JP2020174153A - 酸化ガリウム半導体膜の製造方法 - Google Patents

酸化ガリウム半導体膜の製造方法 Download PDF

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【課題】結晶性等に優れた高品質の酸化ガリウム半導体膜を高い生産性で得ることが可能な、ミストCVD法による酸化ガリウム半導体膜の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】原料溶液を霧化又は液滴化して生成されたミストを、キャリアガスを用いて搬送し、前記ミストを加熱して、基体上で前記ミストを熱反応させて成膜を行う酸化ガリウム半導体膜の製造方法であって、前記原料溶液中の水素イオン濃度を、1×10−12〜1×10−2mol/Lとする酸化ガリウム半導体膜の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、ミスト状の原料を用いて基体上に酸化ガリウム半導体膜の成膜を行う、酸化ガリウム半導体膜の製造方法に関する。
従来、パルスレーザー堆積法(Pulsed laser deposition:PLD)、分子線エピタキシー法(Molecular beam epitaxy:MBE)、スパッタリング法等の非平衡状態を実現できる高真空成膜装置が開発されており、これまでの融液法等では作製不可能であった酸化物半導体の作製が可能となってきた。また、霧化されたミスト状の原料を用いて、基体上に結晶成長させるミスト化学気相成長法(Mist Chemical Vapor Deposition:Mist CVD。以下、「ミストCVD法」ともいう。)が開発されてきた。ミストCVD法は、他のCVD法とは異なり高温にする必要もなく、α−Gaのコランダム構造のような準安定相の結晶構造も作製可能である。α−Gaは、バンドギャップの大きな半導体として、高耐圧、低損失及び高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子への応用が期待されている。
ミストCVD法に関して、特許文献1には、管状炉型のミストCVD装置が記載されている。特許文献2には、ファインチャネル型のミストCVD装置が記載されている。特許文献3には、リニアソース型のミストCVD装置が記載されている。特許文献4には、管状炉のミストCVD装置が記載されており、特許文献1に記載のミストCVD装置とは、ミスト発生器内にキャリアガスを導入する点で異なっている。特許文献5には、ミスト発生器の上方に基体を設置し、さらにサセプタがホットプレート上に備え付けられた回転ステージであるミストCVD装置が記載されている。
特開平1−257337号公報 特開2005−307238号公報 特開2012−46772号公報 特許第5397794号 特開2014−63973号公報
酸化ガリウムの作製には、原料溶液中にガリウムを溶解しておく必要性から、原料溶液はpH=1程度の強酸性とするのが通例であった。例えば、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウム等を水に溶解したものはハロゲン化物イオンが電離するため溶液は酸性になる。ガリウムアセチルアセトナートはそのままでは水に溶解しないため、酸を混合して溶解を促す。また、金属ガリウムを塩酸などで溶解した水溶液も強酸性になる。
本発明者らが調査したところ、原料溶液として強酸性溶液を用いてミストCVDによる成膜を行うと、成膜装置を構成する金属部材を少なからず溶解していくことを見出した。この結果、溶出した金属は成膜した酸化ガリウム膜中に取り込まれ、結晶欠陥や再結合中心となり、膜質の低下をもたらしていることが判明した。さらには、成膜装置だけでなく付帯する設備をも腐食していくため、装置の保守が必要となり、ダウンタイムの増加、すなわち生産性の低下をももたらしていることがわかった。
本発明は、結晶性等に優れた高品質の酸化ガリウム半導体膜を高い生産性で得ることが可能な、ミストCVD法による酸化ガリウム半導体膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、原料溶液を霧化又は液滴化して生成されたミストを、キャリアガスを用いて搬送し、前記ミストを加熱して、基体上で前記ミストを熱反応させて成膜を行う酸化ガリウム半導体膜の製造方法であって、前記原料溶液中の水素イオン濃度を、1×10−12〜1×10−2mol/Lとする酸化ガリウム半導体膜の製造方法を提供する。
このような酸化ガリウム半導体膜の製造方法によれば、成膜装置本体の腐食が抑制されるため、金属部材の溶出による酸化ガリウム半導体膜の金属汚染が抑制され、膜質のよい酸化ガリウム半導体膜を効率よく製造できる。また、メンテナンス等に伴う成膜装置ならびに付帯機器のダウンタイムが減少し、生産性が向上する。さらには、腐食防止のため非金属材料で構成していた成膜装置の部材を金属とすることも可能となり、装置設計の自由度を高めることができる。
このとき、前記原料溶液中の水素イオン濃度を、3×10−11〜3×10−2mol/Lとすることができる。
これにより、成膜装置の腐食をより効果的に抑制することができ、ダウンタイムを減少させ、酸化ガリウム半導体膜をより効率よく製造できる。
このとき、前記原料溶液中の水素イオン濃度を、1×10−6〜1×10−3mol/Lとすることができる。
これにより、金属汚染の低減に加えて、酸化ガリウム半導体膜の成膜速度を高くすることも可能となる。
このとき、前記原料溶液中の酸及び/又は塩基の量を調整することで、前記水素イオン濃度を制御することができる。
これにより、容易に原料溶液中の水素イオン濃度を制御できる。
このとき、前記塩基として、アンモニアを用いることができる。
これにより、より純度の高い高品質な酸化ガリウム半導体膜を製造することができる。
このとき、前記基体として、板状であり、成膜を行う面の面積が100mm以上のものを用いることができる。
これにより、大面積で膜質のよい酸化ガリウム半導体膜を効率よく製造できる。
以上のように、本発明に係る酸化ガリウム半導体膜の製造方法によれば、成膜装置の腐食を抑制することができる。これにより、金属部材の溶出による酸化ガリウム膜への金属汚染が抑制され結晶性が向上するだけでなく、メンテナンス等に伴う成膜装置ならびに付帯機器のダウンタイムが減少し、生産性が向上する。さらには、腐食防止のため非金属材料で構成していた部材を金属とすることも可能となり、装置設計の自由度が増す。さらに、成膜速度を向上させることも可能となる。
本発明に係る酸化ガリウム半導体膜の製造方法に使用可能な成膜装置の一例を示す概略構成図である。 ミスト化部の一例を説明する図である。 実施例と比較例で製造した酸化ガリウム半導体膜の半値全幅の評価結果を示す。 実施例と比較例の酸化ガリウム半導体膜の成膜速度を示す。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上述のように、結晶性等に優れた高品質の酸化ガリウム半導体膜を、高い生産性で得ることが可能な、ミストCVD法による酸化ガリウムの製造方法が求められていた。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、原料溶液を霧化又は液滴化して生成されたミストを、キャリアガスを用いて搬送し、前記ミストを加熱して、基体上で前記ミストを熱反応させて成膜を行う酸化ガリウム半導体膜の製造方法であって、前記原料溶液中の水素イオン濃度を、1×10−12〜1×10−2mol/Lとする酸化ガリウム半導体膜の製造方法により、より膜質のよい酸化ガリウム半導体膜を効率よく製造できるとともに、生産性が向上し、さらには、装置設計の自由度を高めることができることを見出し、本発明を完成した。
以下、図面を参照して説明する。
ここで、本発明でいうミストとは、気体中に分散した液体の微粒子の総称を指し、霧、液滴等と呼ばれるものを含む。また、数値範囲に関して、例えば、「3〜6」と記載する場合には、「3以上、6以下」を意味するものとする。
(成膜装置)
図1に、本発明に係る酸化ガリウム半導体膜の製造方法に使用可能な成膜装置101の一例を示す。成膜装置101は、原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト化部120と、ミストを搬送するキャリアガスを供給するキャリアガス供給部130と、ミストを熱処理して基体上に成膜を行う成膜部140と、ミスト化部120と成膜部140とを接続し、キャリアガスによってミストが搬送される搬送部109とを有する。また、成膜装置101は、成膜装置101の全体又は一部を制御する制御部(図示なし)を備えることによって、その動作が制御されてもよい。
(原料溶液)
本発明に係る酸化ガリウム半導体膜は、ガリウム以外の金属をさらに含むことができ、このため、原料溶液104aは、少なくともガリウムを含んでおり、ミスト化が可能な材料であれば特に限定されない。すなわち、ガリウムのほか、例えば、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、イリジウム、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種又は2種以上の金属を含んでもよい。
前記原料溶液104aは、上記金属を含んだ材料をミスト化できるものであれば特に限定されないが、前記原料溶液104aとして、前記金属を錯体又は塩の形態で、水に溶解又は分散させたものを用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩などが挙げられる。また、前記金属を、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸等に溶解したものも塩の水溶液として用いることができる。
また、前記原料溶液には、ドーパントが含まれていてもよい。前記ドーパントは特に限定されない。例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウム又はニオブ等のn型ドーパント、又は、銅、銀、スズ、イリジウム、ロジウム等のp型ドーパントなどが挙げられる。ドーパントの濃度は、例えば、約1×1016/cm〜1×1022/cmであってもよく、約1×1017/cm以下の低濃度にしても、約1×1020/cm以上の高濃度としてもよい。
さらに、前記原料溶液104aには、原料の溶解のために酸を混合することができる。前記酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などのハロゲン化水素、次亜塩素酸、亜塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、ヨウ素酸等のハロゲンオキソ酸、蟻酸、硝酸、等が挙げられる。
また、前記原料溶液104aに、塩基を混合して水素イオン濃度(pH)の調整を行うことができる。このようにすれば、容易に原料溶液中の水素イオン濃度を制御できる。前記塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化銅、水酸化鉄、等が挙げられる。なかでも、特に、アンモニアは沸点が低いため、溶液を加熱した際に残渣を残さないという点で最も好ましい。
本発明に係る酸化ガリウム半導体膜の製造方法においては、原料溶液104a中の水素イオン濃度を、1×10−12〜1×10−2mol/Lとする必要がある。原料溶液104a中の水素イオン濃度は、原料溶液104a中の酸及び/又は塩基量を調整することで制御が可能である。水素イオン濃度を1×10−2mol/L以下(pH≧2)とすることで、成膜装置の腐食、装置構成部材の溶出を抑制することができ、膜中への不純物汚染が抑制され、膜質のよい酸化ガリウム半導体膜を効率よく製造できる。また、水素イオン濃度を1×10−12以上(pH≦12)とすることで、膜質のよい酸化ガリウム半導体膜を効率よく安定して製膜できる。
また、原料溶液104a中の水素イオン濃度を、3×10−11〜3×10−3mol/Lとすることが好ましい。このような水素イオン濃度範囲であれば、より確実に装置の腐食が抑制されてダウンタイムが減少し、また、より高品質の酸化ガリウム半導体膜を効率よく製造できる。さらに、原料溶液104a中の水素イオン濃度を、1×10−6〜1×10−3mol/Lとすることが好ましい。このような範囲であれば、上記の効果に加え、成膜速度を向上させることが可能となる。
(ミスト化部)
ミスト化部120では、原料溶液104aを調整し、前記原料溶液104aをミスト化してミストを発生させる。ミスト化手段は、原料溶液104aをミスト化できさえすれば特に限定されず、公知のミスト化手段であってよいが、超音波振動によるミスト化手段を用いることが好ましい。より安定してミスト化することができるためである。
このようなミスト化部120の一例を図2に示す。例えば、原料溶液104aが収容されるミスト発生源104と、超音波振動を伝達可能な媒体、例えば水105aが入れられる容器105と、容器105の底面に取り付けられた超音波振動子106を含んでもよい。詳細には、原料溶液104aが収容されている容器からなるミスト発生源104が、水105aが収容されている容器105に、支持体(図示せず)を用いて収納されている。容器105の底部には、超音波振動子106が備え付けられており、超音波振動子106と発振器116とが接続されている。そして、発振器116を作動させると、超音波振動子106が振動し、水105aを介して、ミスト発生源104内に超音波が伝播し、原料溶液104aがミスト化するように構成されている。
(搬送部)
搬送部109は、ミスト化部120と成膜部140とを接続する。搬送部109を介して、ミスト化部120のミスト発生源104から成膜部140の成膜室107へと、キャリアガスによってミストが搬送される。搬送部109は、例えば、供給管109aとすることができる。供給管109aとしては、例えば石英管や樹脂製のチューブなどを使用することができる。
(成膜部)
成膜部140では、ミストを加熱し熱反応を生じさせて、基体110の表面の一部又は全部に成膜を行う。成膜部140は、例えば、成膜室107を備え、成膜室107内には基体110が設置されており、該基体110を加熱するための加熱手段、例えばホットプレート108を備えることができる。ホットプレート108は、図1に示されるように成膜室107の外部に設けられていてもよいし、成膜室107の内部に設けられていてもよい。ホットプレート以外にも、基体が吸収し発熱可能な光等による加熱も可能である。また、成膜室107には、基体110へのミストの供給に影響を及ぼさない位置に、排ガスの排気口112が設けられていてもよい。なお、基体110を成膜室107の上面に設置するなどして、フェイスダウンとしてもよいし、基体110を成膜室107の底面に設置して、フェイスアップとしてもよい。
(基体)
基体110は、成膜可能であり膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体110の材料も、特に限定されず、公知の基体を用いることができ、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。例えば、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、鉄やアルミニウム、ステンレス鋼、金等の金属、シリコン、サファイア、石英、ガラス、酸化ガリウム等が挙げられるが、これに限られるものではない。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、板状の基体を用いることが好ましい。板状の基体の厚さは、特に限定されないが、好ましくは、10〜2000μmであり、より好ましくは50〜800μmである。基体が板状の場合、その面積は100mm以上が好ましく、より好ましくは口径が2インチ(50mm)以上である。
(キャリアガス供給部)
キャリアガス供給部130は、キャリアガスを供給するキャリアガス源102aを有し、キャリアガス源102aから送り出されるキャリアガス(「主キャリアガス」ということもある)の流量を調節するための流量調節弁103aを備えていてもよい。また、必要に応じて希釈用キャリアガスを供給する希釈用キャリアガス源102bや、希釈用キャリアガス源102bから送り出される希釈用キャリアガスの流量を調節するための流量調節弁103bを備えることもできる。
キャリアガスの種類は、特に限定されず、成膜物に応じて適宜選択可能である。例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、又は水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類でも、2種類以上であってもよい。例えば、第1のキャリアガスと同じガスをそれ以外のガスで希釈した(例えば10倍に希釈した)希釈ガスなどを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよく、空気を用いることもできる。本明細書においては、単に「キャリアガスの流量」という場合、キャリアガスの総流量を意味する。例えば、キャリアガス源102aから送り出される主キャリアガスの流量と、希釈用キャリアガス源102bから送り出される希釈用キャリアガスの流量の総量を、キャリアガスの流量とする。キャリアガスの流量は、例えば成膜室の大きさ、成膜温度、原料溶液等によって適宜決定されるが、例えば2〜30L/分程度とすることができる。
(製造方法)
次に、以下、図1を参照しながら、本発明に係る酸化ガリウム半導体膜の製造方法の一例を説明する。
まず、所望の水素イオン濃度(pH)に調整した原料溶液104aをミスト化部120のミスト発生源104内に収容し、基体110をホットプレート108上に直接又は成膜室107の壁を介して設置し、ホットプレート108を作動させる。
次に、流量調節弁103a、103bを開いてキャリアガス源102a、102bからキャリアガスを成膜室107内に供給し、成膜室107の雰囲気をキャリアガスで十分に置換するとともに、主キャリアガスの流量と希釈用キャリアガスの流量をそれぞれ調節し、キャリアガス流量を制御する。
次に、ミストを発生させる。超音波振動子106を振動させ、その振動を、容器105内の水105aを通じて原料溶液104aに伝播させることによって、原料溶液104aをミスト化させてミストを生成する。次に、ミスト化部120で生成したミストは、キャリアガスによってミスト化部120から搬送部109を経て成膜部140へ搬送され、成膜室107内に導入される。成膜室107内に導入されたミストは、成膜室107内でホットプレート108の熱により熱処理され熱反応して、基体110上に成膜される。
熱反応は、加熱によりミストが反応すればよく、反応条件等も特に限定されない。原料や成膜物に応じて適宜設定することができる。例えば、加熱温度は120〜600℃の範囲であり、好ましくは200℃〜600℃の範囲であり、より好ましくは300℃〜550℃の範囲とすることができる。
また、熱反応は、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下、空気雰囲気下及び酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、成膜物に応じて適宜設定すればよい。また、反応圧力は、大気圧下、加圧下又は減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、大気圧下の成膜であれば、装置構成が簡略化できるので好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
(実施例1)
上述の酸化ガリウム半導体膜の製造方法に基づいて、ガリウムを主成分とする酸化物半導体膜として、コランダム構造を有する酸化ガリウム(α−Ga)膜の成膜を行った。
具体的には、まず、塩化ガリウム1×10−1mol/Lの水溶液を用意し、これに水酸化カリウム(KOH)水溶液を添加することで水素イオン濃度(pH)を調整して、水素イオン濃度=1×10−2mol/L(pH=2)とし、これを原料溶液104aとした。
上述のようにして得た原料溶液104aをミスト発生源104内に収容した。次に、基体110として4インチ(直径100mm)のc面サファイア基板を、成膜室107内でホットプレート108に隣接するように設置した。そして、ホットプレート108を作動させて温度を500℃に昇温した。なお、成膜時の温度変動を小さくする必要性から、成膜室107の材質は、熱伝導性の良好なアルミニウムとした。
続いて、流量調節弁103a、103bを開いてキャリアガス源102a、102bからキャリアガスとして酸素ガスを成膜室107内に供給し、成膜室107の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した。この後、主キャリアガスの流量を8L/分とし、希釈用キャリアガスの流量を18L/分とした。
次に、超音波振動子106を2.4MHzで振動させ、その振動を、容器105内の水105aを通じて原料溶液104aに伝播させることによって、原料溶液104aをミスト化してミストを生成した。このミストを、キャリアガスによって供給管109aを経て成膜室107内に導入した。そして、大気圧下、500℃の条件で、成膜室107内でミストを熱反応させて、基体110上にα−Gaの薄膜を形成した。成膜時間は30分とした。
得られた試料に対しX線回折測定を行い、結晶性を評価した。具体的には、α−Gaの(0006)面回折ピークのロッキングカーブを測定し、その半値全幅を求めた。さらに、エネルギー分散型X線分析(EDS)により、膜中の汚染の程度を評価した。また、干渉式膜厚計を用いて膜厚測定を行った。得られた膜厚を成膜時間の0.5時間(30分)で除して成膜速度を求めた。
(実施例2)
原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−4mol/L(pH=4)となるよう調整し、これ以外は実施例1と同じ条件で成膜、評価を行った。
(実施例3)
原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−7mol/L(pH=7)となるよう調整し、これ以外は実施例1と同じ条件で成膜、評価を行った。
(実施例4)
原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−9mol/L(pH=9)となるよう調整し、これ以外は実施例1と同じ条件で成膜、評価を行った。
(実施例5)
原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−12mol/L(pH=12)となるよう調整し、これ以外は実施例1と同じ条件で成膜、評価を行った。
(実施例6)
実施例1における水酸化カリウム(KOH)水溶液の代わりに、アンモニア水(NH(aq))を用いて水素イオン濃度(pH)調整を行ったこと以外は、実施例1と同じ条件で成膜、評価を行った。
(実施例7)
原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−4mol/L(pH=4)となるよう調整し、これ以外は実施例6と同じ条件で成膜、評価を行った。
(実施例8)
原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−7mol/L(pH=7)となるよう調整し、これ以外は実施例6と同じ条件で成膜、評価を行った。
(実施例9)
原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−9mol/L(pH=9)となるよう調整し、これ以外は実施例6と同じ条件で成膜、評価を行った。
(実施例10)
原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−11mol/L(pH=11)となるよう調整し、これ以外は実施例6と同じ条件で成膜、評価を行った。
(実施例11)
原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−3mol/L(pH=3)となるよう調整し、これ以外は実施例6と同じ条件で成膜、評価を行った。
(実施例12)
原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−6mol/L(pH=6)となるよう調整し、これ以外は実施例6と同じ条件で成膜、評価を行った。
(比較例1)
実施例1における水酸化カリウムの代わりに、臭化水素(HBr)水溶液を用いて水素イオン濃度(pH)調整を行い、原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−1mol/L(pH=1)となるよう調整したこと以外は、実施例1と同じ条件で成膜、評価を行った。
(比較例2)
実施例1において、原料溶液104aの水素イオン濃度を1×10−13mol/L(pH=13)となるよう調整したこと以外は実施例1と同じ条件で成膜、評価を行った。
表1に、実施例1〜12及び比較例1,2の、原料溶液の条件及び評価結果を示す。また、実施例と比較例で製造した酸化ガリウム半導体膜の半値全幅の評価結果を図3に、実施例と比較例の酸化ガリウム半導体膜の成膜速度を図4に示す。
Figure 2020174153
表1から明らかなように、実施例1〜12は、比較例1に比べ半値全幅が小さく、α−Ga膜の結晶性が優れていることがわかる。また、EDS評価結果より、比較例1では、製造装置を構成する部材由来と考えられるAlが検出されたが、実施例1〜12においては、GaとO以外の元素は検出されず、不純物汚染は認められなかった。これは、原料溶液中の水素イオン濃度を低くすることにより、成膜室をはじめとする製造装置構成部材の溶出が抑制されて、膜中で不純物汚染が生じなくなり、この結果、結晶性も改善されたと考えられる。さらに実施例1−12では、比較例に比べ成膜速度の向上がみられた。特に、水素イオン濃度を1×10−3〜1×10−6mol/L(pH=3〜6)とした実施例2,7,11,12では、成膜速度の向上が顕著であった。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
101…成膜装置、 102a…キャリアガス源、
102b…希釈用キャリアガス源、 103a…流量調節弁、
103b…流量調節弁、 104…ミスト発生源、 104a…原料溶液、
105…容器、 105a…水、 106…超音波振動子、 107…成膜室、
108…ホットプレート、 109…搬送部、 109a…供給管、
110…基体、 112…排気口、 116…発振器、
120…ミスト化部、130…キャリアガス供給部、140…成膜部。

Claims (6)

  1. 原料溶液を霧化又は液滴化して生成されたミストを、キャリアガスを用いて搬送し、前記ミストを加熱して、基体上で前記ミストを熱反応させて成膜を行う酸化ガリウム半導体膜の製造方法であって、
    前記原料溶液中の水素イオン濃度を、1×10−12〜1×10−2mol/Lとすることを特徴とする酸化ガリウム半導体膜の製造方法。
  2. 前記原料溶液中の水素イオン濃度を、3×10−11〜3×10−2mol/Lとすることを特徴とする請求項1に記載の酸化ガリウム半導体膜の製造方法。
  3. 前記原料溶液中の水素イオン濃度を、1×10−6〜1×10−3mol/Lとすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸化ガリウム半導体膜の製造方法。
  4. 前記原料溶液中の酸及び/又は塩基の量を調整することで、前記水素イオン濃度を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の酸化ガリウム半導体膜の製造方法。
  5. 前記塩基として、アンモニアを用いることを特徴とする請求項4に記載の酸化ガリウム半導体膜の製造方法。
  6. 前記基体として、板状であり、成膜を行う面の面積が100mm以上のものを用いることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の酸化ガリウム半導体膜の製造方法。
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