JP2000130215A - 多気筒内燃機関 - Google Patents

多気筒内燃機関

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JP2000130215A JP10299882A JP29988298A JP2000130215A JP 2000130215 A JP2000130215 A JP 2000130215A JP 10299882 A JP10299882 A JP 10299882A JP 29988298 A JP29988298 A JP 29988298A JP 2000130215 A JP2000130215 A JP 2000130215A
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Takekazu Ito
丈和 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 煤及びNOxの排出を同時に阻止しつつ、燃
焼圧が不適切なときに燃焼圧を適切に制御すると共に、
燃焼圧検出手段がすべての気筒に配置されていない場合
であってもすべての気筒の燃焼圧を適切に制御する。 【解決手段】 各気筒の燃焼のばらつきを検出するため
のばらつき検出手段を具備し、前記ばらつき検出手段の
出力値に基づいて各気筒の燃焼のばらつきを補正し、燃
焼室内の燃焼圧を検出するための燃焼圧検出手段をいず
れかの気筒の燃焼室内に配置し、煤の発生量がピークと
なるEGRガス量よりも燃焼室5内に供給されるEGR
ガス量が多く煤がほとんど発生しない低温燃焼の実行時
であってクランク角センサ42の出力値に基づいて各気
筒の燃焼のばらつきが補正された後に、いずれかの気筒
に配置された燃焼圧センサ47の出力値に基づいてすべ
ての気筒の空燃比又は燃焼噴射開始時期を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は多気筒内燃機関に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来より内燃機関、例えばディーゼル機
関においてはNOxの発生を抑制するために機関排気通
路と機関吸気通路とを排気ガス再循環(以下、EGRと
称す)通路により連結し、このEGR通路を介して排気
ガス、即ちEGRガスを機関吸気通路内に再循環させる
ようにしている。この場合、EGRガスは比較的比熱が
高く、従って多量の熱を吸収することができるので、E
GRガス量を増大するほど、即ちEGR率(EGRガス
量/(EGRガス量+吸入空気量))を増大するほど燃
焼室内における燃焼温度が低下する。燃焼温度が低下す
るとNOxの発生量が低下し、従ってEGR率を増大す
ればするほどNOxの発生量は低下することになる。
【0003】このように従来よりEGR率を増大すれば
NOxの発生量を低下しうることはわかっている。しか
しながらEGR率を増大させていくとEGR率が或る限
度を越えたときに煤の発生量、即ちスモークが急激に増
大し始める。この点に関し従来より、それ以上EGR率
を増大すればスモークが限りなく増大していくものと考
えられており、従ってスモークが急激に増大し始めるE
GR率がEGR率の最大許容限界であると考えられてい
る。
【0004】従って従来よりEGR率はこの最大許容限
界を越えない範囲内に定められている。このEGR率の
最大許容限界は機関の形式や燃料によってかなり異なる
がおおよそ30パーセントから50パーセントである。
従って従来のディーゼル機関ではEGR率は最大でも3
0パーセントから50パーセント程度に抑えられてい
る。
【0005】このように従来ではEGR率に対して最大
許容限界が存在すると考えられていたので従来よりEG
R率はこの最大許容限界を越えない範囲内においてNO
xおよびスモークの発生量ができるだけ少なくなるよう
に定められていた。しかしながらこのようにしてEGR
率をNOxおよびスモークの発生量ができるだけ少なく
なるように定めてもNOxおよびスモークの発生量の低
下には限度があり、実際には依然としてかなりの量のN
Oxおよびスモークが発生してしまうのが現状である。
【0006】ところがディーゼル機関の燃焼の研究の過
程においてEGR率を最大許容限界よりも大きくすれば
上述の如くスモークが急激に増大するがこのスモークの
発生量にはピークが存在し、このピークを越えてEGR
率を更に大きくすると今度はスモークが急激に減少しは
じめ、アイドリング運転時においてEGR率を70パー
セント以上にすると、またEGRガスを強力に冷却した
場合にはEGR率をほぼ55パーセント以上にするとス
モークがほとんど零になる。即ち煤がほとんど発生しな
いことが見い出されたのである。また、このときにはN
Oxの発生量が極めて少量となることも判明している。
この後この知見に基づいて煤が発生しない理由について
検討が進められ、その結果これまでにない煤およびNO
xの同時低減が可能な新たな燃焼システムが構築される
に至ったのである。この新たな燃焼システムについては
後に詳細に説明するが簡単に言うと炭化水素が煤に成長
するまでの途中の段階において炭化水素の成長を停止さ
せることを基本としている。
【0007】即ち、実験研究を重ねた結果判明したこと
は燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス
温度が或る温度以下のときには炭化水素の成長が煤に至
る前の途中の段階で停止し、燃料およびその周囲のガス
温度が或る温度以上になると炭化水素は一気に煤まで成
長してしまうということである。この場合、燃料および
その周囲のガス温度は燃料が燃焼した際の燃料周りのガ
スの吸熱作用が大きく影響しており、燃料燃焼時の発熱
量に応じて燃料周りのガスの吸熱量を調整することによ
って燃料およびその周囲のガス温度を制御することがで
きる。
【0008】従って、燃焼室内における燃焼時の燃料お
よびその周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で停止
する温度以下に抑制すれば煤が発生しなくなり、燃焼室
内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度を炭
化水素の成長が途中で停止する温度以下に抑制すること
は燃料周りのガスの吸熱量を調整することによって可能
となる。一方、煤に至る前に成長が途中で停止した炭化
水素は酸化触媒等を用いた後処理によって容易に浄化す
ることができる。これが新たな燃焼システムの基本的な
考え方である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述したよ
うな新たな燃焼システムについてはまだ開示されていな
い。そのため、既に開示されている従来の燃焼システム
では、上述した新たな燃焼システムに基づく新たな効果
を奏することができない。
【0010】そこで、本発明は、内燃機関から煤(スモ
ーク)が排出されること及びNOxが排出されることを
同時に阻止しつつ、燃焼圧が不適切なときに燃焼圧を適
切に制御すると共に、燃焼圧検出手段がすべての気筒に
配置されていない場合であってもすべての気筒の燃焼圧
を適切に制御することができる多気筒内燃機関を提供す
ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に
よれば、燃焼室内に供給される不活性ガスの量を増大し
ていくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃
焼室内に供給される不活性ガスの量を更に増大していく
と燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス
温が煤の生成温度よりも低くなって煤がほとんど発生し
なくなる多気筒内燃機関であって、各気筒の燃焼のばら
つきを検出するためのばらつき検出手段を具備し、前記
ばらつき検出手段の出力値に基づいて各気筒の燃焼のば
らつきを補正し、燃焼室内の燃焼圧を検出するための燃
焼圧検出手段をいずれかの気筒の燃焼室内に配置し、煤
の発生量がピークとなる不活性ガスの量よりも燃焼室内
に供給される不活性ガスの量が多く煤がほとんど発生し
ない燃焼が行われている時であって各気筒の燃焼のばら
つきが補正された以後に、前記燃焼圧検出手段の出力値
に基づいてすべての気筒の空燃比を制御するようにした
多気筒内燃機関が提供される。
【0012】請求項1に記載の多気筒内燃機関では、煤
の発生量がピークとなる不活性ガスの量よりも燃焼室内
に供給される不活性ガスの量が多く煤がほとんど発生し
ない燃焼、つまり、低温の下での燃焼を行うことができ
るため、内燃機関から煤が排出されること及びNOxが
排出されることを同時に阻止することができる。更に、
燃焼圧検出手段の出力値に基づいて空燃比を制御するこ
とができるため、燃焼圧が不適切なときに空燃比を制御
することによって燃焼圧を適切に制御することができ
る。その上、各気筒の燃焼のばらつきが補正された以後
に、すべての気筒ではない、いずれか一つ又は複数の気
筒の燃焼室内に配置された燃焼圧検出手段の出力値に基
づいてすべての気筒の空燃比を制御することができるた
め、燃焼圧検出手段がすべての気筒に配置されていない
場合であってもすべての気筒の燃焼圧を適切に制御する
ことができる。
【0013】請求項2に記載の発明によれば、燃焼室内
に供給される不活性ガスの量を増大していくと煤の発生
量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内に供給され
る不活性ガスの量を更に増大していくと燃焼室内におけ
る燃焼時の燃料およびその周囲のガス温が煤の生成温度
よりも低くなって煤がほとんど発生しなくなる多気筒内
燃機関であって、各気筒の燃焼のばらつきを検出するた
めのばらつき検出手段を具備し、前記ばらつき検出手段
の出力値に基づいて各気筒の燃焼のばらつきを補正し、
燃焼室内の燃焼圧を検出するための燃焼圧検出手段をい
ずれかの気筒の燃焼室内に配置し、煤の発生量がピーク
となる不活性ガスの量よりも燃焼室内に供給される不活
性ガスの量が多く煤がほとんど発生しない燃焼が行われ
ている時であって各気筒の燃焼のばらつきが補正された
以後に、前記燃焼圧検出手段の出力値に基づいてすべて
の気筒の燃料噴射開始時期を制御するようにした多気筒
内燃機関が提供される。
【0014】請求項2に記載の多気筒内燃機関では、煤
の発生量がピークとなる不活性ガスの量よりも燃焼室内
に供給される不活性ガスの量が多く煤がほとんど発生し
ない燃焼、つまり、低温の下での燃焼を行うことができ
るため、内燃機関から煤が排出されること及びNOxが
排出されることを同時に阻止することができる。更に、
燃焼圧検出手段の出力値に基づいて燃料噴射開始時期を
制御することができるため、燃焼圧が不適切なときに燃
料噴射開始時期を制御することによって燃焼圧を適切に
制御することができる。その上、各気筒の燃焼のばらつ
きが補正された以後に、すべての気筒ではない、いずれ
か一つ又は複数の気筒の燃焼室内に配置された燃焼圧検
出手段の出力値に基づいてすべての気筒の燃料噴射開始
時期を制御することができるため、燃焼圧検出手段がす
べての気筒に配置されていない場合であってもすべての
気筒の燃焼圧を適切に制御することができる。
【0015】請求項3に記載の発明によれば、各気筒の
膨張行程を含む行程における機関角速度を検出すること
により各気筒の燃焼のばらつきを検出する請求項1又は
2に記載の多気筒内燃機関が提供される。
【0016】請求項4に記載の発明によれば、前記機関
角速度が各気筒の膨張行程を含む行程の一部に要する時
間を検出することにより得られる請求項3に記載の多気
筒内燃機関が提供される。
【0017】請求項5に記載の発明によれば、前記機関
角速度が各気筒の膨張行程を含む行程の全部に要する時
間を検出することにより得られる請求項3に記載の多気
筒内燃機関が提供される。
【0018】請求項3〜5に記載の多気筒内燃機関で
は、燃焼が悪化すると燃焼圧が減少するために機関角速
度が減少し、燃焼が向上すると燃焼圧が増加するために
機関角速度が増加するという性質を利用して、各気筒の
膨張行程を含む行程における機関角速度を検出すること
により各気筒の燃焼のばらつきが検出される。ここで
「膨張行程を含む行程」とは、膨張行程そのもの、又
は、膨張行程及びそれに隣接する圧縮行程等のことを言
う。
【0019】請求項6に記載の発明によれば、前記機関
角速度が小さい気筒の燃料噴射開始時期を進角させるこ
とにより各気筒の燃焼のばらつきを補正する請求項3に
記載の多気筒内燃機関が提供される。
【0020】請求項6に記載の多気筒内燃機関では、各
気筒の燃焼のばらつきを補正するために機関角速度が小
さい気筒の燃料噴射開始時期が進角せしめられる。とこ
ろで、燃料噴射開始時期が遅れ気味になり、噴射された
燃料の一部が燃焼に寄与しなくなってしまうと、燃焼が
悪化して機関角速度が減少してしまう。そこで、上述し
たように請求項6に記載の多気筒内燃機関では、各気筒
の燃焼のばらつきを補正するために機関角速度が小さい
気筒の燃料噴射開始時期が進角せしめられる。その結
果、機関角速度を増加させて各気筒の燃焼のばらつきを
適切に補正することができる。
【0021】請求項7に記載の発明によれば、前記機関
角速度が小さい気筒の燃料噴射量を減量補正することに
より各気筒の燃焼のばらつきを補正する請求項3に記載
の多気筒内燃機関が提供される。
【0022】請求項7に記載の多気筒内燃機関では、各
気筒の燃焼のばらつきを補正するために機関角速度が小
さい気筒の燃料噴射量が減量補正される。ところで、前
記煤がほとんど発生しない燃焼は空気が不足気味の機関
運転条件下で行われる。そのため、燃料噴射量が増加す
ると空気が更に不足し、それゆえ、燃焼が悪化して機関
角速度が減少してしまう。そこで、上述したように請求
項7に記載の多気筒内燃機関では、各気筒の燃焼のばら
つきを補正するために機関角速度が小さい気筒の燃料噴
射量が減量補正される。その結果、機関角速度を増加さ
せて各気筒の燃焼のばらつきを適切に補正することがで
きる。
【0023】請求項8に記載の発明によれば、前記機関
角速度が小さい気筒の燃料噴射圧を高くすることにより
各気筒の燃焼のばらつきを補正する請求項3に記載の多
気筒内燃機関が提供される。
【0024】請求項8に記載の多気筒内燃機関では、各
気筒の燃焼のばらつきを補正するために機関角速度が小
さい気筒の燃料噴射圧が高くされる。ところで、燃料噴
射圧が低くなると燃料噴射時間が長くなるため、燃料噴
射終了タイミングが燃焼に対して遅れてしまう。それゆ
え、噴射された燃料の一部が燃焼に寄与しなくなってし
まい、燃焼が悪化して機関角速度が減少してしまう。そ
こで、上述したように請求項8に記載の多気筒内燃機関
では、各気筒の燃焼のばらつきを補正するために機関角
速度が小さい気筒の燃料噴射圧が高くされる。その結
果、機関角速度を増加させて各気筒の燃焼のばらつきを
適切に補正することができる。
【0025】請求項9に記載の発明によれば、燃焼室か
ら排出された未燃炭化水素を酸化するために機関排気通
路内に酸化機能を有する触媒を配置した請求項1又は2
に記載の多気筒内燃機関が提供される。
【0026】請求項10に記載の発明によれば、前記触
媒が酸化触媒、三元触媒又はNOx吸収剤の少くとも一
つからなる請求項9に記載の多気筒内燃機関が提供され
る。
【0027】請求項9及び10に記載の多気筒内燃機関
では、燃焼室から排出される未燃炭化水素が機関排気通
路内にて酸化されるため、未燃炭化水素が内燃機関から
排出されるのを阻止することができる。
【0028】請求項11に記載の発明によれば、燃焼室
から排出された排気ガスを機関吸気通路内に再循環させ
る排気ガス再循環装置を具備し、前記不活性ガスが前記
機関吸気通路内に再循環された再循環排気ガスからなる
請求項1又は2に記載の多気筒内燃機関が提供される。
【0029】請求項11に記載の多気筒内燃機関では、
排気ガス再循環装置によって機関吸気通路内に再循環さ
れる再循環排気ガスを不活性ガスとして利用することに
より、外部から燃焼室内に不活性ガスを供給する手段を
特別に設ける必要性を回避することができる。
【0030】請求項12に記載の発明によれば、煤の発
生量がピークとなる再循環排気ガスの量よりも燃焼室内
に供給される再循環排気ガスの量が多く煤がほとんど発
生しない第1の燃焼と、煤の発生量がピークとなる再循
環排気ガスの量よりも燃焼室内に供給される再循環排気
ガスの量が少ない第2の燃焼とを選択的に切り換える切
換手段を具備し、前記第1の燃焼から前記第2の燃焼に
又は前記第2の燃焼から前記第1の燃焼に切り換えられ
るときに排気ガス再循環率をステップ状に変化させるよ
うにした請求項11に記載の多気筒内燃機関が提供され
る。
【0031】請求項12に記載の多気筒内燃機関では、
第1の燃焼から第2の燃焼に又は第2の燃焼から第1の
燃焼に切り換えられるときに排気ガス再循環率をステッ
プ状に変化させることにより、排気ガス再循環率が、煤
の発生量がピークになる排気ガス再循環率に設定される
のを回避することができる。
【0032】請求項13に記載の発明によれば、前記第
1の燃焼が行われているときの排気ガス再循環率がほぼ
55パーセント以上であり、前記第2の燃焼が行われて
いるときの排気ガス再循環率がほぼ50パーセント以下
である請求項12に記載の多気筒内燃機関が提供され
る。
【0033】請求項13に記載の多気筒内燃機関では、
第1の燃焼が行われているときの排気ガス再循環率をほ
ぼ55パーセント以上にすると共に第2の燃焼が行われ
ているときの排気ガス再循環率をほぼ50パーセント以
下にすることにより、排気ガス再循環率が、煤の発生量
がピークになる排気ガス再循環率に設定されるのを回避
することができる。
【0034】請求項14に記載の発明によれば、機関の
運転領域を低負荷側の第1の運転領域と高負荷側の第2
の運転領域とに分割し、前記第1の運転領域では前記第
1の燃焼を行い、前記第2の運転領域では前記第2の燃
焼を行うようにした請求項12に記載の多気筒内燃機関
が提供される。
【0035】請求項14に記載の多気筒内燃機関では、
第1の燃焼を実行し得る時、つまり、燃焼室内における
燃焼時の燃料及びその周囲のガス温度を煤の生成温度よ
りも低く維持し得る時が、燃焼による発熱量が比較的少
ない機関中低負荷運転時に限られるという理由から、低
負荷側の第1の運転領域で第1の燃焼を行うと共に高負
荷側の第2の運転領域で第2の燃焼を行う。それゆえ、
運転領域に応じて適切な燃焼を実行することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】図1は本発明を4ストローク圧縮
着火式多気筒内燃機関に適用した第一の実施形態を示し
ている。図1を参照すると、1は機関本体、2はシリン
ダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は
燃焼室、6は電気制御式燃料噴射弁、7は吸気弁、8は
吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示
す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介してサー
ジタンク12に連結され、サージタンク12は吸気ダク
ト13を介してエアクリーナ14に連結される。吸気ダ
クト13内には電気モータ15により駆動されるスロッ
トル弁16が配置される。一方、排気ポート10は排気
マニホルド17および排気管18を介して酸化機能を有
する触媒19を内蔵した触媒コンバータ20に連結さ
れ、排気マニホルド17内には空燃比センサ21が配置
される。
【0037】排気マニホルド17とサージタンク12と
はEGR通路22を介して互いに連結され、EGR通路
22内には電気制御式EGR制御弁23が配置される。
また、EGR通路22周りにはEGR通路22内を流れ
るEGRガスを冷却するための冷却装置24が配置され
る。図1に示される実施形態では機関冷却水が冷却装置
24内に導びかれ、機関冷却水によってEGRガスが冷
却される。
【0038】一方、各燃料噴射弁6は燃料供給管25を
介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール26に連結
される。このコモンレール26内へは電気制御式の吐出
量可変な燃料ポンプ27から燃料が供給され、コモンレ
ール26内に供給された燃料は各燃料供給管25を介し
て燃料噴射弁6に供給される。コモンレール26にはコ
モンレール26内の燃料圧を検出するための燃料圧セン
サ28が取付けられ、燃料圧センサ28の出力信号に基
づいてコモンレール26内の燃料圧が目標燃料圧となる
ように燃料ポンプ27の吐出量が制御される。
【0039】電子制御ユニット30はデジタルコンピュ
ータからなり、双方向性バス31によって互いに接続さ
れたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ラン
ダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッ
サ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備
する。空燃比センサ21の出力信号は対応するAD変換
器37を介して入力ポート35に入力され、燃料圧セン
サ28の出力信号も対応するAD変換器37を介して入
力ポート35に入力される。機関本体1には機関冷却水
温を検出するための温度センサ29が取付けられ、この
温度センサ29の出力信号は対応するAD変換器37を
介して入力ポート35に入力される。また、少なくとも
一つの吸気枝管11内には吸入空気とEGRガスとの混
合ガス温を検出するための温度センサ43が取付けら
れ、この温度センサ43の出力信号は対応するAD変換
器37を介して入力ポート35に入力される。更に、少
なくとも一つの吸気枝管11内には酸素濃度センサ44
が配置され、この酸素濃度センサ44の出力信号は対応
するAD変換器37を介して入力ポート35に入力され
る。
【0040】また、触媒19下流の排気管45内には触
媒19を通過した排気ガスの温度を検出するための温度
センサ46が配置され、この温度センサ46の出力信号
は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入
力される。燃焼室5内には燃焼室5内の圧力を検出する
ための燃焼圧センサ47が配置され、この燃焼圧センサ
47の出力信号はピークホールド回路48の入力端子I
に接続される。ピークホールド回路48の出力端子Oは
対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力
される。また、クランクシャフト49には機関の出力ト
ルクを検出するためのトルクセンサ50が取付けられ、
このトルクセンサ50の出力信号は対応するAD変換器
37を介して入力ポート35に入力される。
【0041】また、アクセルペダル40にはアクセルペ
ダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負
荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は
対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力
される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例
えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク
角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対
応する駆動回路38を介して燃料噴射弁6、電気モータ
15、EGR制御弁23、燃料ポンプ27およびピーク
ホールド回路48のリセット入力端子Rに接続される。
【0042】図2は機関低負荷運転時においてスロット
ル弁16の開度およびEGR率を変化させることにより
空燃比A/F(図2の横軸)を変化させたときの出力ト
ルクの変化、およびスモーク、HC,CO,NOxの排
出量の変化を示す実験例を表している。図2からわかる
ようにこの実験例では空燃比A/Fが小さくなるほどE
GR率が大きくなり、理論空燃比(≒14.6)以下の
ときにはEGR率は65パーセント以上となっている。
【0043】図2に示されるようにEGR率を増大する
ことにより空燃比A/Fを小さくしていくとEGR率が
40パーセント付近となり空燃比A/Fが30程度にな
ったときにスモークの発生量が増大を開始する。次い
で、更にEGR率を高め、空燃比A/Fを小さくすると
スモークの発生量が急激に増大してピークに達する。次
いで更にEGR率を高め、空燃比A/Fを小さくすると
今度はスモークが急激に低下し、EGR率を65パーセ
ント以上とし、空燃比A/Fが15.0付近になるとス
モークがほぼ零となる。即ち、煤がほとんど発生しなく
なる。このとき機関の出力トルクは若干低下し、またN
Oxの発生量がかなり低くなる。一方、このときHC,
COの発生量は増大し始める。
【0044】図3(A)は空燃比A/Fが21付近でス
モークの発生量が最も多いときの燃焼室5内の燃焼圧変
化を示しており、図3(B)は空燃比A/Fが18付近
でスモークの発生量がほぼ零のときの燃焼室5内の燃焼
圧の変化を示している。図3(A)と図3(B)とを比
較すればわかるようにスモークの発生量がほぼ零である
図3(B)に示す場合はスモークの発生量が多い図3
(A)に示す場合に比べて燃焼圧が低いことがわかる。
【0045】図2および図3に示される実験結果から次
のことが言える。即ち、まず第1に空燃比A/Fが1
5.0以下でスモークの発生量がほぼ零のときには図2
に示されるようにNOxの発生量がかなり低下する。N
Oxの発生量が低下したということは燃焼室5内の燃焼
温度が低下していることを意味しており、従って煤がほ
とんど発生しないときには燃焼室5内の燃焼温度が低く
なっていると言える。同じことが図3からも言える。即
ち、煤がほとんど発生していない図3(B)に示す状態
では燃焼圧が低くなっており、従ってこのとき燃焼室5
内の燃焼温度は低くなっていることになる。
【0046】第2にスモークの発生量、即ち煤の発生量
がほぼ零になると図2に示されるようにHCおよびCO
の排出量が増大する。このことは炭化水素が煤まで成長
せずに排出されることを意味している。即ち、燃料中に
含まれる図4に示されるような直鎖状炭化水素や芳香族
炭化水素は酸素不足の状態で温度上昇せしめられると熱
分解して煤の前駆体が形成され、次いで主に炭素原子が
集合した固体からなる煤が生成される。この場合、実際
の煤の生成過程は複雑であり、煤の前駆体がどのような
形態をとるかは明確ではないがいずれにしても図4に示
されるような炭化水素は煤の前駆体を経て煤まで成長す
ることになる。従って、上述したように煤の発生量がほ
ぼ零になると図2に示される如くHCおよびCOの排出
量が増大するがこのときのHCは煤の前駆体又はその前
の状態の炭化水素である。
【0047】図2および図3に示される実験結果に基づ
くこれらの考察をまとめると燃焼室5内の燃焼温度が低
いときには煤の発生量がほぼ零になり、このとき煤の前
駆体又はその前の状態の炭化水素が燃焼室5から排出さ
れることになる。このことについて更に詳細に実験研究
を重ねた結果、燃焼室5内における燃料およびその周囲
のガス温度が或る温度以下である場合には煤の成長過程
が途中で停止してしまい、即ち煤が全く発生せず、燃焼
室5内における燃料およびその周囲の温度が或る温度以
上になると煤が生成されることが判明したのである。
【0048】ところで煤の前駆体の状態で炭化水素の生
成過程が停止するときの燃料およびその周囲の温度、即
ち上述の或る温度は燃料の種類や空燃比や圧縮比等の種
々の要因によって変化するので何度であるかということ
は言えないがこの或る温度はNOxの発生量と深い関係
を有しており、従ってこの或る温度はNOxの発生量か
ら或る提示規定することができる。即ち、EGR率が増
大するほど燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度は低
下し、NOxの発生量が低下する。このときNOxの発
生量が10p.p.m 前後又はそれ以下になったときに煤が
ほとんど発生しなくなる。従って上述の或る温度はNO
xの発生量が10p.p.m 前後又はそれ以下になったとき
の温度にほぼ一致する。
【0049】一旦、煤が生成されるとこの煤は酸化機能
を有する触媒を用いた後処理でもって浄化することはで
きない。これに対して煤の前駆体又はその前の状態の炭
化水素は酸化機能を有する触媒を用いた後処理でもって
容易に浄化することができる。このように酸化機能を有
する触媒による後処理を考えると炭化水素を煤の前駆体
又はその前の状態で燃焼室5から排出させるか、或いは
煤の形で燃焼室5から排出させるかについては極めて大
きな差がある。本発明において用いている新たな燃焼シ
ステムは燃焼室5内において煤を生成させることなく炭
化水素を煤の前駆体又はその前の状態の形でもって燃焼
室5から排出させ、この炭化水素を酸化機能を有する触
媒により酸化せしめることを核としている。
【0050】さて、煤が生成される前の状態で炭化水素
の成長を停止させるには燃焼室5内における燃焼時の燃
料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度より
も低い温度に抑制する必要がある。この場合、燃料およ
びその周囲のガス温度を抑制するには燃料が燃焼した際
の燃料周りのガスの吸熱作用が極めて大きく影響するこ
とが判明している。
【0051】即ち、燃料周りに空気しか存在しないと蒸
発した燃料はただちに空気中の酸素と反応して燃焼す
る。この場合、燃料から離れている空気の温度はさほど
上昇せず、燃料周りの温度のみが局所的に極めて高くな
る。即ち、このときには燃料から離れている空気は燃料
の燃焼熱の吸熱作用をほとんど行わない。この場合には
燃焼温度が局所的に極めて高くなるために、この燃焼熱
を受けた未燃炭化水素は煤を生成することになる。
【0052】一方、多量の不活性ガスと少量の空気の混
合ガス中に燃料が存在する場合には若干状況が異なる。
この場合には蒸発燃料は周囲に拡散して不活性ガス中に
混在する酸素と反応し、燃焼することになる。この場合
には燃焼熱は周りの不活性ガスに吸収されるために燃焼
温度はさほど上昇しなくなる。即ち、燃焼温度を低く抑
えることができることになる。即ち、燃焼温度を抑制す
るには不活性ガスの存在が重要な役割を果しており、不
活性ガスの吸熱作用によって燃焼温度を低く抑えること
ができることになる。
【0053】この場合、燃料およびその周囲のガス温度
を煤が生成される温度よりも低い温度に抑制するにはそ
うするのに十分な熱量を吸収しうるだけの不活性ガス量
が必要となる。従って燃料量が増大すれば必要となる不
活性ガス量はそれに伴なって増大することになる。な
お、この場合、不活性ガスの比熱が大きいほど吸熱作用
は強力となり、従って不活性ガスは比熱の大きなガスが
好ましいことになる。この点、CO2 やEGRガスは比
較的比熱が大きいので不活性ガスとしてEGRガスを用
いることは好ましいと言える。
【0054】図5は不活性ガスとしてEGRガスを用い
た場合において燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度
を煤が生成される温度よりも低い温度にするために必要
なEGRガスと空気の混合ガス量、およびこの混合ガス
量中の空気の割合、およびこの混合ガス中のEGRガス
の割合を示している。なお、図5において縦軸は燃焼室
5内に吸入される全吸入ガス量を示しており、鎖線Yは
過給が行われないときに燃焼室5内に吸入しうる全吸入
ガス量を示している。また、横軸は要求負荷を示してお
り、Z1は低負荷運転領域を示している。
【0055】図5を参照すると空気の割合、即ち混合ガ
ス中の空気量は噴射された燃料を完全に燃焼せしめるの
に必要な空気量を示している。即ち、図5に示される場
合では空気量と噴射燃料量との比は理論空燃比となって
いる。一方、図5においてEGRガスの割合、即ち混合
ガス中のEGRガス量は噴射燃料が燃焼せしめられたと
きに燃料およびその周囲のガス温度を煤が形成される温
度よりも低い温度にするのに必要最低限のEGRガス量
を示している。このEGRガス量はEGR率で表すとほ
ぼ55パーセント以上であり、図5に示す実施形態では
70パーセント以上である。即ち、燃焼室5内に吸入さ
れた全吸入ガス量を図5において実線Xとし、この全吸
入ガス量Xのうちの空気量とEGRガス量との割合を図
5に示すような割合にすると燃料およびその周囲のガス
温度は煤が生成される温度よりも低い温度となり、斯く
して煤が全く発生しなくなる。また、このときのNOx
の発生量は10p.p.m 前後、又はそれ以下であり、従っ
てNOxの発生量は極めて少量となる。
【0056】燃料噴射量が増大すれば燃料が燃焼した際
の発熱量が増大するので燃料およびその周囲のガス温度
を煤が生成される温度よりも低い温度に維持するために
はEGRガスによる熱の吸収量を増大しなければならな
い。従って図5に示されるようにEGRガス量は噴射燃
料量が増大するにつれて増大せしめなければならない。
即ち、EGRガス量は要求負荷が高くなるにつれて増大
する必要がある。
【0057】一方、図5の負荷領域Z2では煤の発生を
阻止するのに必要な全吸入ガス量Xが吸入しうる全吸入
ガス量Yを越えてしまう。従ってこの場合、煤の発生を
阻止するのに必要な全吸入ガス量Xを燃焼室5内に供給
するにはEGRガスおよび吸入空気の双方、或いはEG
Rガスを過給又は加圧する必要がある。EGRガス等を
過給又は加圧しない場合には負荷領域Z2では全吸入空
気量Xは吸入しうる全吸入空気量Yに一致する。従って
この場合、煤の発生を阻止するためには空気量を若干減
少させてEGRガス量を増大すると共に空燃比がリッチ
のもとで燃料を燃焼せしめることになる。
【0058】前述したように図5は燃料を理論空燃比の
もとで燃焼させる場合を示しているが図5に示される低
負荷運転領域Z1において空気量を図5に示される空気
量よりも少なくても、即ち空燃比をリッチにしても煤の
発生を阻止しつつNOxの発生量を10p.p.m 前後又は
それ以下にすることができ、また図5に示される低負荷
領域Z1において空気量を図5に示される空気量よりも
多くしても、即ち空燃比の平均値を17から18のリー
ンにしても煤の発生を阻止しつつNOxの発生量を10
p.p.m 前後又はそれ以下にすることができる。
【0059】即ち、空燃比がリッチにされると燃料が過
剰となるが燃焼温度が低い温度に抑制されているために
過剰な燃料は煤まで成長せず、斯くして煤が生成される
ことがない。また、このときNOxも極めて少量しか発
生しない。一方、平均空燃比がリーンのとき、或いは空
燃比が理論空燃比のときでも燃焼温度が高くなれば少量
の煤が生成されるが本発明では燃焼温度が低い温度に抑
制されているので煤は全く生成されない。更に、NOx
も極めて少量しか発生しない。
【0060】このように、機関低負荷運転領域Z1では
空燃比にかかわらずに、即ち空燃比がリッチであろう
と、理論空燃比であろうと、或いは平均空燃比がリーン
であろうと煤が発生されず、NOxの発生量が極めて少
量となる。従って燃料消費率の向上を考えるとこのとき
平均空燃比をリーンにすることが好ましいと言える。
【0061】ところで燃焼室内における燃焼時の燃料お
よびその周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で停止
する温度以下に抑制しうるのは燃焼による発熱量が少な
い比較的機関負荷が低いときに限られる。従って本発明
では機関負荷が比較的低いときには燃焼時の燃料および
その周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で停止する
温度以下に抑制して第1の燃焼、即ち低温燃焼を行うよ
うにし、機関負荷が比較的高いときには第2の燃焼、即
ち従来より普通に行われている燃焼を行うようにしてい
る。なお、ここで第1の燃焼、即ち低温燃焼とはこれま
での説明から明らかなように煤の発生量がピークとなる
不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が多く煤が
ほとんど発生しない燃焼のことを云い、第2の燃焼、即
ち従来より普通に行われている燃焼とは煤の発生量がピ
ークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量
が少ない燃焼のことを云う。
【0062】図6は第1の燃焼、即ち低温燃焼が行われ
る第1の運転領域Iと、第2の燃焼、即ち従来の燃焼方
法による燃焼が行われる第2の燃焼領域IIとを示してい
る。なお、図6において縦軸Lはアクセルペダル40の
踏込み量、即ち要求負荷を示しており、横軸Nは機関回
転数を示している。また、図6においてX(N)は第1
の運転領域Iと第2の運転領域IIとの第1の境界を示し
ており、Y(N)は第1の運転領域Iと第2の運転領域
IIとの第2の境界を示している。第1の運転領域Iから
第2の運転領域IIへの運転領域の変化判断は第1の境界
X(N)に基づいて行われ、第2の運転領域IIから第1
の運転領域Iへの運転領域の変化判断は第2の境界Y
(N)に基づいて行われる。
【0063】即ち、機関の運転状態が第1の運転領域I
にあって低温燃焼が行われているときに要求負荷Lが機
関回転数Nの関数である第1の境界X(N)を越えると
運転領域が第2の運転領域IIに移ったと判断され、従来
の燃焼方法による燃焼が行われる。次いで要求負荷Lが
機関回転数Nの関数である第2の境界Y(N)よりも低
くなると運転領域が第1の運転領域Iに移ったと判断さ
れ、再び低温燃焼が行われる。
【0064】なお、本発明による実施形態では第2の境
界Y(N)は第1の境界X(N)に対してΔL(N)だ
け低負荷側とされる。図6および図7に示されるように
ΔL(N)は機関回転数Nの関数であり、ΔL(N)は
機関回転数Nが高くなるほど小さくなる。
【0065】ところで機関の運転状態が第1の運転領域
Iにあって低温燃焼が行われているときには煤はほとん
ど発生せず、その代り未燃炭化水素が煤の前駆体又はそ
の前の状態の形でもって燃焼室5から排出される。この
とき酸化機能を有する触媒19が活性化していれば燃焼
室5から排出された未燃炭化水素は触媒19により良好
に酸化せしめられる。しかしながらこのとき触媒19が
活性化していない場合には未燃炭化水素は触媒19によ
り酸化せしめられず、斯くして多量の未燃炭化水素が大
気に放出されることになる。従って本発明では機関の運
転状態が第1の燃焼、即ち低温燃焼しうる第1の運転領
域であったとしても触媒19が活性化していない場合に
は第1の燃焼を行わず、第2の燃焼、即ち従来の燃焼方
法による燃焼が行われる。
【0066】触媒19としては酸化触媒、三元触媒、又
はNOx吸収剤を用いることができる。NOx吸収剤は
燃焼室5内における平均空燃比がリーンのときにNOx
を吸収し、燃焼室5内における平均空燃比がリッチにな
るとNOxを放出する機能を有する。このNOx吸収剤
は例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリ
ウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCs
のようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCa
のようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムY
のような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金P
tのような貴金属とが担持されている。
【0067】酸化触媒はもとより、三元触媒およびNO
x吸収剤も酸化機能を有しており、従って上述した如く
三元触媒およびNOx吸収剤を触媒19として用いるこ
とができる。
【0068】触媒19は触媒19の温度が或る一定温度
を越えると活性化する。触媒19が活性化する温度は触
媒19の種類により異なり、代表的な酸化触媒の活性化
温度は350℃程度である。触媒19を通過した排気ガ
スの温度は触媒19の温度よりもわずかな一定温度だけ
低くなり、従って触媒19を通過した排気ガス温は触媒
19の温度を代表している。従って本発明による実施形
態では触媒19を通過した排気ガスの温度から触媒19
が活性化したか否かを判断するようにしている。
【0069】図8(A)は空燃比センサ21の出力を示
している。図8(A)に示されるように空燃比センサ2
1の出力電流Iは空燃比A/Fに応じて変化する。従っ
て空燃比センサ21の出力電流Iから空燃比を知ること
ができる。また、図8(B)は酸素濃度センサ44の出
力を示している。図8(B)に示されるように酸素濃度
センサ44の出力電流Iは酸素濃度〔O2 〕に応じて変
化する。従って酸素濃度センサ44の出力電流Iから酸
素濃度を知ることができる。
【0070】次に触媒19が活性化している場合を例に
とって図9を参照しつつ第1の運転領域Iおよび第2の
運転領域IIにおける運転制御について概略的に説明す
る。
【0071】図9は要求負荷Lに対するスロットル弁1
6の開度、EGR制御弁23の開度、EGR率、空燃
比、噴射時期および噴射量を示している。図9に示され
るように要求負荷Lの低い第1の運転領域Iではスロッ
トル弁16の開度は要求負荷Lが高くなるにつれて全閉
近くから2/3開程度まで徐々に増大せしめられ、EG
R制御弁23の開度は要求負荷Lが高くなるにつれて全
閉近くから全開まで徐々に増大せしめられる。また、図
9に示される例では第1の運転領域IではEGR率がほ
ぼ70パーセントとされており、空燃比はわずかばかり
リーンなリーン空燃比とされている。
【0072】云い換えると第1の運転領域IではEGR
率がほぼ70パーセントとなり、空燃比がわずかばかり
リーンなリーン空燃比となるようにスロットル弁16の
開度およびEGR制御弁23の開度が制御される。な
お、このとき空燃比は空燃比センサ21の出力信号に基
づいてスロットル弁16の開度およびEGR制御弁23
の開度を補正することによって目標リーン空燃比に制御
される。また、第1の運転領域Iでは圧縮上死点TDC
前に燃料噴射が行われる。この場合、噴射開始時期θS
は要求負荷Lが高くなるにつれて遅くなり、噴射完了時
期θEも噴射開始時期θSが遅くなるにつれて遅くな
る。
【0073】なお、アイドリング運転時にはスロットル
弁16は全閉近くまで閉弁され、このときEGR制御弁
23も全閉近くまで閉弁せしめられる。スロットル弁1
6を全閉近くまで閉弁すると圧縮始めの燃焼室5内の圧
力が低くなるために圧縮圧力が小さくなる。圧縮圧力が
小さくなるとピストン4による圧縮仕事が小さくなるた
めに機関本体1の振動が小さくなる。即ち、アイドリン
グ運転時には機関本体1の振動を抑制するためにスロッ
トル弁16が全閉近くまで閉弁せしめられる。
【0074】機関の運転状態が第1の運転領域Iである
ときには煤およびNOxはほとんど発生せず、排気ガス
中に含まれている煤の前駆体又はその前の状態の炭化水
素は触媒19により酸化せしめられる。
【0075】一方、機関の運転領域が第1の運転領域I
から第2の運転領域IIに変わるとスロットル弁16の開
度が半開状態から前開方向へステップ状に増大しめられ
る。このとき図9に示す例ではEGR率がほぼ80パー
セントから40パーセント以下までステップ状に減少せ
しめられ、空燃比がステップ状に大きくされる。即ち、
EGR率が多量のスモークを発生するEGR率範囲(図
2)を飛び越えるので機関の運転領域が第1の運転領域
Iから第2の運転領域IIに変わるときに多量のスモーク
が発生することがない。
【0076】第2の運転領域IIでは従来から行われてい
る燃焼が行われる。この燃焼方法では煤およびNOxが
若干発生するが低温燃焼に比べて熱効率は高く、従って
機関の運転領域が第1の運転領域Iから第2の運転領域
IIに変わると図9に示されるように噴射量がステップ状
に低減せしめられる。
【0077】第2の運転領域IIではスロットル弁16は
一部を除いて全開状態に保持され、EGR制御弁23の
開度は要求負荷Lが高くなると次第に小さくされる。こ
の運転領域IIではEGR率は要求負荷Lが高くなるほど
低くなり、空燃比は要求負荷Lが高くなるほど大きくな
る。ただし、空燃比は要求負荷Lが高くなってもリーン
空燃比とされる。また、第2の運転領域IIでは噴射開始
時期θSは圧縮上死点TDC付近とされる。
【0078】ところで低温燃焼しうる第1の運転領域I
の範囲は圧縮始めにおける燃焼室5内のガス温およびシ
リンダ内壁面温度に応じて変化する。即ち、要求負荷が
高くなって燃焼による発熱量が増大すると、燃焼時にお
ける燃料およびその周囲のガス温が高くなり、斯くして
低温燃焼を行うことができなくなる。一方、圧縮始めの
燃焼室5内のガス温TGが低くなると燃焼が開始される
直前の燃焼室5内のガス温が低くなるので燃焼時におけ
る燃料およびその周囲のガス温が低くなる。従って圧縮
始めの燃焼室5内のガス温TGが低くなれば燃焼による
発熱量が増大しても、即ち要求負荷が高くなっても燃焼
時における燃料およびその周囲のガス温は高くならず、
斯くして低温燃焼が行われることになる。云い換えると
圧縮始めの燃焼室5内のガス温TGが低くなればなるほ
ど低温燃焼しうる第1の運転領域Iが高負荷側に拡大す
ることになる。
【0079】また、シリンダ内壁面温度TWと圧縮始め
の燃焼室5内のガス温TGとの温度差(TW−TG)が
小さいほど圧縮行程中にシリンダ内壁面を介して逃げる
熱量が増大する。従ってこの温度差(TW−TG)が小
さくなるほど圧縮行程中における燃焼室5内のガスの温
度上昇量が少なくなり、斯くして燃焼時における燃料お
よびその周囲のガス温が低くなる。従って温度差(TW
−TG)が小さいほど低温燃焼しうる第1の運転領域I
が高負荷側に拡大することになる。
【0080】本発明による実施形態では圧縮始めにおけ
る燃焼室5内のガス温TGが低くなると図10に示され
るように第1の境界がXo (N)からX(N)に移動せ
しめられ、温度差(TW−TG)が小さくなると図10
に示されるように第1の境界がXo (N)からX(N)
に移動せしめられる。なお、ここでXo (N)は基準と
なる第1の境界を示している。基準となる第1の境界X
o (N)は機関回転数Nの関数であり、X(N)はこの
Xo (N)を用いて次式に基づいて算出される。
【0081】 X(N)=Xo (N)+K(T)・K(N) K(T)=K(T)1 +K(T)2 ここでK(T)1 は図11(A)に示されるように圧縮
始めにおける燃焼室5内のガス温TGの関数であり、こ
のK(T)1 の値は圧縮始めにおける燃焼室5内のガス
温TGが低くなるほど大きくなる。また、K(T)2
図11(B)に示されるように温度差(TW−TG)の
関数であり、このK(T)2 の値は温度差(TW−T
G)が小さくなるほど大きくなる。なお、図11(A)
および図11(B)においてT1 は基準温度、T2 は基
準温度差であり、TG=T1 でかつ(TW−TG)=T
2 のときに第1の境界が図10のXo (N)となる。
【0082】一方、K(N)は図11(C)に示される
ように機関回転数Nの関数であり、K(N)の値は機関
回転数Nが高くなるほど小さくなる。即ち、圧縮始めに
おける燃焼室5内のガス温TGが基準温度T1 よりも低
くなると圧縮始めにおける燃焼室5内のガス温TGが低
くなるほど第1の境界X(N)はXo (N)に対して高
負荷側に移動し、温度差(TW−TG)が基準温度差T
2 よりも低くなると温度差(TW−TG)が小さくなる
ほど第1の境界X(N)はXo (N)に対して高負荷側
に移動する。また、Xo (N)に対するX(N)の移動
量は機関回転数Nが高くなるほど少なくなる。
【0083】図12(A)は第1の境界が基準となる第
1の境界Xo (N)であるときの第1の運転領域Iにお
ける空燃比A/Fを示している。図12(A)におい
て、A/F=15,A/F=16,A/F=17で示さ
れる各曲線は夫々空燃比が15,16,17であるとき
を示しており、各曲線間の空燃比は比例配分により定め
られる。図12(A)に示されるように第1の運転領域
Iでは空燃比がリーンとなっており、更に第1の運転領
域Iでは要求負荷Lが低くなるほど空燃比A/Fがリー
ンとされる。
【0084】即ち、要求負荷Lが低くなるほど燃焼によ
る発熱量が少なくなる。従って要求負荷Lが低くなるほ
どEGR率を低下させても低温燃焼を行うことができ
る。EGR率を低下させると空燃比は大きくなり、従っ
て図12(A)に示されるように要求負荷Lが低くなる
につれて空燃比A/Fが大きくされる。空燃比A/Fが
大きくなるほど燃料消費率は向上し、従ってできる限り
空燃比をリーンにするために本発明による実施形態では
要求負荷Lが低くなるにつれて空燃比A/Fが大きくさ
れる。
【0085】図12(B)は第1の境界が図10に示さ
れるX(N)のときの第1の運転領域Iにおける空燃比
A/Fを示している。図12(A)および(B)を比較
するとわかるように第1の境界X(N)がXo (N)に
対して高負荷側に移動するとそれに追従して各空燃比を
示すA/F=15,A/F=16,A/F=17の曲線
も高負荷側に移動する。従って第1の境界X(N)がX
o (N)に対して高負荷側に移動すると同一要求負荷L
および同一機関回転数Nにおける空燃比A/Fが大きく
なることがわかる。即ち、第1の運転領域Iが高負荷側
に拡大せしめられると煤およびNOxのほとんど発生し
ない運転領域が拡大されるばかりでなく、燃料消費率が
向上せしめられることになる。
【0086】本発明による実施形態では第1の境界X
(N)が種々に変化したときの第1の運転領域Iにおけ
る目標空燃比、即ち種々のK(T)の値に対する第1の
運転領域Iにおける目標空燃比が図13(A)から図1
3(D)に示されるように要求負荷Lおよび機関回転数
Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶さ
れている。即ち、図13(A)はK(T)の値がKT1
のときの目標空燃比AFKT1を示しており、図13
(B)はK(T)の値がKT2のときの目標空燃比AF
KT2を示しており、図13(C)はK(T)の値がK
T3のときの目標空燃比AFKT3を示しており、図1
3(D)はK(T)の値がKT4のときの目標空燃比A
FKT4を示している。
【0087】一方、空燃比を目標空燃比AFKT1,A
FKT2,AFKT3,AFKT4とするのに必要なス
ロットル弁16の目標開度が図14(A)から図14
(D)に示されるように要求負荷Lおよび機関回転数N
の関数としてマップの形で予め定めROM32内に記憶
されており、また空燃比を目標空燃比AFKT1,AF
KT2,AFKT3,AFKT4とするのに必要なEG
R制御弁23の目標基本開度が図15(A)から図15
(D)に示されるように要求負荷Lおよび機関回転数N
の関数としてマップの形で予めROM32内に記憶され
ている。
【0088】即ち、図14(A)は空燃比が15のとき
のスロットル弁16の目標開度ST15を示しており、
図15(A)は空燃比が15のときのEGR制御弁23
の目標基本開度SE15を示している。また、図14
(B)は空燃比が16のときのスロットル弁16の目標
開度ST16を示しており、図15(B)は空燃比が1
6のときのEGR制御弁23の目標基本開度SE16を
示している。また、図14(C)は空燃比が17のとき
のスロットル弁16の目標開度ST17を示しており、
図15(C)は空燃比が17のときのEGR制御弁23
の目標基本開度SE17を示している。また、図14
(D)は空燃比が18のときのスロットル弁16の目標
開度ST18を示しており、図15(D)は空燃比が1
8のときのEGR制御弁23の目標基本開度SE18を
示している。
【0089】図16は第2の燃焼、即ち従来の燃焼方法
による普通の燃焼が行われるときの目標空燃比を示して
いる。なお、図16においてA/F=24,A/F=3
5,A/F=45,A/F=60で示される各曲線は夫
々目標空燃比24,35,45,60を示している。空
燃比をこの目標空燃比とするのに必要なスロットル弁1
6の目標開度STが図17(A)に示されるように要求
負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予
めROM32内に記憶されており、空燃比をこの目標空
燃比とするのに必要なEGR制御弁23の目標開度SE
が図17(B)に示されるように要求負荷Lおよび機関
回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に
記憶されている。
【0090】これまで述べたように機関の運転状態が第
1の運転領域Iにありかつ触媒19が活性化していると
きには第1の燃焼、即ち低温燃焼が行われる。しかしな
がら機関の運転状態が第1の運転領域Iにありかつ触媒
19が活性化していても何らかの理由により良好な低温
燃焼を行えない場合がある。そこで本発明による第1の
実施形態では触媒19が活性化しているときに機関の運
転状態が第1の運転領域Iとなったときには低温燃焼す
べくスロットル弁16の開度およびEGR制御弁23の
開度を夫々図14に示す目標開度STおよび図15に示
す目標基本開度SEとし、このとき良好な低温燃焼を行
うことができない場合には、即ち燃焼不良を生じている
場合には空燃比を大きくするようにしている。空燃比を
大きくすれば燃料周りの酸素濃度が高くなり、斯くして
良好な低温燃焼が行われることになる。
【0091】ところで、本実施形態の多気筒内燃機関で
は、いずれかの気筒の燃焼室内に配置された燃焼圧セン
サ47の出力値に基づいてすべての気筒において良好な
低温燃焼が行われているか否かを判断する前に、クラン
ク角センサ42の出力値に基づいて気筒間の燃焼のばら
つきが補正される。それゆえ、燃焼圧センサがすべての
気筒の燃焼室内に配置されていない場合であっても、す
べての気筒において良好な低温燃焼が行われているか否
かを正確に判断することができる。
【0092】図18は本実施形態の多気筒内燃機関の気
筒間の燃焼のばらつきを補正する方法を示したフローチ
ャートである。本ルーチンは、上死点180°クランク
アングル(TDC180°CA)のタイミングで割り込
み実行される。図18に示すように、本ルーチンが開始
されると、まずステップ1800において、現在低温燃
焼が行われているか否かが判別される。低温燃焼が行わ
れておらず第2の燃焼が行われている時には、気筒間で
燃焼がそれほどばらつかないために、気筒間の燃焼のば
らつきの補正を行うことなくステップ1806に進む。
一方、YESの時にはステップ1801において、クラ
ンク角センサ42及びカムシャフト(図示せず)に取付
けられた加速度センサ(図示せず)により、現在膨張行
程を含む行程にある気筒がどの気筒であるかを判別する
と共に、気筒番号iを更新する。本実施形態の内燃機関
は、1番気筒、3番気筒、4番気筒、2番気筒の順序で
膨張行程になるため、現在膨張行程を含む行程にある気
筒が1番気筒であると判別されたときには気筒番号iは
1にされ(i←1)、現在膨張行程を含む行程にある気
筒が3番気筒であると判別されたときには気筒番号iは
2にされ(i←2)、現在膨張行程を含む行程にある気
筒が4番気筒であると判別されたときには気筒番号iは
3にされ(i←3)、現在膨張行程を含む行程にある気
筒が2番気筒であると判別されたときには気筒番号iは
4にされる(i←4)。
【0093】次いでステップ1802では、クランク角
センサ52の出力信号に基づいて算出された膨張行程を
含む行程に要した時間TIMERが、i番気筒の膨張行
程を含む行程に要した時間Tiとされる(Ti←TIM
ER)。次いでステップ1803ではTiが(T1 +T
2 +T3 +T4 )/4よりも小さいか否かを判別する。
YESの時には、i番気筒はすべての気筒の平均よりも
燃焼が不良気味であると判断し、ステップ1804に進
む。一方、NOの時には、i番気筒は平均的な燃焼を行
っていると判断し、i番気筒の燃焼の補正を行うことな
くステップ1806に進む。
【0094】ステップ1804では、すべての気筒の燃
料噴射開始時期をα(例えば0.25°)だけ遅角さ
せ、ステップ1805では、i番気筒の燃料噴射開始時
期のみをβ(例えば1°)だけ進角させる。つまり、ス
テップ1804及びステップ1805により、燃焼が不
良気味のi番気筒の燃料噴射開始時期のみが他の気筒の
燃料噴射開始時期に比べて進角され、i番気筒の燃焼の
向上が図られる。次いで1806では、TIMERがリ
セットされ、次の気筒の膨張行程を含む行程に要した時
間を計測するための準備がなされる。
【0095】つまり、本ルーチンを最初に実行した時
に、例えば1番気筒の膨張行程を含む行程に要した時間
1 が得られると必要に応じて1番気筒の燃焼噴射開始
時期が補正され、次いで本ルーチンを実行した時に3番
気筒の膨張行程を含む行程に要した時間T2 が得られる
と必要に応じて3番気筒の燃焼噴射開始時期が補正さ
れ、次いで本ルーチンを実行した時に4番気筒の膨張行
程を含む行程に要した時間T3 が得られると必要に応じ
て4番気筒の燃焼噴射開始時期が補正され、次いで本ル
ーチンを実行した時に2番気筒の膨張行程を含む行程に
要した時間T4 が得られると必要に応じて2番気筒の燃
焼噴射開始時期が補正される。
【0096】尚、本実施形態では、各気筒の膨張行程を
含む行程の全部に要する時間Tiを検出することによ
り、各気筒の膨張行程を含む行程における機関角速度を
得ているが、他の実施形態では、各気筒の膨張行程を含
む行程の一部に要する時間を検出することにより、各気
筒の膨張行程を含む行程における機関角速度を得てもよ
い。
【0097】また、他の実施形態では、各気筒の膨張行
程を含む行程における機関角速度を低温燃焼時において
検出する前に、第2の燃焼(従来の燃焼方法による燃
焼)が行われている時に、各気筒に供給される燃料噴射
量のばらつきを補正するようにしてもよい。この実施形
態によれば、低温燃焼時に検出される各気筒の機関角速
度は、各気筒の燃料噴射量のばらつきの影響を受けない
ため、各気筒の燃料噴射量のばらつきの補正を行わない
場合よりも正確に気筒間の燃焼のばらつきを補正するこ
とができる。
【0098】上述したように本実施形態では、良好な低
温燃焼が行われているか否かは、燃焼圧センサ47によ
り検出された燃焼室5内の圧力に基づいて判断される。
即ち、良好な低温燃焼が行われているときには図19に
示されるように燃焼圧が緩やかに変化する。具体的に云
うと、燃焼圧はP0 で示されるように上死点TDCにお
いて一旦ピークとなり、次いでP1 で示されるように上
死点TDC後において再びピークとなる。ピーク圧P1
は燃焼圧により生じ、良好な低温燃焼が行われていると
きにはピーク圧P1 がピーク圧P0 に比べて若干高くな
る。
【0099】これに対して良好な低温燃焼が行われず、
燃焼不良が生じるとピーク圧P1 がピーク圧P0 よりも
低くなる。従って本実施形態では差圧ΔP(=P1 −P
0 )が負になったときには燃焼不良が生じていると判断
し、空燃比を大きくするようにしている。
【0100】次に図19および図20を参照しつつ燃焼
不良の検出方法について説明する。この燃焼不良の検出
は、上述した気筒間の燃焼のばらつきの補正が行われた
以後に、いずれかの気筒の燃焼室5内に配置された燃焼
圧センサ47の出力値に基づいて、すべての気筒につい
て行われる。図20は燃焼不良の検出ルーチンを示して
おり、このルーチンはクランク角割込みによって実行さ
れる。図20を参照すると、まず初めにステップ100
において現在クランク角がCA1(図19)であるか否
かが判別される。クランク角がCA1のときにはステッ
プ101に進んでピークホールド回路48の出力電圧が
読込まれる。このときピークホールド回路48の出力電
圧はピーク圧P0 を表しており、従ってステップ101
ではピーク圧P0 が読込まれることになる。次いでステ
ップ102ではリセット信号がピークホールド回路48
のリセット入力端子Rに入力され、それによってピーク
ホールド回路48がリセットされる。
【0101】次いでステップ103では現在クランク角
がCA2(図19)であるか否かが判別される。クラン
ク角がCA2のときにはステップ104に進んでピーク
ホールド回路48の出力電圧が読込まれる。このときピ
ークホールド回路48の出力電圧はピーク圧P1 を表し
ており、従ってステップ104ではピーク圧P1 が読込
まれることになる。次いでステップ105ではリセット
信号がピークホールド回路48のリセット入力端子Rに
入力され、それによってピークホールド回路48がリセ
ットされる。次いでステップ106ではピーク圧P0
ピーク圧P1 との差圧ΔP(=P1 −P0 )が算出され
る。
【0102】次いでステップ107では差圧ΔPが負か
否かが判別される。ΔP<0のときには燃焼不良が生じ
ていると判断され、このときにはステップ109に進ん
で燃焼不良フラグがセットされる。これに対しΔP≧0
のときには燃焼不良が生じていないと判断され、このと
きにはステップ108に進んで燃焼不良フラグがリセッ
トされる。
【0103】図21は低温燃焼領域、即ち第1の運転領
域Iを制御するためのルーチンを示している。図21を
参照すると、まず初めにステップ200において圧縮始
めにおける燃焼室5内のガス温TGおよびシリンダ内壁
面温度TWが算出される。この実施形態では温度センサ
43により検出された吸入空気とEGRガスの混合ガス
温が圧縮始めにおける燃焼室5内のガス温TGとされ、
温度センサ29により検出された機関冷却水温がシリン
ダ内壁面温度TWとされる。次いでステップ201では
図11(A)に示す関係からK(T)1 が求められ、図
11(B)に示す関係からK(T)2 が求められ、これ
らK(T)1 とK(T)2 とを加算することによってK
(T)(=K(T)1 +K(T)2 )が算出される。
【0104】次いでステップ202では機関回転数Nに
基づいて図11(C)に示す関係からK(N)が算出さ
れる。次いでステップ203では予め記憶されている第
1の境界Xo (N)の値を用いて次式に基づき第1の境
界X(N)の値が算出される。 X(N)=Xo (N)+K(T)・K(N)
【0105】次いでステップ204では機関回転数Nに
基づいて図7に示す関係からΔL(N)が算出される。
次いでステップ205ではX(N)からΔL(N)を減
算することによって第2の境界Y(N)の値(=X
(N)−ΔL(N))が算出される。
【0106】次に図22を参照しつつ本実施形態の運転
制御について説明する。図22を参照すると、まず初め
にステップ300において温度センサ46の出力信号に
基づいて触媒19を通過した排気ガスの温度Tcが予め
定められたToよりも高いか否か、即ち触媒19が活性
化したか否かが判断される。Tc≦Toのとき、即ち触
媒19が活性化していないときにはステップ307に進
んで第2の燃焼、即ち従来の燃焼方法による燃焼が行わ
れる。
【0107】即ち、ステップ307では図17(A)に
示すマップからスロットル弁16の目標開度STが算出
され、次いでステップ308ではEGR制御弁23の目
標開度SEが算出される。次いでステップ309では噴
射量Qが算出され、次いでステップ310では噴射開始
時期θSが算出される。
【0108】ステップ300においてTc>Toである
と判断されたとき、即ち触媒19が活性化しているとき
にはステップ301に進んで機関の運転領域が第1の運
転領域Iであることを示すフラグIがセットされている
か否かが判別される。フラグIがセットされていると
き、即ち機関の運転領域が第1の運転領域Iであるとき
にはステップ302に進んで要求負荷Lが第1の境界X
(N)よりも大きくなったか否かが判別される。L≦X
(N)のときにはステップ303に進んで低温燃焼が行
われる。
【0109】即ち、ステップ303では図13(A)か
ら(D)に示されるマップのうちでK(T)に応じた二
つのマップを用いて比例配分により目標空燃比AFが算
出される。次いでステップ304では噴射量Qが算出さ
れ、次いでステップ305では噴射開始時期θSが算出
される。この噴射開始時期θSは要求負荷Lおよび機関
回転数Lの関数として図22に示すマップの形で予めR
OM32内に記憶されている。
【0110】次いでステップ400では噴射制御が行わ
れる。この噴射制御が図23に示されている。次いでス
テップ500では燃焼不良制御が行われる。この燃焼不
良制御が図24に示されている。次いでステップ600
ではEGR制御が行われる。このEGR制御が図25に
示されている。
【0111】一方、ステップ302においてL>X
(N)になったと判断されるとステップ306に進んで
フラグIがリセットされる。次いでステップ307に進
み、第2の燃焼、即ち従来より行われている通常の燃焼
が行われる。一方、ステップ301においてフラグIが
リセットされていると判断されたとき、即ち機関の運転
領域が第2の運転領域IIであるときにはステップ311
に進んで要求負荷Lが第2の境界Y(N)よりも小さく
なったか否かが判別される。L≧Y(N)のときにはス
テップ307に進む。これに対してL<Y(N)になる
とステップ312に進んでフラグIがセットされる。次
いでステップ303に進み、低温燃焼が行われる。
【0112】次に図24を参照しつつ本実施形態の噴射
制御ルーチンについて説明する。図24を参照すると、
まず初めにステップ401においてアイドリング運転時
であるか否かが判別される。アイドリング運転時でない
ときにはただちに燃焼不良制御ルーチンに進む。これに
対してアイドリング運転時にはステップ402に進む。
【0113】ステップ402では機関回転数Nが目標ア
イドリング回転数No、例えば600r.p.m.から一定値
a、例えば10r.p.m.を減算した値(No−a)よりも
低くなったか否かが判別される。N<No−aのときに
はステップ404に進んで噴射量の補正値ΔQに一定値
bが加算される。次いでステップ406に進んで噴射量
Qが補正値ΔQだけ増大せしめられる。一方、ステップ
402においてN≧No−aであると判断されるとステ
ップ403に進んで機関回転数Nが目標アイドリング回
転数Noに一定値aを加算した値(No+a)よりも高
くなったか否かが判別される。N>No+aのときには
ステップ405に進んで補正値ΔQから一定値bが減算
され、次いでステップ406に進む。
【0114】即ち、機関アイドリング運転時には機関回
転数NがNo−a<N<No+aとなるように噴射量Q
が制御される。
【0115】次に図25を参照しつつ本実施形態の燃焼
不良制御について説明する。図25を参照すると、まず
初めにステップ501において燃焼不良フラグがセット
されているか否かが判別される。燃焼不良フラグがリセ
ットされているとき、即ち燃焼不良が生じていないとき
にはステップ502に進んで空燃比センサ21により検
出された実際の空燃比A/Fが目標空燃比AFに一定値
dを加算した値(AF+d)よりも大きいか否かが判別
される。A/F>AF+dのときにはステップ504に
進んで空燃比の補正値ΔAFから一定値eが減算され
る。次いでステップ506では目標空燃比AFに補正値
ΔAFを加算することにより空燃比の学習値AFO(=
AF+ΔAF)が算出される。
【0116】一方、ステップ502においてA/F≦A
F+dであると判別されたときにはステップ503に進
んで空燃比センサ21により検出された実際の空燃比A
/Fが目標空燃比AFから一定値dを減算した値(AF
−d)よりも小さいか否かが判別される。A/F<AF
−dのときにはステップ505に進んで補正値ΔAFに
一定値eが加算され、次いでステップ506に進む。即
ち、燃焼不良が生じていないときには実際の空燃比A/
Fがほぼ目標空燃比AFとなるように空燃比の学習値A
FOが算出される。
【0117】次いでステップ507では図14(A)か
ら(D)に示されるマップのうちで空燃比の学習値AF
Oに応じた二つのマップを用いて比例配分によりスロッ
トル弁16の目標開度STが算出され、スロットル弁1
6の開度がこの目標開度STに制御される。次いでステ
ップ508では図15(A)から(D)に示されるマッ
プのうちで空燃比の学習値AFOに応じた二つのマップ
用いて比例配分によりEGR制御弁23の目標基本開度
SEが算出される。
【0118】一方、ステップ501において燃焼不良フ
ラグがセットされていると判断されたとき、即ち燃焼不
良が生じているときにはステップ509に進んで補正値
ΔAFに一定値が加算され、次いでステップ506に進
む。従って、燃焼不良が生じているときには空燃比の学
習値AFOが次第に増大し、それにより実際の空燃比が
次第に大きくなる。このとき実際には吸入空気量が増大
するようにスロットル弁16の開度が次第に大きくな
り、EGR率が目標EGR率となるようにEGR制御弁
23の開度も次第に増大する。
【0119】次いで燃焼不良が生じなくなるとステップ
501からステップ502に進み、実際の空燃比A/F
が目標空燃比AFとなるようにスロットル弁16の開度
およびEGR制御弁23の開度が徐々に小さくなる。
【0120】次に図26を参照しつつ本実施形態のEG
R制御について説明する。このEGR制御はEGR率を
目標EGR率に正確に一致せしめるための制御である。
図25を参照すると、まず初めにステップ601におい
て酸素濃度センサ44の出力信号に基づき実際のEGR
率が算出される。即ち、吸入空気量をQa,EGRガス
量をQg、酸素濃度センサ44により検出された酸素濃
度を〔O2 〕%とすると吸入空気中の酸素濃度はほぼ2
1%であり、EGRガス中の酸素濃度はほぼ5%である
ので次式が成立する。
【0121】(0.21・Qa+0.05・Qg)/
(Qa+Qg)=〔O2 〕 ここでEGR率はQg/(Qa+Qg)であるので上式
は次式のように表される。 0.21−0.16・EGR率=〔O2 〕 従って酸素濃度センサ44により酸素濃度〔O2 〕を検
出すれば実際のEGR率が算出できることになる。
【0122】次いでステップ602では目標EGR率G
Rが算出される。次いでステップ603では実際のEG
R率が目標EGR率から一定値fを減算した値よりも小
さいか否かが判別される。実際のEGR率<GR−fの
ときにはステップ605に進んでEGR制御弁23の開
度の補正値ΔSEに一定値が加算される。次いでステッ
プ607においてEGR制御弁23の目標基本開度SE
に補正値ΔSEを加算することにより目標開度SEが算
出される。このときEGR制御弁23の開度が増大せし
められる。
【0123】一方、ステップ603において実際のEG
R率≧GR−fであると判断されたときにはステップ6
04に進んで実際のEGR率が目標EGR率GRに一定
値fを加算した値(GR+f)よりも大きいか否かが判
別される。実際にEGR率>GR+fのときにはステッ
プ606に進んで補正値ΔSEから一定値gが減算さ
れ、次いでステップ607に進む。このときにはEGR
制御弁23の開度が減少せしめられる。
【0124】本実施形態によれば、図22のステップ3
03からステップ600において低温燃焼を行うことが
できるため、内燃機関から煤が排出されること及びNO
xが排出されることを同時に阻止することができる。更
に、燃焼圧センサ47の出力値に基づいて図22のステ
ップ400からステップ600において空燃比を制御す
ることができるため、燃焼圧が不適切なときに空燃比を
制御することによって燃焼圧を適切に制御することがで
きる。その上、図18に示したルーチンにより各気筒の
燃焼のばらつきが補正された以後に、図22に示したス
テップ400からステップ600において、すべての気
筒ではない、いずれか一つ又は複数の気筒の燃焼室内に
配置された燃焼圧センサ47の出力値に基づいてすべて
の気筒の空燃比を制御することができるため、燃焼圧セ
ンサがすべての気筒に配置されていない場合であっても
すべての気筒の燃焼圧を適切に制御することができる。
【0125】次に、本発明の多気筒内燃機関の第二の実
施形態について説明する。本実施形態の構成は、図1に
示した第一の実施形態の構成とほぼ同様である。以下、
本実施形態と第一の実施形態とが異なる点についてのみ
説明する。
【0126】図27は本実施形態の燃焼不良制御を示し
ている。本実施形態では燃焼不良が生じたときに噴射開
始時期θSを早めるようにしている。
【0127】即ち、図27を参照すると、まず初めにス
テップ701において図14(A)から(D)に示され
るマップのうちで目標空燃比AFに応じた二つのマップ
を用いて比例配分によりスロットル弁16の目標開度S
Tが算出され、スロットル弁16の開度がこの目標開度
STに制御される。次いでステップ702では図15
(A)から(D)に示されるマップのうちで目標空燃比
AFに応じた二つのマップを用いて比例配分によりEG
R制御弁23の目標基本開度SEが算出される。
【0128】次いでステップ703では燃焼不良フラグ
がセットされているか否かが判別される。燃焼不良フラ
グがセットされているとき、即ち燃焼不良が生じている
ときにはステップ708に進んで噴射開始時期の補正値
ΔQSに一定値hが加算される。次いでステップ707
では図22に示される目標噴射開始時期θSに補正値Δ
QSを加算することにより最終的な噴射開始時期QSO
が算出される。即ち、燃焼不良が生じていると噴射開始
時期が徐々に早められることになる。
【0129】一方、燃焼不良フラグがリセットされる
と、即ち燃焼不良が生じなくなるとステップ703から
ステップ704に進んで補正値ΔQSから一定値hが減
算される。次いでステップ705では補正値ΔQSが負
になったか否かが判別され、ΔQS<0のときにはステ
ップ706においてΔQSが零にされた後にステップ7
07に進む。即ち、燃焼不良が生じなくなると噴射開始
時期は図23に示される目標噴射開始時期QSまで徐々
に遅くされる。
【0130】本実施形態によれば、第一の実施形態と同
様に低温燃焼を行うことができるため、内燃機関から煤
が排出されること及びNOxが排出されることを同時に
阻止することができる。更に、燃焼圧センサ47の出力
値に基づいて図24に示したルーチンにおいて燃料噴射
開始時期を制御することができるため、燃焼圧が不適切
なときに燃料噴射開始時期を制御することによって燃焼
圧を適切に制御することができる。その上、第一の実施
形態と同様に各気筒の燃焼のばらつきが補正された以後
に、図24に示したルーチンにおいて、すべての気筒で
はない、いずれか一つ又は複数の気筒の燃焼室内に配置
された燃焼圧センサ47の出力値に基づいてすべての気
筒の燃料噴射開始時期を制御することができるため、燃
焼圧センサがすべての気筒に配置されていない場合であ
ってもすべての気筒の燃焼圧を適切に制御することがで
きる。
【0131】
【発明の効果】請求項1及び2に記載の発明によれば、
内燃機関から煤(スモーク)が排出されること及びNO
xが排出されることを同時に阻止しつつ、燃焼圧が不適
切なときに燃焼圧を適切に制御すると共に、燃焼圧検出
手段がすべての気筒に配置されていない場合であっても
すべての気筒の燃焼圧を適切に制御することができる。
【0132】請求項3から5に記載の発明によれば、各
気筒の膨張行程を含む行程における機関角速度を検出す
ることにより各気筒の燃焼のばらつきを検出することが
できる。
【0133】請求項6から8に記載の発明によれば、機
関角速度を増加させて各気筒の燃焼のばらつきを適切に
補正することができる。
【0134】請求項9及び10に記載の発明によれば、
未燃炭化水素が内燃機関から排出されるのを阻止するこ
とができる。
【0135】請求項11に記載の発明によれば、外部か
ら燃焼室内に不活性ガスを供給する手段を特別に設ける
必要性を回避することができる。
【0136】請求項12及び13に記載の発明によれ
ば、排気ガス再循環率が、煤の発生量がピークになる排
気ガス再循環率に設定されるのを回避することができ
る。
【0137】請求項14に記載の発明によれば、運転領
域に応じて適切な燃焼を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧縮着火式多気筒内燃機関の全体図である。
【図2】スモークおよびNOxの発生量等を示す図であ
る。
【図3】燃焼圧を示す図である。
【図4】燃料分子を示す図である。
【図5】噴射燃料量と混合ガス量との関係を示す図であ
る。
【図6】第1の運転領域Iおよび第2の運転領域IIを示
す図である。
【図7】ΔL(N)と機関回転数Nとの関係を示す図で
ある。
【図8】空燃比センサ等の出力を示す図である。
【図9】スロットル弁の開度等を示す図である。
【図10】第1の境界X(N)の制御方法を説明するた
めの図である。
【図11】K(T)1 ,K(T)2 およびK(N)を示
す図である。
【図12】第1の運転領域Iにおける空燃比を示す図で
ある。
【図13】目標空燃比のマップを示す図である。
【図14】スロットル弁の目標開度のマップを示す図で
ある。
【図15】EGR制御弁の目標基本開度を示す図であ
る。
【図16】第2の燃焼における空燃比等を示す図であ
る。
【図17】スロットル弁の目標開度等を示す図である。
【図18】気筒間の燃焼のばらつきを補正する方法を示
したフローチャートである。
【図19】燃焼圧等を示す図である。
【図20】燃焼不良検出ルーチンを示す図である。
【図21】低温燃焼領域を制御するためのフローチャー
トである。
【図22】機関の運転を制御するためのフローチャート
である。
【図23】目標噴射開始時期等のマップを示す図であ
る。
【図24】噴射制御を行うためのフローチャートであ
る。
【図25】燃焼不良を制御するためのフローチャートで
ある。
【図26】EGR制御のためのフローチャートである。
【図27】燃焼不良を制御するための第二の実施形態を
示すフローチャートである。
【符号の説明】
5…燃焼室 6…燃料噴射弁 16…スロットル弁 19…触媒 23…EGR制御弁 42…クランク角センサ 46…燃焼圧センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F01N 3/24 F01N 3/24 U F02D 21/08 301 F02D 21/08 301D 43/00 301 43/00 301H 301E 301J 301G 301N F02M 25/07 550 F02M 25/07 550D 550R 570 570D 570M (72)発明者 吉▲崎▼ 康二 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 伊藤 丈和 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 村田 宏樹 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 安部 司 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3G062 AA01 AA03 BA02 BA05 BA06 CA06 GA05 GA06 GA15 GA18 3G084 AA01 AA03 BA09 BA13 BA14 BA15 BA20 DA10 EA05 EA07 EC03 FA21 FA38 FA39 3G091 AA11 AA18 AB02 AB03 AB06 BA14 BA15 CB02 CB03 CB07 DA01 DA02 DA07 DB06 DB07 DB08 DB10 DB13 EA01 EA02 EA07 EA08 EA12 EA16 EA17 EA20 EA30 EA34 FA02 FA08 FA12 FA13 FB02 FB10 FB11 FB12 FC07 HB05 3G092 AA02 AA13 AA17 BA04 BB06 BB08 DC03 DC15 DE01S DG07 EA01 EA02 EA03 EA04 EA07 EA11 EB09 EC01 FA17 FA18 GA04 GA05 GA06 HA04Z HA06X HA06Z HB01X HB01Z HB02X HB02Z HB03X HB03Z HC01X HC01Z HC03X HD02Z HD05X HD05Z HD07X HD07Z HE02Z HE04Z HE05Z HE06Z HE08Z HF08Z 3G301 HA02 HA06 HA13 JA05 JA24 JA25 KA08 KA09 LA00 LB06 MA01 MA11 MA18 MA28 ND01 NE06 NE11 PB08A PB08Z PC01Z PD03Z PE00Z PE03Z PE06Z PE08Z PF03Z

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃焼室内に供給される不活性ガスの量を
    増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達
    し、燃焼室内に供給される不活性ガスの量を更に増大し
    ていくと燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲
    のガス温が煤の生成温度よりも低くなって煤がほとんど
    発生しなくなる多気筒内燃機関であって、各気筒の燃焼
    のばらつきを検出するためのばらつき検出手段を具備
    し、前記ばらつき検出手段の出力値に基づいて各気筒の
    燃焼のばらつきを補正し、燃焼室内の燃焼圧を検出する
    ための燃焼圧検出手段をいずれかの気筒の燃焼室内に配
    置し、煤の発生量がピークとなる不活性ガスの量よりも
    燃焼室内に供給される不活性ガスの量が多く煤がほとん
    ど発生しない燃焼が行われている時であって各気筒の燃
    焼のばらつきが補正された以後に、前記燃焼圧検出手段
    の出力値に基づいてすべての気筒の空燃比を制御するよ
    うにした多気筒内燃機関。
  2. 【請求項2】 燃焼室内に供給される不活性ガスの量を
    増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達
    し、燃焼室内に供給される不活性ガスの量を更に増大し
    ていくと燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲
    のガス温が煤の生成温度よりも低くなって煤がほとんど
    発生しなくなる多気筒内燃機関であって、各気筒の燃焼
    のばらつきを検出するためのばらつき検出手段を具備
    し、前記ばらつき検出手段の出力値に基づいて各気筒の
    燃焼のばらつきを補正し、燃焼室内の燃焼圧を検出する
    ための燃焼圧検出手段をいずれかの気筒の燃焼室内に配
    置し、煤の発生量がピークとなる不活性ガスの量よりも
    燃焼室内に供給される不活性ガスの量が多く煤がほとん
    ど発生しない燃焼が行われている時であって各気筒の燃
    焼のばらつきが補正された以後に、前記燃焼圧検出手段
    の出力値に基づいてすべての気筒の燃料噴射開始時期を
    制御するようにした多気筒内燃機関。
  3. 【請求項3】 各気筒の膨張行程を含む行程における機
    関角速度を検出することにより各気筒の燃焼のばらつき
    を検出する請求項1又は2に記載の多気筒内燃機関。
  4. 【請求項4】 前記機関角速度が各気筒の膨張行程を含
    む行程の一部に要する時間を検出することにより得られ
    る請求項3に記載の多気筒内燃機関。
  5. 【請求項5】 前記機関角速度が各気筒の膨張行程を含
    む行程の全部に要する時間を検出することにより得られ
    る請求項3に記載の多気筒内燃機関。
  6. 【請求項6】 前記機関角速度が小さい気筒の燃料噴射
    開始時期を進角させることにより各気筒の燃焼のばらつ
    きを補正する請求項3に記載の多気筒内燃機関。
  7. 【請求項7】 前記機関角速度が小さい気筒の燃料噴射
    量を減量補正することにより各気筒の燃焼のばらつきを
    補正する請求項3に記載の多気筒内燃機関。
  8. 【請求項8】 前記機関角速度が小さい気筒の燃料噴射
    圧を高くすることにより各気筒の燃焼のばらつきを補正
    する請求項3に記載の多気筒内燃機関。
  9. 【請求項9】 燃焼室から排出された未燃炭化水素を酸
    化するために機関排気通路内に酸化機能を有する触媒を
    配置した請求項1又は2に記載の多気筒内燃機関。
  10. 【請求項10】 前記触媒が酸化触媒、三元触媒又はN
    Ox吸収剤の少くとも一つからなる請求項9に記載の多
    気筒内燃機関。
  11. 【請求項11】 燃焼室から排出された排気ガスを機関
    吸気通路内に再循環させる排気ガス再循環装置を具備
    し、前記不活性ガスが前記機関吸気通路内に再循環され
    た再循環排気ガスからなる請求項1又は2に記載の多気
    筒内燃機関。
  12. 【請求項12】 煤の発生量がピークとなる再循環排気
    ガスの量よりも燃焼室内に供給される再循環排気ガスの
    量が多く煤がほとんど発生しない第1の燃焼と、煤の発
    生量がピークとなる再循環排気ガスの量よりも燃焼室内
    に供給される再循環排気ガスの量が少ない第2の燃焼と
    を選択的に切り換える切換手段を具備し、前記第1の燃
    焼から前記第2の燃焼に又は前記第2の燃焼から前記第
    1の燃焼に切り換えられるときに排気ガス再循環率をス
    テップ状に変化させるようにした請求項11に記載の多
    気筒内燃機関。
  13. 【請求項13】 前記第1の燃焼が行われているときの
    排気ガス再循環率がほぼ55パーセント以上であり、前
    記第2の燃焼が行われているときの排気ガス再循環率が
    ほぼ50パーセント以下である請求項12に記載の多気
    筒内燃機関。
  14. 【請求項14】 機関の運転領域を低負荷側の第1の運
    転領域と高負荷側の第2の運転領域とに分割し、前記第
    1の運転領域では前記第1の燃焼を行い、前記第2の運
    転領域では前記第2の燃焼を行うようにした請求項12
    に記載の多気筒内燃機関。
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JP2020176594A (ja) * 2019-04-22 2020-10-29 マツダ株式会社 エンジンの制御方法および制御装置
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