JP2020174756A - 自律神経活動のモニタリング方法及びそのシステム - Google Patents

自律神経活動のモニタリング方法及びそのシステム Download PDF

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Abstract

【課題】 運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動を測定中に(リアルタイムで)判別するモニタリング方法及びそのシステムの提供。【解決手段】 運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動のモニタリング方法及びそのシステムである。本発明のシステムは、運転者の心拍間隔変動データ及び呼吸波形データをそれぞれ測定する生体情報測定ユニットと、これらの心拍間隔変動データ及び呼吸波形データに基づいて運転者の自律神経活動の状態を判別する判別装置を含む制御ユニットと、を備え、判別装置が、同一の時間軸における心拍間隔変動データを呼吸周期に対応させて時間範囲ごとに切り出し、直前の測定区間に含まれる心拍間隔変動データに対して、心拍の低周波成分を除去する波形変換処理を行って変換心拍間隔変動データを作成し、呼吸波形データと変換心拍間隔変動データとを対比することにより、運転者の自律神経活動の現在状態を判別する。【選択図】図1

Description

本発明は、車両の運転中にある運転者のモニタリング方法及びそのシステムに関し、特に、運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動のモニタリング方法及びそのシステムに関する。
人間の自律神経は、交感神経系と副交感神経系とにより構成されており、これらをバランスさせることで心身を正常な状態に維持している。ここで、心拍変動(心拍間隔の変動)には、心身の緊張状態を反映する交感神経系の活動と、この働きを鎮静状態へと導く副交感神経系の活動を反映する成分があり、この副交感神経系の活動を反映する成分の周期は呼吸周期とほぼ一致するとされている。そこで、車両を運転する運転者の呼吸や心拍などの生体周期情報の変化を捉えて該運転者の自律神経の活動状態を判別し、車両の運転制御に反映させ、又は、警報を与えようとするシステムなどが提案されている。
例えば、特許文献1では、運転者の心拍変動を検出し該運転者の自律神経の活動状態を検出する方法を開示している。ここでは、車両のハンドル部に設けた電極によって運転者の心拍計測を行うとともに、電極を複数設けてハンドルの把持状態を検出し且つ運転者を撮像して姿勢を検出することで、心拍と運転者の様子からその自律神経の活動状態、つまり、緊張感、眠気、焦燥感、疲労感、ぼんやり(注意散漫)などの車両の運転に注意を要する状態を判別処理できるとしている。
また、特許文献2でも、運転者の自律神経の活動状態を判定し運転支援を行う車両用運転支援方法として、呼吸の変化と運転状態の変化とに基づいて判別する方法を開示している。すなわち、シート背部に設けた感圧センサからの体圧信号と、アクセル及びブレーキの走行状態量と、から呼吸信号を抽出し運転者の「心理的動転度合い」を判定するとしている。ここで、体圧の入力信号にはアクセル及びブレーキの操作に基づく体圧変動が含まれるため、走行状態量によってアクセル及びブレーキの操作に基づく体圧変動を取り除いて、正確な呼吸信号を得るべきとしている。
更に、特許文献3では、測定された心拍について呼吸性変動の出現を期待される拍間時間(RRI)を数値的にフィルタ処理して求め、RRIの変動状態が平常運転状態のものであるか、又は、急激な精神負荷の変動に対応する単純増加又は単純減少かを検出して、「居眠り」のような自律神経の活動状態の指標である覚醒度の判定を行う覚醒度判定方法を開示している。ここでは、平常状態であるときと、単純増加あるいは単純減少であるときで、RRIの変動に対応した基準線f(n)を変更し、この基準線f(n)に対するRRIの分散RRVnを演算し、分散RRVnに基づいた覚醒度の検出を行い得るとしている。
特許第4739407号公報 特開2006−042903号公報 特開2007−044154号公報
上記したように、心拍を測定して運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動をモニタリングしようとする試みがあるが、ここでは呼吸周期成分を抽出するための周波数解析による信号処理が行われ得る。一方、呼吸波形を計測せずに心拍波形から呼吸周期成分を抽出するための信号処理を行うためには、解析のための心拍波形データを長い区間(例えば30秒)に連続的に測定する必要があるため、時間分解能が低下するとともに測定中にリアルタイムの判別を行うことができないという問題があった。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動を測定中に(リアルタイムで)判別するモニタリング方法及びそのシステムを提供することにある。
本発明による、運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動のモニタリング方法は、運転中の前記運転者の心拍及び呼吸の時間に対する心拍間隔変動データ及び呼吸波形データをそれぞれ測定するとともに、同一の時間軸における前記心拍間隔変動データを前記呼吸波形データの呼吸周期に対応させて時間範囲ごとに切り出し、現在時点に対して直前の測定区間に含まれる前記時間範囲ごとの前記心拍間隔変動データに対して、心拍間隔変動の低周波成分を除去する波形変換処理を行って変換心拍間隔変動データを作成し、前記呼吸周期ごとの前記呼吸波形データと前記変換心拍間隔変動データとを対比することにより、前記運転者の前記自律神経活動の現在状態を判別することを特徴とする。
また、本発明による、運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動のモニタリングシステムは、運転中の前記運転者の心拍及び呼吸の時間波形である心拍間隔変動データ及び呼吸波形データをそれぞれ測定する生体情報測定ユニットと、前記心拍間隔変動データ及び前記呼吸波形データを繰り返し取得して蓄積するデータベース及び前記データベースに基づいて前記運転者の自律神経活動の状態を判別する判別装置を含む制御ユニットと、を備え、前記判別装置は、同一の時間軸における前記心拍間隔変動データを前記呼吸波形データの呼吸周期に対応させて時間範囲ごとに切り出し、現在時点に対して直前の測定区間に含まれる前記時間範囲ごとの前記心拍間隔変動データに対して、心拍の低周波成分を除去する波形変換処理を行って変換心拍間隔変動データを作成し、前記呼吸周期ごとの前記呼吸波形データと前記変換心拍間隔変動データとを対比することにより、前記運転者の前記自律神経活動の現在状態を判別することを特徴とする。
このとき、前記波形変換処理において、前記呼吸周期ごとの呼吸開始点に対応する心拍値を結ぶ線分データを前記心拍間隔変動データから差し引いて変換心拍間隔変動データとするようにしてもよい。また、前記現在状態が、前記呼吸周期ごとの前記変換心拍間隔変動データの振幅に基づいて判別されるようにしてもよい。さらに、前記現在状態が、前記呼吸周期ごとの前記呼吸波形データと前記変換心拍間隔変動データとを重ね合わせて、これらの時間軸に関して対比した相関値に基づいて判別されるようにしてもよい。
かかる発明によれば、運転者の生体情報として心拍と呼吸を同時に測定し、これらの波形データを呼吸周期ごとに切り出して対比するため、長い区間の測定を行う必要がなく、測定中に(リアルタイムで)自律神経活動の現在状態を判別あるいは推定できる。
上記した自律神経活動のモニタリング方法あるいはそのシステムの発明において、前記測定区間で前記呼吸波形データに含まれる呼吸周期が所定範囲を外れた場合に、この測定区間に含まれる心拍間隔変動データ及び呼吸波形データを不規則区間として除去するようにしてもよい。かかる発明によれば、判別精度を低下させる要因の一つである測定データの不規則区間を除去できるため、自律神経活動の状態の判別精度をさらに高めることができる。
上記した自律神経活動のモニタリング方法あるいはそのシステムの発明において、前記判別の後に、当該判別結果に応じて前記運転者に運転補助情報を通知するように構成してもよい。かかる発明によれば、運転中の運転者にリアルタイムに判別結果をフィードバックすることで運転を補助することが可能となる。
上記した自律神経活動のモニタリング方法あるいはそのシステムの発明において、前記生体情報測定ユニットが、前記運転者の胸囲を測定して前記呼吸波形データを取得する呼吸波形測定装置を含むように構成してもよい。かかる発明によれば、運転者の動作に大きな影響を与えることなく、心拍を簡便且つ精確に測定できる。併せて、心拍と呼吸とを同時かつ近傍で測定することが可能になるとともに、ユニット全体の小型化をも図ることができる。
本発明の代表的な一例によるモニタリングシステムの概要を示すブロック図である。 具体的なモニタリング方法に適用される代表的な波形データの一例である。 実験により運転者から測定した波形データの一例である。 図3のアプローチ区間AZを切り出した波形データである。 図3の停車区間SZの後半区間SZ2を切り出した波形データである。 図3の発車区間DZの加速区間DZ2を切り出した波形データである。
以下、本発明の代表的な一例による自律神経活動のモニタリング方法及びそのシステムの具体的な実施態様について、図1〜図6を用いて説明する。
図1に示すように、運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動をモニタリングするモニタリングシステム100は、運転者の生体情報として、運転者の心拍と呼吸との時間波形をそれぞれ測定する生体情報測定ユニット110と、この生体情報測定ユニット110からの波形データを受信するとともに、当該波形データを分析する機能を含む制御ユニット120と、を含む。
生体情報測定ユニット110は、例えば運転者の胸部又は腹部に装着可能な伸縮性を有するベルト状の装着具として構成され、心拍を測定する心拍計測センサ112と、呼吸状態を測定する呼吸検出センサ114と、を含む。ここで、心拍計測センサ112は、複数の心電図電極等により構成され、呼吸検出センサ114は、運転者の胸囲又は腹囲、すなわち、胸部又は腹部の周囲長の変化を検出する変位センサ等により構成された呼吸波形測定装置からなる。これにより、生体情報測定ユニット110は、運転者の動作に大きな影響を与えることなく、心拍と呼吸とを同時かつ近傍で測定することが可能になるとともに、ユニット全体の小型化をも図ることができる。
制御ユニット120は、図1に示したモニタリングシステム100全体の動作を制御するとともに、生体情報測定ユニット110にデータの測定を指令して測定データを受信する制御装置122と、当該制御装置122から転送された波形データを分析して運転者の自律神経の活動状態を判別する判別装置124と、判別装置124が実行するプログラムや生体情報測定ユニット110から受信した波形データを記憶する記憶装置126と、を含む。
判別装置124は、所定の判別プログラムにより、例えば生体情報測定ユニット110で測定された測定データにおいて、同一の時間軸における心拍間隔変動データを呼吸の呼吸周期に対応する時間範囲ごとに切り出し、現在時点に対して直前の測定区間に含まれる時間範囲ごとの心拍間隔変動データに対して、心拍の低周波成分を除去する波形変換処理を行って変換心拍間隔変動データを作成し、この呼吸周期ごとの呼吸波形データと変換心拍間隔変動データとを対比することにより、運転者の自律神経活動の現在状態を判別する。ここで、制御ユニット120は、図示を省略する出力装置(モニタ等)を含んでもよい。
また、生体情報測定ユニット110と制御ユニット120の制御装置122とは、電気信号を伝達する信号線130で接続される。なお、信号線130は有線接続の場合に限定されず、生体情報測定ユニット110と制御ユニット120とを無線で接続して指令信号や測定データのやり取りを実施してもよい。
次に、上記したモニタリングユニットの1つの実施例による自律神経活動のモニタリング方法における代表的なモニタリング例を説明する。
ここでは、運転者の運転作業中における生体情報を測定する実験として、運転シミュレータを用いた模擬運転作業を実施した。具体的には、大型TVモニタとワンハンドル型コントローラなどで構成した簡易鉄道運転シミュレータを用い、シミュレータ制御には,市販の鉄道運転シミュレーションソフトを用いた。実験は、運転者が休憩を挟みながら模擬走行課題(例えば実際の複数駅間の走行プログラム)を所定回数だけ繰り返し行った。このとき、運転者には,実験中は時刻表に従って制限速度内で運転するとともに、非常時には、非常ブレーキをかけて警笛を鳴らすよう指示した。
生体情報測定ユニット110で測定された心拍間隔変動と呼吸の測定データは、代表的には図2に示したような波形データとなる。なお、通常の呼吸と心拍変動とは逆位相の関係にあるため、図2においては、心拍間隔変動データの正負を逆転して(すなわち、心拍間隔変動データに−1を積算して)示している。例えば、横軸に時間を取り、縦軸にそれぞれの検出センサの検出強度を取った場合、心拍間隔変動データHWは多数の周波数成分を含むランダムな波形となるが、呼吸波形データBWには呼吸開始点Sごとに所定の呼吸周期Tが現れる。
そこで、上記したモニタリング方法は、測定された心拍間隔変動データHWと呼吸波形データBWとを同一の時間軸で並べた上で、測定している現在時点に対して直前の測定区間(例えば5乃至10秒程度)に測定した心拍間隔変動データHW及び呼吸波形データBWを呼吸周期Tごとに切り出した際に、心拍変動と呼吸周期との間に同期性があることを見出したことにより、発明に至ったものである。
すなわち、上記したモニタリング方法においては、切り出した心拍間隔変動データと呼吸波形データに対して、心拍間隔変動の低周波成分を除去する波形変換処理を行うことにより変換心拍間隔変動データを作成する。ここで、波形変換処理の一例として、例えば、現在時点に対して直前の測定区間に含まれる心拍間隔変動データに呼吸周期ごとの呼吸開始点に対応する心拍値を結ぶ線分データ定義し、この線分データを心拍間隔変動データから差し引いて変換心拍間隔変動データとする。そして、呼吸周期ごとの呼吸波形データと作成した変換心拍間隔変動データとを対比することにより、運転者の自律神経活動の現在状態を判別する。
図3は、上記実験により測定されたある運転者の心拍間隔及び呼吸の波形データの一例である。なお、図3において、横軸に時間を取り、(a)では、縦軸に呼吸に基づく電位変化を表し、(b)では、縦軸に心拍間隔を無次元化して表し、(c)では、心拍間隔変動データに所定の波形変換処理した変換心拍間隔変動データの正負を反転させたものと呼吸波形データとを同一の時間軸に対して重ね合わせた状態を示した。また、図3に示す測定データには、駅に停車するまでのアプローチ区間AZと、駅に停車している停車区間SZと、駅を出発して加速する発車区間DZと、が含まれている。
図3(c)に示すように、心拍と呼吸との相関関係は、心拍間隔変動データHWに呼吸周期Tを考慮した波形変換処理を行うことにより、より強く傾向が現れることがわかった。ここで、心拍間隔変動データHWの波形変換処理の一例としては、例えば、図3(b)に示す心拍間隔変動データHWに対して、これに含まれる呼吸開始点Sを直線でつないだ線分データH0を定義し、心拍間隔変動データHWの逆振幅データから当該線分データH0のデータを除算することで、変換心拍間隔変動データCWが求められる。すなわち、変換心拍間隔変動データCWは、心拍間隔変動データHWと線分データH0とを用いて以下の式1により求められる。
[式1] CW=HW×(−1)−H0
上記式1で求められた変換心拍間隔変動データCWは、心拍変動の低周波成分が除去された呼吸性成分を中心とする周波数成分を表しており、これを呼吸波形データBWと重ね合わせると、図3(C)に示すように、呼吸周期Tごとに同期した強い相関関係が現れる。この相関関係に基づいて、運転者の自律神経活動の現在状態を推定することができる。このとき、現在状態の判別は、呼吸周期ごとの呼吸波形データと変換心拍間隔変動データとを重ね合わせて、これらの時間軸に関して対比した相関値に基づいて行うようにしてもよい。
ところで、運転者の自律神経活動を推定する上では、人間の心理的動揺時に「頭が真っ白になる」との表現があるように、運転者が動揺した場合に現状認識が困難な状態となるため、主観評価に頼らない推定手法が求められる。ここでは、心理的動揺を生じさせる事象が発生した後の心理過程を、「心理的動揺がない」心理過程と、「心理的動揺がある」心理過程とに大別する。
心理的動揺が生じない場合は、冷静に状況把握を行って適切な行動に移ると考えられ、自律神経系の反応としては、相対的に情報収集に徹する副交感神経系の反応が生じると考えられる。一方,心理的動揺が生じると、神経が興奮状態となり交感神経系が優位になると考えられる。実際には、運転者の自律神経活動の現在状態としては、心理的動揺を全く生じずに状況把握等の適切な行動に移る「タイプA」と、一時的に心理的動揺が生じるものの速やかに回復して適切な行動に移行する「タイプB」と、心理的動揺が持続する「タイプC」の3つのタイプがあると考えられる。
そこで、まず図4に示すように、図3で示したアプローチ区間AZのみを抽出して検討する。なお、図4では、グラフの左側から徐々に駅に向けて減速を始めて、右端において停車した状態を示している。
図4(a)に示すように、呼吸波形データBWは、ほぼ一定の振幅及び周期で推移しており、運転者の呼吸は比較的安定している。一方、図4(b)に示すように、心拍間隔変動データHWでは、減速開始から不規則に振幅が増減しているが、停車する直前の区間において振幅が線分データH0に沿って収束するような傾向を示している。
そして、図4(c)に示すように、変換心拍間隔変動データCWと呼吸波形データBWとを同一時間軸で重ね合わせると、変換心拍間隔変動データCWと呼吸波形データBWとは、呼吸周期に対して強い相関関係を示すとともに、変換心拍間隔変動データCWにおいて、駅に停車する直前の区間でその振幅がやや減少している。これは、副交感神経系の活動が低下したことを示すものであり、上記した「タイプB」の類型に該当し、運転者は緊張や集中した現在状態にあるものと推定される。
次に、駅に停車している停車区間SZについて検討すると、まず図3(a)に示すように、停車区間SZの前半区間SZ1では、呼吸波形データBWが振幅及び周期ともに大きく乱れた状態が現れている。この区間は、上述したアプローチ区間AZで減速して駅に停車した直後であって、停車のために最大限の緊張及び集中がなされた直後の区間でもあるため、運転者は急激に弛緩して呼吸に大きな変動が現れたものと推定される。
しかしながら、このような呼吸に大きな変動が生じた測定データは、自律神経活動の評価には適さないものであるため、この前半区間SZ1は判別の対象から除外される。このように、図1に示したモニタリングシステム100では、呼吸波形データBWにおける呼吸周期が所定範囲を外れた場合に、その測定区間を不規則な呼吸による「判別除外区間」あるいは「不規則区間」(図3の前半区間SZ1)として選別することが可能となる。ここで、除外の対象となる不規則区間を選別する閾値となる呼吸周期の「所定範囲」としては、対象の運転者の平常時の呼吸周期の範囲を予め測定しておき、その平常時の呼吸周期の範囲の下限値を下回った場合あるいはその上限値を超えた場合等が挙げられる。
一方、停車区間SZの後半区間SZ2では、図5(a)に示すように、呼吸波形データBWは、前半区間SZ1での乱れた状態からほぼ一定の振幅及び周期に回復していることがわかる。また、図5(b)に示すように、心拍間隔変動データHWでは、その強さは大きく変動しているものの、振幅が線分データH0に沿って徐々に収束するような傾向を示している。
そして、図5(c)に示すように、変換心拍間隔変動データCWと呼吸波形データBWとを同一時間軸で重ね合わせると、変換心拍間隔変動データCWと呼吸波形データBWとは、時間の経過に伴って強い相関関係を示すとともに、変換心拍間隔変動データCWの振幅値が大きくなっている。これは、副交感神経系の活動が活発化したことを示すものであり、上記した「タイプA」の類型に該当し、運転者は精神的にリラックスした現在状態にあるものと推定される。
続いて、駅を出発して加速している発車区間DZについて検討すると、まず図3(a)に示すように、発車区間DZの離駅区間DZ1では、呼吸波形データBWに振幅及び周期ともに大きく乱れた状態が現れている。この区間は、上述した停車区間SZの後半区間SZ2でリラックス状態にあった運転者が駅から発車操作した直後であって、駅から安全に離れるために緊張及び集中する区間であるため、運転者の呼吸に大きな変動が現れたものと推定される。そこで、この離駅区間DZ1についても、不規則区間(判別除外区間)として判別の対象から除外される。
一方、発車区間DZの離駅区間DZ1の後の加速区間DZ2では、図6(a)に示すように、呼吸波形データBWは、離駅区間DZ1での乱れた状態からほぼ一定の振幅及び周期に回復していることがわかる。また、図6(b)に示すように、心拍間隔変動データHWでは、強さの変動もそれほどなく、振幅も線分データH0に対して安定した挙動を示している。
そして、図6(c)に示すように、変換心拍間隔変動データCWと呼吸波形データBWとを同一時間軸で重ね合わせると、変換心拍間隔変動データCWと呼吸波形データBWとは、区間のほぼ全域で強い相関関係を示すとともに、変換心拍間隔変動データCWの振幅値もほぼ揃って安定している。これは、安定した加速状態で副交感神経系の活動が活発化したことを示すものであり、上記した「タイプA」の類型に該当し、運転者は精神的にリラックスした現在状態にあるものと推定される。
ただし、加速区間DZ2において、急激に1周期だけ心拍間隔変動データHWが大きく変動した区間が2か所含まれている(図6(b)の区間t1及びt2参照)。この区間では、図6(c)においても呼吸波形データBWとの間の相関関係が著しく低下した区間となっているが、その直後の区間では連続して安定した挙動に急回復している。このことから、この2か所の区間では、運転者が周囲の環境での突発的な変化(例えば障害物や侵入車の発見等)により、瞬間的に心拍が乱れた状態を検出したものと推定される。そして、図1に示したモニタリングシステム100によれば、連続する呼吸周期に対応する心拍及び呼吸の波形データがあれば、呼吸周期ごとの現在状態を推定できる。
上記したとおり、測定した心拍及び呼吸の波形データを呼吸周期に対応する時間範囲ごとに切り出し、その呼吸周期ごとの呼吸開始点に対応する心拍値を結ぶ線分データを用いて心拍間隔変動データを波形変換処理した変換心拍間隔変動データと呼吸波形データとを呼吸周期ごとに対比して、運転者の自律神経活動の現在状態を判別することで、心拍の波形データにおける副交感神経成分を抽出して、心理的動揺状態の様子(すなわち心拍活動における呼吸性成分の影響度と変化)を視覚化することができる。これにより、運転者の自律神経の活動状態とその類型を判別することが可能となる。また、このようなデータを同一の運転区間に対して繰り返し取得する、あるいは多くの運転者に対して取得して、それらをデータベース化することにより、自律神経の活動状態の判別の精度をより高めることも可能となる。
さらに、図1に示したモニタリングシステム100において、制御ユニット120にモニタ等の出力装置を設け、判別装置124の判別結果に応じて運転者に運転補助情報を通知するように構成してもよい。このとき、運転補助情報としては、運転者が興奮状態にあることの状況表示や、ブレーキ操作を促す警告表示、あるいは平常運転状態に復帰するための手順を教示する補助手順表示等が考えられる。これにより、運転中の運転者にリアルタイムに判別結果をフィードバックすることで運転を補助するとともに、過去に蓄積した運転者ごとの生体情報及び判別結果を運転者の補助機能に利用することが可能となる。
上記した実施例による運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動のモニタリング方法及びそのシステムによれば、生体情報測定ユニットから得られた呼吸波形データから波形の変化を読み取り、同時に計測した心電図から得られた心拍間隔変動データの変動成分の中で、副交感神経系の活動を反映する成分が呼吸周期ごとに抽出される。このため、生体情報測定ユニットで運転者の生体情報として心拍と呼吸を同時に測定し、これらの波形データを測定直前の区間で呼吸周期ごとに切り出して対比することにより、長い区間の測定を行う必要がなく、測定中に(リアルタイムで)自律神経活動の状態を判別あるいは推定できる。
また、個人内の心拍変動と呼吸周期・強さを経時的に測定・蓄積することによって、個人内の自律神経の活動状態に対応した変化パターンを抽出し、心電図と呼吸波形を活用した自律神経活動の状態の推定における判別精度を向上させることも可能となる。なお、上記のような呼吸波形分析によれば、自律神経活動だけでなく、心理的状態の推定などにも使用できる。
以上、本発明による代表的な実施例について述べたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜、当業者によって変更され得る。すなわち、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
100 モニタリングシステム
110 生体情報測定ユニット
112 心拍計測センサ
114 呼吸検出センサ
120 制御ユニット
122 制御装置
124 判別装置
126 記憶装置

Claims (14)

  1. 運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動のモニタリング方法であって、
    運転中の前記運転者の心拍及び呼吸の時間に対する心拍間隔変動データ及び呼吸波形データをそれぞれ測定するとともに、同一の時間軸における前記心拍間隔変動データを前記呼吸波形データの呼吸周期に対応させて時間範囲ごとに切り出し、
    現在時点に対して直前の測定区間に含まれる前記時間範囲ごとの前記心拍間隔変動データに対して、心拍間隔変動の低周波成分を除去する波形変換処理を行って変換心拍間隔変動データを作成し、
    前記呼吸周期ごとの前記呼吸波形データと前記変換心拍間隔変動データとを対比することにより、前記運転者の前記自律神経活動の現在状態を判別することを特徴とする自律神経活動のモニタリング方法。
  2. 前記波形変換処理において、前記呼吸周期ごとの呼吸開始点に対応する心拍値を結ぶ線分データを前記心拍間隔変動データから差し引いて変換心拍間隔変動データとすることを特徴とする請求項1記載の自律神経活動のモニタリング方法。
  3. 前記現在状態は、前記呼吸周期ごとの前記変換心拍間隔変動データの振幅に基づいて判別されることを特徴とする請求項1又は2に記載の自律神経活動のモニタリング方法。
  4. 前記現在状態は、前記呼吸周期ごとの前記呼吸波形データと前記変換心拍間隔変動データとを重ね合わせて、これらの時間軸に関して対比した相関値に基づいて判別されることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の自律神経活動のモニタリング方法。
  5. 前記測定区間において、前記呼吸波形データに含まれる呼吸周期が所定範囲を外れた場合に、この測定区間に含まれる心拍間隔変動データ及び呼吸波形データを不規則区間として除去することを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の自律神経活動のモニタリング方法。
  6. 前記自律神経活動の現在状態の判別結果に基づいて、前記運転者に運転補助情報を通知することを特徴とする請求項1乃至5のうちの1つに記載の自律神経活動のモニタリング方法。
  7. 前記呼吸波形データは、前記運転者の胸囲又は腹囲を測定して取得されることを特徴とする請求項1乃至6のうちの1つに記載の自律神経活動のモニタリング方法。
  8. 運転者の運転行動に影響を与える自律神経活動のモニタリングシステムであって、
    運転中の前記運転者の心拍及び呼吸の時間波形である心拍間隔変動データ及び呼吸波形データをそれぞれ測定する生体情報測定ユニットと、
    前記心拍間隔変動データ及び前記呼吸波形データを繰り返し取得して蓄積するデータベース及び前記データベースに基づいて前記運転者の自律神経活動の状態を判別する判別装置を含む制御ユニットと、を備え、
    前記判別装置は、同一の時間軸における前記心拍間隔変動データを前記呼吸波形データの呼吸周期に対応させて時間範囲ごとに切り出し、現在時点に対して直前の測定区間に含まれる前記時間範囲ごとの前記心拍間隔変動データに対して、心拍の低周波成分を除去する波形変換処理を行って変換心拍間隔変動データを作成し、前記呼吸周期ごとの前記呼吸波形データと前記変換心拍間隔変動データとを対比することにより、前記運転者の前記自律神経活動の現在状態を判別することを特徴とする自律神経活動のモニタリングシステム。
  9. 前記判別装置は、前記波形変換処理において、前記呼吸周期ごとの呼吸開始点に対応する心拍値を結ぶ線分データを前記心拍間隔変動データから差し引いて変換心拍間隔変動データとすることを特徴とする請求項8記載の自律神経活動のモニタリングシステム。
  10. 前記判別装置は、前記呼吸周期ごとの前記変換心拍間隔変動データの振幅に基づいて前記運転者の前記自律神経活動の現在状態を判別することを特徴とする請求項8又は9に記載の自律神経活動のモニタリングシステム。
  11. 前記判別装置は、前記呼吸周期ごとの前記呼吸波形データと前記変換心拍間隔変動データとを重ね合わせて、これらの時間軸に関して対比した相関値に基づいて前記現在状態を判別することを特徴とする請求項8乃至10のうちの1つに記載の自律神経活動のモニタリングシステム。
  12. 前記判別装置は、前記測定区間において、前記呼吸波形データに含まれる呼吸周期が所定範囲を外れた場合に、この測定区間に含まれる心拍間隔変動データ及び呼吸波形データを不規則区間として除去することを特徴とする請求項8乃至11のうちの1つに記載の自律神経活動のモニタリングシステム。
  13. 前記判別装置は、前記自律神経活動の現在状態の判別結果に基づいて、前記運転者に運転補助情報を通知することを特徴とする請求項8乃至12のうちの1つに記載の自律神経活動のモニタリングシステム。
  14. 前記生体情報測定ユニットは、前記運転者の胸囲又は腹囲を測定して前記呼吸波形データを取得する呼吸波形測定装置を含むことを特徴とする請求項8乃至13のうちの1つに記載の自律神経活動のモニタリングシステム。

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