、当該希薄燃焼開始回転数上限値よりも高い希薄燃焼終了回転数上限値とを決定し、
前記ストイキ/リッチ燃焼モードの実施中にエンジン回転数が前記希薄燃焼開始回転数上限値以下になると、前記ストイキ/リッチ燃焼モードから前記希薄燃焼モードへと実施すべき燃焼モードを切替え、
前記希薄燃焼モードの実施中にエンジン回転数が前記希薄燃焼終了回転数上限値より高くなると、前記希薄燃焼モードから前記ストイキ/リッチ燃焼モードへと実施すべき燃焼モードを切替えるとともに、
前記取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも前記希薄燃焼開始回転数上限値および前記希薄燃焼終了回転数上限値をそれぞれ高い値に設定する、ことを特徴とするエンジンの制御方法。 - 請求項1または2に記載のエンジンの制御方法において、
前記モード決定工程では、前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を前記取得気筒壁温に応じて段階的に変化させる、ことを特徴とするエンジンの制御方法。 - エンジンの制御装置であって、
エンジンに形成された気筒内の空気と燃料の混合気の空燃比を変更可能な空燃比変更手段と、
気筒内で生成されて気筒外に排出された既燃ガスを気筒に再導入させるEGR実行手段と、
気筒の壁温を推定あるいは取得する壁温取得手段と、
前記空燃比変更手段、前記EGR実行手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
所定の希薄燃焼領域でエンジンが運転されているときは、混合気の燃焼モードが、気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比よりも高い状態で混合気が燃焼する希薄燃焼モードとなり、前記希薄燃焼領域よりもエンジン負荷が高いときは、混合気の燃焼モードが、気筒内の混合気の空燃比が理論空燃比以下となる状態で混合気が燃焼するストイキ/リッチ燃焼モードとなるように、前記空燃比変更手段を制御するとともに、
前記希薄燃焼モードの実施中、既燃ガスが気筒内に再導入されるように、且つ、前記壁温取得手段により推定あるいは取得された気筒の壁温である取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも気筒に再導入される既燃ガスの量が少なくなるように前記EGR実行手段を制御し、
前記取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも、前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を高い値に設定する、ことを特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項4に記載のエンジンの制御装置において、
前記制御手段は、
前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値として、希薄燃焼開始回転数上限値と、当該希薄燃焼開始回転数上限値よりも高い希薄燃焼終了回転数上限値とを決定し、
前記ストイキ/リッチ燃焼モードの実施中にエンジン回転数が前記希薄燃焼開始回転数上限値以下になると混合気の燃焼モードが前記希薄燃焼モードに切替わり、前記希薄燃焼モードの実施中にエンジン回転数が前記希薄燃焼終了回転数上限値より高くなると混合気の燃焼モードが前記ストイキ/リッチ燃焼モードに切替わるように、前記空燃比変更手段を制御し、
前記取得気筒壁温が高いときの方が低いときよりも前記希薄燃焼開始回転数上限値および前記希薄燃焼終了回転数上限値をそれぞれ高い値に設定する、ことを特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項4または5に記載のエンジンの制御装置において、
前記制御手段は、前記希薄燃焼領域の範囲を規定するエンジン回転数の上限値を前記取得気筒壁温に応じて段階的に変化させる、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
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